JP2019134117A - 光電変換方法、及び光電変換デバイス - Google Patents

光電変換方法、及び光電変換デバイス Download PDF

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Abstract

【課題】互いに異なる金属を含む負極及び/又は正極へ光を照射することにより、負極及び正極の間に流れる電流を簡便に増加させる光電変換方法を提供する。【解決手段】光電変換方法は、電気的に接続された負極22及び正極24が水中に浸漬された状態で、負極及び/又は正極へ光を照射することにより、負極及び正極間の電流を増加させる光照射工程を備え、負極金属の標準電極電位が−2.00Vよりも高く、正極金属の標準電極電位が−2.00Vよりも高く、正極金属の標準電極電位が負極金属の標準電極電位よりも高く、負極金属及び正極金属の標準電極電位の差が0.20Vよりも大きく、光照射工程において、負極及び/又は正極の表面にナノ結晶が形成され、ナノ結晶は酸化物及び/又は水酸化物を含み、酸化物は負極金属及び/又は正極金属を含み、水酸化物は負極金属及び/又は正極金属を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、光電変換方法、及び光電変換デバイスに関する。
近年、地球温暖化や大気汚染等の環境保全問題への関心が高まり、化石燃料に代わる再生可能エネルギー(自然エネルギー)の需要が高まっている。再生可能エネルギーとしては、太陽光、地熱、風力、波力、潮力、バイオマス等が挙げられる。特に太陽光は無尽蔵に地球に降り注いでおり、また、光電発電の際に二酸化炭素を排出しないクリーンな自然エネルギーとして注目され、深刻化するエネルギー問題の有効な解決策として期待されている。
太陽光などの光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子(光電変換デバイス)は、物理的電池と光電気化学電池に分類される。物理的電池とは、結晶Si系太陽電池等のように、pn接合部における光起電力効果を利用した電池である。化学電池は、光励起状態の電気化学反応を利用した電池である。物理的電池は、発電性能(変換効率)が高く、社会に広く普及してきているが、製造プロセスの簡略化や材料費の低減が、物理的電池の課題になっている。また物理的電池は夜間に発電しないため、付属の蓄電設備を要する場合がある。
このような背景の中、結晶Si系太陽電池等の物理電池の光電変換効率を目標として、光電気化学電池の性能を向上するための研究が盛んに行われている。光電気化学電池は、電解液中の分子の励起状態が関与する電池と、電極表面の励起状態が関与する電池とに分類できる。分子の励起状態が関与する電池の歴史は古く、チオニン(感光色素)と鉄イオン(還元剤)を用いた電池では0.1Vの光起電力が得られることが1940年に報告されている。その後、還元剤、感光色素、界面活性剤及びpH調製剤等の組合せ、変換効率の向上が試みられている。
下記の非特許文献1には、感光色素としてのローダミン6G(ベーシックレッド)、還元剤としてのシュウ酸、界面活性剤としてのジオチルスルホコハク酸、臭化セチルトリメチルアンモニウ及びトリトンX−100をそれぞれ用いた光電気化学電池によって、0.86%の変換効率が得られることが報告されている。
下記の非特許文献2には、感光色素としてのトルイジンブルー、還元剤としてのDキシロースを、界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウムをそれぞれ用いた光電気化学電池によって、1.43%の変換効率が得られることが報告されている。
下記の非特許文献3には、感光色素としてのブリリアントクレシルブルー、還元剤としてのフルクトース、pH調製剤としての水酸化ナトリウムをそれぞれ用いた光電気化学電池によって、1.96%の変換効率が得られることが報告されている。
電極表面の励起状態が関与する電気化学反応としては、二酸化チタン(TiO)をアノードに用いる光電解酸化還元反応が知られている。光電解酸化還元反応の応用は、二酸化チタンを半導体電極に用いた水の電気分解に始まり、光触媒及び色素増感型太陽電池に波及している。ヨウ素/ヨウ素イオンを酸化還元剤として含む有機電解液を用いた色素増感型太陽電池では、約11%のエネルギー変換効率が得られている。
上述した光電気化学電池は、いずれも感光色素の光励起反応を利用している。しかし、これら色素は特に光照射下で劣化し易いため、光電気化学電池の耐久性の向上が課題である。
ところで、光エネルギーに依らない電気化学電池として、ガルバニ電池が知られている。ガルバニ電池は、水溶液中に異種の電気伝導体を浸漬し、電気的に接続した際の両電気伝導体の電極(腐食)電位の差を利用する。代表的なガルバニ電池は、正極に銅板を、負極に亜鉛版を、電解液に硫酸を用いたボルタ電池である。ボルタ電池の負極では、亜鉛イオン(Zn2+)が溶出し、正極では水素ガス(H)が生成し、これらの反応に伴う電極間の電子の流れが電気エネルギーに変換される。
上述したボルタ電池では、負極の自己放電(閉回路でなくても亜鉛が溶解する)によって電池容量が低下してしまう。またボルタ電池では、正極で生成した水素ガスが銅板を覆うことにより、継続的な正極反応が阻害され、電池の分極(起電力の低下)が起きていしまう。
ボルタ電池における分極を改善した電池として、ダニエル電池が知られている。ダニエル電池は、正極に銅板を、負極に亜鉛板を、正極電解液に硫酸銅溶液を、負極電解液に硫酸亜鉛溶液を用い、正極及び負極電解液は素焼き板又は塩橋で隔てられる。このような構造により、正極では水素ガスの発生反応の代わりに、銅イオン(Cu2+)が銅に還元される反応が進行する。ダニエル電池では、ボルタ電池の比べ、起電力の低下が大幅に抑えられるが、酸性の電解液を取り扱う際の安全性の観点において、ダニエル電池の実用性には課題が残る。
下記の特許文献1には、上記ガルバニ電池の電極材の代わりに、マグネシウム(Mg)と炭素(C)とを電極材に用いた電池が開示されている。この電池は、マグネシウムと炭素とを純水又は海水中に浸漬した場合でも、実質的に動作可能である。マグネシウムと炭素とを電極材に用いることで、標準電極電位の差に応じた高い起電力を実現でき、かつ水素ガスの発生を抑制できる。
下記の特許文献2には、ガルバニ電池の構成に光電変換デバイスを取り入れることで、化学電池の起電力が向上されたソーラーアシストバッテリーが開示されている。この電池は、負極にアルミニウム(Al)を、正極に銅(Cu)を、電解液に塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を備えており、n型酸化物半導体の受光部(酸化アルミニウム:Al及び二酸化チタン:TiO)が負極の表面に形成され、p型酸化物半導体膜(酸化銅:CuO)が正極の表面に形成されている。このような構造により、AlとCuとの接続(異種金属間の接続)による化学電池と、n型半導体表面での電子(e)の光励起及び生成による物理電池とが組み合わされ、電池の特性(例えば、電流値又は電圧値)が向上する。
特開平7−302598号公報 特開2013−16373号公報
K. R.Genwa et al., "Photogalvanic cell: A new approach for green and sustainablechemistry", Solar Energy Materials & Solar Cells, vol. 92, pp. 522-529,2008. K. M.Gangotri et al., "Study the performance of photogalvanic cells for solar energyconversion and storage: Toluidine blue-D-Xylose-NaLS system", Int. J. EnergyRes., vol. 35, pp. 545-552, 2011. U. Sharmaet al., "Brilliant Cresyl Blue - Fructose for enhancement of solar energyconversion and storage capacity of photogalvanicsolar cells", Fuel, vol. 90,pp. 3336-3342, 2011.
