JP2019168692A - 可撓性画像表示装置、及びそれに用いる円偏光板の製造方法 - Google Patents

可撓性画像表示装置、及びそれに用いる円偏光板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】視認性に優れ、繰り返しの曲げ又は高温状態に放置した場合でも積層された部材同士が剥がれにくく、折り跡が付きにくい可撓性の画像表示装置を提供すること。【解決手段】画像表示セル、及び該画像表示セルよりも視認側に配置される円偏光板を備えた可撓性の画像表示装置であって、前記円偏光板は、位相差層、偏光子、及び基材フィルムを有し、(1)基材フィルムの進相軸方向の屈折率nyが1.568以上1.63以下であり、(2)偏光子と位相差層との間に自立性フィルムが存在しないか、又は1枚のみ存在し(ここで偏光子と位相差層との間は位相差層自身も含むものとする)、及び(3)偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とが略平行である可撓性画像表示装置。【選択図】なし

Description

本発明は、可撓性画像表示装置、及びそれに用いる円偏光板の製造方法に関する。
画像表示装置では、外来光が画像表示セル、タッチセンサー等の構成材の表面、これらの配線部分等で反射し、視認性が低下するという問題があった。これらの問題に対して、画像表示装置の出射面に光学積層体を配置して外来光の反射を低減する方法が提案されている。この光学積層体には、一般的には直線偏光板と1/4波長位相差板とを積層した円偏光板が用いられていた。
近年、画像表示装置として、広い表示面を持ちながら、携帯時にはV字状、Z字状、W字状、観音開き状等への折り畳み、又はロール状の巻き取りが可能な可撓性表示装置が提案されている。
偏光板の偏光子保護フィルムとして、面内リタデーションが3000〜30000nmのポリエステルフィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ポリエステルフィルムは、セルロース系又はアクリル系のフィルムに比べ、透湿性が低く、機械特性に優れ(高耐衝撃性及び高弾性率)、さらに化学的特性(耐溶剤性等)にも優れていることから、画像表示装置に好適に用いられている。しかし、ポリエステルフィルムは複屈折性を有するために虹ムラが生じやすいという欠点がある。
よって、ポリエステルフィルムを用いて、虹ムラを抑制し、かつ十分な面内リタデーションを与えるためには、フィルムを厚くする必要がある。このようなポリエステルフィルムを保護フィルムとした偏光板に位相差板を積層した円偏光板を可撓性の画像表示装置に用いると、その厚みのため、十分な曲げ性能が得られない、繰り返しの折り曲げ動作又は自動車の車内等の高温の場所に放置した場合にフィルムが剥がれやすくなる、曲げ跡がつきやすい等の問題があった。
さらに、屈折率の波長分散性の影響を抑制し、より色再現性のよい円偏光板を得るために1/4波長板と1/2波長板とを組み合わせる技術が提案されている(特許文献2)。しかしながら、偏光板にこのような複数の位相差板を積層させた場合には、上記の問題がより顕著になった。
特開2012―256057号公報 特開平10−68816号公報
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、視認性に優れ、繰り返しの曲げ又は高温状態に放置した場合でも積層された部材同士が剥がれにくく、折り跡が付きにくい可撓性の画像表示装置、及び薄型の円偏光板の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、視認性に優れ、繰り返しの曲げ又は高温状態に放置した場合でも積層された部材同士が剥がれにくく、折り跡が付きにくい可撓性の画像表示装置を開発すべく鋭意検討した結果、進相軸方向の屈折率nyが特定の値である基材フィルムを用い、偏光子と位相差層との間に存在する自立性フィルムの数を1枚以下にし、偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とを略平行にした円偏光板を用いることで、上記目的を達成することができることを見出した。本発明はこのような知見に基づき完成されたものである。
すなわち、本発明は、項1〜項9に示す、可撓性画像表示装置、及び円偏光板の製造方法に係る。
項1.
画像表示セル、及び該画像表示セルよりも視認側に配置される円偏光板を備えた可撓性の画像表示装置であって、
前記円偏光板は、位相差層、偏光子、及び基材フィルムを有し、
(1)基材フィルムの進相軸方向の屈折率nyが1.568以上1.63以下であり、
(2)偏光子と位相差層との間に自立性フィルムが存在しないか、又は1枚のみ存在し(ここで偏光子と位相差層との間は位相差層自身も含むものとする)、及び
(3)偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とが略平行である
可撓性画像表示装置。
項2.
前記基材フィルムの面内複屈折ΔNxyが0.06以上0.2以下である、上記項1に記載の可撓性画像表示装置。
項3.
前記基材フィルムの遅相軸方向及び進相軸方向の直角形引裂き法による引裂き強度のうち小さいほうの値が250N/mm以上である、上記項1又は2に記載の可撓性画像表示装置。
項4.
前記偏光子の厚みが12μm以下である、上記項1〜3のいずれかに記載の可撓性画像表示装置。
項5.
前記偏光子が重合性液晶化合物と二色性色素とからなる、上記項1〜4のいずれかに記載の可撓性画像表示装置。
項6.
前記位相差層が液晶化合物からなる、上記項1〜5のいずれかに記載の可撓性画像表示装置。
項7.
下記工程:
(1)進相軸方向の屈折率nyが1.568以上1.63以下である基材フィルムを準備する工程、
(2)基材フィルム上に(a)又は(b)のいずれかの方法により、基材フィルムの進相軸と偏光子の透過軸とが略平行となるように偏光子を設ける工程、
(a)離型性支持基材上に設けられた偏光子を基材フィルムに転写する方法、
(b)基材フィルムに重合性液晶化合物と二色性色素とからなる偏光膜用組成物を塗工し、配向させて偏光子とする方法、及び
(3)偏光子上に位相差層を積層する工程、
を有する、円偏光板の製造方法。
項8.
下記工程:
(1)進相軸方向の屈折率nyが1.568以上1.63以下である基材フィルムを準備する工程、
(2)該基材フィルム上に(a)又は(b)のいずれかの方法により、基材フィルムの進相軸と偏光子の透過軸とが略平行となるように偏光子を設ける工程、
(a)離型性支持基材上に設けられた偏光子を基材フィルムに転写する方法、
(b)基材フィルムに重合性液晶化合物と二色性色素とからなる偏光膜用組成物を塗工し、配向させて偏光子とする方法、及び
(3)偏光子上に(c)又は(d)のいずれかの方法により位相差層を設ける工程、
(c)離型性支持基材上に設けられた位相差層を偏光子上に転写する方法、
(d)基材フィルム上に液晶化合物からなる位相差層用組成物を塗工し、配向させて位相差層とする方法、
を有する、円偏光板の製造方法。
項9.
前記位相差層を積層する工程が、
(c)離型性支持基材上に設けられた位相差層を偏光子上に転写する方法、又は
(d)基材フィルム上に液晶化合物からなる位相差層用組成物を塗工し、配向させて位相差層とする方法、
のいずれかである、上記項7に記載の円偏光板の製造方法。
本発明の可撓性画像表示装置は、進相軸方向の屈折率nyが1.568以上1.63以下である基材フィルムを用い、偏光子と位相差層との間に存在する自立性フィルムの数を1枚以下にし、偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とを略平行にした円偏光板を用いているので、視認性に優れるとともに、繰り返しの曲げ又は高温状態に放置した場合でも積層された部材同士が剥がれにくく、折り跡が付きにくい。
本発明の可撓性画像表示装置は、画像表示セル、及び該画像表示セルよりも視認側に配置される円偏光板を備えている。可撓性画像表示装置の視認面に円偏光板を配置することにより、画像表示セル表面又は配線で反射された外来光によって視認性が低下することを低減することができる。該円偏光板は、基材フィルム、偏光子、及び位相差層を有する。 まず、本発明に用いられる円偏光板について説明する。
A.円偏光板
1.基材フィルム
最初に、円偏光板の基材フィルムについて説明する。
(基材フィルムの材質)
本発明に用いられる基材フィルムの樹脂としては、配向により複屈折を生じるものであれば特に限定なく使用することができる。リタデーションを大きくできる点で、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレンなどが好ましく、ポリエステルがより好ましい。好ましいポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられ、中でもPET、及びPENがより好ましい。基材フィルムとしてポリエステルフィルムを使用することにより、耐透湿性、寸法安定性、機械的強度、及び化学的安定性に優れた円偏光板を有する可撓性画像表示装置を得ることができる。
PETの場合、基材フィルムを構成する樹脂の極限粘度(IV)は0.58〜1.5dL/gであることが好ましい。IVの下限は、より好ましくは0.6dL/gであり、さらに好ましくは0.65dL/gであり、特に好ましくは0.68dL/gである。IVの上限は、より好ましくは1.2dL/gであり、さらに好ましくは1dL/gである。PETのIVが0.58dL/g未満であると、繰り返しの折り曲げで曲げ跡がつきやすくなる場合がある。PETのIVが1.5dL/gを超えると、フィルムの製造が困難となる場合がある。なお、本発明における極限粘度(IV)としては、フェノールと1,1,2,2−テトラクロロエタンとを6:4の質量比で混合したものを溶媒とし、温度30℃で測定した値を採用する。
基材フィルムは、波長380nmの光線透過率が20%以下であることが望ましい。波長380nmの光線透過率は15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。前記光線透過率が20%以下であれば、偏光子中のヨウ素又は二色性色素の紫外線による変質を抑制することができる。なお、本発明における透過率は、フィルムの平面に対して垂直方向に測定したものであり、分光光度計(例えば、日立U−3500型)を用いて測定することができる。
基材フィルムの波長380nmの光線透過率を20%以下にすることは、基材フィルム中に紫外線吸収剤を添加すること、紫外線吸収剤を含有した塗布液を基材フィルム表面に塗布すること、紫外線吸収剤の種類又は濃度、及び基材フィルムの厚みを適宜調節すること等によって達成することができる。本発明では、紫外線吸収剤として当該技術分野において公知の物質を使用することができる。紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤及び無機系紫外線吸収剤が挙げられ、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。
有機系紫外線吸収剤は、基材フィルムの波長380nmの光線透過率を20%以下にできるものであれば特に限定されることなく使用することができる。このような有機系紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
また、基材フィルムには滑り性向上のため、平均粒径0.05〜2μmの粒子を添加することも好ましい。粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等の無機粒子;スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。なお、平均粒径は、フィルムの断面の粒子を走査型電子顕微鏡で観察する方法で算出した。詳細には、フィルムの断面の粒子100個について観察を行って、各粒子の直径(d)を計測し、それらの平均値を平均粒径とした。
これらの粒子は基材フィルム全体に添加することができる。あるいは、基材をスキン−コアの共押出多層構造にし、粒子をスキン層のみに添加してもよい。
基材フィルムの進相軸方向の屈折率nyの下限は、好ましくは1.568であり、より好ましくは1.578であり、さらに好ましくは1.584であり、特に好ましくは1.588である。基材フィルムの進相軸方向の屈折率nyの上限は、好ましくは1.63であり、より好ましくは1.62であり、さらに好ましくは1.615であり、特に好ましくは1.61である。PETフィルムの場合はnyが1.58未満であると完全な一軸性(一軸対称)に近づくため、配向方向と平行な方向の機械的強度が著しく低下する。また、nyが1.62より大きいフィルムでは、斜め方向から観察した際に虹状の色斑が観察されやすくなる。
