JP2019130509A - チタン酸ストロンチウム系粒子、チタン酸ストロンチウム系粒子の製造方法、光触媒形成用組成物、光触媒、光触媒膜、及び構造体 - Google Patents

チタン酸ストロンチウム系粒子、チタン酸ストロンチウム系粒子の製造方法、光触媒形成用組成物、光触媒、光触媒膜、及び構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】可視光応答型の光触媒機能と耐久性とに優れる光触媒膜を形成しうる光触媒粒子を提供する。【解決手段】金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物が表面に結合しており、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ、チタン酸ストロンチウム系粒子。【選択図】なし

Description

本発明は、チタン酸ストロンチウム系粒子、チタン酸ストロンチウム系粒子の製造方法、光触媒形成用組成物、光触媒、光触媒膜、及び構造体に関する。
特許文献1には、炭化水素基を有する金属含有化合物により表面処理され、可視吸収スペクトルにおける450nm及び750nmに吸収を持ち、かつ赤外吸収スペクトルにおける2700cm−1〜3000cm−1に吸収ピークを持つ酸化チタン粒子が開示されている。
特許文献2には、炭化水素基を有する金属含有化合物により表面処理され、可視吸収スペクトルにおける450nm及び750nmに吸収を持ち、かつ赤外吸収スペクトルにおける2700cm−1〜3000cm−1に吸収ピークを持つメタチタン酸粒子が開示されている。
特許文献3には、シリカ粒子に、チタン原子に酸素原子を介して炭化水素基が結合した構造を有するチタン化合物が反応した被覆層を有し、可視吸収スペクトルにおける450nm及び750nmに吸収を持つシリカ粒子が開示されている。
特開2017−159293号公報 特開2017−160116号公報 特開2017−160117号公報
特許文献1〜3に開示されている可視光応答型の光触媒粒子は、一般的には、形状が球状である。
本開示は、可視光応答型の球状の光触媒粒子に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐久性とに優れる光触媒膜を形成しうる光触媒粒子を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
[1]
金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物が表面に結合しており、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ、チタン酸ストロンチウム系粒子。
[2]
赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm−1以上3000cm−1以下の範囲に吸収ピークを持ち、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ、チタン酸ストロンチウム系粒子。
[3]
SrOとTiOとのモル比SrO/TiOが0.75以上0.95以下である、[1]又は[2]に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
[4]
体積平均粒径が0.02μm以上0.3μm以下である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
[5]
可視吸収スペクトルにおいて波長400nm以上800nm以下の全範囲に吸収を持つ、[1]〜[4]のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
[6]
金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物が酸素原子を介して表面に結合している、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
[7]
前記金属原子がケイ素原子である、[6]に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
[8]
前記炭化水素基が、炭素数1以上20以下の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である、[6]又は[7]に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
[9]
前記炭化水素基が、炭素数4以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基である、[8]に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
[10]
未処理のチタン酸ストロンチウム系粒子を、金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物により表面処理する工程と、
前記表面処理する工程中又は後に、前記金属化合物により表面処理されたチタン酸ストロンチウム系粒子を加熱処理する工程と、
を含む、[1]〜[9]のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子の製造方法。
[11]
[1]〜[9]のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子と、分散媒及びバインダからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物と、を含む光触媒形成用組成物。
[12]
[1]〜[9]のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子を含む、又は、からなる光触媒。
[13]
[1]〜[9]のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子と、バインダとを含む、光触媒膜。
[14]
[1]〜[9]のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子を有する構造体。
[15]
基材と、前記基材上に配置された[13]に記載の光触媒膜とを有する構造体。
[1]、[2]、[5]、[6]、[8]又は[9]に係る発明によれば、可視光応答型の球状の光触媒粒子に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐久性とに優れる光触媒膜を形成しうる光触媒粒子が提供される。
[3]に係る発明によれば、SrOとTiOとのモル比SrO/TiOが0.75未満又は0.95超であるチタン酸ストロンチウム系粒子に比べて、可視光応答型の光触媒機能に優れるチタン酸ストロンチウム系粒子が提供される。
[4]に係る発明によれば、体積平均粒径が0.02μm未満又は0.3μm超であるチタン酸ストロンチウム系粒子に比べて、可視光応答型の光触媒機能に優れるチタン酸ストロンチウム系粒子が提供される。
[7]に係る発明によれば、金属化合物の金属原子がアルミニウム原子又はチタン原子であるチタン酸ストロンチウム系粒子に比べて、可視光応答型の光触媒機能に優れるチタン酸ストロンチウム系粒子が提供される。
[10]に係る発明によれば、前記加熱処理する工程を行わない場合に比べて、可視光応答型の光触媒機能に優れるチタン酸ストロンチウム系粒子の製造方法が提供される。
[11]に係る発明によれば、可視光応答型の球状の光触媒粒子を含む光触媒形成用組成物に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐久性とに優れる光触媒膜を形成しうる光触媒形成用組成物が提供される。
[12]に係る発明によれば、可視光応答型の球状の光触媒粒子を含む光触媒に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐久性とに優れる光触媒が提供される。
[13]に係る発明によれば、可視光応答型の球状の光触媒粒子を含む光触媒膜に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐久性とに優れる光触媒膜が提供される。
