以下、本発明の過熱水蒸気発生システムの実施形態について図を参照して説明する。まず、本発明の一実施形態に係る過熱水蒸気発生システム10の構成例を図1に基づいて説明する。図1には、過熱水蒸気発生システム10の構成例を示す模式図が図示されている。
図1に示すように、過熱水蒸気発生システム10は、主に、筐体11、ボイラー装置12、供給管13、中継管14、排出管15、コントローラ50、温度センサ17、配線18,19、過熱水蒸気発生装置20等により構成されている。例えば、筐体11は、供給管13の導入側端や排出管15の排出側端を除いて、ボイラー装置12、供給管13、中継管14、排出管15、コントローラ50、配線18,19、過熱水蒸気発生装置20等を収容している。
ボイラー装置12は、供給管13を介して供給される水を加熱して飽和水蒸気を発生させる飽和水蒸気発生装置である。水は、図略の水源から供給管13の導入側端に流入して供給されている。ボイラー装置12は、例えば、供給管13から供給された水を所定の水位以上で貯留するリザーバと、このリザーバに蓄えられた水を内部に導入するとともに水面上方の空間部に中継管14が接続されているボイラーと、このボイラー内の水に浸かるように底部に設けられ外部から供給される電力により発熱可能な電熱ヒーターと、により構成されている。
電熱ヒーターは、配線18を介してコントローラ50に電気的に接続されており、コントローラ50により制御されている駆動電力の供給を受けて水を100℃以上(ほぼ大気圧下)に加熱する。コントローラ50は、後述するように温度センサ17から入力される温度情報に基づいて電熱ヒーターの駆動電力を制御する。なお、ボイラー装置12を構成する、リザーバ、ボイラーおよび電熱ヒーターは、図示されていない。
過熱水蒸気発生装置20は、ボイラー装置12から中継管14を介して導入された飽和水蒸気を加熱して過熱水蒸気を発生させその過熱水蒸気を排出管15から排出するブースター(補助加熱装置)である。即ち、ボイラー装置12では、電熱ヒーターに駆動電力が供給されることによりボイラー内の水が沸騰して飽和水蒸気が発生し、当該飽和水蒸気は中継管14に排出される。過熱水蒸気発生装置20は、中継管14から流入した飽和水蒸気を、例えば、250℃以上で加熱して過熱水蒸気を発生させる。
次に、過熱水蒸気発生装置20の構成等を図2〜図5に基づいて説明する。図2には、過熱水蒸気発生装置20の外観構成の例を示す側面図が図示されている。また図3には、過熱水蒸気発生装置20の軸方向(長手方向)部分断面図が図示されている。なお、図3において、カートリッジヒーター30の本体31および細管40は、断面でなく側面が図示されている。さらに図4(A)には、図2に示すIV-A−IV-A線により切断した状態を同矢印方向から見た径方向(長手方向の軸に対して直交する方向)断面図が図示されている。また図4(B)には、カートリッジヒーター30の構成を示す説明図が図示されている(中間部が一部省略されている)。さらに図5には、コントローラ50の構成例を示すブロック図が図示されている。
図2や図3に示すように、過熱水蒸気発生装置20は、主に、ハウジング21、入力パイプ23、出力パイプ24、プレート25、パッキン26、カートリッジヒーター30、細管40等により構成されており、過熱水蒸気発生システム10の筐体11内の所定位置に取り付けられている。なお、図1においては、当該過熱水蒸気発生装置20は、図面表現の便宜上、単なる矩形状の記号で表されていることに注意されたい。
ハウジング21は、例えばステンレス鋼製(以下「ステンレス製」という)の円筒管であり、軸長(長手方向の長さ)が約20cm、軸径(長手方向の軸に対して直交する方向の長さ)が約2cmに設定されている。ハウジング21の一端部21aには、平板円環形状(鍔形状)を有するステンレス製のフランジ部22aが溶接されている。フランジ部22aは、例えば、直径が約5cmに設定されており、その径方向中央部に、カートリッジヒーター30を挿通可能な貫通穴が形成され、またこの貫通穴を囲むように、ボルト27を螺合可能な雌ねじ孔が4箇所に形成されている。
ハウジング21の他端部21bには、出力パイプ24に連通可能な排出穴を有する底部22bが形成されている。また、ハウジング21の周壁21cには、その一端部21a側に入力パイプ23に連通可能な導入穴が形成されている。
入力パイプ23は、ステンレス製の円筒管であり、例えば、その管軸方向の形状がL字状をなすように形成されている。入力パイプ23の一端部には、中継管14に連通かつ接続可能な導入口23aが形成されており、また入力パイプ23の他端部は、ハウジング21の周壁21cの導入穴に連通可能に周壁21cに溶接されている。
出力パイプ24も、入力パイプ23と同様に、ステンレス製の円筒管であり、例えば、所定長さの直線状に形成されている。出力パイプ24の一端部には、排出管15を連通かつ接続可能な排出口24aが形成されており、また出力パイプ24の他端部は、ハウジング21の底部22bの排出孔に連通可能に底部22bに溶接されている。なお、底部22bおよび出力パイプ24を設けることなく、ハウジング21の他端部21bを開口させてもよい。
プレート25は、フランジ部22aと同様に、円環形状(鍔形状)を有するステンレス製の平円板である。プレート25の外形は、フランジ部22aとほぼ同形状に形成されているが、カートリッジヒーター30のテーパーねじ33に螺合可能な雌ねじ穴が径方向の中央に形成されている点と、この雌ねじ穴を囲むように、ボルト27を挿通可能な貫通孔が4箇所に形成されている点が異なる。
パッキン26は、耐熱性に優れた円板状のシール部材である。本実施形態では、4本のボルト27によってハウジング21のフランジ部22aにプレート25を取り付けた場合に、フランジ部22aとプレート25の間に当該パッキン26を介在させる。これにより、パッキン26は、これらの間に生じる隙間を埋め得るようにフランジ部22aとプレート25に密着し、フランジ部22aとプレート25の間の気密性を高める。パッキン26には、カートリッジヒーター30を挿通可能な貫通穴やボルト27を挿通可能な貫通孔が形成されている。