一般的に偏光子としてポリビニルアルコール又は重合性液晶化合物がマトリックス物質として使用されている。この場合、これらの偏光子の透過軸方向の屈折率と基材フィルムの屈折率とが近くなり、この界面での反射が抑えられることが、虹斑が観察されにくくなる理由と考えられるが、定かではない。
基材フィルムの面内複屈折ΔNxyは、好ましくは0.06以上0.2以下であり、より好ましくは0.07以上0.19以下であり、さらに好ましくは0.08以上0.18以下である。ΔNxyが0.06未満だと斜め方向から観察した際に虹状の色斑が観察されやすくなる。また、ΔNxyが0.2より大きいフィルムでは虹状の色斑は生じなくなるが、前述のように完全な一軸性(一軸対称)に近づくため、配向方向と平行な方向の機械的強度が著しく低下する。
面内複屈折ΔNxyは、遅相軸方向の屈折率(nx)と進相軸方向の屈折率(ny)との差の絶対値のことである。なお、屈折率の測定波長は589nmである。
基材フィルムの遅相軸方向及び進相軸方向の直角形引裂き法による引裂き強度のうち小さいほうの値は、250N/mm以上が好ましく、280N/mm以上がより好ましく、300N/mm以上がさらに好ましい。ΔNxyの値が高いフィルムでは、遅相軸方向の引裂き強度の値が、進相軸方向よりも小さくなる傾向にある。引裂き強度が250N/mm未満の場合には容易にフィルムが裂けてしまい、製膜時又は加工時の安定性が低下する。一方、引裂き強度が高ければ高いほど製膜時又は加工時の安定性は増すが、二軸性(二軸対称性)が高くなり、虹状の色斑が生じることになる。そのため、虹状の色斑が生じない範囲で上記引裂き強度を高くすることが好ましく、現実的には500N/mm以下が好ましい。
なお、引裂き強度は、直角形引裂き法(JISK−7123)に従って測定を行い、フィルム厚み当たりの引裂き強度(N/mm)を求める。
基材フィルムのNz係数は、1.5以上2.5以下が好ましく、1.6以上2.3以下がより好ましく、1.7以上2.1以下がさらに好ましい。Nz係数が小さいほど観察角度による虹状の色斑が生じにくくなる。そして、完全な一軸性(一軸対称)フィルムではNz係数は1となる。しかし、前述のように完全な一軸性(一軸対称)フィルムに近づくにつれ、配向方向と平行な方向の機械的強度が低下する傾向にある。
Nz係数は次のようにして求めることができる。分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計)を用いてフィルムの配向主軸方向(遅相軸方向)を求め、配向主軸方向及びこれに直交する方向(進相軸方向)の二軸の屈折率(遅相軸方向の屈折率nx、進相軸方向の屈折率ny、但しnx>ny)、及び厚さ方向の屈折率(nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR−4T、測定波長589nm)によって求める。こうして求めたnx、ny、及びnzを、|nx−nz|/|nx−ny|で表される式に代入して、Nz係数を求める。なお、屈折率の測定波長は589nmである。
虹斑をより低減する観点から、基材フィルムは、1500〜9000nmのリタデーションを有することが好ましい。リタデーションの下限値は2000nmが好ましく、より好ましい下限値は2500nmである。
一方、リタデーションの上限値は9000nmであることが好ましい。それを超えるリタデーションを有する基材フィルムを用いたとしても、可撓性画像表示装置で広く用いられる有機EL表示装置では更なる視認性の改善効果が実質的に得られないばかりか、基材フィルムの厚みが厚くなり、薄型の可撓性画像表示装置用の円偏光板としての取り扱い性が低下したり、長期間の使用による繰り返しの折りたたみ操作により折り跡が付きやすくなる場合がある。リタデーションの好ましい上限値は8000nmであり、より好ましい上限値は6000nmであり、更に好ましい上限値は5500nmであり、最も好ましい上限値は5000nmである。
なお、複屈折は、2軸方向の屈折率を測定して求めることもできるし、KOBRA−21ADH(王子計測機器株式会社)等の市販の自動複屈折測定装置を用いて求めることもできる。なお、屈折率の測定波長は589nmである。
本発明で使用される基材フィルムは、それぞれの素材の一般的なフィルムの製造方法に従って得ることができる。以下、基材フィルムがポリエステルの場合を例にして説明する。ポリエステル基材フィルム(以下、単に基材フィルムという場合がある)は、一般的なポリエステルフィルムの製造方法に従って製造することができる。ポリエステルフィルムの製造方法として、例えば、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、縦方向及び横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。
基材フィルムは一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであってもかまわない。二軸延伸フィルムを基材フィルムとして用いた場合、二軸性を強くするとフィルム面の真上から観察しても虹状の色斑が見られないが、斜め方向から観察した時に虹状の色斑が観察される場合があるので注意が必要である。
この現象は、二軸延伸フィルムが、走行方向、幅方向、及び厚さ方向で異なる屈折率を有する屈折率楕円体からなり、フィルム内部での光の透過方向によりリタデーションがゼロになる(屈折率楕円体が真円に見える)方向が存在するために起こる。従って、表示画面を斜め方向の特定の方向から観察すると、リタデーションがゼロになる点を生じる場合があり、その点を中心として虹状の色斑が同心円状に生じることとなる。そして、フィルム面の真上(法線方向)から虹状の色斑が見える位置までの角度をθとすると、この角度θは、フィルム面内の複屈折が大きいほど大きくなり、虹状の色斑は見え難くなる。二軸延伸フィルムでは角度θが小さくなる傾向があるため、一軸延伸フィルムのほうが虹状の色斑が見え難いという点で好ましい。
しかしながら、完全な一軸性(一軸対称)フィルムは配向方向と平行な直行する方向の機械的強度が著しく低下するので好ましくない。本発明は、実質的に虹状の色斑を生じない範囲、又は液晶表示画面に求められる視野角範囲において虹状の色斑を生じない範囲で、二軸性(二軸対称性)を有していることが好ましい。
基材フィルムの主配向軸(ポリエステルの場合は遅相軸)は、フィルムの走行方向(長手方向、MD方向)であっても、長手方向と直交する方向(直交方向、TD方向)であってもよい。
基材フィルムの製膜条件は、逐次二軸延伸でも同時二軸延伸でもよい。初めに逐次二軸延伸での製膜方法を説明する。
まず、遅相軸が直交方向の場合では、溶融したPETを冷却ロール上に押し出して得られた未延伸原反を連続ロールで縦延伸する。その後、フィルムの両端をクリップで把持してテンター内に導き、予熱した後、加熱しながら横方向に延伸する。遅相軸が長手方向の場合には、上記と同じ順でもよいが、未延伸原反をテンターで横方向に延伸し、その後連続ロールで縦延伸することが好ましい。
縦延伸温度、及び横延伸温度は80〜130℃が好ましく、より好ましくは90〜120℃である。初めに行う主配向方向と直交する方向の延伸倍率は1.2〜3倍が好ましく、より好ましくは1.8〜2.5倍である。また、主配向方向の延伸倍率は2.5〜6倍が好ましく、より好ましくは3〜5.5倍である。
一般的な逐次二軸延伸では縦延伸はロール延伸となるため、フィルムにキズがつきやすい。したがって、延伸時のキズ防止の観点では、ロールを介さない同時二軸延伸が好ましい。同時二軸延伸の製膜条件を具体的に説明すると、縦延伸温度、及び横延伸温度は80〜150℃が好ましく、より好ましくは90〜140℃である。遅相軸方向を長手方向にする場合、縦延伸倍率は5.5〜7.5倍が好ましく、より好ましくは6〜7倍であり、特に好ましくは6.5〜7倍である。また、横延伸倍率は1.5〜3倍が好ましく、より好ましくは1.8〜2.8倍である。遅相軸方向を直交方向にする場合は、縦延伸倍率及び横延伸倍率は上記と逆である。
なお、一軸延伸の場合は、上記で遅相軸方向のみに延伸すればよい。
また、フィルムにキズがつきにくくなるという観点及び汎用の延伸設備が転用できるという点で、テンターでの横方向のみの一軸延伸であってもよい。
遅相軸の方向、ΔNxy、Nz係数及び引裂き強度を上記範囲に制御するためには、縦延伸倍率及び横延伸倍率のそれぞれの倍率を制御することが好ましい。縦横の延伸倍率の差が小さすぎるとΔNxyを高くすることが難しくなる。また、延伸温度を低く設定することもΔNxyを高くする上では好ましい対応である。
引裂き強度を高くするためには、完全な一軸性フィルムよりも、ΔNxyが本明細書で規定する範囲を満たす条件下で、適度に二軸性が付与されていることが好ましい。
続く熱処理においては、処理温度は100〜250℃が好ましく、より好ましくは180〜245℃である。
基材フィルムの厚みは任意であり、15〜90μmの範囲が好ましく、より好ましくは15〜80μmの範囲である。15μmを下回る厚みの基材フィルムでは、フィルムの力学特性の低下が顕著となり、裂け、破れ等を生じやすくなり、実用性が著しく低下する傾向にある。特に好ましい厚みの下限は20μmである。一方、基材フィルムの厚みの上限が90μmを超えると、円偏光板の厚みが厚くなるため好ましくない。また、厚みが厚いほど半径の小さい繰り返しの折り曲げによって跡が付きやすくなるため、厚みの上限は80μmが好ましく、より好ましい厚みの上限は70μmであり、さらに好ましい厚みの上限は60μmであり、特に好ましい厚みの上限は50μmである。
上記厚み範囲においてもΔNxy、Nz係数及び引裂き強度を本発明の範囲に制御するために、基材フィルムとして用いるポリエステルはポリエチレンタレフタレートが好適である。
また、本発明におけるポリエステルフィルムに紫外線吸収剤を配合する方法としては、公知の方法を組み合わせて採用することができる。例えば、予め混練押出機を用い、乾燥させた紫外線吸収剤とポリマー原料とをブレンドしてマスターバッチを作製しておき、フィルム製膜時に該マスターバッチとポリマー原料とを所定の割合で混合する方法等によってポリエステルフィルムに紫外線吸収剤を配合することができる。
この場合、マスターバッチ中の紫外線吸収剤濃度は、紫外線吸収剤を均一に分散させ、且つ経済的に配合するために5〜30質量%にするのが好ましい。マスターバッチを作製する条件としては、混練押出機を用い、押し出し温度はポリエステル原料の融点以上、290℃以下の温度で1〜15分間押し出すのが好ましい。押し出し温度が290℃を超えると、紫外線吸収剤の減量が大きく、また、マスターバッチの粘度低下が大きくなる。押し出し時間が1分間未満であると、紫外線吸収剤の均一な混合が困難となる。この時、必要に応じて安定剤、色調調整剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
また、本発明ではフィルムを少なくとも3層以上の多層構造とし、フィルムの中間層に紫外線吸収剤を添加することが好ましい。中間層に紫外線吸収剤を含む3層構造のフィルムは、具体的には次のように作製することができる。外層用としてポリエステルのペレットを単独で用い、中間層用として紫外線吸収剤を含有したマスターバッチとポリエステルのペレットとを所定の割合で混合し、乾燥させた後、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、2台以上の押出機、3層のマニホールド又は合流ブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、両外層を構成するフィルム層、及び中間層を構成するフィルム層を積層し、口金から3層のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。なお、本発明では、光学欠点の原因となる、原料のポリエステル中に含まれている異物を除去するため、溶融押し出しの際に高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いる濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズが15μmを超えると、20μm以上の異物の除去が不十分となりやすい。
基材フィルムには、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の接着性を向上させる処理を行ってもよい。
(易接着層)
基材フィルムには、後述する偏光膜又は配向層との接着性を向上させるため、易接着層(易接着層P1)が設けられていてもよい。