特許文献1に記載の電池の場合、MgとCとの標準電極電位の差から算出される起電力は約3Vであり、高い。また特許文献1には、純水又は海水を用いた場合でも電池が動作することが記されているが、負極におけるマグネシウムの溶解を促進するには、それだけ高濃度の水素イオン(H)が必要になる。例えば、水(HO)と水素イオン(H)及び水酸化物イオン(OH)との間の反応の反応速度は極めて速く、水の解離の反応速度定数(k)は2.5×10−5/sであり、水素イオン及び水酸化物イオンの結合の反応速度定数(k)は1.4×1011L/mol・sである。つまり、純水中では上記負極反応が十分に起こらず、酸を電解液中に添加する必要があると考えられる。これに加え、マグネシウムと水との反応物(水酸化マグネシウム:Mg(OH))や、酸との反応物(例えば、硫酸マグネシウム:MgSOや塩化マグネシウム:MgCl)が電極に付着することで、起電力が低下する恐れがある。さらに、イオン化傾向の高いMgが水又は酸と激しく反応して、起電力の確保が困難になる可能性がある。
特許文献2の電池によれば、酸やアルカリなどを電解液に用いないため、電池の安全性が向上する。しかし特許文献2の電池では、二酸化チタンがn型半導体に用いられているため、物理電池としての変換効率は大きく向上しない。つまり、二酸化チタンのエネルギーバンドギャップは約3.2Vであるため、380nmより長い波長の光が照射された二酸化チタンにおいては電子(e)の励起が生じない。したがって、太陽光を利用しようとしても、そのうちごく一部の波長帯域の光しか光電変換に利用できない。さらに、光の照射下では、二酸化チタンにおいて生成した正孔(h)が二酸化チタン自体を腐食する傾向があり、負極の耐久性に課題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、互いに異なる金属を含む負極及び正極の少なくともいずれか一方へ光を照射することにより、負極及び正極の間に流れる電流を簡便に増加させることかできる光電変換方法、及び光電変換デバイスを提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る光電変換方法は、電気的に接続された負極及び正極が液体中に浸漬された状態で、負極及び正極のうち少なくともいずれか一方に光を照射することにより、負極及び正極の間に流れる電流を増加させる光照射工程を備え、液体が、水を含み、負極が、負極金属を含み、正極が、正極金属を含み、負極金属の標準電極電位が、−2.00Vよりも高く、正極金属の標準電極電位が、−2.00Vよりも高く、正極金属の標準電極電位が、負極金属の標準電極電位よりも高く、負極金属及び正極金属の標準電極電位の差が、0.20Vよりも大きく、光照射工程において、負極及び正極のうち少なくともいずれか一方の表面に、ナノ結晶が形成され、ナノ結晶は、酸化物及び水酸化物のうち少なくとも一種を含み、酸化物は、負極金属及び正極金属のうち少なくともいずれか一方を含み、水酸化物は、負極金属及び正極金属のうち少なくともいずれか一方を含む。
負極及び正極のうち少なくともいずれか一方が合金を含んでよい。
負極における負極金属の含有率が、負極の全質量を基準として、10.0〜100.0質量%であってよく、正極における正極金属の含有率が、正極の全質量を基準として、10.0〜100.0質量%であってよい。
光照射工程において、負極金属のガルバニック腐食に伴う腐食電流が発生してよい。
負極と正極とが導電材料を介して接続されていてよい。
導電材料が、銅、銀、金、白金、アルミニウム、クロム、ニッケル、鉄、錫、鉛、及びろう材からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
光が、太陽光又は擬似太陽光であってよい。
光のスペクトルにおいて、強度が最大である波長が360nm以上620nm未満であってよい。
水が、純水、イオン交換水、雨水、水道水、河川水、井戸水、ろ過水、蒸留水、逆浸透水、泉水、湧水、ダム水及び海水からなる群より選択される少なくとも一種を含んでよい。
水のpHが、2.00〜12.0であってよい。
ナノ結晶の形状が、針状、柱状、ロッド状、チューブ状、燐片状、塊状、フラワー状、ヒトデ状、枝状及び凸形状からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
負極金属が、アルミニウム、チタン、マンガン、バナジウム、亜鉛、鉄、ニッケル、錫及び鉛からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
正極金属が、金、白金、イリジウム、パラジウム、銀、ロジウム、銅及びビスマスからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
本発明の一側面に係る光電変換方法は、光照射工程の前に、酸化物半導体層を負極及び正極のうち少なくとも一方の表面に形成する成膜工程を更に備えてよい。
本発明の一側面に係る光電変換方法は、光照射工程の前に、負極及び正極のうち少なくとも一方の表面を粗化する表面粗化工程を更に備えてよい。
表面粗化工程が、機械加工、化学処理又は液中放電処理により行われてよい。
本発明の一側面に係る光電変換方法は、ナノ結晶を、負極及び正極のうち少なくともいずれか一方の表面から除去して回収する工程を更に備えてよい。
本発明の一側面に係る光電変換デバイスは、上記液体を容れるための容器と、容器内に配置された上記負極と、容器内に配置された上記正極と、を備え、上記の光電変換方法に用いられる。
本発明によれば、互いに異なる金属を含む負極及び正極の少なくともいずれか一方へ光を照射することにより、負極及び正極の間に流れる電流を簡便に増加させることかできる光電変換方法、及び光電変換デバイスを提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換方法及び光電変換デバイスを示す模式図(斜視図)ある。 図2は、本発明の一実施形態に係る光電変換方法及び光電変換デバイスを示す模式図(斜視図)である。 図3は、本発明の一実施形態に係る負極、正極及び配線材料を示す模式図(斜視図)である。 図4は、本発明の一実施形態に係る負極、正極及び配線材料を示す模式図(斜視図)である。 図5は、代表的な金属酸化物半導体のバンドギャップ(伝導帯の下端と価電子帯の上端との間のエネルギー差)と、水の酸化還元電位との関係を示す模式図である。 図6は、n型半導体と水との接触に伴うn型半導体のエネルギーバンドの変化を示す概略図である。 図7は、p型半導体と水との接触に伴うp型半導体のエネルギーバンドの変化を示す概略図である。 図8は、本発明の一実施形態に係る光電変換方法、光電変換デバイス、及び光電変換デバイスの負極及び正極間に流れる電流の測定方法を示す模式図である。 図9は、実施例4における電流測定結果である。 図10は、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影された、ロッド状のナノ結晶の一例を示す像である。 図11は、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影された、フラワー状のナノ結晶の一例を示す像である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は下記実施形態に限られるものではない。独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない工程であっても、その目的が達成される場合には、「工程」との用語に含意される。「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む。組成物中の各成分の含有量は、各成分に該当する複数の物質が組成物中に存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の含有量の合計量を意味する。図面において、同等の構成要素には同一の符号を付す。
(光電変換方法及び光電変換デバイスの概要)
本実施形態に係る光電変換方法は、図1に示される光電変換デバイス1を用いる。本実施形態に係る光電変換デバイス1は、化学電池の一種であり、液体2が容れられた容器6aと、容器6a内に配置された負極22と、容器6a内に配置された正極24と、を備える。負極22及び正極24は、配線材料26によって電気的に接続されている。図1では省略されているが、配線材料26の中途には、光電変換デバイス1において発生した電力を消費する負荷(例えば、電子機器、電気機器)、又は蓄電装置が設置される。本実施形態に係る光電変換方法は、光照射工程(light irradiation step)を備える。光照射工程では、電気的に接続された負極22及び正極24が液体2中に浸漬された状態で、負極22及び正極24のうち少なくともいずれか一方の表面へ光Lを照射することにより、負極22及び正極24の間に流れる電流(配線材料26における電流)を増加させる。つまり光照射工程により、光エネルギーを電気エネルギーに変換する。光Lは、負極22及び正極24の両方の表面へ照射されてよい。以下では、配線材料26によって電気的に接続された負極22及び正極24からなる構造体を、「負極/正極接続体」と表記する場合がある。
液体2は、水を含む。液体2は水のみからなっていてよい。液体2は、酸及び塩基のうち少なくともいずれか一方を含むことにより、pHが調整された水(つまり、酸及び塩基のうち少なくともいずれか一方の水溶液)であってもよい。負極22は、負極金属を含む。正極24は、正極金属を含む。負極金属は、正極金属と異なる金属である。負極金属の標準電極電位は、−2.00Vよりも高い。正極金属の標準電極電位も、−2.00Vよりも高い。正極金属の標準電極電位は、負極金属の標準電極電位よりも高い。負極金属及び正極金属の標準電極電位の差は、0.20Vよりも大きい。光照射工程では、負極22及び正極24のうち少なくともいずれか一方の表面に、ナノ結晶が形成される。つまり本実施形態に係る光電変換方法では、負極22及び正極24のうち少なくともいずれか一方の表面におけるナノ結晶の生成を伴う。ナノ結晶は、酸化物及び水酸化物のうち少なくとも一種を含む。ナノ結晶に含まれる酸化物は、負極金属及び正極金属のうち少なくともいずれか一方を含む。ナノ結晶に含まれる水酸化物は、負極金属及び正極金属のうち少なくともいずれか一方を含む。
光照射工程では、ナノ結晶が正極24の表面に生成してよい。正極24の表面に生成するナノ結晶は、負極金属の酸化物及び負極金属の水酸化物のうち少なくともいずれか一方を含んでよい。以下では、負極金属の酸化物及び負極金属の水酸化物のうち少なくとも一方を含むナノ結晶を、「負極ナノ結晶」と表記する場合がある。正極金属の酸化物及び正極金属の水酸化物のうち少なくとも一方を含むナノ結晶を、「正極ナノ結晶」と表記する場合がある。光照射工程では、負極ナノ結晶が優先的(選択的)に正極24の表面に生成してよい。
本実施形態に係る光電変換方法は、光照射工程において形成されたナノ結晶を、負極22及び正極24のうち少なくともいずれか一方の表面から除去して回収する工程を更に備えてよい。
