JP2019129818A - 核酸増幅試薬および当該試薬を用いた核酸増幅制御方法 - Google Patents

核酸増幅試薬および当該試薬を用いた核酸増幅制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】標的核酸の増幅・検出方法において、試料中に存在する極微量の標的核酸を、より高効率かつ再現性良く(高精度に)増幅し検出するための方法、および当該方法を利用した試薬を提供すること。【解決手段】RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素とDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素とリボヌクレアーゼH活性を有する酵素とRNAポリメラーゼ活性を有する酵素と標的核酸の一部と相補的な配列を有する第一のプライマーと、標的核酸の一部と相同的な配列を有する第二のプライマーとマグネシウム塩とピロリン酸分解酵素とを含む前記標的核酸の増幅試薬(ただし、前記第一のプライマーおよび前記第二のプライマーのいずれか一方には、その5’末端側に前記RNAポリメラーゼ活性を有する酵素のプロモータ配列を付加している)、および前記試薬を用いた標的核酸増幅法により、前記課題を解決する。【選択図】図3

Description

本発明は、DNAやRNA等の遺伝子混合物中に含まれると予想される、特定塩基配列を含む標的核酸の増幅試薬および当該試薬を用いた核酸増幅の制御方法に関するものである。さらに本発明は、前記標的核酸を増幅し、定性的または定量的に分析する方法および検出試薬に関する。本発明は遺伝子診断等の臨床診断分野での利用に有用であり、検体から直接、標的遺伝子を増幅・検出できることから、病気の迅速診断およびその治療に役立つだけでなく、前記病気が微生物に起因する場合、当該微生物の迅速かつ高感度な同定や、薬剤耐性遺伝子の検出にも有用である。
臨床診断で用いられる遺伝子検査では、臨床試料中の核酸が極微量であることが多いため、当該試料中に含まれる標的核酸を増幅して信号強度を向上することで、高感度かつ良好な再現性のある測定を実現している。
標的核酸の増幅方法としては、例えばPCR(ポリメラーゼチェーンリアクション)法があげられる。この方法は、標的核酸中の特定DNA配列の両末端部に相補的なプライマーおよび相同なプライマーからなる一組のプライマーと、耐熱性DNAポリメラーゼを用いて、熱変性、アニーリング、伸長反応からなる3ステップのサイクルを繰り返すことで、前記特定DNA配列を含むポリヌクレオチドを増幅できる。一方、標的核酸がRNAの場合は、PCR法を実施する前に、鋳型となるRNAから逆転写酵素によってcDNAを合成する必要がある。すなわち、cDNA合成工程およびPCR反応工程の2つの工程を要するため、操作が煩雑である。またPCR法は、急激な昇温、降温を必要とするため、特殊なインキュベーターを必要とし、大量処理を目的とした自動化への適用は容易ではない。さらに熱変性、アニーリング、伸長反応からなる3ステップのサイクルを繰り返し行なう必要があるため、迅速化にも限界がある。
一方、標的RNAの簡便な増幅方法として、NASBA(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification)法(特許文献1および2、非特許文献1)、TMA(Transcription Mediated Amplification)法(特許文献3)、TRC(Transcription−Reverse transcription Concerted reaction)法(特許文献4および非特許文献2)などが報告されている。これらの方法は、標的RNAに対してプロモーター配列を含むプライマーと、逆転写酵素およびリボヌクレアーゼH(RNase H)を用いて、プロモーター配列を含む2本鎖DNAを生成し、RNAポリメラーゼにより特定塩基配列を含むRNAを生成し、以後は、当該生成されたRNAを、前記プロモーター配列を含む2本鎖DNA合成の鋳型とする連鎖反応を行なうものである。これらの方法でRNAを増幅する際、RNAに対する相補DNA鎖を合成するRNA依存性DNAポリメラーゼ活性、RNA−cDNA二本鎖のRNAを分解するRNase H活性、およびcDNAに対する相補DNA鎖を合成するDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する、AMV逆転写酵素がよく用いられる。これらの増幅方法は、比較的低温(例えば41℃から46℃)の一定温度で反応が可能であるため、自動化への適用が容易である。また鎖置換活性を有する酵素を添加することで、比較的低温の一定温度下でのDNA増幅も可能である(特許文献5)。しかしながら、前述した比較的低温の一定温度下での標的核酸の増幅が可能な反応では、PCR反応とは異なり、室温下においても反応が進行する可能性がある。したがって、多数の検体の増幅反応を同時に開始し、比較評価することは困難であった。
試料中に含まれる標的核酸を定量する方法として、リアルタイムPCRが知られている。しかしながら、PCRによる増幅効率および正確さは、処理温度、前記核酸の塩基配列、反応溶液成分の濃度や種類等の様々な要因によって左右される。そのため標的核酸量(濃度)をPCR最終産物の濃度測定またはPCR過程におけるリアルタイム測定によって正確に決定することは、困難であった。