易接着層に用いられる樹脂として、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、これらの中でポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、及びアクリル樹脂が好ましい。易接着層は架橋されていることが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ樹脂、オキサゾリン化合物等が挙げられる。また、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等の、配向層又は偏光膜に用いられる樹脂と類似する樹脂を添加することも密着性を向上させるために有用な手段である。
易接着層は、これらの樹脂、及び必要により架橋剤、粒子等を添加した水系塗料として基材フィルムに塗布し、乾燥することにより設けることができる。粒子としては上述の基材に用いられるものが例示される。
易接着層は、延伸済みの基材フィルムにオフラインで設けることができるし、製膜工程中にインラインで設けることも可能である。易接着層は、製膜工程中にインラインで設けることが好ましい。易接着層をインラインで設ける場合には、縦延伸前、又は横延伸前のいずれであってもよい。特に、横延伸直前に前記水系塗料を塗工し、テンターにより予熱及び加熱し、該熱処理工程中に乾燥及び架橋されることによりインラインで易接着層を設けることが好ましい。なお、ロールによる縦延伸直前でインラインコートする場合には、前記水系塗料を塗工した後、縦型乾燥機で乾燥させた後に延伸ロールに導くことが好ましい。
前記水系塗料の塗工量は、0.01〜1.0g/mが好ましく、0.03〜0.5g/mがより好ましい。
(機能性層)
基材フィルムの偏光膜が積層される面とは反対側には、ハードコート層、反射防止層、低反射層、防眩層、帯電防止層等の機能性層が設けられていることも好ましい形態である。
これらの機能性層の厚みは適宜設定することができ、好ましくは0.1〜50μmであり、より好ましくは0.5〜20μmであり、さらに好ましくは1〜10μmである。なお、これらの層は複数設けてもよい。
機能性層を設ける場合、基材フィルムとの間に易接着層(易接着層P2)を設けてもよい。易接着層P2には、上述の易接着層P1で挙げた樹脂、架橋剤等が好適に用いられる。また、易接着層P1と易接着層P2とは同じ組成であってもよいし、異なった組成であってもよい。
易接着層P2もまたインラインで設けることが好ましい。易接着層P1及び易接着層P2は、順次塗工し、乾燥させて形成することができる。また、易接着層P1及び易接着層P2を基材フィルムの両面に同時に塗工することも好ましい形態である。
なお、以下の説明において基材フィルムという場合、易接着層を設けていないものだけでなく、易接着層を設けたものも含まれる。同様に、機能性層を設けたものも基材フィルムに含まれる。
2.偏光子
本発明に用いられる円偏光板では、基材フィルム上に偏光子が設けられている。
偏光子(偏光膜)は、基材フィルム上に直接設けられてもよく、あるいは、基材フィルム上に配向層を設け、その上に設けられていてもよい。なお、本発明において、配向層と偏光膜とを合わせた総称として偏光子と呼ぶことがある。また、基材フィルム上に配向層を設けずに偏光膜を設けた場合には、偏光膜を偏光子と称することがある。
(偏光膜)
偏光膜は、一方向のみに偏光を通過させる機能を有する。偏光膜には、ポリビニルアルコール(PVA)等の延伸膜にヨウ素又は二色性色素を配合させたもの、二色性色素膜又は重合性液晶化合物に二色性色素を配合した塗工膜、ポリエンの延伸膜、ワイヤーグリッド等を、特に制限なく使用することができる。
これらの中でも、PVAにヨウ素を吸着させた偏光膜、及び、重合性液晶化合物に二色性色素を配合した偏光膜が、好ましい例である。
初めに、PVAにヨウ素を吸着させた偏光膜について説明する。
PVAにヨウ素を吸着させた偏光膜は、一般的にはPVAの未延伸フィルムを、ヨウ素を含有する浴に浸漬した後に一軸延伸するか、又は、一軸延伸したフィルムを、ヨウ素を含有する浴に浸漬し、その後ホウ酸浴で架橋処理することによって得ることができる。
偏光膜の厚みは、1〜30μmが好ましく、より好ましくは1.5〜20μmであり、さらに好ましくは2〜15μmである。偏光膜の厚みが1μm未満であると、十分な偏光特性が出せず、また薄すぎて取り扱いが困難になる場合がある。偏光膜の厚みが30μmを超えると、可撓性を確保するための薄型の目的に合致しない。
PVAにヨウ素を吸着させた偏光膜と基材フィルムとを積層する場合、基材フィルムと偏光膜とを貼り合わせることが好ましい。貼り合わせるための接着剤としては、従来から用いられているものを制限なく使用することができる。中でも、PVA系の水性接着剤、紫外線硬化型接着剤などが好ましい例であり、紫外線硬化型接着剤がより好ましい。
このように、PVAにヨウ素を吸着させた偏光膜は、偏光子単体としてのフィルムを用いて、基材フィルムと積層することができる。あるいは、離型性支持基材上にPVAを塗工し、その状態で延伸することにより得られた、離型性支持基材上に偏光子を積層したもの(離型性支持基材積層偏光子)を用いて、基材フィルムに偏光膜を転写する方法により積層することも可能である。この転写により積層する方法も、上述の貼り合わせる方法と同様に、偏光子と基材フィルムとの積層方法として好ましい。この転写方法を用いる場合には、偏光子の厚みは、12μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下がさらに好ましく、6μm以下が特に好ましい。このような非常に薄い偏光子であっても、離型性支持基材があるために取り扱いが容易であり、偏光子を基材フィルムに容易に積層させることができる。このような薄型の偏光子を用いることで、さらに繰り返しの可撓性を確保することができる。なお、偏光子と基材フィルムとを積層させる技術は公知であり、例えば、特開2001−350021号公報、及び特開2009−93074号公報等を参照することができる。
転写により偏光子と基材フィルムとの積層する方法について、具体的に説明する。まず、未延伸又は長手方向とは垂直に一軸延伸された熱可塑性樹脂の離型性支持基材にPVAを塗布し、得られた熱可塑性樹脂の離型性支持基材とPVAとの積層体を長手方向に2〜20倍、好ましくは3〜15倍に延伸する。延伸温度は、好ましくは80〜180℃であり、より好ましくは100〜160℃である。引き続き延伸された積層体を、二色性色素を含有する浴に浸漬し、二色性色素を吸着させる。二色性色素として、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、染色浴としてヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液を使用することが好ましい。引き続きホウ酸の水溶液に浸漬して処理を行い、水洗した後、乾燥させる。なお、二色性色素の吸着前に予備延伸として1.5〜3倍の延伸を行ってもよい。なお、上記の方法は一例であり、延伸前に二色性色素の吸着を行ってもよく、二色性色素の吸着前にホウ酸での処理を行ってもよい。二色性色素を含有する浴内又はホウ酸水溶液の浴中で延伸を行うことも可能である。また、これらの工程を多段階に分けて組み合わせて行ってもよい。
熱可塑性樹脂の離型性支持基材(離型フィルム)としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム等が用いられる。熱可塑性樹脂の離型性支持基材(離型フィルム)には、コロナ処理を行うか、又は、離型コート、易接着コート等を設けることにより、剥離力を調整することができる。
基材フィルムに離型性支持基材積層偏光子の偏光子面を粘着剤又は接着剤で貼り合わせ、その後、離型性支持基材を剥離することで、基材フィルムと偏光子との積層体が得られる。一般的に用いられる粘着剤の厚みは5〜50μmであるのに対し、接着剤は1〜10μmである。特別な装置が不要であるという工程上の面からは粘着剤を用いることが好ましい。より薄型化を求めるのであれば、接着剤を使用することが好ましく、中でも紫外線硬化型接着剤を使用することがより好ましい。
次に、重合性液晶化合物に二色性色素を配合した偏光膜について説明する。
二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。
二色性色素は、300〜700nmの範囲に吸収極大波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素として、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素及びアントラキノン色素等の有機二色性色素が挙げられ、これらの中でも、アゾ色素が好ましい。アゾ色素として、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素及びスチルベンアゾ色素等が挙げられ、これらの中でも、ビスアゾ色素及びトリスアゾ色素が好ましい。二色性色素は単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。色調を調整(無彩色)にするため、2種以上を組み合わせることが好ましく、3種類以上を組み合わせることがより好ましい。特に、3種類以上のアゾ化合物を組み合わせて使用することが好ましい。
好ましいアゾ化合物としては、特開2007−126628号公報、特開2010−168570号公報、特開2013−101328号公報、特開2013−210624号公報等に記載の色素が挙げられる。
二色性色素は、アクリル等のポリマーの側鎖に導入された二色性色素ポリマーであることも好ましい形態である。これらの二色性色素ポリマーとして、特開2016−4055号公報で挙げられるポリマー、特開2014−206682号公報の[化6]〜[化12]の化合物が重合されたポリマー等を例示することができる。
偏光膜中の二色性色素の含有量は、二色性色素の配向を良好にする観点から、偏光膜中、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1.0〜15質量%がさらに好ましく、2.0〜10質量%が特に好ましい。
偏光膜には、膜強度、偏光度、膜均質性等の向上のため、重合性液晶化合物が含まれている。なお、重合性液晶化合物は、膜として重合後のものも含まれる。
重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を示す化合物である。
重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカル、酸等によって重合反応し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1−クロロビニル基、イソプロペニル基、4−ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。これらの中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。液晶性を示す化合物は、サーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でもよく、また、サーモトロピック液晶における、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。
重合性液晶化合物は、より高い偏光特性が得られるという点でスメクチック液晶化合物が好ましく、高次スメクチック液晶化合物がより好ましい。重合性液晶化合物が形成する液晶相が高次スメクチック相であると、配向秩序度のより高い偏光膜を製造することができる。
好ましい重合性液晶化合物の具体例として、例えば、特開2002−308832号公報、特開2007−16207号公報、特開2015−163596号公報、特表2007−510946号公報、特開2013−114131号公報、WO2005/045485号公報、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays−Bas,115, 321−328(1996)等に記載のものが挙げられる。
偏光膜中の重合性液晶化合物の含有割合は、重合性液晶化合物の配向性を高くするという観点から、偏光膜中70〜99.5質量%が好ましく、75〜99質量%がより好ましく、80〜97質量%がさらに好ましく、83〜95質量%が特に好ましい。
重合性液晶化合物及び二色性色素を含む偏光膜は、偏光膜用組成物を塗工して設けることができる。
偏光膜用組成物は、重合性液晶化合物及び二色性色素に加えて、溶剤、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、重合性非液晶化合物、架橋剤等を含んでもよい。