本実施形態に係る光電変換方法よれば、簡素な構造を有する光電変換デバイス1を用いて、光エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能であり、異種金属から構成される負極及び正極を備える化学電池の電力を簡便に高めることができる。
後述されるように、光照射工程では、負極金属のガルバニック腐食に伴う腐食電流が発生してよい。つまり本実施形態に係る光電変換方法では、光エネルギーの電気エネルギーへの変換に並行して、負極金属のガルバニック腐食に伴う腐食電流が負極と正極との間に流れてよい。
以下では、本実施形態に係る光電変換方法のメカニズム(光エネルギーを電気エネルギーに変換し、化学電池の電力を高める機構)について詳しく説明する。なお、本実施形態における光電変換方法に係るメカニズムは、下記のメカニズムに限定されない。
(光電変換方法のメカニズム)
負極に含まれる負極金属の標準電極電位は−2.00Vよりも高い。正極に含まれる正極金属の標準電極電位は−2.00Vよりも高い。標準電極電位とは、液体中における酸化還元反応系における、電子のやり取りの際に発生する電位である。水中における各元素の電極反応、及び各元素の標準電極電位を表1及び表2に示す。標準電極電位は、金属の腐食し易さを示す尺度としても用いられる。水に溶け易く、イオン化し易い金属の標準電極電位は低い。本実施形態では、標準電極電位が−2.00Vよりも高い負極金属及び正極金属を用いることで、負極金属及び正極金属と水との過度な反応(負極金属及び正極金属と水との直接的な反応)が抑えられる。その結果、下記に示す化学電池としての光電変換デバイスの安定性が向上する。
本実施形態では、負極と正極が電気的に接続されている。このような負極/正極接続体を水中に浸漬すると、ガルバニック腐食が起こる。一般的に、ガルバニック腐食は、標準電極電位が異なる2種類の金属を水中で接触させたときに生じる。2種類の金属のうち、標準電極電位が低い金属を「卑な金属」という。2種類の金属のうち、標準電極電位が高い金属を「貴な金属」という。貴な金属とともに水中に浸された卑な金属の腐食速度は、卑な金属のみを水中に浸したときの卑な金属の腐食速度よりも大きい。卑な金属とともに水中に浸された貴な金属の腐食速度は、貴な金属のみを水中に浸したときの貴な金属の腐食速度よりも小さい。本実施形態では、負極金属が卑な金属であり、正極金属が貴な金属であるため、ガルバニック腐食により、卑な負極金属を含む負極が優先的に腐食し、負極金属が正極金属に優先して水中に溶出する。つまり、金属Mが卑な負極金属である場合、ガルバニック腐食により、下記反応式(1)に示す反応の速度が増大する。
M→Mn++ne (1)
このとき、負極金属のガルバニック腐食に伴う腐食電流が発生してよい。つまり、本実施形態に係る光電変換デバイスは、腐食電流の発生を伴う化学電池(ガルバニ電池)として動作してよい。
一般的に、金属の腐食反応は、上記反応式(1)に示すような、金属(M)が金属イオン(Mn+)となって溶解するアノード反応と、水中の酸化剤が還元されるカソード反応とが組み合わさった反応である。異種金属(負極及び正極)が電気的に接続された状態では、上記反応式(1)に示す反応で生じた電子(e)は貴な金属(正極)に流れ込むため、カソード反応は正極側で起こる。下記反応式(2)に示す反応、及び下記反応式(3)に示す反応は、いずれもカソード反応である。下記反応式(2)に示す反応は、水が酸性である場合に起こる。下記反応式(3)に示す反応は、水が中性又はアルカリ性である場合、又は、水中に溶存酸素が含まれる場合に起こる。金属の標準電極電位が正である場合、一般的には、上記反応式(1)に示すアノード反応は起きないと考えられる。ただし、水中の水素イオン(H)の濃度又は溶存酸素の濃度によっては、金属がイオン化し、下記反応式(4)に示すとおり、Mn+を生じる。
2H+2e→H (2)
+2HO+4e→4OH (3)
2M+O+2nH→2Mn++2HO (4)
上述したように、異種金属(負極及び正極)を電気的に接続したことによるアノード反応及びカソード反応が起こっている場合に、光照射工程を行うことにより、化学電池としての光電変換デバイスの電力を更に高めることができる。この理由は、以下のとおりである、と本発明者らは考える。
まず1つ目の理由は、光照射によって、負極及び正極のうち少なくともいずれかの表面における電子密度が高まることである。すなわち、電磁波としての光が金属表面に入射された際、金属中に振動電界を生じ、この電界によって金属中の自由電子が加速され、光照射しない場合に比べ金属表面の電子密度が高くなる。その結果、負極から正極に流れる電子数が増加し、後述する正極表面での反応に消費される電子数も実質的に増加する。
2つ目の理由は、光照射工程において、負極又は正極のうち少なくとも一方の表面で起こる水中結晶光合成(SPSC:Submerged Photosynthesis of Crystallites)である。一般的に、SPSCとは、水中に浸された金属部材の表面に光を照射して、ナノ結晶を金属部材の表面上に形成する方法である。光照射工程では、SPSCにより、負極ナノ結晶及び正極ナノ結晶のうち少なくとも一方が負極及び正極のうち少なくともいずれか一方の表面に形成される。以下では、まず、金属単体におけるSPSCのメカニズムについて説明する。
金属(M)を含む金属部材を水中に浸した場合は、上記反応式(1)に示すとおり、金属が腐食する反応が進行する。同時に、上記反応式(2)又は(3)で示したカソード反応も起こる。溶け出した金属イオン(M)は、例えば、溶存酸素を含む水中では、上記反応式(3)に示す反応により生じた水酸化物イオン(OH)と反応する。その結果、下記反応式(5)に示すとおり、水酸化物(M(OH))を生じる。その後、水酸化物から水分子が離脱することで、下記反応式(6)に示すとおり、酸化物(MO)を生じる。
n++nOH→M(OH) (5)
M(OH)→MO+(n−x)HO (6)
以上の腐食反応は、光照射工程を行わない場合でも進行し、腐食反応で得られる水酸化物及び酸化物は、金属部材を覆う被膜になる傾向がある。被膜で覆われた金属部材を、負極又は正極として使用した場合、電極からの金属イオンの溶け出し等の反応の停止により、化学電池としての光電変換デバイスの寿命が著しく短くなることがある。
なお、水酸化物イオンは、上記反応式(3)に示す反応以外でも生じていると考えられる。例えば、水分子の解離によって水酸化物イオンが生成したり、アルカリ性の水中に水酸化物イオンが元々存在していたりする。しかしながら、これらの水酸化物イオンも、上述の一般的な金属の腐食反応により、水酸化物(M(OH))及び酸化物(MO)を形成する。この場合も、水酸化物及び酸化物は、金属部材を覆う被膜になり、被膜で覆われた金属部材を負極又は正極として使用することは困難になる。
本実施形態では、光照射工程においてSPSCが起こることによって、ナノ結晶が生成すると推測される。SPSCの機構以下の通りである。金属単体におけるSPSCでは、まず、上記反応式(1)〜(5)に示す反応が起こる。その後、光照射工程では、金属の水酸化物(M(OH))から、金属の酸化物(MO)を含むナノ結晶が生成し、このナノ結晶が金属部材の表面に成長する。例えば、生成した金属の水酸化物は、水中の水酸化物イオン(OH)と反応することで、金属のヒドロキソ錯イオン([M(OH)y−)を形成し、水中に再び溶解する。水のpHが大きいほど、ヒドロキソ錯イオンが生成し易い。次いで、上記ヒドロキソ錯イオンの少なくとも一部がナノ結晶に変化する。ナノ結晶は、水酸化物及び酸化物のうち少なくともいずれか一方を含む。例えば、金属(M)が亜鉛(Zn)である場合、下記反応式(7)に示す反応により、テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオン([Zn(OH)2−)を形成する。そして、下記反応式(8)に示す反応により、ZnOのナノ結晶が生成する。ここで、ナノ結晶は、例えば、光誘起先端成長により形成されてよい。光誘起先端成長とは、光照射によって柱状又は針状に、結晶の先端成長が促されることを意味する。なお、ナノ結晶が生成するメカニズムは、上記の反応機構に限定されない。
Zn(OH)+2OH→[Zn(OH)2− (7)
[Zn(OH)2−→ZnO+2OH+HO (8)
光照射工程において、負極及び正極が浸された水に光を照射した際に、水の放射線分解が生じていてもよい。その分解種として、水素ラジカル(H・)、ヒドロキシラジカル(・OH)、及び水和電子(eaq )を生じる(下記反応式(9))。これらのうち、ヒドロキシラジカルと水和電子とが反応することで、直ちに水酸化物イオン(OH)が生成する(下記反応式(10))。上記の光照射工程では、上記のヒドロキシラジカルと水和電子との反応によって、水酸化物イオンの生成が促進され、ナノ結晶の生成が促進されてよい。つまり、光照射工程では、ラジカルの生成を伴う光化学反応が起こってもよい。
→eaq (9)
・OH+eaq →OH (10)
以上が、金属単体で起こるSPSC反応である。一方、本実施形態では、負極と正極が電気的に接続されているため、負極における上記反応式(1)に示す反応(負極のガルバニック腐食)が促進され、Mn+と電子(e)が生成する。この電子が正極側に流れ込み、正極表面で上記反応式(2)又は(3)のカソード反応が優先的に起こる。特に、水が中性又はアルカリ性である場合、又は、水中に溶存酸素が含まれる場合には、上記反応式(3)に示す反応が進行し、更に水の放射線分解に伴うヒドロキシラジカル(・OH)の生成と、上記反応式(10)に示したヒドロキシラジカルと水和電子との反応も促進する。その結果、正極表面近傍で水酸化物イオン(OH)濃度が増加し、負極金属のイオン(Mn+)と水酸化物イオンとの反応(上記反応式(5)に示す負極金属の水酸化物の形成)と、それに次ぐSPSCによる負極ナノ結晶の生成(上記反応式(7)及び(8)の反応)とが促進される。一方、ガルバニック腐食により、正極金属の腐食反応は抑制される。つまり、正極金属が貴な金属であるため、正極における上記反応式(1)の反応の速度が減少する。その結果、上記反応式(5)に示す正極金属の水酸化物の形成が抑制され、それに次ぐSPSCによる正極ナノ結晶の形成も抑制される。よって、負極ナノ結晶が正極の表面に優先的に生成する。
以上のことから、本実施形態に係る光電変換方法がナノ結晶の生成(SPSC反応)を伴うことに因る効果は、以下の2つに要約される。1つ目の効果は、正極を覆う被膜ではなく微細なナノ結晶(水酸化物及び酸化物)が正極の表面に形成されるため、正極表面の電気化学的活性が維持され、化学電池の高い性能を長時間維持することができる。すなわち、正極表面におけるナノ結晶の光誘起先端成長は継続的に進行し、その間カソード反応も継続的に進行する。2つ目の効果は、光照射による水の放射線分解が起こる場合、水の放射線分解によって上記反応式(10)で示す反応が促進され、これに伴い正極側での上記反応式(9)に示す反応、及び負極側での上記反応式(1)に示す反応も促進される。
本実施形態に係る光電変換方法がナノ結晶の生成(SPSC反応)を伴うことに因る他の効果は、水の選択性の向上である。例えば、ボルタ電池の場合、正極表面で水素イオン(H)が電子(e)を受け取るので、水中の水素イオン濃度を高める必要がある。したがって、ボルダ電池の電解液としては、硫酸等の強酸を用いられる。これに対し、SPSC反応では、負極で生じた電子が、正極の水素ガスの発生ではなく、上記反応式(9)及び(10)の反応に費やされると考えられる。つまり、水の放射線分解さえ起これば、例えば中性の水を用いた場合でも化学電池の反応は成立する。
