JP2019133839A - 非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】正極合剤ペーストのゲル化の抑制と、二次電池に用いられた場合に高い電池特性を両立させることができる非水系電解質二次電池用正極活物質を、簡便かつ生産性高く製造する方法を提供する。【解決手段】リチウム金属複合酸化物と、タングステン酸ニッケルとを混合すること、を備え、リチウム金属複合酸化物は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び、任意に金属元素M1を含み、かつ、それぞれの金属元素の原子数比がLi:Ni:Co:M1=s:(1−x−y):x:y(ただし、1.00≦s≦1.30、0.10≦x≦0.35、0≦y≦0.35、金属元素M1は、Mn、W、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
近年、スマートフォンやタブレットPCなどの小型情報端末の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型で軽量なリチウムイオン二次電池の開発が強く望まれている。また、ハイブリット自動車を含む電気自動車用途に適した高出力二次電池の開発も強く望まれている。
このような要望を満たす二次電池として、リチウムイオン二次電池などの非水系電解質二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、負極および正極とセパレータと電解液等で構成され、負極および正極の活物質は、充放電に伴いリチウムを脱離および挿入することの可能な材料が用いられている。
リチウムイオン二次電池は、現在研究、開発が盛んに行われているところであるが、中でも、層状構造またはスピネル構造のリチウム金属複合酸化物を正極活物質に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
これまでに主に提案されている正極活物質としては、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、さらに安価なマンガンを用いて安全性に優れたリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3など)、スピネル系リチウムマンガン複合酸化物(LiMn)などが挙げられる。
ところで、非水電解質二次電池の正極は、例えば、正極活物質と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのバインダーや、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤とを混合して正極合剤ペーストにし、アルミ箔などの集電体に塗布することで形成される。このとき、正極合剤ペースト中の正極活物質からリチウムが遊離した場合、バインダーなどに含まれる水分と反応し水酸化リチウムが生成することがある。この生成した水酸化リチウムは正極合剤のpHを上昇させ、バインダーや溶剤の重合反応を起こさせることで、正極合剤ペーストがゲル化を起こすことがある。正極合剤ペーストのゲル化は、操作性の悪さ、歩留まりの悪化を招く。この傾向は、正極活物質におけるリチウムが化学量論比よりも過剰で、且つニッケルの割合が高い活物質ほど顕著となる。
正極合剤ペーストのゲル化を抑制する試みがいくつかなされている。例えば、特許文献1には、リチウム遷移金属複合酸化物からなる正極活物質と、酸性酸化物粒子からなる添加粒子とを含む非水電解液二次電池用正極組成物が提案されている。この正極組成物は、バインダーに含まれる水分と反応して生成した水酸化リチウムが酸性酸化物と優先的に反応し、生成した水酸化リチウムとバインダーとの反応を抑制し、正極合剤ペーストのゲル化を抑制するとしている。また、酸性酸化物は、正極内で導電材としての役割を果たし、正極全体の抵抗を下げ、電池の出力特性向上に寄与するとしている。
また、特許文献2には、リチウムイオン二次電池製造方法であって、正極活物質として、組成外にLiOHを含むリチウム遷移金属酸化物を用意すること;正極活物質1g当たりに含まれるLiOHのモル量Pを把握すること;LiOHのモル量Pに対して、LiOH1モル当たり、タングステン原子換算で0.05モル以上の酸化タングステンを用意すること;および、正極活物質と酸化タングステンとを、導電材および結着剤とともに有機溶媒で混練して正極合剤ペーストを調製すること;を包含する、リチウムイオン二次電池製造方法が提案されている。この方法によれば、正極合剤ペーストの増粘抑制効果のみならず、二次電池における低温反応抵抗の抑制効果があるとされている。
一方、出力特性と充放電サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を得る試みもいくつかなされている。例えば、正極活物質が小粒径でかつ粒度分布が狭い場合、出力特性と充放電サイクル特性とに優れたリチウムイオン二次電池を得ることができる。これは、粒径が小さい粒子は、比表面積が大きく、正極活物質として用いた場合に、電解液との反応面積を十分に確保することができるばかりでなく、正極を薄く構成し、リチウムイオンの正極−負極間の移動距離を短くすることができるため、正極抵抗の低減が可能だからである。また、粒度分布が狭い、すなわち粒度の揃った粒子であることは、電極内で粒子ごとに印加される電圧を均一化できるため、微粒子が選択的に劣化することによる電池容量の低下を抑制することが可能だからである。
例えば、特許文献3〜5には、正極活物質の前駆体となる遷移金属複合水酸化物の粒子を、主として核生成を行う核生成工程と、主として粒子成長を行う粒子成長工程の2段階に明確に分離した晶析反応により、製造する方法が開示されている。これらの方法では、反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で、核生成工程では12.0〜14.0の範囲に、粒子成長工程では、10.5〜12.0の範囲に制御している。また、反応雰囲気を、核生成工程および粒子成長工程の初期では酸化性雰囲気とするとともに、所定のタイミングで、非酸化性雰囲気に切り替えている。
このような方法により、得られる遷移金属複合水酸化物の粒子は、小粒径で粒度分布が狭く、かつ、微細一次粒子からなる低密度の中心部と、板状または針状一次粒子からなる高密度の外殻部とから構成される。そして、このような遷移金属複合水酸化物粒子にリチウム化合物を混合し焼成した場合、低密度の中心部が大きく収縮し、内部に空間部が形成されることとなる。しかも、遷移金属複合水酸化物粒子の粒子性状は、正極活物質に引き継がれる。具体的には、これらの文献に記載の技術により得られる正極活物質は、平均粒径が2μm〜8μmまたは2μm〜15μmの範囲にあり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であり、かつ、中空構造を備えたものとなっている。
このため、これらの正極活物質を用いた二次電池では、容量特性、出力特性と充放電サイクル特性とを改善できるとされている。しかしながら、出力特性と充放電サイクル特性のさらなる向上が求められている。
また、正極活物質にタングステンを含む化合物を添加することにより、出力特性や充放電サイクル特性が改善されることが報告されている。例えば、特許文献6には、リチウム金属複合酸化物粉末に、タングステン化合物を溶解させたアルカリ溶液を添加、混合した後、熱処理することにより、WおよびLiを含む微粒子を、リチウム金属複合酸化物粉末の表面もしくは該粉末の一次粒子の表面に形成する、正極活物質の製造方法が提案されている。特許文献6によれば、リチウム金属複合酸化物粉末の一次粒子表面にWおよびLiを含む微粒子を形成させることによって出力特性が向上することが報告されている。
特開2012−28313号公報 特開2013−84395号公報 特開2012−246199号公報 特開2013−147416号公報 国際公開2012/131881号 特開2012−079464号公報
しかしながら、より容易かつ簡便な方法で正極合剤ペーストのゲル化を抑制し、かつ、電池特性を向上させることが求められている。
なお、特許文献3〜5の提案のように、出力特性と充放電サイクル特性を向上させるため、電解液との反応面積を大きくすると、正極合剤ペーストのゲル化が促進されるという新たな問題点が生じることがある。また、出力特性と充放電サイクル特性についても更なる向上が求められている。さらに、上記特許文献5の提案では、出力特性に関しては検討されているものの、正極合剤ペーストのゲル化抑制については何ら検討されていない。よって、上記いくつかの提案では正極合剤ペーストのゲル化抑制に関して検討されているものの、問題点が十分に解消されているとは言えない。
また、上記特許文献6の提案では、水洗工程と添加工程および乾燥工程が必要となり、製造工程が増加するため、製造コストが増加するという問題があった。
本発明は、上述の問題に鑑みて、正極合剤ペーストのゲル化の抑制と、二次電池に用いられた場合に高い電池特性を両立させることができる非水系電解質二次電池用正極活物質を、簡便かつ生産性高く製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様によれば、リチウム金属複合酸化物と、タングステン酸ニッケルとを混合すること、を備え、リチウム金属複合酸化物は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び、任意に金属元素M1を含み、かつ、それぞれの金属元素の原子数比がLi:Ni:Co:M1=s:(1−x−y):x:y(ただし、1.00≦s≦1.30、0.10≦x≦0.35、0≦y≦0.35、金属元素M1は、Mn、W、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法が提供される。