近年、この問題を解決し、微量な標的DNAを正確に定量する技術として、デジタルPCRが開発された(非特許文献3)。デジタルPCRでは、標的DNAを含む溶液を、多数の微小区画に分配して、個々の微小区画で同時並行にPCRが行なわれる。1つまたは複数のターゲット分子を含む微小区画もあれば、ターゲット分子を全く含まない微小区画も存在するが、PCR終了後に微小区画毎にPCR増幅の有無を検出し、ポアソンモデルを用いることで、標的DNAの濃度が算出される。また微量な標的RNAを正確に定量する方法としては、あらかじめ逆転写酵素を用いてcDNAを合成した後、前述したデジタルPCRを用いる方法や、増幅方法をNASBA法に置き換えたデジタルNASBA法(特許文献6、非特許文献3)を用いる方法があげられる。
しかしながら、デジタルNASBA法は、増幅方法として、前述した比較的低温の一定温度下で標的核酸を増幅する反応であるNASBA法を用いているため、室温下においても増幅反応が進行する可能性がある。すなわち反応液を調製した後、微小区画に分配するまでに増幅反応が進行する可能性があるため、高精度な定量は極めて困難であった。したがって、試料中に存在する極微量の標的RNAをより高効率に再現性良く検出するためには、特に室温下における前記増幅反応を制御する必要があった。
一定温度下での標的核酸増幅における制御方法として、微小区画に予め入れておいた反応開始剤である酢酸マグネシウムと、反応液とを、当該微小区画内で混合させた後、RPA(Recombinase Polymerase Amplification)法(特許文献7)による等温でのDNA増幅反応を開始させる方法があげられる(非特許文献5)。しかしながら、マイクロ流体チップの構造が複雑であり多数の微小区画を有するマイクロ流体チップの作製が必要である。さらに増幅反応が酢酸マグネシウムの溶解度に依存しており、場合によっては、酢酸マグネシウムが凝集し、マグネシウムがイオン化しないことも考えられる。そのため微小区画間で核酸増幅反応のばらつきが発生する問題があった。このような誤差が生じることは、デジタル核酸増幅において致命的である。
特開平2−005864号公報 特表平4−503451号公報 特表平4−500759号公報 特開2000−014400号公報 特開2015−116136号公報 米国公開2014/0141502号公報 特開2008−188020号公報
de Baar,M.P. et.al, Journal of Clinical Microbiology,39,1895−1902(2001) Ishiguro,T. et al,Analytical Biochemistry,314,77−86(2003) Vogelstein,B. et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,96,9236−9241(1999) Cunningham P.R. et al,Biotechniques,9,713−714(1990) S.Yang,A. et al,Science Advances,3,e1501645(2017)
本発明の課題は、標的核酸の増幅・検出方法において、試料中に存在する極微量の標的核酸を、より高効率かつ再現性良く(高精度に)増幅し検出するための方法、および当該方法を利用した試薬を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の態様は以下の通り例示できる。
[1]RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、リボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素と、RNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、標的核酸の一部と相補的な配列を有する第一のプライマーと、標的核酸の一部と相同的な配列を有する第二のプライマーと、マグネシウム塩と、を含む前記標的核酸の増幅試薬(ただし、前記第一のプライマーおよび前記第二のプライマーのいずれか一方には、その5’末端側に前記RNAポリメラーゼ活性を有する酵素のプロモータ配列を付加している)であって、
ピロリン酸分解酵素をさらに含む、前記増幅試薬。
[2]マグネシウム塩がピロリン酸マグネシウムである、[1]に記載の増幅試薬。
[3]RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素およびRNase H活性を有する酵素が、AMV逆転写酵素である、[1]または[2]に記載の増幅試薬。
[4]5’末端側にRNAポリメラーゼ活性を有する酵素のプロモータ配列を付加したプライマーに対して5’末端側の位置にある、標的核酸の一部と相補的(前記プライマーが第一のプライマーの場合)もしくは相同的(前記プライマーが第二のプライマーの場合)な配列を有する第三のプライマー、および/または鎖置換活性を有する酵素をさらに含む、[1]から[3]のいずれかに記載の増幅試薬。
[5][1]から[4]のいずれかに記載の増幅試薬と、増幅した標的核酸の一部と相補的二本鎖を形成すると形成前と比較し蛍光特性が変化するオリゴヌクレオチドプローブと、を含む前記標的核酸の検出試薬。
[6]以下の(1)及び(2)の工程を含む、標的核酸の増幅方法。
