JP2019137765A - 光硬化型インクジェットインク組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、水性インクでは印刷基材に制限があり、耐水性が比較的悪い、インクの乾燥エネルギーが大きいなどの問題点を有している。
溶剤系インクでは上記水性インクでの問題点が改善できるが、乾燥によるヘッドへのインク成分付着や、溶剤揮発による臭気の発生、換気装置などの設備が必要となるなどの問題を有している。そのため、近年では比較的揮発性の低い光硬化型インクへの置換えが期待されている。
このように、光硬化型インクは、乾燥工程を簡略化することによるコストダウンや、環境対応としての溶剤の揮発量低減などのメリットから、溶剤型インクからの置換えが進み、近年使用量が増加しており、オフセット、シルクスクリーン、トップコート剤などに供給、使用されている。
そのため、これらのフィルムについて何も表面処理を行わない場合には、表面の濡れが悪く、インクの密着性や耐折り曲げ性が十分に得られないなどの欠点があった。
密着性、耐折り曲げ性を向上させる手段として、モノマーの架橋密度を下げることも考えられるが、この場合は、硬化速度が低下するため生産性が低下するなどの欠点が生じる。
その他、密着性、耐折り曲げ性を向上させるための手段として、予め被記録媒体にコロナ放電処理やフレーム処理等を行うことが効果的であるが、装置が大掛かりで高額となり、また、処理後の経時変化において密着性が低下することがあるなどの欠点があった。
よって、実使用上、十分な密着性、耐折曲り性を得ながら、生産性の向上、設備のコストダウンなどをできないのが実情であった。
また、着色材および重合性モノマーを含有するエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物であって、前記重合性モノマーが、分子内に芳香族炭化水素系の環状構造を有する単官能モノマーおよび分子内に脂肪族炭化水素系の環状構造を有する単官能モノマーを含み、かつ、重合性モノマーの90質量%以上が単官能モノマーであるエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物も知られている(特許文献2参照)。この技術によれば、種々の材質の被記録媒体表面に対して高い密着性を有し、かつ、硬化後に優れた延伸性を有するエネルギー線硬化型インクジェットインク組成物を提供することができるとされる。
これに対し、特許文献3に記載の技術によれば、光硬化性、保存安定性、吐出性を損なうことなく、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック類フィルム等に対する密着性、折れ曲がり性が良好な光硬化型インクジェットインク組成物を提供することができる。
もっとも、特許文献3に記載の技術においては、高温多湿環境での被転写性(転写の抑制)という観点での検討はなされていなかった。
そこで、本発明は、特許文献3に記載の技術と同様に、光硬化性、保存安定性、吐出性、プラスチック類フィルム等に対する密着性、折れ曲がり性に優れるだけでなく、高温多湿環境での被転写性(転写の抑制)にも優れた光硬化型インクジェットインク組成物を提供することを課題とする。
このような特性は、容易に発揮されなかったが、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの使用が有効であることを見出すとともに、他成分との組合せについても種々検討した結果、上記要求を満たす配合を見出すに至った。
本発明は、上記知見に基づくものである。
すなわち、本発明にかかる光硬化型インクジェットインク組成物は、(A)単官能モノマー及び(B)(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを重合性化合物として含むとともに、(C)光重合開始剤および(D)表面調整剤を含む光硬化型インクジェットインク組成物であって、(A)単官能モノマーとして、重合性化合物全量に対し、(A−1)脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー50〜75質量%、(A−2)飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー0.5〜10質量%を含み、(B)(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの含有割合が、重合性化合物全量に対し、20〜45質量%である。
なお、以下において、本発明に関し、単に「インク組成物」というときは、「光硬化型インクジェットインク組成物」を指す。
これにより、予め被記録媒体にコロナ放電処理やフレーム処理等の表面処理をせずとも密着性、耐折り曲げ性が良好で、シングルパスインクジェットにおいても表面硬化性、内部硬化性に優れた印刷物を提供することも可能となる。
しかも、高温多湿環境での被転写性(転写の抑制)にも優れているため、様々な用途に広く適用することができる。