また、上記の正極活物質の製造方法は、リチウム金属複合酸化物と、前記タングステン酸ニッケルと、水とを混合すること、を備えることが好ましい。また、リチウム金属複合酸化物とタングステン酸ニッケルとを混合して得られた粉末混合物に、水を、液滴の平均粒径が100μm以下の霧状態となるように噴霧して混合すること、を備えることが好ましい。また、混合することにより得られた混合物を乾燥することと、を備えることが好ましい。また、水の存在下、リチウム金属複合酸化物に含まれるリチウムイオンと、タングステン酸ニッケルの少なくとも一部とが反応して、タングステン酸リチウムが形成されることが好ましい。また、混合物は、リチウム金属複合酸化物全体に対して、水を0.1質量%以上含むことが好ましい。また、混合物は、リチウム金属複合酸化物全体に対して、タングステンを0.2質量%以上1.0質量%以下含むことが好ましい。
また、乾燥後のリチウム金属複合酸化物の粒子表面にタングステン酸リチウムが存在し、走査型電子顕微鏡を用いた粒子の表面の観察から求められる、粒子の表面に存在する粒径0.5μm以上のタングステン酸リチウムの面積割合が、観察面全体の面積に対して、5%以下であることが好ましい。
また、乾燥後のリチウム金属複合酸化物は、比表面積が0.5cm/g以上2m/g以下であることが好ましい。また、乾燥後のリチウム金属複合酸化物は、300℃におけるカールフィッシャー水分率が0.05質量%以上0.2質量%以下であることが好ましい。また、乾燥後のリチウム金属複合酸化物は、体積平均粒径MVが4μm以上6μm以下であることが好ましい。
また、タングステンを含むリチウム金属複合酸化物と、タングステン酸ニッケルと、水とを混合することを備え、タングステンを含むリチウム金属複合酸化物は、リチウム金属複合酸化物全体に対して0.1質量%以上1.0質量%以下含むことが好ましい。また、タングステン酸ニッケルは、リチウム金属複合酸化物全体に対して、タングステンを0.1質量%以上0.5質量%以下含むことが好ましい。また、乾燥後のリチウム金属複合酸化物の粒子表面にタングステン酸リチウムが存在し、粒子表面に存在するタングステン量が、正極活物質全体に対して、0.1質量%以上1.0質量%以下であり、かつ、乾燥後のリチウム金属複合酸化物の粒子の内部に存在するタングステン量が、正極活物質全体に対して、0.1質量%以上1.0質量%以下であることが好ましい。また、乾燥後の前記リチウム金属複合酸化物の粒子表面に存在するタングステン量が、前記粒子内部に含まれるタングステン量に対して0.1倍以上1倍以下であることが好ましい。
本発明によれば、正極合剤ペーストのゲル化の抑制と、二次電池に用いられた際に高い電池特性とを両立させることができる非水系電解質二次電池用正極活物質を、簡便かつ生産性高く製造することができる。また、本発明の製造方法は、容易で工業的規模での生産に適したものであり、その工業的価値は極めて大きい。
図1は、実施形態に係る非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法の一例を示す図である。 図2は、実施形態に係る非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法の一例を示す図である。 図3は、実施形態に係る非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法の一例を示す図である。 図4は、実施形態に係る非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法の一例を示す図である。 図5(A)及び図5(B)は、実施形態に係る正極活物質の一例を示す図である。 図6は、電池評価に使用したコイン型電池の概略断面図である。 図7は、インピーダンス評価の測定例と解析に使用した等価回路の概略説明図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。また、図面においては、各構成をわかりやすくするために、一部を強調して、あるいは一部を簡略化して表しており、実際の構造または形状、縮尺等が異なっている場合がある。以下、図を参照して、実施形態に係る非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法、及び、二次電池用正極活物質について説明する。
1.非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法
図1〜図4は、それぞれ、本実施形態に係る非水系電解質二次電池用正極活物質(以下、「正極活物質」ともいう。)の製造方法(以下、「製造方法」と略すこともある。)の一例を示す図である。また、図5(A)及び図5(B)は、本実施形態に係る製造方法により得られる正極活物質10の一例(例えば、正極活物質10A、10B)を示す模式図である。なお、以下の説明は、正極活物質10の製造方法の一例であって、正極活物質10の製造方法は、以下の説明の方法に限定されない。
なお、第1実施形態では、後述するように、リチウム金属複合酸化物(母材)中にタングステンを含んでもよく、含まなくてもよいが、以下の第1実施形態では、リチウム金属複合酸化物(母材)中にタングステンを含まない場合(得られる正極活物質10A、図5(A)参照)を中心に説明し、チウム金属複合酸化物(母材)中にタングステンを含む場合(得られる正極活物質10B、図5(B)参照)については、第2実施形態で説明する。
(1)第1実施形態
[混合工程(ステップS1)]
図1は、第1実施形態に係る正極活物質10の製造方法の一例を示す図である。第1実施形態の製造方法は、図1に示すように、リチウム金属複合酸化物と、タングステン酸ニッケルとを混合すること(ステップS1)を備える。
本実施形態の製造方法により得られる正極活物質10は、リチウム金属複合酸化物の表面にタングステン酸ニッケルが存在してもよい。正極活物質10に含まれるタングステン酸ニッケルは、正極を作製する際に、正極合剤ペーストに含まれる水分に溶出するリチウム複合酸化物由来の水酸化リチウムと反応して、正極合剤ペーストのゲル化を抑制することが期待できる。
また、ステップS1の混合は、水の存在下、リチウム金属複合酸化物と、タングステン酸ニッケルとを混合することが好ましい。水が存在することにより、リチウム金属複合酸化物に含まれるリチウムイオン(リチウム)と、タングステン酸ニッケルの少なくとも一部とが反応して、タングステン酸リチウム3を形成(生成)させることができる。形成されたタングステン酸リチウム3は、正極合剤ペーストのゲル化を抑制することができる。
図2は、第1実施形態に係る正極活物質10の製造方法の好適な一例を示した図である。ステップS1の混合は、図2に示すように、リチウム金属複合酸化物と、タングステン酸ニッケルと、水とを混合することが好ましい。水の存在下では、リチウム金属複合酸化物から遊離したリチウムイオンとタングステン酸ニッケルとが反応することにより、タングステン酸リチウム3とニッケル酸リチウムが形成されると考えられる。
詳細は不明であるが、タングステン酸リチウム3が形成されることにより、正極合剤ペーストのゲル化の抑制と、二次電池を構成した場合の電池容量の維持、高い出力特性、及び、優れた充放電サイクル特性とを両立させることができると考えられる。また、ニッケル酸リチウムは、リチウム金属複合酸化物と同様に、二次電池において充放電反応に寄与すると考えられる。また、ニッケル酸リチウムがリチウム金属複合酸化物の表面に存在することにより、リチウム金属複合酸化物の粒子表面とタングステン酸リチウム3の粒子表面との界面の親和性が向上し、より高い電池特性が期待できる。以下、混合工程(ステップS1)に用いられる各原料について説明する。
[リチウム金属複合酸化物]
原料として用いられるリチウム金属複合酸化物(母材)は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び、任意に金属元素M1を含み、かつ、それぞれの金属元素の原子数比がLi:Ni:Co:M1=s:(1−x−y):x:y(ただし、1.00≦s≦1.30、0.10≦x≦0.35、0≦y≦0.35、金属元素M1は、Mn、W、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される。また、リチウム金属複合酸化物は、主に、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子から構成されることができるが、二次粒子以外に、少量の単独の一次粒子を含んでもよい。
上記原子数比中、リチウムの含有量を示すzは1を超える。zが1を超える場合、すなわち、リチウム金属複合酸化物がリチウムを過剰に含有する場合、後述するように、水の存在下、リチウム金属複合酸化物から遊離したリチウム(リチウムイオン)の一部が、タングステン酸ニッケルと反応して、タングステン酸リチウム3を容易に形成することができる。
また、リチウム金属複合酸化物(母材)は、一般式(1):LiNi1−x−y−zCoMnM12+α(ただし、0.05≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0≦z≦0.10、1.00<s<1.30、0≦α≦0.2、Mは、V、Mg、Mo、Nb、Ti、WおよびAlから選ばれる少なくとも1種の金属元素)で表されてもよい。上記式(1)中、αは、リチウム金属複合酸化物に含まれるリチウム以外の金属元素の価数、及びリチウム以外の金属元素に対するリチウムの原子数比に応じて変化する係数である。