(1)標的核酸を含む試料を、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、リボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素と、RNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、前記標的核酸の一部と相補的な配列を有する第一のプライマーと、前記標的核酸の一部と相同的な配列を有する第二のプライマーと、ピロリン酸分解酵素とを含む反応液(ただし、前記第一のプライマーおよび前記第二のプライマーのいずれか一方には、その5’末端側に前記RNAポリメラーゼ活性を有する酵素のプロモータ配列を付加している)に添加する工程
(2)試料を添加した前記反応液を、ピロリン酸マグネシウムを含む開始剤に添加し、一定温度で核酸増幅反応させる工程
[7]以下の(1)から(5)の工程を含む、標的核酸の増幅方法。
(1)標的核酸を含む試料を、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、リボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素と、RNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、前記標的核酸の一部と相補的な配列を有する第一のプライマーと、前記標的核酸の一部と相同的な配列を有する第二のプライマーとを含む反応液(ただし、前記第一のプライマーおよび前記第二のプライマーのいずれか一方には、その5’末端側に前記RNAポリメラーゼ活性を有する酵素のプロモータ配列を付加している)に添加する工程
(2)試料を添加した前記反応液を、ピロリン酸マグネシウムまたはピロリン酸分解酵素を含む開始剤に添加し、混合する工程
(3)前記で得られた混合溶液を微細孔空間に分配する工程
(4)前記(2)でピロリン酸マグネシウムを添加する場合は、前記微細孔空間にピロリン酸分解酵素を添加し、
前記(2)でピロリン酸分解酵素を添加する場合は、前記微細孔空間にピロリン酸マグネシウムを添加する工程
(5)一定温度で核酸増幅反応させる工程
[8]反応液に、5’末端側にRNAポリメラーゼ活性を有する酵素のプロモータ配列を付加したプライマーに対して5’末端側の位置にある、標的核酸の一部と相補的(前記プライマーが第一のプライマーの場合)もしくは相同的(前記プライマーが第二のプライマーの場合)な配列を有する第三のプライマー、および/または鎖置換活性を有する酵素をさらに含む、[6]または[7]に記載の増幅方法。
[9]反応液に増幅した標的核酸の一部と相補的二本鎖を形成すると形成前と比較し蛍光特性が変化するオリゴヌクレオチドプローブをさらに含み、当該プローブを用いて、[6]から[8]のいずれかに記載の増幅方法で得られた標的核酸増幅産物を検出する、標的核酸の検出方法。
以下、本発明について詳細に説明する。
<1>本発明の増幅試薬
本発明の増幅試薬は、NASBA法、TMA法、TRC法といった比較的低温(例えば、41℃から46℃)の一定温度で一本鎖RNAを増幅可能な方法で用いる酵素およびプライマーに加え、ピロリン酸(PPi)分解酵素をさらに加えることを特徴としている。本発明の増幅試薬が、標的RNAを増幅する試薬である場合の一態様として、以下の(A)から(J)の成分を含む試薬があげられる。なお以下の(A)および(B)のいずれか一方には、その5’末端側に以下の(G)のプロモータ配列を付加している。また一般的に使用される増幅反応に必要という理由以外の理由で、より好ましい別の成分を添加してもよい。
(A)標的核酸の一部と相補的な配列を有する第一の一本鎖オリゴヌクレオチド(第一のプライマー)、
(B)標的核酸の一部と相同的な配列を有する第二の一本鎖オリゴヌクレオチド(第二のプライマー)、
(C)RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、
(D)デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs)、
(E)RNaseH活性を有する酵素、
(F)DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、
(G)DNA依存性RNAポリメラーゼ活性を有する酵素、
(H)リボヌクレオシド三リン酸(NTPs)、
(I)PPi分解酵素
(J)マグネシウム塩
本発明の増幅試薬で増幅される増幅核酸は、他の核酸から区別し得る程度に特異的な配列部分を(A)および(B)に含んでいる限り、任意に決定できる。
前述したように(A)および(B)のいずれか一方は、その5’末端側に以下の(G)のプロモータ配列を付加している。なお付加するプライマーと前記プロモータ配列との間に、数から数十ヌクレオチドからなるエンハンサー配列を挿入してもよい。
(A)から(J)の成分のうち、(C)、(E)および(F)の成分は、それぞれ異なる酵素を用いてもよいし、一部または全部を共通の酵素としてもよい。中でも、トリ筋芽細胞腫ウイルス(AMV)逆転写酵素は、(C)、(E)および(F)の成分を全て包含する酵素であり、本発明の増幅試薬として特に好ましい態様である。