(負極及び正極)
負極金属の標準電極電位は、負極と水との反応性、及び負極金属のイオンの水への溶解性の観点から、−2.00Vよりも高く1.00V以下であることが好ましく、−1.80〜0.80Vであることがより好ましく、−1.70〜0.60Vであることが更に好ましい。
正極金属の標準電極電位は、正極と水との反応性、及び正極金属のイオンの水への溶解性の観点から、−2.00Vよりも高く1.00V以下であることが好ましく、−1.80〜0.80Vであることがより好ましく、−1.70〜0.60Vであることが更に好ましい。
負極金属は、例えば、銅、ビスマス、タングステン、鉛、錫、モリブデン、ニッケル、コバルト、インジウム、カドミウム、鉄、亜鉛、クロム、イッテルビウム、ニオブ、バナジウム、マンガン、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、トリウム、ベリリウム、ユウロピウムからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
正極金属としては、負極金属と異なる金属が選択される。正極金属は、例えば、金、白金、イリジウム、パラジウム、銀、ロジウム、銅、ビスマス、タングステン、鉛、錫、モリブデン、ニッケル、コバルト、インジウム、カドミウム、鉄、亜鉛、クロム、イッテルビウム、ニオブ、バナジウム、マンガン、ジルコニウム、チタンからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
負極金属と正極金属との組合せは、負極金属の標準電極電位が正極金属の標準電極電位よりも低く、負極金属及び正極金属の標準電極電位の差が0.20Vよりも大きい限り、特に制限されない。負極金属と正極金属との組合せは、例えば、負極金属が亜鉛であり、正極金属が銅であってよい。負極金属が亜鉛であり、正極金属がタングステンであってもよい。負極金属が亜鉛であり、正極金属がニッケルであってもよい。負極金属が亜鉛であり、正極金属が銀であってもよい。負極金属がアルミニウムであり、正極金属が銅であってもよい。負極金属がチタンであり、正極金属がタングステンであってもよい。
負極は、負極金属を含む部材であればよく、特に制限されない。負極は、負極金属のみからなっていてもよい。負極は、負極金属(単体)に加えて、負極金属の酸化物を含んでいてもよい。ただし、負極金属の酸化物のみからなる部材は、負極には相当しない。負極における負極金属の含有率は、電池の起電力及びナノ結晶の成長の観点から、負極の全質量を基準として、10.0〜100.0質量%であることが好ましく、15.0〜100.0質量%であることがより好ましく、20.0〜100.0質量%であることが更に好ましい。負極における負極金属の含有率が高いほど、酸化物又は水酸化物が生成され易いと共に、酸化物又は水酸化物の組成が制御され易い。
正極は、正極金属を含む部材であればよく、特に制限されない。正極は、正極金属のみからなっていてもよい。正極は、正極金属(単体)に加えて、正極金属の酸化物を含んでいてもよい。ただし、正極金属の酸化物のみからなる部材は、正極には相当しない。正極における正極金属の含有率は、電池の起電力及びナノ結晶の成長の観点から、正極の全質量を基準として、10.0〜100.0質量%であることが好ましく、15.0〜100.0質量%であることがより好ましく、20.0〜100.0質量%であることが更に好ましい。正極における正極金属の含有率が高いほど、酸化物又は水酸化物が生成され易いと共に、酸化物又は水酸化物の組成が制御され易い。
負極及び正極のうち少なくともいずれか一方は、合金を含んでいてもよい。負極は、負極金属の合金を含んでいてもよく、負極金属の合金のみからなっていてもよい。負極金属の合金の組成は、負極金属を含む組成であればよく、特に制限されない。負極金属の合金は、例えば、鉄合金、銅合金、亜鉛合金等であってよい。正極は、正極金属の合金を含んでいてもよく、正極金属の合金のみからなっていてもよい。正極金属の合金の組成は、正極金属を含む組成であればよく、特に制限されない。正極金属の合金は、例えば、鉄合金、銅合金、亜鉛合金等であってよい。負極金属が合金である場合、負極金属の標準電極電位とは、合金の標準電極電位であってよい。正極金属が合金である場合、正極金属の標準電極電位とは、合金の標準電極電位であってよい。
鉄合金としては、例えば、Fe−C系合金、Fe−Au系合金、Fe−Al系合金、Fe−B系合金、Fe−Ce系合金、Fe−Cr系合金、Fe−Cr−Ni系合金、Fe−Cr−Mo系合金、Fe−Cr−Al系合金、Fe−Cr−Cu系合金、Fe−Cr−Ti系合金、Fe−Cr−Ni−Mn系合金、Fe−Cu系合金、Fe−Ga系合金、Fe−Ge系合金、Fe−Mg系合金、Fe−Mn系合金、Fe−Mo系合金、Fe−N系合金、Fe−Nb系合金、Fe−Ni系合金、Fe−P系合金、Fe−S系合金、Fe−Si系合金、Fe−Si−Ag系合金、Fe−Si−Mg系合金、Fe−Ti系合金、Fe−U系合金、Fe−V系合金、Fe−W系合金、Fe−Zn系合金等が挙げられる。
銅合金としては、例えば、Cu−Sn系合金、Cu−Ni系合金、Cu−Zn系合金、Cu−P系合金、Cu−Sn−P系合金、Cu−Al系合金、Cu−Zn−Sn系合金、Cu−Zn−Mn系合金、Cu−Zn−Si系合金、Cu−Zn−Ni系合金、Cu−Mn系合金、Cu−Be系合金、Cu−Ag系合金、Cu−Zr系合金等が挙げられる。
亜鉛合金としては、例えば、Zn−Ni系合金、Zn−Sb系合金、Zn−Cu系合金、Zn−Al系合金、Zn−Mg系合金等が挙げられる。
負極金属の合金における負極金属の含有率は、電池の起電力及びナノ結晶の成長の観点から、10.0〜99.8質量%であることが好ましく、15.0〜99.5質量%であることがより好ましく、20.0〜99.9質量%であることが更に好ましい。正極金属の合金における正極金属の含有率は、ナノ結晶の成長の観点から、10.0〜99.8質量%であることが好ましく、15.0〜99.5質量%であることがより好ましく、20.0〜99.9質量%であることが更に好ましい。
負極は、不可避的に混入する他の原子を更に含んでいてもよい。不可避的に混入する他の原子の含有率は、例えば、負極の全質量を基準として、3質量%以下であってよい。負極に含まれる上記原子の含有率は、電池の起電力及びナノ結晶の成長の観点から、1質量%以下であることが好ましい。正極は、不可避的に混入する他の原子を更に含んでいてもよい。不可避的に混入する他の原子の含有率は、例えば、正極の全質量を基準として、3質量%以下であってよい。正極に含まれる上記原子の含有率は、電池の起電力及びナノ結晶の成長の観点から、1質量%以下であることが好ましい。
負極の形状は、特に制限されない。負極の形状としては、例えば、板状、ブロック状、丸線状、シート状、又はこれらを組み合わせた形状等が挙げられる。負極の形状は、水中への浸漬の作業性の観点から、板状、ブロック状、又はシート状であることが好ましい。正極の形状は、負極の形状と同じであっても、異なっていてもよい。
(負極と正極との電気的な接続方法)
負極と正極との電気的な接続方法は、特に制限されない。例えば、負極と正極とが導電材料を介して電気的に接続されてよい。負極と正極との電気的な接続とは、水を介した電気的接続を意味しない。
水中における負極と正極との電気的な接続方法は、特に制限されない。電力の取り出しにおける作業性、及びナノ結晶の生成性の観点から、図3又は図4に示す配置が好ましい。図3及び図4は、負極と正極とが配線材料を介して電気的に接続している負極/正極接続体の模式図である。例えば、図3に示す負極/正極接続体110では、負極22と正極24とが配線材料26を介して電気的に接続されている。図3の場合、配線材料26の一方の端は負極22に巻き付いており、配線材料26の他方の端は、正極24に巻き付いている。図3では省略されているが、配線材料26の中途には、光電変換デバイスにおいて発生した電力を消費する負荷(例えば、電子機器、電気機器)、又は蓄電装置が設置される。図4に示す負極/正極接続体120では、配線材料26は、金属ワイヤー28と、金属ワイヤー28の両端に接続するろう材30とからなっている。ろう材30は、半田であってもよい。図4の場合、金属ワイヤー28の一方の端と負極22とがろう材30を介して接続され、金属ワイヤー28の他方の端部と正極24とが別のろう材30を介して接続されている。図4では省略されているが、金属ワイヤー28の中途には、光電変換デバイスにおいて発生した電力を消費する負荷(例えば、電子機器、電気機器)、又は蓄電装置が設置される。
導電材料(配線材料26)は、例えば、銅、銀、金、白金、アルミニウム、クロム、ニッケル、鉄、錫、鉛及びろう材(半田)からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
半田は、Sn−Pb系半田、Sn−Pb−Ag系半田、Sn−Ag−Cu系半田等であってよい。環境に対する影響を考慮すると、半田は、実質的に鉛を含まないSn−Ag−Cu系半田が好ましい。半田を用いて電気的な接続を行う際、半田を融点以上の温度に加熱してよい。具体的には、半田がSn−Pb系半田である場合、半田を230〜300℃の温度範囲に加熱して、半田を溶融してよい。
(光照射方法について)
図1に示すように、水2と負極/正極接続体100は、容器6a内に収容されていてよい。容器6aは、水2及び負極/正極接続体100を収容する容器本体8aと、蓋体10aとを備えてよい。容器6aは、蓋体10aを備えていなくてもよい。蓋体10aは、容器本体8aを密閉してよい。ランプ(光源)12を用いて光Lを照射してよい。ランプ12を用いることで、負極/正極接続体100の表面に一定の強度の光を照射することができる。ランプ12の位置は、ナノ結晶が効果的に生成し、取り出す電力を増加できるように適宜調整してよい。太陽光を照射する場合には、ランプ12は用いなくてもよい。太陽光を照射する場合には、負極/正極接続体100の表面に太陽光が照射されるように、容器6aの位置及び向きを適宜調整してよい。
図1に示すように、負極/正極接続体100の表面のうち光が照射される面を垂直に立ててもよく、図2に示すように、負極/正極接続体100の表面の光が照射される面を水平にしてもよい。
水面から負極/正極接続体100の光照射面までの距離は、負極/正極接続体及び水の種類に応じて適宜設定することができ、特に制限されない。上記距離は、例えば、5mm〜10mであってよい。光の散乱による効果の低下の抑制、ナノ結晶の成長促進の観点から、上記距離は、5mm〜8mが好ましく、5mm〜5mがより好ましい。
容器本体8aの形状は、特に制限されない。図1に示すにように、容器本体8aの形状は、直方体状であってもよい。図2に示すように、容器6bが備える容器本体8bは、円柱状であってもよい。容器本体の形状は、光が負極/正極接続体100の表面に効果的に照射される形状が適宜選択あれてよい。
蓋体10aの形状は、特に制限されない。図1に示すように、蓋体10aは、直方体状であってもよく、図2に示すように、蓋体10bは円柱状であってもよい。蓋体の形状は、光が負極/正極接続体100の表面に効果的に照射できるものを適宜使用してよい。
