JP2019166772A - 液体処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体噴射ヘッドに対するメンテナンス処理を適切に行うことが可能であり、且つメンテナンス処理の所要時間の短縮化を図ることが可能な液体処理装置を提供する。【解決手段】ヘッドユニット21が搭載されたキャリッジ2は、印刷エリアPに対して右方側に隣接した第1メンテナンスエリアM1への移動が可能である。パージ機構9は、第1メンテナンスエリアM1のパージ処理位置にキャリッジ2が配置された状態でヘッドユニット21に対するパージ処理を実行する。クリーニング機構10Aは、第1メンテナンスエリアM1のクリーニング処理位置にキャリッジ2が配置された状態でヘッドユニット21に対するクリーニング処理を実行する。キャップ機構10Bは、第1メンテナンスエリアM1のキャップ処理位置にキャリッジ2が配置された状態でヘッドユニット21に対するキャップ処理を実行する。【選択図】図23
Description
本発明は、例えばインクジェット式プリンターのような、液体を液体噴射ヘッドからワークに噴射させて所定の処理を行う液体処理装置に関する。
例えばインクジェット式プリンターにおいては、液体噴射ヘッドから微量のインク(液体)をシートや布等のワークに噴射する印刷処理が行われる。通常、液体噴射ヘッドは、印刷走査用のキャリッジに搭載される。液体噴射ヘッドには、インクを貯留するインクカートリッジから、所定の供給路を通してインクが供給される。特許文献1には、水頭差によってインクカートリッジから液体噴射ヘッドにインクを供給する場合において、液体噴射ヘッドの吐出孔を負圧とする圧力室を有する液体供給ユニット(バルブユニット)を、前記供給路に配置してなるインクジェット式プリンターが開示されている。
液体噴射ヘッドにおいては、インク吐出口の詰まりの解除若しくは前記詰まりの予防のため、前記インク吐出口からインクを強制的に吐出させるパージ処理を行う必要がある。また、パージ処理後において、液体噴射ヘッドを清掃するクリーニング処理、並びに、液体噴射ヘッドにキャップを被せるキャップ処理が行われる。ここで、パージ処理、クリーニング処理及びキャップ処理を含む、液体噴射ヘッドに対するメンテナンス処理は、各処理が適切に実行されるとともに、印刷処理への速やかな移行が可能となるように所要時間の短縮化が求められる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、液体噴射ヘッドに対するメンテナンス処理を適切に行うことが可能であるとともに、そのメンテナンス処理の所要時間の短縮化を図ることが可能な液体処理装置を提供することにある。
本発明の一の局面に係る液体処理装置は、所定のワークに向けて液体を噴射する噴射処理を実行する液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドが搭載され、所定の第1方向に移動可能なキャリッジと、前記第1方向に沿って直線状に延び、前記キャリッジの前記第1方向への移動をガイドし、前記噴射処理の実行時における前記キャリッジの移動範囲となる噴射処理領域と、前記噴射処理領域に対して前記第1方向の一方側に隣接した退避領域とが設定されたキャリッジガイドと、前記退避領域内の前記第1方向の一方端に設定されたパージ処理位置に前記キャリッジが配置された状態において、前記液体噴射ヘッドに加圧された液体を送り出すパージ処理を実行するパージ機構と、前記退避領域内の前記パージ処理位置に対して前記第1方向の他方側に離れたクリーニング処理位置に前記キャリッジが配置された状態において、前記パージ処理後の前記液体噴射ヘッドを清掃するクリーニング処理を実行するクリーニング機構と、前記退避領域内の前記クリーニング処理位置に対して前記第1方向の他方側に離れたキャップ処理位置に前記キャリッジが配置された状態において、前記クリーニング処理後の前記液体噴射ヘッドにキャップを被せるキャップ処理を実行するキャップ機構と、を備える。
この液体処理装置によれば、液体噴射ヘッドが搭載されたキャリッジは、噴射処理領域に対して第1方向の一方側に隣接した退避領域への移動が可能である。液体噴射ヘッドは、キャリッジが退避領域内に配置された状態において、パージ機構によるパージ処理、クリーニング機構によるクリーニング処理、並びにキャップ機構によるキャップ処理が施される。ここで、退避領域内でのキャリッジの配置位置については、第1方向の一方端から他方側に向かって、パージ処理位置、クリーニング処理位置及びキャップ処理位置の順番に並んでいる。つまり、退避領域内において、パージ処理位置が最も外側に位置し、キャップ処理位置が最も内側に位置し、クリーニング処理位置がその間に位置している。キャリッジが第1方向の一方端から他方側に向かって、パージ処理位置、クリーニング処理位置及びキャップ処理位置を通るように移動することにより、パージ処理、クリーニング処理及びキャップ処理を含む液体噴射ヘッドに対するメンテナンス処理が、適切に実行される。
また、パージ処理位置、クリーニング処理位置及びキャップ処理位置は、退避領域内に集約して設定されている。このため、パージ処理、クリーニング処理及びキャップ処理を含む液体噴射ヘッドに対するメンテナンス処理の実行時において、キャリッジの移動範囲は、退避領域内に限定される。この結果、メンテナンス処理の実行時におけるキャリッジの移動距離を短くすることができ、メンテナンス処理の所要時間の短縮化を図ることが可能となる。
上記の液体処理装置において、前記キャリッジは、前記第1方向と直交する上下方向に移動可能に構成され、前記キャリッジの前記上下方向の移動によって、前記液体噴射ヘッドの高さ位置は、前記キャリッジが前記パージ処理位置、前記クリーニング処理位置、及び前記キャップ処理位置に配置されるごとに、順次低くなるように調整される。
この態様では、液体噴射ヘッドに対するメンテナンス処理の実行時において、液体噴射ヘッドの高さ位置が順次低くなるように調整される。これにより、液体噴射ヘッドに対するメンテナンス処理が、より適切に実行される。
上記の液体処理装置では、前記クリーニング機構による前記クリーニング処理の実行時において、前記キャリッジは、前記第1方向の他方側へ移動する。
この態様では、キャリッジの第1方向への移動によって、液体噴射ヘッドに対してクリーニング処理を施すことができる。このため、クリーニング機構を駆動させる構造が不要であり、装置構成を簡素化することができる。
本発明によれば、液体噴射ヘッドに対するメンテナンス処理を適切に行うことが可能であるとともに、そのメンテナンス処理の所要時間の短縮化を図ることが可能な液体処理装置を提供することができる。
[プリンターの全体構成]
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。まず、本発明に係る液体処理装置が適用されるインクジェット式プリンターについて説明する。図1は、実施形態に係るインクジェット式プリンター1の外観を示す斜視図、図2は、図1のII−II線方向の断面図、図3は、アウターカバー102を取り外した状態の、プリンター1の正面図である。なお、図1〜図3、後出の図において、前後、左右、上下の方向表示を付しているが、これは説明の便宜のためであり、何ら方向の限定を企図したものではない。
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。まず、本発明に係る液体処理装置が適用されるインクジェット式プリンターについて説明する。図1は、実施形態に係るインクジェット式プリンター1の外観を示す斜視図、図2は、図1のII−II線方向の断面図、図3は、アウターカバー102を取り外した状態の、プリンター1の正面図である。なお、図1〜図3、後出の図において、前後、左右、上下の方向表示を付しているが、これは説明の便宜のためであり、何ら方向の限定を企図したものではない。
プリンター1は、各種サイズの紙シートや樹脂シート、或いは布生地などの印刷媒体からなる各種ワークWに、インクジェット方式で印字、印画などの印刷処理を行うプリンターであって、とりわけ大サイズ且つ長尺のワークに対する印刷処理に好適なプリンターである。プリンター1は、キャスター付きのベースフレーム101と、このベースフレーム101に載置され、前記印刷処理を実行する装置本体11とを含む。
装置本体11は、ワーク搬送路12、搬送ローラー13、ピンチローラーユニット14及びキャリッジ2を含む。ワーク搬送路12は、印刷処理の施されるワークWを、後方側から装置本体11へ搬入し、前方側から搬出するための、前後方向に延びる搬送路である。搬送ローラー13は、左右方向に延び、ワーク搬送路12のワークWを間欠送りする駆動力を発生するローラーである。ピンチローラーユニット14は、搬送ローラー13に対して上方から対向するように配置され、搬送ローラー13と搬送ニップを形成するピンチローラーを備えている。ピンチローラーユニット14は、左右方向に所定間隔を置いて複数個配置されている。