なお、リチウム金属複合酸化物(母材)は、任意に金属元素M1を含むことができ、リチウム金属複合酸化物(母材)中にタングステン(W)を含んでもよい。なおリチウム金属複合酸化物(母材)中にタングステンを含む場合(例、図5(B)参照)については、後述の第2実施形態において、詳述する。
リチウム金属複合酸化物(母材)の比表面積は、特に限定されないが、例えば、0.5m/g以上2m/g以下であることが好ましい。比表面積が上記範囲である場合、電解質液との接触面積が適度な範囲となり、電池容量等の電池特性と、機械的強度とのバランスが良好な正極活物質10を得ることができる。比表面積が0.5m/g未満である場合、高容量化が望まれる用途において、得られる正極活物質10の電池容量が不十分となることがある。一方、2m/gを超える場合、粒子構造の多孔質化により、得られる正極活物質10の機械的強度が不足して、電極製造時や電極としての使用時において安定性に問題が生じるおそれがある。
リチウム金属複合酸化物(母材)の水分率は、特に限定されないが、例えば、リチウム金属複合酸化物全体に対して、0.05質量%以上0.2質量%以下であることが好ましい。水分率が0.2質量%を超える場合、大気中の炭素、硫黄を含むガス成分を吸収してリチウム金属複合酸化物の表面にリチウム化合物を生成することがある。なお、上記水分率は、気化温度300℃の条件においてカールフィッシャー水分計で測定した場合の測定値である。
なお、リチウム金属複合酸化物(母材)の粒子構造は、特に限定されず、二次粒子の内部に中空部を備える中空構造を有してもよい。また、リチウム金属複合酸化物は、中実構造を有してもよいし、二次粒子内部に空隙を有する空隙構造などを有してもよい。また、リチウム金属複合酸化物の粉体特性や粒子構造は、混合工程(ステップS1)後に得られる正極活物質10まで継承されるため、リチウム金属複合酸化物の粉体特性及び粒子構造などは、得ようとする正極活物質10に合わせて選択することができる。
リチウム金属複合酸化物(母材)の製造方法は、上記組成を有するものであれば、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。リチウム金属複合酸化物の製造方法としては、例えば、Ni、Co、及び、任意に金属元素M1を含む水溶液を用いて、中和晶析を行って、ニッケル複合水酸化物を得た後、これを前駆体として、リチウムを含む化合物(リチウム化合物)と混合し、焼成してもよい。また、晶析後に得られたニッケル複合水酸化物は、熱処理し、少なくとも一部をニッケル複合酸化物とした後、リチウム化合物と混合してもよい。晶析により得られた前駆体を用いてリチウム金属複合酸化物を製造した場合、粒子間で組成、物性等がより均一なリチウム金属複合酸化物を得ることができる。
[タングステン酸ニッケル]
タングステン酸ニッケルは、特に限定されず、公知のタングステン酸ニッケルを用いることができる。なお、タングステン酸ニッケルは、酸化ニッケルタングステンともいう。タングステン酸ニッケルは、例えば、NiWOで表される。また、タングステン酸ニッケルの平均粒径は、1μm以下であることが好ましい。タングステン酸ニッケルの平均粒径の下限は、特に限定されないが、例えば、0.05μm以上である。
例えば、タングステンを含まないリチウム金属複合酸化物(母材)と、タングステン酸ニッケルと、水とを混合する場合、タングステン酸ニッケルの混合量は、タングステン酸ニッケル中のタングステン(W)量で、リチウム金属複合酸化物全体に対して、例えば、0.05質量%以上2.0質量%以下であり、電池特性の向上という観点から、より好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。
なお、リチウム金属複合酸化物と混合する化合物として、タングステン酸ニッケル以下の化合物を混合してもよく、例えば、タングステン酸ニッケルと酸化タングステンとを混合してもよい。両者の平均粒径は、1μm以下であることが好ましく、平均粒径の下限は特に限定されないが、例えば0.05μm以上である。
タングステン酸ニッケルと酸化タングステンとが両方含まれる場合、これらの混合量は、両者に含まれるタングステン(W)の合計量で、リチウム金属複合酸化物全体に対して、例えば、0.1質量%以上2.0質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。混合量が上記範囲である場合、電池容量を高く維持しながら、高い正極抵抗の低減効果を有する正極活物質10を得ることができる。
また、混合工程(ステップS1)により得られた混合物は、リチウム金属複合酸化物全体に対して、タングステンを、例えば、0.05質量%以上2.0質量%以下含んでもよく、0.1質量%以上1.0質量%含むことが好ましく、0.5質量%以上1.0質量%以下含むことがより好ましい。混合物がタングステンを上記範囲で含む場合、正極合剤ペーストのゲル化を抑制することができる。
[水]
水は、純水を用いることが好ましい。上述したように、混合物中の水には、リチウム金属複合酸化物中に存在する、未反応のリチウム化合物や結晶中に存在するリチウムなど(以下、これらをまとめて「余剰リチウム」という。)が溶解するとともに、混合したタングステン酸ニッケルを溶解することができる。
混合物に含まれる水の量は、混合物中のタングステン酸ニッケルの少なくとも一部を溶解させることができる量であれば、一定の効果が得られるが、ゲル化抑制と、高い電池特性とを高いレベルで両立させるという観点から、混合物中のタングステン酸ニッケルを十分溶解させることができる量であることが好ましい。混合物に含まれる水の量は、リチウム金属複合酸化物(母材)に対して、例えば、0.1質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
混合物に含まれる水の量を十分な量とした場合、リチウム金属複合酸化物(母材)の粒子内部に存在する一次粒子の表面まで、タングステン酸ニッケルを十分に浸透させるとともに、リチウム金属複合酸化物(母材)の粒子間でもタングステン酸ニッケルを均一に分散させることができ、出力特性やサイクル特性をより向上させることができる。
なお、混合物に含まれる水の量は、用いるリチウム金属複合酸化物(母材)の混合量や粒子構造等によって、適宜上記範囲で調製することができ、得られる混合物がペースト状とならない程度の範囲で混合することが好ましい。例えば、空隙率が10%以上のリチウム複合酸化物(母材)を用いる場合、混合物に含まれる水の量は、リチウム金属複合酸化物(母材)に対して、例えば、10質量%以上35質量%としてもよい。
[混合方法]
リチウム金属複合酸化物(母材)と、タングステン酸ニッケルと、水とを混合する方法は、特に限定されず、これらを同時に添加して、公知の混合装置により混合してもよく、別々に添加して、公知の混合装置により混合してもよい。
図3は、本実施形態に係る正極活物質10の製造方法において、好適に用いることのできる方法の一例を示す。図3に示すように、混合工程(ステップS1)は、リチウム金属複合酸化物(母材)とタングステン酸ニッケルとを混合する工程(ステップS11、第1の混合工程)と、得られた粉末状の混合物に水を噴霧して混合する工程(ステップS12、第2の混合工程)とを備えることが好ましい。以下、各混合工程について、説明する。
(第1の混合工程:ステップS11)
まず、リチウム金属複合酸化物(母材)と、タングステン酸ニッケルとを混合する(ステップS11)。これらの粉末同士を乾式混合することより、リチウム金属複合酸化物(母材)中に、タングステン酸ニッケルをより均一に分散させることができる。
タングステン酸ニッケルの混合量は、リチウム金属複合酸化物(母材)に対して、タングステン酸ニッケル中のタングステン(W)が0.1質量%以上0.5質量%以下含まれる量であることが好ましい。タングステン酸ニッケル中のタングステンの混合量が0.1質量%未満である場合、リチウム金属複合酸化物(母材)の表面に遊離した余剰リチウムを十分に中和することができないため、正極スラリーのゲル化の抑制が十分でないことや、充分な出力特性が得られないことがある。一方、タングステン酸ニッケル中のタングステンの混合量が0.5質量%を超える場合、乾燥(ステップS2)後のリチウム金属複合酸化物4の表面に晶出するタングステン酸リチウム3のうち、粒径が0.5μm以上である粒子が増加して、十分な電池容量が得られないことがある。
[第2の混合工程:ステップS12]
次いで、得られた粉末状の混合物に、水を噴霧して混合する(ステップS12)。これにより、水の存在下、リチウム金属複合酸化物(母材)の表面に遊離した水酸化リチウムなどの余剰リチウムとタングステン酸ニッケルとの反応を、より均一に進めることができる。
噴霧する水の量(総量)は、リチウム金属複合酸化物(母材)全体に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。噴霧する水の量が1質量%未満である場合、水添加による、上述した効果の発現が乏しく、タングステン酸ニッケルが残留することがある。一方、噴霧する水の量が10質量%を超える場合、水噴霧(ステップS12)から乾燥(ステップS2)に至るまでに、リチウム金属複合酸化物(母材)から水へと溶出するリチウム量(余剰リチウム量)が過多となり、得られる正極活物質10中のリチウム含有量が減少し、抵抗の低減効果が十分でないことがある。また、噴霧する水の量が10質量%を超える場合、乾燥後のリチウム金属複合酸化物(正極活物質10)中の水分率を下げるため、必要な乾燥時間が多く必要となり、生産性が低下することがある。