本発明のインク組成物は、少なくとも(A)単官能モノマーを含み、この(A)単官能モノマーとして、(A−1)脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーと、(A−2)飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーを含む。
本発明において、(A−1)脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー(以下、「脂環式単官能(メタ)アクリレート」と称する場合がある)とは、分子内に1個以上の脂環式炭化水素基を有する重合性(メタ)アクリレートモノマーをいう。
脂環式炭化水素基としては、例えばシクロアルカン骨格、ノルボルナン骨格およびアダマンタン骨格等の脂肪族環状構造が挙げられる。
これらの中では、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートの1種又は2種以上が好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンテニル(メタ)アクリレートが特に好ましい。イソボルニル(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンテニル(メタ)アクリレートを含有することにより、光重合開始剤や顔料分散剤などの溶解性に優れ、良好な保存安定性を得ることができる。
特に、2種類以上を組み合わせて用いることが好ましく、種々の材質の被記録媒体、とりわけポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック類フィルムに対して優れた濡れ性及び密着性を得ることができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを表し、「(メタ)アクリロイルオキシ」、「(メタ)アクリル酸」等の表記も同様の意味を有する。
本発明において、(A−2)飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー(以下、「飽和鎖式単官能(メタ)アクリレート」と称する場合がある)とは、分子内に1個以上の飽和鎖式炭化水素基を有する重合性(メタ)アクリレートモノマーをいう。
飽和鎖式炭化水素基としては、脂環基や芳香環基といった環状構造を有しない、典型的には直鎖状又は分岐鎖状構造が挙げられる。
これらの中では、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−デシルテトラデカニル(メタ)アクリレートの1種又は2種以上が好ましく、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが特に好ましい。ラウリル(メタ)アクリレート及び/又はイソステアリル(メタ)アクリレートを含有することにより、種々の材料の記録媒体、とりわけポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック類フィルムに対して優れた耐折り曲げ性を得ることができ、良好な接着性を得ることができる。
本発明のインク組成物は、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含む。
かかる成分の配合により、高温多湿環境で印字物を重ね合わせた際に転写しないという要求を満足することが可能となった。しかも、本発明所定の配合により、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック類フィルム等に対する密着性および耐折り曲げ性、光硬化性、吐出性、保存安定性をも同時に満足する。
本発明のインク組成物は、低エネルギーの照射手段により重合を開始させるために光重合開始剤を含有する。特に、光ラジカル重合型の光重合開始剤を含有することが望ましい。
光重合開始剤として、波長450〜300nmの光により開始剤機能が発現するものが好ましい。
光重合開始剤の具体例としては、(C−1)アシルホスフィンオキサイド化合物、(C−2)チオキサントン化合物、(C−3)アルキルフェノン化合物が好ましく、これら3種を併用することが特に好ましい。
(C−1)アシルホスフィンオキサイド化合物としては、具体的には、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイドなどが好ましく挙げられ、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが特に好ましい。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(C−2)チオキサントン化合物としては、具体的には、例えば、チオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどが好ましく挙げられ、4−イソプロピルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンが特に好ましい。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(C−3)アルキルフェノン化合物としては、具体的には、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オンなどが好ましく挙げられ、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オンが特に好ましい。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
