JP2019131763A - イオン性基を有するポリマーの製造方法 - Google Patents

イオン性基を有するポリマーの製造方法 Download PDF

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Mitsuki Okazaki
光樹 岡崎
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貴行 塙
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Abstract

【課題】本発明は、イオン性基を有するポリマーを製造する際の微小粒子の生成を抑制することにより、生産性の向上と品質向上を図ることを目的とする。【解決手段】イオン性基含有ポリマーの製造方法であって、攪拌槽中において攪拌翼を用いて液を攪拌する工程を含み、前記攪拌する工程が、前記イオン性基を含有するモノマーの重合を行う反応工程、および/または、前記イオン性基含有ポリマーの晶析を行う晶析工程に於いて行われ、前記反応工程においては、前記液が前記モノマーおよび/または前記イオン性基含有ポリマーを含み、前記晶析工程においては、前記液が前記イオン性基含有ポリマーを含み、且つ、前記液の、前記攪拌槽における当該液の中心を通る縦軸方向の断面積をA0とし、前記攪拌翼の表面積のうち、当該攪拌翼が前記液に浸漬している部分の1/2面積に相当する面積をA1としたときに、A1/A0が0.10以上0.90以下の関係を満たす、粒径が3μm以上の粒子の形状を有するイオン性基含有ポリマーの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、イオン性基を有するポリマー、特にスルホン酸基を有するポリマーの製造方法に関するものであり、該製造方法で得られたイオン性基を有するポリマーは防曇性、防汚性、および帯電防止性を備え、耐摩耗性、および耐候性に優れた親水性硬化物(例えば、該硬化物からなる膜)の原材料として好適に用いられる。
近年、プラスチック表面、ガラス表面などの基材表面に発生する曇り、汚れに対する改善要求が強まっている。
曇りの問題を解決する方法として、アクリル系オリゴマーに反応性界面活性剤を加えた防曇塗料が提案されており、この防曇塗料から得られる硬化物(例えば、該硬化物からなる膜)は親水性と吸水性が向上するとされている(非特許文献1)。また、汚れの問題を解決する方法として、例えば、表面の親水性を向上させて、外壁等に付着した汚れ(外気疎水性物質等)を降雨または散水等によって浮き上がらせて効率的に除去するセルフクリーニング性(防汚染性)を有する防汚染材料が注目されている(非特許文献2、3)。
本発明者らは、これらの「曇り」および「汚れ」の課題を解決するための提案としてスルホン酸基に代表されるイオン性親水基を有するポリマーを用いて表面にスルホン酸基が傾斜(集中化)した硬化物を提案している(特許文献1〜4)。これらの発明によって得られる硬化物(例えば、膜)は、透明で親水性が高く、防曇性、防汚性、帯電防止性、速乾性(付着水の乾燥速度が速さ)に優れ、さらに硬くて耐擦傷性にも優れる。
上記とは別の用途として、重合性二重結合基、シラノール基、およびスルホン酸基を有するポリマーをネガ型感光印刷版の感光層に用いる提案も行われている(特許文献5)。
上記の特許文献1〜5に於いてはスルホン酸基を有するポリマーの製造も実施されている。
国際公開第2013/054877号公報 国際公開第2014/168122号公報 国際公開第2014/168123号公報 国際公開第2016/017619号公報 特開2013−020103号公報
東亜合成研究年報、TREND1999年 2月号、39〜44頁 高分子,44(5),307頁、1995年 未来材料,2(1),36−41頁、2002年
前記特許文献1〜5によれば、「曇り」および「汚れ」の課題を解決するための材料およびネガ型感光印刷版の感光層用の材料等として有用なスルホン酸基を持ったポリマーが確かに製造されているが、必ずしも目的のポリマーが効率的に製造され且つ充分な品質が不変的に確保されている訳ではなかった。例えば、特許文献5に於いては、酢酸エチル或いはメタノール等の貧溶媒を用いて析出させたポリマーを、濾別せずデカンテーションにて取り出しを行っているため煩雑で収率も高くない(55〜80%)ため決して効率的とは言えない。例えば、特許文献1〜4に於いては、濾別で取出しているが突発的に濾過速度が遅くなったり止まったりして急激に生産性が低下したり、或いは得られたポリマーが添加された硬化用組成物を硬化して得られた硬化物中にブツ(seeding)が発生(外観不良)することもあり、高品質のイオン性基(代表的にはスルホン酸基)を有するポリマーが安定的に製造できているとは言い難かった。即ち、イオン性基(代表的にはスルホン酸基)を有するポリマーを製造する方法の効率化と得られたポリマーの高品質化が求められていた。
そこで、本発明は、イオン性基を有するポリマーを製造する際の微小粒子の生成を抑制することにより、生産性の向上と品質向上を図ることを目的とする。
本発明者らは上記課題に鑑み検討を重ねた結果、生産性の低下と品質不良をもたらす原因が析出するポリマーの粒径にあることを見出した。即ち、イオン性基を有するポリマーは析出する際に粒径が小さくなり易く、特に粒径3μm未満のポリマーが混在すると急激に濾過速度が低下し硬化物中にブツが発生し易くなることを突き止めるとともに、貧溶媒中で翼面積の大きな攪拌翼(反応および/または晶析液に対して)を用いれば、弱いせん断力で反応液全体を攪拌できるため、問題となる粒径が3μm未満のポリマーの生成を抑制できることをも見出し本発明に到達した。
即ち、本発明は、以下の[1]〜[15]に関する。
[1]
イオン性基含有ポリマーの製造方法であって、
攪拌槽中において攪拌翼を用いて液を攪拌する工程を含み、
前記攪拌する工程が、
前記イオン性基を含有するモノマーの重合を行う反応工程、および/または
前記イオン性基含有ポリマーの晶析を行う晶析工程
に於いて行われ、
前記反応工程においては、前記液が前記モノマーおよび/または前記イオン性基含有ポリマーを含み、
前記晶析工程においては、前記液が前記イオン性基含有ポリマーを含み、且つ、
前記液の、前記攪拌槽における当該液の中心を通る縦軸方向の断面積をA0とし、前記攪拌翼の表面積のうち、当該攪拌翼が前記液に浸漬している部分の1/2面積に相当する面積をA1としたときに、A1/A0が0.10以上0.90以下の関係を満たす、
粒径が3μm以上の粒子の形状を有するイオン性基含有ポリマーの製造方法。
[2]
前記イオン性基含有ポリマーが、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)を含む組成物を重合して得られるポリマーである[1]に記載の製造方法。
[3]
前記組成物が、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)および/またはアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)をさらに含む[2]に記載の製造方法。
[4]
前記イオン性基含有ポリマーを構成する全構成単位の数に対する、前記イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位の数の割合が40〜100%の範囲である[2]または[3]に記載の製造方法。
[5]
前記攪拌翼が、アンカー翼、リボン翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、スーパーミックス翼、HI−Fミキサー翼、およびフルファインミックス翼から選ばれる1種である[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]
前記攪拌翼の最先端での回転接線速度が0.1〜30m/secである[5]に記載の製造方法。
[7]
前記反応工程および/または前記晶析工程において、イオン性基含有ポリマーの貧溶媒としてアルコールまたはアルコールと水との混合溶媒を用いる[6]に記載の製造方法。
[8]
前記反応工程で用いる反応溶媒及び/または前記晶析工程で用いる晶析溶媒として、アルコールまたはアルコールと水との混合溶媒を用いる[7]に記載の製造方法。
[9]
前記イオン性基がスルホン酸基である[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]
[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法で得られるイオン性基含有ポリマー。
[11]
[10]に記載のイオン性基含有ポリマーを含む硬化性組成物を硬化して得られる硬化物のイオン性基傾斜度(Sa/Sb)が1.1以上である硬化物。
[12]
硬化物の水接触角が30°以下である[11]に記載の硬化物。
[13]
[11]または[12]に記載の硬化物からなる、厚さが0.001〜1000μmの膜。
[14]
[11]または[12]に記載の硬化物からなる層を少なくとも1つ有する積層体。
[15]
用途が光学物品である[14]に記載の積層体。
本発明により高品質のイオン性基を含有するポリマーを効率良く製造でき、且つ該ポリマーを含む硬化性組成物を硬化して得られる硬化物は、ブツのない良好な外観を有する。こうして得られた硬化物は親水性に優れ「曇り」および「汚れ」の課題を解決する成型体、膜、及び積層体等として好適に用いることができる。
本発明で規定するA1の説明のために例示した、平板状の翼P1を有する攪拌翼B1を表す模式図である。 本発明で規定するA1の説明のために例示した、第1の平板状の翼P21と第2の平板状の翼P22とを有する攪拌翼B2を表す模式図である。 本発明で規定するA1の説明のために例示した、第1の傾斜翼P31と第2の傾斜翼P32とを有する攪拌翼B3を表す模式図である。 実施例で得られたサンプルにおける傾斜度を測定する際の、サンプルの切断方法およびスルホン酸濃度測定部位を表す模式図である。 実施例1で用いられた反応容器(攪拌槽)と攪拌翼と重合反応中の反応液の断面積とを表す模式図である。 実施例1で得られた、重合反応後の反応液における粒度分布を表すチャートである。ここで、本チャート中、棒グラフは、サンプルに含まれる粒子のうち、各粒径を有するものの頻度を表し、曲線は、サンプルに含まれる粒子の合計に対する、各粒径以下の粒子の累積量の割合を表す。 比較例1で用いられた反応容器(攪拌槽)と攪拌翼と重合反応中の反応液の断面積とを表す模式図である。
[イオン性基含有ポリマーの製造方法]
<反応工程・晶析工程>
本発明に係るイオン性基含有ポリマーの製造方法は、攪拌槽中において特定の大きさの攪拌翼を用いて液を攪拌する工程を含んでいる。ここで、このような液を攪拌する工程は、下記反応工程および/または晶析工程で行われる。
反応工程
本発明の対象となるイオン性基含有ポリマーは、イオン性基を含有するモノマーを重合して得られるイオン性基含有ポリマーである。
このようなイオン性基含有ポリマーの製造方法を構成しうる工程の1つとして、そのようなポリマーを構成するイオン性基を含有するモノマーの重合を行う反応工程(以下、単に「反応工程」と呼ばれる場合がある。)が挙げられる。すなわち、イオン性基含有ポリマーとしてイオン性基Jを含有するポリマーを製造する場合、当該反応工程としてイオン性基Jを含有するモノマーの重合反応が行われる。この重合反応は、イオン性基Jを含有するモノマーの単独重合として行われることもあるし、あるいは、イオン性基Jを含有するモノマーと、当該「イオン性基Jを含有するモノマー」以外の第2のモノマーとの共重合として行われることもある。このような重合反応の結果、イオン性基Jを含有するモノマーに対応する構成単位を複数有するポリマーが、イオン性基含有ポリマーとして得られることになる。このようなポリマーには、当該第2のモノマーに対応する構成単位が含まれる場合もある。
なお、以下の記載において、「モノマー」なる語は、特に別途の記載がない限り、イオン性基を含有するモノマーに限らず、重合反応の出発物質として用いられるモノマー全般を指し、例えば、前記第2のモノマーも包含しうる。
いずれにしても、イオン性基含有ポリマーの製造方法において、このような反応工程は通常液相中で行われ、多くの場合溶媒存在下で行われる。例えば、イオン性基含有ポリマーとしてイオン性基Jを含有するポリマーを製造する場合、この反応工程は、具体的には、上記イオン性基Jを含有するモノマーおよびオプショナルの上記第2のモノマーと溶媒とからなるモノマー溶液に、重合開始剤を加えて重合性組成物を得、この重合性組成物中でこれらのモノマーを対応するポリマーに変換させる段階を含むことになる。ここで、本発明の典型的な態様において、「モノマー」としてラジカル重合性モノマーが採用され、重合開始剤としてラジカル重合性モノマーが採用される。このとき、このラジカル重合性モノマーには、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)が含まれる。なお、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)等のラジカル重合性モノマー、並びに、本発明で用いうる重合開始剤についての詳述は、後記で行うこととする。
このような反応工程を行う際、重合反応が均一に行われるよう、攪拌が行われうる。この場合、攪拌が行われる液は、反応初期においては、モノマー(例えば、上記イオン性基Jを含有するモノマーおよびオプショナルの上記第2のモノマー)を含み、重合反応が進行するにつれ、反応の中盤以降は、イオン性基含有ポリマー(例えば、イオン性基Jを含有するポリマー)をも含みうることになる。ここで、典型的な態様において、この重合反応は、溶媒存在下で行われ、このとき用いられる溶媒として、イオン性基を含有するモノマー等の溶解性がある程度良好な溶媒が用いられる。
このように、反応工程における攪拌翼による攪拌は、まさにこの重合反応の際に行われる攪拌として行われる。重合反応により生成するポリマー(以下「生成ポリマー」)は、反応の進行に伴い次第に分子量が大きくなることから、一般に、対応するモノマーに比べて溶解性が低下する傾向にある。ここで、重合反応を行う溶媒として、モノマーの溶解性はある程度良好であるが生成ポリマーの溶解性に乏しい溶媒を用いる場合、重合反応により最終的に得られたポリマーを、結晶その他の固形物として析出させ、濾過その他の固液分離操作を行うことにより単離することができる。したがって、当該ポリマーを最も簡便にイオン性基含有ポリマーとして単離することができることになる。このとき、析出する上記固形物が粒子の形態を有するよう、攪拌翼による攪拌が行われうる。
晶析工程
本発明に係るイオン性基含有ポリマーの製造方法を構成しうるもう一つの工程として、晶析工程が挙げられる。
この晶析工程は、
イオン性基含有ポリマーと溶媒とを含む溶液を冷却することによって、あるいは、
イオン性基含有ポリマーと第1の溶媒とを含む溶液に、当該第1の溶媒と比べて当該イオン性基含有ポリマーを溶解しにくい第2の溶媒を添加することによって、
当該イオン性基含有ポリマーを、結晶その他の固形物として析出させ、濾過その他の固液分離操作により、この固形物をイオン性基含有ポリマーとして単離する工程である。
ここで、前記析出がイオン性基含有ポリマーと溶媒とを含む溶液の冷却によって行われる場合、当該溶媒として、高温では当該イオン性基含有ポリマーの溶解性が良好であり、且つ、低温では当該イオン性基含有ポリマーの溶解性に乏しい溶媒が用いられる。
一方、前記析出が第2の溶媒の添加により行われる場合、第1の溶媒として、当該イオン性基含有ポリマーの溶解性が良好な溶媒が用いられる。
また、晶析工程で用いられる前記溶液は、前記反応工程における重合反応で得られた反応混合物であってもよく、あるいは、一度単離されて固形物の状態となっているイオン性基含有ポリマーを新たに溶媒(あるいは、第1の溶媒)に溶解して得られるものであってもよい。このうち、前記溶液として前記反応工程で得られた反応混合物が用いられる場合についての具体的な態様として、上記反応工程における重合反応を第1の溶媒中で行い、反応終了後、当該重合反応により得られる反応混合物に、当該第1の溶媒と比べて当該イオン性基含有ポリマーを溶解しにくい第2の溶媒を添加する場合が挙げられる。ただ、当該第2の溶媒の添加は、実際には、第2の溶媒に対して前記反応混合物を注ぎ入れる態様によって行ってもよい。
この晶析工程においても、析出する上記固形物が粒子の形態を有するよう、攪拌翼による攪拌が行われうる。この場合、攪拌が行われる液には、イオン性基含有ポリマー(例えば、イオン性基Jを含有するポリマー)が、より厳密には、イオン性基含有ポリマーと溶媒(第2の溶媒が併用される場合にあっては第1の溶媒)とが含まれる。
本発明のイオン性基含有ポリマーの製造方法で取り扱う「液を攪拌する工程」は、上述したような反応工程および/または晶析工程において行われる攪拌が対象となる。本発明のイオン性基含有ポリマーの製造方法は、反応工程および/または晶析工程に於いて、翼面積の大きな攪拌翼、具体的には下記「攪拌翼」の項で次述する攪拌翼、を用いることにより、生産性の低下と品質不良をもたらす粒径3μm未満のポリマーの生成を抑制することができる。すなわち、本発明の製造方法は、粒径が3μm以上の粒子からなる形状を有するイオン性基含有ポリマーの製造方法ということができる。
<攪拌翼>
本発明に係るイオン性基含有ポリマーの製造方法では、液の攪拌を行う工程に用いられる攪拌翼として、特定の大きさを有する攪拌翼が採用される。具体的には、攪拌槽における液の中心を通る縦軸方向の断面積(以下これを「液の断面積」とも表現する)をA0とし、攪拌翼の攪拌面積をA1としたときに、A1/A0が0.10以上0.90以下の関係を満たすような攪拌翼が選択される。これにより、上記反応工程および/または晶析工程において得られるイオン性基含有ポリマーが、粒径が3μm以上の粒子からなる形状を有することができるのである。この「攪拌面積」についての説明は、図1A〜1Cを併用しつつ下記で行う。なお、本発明において、このA1/A0は、攪拌によって生じる遠心力による液面変形を考慮しない状態、すなわち、攪拌翼が静止した状態を基準に定めるものとする。
ここで、本発明において「縦軸方向」とは、攪拌翼の回転軸に平行な方向である。また、攪拌翼について「高さ」とは攪拌翼の回転軸に平行な方向の寸法をいう。
前記「液の断面積」(すなわち、A0)の基準となる液は、上記反応工程においては、イオン性基を含有するモノマーその他の原材料が全て挿入された反応液、上記晶析工程においては、イオン性基含有ポリマーと溶媒等を含む晶析液である。
