JP2019166310A - 医療用チューブ固定具 - Google Patents
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Abstract
【課題】体外側と体内側との間の液密性に優れ、かつ、シール部材の交換が可能な医療用チューブ固定具を提供する。【解決手段】フランジ部110と突出体120とを有する皮膚固定部材100と、医療用チューブ10を保持する医療用チューブ保持機構部200と、を備え、突出体120には、凹部140が設けられており、当該凹部140の側壁面には雌ネジ145が設けられており、医療用チューブ保持機構部200は、凹部140に嵌合した状態で押圧力が付与されると弾性変形して凹部140の側壁面、当該凹部140の底面142及び医療用チューブ10に対して密着するシール部材210と、凹部140に形成されている雌ネジ145に螺合可能な雄ネジ221を有し、当該雄ネジ221を雌ネジ145に螺合させて締め付けを行うと、シール部材210に押圧力を付与するシール部材押圧体220とを有し、シール部材210には切り込み部212が形成されている。【選択図】図1
Description
本発明は、医療用チューブを経皮部において固定する医療用チューブ固定具に関する。
医療用チューブを体外から体内に挿通させる際に、当該医療用チューブを経皮部において固定する医療用チューブ固定具は種々提案されている。このような医療用チューブ固定具としては、例えば、特許文献1に記載されている経皮カテーテル留置セットを例示できる。
図16は、特許文献1に記載されている経皮カテーテル留置セット900を模式的に示す断面図である。特許文献1に記載されている経皮カテーテル留置セット900は、図16に示すように、カテーテル910を挿通させるための挿通孔921及び当該挿通孔921よりも大径の開口が形成されている凹部922を有するとともに外周に雄ネジ923を有する経皮端子920と、当該経皮端子920の凹部922に嵌合してカテーテル910を保持するための環状ゴム弾性体940と、カテーテル910において環状ゴム弾性体940で保持される部分に環装される硬質チューブ950と、経皮端子920の雄ネジ923に螺合する雌ネジ961が形成されているとともに上面962の中央部にカテーテル910を挿通させるため挿通孔963が形成されているキャップ960とを備えている。なお、キャップ960の上面962に形成されている挿通孔963は、内側に向かって拡径するテーパー孔となっている。このため、挿通孔963を「テーパー孔963」と表記する。
このように構成されている経皮カテーテル留置セット900の組み立て方は、まず、キャップ960をフリーな状態(雌ネジ961が経皮端子920の雄ネジ923に螺合していない状態)にしておき、カテーテル910を環状ゴム弾性体940の中心孔と経皮端子920の挿通孔921に挿通させる。このとき、カテーテル910に環装されている硬質チューブ950が環状ゴム弾性体940の中心孔と経皮端子920の挿通孔921に対応する位置となるようにする。
この状態で、キャップ960の雌ネジ961を経皮端子920の雄ネジ923に螺合させて締め付けると、環状ゴム弾性体940は、キャップ960によって押圧される。環状ゴム弾性体940がキャップ960によって押圧されると、環状ゴム弾性体940は、キャップ960のテーパー孔963によって、カテーテル910に対して径方向への押圧力を与え、それによって、カテーテル910が経皮端子920に固定される。なお、カテーテル910には径方向への押圧力が与えられるが、カテーテル910には硬質チューブ950が環装されているため、径方向の押圧力によってカテーテル910の変形を防止できる。
なお、このように構成されている経皮カテーテル留置セット900は、当該経皮カテーテル留置セット900を患者の経皮部すなわち皮膚970に取り付けたときには、経皮端子920の下側フランジ924を含む下半分が皮膚970内に埋設された状態となる。
特許文献1に記載されている経皮カテーテル留置セット900においては、キャップ960は、当該キャップ960の内周面に形成されている雌ネジ961が経皮端子920の外周面に形成されている雄ネジ923に螺合して締め付けられて行くものである。このため、キャップ960の締め付け動作は、経皮端子920の上端部920a(雄ネジ923の先端部)によって規制されてしまう。従って、キャップ960の締め付けを行っている際に、キャップ960の頭部962の内壁面962aが、経皮端子920の上端部920aに当接すると、それ以降の締め付け動作が規制されてしまい、この時点で、環状ゴム弾性体940に対する押圧力も規制されてしまうこととなる。
すなわち、環状ゴム弾性体940に対する押圧力は、キャップ960の頭部962の内壁面962aが、経皮端子920の上端部920aに当接した時点で規制されてしまうこととなる。このため、特許文献1に記載されている経皮カテーテル留置セット900においては、環状ゴム弾性体940に対して十分な押圧力を付与できない場合もある。環状ゴム弾性体940に対して十分な押圧力を付与できないと、環状ゴム弾性体940を凹部922全体に密着させることができないため、体外側と体内側との間の液密性に劣るといった課題がある。
また、特許文献1に記載されている経皮カテーテル留置セット900は、医療用チューブがカテーテルであるとし、当該カテーテルを皮膚970に固定する場合を想定したものである。しかしながら、カテーテルとは異なる医療用チューブを皮膚970において固定する場合には、特許文献1に記載されている経皮カテーテル留置セット900では適応できない場合もある。
例えば、補助人工心臓システムの場合を例にとって説明すると、当該補助人工心臓システムにおいては、体内に埋設される血液ポンプと、当該血液ポンプを体外において制御する制御装置との間に配設されるケーブル(ドライブラインともいう。)が医療用チューブに相当するものとなる。なお、ドライブラインの内部には、血液ポンプを制御するための電気信号線が内蔵されている。また、血液ポンプ内の潤滑、冷却及びシール性能維持などの機能を有するパージ液を循環させるようにしている補助人工心臓システムの場合には、電気信号線の他に、パージ液循環パイプもドライブラインに内蔵されている。
このような補助人工心臓システムは、長期間、使用する場合も多く、しかも、補助人工心臓システムの使用中は、制御装置による血液ポンプの制御を止めることができない。従って、医療用チューブであるドライブラインを皮膚970において固定する医療用チューブ固定具に、長期間の使用によって劣化してしまう部品が存在した場合、劣化した部品の交換は、制御装置による血液ポンプの制御を止めることなく可能とすることが要求される。
ここで、長期間の使用によって劣化してしまう部品としては、シール部材を例示できる。当該シール部材は、上述した特許文献1に記載されている経皮カテーテル留置セット900においては、環状ゴム弾性体940(図16参照。)に相当する。このため、経皮カテーテル留置セット900を、仮に、補助人工心臓システムにおいてドライブラインを経皮部に固定するための医療用チューブ固定具として用いた場合、環状ゴム弾性体940に相当するシール部材を交換するには、医療用チューブであるドライブラインを制御装置から外した状態として、環状ゴム弾性体940に相当するシール部材をドライブラインの外周面をスライドさせて、ドライブラインの端部から取り外すといった作業を行う必要がある。
しかしながら、前述したように、補助人工心臓システムにおいては、制御装置による血液ポンプの制御を止めることができないため、ドライブラインを制御装置から外すことはできないこととなる。このため、特許文献1に記載されている経皮カテーテル留置セット900においては、当該特許文献1に記載されている経皮カテーテル留置セット900を補助人工心臓システムに適応した場合、環状ゴム弾性体940に相当するシール部材の交換には困難が伴うといった課題もある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、体外側と体内側との間の液密性に優れ、かつ、シール部材の交換が可能な医療用チューブ固定具を提供することを目的とする。
[1]本発明の医療用チューブ固定具は、医療用チューブを体外から体内に挿通させる際に、当該医療用チューブを経皮部において固定する医療用チューブ固定具であって、前記経皮部に埋め込まれるフランジ部と当該フランジ部から少なくとも体外側に突出する筒状の突出体とを有する皮膚固定部材と、前記皮膚固定部材の前記突出体に挿入された状態で取り付けられ、前記医療用チューブを保持する医療用チューブ保持機構部と、を備え、前記皮膚固定部材の前記突出体には、開口が体外側を向いた凹部が設けられており、当該凹部の底面には、医療用チューブの挿通が可能な第1挿通孔が体内側に貫通するように設けられているとともに前記凹部の開口と底面との間の側壁面には雌ネジが設けられており、前記医療用チューブ保持機構部は、弾性を有するとともに液密性を有する材料でなり、前記医療用チューブの挿通が可能な第2挿通孔を有し、前記医療用チューブを前記第2挿通孔に挿通させた状態で前記凹部に嵌合可能となっており、当該凹部に嵌合した状態で体外側から体内側に向かう方向の押圧力が付与されると弾性変形して前記凹部の側壁面、当該凹部の底面及び前記医療用チューブに対して密着するシール部材と、前記シール部材よりも体外側の位置に設けられ、前記凹部に形成されている雌ネジに螺合可能な雄ネジを有するとともに、当該雄ネジの中心軸に沿って前記医療用チューブの挿通が可能な第3挿通孔を有し、前記医療用チューブを前記第3挿通孔に挿通させた状態で、当該雄ネジを前記雌ネジに螺合させて締め付けを行うと、前記シール部材に押圧力を付与するシール部材押圧体と、を有し、前記シール部材には、前記医療用チューブの長手方向に沿って当該シール部材の一端側から他端側にまで達し、かつ、径方向においては、前記第2挿通孔にまで達する切り込み部が形成されていることを特徴とする。