上述した(A)単官能モノマー、(C)光重合開始剤の組み合わせにより、適度の硬化性と密着性を有するインク組成物を製造できる。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチック類フィルムは、インク組成物が濡れにくく印字ドットが弾きやすい傾向にあるため、本発明は、さらに(D)表面調整剤を用いることによって、十分に接触角を下げることを図っている。
具体的なシリコン系表面調整剤としては、ジメチルシロキサン骨格の変性体が好ましく挙げられる。
(メタ)アクリル基含有シリコン系表面調整剤としては、具体的には、例えば、TEGO Rad 2010、2011、2100、2200N、2250、2300、2500、2600、2700(エボニックインダストリーズAG社製)、BYK−UV3570、3575、3576(ビックケミー社製)などが挙げられる。
特に、(メタ)アクリル基含有シリコン系表面調整剤としてポリエーテル変性シリコン(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましい。
ポリエーテル変性シロキサンとしては、具体的には、例えば、BYK−345、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−3455(ビックケミー社製)、シルフェイスSAG001、シルフェイスSAG003、シルフェイスSAG005(日信化学工業社製)、L−7001、L−7002、57 ADDITIVE、FZ−2105(東レダウコーニング社製)、AFCONA−3231、3236、3238、3250、3280(AFCONA社製)などが挙げられる。これらの中でも、BYK−345、BYK−347、BYK−348、BYK−349、シルフェイスSAG003、シルフェイスSAG005、57 ADDITIVEが特に好ましく、上記フィルムに対し良好な濡れ性を得ることができ、密着性が向上する。
本発明のインク組成物は、インク組成物として、以下に詳述するような他の一般的な成分を含有してよい。
本発明のインク組成物は、インク組成物である以上、着色材を含有するのが通常である。
前記着色材としては、従来公知の各種染料を使用することもできるが、耐候性の観点より、無機顔料、有機顔料のいずれかまたは両方を使用することが好ましい。
基本的には、シアン色を有する顔料、マゼンタ色を有する顔料、イエロー色を有する顔料、黒色顔料および白色顔料などを用いることができる。場合によっては、バイオレット、ブルー、グリーン、オレンジおよびレッド等の特色顔料を用いることにより色再現性に優れた画像を形成することができる。また、一般的な黒色顔料および白色顔料、ならびにシアン、マゼンタおよびイエローの3原色の顔料の他に、目的に応じて、例えば金、銀等の金属光沢顔料や無色または淡色の体質顔料等を含有してもよい。
また、インクジェットインクへの適正から顔料の粒子径は、微細なものが好ましい。この微細化については、公知の種々の技術を利用することができる。粒子径としては、平均粒子径として、0.01〜1μm程度であれば良いが、沈降等をさけるには、0.3μm以下が好ましい。
酸化チタンの他に必要に応じて、炭酸カルシウム又は硫酸バリウム、水酸化アルミニウムなどといった体質顔料を使用してもよい。
本発明では、エステル構造又は変性ポリ(メタ)アクリレート構造を有する分散剤を用いると、経時での保存安定性および吐出性から好ましい。
本発明のインク組成物は、重合性化合物として、(A)単官能モノマーだけでなく、多官能モノマーおよび/または重合性オリゴマーを含有してもよい。
具体的には、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクタン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
その他の添加剤として、例えば、上記(C)光重合開始剤とともに、重合開始助剤を併用してもよい。
重合開始助剤としては、N−メチルジエタノールアミン、4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、ジメチルアミノ安息香酸2−エチルへキシル、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、トリエタノールアミン等のアミン化合物が挙げられ、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤とともに重合開始助剤を併用することで、空気中での光反応時の表面酸素阻害が低減されることにより、硬化性や接着性がより向上する。