攪拌翼についての「攪拌面積」とは、攪拌に用いる攪拌翼の表面積のうちの、液の攪拌に寄与している部分の面積を指す。ここで、攪拌に用いる攪拌翼として、回転接線方向に対して垂直な平面を有し、且つ、翼径および翼の高さに対する回転接線方向の厚みが十分に無視できる平板状の攪拌翼を用いる場合、液の攪拌に寄与している部分の面積は、その攪拌翼の表面積のうち、当該攪拌翼が液に浸漬している部分の1/2となる。例えば、図1Aに示された平板状の翼P1を有する攪拌翼B1では、P1の表面積のうち液に浸漬している部分の面積をAi1とすると、P1の厚さを0と近似したときにAi1のうち液の攪拌に寄与している部分の面積はAi1/2と見積もることができる。このような攪拌翼B1の場合、このAi1/2が本発明でいう「攪拌面積」となる。本発明では、同様のことは大抵の攪拌翼において当てはまるとの推定のもと、攪拌翼の表面積のうち、当該攪拌翼が前記液に浸漬している部分の1/2に相当する面積をもって「攪拌面積」としている。
ここで、攪拌に用いる攪拌翼として、回転接線方向に対して垂直な平面を有し、且つ、翼径および翼の高さに対する回転接線方向の厚みが十分に無視できる平板状の翼を2以上有してなる攪拌翼の場合、その攪拌翼を構成する各平板状の翼について液に浸漬している部分の1/2の面積を求め、これらの合計の面積を以て「攪拌面積」とすることができる。ここで、このような攪拌翼を構成する2以上の平板状の翼が、縦軸を中心として互いに0°でない交差角を以て配されている場合や、高さ方向に重複している場合にも同様と考えることができる。例えば、図1Bに示された第1の平板状の翼P21と第2の平板状の翼P22とを有する攪拌翼B2では、P21およびP22の表面積のうち液に浸漬している部分の面積をそれぞれAi21およびAi22とすると、(Ai21/2)+(Ai22/2)が本発明でいう「攪拌面積」となる。
一方、攪拌に用いる攪拌翼が、例えば、傾斜翼または後退翼である場合、並びに、翼径または翼の高さに対する回転接線方向の厚みが無視できない程度に大きい場合等、上記平板状の攪拌翼と同視することが困難な形状を有する場合、攪拌翼の表面積のうち、当該攪拌翼が液に浸漬している部分の1/2の面積に代えて、その攪拌翼を前記縦軸方向に対して垂直な方向から見たときの、当該攪拌翼が液に浸漬している部分の最大投影面積を以て「攪拌面積」とする。それを除けば、2以上の翼を有する攪拌翼の場合を含めて、上記翼径および翼の高さに対する回転接線方向の厚みが十分に無視できる平板状の攪拌翼を用いる場合、および、回転接線方向に対して垂直な平面を有し、且つ、翼径および翼の高さに対する回転接線方向の厚みが十分に無視できる平板状の翼を2以上有してなる攪拌翼の場合と同様に取り扱うことができる。例えば、図1Cに示された第1の傾斜翼P31と第2の傾斜翼P32とを有し、且つ、P31およびP32がともに、回転の接線方向に対する傾斜角θをもって傾斜している攪拌翼B3では、P31およびP32の表面積のうち液に浸漬している部分の面積をそれぞれAi31およびAi32とすると、(Ai31×sinθ)/2+(Ai32×sinθ)/2が本発明でいう「攪拌面積」となる。ここで、図1C中、一点破線は、回転の接線方向を表す。なお、θが90°の場合(すなわち、P31およびP32の傾きが、回転接線方向に対して垂直となる場合)、この攪拌翼B3は、図1Aに示された攪拌翼B1と同等になる。また、ヘリカルリボン翼のように、縦軸を中心とする円周方向に連続的な傾斜平面を有する攪拌翼の場合、その攪拌翼を一定高さ毎に複数の微小傾斜翼に分割し、当該複数の微小傾斜翼のそれぞれについて個別に最大投影面積を求め、これらの合計を以てその攪拌翼の「攪拌面積」とすることになる。
なお、攪拌翼のシャフト部分の面積は、ここでいう「攪拌面積」に含まれないものとする。
ここで、前記A1/A0は、好ましくは攪拌0.20以上0.80以下の範囲、さらに好ましくは0.30以上0.80以下の範囲、最も好ましくは0.40以上0.70以下の範囲である。本発明の典型的な態様では、攪拌翼による攪拌は、回転軸が鉛直方向となる態様で行われる。ただし、攪拌翼の回転軸は、厳密な鉛直方向に限られるものでなく、本発明の目的を達成できる限り、多少の傾きがあってもかまわない。また、攪拌槽における攪拌翼の水平方向の位置について見ると、攪拌翼は、本発明の典型的な態様では攪拌槽の中心に位置しているが、本発明の目的を達成できる限り、攪拌槽に対して多少偏心していてもかまわない。
また、「液の断面積」の基準となる面は、攪拌槽における液の中心を通るものとし、且つ、攪拌翼の回転軸に平行な方向となるように決定されるところ、当該「回転軸に平行な方向」を定めるときの角度によって「液の断面積」が変わることがある。このようなことは、特に、攪拌槽が円筒形でない形状(例えば、直方体の形状)の場合に起こりうる。このような場合にも、「液の断面積」は基本的には同様に決定することができる。ただし、この場合には、「液の断面積」のうちの最小のものをA0とする。具体的には、A0は、以下のように求めることができる:(i) 攪拌翼の回転角をθとし、回転軸を含む平面のうち、ある1つのθの方向およびこれと正反対の方向に伸びる平面で攪拌槽中の液を切断したときの切断面の面積を、そのθでの「液の断面積」とする;(ii) θ=0〜180°の範囲内で一定角度おきにθを変えながら、複数のθにおいて前記「液の断面積」をそれぞれ求める;(iii) 前記(ii)で得られた各「液の断面積」をもとに、回転角θに対する「液の断面積」の変化を表すグラフを作成する;(iv) 前記(iii)で得られたグラフから求められる「液の断面積」の最小値をA0とする。
用いられる攪拌翼の形状に制限はなく、上記A1/A0を満たすような攪拌面積を有する限り如何なる形状の攪拌翼でも構わない。一般的に好ましく用いられる攪拌翼を挙げるならば、例えば、アンカー翼、リボン翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、スーパーミックス翼、HI−Fミキサー翼、およびフルファインミックス翼等が挙げられる。これらの中でより好ましい攪拌翼としては、例えば、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、スーパーミックス翼、HI−Fミキサー翼、およびフルファインミックス翼が挙げられ、さらに好ましい攪拌翼としてはマックスブレンド翼またはフルゾーン翼が挙げられる。
攪拌速度は、攪拌翼の径によらず攪拌翼最先端の回転接線速度で0.1〜30m/secの範囲が一般的に用いられるが、好ましくは0.1〜10m/secの範囲、より好ましくは0.15〜6m/secの範囲、最も好ましくは0.2〜4m/secの範囲が用いられる。
回転数については撹拌翼の直径に応じて好ましい範囲が変動するため特に限定できないが、例えば、直径1.9mの撹拌翼の場合、回転数は1〜300rpmの範囲が一般的に用いられるが、好ましくは1〜100rpmの範囲、より好ましくは1.5〜60rpmの範囲、最も好ましくは2〜40rpmの範囲が挙げられる。
直径0.16m(16cm)の撹拌翼の場合、好ましくは10〜1200rpmの範囲、より好ましくは20〜700rpmの範囲、最も好ましくは25〜500rpmの範囲が挙げられる。
また、攪拌に用いる攪拌槽の形状についても特に制限はないが、本発明の典型的な態様では、攪拌槽として、例えば、円筒形あるいはこれに類する形状のものが好適に用いられる。ここで、攪拌槽は、その内側に、攪拌翼の回転を妨げない限り、適当な大きさおよび形状のバッフル(邪魔板)を有していてもかまわない。
<溶媒>
上述したように、上記反応工程は、本発明の典型的な態様において溶媒存在下で行われる。ここで、本発明の好適な態様の1つにおいて、重合反応を行う溶媒(以下「反応溶媒」とも呼ばれる場合がある。)として、イオン性基を含有するモノマー等の溶解性はある程度良好であるが、イオン性基含有ポリマーの溶解性に乏しい溶媒が用いられる。また、本発明の別の好適な態様では、重合反応を行う溶媒としてモノマーの溶解性が良好な第1の溶媒が用いられ、その後イオン性基含有ポリマーを析出させるために、当該第1の溶媒と比べて当該ポリマーを溶解しにくい第2の溶媒が併用される。
一方、上記晶析工程では、上述したように、
イオン性基含有ポリマーと溶媒とを含む溶液を冷却することによって、あるいは、
イオン性基含有ポリマーと第1の溶媒とを含む溶液に、当該第1の溶媒と比べて当該イオン性基含有ポリマーを溶解しにくい第2の溶媒を添加することによって、
当該イオン性基含有ポリマーを結晶その他の固形物として析出させることになる。ここで、前記溶液は、前記反応工程における重合反応で得られた反応混合物であっても良い。例えば、上記反応工程における重合反応を第1の溶媒中で行った場合、当該重合反応により得られる反応混合物に、当該第1の溶媒と比べて当該ポリマーを溶解しにくい第2の溶媒を添加することにより、晶析工程を行ってもよい。
なお、本明細書において、この晶析工程を行う溶媒を「晶析溶媒」と呼ぶ場合がある。
これらを踏まえると、本発明の反応工程および/または晶析工程に於いては、通常、モノマーに対してはある程度溶解性を有するもののポリマーに対しては溶解性が低くなる貧溶媒が用いられる。ここで、反応工程および/または晶析工程において上記第1の溶媒と上記第2の溶媒とが用いられる場合、この貧溶媒は、当該第2の溶媒として用いられることになる。一方、反応工程および/または晶析工程において上記第2の溶媒を併用しない場合、この貧溶媒は、上記反応溶媒および/または晶析溶媒として用いられることになる。なお、晶析溶媒として貧溶媒が用いられる場合、この貧溶媒として、イオン性基含有ポリマーを析出させる温度よりも高い温度においてイオン性基含有ポリマーの溶解性がある程度良好な溶媒が用いられる。
用いられる貧溶媒としては上記の条件を満たせば如何なるい溶媒でも構わない。その貧溶媒の中でも好ましく用いられる溶媒としては、例えば、
メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコール、n−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、n−デカノール、2−メトキシ−エタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−メトキシ−プロパノール、2−エトキシプロパノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ポリ−1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン等のアルコール類、
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、スクシノニトリル等のニトリル類、
ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミド類、および、
N,N−ジメチルイミダゾリジノン等の環状尿素類、
並びに、これらのうちの1種以上と水との混合溶媒などが挙げられる。本発明では、これらのうちアルコール類またはアルコール類と水との混合溶剤が、貧溶媒として好ましい。水との混合溶媒を貧溶媒として用いる場合、水の含有量は50重量%未満が好ましく、より好ましくは30重量%未満であり、さらに好ましくは10重量%未満である。
また本発明に於いて、ポリマーに対して溶解性が高い親溶媒と貧溶媒を併用してもよい。これは、反応工程および/または晶析工程において上記第1の溶媒と上記第2の溶媒とが用いられる場合にあたり、上記第1の溶媒として親溶媒が、上記第2の溶媒として上記貧溶媒が用いられる。例えば、反応工程では親溶媒を用いて均一系で重合を完了し、晶析工程で貧溶媒に反応液を装入して析出したポリマーを濾過して取り出しても良い。例えば、濾別して得られたポリマーを再び親溶媒に溶解し貧溶媒中へ再度装入して析出したポリマーを濾過して取り出しても良い。
このように親溶媒として用いられる溶媒としては、イオン性基を有するポリマーを溶解せしめる溶媒であれば如何なる溶媒でも構わない。その親溶媒中でも好ましく用いられる溶媒としては、例えば、水、貧溶媒としても上記で挙げられたアルコール類、およびそれらの混合溶媒が挙げられる。水との混合溶媒を親溶媒として用いる場合、水の含有量は少なくとも50重量%以上が好ましく、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは75重量%以上であり、最も好ましくは90重量%以上である。
以上のように親溶媒および貧溶媒について説明したが、親溶媒と貧溶媒との区別は、イオン性基を有するポリマーの構成によって変わりうる相対的なものである。例えば、あるイオン性基を有するポリマーとの関係では親溶媒として用いられる溶媒であっても、別のイオン性基を有するポリマーとの関係では貧溶媒として用いられる可能性もある。また、同一の構成成分からなる混合溶媒であっても、ある混合比での混合溶媒が親溶媒となり、別の混合比での混合溶媒が貧溶媒となる場合もありうる。
また、これらの溶媒を重合反応に用いる場合、特にラジカル重合反応に用いる場合は、酸素阻害の影響を排除する目的で、重合反応に先立ち、当該溶媒につき、減圧、超音波照射、或いは窒素バブリング等によって脱酸素操作(以下脱ガスとも表す)を行った方が好ましい傾向にある。
<イオン性基含有ポリマー>
本発明の製造方法によれば高い生産性と優れた品質をもたらす粒径3μm以上の粒子からなるイオン性基含有ポリマーを製造することができる。
本発明で得られるイオン性基含有ポリマーは、前記イオン性基を含有するモノマーを重合して得られるポリマーである。例えば、本発明の製造方法に従って、イオン性基Jを含有するモノマーおよびオプショナルの上記第2のモノマーを重合する場合、当該重合により得られるポリマー(すなわち、イオン性基Jを含有するポリマー)が「イオン性基含有ポリマー」となる。
本発明の典型的な態様において、イオン性基含有ポリマーは、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)を含む重合性組成物(以下「重合性組成物」)を重合して得ることができる。ここで、本発明の製造方法が反応工程に適用される場合、この重合性組成物は、イオン性基含有ポリマーを構成するモノマー(以下「構成モノマー」)、重合開始剤および上記溶媒からなる。
ここで、この重合性組成物には、構成モノマーとして、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)以外のラジカル重合性モノマー(以下、「その他のラジカル重合性モノマー」)をさらに含んでいてもよい。本発明の好適な態様では、この重合性組成物には、「その他のラジカル重合性モノマー」として、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)および/またはアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)がさらに含まれている。また、この重合性組成物には、構成モノマーとして、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)およびアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)のいずれにも該当しないラジカル重合性モノマーがさらに含まれていても良い。
なお、本明細書における以下の記載では、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)およびアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)のいずれにも該当しないラジカル重合性モノマーを、「ラジカル重合性モノマー(D)」と呼ぶことにする。
以下の記載で、この重合性組成物を構成するイオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)、ラジカル重合性モノマー(D)、および重合開始剤、並びに、反応工程としてこれらのモノマーの重合を行う場合の反応条件についてさらに具体的に説明する。
イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)
イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)(以下、単に「ラジカル重合性モノマー(A)」と呼ばれる場合がある。)としては、1分子内に炭素−炭素二重結合基とイオン性基を有する構造であれば如何なる構造の化合物であっても良い(但し、エポキシ基とアルコキシシリル基が結合した化合物は除かれる)。ここでイオン性基とは水中でイオンの形態をとる官能基を表すが、具体的には、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、およびリン酸基等のアニオン性基、4級アンモニウム基等のカチオン性基、および両性イオン基等が挙げられる。これらイオン性基の中では、スルホン酸基、リン酸基、4級アンモニウム基、および両性イオン基が好ましく、スルホン酸基および両性イオン基がより好ましく、スルホン酸基が最も好ましい。
言い換えると、本発明で用いられるイオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)は、アニオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A1)、カチオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A2)、および、両性イオン基を有するラジカル重合性モノマー(A3)に大別されることになる。
本発明の好適な態様の1つにおいて、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)は、下記式(1’)で表される構造を有している。
Figure 2019131763
(上記式(1')において、Rは、水素原子またはメチル基を表す。nは、0または1を表す。
Yは、
スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、および、それらのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、並びに、4級アンモニウムハライド基、ホスホリルコリン基、N,N−ジメチルアンモニウム−N−メチルスルホベタイン基、N,N−ジメチルアンモニウム−N−エチルスルホベタイン基、N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルスルホベタイン基、N,N−ジメチルアンモニウム−N−ブチルスルホベタイン基、N,N−ジメチルアンモニウム−N−メチルカルボキシベタイン基、N,N−ジメチルアンモニウム−N−エチルカルボキシベタイン基、N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルカルボキシベタイン基、および、N,N−ジメチルアンモニウム−N−ブチルカルボキシベタイン基、
からなる群より選ばれる基または塩を表す。
Aは、下記式(1−1)〜(1−14)のいずれかで表される二価の官能基を表す。
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
