JP2019168068A - 密封軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ゴムが使用できない温度環境で使用され、内輪と外輪の相対変位に対して追随性がよく、温度変化や摩耗・変形により相手方軌道輪との径差が変化した場合にもすきまが発生しにくいシール体を備えた密封軸受を提供する。【解決手段】 内輪2もしくは外輪1に固定される2枚の固定板に7、8よって挟まれ、前記内輪2と外輪1の間の軸受空間をシールする環状の接触型のシール部材6を備える密封軸受において、前記シール部材6の径を外径側に拡径させ、もしくは内径側に収縮させる径拘束部材9を前記2枚の固定板7、8間に設けたことを特徴とする。【選択図】図1
Description
この発明は、泥や砂など異物混入の恐れのある環境で使用される接触型シールを備えた密封軸受、特に、ゴムが使用できないような極低温や高温の場合でも使用することができる、シール性の高い密封軸受に関するものである。
内輪と外輪の間の軸受空間をシールする環状のゴム製の接触型のシール体を備えた密封軸受が従来から知られている。
ゴム製の接触型のシール体は、ゴムの弾性によって内輪と外輪の間の相対変位に対して追随性を有するが、ゴムは低温や高温で分子構造の変化による硬化や脆化、劣化が生じるため、使用温度範囲が限られている。
一方、低温流体中で使われる極低温液体燃料用ポンプなど、月や火星などの地球外天体上で使用される機器などでは、ゴム製のシール体が使用できない温度領域でも軸受内部空間に異物混入が生じないようにする用途が存在する。
また、特許文献1には、ゴム製の接触型のシール体を備えた密封軸受が開示されている。
ゴム製のシール体により軸受内部に密封空間を作ると、軸受の温度上昇により内圧が上がると、内圧により空気が抜けるすきまが生じてしまい、内部からのグリース漏れと外部からの異物侵入が発生するということがあるが、特許文献1の密封軸受は、シール体にスリットを設けて空気抜きを行うことにより、グリース漏れと異物の侵入を抑制している。
宇宙用途においても、大気のある地球上から宇宙空間へ移動する際には、軸受内部の気体が抜ける必要があるが、特許文献1の密封軸受は、一般的なゴムシールと同様、使用温度に限界があるため、極低温や高温などの環境では使用できない。
一方、特許文献2には、極低温で使用できる繊維素材をシール体として使用した密封軸受が開示されている。
この特許文献2の密封軸受は、シール体を二枚の固定板で挟んで固定する構造であり、シール体はその内径が内輪外径としまりばめ状態となっており、シール体は内輪と接触しながら摺動する。
そして、シール体が繊維素材で形成されているので、軸受の内輪と外輪の相対変位に対して追随性が良く、また、温度変化により相手方軌道輪とシール体の熱膨張量の差が大きくても、すきまが発生しないように、十分な締め代を設けることが可能である。また、シール体が繊維素材であると、気体を通すため、特許文献1の密封軸受の説明で述べたような内圧上昇の問題も生じない。
しかしながら、特許文献2の密封軸受は、長時間の使用により繊維素材が外径側に偏り、シール体の内径と内輪の間にすきまが生じてしまう恐れがある。
一般に、接触型シールは、シール体が内輪もしくは外輪の軌道輪の一方に固定され、他方の軌道輪のシール面と接触して摺動する構造であるため、軸受に加わる荷重方向の変化や振動によって、内輪と外輪の間に相対変位が生じ、シール体の接触部に、すきまが発生する恐れがある。また、環境温度の変化や運転時の発熱により、軸受の温度が変化した際には、相手方軌道輪との線膨張係数の違いにより、シール面とシール体の間に径差が発生し、シール面とシール体の間にすきまが発生する可能性がある。
同様に、シール体がシール面を摺動することにより摩耗した場合も、シール体の径が変化し、シール面とシール体の間にすきまが発生する可能性がある。
このため、密封状態を維持するためには、内輪と外輪の相対位置の変化、シール体の径の変化に対して、シール面とシール体の間のすきまの発生を防止する必要がある。
接触型シールとして広く使用されているシールは、固定板にゴムを接着したシール体を軸受の内輪もしくは外輪に圧入し、相手方の軌道輪との間で摺動させながら軸受外部からの異物混入を防ぐ構造となっており、固定板に接着したゴムは、軌道輪に押し付けられて大きく弾性変形しているため、内輪と外輪の相対変位や径の変化があっても、ゴムが追随してすきまが生じにくいという特徴がある。
しかしながら、ゴムは、低温や高温で分子構造の変化による硬化や脆化、劣化が生じるため、使用温度範囲は−50℃程度〜+200℃程度に限られ、極低温や高温などゴムが使用できない温度領域では、シール体の素材として、樹脂や繊維などを用いる必要がある。