[14]に係る発明によれば、可視光応答型の球状の光触媒粒子を含む構造体に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐久性とに優れる構造体が提供される。
[15]に係る発明によれば、可視光応答型の球状の光触媒粒子を含む光触媒膜に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐久性とに優れる光触媒膜を備えた構造体が提供される。
光触媒膜に含まれる立方体粒子及び球状粒子を示す模式図である。
以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
<チタン酸ストロンチウム系粒子>
第一の本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物が表面に結合しており、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ。本開示において、金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物を「有機金属化合物」ともいう。
第二の本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm−1以上3000cm−1以下の範囲に吸収ピークを持ち、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ。
第一の本実施形態のごとく、チタン酸ストロンチウム系粒子の表面に有機金属化合物が結合していることにより、第二の本実施形態のごとく、赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm−1以上3000cm−1以下の範囲に吸収ピークを持つことが実現されやすい。換言すれば、チタン酸ストロンチウム系粒子が赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm−1以上3000cm−1以下の範囲に吸収ピークを持つことは、チタン酸ストロンチウム系粒子が表面改質されており、有機金属化合物が表面に結合していることの指標である。
第一の本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、詳細な機構は不明であるが、有機金属化合物が粒子表面に結合しており、有機金属化合物の炭化水素基が適度に炭化又は酸化されていることにより、粒子表面が波長450nm及び750nmに光吸収性を示し、可視光応答型の光触媒機能を発現すると推測される。
また、第二の本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、詳細な機構は不明であるが、赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm−1以上3000cm−1以下の範囲に吸収ピークを持つように表面改質されていることにより、粒子表面が波長450nm及び750nmに光吸収性を示し、可視光応答型の光触媒機能を発現すると推測される。
第一及び第二の本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、可視光応答型の球状の光触媒粒子に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐久性とに優れる光触媒膜を形成しうる。この機構は、次のように推測される。以下、第一の本実施形態と第二の本実施形態とに共通する事項については、本実施形態と総称して説明する。
チタン酸ストロンチウム系粒子は、通常、ペロブスカイト結晶構造を有し立方体若しくは直方体又はこれらに近い粒子形状であるので、基板に面接触して配置され、1つの面を基板の反対方向に向けて並びやすい(図1参照)。それにより、チタン酸ストロンチウム系粒子は、
(1)バインダと共に光触媒膜を形成した場合において、球状粒子に比べて、表面占有率が大きく、また、
(2)バインダを増量しても表面占有率が変動しにくいので、バインダを多めに使用することができ、耐久性に優れる光触媒膜を形成できる。
その結果、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子によれば、可視光応答型の球状の光触媒粒子に比べて、可視光応答型の光触媒機能と耐久性とに優れる光触媒膜を形成しうる。
本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、下記の観点からも有利である。
本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、表面に炭化水素基を有することにより、表面改質されていないチタン酸ストロンチウム系粒子に比べて、樹脂中又は溶媒中での分散性がよい。したがって、均一に近い塗膜が形成でき、効率よくチタン酸ストロンチウム系粒子に光が当たり、光触媒機能が発揮されやすい。また、チタン酸ストロンチウム系粒子を含む組成物を基材の表面に塗布するとき、チタン酸ストロンチウム系粒子の凝集又は塗布欠陥が抑制され、長期にわたり光触媒機能が発揮されやすい。
以下、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子の特性について説明する。
[チタン酸ストロンチウム系粒子の特性]
本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ。
本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、可視光応答型の光触媒機能に優れる観点から、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm、600nm及び750nmに吸収を持つことが好ましく、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm以上750nm以下の全範囲に吸収を持つことがより好ましく、可視吸収スペクトルにおいて波長400nm以上800nm以下の全範囲に吸収を持つことが特に好ましい。
本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、可視光応答型の光触媒機能に優れる観点から、紫外可視吸収スペクトルにおいて、波長350nmの吸光度を1としたとき、波長450nmの吸光度が0.02以上(より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上)であることが好ましく、波長600nmの吸光度が0.02以上(より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上)であることが好ましく、波長750nmの吸光度が0.02以上(より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上)であることが好ましい。
チタン酸ストロンチウム系粒子の紫外可視吸収スペクトルは、波長200nm以上900nm以下の範囲の拡散反射スペクトルを測定し、拡散反射スペクトルからKubelka-Munk変換により理論的に各波長における吸光度を求めて得る。
第二の本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm−1以上3000cm−1以下の範囲に吸収ピークを少なくとも一つ持つ。
第一の本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm−1以上3000cm−1以下の範囲に吸収ピークを少なくとも一つ持つことが好ましい。
本実施形態において赤外吸収スペクトルの吸収ピークとは、吸収強度(吸光度)0.022(透過率で5%)以上の吸収を意味する。
チタン酸ストロンチウム系粒子の赤外吸収スペクトルは、KBr錠剤法により、波数500cm−1以上4000cm−1以下の範囲を測定して得る。