噴霧する水の粒は、平均粒径100μm以下の霧状態であることが好ましい。霧状態の水を添加する場合、リチウム金属複合酸化物の表面付近における、余剰リチウムとタングステン酸ニッケルとの反応をより均一に進めることができ、乾燥後のリチウム金属複合酸化物の表面に形成されるタングステン酸リチウム3の粒径を好適な範囲とすることができる。一方、噴霧する純水の平均粒径が100μmよりも大きい場合、噴霧により、水分が直接供給された正極活物質10と、噴霧後の撹拌で水分が供給される正極活物質10とでLiの溶出量が異なり、反応に不均一性が生じることがある。
[乾燥工程(ステップS2)]
混合工程(ステップS1)において、水を添加して混合した場合、図2及び図3に示すように、得られた混合物を乾燥すること(ステップS2)が好ましい。混合工程(ステップS1)及び乾燥工程(ステップS2)において、リチウム金属複合酸化物(母材)中の余剰リチウムと、タングステン酸ニッケルとが効率よく反応して、タングステン酸リチウムが形成される。乾燥後に得られたリチウム金属複合酸化物は、その粒子表面付近に、形成されたタングステン酸リチウム3が存在する。
乾燥温度は、特に限定されず、水分率が十分に低減されればよいが、例えば、500℃以下が好ましい。乾燥温度が500℃を超える場合、リチウム金属複合酸化物粉末の内部からさらにリチウムが遊離するため十分な正極合剤ペーストのスラリー安定性が得られない。なお、乾燥温度の下限は、特に限定されないが、例えば、100℃以上である。また、乾燥時の圧力は1気圧以下が望ましい。1気圧よりも高いと水分率が十分に下がらない恐れがある。乾燥時間は、特に限定されず、水分率が十分に低減されればよいが、例えば、5時間以上24時間以下程度である。
なお、乾燥後のリチウム金属複合酸化物は、そのまま正極活物質10として用いてもよいし、粒度分布を調整するための解砕工程などの他の工程をさらに行った後、正極活物質10として用いてもよい。
[非水系電解質二次電池用正極活物質]
第1実施形態の製造方法で得られる非水系電解質二次電池用正極活物質(正極活物質10)は、例えば、図5(A)に示すように、乾燥後のリチウム金属複合酸化物(二次粒子2)と、タングステン酸リチウム3とを少なくとも含む。以下、正極活物質10の各特性について説明する。
[組成(正極活物質全体)]
正極活物質10は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び、元素Mの原子数比が、Li:Ni:Co:M=z:(1−x−y):x:y(ただし、1.00<z<1.30、0.10≦x≦0.35、0≦y≦0.35、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される。
正極活物質10は、タングステンを除いた組成として、例えば、一般式(3):LiNi1−x−yCo(ただし、0.10≦x≦0.35、0≦y≦0.35、1.00<z<1.30、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表わされる。また、正極活物質10は、六方晶系の層状の結晶構造を有する。
[タングステン酸リチウム]
タングステン酸リチウム3は、乾燥後のリチウム金属複合酸化物の二次粒子2の表面に存在する。なお、タングステン酸リチウム3の存在は、粉末X線回折などにより確認することができる。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた二次粒子2の表面の観察から求められる、二次粒子2の表面に存在する粒径0.5μm以上のタングステン酸リチウム3の面積割合は、観察面積全体に対して、好ましくは5%以下であり、より好ましくは1%以下である。粒径0.5μm以上のタングステン酸リチウム3の面積割合が上記範囲である場合、二次電池において、電池容量の低下を抑制しながら、正極抵抗をより低減することができる。一方、二次粒子2の表面に存在する粒径0.5μm以上のタングステン酸リチウム3の面積割合が5%を超える場合、タングステン酸リチウム3中を通過するリチウムイオンの抵抗が増加するため、反応抵抗が増加することがある。
タングステン酸リチウム3の面積割合は、例えば、二次粒子2の表面をSEMにより観察し、画像解析などによって、観察面における二次粒子2の表面全体の面積を、粒径0.5μm以上の粒径を有するタングステン酸リチウム3が占める面積で除することにより、算出することができる。なお、二次粒子2の表面全体の面積は、タングステン酸リチウム3により被覆される部分を含む。
タングステン酸リチウム3の面積割合は、具体的には、複数の二次粒子2の表面を観察し、例えば、視野中の二次粒子2の中で、体積平均粒径(MV)に近い粒子を50個ランダム(無作為)に選び、これら50個の粒子に対して、粒子表面全体の占める面積と、粒径0.5μm以上のタングステン酸リチウム3の占める面積とを求め、観察面全体の面積に対する、粒径0.5μm以上の粒径を有するタングステン酸リチウム3の占める面積割合(%)として算出される。
なお、タングステン酸リチウム3は、二次粒子2の表面だけでなく、二次粒子2の内部に存在してもよい。また、タングステン酸リチウム3は、二次粒子2の表面及び内部に存在する一次粒子1の表面に存在してもよく、一次粒子1間の粒界に存在してもよい。
なお、正極活物質10は、原料として用いたタングステン酸ニッケルを実質的に含ないことが好ましい。ここで、タングステン酸ニッケルを実質的に含まないとは、粉末X線回折などの方法により、タングステン酸ニッケルが検出できないことをいう。正極活物質10中、タングステン酸ニッケルが検出される場合、原料に用いた酸化タングステンまたはタングステン酸ニッケルが残留していることを示しており、正極抵抗が十分に低減されないことがある。
[タングステン含有量]
正極活物質10の表面に存在するタングステン量は、正極活物質10全体に対して、例えば、0.05質量%以上2.0質量%以下であり、電池特性の向上という観点から、より好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。正極活物質10の表面に存在するタングステン量が上記範囲である場合、二次粒子2内部に存在するタングステン酸リチウム3と、二次粒子2表面に形成されるタングステン酸リチウム3とが、良好なLiイオンの伝導パスを形成することができ、二次電池において、初期充放電容量、正極抵抗、及び、サイクル特性をより向上させることができると考えられる。
[水分率]
正極活物質10は、300℃におけるカールフィッシャー水分率が、0.05%以上0.2%以下であることが好ましい。水分率が0.2%を超える場合、正極合剤ペーストに含まれる溶剤との馴染みを阻害し、塗布及び乾燥による成膜が不均質となることがある。
正極活物質10は、体積平均粒径MVが、好ましくは3μm以上15μm以下であり、より好ましくは4μm以上6μm以下である。体積平均粒径MVが上記範囲である場合、比表面積が大きく、正極に用いた場合に、電解液との反応面積を十分に確保することができるばかりでなく、正極を薄く構成し、リチウムイオンの正極−負極間の移動距離を短くすることができる。なお、体積平均粒径MVは、レーザー光回折散乱法により測定される値である。
また、正極活物質10は、正極活物質10の5gを100mlの純水に分散させ、10分間静置後の上澄み液を測定した際の25℃におけるpH(以下、単に「正極活物質のpH値」ともいう。)が11以上11.9以下であることが好ましい。5gの正極活物質10を100mlの純水に分散させ、10分間静置後の上澄み液のpHを測定することにより、正極活物質10を用いてペーストを作製した際における、ペースト中への余剰リチウムの溶出の度合いについて評価することができる。正極活物質10のpHを特定の範囲に制御する場合、電池特性を向上させ、かつ、ペーストのゲル化を抑制することができる。
(2)第2実施形態
以下、第2実施形態について説明する。本実施形態に係る製造方法では、リチウム金属複合酸化物(母材)中にタングステンを必須の元素として含むことが、上記第1実施形態に係る製造方法と異なる。なお本実施形態において、上述の第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付す等その説明を適宜省略あるいは簡略化する。また、本明細書の実施形態において説明する事項のうち、本実施形態に適用可能な構成は、適宜本実施形態でも適用する。以下、図4、図5(B)を参照して、本実施形態について説明する。
[混合工程(ステップS1a)]
第2実施形態に係る正極活物質10Bの製造方法は、タングステンを含むリチウム金属複合酸化物と、タングステン酸ニッケルと、水とを混合すること(ステップS1a)と、混合することにより得られた混合物を乾燥すること(ステップS2a)と、を備える。本実施形態に係る正極活物質10Bの製造方法は、母材として、タングステンを含むリチウム金属複合酸化物を用いる点が上記第1実施形態と異なる。
図5(B)は、本実施形態に係る製造方法により得られる正極活物質10Bの一例を示す模式図である。図5(B)に示すように、タングステンを含むリチウム金属複合酸化物(母材)を用いた場合、乾燥後のリチウム金属複合酸化物の二次粒子2の粒子内部と、粒子表面に、より均一にタングステン酸リチウム3、3aを存在させることができる。
本実施形態に係る製造方法で得られる正極活物質10B(例えば、図5(B))は、二次粒子の内部のみにタングステンを含むリチウム金属複合酸化物を単独で正極活物質として用いた場合や、図5(A)に示されるような、タングステンを含有しないリチウム金属複合酸化物(母材)を用いた場合の正極活物質と比較して、より初期充放電容量、正極抵抗、及び、サイクル特性が向上した二次電池を得ることができる。また、本実施形態に係る製造方法により得られた正極活物質10Bを用いた二次電池は、従来の正極活物質よりもタングステンの使用量が少なくても、同等の電池特性を有することができ、コストの観点からも優れる。