容器6a(容器本体8a及び蓋体10a)の材質は、光が負極/正極接続体100の表面に照射されるのを遮らないものであればよく、特に制限されない。容器本体8a及び蓋体10aの材質は、水と反応しないものが好ましい。容器本体8a及び蓋体10aの材質は、例えば、ガラス、プラスチック等であってよい。
(光の波長について)
光照射工程で用いる光の波長は特に制限されない。光の波長は、赤外線の波長よりも短くてよい。例えば、光の波長は、1000nm以下であってよい。光照射工程で用いる光のスペクトルにおいて、強度が最大である波長が360nm以上620nm未満であってよい。光のスペクトルとは、光の分光放射分布と言い換えてよく、強度とは、分光放射照度又はスペクトル放射照度と言い換えてよい。つまり、光照射工程で用いる光の分光放射分布(スペクトル)において、分光放射照度(強度)が最大である光の波長が360nm以上620nm未満であってよい。光の分光放射照度(強度)の単位は、例えば、W・m−2・nm−1であってよい。360nm以上620nm未満である波長領域において、負極/正極接続体に照射する光の波長を調整することにより、ナノ結晶を効果的に生成し易くなる。酸化物及び水酸化物の組成は、例えば、エネルギー分散型X線分析(EDX)による点分析により確認することができる。上記波長が620nm以上である場合は、ナノ結晶が得られ難い。上記波長が360nm未満である場合は、ナノ結晶が分解され易く、ナノ結晶の形状が崩れ易い。上記波長が360nm未満である場合にナノ結晶が分解され易い理由は以下のとおりである、と本発明者らは推測する。
光の波長が360nm未満である場合、光のエネルギーが熱に変わり易いため、光電変換効率が低下し易く、熱により負極/正極接続体が損傷し易い。上記波長による上記効果を得られ易い観点から、光照射工程で用いる光のスペクトルにおいて、強度が最大である波長は、380〜600nmであることが好ましく、400〜580nmであることがより好ましい。水の放射線分解の効率、設備の制約、酸化物及び水酸化物のバンドギャップ、及び励起された電子が緩和される際の熱エネルギーの発生(発熱)防止の観点から、光の波長は、上記範囲内で適宜調整されてよい。
負極/正極接続体に照射する光の光源は、特に制限されない。光源は、例えば、太陽、LED、キセノンランプ、水銀ランプ、蛍光灯等であってよい。負極/正極接続体に照射する光は、例えば、太陽光又は擬似太陽光であってよい。太陽光は、地球上に無尽蔵に降り注ぎ、温暖化ガスなどを排出しない再生可能エネルギーとしての利用が可能である観点から、好適に用いることができる。擬似太陽光とは、太陽を光源としない光であって、光のスペクトルが太陽光のスペクトルに合致している光のことを意味する。擬似太陽光は、例えば、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ又はキセノンランプを用いたソーラーシミュレーターにより発することができる。擬似太陽光は、一般的に、紫外線に対する材料の強度の評価、太陽電池の評価又は耐候性評価を目的として用いられる。本実施形態においても、擬似太陽光を好適に用いることができる。
光照射工程では、負極/正極接続体の表面と水とが接触している界面に光を照射してよい。界面は、例えば、負極/正極接続体を水中に浸漬する方法、負極/正極接続体の一部又は全部に水を流通させる方法等によって得られる。光照射工程では、電力取り出し時の作業性、及びナノ結晶の成長の観点から、負極/正極接続体を水面下に浸漬させることが好ましい。
(ナノ結晶の詳細)
光照射工程において形成されるナノ結晶は、負極金属及び正極金属のうち少なくともいずれか一方の酸化物及び水酸化物である。ナノ結晶は、酸化物及び水酸化物のうち少なくともいずれか一種を含む。ナノ結晶は、酸化物及び水酸化物からなっていてもよく、酸化物のみからなっていてもよく、水酸化物のみからなっていてもよい。
酸化物及び水酸化物のうち少なくともいずれか一種は、負極金属及び正極金属のうち少なくともいずれか一方を含む半導体であることが好ましい。つまり、ナノ結晶は、半導体を含むことが好ましい。ナノ結晶は、半導体のみからなっていてもよい。ナノ結晶が半導体を含む場合、光触媒、発光材料、太陽電池、量子コンピューター、バイオセンサ等の半導体デバイスへのナノ結晶の適用が可能になる。
半導体は、p型半導体及びn型半導体のうち少なくともいずれか一方を含んでよい。つまり、ナノ結晶は、p型半導体及びn型半導体のうち少なくともいずれか一方を含んでよい。ナノ結晶が、p型半導体及びn型半導体のうち少なくともいずれか一方を含むことで、ナノ結晶(半導体)の導電率が向上し、電池としての光電変換デバイスの性能を長時間持続できる。
酸化物半導体(MO)は、酸化物半導体に不純物元素をドープしたり、金属と酸素との比率が化学量論比からずれたりした場合に、p型半導体又はn型半導体になることがある。金属と酸素との比率が化学量論比からずれた場合、酸化物半導体中の酸素が欠損して、酸化物半導体の組成がMOx−nとなり、結合に寄与しない金属の電子が余る。その結果、酸化物半導体がn型化する。また、酸化物半導体が過剰の酸素を取り込んだ場合、酸化物半導体の組成はMOx+nとなり、金属原子の欠損部が正孔として作用する。その結果、酸化物半導体がp型化する。
p型半導体は、酸化銅(I)(CuO)、酸化銅(II)(CuO)、酸化銀(I)(AgO)、酸化ニッケル(II)(NiO)、酸化鉄(III)(Fe)、酸化タングステン(VI)(WO)及び酸化錫(II)(SnO)からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
n型半導体は、酸化鉄(III)(Fe)、酸化インジウム(III)(In)、酸化タングステン(VI)(WO)、酸化鉛(II)(PbO)、酸化バナジウム(V)(V)、酸化ニオブ(III)(Nb)、酸化チタン(IV)(TiO)、酸化亜鉛(II)(ZnO)、酸化錫(IV)(SnO)、酸化アルミニウム(III)(Al)及び酸化ジルコニウム(IV)(ZrO)からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。
上記酸化物の中には、p型半導体にもn型半導体にもなり得るものがある。例えば、酸化鉄(III)(Fe)では、通常、酸素が欠損し易いため、酸化鉄(III)はn型半導体として機能する。しかし、酸化鉄(III)に窒素(N)がドープされると、酸化鉄(III)はp型化することがある。酸化タングステン(VI)(WO)では、金属(W)及び酸素のうちいずれか一方が欠損することがある。金属(W)が欠損した場合、酸化タングステン(VI)はp型半導体である。酸素が欠損した場合、酸化タングステン(VI)はn型半導体である。
ナノ結晶の形状は、針状、柱状、ロッド状、チューブ状、燐片状、塊状、フラワー状、ヒトデ状、枝状及び凸形状からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。フラワー状とは、結晶の中心から放射状に複数の柱状の結晶が延びている形状を意味する。ヒトデ状とは、結晶の中心から同一平面内でほぼ等間隔に複数の柱状の結晶が延びている形状を意味する。
ナノ結晶の最大幅(例えば、長さ)は、2nm〜10μm、又は2nm〜1000nmであってよい。ナノ結晶の最大幅とは、複数のナノ結晶の集合体の最大幅を含意する。金属部材の表面からのナノ結晶の高さは、特に制限されない。ナノ結晶は、中実構造又は中空構造であってよい。
(水について)
負極/正極接続体が浸される水は、純水、イオン交換水、雨水、水道水、河川水、井戸水、ろ過水、蒸留水、逆浸透水、泉水、湧水、ダム水及び海水からなる群より選択される少なくとも一種を含んでよい。水としては、作業性、安全性及びナノ結晶の形成の観点から、純水、イオン交換水、及び水道水が好ましい。ただし、自然由来の水として、河川水、井戸水、ダム水、海水等も好適に用いることができる。
水のpHは、2.00〜12.0であってよい。pHを2.00以上とすることで、水中の水素イオン(H)濃度を抑え、正極における水素ガスの発生とこれに伴う化学電池としての分極を低減することができる。また、pHを12.0以下とすることで、水中の水酸化物イオン(OH)濃度を抑え、正極でのSPSC反応(ナノ結晶の生成)と、これに伴う負極での金属イオンの溶け出し反応が促進する。水のpHは、化学電池としての光電変換デバイスの特性の安定性、ナノ結晶の生成、及び作業安全性の観点から、2.2〜11.5であることが好ましく、2.4〜11.0であることがより好ましい。
水の純度は、特に制限されない。水の純度とは、水に含まれる水分子の質量の割合を意味する。水の純度は、例えば、水の全質量を基準として、80.0質量%以上であってよい。水の純度を80.0質量%以上とすることで、光照射下における不純物の影響を抑えることができる。不純物の影響としては、例えば、塩又は金属の析出、及び不動態膜の形成が挙げられる。特に標準電極電位が0.00Vよりも高い金属のイオンが不純物として水に含まれる場合、不純物(金属イオン)が、負極で生じた電子(e)と負極表面上で直ちに反応してしまい、負極が不純物の金属でめっきされたような構造になり、化学電池としての反応が停止してしまう。これは、上述したダニエル電池において、素焼き板又は塩橋を用いない場合の構造と同じである。水の純度は、化学電池としての光電変換デバイスの起電力の確保、及びナノ結晶の生成の観点から、85.0質量%以上であることが好ましく、90.0質量%以上であることがより好ましい。水の純度の上限値は、例えば、100.0質量%であってよい。
水の純度は、電気伝導度で管理できる場合がある。例えば、水に溶解している溶質(不純物)の種類が特定されており、かつ、水の純度が上記範囲にある場合は、溶質の濃度と電気伝導度とが比例関係にある場合が多い。一方、複数の溶質(不純物)が混入している水では、電気伝導度を測定しても、その値から水の純度を把握することは困難である。水の純度は、水の電気伝導度で管理することが好ましい。
水中の溶存酸素の濃度は、特に制限されない。水中の溶存酸素の濃度は、光照射によるナノ結晶の成長反応の促進の観点から、例えば、水の全体積を基準として、15mg/L以下が好ましく、12mg/L以下がより好ましく、10mg/L以下がさらに好ましい。水中の溶存酸素の濃度の下限値は、例えば、8.0mg/Lであってよい。
水中の溶存酸素の濃度は、例えば、(株)堀場製作所製のpHメーター(LAQUAact、ポータブル型pHメーター・水質計)によって測定してよい。
水の温度は、特に制限されない。水の温度は、水の凝固及び蒸発の防止、並びに金属材料の腐食を防止する観点から、例えば、0〜80℃が好ましく、2〜75℃がより好ましく、5〜70℃が更に好ましい。
本実施形態に係る光電変換方法は、光照射工程の前に、負極及び正極のうち少なくとも一方の表面に酸化物半導体層を形成する成膜工程を更に備えてよい。負極及び正極のうち少なくとも一方の表面に酸化物半導体層が形成されることで、化学電池としての光電変換デバイスの電力を更に高めることができる。この理由は、以下のとおりである、と本発明者らは考える。