本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子の体積平均粒径は、0.02μm以上0.3μm以下が好ましく、0.03μm以上0.3μm以下がより好ましい。チタン酸ストロンチウム系粒子の体積平均粒径が0.02μm以上であると、チタン酸ストロンチウム系粒子が凝集しにくく、光触媒機能を発現しやすい。チタン酸ストロンチウム系粒子の体積平均粒径が0.3μm以下であると、量に対する面積割合(比表面積)が大きくなり、光触媒機能に優れる。このため、チタン酸ストロンチウム系粒子の体積平均粒径を上記範囲にすると光触媒機能に優れる。
チタン酸ストロンチウム系粒子の体積平均粒径は、動的光散乱式粒度測定装置を用いて測定する。動的光散乱式粒度測定装置は、分散質のブラウン運動を利用して粒子径を測定するものであり、溶液にレーザー光を照射し、その散乱光を検出することにより粒子径を測定する。動的光散乱式粒度測定装置により測定された粒度を基にして、体積基準の粒度分布を小径側から描き、累積50%となる粒径を体積平均粒径とする。
以下、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子の構成について説明する。
本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、表面改質されたチタン酸ストロンチウム系粒子である。本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子は、未処理のチタン酸ストロンチウム系粒子を、金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物(有機金属化合物)により表面処理し、加熱処理により前記炭化水素基の一部を炭化又は酸化してなるチタン酸ストロンチウム系粒子であることが好ましい。本開示において、未処理のチタン酸ストロンチウム系粒子を「母粒子」ともいう。
[未処理のチタン酸ストロンチウム系粒子(母粒子)]
本実施形態においてチタン酸ストロンチウム系粒子とは、チタンとストロンチウムとの複合酸化物であって、ペロブスカイト型の結晶構造を有する粒子である。本実施形態においてチタン酸ストロンチウム系粒子には、組成式がSrTiOであるチタン酸ストロンチウム粒子のみならず、SrOとTiOとのモル比SrO/TiOが1を外れる、チタンとストロンチウムとの複合酸化物粒子も含まれる。
本実施形態においてチタン酸ストロンチウム系粒子は、SrOとTiOとのモル比SrO/TiOが0.75以上0.95以下であることが好ましい。組成が本範囲であるチタン酸ストロンチウム系粒子は、ペロブスカイト型の結晶構造を形成して、粒子形状が立方体若しくは直方体又はこれらに近い形状となりやすい。モル比SrO/TiOは、より好ましくは0.80以上0.90以下である。
本実施形態においてチタン酸ストロンチウム系粒子には、チタン及びストロンチウム以外の金属元素(「ドーパント」ともいう。)がドープされていてもよい。ドーパントは、例えば、チタン酸ストロンチウム系粒子の粒径又は形状を制御する目的でチタン酸ストロンチウム系粒子に含ませる。チタン酸ストロンチウム系粒子のドーパントとしては、ランタノイド(例えば、ランタン、セリウム)、シリカ、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、リン、硫黄、カルシウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ガリウム、イットリウム、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、ビスマスが挙げられる。
[未処理のチタン酸ストロンチウム系粒子(母粒子)の製造方法]
母粒子の製造方法は、特に制限されず、焼成法でも湿式法のいずれでもよい。母粒子の製造方法としては、粒径、粒子形状又は組成を制御する観点からは湿式法が好ましく、湿式法で製造した粒子を焼結する製造方法でもよい。
チタン酸ストロンチウム系粒子の湿式製法は、例えば、酸化チタン源とストロンチウム源との混合液にアルカリ水溶液を添加しながら反応させ、次いで酸処理を行う製造方法である。本製造方法においては、酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合、反応初期の酸化チタン源濃度、アルカリ水溶液を添加するときの温度及び添加速度などによって、チタン酸ストロンチウム系粒子の粒径が制御される。
酸化チタン源としてはチタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品が好ましい。ストロンチウム源としては、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
酸化チタン源とストロンチウム源の混合割合は、SrO/TiOモル比で0.85以上1.4以下が好ましく、0.9以上1.3以下がより好ましい。反応初期の酸化チタン源濃度は、TiOとして0.05モル/L以上5.0モル/L以下である。
チタン酸ストロンチウム系粒子にドーパントを含有させる場合には、酸化チタン源とストロンチウム源との混合液にドーパント源を添加する。ドーパント源としては、チタン及びストロンチウム以外の金属の酸化物が挙げられる。ドーパント源としての金属酸化物は、例えば、硝酸、塩酸又は硫酸に溶解した溶液として添加する。
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。アルカリ水溶液を添加するときの反応液の温度は、高いほど結晶性の良好なチタン酸ストロンチウム系粒子が得られる。アルカリ水溶液を添加するときの反応液の温度は、例えば50℃以上100℃以下である。アルカリ水溶液の添加速度は、添加速度が遅いほど大きな粒子径のチタン酸ストロンチウム系粒子が得られ、添加速度が速いほど小さな粒子径のチタン酸ストロンチウム系粒子が得られる。アルカリ水溶液の添加速度は、例えば、仕込み原料に対し0.001当量/h以上1.5当量/h以下である。
アルカリ水溶液を添加した後、未反応のストロンチウム源を取り除く目的で酸処理を行う。酸処理は、例えば塩酸を用いて、反応液のpHを2.5以上7.0以下の範囲、より好ましくは4.5以上6.0以下の範囲に調整する。酸処理後、反応液を固液分離し、固形分を乾燥処理してチタン酸ストロンチウム系粒子が得られる。
チタン酸ストロンチウム系粒子の湿式製法については、特開2015−137208号公報に詳しく開示されており、本実施形態においては該公報に開示の製法を適用して母粒子を製造してよい。また、特開平6−305729号公報、特開2003−277054号公報などに開示されている製造方法を適用して母粒子を製造してよい。
[金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物(有機金属化合物)]
本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子の表面に結合している有機金属化合物は、母粒子の表面処理に用いられた有機金属化合物に由来する。
本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子において、有機金属化合物は、可視光応答性をより発現しやすい観点から、金属原子、炭素原子、水素原子及び酸素原子のみからなる金属化合物であることが好ましい。
有機金属化合物は、可視光応答性をより発現しやすい観点から、チタン酸ストロンチウム系粒子の表面に酸素原子を介して結合していることが好ましい。有機金属化合物は、可視光応答性をより発現しやすい観点から、該有機金属化合物中の金属原子Mに直接結合した酸素原子Oを介してチタン酸ストロンチウム系粒子の表面に結合していること、即ち、M−O−Ti又はM−O−Srなる共有結合によってチタン酸ストロンチウム系粒子の表面に結合していることが好ましい。
有機金属化合物は、可視光応答性をより発現しやすい観点から、金属原子Mと金属原子Mに直接結合した炭化水素基とを有する有機金属化合物であることが好ましい。該有機金属化合物は、該有機金属化合物中の金属原子Mに直接結合した酸素原子Oを介してチタン酸ストロンチウム系粒子の表面に結合していることが好ましい。即ち、チタン酸ストロンチウム系粒子の表面には、可視光応答性をより発現しやすい観点から、炭化水素基と、金属原子Mと、酸素原子Oと、チタン原子Ti又はストロンチウム原子Srとが共有結合で順に連なった構造(炭化水素基−M−O−Ti又は炭化水素基−M−O−Sr)が存在することが好ましい。
