以下、本発明のムーブメントおよび時計を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の時計である電子時計の正面図である。図2は、図1に示す時計の断面図である。図3は、図1に示す時計が備えるムーブメントの平面図である。図4は、図1に示す時計が備えるムーブメントの拡大断面図である。図5は、図3中の輪列ユニットを示す模式図(平面図)である。
以下、図1〜図5を参照して、本発明のムーブメントおよび時計の実施形態について説明する。また、文字板側を「上」または「表側」とも言い、裏蓋側を「下」または「裏側」とも言う。
図1および図2に示すように、電子時計10は、筐体1と、ムーブメント2と、文字板3と、発電手段4と、を備える。また、筐体1の外縁には、一対のベルトが設けられており、腕に装着することができる。
筐体1は、外装ケース11と、カバーガラス12と、裏蓋13とを備えている。外装ケース11は、金属で形成された円筒状のケース111に、例えばセラミックで形成されたベゼル112が嵌合されている。このベゼル112の内周部に、文字板3が時刻表示部分として配置されている。
ムーブメント2は、地板21と、地板21に支持される駆動機構22と、回路基板23と、を備える。
地板21は、駆動機構22等を支持する機能を有する。この地板21は、後述する支持部材6に取り付けられている。
駆動機構22は、主に地板21の下側(裏蓋側)の面に取り付けられている。この駆動機構22に関しては、後に詳述する。
回路基板23は、駆動機構22の裏側を覆っている。また、回路基板23は、受信部(GPSモジュール)231、制御部232および電池233を備えている。電池233は、リチウムイオン電池などの二次電池や酸化銀電池等で構成されている。本実施形態では、電池233は、後述する太陽電池5が発電した電力で充電される。また、この回路基板23は、接続ピンを介してアンテナ(図示せず)等と接続されている。
回路基板23は、導電性を有する回路押さえ25によって裏側から覆われている。
図1に示すように、文字板3は、時刻表示部31と、カレンダー表示部32と、曜日表示部33と、マルチインジケーター34と、デュアルタイム表示部35とを有している。
時刻表示部31は、指針軸41が挿通されている。また、指針軸41は、例えば、同心的に設けられた三重筒構造をなし、各軸には、秒針である針411と、分針である針412と、時針である針413とが互いに独立して回転するよう固定されている。
カレンダー表示部32は、文字板3に設けられた窓部321を介して1から31までの数字が印刷されたカレンダー車42の一部が表示されることによって、日にちを報知する機能を有する。
曜日表示部33は、指針軸43が挿通されており、指針軸43に固定された針431が指す位置によって、曜日を報知する機能を有する。
マルチインジケーター34は、指針軸44が挿通されており、指針軸44に固定された針441が指す位置によって、例えば、電池233の電力残量を報知する機能を有する。
デュアルタイム表示部35には、指針軸45が挿通されており、指針軸45に固定された針451が指す位置によって、例えば、他国の時刻を報知する機能を有する。
また、指針軸41は、後述する駆動機構22Aおよび22Bによって駆動される。具体的には、針411は駆動機構22Aによって駆動され、針412と針413とは、駆動機構22Bによって駆動される。カレンダー車42は、後述する駆動機構22Cによって駆動され、指針軸43は、後述する駆動機構22Dによって駆動され、指針軸44は、後述する駆動機構22Eによって駆動され、指針軸45は、後述する駆動機構22Fによって駆動される(図3参照)。
また、文字板3は、太陽電池5の分光感度に対して有効な波長域で良好な光透過性を有し、例えば、透明となっている。その構成材料としては特に限定されず、例えば、各種ガラス材料、各種プラスチック材料が挙げられる。特に、軽量、加工の容易性等の観点からプラスチック材料が好ましく、中でも、ポリカーボネートがより好ましい。電子時計10では、文字板3を透過した光が太陽電池5に到達して、これにより、前述したように電力が生じる。