また、温度領域として接着剤を用いることも困難であるため、特許文献2には、2枚の固定板にシール体を挟む実施形態が記載され、この実施形態であれば、内輪と外輪の相対位置の変化に対し、2枚の固定板の内部でシール体を追随させることができる。
しかしながら、シール体として樹脂素材を円環状に成型したものを用いた場合、温度変化による径の変化ですきまが発生する恐れがあり、また、樹脂の強度から、すきま発生を防止するために、シール内径とシール面に締め代を与えることも困難である。
一方、円環状に成型した繊維からなるシール体は、締め代を大きくしても、発生する応力も小さく、繊維が切れるなどの損傷の恐れはないものの、しまりばめの状態で繰り返し摺動させると、徐々に繊維に偏りが生じ、シール体の径自体が変わって、すきまが生じてしまう恐れがある。
そこで、この発明は、泥や砂など、異物混入の恐れのある環境で使用される接触型シールを備えた密封軸受に関し、ゴムが使用できない温度環境で使用される場合に、内輪と外輪の相対変位に対する追随性がよく、温度変化や摩耗・変形により相手方軌道輪との径差が変化した場合にもすきまが発生しにくい密封軸受を提供しようとするものである。
前記の課題を解決するために、内周面に軌道面を有する外輪と、外周面に軌道面を有する内輪と、前記外輪と内輪の間に組み込まれる複数の転動体と、前記内輪もしくは外輪に固定される2枚の固定板によって挟まれ、前記内輪もしくは外輪に接触し、前記内輪と外輪の間の軸受空間をシールする環状の接触型のシール部材を備える密封軸受において、前記シール部材の径を外径側に拡径させ、もしくは内径側に収縮させる径拘束部材を前記2枚の固定板間に設けたことを特徴とする。
以上のように、この発明に係る密封軸受は、内輪と外輪の間の軸受空間をシールする環状の接触型のシール部材を、内輪もしくは外輪に固定される2枚の固定板によって挟んで軸方向に拘束して固定し、径拘束部材を用いてシール部材を径方向に拘束することにより、内輪と外輪の相対変位を生じても、また、温度変化や摩耗・変形によってシール部材とシール面の径差が変化しても、シール部材がシール面に押し付けられた状態が維持され、すきまが生じにくい。
以下、この発明に密封軸受の実施形態を添付図面に基づき説明する。
図1に示す実施形態の密封軸受は、内周面に軌道面1aを有する外輪1と、外周面に軌道面2aを有する内輪2と、前記外輪1と内輪2の間に組み込まれる複数の転動体3と、この複数の転動体3を周方向に等間隔に配列する保持器4と、外輪1の内周面の軸方向の両端に設けられたシール溝1bに装着され、内輪2の外周面に接触する環状のシール体5とからなる。
図1に示す実施形態の密封軸受は、転動体3として玉を使用した深溝玉軸受であるが、転動体3としては、ころを使用することもできる。
前記外輪1と内輪2の素材としては、ステンレス鋼を使用することができる。
環状のシール体5は、内輪2の外周面に接触するシール部材6と、このシール部材6を軸心方向の両側から挟んでシール溝1bに固定する2枚の固定板7、8と、シール部材6を内径側に収縮させる径拘束部材9とからなる。
なお、2枚の固定板7、8は、内輪2に固定してもよく、その場合には、径拘束部材9は、シール部材6を外輪1の内周面に接触させるように、シール部材6の径を拡張する部材になる。
外輪1の内周面のシール溝1bに固定される2枚の固定板7、8のうち、軸心方向の内側に設けられる固定板7は、その断面が内径から外径に向かって、ストレート部7aを経てシール溝1b内でV字状に外側に向かって折り返される折返し部7bとからなる円盤型の金属板からなる。
シール溝1bに固定される2枚の固定板7、8のうち、軸心方向の外側に設けられる固定板8は、その断面が外径から内径に向かって、固定板7の折返し部7bの内部に収容されるストレート部8aと、ストレート部8aを経て軸方向外部側に突出し、Z字状(もしくはS字状)に湾曲して軸方向内部側に伸びる形状をした弾性湾曲部8bとからなる円盤型の金属板からなる。
固定板7、8は、それぞれ、打ち抜き、型押し等で形成され、素材としては、SUS304、SUS440C、XD15NW、Cronidur30などのステンレスを選択することができる。
固定板8の弾性湾曲部8bの先端とストレート部8aとの距離Aは、シール部材6の厚みよりも小さく設計されている。
シール部材6は、例えば、厚みのある繊維からなるリング体、もしくは、図2あるいは図3に示す端部が互いに段付きにカットされた重なり部6dを有し、段付きの重なり部分で縮径する樹脂製のリング体のように、内径が可変できる素材を選択することができる。