本発明の医療用チューブによれば、シール部材押圧体を皮膚固定部材に取り付けるための取り付け構造は、シール部材押圧体の雄ネジを皮膚固定部材の凹部に形成されている雌ネジに螺合させてシール部材押圧体を締め付けることによって、シール部材押圧体を皮膚固定部材に取り付ける構造となっている。
このため、特許文献1に記載されている経皮カテーテル留置セット900のように、キャップ960の頭部962の内壁面962aが経皮端子920の上端部920aに当接すると、それ以降の締め付け動作が規制されてしまい、この時点で、キャップ960(シール部材押圧体)の環状ゴム弾性体940(シール部材)に対する押圧力も規制されてしまうといったことがなくなり、シール部材に対する押圧力の規制を可能な限り小さくできる。
これにより、シール部材に十分な押圧力を付与することができ、シール部材を皮膚固定部材の凹部内において隙間なく弾性変形させることができる。それによって、シール部材を、凹部の側壁面、当該凹部の底面及び医療用チューブに対して隙間なく密着させることができる。このとき、シール部材は、凹部の側壁面、凹部の底面及び医療用チューブの外周面に対してそれぞれ面接触によって密着している。このように、シール部材が、凹部の側面、凹部の底面及び医療用チューブの外周面に対してそれぞれ面接触で密着しているため、体外側と体内側とが高い液密性を有するものとなる。
また、シール部材は、切り込み部が設けられていることから交換可能である。このため、例えば、シール部材が劣化した場合などにおいて、シール部材の交換が必要となったとしても、シール部材を交換することが可能である。
このように、本発明の医療用チューブ固定具によれば、体外側と体内側との間の液密性に優れ、かつ、シール部材の交換が可能な医療用チューブ固定具を提供することができる。
また、本発明の医療用チューブ固定具においては、当該医療用チューブ固定具における医療用チューブ保持機構部は、シール部材が最も体内側に配置されているため、生体組織である皮下組織と癒着する部品は、皮膚固定部材の他には、シール部材のみである。しかも、シール部材は、シール部材押圧体により押圧されて弾性変形して凹部を埋めた状態となっており、凹部の側壁面、凹部の底面及び医療用チューブの外周面との間が面接触によって密着しているため、生体組織に接触する部分は、シール部材のわずかな部分である。従って、シール部材の癒着範囲も最小限に抑えることができるため、仮に、シール部材を交換する必要が生じた場合であっても、シール部材の交換が容易なものとなる。
また、本発明の医療用チューブ固定具においては、シール部材が、体外側と体内側とを高い液密性を有してシールする役目の他に、経皮部において医療用チューブが動かないように医療用チューブを把持する役目をなしている。このため、医療用チューブ固定具における医療用チューブ保持機構部を構成する主な部品は、シール部材と、当該シール部材を押圧するシール部材押圧体とで済み、部品点数を削減することができ、構造の単純化が可能となるといった効果も得られる。
[2]本発明の医療用チューブ固定具においては、前記医療用チューブ保持機構部は、前記シール部材と前記シール部材押圧体との間に介在されるワッシャーを有し、当該ワッシャーは、当該ワッシャーと前記シール部材押圧体との間の摩擦力が、当該ワッシャーと前記シール部材との間の摩擦力よりも小さい材料でなることが好ましい。
このようなワッシャーをシール部材とシール部材押圧体との間に介在させることによって、シール部材押圧体の締め付け操作を行ったときに、シール部材押圧体の回転力がシール部材に伝わってしまうことを防止できる。これにより、シール部材押圧体の締め付け操作を行ったときに、シール部材がシール部材押圧体の回転とともに回転してしまう、いわゆる「共回り」を防止できる。
[3]本発明の医療用チューブ固定具においては、前記皮膚固定部材は、前記皮膚固定部材は、前記フランジ部よりも体外側で当該フランジ部とは離間した位置に設けられている鍔部をさらに有し、前記鍔部は、前記皮膚固定部材を前記経皮部に固定したときに、当該鍔部の体内側に向く面が前記経皮部の体外側表面に接するように設けられていることが好ましい。
このような鍔部を有することによって、皮膚固定部材を皮膚に固定したときに、当該皮膚固定部材を安定した状態で皮膚に固定することができる。
[4]本発明の医療用チューブ固定具においては、前記フランジ部は、生体適合性を有する多孔質の金属でなることが好ましい。
このように、フランジ部が、生体適合性を有する多孔質の金属でなることにより、皮膚の組織とフランジ部とが癒着し易くなり、細菌などが生体内に侵入することを防ぐことができ、感染症の発生を抑制する効果を高めることができる。なお、多孔質の金属としては、例えば、チタンをスポンジ状に形成したものを用いることができるが、これに限定されるものではない。
[5]本発明の医療用チューブ固定具においては、前記多孔質の金属でなるフランジ部と前記突出体とは別部品で構成され、前記突出体は、体外側だけでなく体内側にも突出するように設けられており、前記突出体のうち体内側に突出している突出体を体内側突出体としたとき、前記多孔質の金属でなるフランジ部の中央部には、前記体内側突出体を挿通可能な空間部が形成されており、当該空間部に前記体内側突出体を挿通させた状態で前記多孔質の金属でなるフランジ部と前記体内側突出体とが接合されていることが好ましい。
フランジが多孔質の金属でなることから、当該多孔質の金属でなるフランジ部と突出体とは互いに別部品によって構成されたものとなる。このため、多孔質の金属でなるフランジ部の中央部に、体内側突出体を挿通可能な空間部を形成し、当該空間部に体内側突出体を挿通させた状態で多孔質の金属でなるフランジ部と体内側突出体とを接合することによって、フランジ部が多孔質の金属でなる皮膚固定部材とすることができる。
[6]本発明の医療用チューブ固定具においては、前記フランジ部は、生体適合性を有する不織布でなることも好ましい。
このように、フランジ部が、生体適合性を有する不織布でなることにより、皮膚の組織とフランジ部110Aとが癒着し易くなり、細菌などが生体内に侵入することを防ぐことができ、感染症の発生を抑制する効果を高めることができる。また、フランジ部が柔らかい素材でなるため、当該フランジ部を皮膚に埋め込んだ場合、生体に与える負担を軽減できるといった効果も得られる。
[7]本発明の医療用チューブ固定具においては、前記不織布でなるフランジ部と前記突出体とは別部品で構成され、前記突出体は、体外側だけでなく体内側にも突出するように設けられており、前記突出体のうち体内側に突出している突出体を体内側突出体としたとき、前記不織布でなるフランジ部の中央部には、前記体内側突出体を挿通可能な空間部が形成されており、当該空間部に前記体内側突出体を挿通させた状態で前記不織布でなるフランジ部と前記体内側突出体とが接合されていることが好ましい。
このように、フランジが不織布でなることから、当該不織布でなるフランジ部と突出体とは互いに別部品によって構成される。このため、不織布でなるフランジ部の中央部に、体内側突出体を挿通可能な空間部を形成し、当該空間部に体内側突出体を挿通させた状態で不織布でなるフランジ部と体内側突出体とを接合することによって、フランジ部が不織布でなる皮膚固定部材とすることができる。
[8]本発明の医療用チューブ固定具においては、前記不織布として、PTFE(polytetrafluoroethylene)フェルトが用いられていることが好ましい。
PTFEフェルトは、耐食性に優れ、生体組織との適合性の高い材料であるため、生体内に埋め込まれる部材として適するとともに、皮膚の組織との癒着性にも優れたものとなる。
[9]本発明の医療用チューブ固定具においては、前記皮膚固定部材及び医療用チューブ保持機構部に加えて、前記シール部材押圧体の体外側の端部に取り付けられる防水キャップをさらに備え、前記防水キャップは、弾性を有するとともに液密性を有する材料でなり、前記シール部材押圧体と前記医療用チューブの間に形成される隙間を埋めるように挿入可能な隙間挿入部を有し、前記医療用チューブの外周面に密着した状態で当該医療用チューブの長手方向に沿ってスライド可能となるように当該医療用チューブに環装されることが好ましい。
このような防水キャップを備えることによって、本発明の医療用チューブ固定具は体外側において防水仕様とすることができ、水などの液体が医療用チューブ保持機構部に侵入することを防止できる。また、液体の侵入だけでなく、埃などが医療用チューブ保持機構部に侵入することを防止できる。
[10]本発明の医療用チューブ固定具においては、前記医療用チューブは、補助人工心臓システムにおいて体内に設けられる血液ポンプと体外に設けられる制御装置の間を接続するケーブルであることが好ましい。
このように、本発明の医療用チューブ固定具においては、医療用チューブが、補助人工心臓システムにおいて体内側に設けられる血液ポンプと体外側に設けられる制御装置の間を接続するケーブル(ドライブライン)であることによって、本発明の医療用チューブ固定具は特に大きな効果を有する。すなわち、補助人工心臓システムにおいて使用する医療用チューブ固定具は、体外側と体内側との間の液密性に優れることは勿論、補助人工心臓システムの使用中は、制御装置による血液ポンプの制御を止めることができないため、制御装置による血液ポンプの制御を止めることなく、劣化部品であるシール部材の交換が可能であることが求められる。これらの点を鑑みた場合、本発明の医療用チューブ固定具によれば、体外側と体内側との間の液密性に優れることは勿論のこと、シール部材に切り込み部が設けられていることから、補助人工心臓システムの使用中においても、制御装置による血液ポンプの制御を止めることなく、当該シール部品の交換が可能となる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1を説明するために示す図である。なお、図1は実施形態1に係る医療用チューブ固定具1を組み立てる前の状態を示している。また、図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)を矢印A方向から見た斜視図であり、図1(c)は図1(a)を矢印B方向から見た斜視図である。以下、図1を参照して、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1を説明する。