<インク組成物中の(A)単官能モノマーと(B)(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの含有量>
本発明のインク組成物は、(A)単官能モノマーとして、重合性化合物全量に対し、(A−1)脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー50〜75質量%、(A−2)飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー0.5〜10質量%を含む。
本発明のインク組成物は、また、(B)(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの含有割合が、重合性化合物全量に対し、20〜45質量%である。
これらの重合性化合物を上記割合で含有することにより、得られるインク組成物に十分な密着性および耐折り曲げ性、濡れ性を付与し、かつ、高温環境で印字物を重ね合わせた際に転写しない性能を付与することができる。
(A−1)脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーの上記含有割合は、60〜70質量%であることが好ましい。
(A−2)飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーの含有割合は2〜8質量%であることが好ましい。
(B)(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの上記含有割合は、25〜40質量%であることが好ましく、30〜40質量%であることがより好ましい。
インク組成物中の(C)光重合開始剤の含有量は、重合性化合物の含有量や種類にもよるが、インク組成物100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。光重合開始剤の含有量が前記範囲にあると、インク組成物に十分な硬化性を付与することができ、インク組成物が低温状態において析出することを防止し得る。
また、(C)光重合開始剤の全量に対して、(C−1)アシルホスフィンオキサイド化合物を20〜45質量%含み、(C−2)チオキサントン化合物を20〜45質量%含み、(C−3)アルキルフェノン化合物を25〜50質量%含むことが好ましい。
これら3種類の光重合開始剤を前記の範囲で含有することにより、得られるインク組成物は表面硬化性、又は内部硬化性が十分に優れるため、シングルパスインクジェットにおいても十分な効果速度を付与することができる。
(C−1)アシルホスフィンオキサイド化合物を25〜40質量%含み、(C−2)チオキサントン化合物を30〜40質量%含み、(C−3)アルキルフェノン化合物を30〜45質量%含むことがより好ましい。
(D)表面調整剤として、ポリエーテル変性シリコン(メタ)アクリレートモノマーとポリエーテル変性シロキサンを、質量基準で、1:10〜10:1の割合で含むことが好ましい。
本発明のインク組成物は、浸透性素材、非浸透性素材にかかわらず種々の材質の被記録媒体に対して使用することができる。
浸透性素材とは、特に限定されないが、例えば、アート紙やコート紙などの紙類が挙げられる。
非浸透性素材としては、プラスチック類のフィルムやプレート、金属類、ガラスなどが挙げられる。
本発明のインク組成物は、特に、プラスチック類のフィルムやプレートへの接着性、硬化性に優れており、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミドなどを素材とする被記録媒体への使用に適している。
特に、印字ドットが濡れ広がりにくいポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンやポリエチレン等の難接着材料への接着性、硬化性が良好で、被記録媒体の折り曲げに対しても硬化膜に亀裂など生じずに優れた耐折り曲げ性を得ることができる。
なお、以下の実施例及び比較例では、まず、顔料分散体を作製し、これを用いてインク組成物を作製した。
そこで、以下では、まず原料について説明したのち、顔料分散体の作製について説明し、その後、これらを用いた実施例及び比較例にかかるインク組成物の作製、その評価・考察について順次説明する。
<A:単官能モノマー>
(A−1:脂環式単官能(メタ)アクリレート)
・イソボルニルアクリレート
・ジシクロペンテニルアクリレート
・シクロへキシルアクリレート
・ジシクロペンタニルアクリレート
・1−アダマンチルアクリレート
・ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート
・イソステアリルアクリレート
・ラウリルアクリレート
・イソオクチルアクリレート
・アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル
(単官能(メタ)アクリレート)
・ベンジルアクリレート
・2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート
・メトキシポリエチレングリコールアクリレート