シール部材6を構成する繊維としては、メタ型全芳香族アラミド繊維などを使用することができ、また、シール部材6を構成する樹脂としては、温度耐性のあるポリテトラフロロエチレン(PTFE)などを使用することができる。
次に、前記径拘束部材9は、例えば、図4に示すように、内径がシール部材6の外径よりも小さいC型の止め輪9aとその外周に設けられたC型の止め輪9aを縮径させる環状コイルばね9bとを組み合わせたもの、あるいは、図5に示すように、複数の円弧状部材9cを、ばね片9dによって環状に連結した、径方向に縮径力を有するものなどを使用することができる。
図1に示す実施形態のシール体5は、次のようにして外輪1と内輪2とに組立てられる。
まず、図6に示すように、固定板7のストレート部7aに、径拘束部材9で外径を拘束したシール部材6を乗せ、その上から、固定板8を乗せ、固定板7の外径側の折返し部7bを加圧して塑性変形させ、固定板7と固定板8を仮加締め状態にする。
次いで、仮加締めした固定板7と固定板8を、径拘束部材9で外径を拘束したシール部材6の内径を広げながら、内輪2の外径に嵌め入れ、加締め治具によって、図7に示すように、固定板7の外径側の折返し部7bを本加締めし、この本加締めにより外径側に張り出した固定板7の折返し部7bを外輪1のシール溝1bに固定する。
固定板7の折返し部7bが外輪1のシール溝1bに固定された状態で、固定板8の外径側のストレート部8aが、固定板7の折返し部7bによって挟まれて固定され、シール部材6の外径面に設けられた径拘束部材9の縮径力によってシール部材6の内径面が内輪2の外径面に密着する。
また、固定板7と固定板8に挟まれたシール部材6は、固定板8の弾性湾曲部8bによって弾性的に支持されて、固定板7と固定板8に軸方向にも密着している。
ところで、シール部材6として繊維素材のリング体を使用した場合、繊維は気体を通すので、軸受内部の内圧上昇防止のために、空気抜きの穴を設ける必要がないものの、繊維のすきまをくぐり抜けて異物が軸受内部に侵入する確率も0%ではない。
一方、シール部材6として樹脂製のリング体を使用した場合、物質として異物を通すことがないため、シール性に優れる一方、内圧上昇防止のために、空気抜き穴を必要とする。
そこで、図8に示す実施形態は、シール部材6として、繊維製のリング体と、樹脂製のリング体の両方の利点を組合せたものである。
すなわち、シール部材6として、軸心方向の内側に配置される繊維製シール6aと、軸心方向の外側に配置される樹脂製シール6bとの複合シールからなり、外側の樹脂製シール6bに空気抜き穴6cを設けている。繊維製シール6aと空気抜き穴6cを設けた樹脂製シール6bを軸方向に並べることで、空気抜き穴6cから異物が侵入することを防止することができる。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
1 :外輪
1a :軌道面
1b :シール溝
2 :内輪
2a :軌道面
3 :転動体
4 :保持器
5 :シール体
6 :シール部材
7 :固定板
8 :固定板
9 :径拘束部材
1a :軌道面
1b :シール溝
2 :内輪
2a :軌道面
3 :転動体
4 :保持器
5 :シール体
6 :シール部材
7 :固定板
8 :固定板
9 :径拘束部材
Claims (6)
- 内周面に軌道面を有する外輪と、外周面に軌道面を有する内輪と、前記外輪と内輪の間に組み込まれる複数の転動体と、前記内輪もしくは外輪に固定される2枚の固定板によって挟まれ、前記内輪もしくは外輪に接触し、前記内輪と外輪の間の軸受空間をシールする環状の接触型のシール体を備える密封軸受において、前記シール体の径を外径側に拡径し、もしくは内径側に収縮させる径拘束部材を前記2枚の固定板間に設けたことを特徴とする密封軸受。
- 前記シール体の素材が繊維製である請求項1記載の密封軸受。
- 前記シール体の素材が樹脂である請求項1記載の密封軸受。
- 前記シール体が、軸心方向の内側に配置される繊維製シールと、軸心方向の外側に配置される樹脂製シールとの複合シールとし、外側の樹脂製シールに空気抜き穴を設けたことを特徴とする請求項1記載の密封軸受。
- 前記外輪と内輪の素材がステンレス鋼であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の密封軸受。
- 宇宙空間で使用される請求項1〜5のいずれかの項に記載の密封軸受。
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