式(1−1)〜(1−14)に於いて、#1は主鎖側の結合手を表し、#2は側鎖(官能基側)の結合手を表す。R同士は同一でも異なってもよく、水素原子またはメチル基を表す。lは0または1、mは1〜10の整数を表す。)。
ここで、本発明における好適且つ典型的な態様において、アニオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A1)として、スルホン酸基を有するラジカル重合性モノマー(A11)、カルボキシル基を有するラジカル重合性モノマー(A12)、および、リン酸基を有するラジカル重合性モノマー(A13)が挙げられる。
スルホン酸基を有するラジカル重合性モノマー(A11)としては、例えば、ビニルスルホン酸、イソプロペニルスルホン酸、アリル、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、イソプロペニルベンゼンスルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸(別名: 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、メタククリルアミド−t−ブチルスルホン酸(別名: 2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸、(以下アクリロイルオキシとメタクリロイルオキシを合わせて(メタ)アクリロイルオキシとも表現する)、(メタ)アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、6−スルホヘキシル(メタ)アクリレート(以下アクリレートとメタクリレートを合わせて(メタ)アクリレートとも表現する)、10−スルホデシル(メタ)アクリレート、5−スルホ−3−オキサペンチル(メタ)アクリレート、8−スルホ−3,6−ジオキサオクチル(メタ)アクリレート、及びそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、並びにアンモニウム塩等が挙げられる。
カルボキシル基を有するラジカル重合性モノマー(A12)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸(以下アクリロイルとメタクリロイルを合わせて(メタ)アクリロイルとも表現する)、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、ω−カルボキシ−カプロラクトン−モノ(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン−モノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、及びそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、並びにアンモニウム塩等が挙げられる。
リン酸基を有するラジカル重合性モノマー(A13)としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸、(メタ)アクリロイルオキシプロピルリン酸、及びそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、並びにアンモニウム塩等が挙げられる。
アニオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A1)を構成するアニオン性基は、遊離酸型の形態を有することを必ずしも妨げるものではないものの、「その他のラジカル重合性モノマー」と共重合する場合、「その他のラジカル重合性モノマー」の種類によっては、適当なカチオンとの塩の形態を有することが好ましい場合がある。特に、「その他のラジカル重合性モノマー」として後述するエポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)を併用する場合、上記のアニオン性基は遊離酸型の形態を有する場合に不具合を起こす可能性がある。そのため、上記のアニオン性基は、好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、並びにアンモニウム等のカチオンで中和された形態を有する方が好ましい傾向にある。
具体的には、例えば、スルホン酸基を有するラジカル重合性モノマー(A11)とエポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)とを共重合する場合、下記に示す反応によってスルホン酸基とエポキシ基が反応してゲル化する場合がある。
Figure 2019131763
この反応を抑制して、高純度の共重合体を得るためには、カウンターカチオンによってスルホン酸基を中和して、スルホン酸基とエポキシ基との反応を抑制することが望ましい。同様に模式的な反応式を以下に記載する。
Figure 2019131763
カウンターカチオンであるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはアンモニウムイオンの中では、アルカリ金属イオンが反応抑制力と安定性が高める傾向にあり好ましい。
両性イオン基を有するラジカル重合性モノマー(A3)としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−メチルスルホベタイン、(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−エチルスルホベタイン、(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルスルホベタイン、(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−ブチルスルホベタイン、(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−メチルカルボキシベタイン、(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−エチルカルボキシベタイン、(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルカルボキシベタイン、(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−ブチルカルボキシベタイン等が挙げられる。
エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)
エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)(以下、単に「ラジカル重合性モノマー(B)」と呼ばれる場合がある。)としては、1分子内に炭素−炭素二重結合基とエポキシ基を有する構造であれば如何なる構造の化合物であっても良い。
本発明の好適な態様の1つにおいて、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)は、下記式(2a’)、(2b’)および(2c’)からなる群より選ばれるいずれかで表される構造を有している:
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
(上記式(2a')〜(2c')において、
Rは、水素原子またはメチル基を表し、
nは0または1を表し、
Aは、上記「イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)」の項で上述した式(1−1)〜(1−14)のいずれかで表される二価の官能基を表し、
上記式(2a')〜(2c')における上記R,n,Aは、それぞれ同一でも互いに異なっていても良い。
また、上記式(2b')において、R'は炭素数1〜10のアルキル残基を表す。)。
それらの中で好ましく用いられるエポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)としては、例えば、ビニルグリシジルエーテル、イソプロペニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、イソプロペニルフェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシスチリルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセン−3.4−オキサイド、1−(メタ)アクリロイルオキシメチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、4−(メタ)アクリルアミドメチル−2,3−ジメチル−1−グルシジルオキシ−ベンゼン、(メタ)アクリロイルオキシ−オクタデセン−9,10−オキサイド等が挙げられる。
アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)
アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)(以下、単に「ラジカル重合性モノマー(C)」と呼ばれる場合がある。)としては、1分子内に炭素−炭素二重結合基とアルコキシシリル基を有する構造であれば如何なる構造の化合物であっても良い(但しアルコキシとは、メトキシ−、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシを表す)。
本発明の好適な態様の1つにおいて、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)は、下記式(3’)で表される構造を有している:
Figure 2019131763
(上記式(3')において、Rは、水素原子またはメチル基を表す。Xは同一でも互いに異なってもよく、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4アルキル基、炭素数6〜12のアリール基、水酸基、またはハロゲン原子を表す。
nは0または1を表す。
Aは、上記「イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)」の項で上述した式(1−1)〜(1−14)のいずれかで表される二価の官能基を表す。)。
それらの中で好ましく用いられるアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、ビニル−メチルジアルコキシシラン、ビニル−フェニル−ジアルコキシシラン、ビニル−ジメチルアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシラン、アリル−メチルジアルコキシシラン、アリル−フェニルジアルコキシシラン、アリル−ジメチルアルコキシシラン、スチリルトリアルコキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリアルコキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジアルコキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピル−フェニルジアルコキシシラン、及びそれらのアルコキシシリル基の加水分解体等が挙げられる。
ラジカル重合性モノマー(D)
さらに本発明の重合性組成物には、構成モノマーとして、上記のイオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)、及びアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)以外のラジカル重合性モノマー、すなわちラジカル重合性モノマー(D)、を含んでいても良い。即ち、ラジカル重合性モノマー(D)は、炭素−炭素二重結合を含む化合物であって、上記「ラジカル重合性モノマー(A)」、「ラジカル重合性モノマー(B)」及び「ラジカル重合性モノマー(C)」のいずれにも該当しないものであれば、如何なる構造の化合物であっても良い。そのようなラジカル重合性モノマー(D)の例として、ヒドロキシ基を有するラジカル重合性化合物、アルコキシ基またはアリロキシ基を有するラジカル重合性化合物、アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基等の有機残基を有するラジカル重合性化合物、並びに、アミド基を有するラジカル重合性化合物等が挙げられる。
ここで、ヒドロキシ基を有するラジカル重合性化合物として、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジ−1,2−プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ−1,2−プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジ−1,3−プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ−1,3−プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジ−1,4−ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ−1,4−ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリコシルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルコキシ基またはアリロキシ基を有するラジカル重合性化合物として、例えば、メトキシ−ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ−ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシ−ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシ−ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアリルオキシ−ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアリルオキシ−ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェニルオキシ−ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェニルオキシ−ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ベンジルオキシ−ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ベンジルオキシ−ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ナフチルオキシ−ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ナフチルオキシ−ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ−ジ−1,2−プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ−ポリ−1,2−プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ−ジ−1,3−プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ−ポリ−1,3−プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ−ジ−1,4−ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ−ポリ−1,4−ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキル基、シクロアルキル基、またはアリール基等の有機残基を有するラジカル重合性化合物として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、パーフルオロフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシ−ポリカプロラクトンジオール−テトラヒドロフルフリルエーテル、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリシクロデセン、N−ビニル−アザシクロヘプタン−2−オン、N−ビニル−ピロリドン、ナフトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミド基を有するラジカル重合性化合物として、例えば、(メタ)アクリルアミド(以下(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミドおよびメタクリルアミドを表す)、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイル−モルホリン等が挙げられる。
ラジカル重合性モノマー(A)〜(D)の割合
上記のイオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)と、オプショナルの上記エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)および/または上記アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)とが含まれる重合性組成物を本発明の製造方法に従って重合することにより、あるいは、そのような重合性組成物の重合により既に得られたポリマーが含まれる反応液を晶析することにより高品質のイオン性基を有するポリマーを効率よく得ることができる。
重合性組成物中の構成モノマーにおけるイオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)と、オプショナルのエポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)と、オプショナルのアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)と、オプショナルのラジカル重合性モノマー(D)との配合比率は、目的に応じて変わるため特に限定されない。ただ、重合性組成物中の構成モノマーとして、少なくともイオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)が含まれる。