文字板3は、光を拡散する機能を有するのが好ましい。これにより、文字板3の裏側にある太陽電池5が文字板3を介して視認されるのを防止または抑制することができる。一般的に腕時計では、太陽電池5を外部からできる限り視認されないようにするのが好ましい。電子時計10のように太陽電池5に対する視認性が抑制された場合、電子時計10の審美性が向上する。
なお、文字板3に光拡散機能を担持させる方法としては、特に限定されず、例えば、文字板3の表側の面および裏側の面のうちの少なくとも一方に、拡散剤を含む拡散層を形成する方法、偏光フィルムを設置する方法、プリズムとして機能する微小な凹凸を多数形成する方法等が挙げられる。
このような文字板3は、平面視で、略円形をなしている。地板21、カバーガラス12および太陽電池5も同様に、平面視で円形をなしている。
図2に示すように、発電手段4は、太陽電池5と、支持部材6と、を有している。
太陽電池5は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。太陽電池5で変換された電気エネルギーは、ムーブメント2の駆動等に利用される。
太陽電池5は、基板51と、基板51上に積層された太陽電池膜52とを有している。
基板51は、太陽電池膜52を支持する機能を有している。この基板51は、樹脂材料で構成されている。樹脂材料としては、各種熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の各種硬化性樹脂が挙げられる。
太陽電池膜52は、例えば、非単結晶シリコン薄膜にp型の不純物とn型の不純物とが選択的に導入され、さらにp型の非単結晶シリコン薄膜とn型の非単結晶シリコン薄膜との間に不純物濃度の低いi型の非単結晶シリコン薄膜を備えたpin構造を有している。
なお、図示はしないが、太陽電池5には、電極が形成されており、この電極と接続された配線を介して、太陽電池5が発電した電力が電池233に供給される。
図2に示すように、支持部材6は、地板21の外周側であって、文字板3の裏面側に配置されている。また、支持部材6は、枠状をなす部材で構成されており、図示しない固定手段によって、太陽電池や文字板3と固定されている。そして、支持部材6は、文字板3および太陽電池5を支持した状態で、地板21に固定されている。
図3に示すように、駆動機構22は、指針軸41を駆動する駆動機構22Aおよび駆動機構22Bと、カレンダー車42を駆動する駆動機構22Cと、指針軸43を駆動する駆動機構22Dと、指針軸44を駆動する駆動機構22Eと、指針軸45を駆動する駆動機構22Fと、を有する。
これらは、略同様の構成であるので、以下では、駆動機構22Aについて詳細に説明する。駆動機構22Aは、図3中破線で囲んだ部分である。
図4は、駆動機構22A付近の拡大断面図である。図5は、駆動機構22Aの模式図(平面図)である。図4および図5に示すように、駆動機構22Aは、モーター8と、モーター8によって駆動される輪列ユニット9と、を有する。
モーター8は、ステッピングモーターであり、ローター収容用穴を有するステーター84と、ローター収容用穴に回転可能に配設されたローター82と、ステーター84と接合された磁心と、磁心に巻回されたコイル83を備えている。また、ローター82は、ローター歯車81を備える。
ローター歯車81は、例えば、金属材料で構成されており、その外周部に歯811を有する。この歯811は、樹脂歯車91の歯911と噛合している。これにより、モーター8の回転力がローター82のローター歯車81を介して樹脂歯車91に伝達される。
また、モーター8内のコイル83は、両端に端子を有している。各端子は制御部232に電気的に接続されている。ローター82は、2極(S極およびN極)に着磁されている。ステーター84は磁性材料によって形成されている。制御部232から駆動パルスがコイル83の両端の端子間に供給されて電流が流れると、ステーター84に磁束が発生する。これにより、ステーター84に生じた磁極とローター82の磁極との相互作用によって、ローター82は1ステップ分(180度)回転する。
輪列ユニット9は、ローター歯車81と噛合する第1歯車である減速歯車である樹脂歯車91と、針411が固定され、樹脂歯車91と噛合する第2歯車である金属歯車93と、これらを支持する輪列受け94と、を有する。これら樹脂歯車91および金属歯車93は、主動側からこの順で並んで配置されている。