(G)の成分の一例として、T7 RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼがあげられる。なお(A)および(B)のいずれか一方に付加させるプロモータ配列は、(G)で用いる成分(ポリメラーゼ)に対応した配列を付加させればよい。
本発明の増幅試薬の特徴は(I)の成分を含むことである。(I)の成分は、核酸増幅反応の副産物であるPPiと前記増幅試薬に含まれる成分(例えば(J)の成分)とが結合し生成する不溶性物質を分解できる。そのため前記増幅産物を光学的手法で特異的に検出する(例えば、標的核酸の一部と相補的二本鎖を形成すると形成前と比較し蛍光特性が変化するオリゴヌクレオチドプローブを用いて検出する)場合、前記不溶性物質由来のバックグラウンドが低減し、試料中に含まれる標的核酸を再現性良く(高精度に)検出できる。PPi分解酵素の一例として、Pyrophosphatase,Inorganic from baker’s yeast(S.cerevisiae)[I1643](Sigma−Aldrich社製)、Pyrophosphatase,inorganic(PPase)[10108987001](Roche社製)、Pyrophosphatase,Inorganic(yeast)[M2403]、Thermostable Inorganic Pyrophosphatase[M0296]、Pyrophosphatase,Inorganic(E.coli)[M0361](以上New England BioLabs社製)があげられる。なお(I)の成分の添加量は、増幅対象である標的核酸、反応温度や、標的核酸の核酸増幅反応により増幅試薬内で発生し得るPPiの量などを考慮し、適宜設定すればよい。
(J)の成分は、標的核酸の増幅に必要な酵素((C)、(E)、(F)および(G)の成分)ならびに(I)の成分がその機能(酵素活性)を有するために必須の成分である。(J)の成分の一例として、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性のマグネシウム塩があげられる。
なお(J)の成分をPPiマグネシウムとすると、(I)の成分による核酸増幅反応の制御ができる点で好ましい。(J)の成分がPPiマグネシウムのみの場合、PPiマグネシウム自体は難水溶性のマグネシウム塩のため、前述した標的核酸の増幅に必要な酵素の活性はほとんどない(増幅反応が抑制された状態)。しかしながら、僅かに溶解したPPiマグネシウムから生成するマグネシウムイオンと(I)の成分とによるPPiマグネシウムの分解反応が進行し、試薬中に含まれるマグネシウムイオンが増加すると前記標的核酸の増幅に必要な酵素の活性が戻り、標的核酸の増幅が可能になる。なおPPiマグネシウムは一つの試薬として含んでもよく、水溶性のマグネシウム塩とPPiとを別の試薬として添加し、溶液内で反応して得られた態様であってもよい。後者におけるPPiの添加量は、増幅対象である標的核酸、反応温度や、増幅試薬中に含まれる水溶性のマグネシウム塩の濃度もしくはその他組成などを考慮し、適宜設定すればよい。
前記(A)から(J)の成分を含む本発明の増幅試薬を用いて、試料中に含まれる標的核酸を制御しつつ増幅させる場合は、例えば、(J)の成分をPPiマグネシウムとし、以下の工程に従い、前記標的核酸を増幅させればよい。
(a−1)標的核酸を含む試料を(A)から(I)の成分を含む反応液に添加する工程
(a−2)試料を添加した前記反応液に(J)の成分を含む開始剤を添加し、一定温度で核酸増幅反応させる工程
なお(a−2)の工程のうち(J)の成分を含む開始剤を添加する際の操作温度は、その後の核酸増幅反応を行なう際の温度(例えば41℃から46℃)と同じ温度としてもよく、当該反応温度よりも低い温度(例えば0℃前後の氷冷や25℃前後の室温)としてもよい。特に(I)の成分が耐熱性酵素(例えば、New England BioLabs社製Thermostable Inorganic Pyrophosphatase[M0296])の場合、後者の温度とすると、(I)および(J)の成分による標的核酸増幅反応の制御をより効率的に行なえる。
また本発明の増幅試薬を標的DNAの増幅に適用する場合、NASBA法、TMA法、TRC法といった比較的低温(例えば、41℃から46℃)の一定温度で一本鎖RNAを増幅可能な方法で用いる酵素およびプライマー、ならびにピロリン酸分解酵素に加え、以下の(K)から(M)に示すいずれかの成分を添加すればよい。なお、鎖置換酵素とは鎖置換活性を有する酵素であり、本発明の一実施態様において、増幅反応に適用するとすでに合成されたDNAを一本鎖に乖離し、より早く増幅反応を進める効果を発揮するため好ましい。また、第三のプライマーは、本発明の一実施態様において、DNAを一本鎖に乖離するトリガーの機能を発揮するため好ましい。
(K)鎖置換活性を有する酵素
(L)5’末端側にRNAポリメラーゼ活性を有する酵素のプロモータ配列を付加したプライマーに対して5’末端側の位置にある、標的核酸の一部と相補的(前記プライマーが第一のプライマーの場合)または相同的(前記プライマーが第二のプライマーの場合)な配列を有する第三のプライマー
(M)(K)および(L)の成分
(K)の成分の一例として、Bsu DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ(Large Fragment)、96−7DNAポリメラーゼがあげられる。