例えば、強い親水性を所望する場合は、重合性組成物中の全構成モノマー(すなわち、ラジカル重合性モノマー(A)〜(D))の合計モル数を100モル%としたときの、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)の割合は、40〜100モル%の範囲、好ましくは60〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%の範囲、最も好ましくは80〜100モル%の範囲である。
例えば、靱性を付与する場合は、同様に、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)を少なくとも10モル%以上含みつつ、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)の割合が1〜90モル%、好ましくは5〜70モル%、さらに好ましくは10〜60モル%である。
例えば、硬度を付与する場合は、同様に、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)を少なくとも10モル%以上含みつつ、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)の割合が1〜90モル%、好ましくは5〜70モル%、さらに好ましくは10〜60モル%である。
例えば、上記以外の機能を付与したい場合は、同様に、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)を少なくとも10モル%以上含みつつ、ラジカル重合性モノマー(D)の割合が1〜90モル%、好ましくは5〜70モル%、さらに好ましくは10〜60モル%である。
例えば、強い親水性を有しある程度の靱性と硬さを付与したい場合は、例えば、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)/エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)/アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)の比率が、40〜98モル%/30〜1モル%/30〜1モル%の範囲、好ましくは60〜96モル%/20〜2モル%/20〜2モル%の範囲、より好ましくは70〜90モル%/15〜5モル%/15〜5モル%の範囲、さらに好ましくは80〜90モル%/10〜5モル%/10〜5モル%の範囲である。
上記イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)は、1種単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)として2種以上が組み合わせて用いられる場合、これらの合計を、上記の割合とすることができる。これについては、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)、および、ラジカル重合性モノマー(D)のそれぞれについても同様に当てはまる。
重合開始剤
本発明の製造方法では、構成モノマーを対応する反応活性種に変換させて、重合反応を引き起こさせるために、重合開始剤が用いられる。ここで、構成モノマーとして上記反応ラジカル重合性モノマー(A)およびオプショナルの上記ラジカル重合性モノマー(B)〜(D)が用いられる場合、重合開始剤としてラジカル重合開始剤が用いられる。
上記の重合に用いられる重合開始剤は、本発明の属する分野において広く用いられているものとすることができ、熱重合開始剤でも、UV重合開始剤でもよいが、通常は熱重合開始剤が用いられる。
好ましく用いられる熱重合開始剤としては、例えば、
メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;
イソブチリルパーオキサイド、o−クロロベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;
トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、t−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;
α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,4,4 −トリメチルペンチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート等のアルキルパーエステル類;
ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジエチレングリコールビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)等のパーカボネート類
等が挙げられる。
重合性組成物におけるこれらの熱重合開始剤の添加量は、重合性組成物中の全構成モノマー(すなわち、ラジカル重合性モノマー(A)〜(D))の合計量100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲、好ましくは0.3〜10質量部の範囲、より好ましくは0.5〜5質量部の範囲、さらに好ましくは1〜3質量部の範囲である。
反応溶媒
上記の重合に用いられる溶媒、すなわち反応溶媒、として、上記「溶媒」の項で上述した溶媒が用いられる。
重合性組成物における上記溶媒の使用量は、以下の計算式(i)により決定される。
(計算式)
溶媒使用量=(100−基質濃度(重量%))/基質濃度(重量%)*基質重量−重合開始剤重量 ・・・(i)
ここで、基質重量とは重合性組成物中の全構成モノマー(すなわち、上記のラジカル重合性モノマー(A)〜(D))の合計重量と、それらを重合して得られるポリマーおよびオリゴマーの合計重量との合計の重量を表す。言い換えると、基質重量は、重合反応開始前には、重合性組成物中の全構成モノマー(すなわち、上記のラジカル重合性モノマー(A)〜(D))の合計重量であり、重合反応終了後は、重合反応により生成した対応するポリマーおよびオリゴマーと、該当する場合には、重合性組成物中の全構成モノマーのうち未反応のまま残存したモノマーとの合計重量である。
なお、一度単離されて固形物の状態となっているイオン性基含有ポリマーに対して晶析工程を行う場合には、晶析対象とするイオン性基含有ポリマー(以下、「粗イオン性基含有ポリマー」)の重量を上記基質重量と、当該粗イオン性基含有ポリマーの濃度を上記基質濃度と、それぞれ見なすことができる。
反応溶媒または晶析溶媒として上記貧溶媒を用いる場合、すなわち、
反応溶媒として上記貧溶媒を用い、重合反応により生成したポリマーをそのまま析出させる場合、
反応溶媒として上記貧溶媒を用いて重合反応を進行させ、当該重合反応の終了後に反応混合物をそのまま冷却して、当該重合反応により生成したポリマーを析出させる場合、並びに、
晶析溶媒として上記貧溶媒を用い、粗イオン性基含有ポリマーの当該貧溶媒溶液をそのまま冷却して、イオン性基含有ポリマーを析出させる場合、
当該反応溶媒または晶析溶媒の使用量は、基質濃度が0.1〜50重量%となる範囲、好ましくは1〜40重量%となる範囲、さらに好ましくは2〜30重量%となる範囲である。
一方、反応溶媒または晶析溶媒として上記親溶媒を用い、当該親溶媒中での重合反応終了後に、あるいは、粗イオン性基含有ポリマーを当該親溶媒に溶解させた後に、第2の溶媒として上記貧溶媒を添加する場合、当該反応溶媒または晶析溶媒の使用量は、当該第2の溶媒を加えない状態での基質濃度が10〜90重量%となる範囲、好ましくは20〜80重量%となる範囲、さらに好ましくは30〜70重量%となる範囲である。
重合反応
上述したとおり、本発明の対象となる反応工程では、目的とするイオン性基含有ポリマーを構成するイオン性基を含有するモノマーの重合が行われる。ここで、本発明の具体的な態様において、反応工程は、上記イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)その他の構成モノマーと上記溶媒とからなるモノマー溶液に上記重合開始剤を加えて重合性組成物とし、上記攪拌翼を用いてこの重合性組成物を攪拌する段階を含んでいる。これにより、構成モノマーが、重合開始剤存在下で引き起こされる重合反応によって、対応するポリマーに変換されるのである。
構成モノマーとしてラジカル重合性モノマーが用いられる場合、重合温度および重合時間は、主にラジカル重合開始剤の10時間半減期温度を参考にしながら設定されるが、室温〜200℃×0.01〜100時間の範囲であり、好ましくは30〜150℃×0.1〜50時間の範囲、より好ましくは40〜120℃×1〜30時間の範囲、さらに好ましくは50〜100℃×3〜16時間の範囲である。
ここで、本発明の第1の好適な態様において、反応工程は、反応溶媒として上記貧溶媒を用いて行われる。この場合、反応工程は、具体的には、上記イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)その他の構成モノマーを上記貧溶媒に加熱溶解してモノマー溶液とし、このモノマー溶液にラジカル重合開始剤を添加することによって重合を開始させ、上記攪拌翼による攪拌を行うことにより行われる。この場合、重合反応の進行に伴い、構成モノマーの重合により形成されるポリマーが、高分子量となって溶解性が低下し析出してくる。そして、重合反応の終了後に得られる反応混合物から、このように析出してきたポリマーを、濾過その他の固液分離操作により単離する。このようにして、最も簡便にイオン性基含有ポリマーを得ることができる。
一方、本発明の第2の好適な態様において、反応工程は、反応溶媒として上記親溶媒を用いて行われる。この場合、反応工程は、具体的には、上記イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)その他の構成モノマーを上記親溶媒に溶解してモノマー溶液とし、このモノマー溶液にラジカル重合開始剤を添加することによって重合を開始させることにより行われる。この態様では、重合は、加熱またはUV照射することにより均一系で進行させることになる。そして、重合反応の終了後に得られる反応混合物に対し、上記攪拌翼による攪拌下で上記貧溶媒を添加する態様で晶析工程を行い、イオン性基含有ポリマーを得ることができる。この晶析工程は、例えば、上記攪拌翼を有する攪拌槽に予め入れておいた貧溶媒に、攪拌下、前記反応混合物を装入する態様で行うことができる。そして、その後析出してきたポリマーを、濾過その他の固液分離操作により単離することにより、イオン性基含有ポリマーを得ることができる。一方、構成モノマーの重合により形成されるポリマーが当該親溶媒に溶解しにくい場合には、上記第1の好適な対応と同様に、重合を上記攪拌翼による攪拌下で行うとともに、析出してきたポリマーを、濾過その他の固液分離操作により単離してもよい。
また、必要な場合には、上記第1および第2の好適な態様で得られたポリマーに対して、さらに別途の晶析工程を行ってもかまわない。
イオン性基含有ポリマー
このように、本発明で得られるイオン性基含有ポリマーは、典型的には、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)を含む重合性組成物を重合して得られるポリマーであり、すなわち、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位を有している。
ここで、この重合性組成物には、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)およびアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)のうちのいずれか一方、あるいは、両方がさらにさらに含まれることが好ましいことから、前記イオン性基含有ポリマーの具体的な態様として、主として以下のものが挙げられる:
(P1)イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位からなるポリマー;
(P2)イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位と、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)に対応する構成単位とからなるポリマー;
(P3)イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位と、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)に対応する構成単位とからなるポリマー;
(P4)イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位と、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)に対応する構成単位と、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)に対応する構成単位とからなるポリマー。
また、重合性組成物には「ラジカル重合性モノマー(D)」がさらに含まれてよいことから、上記(P1)〜(P4)に示した態様のポリマーにそれぞれ対応して、本発明で得られるイオン性基含有ポリマーは、下記(P5)〜(P8)に示す態様のポリマーであっても良い:
(P5)イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位と、ラジカル重合性モノマー(D)に対応する構成単位とからなるポリマー;
(P6)イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位と、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)に対応する構成単位と、ラジカル重合性モノマー(D)に対応する構成単位とからなるポリマー;
(P7)イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位と、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)に対応する構成単位と、ラジカル重合性モノマー(D)に対応する構成単位とからなるポリマー;
(P8)イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位と、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)に対応する構成単位と、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)に対応する構成単位と、ラジカル重合性モノマー(D)に対応する構成単位とからなるポリマー。
例えば、強い親水性を有し、且つ、ある程度の靱性と硬さを有する硬化物を得る場合、前記イオン性基含有ポリマーは、上記(P4)または(P8)に示す態様のポリマーであることが好ましい。
上記(P1)〜(P8)に示す態様のポリマーの中で好ましいポリマーの形態を挙げるならば、例えば、
下記式(1)で表される構成単位を有するポリマー;
下記式(1)で表される構成単位と、下記式(2a)で表される構成単位、下記式(2b)で表される構成単位、および、下記式(2c)で表される構成単位からなる群より選ばれるいずれか1以上とからなるポリマー;
下記式(1)で表される構成単位と、下記式(3)で表される構成単位とからなるポリマー;
下記式(1)で表される構成単位と、下記式(2a)で表される構成単位、下記式(2b)で表される構成単位、および、下記式(2c)で表される構成単位からなる群より選ばれるいずれか1以上と、下記式(3)で表される構成単位とを含むポリマー
が挙げられる:
Figure 2019131763
(上記式(1)において、R、n、Y、Aは、上記式(1')におけるR、n、Y、Aとそれぞれ同じである。)
Figure 2019131763
Figure 2019131763
Figure 2019131763
(上記式(2a)、(2b)、(2c)において、R、n、Aは、それぞれ、上記式(2a')、(2b')、(2c')におけるR、n、Aとそれぞれ同じである。また、上記式(2b)において、R'は、上記式(2b')におけるR'と同じである。)
Figure 2019131763
(上記式(3)において、R、X、n、Aは、上記式(3')におけるR、X、n、Aとそれぞれ同じである。)。
ここで、上記式(1)で表される構成単位は、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位に該当し、上記式(2a)で表される構成単位、上記式(2b)で表される構成単位、および、上記式(2c)で表される構成単位は、いずれもエポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)に対応する構成単位に該当し、上記式(3)で表される構成単位は、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)に対応する構成単位に該当する。
上記式(1)〜(3)中、a、b1、b2、b3、およびcは、本発明のポリマーに含まれる全構成単位の数(すなわち、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位の数と、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)に対応する構成単位の数と、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)に対応する構成単位の数と、上記ラジカル重合性モノマー(D)に対応する構成単位の数との合計)に対する、上記式(1)で表される構成単位の数の割合、上記式(2a)で表される構成単位の数の割合、上記式(2b)で表される構成単位の数の割合、上記式(2c)で表される構成単位の数の割合、および、上記式(3)で表される構成単位の数の割合をそれぞれ示す。例えば、本発明で得られるイオン性基含有ポリマーが上記式(1)で表される構成単位と上記式(2a)で表される構成単位と上記式(3)で表される構成単位とからなる場合、a+b1+c=100モル%となる。また、本発明で得られるイオン性基含有ポリマーが上記式(1)で表される構成単位と上記式(2a)で表される構成単位と上記式(2b)で表される構成単位と上記式(3)で表される構成単位とからなる場合、a+(b1+b2)+c=100モル%となる。
例えば、親水性を志向したポリマーの場合、本発明のポリマーに含まれる全構成単位の数に対するイオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位の数の割合、例えば上記aは、通常40〜100モル%、好ましくは60〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%の範囲である。