なお、輪列ユニット9の減速比は、駆動機構22A〜駆動機構22Fごとに異なるが、5以上100以下程度とされる。
樹脂歯車91は、円板状をなし、その外周部に歯911を有する大歯車910と、大歯車910の一方の面の中心部に固定され、同軸回転する小歯車912(かな)とを有する。
大歯車910の歯911は、ローター歯車81の歯811と噛合している。これにより、ローター歯車81の回転力が樹脂歯車91に伝達される。小歯車912(かな)は、円板状をなし、その外周部に歯913を有する。この小歯車912は、金属歯車93と噛合している。
金属歯車93は、円板状をなし、その外周部に歯931を有する。この歯931は、小歯車912の歯913と噛合している。これにより、中間歯車92の回転力が金属歯車93に伝達される。また、金属歯車93の天面の中心部には、針411が固定されている。
これにより、金属歯車93の回転とともに針411が回転する。
このような樹脂歯車91および金属歯車93は、地板21の反対側から輪列受け94によって支持されている。
また、図4に示すように、輪列受け94と回路基板23との間には、接続手段96が設けられている。この接続手段96は、本実施形態では、導電性を有する長尺な板バネで構成されている。接続手段96は、その一端部(図4中左側の端部)が、指針軸41の文字板3の反対側の軸端と接触しており、指針軸41をその軸方向に付勢している。また、接続手段96は、その他端部(図4中右側の端部)が、回路基板23と接触している。また、回路基板23は、電池233の正極または負極に電気的に接続されている。このため、金属歯車93は、接続手段96と回路基板23とを介して電池233の正極または負極に電気的に接続されている。なお、電池233は、樹脂歯車91および金属歯車93に発生する静電気に対し、静電容量が十分に大きい。
以上のような輪列ユニット9によれば、モーター8の回転力は、輪列ユニット9を介して針411に伝達される。樹脂歯車91は、樹脂材料であって導電性ポリマーとカーボンフィラーとを含む材料で構成されているので、樹脂歯車91および中間歯車92の軽量化がなされ、樹脂歯車91および中間歯車92の慣性モーメントを抑制することができる。一方で、金属歯車93は、金属材料で構成されているため、金属歯車93の強度を高めることができる。よって、針411の回転によって生じるトルクを受けても破損するのを防止することができる。
ところで、樹脂材料で構成された歯車と、金属材料で構成された歯車が噛合して、共に回転する構成では、両歯車に、摩擦や剥離によって静電気が生じ電荷が蓄積される。帯電列で知られるように、樹脂材料の歯車が負極に、金属材料の歯車が正極に帯電する。
また、両歯車と対向する輪列受け94は、樹脂材料で構成されているので、両歯車の電荷からの電界によって誘電分極し、両歯車と輪列受け94との間にクーロン力が生じる。
また、隣り合う歯車同士での電位が異なるので、グラジエント力も生じ、歯車は軸方向に沿って移動するので、歯車と輪列受け94が貼り付く。その結果、両歯車に摩擦抵抗が生じ、両歯車の回転が阻害される不具合が生じる。
また、輪列受け94が導電性を有する材料で構成され、かつ、輪列受け94が接地されていない場合、隣り合う電位の異なる歯車によって、ジョンソンラーベック力が生じる。
また、輪列受け94が導電性を有する材料で構成され、かつ、輪列受け94が接地されていたとしても、両歯車の側面の電荷の鏡像電荷が輪列受け94に生じるので、クーロン力に相当する力が発生する。すなわち、いずれの場合も、歯車が軸方向に沿って移動する方向に力が働き、歯車と輪列受け94が貼り付き摩擦抵抗を生じて、各歯車の回転が阻害される不具合を生じる。
また、歯車の導電化において一般的なカーボンフィラーである炭素繊維やカーボンナノチューブなどを用いる場合、カーボンフィラーの長さが長いほど有利である。具体的には、70〜200μm以上の長さが必要である。この長さのカーボンフィラーは、例えば0.3mm以下の小さな歯車の歯先まで入り込まないので、時計に用いられる歯車では十分な導電性が得られないという問題がある。また、薄い歯車では歯の根元でフィラーが詰まりやすく、歯先が形成できないという問題がある。また、歯車の導電化においてカーボンフィラーにホウ素をドープして、ホウ素が樹脂材料内に分散した場合、ホウ素は体積抵抗率が高いので、十分な導電性を得られず静電気防止効果を十分に発揮できないという問題がある。この場合ホウ素は主に歯先に充填されるので、特に歯先において十分な導電性を得られない。