図1は、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1を説明するために示す図である。なお、図1は実施形態1に係る医療用チューブ固定具1を組み立てる前の状態を示している。また、図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)を矢印A方向から見た斜視図であり、図1(c)は図1(a)を矢印B方向から見た斜視図である。以下、図1を参照して、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1を説明する。
実施形態1に係る医療用チューブ固定具1は、皮膚に固定される皮膚固定部材100と、当該皮膚固定部材100の突出体120に挿入された状態で取り付けられ、医療用チューブ10を保持する医療用チューブ保持機構部200と、医療用チューブ保持機構部200に取り付けることによって、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1を体外側において防水仕様とするための防水キャップ300を備えている。これら皮膚固定部材100、医療用チューブ保持機構部200及び防水キャップ300についての詳細な説明は後述する。
なお、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1において、固定対象となる医療用チューブ10は、例えば、補助人工心臓システムにおいて体内側に設けられる血液ポンプと体外側に設けられる制御装置の間を接続するケーブルであるとする。当該ケーブルはドライブラインとも呼ばれているものであるが、以下の説明においては、当該ドライブラインを「医療用チューブ10」と表記するものとする。
図2は、補助人工心臓システム400の一例を説明するために示す図である。補助人工心臓システム400は、図2に示すように、体内に埋め込まれる血液ポンプ410と、当該血液ポンプ410と心臓の血流とを接続するための人工血管420,430と、血液ポンプ410を体外において制御する機能を有する制御装置440と、血液ポンプ410と制御装置440との間に配設されるドライブラインとしての医療用チューブ10と、当該医療用チューブ10を経皮部において固定する医療用チューブ固定具1とを有している。なお、医療用チューブ固定具1は、後述する実施形態2及び実施形態3においては、医療用チューブ固定具1A,1Bとしている。
なお、図2においては、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1及び後述する実施形態2,3に係る医療用チューブ固定具1A,1Bは簡略化して示されている。また、医療用チューブ10の内部には、電気信号線(図示せず。)が内蔵されており、血液ポンプ410内の潤滑、冷却及びシール性能維持などの機能を有するパージ液を循環させるようにしている補助人工心臓システムの場合には、電気信号線の他に、パージ液循環パイプ(図示せず。)も内蔵されている。
ここで、医療用チューブ10の外径は8mm程度であるとする。ただし、医療用チューブ10の外径は8mmに限られるものではない。また、図1においては特に明示されていないが、制御装置440と血液ポンプ410との間に配設されている医療用チューブ10のうち、少なくとも、生体への入口付近(医療用チューブ固定具1)から血液ポンプ410との間の外周面には、ファブリックとも呼ばれている組織代用人工繊維布が被覆されている。
図3は、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1の構成部品を個々の部品ごとに説明するために示す図である。なお、図3は図1に示す医療用チューブ固定具1の構成部品を医療用チューブ10から取り出して示す斜視図であり、図3においては、図示の右側から図3(a)、図3(b)、図3(c)とする。ここで、図3(a)は皮膚固定部材100を示しており、図3(b)は医療用チューブ保持機構部200の構成部品(シール部材210、ワッシャー230及びシール部材押圧体220)を示しており、図3(c)は防水キャップ300を示している。
以下、皮膚固定部材100、医療用チューブ保持機構部200及び防水キャップ300を、図3及び前述した図1を参照して順次詳細に説明する。
まず、皮膚固定部材100について説明する。皮膚固定部材100は、図1及び図3(a)に示すように、外観構成としては、皮膚500(図6参照。)に埋め込まれるフランジ部110と、当該フランジ部110から少なくとも体外側に突出して設けられている筒状の突出体120と、フランジ部110よりも体外側で、かつ、フランジ部110とは離間した位置に設けられている鍔部130とを有している。
なお、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1においては、突出体120は、体外側だけでなく体内側にも突出するように設けられている(図1(a)及び図1(c)参照。)。ここで、突出体120のうち体内側に突出している突出体を「体内側突出体120a」とする。また、鍔部130は、皮膚固定部材100を皮膚500(図6参照。)に固定したときに、当該鍔部130の体内側に向く面130a(図1(a)参照。)が皮膚500の表面500a(図6参照。)に接するように設けられている。これらは、後述する実施形態2及び3に係る医療用チューブ固定具1A,1Bにおいても同様である。
また、皮膚固定部材100の突出体120には、開口141が体外側を向いた凹部140が設けられている。そして、当該凹部140の底面142(図3(a)参照。)には、医療用チューブ10の挿通が可能な挿通孔(第1挿通孔とする。)143が体内側に貫通するように設けられている。また、凹部140の開口141と底面142との間の側壁面144には雌ネジ145が設けられている。なお、凹部140の底面142は、突出体120のうち体内側突出体120aに形成されている。
このように構成されている皮膚固定部材100は、生体組織である皮膚に固定されるものであるため、耐食性に優れ、かつ、生体組織との適合性の高い金属で形成されていることが好ましい。耐食性に優れ、生体組織との適合性の高い金属としては、例えば、チタン、チタン合金などを例示できる。
次に、医療用チューブ保持機構部200について説明する。医療用チューブ保持機構部200は、図1及び図3(b)に示すように、シール部材210と、シール部材210に押圧力を付与するシール部材押圧体220と、シール部材210とシール部材押圧体220との間に介在されるワッシャー230とを有している。
シール部材210は、押圧力が付与されることによって弾性変形可能な材料でなり、図3(b)に示すように、外径d1に比べて高さh1が小さい円柱形状をなしている。また、シール部材210は、医療用チューブ10の挿通が可能な挿通孔(第2挿通孔とする。)211を有している。当該第2挿通孔211の径d2は医療用チューブ10の外径d3(図1(a)参照。)とほぼ同じとしている。
また、シール部材210には、「切り込み部212」が形成されている。当該切り込み部212は、シール部材210の高さh1方向においては、医療用チューブ10の長手方向に沿って当該シール部材210の一端側から他端側にまで達し、かつ、径方向においては、第2挿通孔211にまで達するように形成されている。
このように構成されているシール部材210は、医療用チューブ10を第2挿通孔211に挿通させた状態で皮膚固定部材100の凹部140に嵌合可能となっている。そして、当該凹部140に嵌合した状態で、体外側から体内側に向かう方向の押圧力が付与されると弾性変形して凹部140の側壁面144、凹部140の底面142及び医療用チューブ10の外周面に対して密着して、当該シール部材210を境にして体外側と体内とを液密とする。
また、シール部材210は、「切り込み部212」が形成されていることによって、シール部材210を医療用チューブ10に取り付ける際には、切り込み部212を広げて医療用チューブ10の外周面の側から押し込むことによって医療用チューブ10に取り付けることができる。また、医療用チューブ10からシール部材210を取り外す際には、切り込み部212を広げて医療用チューブ10の外周面の側から取り外すことができる。
このため、シール部材210を医療用チューブ10に対して着脱する際には、シール部材210の挿通孔(第2挿通孔)211に医療用チューブ10の端部に挿通させて、シール部材210を医療用チューブ10の所定の取り付け位置にまでスライドさせたり、シール部材212の取り付け位置から医療用チューブ10の長手方向に沿ってスライドさせて医療用チューブ10の端部から取り外したりするといった着脱作業が不要となる。これにより、シール部材210の医療用チューブ10に対する着脱が容易なものとなることは勿論のこと、医療用チューブ10の端部が制御装置などの機器に接続されている場合においては、医療用チューブ10を機器から取り外す必要が無くなる。
シール部材押圧体220は、シール部材210に押圧力を付与してシール部材210を押圧変形させるものである。シール部材押圧体220は、図1及び図3(b)に示すように、シール部材210よりも体外側の位置に設けられ、皮膚固定部材100の凹部140に形成されている雌ネジ145に螺合可能な雄ネジ221を有するとともに、当該雄ネジ221の中心軸に沿って医療用チューブ10の挿通が可能な挿通孔(第3挿通孔とする。)222を有している。また、シール部材押圧体220は、雄ネジ221を凹部140の雌ネジ145に螺合させて締め付けを行う際に、締め付け力を与えるためのネジ頭部223を有している。このネジ頭部223は、スパナなどの締め付け工具で締め付けが可能となるように、例えば、6角形ボルトと同様の形状となっている。