(多官能(メタ)アクリレート)
・トリメチロールプロパンEO(3.5)付加物トリアクリレート
(C−1:アシルホスフィンオキサイド化合物)
・BAPO(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド)
・2,4−ジエチルチオキサントン
・MABB(2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン)
・ポリエーテル変性シロキサン(シルフェイスSAG005:日信化学工業社製)
・メガファック F−556(DIC社製 含フッ素基・親水性基・新油性基含有オリゴマー)
・LF−1980(楠本化成社製 特殊アクリル系重合物)
・C.Iピグメントブラック7(ブラック顔料)
・C.Iピグメントイエロー155(イエロー顔料)
・C.Iピグメントバイオレット19(マゼンタ顔料)
・C.Iピグメントブルー15:3(シアン顔料)
・C.Iピグメントホワイト6(ホワイト顔料)
(顔料分散剤)
・ソルスパース J180(ルーブリゾール社製)
(重合開始助剤)
・4−(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(東京化成工業社製)
<顔料分散体1>
下記の配合で顔料分散体1を作製した。
具体的には、モノマーに顔料および分散剤を投入し、均一になるまで撹拌後、得られたミルベースを横型ビーズミルで分散して作製した。
・C.Iピグメントブラック7 15部
・ソルスパース J180 10部
・イソボルニルアクリレート 75部
下記の配合で、顔料分散体1と同様の製造方法により、顔料分散体2を作製した。
・C.Iピグメントイエロー155 15部
・ソルスパース J180 15部
・イソボルニルアクリレート 70部
下記の配合で、顔料分散体1と同様の製造方法により、顔料分散体3を作製した。
・C.Iピグメントバイオレット19 15部
・ソルスパース J180 10部
・イソボルニルアクリレート 75部
下記の配合で、顔料分散体1と同様の製造方法により、顔料分散体4を作製した。
・C.Iピグメントブルー15:3 15部
・ソルスパース J180 10部
・イソボルニルアクリレート 75部
下記の配合で、顔料分散体1と同様の製造方法により、顔料分散体5を作製した。
・C.Iピグメントホワイト6 30部
・ソルスパース J180 10部
・イソボルニルアクリレート 60部
後述する表1の記載に従い、各原料を表の上から順次撹拌しながら添加した。1時間の撹拌の後、溶解残りがないことを確認し、1.0μのフィルターにてろ過してインク組成物を作製した。
実施例1と同様にして、後述する表1又は2に記載の通りにインク組成物を作製した。
実施例1と同様にして、後述する表3記載の通りにインク組成物を作製した。
上記各実施例、比較例にかかるインク組成物について、下記の各評価を行った。
保存安定性は60℃の環境下に3か月間静置したインク組成物の粘度を測定し、初期粘度に対する変化率で評価した。変化率は以下の式により算出した。
粘度変化率(%)={(60℃30日間保管後の粘度値)−(初期粘度値)}/(初期粘度値)×100
◎:粘度変化率5%未満
○:粘度変化率5%以上、10%未満
×:粘度変化率10%以上
インク組成物を紀州技研工業社製HQ8000で吐出し、印字イメージ内ドット占有率37.1%において1万回の連続印字を行い、以下の基準に従い評価した。
◎:総ドット数に対して1%未満のドット抜け
○:総ドット数に対して1%以上10%未満のドット抜け
×:総ドット数に対して10%以上のドット抜け
インク組成物をインクジェット吐出装置により、100%ベタ画像をポリプロピレンシートに吐出し、その直後に京セラ社製UV−LEDライト6W/cm2で紫外線を照射して硬化するときのコンベア速度から硬化性を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:30m/min以上
○:25m/min以上30m/min未満
△:20m/min以上25m/min未満
×:20m/min未満
JIS K5600−5−6に規定された「基盤目試験セロテープ(登録商標)剥離」に従って評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:100個中90個以上で剥離が認められない。
○:100個中80個以上89個以下で剥離が認められない。
△:100個中50個以上79個以下で剥離が認められない。
×:100個中49個以下で剥離が認められない。
インク組成物を紀州技研工業社製HQ8000より100%ベタ画像を吐出し、直後に京セラ社製UV−LEDライトにて硬化して印刷物を得た。この印刷物の印刷面を外向きに折り曲げ、以下の基準に従い評価した。
◎:180°に折り曲げ硬化膜に亀裂が生じない。
○:90°に折り曲げ硬化膜に亀裂が生じず、180°の折り曲げで亀裂が生じる。
×:90°に折り曲げ硬化膜に亀裂が生じる。