図4(B)に示すように、カートリッジヒーター30は、例えば、酸化マグネシウムからなるボビン32にニクロム線等の発熱線33を巻回したものを円筒のステンレス製の被覆管35内に収容するとともに、被覆管35内に酸化マグネシウムからなる絶縁物34を充填したものである。発熱線33がボビン32に大径かつ高密度で巻回されている点と、発熱線33の両端(リード線36)が被覆管35の一端側から外部に引き出されている点において、いわゆるシーズヒーターと異なる。そのため、カートリッジヒーター30は、シーズヒーターに比べて高い温度で発熱することができる。
本実施形態のカートリッジヒーター30は、主に、本体31、保護カバー37、プラグ38等により構成されている(図2、図3参照)。カートリッジヒーター30は、例えば、600℃まで発熱可能である。カートリッジヒーター30は、本体31がハウジング21のほぼ軸上に位置するようにプレート25を介してハウジング21に取り付けられている。カートリッジヒーター30は、配線19を介してコントローラ50に電気的に接続されており、後述するように、コントローラ50により駆動電力の供給を制御されている。
本体31は、前述の発熱線33や充填された絶縁物34等を収容する円筒のステンレス製の被覆管35で覆われる長尺の円柱形状をなす棒状に形成されている。本実施形態では、本体31の長さは、ハウジング21の一端部21a側から他端部21b側に及ぶ大きさに設定されている。本体31の基端には、本体31から引き出された発熱線33のリード線36を覆うとともにテーパーねじ39が形成されたプラグ38が設けられている。
プラグ38のテーパーねじ39は、プレート25の径方向の中央に形成されている雌ねじ穴の雌ねじに対して螺合可能であることから、プラグ38がプレート25にねじ締結されることによって、カートリッジヒーター30は、プレート25を介してハウジング21に取り付けることが可能になる。プラグ38のテーパーねじ39と反対側には、保護カバー37が接続されている。この保護カバー37は、本体31から引き出された発熱線33のリード線36とこれらに接続される配線19の接続部とを覆っている。
細管40は、真鍮(黄銅)製の円筒管であり、本実施形態では、軸長が約17cmに設定されている。本実施形態では、細管40は、ハウジング21内に収容された場合において、細管40の一端部40aが入力パイプ23に連通する周壁21cの導入穴よりもハウジング21の他端部21b側に位置し、かつ、細管40の他端部40bがカートリッジヒーター30の本体31の先端よりもハウジング21の一端部21a側に位置するように、軸長が設定されている。
これにより、細管40の一端部40aが入力パイプ23に連通する周壁21cの導入穴よりもハウジング21の一端部21a側に位置している場合に比べて、入力パイプ23から流入した飽和水蒸気を細管40の一端部40aに導き易くなるので、細管40の内側を流通することなく細管40の外側を通る飽和水蒸気を減らすことが可能になる。したがって、飽和水蒸気の加熱効率を向上させることができる。
また、図4(A)に示すように、細管40は、その外周壁がカートリッジヒーター30の本体31の被覆管35に接触するようにハウジング21内に収容されている。また、細管40の外周壁が、それに隣接する他の細管40の外周壁にも接触するようにハウジング21内に収容されている。細管40の外周壁は、ハウジング21の周壁21cの内周面にも接触している。
本実施形態では、本体31の全周囲を取り囲み得るように、8本の細管40をハウジング21内に収容している。なお、図示されていないが、これらの細管40と周壁21cとの間に形成される隙間には、例えば、真鍮製の棒体が介在している。この棒体の径方向(長手方向の軸に対して直交する方向)の断面は、例えば、円形状、楕円形状、矩形状、三角形状、五角形状等の多角形状等、当該隙間の存在により細管40がその径方向に移動し難い形状に形成されている。これにより、ハウジング21内で細管40がガタツキ難くして過熱水蒸気発生装置20が振動した場合に生じ得る騒音の発生を抑制している。
図5に示すように、コントローラ50は、例えば、マイクロコンピュータである。典型的には、MPU51、メモリ53、システムバス55、入出力インタフェース57等により構成されており、メモリ53に記憶されている所定の制御プログラムをMPU51が実行することにより、ボイラー装置12の電熱ヒーターや過熱水蒸気発生装置20のカートリッジヒーター30に対するそれぞれの駆動電力の供給を制御している。そのため、入出力インタフェース57には、配線18を介してボイラー装置12が接続されており、また配線19を介してカートリッジヒーター30が接続されている。なお、メモリ53のRAMは、電源がオフされても記憶情報を保持可能な不揮発性領域を備えている。
本実施形態では、例えば、ボイラー装置12に対しては、コントローラ50は、ボイラーの底部内側に設けられている温度センサ(水温センサ)17から入力される温度情報に基づいて、ボイラー内の水が予め設定されている所定の温度(例えば、100℃)になるように電熱ヒーターの通電制御を行う。また、過熱水蒸気発生装置20に対しては、後述するように、コントローラ50は、カートリッジヒーター30に供給している駆動電力の情報(電圧情報および電流情報)を電圧センサ71や電流センサ73から得るとともに、これらの情報に基づいて、予め設定されている所定の温度になるようにカートリッジヒーター30の通電制御を行う。なお、電圧センサ71および電流センサ73は、例えば、配線19の途中に設けられており、これらからリアルタイムに出力される電圧情報や電流情報は、例えば、入出力インタフェース57等に設けられるバッファメモリに最新のものが保持されている。
このように過熱水蒸気発生システム10の過熱水蒸気発生装置20を構成することによって、カートリッジヒーター30の本体31が、例えば、約300℃で発熱すると、その熱が被覆管35の周囲に配置された複数の細管40に直接的に伝わる。そのため、入力パイプ23の導入口23aから導入された飽和水蒸気がこれらの細管40の一端部40aから管内に流入して細管40の内周壁に接することにより、被覆管35の熱が細管40を介して当該飽和水蒸気に熱伝達されることから、当該飽和水蒸気は、例えば、250℃〜290℃で加熱される。これにより、細管40の他端部40bから流出する水蒸気は過熱水蒸気になるため、出力パイプ24の排出口24aから過熱水蒸気が排出される。なお、底部22bおよび出力パイプ24が設けられていない場合には、ハウジング21の他端部21bの開口から過熱水蒸気が出力される。