有機金属化合物を構成する金属原子としては、可視光応答性をより発現しやすい観点から、ケイ素、アルミニウム又はチタンが好ましく、ケイ素又はアルミニウムがより好ましく、ケイ素が特に好ましい。
有機金属化合物が有する炭化水素基としては、炭素数1以上40以下(好ましくは炭素数1以上20以下、より好ましくは炭素数1以上18以下、更に好ましくは炭素数4以上12以下、更に好ましくは炭素数4以上10以下)の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上27以下(好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数6以上18以下、更に好ましくは炭素数6以上12以下、更に好ましくは炭素数6以上10以下)の芳香族炭化水素基が挙げられる。
有機金属化合物が有する炭化水素基は、可視光応答性の発現及び分散性の向上の観点から、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、分散性の観点から、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1以上20以下が好ましく、1以上18以下がより好ましく、4以上12以下が更に好ましく、4以上10以下が更に好ましい。
有機金属化合物が有する炭化水素基の詳細は、後述する表面処理工程において使用する有機金属化合物における炭化水素基と同様であり、好ましい形態も同様である。
<チタン酸ストロンチウム系粒子の製造方法>
本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子の製造方法は、特に制限はないが、有機金属化合物により未処理のチタン酸ストロンチウム系粒子(母粒子)を表面処理する工程(表面処理工程)と、表面処理する工程中又は後に、有機金属化合物により表面処理されたチタン酸ストロンチウム系粒子を加熱処理する工程(加熱処理工程)と、を含むことが好ましい。
[表面処理工程]
表面処理工程は、有機金属化合物と母粒子の表面とを反応させる工程である。表面処理工程において、有機金属化合物中の反応性基(例えば、ハロゲノ基、アルコキシ基等の加水分解性基)と、母粒子の表面に存在する反応性基(例えば、水酸基)とが反応し、母粒子の表面処理がなされる。
表面処理方法としては、特に制限はないが、例えば、有機金属化合物自体を直接、母粒子に接触させる方法;溶媒に有機金属化合物を溶解させた処理液を、母粒子に接触させる方法;が挙げられる。具体的には、例えば、母粒子を溶媒に分散した分散液に、攪拌下で、有機金属化合物自体又は処理液を添加する方法;ヘンシェルミキサー等の攪拌などにより流動している状態の母粒子に、有機金属化合物自体又は処理液を添加(滴下、噴霧等)する方法;が挙げられる。
表面処理に用いる有機金属化合物としては、金属原子と該金属原子に直接結合した炭化水素基とを有する有機金属化合物が好ましい。有機金属化合物が複数個の炭化水素基を有する場合、少なくとも1個の炭化水素基が、該有機金属化合物中の金属原子に直接結合していることが好ましい。
有機金属化合物の金属原子としては、ケイ素、アルミニウム又はチタンが好ましく、ケイ素又はアルミニウムがより好ましく、ケイ素が特に好ましい。
有機金属化合物が有する炭化水素基としては、炭素数1以上40以下(好ましくは炭素数1以上20以下、より好ましくは炭素数1以上18以下、更に好ましくは炭素数4以上12以下、更に好ましくは炭素数4以上10以下)の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6以上27以下(好ましくは炭素数6以上20以下、より好ましくは炭素数6以上18以下、更に好ましくは炭素数6以上12以下、更に好ましくは炭素数6以上10以下)の芳香族炭化水素基が挙げられる。
有機金属化合物が有する炭化水素基は、可視光応答性の発現及び分散性の向上の観点から、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、分散性の観点から、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1以上20以下が好ましく、1以上18以下がより好ましく、4以上12以下が更に好ましく、4以上10以下が更に好ましい。
有機金属化合物としては、炭化水素基を有するシラン化合物が特に好ましい。炭化水素基を有するシラン化合物としては、例えば、クロロシラン化合物、アルコキシシラン化合物、シラザン化合物(ヘキサメチルジシラザン等)などが挙げられる。
表面処理に用いる炭化水素基を有するシラン化合物としては、可視光応答性の発現及び分散性の向上の観点から、式(1):R SiR で表される化合物が好ましい。
式(1):R SiR において、Rは炭素数1以上20以下の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を表し、Rはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、nは1以上3以下の整数を表し、mは1以上3以下の整数を表し、但しn+m=4である。nが2又は3の整数である場合、複数のRは同じ基でもよいし、異なる基でもよい。mが2又は3の整数である場合、複数のRは同じ基でもよいし、異なる基でもよい。
で表される脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、分散性の観点から、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、可視光応答性の発現及び分散性の向上の観点から、炭素数1以上20以下が好ましく、炭素数1以上18以下がより好ましく、炭素数4以上12以下が更に好ましく、炭素数4以上10以下が更に好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和及び不飽和のいずれでもよいが、可視光応答性の発現及び分散性の向上の観点から、飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
飽和脂肪族炭化水素基としては、直鎖状アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、イコシル基等)、分岐鎖状アルキル基(イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーペンチル基、イソペンタデシル基等)、環状アルキル基(シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等)などが挙げられる。
不飽和脂肪族炭化水素基としては、アルケニル基(ビニル基(エテニル基)、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ドデセニル基、ペンテニル基等)、アルキニル基(エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ヘキシニル基、2−ドデシニル基等)などが挙げられる。
脂肪族炭化水素基は、置換された脂肪族炭化水素基も含む。脂肪族炭化水素基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
で表される芳香族炭化水素基は、炭素数6以上20以下が好ましく、より好ましくは炭素数6以上18以下、更に好ましくは炭素数6以上12以下、更に好ましくは炭素数6以上10以下である。
芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフタレン基、アントラセン基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基は、置換された芳香族炭化水素基も含む。芳香族炭化水素基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、エポキシ基、グリシジル基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロイル基、アクリロイル基等が挙げられる。
で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましい。