このように構成されているシール部材押圧体220は、医療用チューブ10を第3挿通孔222に挿通させた状態で、当該雄ネジ221を凹部140の雌ネジ145に螺合させて締め付けを行うと、シール部材210に押圧力を付与してシール部材210を弾性変形させる。
また、シール部材押圧体220は、ネジ頭部223に第3挿通孔222よりも大径の凹部224が設けられている。なお、上述の3挿通孔222は、当該凹部224の底面から体内側方向に向かって形成されている。ネジ頭部223に設けられている凹部224は、第3挿通孔222よりも大径となっているために、医療用チューブ10を第3挿通孔222に挿通させた状態とすると、ネジ頭部223においては、凹部224と医療用チューブ10との間には隙間225(図1(b)参照。)が生じる。当該隙間225は、防水キャップ300を挿入するためのものである。このため、隙間225を、防水キャップ挿入用隙間225と表記する。
また、防水キャップ挿入用隙間225の内壁面には、周方向の全周に渡って凹溝226(図3(b)参照。)が形成されている。当該凹溝226は、防水キャップ300が挿入されたときに、防水キャップ300に形成されている凸部321(後述する。)を嵌合させるためのものである。
ところで、当該シール部材押圧体220は、皮膚固定部材100とは異なり、生体組織に直接的に接触するものではないが、皮膚固定部材100と同様、耐食性に優れ、生体組織との適合性の高い金属(例えば、チタン、チタン合金など)で形成されていることが好ましいが、ステンレス鋼などであってもよい。
ワッシャー230は、医療用チューブ10を挿通可能な挿通孔(第4挿通孔とする。)231を有している。なお、第4挿通孔231は、当該第4挿通孔231に医療用チューブ10を挿通させたときに、医療用チューブ10との間に多少の隙間が生じる程度の径を有することが好ましい。また、ワッシャー230は、当該ワッシャー230とシール部材押圧体220との間の摩擦力が、当該ワッシャー230とシール部材210との間の摩擦力よりも小さい材料でなる。このため、ワッシャー230の材料としては金属が好ましく、例えば、シール部材押圧体220と同様の金属を用いることができる。
このようなワッシャー230をシール部材210とシール部材押圧体220との間に介在させることによって、シール部材押圧体220の締め付け操作を行ったときに、シール部材押圧体220の回転力がシール部材210に伝わってしまうことを防止できる。
すなわち、仮に、シール部材210とシール部材押圧体220との間にワッシャー230を介在させずに、シール部材押圧体220の締め付け操作を行うと、シール部材押圧体220の回転力がシール部材210に伝わってしまい、シール部材210がシール部材押圧体220の回転とともに回転してしまう、いわゆる「共回り」が生じてしまうこととなる。
シール部材の「共回り」が生じると、当該シール部材210と密着状態にある医療用チューブ10も回ってしまうこととなる。医療用チューブ10が回ってしまうと、患者に苦痛を与えたり、医療用チューブ10と当該医療用チューブが接続されている機器(例えば、補助人工心臓システムの血液ポンプや当該血液ポンプを制御する制御装置など)との接続状態にも悪影響を及ぼしたりするといった不具合が生じることとなる。シール部材210とシール部材押圧体220との間に金属でなるワッシャー230を介在させることによって、このような不具合の発生を解消できる。
続いて、防水キャップ300について説明する。防水キャップ300は、シリコーンなどの弾性を有するとともに液密性を有する材料でなる。防水キャップ300は、図1及び図3(c)に示すように、医療用チューブ10の外周面を当該医療用チューブ10の長手方向に沿ってスライド可能に当該医療用チューブ10に環装されている。
また、防水キャップ300は、医療用チューブ10を挿通可能な挿通孔(第5挿通孔とする。)310を有している。第5挿通孔310は、医療用チューブ10の外径d3(図1参照。)とほぼ同じ程度の内径を有し、医療用チューブ10を第5挿通孔310に挿通させた状態とすると、医療用チューブ10に対して弾性力で密着するようになっている。但し、防水キャップ300は、医療用チューブ10に対して弾性力で密着した状態であっても、医療用チューブ10の長手方向に沿ってスライドさせることができるようになっている。
また、防水キャップ300は、シール部材押圧体220のネジ頭部223において医療用チューブ10との間に形成される防水キャップ挿入用隙間225に挿入可能な隙間挿入部320を有している。このため、防水キャップ300の隙間挿入部320がネジ頭部223に形成される防水キャップ挿入用隙間225に挿入されることによって、ネジ頭部223と医療用チューブ10との間が密封された状態となる。これにより、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1は体外側において防水仕様となる。
なお、防水キャップ300の隙間挿入部320の外周面には、周方向の全周に渡って凸部321が隙間挿入部320に一体形成されている。このため、隙間挿入部320がネジ頭部223に形成されている防水キャップ挿入用隙間225に挿入された際には、ネジ頭部223に形成されている凹溝226に、隙間挿入部320に形成されている凸部321が嵌合する。
これにより、防水キャップ300をシール部材押圧体220に対して確実に取り付けることができ、防水キャップ300を意図的に取り外さない限り、防水キャップが自然に脱落してしまうといった不具合の発生を防止できる。また、防水キャップ300がシール部材押圧体220に対して確実に取り付けられていることにより、シール部材押圧体220の凹部140に対する締め付け(ネジ止め)が緩んでしまうといった不具合の発生も防止できる。
また、隙間挿入部320の付け根部には、鍔部322が隙間挿入部320に一体形成されている。この鍔部322は、隙間挿入部320が防水キャップ挿入用隙間225に挿入された状態においては、ネジ頭部223に当接した状態となる。これにより、ネジ頭部223に形成されている防水キャップ挿入用隙間225の密封性をより確実なものとすることができ、より高い防水性が得られる。
次に、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1の組み立て手順について説明する。
図4は、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1の組み立て工程を説明するためのフローチャートである。図4に示すように、まず、皮膚固定部材100を医療用チューブ10に取り付ける(第1工程S1)。具体的には、皮膚固定部材100の挿通孔(第1挿通孔)143に医療用チューブ10を挿通させて、皮膚固定部材100を医療用チューブ10に環装させた状態とする。
図4は、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1の組み立て工程を説明するためのフローチャートである。図4に示すように、まず、皮膚固定部材100を医療用チューブ10に取り付ける(第1工程S1)。具体的には、皮膚固定部材100の挿通孔(第1挿通孔)143に医療用チューブ10を挿通させて、皮膚固定部材100を医療用チューブ10に環装させた状態とする。
続いて、シール部材210を医療用チューブに取り付けた後に、皮膚固定部材100の凹部140に嵌合させる(第2工程S2)。具体的には、シール部材210を医療用チューブ10に環装させた状態として、シール部材210をスライドさせて皮膚固定部材100の凹部140に嵌合させる。
続いて、ワッシャー230を医療用チューブ10に取り付ける(第3工程S3)。具体的には、ワッシャー230の挿通孔(第4挿通孔)231に医療用チューブ10を挿通させて、ワッシャー230を医療用チューブ10に環装させた状態とする。
その後、シール部材押圧体220を医療用チューブ10に取り付ける(第4工程S4)。具体的には、シール部材押圧体220の挿通孔(第3挿通孔)222に医療用チューブ10を挿通させて、シール部材押圧体220を医療用チューブ10に環装させた状態とする。この状態で、シール部材押圧体220の雄ネジ221を皮膚固定部材100の凹部140に形成されている雌ネジ145に螺合させて、シール部材押圧体220のネジ頭部223を回転させることによって締め付けを行う。このとき、シール部材210とシール部材押圧体220との間には、ワッシャー230が介在されているため、シール部材押圧体220の締め付けを行ったときに、シール部材押圧体220の締め付けに伴って、シール部材210を回転させてしまうといった「共回り」を防止することができる。
その後、防水キャップ300をシール部材押圧体220に取り付ける(第5工程S5)。具体的には、防水キャップ300の挿通孔(第5挿通孔)310に医療用チューブ10を挿通させて、防水キャップ300を医療用チューブ10に環装させた状態とする。この状態で、当該防水キャップ300をスライドさせて隙間挿入部320を防水キャップ挿入用隙間225に挿入する。このとき、ネジ頭部223に形成されている凹溝226に、隙間挿入部320に形成されている凸部321が嵌合するまで挿入する。これにより、隙間挿入部320に一体形成されている鍔部322がネジ頭部223に当接した状態となる。
上記第1工程から第5工程を実施することによって、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1組み立てることができる。