そこで、本実施形態では、以下のような構成とすることにより、このような不具合を解消することができる。以下、このことについて説明する。
本実施形態では、樹脂歯車91は、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ABSなどの耐磨耗性、耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂に加え、導電性ポリマーと、カーボン粉末とを含む材料で構成されている。具体的には、大歯車910および小歯車912は、導電性ポリマーと、カーボン粉末とを含む材料で構成されている。このため、樹脂歯車91が薄く小型であっても、粉末状のカーボンと導電性ポリマーが全ての歯先まで充填され、歯先を含めた歯車全体が導電性を有する。
ここで、前述したように、金属歯車93は、接続手段96と回路基板23とを介して電池233の正極または負極に電気的に接続されている。よって、金属歯車93と噛合する樹脂歯車91は、金属歯車93、接続手段96、回路基板23を介して電池233に電気的に接続することができる。電池233は、樹脂歯車91および金属歯車93に発生する静電気に対し、静電容量が十分に大きい。このため、金属歯車93に発生した静電気を、放電することができる。
また、金属歯車93と噛合する樹脂歯車91は、導電性を有しているので、金属歯車93、接続手段96、回路基板23を介して電池233に電気的に接続された状態となる。
以上より、輪列ユニット9では、樹脂歯車91および金属歯車93の放電を行うことができ、樹脂歯車91および金属歯車93に静電気が蓄積されて前述したような不具合が発生するのを防止することができる。
導電性ポリマーは、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレンからなる群のうちの少なくとも1種に、スルホン酸またはヨウ素等の不純物をドーピングしたものであるのが好ましい。これにより、樹脂歯車91は、導電性を十分に確保しつつ、軽量性、耐摩耗性、耐衝撃性に優れる。
これらの中でも、導電性ポリマーは、ポリチオフェンに不純物をドーピングしたものであるのが好ましい。これにより、樹脂歯車91は、さらに、導電性に優れる。
このような樹脂歯車91の表面抵抗率(表面電気抵抗率)は、107Ω/□以上1011Ω/□以下であるのが好ましく、108Ω/□以上1010Ω/□以下であるのがより好ましい。これにより、本実施形態の効果がより顕著に得られる。
また、樹脂歯車91の体積抵抗率(体積電気抵抗率)は、107Ω・cm以上1011Ω・cm以下であるのが好ましく、108Ω・cm以上1010Ω・cm以下であるのがより好ましい。これにより、本実施形態の効果がより顕著に得られる。
また、樹脂歯車91における導電性ポリマーの含有量は、90wt%以上99.9wt%以下であるのが好ましく、93wt%以上97wt%以下であるのがより好ましい。これにより、本実施形態の効果を十分に得られるとともに、樹脂歯車91の十分な強度を確保することができる。
カーボン粉末としては、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック類、グラファイトやハードカーボン類等の導電性を有するものが挙げられる。これにより、樹脂歯車91を補強することができるとともに、導電性を高めることができ、本実施形態の効果をより確実に得ることができる。
カーボン粉末を構成する粒子は、特に限定されないが、例えば、鱗片状、球状等が挙げられる。
また、カーボン粉末の各粒子の平均アスペクト比は、1以上3以下であるのが好ましく、1.3以上2.7以下であるのがより好ましい。このようにカーボン粉末が含まれていることにより、樹脂歯車91の強度を高めることができる。さらに、カーボン繊維等を導電性ポリマーに含有する場合に比べて、成形性を高めることができる。特に、歯921等の微細な部位では、繊維が飛び出したり、また、残留応力が高くなりやすいので、全体として真円度が低下するが、粉末であることにより、このようなことを防止することができる。さらに、粉末状であることにより、歯の根元で詰まりを起こすことなく、カーボン粉末と導電性ポリマーを含む樹脂を歯先まで充填することができ、歯先まで十分な導電性を確保することができる。そして、成形時に、型の歯先の部分まで導電性ポリマーを充填することができ、成形性に優れる。