上記理由の詳細は不明であるが、タングステンを含むリチウム金属複合酸化物(母材)は、図5(B)に示すように、その表面及び内部の少なくとも一部に、タングステン酸リチウム3aを形成していると考えられる。そして、上記のステップS1a及びステップS2aにより、リチウム金属複合酸化物(母材)中のリチウムと、タングステン酸ニッケルとが反応して、乾燥後のリチウム金属複合酸化物4の表面に、例えば、タングステン酸リチウム3が形成される。そして、乾燥後のリチウム金属複合酸化物4の内部と表面の全体に、タングステン酸リチウム3、3aが存在することにより、二次電池において、電解液と正極活物質10Bの内部との間でリチウムLiイオンの伝導パスが形成され、リチウムイオンの出し入れがしやすくなるものと考えられる。
以下、混合工程(ステップS1)に用いられる各原料について、上記第1実施形態と異なる点について説明する。
[リチウム金属複合酸化物]
原料として用いられるリチウム金属複合酸化物(母材)は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び、元素Mを、Li:Ni:Co:M1=z:(1−x−y):x:y(ただし、1.00<z<1.30、0.10≦x≦0.35、0≦y≦0.35、M1は、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される原子数比で含み、かつ、タングステンを、前記第一のリチウム金属複合酸化物全体に対して、0.1質量%以上1.0質量%以下含む。
また、タングステンを含むリチウム金属複合酸化物(母材)の組成は、例えば、一般式(2):LiNi1−x−yCo(1.00<z<1.30、0.10≦x≦0.35、0≦y≦0.35、0.0005≦a≦0.005、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表すことができる。なお、母材を構成する一次粒子内には、少量のタングステン(W)が固溶してもよい。
タングステンを含むリチウム金属複合酸化物(母材)中、タングステン(W)は、リチウム金属複合酸化物全体に対して、0.1質量%以上1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以上1.0質量%以下含まれる。リチウム金属複合酸化物(母材)がタングステンを上記範囲で含む場合、混合(ステップS1a)に用いるタングステン酸ニッケルの量を低減することができ、さらに、正極活物質10B全体におけるタングステン量を低減しても、電池容量を高く維持しながら、高い正極抵抗の低減効果を有する正極活物質10Bを得ることができる。
タングステンを含むリチウム金属複合酸化物(母材)中、タングステンの存在部位は特に限定されない。タングステンは、リチウム金属複合酸化物(母材)の結晶中に固溶して存在してもよく、リチウム金属複合酸化物(母材)の二次粒子の表面及び内部に配置する一次粒子の表面や、これらの一次粒子間の粒界に、タングステン化合物として存在してもよい。また、タングステンの一部が固溶し、それ以外の一部がタングステンを含む化合物として存在してもよい。タングステンを含む化合物としては、タングステン酸リチウム3aが好ましい。なお、タングステンを含む化合物の種類は、粉末X回折などにより確認することができる。
タングステンを含むリチウム金属複合酸化物(母材)は、上記組成を有するものであれば、特に限定されず、公知の製造方法で得ることができる。タングステンを含むリチウム金属複合酸化物(母材)の製造方法の一例を下記(i)〜(iii)に示す。
(i)Ni、Co、W、及び、任意に元素Mを含む水溶液を用いて、中和晶析を行って、遷移金属複合水酸化物を作製した後、これを前駆体として、リチウムを含む化合物と混合し、焼成して、リチウム金属複合酸化物(母材)を得る。
(ii)Wを除くNi、Co、及び、任意に元素Mを含む遷移金属複合水酸化物を作製した後、遷移金属複合水酸化物と、Wを含む化合物と、Liを含む化合物とを混合し、焼成して、リチウム金属複合酸化物(母材)を得る。
(iii)Wを除く上記組成を有するリチウム金属複合酸化物の表面の少なくとも一部に、Wを含む化合物を被覆して、リチウム金属複合酸化物(母材)を得る。
これらの中でも、タングステンの分布の均一性の観点から、好ましくは(i)及び(ii)の製造方法、より好ましくは(i)の製造方法により、リチウム金属複合酸化物(母材)を製造することができる。また、(i)の製造方法で添加されたWは、遷移金属複合水酸化物内にタングステンが均一に分布するため、リチウム金属複合酸化物に合成した際にタングステンが、二次粒子の表面及び内部に存在する一次粒子表面をより均一に被覆することが可能である。なお、本実施形態の製造方法においては、上記の製造方法、又は、上記以外の製造方法のいずれで得られたリチウム金属複合酸化物(母材)であっても用いることができる。
タングステンを含むリチウム金属複合酸化物(母材)は、その表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した場合、粒径0.5μm以上のタングステンを含む化合物が観察されないことが好ましい。粒径0.5μm以上のタングステンを含む化合物が表面に観察されない場合、十分に微細なタングステンを含む化合物が、リチウム金属複合酸化物(母材)の表面及び内部に存在し、後述するタングステンを含む化合物と合わせて、より電池容量の向上及び抵抗の低減の効果を得ることができる。なお、タングステンを含む化合物の粒径は、上記(i)及び(ii)の製造方法を用いることにより、0.5μm以下とすることができる。
また、タングステンを含むリチウム金属複合酸化物(母材)は、内部に存在するタングステン(W)の量が、リチウム金属複合酸化物(母材)全体に対して、好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上1.0質量%以下である。ここで、内部に存在するタングステンの量とは、リチウム金属複合酸化物(母材)に含まれるタングステン中、リチウム金属複合酸化物(母材)を水に分散させて、表面に存在するタングステンを含む化合物を除去した際、水に溶出せずに、残存したタングステンの量をいう。リチウム金属複合酸化物(母材)の内部に存在するタングステン量が上記範囲である場合、得られる正極活物質10Bにおいて、二次粒子2内部に存在するタングステン酸リチウム3aと、後の工程(ステップS1a及びS2a)で二次粒子2表面に形成されるタングステン酸リチウム3とが、良好なリチウムイオンの伝導パスを形成することができ、初期充放電容量、正極抵抗、及び、サイクル特性をより向上させる。
リチウム金属複合酸化物(母材)内部に存在するタングステン量は、以下の方法により測定することができる。まず、リチウム金属複合酸化物(母材)全体のタングステン(W)量を、ICP発光分光分析(ICP法)により測定する。次いで、5.0gのリチウム金属複合酸化物(母材)を純水100mlと共にビーカーに入れ、マグネティックスターラーにて攪拌し分散させ、30分間攪拌を継続した後、10分間静置後に、上澄み液を濾過分取し、上澄み液に溶出したタングステン(W)量をICP法により測定する。この上澄み液に溶出したタングステン量を、リチウム金属複合酸化物(母材)の表面に存在するタングステン量(W)とし、下記の式から、リチウム金属複合酸化物(母材)の内部に存在するタングステン量(W)を算出する。
式:W=W−W
[タングステン酸ニッケル]
タングステン酸ニッケルは、上記第1実施形態と同様の種類を用いることができる。タングステン酸ニッケルの混合量は、タングステン酸ニッケル中のタングステン(W)量で、リチウム金属複合酸化物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。タングステン酸ニッケルの混合量が上記範囲である場合、電池容量を高く維持しながら、高い正極抵抗の低減効果を有する正極活物質10Bを得ることができる。また、本実施形態においては、タングステン酸ニッケル中のタングステンが、リチウム金属複合酸化物全体に対して、0.1質量%以上0.2質量%以下含まれる量まで、タングステン酸ニッケルの混合量を低減させた場合でも、十分に上記効果を得ることができる。
また、酸化タングステンを合わせて混合する場合、酸化タングステンとタングステン酸ニッケルとの混合量は、両者に含まれるタングステンの合計量が、リチウム金属複合酸化物全体に対して、0.1質量%以上0.5質量%以下である。混合量が上記範囲である場合、電池容量を高く維持しながら、高い正極抵抗の低減効果を有する正極活物質10Bを得ることができる。また、本実施形態の製造方法においては、酸化タングステンとタングステン酸ニッケルの混合物中のタングステンが、リチウム金属複合酸化物全体に対して、0.1質量%以上0.2質量%以下含まれる量に混合量を低減させた場合でも、十分に上記効果を得ることができる。
[水]
水は、純水を用いることが好ましい。上述したように、混合物中の水には、リチウム金属複合酸化物中に存在する、未反応のリチウム化合物や結晶中に存在するリチウムなど(以下、これらをまとめて「余剰リチウム」という。)が溶解するとともに、混合したタングステン酸ニッケルを溶解することができる。水の含有量等の他の条件は、上記第1実施形態と同様とすることができる。
[混合方法]