また、ハウジング21内においては、細管40の外側を飽和水蒸気が細管40の外周壁に接することによっても当該飽和水蒸気に熱伝達されることから、このような飽和水蒸気も、細管40の外周壁で、例えば、250℃前後に加熱される。これにより、細管40の外周壁に沿って他端部40bから流出する水蒸気も過熱水蒸気になるため、出力パイプ24の排出口24aから過熱水蒸気が排出される。
さらに、細管40の外周壁がハウジング21の周壁21cの内周面にも接触することから、本体31が発した熱の一部は、細管40を介して周壁21cに伝わる。そのため、ハウジング21内において、細管40の外側を流通する飽和水蒸気が周壁21cの内周面に接することで当該飽和水蒸気に熱伝達されることから、このような飽和水蒸気も、例えば、250℃前後に加熱される。これにより、ハウジング21の周壁21cの内周面に沿って他端部21bから流出する水蒸気も過熱水蒸気になるため、出力パイプ24の排出口24aから過熱水蒸気が排出される。
本実施形態では、細管40を真鍮(黄銅)製にしている。これにより、細管40をステンレス鋼で構成する場合に比べて細管40の部品コストを抑制することが可能になる。真鍮(黄銅)は、一般的に、ステンレス鋼に比べて低コストであり、また熱伝導率も高いからである。また、発熱した本体31の熱を細管40やハウジング21の周壁21cに効率良く伝えることも可能になる。真鍮の熱伝導率は、混合している銅と亜鉛の配分に左右されるものの、ステンレス鋼の熱伝導率(16.7〜20.9)に比べて桁違いに大きい(真鍮は106)からである。なお、熱伝導率の単位は、[W/(m・K)](W(ワット),m(メートル),K(ケルビン))である。
ところで、真鍮は、400℃前後で変性したり軟化したりし得る。真鍮の溶解温度は、混合している銅と亜鉛の配分に左右され、一般的には800℃前後であるが、それより低い温度で変性や軟化等の劣化が生じ得る。そのため、本実施形態では、細管40が接触し得るカートリッジヒーター30の被覆管35が350℃を超える温度にならないように、コントローラ50が駆動電力の供給を制御している。
本実施形態の過熱水蒸気発生システム10では、各図を見ても解るように過熱水蒸気発生装置20は温度センサを備えていない。そのため、本実施形態では、過熱水蒸気発生システム10のコントローラ50が、電圧センサ71から出力された電圧情報と電流センサ73から出力された電流情報とから、カートリッジヒーター30の発熱線33の抵抗値を算出し、さらにこの算出した抵抗値を用いて被覆管35の温度を推定してカートリッジヒーター30の駆動制御を行っている。この推定には、予めコントローラ50のメモリ53に記憶されている所定の変換マップ(発熱線抵抗値対被覆管温度の変換マップ)が用いられる。
ここで、コントローラ50によるカートリッジヒーター30の駆動制御処理の流れを、図6〜図10を参照して説明する。図6には、コントローラ50により実行されるカートリッジヒーター30の駆動制御処理の例を表したフローチャートが図示されている。また、図7には、図6に示す初期温度時補正処理の例を表したフローチャートが図示されている。さらに、図8には、発熱線抵抗値対被覆管温度の変換マップの例を表した説明図が図示されている。図9には、図6に示す所定温度時補正処理の例を表したフローチャートが図示されている。図10には、図6に示すヒーター制御処理の例を表したフローチャートが図示されている。
図6に示す駆動制御処理は、過熱水蒸気発生システム10の電源が投入された後、コントローラ50のMPU51により実行されるものである。そのため、本駆動制御処理では、まずステップS100により所定の初期化処理が行われる。この処理では、例えば、コントローラ50のメモリ53を構成するRAMのワーク領域やフラグ等がクリアされる。
続くステップS200では、初期温度時補正処理が行われる。ステップS200の初期温度時補正処理は、図7に処理の流れが図示されているので、ここからは図7を参照して説明する。本実施形態では、前述のように、所定の変換マップをメモリ53に記憶している。この変換マップは、図8に示すように、発熱線33の抵抗値(縦軸)から被覆管35の温度(横軸)を推定し得る「発熱線抵抗値対被覆管温度の変換マップ」であり、過熱水蒸気発生システム10の製造段階や設置後のメンテナンス等において予め設定(メモリ53に記憶(格納))されているものである。
本初期温度時補正処理では、カートリッジヒーター30の発熱線33が発熱する前の周囲温度における発熱線33の抵抗値を実際に計測することによって、予め設定されている所定の変換マップ(発熱線抵抗値対被覆管温度の変換マップ)を補正する。これにより、例えば、経年劣化や発熱線33の個体差等により発熱線33の抵抗値が予め設定されている抵抗値と異なっていた場合には、そのような誤差が補正される。なお、所定の変換マップを直接補正するのではなく、所定の変換マップから得られた抵抗値を個々に補正してもよい(所定の変換マップから抵抗値を得る都度補正するように構成する)。
本初期温度時補正処理では、まずステップS201により微小電力出力処理が行われる。この処理では、カートリッジヒーター30の発熱線33に対して微小電力を出力する。微小電力は、発熱線33が発熱しない(発熱に寄与しない)程度の電力値、または発熱線33が発熱したとしてもその熱が被覆管35に伝達されない(発熱に殆ど寄与しない)程度の電力値、である。例えば、パルス幅50ミリ秒のミリアンペアオーダーの微小電流を1秒間に10パルス出力する。カートリッジヒーター30の発熱線33は抵抗体であることから、このような微小電力であっても、発熱線33に印加された電圧値が電圧センサ71により検出され、発熱線33に通電された電流値が電流センサ73により検出される。