カーボン粉末の平均粒径は、1μm以上50μm以下であるのが好ましく、2μm以上30μm以下であるのがより好ましい。これにより、樹脂歯車91の導電性を十分に確保しつつ、樹脂歯車91の十分な強度を確保することができるとともに、さらに成形性を高めることができる。
また、樹脂歯車91におけるカーボン粉末の含有量は、0.1wt%以上10wt%以下であるのが好ましく、0.5wt%以上5wt%以下であるのがより好ましい。これにより、樹脂歯車91の導電性を十分に確保しつつ、樹脂歯車91の十分な強度を確保することができる。
このように、輪列ユニット9は、金属歯車93と噛合する樹脂歯車91を有しており、この樹脂歯車91が、導電性ポリマーとカーボンフィラーとを含む材料で構成されている。樹脂歯車91と金属歯車93とが噛合する場合、樹脂歯車91に静電気が生じやすいが、この場合であっても、本実施形態の効果がより有効に発揮される。樹脂歯車91は第1歯車の一例であり、金属歯車93は第2歯車の一例である。
また、輪列ユニット9は、モーター8の回転軸に固定されたローター歯車81と噛合する樹脂歯車91を有する。これにより、樹脂歯車91の軽量化がなされ、樹脂歯車91の慣性モーメントを抑制することができ、さらに、ローター歯車81は、金属材料で構成されており、樹脂歯車91に静電気が蓄積され易い構成となっている。そのため、本実施形態の効果がより有効に発揮される。
また、前述したように、輪列ユニット9は、時計の秒針(針411)を駆動するものであり、金属歯車93に秒針が固定されている。秒針を駆動する駆動機構22Aの輪列ユニット9では、樹脂歯車91および金属歯車93の回転速度が比較的速く、静電気が蓄積され易い構成となっている。そのため、本実施形態の効果がより有効に発揮される。
また、金属歯車93は、樹脂歯車91よりも従動側、すなわち、モーター8の遠位側に位置している。このような構成では、金属歯車93が針411からのトルクの影響を受けやすいが、金属材料で構成されているので、強度が高く、耐久性に優れる。
なお、本実施形態では、駆動機構22A〜駆動機構22Fの全ての輪列ユニット9において、樹脂歯車91が導電性を有しているので、駆動機構22A〜駆動機構22Fの全てにおいて上記効果を得ることができる。
また、輪列ユニット9では、樹脂歯車91と金属歯車93との間に中間歯車を有していてもよい。この中間歯車が金属材料で構成されていない場合には、樹脂歯車91と同様に、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ABSなどの耐磨耗性、耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂に加え、導電性ポリマーと、カーボン粉末とを含む材料で構成されている。この場合、樹脂歯車91は中間歯車を介して金属歯車93と接するので、電池233等、静電容量が十分に大きい構造体と電気的に接続され、樹脂歯車91および中間歯車の双方の放電を行うことができる。
また、樹脂歯車91には、カーボン粉末以外の粉末が含まれていてもよい。この粉末としては、金属粒子等の導電性を有する粉末や、ガラス粒子等の導電性を有していない粉末等を用いることができる。
また、本実施形態では、接続手段96は、指針軸41の端面に接続されている場合について説明したが、これに限定されず、例えば、樹脂歯車91および金属歯車93のうちの少なくとも一方に接続されていてもよい。
また、接続手段96によって接続される基準電極としては、本実施形態では、電池233の正極または負極であったが、各歯車に発生する静電気に対して静電容量が十分に大きければこれに限定されず、例えば、外装ケース11に接続されていてもよい。この場合、導電経路内に回路基板23を含んでいてもよい。