図5は、図4に示す各工程によって組み立てられた後の医療用チューブ固定具1を示す図である。なお、図5(a)は斜視図であり、図5(b)は要部を断面で示した平面図である。図5に示すように、シール部材210は、シール部材押圧体220の押圧力によって、皮膚固定部材100における凹部140内において隙間なく弾性変形した状態となる。すなわち、シール部材210は、凹部140の側壁面144、当該凹部140の底面142に隙間なく密着し、かつ、医療用チューブ10に対しても隙間なく密着した状態となっている。なお、シール部材210には、切り込み部212が設けられているが、シール部材押圧体220の押圧力により凹部140内において隙間なく弾性変形することによって、当該切り込み部212におけるそれぞれ対向する端部同士も密着状態となることが確かめられた。
図6は、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1を経皮部すなわち皮膚500に固定させた状態を示す要部断面図である。なお、医療用チューブ固定具1を皮膚500に固定させた状態というのは、皮膚固定部材100と生体組織である皮膚500の一部とが癒着することによって当該皮膚固定部材100が皮膚500に固定された状態となっていることを意味している。
図6に示すように、医療用チューブ固定具1における皮膚固定部材100が皮膚500に固定されることによって、医療用チューブ10が皮膚500に固定された状態となる。すなわち、医療用チューブ10は、医療用チューブ保持機構部200の構成部品(シール部材210、ワッシャー230及びシール部材押圧体220)によって動きが阻止された状態で皮膚固定部材100に保持されている。これにより、医療用チューブ10は皮膚500に固定された状態となる。
なお、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1は、補助人工心臓システムに使用する場合を例示しているため、図2において示したように、医療用チューブ10の両端部のうち、医療用チューブ固定具1よりも体内側の端部は、血液ポンプ410に接続されており、体外側の端部は、血液ポンプ410を制御する制御装置440に接続されている。
実施形態1に係る医療用チューブ固定具1を図6に示すように皮膚500に固定した状態とすると、シール部材210は、図5において説明したように、シール部材押圧体220により押圧されて弾性変形して、皮膚固定部材100の凹部140を埋めた状態となっている。このため、シール部材210は、凹部140の側壁面144、凹部140の底面142及び医療用チューブ10の外周面に対してそれぞれ面接触によって密着している。このように、シール部材210は、凹部140の側壁面144、凹部140の底面142及び医療用チューブ10の外周面に対してそれぞれ面接触で密着しているため、体外側と体内側とが高い液密性を有する。これにより、細菌などが体内に侵入することを確実に防止できる。
また、シール部材210は、凹部140の側壁面144、凹部140の底面142及び医療用チューブ10の外周面に対してそれぞれ面接触で密着しているため、医療用チューブ10は、皮膚固定部材100において、医療用チューブ10の軸方向に沿った「ずれ」や軸周りの「回転」が確実に阻止されることとなる。これにより、患者に苦痛を与えたり、当該医療用チューブ10が接続されている機器(補助人工心臓システムにおける血液ポンプ410及び当該血液ンプ410を制御する制御装置440など)との接続に不具合が生じたりすることを未然に防止できる。
また、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1においては、シール部材210は、切り込み部212が設けられていることから交換可能である。このため、シール部材210が劣化して、交換が必要となった場合は、シール部材210を交換することができる。
なお、シール部材210を交換する際には、防水キャップ300をシール部材押圧体220から引き抜いて、シール部材押圧体220から離間した位置まで医療用チューブ10の外周面上をスライドさせる。そして、シール部材押圧体220の雄ネジ221を凹部140の雌ネジ145から外し、シール部材押圧体220をシール部材210から離間した位置までスライドさせる。また、ワッシャー230もシール部材に対して離間させる。この状態で、シール部材210を凹部140から引き抜き、シール部材210の切り込み部212を広げて、当該シール部材210を医療用チューブ10の外周面の側から取り外す。そして、新たなシール部材を医療用チューブ10に取り付ける。
新たなシール部材210の取り付けは、新たなシール部材210の切り込み部212を広げて、当該シール部材210を医療用チューブ10の外周面の側から取り付けて、皮膚固定部材100凹部140に嵌合させる。そして、シール部材押圧体220の雄ネジ221を凹部140の雌ネジ145に螺合させて締め付けを行い、シール部材210に対してワッシャー230を介して押圧力を付与したのちに、防水キャップ300をシール部材押圧体220に取り付ける。このような作業を行うことによって、新たなシール部材210材を取り付けることができる。
以上説明したように、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1においては、シール部材押圧体220を皮膚固定部材100に取り付けるための取り付け構造は、シール部材押圧体220の雄ネジ221を皮膚固定部材100の凹部140に形成されている雌ネジ145に螺合させてシール部材押圧体220を締め付けることによって、シール部材押圧体220を皮膚固定部材100に取り付ける構造となっている。
このため、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1においては、シール部材210に十分な押圧力を付与することができ、シール部材210を皮膚固定部材100の凹部140内において隙間なく弾性変形させることができる。それによって、シール部材210を、凹部140の側壁面144、凹部140の底面142及び医療用チューブ10の外周面に対して隙間なく密着させることができる。このとき、シール部材は210、凹部140の側壁面144、凹部140の底面142及び医療用チューブ10の外周面に対してそれぞれ面接触によって密着している。
このように、シール部材210が、凹部の側壁面144、凹部140の底面142及び医療用チューブ10の外周面に対してそれぞれ面接触で密着しているため、体外側と体内側とが高い液密性を有するものとなる。これにより、体外側と体内側とが高い液密性を有してシールされた状態となるため、細菌などが体内に侵入することを確実に防止でき、感染症の発症を未然に防止することができる。
また、シール部材210が、凹部の側壁面144、凹部140の底面142及び医療用チューブ10の外周面に対してそれぞれ面接触で密着しているため、皮膚固定部材100において、医療用チューブ10の軸方向に沿った「ずれ」や軸周りの「回転」を確実に阻止することができる。
また、シール部材210は、切り込み部212が設けられていることから交換可能である。このため、例えば、シール部材210が劣化した場合などにおいて、交換が必要となったとしても、シール部材210を交換することが可能である。
また、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1においては、当該医療用チューブ固定具1における医療用チューブ保持機構部200の構成部品(シール部材210、ワッシャー230及びシール部材押圧体220)のうち、シール部材210が最も体内側に配置されているため、生体組織である皮膚と癒着する部品は、皮膚固定部材100の他には、シール部材210のみである。しかも、シール部材210は、シール部材押圧体220により押圧されて弾性変形して凹部140を埋めた状態となっており、凹部140の側壁面144、凹部140の底面142及び医療用チューブ10の外周面との間が面接触によって密着しているため、生体組織に接触する部分は、シール部材210のわずかな部分である。従って、シール部材210の癒着範囲も最小限に抑えることができ、仮に、シール部材210を交換する必要が生じた場合であっても、シール部材210の交換が容易となる。
また、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1においては、シール部材210が、体外側と体内側とを高い液密性を有してシールする役目の他に、経皮部すなわち皮膚500において医療用チューブ10が動かないように医療用チューブ10を保持する役目をなしている。このため、医療用チューブ固定具1における医療用チューブ保持機構部200の構成部品は、シール部材210と、当該シール部材210を押圧するシール部材押圧体220及びワッシャー230とで済み、構造の単純化が可能となり、部品点数の削減も可能となる。
[実施形態2]
図7は、実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aの構成部品を個々の部品ごとに説明するために示す図である。なお、図7は実施形態1に係る医療用チューブ固定具1を説明する際に用いた図3に対応する図である。このため、図7においても図3と同様に、図示の右側から図7(a)、図7(b)、図7(c)とする。ここで、図7(a)は皮膚固定部材(実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aにおいては「皮膚固定部材100A」とする。)を示しており、図7(b)は医療用チューブ保持機構部200の構成部品(シール部材210、ワッシャー230及びシール部材押圧体220)を示しており、図7(c)は防水キャップ300を示している。