まず1つ目の理由は、酸化物半導体層表面での光励起による電子(e)の生成によって、物理電池としての機能が光電変換デイバスに備わることである。図5に示すように、各種の酸化物半導体はそれぞれ固有なバンドギャップを有する。酸化物半導体が、バンドギャップよりも大きなエネルギーを有する光を吸収した場合、価電子帯中の電子が伝導帯に励起され、生成する電子数(電流量)が増大すると考えられる。
2つ目の理由は、酸化物半導体と水との界面に形成されるバンドベンディングにより、SPSC反応が促進されることである。まず、n型半導体又はp型半導体である酸化物半導体が水と接触することによって起きる現象について説明する。
図6中の(a)は、n型半導体と水とが接触した瞬間におけるn型半導体のエネルギーバンドを示す。図6中の(b)は、n型半導体と水とが接触した後の平衡状態におけるn型半導体のエネルギーバンドを示す。図6において、接触した瞬間とは、水中でn型半導体が形成された瞬間を意味する。平衡後とは、水中でn型半導体が形成された後、n型半導体のエネルギーバンドが平衡状態になった後を意味する。Eredoxは、水の酸化還元電位である。水が酸性である場合、Eredoxは上記反応式(2)に示す反応が起こるときの電位に相当する。水が中性又はアルカリ性である場合、又は水中に溶存酸素が含まれる場合、Eredoxは上記反応式(3)に示す反応が起こるときの電位に相当する。Eはフェルミ準位を表す。フェルミ準位は、半導体において電子の存在確率が50%になるときのエネルギー準位を意味する。図6中の(b)に示すように、n型半導体と水とが接触すると、EとEredoxとが等しくなる。つまり、n型半導体のエネルギー準位が下がり、水のエネルギー準位が上がる。その結果、n型半導体のエネルギーバンドが、n型半導体と水との界面付近で上に曲がる。エネルギーバンドが曲がることをバンドベンディングという。
図7中の(a)は、p型半導体と水とが接触した瞬間におけるp型半導体のエネルギーバンドを示す。図7中の(b)は、p型半導体と水とが接触した後の平衡状態におけるp型半導体のエネルギーバンドを示す。図7中の(b)に示すように、p型半導体と水とが接触すると、EとEredoxとが等しくなる。つまり、p型半導体のエネルギー準位が上に移動し、水のエネルギー準位が下に移動する。その結果、p型半導体のエネルギーバンドが、p型半導体と水との界面付近で下に曲がる。
上述したバンドベンディングが生じる結果、n型半導体と水との界面、及びp型半導体と水との界面にエネルギー障壁が生じる。このエネルギー障壁があることにより、以下のとおり電荷(電子(e)及び正孔(h))の分離が生じる。具体的には、図6に示すn型半導体の場合、光照射による生じた電子は、n型半導体と水との界面からn型半導体バルクへ移動する。一方、n型半導体と水との界面へ移動する。対照的に、図7に示すp型半導体の場合、光照射により生じた電子は、p型半導体と水との界面へ移動する。また、光照射により生じた正孔は、p型半導体と水との界面からp型半導体バルクへ移動する。
以下では、負極が負極金属として亜鉛を含み、正極が正極金属として銅を含み、負極の表面にZnOが形成され、正極の表面にCuOが形成されている場合について述べる。上述したとおり、ZnOはn型半導体であり、CuOはp型半導体である。
負極に形成されたZnOの表面において、光照射によって価電子帯に生じた正孔は、バンドベンディングによってZnO(n型半導体)と水との界面へ移動し、下記反応式(11)に示す反応により、ZnOを腐食することがある。その結果、負極の表面近傍で、水酸化物イオン(OH)の生成量が増大する。水酸化物イオンの生成量が増大すると、上記反応式(5)に示す水酸化亜鉛(Zn(OH))の形成が促進される。
ZnO+2h+HO→Zn2++2OH (11)
上記で生成した水酸化亜鉛(Zn(OH))は、水中の水酸化物イオン(OH)と反応し、テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオン([Zn(OH)2−)を形成し、水中に再び溶解する。このとき、負極側では、負極金属としての亜鉛(Zn)のガルバニック腐食が進行しているため、上記反応式(8)で示すSPSC反応(ZnOナノ結晶の成長)は、負極表面では起こりにくい。すなわち、上記反応式(11)及び(7)に示す反応で生じたテトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオン([Zn(OH)2−)の一部が、正極表面近傍まで移動して、上記反応式(8)に示すSPSC反応によるZnOナノ結晶の生成が正極の表面において進行すると考えられる。
一方、正極に形成されたCuOの表面においては、光照射によって価電子帯に生じた電子は、バンドベンディングによってCuO(p型半導体)と水との界面へ移動し、上記反応式(3)又は(9)及び(10)に示す反応が正極表面で促進する。結果として、亜鉛イオン(Zn2+)との反応及びSPSC反応によるZnOナノ結晶の成長が正極において促進され、ボルタ電池としての電子の流れ(電流値)が向上する。
酸化物半導体層の形成方法は、特に制限されず、例えば、負極又は正極の加熱により熱酸化膜を成膜する方法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、ゾル−ゲル法、水熱合成法、共沈法、及び化学気相成長法であってよい。酸化物半導体の前駆体(金属)を、ディッピング、スクリーン印刷、スピンコート、スプレー等の方法で負極又は正極表面に塗布し、加熱等により前駆体を酸化する方法等により、酸化物半導体層が形成されてもよい。
本実施形態では、負極及び正極の表面に予め自然酸化膜が形成されていてもよい。つまり、負極の酸化被膜は、自然酸化膜であってよい。正極の酸化被膜は、自然酸化膜であってよい。自然酸化膜に含まれる酸化物は半導体特性を示すことがある。ただし、自然酸化膜は十分薄いため、負極及び正極を水中に浸した際に自然酸化膜が溶解して、負極及び正極の金属面が水中に露出すると考えられる。
(表面粗化工程)
本実施形態に係る光電変換方法は、光照射工程の前に、負極及び正極のうち少なくとも一方の表面を粗化する表面粗化工程を更に備えてよい。以下では、負極及び正極のうち少なくとも一方を、「電極」と表記する場合がる。光照射工程では、粗化された電極の表面に光を照射してよい。表面粗化工程を施すことで、電極の表面に凹凸が形成され、ナノ結晶の成長速度が向上し易くなる。電極の表面に凹凸が形成されると、ナノ結晶の先端部での電子密度が高くなる傾向がある。これにより、ナノ結晶の先端部に水和電子が多く生成し、上述した水酸化物イオンの生成と、それに次ぐナノ結晶の形成及び水素ガスの生成とが促進される、と推測される。
本実施形態の光電変換方法では、ナノ結晶生成の観点から、正極の表面を粗化することが好ましい。
表面粗化工程により形成される電極の表面の凹凸の大きさは、特に制限されない。上記光化学反応を促進して、ナノ結晶の成長を促進し、水素ガスの生成を促進する観点から、凸部の底辺の大きさの平均値は10nm以上500nm以下であることが好ましく、かつ、隣り合う凸部同士の間隔の平均値は2nm以上200nm以下であることが好ましい。凸部の底辺の大きさの平均値は15nm以上300nm以下であることがより好ましく、かつ、隣り合う凸部同士の間隔の平均値は5nm以上150nm以下であることがより好ましい。凸部の底辺の大きさの平均値は20nm以上100nm以下であることが更に好ましく、かつ、隣り合う凸部同士の間隔の平均値は10nm以上100nm以下であることが更に好ましい。凸部の底辺の大きさとは、凸部の高さ方向に垂直な方向における凸部の最大幅を意味する。
表面粗化工程は、例えば、電極の表面の機械加工、化学処理又は液中放電処理(discharge treatment in a liquid)により行われてよい。液中放電処理とは、導電性を有する液体中で放電する処理を意味する。機械加工としては、例えば、研磨紙、バフ、又は砥石を用いた研削加工、ブラスト加工、及び、紙やすり等を用いた加工等が挙げられる。化学処理としては、例えば、酸又はアルカリによるエッチング等が挙げられる。液中放電処理としては、例えば、国際公開第2008/099618号に記載されているように、導電性を有する液体中に配置された陽極及び陰極からなる対電極に電圧を印加して、陰極近傍にプラズマを発生させ、陰極を局所的に融解させることにより行ってよい。液中放電処理では、陰極として光電変換デバイス用の電極を用いることで、電極の表面に凸凹を形成することができる。
液中放電処理は、例えば、以下の装置を用いて行ってよい。液中放電処理を行う装置は、導電性を有する液体を収容するセルと、セル内に配置された互いに非接触の電極対と、電極対に電圧を印加する直流電源とを備える。電極対は、陰極及び陽極である。陰極には、粗化の対象である光電変換デバイス用の電極を用いる。陽極の材料は、通電していない状態で、導電性を有する液体中で安定であればよく、特に制限されない。陽極の材料は、例えば、白金等であってよい。陽極の表面積は、陰極の表面積よりも大きくてよい。導電性を有する液体は、例えば、炭酸カリウム(KCO)水溶液等であってよい。
表面粗化工程として液中放電処理を行う場合、電極の表面の一部に金属酸化膜が形成されることがある。この金属酸化膜は上述の酸化物半導体層(n型半導体又はp型半導体)として利用されてよい。
表面粗化工程後の電極の表面は、外部に露出していてもよく、自然酸化膜で覆われていてもよい。
(ナノ結晶の回収)
本実施形態に係る光電変換方法は、生成したナノ結晶を、負極及び正極のうち少なくともいずれか一方の表面から除去して回収する工程を更に備えてよい。ナノ結晶を除去して回収する工程を備えることで、化学電池としての光電変換デバイスの特性が向上し、その特性が維持され易い。この理由は、以下のとおりである、と本発明者らは考える。
本実施形態に係る光電変換方法に伴うナノ結晶の成長速度は、時間経過と共に遅くなることがあり、更にはナノ結晶の生成反応が停止することがある。この現象は、例えば、水中の不純物濃度、pH、温度等の変化に起因すると考えられる。結果として、正極表面でのSPSC反応に因る化学電池の性能が向上する効果が抑制される。成長速度が低下したナノ結晶を、電極の表面から除去することで、新たな金属(未反応の負極金属又は正極金属)が電極の表面に露出し、SPSC反応によるナノ結晶の成長が促進される。
電極の表面からナノ結晶を除去する方法としては、例えば、機械的な摩擦又は振動等が挙げられる。また、負極及び正極の配置によっては、ナノ結晶が自重により電極表面から水中へ脱離することもある。電極の表面から除去したナノ結晶は、水中に浮遊していてもよいし、回収してもよい。
なお、回収したナノ結晶は、物性や形状に応じて、半導体、絶縁体、超伝導体、透明導電膜、圧電体、及び光触媒等に適用することができる。例えば、回収したナノ結晶が酸化亜鉛(ZnO)であれば、化粧品、ゴム、顔料、ガラス等の添加剤、光触媒材料、樹脂の補強材、抗菌材料等にZnOのナノ結晶を適用できる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の種々の変更が可能であり、これ等の変更例も本発明に含まれる。
例えば、本発明に係る放電変換方法は、光の検出方法に適用されてよい。つまり、本発明に係る放電変換デバイスは、光センサに適用されてよい。