このため、続くステップS203により、電圧センサ71から電圧情報(電圧値Vm)を取得し、電流センサ73から電流情報(電流値Im)を取得する。より具体的には、入出力インタフェース57等のバッファメモリに保持されている、現在の電圧情報(電圧値Vm)や電流情報(電圧値Im)を当該バッファメモリから取得する。なお、電圧センサ71や電流センサ73から出力される情報がアナログ情報である場合には、A/D変換器等によりディジタル値に変換されたものがMPU51に入力される。これにより、次のステップS205の抵抗値算出処理により、電圧値Vmを電流値Imで除算することにより発熱線33の実測の抵抗値Ra(=Vm/Im)が得られる。
そして、ステップS206により発熱線抵抗値対被覆管温度の変換マップを参照して、発熱線33の周囲温度に対する抵抗値Rjを取得する。つまり、この処理では、発熱線33の抵抗値(縦軸)から被覆管35の温度(横軸)を推定するのではなく、発熱線33の周囲温度からその温度に対応する抵抗値Rjを逆方向に参照する(逆引きをする)。
発熱線33の周囲温度は、例えば、既知である場合にはその既知温度を用いる。既知である場合とは、空調温度が通年で安定した環境に設置されているために過熱水蒸気発生システム10の周囲温度が殆ど変動しない場合である。また、発熱線33の周囲温度が変動し得る環境である場合には、例えば、ボイラー装置12が有する温度センサ17から、ボイラー内に蓄えられている加熱前の水の温度情報(水温情報)を得てこれを発熱線33の周囲温度相当として用いる。また、過熱水蒸気発生装置20のハウジング21内に図略の温度センサを設けている場合にはそれから温度情報を得る。
次のステップS207では、ステップS205により算出した実測の抵抗値Raと、ステップS206により逆引きをした抵抗値Rjと、の差を算出し、さらにステップS208の判定処理により、両者の抵抗値の差(誤差)が許容範囲外であるか否かを判定する。誤差が許容範囲外である場合には(S208でYes)、続くステップS209により当該変換マップを補正する。補正は、例えば、予めメモリ53に記憶されている各抵抗値に当該誤差分を加算し(プラス方向の誤差であれば抵抗値が増加し、マイナス方向の誤差であれば抵抗値が減少する)、補正後の各抵抗値をメモリ53に上書き記憶する。そして、本初期温度時補正処理を終えて、図6の駆動制御処理に戻る。
例えば、図8に示す破線のカーブは、予めメモリ53に記憶されている各抵抗値(実線のカーブ)に対してプラス方向の誤差分を加算した場合の例である。
ステップS208の判定処理により両者の抵抗値の差(誤差)が許容範囲外でない(許容範囲内である)場合には(S208でNo)、発熱線抵抗値対被覆管温度の変換マップは補正する必要がないため、本初期温度時補正処理を終えて図6の駆動制御処理に戻る。
なお、ステップS205の抵抗値算出処理により、算出された発熱線33の実測抵抗値Ra(=Vm/Im)を、後述するステップS600でメモリ53の不揮発性領域に記憶してもよい。これにより、例えば、電源投入後、初期温度時補正処理(S200)の実行によって得られる発熱線33の実測抵抗値Raの履歴をメモリ53に残すことが可能になる。そのため、この履歴情報から、当該実測抵抗値Raの経年変化の状態や、経年変化に基づく発熱線33の劣化状態を把握することが可能になる。つまり、発熱線33の劣化具合がわかるため、カートリッジヒーター30の交換の要否を判定したり、交換時期や寿命を予測したりすることができる。
図6に示すように、駆動制御処理のステップS300では、所定温度時補正処理が行われる。ステップS300の所定温度時補正処理は、図9に処理の流れが図示されているので、ここからは図9を参照して説明する。ステップS300の所定温度時補正処理は、図7を参照して説明した初期温度時補正処理と似ている。
ステップS300の所定温度時補正処理では、ボイラー装置12から既知温度の水蒸気(例えば100℃の飽和水蒸気)を過熱水蒸気発生装置20に導入してハウジング21内をその既知温度の水蒸気で満たすことによって、その既知の周囲温度における発熱線33の抵抗値を実際に計測する。
例えば、発熱線33の通電制御を開始する前において、予め設定された温度の水蒸気がボイラー装置12から過熱水蒸気発生装置20に出力されるとほぼ同時に、ボイラー装置12からその出力情報がコントローラ50に出力されるため、この出力情報をトリガにしてステップS300を実行する。また、ボイラー装置12の電熱ヒーターの通電を開始してから所定時間を経過すると、既知温度の水蒸気(例えば100℃の飽和水蒸気)が過熱水蒸気発生装置20に出力される場合には、この所定時間の経過をトリガにしてもよい。なお、ボイラー装置12から出力される水蒸気の温度が予め設定されていない場合には、ボイラー装置12の温度センサ17が出力する水温情報をコントローラ50が取得してもよい。
これにより、今度は、その既知温度について、予め設定されている所定の変換マップ(発熱線抵抗値対被覆管温度の変換マップ)を補正することが可能になる。そのため、既知温度において、例えば、経年劣化や発熱線33の個体差等により発熱線33の抵抗値が予め設定されている抵抗値と異なっていた場合には、そのような誤差が補正される。なお、所定の変換マップを直接補正するのではなく、所定の変換マップから得られた抵抗値を個々に補正してもよい(所定の変換マップから抵抗値を得る都度補正するように構成する)。
所定温度時補正処理では、まずステップS301により微小電力出力処理が行われる。カートリッジヒーター30の発熱線33に対して出力する微小電力は、初期温度時補正処理の場合と同様であり、発熱線33が発熱しない(発熱に寄与しない)程度の電流値、または発熱線33が発熱したとしてもその熱が被覆管35に伝達されない(発熱に殆ど寄与しない)程度の電流値である。なお、初期温度時補正処理の場合の微小電力や、所定温度時補正処理の場合の微小電力は、特許請求の範囲に記載の「発熱に寄与しないまたは発熱に殆ど寄与しない電力」に相当し得るものである。これらの微小電力の具体的な値は、カートリッジヒーター30の発熱線33の電気的仕様(抵抗値等)に左右されることから、個別具体的な実験やコンピュータシミュレーション等の結果に基づいて予め設定される。