<2>微小区画化方法
本発明の増幅試薬を用いて、標的核酸をデジタル核酸増幅させる場合は、本発明の増幅試薬を微小区画化する必要がある。微小区画化する方法として、微細孔をもった特殊なプレートを用いて、その微細孔に反応液を分配する方法(微細孔分配方式)や、反応液を特別な乳化剤やマイクロ流路チップを用いて多数の微小の液滴(ドロップレット)に分割する方法(ドロップレット方式)があげられる。微小区画のサイズは、5nL以下であることが好ましく、より好ましくは2nL以下であり、さらに好ましくは1nL以下である。微細孔分配方式で微小区画化する装置として、Thermo Fisher Scientific社製QuantStudio 3DデジタルPCRシステム、JN Medsys社製Clarity digital PCRシステムが市販されている。また、ドロップレット方式で微小区画化する装置として、Bio−Rad社製QX200TM Droplet Digital PCRシステム、RainDance Technologies社製RainDrop Plus Digital PCRシステムが市販されている。
<3>デジタル核酸増幅法
<2>で微小区画化した試薬を用いてデジタル核酸増幅を行なう際に、2液を混合して増幅反応を開始してもよい。例えば、マイクロ流路チップを用いて、Y字路により分散相の2液並行流を形成した直後に、連続相のシースフローによる流体抵抗力で液滴を生成(微小区画化)させる方法がある、またSlipChipを用いて、互いに対向する2つの表面(複数の第一の微小区画領域を有する第一の表面および複数の第二の微小区画領域を有する第二の表面)をスリップさせて、前記複数の第一の微小区画領域と、前記複数の第二の微小区画領域とを、1:1で連結することで、各微小領域内の液を混合することができる。
なお<2>の微小区画化方法として微細孔分配方式を採用した場合、標的核酸を含む試料と前記(A)から(H)および(J)の成分を含む溶液とを混合させた後、(I)の成分を別途添加して核酸増幅反応を行なってもよく、標的核酸を含む試料と前記(A)から(I)の成分を含む溶液とを混合させた後、(J)の成分を別途添加して核酸増幅反応を行なってもよい。具体的には例えば、(J)の成分をPPiマグネシウムとし、以下の(b−1)から(b−4)または(c−1)から(c−4)に示す工程に従い、前記標的核酸を増幅させればよい。
(b−1)標的核酸を含む試料を、前記(A)から(H)の成分を含む反応液に添加す
る工程
(b−2)試料を添加した前記反応液に前記(J)の成分を含む開始剤を添加する工程
(b−3)前記開始剤を添加した溶液を微細孔空間に分配する工程
(b−4)前記微細孔空間に前記(I)の成分を添加し、一定温度で核酸増幅反応させる工程
(c−1)標的核酸を含む試料を、前記(A)から(H)の成分を含む反応液に添加する工程
(c−2)試料を添加した前記反応液に前記(I)の成分を含む開始剤を添加する工程
(c−3)前記開始剤を添加した溶液を微細孔空間に分配する工程
(c−4)前記微細孔空間に前記(J)の成分を添加し、一定温度で核酸増幅反応させる工程
なお(b−4)の工程における前記(I)の成分の追加は、例えば、前記(I)の成分を含む溶液をあらかじめ微細孔空間に添加した後、(b−3)の工程で分配された溶液と接触させることで行なえばよい。また前記(I)の成分をあらかじめ微細孔空間の壁面に塗布または固定化させた後、(b−3)の工程で分配された溶液と接触させることで行なってもよい。また(c−4)の工程における前記(J)の成分の追加は、例えば、前記(J)の成分を含む溶液をあらかじめ微細孔空間に添加した後、(c−3)の工程で分配された溶液と接触させることで行なえばよい。また前記(J)の成分をあらかじめ微細孔空間の壁面に塗布または固定化させた後、(c−3)の工程で分配された溶液と接触させることで行なってもよい。前記固定化の方法は、前記(I)の成分または前記(J)の成分が活性を有する限り、その方法に限定はなく、物理的な固定化でもよく、化学的な固定化でもよく、抗原抗体反応やビオチン−アビジン(ストレプトアビジン)を利用した固定化といった生物学的な固定化でもよい。
<4>検出方法
本発明の増幅試薬で増幅した標的核酸は、あらかじめまたは増幅反応後に検出用成分を添加し、当該成分由来の蛍光や化学発光強度を測定することで、標的核酸を検出すればよい。検出用成分の好ましい態様として、増幅した標的核酸の一部と相補的二本鎖を形成すると形成前と比較し蛍光特性が変化するオリゴヌクレオチドプローブがあげられる。
前記プローブの一例として、標的核酸の一部と相補的または相同的な配列を有するインターカレーター性蛍光色素を結合したDNAがあげられる。前記DNA部分の配列は、標的核酸中に存在する配列であって、標的核酸以外の核酸と十分に区別可能な部分と相補的または相同的な配列である必要がある。前記DNA部分の長さは、標的核酸の特異的分析のため、6から100ヌクレオチド、さらに好ましくは10から30ヌクレオチドとすることが好ましい。なお前記DNA部分は、増幅した標的核酸と相補結合を形成した場合に、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素による3’末端からの伸長が生じないように、当該3’末端に増幅した標的核酸と非相補的な配列が付加されているか、または、その3’末端が化学的に修飾(例えばアミノ化)されていることが好ましい。