で表されるアルコキシ基としては、炭素数1以上10以下(好ましくは1以上8以下、より好ましくは3以上8以下)のアルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシロキシ基、2−エチルヘキシロキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は、置換されたアルコキシ基も含む。アルコキシ基に置換し得る置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、アミド基、カルボニル基等が挙げられる。
式(1):R SiR で表される化合物は、可視光応答性の発現及び分散性の向上の観点から、Rが飽和脂肪族炭化水素基である化合物が好ましい。特に、式(1):R SiR で表される化合物は、Rが炭素数1以上20以下の飽和脂肪族炭化水素基であり、Rがハロゲン原子又はアルコキシ基であり、nが1以上3以下の整数であり、mが1以上3以下の整数であり、但しn+m=4であることが好ましい。
式(1):R SiR で表される化合物として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、デシルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン(以上、n=1、m=3);
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジクロロジフェニルシラン(以上、n=2、m=2);
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、デシルジメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン(以上、n=3、m=1);
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(以上、Rが、置換された脂肪族炭化水素基又は置換された芳香族炭化水素基である化合物);
などのシラン化合物が挙げられる。シラン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
式(1)で表されるシラン化合物における炭化水素基は、可視光応答性の発現及び分散性の向上の観点から、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。上記シラン化合物における炭化水素基は、可視光応答性の発現及び分散性の向上の観点から、炭素数1以上20以下の飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1以上18以下の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましく、炭素数4以上12以下の飽和脂肪族炭化水素基が更に好ましく、炭素数4以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
有機金属化合物の金属原子がアルミニウムである化合物としては、例えば、ジ−i−プロポキシアルミニウム・エチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤;などが挙げられる。
有機金属化合物の金属原子がチタンである化合物としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート等のチタネート系カップリング剤;ジ−i−プロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシビス(トリエタノールアミナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシチタンジアセテート、ジ−i−プロポキシチタンジプロピオネート等のチタニウムキレート;などが挙げられる
有機金属化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機金属化合物と溶媒とを混合してなる処理液を用いる場合、処理液の調製に用いる溶媒としては、有機金属化合物と相溶性のある化学物質であれば特に制限されない。処理液の調製に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、トルエン、酢酸エチル、アセトンなどの有機溶剤が好ましい。
前記処理液において、有機金属化合物の量は、溶媒100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下が好ましく、20質量部以上180質量部以下がより好ましく、50質量部以上150質量部以下が更に好ましい。
表面処理に用いる有機金属化合物の量は、チタン酸ストロンチウム系粒子100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下が好ましく、20質量部以上180質量部以下がより好ましく、30質量部以上150質量部以下が更に好ましい。有機金属化合物の量を10質量部以上にすると、可視光応答性が発現しやすく、また、分散性も高まる。有機金属化合物の量を200質量部以下にすると、チタン酸ストロンチウム系粒子の表面に存在する、有機金属化合物に由来する炭素量が過剰になることを抑え、余剰の炭素による光触媒機能の低下が抑制される。
有機金属化合物による母粒子の表面処理温度は、15℃以上150℃以下が好ましく、20℃以上100℃以下がより好ましい。表面処理時間は、10分間以上120分間以下が好ましく、30分間以上90分間以下がより好ましい。
表面処理後は、余剰の有機金属化合物や前記処理液の溶媒等の残渣を除去する目的で乾燥処理を行うことがよい。乾燥処理の方法は、特定制限はなく、例えば、真空乾燥法、噴霧乾燥法等の公知の乾燥法を適用する。乾燥温度は、20℃以上150℃以下が好ましい。
[加熱処理工程]
加熱処理は、母粒子を表面処理する工程中、又は、母粒子を表面処理する工程後に実施する。
加熱処理は、有機金属化合物により母粒子を表面処理するとき;表面処理後の乾燥処理をするとき;又は、乾燥処理後に別途、実施することができる。加熱処理する前に母粒子表面と有機金属化合物とを十分に反応させる観点から、表面処理後の乾燥処理をするとき、又は、乾燥処理後に別途、実施することが好ましく、乾燥処理を適切に実施する観点から、乾燥処理後に別途実施することがより好ましい。
加熱処理の温度は、可視光応答性の発現及び分散性の向上の観点から、180℃以上500℃以下が好ましく、200℃以上450℃以下がより好ましく、250℃以上400℃以下が更に好ましい。加熱処理の時間は、可視光応答性の発現及び分散性の向上の観点から、10分間以上300分間以下が好ましく、30分間以上120分間以下がより好ましい。母粒子を表面処理する工程中に加熱処理を行う場合は、先ず前記表面処理の温度で有機金属化合物を十分に反応させた後に前記加熱処理の温度で加熱処理を実施することが好ましい。表面処理後の乾燥処理において加熱処理を行う場合は、前記乾燥処理の温度は、加熱処理温度として実施する。
加熱処理の温度を180℃以上500℃以下とすることにより、可視光応答性を有するチタン酸ストロンチウム系粒子が効率的に得られる。180℃以上500℃以下で加熱処理すると、チタン酸ストロンチウム系粒子表面に存在する金属化合物由来の炭化水素基が適度に炭化又は酸化すると推測される。
加熱処理は、酸素濃度(体積%)が1%以上21%以下の雰囲気で行われることが好ましい。この酸素雰囲気で加熱処理を行うことにより、チタン酸ストロンチウム系粒子表面に存在する金属化合物由来の炭化水素基の炭化又は酸化を、適度に且つ効率よく行うことができる。酸素濃度(体積%)は、3%以上21%以下がより好ましく、5%以上21%以下が更に好ましい。
加熱処理の方法は、特に限定されず、例えば、電気炉、焼成炉(ローラーハースキルン、シャトルキルン等)、輻射式加熱炉等による加熱;レーザー光、赤外線、UV、マイクロ波等による加熱;など公知の加熱方法を適用する。
以上の工程を経て、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子が得られる。
<光触媒形成用組成物>