キャリッジ2は、ワークWに対して印刷処理を行うユニットが搭載され、ベースフレーム101上において左右方向(水平方向)に往復移動が可能な移動体である。以下では、キャリッジ2の往復移動の左右方向を「第1方向」と称する場合がある。ベースフレーム101の後方側には、キャリッジ2の前記往復移動をガイドするキャリッジガイド15が、左右方向に延在するように立設されている。キャリッジガイド15には、詳細については後述するが、タイミングベルト16が左右方向に周回移動が可能に組み付けられている。キャリッジ2は、タイミングベルト16に取り付けられ、タイミングベルト16の正転又は逆転の前記周回移動に伴って、キャリッジガイド15に沿って左右方向に移動する。
前記印刷処理は、搬送ローラー13及びピンチローラーユニット14がワークWを間欠送りし、ワークWの停止中にキャリッジ2が左右方向に移動して当該ワークWを印画走査(ワークWへインクを噴射する噴射処理)するという態様で実行される。なお、ワーク搬送路12において、キャリッジ2の通過経路の下方には、ワークWを吸引する機能が付設されたプラテン121(図2)が配置されている。前記印刷処理(噴射処理)時には、ワークWがプラテン121に吸着された状態で、キャリッジ2が印画走査を実行する。
装置本体11は、アウターカバー102によって覆われている。アウターカバー102の右方側の領域には、サイドステーション103が配置されている。サイドステーション103の内部には、印刷処理用のインク(所定の液体)を貯留するインクカートリッジIC(図5、図6)を保持する、不動のインクカートリッジ棚17が収容されている。
サイドステーション103の前方部分は、キャリッジ2の退避空間となる第1退避エリア104である。図3に示すように、ベースフレーム101には、ワーク搬送路12に応じた間隔を左右方向に置いて、左フレーム105及び右フレーム106が立設されている。作業領域で区分すると、これら左右フレーム105、106間の領域が、前記印刷処理の実行時におけるキャリッジ2の移動範囲となる印刷エリアP(噴射処理領域)とされている。
キャリッジガイド15は、印刷エリアPよりも長い左右幅を有しており、キャリッジ2は印刷エリアPの右外側及び左外側まで移動可能である。キャリッジガイド15の右端側(第1方向の一端部側)、つまり印刷エリアPに対して右方側(第1方向の一方側)に隣接した領域は、第1メンテナンスエリアM1(第1退避領域)である。また、キャリッジガイド15の左端側(第1方向の他端部側)、つまり印刷エリアPに対して左方側(第1方向の他方側)に隣接した領域は、第2メンテナンスエリアM2(第2退避領域)である。前記印刷処理の休止時において、キャリッジ2は第1メンテナンスエリアM1又は第2メンテナンスエリアM2に退避する。前記印刷処理の休止時に、キャリッジ2が第1メンテナンスエリアM1に配置された状態において、後述するパージ処理、クリーニング処理及びキャップ処理を含むメンテナンス処理が実行される。また、前記印刷処理の休止時に、キャリッジ2が第2メンテナンスエリアM2に配置された状態において、ユーザーによるプリンター1のメンテナンスが行われる。
ベースフレーム101の後方側には、印刷処理対象のワークWの巻回体である送り出しロールWaを収容する送り出し部107が備えられている。また、ベースフレーム101の前方側には、印刷処理後のワークWの巻回体である巻き取りロールWbを収容する巻き取り部108が備えられている。巻き取り部108は、巻き取りロールWbの巻回軸を回転駆動する図略の駆動源を備え、テンションローラー109で所定の張力をワークWに付与しつつ、当該ワークWを巻き取る。
[キャリッジの構成]
図4は、キャリッジ2の全体斜視図である。キャリッジ2には、ワークWに対してインク(液体)を噴射するヘッドユニット21(液体噴射ヘッド)と、インクカートリッジICからヘッドユニット21へインクを供給する液体供給ユニット3とが搭載されている。図4では、2台のヘッドユニット21と、8台の液体供給ユニット3とがキャリッジ2に搭載されている例を示している。すなわち、1台のヘッドユニット21当たり、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各インクを供給するために、4台の液体供給ユニット3が装備されている。なお、各液体供給ユニット3に異なる色のインクが充填され、2つのヘッドユニット21から最大8色のインクが噴射される態様でもよい。
図4は、キャリッジ2の全体斜視図である。キャリッジ2には、ワークWに対してインク(液体)を噴射するヘッドユニット21(液体噴射ヘッド)と、インクカートリッジICからヘッドユニット21へインクを供給する液体供給ユニット3とが搭載されている。図4では、2台のヘッドユニット21と、8台の液体供給ユニット3とがキャリッジ2に搭載されている例を示している。すなわち、1台のヘッドユニット21当たり、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各インクを供給するために、4台の液体供給ユニット3が装備されている。なお、各液体供給ユニット3に異なる色のインクが充填され、2つのヘッドユニット21から最大8色のインクが噴射される態様でもよい。
キャリッジ2は、ヘッドユニット21及びヘッドユニット21を保持するキャリッジフレーム20を備える。キャリッジフレーム20は、最も下方に位置する下段フレーム201と、下段フレーム201の上方に間隔を置いて配置された上段フレーム202と、上段フレーム202の上面に組み付けられたラック203と、上段フレーム202の後方面に取り付けられた背面フレーム204とを含む。下段フレーム201と上段フレーム202とは、上下方向に延びる連結支柱205によって連結されている。背面フレーム204には、図略のボールねじ機構が搭載されており、そのボールねじで駆動されるナット部が、下段フレーム201に取り付けられている。また、背面フレーム204には、上下方向に延びるガイド支柱206が備えられている。前記ボールねじ機構の駆動により、下段フレーム201及び上段フレーム202の連結体は、ガイド支柱206でガイドされつつ、上下方向へ移動することができる。つまり、キャリッジ2の本体部分は、背面フレーム204に対して上下方向に移動可能である。
下段フレーム201には、ヘッドユニット21が搭載されている。キャリッジ2の本体部分は上記の通り上下方向に移動可能であるので、ワークWに対するヘッドユニット21の上下方向の高さ位置が調整可能である。上段フレーム202には、液体供給ユニット3が搭載されている。8台の液体供給ユニット3は、ラック203内において左右方向に整列された態様で、上段フレーム202に支持されている。背面フレーム204には、タイミングベルト16への固定部等が具備されている。
図5は、一つの液体供給ユニット3及びヘッドユニット21を示す斜視図である。液体供給ユニット3は、タンク部31及びポンプ部32を備えた本体部30と、本体部30のインク供給方向(液体供給方向)の上流側に配置される上流管33(第1供給路)と、本体部30の下流側に配置される下流管34(第2供給路)と、バイパス管35とを備える。タンク部31は、負圧環境下でヘッドユニット21に供給されるインクを一時的に貯留する空間を形成する領域である。ポンプ部32は、前記負圧環境の形成のための減圧処理、並びにヘッドユニット21(インク吐出部22)の清浄化のための加圧パージ処理の際に稼働されるポンプ9(図6;パージ機構/ポンプ装置)を収容する領域である。
詳細については後述するが、ポンプ9は偏心カム91(図14;回転体)を備え、この偏心カム91を軸支するカム軸93がラック203で支持されている。ポンプ部32には、カム軸93を貫通させるカム軸挿通孔322が備えられている。また、ラック203は、各々の液体供給ユニット3が備える偏心カム91に回転駆動力を伝達する第1パージ駆動軸94及び第2パージ駆動軸95を軸支している。
上流管33は、タンク部31とインクカートリッジIC(液体収容容器)とを連通する供給管である。上流管33の上流端331は、インクカートリッジICから延出されたチューブ(図略)の終端部に接続され、下流端332はタンク部31の入口部分に接続されている。下流管34は、タンク部31とヘッドユニット21とを連通する供給管である。下流管34の上流端341は、タンク部31の出口部分に接続され、下流端342はヘッドユニット21に接続されている。バイパス管35は、タンク部31の前記負圧環境(後述の第2室42)を経由せずに、インクを下流管34に送るための管路である。
ヘッドユニット21は、インク吐出部22、制御ユニット部23、エンドチューブ24及び排出チューブ25を含む。インク吐出部22は、インク滴をワークWに向けて吐出するノズル部分である。インク吐出部22におけるインク滴の吐出方式としては、ピエゾ素子を用いたピエゾ方式、加熱素子を用いたサーマル方式などを適用することができる。制御ユニット部23は、インク吐出部22が備える前記ピエゾ素子又は前記加熱素子を制御する制御基板を備え、インク吐出部22からのインク滴の吐出動作を制御する。
エンドチューブ24は、下流管34の下流端342とインク吐出部22とを繋ぐチューブである。下流端342はキャップ式ソケットであり、エンドチューブ24の上端嵌合部にワンタッチ装着が可能である。排出チューブ25は、初期使用時に液体供給ユニット3に封入されている保存液を排出するためのチューブである。初期使用時、下流管34の下流端342がエンドチューブ24の上端嵌合部に装着され、排出チューブ25には別途チューブを接続し、前記保存液の貯留空間を開放することにより、前記保存液を排出する動作が実行される。