図7は、実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aの構成部品を個々の部品ごとに説明するために示す図である。なお、図7は実施形態1に係る医療用チューブ固定具1を説明する際に用いた図3に対応する図である。このため、図7においても図3と同様に、図示の右側から図7(a)、図7(b)、図7(c)とする。ここで、図7(a)は皮膚固定部材(実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aにおいては「皮膚固定部材100A」とする。)を示しており、図7(b)は医療用チューブ保持機構部200の構成部品(シール部材210、ワッシャー230及びシール部材押圧体220)を示しており、図7(c)は防水キャップ300を示している。
実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aにおいては、図7(a)に示す皮膚固定部材100Aの一部の構成が、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1における皮膚固定部材100(図3(a)参照。)と異なるが、図7(b)に示す医療用チューブ保持機構部200及び図7(c)に示す防水キャップ300の構成については、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1における医療用チューブ保持機構部200(図3(b)参照。)及び防水キャップ300(図3(c)参照。)と同様である。このため、実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aの各構成要素において、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1と同一構成要素には同一符号を付し、重複する説明は可能な限り省略する。
以下、実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aについて説明する。ここでは、主に皮膚固定部材100Aについて説明する。
皮膚固定部材100Aの構成要素としては、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1における皮膚固定部材100と同様に、フランジ部(実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aにおいては、「フランジ部110A」とする。)と、突出体120(体内側突出体120aを含む)と、鍔部130とを有している。皮膚固定部材100Aが有するフランジ部110Aは、生体適合性を有する多孔質の金属からなる。当該多孔質の金属としては、例えば、チタンをスポンジ状に形成したものを用いることができるが、これに限定されるものではない。
また、実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aにおいては、多孔質の金属でなるフランジ部110A(以下、単に「フランジ部110A」と略記する場合もある。)と突出体120とは別部品で構成されている。なお、実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aにおいても、突出体120は、体外側だけでなく体内側にも突出するように設けられており、当該突出体120のうち体内側に突出している突出体を「体内側突出体120a」としている。このため、フランジ部110Aは体内側突出体120aに接合されるような構成となっている。
すなわち、フランジ部110Aの中央部には、体内側突出体120aを挿通可能な空間部111が形成されており、フランジ部110Aの空間部111に当該体内側突出体120aを挿通させた状態でフランジ部110Aと体内側突出体120aとが接合されるような構成となっている。実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aにおいては、フランジ部110Aと体内側突出体120aとは、接着剤、溶接又は焼結接合によって接合されている。フランジ部110Aと体内側突出体120aとを接合した状態のものが皮膚固定部材100Aとなる。
図8は、フランジ部110Aと体内側突出体120aとを接合した状態の皮膚固定部材100Aを示す図である。図8に示すような皮膚固定部材100Aを用いた実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aの組み立て工程は、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1において説明した図4にフローチャートと同様の工程(第1工程〜第5工程)によって組み立てることができる。従って、フランジ部110Aと体内側突出体120aとを接合して図8に示すような皮膚固定部材100Aを構成したあとの実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aの組み立て工程については説明を省略する。
図9は、図4に示す各工程によって組み立てられた状態の実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aを示す図である。なお、図9(a)は斜視図であり、図9(b)は要部を断面で示した平面図である。図9は実施形態1に係る医療用チューブ固定具1における図5に対応する図である。実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aは、外観的には、図5に示すフランジ部110が多孔質でなるフランジ部110Aとなっている点が実施形態1に係る医療用チューブ固定具1(図5参照。)と異なり、その他の構成要は、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1と同様である。
図10は、実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aを経皮部すなわち皮膚500に固定させた状態を示す要部断面図である。なお、医療用チューブ固定具1Aを皮膚500に固定させた状態というのは、皮膚固定部材100Aと生体組織である皮膚500の一部とが癒着することによって当該皮膚固定部材100Aが皮膚500に固定された状態となっていることを意味している。
図10に示すように、実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aにおける皮膚固定部材100Aが皮膚500に固定されることによって、医療用チューブ10が皮膚500に固定された状態となる。すなわち、医療用チューブ10は、医療用チューブ保持機構部200の構成部品(シール部材210、ワッシャー230及びシール部材押圧体220)によって動きが阻止された状態で皮膚固定部材100に保持されている。これにより、医療用チューブ10は皮膚500に固定された状態となる。
ここで、実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aにおいては、皮膚固定部材100Aにおけるフランジ部が多孔質の金属でなるフランジ部110Aとなっている。このため、実施形態2に係る医療用チューブ固定具1Aは、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1において得られる効果に加えて、多孔質の金属でなるフランジ部110Aを用いたことによる効果が得られる。すなわち、多孔質の金属でなるフランジ部110Aを用いたことにより、皮膚の組織がフランジ部110Aに形成されている多数の孔に侵入するため、皮膚の組織とフランジ部110Aとが癒着し易くなる。これにより、細菌などが生体内に侵入することを防ぐことができ、感染症の発生を抑制する効果を高めることができる。
なお、フランジ部110Aは、微細な孔が2次元(平面)的に多数形成されているものであってもよいが、微細な孔が3次元(立体)的に相互に連通して多孔層が形成されているものであってもよい。このように、微細な孔が3次元(立体)的に相互に連通して多孔層が形成されていることによって、皮膚の組織とフランジ部110Aとの癒着がより確実になり、感染症の発生を抑制する効果をより高めることができる。
[実施形態3]
図11は、実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bの構成部品を個々の部品ごとに説明するために示す図である。なお、図11は実施形態1に係る医療用チューブ固定具1を説明する際に用いた図3に対応する図である。このため、図11においても図3と同様に、図示の右側から図11(a)、図11(b)、図11(c)とする。ここで、図11(a)は皮膚固定部材(実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bにおいては「皮膚固定部材100B」とする。)を示しており、図11(b)は医療用チューブ保持機構部200の構成部品(シール部材210、ワッシャー230及びシール部材押圧体220)を示しており、図11(c)は防水キャップ300を示している。
図11は、実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bの構成部品を個々の部品ごとに説明するために示す図である。なお、図11は実施形態1に係る医療用チューブ固定具1を説明する際に用いた図3に対応する図である。このため、図11においても図3と同様に、図示の右側から図11(a)、図11(b)、図11(c)とする。ここで、図11(a)は皮膚固定部材(実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bにおいては「皮膚固定部材100B」とする。)を示しており、図11(b)は医療用チューブ保持機構部200の構成部品(シール部材210、ワッシャー230及びシール部材押圧体220)を示しており、図11(c)は防水キャップ300を示している。