続くステップS303により、電圧センサ71から電圧情報(電圧値Vn)を取得し、電流センサ73から電流情報(電流値In)を取得する。より具体的には、入出力インタフェース57等のバッファメモリに保持されている、現在の電圧情報(電圧値Vn)や電流情報(電圧値In)を当該バッファメモリから取得する。これにより、次のステップS305の抵抗値算出処理により、電圧値Vnを電流値Inで除算することにより発熱線33の実測の抵抗値Rb(=Vn/In)が得られる。そして、ステップS306により発熱線抵抗値対被覆管温度の変換マップを参照して、発熱線33の既知の周囲温度(例えば、100℃)に対する抵抗値Rkを逆引きで取得する。
次のステップS307では、ステップS305により算出した実測の抵抗値Rbと、ステップS306により逆引きをした抵抗値Rkと、の差を算出し、さらにステップS308の判定処理により、両者の抵抗値の差(誤差)が許容範囲外であるか否かを判定する。誤差が許容範囲外である場合には(S308でYes)、続くステップS309により当該変換マップを補正する。この補正は、初期温度時補正処理のステップS209の場合と同様に行われるが、例えば、当該既知温度以上について補正を行い、当該既知温度未満については補正を行わないように処理をしてもよい。これにより、ステップS200の初期温度時補正処理における補正を当該既知温度未満について残すことが可能になる。補正が終わると、補正後の各抵抗値をメモリ53に上書き記憶して、本所定温度時補正処理を終えて図6の駆動制御処理に戻る。また、両者の抵抗値の差(誤差)が許容範囲外でない(許容範囲内である)場合にも(S308でNo)、本所定温度時補正処理を終えて図6の駆動制御処理に戻る。
このように本実施形態のコントローラ50が実行する駆動制御処理では、ステップS200の初期温度時補正処理と、ステップS300の所定温度時補正処理との両方において発熱線抵抗値対被覆管温度の変換マップを補正する。これにより、次に説明するステップS400のヒーター制御処理においては、被覆管35の推定温度の精度を向上させることが可能になる。
なお、本実施形態の駆動制御処理では、ステップS200の初期温度時補正処理と、ステップS300の所定温度時補正処理との両方に実行するようにアルゴリズムを構成したが、電源投入後の過熱水蒸気発生システム10の起動時間を短縮する必要がある場合には、これらのうちのいずれか一方だけを実行するように駆動制御処理のアルゴリズムを構成してもよい。また、過熱水蒸気発生システム10の起動時間の短縮を最優先にする場合には、ステップS200の初期温度時補正処理およびステップS300の所定温度時補正処理を実行することなく省略してもよい。
図6に示すように、駆動制御処理のステップS400では、ヒーター制御処理が行われる。このヒーター制御処理は、ボイラー装置12から飽和水蒸気が出力されて過熱水蒸気発生装置20のハウジング21に導入されている場合に実行され、カートリッジヒーター30に駆動電力を供給する。そのため、ボイラー装置12から飽和水蒸気が出力されていない場合には、ボイラー装置12からその出力情報がコントローラ50に出力されるまで当該コントローラ50では処理を待つ。ステップS400のヒーター制御処理は、図10に処理の流れが図示されているので、ここからは図10を参照して説明する。
本ヒーター制御処理では、まずステップS401により電圧・電流情報取得処理が行われる。これは、電圧センサ71や電流センサ73からリアルタイムに出力されて入出力インタフェース57等のバッファメモリに保持されている電圧情報(電圧値Vr)や電流情報(電流値Ir)を、当該バッファメモリから取得する処理である。これらの情報は、次のステップS403の抵抗値算出処理に用いられて、電圧値Vrを電流値Irで除算することにより発熱線33の実測の抵抗値Rr(=Vr/Ir)が得られる(S403)。
次にステップS405により被覆管温度推定処理が行われる。この処理では、ステップS403により算出した発熱線33の実測の抵抗値Rrから、発熱線抵抗値対被覆管温度の変換マップを参照して被覆管35の現在の温度を推定する。例えば、発熱線33の実測の抵抗値Rrが50Ωである場合には、図8に示す補正後のマップ(破線のカーブ)においては、被覆管35の推定温度は約340℃であることがわかる。
そして、このステップS405により推定された被覆管35の推定温度情報がステップS407による駆動電力制御処理に用いられる。駆動電力制御処理(S407)では、例えば、PID制御により目標温度に対する誤差が修正される。被覆管35の目標温度が、例えば、380℃に設定されている場合には、ステップS405により推定された被覆管35の推定温度情報に基づいて、被覆管35の温度が目標温度の380℃に近づくように、発熱線33に供給される駆動電力が制御される。
発熱線33の駆動電力にPID制御を用いることにより、発熱線33の発熱温度を目標温度に高い精度で近づけることが可能になるが、制御の精度よりも駆動制御の処理の簡素化を優先する場合には、ステップS407による駆動電力制御処理は、PID制御に限られない。例えば、制御が比較的に単純なオンオフ制御(ON−OFF制御)や上限値制御でもよいし、また比例制御でもよい。
また、ステップS407の駆動電力制御処理においては、交流波形の位相角制御に対応した駆動電力用のパルス波形の電流が発熱線33に出力される。例えば、最大電力時の場合、商用電源の周波数が50Hzのときには1秒間に100パルスが出力され、また商用電源の周波数が60Hzのときには1秒間に120パルスが出力される。最大電力時以外の場合には、出力されるパルス数はこれら(100または120パルス)よりも減少する。また、最小電力時の場合には、このようなパルスは出力されない。つまり、駆動電力の供給を休止する。ヒーター制御処理(S400)の期間中においては、駆動電力の供給を休止する場合を除いて、このようなパルス状の電流波形の駆動電力が原則として出力されている。