溶剤としては、重合性液晶化合物を溶解するものであれば制限なく用いることができる。溶剤の具体例として、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、セロソルブ等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。
重合開始剤は、重合性液晶化合物を重合させるものであれば限定なく使用することができる。重合開始剤として、光により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤として、例えば、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩、スルホニウム塩等が挙げられる。
増感剤としては、光増感剤が好ましい。光増感剤として、例えば、キサントン化合物、アントラセン化合物、フェノチアジン、ルブレン等が挙げられる。
重合禁止剤として、ハイドロキノン類、カテコール類、チオフェノール類が挙げられる。
レベリング剤として、公知の各種界面活性剤が挙げられる。
重合性非液晶化合物としては、重合性液晶化合物と共重合するものが好ましい。例えば、重合性液晶化合物が(メタ)アクリロイルオキシ基を有する場合には、重合性非液晶化合物として(メタ)アクリレート類が挙げられる。(メタ)アクリレート類は、単官能であっても多官能であってもよい。多官能の(メタ)アクリレート類を用いることで、偏光膜の強度を向上させることができる。重合性非液晶化合物を用いる場合、偏光膜中に1〜15質量%とすることが好ましく、2〜10質量%にすることがより好ましく、3〜7質量%にすることがさらに好ましい。重合性非液晶化合物の含有量が15質量%を超えると、偏光度が低下することがある。
架橋剤としては、重合性液晶化合物、及び重合性非液晶化合物の官能基と反応し得る化合物等が挙げられる。架橋剤として、具体的には、イソシアネート化合物、メラミン、エポキシ樹脂、オキサゾリン化合物等が挙げられる。
偏光膜用組成物を、基材フィルム上又は配向層上に直接塗工した後、必要により乾燥させ、加熱して硬化することにより、偏光膜が設けられる。
塗工方法としては、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法及びアプリケータ法等の塗布法;フレキソ法等の印刷法等の公知の方法を採用することができる。
乾燥は、塗工後の基材フィルムを温風乾燥機、赤外線乾燥機等に導き、好ましくは30〜170℃、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜130℃で行われる。乾燥時間は、0.5〜30分間が好ましく、1〜20分間がより好ましく、2〜10分間がさらに好ましい。
加熱は、偏光膜中の二色性色素及び重合性液晶化合物をより強固に配向させるために行うことができる。加熱温度は、重合性液晶化合物が液晶相を形成する温度範囲にすることが好ましい。
偏光膜用組成物は重合性液晶化合物を含むので、硬化させることが好ましい。硬化方法としては、加熱及び光照射が挙げられ、光照射が好ましい。硬化により二色性色素を配向した状態で固定することができる。硬化は、重合性液晶化合物に液晶相を形成させた状態で行うことが好ましく、液晶相を示す温度で光照射して硬化させてもよい。
光照射における光は、可視光、紫外光、レーザー光等が挙げられる。取り扱いやすい点で、紫外光が好ましい。
照射強度は、重合開始剤又は樹脂(モノマー)の種類又は量で異なり、例えば365nm基準で100〜10000mJ/cmが好ましく、200〜5000mJ/cmがより好ましい。
偏光膜は、偏光膜用組成物を、必要により設けられる配向層上に塗布することで、色素が配向層の配向方向に沿って配向し、その結果、所定方向の偏光透過軸を有することになる。配向層を設けずに偏光膜用組成物を直接基材に塗工した場合は、偏光光を照射して偏光膜用組成物を硬化させることで、偏光膜を配向させることもできる。この際には、基材フィルムの長尺方向に対して斜め方向の偏光光を照射する。さらにその後加熱処理することで、二色性色素を強固に高分子液晶の配向方向に沿って配向させることが好ましい。
偏光膜の厚みは、通常0.1〜5μmであり、好ましくは0.3〜3μmであり、より好ましくは0.5〜2μmである。
重合性液晶化合物及び二色性色素を含む偏光膜と基材フィルムとを積層する場合、基材フィルムに直接偏光膜を設けて積層する方法だけでなく、別の離型性フィルム上に上記の方法に準じて偏光膜を設け、これを基材フィルムに転写する方法も好ましい。離型フィルムとしては、前述の離型性支持基材と積層された離型性支持基材積層偏光子で用いられた離型性支持基材が好ましい例として挙げられ、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム等が、特に好ましい離型フィルムとして挙げられる。離型フィルムには、コロナ処理を行うか、又は、離型コート、易接着コート等を設けることにより、剥離力を調整することができる。
基材フィルムに偏光膜を転写する方法も、前述の離型性支持基材と積層された離型性支持基材積層偏光子での方法と同様である。
(配向層)
本発明で使用される偏光子は、上述したように、偏光膜だけでもよいし、偏光膜と配向層とを合わせた構成であってもよい。
配向層は、偏光膜の配向方向を制御するものであり、配向層を設けることで、より偏光度の高い偏光子を与えることができる。
配向層としては、偏光膜を所望の配向状態にすることができるものであれば、どのような配向層でもよい。配向層に配向状態を与える方法としては、例えば、表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成等が挙げられる。さらに、偏光の光照射により分子を配向させて配向機能を生じさせる光配向層とする方法も好ましい。
以下、ラビング処理配向層及び光配向層の2例について説明する。
ラビング処理配向層
ラビング処理により形成される配向層に用いられるポリマー材料としては、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリイミド及びその誘導体、アクリル樹脂、ポリシロキサン誘導体等が好ましく用いられる。
まず、上記のポリマー材料を含むラビング処理配向層用塗布液を基板フィルム上に塗布した後、加熱乾燥等を行い、ラビング処理前の配向層を得る。配向層用塗布液は、架橋剤を有していてもよい。架橋剤として、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、オキサゾリン基、ビニル基、アクリル基、カルボジイミド基、アルコキシシリル基等を複数個含有する化合物;メラミン化合物等のアミド樹脂;フェノール樹脂等が挙げられる。
ラビング処理配向層用塗布液の溶剤としては、ポリマー材料を溶解するものであれば制限なく用いることができる。溶剤の具体例として、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、セロソルブ等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。
ラビング処理配向層用塗布液の濃度は、ポリマーの種類、製造しようとする配向層の厚み等によって適宜調節することができ、固形分濃度で表して、0.2〜20質量%とすることが好ましく、0.3〜10質量%の範囲がより好ましい。
塗布する方法としては、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法及びアプリケータ法等の塗布法;フレキソ法等の印刷法などの公知の方法が採用される。
加熱乾燥の温度は、基材フィルムにもよるが、PETの場合には30〜170℃の範囲が好ましく、50〜150℃の範囲がより好ましく、70〜130℃の範囲がさらに好ましい。乾燥温度が低すぎると、乾燥時間を長く取る必要が生じ、生産性に劣る場合がある。乾燥温度が高すぎると、基材フィルムの配向状態に影響を及ぼし、リタデーションが低下し、又は基材フィルムの熱収縮が大きくなることから、設計通りの光学機能が達成できない、平面性が悪くなる等の問題が生じる。加熱乾燥時間は、通常0.5〜30分間であり、1〜20分間が好ましく、2〜10分間がより好ましい。
ラビング処理配向層の厚みは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜5μmであることがより好ましく、0.1〜1μmであることがさらに好ましい。
ラビング処理は、一般にはポリマー層の表面を、紙又は布で一定方向に擦ることにより実施することができる。一般的には、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の繊維の起毛布のラビングローラーを用い、配向膜の表面をラビング処理する。
長尺基材フィルムの長手方向に対して斜めの所定方向に透過軸を有する偏光膜を設けるためには、配向層のラビング方向もそれに合った角度にする必要がある。角度の調整は、ラビングローラーと基材フィルムとの角度の調整、基材フィルムの搬送速度及びローラーの回転数の調整等により行うことができる。
なお、基材フィルムに直接ラビング処理を行い、基材フィルム表面に配向層機能を持たせることも可能である。この場合も、本発明の技術範囲に含まれる。
光配向層
光配向層とは、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶剤とを含む塗工液を基材フィルムに塗布し、偏光、好ましくは偏光紫外線を照射することによって配向規制力を付与した配向膜のことをいう。光反応性基とは、光照射により液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、あるいは光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。当該光反応性基の中でも、二量化反応又は光架橋反応を起こすものが、配向性に優れ、偏光膜のスメクチック液晶状態を保持する点で好ましい。以上のような反応を生じ得る光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合が好ましく、C=C結合、C=N結合、N=N結合、及びC=O結合からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基が特に好ましい。
C=C結合を有する光反応性基として、例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ−ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基として、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基として、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基、アゾキシベンゼン等を基本構造とするものが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基として、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ−ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。
これらの中でも、光二量化反応を起こし得る光反応性基が好ましく、シンナモイル基及びカルコン基が、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性又は経時安定性に優れる光配向層が得られやすいため好ましい。さらにいえば、光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。主鎖の構造としては、ポリイミド、ポリアミド、(メタ)アクリル、ポリエステル等が挙げられる。
具体的な配向層として、例えば、特開2006−285197号公報、特開2007−76839号公報、特開2007−138138号公報、特開2007−94071号公報、特開2007−121721号公報、特開2007−140465号公報、特開2007−156439号公報、特開2007−133184号公報、特開2009−109831号公報、特開2002−229039号公報、特開2002−265541号公報、特開2002−317013号公報、特表2003−520878号公報、特表2004−529220号公報、特開2013−33248号公報、特開2015−7702号公報、特開2015−129210号公報等に記載の配向層が挙げられる。