例えば、靱性を付与したい場合、本発明のポリマーに含まれる全構成単位の数に対するイオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位の数の割合、例えば上記aは10%以上であり、且つ、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)に対応する構成単位の数の割合、例えば上記b1、上記b2、または上記b3は、通常1〜90モル%、好ましくは5〜70モル%、より好ましくは10〜60モル%の範囲である。ここで、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)に対応する構成単位が、上記式(2a)で表される構成単位と、上記式(2b)で表される構成単位と、上記式(2c)で表される構成単位とのうちのいずれか2以上からなる場合、上記b1と上記b2と上記b3との合計が上記の割合である。
例えば、硬度を付与したい場合、本発明のポリマーに含まれる全構成単位の数に対するイオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位の数の割合は10%以上であり、且つ、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)に対応する構成単位の数の割合は、通常1〜90モル%、好ましくは5〜70モル%、より好ましくは10〜60モル%の範囲である。
例えば、上記以外の特性を付与したい場合は、本発明のポリマーに含まれる全構成単位の数に対するイオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位の数の割合は10%以上であり、且つ、ラジカル重合性モノマー(D)に対応する構成単位の数の割合は、通常、通常1〜90モル%、好ましくは5〜70モル%、より好ましくは10〜60モル%の範囲である。
例えば、強い親水性を有しある程度の靱性と硬さを付与したい場合は、本発明のポリマーに含まれる全構成単位の数を100モル%としたときの、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位の数の割合と、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)に対応する構成単位の数の割合と、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)に対応する構成単位の数の割合との比率は、40〜98モル%/30〜1モル%/30〜1モル%の範囲、好ましくは60〜96モル%/20〜2モル%/20〜2モル%の範囲、より好ましくは70〜90モル%/15〜5モル%/15〜5モル%の範囲、さらに好ましくは80〜90モル%/10〜5モル%/10〜5モル%の範囲である。
本発明の製造方法によって得られるイオン性基含有ポリマーがホモポリマーではなく共重合体の場合、共重合体の結合形式はランダム共重合体の結合形式でもブロック共重合体の形式でもよい。
本発明の製造方法によって得られるイオン性基含有ポリマーの繰り返し構造単位数および分子量等は、主に、モノマー濃度、重合開始剤量、溶媒の種類、および反応温度などで制御されるが、これらの中ではモノマー濃度での制御する方法が最も容易である。
本発明の製造方法によって得られるイオン性基含有ポリマーの繰り返し構造単位数、すなわち、上記全構成単位の数は、通常1〜10,000の範囲であり、好ましくは3〜3,000の範囲、さらに好ましくは30〜1,500の範囲である。
同様に分子量はGPCにより測定(昭和電工,プルラン換算)された値で、重量平均分子量(Mw)は、通常500〜3,000,000の範囲であるが、例えば当該ポリマーを用いた塗料を調整する際の溶解性等の点から、好ましくは1000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜500,000の範囲が挙げられる。
また、本発明の製造方法によって得られるイオン性基含有ポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布 Mw/Mnは、通常1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。Mw/Mnの範囲が狭くなるほど、イオン性基含有ポリマー単独または該ポリマーを含む組成物の溶媒等に対する溶解選択性および硬化樹脂物性等が向上する傾向にあり好ましい場合が多い。
さらに、本発明の製造方法によって得られるイオン性基含有ポリマーの高次構造について以下説明する。
本発明の製造方法によって得られるイオン性基含有ポリマーを高い透明性が要求される用途に使用する場合は、透明性が高くなるアモルファス性の高次構造体(結晶化度が低く、Tm(融点)がほぼ測定されない非晶質重合体または潜晶質重合体)となるようなポリマーが選択される。
一方、ブロッキング防止等の別用途の要求に応じてコア・シェル構造体を形成させたい場合、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)とそれとは極性が大きく異なる別のラジカル重合性モノマー(D)等を用いたブロックポリマーが選択される。
[イオン性基含有ポリマーの用途]
上記のような本発明の製造方法により得られるイオン性基含有ポリマーは、さらに硬化を行うことにより硬化物とすることができる。この硬化物は、膜とすることができるし、さらにこの膜を適当な基材に積層することにより、積層体とすることもできる。
<硬化物>
本発明の硬化物は、本発明の製造方法によって得られるイオン性基含有ポリマーに硬化材を加えて硬化性組成物とし、さらに、この硬化性組成物に熱または放射線を照射することにより得ることができる。
本発明で用いられる硬化性組成物は、本発明のイオン性基含有ポリマーおよび硬化材を含む。本発明の典型的な態様では、この硬化性組成物は、硬化触媒または開始剤等の添加剤をさらに含み、さらに、必要に応じて用いられる溶媒をも含みうる。
硬化材
本発明で用いられる硬化材は、上記イオン性基含有ポリマーと反応性を有する化合物である。硬化材として用いうる代表的な化合物群として、例えば、アミノ樹脂系化合物、加水分解性シラン化合物、エポキシ化合物、メルカプト化合物、カルボン酸化合物、酸無水物、アミン、(メタ)アクリロイル化合物等が挙げられる。
上記アミノ樹脂系化合物とは、アミノ基を有する化合物とホルマリンを縮合させて得られた化合物であり、例えば、国際公開第2016/017619号パンフレットにアミノ樹脂(ii)として例示されているものと同様の化合物とすることができる。
上記アミノ樹脂系化合物の具体例として、
例えば、水素化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、エチル化メラミン樹脂、n−プロピル化メラミン樹脂、イソプロピル化メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、n−ヘキシル化メラミン樹脂、n−オクチル化メラミン樹脂、n−デシル化メラミン樹脂、n−ドデシル化メラミン樹脂などのメラミン樹脂;
例えば、水素化尿素(ユリア)樹脂、メチル化尿素(ユリア)樹脂、エチル化尿素(ユリア)樹脂、n−プロピル化尿素(ユリア)樹脂、イソプロピル化尿素(ユリア)樹脂、n−ブチル化尿素(ユリア)樹脂、イソブチル化尿素(ユリア)樹脂、n−ヘキシル化尿素(ユリア)樹脂、n−オクチル化尿素(ユリア)樹脂、n−デシル化尿素(ユリア)樹脂、n−ドデシル化尿素(ユリア)樹脂などのユリア樹脂;
例えば、水素化アニリン樹脂、メチル化アニリン樹脂、エチル化アニリン樹脂、n−プロピル化アニリン樹脂、イソプロピル化アニリン樹脂、n−ブチル化アニリン樹脂、イソブチル化アニリン樹脂、n−ヘキシル化アニリン樹脂、n−オクチル化アニリン樹脂、n−デシル化アニリン樹脂、n−ドデシル化アニリン樹脂などのアニリン樹脂
が挙げられる。
上記加水分解性シラン化合物は、加水分解によってSi−O結合を与えることのできる化合物であり、例えば、国際公開第2013/054877号パンフレットにシラン化合物(ii)として例示されている化合物や、国際公開第2014/168122号パンフレットにシラン化合物(ii)として例示されている化合物と同様とすることができる。
上記加水分解性シラン化合物の具体例として、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類、テトラハロゲン化シラン類、トリハロゲン化シラン類、および、ジハロゲン化シラン類などが挙げられる。これらの化合物の具体例は、国際公開第2013/054877号パンフレットに記載されている。
また、本発明で硬化材として用いうる加水分解性シラン化合物は、加水分解性シリル基とは異なる他の反応性官能基をさらに有していてもよく、例えば、シランカップリング剤であっても良い。
シランカップリング剤として知られるシラン化合物としては、例えば、国際公開第2014/168122号パンフレットの段落[0137]に例示されている化合物が挙げられ、具体的には、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピル−メチル−ジメトキシシランなどが挙げられる。また、上記加水分解性シラン化合物は、上記アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)として例示した化合物であっても良い。
本発明で用いうるエポキシ化合物、メルカプト化合物、カルボン酸化合物、酸無水物、アミンは、例えば、国際公開第2014/168122号パンフレットの段落[0116]、[0120]、[0122]、[0126]および[0124]にそれぞれ例示されている化合物と同様とすることができる。
上記(メタ)アクリロイル化合物としては、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物が好ましい。例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}フルオレンジ(メタ)アクリレート、ビス{(メタ)アクリロイルオキシポリ(エチレンオキシフェニル)}−2,2−プロパン、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ}−2,2−プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、1,2,3−トリス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロパン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス{(メタ)アクリロイルオキシエチル}イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス{(メタ)アクリロイルオキシエチル}イソシアヌレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアナートとの反応生成物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアナートとの反応生成物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアナートとの反応生成物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアナートトリマーとの反応生成物、ジ{(メタ)アクリロイルオキシエチル}リン酸、トリス{(メタ)アクリロイルオキシエチル}リン酸、フタル酸ジ(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エステル、ヘキサヒドロフタル酸ジ(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エステル、5−(メタ)アクリロイルチオメチル−1,8−ジ{(メタ)アクリロイルチオ}−3,6−ジチアオクタン等が挙げられる。
本発明のイオン性基を有するポリマーと上記の硬化材との配合比率は、重量比で100〜0/0〜100の範囲、好ましくは90〜10/10〜90の範囲、より好ましくは80〜20/20〜80の範囲、さらに好ましくは70〜30/30〜70の範囲である。
重合開始剤・硬化触媒
本発明に於いてイオン性基を有するポリマーと硬化材を含む硬化性組成物を早く硬化させるために用いられる重合開始剤および硬化触媒としては、例えば、前記の本発明のイオン性基を有するポリマーの製造に用いられる熱重合開始剤、UV重合開始剤などの光重合開始剤、酸触媒、塩基触媒、およびその他触媒等が挙げられる。
本発明において好適に用いうる重合開始剤の1つとして、光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤は、一般に、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤および光アニオン重合開始剤の3つに大別されるところ、本発明では、光ラジカル重合開始剤および光カチオン重合開始剤が好適である。
光ラジカル重合開始剤は、本発明の属する分野において一般に用いられている従来公知のものとすることができ、例えば、イルガキュアー184(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアー1173(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー500(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー819(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ダロキュアーTPO(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、エサキュアーKIP100F(ランベルティー社製)、エサキュアーKT37(ランベルティー社製)及びエサキュアーKTO46(ランベルティー社製)が好ましい。
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、イルガキュアー250(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー784(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、エサキュアー1064(ランベルティー社製)、CYRAURE UVI6990(ユニオンカーバイト日本社製)、アデカオプトマーSP−172(旭電化社製)、アデカオプトマーSP−170(旭電化社製)、アデカオプトマーSP−152(旭電化社製)、及びアデカオプトマーSP−150(旭電化社製)などのUV重合開始剤が挙げられる。
一方、硬化触媒としては、
例えば、塩酸、硫酸、硝酸、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化アルミニウム、ビニルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフロロ酢酸、酢酸、リン酸、ホウ酸、三フッ化ホウ素、酸化錫、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、テトラブチル錫、テトラアルコキシチタン、トリアルコキシアルミニウム、アセチルアセトン亜鉛、アルミナ等の酸触媒;
例えば、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、水酸化カリウム、ピリジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の塩基性触媒;並びに、
例えば、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロライド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロライド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、フッ化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のその他触媒
等が挙げられる。
これら重合開始剤および硬化触媒の添加量は、本発明のイオン性基を有するポリマーと硬化材の合計量に対して、0.001〜20重量%の範囲、好ましくは0.01〜10重量%の範囲、さらに好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。
添加剤として用いうるその他の成分
本発明の硬化性組成物には、添加剤として、硬化触媒または開始剤以外の成分(以下、「その他の成分」)も含ませることができる。例えば、本発明により得られる硬化物をより硬くすること、その硬化物の表面に親水性基であるスルホン酸基をより集中化(傾斜化)させること、硬化物の硬度を向上させること、また硬化物の表面を平滑化させること、などを目的として、界面活性剤、充填材(フィラー)、レベリング剤、および消泡剤等を含ませることができる。さらに着色、耐久性、或いは耐光性等を付与するための染料、顔料、クロミック色素、HALS(ヒンダードアミン系光安定剤)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブルーライト吸収剤、赤外線吸収剤等を含ませることができる。さらに、その他の機能および生産性を向上させる目的で、増感剤、離型剤、タレ防止剤、香料、抗菌剤、殺菌剤、光触媒、および沃素等のハロゲン化合物等も含ませることができる。
先ず、界面活性剤について、本発明の硬化物にも言及しながら説明する。
本発明のイオン性基含有ポリマーを含む硬化性組成物から得られる硬化物について、イオン性基が膜厚方向に傾斜した硬化物および該硬化物からなる膜(傾斜度:Sa(表面のイオン性基強度)/Da(硬化物中心のイオン性基濃度)≧1.1)が、好ましく形態として挙げられる。
この傾斜構造を形成させる主な原理として、
「予め添加された極性溶媒を蒸発させる際に、親水性のイオン性基含有ポリマーを極性溶媒の蒸発に同伴させて、表面に集中化させ硬化する」、
「界面活性剤を添加して、イオン性基含有ポリマーを、界面活性剤の表面への移動に同伴させて、表面に集中化させ硬化する」、さらに
「イオン性基含有ポリマーへの排斥力が強い(溶解性の低い)硬化材を選択して、そのような硬化材とイオン性基含有ポリマーとの反発力によってイオン性基含有ポリマーを表面に集中化させ硬化する」
ことが挙げられる。このため、界面活性剤の添加は上記2番目の原理として極めて有効である。