インターカレーター性蛍光色素は、前述したDNA部分が他の核酸と相補結合を形成すると二本鎖部分にインターカレーションして蛍光特性が変化するものである。この目的のためには、例えば、インターカレーター性蛍光色素を、二本鎖部分へのインターカレーションを妨げない程度の適当な分子長リンカーを介してDNAと結合すればよい。かかるリンカーとしては、インターカレーター性蛍光色素が二本鎖部分にインターカレーションすることを妨げない分子であれば特に制限はない。特に両末端に官能基を有する二官能性炭化水素から選択されるリンカー分子は、オリゴヌクレオチドへの修飾を行なう上で簡便で好ましい。また市販の試薬セット(例えば、Clontech社製C6−Thiolmodifier)を使用してもよい。
インターカレーター性蛍光色素としては、二本鎖にインターカレーションすることで、例えば発する蛍光波長が変動したりする等、その蛍光特性が変化するものであれば特に制限はないが、測定の容易さ等の観点からインターカレーションにより蛍光強度が増加する性質を有するものが特に好ましい。具体的には、蛍光強度の変化が特に著しい、チアゾールオレンジやオキサゾールイエロー、ならびにそれらの誘導体が、好ましいインターカレーター性蛍光色素として例示できる。
インターカレーター性蛍光色素をリンカーを介してDNA部分に結合させる位置は、当該DNA部分の5’末端、3’末端又は中央部等、インターカレーター性蛍光色素の二本鎖へのインターカレーションが妨げられず、かつ、DNA部分とRNAとの相補結合を阻害しない限り特に制限はない。
増幅した標的核酸の一部と相補的二本鎖を形成すると形成前と比較し蛍光特性が変化するオリゴヌクレオチドプローブの別の例として、モレキュラービーコンがあげられる。モレキュラービーコンは、標的核酸の一部と相補的または相同的な配列を有するDNAであり、その両端に蛍光色素とクエンチャーを有するステムループ構造になっている。ステムループ構造の状態では、蛍光色素の蛍光がクエンチャーにより抑制されているが、ループ配列中に存在する標的RNAに相補的な領域が反応中に生じた増幅産物とハイブリダイズするとステム部分が開裂し発光を発する。ステムの形成は、分子内でDNAの二本鎖を形成し、会合能の高い蛍光色素(Cy3など)とクエンチャー(アゾ化合物など)のペアをDNAに導入することで形成できる。
増幅した標的核酸の一部と相補的二本鎖を形成すると形成前と比較し蛍光特性が変化するオリゴヌクレオチドプローブのさらに別の例として、FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)プローブがあげられる。この場合、標的核酸の配列において、増幅に用いた第一および第二のプライマーの内側に設計された2本のプローブを使用する。2本のプローブのうち、一方のプローブの3’末端にはドナー蛍光色素を、もう一方のプローブの5’末端にはアクセプター蛍光色素を、それぞれ修飾する。2本のプローブのDNA配列をハイブリダイゼーションするとドナー蛍光色素とアクセプター蛍光色素が近接するように設計することで、2本のプローブが反応中に生じた増幅産物とハイブリダイゼーションすることにより生じるFRET現象により検出できる。
増幅した標的核酸の一部と相補的二本鎖を形成すると形成前と比較し蛍光特性が変化するオリゴヌクレオチドプローブのさらにまた別の例として、TaqManプローブがあげられる。この場合、標的核酸の配列において、増幅に用いた第一および第二のプライマーの内側に設計された1本のプローブを使用する。TaqManプローブの5’末端には蛍光色素(レポーター色素)を、3’末端にはクエンチャーを、それぞれ標識する。レポーター色素の蛍光はクエンチャーにより抑制されているが、DNAポリメラーゼによるプライマーの伸長反応時に、標的RNAにプローブがハイブリダイズしていると、5’→3’エキソクレアーゼ活性によりプローブが分解され、リポーター色素が遊離することで生じる蛍光により検出できる。
本発明の標的核酸増幅試薬は、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素とDNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素とリボヌクレアーゼH活性を有する酵素とRNAポリメラーゼ活性を有する酵素と標的核酸の一部と相補的な配列を有する第一のプライマーと標的核酸の一部と相同的な配列を有する第二のプライマーとマグネシウム塩とを含む前記標的核酸の増幅試薬(ただし、前記第一のプライマーおよび前記第二のプライマーのいずれか一方には、その5’末端側に前記RNAポリメラーゼ活性を有する酵素のプロモータ配列を付加している)であって、ピロリン酸分解酵素をさらに含むことを特徴としている。
本発明によれば、比較的低温の一定温度下での、試料中に含まれる標的核酸の増幅反応において、室温下での核酸増幅反応を制御することができる。したがって、様々な試料中に含まれる標的核酸の増幅反応を同時に開始し、比較評価することが可能となる。またバックグラウンドが高くなる原因である、不溶性物質の発生を抑制できるため、試料中に含まれる標的核酸をより高効率かつ再現性良く(高精度に)増幅し検出できる。