光配向層形成用塗工液の溶剤としては、光反応性基を有するポリマー及びモノマーを溶解するものであれば制限なく用いることができる。溶剤の具体例として、ラビング処理配向層で挙げたものを例示することができる。光配向層形成用塗工液には、必要に応じて、光重合開始剤、重合禁止剤、各種安定剤等を添加することもできる。また、光反応性基を有するポリマー及びモノマー以外のポリマー、光反応性基を有するモノマーと共重合可能な光反応性基を有しないモノマー等を光配向層形成用塗工液に加えてもよい。
光配向層形成用塗工液の濃度、塗布方法、乾燥条件等は、ラビング処理配向層で挙げたものを例示することができる。光配向層の厚みも、ラビング処理配向層の好ましい厚みと同様である。
このようにして得られた配向前の光配向層に、基材フィルムの長手方向に対して、所定の斜め方向の偏光を照射することにより、配向規制力の方向が長尺基材フィルムの長手方向に対して斜め方向である光配向層を得ることができる。
偏光は、配向前の光配向層に直接照射してもよいし、基材フィルムを透過させて照射してもよい。
偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収できる波長領域のものが好ましい。具体的には、波長250〜400nmの範囲の紫外線が好ましい。
偏光の光源は、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArF等の紫外光レーザー等が挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプが好ましい。
偏光は、例えば、前記光源からの光を、偏光子を通過させることにより得ることができる。前記偏光子の偏光角を調整することにより、偏光の方向を調整することができる。前記偏光子として、偏光フィルター;グラントムソン、グランテーラー等の偏光プリズム;ワイヤーグリッドタイプの偏光子が挙げられる。偏光は、実質的に平行光であるのが好ましい。
照射する偏光の角度を調整することにより、光配向層の配向規制力の方向を任意に調整することができる。
照射強度は、重合開始剤又は樹脂(モノマー)の種類又は量で異なり、例えば365nm基準で10〜10000mJ/cmが好ましく、20〜5000mJ/cmがより好ましい。
(偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸の角度)
偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とは略平行であることが好ましい。ここで略平行とは、偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とのなす角度が10度以下であることをいう。偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とのなす角度は、7度以下が好ましく、5度以下がより好ましい。偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とのなす角度が10度を超えると、斜め方向から見た場合に虹斑が見えやすくなる場合がある。
ポリビニルアルコールを延伸して得られた偏光子の場合、一般的には偏光子は長手方向に延伸されており、透過軸方向は直交方向となる。従って、基材フィルムは長手方向に遅相軸を持つもの(ポリエステルの場合、長手方向に主配向軸を持つもの)が生産性の面で好適な組合せである。一方、重合液晶化合物を配向して得られた偏光子の場合、ラビング方向又は紫外線の偏光の方向で偏光子の透過軸方向を調整できるため、基材フィルムは長手方向又は直交方向のどちらに遅相軸を持つものであっても好適な組合せとなる。
偏光子の基材フィルムとは反対側には、次工程以後のキズつきを防止し、粘着剤又は接着剤、位相差層のコート溶剤等による偏光子の変質を防止するため、保護コートを設けてもよい。保護コートとしては、PVA及びその他の樹脂、紫外線硬化性樹脂等を偏光子に悪影響を与えない範囲で適宜選択することができる。保護コートの厚みとしては0.01〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましい。
3.位相差層
本発明に用いられる円偏光板では、偏光子の基材フィルム面とは反対側に位相差層が存在する。偏光子と位相差層との間に自立性フィルムが存在しないか、又は1枚のみ存在する(ここで偏光子と位相差層との間は位相差層自身も含むものとする)状態であることが、本発明の可撓性画像表示装置の特徴の1つである。ここで、自立性フィルムとは、工程上独立してフィルムとして存在する形態のものをいう。
また、ここで言う「位相差層」とは、円偏光板としての機能を持たすためのものであり、具体的には、1/4波長層、1/2波長層、Cプレート層等を意味する。
偏光子と位相差層との間に自立性フィルムが存在しないとは、偏光子上に自立性フィルムではない位相差層が直接積層されていることをいう。ここで言う「直接」とは、偏光子と位相差層との間、及び、位相差層同士の間のすべてにおいて存在する層がないか、又は存在したとしても接着層若しくは粘着層のみであることを意味する。
偏光子と位相差層との間に自立性フィルムが1枚存在するとは、偏光子保護フィルム及びすべての位相差層のうち、1つのみが自立性フィルムであることを意味する。
1/4波長層は、ポリカーボネート、シクロオレフィン等の配向フィルム(自立性フィルム)又はトリアセチルセルロース系(TAC)フィルムの上に、別途準備した、後述する塗工型の1/4波長層を設けた位相差フィルム(自立性フィルム)を貼り合わせることにより得ることができる。しかし、薄型化の面では、偏光子上に直接塗工型1/4波長層を設けることが好ましい。
塗工型1/4波長層とは、1/4波長層自体が塗工により形成された1/4波長層であり、単体として独立した状態にはならないものである。1/4波長層を設ける方法としては、偏光子上に位相差性の化合物を塗工する方法、別途離型性のある基材上に1/4波長層を設け、これを偏光子上に転写する方法等が挙げられる。1/4波長層としては、液晶化合物からなる層であることが好ましい。液晶化合物としては、例えば、棒状の液晶化合物、ポリマー状の液晶化合物、反応性の官能基を有する液晶化合物等が挙げられる。偏光子上に位相差性の化合物を塗工する方法としては、偏光子にラビング処理を行うか、又は、偏光子に上述したような配向層を設けて配向制御力を持たせた上で液晶化合物を塗工することが好ましい。
別途離型性基材上に塗工型1/4波長層を設け、これを偏光子上に転写する方法では、離型性のある基材にラビング処理を行うか、又は、離型性基材に上述したような配向層を設けて配向制御力を持たせた上で液晶化合物(1/4波長層)を塗工することが好ましい。
また、転写する方法としては、離型性のある基材に複屈折性の樹脂を塗工し、基材ごと延伸して1/4波長層とする方法も好ましい。
このようにして得られた転写型の1/4波長層を偏光子に接着剤又は粘着剤を用いて貼り合わせた後、離型性基材を剥離する。特別な装置が不要であるという工程上の面からは粘着剤を用いることが好ましい。薄型化のためには、接着剤、中でも紫外線硬化型接着剤を用いて貼り合わせることが好ましい。
偏光子が1/4波長層の塗工溶媒の影響を受けにくい点で、別途離型性基材上に塗工型の1/4波長層を設け、これを偏光子上に転写する方法が好ましい。
1/4波長層の正面リタデーションは、100〜180nmが好ましく、120〜150nmがより好ましい。
これらの方法、及び位相差層は、例えば、特開2008−149577号公報、特開2002−303722号公報、WO2006/100830号公報、特開2015−64418号公報等を参考とすることができる。
また、1/4波長層単独では可視光の広い波長領域で1/4波長とならず、着色する場合がある。このような場合には、さらに1/2波長層を設けてもよい。この場合、偏光子と1/4波長層との間に1/2波長層を設けることが好ましい。
1/2波長層の好ましい素材、形態、製造方法、積層方法等は、上述の1/4波長層と同様である。
1/2波長層の正面リタデーションは、200〜360nmが好ましく、240〜300nmがより好ましい。
位相差層として1/4波長層のみを用いる場合、1/4波長層の配向軸(遅相軸)と偏光子の透過軸との角度は35〜55度が好ましく、40〜50度がより好ましく、42〜48度がさらに好ましい。
位相差層として、1/4波長層及び1/2波長層を組み合わせて用いる場合、1/2波長層の配向軸(遅相軸)と偏光子の透過軸との角度(θ)は5〜20度が好ましく、7〜17度がより好ましい。1/2波長層の配向軸(遅相軸)と1/4波長層の配向軸(遅相軸)との角度は、2θ+45度±10度の範囲が好ましく、2θ+45度±5度の範囲がより好ましく、2θ+45度±3度の範囲がさらに好ましい。
これらの角度は、配向フィルムを貼り合わせる場合には、貼り合わせの角度、配向フィルムの延伸方向等で調整することができる。
塗工型の1/4波長層及び1/2波長層の場合は、ラビングの角度、偏光紫外線の照射角度等で制御することができる。
基材上に塗工型1/4波長層を設け、これを偏光子上に転写する方法では、ロールツーロールで貼り合わせた場合に所定の角度になるように、ラビングの角度又は偏光紫外線の照射角度で制御しておくことが好ましい。
また、配向フィルムを用いる場合、及び、複屈折性の樹脂を基材フィルムに塗工して基材ごと延伸する場合には、ロールツーロールで貼り合わせた場合に所定の角度になるよう、斜め方向に延伸することが好ましい。
さらに、斜めから見た場合の着色の変化等を低減するために、1/4波長層の上にCプレート層を設けることも好ましい形態である。Cプレート層には、1/4波長層又は1/2波長層の特性に合わせ、正又は負のCプレート層が用いられる。Cプレート層は液晶化合物層であることが好ましい。Cプレート層は、直接1/4波長層の上にCプレート層となる塗液を塗布して設けてもよく、又は、別途作成したCプレート層を転写してもよい。
これらの積層方法として、様々な方法を採用することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。
・偏光子上に転写により1/2波長層を設け、さらにその上に1/4波長層を転写により設ける方法。
・離型フィルム上に1/4波長層及び1/2波長層をこの順に設け、これを偏光子上に転写する方法。
・塗布により偏光子上に1/2波長層を設け、1/4波長層は転写により設ける方法。
・フィルム状の1/2波長層を準備し、この上に1/4波長層を塗布又は転写により設け、これを偏光子上に貼り合わせる方法。
また、Cプレート層を積層する場合も、様々な方法を採用することができる。例えば、偏光子上に設けられた1/4波長層の上にCプレート層を塗布又は転写により設ける方法、転写又は貼り合わせる1/4波長層に予めCプレート層を積層しておく方法等が挙げられる。
本発明では、偏光子から1/4波長層までの間(1/4波長層を含む)、Cプレート層が存在する場合には偏光子からCプレート層までのすべての層(Cプレート層を含む)が塗工層であることが好ましい。これは、偏光子の基材フィルムとは反対側には自立性フィルムが存在しないということである。具体的には、偏光子の基材フィルムとは反対側には、接着剤層、粘着剤層、保護コート層、配向層、及び塗工型の位相差層の任意の組合せのみが存在するということである。このような構成とすることにより円偏光板を薄型化することができる。
偏光子と1/4波長層との間の具体的な好ましい積層例としては、
偏光子/粘着剤層/1/4波長層、
偏光子/保護コート層/粘着剤層/1/4波長層、
偏光子/1/2波長層/粘着剤層/1/4波長層、
偏光子/粘着剤層/1/2波長層/粘着剤層/1/4波長層、
偏光子/保護コート層/1/2波長層/粘着剤層/1/4波長層、
偏光子/保護コート層/粘着剤層/1/2波長層/粘着剤層/1/4波長層等が挙げられる。
なお、上記で粘着剤層は接着剤層であってもよい。また、1/4波長層、及び1/2波長層には、そのいずれかの側に配向層を含むことができる。
粘着剤層としては、ゴム系、アクリル系、ウレタン系、オレフィン系、シリコーン系等の粘着剤が制限なく用いられる。これらの中でもアクリル系の粘着剤が好ましい。粘着剤は、対象物、例えば偏光板の偏光子面に塗布することができる。基材レスの光学用透明粘着剤(離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム)の片面の離型フィルムを剥離した後、偏光子面に貼り合わせることにより粘着剤層を設ける方法が好ましい。接着剤としては、紫外線硬化型、ウレタン系、及びエポキシ系のものが好ましく用いられる。
接着剤層又は粘着剤層は、偏光子、保護コート層、塗工型の位相差層、又は画像表示セルの貼り合わせに用いられる。