このことから、本発明の典型的且つ好適な態様において、界面活性剤が、「その他の成分」として硬化性組成物に含まれる。
基材上に硬化性組成物からなる硬化物層(例えば、膜)を形成する場合、基材と反対方向にある外表面におけるイオン性基濃度をSaとし、基材に接する界面と外表面との中間地点におけるイオン性基濃度をDaとした場合、イオン性基含有ポリマーの傾斜度は、イオン性基の濃度比(Sa/Da)で表される。すなわち、イオン性基の濃度比(Sa/Da)が大きいことは、多くのイオン性基が硬化物層の外表面に集中していることを示している。このことは、イオン性基の濃度比(Sa/Da)が大きいほど硬化物層表面の親水性が高く、本発明の硬化物(典型的には該硬化物からなる膜)を親水性材料(典型的には親水膜)として用いる上でより有利であることを意味する。ここで、上記Daについて、「基材に接する界面と外表面との中間地点」は、通常、基材に接する界面に向かって、外表面からの深さが膜厚の1/2の地点(本明細書においては、この地点を「膜厚1/2の地点」とも呼ぶ。)である。この傾斜度に応じて、硬化物表面の親水性が高くなり易く、通常1.01〜1000の範囲で、好ましくは1.03〜100の範囲、より好ましくは1.1〜60の範囲、さらに好ましくは1.2〜50の範囲である。また、傾斜度の下限値は、1.1以上であることがより好ましい。傾斜度が1000を超える場合には、分離した状態に近いと考えられるため、本発明の製造方法によって得られるイオン性基含有ポリマーと硬化材の反応(ネットワークへの取り込み)が不完全になり、靭性、透明性、および耐久性(親水持続性)が低下する傾向にある。
傾斜度を向上させる目的等で好ましく用いられる界面活性剤としては、例えば、国際公開第2014/168122号パンフレットの段落[0181]に列挙された化合物が挙げられる。好適な界面活性剤の例として、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム);ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(花王 ペレックスOT−P)、ジトリデシルスルホコハク酸ナトリウム(花王 ペレックスTR)、ジステリルスルホコハク酸ナトリウム(ジオクタデシルスルホコハク酸ナトリウム)などのジアルキルスルホコハク酸ナトリウム;ステアリン酸ソルビタン;並びに、ラウリルベタインが挙げられる。また、下記実施例5で用いられているジラウリルスルホコハク酸ナトリウム(ジドデシルスルホコハク酸ナトリウム)もまた好適な界面剤である。
次に上記充填材について、より具体的に説明する。主に硬化物の硬度向上および屈折率制御の目的で無機粒子が好ましく用いられ、例えば、銀粒子、銅粒子、酸化銅粒子、シリカ粒子、中空シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化鉄粒子、酸化コバルト粒子、二酸化ジルコニア粒子、二酸化チタン粒子、酸化アンチモン粒子等が挙げられ、中でもシリカ粒子、中空シリカ粒子、二酸化ジルコニア粒子、二酸化チタン粒子、およびそれらのアクリレート基を有するアルキル修飾粒子或いはエポキシ基を有するアルキル修飾粒子等が挙げられ、それらの中では、アクリレート基を有するアルキル修飾粒子或いはエポキシ基を有するアルキル修飾粒子が好ましい。因みにこれら粒子のサイズ(粒子径)は、透明性を確保する観点からナノメートルサイズからサブミクロンサイズが好ましい傾向にある。
さらに硬化物表面を平滑化して良好な外観を得る目的で上記のレベリング剤が好ましく用いられる。例えば、変性シリコーンオイル(信越化学工業 KF355A,信越化学工業 KF640)、信越化学工業 KP−341、信越化学工業 KP−326、信越化学工業 KP−104、信越化学工業 KP−110、共栄社化学 ポリフローKL−100、共栄社化学 ポリフローKL−800、共栄社化学 KL−800、共栄社化学 ポリフローWS、共栄社化学 ポリフローWS−30、共栄社化学 ポリフローWS−314などが挙げられる。
上記の様々な種類の添加剤の添加量は目的および種類に応じて大きく異なるものの、大まかな目安として、上記イオン性基含有ポリマーと上記硬化材との合計重量に対して、例えば0.00001〜100重量%の範囲、好ましくは0.0001〜80重量%の範囲、より好ましくは0.001〜60重量%の範囲、さらに好ましくは0.01〜40重量%の範囲が挙げられる。
硬化物の形成方法および具体的な形状
本発明の硬化物は、上記イオン性基含有ポリマーおよび硬化材等からなる硬化性組成物を、放射線または熱によって硬化されることにより得ることができる。ここで、本発明の硬化物は、塊、シート、膜、および当該膜が積層された積層体等の様々な形態の形状を有していても構わない。例えば膜および積層体の場合には、イオン性基含有ポリマー、硬化材、重合開始剤、および溶媒等からなる硬化用組成物を基材の上に塗布し、加熱によって溶媒を蒸発させ、紫外線等の放射線を照射して基材上に硬化物からなる層を形成させて、積層体を得る。ここで、この積層体につき、硬化物からなる層を基材から剥離することにより、硬化物からなる膜を得ることができる。ただ、この積層体を、そのまま、硬化物からなる層と基材とを含む積層体として使用しても良い。
上記溶媒としては、上述の各成分を均一に溶解または分散させることができれば、いかなる溶媒でもよい。かかる溶媒は1種単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
ここで、本発明の硬化物として、イオン性基が膜厚方向に傾斜した硬化物を得る場合、上記溶媒は、高極性の溶剤、より具体的にはSP値(溶解パラメーターσ)が少なくとも9.3以上の溶媒が好ましい。ここで、溶剤のSP値(溶解パラメーターσ)(cal/cm31/2は、以下の(1)〜(5)の計算式によって計算された値である。
(1)1mol当たりの蒸発潜熱 Hb=21×(273+Tb)〔単位:cal/mol〕,Tb:溶剤の沸点(℃)
(2)25℃での1mol当たりの蒸発潜熱 H25=Hb×{1+0.175×(Tb−25)/100}〔単位:cal/mol〕,Tb:溶剤の沸点(℃)
(3)分子間結合エネルギー E=H25−596〔単位:cal/mol〕
(4)溶剤1ml(cm3)当たりの分子間結合エネルギー E1=E×D/Mw〔単位:cal/cm3〕,D:密度(g/cm3),Mw:溶剤の分子量
(5)SP値: 溶解パラメーター σ=(E1)1/2 〔単位:(cal/cm31/2
そのような溶媒の好適な例として、水およびアルコールが挙げられる。アルコールの中では、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−メトキシ−エタノール(EGM)、2−エトキシエタノール、2−メトキシプロパノール(PGM)、1−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノールなどの1級アルコールが好ましい傾向にある。これらアルコールは単独でも用いられるが、水と混合して用いることも好ましい。
なお、本発明の硬化物として、イオン性基が膜厚方向に傾斜した硬化物を得る場合に用いられる溶媒についてのより詳細な記載は、例えば、国際公開第2014/168122号パンフレットの段落[0161]〜[0176]を参照することができる。
本発明の硬化性組成物を加熱によって硬化させる場合、30〜300℃の範囲であるが、好ましくは40〜200℃の範囲、より好ましくは50〜180℃の範囲である。加熱時間は、通常0.02時間〜200時間の範囲であるが、好ましくは0.1時間〜8.0時間、より好ましくは0.3時間〜4.0時間である。
また放射線による硬化方法としては、例えば、マイクロ波、紫外線、および電子線を照射させる方法が挙げられる。
例えば、上記の硬化性組成物に、公知の多官能(メタ)アクリレート、公知の多官能エポキシ化合物、または公知の多官能ビニル化合物などを添加して、さらに必要に応じてUVラジカル重合開始剤、またはUVカチオン重合開始剤等を添加し、放射線の一種である紫外線(UV)を照射することにより硬化可能である。
なお、加水分解性シラン化合物を配合した硬化性組成物を放射線照射にて硬化する場合には、シロキサンネットワークを硬化物中に確実に形成させる観点から、加熱と放射線照射とを併用する方法が一つの好ましい態様である。
放射線で硬化する場合、放射線としては波長領域が0.0001〜800nm範囲のエネルギー線を用いることができる。上記放射線は、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線、可視光、マイクロ波等に分類されおり、上記イオン性基含有ポリマー、上記硬化材の組成などに応じて適宜選択して使用できる。これら放射線の中でも紫外線が好ましく、紫外線の出力ピークは、好ましくは180〜450nmの範囲、より好ましくは190〜445nmの範囲、さらに好ましくは200〜430nm範囲、特に好ましくは220〜400nmの範囲である。また、上記の硬化性組成物に紫外線吸収剤、またはHALSが添加される場合には、出力特性で240〜270nmにピーク強度を持つ紫外線ランプを用いたほうが好ましい傾向にある。
さらに該硬化性組成物を硬化する場合の雰囲気は、窒素等の不活性ガス雰囲気でもよいが、大気雰囲気が好ましい。また、雰囲気の湿度については、高湿度下では硬化物の表面が不均一になり易いためできるだけ低湿度の方が好ましいが、おおよそ20〜70%RHの範囲が好ましく、30〜60%RHの範囲がより好ましく、40〜60%RHの範囲がさらに好ましい。
本発明の硬化物を膜にする場合、上記硬化性組成物を後述する基材に塗布してこれを硬化することにより作製することができる。
上記硬化性組成物を基材に塗布する方法としては、例えば、刷毛塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤーバー法、バーコーター法、ブレード法、ロールコーティング法、スピンコート法、ディッピング法、その他公知のコーティング方法が挙げられる。
この場合の膜の膜厚は、特に制限を受けるものではないが、0.001〜1000μmの範囲であり、好ましくは0.01〜300μmの範囲、さらに好ましくは0.03〜50μmの範囲である。
上記基材となる材料としては、例えば、PMMA、ポリカーボネート(PC)、PET、ABS、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリ塩化ビニル(塩ビ)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(チオ)ウレタン樹脂、ポリ(チオ)ウレア樹脂、および(チオ)エポキシ樹脂などの有機材料、ガラス、鉄、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、金、銀、銅、金属酸化物、セラミックス、セメント、スレート、大理石や御影石、モルタルなどの無機材料、ガラス繊維、炭酸カルシウムなどの無機材料と不飽和ポリエステル樹脂などの有機材料とを複合化したSMC(シート・モールディング・コンパウンド)等の複合材料などが挙げられる。
このような有機材料、無機材料、複合材料からそれぞれなる有機基材、無機基材、複合基材はそのまま用いることもできるが、種々の表面処理を行ってから使用してもよい。表面処理を行うことにより、例えば、上記基材と膜からなる積層体の層間密着性を高めることができる。このような表面処理を行った基材としては、例えば、基材表面を金属メッキした基材、リン酸亜鉛水溶液等の化学薬品により基材表面の化学処理を行った基材、コロナ処理を行った基材、プラズマ処理を行った基材、グロー放電処理を行った基材、フレーム処理を行った基材、イトロ処理を行った基材、プライマー処理を行った基材、アンダーコート処理を行った基材、アンカーコート処理を行った基材などが挙げられる。
上記基材と本発明の硬化物からなる膜が積層された積層体には、種々の機能層が設けられていてもよい。例えば、ハードコート層、反射防止(AR)層などが挙げられ、本発明の硬化物からなる膜が積層された積層体には、上記機能層を単層でも複数層でも積層してもよい。
上記積層体は、例えば、本発明の硬化物からなる膜が防曇被膜、防汚被膜、または帯電防止被膜である場合には、例えば、防曇被膜、防汚被膜または帯電防止被膜で基材が被覆された積層体が得られる。
例えば、基材がフィルムの場合には、本発明の硬化物からなる膜を形成しない面に、後述の粘着層を設けることもできるし、さらに粘着層の表面に剥離フィルムを設けることもできる。基材フィルムの他の片面に粘着層を積層しておくと、本発明の膜を有する積層フィルムを防曇フィルムおよび防汚フィルムとして、ガラス、浴室等の鏡、ディスプレイ、テレビ等の表示材料表面、看板、広告、案内板等の案内板、鉄道、道路等の標識、建物の外壁、窓ガラス等に容易に貼付できる。
積層体等の粘着層に用いる粘着剤は特に制限はなく、公知の粘着剤を用いることができる。粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルエーテルポリマー系粘着剤、およびシリコーン粘着剤等が挙げられる。粘着層の厚さは通常2〜50μmの範囲、好ましくは5〜30μmの範囲である。
また、本発明の膜および該膜を積層した積層体では、膜の外気に接する表面を被覆材で被覆しておいてもよい。被覆材により被覆された膜および該膜を有する積層体では、輸送、保管、陳列等する際に、膜が傷ついたり、汚れたりするのを防ぐことができる。
本発明の積層体は、基材の形状を工夫するなどすることにより、種々の形態の積層体とすることができる。本発明により得られる膜および積層体は、フィルム、シート、テープなどの形態で使用できる。なお、上記膜は、プライマー層として用いることもできる。
さらに、本発明の製造方法で得られるイオン性基含有ポリマーと硬化材等を含む組成物は、種々の形状の鋳型内で硬化させることにより、種々の形状を有する硬化物、例えば膜、成形体などとして得ることもできる。
本発明により得られる膜および成型体は、親水性、耐久性、耐摩耗性、および耐候性に優れ、高い防曇性、防汚性、帯電防止性、速乾性(水の蒸発)を有する。それら表面の水接触角は、通常30°以下、好ましくは20°以下、より好ましくは10°以下である。水接触角が上記上限値以下である膜は、親水性が高く、水となじみ(濡れ)やすく親水性材料として優れている。
例えば、本発明の膜を防曇コートとして用いると膜表面に水滴が広がり水膜を形成させることができるため防曇効果に優れ、またセルフクリーニングコートとして用いると水が汚れとコーティング面の間に入り込み汚れを浮かせて除去することができるため防汚効果に優れている。また、帯電防止性に優れており、帯電防止材、および帯電防止被膜またはほこり付着防止コートなどにも有用である。また、したがって、防曇材料、防曇被膜(以下、防曇コートとも言う)、防汚材料、防汚被膜またはセルフクリーニングコート、速乾性材料または速乾性コート、帯電防止材材料または帯電防止被膜、さらに埃付着防止コートなどに有用である。
上記の膜が積層された積層体も親水性および耐久性に優れ、防曇材料、防汚材料、帯電防止材料などとして有用である。例えば、透明樹脂、ガラスなどの透明材料からなる基材に上記本発明の膜を積層することにより得られる積層体は、透明性、親水性、防曇性、防汚性、さらには、帯電防止性、速乾性、結露防止性、耐候性、耐磨耗性に優れた積層体として用いることができる。
そのため、本発明の硬化性組成物を硬化することにより得られる硬化物、該硬化物からなる膜、積層体、および成型体は、ボディー、ホイール、外装品、および内装品などの自動車、船舶、航空機に代表される輸送機器用物品;外壁品、内壁品、床、家具、浴室用物品、洗面化粧室用物品、シンク、換気扇、レンジ周辺部材などのキッチン用物品、トイレ用物品、配管用物品、などの建築用物品および住宅用物品;高速道路などに設置される遮音板などの建設用物品;衣服および布および繊維などの衣料用部材;窓、鏡、光学フィルム、光ディスク、コンタクトレンズ、ゴーグル、反射フィルム、および反射板、眼鏡、サングラス、カメラ、レンズ、反射防止フィルム、表示装置(タッチパネル、フラットパネル、電子ペーパーなどのディスプレイ装置)、投影装置、およびシールドなどの光学物品または光学装置;
デンチャーなどの歯科材料;ランプ用物品およびライト用物品どの照明用物品;冷却および熱交換用のフィンなどの産業用物品;電化製品用物品、配線用物品などの電気・電子製品用物品;インクジェット記録版、印刷・印字用プライマーなどの印刷用物品;化粧品容器などの日用品用物品などの多くの用途に用いることができる。
例えば、本発明の積層体の好適な用途の1つとして、光学物品が挙げられる。
以下、実施例等により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれら実施例のみに限定されるものではない。
本発明において、イオン性基含有ポリマーの構造の評価は下記のようにして行った。
<イオン性基含有ポリマー組成比>
スルホン酸含有基を有するユニット(1)、エポキシ基を有するユニット(2)、およびトリアルコキシシリル基を有するユニット(3)のユニット比(1)/(2)/(3)は13C−NMRにより分析した。測定条件を以下に記載する。
(測定条件)
* 装置: ブルカー・バイオスピン製 AVANCEIII cryo−500型核磁気共鳴装置
* 測定核: 13C(125MHz)
* 測定モード: シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
* パルス幅: 45°(5.0μ秒)
* ポイント数: 64K
* 測定範囲: −25〜225ppm
* 積算回数: 1000回
* 測定溶媒: D2
* 測定温度: 室温
* 試料濃度: 40mg/0.6ml−D2
(ユニット比(1)/(2)/(3)の解析)
下記式(200)のf炭素のピーク(57〜59ppm付近)、下記式(300)のk炭素のピーク(50〜51ppm付近)、および下記式(400)のt炭素のピーク(5〜6ppm付近)の積分強度比で算出した。即ち、ユニット比(1)/(2)/(3)=f炭素ピークの積分強度/k炭素ピークの積分強度/t炭素ピークの積分強度とした。
Figure 2019131763
<重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)>
Mw(重量平均分子量)、および重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比 分子量分布 Mw/MnはGPCにより分析した。測定条件を以下に記載する。
(測定条件)
* 装置: 日本分光(株) GPC−900
* カラム: 昭和電工(株) Shodex Asahipac「GF−7M HQ」,Φ7.5mm×300mm
* 測定温度: 40℃
* 溶離液: 水/メタノール/NaHPO4/NaHPO4・2H2O=850.0/150.0/2.7/7.3(重量比)
* 流速: 0.5ml/min.