[液体供給システムの概要]
本実施形態では、インクカートリッジICがヘッドユニット21の上方に配置され、水頭差によってインクがヘッドユニット21に供給される装置構成とされている。インクを水頭差供給する場合、常圧での供給を行うとヘッドユニット21のインク吐出部22から常時インクが吐出してしまう。このため、インクの供給経路中に負圧環境を作る負圧形成部を介在させ、インク吐出部22を適度な負圧とする必要がある。液体供給ユニット3のタンク部31は、上記の負圧形成部として機能する。
本実施形態では、インクカートリッジICがヘッドユニット21の上方に配置され、水頭差によってインクがヘッドユニット21に供給される装置構成とされている。インクを水頭差供給する場合、常圧での供給を行うとヘッドユニット21のインク吐出部22から常時インクが吐出してしまう。このため、インクの供給経路中に負圧環境を作る負圧形成部を介在させ、インク吐出部22を適度な負圧とする必要がある。液体供給ユニット3のタンク部31は、上記の負圧形成部として機能する。
図6は、本実施形態のキャリッジ2において採用されている液体供給システムを概略的に示すブロック図である。インクカートリッジICは、インク吐出部22よりも高さhだけ高い位置に配置されている。この高さhが水頭差となり、この水頭差によって、インクカートリッジICのインクがヘッドユニット21に供給される。液体供給ユニット3は、インクカートリッジICとヘッドユニット21との間のインク供給経路の途中に組み入れられている。液体供給ユニット3のタンク部31は、前記水頭差を受けて大気圧よりも高い圧力となる第1室41と、第1室41に対してインク供給方向の下流側に配置され、負圧に設定される第2室42とを備える。第1室41は、負圧操作が与えられない部屋であって、大気圧に加えて前記水頭差による圧力Pが加わる部屋となる。この圧力Pは、水の密度(インクは密度において水と同等に扱える)をρ、重力加速度をg、水頭差をhとするとき、P=ρgh[Pa]で表される。第1室41は、上流管33を介してインクカートリッジICと連通している。第2室42は、下流管34を介してインク吐出部22と連通している。
第1室41と第2室42とを区画する壁面には、押圧部材5に連結された開閉バルブ6が配置されている。また、第2室42を区画する壁部の一部は、可撓性フィルムからなる大気圧検知フィルム7によって構成されている。第2室42内が所定の閾値を超える負圧になると、大気圧検知フィルム7が大気圧を検知して変位する。この変位力が押圧部材5に与えられ、連結されている開閉バルブ6が閉姿勢から開姿勢に姿勢変更し、第1室41と第2室42とが連通状態とされる。通常の印刷処理時におけるインク供給ルートは、上流管33、第1室41、第2室42及び下流管34を通過するルートである。これに加え、第2室42を経由せずに第1室41と下流管34とを短絡させるバイパス管35が具備されている。バイパス管35には、正逆回転が可能なポンプ9が配置されている。
図6は、当該液体供給システムが印刷処理を行う印刷モード(液体の通常供給時)が実行されている状態を示す図でもある。前記印刷モードにおいて、第1室41及び第2室42にはインクが所定量充填され、第2室42が所定の負圧とされる。第1室41の圧力は、上述の通り水頭差により大気圧+ρgh[Pa]であり、いつでもインクカートリッジICから水頭差によってインクが供給され得る状態である。印刷モードの基本設定として、開閉バルブ6は閉姿勢とされ、第1室41と第2室42とは隔離された状態とされる。ポンプ9は停止状態とされる。後述するが、ポンプ9はチューブポンプであり、当該ポンプ9の停止時にはバイパス管35は閉止状態となる。このため、下流管34及びインク吐出部22も、負圧に維持された状態となる。
第2室42へのインク充填をスムースに行わせるため、第2室42には空気抜き機構部37が付設されている。イニシャルの使用時やメンテナンス後などにおいて、第2室42に所定量のインクを初期充填する必要がある。空気抜き機構部37は、負圧環境に設定される第2室42を一時的に大気と連通させて(第2室42の空気を抜いて)、前記初期充填を促進させる。また、第2室42に収容されたインクが、高熱化によって気泡を発生する場合がある。空気抜き機構部37は、前記気泡に基づく空気を第2室42から除去する際にも用いられる。
ヘッドユニット21が作動し、インク吐出部22がインク滴を吐出すると、第2室42内のインクが消費され、これに伴い第2室42の負圧の程度が進行してゆく。つまり、インク吐出部22は、インク滴の吐出の度に、大気と隔離された状態にある第2室42からインクを吸い取る動作を行い、第2室42の負圧度を高めて行く。そして、第2室42内のインクの減少に伴い、当該第2室42が所定の閾値を超える負圧となると、上記の通り大気圧検知フィルム7が大気圧を検知して変位する。この変位力によって、押圧部材5を通して開閉バルブ6が閉姿勢から開姿勢に姿勢変更し、第1室41と第2室42とが連通状態となる。従って、両室の圧力差によって、第1室41から第2室42へインクが流入する。
第2室42へのインクの流入に伴い、当該第2室42の負圧度は徐々に緩和され、大気圧に近づいてゆく。同時に、大気圧検知フィルム7から押圧部材5へ与えられる変位力も徐々に小さくなってゆく。そして、第2室42が前記所定の閾値を下回る負圧となると、開閉バルブ6は閉姿勢に復帰し、第1室41と第2室42とは再び隔離された状態となる。この際、第1室41から第2室42へ流入した分だけ、水頭差によってインクカートリッジICから第1室41へインクが補充される。印刷モードでは、このような動作が繰り返されることになる。
本実施形態の液体供給システムは、上記の印刷モードの他、加圧パージモードと、減圧モードとが実行可能とされている。加圧パージモードは、インク吐出部22におけるインク詰まりを解除若しくは予防するため、加圧されたインクをインク吐出部22に供給し、吐出させるパージ処理を実行するモードである。減圧モードは、イニシャルの使用時やメンテナンス後などに、常圧状態の第2室42を前記所定の負圧に設定するためのモードである。
図7(A)は、加圧パージモードが実行されている状態を示す図である。加圧パージモードでは、ポンプ9は正転駆動される。ポンプ9の正転駆動によって、インクは、第2室42を迂回して、上流管33から第1室41及びバイパス管35を経て、下流管34へ直接向かうことになる。つまり、ポンプ9で加圧されたインクが、インク吐出部22に供給される。これにより、インク吐出部22からインクが強制吐出され、インク吐出部22が清浄化される。なお、加圧パージモードと同様の動作が、初期使用時において液体供給ユニット3に封入されている保存液を排出する際にも実行される。
加圧パージモードの実行の際、加圧されたインクが下流管34を通して第2室42へ逆流することを防止するために、逆流防止機構部38が備えられている。逆流防止機構部38は、下流管34とバイパス管35の下流端との合流部aよりも上流側において、下流管34に配置されている。逆流防止機構部38により、下流管34の合流部aよりも上流側が閉止されるので、バイパス管35において生成される高圧インクは、全てインク吐出部22に向かう。従って、第2室42を区画している大気圧検知フィルム7の破損が防止される。
図7(B)は減圧モードが実行されている状態を示す図である。減圧モードでは、ポンプ9は逆転駆動される。ポンプ9が逆転駆動されると、下流管34及びバイパス管35を通して、インク吐出部22及び第2室42が減圧される。インク吐出部22及び第2室42は、この減圧モードによって所定の負圧、つまり、水頭差供給を行う場合にあっても、インク吐出部22からインク滴が漏れ落ちない負圧に設定される。なお、インク吐出部22を過度の負圧にすると、インク吐出部22におけるピエゾ素子等の駆動によるインク吐出が阻害されることがある。従って、インク吐出部22及び第2室42は、例えば−0.2〜−0.7kPa程度の弱い負圧とすることが望ましい。
[液体供給ユニットの全体構造]
続いて、上述した液体供給システムの各モードの実行を可能とする、本実施形態に係る液体供給ユニット3の構造について詳述する。図8(A)は、液体供給ユニット3の正面図、図8(B)は、その側面図、図8(C)は、その上面図である。図9は、液体供給ユニット3の第1室41側、図10は、第2室42側の内部構造を示す斜視図である。図11(A)は第2室42側から、図11(B)は第1室41側から見た、液体供給ユニット3の分解斜視図である。
続いて、上述した液体供給システムの各モードの実行を可能とする、本実施形態に係る液体供給ユニット3の構造について詳述する。図8(A)は、液体供給ユニット3の正面図、図8(B)は、その側面図、図8(C)は、その上面図である。図9は、液体供給ユニット3の第1室41側、図10は、第2室42側の内部構造を示す斜視図である。図11(A)は第2室42側から、図11(B)は第1室41側から見た、液体供給ユニット3の分解斜視図である。