実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bにおいては、図11(a)に示す皮膚固定部材100Bの一部の構成が実施形態1に係る医療用チューブ固定具1における皮膚固定部材100(図3(a)参照。)と異なるが、図11(b)に示す医療用チューブ保持機構部200及び図11(c)に示す防水キャップ300の構成については、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1における図3(b)及び図3(c)と同様である。このため、実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bの各構成要素において、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1と同一構成要素には同一符号を付し、重複する説明は可能な限り省略する。
以下、実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bについて説明する。ここでは、主に皮膚固定部材100Bについて説明する。
皮膚固定部材100Bの構成要素としては、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1における皮膚固定部材100と同様に、フランジ部(実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bにおいては「フランジ部110B」とする。)と、突出体120(体内側突出体120aを含む)と、鍔部130とを有している。
皮膚固定部材100Bが有するフランジ部110Bは、生体適合性を有する不織布からなる。ここで、生体適合性を有する当該不織布としては、例えば、医療分野において公知のPTFE(polytetrafluoroethylene)フェルトを例示できる。このようなPTFEフェルトは、当該PTFEを形成する繊維が絡み合った構成となっており、絡み合っている繊維間に多数の微細な隙間が形成されている。
また、実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bにおいても、フランジ部110Bと突出体120とは別部品で構成されている。なお、実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bにおいても、突出体120のうち体内側に突出している突出体を「体内側突出体120a」としている。このため、フランジ部110Bは体内側突出体120aに接合されるような構成となっている。
すなわち、フランジ部110Bの中央部には、体内側突出体120aを挿通可能な空間部111が形成されており、フランジ部110Bの空間部111に当該体内側突出体120aを挿通させた状態でフランジ部110Bと体内側突出体120aとが接合されるような構成となっている。実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bにおいては、フランジ部110Bを体内側突出体120aに固定するための固定ナット160を有している。一方、体内側突出体120aの外周面には、固定ナット160の雌ネジ161を螺合させることができる雄ネジ121が形成されている。
図12は、実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bにおける突出体120を取り出して示す平面図である。実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bにおける突出体120は、図12に示すように、当該突出体120のうちの体内側突出体120aの先端部(体内側を向く先端部)に雄ネジ121が形成されている。一方、体内側突出体120aの鍔部130側には、フランジ部110Bを固定ナット160との間で挟み込むフランジ押さえ部122が形成されている。ここで、フランジ部110Bに形成されている空間部111の径d6(図11参照。)は、体内側突出体120aの外径d7とほぼ同じ径となっている。また、雄ネジ121の外径d8は、フランジ部110に形成されている空間部111の径d6よりもやや大きな径となっている。
また、体内側突出体120aにおけるフランジ押さえ部122と雄ネジ121との間には、フランジ部110Bの厚みt1に相当する区間に、雄ネジ121が形成されていない区間(雄ネジ非形成区間t2とする。)が存在する。体内側突出体120aにおける雄ネジ非形成区間t2の外径(体内側突出体120aの外径d7)は、雄ネジ121の外径d8とフランジ押さえ部122の外径(図示せず。)とに比べて小径であるため、周方向に沿った凹溝123となっている。
フランジ部110Bと体内側突出体120aとがこのような構成となっていることにより、フランジ部110Bの空間部111に体内側突出体120aが挿通可能となる。すなわち、フランジ部110Bは、不織布(この場合、PTFEフェルト)であり、軟かい素材であるため、体内側突出体120aに形成されている雄ネジ121は、フランジ部110Bに形成されている円形の空間部111を押し広げるようにして空間部111に挿通可能となる。
このようにして、体内側突出体120aに形成されている雄ネジ121をフランジ部110Bに形成されている円形の空間部111に挿通させると、フランジ部110Bの空間部111側の周面が、体内側突出体120aの凹溝123に入り込んだ状態となる。この状態で、固定ナット160の雌ネジ部161を体内側突出体120aの雄ネジ部121に螺合させて締め付けることにより、フランジ部110Bと体内側突出体120aとを接合させることができる。
なお、フランジ部110Bと体内側突出体120aとを接合させる際は、フランジ部110Bの空間部111の周面と体内側突出体120aの凹溝123と固定ナット161とは、接着剤を塗布した状態で、固定ナット160の雌ネジ部161を体内側突出体120aの雄ネジ部121に螺合させて締め付けることが好ましい。これにより、固定ナット160の緩みを防止でき、フランジ部110Bと体内側突出体120aとの接合をより確実なものとすることができる。このようにして、フランジ部110Bと体内側突出体120aとを接合させることができる。フランジ部110Bと体内側突出体120aとを接合させた状態のものが皮膚固定部材100Bとなる。
図13は、フランジ部110Bと体内側突出体120aとを接合した状態の皮膚固定部材100Bを示す図である。なお、フランジ部110Bと体内側突出体120aとを接合した状態においては、フランジ部110Bは、固定ナット160の締め付けにより押圧されて圧縮された状態となる。このため、固定ナット160とフランジ押さえ部122とによって挟まれている部分(図14の矢印A参照。)が他の部分に比べて厚みが薄くなる。
図13に示すような皮膚固定部材100Bを用いた実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bの組み立て工程は、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1において説明した図4にフローチャートと同様の工程(第1工程〜第5工程)によって組み立てることができる。従って、フランジ部110Bと体内側突出体120aとを接合して図13に示すような皮膚固定部材100Bを構成したあとの実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bの組み立て工程については説明を省略する。
図14は、図4に示す各工程によって組み立てられた状態の実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bを示す図である。なお、図14(a)は斜視図であり、図14(b)は要部を断面で示した平面図である。図14は実施形態1に係る医療用チューブ固定具1における図5に対応する図である。実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bは、外観的には、図5に示すフランジ部110が不織布(この場合、PTFEフェルト)でなるフランジ部110Bである点が実施形態1に係る医療用チューブ固定具1(図5参照。)と異なり、その他の構成要は、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1(図5参照。)と同様である。
図15は、実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bを経皮部すなわち皮膚500に固定させた状態を示す要部断面図である。なお、医療用チューブ固定具1Bを皮膚500に固定させた状態というのは、皮膚固定部材100と生体組織である皮膚500の一部とが癒着することによって当該皮膚固定部材100Bが皮膚500に固定された状態となっていることを意味している。
図15に示すように、実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bにおける皮膚固定部材100Bが皮膚500に固定されることによって、医療用チューブ10が皮膚500に固定された状態となる。すなわち、医療用チューブ10は、医療用チューブ保持機構部200の構成部品(シール部材210、ワッシャー230及びシール部材押圧体220)によって動きが阻止された状態で皮膚固定部材100に保持されている。これにより、医療用チューブ10は皮膚500に固定された状態となる。
ここで、実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bにおいては、皮膚固定部材100Bにおけるフランジ部が生体適合性を有する不織布(この場合、PTFEフェルト)でなるフランジ部110Bである。このため、実施形態3に係る医療用チューブ固定具1Bは、実施形態1に係る医療用チューブ固定具1において得られる効果に加えて、生体適合性を有する不織布(この場合、PTFEフェルト)110Bを用いたことによる効果が得られる。