以上のように、本実施形態によれば、輪列ユニット9(歯車列)は、導電性ポリマーと、カーボン粉末とを含む材料で構成された第1歯車である樹脂歯車91、金属材料で構成された第2歯車とである金属歯車93と、を備え、電池を電源として駆動するモーター8の駆動力を伝達する。
このような構成によれば、樹脂歯車91および中間歯車92は、全ての歯先まで導電化させることができ、また、歯車をより薄肉化しても安定して歯先の成形が可能である。中間歯車92は、第1歯車の一例である。また、樹脂歯車91が金属歯車93と常に同電位となり、摩擦や剥離による帯電を防止するだけでなく、樹脂歯車91、金属歯車93および輪列受け94にジョンソンラーベック力、グラジエント力のいずれの発生も防止することができる。さらに、指針軸41と接続手段96によって電池233の正極または負極に接続されて電位的に安定するので、樹脂歯車91および金属歯車93と輪列受け94にクーロン力の発生も防止することができ、樹脂歯車91および金属歯車93の貼り付きによる不具合が発生するのを防止することができる。
また、ムーブメント2は、輪列ユニット9を備える。これにより、上記効果を発揮するムーブメント2が得られる。
また、電子時計10は、ムーブメント2と、ムーブメント2を収納する筐体1(ケーシング)と、を備える。これにより、上記効果を発揮する電子時計10が得られる。
なお、本実施形態では、樹脂歯車91では、大歯車910および小歯車912が一体的に形成されている場合について説明したが、これに限定されず、大歯車910および小歯車912が別体で構成され、別体同士が接合(例えば、接着、融着、圧入)されたものであってもよい。この場合、大歯車910および小歯車912のうちの一部が金属材料で構成されていてもよい。
また、本実施形態では、発電手段4の発電機能として太陽電池を用いた構成について説明したが、これに限定されず、回転錘を用いた発電機能等であってもよい。また、発電機能を有しない電池233だけで構成されていてもよい。
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態のムーブメントの拡大断面図である。
以下、この図を参照して本発明のムーブメントおよび時計の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、主として、輪列受けが導電性を有し、かつ、接続手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
樹脂歯車91は、軸方向に移動可能であるので、輪列受け94と接触したり、剥離したりする。このため、輪列受け94の樹脂歯車91や金属歯車93との対向面が帯電してクーロン力が発生し、樹脂歯車91や金属歯車93が輪列受け94に貼り付く。その結果、樹脂歯車91と輪列受け94との間に摩擦抵抗が生じ、樹脂歯車91や金属歯車93の回転が阻害される不具合が生じる。樹脂歯車91は第1歯車の一例であり、金属歯車93は第2歯車の一例である。
樹脂歯車91は、前記第1実施形態で述べたように、導電性ポリマーと、カーボン粉末とを含む材料で構成されている。すなわち、大歯車910および小歯車912は、導電性ポリマーと、カーボン粉末とを含む材料で構成されている。
本実施形態では、輪列受け94も、導電性を有している。この輪列受け94は、樹脂材料と、カーボンフィラーまたは微小な繊維状金属とを含む材料で構成されている。これにより、導電性を十分に確保しつつ、軽量性、耐摩耗性、耐衝撃性に優れる。
樹脂材料としては、例えば、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等が挙げられる。カーボンフィラーとしては、カーボン粉末、炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。繊維状金属としては、銅、ステレンス、若しくはガラス繊維や針状セラミックにアルミや銅をコーティングしたメタライズ繊維等が挙げられる。
また、図6に示すように、本実施形態では、輪列受け94が接続手段96によって電池233(図示せず)の正極または負極に接続されている。本実施形態では、接続手段96は、例えば、導線等により構成されている。