実施例1および比較例1の結果を示した図(蛍光プロファイル)。 実施例2および比較例2の結果のうち、PPiを5mM含んだ系での結果を示した図(蛍光プロファイル)。 実施例2および比較例2の結果のうち、PPiを7mM含んだ系での結果を示した図(蛍光プロファイル)。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。
実施例1 ピロリン酸分解酵素の添加によるRNA検出への影響(その1)
一定温度で一本鎖RNAを増幅可能な系(NASBA法、TMA法、TRC法など)にピロリン酸(PPi)分解酵素をさらに添加することによる、RNA検出への影響を評価した。
(1)C型肝炎ウイルス標準RNA(以下、単に標準RNAとも表記する)遺伝子が挿入されたプラスミドから、in vitro転写により、前記標準RNAを調製した。当該標準RNA(配列番号1)を注射用水を用いて10コピー/2μLとなるように希釈し、これをRNA試料とした。
(2)以下の組成からなる反応液を調製した後、前記RNA試料を10コピー/反応液12μLとなるよう添加した。なお、標準RNA検出用プローブであるINAFプローブ(配列番号2)は、当該配列の10番目のCと11番目のGとの間にリンカーを介してインターカレーター性蛍光色素であるオキサゾールイエローを結合させた核酸プローブである。また第一のプライマー(配列番号3)は、標準RNAの相補鎖の一部(具体的には配列番号1の125番目から145番目まで:配列番号5)の5’末端側にT7プロモーター配列(配列番号6)を付加したオリゴヌクレオチドである。
反応液の組成:濃度は後述の開始剤添加後(20μL中)の最終濃度
66mM Tris−HCl緩衝液(pH8.36)
各0.33mM dATP、dCTP、dGTP、dTTP
各2.0mM ATP、CTP、GTP、TTP
3.3mM ITP
96.3mM トレハロース
50nM INAFプローブ(標準RNAの相同鎖の一部[配列番号1の107番目から123番目まで]:配列番号2)
3.0μM 第一のプライマー(配列番号3)
3.0μM 第二のプライマー(標準RNAの相同鎖の一部[配列番号1の1番目から16番目まで]:配列番号4)
12.8U AMV逆転写酵素(ライフサイエンス社製)
166U T7 RNAポリメラーゼ
PPi分解酵素(0.2U 酵母(Yeast)由来PPi分解酵素[M2403]、0.2U 大腸菌(E.coli)由来PPi分解酵素[M0361]、4U耐熱性PPi分解酵素[M0296]のいずれか)(New England BioLabs社製)
(3)上記の反応液を46℃で3分間保温後、あらかじめ以下の組成からなる開始剤8μLを分注した、0.5mL容量PCRチューブ(Individual Dome Cap PCR Tube、SSI社製)に12μL添加した。
開始剤の組成:濃度は開始剤添加後(20μL中)の最終濃度
18.4mM 塩化マグネシウム
90.0mM 塩化カリウム
0.1%(w/v) Tween 20
9.0%(v/v) DMSO
注射用水または5mM PPi
(4)引き続きPCRチューブを直接測定可能な温調機能付き蛍光分光光度計を用い、46℃で反応させると同時に反応液の蛍光強度(励起波長470nm、蛍光波長520nm)を経時的に30分間測定した。
比較例1
実施例1(2)に記載の反応液組成中、PPi分解酵素を除いた他は、実施例1と同様に標準RNAの増幅を試みた。
開始剤添加時を0分として、反応液の蛍光強度比(所定時間の蛍光強度値をバックグラウンドの蛍光強度比で割った値)が1.2を超えた場合を陽性判定とし、そのときの時間を検出時間とした結果を表1に示す。
反応液中にPPi分解酵素を含んでいない系(比較例1)では、開始剤にPPiを含ませることでRNA試料が未検出または検出時間がかなり遅くなった(すなわち標準RNAの核酸増幅反応が完全またはかなり抑制された)。一方、反応液中にPPi分解酵素を含んでいる系(実施例1)では、開始剤にPPiが5mM含まれていても、標準RNAを検出できた(すなわち標準RNAの核酸増幅反応が維持された)。このことから、一定温度で一本鎖RNAを増幅可能な系に、開始液中に含まれるPPiと塩化マグネシウムとの反応で生成するPPiマグネシウムがさらに含まれることで、核酸増幅の制御をPPi分解酵素で行なえることがわかる。
一方、実施例1および比較例1の測定で得られた蛍光プロファイルを図1に示す。開始剤にPPiを含まない系で比較したところ、反応液中にPPi分解酵素を含まない系(比較例1)よりも反応液中にPPi分解酵素を含む系(実施例1)の方が蛍光強度比が高いことがわかる。このことから一定温度で一本鎖RNAを増幅可能な系にPPi分解酵素をさらに含ませることで、核酸増幅反応で発生し得るPPi由来の不溶性産物の発生を抑制し、結果、前記不溶性産物由来のバックグラウンドが低減するため、蛍光強度比が向上することがわかる。
実施例2 ピロリン酸分解酵素の添加によるRNA検出への影響(その2)
PPi分解酵素の添加の有無による効果をより明確にするため、PPi分解酵素として、実施例1で用いた分解酵素の中から、低温で反応が進みづらく、かつ46℃での耐性が高い耐熱性PPi分解酵素[M0296](New England BioLabs社製)を選択し、PPi分解酵素の添加によるRNA検出への影響を評価した。
(1)実施例1(2)に記載の組成からなる反応液をを調製した後、実施例(1)で調製したRNA試料を10コピー/反応液12μLとなるよう添加した。ただし前記反応液中、PPi分解酵素は、前述した耐熱性PPi分解酵素[M0296](New England BioLabs社製)を4U含ませている。