リチウム金属複合酸化物(母材)と、タングステン酸ニッケルと、水とを混合する方法は、特に限定されず、これらを同時に添加して、公知の混合装置により混合してもよく、別々に添加して、公知の混合装置により混合してもよい。タングステンを含むリチウム金属複合酸化物(母材)と、タングステン酸ニッケルと、水とを混合する好適な方法は、上記第1実施形態と同様の方法とすることができる。
[乾燥工程(ステップS2a)]
次いで、図4に示すように、リチウム金属複合酸化物(母材)と、タングステン酸ニッケルと、水とを混合することにより得られた混合物を乾燥する(ステップS2a)。なお、乾燥条件は、上記第1実施形態と同様の条件とすることができる。
[非水系電解質二次電池用正極活物質]
第2実施形態の製造方法で得られる正極活物質10Bは、例えば、図5(B)に示すように、乾燥後のリチウム金属複合酸化物4(二次粒子2)と、タングステン酸リチウム3とを少なくとも含む。以下、図5(B)を参照して、正極活物質10Bの各特性について説明する。
乾燥後のリチウム金属複合酸化物4は、リチウム金属複合酸化物(母材)に含まれるタングステンに由来するタングステン酸リチウム3aと、上述したステップS1a、S2aにより形成されたタングステン酸リチウム3aとの両方を有する。
正極活物質10Bは、正極活物質全体に対して、タングステンを、例えば0.2質量%以上1.2質量%以下含み、好ましくは0.2質量%以上1質量%以下含む。
乾燥後のリチウム金属複合酸化物の表面に存在するタングステン量は、正極活物質10B全体に対して、好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。乾燥後のリチウム金属複合酸化物の表面に存在するタングステン量が上記範囲である場合、二次粒子2内部に存在するタングステンを含む化合物(例えば、タングステン酸リチウム3a)と、二次粒子2表面に形成されるタングステン酸リチウム3とが、良好なリチウムイオンの伝導パスを形成することができ、二次電池において、初期充放電容量、正極抵抗、及び、サイクル特性をより向上させることができると考えられる。
また、乾燥後のリチウム金属複合酸化物の粒子内部に存在するタングステン量は、正極活物質全体に対して、好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上1.0質量%以下である。タングステン酸リチウム3は、乾燥後のリチウム金属複合酸化物の表面付近に主に存在するため、乾燥後のリチウム金属複合酸化物の粒子内部に存在するタングステン量は、リチウム金属複合酸化物(母材)内部のタングステン量とほぼ同一の量であってもよい。また、正極活物質10Bの表面に存在するタングステン量は、正極活物質10Bの内部に含まれるタングステン量に対して0.1倍以上1倍以下であることが好ましい。
なお、乾燥後のリチウム金属複合酸化物の表面及び内部に存在するタングステン量は、上述したタングステンを含むリチウム金属複合酸化物(母材)の表面及び内部に存在するタングステン量W、Wと同様の方法で測定することができる。
なお、本実施形態の製造方法により得られる正極活物質10Bの特性は、上記した以外は、上記第1実施形態により得られる正極活物質10の特性と同様とすることができる。なお、上述した走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた二次粒子2の表面の観察から求められる、二次粒子2の表面に存在する粒径0.5μm以上のタングステン酸リチウム3の面積割合については、リチウム金属複合酸化物(母材)に含まれるタングステン酸リチウム3aと、上述したステップS1a、S2aにより形成されたタングステン酸リチウム3とを含む面積割合をいう。
2.非水系電解質二次電池
上述した本実施形態の製造方法で得られる正極活物質10は、非水系電解質二次電池(以下、「二次電池」ともいう。)の正極に好適に用いることができる。二次電池は、例えば、正極、負極および非水系電解液、セパレータを備える。また、二次電池は、例えば、正極、負極および固体電解液を備えてもよい。また、二次電池は、一般の非水系電解質二次電池と同様の構成要素により構成されてもよい。
以下、正極、負極および非水系電解液、セパレータを備える二次電池について説明する。なお、以下で説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基に、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本実施形態の非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
(a)正極
上記の正極活物質10を用いて、例えば、以下のようにして、非水系電解質二次電池の正極を作製することができる。
まず、粉末状の正極活物質10、導電材、結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整等の目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合剤ペーストを作製する。
その正極合剤ペースト中のそれぞれの混合比も、非水系電解質二次電池の性能を決定する重要な要素となる。溶剤を除いた正極合剤の固形分の全質量を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質10の含有量を60〜95質量部とし、導電材の含有量を1〜20質量部とし、結着剤の含有量を1〜20質量部とすることが望ましい。
得られた正極合剤ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させる。必要に応じ、電極密度を高めるべく、ロールプレス等により加圧することもある。このようにして、シート状の正極を作製することができる。シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断等をして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
正極の作製にあたって、導電剤としては、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)や、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料などを用いることができる。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
なお、必要に応じ、正極活物質10、導電材、活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合剤に添加する。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。また、正極合剤には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
(b)負極
負極には、金属リチウムやリチウム合金等、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合剤を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDF等の含フッ素樹脂等を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。
(c)セパレータ
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
(d)非水系電解液
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO等、およびそれらの複合塩を用いることができる。
さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤等を含んでいてもよい。
(e)二次電池の形状、構成
二次電池の形状は、円筒型、積層型等、種々のものとすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケースに密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。
(f)特性
本実施形態に係る製造方法で得られた正極活物質10を用いた非水系電解質二次電池は、高容量で高出力となる。特により好ましい形態で得られた本発明による正極活物質10を用いた非水系電解質二次電池は、例えば、2032型コイン電池の正極に用いた場合、150mAh/g以上の高い初期放電容量と低い正極抵抗が得られる。
なお、正極抵抗の測定方法は、例えば、下記方法により行うことができる。電気化学的評価手法として一般的な交流インピーダンス法にて電池反応の周波数依存性について測定を行うと、溶液抵抗、負極抵抗と負極容量、および正極抵抗と正極容量に基づくナイキスト線図が図6のように得られる。
電極における電池反応は、電荷移動に伴う抵抗成分と電気二重層による容量成分とからなり、これらを電気回路で表すと抵抗と容量の並列回路となり、電池全体としては溶液抵抗と負極、正極の並列回路を直列に接続した等価回路で表される。この等価回路を用いて測定したナイキスト線図に対してフィッティング計算を行い、各抵抗成分、容量成分を見積もることができる。正極抵抗は、得られるナイキスト線図の低周波数側の半円の直径と等しい。よって、作製される正極について、交流インピーダンス測定を行い、得られたナイキスト線図に対し等価回路でフィッティング計算することで、正極抵抗を見積もることができる。
以下、本発明の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[W量の測定]