図5〜図7に基づき予備的に説明した通り、液体供給ユニット3は、タンク部31及びポンプ部32を有する本体部30、上流管33、下流管34、バイパス管35、空気抜き機構部37、逆流防止機構部38、押圧部材5、開閉バルブ6及び大気圧検知フィルム7を備える。この他、液体供給ユニット3は、第2室42のインク液面をモニターするためのモニター管36と、ポンプ部32と第1室41とを連通させる連絡管32Pと、第1室41を区画する壁面の一部を構成する封止フィルム7Aとを備えている。
本体部30は、前後方向に延びる平板からなるベース基材300(図9及び図10参照)を備える。ベース基材300の前方側が、タンク部31の基板となるタンク部ベース板310、後方側が、ポンプ部32においてハウジング構造を形成するポンプ部ハウジング320である。タンク部ベース板310の左面側に第1室41が配置され、右面側に第2室42が配置されている。タンク部ベース板310には、第1室41と第2室42とを連通させる連通口43が穿孔されている。この連通口43に、上述の開閉バルブ6が配置されている。
図9に示されているように、第1室41は、大略的に平面視でL字型の形状を有している。第1室41は、タンク部ベース板310から左方に突設された第1区画壁411によって区画されている。第1区画壁411のうちの最上部の壁には、インクの流入口412が穿孔されている。インクの流入口412に対応して、第1区画壁411の外側面には受けプラグからなる流入ポート417(図12)が立設されている。この流入ポート417には、上流管33の下流端332が挿入接続される。つまり、流入口412は、インクカートリッジICと第1室41とを連通させる開口であり、当該流入口412から水頭差によりインクが第1室41内に流入する。
第1区画壁411の底壁部413は、タンク部ベース板310の下端に位置している。底壁部413に近い第1区画壁411の後側壁には、パージポート414が設けられている。連絡管32Pの上流端が、このパージポート414に接続されている。第1室41の上下方向の中央付近には、円筒状のキャビティからなるバネ座415が突設されている。バネ座415は、後述の付勢バネ45を収容するキャビティであり、第2室42側に開口している。
連通口43は、第1室41内においてバネ座415の上方に位置している。既述の通り、第1室41には減圧処理等が行われず、大気圧に加えて水頭差による圧力P=ρghが加わる部屋である。流入口412からインクが流入すると、底壁部413からインクが溜まり始める。インクの液位が連通口43を超過すると、当該連通口43を通してインクを第2室42へ供給可能な状態となる。また、ポンプ9が正転駆動されると、パージポート414及び連絡管32Pを通して、第1室41に貯留されたインクが吸引され、バイパス管35及び下流管34を通して、高圧化されたインクがヘッドユニット21に供給される。
図10及び図12を参照して、第2室42は、大略的に平面視で円形の形状を有している。第2室42は、タンク部ベース板310から右方に突設された第2区画壁421によって区画されている。第2区画壁421は、円筒型の形状を有する円筒壁422と、円筒壁422の上方に突設された矩形部分からなる上部壁423とを有している。上述のバネ座415は、円筒壁422で囲まれる領域の中心位置、つまり円筒壁422と同心となる位置において、タンク部ベース板310に凹設されている。連通口43は、バネ座415の中心点を通る鉛直線上において、バネ座415の上に配置されている。
第2室42の下端には、連絡室44が連設されている。連絡室44は、前後方向に細長い矩形の空間であって、円筒壁422の下端から前方へ直線状に延在している。連絡室44は、壁部441によって区画されている。円筒壁422の下端には、第2室42と連絡室44とを連通させる下部通路424が設けられている。壁部441は、下部通路424の位置において円筒壁422に繋がっている。連絡室44は、第2室42と下流管34とを繋ぐ空間であって負圧とされる空間であり、実質的に第2室42の一部を構成している。
第2室42の上部壁423で囲まれる領域において、タンク部ベース板310から前後一対の支持板425が右方へ突設されている。一対の支持板425は、後述の押圧部材5を軸支する軸支部426を各々備えている。上部壁423の最上部を構成(第2室42の天壁を区画)する天壁423Aには、ボス部427とモニターポート428とが上方へ突設されている。ボス部427は、第2室42を大気と連通させる開口であるボス孔(図略)を内部に備えている。ボス部427は、図6及び図7に示した空気抜き機構部37の一部を構成しており、空気抜き動作を行わせるためのレバー部材46及び復帰バネ47が組み付けられている。
天壁423Aにおいて、ボス孔42Aよりも前方側には、上モニター孔42Bが穿孔されている。また、連絡室44を区画する壁部441の天壁442には、下モニター孔444が穿孔されている。上モニター孔42Bに対応して、天壁423Aには、上モニターポート428が立設されている。下モニター孔444に対応して、天壁442には、下モニターポート445が立設されている。モニター管36の上端が上モニターポート428に、下端が下モニターポート445に各々接続されている。つまり、モニター管36は、第2室42の上端側と下端側とに連通し、モニター管36内のインク液位は、第2室42内のインク液位と連動したものとなる。
本実施形態ではモニター管36は、透明な樹脂チューブからなる。従って、ユーザーは、モニター管36を視認することで、第2室42内のインク液位を知見することができる。本実施形態では、図4に示したように、キャリッジ2に複数の液体供給ユニット3が左右方向に並列配置される構成とされる。このため、たとえ右側面に位置する大気圧検知フィルム7として透明なフィルムを用いたとしても、最右部の液体供給ユニット3以外は、第2室42内のインク液位を視認させることができない。しかし、本実施形態では、液体供給ユニット3の前方側に、モニター管36が立設される態様とされている。このため、ユーザーは、キャリッジ2の前方側から、各液体供給ユニット3のモニター管36を視認することで、それぞれの第2室42内のインク液位を知見することができる。
逆流防止機構部38は、連絡室44の前端付近において、天壁442上に設置されている。逆流防止機構部38に対応して、天壁442には供給孔443が穿孔されている。下流管34の上流端341は、逆流防止機構部38に接続されている。第2室42に貯留されたインクは、インク吐出部22に吸引される態様で、供給孔443及び逆流防止機構部38を通して、下流管34に供給される。
図11を参照して、第1室41の左面側の開口は、樹脂製の封止フィルム7Aによって封止される。封止フィルム7Aは、第1区画壁411の左面視の壁形状に合致した外形形状を有している。封止フィルム7Aの周縁部が第1区画壁411の端面に溶着又は接着されることで、封止フィルム7Aは第1室41の開口を封止する。
第2室42の右面側の開口は、可撓性を有する樹脂製のフィルム部材からなる大気圧検知フィルム7によって封止される。大気圧検知フィルム7は、第2室42の第2区画壁421及び連絡室44の壁部441を一体化した壁形状に合致した外形形状を有している。すなわち、大気圧検知フィルム7は、第2室42の円筒壁422に対応した本体部71と、矩形の上部壁423に対応した上延長部72と、連絡室44の壁部441に対応した下延長部73とを備えている。本体部71の周縁部が円筒壁422の端面に、上延長部72の周縁部が上部壁423の端面に、そして下延長部73の周縁部が壁部441の端面に溶着又は接着されることで、大気圧検知フィルム7は第2室42及び連絡室44の開口を封止する。なお、大気圧検知フィルム7は、特段テンションが付与されない状態で、溶着又は接着される。
ポンプ部32は、タンク部31の後方に隣接して配置され、ポンプ9を収容するポンプキャビティ321と、ポンプ9の偏心カム91(図14)を軸支するカム軸93(図4)が挿通されるカム軸挿通孔322とを備えている。ポンプキャビティ321は、ポンプ部ハウジング320の前後及び上下の中央位置に配置された円筒状のキャビティである。カム軸挿通孔322は、ポンプキャビティ321と同心となる位置に設けられたボス孔である。ポンプキャビティ321の右面側の開口は、ポンプカバー323によって封止されている。このように、本実施形態では、タンク部31の基板となるタンク部ベース板310と一体的にポンプキャビティ321が備えられ、液体供給ユニット3自身に、加圧されたインクを送り出すパージ処理用のポンプ9(パージ機構)を各々搭載させる構成である。これによりキャリッジ2の装置構成のコンパクト化、シンプル化を図ることができる。
[負圧供給機構について]
続いて、第2室42内のインクの減少に応じて、第1室41から第2室42へインクが供給される負圧供給機構について詳述する。負圧供給機構は、先に図6に基づいて動作の概要を説明した押圧部材5、開閉バルブ6及び大気圧検知フィルム7を含み、さらに付勢バネ45(付勢部材)を備えている。開閉バルブ6は連通口43に配置され、連通口43を閉じる閉姿勢と、連通口43を開く開姿勢との間で姿勢変更する。付勢バネ45は、開閉バルブ6を前記閉姿勢に向かう方向に付勢する。押圧部材5は、開閉バルブ6を前記開姿勢に向かう方向に押圧可能である。大気圧検知フィルム7は、第2室42内のインクの減少に伴って発生する負圧に基づいて変位し、その変位力を押圧部材5に伝達する。