なお、上記では、位相差層(1/4波長層又は1/2波長層)は、基材フィルムと偏光子との積層体に設けた後に対象物に貼り合わせる例を挙げたが、対象物に予め位相差層(1/4波長層又は1/2波長層)を設けておき、これに基材フィルムと偏光子との積層体を貼り合わせてもよい。Cプレート層を設ける場合も同様である。
このようにして得られた円偏光板の厚みは、100μm以下であることが好ましく、80μm以下がより好ましく、70μm以下がさらに好ましく、60μm以下が特に好ましい。
B.画像表示セル
本発明の可撓性画像表示装置は、画像表示セルよりも視認側に、前述の円偏光板を備えている。画像表示セルとして、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(EL)セル、無機ELセル等の可撓性の画像表示セルを特に制限なく用いることができる。これらの中でも有機ELセルが薄型であり、可撓性に優れる点で好ましい。画像表示セルと円偏光板とは粘着剤で貼り合わされていることが好ましい。
画像表示装置としては、携帯時にはV字状、Z字状、W字状、観音開き状等に折りたたみ可能な画像表示装置(折りたたみ型画像表示装置)、又は、ロール状に巻き取り可能な画像表示装置(巻き取り型画像表示装置)のいずれにも好ましく用いられる。
折りたたみ型画像表示装置が、折りたたみ内面側に表示部を有する場合、折りたたまれた状態での円偏光板の屈曲半径が小さくなる。このような画像表示装置の場合は、基材フィルムの主配向方向を折りたたみ方向(折りたたむ動作の方向)と垂直方向に配置することで、繰り返しの折りたたみ操作による折りたたみ跡の発生を効果的に低減させることができる。なお、垂直方向では、基材フィルムの主配向方向と折りたたみ方向との角度が75〜105度であることが好ましく、80〜100度がより好ましく、83〜97度がさらに好ましい。
折りたたみ跡の発生を低減できる理由として、繰り返しの折りたたみ操作により基材フィルムが伸ばされるが、伸ばされる方向が分子の主配向方向と垂直であるため、基材フィルムが伸びやすくなっているためと考えられる。本発明の可撓性画像表示装置は、屈曲半径が5mm以下、さらには4mm以下、特には3mmとなる折りたたみ型画像表示装置に好適に用いることができる。
折りたたみ型画像表示装置が、該装置の折りたたみ外面側に表示部を有する場合、若しくは内面であっても屈曲半径が小さくならない場合、又は、巻き取り型画像表示装置の場合には、基材フィルムの主配向方向は特に制限なく用いることができる。しかし、このような場合、基材フィルムの主配向方向を折りたたみ方向と平行にすることも好ましい形態である。平行にすることにより、広げたときの画像表示装置全体の平面性が良くなる傾向にある。この場合、基材フィルムの主配向方向と折りたたみ方向との角度が15度以下であることが好ましく、10度以下がより好ましく、7度以下がさらに好ましい。
本発明の可撓性画像表示装置は、繰り返しの曲げ又は高温状態に放置した場合でも剥がれることがなく、折り跡が付きにくく、視認性に優れる。さらに円偏光板の基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合には、耐透湿性、寸法安定性、機械的強度、及び化学的安定性に優れた円偏光板を有する画像表示装置を提供することができる。
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
(1)フィルムの遅相軸及び進相軸方向の評価
フィルムの軸方向の評価は、分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計)で測定した。
(2)ΔNxy及びリタデーション(Re)
リタデーションとは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△Nxy=|nx−ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△Nxy×d)で定義されるパラメーターであり、光学的等方性及び異方性を示す尺度である。二軸の屈折率の異方性(△Nxy)は、以下の方法により求めた。分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計)を用いて、フィルムの遅相軸方向を求め、遅相軸方向が測定用サンプル長辺と平行になるように、4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(遅相軸方向の屈折率:nx,面内で遅相軸方向と直交する方向の屈折率(即ち進相軸方向の屈折率):ny)、及び厚さ方向の屈折率(nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR−4T、測定波長589nm)によって求め、前記二軸の屈折率の差の絶対値(|nx−ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)とした。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、リタデーション(Re)を求めた。
(3)Nz係数
上記(2)でアッベ屈折率計によって測定したnx、ny、及びnzの値を|nx−nz|/|nx−ny|に代入してNz係数を求めた。
(4)虹斑観察
市販の有機ELディスプレイ(LG社製有機ELテレビ C6P 55インチ)から、円偏光板(有機EL素子より視認側に配置された円偏光板)を除去し、代わりに、以下で得られた偏光板をPETフィルムが視認側に配置されるよう、有機ELディスプレイ内に配置した。有機ELディスプレイの正面、及び斜め方向から目視観察し、虹斑の発生の有無について、以下のように判定した。
○:いずれの方向から観察しても虹斑は観察されない。
△:法線方向に対して60度以上の斜め方向から観察した時に、薄く虹斑が観察できる。
×:法線方向に対して60度以上の斜め方向から観察した時に、虹斑が観察できる。
(5)引裂き強度
島津製作所製オートグラフ(AG−X plus)を用いて、直角形引裂き法(JIS K−7128−3)に従い、各フィルムについてフィルム厚み当たりの引裂き強度(N/mm)を測定した。フィルムの配向主軸(遅相軸)方向に対して平行と垂直の2方向(すなわち遅相軸方向、進相軸方向の2方向)について引裂き強度を測定し、小さいほうの数値を引裂き強度として表1に記載した。なお、配向主軸方向(遅相軸方向)の測定は分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA−6004型分子配向計)で測定した。
(6)r=3耐屈曲性
50mm×100mmの大きさの円偏光板サンプルを用意し、無負荷U字伸縮試験機(ユアサシステム機器社製、DLDMLH−FS)を用いて、屈曲半径を3mmに設定し、1回/秒の速度で、10万回屈曲させた。その際、サンプルは長辺側両端部10mmの位置を固定して、屈曲する部位は50mm×80mmとし、屈曲の内側が基材フィルム側、基材フィルムの遅相軸と折り曲げ方向が直交となるようにした。屈曲処理終了後、サンプルの屈曲内側を下にして平面に置き、目視検査を行った。評価基準は以下のとおりである。
◎:サンプルの変形を確認できない。
○:サンプルの変形があるが、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが5mm未満である。
×:サンプルに折り跡があるか、又は、水平に置いた際、浮き上がり最大高さが5mm以上である。
(7)r=5耐屈曲性
屈曲半径を5mmに設定し、屈曲の外側が基材フィルム側、基材フィルムの遅相軸と折り曲げ方向が平行となるようにした以外は、r=3耐屈曲性試験と同様に行った。
(8)耐熱屈曲性
50mm×100mmの大きさのサンプルを、基材フィルム面を内側にして屈曲半径3mmとなるように長辺の方向に180度に折り曲げて治具で固定し、温度60℃、RH65%で3時間放置した。その後室温で固定具を外し、1時間後の状態を観察した。基材フィルムの遅相軸と折り曲げ方向は直交となるようにした。評価基準は以下のとおりである。
◎:ほぼ平面に戻った
○:少し折れ曲がった状態であった(20度未満)
×:折れ曲がった状態となった(20度以上)
(9)基材フィルム及び円偏光板の厚み
市販のデジタル厚み計で基材フィルム及び円偏光板の厚みを測定した。
(10)塗工による各層の厚み
塗工による各層の厚みは、同じ塗工条件でPETフィルム(必要により易接着処理を施したPET)上に塗工したものをエポキシ樹脂で包埋し、切片を切り出し、顕微鏡で観察した。顕微鏡は厚みに応じて、光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡、又は走査型電子顕微鏡を用いた。
<易接着層成分の製造>
(ポリエステル樹脂の重合)
攪拌機、温度計、及び部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート194.2質量部、ジメチルイソフタレート184.5質量部、ジメチル−5−ナトリウムスルホイソフタレート14.8質量部、ジエチレングリコール233.5質量部、エチレングリコール136.6質量部、及びテトラ−n−ブチルチタネート0.2質量部を仕込み、160℃から220℃の温度で4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで混合物を255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。共重合ポリエステル樹脂の還元粘度を測定したところ、0.70dl/gであった。なお、還元粘度は、樹脂0.1gに対し、溶媒としてフェノール(60質量%)と1,1,2,2−テトラクロロエタン(40質量%)との混合溶媒25mLを用い、30℃で測定した値である。DSCによるガラス転移温度は40℃であった。
(ポリエステル水分散体の調製)
攪拌機、温度計及び還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂30質量部、及びエチレングリコールn−ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱しながら攪拌することにより樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、ポリエステル溶液を攪拌しつつ、水55質量部を徐々に添加した。添加終了後、混合液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分30質量%の乳白色のポリエステル水分散体を得た。
(ポリビニルアルコール水溶液の調製)
攪拌機及び温度計を備えた容器に、水90質量部を入れ、攪拌しながらポリビニルアルコール樹脂(クラレ製、重合度500及びケン化度74%)10質量部を徐々に添加した。添加終了後、混合液を攪拌しながら、95℃まで加熱し、樹脂を溶解させた。樹脂が溶解した後、混合液を攪拌しながら室温まで冷却して、固形分10質量%のポリビニルアルコール水溶液を得た。
(易接着層P1で用いるブロックポリイソシアネート架橋剤の重合)
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)100質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部、及びポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量750)30質量部を仕込み、窒素雰囲気下、70℃で4時間保持した。その後、反応液の温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム47質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、固形分75質量%のブロックポリイソシアネート水分散液を得た。
(易接着層P1用塗工液の調製)
下記の原料を混合して塗布液を作成した。
水 40.61質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散体 11.67質量%
ポリビニルアルコール水溶液 15.00質量%
ブロックイソシアネート系架橋剤 0.67質量%
粒子(平均粒径100nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%) 1.25質量%
触媒(有機スズ系化合物 固形分濃度14質量%) 0.30質量%
界面活性剤(シリコン系、固形分濃度10質量%) 0.50質量%
(易接着層P2で用いるウレタン樹脂の重合)
脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするウレタン樹脂を次の手順で作製した。撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート43.75質量部、ジメチロールブタン酸12.85質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール153.41質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液の温度を40℃まで下げた後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整し、水を2000min−1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して分散させた。その後、減圧下で、混合液からアセトン及び水の一部を除去することにより、固形分35%の水溶性ポリウレタン樹脂を調製した。得られた、脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするポリウレタン樹脂のガラス転移点温度は−30℃であった。
(易接着層P2で用いるオキサゾリン系架橋剤の重合)
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロート、及び攪拌機を備えたフラスコに、水性媒体としてのイオン交換水58質量部とイソプロパノール58質量部との混合物、及び、重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩)4質量部を投入した。一方、滴下ロートに、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体としての2−イソプロペニル−2−オキサゾリン16質量部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(エチレングリコールの平均付加モル数:9モル、新中村化学製)32質量部、及びメタクリル酸メチル32質量部の混合物を投入し、窒素雰囲気下、70℃において1時間にわたり滴下した。滴下終了後、反応溶液を9時間攪拌し、冷却することで固形分濃度40質量%のオキサゾリン基を有する水溶性樹脂を得た。
(易接着層P2の塗布液の調製)
下記の原料を混合し、機能性層との接着性に優れた塗布層を形成するための塗布液を作成した。
水 55.62質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂 11.29質量%
オキサゾリン系架橋剤水溶液 2.26質量%
粒子(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%) 0.71質量%
粒子(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%) 0.07質量%
界面活性剤(シリコン系、固形分濃度100質量%) 0.05質量%
<基材フィルム用ポリエステル樹脂の製造>
(製造例1−ポリエステルX)
エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸86.4質量部及びエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモン0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却及び固化させ、ペレット状にカットした。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(X)の極限粘度(固有粘度)は0.73dL/gであり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった(以後、ポリエチレンテレフタレート樹脂(X)をPET(X)と略す)。
(製造例2−ポリエステルY)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)10質量部、及びPET(X)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤を含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(Y)を得た。(以後、ポリエチレンテレフタレート樹脂(Y)をPET(Y)と略す。)
(基材フィルム1の製造)
基材フィルム中間層用原料として、粒子を含有しないPET(X)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(Y)樹脂ペレット10質量部とを、135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(X)を常法により乾燥して押出機1(外層I層及び外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却及び固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、及びIII層の厚みの比が10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
次いで、リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの片面にP1、対面にP2塗布液をいずれも乾燥後の塗布量が0.12g/mになるように塗布した後、乾燥機に導き、80℃で20秒間乾燥させた。
この塗布層を形成した未延伸フィルムを同時二軸延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、走行方向に6.5倍、幅方向に2.2倍延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃で30秒間処理し、フィルム厚み38μmの二軸配向PETフィルムを得た。これをロール状に巻き取り、フィルムロールとした。得られたフィルムの遅相軸は走行方向から3°以内であった。
(基材フィルム2の製造)
未延伸フィルムの厚みを変更し、上記基材フィルム1の製造方法と同様の方法で、走行方向及び幅方向に延伸して、フィルム厚み50μmの二軸配向PETフィルムを得た。これをロール状に巻き取り、フィルムロールとした。得られたフィルムの遅相軸は走行方向から3°以内であった。
(基材フィルム3の製造)
未延伸フィルムの厚みを変更し、上記基材フィルム1の製造方法と同様の方法で、走行方向及び幅方向に延伸して、フィルム厚み80μmの二軸配向PETフィルムを得た。これをロール状に巻き取り、フィルムロールとした。得られたフィルムの遅相軸は走行方向から3°以内であった。
(基材フィルム4の製造)
未延伸フィルムの厚みを変更し、上記基材フィルム1の製造方法と同様の方法で、走行方向に2.2倍及び幅方向に6.0倍に延伸して、フィルム厚み38μmの二軸配向PETフィルムを得た。これをロール状に巻き取り、フィルムロールとした。得られたフィルムの遅相軸は走行方向から5°以内であった。
(基材フィルム5の製造)
上記基材フィルム1の製造方法と同様に未延伸フィルムを作り、逐次二軸延伸機にて周速差のあるロール群で走行行方向に6.5倍延伸し、その後、テンター内で幅方向に2.2倍延伸し、フィルム厚み38μmの二軸配向PETフィルムを得た。これをロール状に巻き取り、フィルムロールとした。得られたフィルムの遅相軸は走行方向から5°以内であった。
(基材フィルム6の製造)
厚みを変更した以外は、上記基材フィルム1の製造方法と同様に未延伸フィルムを作り、テンター内で幅方向に3.6倍延伸し、フィルム厚み35μmの二軸配向PETフィルムを得た。これをロール状に巻き取り、フィルムロールとした。得られたフィルムの遅相軸は走行方向から5°以内であった。
(基材フィルム7の製造)
厚みを変更した以外は、上記基材フィルム1の製造方法と同様に未延伸フィルムを作り、逐次二軸延伸機にて周速差のあるロール群で走行行方向に3.8倍延伸し、その後、テンター内では幅方向に延伸せずに熱固定のみ行い、フィルム厚み38μmの二軸配向PETフィルムを得た。これをロール状に巻き取り、フィルムロールとした。得られたフィルムの遅相軸は走行方向から5°以内であった。
(基材フィルム8の製造)
未延伸フィルムの厚みを変更し、上記基材フィルム1の製造方法と同様の方法で、走行方向に4.5倍及び幅方向に2.5倍に延伸して、フィルム厚み38μmの二軸配向PETフィルムを得た。これをロール状に巻き取り、フィルムロールとした。得られたフィルムの遅相軸は走行方向から5°以内であった。
得られた基材フィルム1〜8の特性を表1に示す。
(ハードコート層の積層)
ウレタンアクリレート系ハードコート剤(荒川化学工業社製、ビームセット(登録商標)577、固形分濃度100%)95質量部、光重合開始剤(BASFジャパン社製、イルガキュア(登録商標)184、固形分濃度100%)5質量部、及びレベリング剤(ビックケミージャパン社製、BYK307、固形分濃度100%)0.1質量部を混合し、トルエン/MEK=1/1の溶媒で希釈して、濃度40%の塗布液を調製した。
基材フィルムの易接着層P2面にマイヤーバーを用いて、ハードコート塗布液を乾燥後の膜厚が5.0μmになるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射した(積算光量200mJ/cm)。
(偏光子の積層)
基材フィルムに偏光子を設ける方法として、以下の4種類の方法を行った。
(A)基材フィルムにラビング配向層を設け、その上に液晶化合物と二色性色素とからなる偏光膜を設ける方法(偏光子積層方法A)
(B)基材フィルムに光配向層を設け、その上に液晶化合物と二色性色素とからなる偏光膜を設ける方法(偏光子積層方法B)
(C)熱可塑性基材上にPVA/ヨウ素からなる偏光膜を設けた後、これを基材フィルムに転写する方法(偏光子積層方法C)
(D)PVA/ヨウ素からなる偏光膜を作成し、これを基材フィルムと貼り合わせる方法(偏光子積層方法D)
それぞれの方法の詳細を以下に説明する。
偏光子積層方法A
(ラビング配向層の形成)
基材フィルムの易接着層P1面に、バーコーターを用いて下記組成のラビング配向層用塗料を塗布し、120℃で3分間乾燥し、厚み200nmの膜を形成した。引き続き、得られた膜の表面をナイロン製の起毛布が巻かれたラビングロールで処理し、ラビング配向層を積層した基材フィルムを得た。ラビング方向はフィルムの方向に対して0度になるようにした。
ラビング配向層用塗料
完全ケン化型ポリビニルアルコール 分子量800 2質量部
イオン交換水 100質量部
(重合性液晶化合物の合成)
特表2007−510946号公報の段落[0134]の記載、及び、Lub et al.Recl.Trav.Chim.Pays−Bas,115,321−328(1996)を参考にして、下記式(1)で表される化合物(イ)、及び下記式(2)で表される化合物(ロ)を合成した。
特開昭63−301850号公報の実施例1を参考にして、下記式(3)で表される色素(ハ)を合成した。
特公平5−49710号公報の実施例2を参考にして、下記式(4)で表される色素(ニ)を合成した。
特公昭63−1357号公報の一般式(1)の化合物の製造方法を参考にして、下記式(5)で表される色素(ホ)を合成した。
(偏光膜の形成)
化合物(イ)75質量部、化合物(ロ)25質量部、色素(ハ)2.5質量部、色素(ニ2.5質量部、色素(ホ)2.5質量部、イルガキュア(登録商標)369E(BASF社製)6質量部、及びオルトキシレン250質量部からなる偏光膜用塗料を、ラビング配向層を積層した基材フィルム上にバーコーターを用いて塗布し、110℃で3分間乾燥し、厚み2μmの膜を形成した。引き続きUV光を照射し、基材フィルム上に偏光子を設けた。
偏光子積層方法B
(光配向層用塗料の合成)
特開2013−33248号公報の実施例1、実施例2、及び実施例3の記載に基づき、下記式(6)で表されるポリマー(ヘ)のシクロペンタノンへの5質量%溶液を製造した。
(光配向層の形成)
基材フィルムの片面に上記組成の光配向層用塗料を、バーコーターを用いて塗布し、80℃で1分間乾燥し、厚み150nmの膜を形成した。引き続き、偏光UV光を照射し、光配向層を積層した基材フィルムを得た。UV光の偏光方向はフィルムの長尺方向に対して0度とした。
前述の偏光膜用塗料を光配向層上に塗布し、同様にして配向層を積層した基材フィルム上に偏光層を設けた。
偏光子積層方法C
(基材積層偏光子の製造)
熱可塑性樹脂基材としてポリエステルXを用いて厚み100μmの未延伸フィルムを作成し、この未延伸フィルムの片面に、重合度2400、ケン化度99.9モル%のポリビニルアルコールの水溶液を塗布及び乾燥して、PVA層を形成した。