すなわち、PTFEフェルトでなるフランジ部110Bを用いたことにより、皮膚の組織がPTFEフェルトを形成する繊維の隙間に侵入するため、皮膚の組織とフランジ部110Bとが癒着し易くなる。これにより、細菌などが生体内に侵入することを防ぐことができ、感染症の発生を抑制する効果を高めることができる。また、フランジ部110Bが生体適合性を有する不織布(この場合、PTFEフェルト)といった柔らかい素材でなるため、当該フランジ部を皮膚500に埋め込んだ場合、体に与える負担を抑制できるといった効果も得られる。
なお、本発明は上述の各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
(1)上記各実施形態に係る医療用チューブ固定具1,1A,1Bは、補助人工心臓システムにおいて使用する場合を例示したが、各実施形態に係る医療用チューブ固定具1,1A,1Bは、補助人工心臓システム以外にも使用可能である。従って、医療用チューブ10は、補助人工心臓システムにおいて使用するドライブライン(血液ポンプと制御装置とを接続するケーブル)に限られるものではなく、体外から体内に挿通する際に皮膚部で固定する必要のある医療用チューブ全般を指すものである。
(2)上記各実施形態に係る医療用チューブ固定具1,1A,1Bにおける皮膚固定部材100,100A,100Bは、フランジ部110,110A,110Bの外観形状が円盤状をなしている場合を例示したが、これら各フランジ部の外観形状は例えば、長円形をなしていてもよい。また、各実施形態に係る医療用チューブ固定具1,1A,1Bにおける皮膚固定部材100,100A,100Bは、突出体120を各フランジ部110,110A,110Bに対して直交する方向に突出させた構成とした場合を例示している。このため、医療用チューブ10をフランジ部110,110A,110Bに対して直交する方向に取り付ける構成としたが、突出体120を各フランジ部110,110A,110Bに対して斜め方向に突出させるようにして、医療用チューブ10を各フランジ部110,110A,110Bに対して斜め方向に取り付けるような構成としてもよい。
(3)上記実施形態2に医療用チューブ固定具1Aにおいては、多孔質の金属でなるフランジ部110Aを体内側突出体120aに対して、接着剤、溶接又は焼結接合によって接合する場合を例示したが、これに限られるものではない。例えば、実施形態3に医療用チューブ固定具1Bの場合と同様に、体内側突出体120aの外周面に雄ネジ121を形成して、固定ナット160の雌ネジ161を体内側突出体120aの外周面に形成されている雄ネジ121に螺合させて締め付けることにより、フランジ部110Aを体内側突出体120aに接合させるようにしてもよい。この場合、接着剤を併用することが好ましい。
(4)上記各実施形態において、医療用チューブ10とシール部材210との間に硬質樹脂などの硬質部材でなるパイプを医療用チューブ10の外周面に密着させた状態で装着するようにしてもよい。このようにすることにより、医療用チューブ10が押圧変形し易い部材でなる場合には、シール部材210が押圧されて変形した際に医療用チューブの変形を防ぐことができる。
1,1A,1B・・・医療用チューブ固定具、10・・・医療用チューブ、100,100A,100B・・・皮膚固定部材、110,110A,100B・・・フランジ部、111・・・空間部、120・・・突出体、120a・・・体内側突出体、121・・・雄ネジ、122・・・フランジ押さえ部、123・・・凹溝、130・・・鍔部、140・・・凹部(皮膚固定部材100の凹部)、141・・・開口、142・・・底面、143・・・挿通孔(第1挿通孔)、144・・・側壁面、145・・・雌ネジ、160・・・固定ナット、161・・・雌ネジ、200・・・医療用チューブ保持機構部、210・・・シール部材、211・・・挿通孔(第2挿通孔)、212・・・切り込み部、220・・・シール部材押圧体、221・・・雄ネジ、222・・・挿通孔(第3挿通孔)、223・・・ネジ頭、224・・・凹部(シール部材押圧体220の凹部)、225・・・防水キャップ挿入用隙間、226・・・凹溝、230・・・ワッシャー、231・・・挿通孔(第4挿通孔)、300・・・防水キャップ、310・・・挿通孔(第5挿通孔)、320・・・隙間挿入部、321・・・凸部、322・・・鍔部、400・・・補助人工心臓システム、410・・・血液ポンプ、440・・・制御装置、500・・・皮膚(経皮部)
Claims (10)
- 医療用チューブを体外から体内に挿通させる際に、当該医療用チューブを経皮部において固定する医療用チューブ固定具であって、
前記経皮部に埋め込まれるフランジ部と当該フランジ部から少なくとも体外側に突出する筒状の突出体とを有する皮膚固定部材と、
前記皮膚固定部材の前記突出体に挿入された状態で取り付けられ、前記医療用チューブを保持する医療用チューブ保持機構部と、
を備え、
前記皮膚固定部材の前記突出体には、開口が体外側を向いた凹部が設けられており、当該凹部の底面には、前記医療用チューブの挿通が可能な第1挿通孔が体内側に貫通するように設けられているとともに前記凹部の開口と底面との間の側壁面には雌ネジが設けられており、
前記医療用チューブ保持機構部は、
弾性を有するとともに液密性を有する材料でなり、前記医療用チューブの挿通が可能な第2挿通孔を有し、前記医療用チューブを前記第2挿通孔に挿通させた状態で前記凹部に嵌合可能となっており、当該凹部に嵌合した状態で体外側から体内側に向かう方向の押圧力が付与されると弾性変形して前記凹部の側壁面、当該凹部の底面及び前記医療用チューブに対して密着するシール部材と、
前記シール部材よりも体外側の位置に設けられ、前記凹部に形成されている前記雌ネジに螺合可能な雄ネジを有するとともに、当該雄ネジの中心軸に沿って前記医療用チューブの挿通が可能な第3挿通孔を有し、前記医療用チューブを前記第3挿通孔に挿通させた状態で、当該雄ネジを前記雌ネジに螺合させて締め付けを行うと、前記シール部材に押圧力を付与するシール部材押圧体と、を有し、
前記シール部材には、前記医療用チューブの長手方向に沿って当該シール部材の一端側から他端側にまで達し、かつ、径方向においては、前記第2挿通孔にまで達する切り込み部が形成されていることを特徴とする医療用チューブ固定具。 - 請求項1に記載の医療用チューブ固定具において、
前記医療用チューブ保持機構部は、前記シール部材と前記シール部材押圧体との間に介在されるワッシャーを有し、当該ワッシャーは、当該ワッシャーと前記シール部材押圧体との間の摩擦力が、当該ワッシャーと前記シール部材との間の摩擦力よりも小さい材料でなることを特徴とする医療用チューブ固定具。 - 請求項1又は2に記載の医療用チューブ固定具において、
前記皮膚固定部材は、前記フランジ部よりも体外側で当該フランジ部とは離間した位置に設けられている鍔部をさらに有し、
前記鍔部は、前記皮膚固定部材を前記経皮部に固定したときに、当該鍔部の体内側に向く面が前記経皮部の体外側表面に接するように設けられていることを特徴とする医療用チューブ固定具。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の医療用チューブ固定具において、
前記フランジ部は、生体適合性を有する多孔質の金属でなることを特徴とする医療用チューブ固定具。 - 請求項4に記載の医療用チューブ固定具において、
前記多孔質の金属でなるフランジ部と前記突出体とは別部品で構成され、
前記突出体は、体外側だけでなく体内側にも突出するように設けられており、前記突出体のうち体内側に突出している突出体を体内側突出体としたとき、
前記多孔質の金属でなるフランジ部の中央部には、前記体内側突出体を挿通可能な空間部が形成されており、当該空間部に前記体内側突出体を挿通させた状態で前記多孔質の金属でなるフランジ部と前記体内側突出体とが接合されていることを特徴とする医療用チューブ固定具。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の医療用チューブ固定具において、
前記フランジ部は、生体適合性を有する不織布でなることを特徴とする医療用チューブ固定具。 - 請求項6に記載の医療用チューブ固定具において、
前記不織布でなるフランジ部と前記突出体とは別部品で構成され、
前記突出体は、体外側だけでなく体内側にも突出するように設けられており、前記突出体のうち体内側に突出している突出体を体内側突出体としたとき、
前記不織布でなるフランジ部の中央部には、前記体内側突出体を挿通可能な空間部が形成されており、当該空間部に前記体内側突出体を挿通させた状態で前記不織布でなるフランジ部と前記体内側突出体とが接合されていることを特徴とする医療用チューブ固定具。 - 請求項6又は7に記載の医療用チューブ固定具において、
前記不織布として、PTFE(polytetrafluoroethylene)フェルトが用いられていることを特徴とする医療用チューブ固定具。 - 請求項1〜8のいずれかに記載の医療用チューブ固定具において、
前記皮膚固定部材及び医療用チューブ保持機構部に加えて、前記シール部材押圧体の体外側の端部に取り付けられる防水キャップをさらに備え、
前記防水キャップは、弾性を有するとともに液密性を有する材料でなり、前記シール部材押圧体と前記医療用チューブの間に形成される隙間を埋めるように挿入可能な隙間挿入部を有し、前記医療用チューブの外周面に密着した状態で当該医療用チューブの長手方向に沿ってスライド可能となるように当該医療用チューブに環装されることを特徴とする医療用チューブ固定具。 - 請求項1〜9のいずれかに記載の医療用チューブ固定具において、
前記医療用チューブは、補助人工心臓システムにおいて体内に設けられる血液ポンプと体外に設けられる制御装置の間を接続するケーブルであることを特徴とする医療用チューブ固定具。
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