インク組成物をインクジェット吐出装置により、100%ベタ画像をポリプロピレンシートに吐出し、直後に京セラ社製UV−LEDライトにて硬化して印刷物を得た。この印刷物の印刷面と印字していないポリプロピレンシートを重ね合わせ、100g/cm2の力で抑え、45℃、90%RH環境にて168時間静置した後、印字物の転写有無を確認した。
◎:転写なし
×:転写あり
各実施例及び比較例の配合と、上述の評価の結果を下表1〜3に示す。
なお、両表中段における「A,B,Cの配合詳細」は、重合性化合物全量に対する(A)単官能モノマーと(B)(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの含有割合、(C)光重合開始剤全量に対する(C−1)〜(C−3)の含有割合とをまとめたものである。(A)については、顔料分散体中に含有されているものも含めて、含有量及び含有割合が算出されている。
表1,2の結果に示すとおり、本発明のインク組成物の全ての条件を満足する実施例の各インク組成物は、いずれも、全ての物性を十分に満足させるものであった。
具体的に見ると、比較例1、2の結果は、本発明所定の(A−1)(A−2)(B)の併用の必要性を示している。
また、比較例3の結果は、(D)表面調整剤を含有することの必要性を示している。
さらに、比較例4〜7の結果は、本発明所定の(A−1)(A−2)(B)を併用するだけでなく、(A−1)50〜75質量%、(A−2)0.5〜10質量%、(B)20〜45質量%の範囲とするべきことの必要性を示している。
実施例1及び実施例4の結果から、(A−1)としては、イソボルニルアクリレートとジシクロペンテニルアクリレートの組み合わせが、保存安定性の観点において特に適していることが判った。
実施例1及び実施例5の結果から、(B)の含有量としては30〜40質量%であることが、硬化性の観点において特に好ましいことが判った。
実施例1及び実施例6の結果から、(A−2)の含有量としては2〜8質量%であることが、耐折り曲げ性の観点において特に好ましいことが判った。
実施例1、実施例9及び実施例10の結果から、(C)光重合開始剤としては、(C−1)25〜40質量%、(C−2)30〜40質量%、(C−3)30〜45質量%の範囲であることが、硬化性の観点において特に好ましいことが判った。
実施例1、実施例13〜実施例15の結果から、(C)表面調整剤としてポリエーテル変性シリコン(メタ)アクリレートモノマーとポリエーテル変性シロキサンの2種類を併用することが、硬化性や密着性の観点において特に好ましいことが判った。
実施例1、実施例16〜18の結果から、(C)光重合開始剤として、(C−1)アシルホスフィンオキサイド化合物、(C−2)チオキサントン化合物、(C−3)アルキルフェノン化合物の3種を併用することが、硬化性の観点において特に好ましいことが判った。
Claims (6)
- (A)単官能モノマー及び(B)(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを重合性化合物として含むとともに、(C)光重合開始剤および(D)表面調整剤を含む光硬化型インクジェットインク組成物であって、
(A)単官能モノマーとして、重合性化合物全量に対し、(A−1)脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー50〜75質量%、(A−2)飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー0.5〜10質量%を含み、
(B)(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの含有割合が、重合性化合物全量に対し、20〜45質量%である、
光硬化型インクジェットインク組成物。 - (A−1)脂環式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーとして、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の光硬化型インクジェットインク組成物。
- (A−2)飽和鎖式炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーとして、少なくともイソステアリル(メタ)アクリレートを含む、請求項1または2に記載の光硬化型インクジェットインク組成物。
- (C)光重合開始剤として、(C−1)アシルホスフィンオキサイド化合物、(C−2)チオキサントン化合物及び(C−3)アルキルフェノン化合物を含む、請求項1から3までのいずれかに記載の光硬化型インクジェットインク組成物。
- (C)光重合開始剤の全量に対し、(C−1)アシルホスフィンオキサイド化合物を20〜45質量%含み、(C−2)チオキサントン化合物を20〜45質量%含み、(C−3)アルキルフェノン化合物を25〜50質量%含む、請求項4に記載の光硬化型インクジェットインク組成物。
- (D)表面調整剤として、少なくともポリエーテル変性シロキサンを含む、ポリオレフィン表面に対して適用される、請求項1から5までのいずれかに記載の光硬化型インクジェットインク組成物。
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