このようにカートリッジヒーター30に駆動電力を供給している期間中においては、最大電力時以外の場合を除いて発熱線33の電流値が変動することから、正確な電圧情報や電流情報が得られ難い。そのため、例えば、最大電力時以外の場合においては、パルス状の電流波形が出力されていない期間中(最小電力時の場合を含む)を検出して、抵抗値を計測するためのパルス電流を発熱線33に出力する。また、パルス状の電流波形が出力しない期間を、例えば、毎秒ごとに強制的に設け、その期間中に抵抗値を計測するためのパルス電流を発熱線33に出力する。このような期間中には、例えば、パルス幅5ミリ秒のミリアンペアオーダーの微小電流を1パルスだけ出力する。これにより、ステップS401により取得された電圧情報および電流情報を用いて、S403により算出された発熱線33の抵抗値は、精度が上がることから、ステップS405により推定された被覆管35の推定温度の精度も向上させることが可能になる。
また、例えば、発熱線33を発熱させるための駆動電力の供給を、所定期間の間、休止させる。この所定期間は、カートリッジヒーター30の発熱線33が被覆管35の温度とほぼ等しくなるのに要する時間(例えば、3秒間)である。このような所定期間中に発熱線33の抵抗値を測ることにより、被覆管35の温度を検出する温度センサとして、カートリッジヒーター30を機能させることが可能なる。例えば、当該所定期間中に、前述した微小電力出力処理(S201,S301)と同様に、発熱線33に対して、例えば、パルス幅50ミリ秒のミリアンペアオーダーの微小電流(発熱線33の抵抗値を計測するための微小電流)を1秒間に10パルス出力する。これにより、ステップS401により取得された電圧情報および電流情報を用いて、S403により算出された発熱線33の抵抗値は、さらに精度が上がることから、ステップS405により推定された被覆管35の推定温度の精度も一層向上させることが可能になる。
カートリッジヒーター30に駆動電力を供給している期間中において、例えば、最大電力時の場合等、発熱により発熱線33自体の温度が上昇して温度変化が継続しているときには、発熱線33の温度と被覆管35の温度とが異なることがある。発熱線33と被覆管35の間に介在する絶縁物34の熱抵抗が影響するからである。そのため、発熱線33の温度が上昇している期間中(例えば、駆動電力の供給開始後から、被覆管35の温度が目標温度未満の所定温度(目標温度付近)に到達するまでの期間中)においては、発熱線33の温度から絶縁物34の熱抵抗分の温度を減算したものが被覆管35の温度になる(S405)。なお、発熱線33の温度は、図8に示す変換マップのように構成されてメモリ53に記憶されている図略の発熱線抵抗値対発熱線温度の変換マップを用いて推定する。また、発熱線33の温度が上昇している期間は、例えば、予め設定されているタイマーカウンタ値を図略のタイマー処理によりカウントダウンすることによって、駆動電力の供給開始後からの経過時間を計時する。
このようにパルス状の電流波形が出力されていない期間や、発熱線33を発熱させるための駆動電力の供給を休止している所定期間は、特許請求の範囲に記載の「所定タイミング」に相当し得るものである。
このステップS400によるヒーター制御処理は、ステップS500により電源オフの情報が入力されるまで継続して行われる(S500でNo)。電源オフの情報が入力されたとステップS500により判定されると(S500でYes)、それまでの制御に使用されていた制御情報(例えば、被覆管35の最高温度情報や発熱線抵抗値対被覆管温度の変換マップの補正履歴等)を、ステップS600の制御情報記憶処理によってメモリ53のRAMの不揮発性領域に記憶して本駆動制御処理を終了する。
なお、図6に示す駆動制御処理において、ステップS500の判定処理による判定結果が「No」であった場合におけるヒーター制御処理(S400)の繰り返しループは、例えば、的確なタイミングとして2分間隔で行われるように処理の流れを構成してもよい。つまり、この場合には、ヒーター制御処理(S400)が行われた後、再度、ヒーター制御処理(S400)が行われるまでの時間は2分間である。そのため、例えば、電圧・電流情報取得処理(S401)、抵抗値算出処理(S403)および被覆管温度推定処理(S405)を約3秒間の期間内に行い、残り期間の約1分57秒間の期間内に駆動電力制御処理(S407)とS600の判定処理を行う。これにより、的確なタイミングである2分ごとに被覆管35の温度を推定してその温度を制御することが可能になる。
また、このようなループ処理により繰り返されるヒーター制御処理(S400)の繰り返し時間を、過熱水蒸気発生システム10の運転状況に応じて自動的に変更するように構成してもよい。例えば、過熱水蒸気発生システム10の電源投入後、カートリッジヒーター30のヒーター制御処理(S400)が初めて開始された場合(発熱線33の発熱開始直後の場合)においては、ヒーター制御処理(S400)の繰り返し時間を数秒〜10秒程度に設定し、電源投入後、30分経過後(発熱線33の発熱が安定した後)は、ヒーター制御処理(S400)の繰り返し時間を2分〜5分程度に設定するように構成する。これにより、例えば、発熱線33の発熱開始直後においては、発熱線33の急峻な温度の立ち上がりに追従した温度制御を行うことが可能になり、発熱線33の発熱が安定した後においては、ノイズ等の外乱に起因した不要な温度制御を抑制することが可能になる。
以上説明したように、本実施形態の過熱水蒸気発生システム10では、複数の細管40は、ハウジング21内においてカートリッジヒーター30の本体31の周囲に、被覆管35に接して配置される。これにより、本体31が発熱することにより発せられた熱は、本体31(被覆管35)の周囲に配置された複数の細管40に直接的に伝わる。また、本体31の周囲を囲むように細管40が配置されていることから、束ねられた複数の細管40の周囲に本体31を配置する構成(上記特許文献1の構成)に比べて、発熱体の外側に拡がるように伝わる熱が有効に活用される。そのため、加熱効率が向上することから、特許文献1の構成に比べ、装置の体格を大幅に小さくすることが可能になる。換言すれば、装置の体格が大幅に小さくなるため、体格が大きい場合に比べて細管40の加熱に寄与しない熱の拡散が抑制されて加熱効率が向上する。よって、簡素な構成でありながら複数の細管40を流通する飽和水蒸気を加熱することが可能になる。