続いて、第2室42内のインクの減少に応じて、第1室41から第2室42へインクが供給される負圧供給機構について詳述する。負圧供給機構は、先に図6に基づいて動作の概要を説明した押圧部材5、開閉バルブ6及び大気圧検知フィルム7を含み、さらに付勢バネ45(付勢部材)を備えている。開閉バルブ6は連通口43に配置され、連通口43を閉じる閉姿勢と、連通口43を開く開姿勢との間で姿勢変更する。付勢バネ45は、開閉バルブ6を前記閉姿勢に向かう方向に付勢する。押圧部材5は、開閉バルブ6を前記開姿勢に向かう方向に押圧可能である。大気圧検知フィルム7は、第2室42内のインクの減少に伴って発生する負圧に基づいて変位し、その変位力を押圧部材5に伝達する。
押圧部材5は、第2室42内に回動可能に配置される部材である。開閉バルブ6は、押圧部材5の回動動作に従動して連通口43内で左右方向に移動することで、連通口43を開閉する。開閉バルブ6は、バルブホルダー61と、このバルブホルダー61によって保持されるアンブレラバルブ62との組立体からなる。バルブホルダー61は、連通口43に組み付けられる、半筒形の部材である。アンブレラバルブ62は、ゴム製の物品であって、連通口43の内径よりも大きい傘直径を有した傘形状に形成されている。アンブレラバルブ62は、その周縁部が連通口43の周囲の壁面であるシール壁面と当接することによって、連通口43を封止状態とすることが可能である(閉姿勢)。反面、アンブレラバルブ62は、その周縁部が前記シール壁面から離間すると、前記封止状態は解除される(開姿勢)。なお、アンブレラバルブ62は、右面側に所定の圧力が加わると、その傘形状が反転する。
大気圧検知フィルム7が押圧部材5を回動させるほど変位力を発生していない状態、すなわち、付勢バネ45のバネ圧(付勢力)と第2室42の内圧との合計が、大気圧よりも勝っている状態では、押圧部材5とリンク結合されている開閉バルブ6は、閉姿勢を取る。この場合、第2室42は負圧ではあるが、付勢バネ45は、前記負圧による大気圧検知フィルム7の変位力に打ち勝つ付勢力で、押圧部材5を付勢している。開閉バルブ6が閉姿勢を取った状態では、連通口43がアンブレラバルブ62によって封止される。付勢バネ45は、押圧部材5を右方に付勢することで、開閉バルブ6を閉姿勢に向かう方向に付勢していると言うことができる。
開閉バルブ6が閉姿勢の状態からインク吐出部22がインク滴の吐出動作を継続してゆくと、密閉空間である第2室42は、インクの減少に伴い、徐々に負圧度が高まってゆく。やがて、第2室42が所定の閾値を超える負圧となると、大気圧検知フィルム7は付勢バネ45の付勢力に抗する押圧力を押圧部材5へ与えるようになる。すなわち、付勢バネ45のバネ圧と第2室42の内圧との合計が、大気圧に劣る状態となる。
この場合、押圧部材5は、付勢バネ45の付勢力に抗して左方へ回動する。この回動によって、押圧部材5は、開閉バルブ6を左方に向かわせる押圧力を発生し、開閉バルブ6を開姿勢に姿勢変更させる。開閉バルブ6が開姿勢を取った状態では、アンブレラバルブ62による連通口43の封止が解除される。
開閉バルブ6が開姿勢となると、大気圧+ρghの圧力の第1室41と負圧度が進行した第2室42との圧力差により、第1室41から第2室42へインクが流入する。第2室42へのインク流入が進行すると、第2室42の負圧度は徐々に緩和されてゆく。やがて、付勢バネ45のバネ圧と第2室42の内圧との合計が、大気圧よりも優勢になると、付勢バネ45の付勢力によって押圧部材5は右方に押し戻されてゆく。すなわち、第2室42が所定の閾値を下回る負圧となると、押圧部材5は、付勢バネ45の付勢力に押圧されて右方へ回動する。これにより開閉バルブ6は閉姿勢に復帰する。
[逆流防止機構部]
次に、図7(A)に基づき説明した加圧パージモードの実行の際に、加圧されたインクが第2室42へ逆流することを防止する逆流防止機構部38の構成について説明する。図12は、逆流防止機構部38の分解斜視図を含む液体供給ユニット3のベース基材300の斜視図である。逆流防止機構部38は、バルブ管路81、分岐ヘッド部82、球体83、シール部材84、コイルスプリング85及びOリング86を含む。バルブ管路81は、連絡室44の天壁442と一体の部材であり、他の部品はバルブ管路81に対して組み付けられている。図13(A)及び図13(B)は、バルブ管路81を除く逆流防止機構部38の斜視図、図13(C)は、分岐ヘッド部82の下方視の斜視図である。
次に、図7(A)に基づき説明した加圧パージモードの実行の際に、加圧されたインクが第2室42へ逆流することを防止する逆流防止機構部38の構成について説明する。図12は、逆流防止機構部38の分解斜視図を含む液体供給ユニット3のベース基材300の斜視図である。逆流防止機構部38は、バルブ管路81、分岐ヘッド部82、球体83、シール部材84、コイルスプリング85及びOリング86を含む。バルブ管路81は、連絡室44の天壁442と一体の部材であり、他の部品はバルブ管路81に対して組み付けられている。図13(A)及び図13(B)は、バルブ管路81を除く逆流防止機構部38の斜視図、図13(C)は、分岐ヘッド部82の下方視の斜視図である。
バルブ管路81は、天壁442の上面から上下方向に延びる管路である。バルブ管路81は、連絡室44と下流管34とを繋ぐインク流路を提供するものであって、第2室42からインク吐出部22に至るインク供給路の一部を構成している。分岐ヘッド部82を係止するために、バルブ管路81の外周面には係止片811が突設され、内周面には嵌合環状突起812が突設されている。
分岐ヘッド部82は、図6及び図7に基づき先述した合流部aを形成する部材である。分岐ヘッド部82は、第1入口ポート821、第2入口ポート822、出口ポート823、胴部824、係止窓825、切り欠き部826及び嵌合爪827を含む。第1入口ポート821は、第2室42の下流端が接続されるポートであって、本実施形態ではバルブ管路81及び連絡室44を経由して、第2室42が連通している。第2入口ポート822は、バイパス管35の下流端が接続されるポートである。出口ポート823は、下流管34の上流端341が接続されるポートである。上述の印刷モードでは、インクは、第1入口ポート821を通して下流管34に供給される。一方、加圧パージモードでは、第2入口ポート822を通して下流管34に供給される。
胴部824は、下方を向く第1入口ポート821の外側に、互いに対向するように配置された一対の円弧片からなる。バルブ管路81は、一対の胴部824と第1入口ポート821との間の隙間に入り込む。係止窓825は、一対の胴部824に設けられた開口であり、バルブ管路81の係止片811が係合する開口である。切り欠き部826は、筒状の第1入口ポート821の周壁の一部が切り欠かれた部分であり、インクの流路を確保するための部分である。嵌合爪827は、第1入口ポート821の下端から下方に突設されたフック形状を有する部分であり、バルブ管路81の嵌合環状突起812を係合する。つまり、分岐ヘッド部82は、バルブ管路81の内周において係止片811と係止窓825との係合により、外周において嵌合環状突起812と嵌合爪827との係合により、バルブ管路81に固定される。
球体83は、バルブ管路81内に、インク供給方向へ移動可能に収容され、弁の働きをする。球体83の外径は、バルブ管路81の内径よりも小さく、さらにコイルスプリング85の内径よりも小さい。球体83を形成する素材としては、種々の材料を用いることができるが、好ましくはインクの比重に対して2倍以下の比重を有する材料で形成することが望ましい。球体83は、バルブ管路81内においてインク中に埋没する。球体83の比重をインクの比重に近づけることで、球体83のインク供給方向(ここでは上下方向)の動作圧を小さくすることができる。
一般に、インクジェット式プリンターに用いられるインクは、水溶性液体であって、比重=1若しくはその近傍の比重を有する。従って、球体83の材料としては、比重<2の材料を選択することが望ましい。また、前記材料は、インクと常時接触しても劣化しない耐薬品性、耐摩耗性の性質を備えていることが望ましい。これらの観点から、球体83の材料としては、ポリアセタール樹脂(比重≒1.5)を用いることが特に好ましい。
シール部材84は、例えば図14(B)に示されているように、球体83の下方であって、バルブ管路81の底壁上(天壁442の上面)の座部813に着座するリング形状を有するシール部品である。シール部材84のリング内径(貫通孔)は、球体83の外径よりも小径である一方、天壁442に穿孔されている供給孔443よりも大径に設定されている。図14(A)に示すように、このシール部材84から球体83が離間したときには、バルブ管路81は開となる。一方、図14(B)に示すように、シール部材84に球体83が接したときには、バルブ管路81は閉となる。
コイルスプリング85は、その下端部がシール部材84に当接し、上端部が分岐ヘッド部82の第1入口ポート821の下端縁828に当接するように、バルブ管路81に内装される圧縮バネである。コイルスプリング85は、シール部材84を座部813に向けて付勢しており、これによりシール部材84は座部813に常時圧接されている。また、コイルスプリング85の内側には球体83が収容されており、コイルスプリング85は球体83のインク供給方向への移動をガイドする役目も果たす。従って、バルブ管路81内における球体83の遊動が規制され、シール部材84に対する球体83の離接により成立する弁構造を安定化させることができる。