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1では、以下に示す方法により、負極22、正極24及び容器6cを備える光電変換デバイスを準備し、光電変換デバイスを用いて光照射工程を行った。
純度が99.8質量%である亜鉛を圧延して、板状の負極22を形成した。亜鉛の標準電極電位は−0.76Vである。負極22の寸法は、50mm×10mm×0.5mmであった。次いで、純度が99.9%である銅を圧延して、板状の正極24を形成した。銅の標準電極電位は0.52Vである。正極24の寸法は、50mm×10mm×0.5mmであった。次いで、負極22及び正極24それぞれに銅ワイヤー(配線材料26)を巻き付けた。銅ワイヤーの純度は99.9質量%であった。銅ワイヤーの直径は、0.5mmであった。
次いで、図8に示すように、1.0質量%のクエン酸水溶液(水2)をガラス製の容器6cに入れた。負極22に巻き付けた銅ワイヤーの他端を、電流計80のマイナス端子に接続し、正極24に巻き付けた銅ワイヤーの他端を、電流計80のプラス端子に接続した。電流計80としては、日置電機(株)社製の計装ロガー「LR5031」を用いた。電流計80を介して電気的に接続された負極22及び正極24をクエン酸水溶液に浸漬した。クエン酸水溶液のpHをpHメーターで測定した。pHメーターとしては、(株)堀場製作所製のLAQUAact(ポータブル型pHメーター・水質計)を用いた。クエン酸水溶液のpHは、3.0であった。負極22及び正極24をクエン酸水溶液に浸漬した時点から、下記の光照射工程を開始する直前の時点まで、負極22及び正極24の間に流れる電流(配線材料26に流れる電流)を電流計80で継続的に測定した。
図8に示すように、光照射工程では、電流計80を介して電気的に接続された負極22及び正極24を、クエン酸水溶液中に浸漬した状態で、負極22及び正極24の表面に光を照射した。光照射工程では、負極22及び正極24の表面に垂直な方向から光を照射した。負極22及び正極24をクエン酸水溶液に浸漬した時点から光照射の開始時点までの時間は、約2時間であった。光照射の開始時点から光照射の停止時点までの間、負極22及び正極24の間に流れる電流を電流計80で継続的に測定した。光源としては、キセノンランプを用いた。キセノンランプとしては、浜松ホトニクス(株)社製のスポット光源(LightningCureLC8)を用いた。キセノンランプに専用の光学フィルターを取り付けて光の波長範囲を400〜600nmに設定した。光の出力は、280Wであった。光の分光スペクトルを分光放射計で測定した。分光放射計としては、Gentec−EO社製のSOLO 2を用いた。その結果、キセノンランプから発せられる光のスペクトルにおいて、強度が最大である波長は360nm以上620nm未満であった。キセノンランプから発せられる光のスペクトルにおいて、強度が最大である波長は、約493nmであった。光源から5cm離れた光照射位置での光の強度は、3025Wm−2であった。なお、光照射位置とは、負極22及び正極24の表面の位置と言い換えてよい。
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同様の負極及び正極を準備した。次いで、負極及び正極それぞれの表面粗化工程を行った。表面粗化工程後、実施例1と同様にして、光照射工程を行った実施例2の表面粗化工程では、以下に示す液中放電処理により、上記負極の表面を粗化した。
300mLの炭酸カリウム(KCO)の水溶液をガラス製の容器に収容した。水溶液における炭酸カリウムの濃度は0.1mol/Lであった。炭酸カリウム水溶液に、陰極及び陽極を液面から100mm以内の深さに配置した。陰極と陽極との間の距離は50mmであった。陰極は、光照射工程に用いるための負極(粗化される負極)に相当する。陽極としては、網状の白金電極を用いた。白金電極の寸法は、40mm×550mmであった。白金電極の線幅は0.5mmであった。白金電極の電極面積内の白金線の長さは600mmであった。そして、セル電圧を120V、放電時間を10分間として、液中放電処理を行った。
後述する実施例3〜6、9、11、12及び比較例2それぞれの表面粗化工程は、上述した実施例2の表面粗化工程と同じである。
表面粗化工程後の負極の表面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。走査型電子顕微鏡としては、日本電子(株)製のJSM−7001Fを用いた。観察の結果、多数の凹凸が負極の表面に形成されていた。凸部の底辺の大きさは、平均5nmであった。
上記と同様の液中放電処理により、正極の表面も粗化した。表面粗化工程後の正極の表面を、上記走査型電子顕微鏡を用いて観察した。観察の結果、多数の凹凸が負極の表面に形成されていた。凸部の底辺の大きさは、平均5nmであった。
<実施例3>
実施例3では、実施例2と同様の負極及び正極を準備した。次いで、以下の点を除いては、実施例2と同様にして、光照射工程を行った。
実施例3の光照射工程では、実施例1のキセノンランプを用いずに、擬似太陽光を負極及び正極の表面に照射した。擬似太陽光の光源としては、朝日分光(株)製のソーラーシミュレーター(HAL−320)を用いた。ソーラーシミュレーターはキセノンランプを利用した光源である。ソーラーシミュレーターが発する擬似太陽光の波長範囲は、350〜1100nmである。光の出力は300Wであった。光の分光スペクトルを上記分光放射計で測定した。その結果、擬似太陽光のスペクトルにおいて、強度が最大である波長は360nm以上620nm未満であった。擬似太陽光のスペクトルにおいて、強度が最大である波長は、約460nmであった。光源から60cm離れた光照射位置での光の強度は、1000W/mであった。
<実施例4>
実施例4では、実施例2と同様にして、負極及び正極を準備した。次いで、以下の点を除いては、実施例2と同様にして、光照射工程を行った。
実施例4の光照射工程では、光源としてキセノンランプを用いずに、UVランプを用いた。UVランプとしては、UVP社製のB−100APを用いた。光の出力は、100Wであった。光の分光スペクトルを上記分光放射計で測定した。その結果、UVランプから発せられる光のスペクトルにおいて、強度が最大である波長は360nm以上620nm未満であった。UVランプから発せられる光のスペクトルにおいて、強度が最大である波長は、約365nmであった。光源から20cm離れた光照射位置での光の強度は、100W/mであった。
<実施例5>
実施例5では、実施例2と同様の負極及び正極を準備した。次いで、以下の点を除いては、実施例2と同様にして、光照射工程を行った。
実施例5の光照射工程では、クエン酸水溶液の代わりに、純水を用いた。純水のpHを上記pHメーターで測定した。その結果、純水のpHは7.0であった。
<実施例6>
実施例6では、実施例2と同様の負極及び正極を準備した。次いで、以下の点を除いては、実施例5と同様にして、光照射工程を行った。
実施例6の光照射工程では、光源としてUVランプの代わりに、実施例3で用いた擬似太陽光を負極及び正極の表面に照射した。
<実施例7>
実施例7では、以下に示す方法により、正極を準備した。次いで、実施例1と同様にして、光照射工程を行った。
純度が99.5質量%である銀を圧延して、板状の正極を形成した。銀の標準電極電位は、0.80Vである。正極の寸法は、50mm×10mm×0.5mmであった。
<実施例8>
実施例8では、実施例7と同様の負極及び正極を準備した。次いで、以下の点を除いては、実施例4と同様にして、光照射工程を行った。
実施例8の光照射工程では、クエン酸水溶液の代わりに、海水を用いた。海水のpHを上記pHメーターで測定した。その結果、海水のpHは8.2であった。
<実施例9>
実施例9では、実施例7と同様の負極及び正極を準備した。次いで、負極及び正極それぞれの表面粗化工程を行った。表面粗化工程後、実施例5と同様にして、光照射工程を行った。
<実施例10>
実施例10では、以下に示す方法により、負極を準備した。次いで、実施例7と同様にして、光照射工程を行った。
純度が99.5質量%である鉄を圧延して、板状の負極を形成した。鉄の標準電極電位は、−0.44Vである。負極の寸法は、50mm×10mm×0.5mmであった。
<実施例11>
実施例11では、実施例10と同様の負極及び正極を準備した。次いで、負極及び正極それぞれの表面粗化工程を行った。表面粗化工程後、以下の点を除いては、実施例10と同様にして、光照射工程を行った。
実施例11の光照射工程では、クエン酸水溶液の代わりに、河川水を用いた。河川水のpHを上記pHメーターで測定した。その結果、河川水のpHは7.5であった。
<実施例12>
実施例12では、実施例10と同様の負極及び正極を準備した。次いで、負極及び正極それぞれの表面粗化工程を行った。表面粗化工程後、以下の点を除いては、実施例4と同様にして、光照射工程を行った。
実施例12の光照射工程では、クエン酸水溶液の代わりに、水酸化ナトリウム水溶液を用いた。水溶液における水酸化ナトリウムの濃度は、濃度が0.001mol/Lであった。水酸化ナトリウム水溶液のpHを上記pHメーターで測定した。その結果、水酸化ナトリウム水溶液のpHは11.0であった。
<比較例1>
比較例1では、光照射工程を行わなかった。この点を除いて、比較例1は実施例1と同じであった。
<比較例2>
比較例2では、実施例2と同様の負極及び正極を準備した。次いで、以下の点を除いては、実施例2と同様にして、光照射工程を実施した。
比較例2の光照射工程では、クエン酸水溶液の代わりに、アセトンを用いた。アセトンとしては、和光純薬工業(株)製のアセトン(純度99.5%)を用いた。
<比較例3>
比較例3では、下記の負極を準備した。次いで、実施例1と同様にして、光照射工程を行った。
純度が99.5質量%であるマグネシウムを圧延して、板状の負極を形成した。マグネシウム(第1金属)の標準電極電位は、−2.36Vである。負極の寸法は、50mm×10mm×0.5mmであった。
<比較例4>
比較例4では、実施例1と同様の負極及び正極を準備した。次いで、以下の点を除いては、実施例1と同様にして、光照射工程を行った。
比較例4の光照射工程では、クエン酸水溶液の代わりに、塩酸水溶液を用いた。水溶液における塩酸の濃度は0.05mol/Lであった。塩酸水溶液のpHを上記pHメーターで測定した。その結果、塩酸水溶液のpHは1.3であった。
実施例1〜12及び比較例1〜4の負極及び正極の組成、表面粗化工程の条件、水の組成、並びに光照射条件を表3に示す。
(電流値の測定)
実施例1〜12及び比較例2〜4それぞれの光照射の開始前から光照射の停止までの各時点において、負極及び正極間に流れた電流を上記の電流計で測定し、各時点における電流値をプロットした。その一例である実施例4の電流値のプロットは、図9に示される。電流の測定結果に基づき、実施例1〜12及び比較例2〜4それぞれの電流増加率riを算出した。電流増加率riは、下記数式Aで定義される。
ri={(IMAX−I)/I}×100 (A)
数式A中のIMAXは、光照射工程中に測定された電流の最大値である。数式A中のIは、光が負極及び正極に照射される直前に負極及び正極の間に流れた電流である。実施例4の場合、Iは、図9に示す「光照射開始」の時点における電流値に相当する。実施例1〜12及び比較例2〜4それぞれのI,IMAX及びriを表4に示す。比較例1のIを下記表4に示す。