本実施形態に係る光触媒形成用組成物は、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子と、分散媒及びバインダからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物とを含む。
本実施形態に係る光触媒形成用組成物の態様としては、例えば、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子及び分散媒を含む分散液;本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子及び有機又は無機バインダを含む組成物;などが挙げられる。分散液は、粘度が高いペースト状のものであってもよい。
前記分散媒としては、水、有機溶媒等が好ましく用いられる。水としては、例えば、水道水、蒸留水、純水などが挙げられる。有機溶媒としては、特に制限はなく、例えば、炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒等が挙げられる。前記分散液は、分散安定性及び保存安定性の観点から、分散剤及び界面活性剤からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。分散剤及び界面活性剤としては、公知の化学物質が用いられる。分散液は、バインダをエマルションとして含んでいてもよい。
前記組成物に用いられるバインダとしては、特に制限はないが、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合(ABS)樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリサルファイド樹脂、ポリフェノール樹脂、これらの複合物、これらをシリコーン変性又はハロゲン変性させた樹脂等の有機系バインダ;ガラス、セラミック、金属粉などの無機系バインダ;が挙げられる。
本実施形態に係る光触媒形成用組成物は、上記以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、公知の添加剤が用いられ、例えば、助触媒、着色剤、充填剤、防腐剤、消泡剤、密着改良剤、増粘剤などが挙げられる。
本実施形態に係る光触媒形成用組成物は、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子を1種単独で含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
本実施形態に係る光触媒形成用組成物における本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子の含有量は、特に制限はなく、分散液、樹脂組成物等の各種態様、及び、所望の光触媒量等に応じて、適宜選択すればよい。
本実施形態に係る光触媒形成用組成物を用いる光触媒又は光触媒を有する構造体の製造方法としては、特に制限はなく、公知の付与方法が用いられる。本実施形態に係る光触媒形成用組成物の付与方法としては、例えば、ナイフコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、ディップコート法、スピンコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。
<光触媒>
本実施形態に係る光触媒は、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子を含む、又は、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子からなる。
本実施形態に係る光触媒は、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子のみからなる光触媒であってもよいし、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子に助触媒を混合した光触媒であっても、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子を接着剤や粘着剤により所望の形状に固めた光触媒であってもよい。
<光触媒膜>
本実施形態に係る光触媒膜は、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子と、バインダとを含む。
本実施形態に係る光触媒膜に用いられるバインダとしては、特に制限はないが、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合(ABS)樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリサルファイド樹脂、ポリフェノール樹脂、これらの複合物、これらをシリコーン変性又はハロゲン変性させた樹脂等の有機系バインダ;ガラス、セラミック、金属粉などの無機系バインダ;が挙げられる。
本実施形態に係る光触媒膜におけるチタン酸ストロンチウム系粒子の表面占有率(粒子が平面を覆う面積割合であり、光触媒膜の平面視での面積割合である。)は、光触媒機能の観点からは、4%以上が好ましく、6%以上がより好ましく、9%以上が更に好ましく、光触媒膜の堅牢性又は耐久性の観点からは、18%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、13%以下が更に好ましい。
本実施形態に係る光触媒膜におけるチタン酸ストロンチウム系粒子の単位面積当たりの含有量は、光触媒機能の観点からは、0.5g/m以上が好ましく、1g/m以上がより好ましく、3g/m以上が更に好ましく、光触媒膜の堅牢性又は耐久性の観点からは、25g/m以下が好ましく、20g/m以下がより好ましく、10g/m以下が更に好ましい。
本実施形態に係る光触媒膜は、光触媒機能と光触媒膜の堅牢性又は耐久性とのバランスの観点から、バインダ100質量部に対して、チタン酸ストロンチウム系粒子を18質量部以上95質量部以下含むことが好ましく、30質量部以上75質量部以下含むことがより好ましく、45質量部以上65質量部以下含むことが更に好ましい。
本実施形態に係る光触媒膜の単位面積当たりの重量は、光触媒活性及び耐久性の観点からは、1.6g/m以上が好ましく、2.1g/m以上がより好ましく、2.4g/m以上が更に好ましく、剥離、割れ又は反りを抑制する観点からは、3.1g/m以下が好ましく、2.9g/m以下がより好ましく、2.8g/m以下が更に好ましい。
本実施形態に係る光触媒膜の膜厚は、光触媒活性及び耐久性の観点からは、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましく、剥離、割れ又は反りを抑制する観点からは、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましい。
本実施形態に係る光触媒膜は、例えば、本実施形態に係る光触媒形成用組成物を基材上に付与することにより製造しうる。基材の好ましい形態は、後述のとおりである。光触媒形成用組成物を基材上に付与する方法は、前述のとおりである。
本実施形態に係る光触媒膜は、チタン酸ストロンチウム系粒子及びバインダ以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、公知の添加剤が用いられ、例えば、助触媒、着色剤、充填剤などが挙げられる。
<構造体>
本実施形態に係る構造体は、光触媒として、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子を有する。
本実施形態に係る構造体は、光触媒活性の観点から、本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子を少なくとも表面に有することが好ましい。
本実施形態に係る構造体は、基材表面の少なくとも一部に本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子を有する構造体であることが好ましく、基材表面の少なくとも一部に本実施形態に係る光触媒形成用組成物を付与して形成された構造体であることが好ましい。該構造体において、本実施形態に係る光触媒形成用組成物を付与する量は、特に制限はなく、所望に応じて選択すればよい。