Oリング86は、バルブ管路81と分岐ヘッド部82との突き合わせ部をシールしている。Oリング86は、第1入口ポート821の外周面に嵌め込まれ、第1入口ポート821の突設基部829に当接している。
図14(A)は、印刷モードにおける逆流防止機構部38の状態を示す断面図、図14(B)は、図14(A)のA4部拡大図である。図14(A)には、ポンプ部32に収容されたポンプ9(パージ機構/ポンプ装置)が示されている。ポンプ9は、偏心カム91(回転体)及びしごきチューブ92を備えたチューブポンプである。偏心カム91の軸孔91Aには、当該偏心カム91の回動軸となるカム軸93(図4)が挿通される。この偏心カム91には、後述の第1又は第2パージ駆動軸94、95に装着された伝達ギア94G、95G(図22)と、図略のアイドルギアとを介して回転駆動力が与えられる。
しごきチューブ92は、偏心カム91の周面に配置され、偏心カム91のカム軸93回りの回転によってしごかれ、チューブ内の液体(インク)を一端側から他端側へ送り出す。本実施形態では、しごきチューブ92は、連絡管32P及びバイパス管35と一体のチューブである。すなわち、しごきチューブ92の一端側は第1室41の底壁部413に連通し(連絡管32P)、他端側が分岐ヘッド部82の第2入口ポート822に連通し(バイパス管35)、中央部分が偏心カム91の周面に配置されるしごき部とされている。
既述の通り、ポンプ9は、図6に示した印刷モードでは停止状態とされる。この場合、偏心カム91がしごきチューブ92を圧潰して停止した状態となるので、バイパス管35を通るインク供給路は閉止されることになる。一方、図7(A)に示した加圧パージモードでは、ポンプ9は正転駆動(偏心カム91の正回転)される。図14(A)において、偏心カム91の正回転方向は、反時計方向である。このようなポンプ9の正転駆動によって、インクは、第1室41から連絡管32Pを通して吸引され、バイパス管35から合流部aである逆流防止機構部38へ加圧された状態で送り出されることになる。なお、ポンプ9が逆転駆動(偏心カム91の逆回転)されると、図7(B)に示した通り、バイパス管35及び分岐ヘッド部82を通して、連絡室44及び第2室42と、下流管34と、ヘッドユニット21とが負圧化する。
続いて、逆流防止機構部38の動作について説明する。印刷モードではインクは、第2室42から、連絡室44、逆流防止機構部38及び下流管34を通る供給ルートでヘッドユニット21に供給される。このような印刷モードにおいては、図14(B)に示す通り、球体83はシール部材84から離間し、上方へ浮き上がった状態となる。これは、第2室42から下流管34へ至る供給ルートが、印刷モードでは負圧に維持されていることに依る。ヘッドユニット21のインク吐出部22は、インク滴を吐出する度に、前記供給ルート内に存在するインクを吸引することも相俟って、球体83にはインク供給方向へ向かう力が作用し、球体83はインクの液体中においてシール部材84から浮き上がる。
球体83がシール部材84から離間することから、連絡室44の供給孔443は開放された状態となる。一方、インク吐出部22の吸引力によって、球体83が第1入口ポート821の下端縁828に接するまで浮上することもある。図14(A)は、球体83が最上位まで浮上した状態を示している。このような場合でも、第1入口ポート821の周壁には切り欠き部826が具備されているので、インクの通路は確保されている。従って、インクは、連絡室44から分岐ヘッド部82へ通り抜けることができる。
図15(A)は、加圧パージモードにおける逆流防止機構部38の状態を示す断面図、図15(B)は、図15(A)のA5部拡大図である。加圧パージモードでは、ポンプ9の正転駆動によって、バイパス管35を通して加圧されたインクが、分岐ヘッド部82の第2入口ポート822(合流部a)に供給される。このため、バイパス管35と、合流部aよりも下流側に位置する下流管34とが、加圧されたインクによって加圧されることになる。この場合、インクは100kPaを超過するような高圧に加圧される。このような高圧が仮に第2室42に加わった場合、第2室42の一部を区画している大気圧検知フィルム7は、破裂したり、第2区画壁421に対する取り付け部が剥がれたりすることがある。
しかし、本実施形態では、合流部aに加わる加圧力によって、球体83は下方(インク供給方向の上流側)へ押圧され、球体83がシール部材84に接するようになる。図13(B)及び図15(B)は、前記押圧によって、球体83がシール部材84のリング内に嵌り込んでいる状態を示している。コイルスプリング85により座部813へ押し付けられているシール部材84に球体83が接することで、供給孔443は塞がれた状態となる。すなわち、印刷モードにおけるインク供給経路のうち、合流部aよりも上流側に位置する連絡室44及び第2室42が加圧インクによる加圧から遮断される。従って、大気圧検知フィルム7の破損等を未然に防止することができる。
[メンテナンス処理に関する構成の詳細]
図7(A)他で上述した通り、本実施形態のプリンター1では、インク吐出部22に加圧されたインクを送り出す加圧パージモード(パージ処理)が実行される。更に、プリンター1では、クリーニング処理及びキャップ処理が実行される。以下、パージモード(パージ処理)、クリーニング処理及びキャップ処理を含む、ヘッドユニット21に対するメンテナンス処理を実行させるために、プリンター1が具備する具体的な構成について説明する。
図7(A)他で上述した通り、本実施形態のプリンター1では、インク吐出部22に加圧されたインクを送り出す加圧パージモード(パージ処理)が実行される。更に、プリンター1では、クリーニング処理及びキャップ処理が実行される。以下、パージモード(パージ処理)、クリーニング処理及びキャップ処理を含む、ヘッドユニット21に対するメンテナンス処理を実行させるために、プリンター1が具備する具体的な構成について説明する。
<パージ処理について>
図16は、アウターカバー102(図1)を取り外した状態のプリンター1の斜視図、図17は、図16の要部拡大図である。パージ処理は、印刷エリアPに対して右方側(第1方向の一方側)に隣接した第1メンテナンスエリアM1(第1退避領域)で実行される。本実施形態では、第1メンテナンスエリアM1内の右方端(第1方向の一方端)に設定されたパージ処理位置にキャリッジ2が配置された状態において、ヘッドユニット21に対するパージ処理が実行される。キャリッジ2は、左右方向に直線状に延びるキャリッジガイド15に沿って移動する。
図16は、アウターカバー102(図1)を取り外した状態のプリンター1の斜視図、図17は、図16の要部拡大図である。パージ処理は、印刷エリアPに対して右方側(第1方向の一方側)に隣接した第1メンテナンスエリアM1(第1退避領域)で実行される。本実施形態では、第1メンテナンスエリアM1内の右方端(第1方向の一方端)に設定されたパージ処理位置にキャリッジ2が配置された状態において、ヘッドユニット21に対するパージ処理が実行される。キャリッジ2は、左右方向に直線状に延びるキャリッジガイド15に沿って移動する。
キャリッジガイド15は、ガイドベース部材151及びガイドレール152を含む。ガイドベース部材151は、前後方向の断面形状が矩形の中空フレームからなる。ガイドレール152は、ガイドベース部材151の前下部分に取り付けられ、左右方向に直線状に延びている。キャリッジ2の背面フレーム204には、ガイドレール152と係合する被ガイド部やタイミングベルト16への固定部等が備えられ、ガイドレール152によってキャリッジ2の左右方向(第1方向)への移動がガイドされる。キャリッジ2は、タイミングベルト16に取り付けられ、タイミングベルト16の正転又は逆転の周回移動に伴って、ガイドレール152(キャリッジガイド15)に沿って左右方向に移動する。
図18は、プリンター1において、パージ処理が実行される第1メンテナンスエリアM1の位置を示すと共に、その第1メンテナンスエリアM1(A6部)の拡大図を伴う斜視図である。図19は、図18のA7部拡大図である。ここでは、キャリッジ2が第1メンテナンスエリアM1に退避し、且つ、パージ処理の実行位置となるパージ処理位置に配置されている状態を示している。第1メンテナンスエリアM1には、キャリッジ2の上方に位置する既述のインクカートリッジ棚17と、キャリッジ2右側方に位置するエンドフレーム18とが設置されている。インクカートリッジ棚17及びエンドフレーム18は、ベースフレーム101に対して固定的に取り付けられている。
インクカートリッジ棚17は、インクカートリッジIC(図5、図6)を収容する棚であり、キャリッジ2に搭載されているヘッドユニット21(液体噴射ヘッド)よりも高い位置に配置されている。これにより、図6に基づいて説明した、水頭差を利用してインクをインクカートリッジICからヘッドユニット21へ供給可能とする構成が実現されている。インクカートリッジ棚17は不動で、キャリッジ2は左右方向に移動する。各液体供給ユニット3の上流管33とインクカートリッジICとは、キャリッジ2の左右方向への移動に追従できる図略のフレキシブルな供給管で接続されている。