また、コントローラ50は、所定タイミングにおける電圧センサ71の電圧情報および電流センサ73の電流情報から得られる発熱線33の抵抗値を用いて被覆管35の温度を推定して、この推定温度に基づいて目標温度を設定し、カートリッジヒーター30の本体31の被覆管35がこの目標温度になるように発熱線33の通電を制御する。これにより、温度センサを設けることなく、本体31の被覆管35の温度を推定しその温度を的確なタイミングで制御することが可能になる。ニクロム線等の発熱線33は、発熱の立ち上がりが比較的に速いことから、発熱線33を有する本体31においては、急峻な温度の立ち上がりに追従した温度制御を行うことが可能になる。また、このような本体31の温度制御が可能になることで、本体31の周囲近傍等に細管40を配置する構成を採っても細管40の変性や劣化を抑制することが可能になる。
したがって、本実施形態の過熱水蒸気発生システム10では、簡素な構成でありながら過熱水蒸気発生装置20の加熱効率を向上し、かつ、カートリッジヒーター30の本体31の近傍等に配置された細管40の変性や劣化を抑制することができる。例えば、カートリッジヒーター30の周囲に配置する複数の細管40を真鍮製にしても、これらの細管40が接触し得るカートリッジヒーター30の被覆管35の温度を、例えば400℃以下に管理することによって、真鍮製の細管40の劣化を抑制することが可能になる。つまり、コスト的に安価であり、熱伝導率が大きい真鍮パイプを細管40に適用することが可能になる。
なお、上述した実施形態の過熱水蒸気発生システム10の過熱水蒸気発生装置20では、カートリッジヒーター30の被覆管35に接するように本体31の周囲に複数の細管40を配置する構成を採用したが、被覆管35に直接接触させることなく、被覆管35の近傍に複数の細管40を配置する構成を採ってもよい。この構成の場合には、被覆管35に接するように複数の細管40を配置する構成に比べると、本体31が発熱することにより発せられた熱は、本体31(被覆管35)の周囲に配置された複数の細管40に間接的に伝わることから、被覆管35と細管40の間の熱抵抗が増加する。そのため、飽和水蒸気の加熱効率は低下するものの、細管40を配置することのできる円周の直径を大きくすることが可能になるので、例えば、細管40の配置密度を高めたり、配置の自由度を向上したりすることが可能になる。
また、上述した実施形態の過熱水蒸気発生システム10の過熱水蒸気発生装置20では、細管40を真鍮(黄銅)製にしたが、例えば、ステンレス製よりも低コストの材料であれば、例えば、アルミニウム製等の他の金属材料製や非金属材料製にしてもよい。
なお、細管40をステンレス製で構成してもよい。これらの細管を真鍮製で構成する場合に比べて、細管自体のコストは増加するものの、本実施形態では、カートリッジヒーター30の被覆管35の全周囲を取り囲み得るように、細管40が配置されている。これにより、特許文献1の外周ヒータータイプの構成に比べて、本体31(被覆管35)の外側に拡がるように伝わる熱が有効に活用される。そのため、加熱効率が向上することから、特許文献1の構成に比べて、装置の体格を大幅に小さくすることが可能になる。換言すれば、装置の体格が大幅に小さくなるため、体格が大きい場合に比べて細管40の加熱に寄与しない熱の拡散が抑制されて加熱効率が向上する。
したがって、特許文献1の構成に比べれば、装置が小型になることにより、必要な金属材料等が減少するため、製品コストの低減につながる。また、細管40をステンレス製で構成した場合においても、装置構成を簡素にすることができるため、それに伴う部品点数の減少により製品コストを低下させることが可能になる。
また、細管40をステンレス製にすることにより、カートリッジヒーター30の発熱上限温度(例えば、600℃)までこれらの細管を加熱することが可能になるため、飽和水蒸気をより高温で加熱して600℃に近い高温の過熱水蒸気を発生させることが可能になる。カートリッジヒーター30の発熱温度を低く(例えば、300℃)抑えることにより、ステンレス製の細管40の寿命を延ばすことも可能になる。
さらに、上述した実施形態の過熱水蒸気発生システム10の過熱水蒸気発生装置20では、ハウジング21を円筒形状の管(円筒管)で構成したが、管の径方向断面の形状は、円形に限られることはなく、例えば、四角形状、五角形状、六角形状等の多角形状や、楕円形状、長円(小判)形状等の変形円形状等の任意の形状に構成してもよい。また、細管40についても、円筒形状の管(円筒管)で構成したが、管の径方向断面の形状は、円形に限られることはなく、例えば、四角形状、五角形状、六角形状等の多角形状や、楕円形状、長円(小判)形状等の変形円形状等の任意の形状に構成してもよい。
細管40に代えて、例えば、断面形状が円形の丸線や断面形状が矩形の平角線等を蔓巻状(コイル状)に巻回したもの加熱体として用いてもよい。また、図11に示すように、細管40を細かく輪切り(軸方向に細切れ)にしたような複数の加熱リング140を、カートリッジヒーター30の周囲に配置してもよい。図11(A)には、細管40に代えて加熱リング140を用いた場合の構成例を示す断面図が図示されている。また、図11(B)には、図11(A)に示すXI-B−XI-B線により切断した状態を同矢印方向から見た径方向断面図が図示されている。
加熱リング140は、例えば、真鍮(黄銅)製であり、本実施形態では、軸長が約3mmに設定されている。本実施形態では、8個の加熱リング140がカートリッジヒーター30の被覆管35の周囲に配置されており、これらの加熱リング140の外周壁が隣接する他の加熱リング140の外周壁に接触するように設けられている。また、本実施形態では、このように配される8個の加熱リング140が、ハウジング21の一端部21aと他端部21bの間において、被覆管35の軸方向に等間隔に配置されている。
これにより、入力パイプ23から導入された飽和水蒸気は、加熱リング140の一端部140aから流入して加熱リング140の内周壁に接した後、他端部140bから流出することにより、被覆管35の熱が加熱リング140を介して当該飽和水蒸気に熱伝達される。そのため、ハウジング21の一端部21aから他端部21bに向かって飽和水蒸気が複数の加熱リング140を通過する間に、このような熱伝達が繰り返し行われることによって、当該飽和水蒸気は、細管40の場合と同様に、例えば、250℃〜290℃で加熱され、出力パイプ24や他端部21bから過熱水蒸気として排出される。