このような構成によれば、樹脂歯車91、金属歯車93および輪列受け94が同電位となり、摩擦や剥離による帯電を防止するだけでなく、樹脂歯車91、金属歯車93および輪列受け94にクーロン力、ジョンソンラーベック力、グラジエント力のいずれの発生も防止することができる。さらに、接続手段96に長尺な板バネ構造など複雑な形状を用いて指針軸41と接続することなく、輪列受け94に接する樹脂歯車91と金属歯車93を、輪列受け94と接続手段96によって電池233の正極または負極に接続することができる。その結果、電位的に安定し、歯車の貼り付きによる不具合を防止することができる。さらに、接続手段96が各歯車の軸の端面と接する構造を省略することができ、各歯車が円滑に回転することができる。
また、地板21も輪列受け94と同じ導電性を有する材料で構成され、導電性を有していてもよい。この場合、地板21のみ導電性を有し、輪列受け94は第一実施形態と同様に導電性を有さない材料で構成されていてもよいし、地板21および輪列受け94の双方が導電性を有していてもよい。これにより、上述したような効果を得ることができる。
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態の輪列ユニットを示す模式図(断面図)である。
以下、この図を参照して本発明のムーブメントおよび時計の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、主として、輪列ユニットの構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図7に示すように、本実施形態では、輪列ユニット9は、樹脂歯車91の小歯車912と噛合する検出歯車95(秒検出歯車)を有している。検出歯車95は、金属歯車93と同じ歯数を有し、金属歯車93と同じ回転周期で回転する。
樹脂歯車91と検出歯車95とには、それぞれ貫通孔が形成され、検出歯車95が一回転する間の1箇所で、検出歯車95の貫通孔と樹脂歯車91の貫通孔とが平面視で重なるように形成されている。検出歯車95および樹脂歯車91と、地板21との間には図示しない光センサ用回路基板が配置され、光センサ用回路基板には、各貫通孔が重なる位置と平面視で同じ位置に、発光ダイオード(LED)や発光ポリマー(OLED)、無機ELなどの発光素子が設けられる。また、回路基板23には、各貫通孔が重なる位置と平面視で同じ位置に、フォトダイオードやフォトトランジスタ、硫化カドミウムセル(Cds)などの受光素子が設けられる。発光素子からの光が、重なり合った各貫通孔を通過し、受光素子で検出されることによって、針411が基準位置に位置したことを検出することができる。
また、検出歯車95は、前記実施形態で述べたような導電性ポリマーおよびカーボン粉末を含む材料で構成されている。これにより、例えば、検出歯車95の回転軸(中心軸)に配線を接続することなく、検出歯車95を、樹脂歯車91を介して金属歯車93に電気的に接続することができ、検出歯車95を、電池233の正極または負極に電気的に接続することができる。その結果、検出歯車95の放電を行うことができ、検出歯車95に静電気が蓄積されて、前述したような不具合が発生するのを防止することができる。検出歯車95は、第1歯車の一例である。
以上、本発明のムーブメントおよび時計を図示の実施形態を用いて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、輪列ユニット、ムーブメントおよび時計を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、前記実施形態では、電子時計の一例として、腕時計型のものについて説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、置時計、ペンダント型時計、懐中時計等にも適用することができる。
また、輪列ユニットは、上記のような電子時計に限定されず、例えば、スマートグラス、スマートフォン、タブレット端末、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等のウェアラブル端末、カーナビゲーション装置、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレータ等に適用することができる。