エンドフレーム18は、上下方向に延びる平板からなるフレームである。このエンドフレーム18には、ヘッドユニット21に内蔵されているポンプ9(パージ機構)に駆動力を与える第1駆動モーター96及び第2駆動モーター97が取り付けられている。第1駆動モーター96は第1パージ駆動軸94を回転駆動し、第2駆動モーター97は第2パージ駆動軸95を回転駆動する。第1、第2駆動モーター96、97は、各々正転及び逆転の回転駆動力を発生可能なモーターである。
第1駆動モーター96には、第1駆動軸961と、カップリング962とが付設されている。第1駆動軸961は、第1駆動モーター96の出力軸に連結されている。カップリング962は、第1駆動軸961の先端に取り付けられ、第1駆動モーター96の駆動力を出力する。同様に、第2駆動モーター97には、第2駆動軸971と、カップリング972とが付設されている。第2駆動軸971は、第2駆動モーター97の出力軸に連結されている。カップリング972は、第2駆動軸971の先端に取り付けられ、第2駆動モーター97の駆動力を出力する。
図20は、一つの液体供給ユニット3と第2パージ駆動軸95との位置関係を示す側面図である。図21は、キャリッジ2の側面図、図22は、キャリッジ2の右上後方からの斜視図である。第1パージ駆動軸94及び第2パージ駆動軸95は、左右方向に延びる軸であって、キャリッジ2の右端と左端とに配置された一対のラック203で軸端部が軸支されている。第1パージ駆動軸94はラック203の後端付近で軸支され、第2パージ駆動軸95は、第1パージ駆動軸94よにも前方且つ下方において、ラック203に軸支されている。
第1パージ駆動軸94の右半分の領域には、所定間隔を置いて4つの伝達ギア94Gが取り付けられている。一方、第2パージ駆動軸95の左半分の領域には、所定間隔を置いて4つの伝達ギア95Gが取り付けられている。第1パージ駆動軸94の伝達ギア94Gは、キャリッジ2に搭載された8つの液体供給ユニット3のうち、右寄りの4つの液体供給ユニット3Aの各ポンプ9の偏心カム91に駆動力を伝達するためのギアである。これに対し、第2パージ駆動軸95の伝達ギア95Gは、右寄りの4つの液体供給ユニット3Bの各ポンプ9の偏心カム91に駆動力を伝達するためのギアである。
図20には、一つの液体供給ユニット3Bと第2パージ駆動軸95との位置関係が示されている。この場合、第2駆動モーター97の駆動力が、伝達ギア95Gから図略のアイドルギアを介して偏心カム91に伝達される。偏心カム91の軸孔91Aにはカム軸93が挿通されており、前記駆動力が伝達されると、偏心カム91はカム軸93回りに回転し、ポンプ動作を行う。すなわち、偏心カム91が反時計方向に正転駆動されると、ポンプ9はパージ処理のためにヘッドユニット21に加圧されたインクを送り出す(加圧パージモード)。一方、偏心カム91が時計方向に逆転駆動されると、ヘッドユニット21を所定の負圧に減圧する(減圧モード)。第1パージ駆動軸94の伝達ギア94Gも、同様にして液体供給ユニット3Aの偏心カム91に駆動力を伝達する。
第1パージ駆動軸94の右端付近には、カップリングピン94Cが径方向外側に突設されている。同様に、第2パージ駆動軸95の右端付近には、カップリングピン95Cが径方向外側に突設されている。これらカップリングピン94C、95Cは、それぞれ、第1、第2駆動モーター96、97のカップリング962、972と機械的に連結するためのピンである。すなわち、カップリングピン94C、95Cは、カップリング962、972に備えられている係合溝に嵌り込むことによって、連結構造を形成する。第1、第2パージ駆動軸94、95は、カップリングピン94C、95Cを通して第1、第2駆動モーター96、97の回転駆動力が与えられ、これを伝達ギア94G、95G及び偏心カム91に伝達する。
図23は、第1メンテナンスエリアM1におけるキャリッジ2の動作を示す正面図であって、パージ処理の実行時における動作を示す図である。図23は、キャリッジ2が第1メンテナンスエリアM1内において、パージ処理を実行するパージ処理位置に配置されている状態を示している。前述したように、パージ処理位置は、第1メンテナンスエリアM1内の右方端(第1方向の一方端)に設定されている。なお、パージ処理位置には、パージ処理の実行時にヘッドユニット21から吐出されるインク滴を回収可能なインク受け部ISが配置されている。
キャリッジ2は、第1メンテナンスエリアM1の右端付近に移動し、結果として、カップリングピン94Cとカップリング962、及びカップリングピン95Cとカップリング972との連結部がそれぞれ形成されている。すなわち、カップリングピン94C、95Cとカップリング962、972とは、キャリッジ2が第1メンテナンスエリアM1の右端側のパージ処理位置に移動した際に互いに連結可能な位置に各々配置されている。
図23の状態で第1、第2駆動モーター96、97が正転方向の回転駆動力を発生すると、前記連結部及び第1、第2パージ駆動軸94、95を通して各液体供給ユニット3の偏心カム91が反時計方向に駆動され、ポンプ9は前記加圧パージモード(パージ処理)を実行する。第1、第2駆動モーター96、97が逆転方向の回転駆動力を発生すると、偏心カム91が時計方向に駆動され、ポンプ9は前記減圧モードを実行する。
なお、印刷処理の休止時において、印刷エリアPに対して左方側(第1方向の他方側)に隣接した第2メンテナンスエリアM2(第2退避領域)にキャリッジ2が配置されると、ユーザーによるプリンター1のメンテナンスが行われる。
<クリーニング処理について>
図24は、第1メンテナンスエリアM1におけるキャリッジ2の動作を示す正面図であって、クリーニング処理の実行時における動作を示す図である。図24は、キャリッジ2が第1メンテナンスエリアM1内において、クリーニング処理を実行するクリーニング処理位置に配置されている状態を示している。クリーニング処理位置は、第1メンテナンスエリアM1内において、パージ処理位置に対して左方側(第1方向の他方側)に離れた位置に設定されている。
図24は、第1メンテナンスエリアM1におけるキャリッジ2の動作を示す正面図であって、クリーニング処理の実行時における動作を示す図である。図24は、キャリッジ2が第1メンテナンスエリアM1内において、クリーニング処理を実行するクリーニング処理位置に配置されている状態を示している。クリーニング処理位置は、第1メンテナンスエリアM1内において、パージ処理位置に対して左方側(第1方向の他方側)に離れた位置に設定されている。
パージ処理の実行後において、キャリッジ2は、タイミングベルト16の周回移動に伴ってキャリッジガイド15に沿って左方向に、第1メンテナンスエリアM1内のクリーニング処理位置に向かって移動する。この移動によってキャリッジ2は、第1、第2駆動モーター96、97が取り付けられているエンドフレーム18からは離間する。これにより、第1、第2パージ駆動軸94、95のカップリングピン94C、95Cと、第1、第2駆動モーター96、97側のカップリング962、972とは離間した状態となる。
第1メンテナンスエリアM1内のクリーニング処理位置にキャリッジ2が配置された状態において、クリーニング機構10Aによるヘッドユニット21に対するクリーニング処理が実行される。クリーニング機構10Aは、クリーニング処理の実行において、パージ処理後のヘッドユニット21におけるインク吐出部22のインク吐出面221(液体噴射面)を清掃する。
クリーニング機構10Aは、ホルダ部10A1と、そのホルダ部10A1に保持されるクリーニング部材10A2とを含む。クリーニング機構10Aにおいては、クリーニング部材10A2がヘッドユニット21のインク吐出面221に当接することにより、当該インク吐出面221を清掃する。本実施形態では、クリーニング機構10Aによるクリーニング処理の実行時において、キャリッジ2は、左方側(第1方向の他方側)へ移動する。つまり、クリーニング機構10Aは、クリーニング処理位置に固定的に配置され、キャリッジ2の左方側への移動に伴って移動するヘッドユニット21のインク吐出面221にクリーニング部材10A2が当接することにより、当該インク吐出面221を清掃する。
パージ処理の実行後において、キャリッジ2は、第1、第2パージ駆動軸94、95のカップリングピン94C、95Cと、第1、第2駆動モーター96、97側のカップリング962、972とが、離間した状態となるまで左方向に移動する。その後、キャリッジ2において、ヘッドユニット21が搭載された下段フレーム201と上段フレーム202との連結体が下方側へ移動される。この状態で、キャリッジ2はクリーニング処理位置に向かって左方側へ移動し、この移動に伴って移動するヘッドユニット21のインク吐出面221にクリーニング部材10A2が当接することにより、当該インク吐出面221を清掃する。このように、キャリッジ2の移動によって、ヘッドユニット21に対するクリーニング処理を施すことができる。このため、クリーニング機構10Aを駆動させる構造が不要であり、装置構成を簡素化することができる。
<キャップ処理について>
図25は、第1メンテナンスエリアM1におけるキャリッジ2の動作を示す正面図であって、キャップ処理の実行時における動作を示す図である。図25は、キャリッジ2が第1メンテナンスエリアM1内において、キャップ処理を実行するキャップ処理位置に配置されている状態を示している。キャップ処理位置は、第1メンテナンスエリアM1内において、クリーニング処理位置に対して左方側(第1方向の他方側)に離れた位置に設定されている。