得られた積層体を、120℃で周速の異なるロール間で長手方向に2倍に延伸して巻き取った。次に、得られた積層体を4%のホウ酸水溶液で30秒間の処理を行った後、ヨウ素(0.2%)とヨウ化カリウム(1%)との混合水溶液に60秒間浸漬して染色し、引き続き、ヨウ化カリウム(3%)とホウ酸(3%)との混合水溶液で30秒間処理した。
さらに、この積層体を72℃のホウ酸(4%)とヨウ化カリウム(5%)との混合水溶液中で長手方向に一軸延伸を行った。延伸後の積層体を、引き続き、4%ヨウ化カリウム水溶液で洗浄し、エアナイフで水溶液を除去した後に80℃のオーブンで乾燥し、両端部をスリットして巻き取り、幅30cm、長さ1000mの基材積層偏光子1を得た。合計の延伸倍率は6.5倍で、偏光子の厚みは5μmであった。なお、厚みは基材積層偏光子1をエポキシ樹脂に包埋して切片を切り出し、光学顕微鏡で観察して読み取った。
(偏光層の積層)
基材フィルムに紫外線硬化型のアクリル系接着剤を塗工した後、基材積層偏光子1の偏光子面を貼り合わせ、基材積層偏光子1側から紫外線を照射して、基材フィルムに基材積層偏光子1を積層した。その後、熱可塑性樹脂基材を剥離し、基材フィルム上に偏光子を設けた。
偏光子積層方法D
(単層偏光子の製造)
ケン化度99.9%のポリビニルアルコール樹脂フィルムを、周速差のあるロールに導き、100℃で3倍に一軸延伸を行った。得られた延伸ポリビニルアルコール延伸フィルムを、ヨウ化カリウム(0.3%)とヨウ素(0.05%)との混合水溶液中で染色した後、72℃のホウ酸10%水溶液中で、1.8倍に一軸延伸した。その後、イオン交換水で水洗処理を行い、さらに6%ヨウ化カリウム水溶液に浸漬し、エアナイフで水溶液を除去した後、45℃で乾燥して偏光子を得た。偏光子の厚みは18μmであった。
(偏光子の積層)
基材フィルムに紫外線硬化型のアクリル系接着剤を塗工した後、単層偏光子を貼り合わせ、基材積層偏光子側から紫外線を照射して、基材フィルムに偏光子を設けた。
(位相差層の積層)
偏光子上に位相差層を設ける方法として、以下の4種類の方法を行った。
(F)偏光子上に1/2波長層及び1/4波長層を塗工により設ける方法(位相差層の積層方法F)
(G)離型フィルム上に設けた1/2波長層を偏光子上に転写し、さらにこの上に離型フィルム上に設けた1/4波長層を転写する方法(位相差層の積層方法G)
(H)離型フィルム上に1/4波長層及び1/2波長層を設け、これを偏光子上に転写する方法(位相差層の積層方法H)
(I)1/4波長層上に1/2波長層を塗工により設け、これの1/2波長層面を偏光子に貼り合わせる方法(位相差層の積層方法I)
それぞれの方法の詳細を以下に説明する。
位相差層の積層方法F
基材フィルムに設けた偏光子の上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型の2質量%水溶液(界面活性剤0.2%)を塗布し、乾燥して、厚み約100nmのポリビニルアルコール膜を得た。続いて、ポリビニルアルコール膜の表面にラビング処理を施した。ラビング処理の角度は偏光子の吸収軸に対して15度になるように行った。
引き続き、ラビング処理を施した面に、以下の組成を有する位相差層形成用溶液をバーコート法により塗布した。塗布した膜を乾燥し、配向処理を行った後、紫外線を照射して硬化させ、1/2波長層を作成した。
位相差層形成用溶液
LC242(BASF社製)75質量部
下記化合物 20質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 5質量部
イルガキュア379 3質量部
界面活性剤 0.1質量部
メチルエチルケトン 250質量部
引き続き、1/2波長層上に同様にしてポリビニルアルコール膜を設け、ラビング処理を行った。ラビング処理の角度は偏光子の吸収軸に対して73度になるように行った。位相差層形成用溶液をバーコート法により塗布し、乾燥させ、配向処理を行った後、紫外線を照射して硬化させた。バーコートにおいては1/4波長層となるよう、厚みを調整した。
位相差層の積層方法G
厚み50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをラビング処理した。ラビング処理面に、位相差層形成用溶液をバーコート法により塗布し、乾燥させ、配向処理を行った後、紫外線を照射して硬化させ、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に1/2波長層を設けた。次に、光学用透明粘着剤シートの軽剥離ライナーを剥がし、粘着剤面と1/2波長層面とを貼り合わせ、その後、光学用透明粘着剤シートの重剥離ライナーを剥がし、基材フィルムに設けた偏光子と貼り合わせた。その後、二軸延伸PETフィルムを剥がした。貼り合わせは偏光子の吸収軸に対して15度となるように行った。
同様にして二軸延伸PETフィルム上に1/4波長層を設け、光学用透明粘着剤シートを用いて、先の1/2波長層に貼り合わせた。貼り合わせは偏光子の吸収軸に対して75度となるように行った。
位相差層の積層方法H
厚み50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをラビング処理した。ラビング処理面に、位相差層形成用溶液をバーコート法により塗布し、乾燥させ、配向処理を行った後、紫外線を照射して硬化させ、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に1/4波長層を設けた。さらに、1/4波長層上にポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型の2質量%水溶液(界面活性剤0.2%)を塗布し、乾燥し、厚み約100nmのポリビニルアルコール膜を得た。続いて、ポリビニルアルコール膜の表面にラビング処理を施した。PVAのラビング処理面に、位相差層形成用溶液をバーコート法により塗布し、乾燥させ、配向処理を行った後、紫外線を照射して硬化させ、1/2波長層を設けた。1/4波長層を設ける際のラビング方向と1/2波長層を設ける際のラビング方向との角度は60度となるように行った。光学用透明粘着剤シートの軽剥離ライナーを剥がし、粘着剤面と1/2波長層面を貼り合わせ、その後、光学用透明粘着剤シートの重剥離ライナーを剥がし、基材フィルムに設けた偏光子と貼り合わせた。その後、二軸延伸PETフィルムを剥がした。貼り合わせは偏光子の吸収軸と、1/2波長層のラビング方向が15度、1/4波長層のラビング方向が75度となるようにした。
位相差層の積層方法I
長さ方向に遅相軸を持つ1/4波長フィルムのロールから1/4波長フィルムを巻き出して必要な長さに切り取り、表面をラビング処理した。このラビング処理面に位相差層の積層方法Fと同様の方法で、1/2波長層を設けた。一方、光学用透明粘着剤シートの軽剥離ライナーを剥がし、粘着剤面と1/2波長層とを貼り合わせ、その後、光学用透明粘着剤シートの重剥離ライナーを剥がし、基材フィルムに設けた偏光子と貼り合わせた。なお、1/4波長フィルムはプロピレン−エチレンランダム共重合体(エチレン含有率5%)をシート状に押出し、長さ方向にロールで延伸することにより製造したもの(厚み20μm)を用いた。貼り合わせは、偏光子の吸収軸と、1/2波長層のラビング方向が15度、1/4波長層の遅相軸方向が75度となるようにした。
なお、上記の塗工による位相差層の厚みは、1/4波長層で1.2μm、1/2波長層で2.3μmであった。接着剤層の厚みは3μmであった。
実施例1〜23
表2に示した基材フィルムに、表2に示した方法で偏光子及び位相差層を設けて円偏光板を作成した。
比較例1
基材フィルムに偏光子積層方法Dで偏光子を積層した後、偏光子上に厚み80μmのTACフィルムを、PVA接着剤を用いて接着し、偏光板を作成した。さらにこの偏光板のTACフィルム上に位相差層の積層方法Iで位相差層を設けて円偏光板を作成した。
比較例2
基材フィルムに偏光子積層方法Aで偏光子を積層した後、偏光子上に1/2波長フィルムを積層し、さらにその上に1/4波長フィルムを積層した。1/2波長フィルムは1/4波長フィルムの厚みを2倍にしたものを用い、それぞれの積層は位相差層の積層方法Iに準じて行った。1/2波長板は偏光子の吸収軸に対して15度となるように、1/4波長層は偏光子の吸収軸に対して75度となるようにした。
比較例3〜5
表2に示した基材フィルムに、表2に示した方法で偏光子及び位相差層を設けて円偏光板を作成した。
実施例1〜23、及び比較例1〜5で得られた円偏光板の特性を表2に示す。
作成した円偏光板を、25μm厚の粘着層を介して有機ELモジュールに貼合し、屈曲半径に相当する半径が3mmの全体の中央部で二つ折りにできるスマートフォンタイプの折りたたみ型ディスプレイを作成した。円偏光板は折りたたみ部分を介して連続した1枚のディスプレイの表面に配され、ハードコート層をそのディスプレイの表面に位置し、基材フィルムの遅相軸が折りたたみ方向と直交するように配されている。
各実施例の円偏光板を用いたものは、中央部で二つ折りに折りたたんで携帯できるスマートフォンとして動作及び視認性を満足するものであり、虹斑も観察されなかった。
本発明の可撓性画像表示装置は、繰り返しの曲げ又は高温状態に放置した場合でも剥がれることがなく、折り跡が付きにくく、視認性に優れる。さらに円偏光板の基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合には、耐透湿性、寸法安定性、機械的強度、及び化学的安定性に優れた円偏光板を有する画像表示装置を提供することができる。

Claims (9)

  1. 画像表示セル、及び該画像表示セルよりも視認側に配置される円偏光板を備えた可撓性の画像表示装置であって、
    前記円偏光板は、位相差層、偏光子、及び基材フィルムを有し、
    (1)基材フィルムの進相軸方向の屈折率nyが1.568以上1.63以下であり、(2)偏光子と位相差層との間に自立性フィルムが存在しないか、又は1枚のみ存在し(ここで偏光子と位相差層との間は位相差層自身も含むものとする)、及び
    (3)偏光子の透過軸と基材フィルムの進相軸とが略平行である
    可撓性画像表示装置。
  2. 前記基材フィルムの面内複屈折ΔNxyが0.06以上0.2以下である、請求項1に記載の可撓性画像表示装置。
  3. 前記基材フィルムの遅相軸方向及び進相軸方向の直角形引裂き法による引裂き強度のうち小さいほうの値が250N/mm以上である、請求項1又は2に記載の可撓性画像表示装置。
  4. 前記偏光子の厚みが12μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の可撓性画像表示装置。
  5. 前記偏光子が重合性液晶化合物と二色性色素とからなる、請求項1〜4のいずれかに記載の可撓性画像表示装置。
  6. 前記位相差層が液晶化合物からなる、請求項1〜5のいずれかに記載の可撓性画像表示装置。
  7. 下記工程:
    (1)進相軸方向の屈折率nyが1.568以上1.63以下である基材フィルムを準備する工程、
    (2)基材フィルム上に(a)又は(b)のいずれかの方法により、基材フィルムの進相軸と偏光子の透過軸とが略平行となるように偏光子を設ける工程、
    (a)離型性支持基材上に設けられた偏光子を基材フィルムに転写する方法、
    (b)基材フィルムに重合性液晶化合物と二色性色素とからなる偏光膜用組成物を塗工し、配向させて偏光子とする方法、及び
    (3)偏光子上に位相差層を積層する工程、
    を有する、円偏光板の製造方法。
  8. 下記工程:
    (1)進相軸方向の屈折率nyが1.568以上1.63以下である基材フィルムを準備する工程、
    (2)該基材フィルム上に(a)又は(b)のいずれかの方法により、基材フィルムの進相軸と偏光子の透過軸とが略平行となるように偏光子を設ける工程、
    (a)離型性支持基材上に設けられた偏光子を基材フィルムに転写する方法、
    (b)基材フィルムに重合性液晶化合物と二色性色素とからなる偏光膜用組成物を塗工し、配向させて偏光子とする方法、及び
    (3)偏光子上に(c)又は(d)のいずれかの方法により位相差層を設ける工程、
    (c)離型性支持基材上に設けられた位相差層を偏光子上に転写する方法、
    (d)基材フィルム上に液晶化合物からなる位相差層用組成物を塗工し、配向させて位相差層とする方法、
    を有する、円偏光板の製造方法。
  9. 前記位相差層を積層する工程が、
    (c)離型性支持基材上に設けられた位相差層を偏光子上に転写する方法、又は
    (d)基材フィルム上に液晶化合物からなる位相差層用組成物を塗工し、配向させて位相差層とする方法、
    のいずれかである、請求項7に記載の円偏光板の製造方法。
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