*分子量校正: 分子量既知のポリメチルメタクリレートにより行った。
なお、本発明においてコーティング膜の物性評価は、下記のようにして行った。
<膜厚の測定>
(測定装置および条件)
装置 :電界放出型透過電子顕微鏡(FE−TEM):
JEM−2200FS(日本電子製)加速電圧 : 200 kV
FIB(Focused Ion Beam System,集束イオンビームシステム)加工装置 : SMI2050(セイコーインスツルメンツ社製)
試料調製等
試料の凸面中央部を切り出した後、試料最表面にPtコートおよびカーボン蒸着を行った。これをFIB加工により薄膜化し、測定検体とした。測定検体を電界放出型透過電子顕微鏡(FE−TEM)で観察し、膜厚を測定した。
<外観>
目視により評価した。
<水接触角の測定>
協和界面科学社製の水接触角測定装置CA−V型を用いて、1サンプルについて3箇所測定し、これら値の平均値を水接触角の値とした。
<ヘーズの測定>
日本電色工業社製のヘーズメーターNDH2000を用いて、1サンプルについて4箇所測定し、これら値の平均値をヘーズの値とした。
<鉛筆硬度>
JIS K5600−5−4: 引っかき硬度(鉛筆法)に準じて試験を行った。
<防曇性の評価>
呼気により曇らなかった場合を〇、僅かに曇った場合を△、曇った場合を×とした。
<防汚性の評価>
(油性マジック試験)
ゼブラ(株)製の油性マーカー「マッキー極細」(黒,品番MO-120-MC-BK)でマークし、その上に水滴を垂らして30秒間放置し、テッシュペーパーでふき取った時の油性マーカーの残り具合を目視にて評価した。評価基準は以下の通り。
〇:マークが完全にふき取れた。
△:僅かに残った。
×:ふき取れずに残った。
<傾斜度の測定>
図2に示す試料調製の通り、基材10の上にコート層20を形成してなるサンプルを斜めに切断し、飛行時間型2次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)を用いて、外表面におけるスルホン酸濃度(Sa)と、基材10に接する界面と前記外表面との中間地点におけるスルホン酸濃度(Da)とを測定し、その値から外気に接する膜の外表面と膜の内表面と外表面との中間地点のスルホン濃度比で表される傾斜度(Sa/Da)を求めた。ここで、本発明に係る積層体において、本発明に係る膜はコート層20を構成する。
(分析装置と測定条件)
TOF−SIMS; ION・TOF社製 TOF−SIMS 5
1次イオン; Bi3 2+ (加速電圧25kV)
測定面積; 300〜340μm2 測定には帯電補正用電子銃を使用
試料調製等
図2に示す通りに、基材10の表面にコート層20が設けられたサンプルを切削方向30に向かって、精密斜め切削を行った後、10mm×10mm程度の大きさに切り出し、測定面にメッシュを当て、サンプルホルダーに固定し、外気と接するコート層表面40および膜の内部であるコート層内部50(膜厚1/2の地点、基材10に接するコート層の内表面)で飛行時間型2次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)を用いてスルホン酸濃度を測定した。
評価
評価は以下の計算式で行った。なお、各測定点のイオン濃度は、相対強度(トータル検出イオンに対する)を用いた。
傾斜度Sa/Da(スルホン酸濃度比,傾斜度)=コート層表面40でのスルホン酸濃度/コート層20の膜厚1/2の地点でのスルホン酸濃度
<液の断面積および攪拌面積の測定>
反応液または晶析液の断面積は、当該反応液または晶析液の攪拌に用いた攪拌槽の設計図または内寸測定と、当該攪拌槽における当該反応液または晶析液の液面の位置とによって求めた。
また、攪拌面積は、液面(浸漬深さ)と撹拌翼の設計図または撹拌翼を方眼紙等に転写することによって求めた。
[実施例1]<マックスブレンド翼 0.50m/sec,基質濃度11重量%>
本実施例では、攪拌手段として、図3に示す形状を有するマックスブレンド翼を用いた。また、反応容器(攪拌槽)として、バッフルを備えていない反応フラスコを用いた。
減圧下で超音波を照射することにより脱ガスされたメタノール1235.1gを反応フラスコに装入し、攪拌しながら純度85重量%のKOHフレーク33.9g(0.513モル)を徐々に加えて完溶させた。次にアクリルアミド−t−ブチルスルホン酸(以下ATBSと略す。)105.7g(0.510モル)を分割装入して中和(pH=7.2)を行い、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸カリウム塩(以下ATBS−Kと略す。)を含む中和混合物を得た。
次に、グリシジルメタクリレート(以下GMAと略す。)8.0g(0.056モル)、メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン(以下KBE−503と略す。)16.4g(0.057モル)とメタノール2.4gとの混合液、および重合開始剤であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(以下パーブチル−Oと略す。)0.28gとメタノール6.2gとの混合液を各々調製した。それら各々を、加熱還流(内温63〜64℃)されている中和混合物に2時間かけて三分の一ずつ分割装入し、さらに加熱還流下で8時間混合攪拌し重合反応を行った。反応液断面積に対する攪拌面積(攪拌翼の浸漬部分の1/2面積)比率は58%であった(結果を図3に示す。)。
室温まで冷却後、反応液の粒度分布を測定(結果を図4に示す。)し、析出した共重合体を細孔径4μ(φ150mm)の濾紙で減圧濾過(60〜400mmHg)を行った。その結果、濾過が極めて短時間で終了した(濾過速度630kg/(m2・Hr))。引き続きメタノール300mlで濾塊を洗浄し(濾過速度385kg/(m2・Hr))、再度メタノール300mlで洗浄した(濾過速度100kg/(m2・Hr))ところ、メタノールによる洗浄も液詰まりすることなくスムーズに実行できた。
洗浄された濾塊を皿に取り出し、50℃の減圧オーブン(100mmHg未満)内で秤量点まで乾燥し、白色の共重合体84.8g(収率54.7%)を得た。
得られた共重合体をGPCで分析した結果、重量平均分子量Mw=11.8万、分子量分布Mw/Mn=2.2であった。また、13C−NMR分析を行った結果、共重合体の構成単位比率 ATBS−Kユニット/GMAユニット/KBE−503ユニット比=90/10/10であった。すなわち、本実施例で得られたポリマーは、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位と、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)に対応する構成単位と、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)に対応する構成単位とからなるポリマーということになる。因みにエポキシ基が開環されたユニットは検出されなかった。
結果を表1に掲載する。
なお参考までに、本実施例で使用したATBS−K、GMAおよびKBE−503の構造式を下記に示す。
Figure 2019131763
[実施例2]<マックスブレンド翼 0.25m/sec,基質濃度15重量%>
最初の脱ガスされたメタノールを1128.7g、純度85重量%のKOHフレークを44.9g(0.680モル)、ATBSを140.0g(0.675モル)、GMAを10.7g(0.075モル)、KBE−503を21.0g(0.075モル)、パーブチル−Oを0.41g使用し、マックスブレンド翼の回転数を60rpm(翼回転接線速度0.25m/sec)にした以外は実施例1と同様に共重合体の合成及び評価を行った。
その結果、白色の共重合体が169.2g(収率82.6%)得られた。該共重合体の重量平均分子量はMw=27.6万、分子量分布Mw/Mn=3.7であった。
結果を表1に掲載する。
[実施例3]<マックスブレンド翼 0.50m/sec,基質濃度15重量%>
マックスブレンド翼の回転数を120rpm(翼回転接線速度0.50m/sec)にした以外は実施例2と同様に共重合体の合成及び評価を行った。
その結果、白色の共重合体が188.4g(収率92.0%)得られた。該共重合体の重量平均分子量はMw=27.1万、分子量分布Mw/Mn=3.6であった。
結果を表1に掲載する。
[実施例4]<マックスブレンド翼 1.0m/sec,基質濃度15重量%>
マックスブレンド翼の回転数を240rpm(翼回転接線速度1.0m/sec)にした以外は実施例2と同様に共重合体の合成及び評価を行った。
その結果、白色の共重合体が175.3g(収率85.6%)得られた。該共重合体の重量平均分子量はMw=32.9万、分子量分布Mw/Mn=3.1であった。
結果を表1に掲載する。
[比較例1]<半月型翼 1.0m/sec,基質濃度15重量%>
マックスブレンド翼を半月型翼に変更し、回転数を250rpm(翼回転接線速度1.0m/sec)にした以外は実施例2と同様に試験した。因みに反応液の断面積に対する攪拌面積(攪拌翼の浸漬部分の1/2面積)は僅か6%であった(結果を図5に示す。)。
半月型翼を用いても重合反応は問題なく進行したが、反応液を濾過する際に目詰まりを起こし、通常の方法では析出した共重合体を取り出すことができなかった。
仕方なく、濾過促進剤としてセライト503(石粉)を細孔径4μmの濾紙の上に敷いて再濾過を行ったところ、反応液の1/3程度までは濾過できることが判った。さらにこのセライト(石粉)濾過を2回追加して行い、濾塊(共重合体)を実施例1と同様に乾燥した。その結果、白色の共重合体を108.9g(収率53.2%)得た。
結果を表1に掲載する。
Figure 2019131763
[実施例5] コーティング膜および積層体の製造
<コーティング溶液の調製>
下記表2の混合順に従い各成分を混合し、PTFE製の細孔径0.2μmのフィルターを通してコーティング溶液Aを調製した。
Figure 2019131763
(プライマー層の形成)
攪拌条件下、シランカップリング剤であるビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン(以下KBM−666Pと略す。)0.33g、30重量%−メタノールシリカゾル(日産化学)0.55g、および2−メトキシエタノール99.12gを混合して、固形分0.5重量%のプライマー組成物を調製した。得られた該プライマー組成物をよく洗浄されたガラス板(表面の水接触角 8°未満)にスピンコーター(MIKASA SPINCOATER 1H−DX2)4000rpmで塗布し、150℃のオーブンで20分間加熱することにより、基材ガラス板上に厚み5nmのプライマー層が積層体されたガラス板を得た。
(コーティング膜の形成)
得られたプライマー層が積層されたガラス板のプライマー層上に、上記コーティング液Aをバーコーター#30で塗布し、50℃のオーブンで3分間予備乾燥した後、150℃オーブンで30分間加熱し、プライマー層上に厚み2.5μmの親水性コーティング膜が形成された積層体を得た。
(コーティング膜の評価)
得られた積層体のコーティング膜表面を流水下でベンコットM−3 II(旭化成せんい株式会社製)を用いて擦り洗いし、エアガンで乾燥した後、コーティング膜が積層された積層体の評価を行った。
評価結果を表3に掲載し、積層体最外層の親水膜の傾斜度(TOF−SIMSによる膜断面方向のスルホン酸基の強度比)の分析結果を表4に掲載する。
Figure 2019131763
Figure 2019131763
[比較例2] コーティング膜および積層体の製造
実施例1の共重合体の代わりに、濾過促進剤(セライト)を使って取り出した比較例1の共重合体を用いて実施例5と同様に試験を試みた。しかしながら、細孔径0.2μmのフィルターで目詰まりしてコーティング溶液が得られなかったため、塗布できずコーティング膜および積層体も得られなかった。
[実施例6] STS−VESポリマーの製造<マックスブレンド翼 0.50m/sec,基質濃度7.5重量%>
イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位と、アルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)に対応する構成単位とからなるポリマーの製造例として、STS−VESポリマーの製造を行った。
マックスブレンド翼を用いた反応容器(攪拌槽)に、減圧下で超音波照射して脱ガスされた2−メトキシエタノール 1070.7gとスチレンスルホン酸ナトリウム 77.5g(0.376モル)を装入し、70℃で攪拌して均一な混合溶液を得た。
次に、パーブチル−O 0.60gと脱ガスされた2−メトキシエタノール 75.0gとの混合液、及びビニルトリエトキシシラン 15.7g(0.083モル)を、マックスブレンド翼(接線速度0.50m/sec)で攪拌されながら70℃で保持されている上記混合溶液に、各々同時に5時間かけて三分の一ずつ分割装入し、さらに70℃で8時間混合攪拌し重合反応を行った。反応液断面積に対する攪拌面積(攪拌翼の浸漬部分の1/2面積)は55%であった。