図25は、第1メンテナンスエリアM1におけるキャリッジ2の動作を示す正面図であって、キャップ処理の実行時における動作を示す図である。図25は、キャリッジ2が第1メンテナンスエリアM1内において、キャップ処理を実行するキャップ処理位置に配置されている状態を示している。キャップ処理位置は、第1メンテナンスエリアM1内において、クリーニング処理位置に対して左方側(第1方向の他方側)に離れた位置に設定されている。
クリーニング処理の実行後において、キャリッジ2は、タイミングベルト16の周回移動に伴ってキャリッジガイド15に沿って更に左方向に、第1メンテナンスエリアM1内のキャップ処理位置に向かって移動する。第1メンテナンスエリアM1内のキャップ処理位置にキャリッジ2が配置された状態において、キャップ機構10Bによるヘッドユニット21に対するキャップ処理が実行される。キャップ機構10Bは、キャップ処理の実行において、クリーニング処理後のヘッドユニット21におけるインク吐出部22にキャップを被せる。キャップ処理位置は、例えばプリンター1の休止時に、インク吐出部22にキャップが被せられた状態でキャリッジ2が待機する位置となる。
キャップ機構10Bは、インク吐出部22に被せられるキャップが載置される載置台10B1と、上下方向に弾性変形可能に載置台10B1の下面に接続されるバネ部材10B2とを含む。キャップ処理位置に配置されたキャリッジ2においては、ヘッドユニット21が搭載された下段フレーム201と上段フレーム202との連結体が下方側へ移動される。この下段フレーム201及び上段フレーム202の連結体の下方側への移動により、インク吐出部22のインク吐出面221が載置台10B1に載置されたキャップに当接する。このとき、バネ部材10B2は、圧縮変形し、載置台10B1をインク吐出面221側へ付勢する。これにより、載置台10B1に載置されたキャップがインク吐出部22に被せられる。
インク吐出部22にキャップが被せられた状態では、一定時間内においてはインク詰まりの発生がなく、パージ処理及びクリーニング処理が不要である。このため、プリンター1の休止時におけるメンテナンス処理の実行後に、印刷処理を再開するときには、印刷処理への速やかな移行が可能となる。
以上説明したように、ヘッドユニット21が搭載されたキャリッジ2は、印刷エリアPに対して右方側に隣接した第1メンテナンスエリアM1への移動が可能である。ヘッドユニット21は、キャリッジ2が第1メンテナンスエリアM1内に配置された状態において、ポンプ9(パージ機構)によるパージ処理、クリーニング機構10Aによるクリーニング処理、並びにキャップ機構10Bによるキャップ処理が施される。
ここで、第1メンテナンスエリアM1内でのキャリッジ2の配置位置については、右端から左方側に向かって、パージ処理位置(図23)、クリーニング処理位置(図24)及びキャップ処理位置(図25)の順番に並んでいる。つまり、第1メンテナンスエリアM1内において、パージ処理位置が最も外側に位置し、キャップ処理位置が最も内側に位置し、クリーニング処理位置がその間に位置している。キャリッジ2が第1メンテナンスエリアM1内において左方側に向かって、パージ処理位置、クリーニング処理位置及びキャップ処理位置を通るように移動することにより、パージ処理、クリーニング処理及びキャップ処理を含むヘッドユニット21に対するメンテナンス処理が、適切に実行される。
また、パージ処理位置、クリーニング処理位置及びキャップ処理位置は、第1メンテナンスエリアM1内に集約して設定されている。このため、パージ処理、クリーニング処理及びキャップ処理を含むヘッドユニット21に対するメンテナンス処理の実行時において、キャリッジ2の移動範囲は、第1メンテナンスエリアM1内に限定される。この結果、メンテナンス処理の実行時におけるキャリッジ2の移動距離を短くすることができ、メンテナンス処理の所要時間の短縮化を図ることが可能となる。
また、前述したように、キャリッジ2において、ヘッドユニット21が搭載される下段フレーム201と上段フレーム202との連結体は、キャリッジ2の移動方向となる左右方向と直交する上下方向に移動可能に構成されている。この下段フレーム201及び上段フレーム202の連結体の上下方向の移動によって、ヘッドユニット21の高さ位置は、キャリッジ2がパージ処理位置、クリーニング処理位置及びキャップ処理位置に配置されるごとに、順次低くなるように調整される。具体的には、ヘッドユニット21のインク吐出面221の高さ位置は、キャリッジ2がパージ処理位置に配置された状態の高さ位置H1(図23)が最も高く、クリーニング処理位置に配置された状態の高さ位置H2(図24)、キャップ処理位置に配置された状態の高さ位置H3(図25)の順に、低くなるように調整される。これにより、パージ処理、クリーニング処理及びキャップ処理を含むヘッドユニット21に対するメンテナンス処理が、より適切に実行される。
1 プリンター(液体処理装置)
10A クリーニング機構
10B キャップ機構
15 キャリッジガイド
2 キャリッジ
21 ヘッドユニット(液体噴射ヘッド)
3 液体供給ユニット
9 ポンプ(パージ機構/ポンプ装置)
P 印刷エリア(噴射処理領域)
M1 第1メンテナンスエリア(退避領域)
M2 第2メンテナンスエリア
10A クリーニング機構
10B キャップ機構
15 キャリッジガイド
2 キャリッジ
21 ヘッドユニット(液体噴射ヘッド)
3 液体供給ユニット
9 ポンプ(パージ機構/ポンプ装置)
P 印刷エリア(噴射処理領域)
M1 第1メンテナンスエリア(退避領域)
M2 第2メンテナンスエリア
Claims (3)
- 所定のワークに向けて液体を噴射する噴射処理を実行する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドが搭載され、所定の第1方向に移動可能なキャリッジと、
前記第1方向に沿って直線状に延び、前記キャリッジの前記第1方向への移動をガイドし、前記噴射処理の実行時における前記キャリッジの移動範囲となる噴射処理領域と、前記噴射処理領域に対して前記第1方向の一方側に隣接した退避領域とが設定されたキャリッジガイドと、
前記退避領域内の前記第1方向の一方端に設定されたパージ処理位置に前記キャリッジが配置された状態において、前記液体噴射ヘッドに加圧された液体を送り出すパージ処理を実行するパージ機構と、
前記退避領域内の前記パージ処理位置に対して前記第1方向の他方側に離れたクリーニング処理位置に前記キャリッジが配置された状態において、前記パージ処理後の前記液体噴射ヘッドを清掃するクリーニング処理を実行するクリーニング機構と、
前記退避領域内の前記クリーニング処理位置に対して前記第1方向の他方側に離れたキャップ処理位置に前記キャリッジが配置された状態において、前記クリーニング処理後の前記液体噴射ヘッドにキャップを被せるキャップ処理を実行するキャップ機構と、を備える、液体処理装置。 - 前記キャリッジは、前記第1方向と直交する上下方向に移動可能に構成され、
前記キャリッジの前記上下方向の移動によって、前記液体噴射ヘッドの高さ位置は、前記キャリッジが前記パージ処理位置、前記クリーニング処理位置、及び前記キャップ処理位置に配置されるごとに、順次低くなるように調整される、請求項1に記載の液体処理装置。 - 前記クリーニング機構による前記クリーニング処理の実行時において、前記キャリッジは、前記第1方向の他方側へ移動する、請求項1又は2に記載の液体処理装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018057666A JP2019166772A (ja) | 2018-03-26 | 2018-03-26 | 液体処理装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2018057666A JP2019166772A (ja) | 2018-03-26 | 2018-03-26 | 液体処理装置 |
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JP2019166772A true JP2019166772A (ja) | 2019-10-03 |
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Family Applications (1)
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JP2018057666A Pending JP2019166772A (ja) | 2018-03-26 | 2018-03-26 | 液体処理装置 |
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-
2018
- 2018-03-26 JP JP2018057666A patent/JP2019166772A/ja active Pending
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