正極活物質の表面及び内部に存在するタングステン量は、以下の方法により測定した。まず、正極活物質全体のタングステン(W)量を、ICP発光分光分析(ICP法)により測定した。次いで、5.0gの正極活物質を純水100mlと共にビーカーに入れ、マグネティックスターラーで攪拌、分散させ、30分間攪拌した後、10分間静置後に得られる上澄み液を濾過分取し、上澄み液に溶出したタングステン(W)量をICP法により測定した。この上澄み液に溶出したタングステン量を、正極活物質の表面に存在するタングステン量(W)とし、下記の式から、正極活物質の内部に存在するタングステン量(W)を算出した。
式:W=W−W
[0.5μm以上のタングステン酸リチウムの面積割合]
タングステン酸リチウムの面積割合は、複数の二次粒子の表面をSEM観察し、視野中の二次粒子の中で、体積平均粒径(MV)の80%以上120%以下の粒子径を有する粒子を50個ランダム(無作為)に選び、これら50個の粒子に対して、粒子表面全体の面積と、粒径0.5μm以上のタングステン酸リチウムの占める面積とを求め、粒子表面全体の面積に対する、粒径0.5μm以上の粒径を有するタングステン酸リチウムの占める面積割合(%)を算出した。なお、粉末X線回折の結果、タングステンを含む化合物として、タングステン酸リチウムのみ検出されたため、二次粒子の表面に存在する化合物は、すべてタングステン酸リチウムとして、面積割合を算出した。
[正極合剤ペーストの安定性の評価]
正極活物質25.0gと、導電材のカーボン粉1.5gと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)2.9gと、N−メチル−2ピロリドン(NMP)とを遊星運動混練機により混合し正極合剤ペーストを得た。N−メチル−2ピロリドン(NMP)は、JIS Z 8803:2011に規定される振動粘度計による粘度測定方法により、粘度が1.5〜2.5Pa・sとなるように添加量を調整した。得られたペーストを76時間保管してゲル化の発生状況を目視で評価し、ペーストの粘度が混合直後と変わらず流動性を維持していた場合、ゲル化が発生していないと判断し、ペーストが固化し流動性を失った場合、もしくは粘度が高くなり容器を傾けてもペーストが偏らないような場合は、ゲル化が発生したと判断した。ゲル化が発生していないものを○、ゲル化が発生したものを×とした。
[二次電池の製造および電池性能の評価]
実施例及び比較例により得られた正極活物質を用いた正極を有する二次電池について、その性能(初期放電容量、正極抵抗、60℃で充放電サイクルを500回繰り返した後の放電容量維持率)を測定した。
(電池の製造)
正極活物質の評価には、図6に示す2032型コイン電池CBA(以下、コイン型電池CBAと称す)を使用した。
図5に示すように、コイン型電池CBAは、ケースCAと、このケースCA内に収容された電極ELとから構成されている。
ケースCAは、中空かつ一端が開口された正極缶PCと、この正極缶PCの開口部に配置される負極缶NCとを有しており、負極缶NCを正極缶PCの開口部に配置すると、負極缶NCと正極缶PCとの間に電極ELを収容する空間が形成されるように構成されている。
電極ELは、正極PE、セパレータSEおよび負極NEとからなり、この順で並ぶように積層されており、正極PEが正極缶PCの内面に接触し、負極NEが負極缶NCの内面に接触するようにケースCAに収容されている。
なお、ケースCAはガスケットGAを備えており、このガスケットGAによって、正極缶PCと負極缶NCとの間が非接触の状態を維持するように相対的な移動が固定されている。また、ガスケットGAは、正極缶PCと負極缶NCとの隙間を密封してケースCA内と外部との間を気密液密に遮断する機能も有している。
上記の図6に示すコイン型電池CBAは、以下のようにして製作した。
まず、非水系電解質二次電池用正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形して、正極PEを作製した。作製した正極PEを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。
この正極PEと、負極NE、セパレータSEおよび電解液とを用いて、上述したコイン型電池CBAを、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
なお、負極NEには、直径14mmの円盤状に打ち抜かれた平均粒径20μm程度の黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンが銅箔に塗布された負極シートを用いた。
セパレータSEには膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。電解液には、1MのLiClOを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
製造したコイン型電池CBAの性能を示す初期放電容量、正極抵抗、及び、60℃で充放電サイクルを500回繰り返した後の放電容量維持率は、以下のように評価した。
初期放電容量は、コイン型電池CBAを製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。
また、正極抵抗は、コイン型電池CBAを充電電位4.1Vで充電して、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用して交流インピーダンス法により測定すると、図7に示すナイキストプロットが得られる。このナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および、正極抵抗とその容量を示す特性曲線の和として表しているため、このナイキストプロットに基づき等価回路を用いてフィッティング計算を行い、正極抵抗の値を算出した。
500サイクル後の放電容量維持率は、温度60℃、充放電レート0.2Cとして、4.3Vまで充電して3.0Vまで放電するサイクルを500回繰り返した後の放電容量と初期放電容量の比を計算して求めた。
なお、本実施例では、複合水酸化物製造、正極活物質および二次電池の作製には、和光純薬工業株式会社製試薬特級の各試料を使用した。
[実施例1]
(第一のリチウム金属複合酸化物の製造)
公知の晶析法を用いて、Li1.20Ni0.35Co0.35Mo0.30で表されるリチウム金属複合酸化物(W:0wt%、比表面積1.2cm/g)(母材)を得た。具体的には、原料として、Ni、Co、Mnをそれぞれ含む金属塩溶液及びタングステン酸ナトリウム溶液を、中和剤としてNaOHを、錯化剤としてアンモニアを用い、連続晶析法により、Ni、Co、Mnを含有する遷移金属複合水酸化物を合成した。得られた遷移金属複合水酸化物に水酸化リチウムを混合した後、焼成して、上記リチウム金属複合酸化物(母材)を得た。母材の水分率(300℃におけるカールフィシャー水分率)は、母材全体に対して0.07質量%であった。
(混合工程)
リチウム金属複合酸化物(母材)に、リチウム金属複合酸化物全体に対してタングステン量が0.9質量%となる量のタングステン酸ニッケル(和光純薬社製試薬、酸化ニッケルタングステン)を添加し、混合した後、水を、平均粒径100μm以下の霧状態で、第一のリチウム金属複合酸化物全体に対して2質量%噴霧してさらに混合し、その後、150℃で12時間乾燥することによって正極活物質を得た。得られた乾燥後のリチウム金属複合酸化物(正極活物質)の特性を表1に示す。また、正極活物質の体積平均粒径(MV)は、5.2μmであった。
[実施例2]
公知の晶析法を用いて、Li1.20Ni0.35Co0.35Mn0.300.0037で表されるリチウム金属複合酸化物(W:0.07質量%、比表面積1.2cm/g)(母材)を得た。具体的には、原料として、Ni、Co、Mnをそれぞれ含む金属塩溶液及びタングステン酸ナトリウム溶液を、中和剤としてNaOHを、錯化剤としてアンモニアを用い、連続晶析法により、Ni、Co、Mn及び、Wを含有する遷移金属複合水酸化物を合成した。得られた遷移金属複合水酸化物に水酸化リチウムを混合した後、焼成して、上記リチウム金属複合酸化物(母材)を得た。
(混合工程)
リチウム金属複合酸化物(母材)に、リチウム金属複合酸化物全体に対してタングステン量が0.05質量%となる量のタングステン酸ニッケル(和光純薬社製試薬、酸化ニッケルタングステン)を添加し、混合した後、水を、平均粒径100μm以下の霧状態で、リチウム金属複合酸化物全体に対して2質量%噴霧してさらに混合し、その後、150℃で12時間乾燥することによって正極活物質を得た。得られた乾燥後のリチウム金属複合酸化物(正極活物質)の特性を表1に示す。また、正極活物質の体積平均粒径(MV)は、5.2μmであった。
[電池評価]
得られた第二のリチウム金属複合酸化物を使用して作製された正極を有するコイン型電池CBAの電池特性を評価した。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
タングステン酸ニッケルの添加量をリチウム金属複合酸化物全体に対してタングステン量が0.1質量%となる量とした以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
[実施例4]
タングステン酸ニッケルの添加量をリチウム金属複合酸化物全体に対してタングステン量が0.2質量%となる量とした以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
[実施例5]
純水の噴霧量を1質量%とした以外は実施例4と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
[実施例6]