(結晶相の分析)
実施例1〜12及び比較例2〜4それぞれの光照射工程後の負極及び正極の表面を個別にX線回折(XRD)法により分析して、各電極の表面に生成した主な結晶相を特定した。比較例1では、負極及び正極をクエン酸水溶液中に保持した後に、負極及び正極の表面をX線回折(XRD)法により分析して、各電極の表面に生成した主な結晶相を特定した。XRD分析では、X線回折装置を用いて、Cu−Kα線を負極及び正極の表面に照射した。XRD分析の測定条件は下記のとおりであった。X線回折装置としては、(株)リガク製のATG−G(粉末X線回折)を用いた。実施例1〜12及び比較例1〜4それぞれにおいて検出された主な結晶相を表4に示す。
出力:50kV−300mA
スキャン速度:4.0°/分
測定モード:θ−2θ
回折角度:10〜60°
(ナノ結晶の有無及び形状)
実施例1〜12及び比較例2〜4それぞれの光照射工程後の負極及び正極の表面を個別に走査型電子顕微鏡を用いて観察して、ナノ結晶の有無を調べた。走査型電子顕微鏡としては、日本電子(株)製のJSM−7001Fを用いた。比較例1では、負極及び正極をクエン酸水溶液中に保持した後に、負極及び正極の表面を上記走査型電子顕微鏡で観察して、ナノ結晶の有無を調べた。また、ナノ結晶が形成されていた場合には、ナノ結晶の形状を評価した。さらに、上記走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線分析(EDX)による点分析により、負極及び正極の表面に生成した微細組織の元素分析を行った。
実施例1〜12の光照射工程では、光照射の直前に比べて電流値が増加したことが確認された。実施例1〜12の光照射工程における電流値の増加は、負極及び正極の表面における電子密度の向上及びSPSC反応の促進に起因する、と考えられる。なお、純水又は河川水を用いた実施例の光照射工程では、電流値の絶対値が小さい傾向があったが、電流増加率riは大きかった。純水又は河川水を用いた実施例でも電流増加率riが大きかった理由は以下の通りである、と考えられる。純水や河川水では、水中の水素イオン(H)及び活物質の濃度が低いため、純水又は河川水を用いた化学電池における電流は小さいが、SPSC反応(ナノ結晶の生成)は有意に起こる。つまり、上記反応式(3)又は(9)〜(10)に示す水酸化物イオン(OH)の生成、及びこれに伴うSPSC反応(によるナノ結晶の生成)が促進され、負極における金属イオンの溶出反応(上記反応式(1)の反応)も促進された。以上の要因が電流増加率riの向上に大きく寄与した、と考えられる。
比較例1では光照射工程を行わなかったため、電流増加率riは算出されなかった。比較例2では、光照射工程の開始前後において、電流は検出されなかった。比較例2では、水の代わりにアセトンが用いられたため、負極と正極との間でガルバニック電流が流れず、かつSPSC反応も起こらなかったと考えられる。比較例3の光照射工程では、電流値の有意な増加はなかった。比較例3の負極に用いたマグネシウムの標準電極電位は−2.36Vであり、−2.0Vよりも低いため、比較例3では、マグネシウムと水との直接的な反応が進行した、と考えられる。さらに比較例3では、水の代わりに、水素イオン(H)濃度が高いクエン酸水溶液を用いたため、正極において水素ガスの発生が起こり、SPSC反応が阻害された、と考えられる。比較例3の光照射工程でも、電流値の有意な増加はなかった。比較例3で用いたクエン酸水溶液と同様に、比較例4で用いた塩酸水溶液のpH(1.3)は低く、塩酸水溶液中の水素イオン(H)濃度が高かったため、比較例3の正極においても水素ガスの発生が起こり、SPSC反応が阻害されていた、と考えられる。
実施例1〜12それぞれの正極の表面には、図10及び図11に示されるような、ロッド状及びフラワー状の多数のナノ結晶が観察された。実施例1〜12それぞれの負極の表面にもナノ結晶が生成していたが、その量は少なかった。XRD及びEDX分析から、実施例1〜9それぞれの正極の表面に生成したナノ結晶は主にZnOであり、正極の表面の一部ではナノ結晶はZn(OH)も生成していた。実施例1〜9それぞれの負極の表面に生成しているナノ結晶は、主にZnOとZn(OH)であった。実施例10〜12の正極表面のナノ結晶は主に、鉄酸化物であった。
XRDの分析結果から、表面粗化工程を行った実施例2〜6、9、11及び12それぞれの正極の表面には、正極金属の酸化物が生成したことが確認された。正極における正極金属の酸化物の生成は、表面粗化工程中に正極の表面の少なくとも一部が酸化されたことによると考えられる。
比較例1及び2それぞれの負極及び正極の表面のいずれにおいても、ナノ結晶が形成されていなかった。表4に示す水酸化物が比較例1及び2其々の負極の表面を一様に被覆していた。
比較例3の負極の表面には、ナノ結晶でない多数のMg(OH)が形成されていた。比較例3の正極の表面にはナノ結晶が形成されていなかった。比較例3の負極に用いたマグネシウムの標準電極電位は−2.36Vであり、−2.0Vよりも低いため、比較例3では、マグネシウムと水との直接的な反応が進行した、と考えられる。比較例3の負極の表面には、熱力学的にMgOがわずかに生成していた。
比較例4の場合、塩酸水溶液に浸漬される前の負極及び正極の表面には、ナノ結晶はなかった。また比較例4の場合、光照射工程後の負極及び正極の表面のいずれにおいても、ナノ結晶は形成されていなかった。光照射工程後の比較例4の負極の表面には、Zn(OH)がわずかに生成していた。負極の表面におけるZn(OH)の生成は、負極の腐食に起因すると思われる。
本発明によれば、互いに異なる金属を含む負極及び正極の少なくともいずれか一方へ光を照射するにより、負極及び正極の間に流れる電流を簡便に増加させることかできる光電変換方法、及び光電変換デバイスを提供することができる。
1…光電変換デバイス、2…水、6a,6b,6c…容器、8a,8b…容器本体、10a,10b…蓋体、12…ランプ(光源)、22…負極、24…正極、26…配線材料、28…金属ワイヤー、30…ろう材、80…電流計、100,110,120…負極/正極接続体、L…光。

Claims (18)

  1. 電気的に接続された負極及び正極が液体中に浸漬された状態で、前記負極及び前記正極のうち少なくともいずれか一方に光を照射することにより、前記負極及び前記正極の間に流れる電流を増加させる光照射工程を備え、
    前記液体が、水を含み、
    前記負極が、負極金属を含み、
    前記正極が、正極金属を含み、
    前記負極金属の標準電極電位が、−2.00Vよりも高く、
    前記正極金属の標準電極電位が、−2.00Vよりも高く、
    前記正極金属の標準電極電位が、前記負極金属の標準電極電位よりも高く、
    前記負極金属及び前記正極金属の標準電極電位の差が、0.20Vよりも大きく、
    前記光照射工程において、前記負極及び前記正極のうち少なくともいずれか一方の表面に、ナノ結晶が形成され、
    ナノ結晶は、酸化物及び水酸化物のうち少なくとも一種を含み、
    前記酸化物は、前記負極金属及び前記正極金属のうち少なくともいずれか一方を含み、
    前記水酸化物は、前記負極金属及び前記正極金属のうち少なくともいずれか一方を含む、
    光電変換方法。
  2. 前記負極及び前記正極のうち少なくともいずれか一方が合金を含む、
    請求項1に記載の光電変換方法。
  3. 前記負極における前記負極金属の含有率が、前記負極の全質量を基準として、10.0〜100.0質量%であり、
    前記正極における前記正極金属の含有率が、前記正極の全質量を基準として、10.0〜100.0質量%である、
    請求項1又は2に記載の光電変換方法。
  4. 前記光照射工程において、前記負極金属のガルバニック腐食に伴う腐食電流が発生する、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の光電変換方法。
  5. 前記負極と前記正極とが導電材料を介して接続されている、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の光電変換方法。
  6. 前記導電材料が、銅、銀、金、白金、アルミニウム、クロム、ニッケル、鉄、錫、鉛、及びろう材からなる群より選択される少なくとも一種である、
    請求項5に記載の光電変換方法。
  7. 前記光が、太陽光又は擬似太陽光である、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の光電変換方法。
  8. 前記光のスペクトルにおいて、強度が最大である波長が360nm以上620nm未満である、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の光電変換方法。
  9. 前記水が、純水、イオン交換水、雨水、水道水、河川水、井戸水、ろ過水、蒸留水、逆浸透水、泉水、湧水、ダム水及び海水からなる群より選択される少なくとも一種を含む、
    請求項1〜8のいずれか一項に記載の光電変換方法。
  10. 前記水のpHが、2.00〜12.0である、
    請求項1〜9のいずれか一項に記載の光電変換方法。
  11. 前記ナノ結晶の形状が、針状、柱状、ロッド状、チューブ状、燐片状、塊状、フラワー状、ヒトデ状、枝状及び凸形状からなる群より選択される少なくとも一種である、
    請求項1〜10のいずれか一項に記載の光電変換方法。
  12. 前記負極金属が、アルミニウム、チタン、マンガン、バナジウム、亜鉛、鉄、ニッケル、錫及び鉛からなる群より選択される少なくとも一種である、
    請求項1〜11のいずれか一項に記載の光電変換方法。
  13. 前記正極金属が、金、白金、イリジウム、パラジウム、銀、ロジウム、銅及びビスマスからなる群より選択される少なくとも一種である、
    請求項1〜12のいずれか一項に記載の光電変換方法。
  14. 前記光照射工程の前に、酸化物半導体層を前記負極及び前記正極のうち少なくとも一方の表面に形成する成膜工程を更に備える、
    請求項1〜13のいずれか一項に記載の光電変換方法。
  15. 前記光照射工程の前に、前記負極及び前記正極のうち少なくとも一方の表面を粗化する表面粗化工程を更に備える、
    請求項1〜14のいずれか一項に記載の光電変換方法。
  16. 前記表面粗化工程が、機械加工、化学処理又は液中放電処理により行われる、
    請求項15に記載の光電変換方法。
  17. 前記ナノ結晶を、前記負極及び前記正極のうち少なくともいずれか一方の表面から除去して回収する工程を更に備える、
    請求項1〜16のいずれか一項に記載の光電変換方法。
  18. 前記液体を容れるための容器と、
    前記容器内に配置された前記負極と、
    前記容器内に配置された前記正極と、
    を備え、
    請求項1〜17のいずれか一項に記載の光電変換方法に用いられる、
    光電変換デバイス。
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