室温まで冷却後、濾過および2−メトキシエタノールによる濾塊の洗浄を行ったところ非常にスムーズに短時間で操作が完了した。最後に洗浄された濾塊を50℃の減圧オーブン(100mmHg未満)内で72時間乾燥させて、重量平均分子量Mw=21.3万、分子量分布Mw/Mn=3.2の白色共重合体77.5g(収率88.0%)を得た。
[実施例7] STS−GMAポリマーの製造<マックスブレンド翼 0.50m/sec,基質濃度7.5重量%>
イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位と、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)に対応する構成単位とからなるポリマーの製造例として、STS−GMAポリマーの製造を行った。
マックスブレンド翼を用いた反応容器(攪拌槽)に、減圧下で超音波照射して脱ガスされた2−メトキシエタノール 639.1gとスチレンスルホン酸ナトリウム 48.76g(0.2365モル)を装入し、70℃で混合攪拌して均一溶液を得た。
次に、パーブチル−O 0.27gと脱ガスされた2−メトキシエタノール 7.0gとの混合液、及びGMA 2.99g(0.0210モル)を、マックスブレンド翼(接線速度0.50m/sec)で攪拌されながら70℃で保持されている上記均一溶液に、各々同時に10時間かけて五分の一ずつ分割装入し、さらに70℃で5時間混合攪拌し重合反応を行った。反応液断面積に対する攪拌面積(攪拌翼の浸漬部分の1/2面積)は60%であった。
室温まで冷却後、濾過および2−メトキシエタノールによる濾塊の洗浄を行ったところ非常にスムーズに短時間で操作が完了した。最後に洗浄された濾塊を50℃の減圧オーブン(60mmHg)内で72時間乾燥させて、重量平均分子量Mw=53.5万、分子量分布Mw/Mn=3.2の白色共重合体42.9g(収率82.5%)を得た。
[実施例8] SPAK−GMAポリマーの製造<フルゾーン翼 0.50m/sec,基質濃度21重量%>
イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位と、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)に対応する構成単位とからなるポリマーのもう一つの製造例として、SPAK−GMAポリマーの製造を行った。
フルゾーン翼を用いた反応容器(攪拌槽)に、減圧下で超音波照射して脱ガスされたメタノール986.0gと3−スルホプロピルアクリレートカリウム塩(以下SPA−Kと略す。)232.3g(1.00モル)を装入し、フルゾーン翼を接線速度0.50m/secで攪拌しながら加熱還流(内温64℃)している混合液に、GMA 28.4g(0.20モル)とアゾビスイソブチロニトリル 0.2gを装入し、そのまま加熱還流下(内温64〜65℃)で6時間混合攪拌し重合を行った。ここで反応液断面積に対する攪拌面積(攪拌翼の浸漬部分の1/2面積)は55%であった。
室温まで冷却後、析出したポリマーを濾過し、濾塊をメタノールでの洗浄を行ったところ非常にスムーズに短時間で操作が完了した。最後に洗浄された濾塊を50℃の減圧オーブン(50mmHg)内で秤量に達するまで乾燥し、重量平均分子量Mw=23.3万、分子量分布Mw/Mn=4.7の白色共重合体225.0g(収率86.3%)を得た。
[実施例9] VS−AAポリマーの製造<マックスブレンド翼 0.5m/sec,反応基質濃度50重量% 晶析基質濃度2重量%>
イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位からなるポリマーの製造例として、VS−AAポリマーの製造を行った。ここで、本実施例では、本発明の製造方法による攪拌を晶析工程で行った。
減圧下で超音波照射して脱ガスされた純水 21.1gと水酸化ナトリウム 7.40g(0.185モル)を半月状翼を有する反応容器で混合攪拌溶解し、次いで混合攪拌下で純度95%のビニルスルホン酸 21.1g(0.185モル)をPH7.2まで滴下して中和した。得られた中和液を60℃に昇温し、重合開始剤として2.5重量%の過硫酸アンモニウム水溶液 5.78g を加えた後に、アクリル酸 5.71g(0.079モル)を3時間かけて滴下し、引き続き60℃で22時間混合攪拌して熟成し、その後室温まで冷却した。
メタノール 1500g(1.9リットル)が装入されてマックスブレンド翼で攪拌中(0.5m/sec接線速度)の晶析容器(攪拌槽)中に、上記の冷却された基質濃度50重量%の反応液を室温で滴下し、結晶を析出させた。この晶析工程での基質濃度は2重量%であり晶析液断面積に対するマックスブレンド翼の攪拌面積(攪拌翼の浸漬部分の1/2面積)は62%であった。
得られた結晶を濾過にて取出したところ短時間で濾過が完了し、得られた濾塊を50℃の減圧オーブン(60mmHg)内で72時間乾燥させることで、重量平均分子量Mw=10.2万、分子量分布Mw/Mn=3.1、ビニルスルホン酸ユニット/アクリル酸ユニット比=82/18(モル比)の白色共重合体 26.8g(収率90.1%)を得た。
[実施例10] VS−MAAポリマーの製造<マックスブレンド翼 0.5m/sec反応基質濃度50重量% 晶析基質濃度13重量%>
減圧下で超音波照射して脱ガスされた純水 27.4g、同様に脱ガスされたメタノール27.9gと水酸化ナトリウム16.6g(0.415モル)をマックスブレンド翼を有する反応容器で混合撹拌溶解し、次いで混合撹拌下で純度95%のビニルスルホン酸 47.1g(0.414モル)をPH7.8まで滴下して中和した。得られた中和液を60℃に昇温し、重合開始剤として2.5重量%の過硫酸アンモニウム水溶液8.8gを重合開始剤として加えた後に、メタクリル酸 16.0g(0.186モル)を3時間かけて滴下し、引き続き60℃で20時間混合撹拌して熟成し、その後室温まで冷却した。
メタノールとエタノールの混合液(重量比で1:1)400g(0.5リットル)が装入されてマックスブレンド翼で撹拌中(0.5m/sec接線速度)の晶析容器(攪拌槽)中に、上記の冷却された基質濃度50重量%反応液を室温で滴下し、結晶を析出させた。この晶析工程での基質濃度は13重量%であり、晶析液断面積に対するマックスブレンド翼の撹拌面積(撹拌翼の浸漬部分の1/2面積)は49%であった。
得られた結晶を濾過にて取出したところ短時間で濾過が完了し、得られた濾塊を50℃の減圧オーブン(60mmHg)内で72時間乾燥させることで、重量平均分子量Mw=10.4万、分子量分布Mw/Mn=4.6の白色共重合体59.2g(収率82%)を得た。
[実施例11] MPC−GMA−KBE503ポリマーの製造<マックスブレンド翼 0.5m/sec 反応基質濃度15重量% 晶析基質濃度3.5重量%>
メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC) 15.2g(0.0515モル)と減圧下で超音波照射して脱ガスされたイソプロパノール 92.2g をマックスブレンド翼を有する反応容器に装入し混合撹拌しながら内温を63℃まで昇温した。次いで同様に脱ガスされたイソプロパノール 5.2g、グリシジルメタクリレート(GMA) 0.92g(0.0065モル)、およびメタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン(KBE−503) 1.88g(0.0065モル)の混合液と、パーブチルO 0.10gと同様に脱ガスされたイソプロパノール 7.0gの混合液とを、同時に3時間かけて滴下し、引き続き63℃で24時間撹拌し、その後室温まで冷却した。
メタノールとエタノールの混合液(重量比で1:1) 400g(0.5リットル) が装入されてマックスブレンド翼で撹拌中(0.5m/sec接線速度)の晶析容器(攪拌槽)中に、上記の冷却された基質濃度15重量%反応液を室温で徐々に加えて、結晶を析出させた。この晶析工程での基質濃度は3.5重量%であり、晶析液断面積に対するマックスブレンド翼の撹拌面積(撹拌翼の浸漬部分の1/2面積)は47%であった。
得られた結晶を濾過にて取出したところ短時間で濾過が完了し、得られた濾塊を50℃の減圧オーブン(60mmHg)内で72時間乾燥させることで、重量平均分子量Mw=23.5万、分子量分布Mw/Mn=1.6の白色共重合体9.6g(収率53%)を得た。
[実施例12] 実施例11で得られたMPC−GMA−KBE503ポリマーの硬化性組成物、硬化物、および積層体の製造
<硬化性組成物(コーティング溶液)の調製>
下記表5の混合順に従い各成分を混合し、セルロース製の細孔径5μmのフィルターを通して硬化性組成物(コーティング溶液)Bを調製した。
Figure 2019131763
(硬化物(コーティング膜)および積層体の形成)
表面が洗浄されたガラス板(水接触角8°以下)の上に、上記コーティング液Bをスピンコーター(500rpm×10秒で滴下し2200rpm×60秒で成膜)で塗布し、50℃のオーブンで3分間予備乾燥した後、150℃オーブンで3時間加熱し、ガラス上に親水性硬化物(コーティング膜)が形成された積層体を得た。
(硬化物(コーティング膜)および積層体の評価)
得られた積層体の硬化物(コーティング膜)表面を流水下でベンコットM−3 II(旭化成せんい株式会社製)を用いて擦り洗いし、エアガンで乾燥した後、硬化物(コーティング膜)が積層された積層体の評価を行った。結果を表6に掲載する。
Figure 2019131763

Claims (15)

  1. イオン性基含有ポリマーの製造方法であって、
    攪拌槽中において攪拌翼を用いて液を攪拌する工程を含み、
    前記攪拌する工程が、
    前記イオン性基を含有するモノマーの重合を行う反応工程、および/または
    前記イオン性基含有ポリマーの晶析を行う晶析工程
    に於いて行われ、
    前記反応工程においては、前記液が前記モノマーおよび/または前記イオン性基含有ポリマーを含み、
    前記晶析工程においては、前記液が前記イオン性基含有ポリマーを含み、且つ、
    前記液の、前記攪拌槽における当該液の中心を通る縦軸方向の断面積をA0とし、前記攪拌翼の表面積のうち、当該攪拌翼が前記液に浸漬している部分の1/2面積に相当する面積をA1としたときに、A1/A0が0.10以上0.90以下の関係を満たす、
    粒径が3μm以上の粒子の形状を有するイオン性基含有ポリマーの製造方法。
  2. 前記イオン性基含有ポリマーが、イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)を含む組成物を重合して得られるポリマーである請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記組成物が、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー(B)および/またはアルコキシシリル基を有するラジカル重合性モノマー(C)をさらに含む請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記イオン性基含有ポリマーを構成する全構成単位の数に対する、前記イオン性基を有するラジカル重合性モノマー(A)に対応する構成単位の数の割合が40〜100%の範囲である請求項2または3に記載の製造方法。
  5. 前記攪拌翼が、アンカー翼、リボン翼、マックスブレンド翼、フルゾーン翼、スーパーミックス翼、HI−Fミキサー翼、およびフルファインミックス翼から選ばれる1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記攪拌翼の最先端での回転接線速度が0.1〜30m/secである請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記反応工程および/または前記晶析工程において、イオン性基含有ポリマーの貧溶媒としてアルコールまたはアルコールと水との混合溶媒を用いる請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記反応工程で用いる反応溶媒及び/または前記晶析工程で用いる晶析溶媒として、アルコールまたはアルコールと水との混合溶媒を用いる請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記イオン性基がスルホン酸基である請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法で得られるイオン性基含有ポリマー。
  11. 請求項10に記載のイオン性基含有ポリマーを含む硬化性組成物を硬化して得られる硬化物のイオン性基傾斜度(Sa/Sb)が1.1以上である硬化物。
  12. 硬化物の水接触角が30°以下である請求項11に記載の硬化物。
  13. 請求項11または12に記載の硬化物からなる、厚さが0.001〜1000μmの膜。
  14. 請求項11または12に記載の硬化物からなる層を少なくとも1つ有する積層体。
  15. 用途が光学物品である請求項14に記載の積層体。
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