純水の噴霧量を5質量%とした以外は実施例4と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
[実施例7]
純水の噴霧量を10質量%とした以外は実施例4と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
[実施例8]
純水の噴霧量を20質量%とした以外は実施例4と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
[実施例9]
タングステン酸ニッケルの添加量をリチウム金属複合酸化物全体に対してタングステン量が0.7質量%となる量とした以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
[実施例10]
タングステン酸ニッケルの添加量をリチウム金属複合酸化物全体に対してタングステン量が1.0質量%となる量とした以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
[実施例11]
タングステン酸ニッケルの添加量をリチウム金属複合酸化物全体に対してタングステン量が0.2質量%となる量とし、純水を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
[実施例12]
タングステン酸ニッケルの添加量をリチウム金属複合酸化物全体に対してタングステン量が0.5質量%となる量とし、純水の噴霧量を2質量%とした以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
[比較例1]
タングステン酸ニッケルの添加および純水を噴霧しなかった以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
[比較例2]
リチウム金属複合酸化物(母材)に、Li1.20Ni0.35Co0.35Mo0.300.0048で表されるリチウム金属複合酸化物(W:0.9質量%含有)を用い、かつ、タングステン酸ニッケルを添加しなかった以外は実施例2と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
[比較例3]
タングステン酸ニッケルの添加および純水を噴霧しなかった以外は実施例1と同様にして、非水系電解質二次電池用正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行い、その結果を表1に示す。
Figure 2019133839
[評価結果]
実施例で得られた正極活物質は、ゲル化が抑制され、タングステンを含有しない比較例と同程度、又は、より高い初期充放電容量、正極抵抗、及び、充放電サイクル特性を示すことが示された。特に、リチウム金属複合酸化物(母材)にタングステンを含む実施例2〜10では、初期充放電容量、正極抵抗、及び、充放電サイクル特性が良好であった。なお、XRDにより、実施例で得られた正極活物質では、酸化タングステンが検出されず、タングステン酸リチウムのみが検出されることを確認した。
なお、正極活物質の表面に存在する、0.5μm以上のタングステン酸リチウムの面積割合が5%を超える実施例1では、正極活物質中のタングステン量が同一であるが、面積割合が5%以下の実施例4と比較して、正極抵抗がやや低下した。
一方、タングステン酸ニッケルを添加しない比較例1〜3で得られた正極活物質では、正極合剤ペーストのゲル化が観察された。
また、水の添加量が同じ実施例4と比較例2とで得られた正極活物質を比較した場合、正極活物質中のタングステン量が同一であるが、実施例で得られた正極活物質の方が、比較例で得られた正極活物質よりも、より高い初期放電容量と、正極抵抗を示した。よって、本実施形態の製造方法を用いて得られる正極活物質は、少ないタングステン使用量で、より高い電池特性を有することができることが示された。
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。
1…一次粒子
2…二次粒子
3…タングステン酸リチウム
3a…タングステン酸リチウム(母材由来)
4…乾燥後のリチウム金属複合酸化物
10、10A、10B…正極活物質
CBA……コイン型電池
CA……ケース
PE……正極
NE……負極
GA……ガスケット
PE……正極
NE……負極
SE……セパレータ

Claims (15)

  1. リチウム金属複合酸化物と、タングステン酸ニッケルとを混合すること、を備え、
    前記リチウム金属複合酸化物は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及び、任意に金属元素M1を含み、かつ、それぞれの金属元素の原子数比がLi:Ni:Co:M1=s:(1−x−y):x:y(ただし、1.00≦s≦1.30、0.10≦x≦0.35、0≦y≦0.35、金属元素M1は、Mn、W、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表される、
    非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  2. 前記リチウム金属複合酸化物と、前記タングステン酸ニッケルと、水とを混合すること、を備える、請求項1に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  3. 前記リチウム金属複合酸化物と前記タングステン酸ニッケルとを混合して得られた粉末混合物に、前記水を、液滴の平均粒径が100μm以下の霧状態となるように噴霧して混合すること、を備える、請求項2に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  4. 前記混合により得られた混合物を乾燥すること、を備える、請求項2又は3に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  5. 水の存在下、前記リチウム金属複合酸化物に含まれるリチウムイオンと、前記タングステン酸ニッケルの少なくとも一部とが反応して、タングステン酸リチウムが形成されること、を備える、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  6. 前記混合により得られた混合物は、前記リチウム金属複合酸化物全体に対して、水を0.1質量%以上含む、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  7. 前記混合により得られた混合物は、前記リチウム金属複合酸化物全体に対して、タングステンを0.2質量%以上1.0質量%以下含む、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  8. 乾燥後の前記リチウム金属複合酸化物の粒子表面にタングステン酸リチウムが存在し、
    走査型電子顕微鏡を用いた前記粒子の表面の観察から求められる、前記粒子の表面に存在する粒径0.5μm以上のタングステン酸リチウムの面積割合が、前記観察面全体の面積に対して、5%以下である、請求項4に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  9. 乾燥後の前記リチウム金属複合酸化物は、比表面積が0.5cm/g以上2m/g以下である、請求項4に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  10. 乾燥後の前記リチウム金属複合酸化物は、300℃におけるカールフィッシャー水分率が0.05質量%以上0.2質量%以下である、請求項4に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  11. 乾燥後の前記リチウム金属複合酸化物は、体積平均粒径MVが4μm以上6μm以下である、請求項4に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  12. タングステンを含むリチウム金属複合酸化物と、タングステン酸ニッケルと、水とを混合することと、前記混合により得られた混合物を乾燥すること、を備え、前記タングステンを含むリチウム金属複合酸化物は、リチウム金属複合酸化物全体に対して0.1質量%以上1.0質量%以下含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  13. 前記タングステン酸ニッケルは、前記リチウム金属複合酸化物全体に対して、タングステンを0.1質量%以上0.5質量%以下含む、請求項12に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  14. 乾燥後の前記リチウム金属複合酸化物の粒子表面にタングステン酸リチウムが存在し、
    前記粒子表面に存在するタングステン量が、正極活物質全体に対して、0.1質量%以上1.0質量%以下であり、かつ、乾燥後の前記リチウム金属複合酸化物の粒子の内部に存在するタングステン量が、正極活物質全体に対して、0.1質量%以上1.0質量%以下である、請求項12又は請求項13に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  15. 乾燥後の前記リチウム金属複合酸化物の粒子表面に存在するタングステン量が、前記粒子内部に含まれるタングステン量に対して0.1倍以上1倍以下である、請求項12〜請求項14のいずれか一項に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。

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