本実施形態に係る構造体においては、基材表面に本実施形態に係るチタン酸ストロンチウム系粒子が付着した状態であってもよく、固定化されていてもよく、光触媒の耐久性の観点から、固定化されていることが好ましい。固定化方法は、特に制限はなく、公知の固定化方法が用いられる。
本実施形態に係る構造体としては、基材と、該基材上に配置された、チタン酸ストロンチウム系粒子及びバインダを含む光触媒膜と、を有する構造体が好ましい。光触媒膜の好ましい形態は、前述のとおりである。
本実施形態に係る構造体が備える基材としては、無機材料、有機材料を問わず種々の材料が挙げられ、その形状も限定されない。基材の好ましい例としては、ガラス、セラミックス、金属、耐熱樹脂、プラスチック、ゴム、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、木、紙、これらの組合せ、これらの積層体、これらの表面に少なくとも一層の被膜を有する物品が挙げられる。
用途の観点からみた基材の好ましい例としては、建材、外装材、窓枠、窓ガラス、鏡、テーブル、食器、カーテン、レンズ、プリズム、乗物の外装及び塗装、機械装置の外装、物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用遮音壁、鉄道用遮音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ポリマーフィルム、ポリマーシート、フィルター、屋内看板、屋外看板、車両用照明灯のカバー、屋外用照明器具、空気清浄器、浄水器、医療用器具、介護用品などが挙げられる。
基材と光触媒膜との間には、中間層が配置されていてもよい。中間層は、例えば、光触媒膜の光励起による基板の損傷を抑制する目的、光触媒膜の剥離、割れ又は反りを抑制する目的で設けられる。
中間層としては、例えば、クロム、アルミニウム、チタン、鉄等の金属又はこれらの合金;ケイ素、アルミニウム、タンタル、セリウム、インジウム、スズ等の金属酸化物;カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の金属フッ化物;からなる膜が挙げられる。中間層は、基板上に単層で積層しても、2層以上を積層させてもよい。中間層に、導電性材料、発熱材料などを含有させて機能化させてもよい。
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。
<母粒子の製造>
[母粒子(1)]
硫酸法で得られたメタチタン酸を脱鉄漂白処理した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH8.8とし、脱硫処理を行い、その後、塩酸によりpH5.7まで中和し、ろ別し水洗を行った。洗浄済みケーキに水を加えTiOとして1.85モル/Lのスラリーとした後、塩酸を加えpH1.0として解膠処理を行った。このメタチタン酸をTiO換算にして0.63モル採取し、3Lの反応容器に投入した。次いで、SrO/TiOモル比が1.14になるよう塩化ストロンチウム水溶液を0.71モル添加した後、TiO濃度を0.28モル/Lに調整した。次に、攪拌混合しながら90℃に加温した後、5N水酸化ナトリウム水溶液290mLを16時間かけて添加し、その後、95℃で1時間攪拌を続け反応を終了した。反応スラリーを50℃まで冷却し、pH5.0となるまで塩酸を加え1時間攪拌を続けた。得られた沈殿をデカンテーション洗浄し、ろ別後、120℃の大気中で8時間乾燥して、粒子を得た。この粒子の蛍光X線分析によるSrO/TiOモル比は0.89であった。
[母粒子(2)]
解膠処理したメタチタン酸をTiO換算にして0.18モル採取し、添加する塩化ストロンチウム水溶液を0.20モルにした後、初期TiO濃度を0.08モル/Lに調整した。アルカリ添加時間を40時間かけて添加し、その後、95℃で1時間攪拌を続け反応を終了した以外は母粒子(1)と同様に反応を行った。この粒子のSrO/TiOモル比は0.88であった。
[母粒子(3)]
解膠処理したメタチタン酸をTiO換算にして2.10モル採取し、添加する塩化ストロンチウム水溶液を2.38モルにした後、初期TiO濃度を0.94モル/Lに調整した。75℃に加温した後、アルカリ添加時間を1.5時間かけて添加し、その後、80℃で1時間攪拌を続け反応を終了した以外は母粒子(1)と同様に反応を行った。この粒子のSrO/TiOモル比は0.87であった。
[母粒子(4)]
解膠処理したメタチタン酸をTiO換算にして0.63モル採取し、メタチタン酸TiOに対して、SrO/TiOモル比が1.38になるように混合する塩化ストロンチウム水溶液の添加量を0.86モルに変更した以外は母粒子(1)と同様に反応を行った。この粒子のSrO/TiOモル比は0.93であった。
[母粒子(5)]
解膠処理したメタチタン酸をTiO換算にして0.63モル採取し、メタチタン酸TiOに対して、SrO/TiOモル比が0.88になるように混合する塩化ストロンチウム水溶液の添加量を0.55モルに変更した以外は母粒子(1)と同様に反応を行った。この粒子のSrO/TiOモル比は0.78であった。
<光触媒粒子の製造>
[実施例1]
母粒子(1)をトルエンに分散した分散液に、母粒子(1)100質量部に対して25質量部のヘキシルトリメトキシシランを滴下し、60℃で1.0時間反応させた後、出口温度120℃で噴霧乾燥して乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体に対し、電気炉で40℃、60分間の加熱処理を行い、チタン酸ストロンチウム系粒子(1)を得た。
チタン酸ストロンチウム系粒子(1)を50質量部、バインダであるシリコーンバインダKR−400(信越化学工業社製)を100質量部、及び溶剤であるトルエンを1350質量部混合し、分散処理して、光触媒膜形成用の塗布液を得た。塗布液をタイル(5cm四方)の一主面の全面に塗布し、乾燥させ、光触媒膜を形成した。
[比較例1]
母粒子(1)をそのままチタン酸ストロンチウム系粒子(C1)とした。そして、チタン酸ストロンチウム系粒子(1)をチタン酸ストロンチウム系粒子(C1)に変更した以外は実施例1と同様にして、光触媒膜を形成した。
[比較例2]
母粒子(1)に実施例1と同じ条件で加熱処理を行い、チタン酸ストロンチウム系粒子(C2)を得た。そして、チタン酸ストロンチウム系粒子(1)をチタン酸ストロンチウム系粒子(C2)に変更した以外は実施例1と同様にして、光触媒膜を形成した。
[比較例3]
加熱処理を行わなかった以外は実施例1と同様にして、チタン酸ストロンチウム系粒子(C3)を得た。そして、チタン酸ストロンチウム系粒子(1)をチタン酸ストロンチウム系粒子(C3)に変更した以外は実施例1と同様にして、光触媒膜を形成した。
[比較例4〜5]
加熱処理の条件を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、チタン酸ストロンチウム系粒子(C4)〜(C5)を得た。そして、チタン酸ストロンチウム系粒子(1)をチタン酸ストロンチウム系粒子(C4)又は(C5)に変更した以外は実施例1と同様にして、光触媒膜を形成した。
[実施例2〜15]
母粒子の種類、表面処理に用いる金属化合物の種類及び量、並びに加熱処理の条件を表1に記載のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、チタン酸ストロンチウム系粒子(2)〜(15)を得た。そして、チタン酸ストロンチウム系粒子(1)をチタン酸ストロンチウム系粒子(2)〜(15)のいずれかに変更した以外は実施例1と同様にして、光触媒膜を形成した。
[比較例A]
母粒子(1)を、市販のアナターゼ型酸化チタン粒子STR−100N(堺化学工業製)に変更した以外は実施例1と同様にして、表面改質した酸化チタン粒子を得た。そして、チタン酸ストロンチウム系粒子(1)を、表面改質した酸化チタン粒子に変更した以外は実施例1と同様にして、光触媒膜を形成した。
[比較例B]
比較例Aにおいて使用した、表面改質した酸化チタン粒子を用意した。そして、表面改質した酸化チタン粒子を100質量部、バインダであるシリコーンバインダKR−400(信越化学工業社製)を70質量部、及び溶剤であるトルエンを1530質量部混合し、分散処理して、光触媒膜形成用の塗布液を得た。塗布液をタイル(5cm四方)の一主面の全面に塗布し、乾燥させ、光触媒膜を形成した。