また、ハウジング21内においては、加熱リング140の外側を飽和水蒸気が加熱リング140の外周壁に接することによっても当該飽和水蒸気に熱伝達されることから、このような飽和水蒸気も、加熱リング140の外周壁で、例えば、250℃前後に加熱される。これにより、加熱リング140の外周壁に沿ってハウジング21の他端部21bに流れる水蒸気も過熱水蒸気になるため、出力パイプ24や他端部21bから過熱水蒸気が排出される。
さらに、加熱リング140の外周壁がハウジング21の周壁21cの内周面にも接触することから、本体31が発した熱の一部は、加熱リング140を介して周壁21cに伝わる。そのため、ハウジング21内において、加熱リング140の外側を流通する飽和水蒸気が周壁21cの内周面に接することで当該飽和水蒸気に熱伝達されることから、このような飽和水蒸気も、例えば、250℃前後に加熱される。これにより、ハウジング21の周壁21cの内周面に沿って他端部21bから流出する水蒸気も過熱水蒸気になるため、出力パイプ24や他端部21bから過熱水蒸気が排出される。
なお、このような複数の加熱リング140に代えて、帯状の真鍮板からなるフィンをカートリッジヒーター30の本体31(被覆管35)から径方向に突出するように本体31の周囲に螺旋状に巻き付けてもよい。即ち、帯状の真鍮製のフィンをカートリッジヒーター30の一端側から他端側に向けて螺旋穴掘り器の刃のように本体31(被覆管35)の周囲に巻き付ける。これにより、入力パイプ23から導入された飽和水蒸気は、このようなフィンの表裏の両面に接しながら、ハウジング21の一端部21aから他端部21bに向かって流れることで、被覆管35の熱が当該フィンを介して飽和水蒸気に熱伝達される。そのため、当該飽和水蒸気は、細管40の場合と同様に、例えば、250℃〜290℃で加熱されて出力パイプ24や他端部21bから過熱水蒸気として排出される。
特許請求の範囲に記載の「加熱体」は、被覆管35の熱を飽和水蒸気に熱伝達し得る構造体であって、当該飽和水蒸気がハウジング21の一端部21aから他端部21bに流通可能な隙間を形成し得るものであれば、細管40、加熱リング140やこのようなフィンに限られることはなく、例えば、表面や裏面が波状や凹凸状に形成された真鍮板(金属板)や、金属タワシのように縺れた真鍮線(金属線)の糸玉や塊等でもよい。またこれらはステンレス鋼からなるものでもよい。
また、上述した実施形態の過熱水蒸気発生システム10の過熱水蒸気発生装置20では、カートリッジヒーター30の本体31が、ハウジング21(筒体)のほぼ軸上に位置するように構成したが、これらの筒体の軸から外れた位置にカートリッジヒーター30の本体31を配置してもよい。また、カートリッジヒーター30を複数本用いる場合には、例えば、細管40を配置した円周上に、他のカートリッジヒーター30の本体31が位置するように、他のカートリッジヒーター30を配置してもよい。
さらに、フィーダー線のメガネフィーダーの径方向(長手方向の軸に対して直交する方向)断面形状のように、2つのハウジング21を径方向に連結させてそれぞれのハウジング21のほぼ軸上にカートリッジヒーター30の本体31を配置する構成を採ってもよい。これにより、2本のカートリッジヒーター30により細管40や加熱リング140等を加熱することが可能になり、また細管40や加熱リング140等の数も増加するため、飽和水蒸気の流量を大幅に増加させることが可能になり、過熱水蒸気の発生量を増大させることができる。
また、上述した実施形態や他の各構成例では、発熱体として、カートリッジヒーター30の場合を例示して説明したが、棒状の発熱体であり、その周囲に複数の細管40や加熱リング140等が囲むように配置することが可能な発熱体であれば、例えば、シーズヒーターを用いてもよい。
また、上述した実施形態や他の各構成例では、カートリッジヒーター30の被覆管35の温度を推定して被覆管35の温度が目標温度になるように制御系を構成したが、発熱線33の温度を推定して、発熱線33の発熱温度が目標温度になるように制御系を構成してもよい。これにより、発熱線33が目標温度を大幅に超える温度に発熱することを抑制することが可能になる。また、接触タイプの温度センサを用いて発熱線33の発熱温度を検出する場合に比べて時間的な遅れが非常に小さくなるので、発熱線33の急峻な温度の立ち上がりに追従した温度制御を行うことが可能になり、カートリッジヒーター30の保護を適切に行うことができる。
また、上述した実施形態や他の各構成例では、微小電力として、例えば、パルス幅50ミリ秒のミリアンペアオーダーの微小電流を1秒間に10パルス出力したり、パルス幅5ミリ秒のミリアンペアオーダーの微小電流を1パルスだけ出力したりしたが、駆動用のパルス波形の電流が発熱線33に出力されていない期間中であれば、これに限られることはなく、例えば、マイクロオーダーやミリアンペアオーダーの微小電流を時間的に連続して発熱線33に流してもよい。この場合、微小電流を連続して流している期間中に電圧センサ71や電流センサ73により、電圧値や電流値を複数回検出し、複数の電圧情報や電流情報を取得することによって、平均値、中央値、最頻値等を所定の統計処理により得ることが可能になる。そのため、発熱線33の抵抗値の算出精度を高めることができ、ひいてはこのような抵抗値を用いて推定する被覆管35の推定温度の精度を、さらに向上させることができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、上述した具体例を様々に変形または変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。さらに、本明細書または図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つ。なお、[符号の説明]の欄における括弧内の記載は、上述した各実施形態で用いた用語と、特許請求の範囲に記載の用語との対応関係を明示し得るものである。