<光触媒粒子の物性の測定>
[母粒子のSrO/TiO
蛍光X線分析装置XRF1500(島津製作所製)を使用し、線源Kα線、電圧40kVの設定で母粒子の組成分析を行った。規定のSrO、TiOの標準サンプルを用いて検量線を作成し、粒子中の構成元素のNET強度によりSr/Ti比からSrO/TiOのモル比を算出した。
[光触媒粒子の体積平均粒径]
光触媒粒子をビーカーに1g入れ、陰イオン性界面活性剤(テイカパワーBN2060、テイカ株式会社製)をイオン交換水にて濃度12%に希釈した界面活性剤水溶液を1g添加し、粒子をぬらした。次いで、水3gを混合し、光触媒粒子分散液を得た。光触媒粒子分散液中の粒子の粒子径を動的光散乱式粒度測定装置(ナノトラックUPA−ST、マイクロトラック・ベル社製)を用いて、測定時間300秒間の条件で測定し、体積基準の粒度分布を得た。小径側から累積50%となる粒子径D50vを求め、D50vを体積平均粒子径(μm)とした(表1中「D50v」と表記する。)。
[紫外可視吸収スペクトル]
光触媒粒子をテトラヒドロフランに分散させた後、ガラス基板上に塗布し、大気中、24℃で乾燥させた。分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100)を使用し、スキャンスピード:600nm、スリット幅:2nm、サンプリング間隔:1nmに設定して、拡散反射配置で、波長200nm以上900nm以下の範囲の拡散反射スペクトルを測定した。拡散反射スペクトルから、Kubelka-Munk変換により理論的に各波長における吸光度を求め、紫外可視吸収スペクトルを得た。表1中の「UV−Vis特性」は、波長350nmの吸光度を1としたときの、波長450nm、波長600nm及び波長750nmそれぞれの吸光度である。
実施例1〜15のチタン酸ストロンチウム系粒子は、波長400nm以上800nm以下の全範囲に吸収を有していた。
[赤外吸収スペクトル]
赤外吸収スペクトル用臭化カリウム100mgに光触媒粒子1mgを混合し、錠剤成型器に入れて加圧製錠し、KBr錠剤を作製した。赤外分光光度計(日本分光株式会社製、FT−IR−410)を使用し、積算回数300回、分解能4cm−1の条件で、波数500cm−1以上4000cm−1以下の範囲を測定し、赤外吸収スペクトルを得た。
<光触媒粒子の性能評価>
[光触媒膜の光触媒活性]
光触媒膜の表面に、万年筆用インク(パイロットコーポレーション製INK−30−R)をメタノール・水混合液(メタノール:水=3:5)で15倍に希釈した希釈インクを噴霧塗布した後、乾燥し、試験片を作製した。
波長400nm以上800nm以下の可視光を照射する発光ダイオードを使用し(ただし、インクの吸収波長領域(波長450nm以上550nm以下)はフィルターでカットした。)、試験片に可視光(20000LX(ルクス))を、試験片作製直後から2時間連続照射した。その際、試験片の照射面中央部に5円玉を設置し、照射の遮蔽部分を形成した。
分光測色計(X−Rite Ci62、X−Rite社製)を用いて、試験片の照射部分と照射遮蔽部分とにおいてL値、a値、b値を測定した。下記の式に基づき色差ΔEを算出し、下記のとおりA〜Cに分類した。

式中、L、a、bは、可視光2時間連続照射後の照射部分のL値、a値、b値であり、L、a、bは、可視光2時間連続照射後の照射遮蔽部分のL値、a値、b値である。
A:色差ΔE値が、25以上。
B:色差ΔE値が、10以上、25未満。
C:色差ΔE値が、10未満。
[光触媒膜の耐久性]
光触媒膜に対して、表面に対する波長352nm、照射強度1.3mW/cmの強度で36時間の光線暴露を行った。グロスメーターGC−1(スガ試験機製)を使用して、初期値に対する照射後の60°グロス維持率を求め、下記のとおりA〜Cに分類した。
A:グロス維持率が85%以上。
B:グロス維持率が70%以上、85%未満。
C:グロス維持率が70%未満。
各実施例及び各比較例の組成、処理条件、物性及び評価結果を表1に示す。
表1に記載の有機金属化合物の詳細は、下記のとおりである。
・アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート:味の素製、プレンアクトAL−M
・イソプロピルトリイソステアロイルチタネート:味の素製、プレンアクトTTS

Claims (15)

  1. 金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物が表面に結合しており、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ、チタン酸ストロンチウム系粒子。
  2. 赤外吸収スペクトルにおいて波数2700cm−1以上3000cm−1以下の範囲に吸収ピークを持ち、可視吸収スペクトルにおいて波長450nm及び750nmに吸収を持つ、チタン酸ストロンチウム系粒子。
  3. SrOとTiOとのモル比SrO/TiOが0.75以上0.95以下である、請求項1又は請求項2に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
  4. 体積平均粒径が0.02μm以上0.3μm以下である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
  5. 可視吸収スペクトルにおいて波長400nm以上800nm以下の全範囲に吸収を持つ、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
  6. 金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物が酸素原子を介して表面に結合している、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
  7. 前記金属原子がケイ素原子である、請求項6に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
  8. 前記炭化水素基が、炭素数1以上20以下の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である、請求項6又は請求項7に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
  9. 前記炭化水素基が、炭素数4以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基である、請求項8に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子。
  10. 未処理のチタン酸ストロンチウム系粒子を、金属原子及び炭化水素基を有する金属化合物により表面処理する工程と、
    前記表面処理する工程中又は後に、前記金属化合物により表面処理されたチタン酸ストロンチウム系粒子を加熱処理する工程と、
    を含む、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子の製造方法。
  11. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子と、分散媒及びバインダからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物と、を含む光触媒形成用組成物。
  12. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子を含む、又は、からなる光触媒。
  13. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子と、バインダとを含む、光触媒膜。
  14. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のチタン酸ストロンチウム系粒子を有する構造体。
  15. 基材と、前記基材上に配置された請求項13に記載の光触媒膜とを有する構造体。
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