(2)上記の反応液を46℃で3分間保温後、以下の組成からなる開始剤8μLに12μL添加した。
開始剤の組成:濃度は開始剤添加後(20μL中)の最終濃度
18.4mM 塩化マグネシウム
90.0mM 塩化カリウム
0.1%(w/v) Tween 20
9.0%(v/v) DMSO
2mM、5mM、7mM、10mMもしくは15mM PPiまたは注射用水
(3)引き続きPCRチューブを直接測定可能な温調機能付き蛍光分光光度計を用い、46℃で反応させると同時に反応液の蛍光強度(励起波長470nm、蛍光波長520nm)を経時的に30分間測定した。
比較例2
実施例1(2)に記載の反応液組成中、PPi分解酵素を除いた他は、実施例2と同様に標準RNAの増幅を試みた。
開始剤添加時を0分として、反応液の蛍光強度比(所定時間の蛍光強度値をバックグラウンドの蛍光強度比で割った値)が1.2を超えた場合を陽性判定とし、そのときの時間を検出時間とした結果を表2に示す。また、実施例2および比較例2の測定で得られた蛍光プロファイルのうち、開始剤にPPiを5mM含んだ系と7mM含んだ系でのプロファイルを、図2および3にそれぞれ示す。
反応液中にPPi分解酵素を含んでいない系(比較例2)では、開始剤にPPiを含ませることでRNA試料の検出時間が遅くなった(すなわち標準RNAの核酸増幅反応が抑制された)。具体的には、開始剤にPPiを5mM含んだ系では、RNA試料の検出時間が大幅に遅くなり、蛍光プロファイルにおいても蛍光強度比の立ち上がりが極めて緩慢(図2)なことから、標準RNAの核酸増幅反応がほぼ抑えられていることがわかる。また開始剤にPPiを7mM以上含んだ系では、標準RNAの検出が全くできなくなった(すなわち標準RNAの核酸増幅反応が完全に抑えられた)。
一方、反応液中にPPi分解酵素を含んでいる系(実施例2)では、開始剤にPPiが含まれている系で、反応液中にPPi分解酵素を含んでいない系(比較例2)と比較し、標準RNAの核酸増幅反応が促進された。具体的には、開始剤にPPiを5mM含んだ系では、PPi分解酵素を含んでいない系(比較例2)と比較し、RNA試料の検出時間が大幅に速くなった。蛍光プロファイルにおいても蛍光強度比の立ち上がりが良好(図2)なことから、標準RNAの核酸増幅反応が大幅に促進されていることがわかる。またPPi分解酵素を含んでいない系(比較例2)では標準RNAを検出できなかった、開始剤にPPiを7mM含んだ系でも、標準RNAを検出できた。蛍光プロファイルにおいても蛍光強度比の立ち上がりが良好(図3)なことから、標準RNAの核酸増幅反応が維持されていることがわかる。
以上の結果から、一定温度で一本鎖RNAを増幅可能な系に、開始液中に含まれるPPiと塩化マグネシウムとの反応で生成するPPiマグネシウムをさらに含ませることで、核酸増幅の制御をPPi分解酵素で行なえることがわかる。なお、PPi分解酵素を含む系であっても、PPi存在下では、PPi非存在下と比較し、RNA試料の検出時間が遅れているが、これは分解酵素による分解時間がかかるためと考えており、蛍光プロファイル(図2および3)は非常に良好なことから、PPiを過剰量(本実施例の反応系では10mM以上)含ませない限りは、標準RNAの核酸増幅反応自体問題ないといえる。

Claims (9)

  1. RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、リボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素と、RNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、標的核酸の一部と相補的な配列を有する第一のプライマーと、標的核酸の一部と相同的な配列を有する第二のプライマーと、マグネシウム塩と、を含む前記標的核酸の増幅試薬(ただし、前記第一のプライマーおよび前記第二のプライマーのいずれか一方には、その5’末端側に前記RNAポリメラーゼ活性を有する酵素のプロモータ配列を付加している)であって、
    ピロリン酸分解酵素をさらに含む、前記増幅試薬。
  2. マグネシウム塩がピロリン酸マグネシウムである、請求項1に記載の増幅試薬。
  3. RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素およびRNase H活性を有する酵素が、AMV逆転写酵素である、請求項1または2に記載の増幅試薬。
  4. 5’末端側にRNAポリメラーゼ活性を有する酵素のプロモータ配列を付加したプライマーに対して5’末端側の位置にある、標的核酸の一部と相補的(前記プライマーが第一のプライマーの場合)もしくは相同的(前記プライマーが第二のプライマーの場合)な配列を有する第三のプライマー、および/または鎖置換活性を有する酵素をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の増幅試薬。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の増幅試薬と、増幅した標的核酸の一部と相補的二本鎖を形成すると形成前と比較し蛍光特性が変化するオリゴヌクレオチドプローブと、を含む前記標的核酸の検出試薬。
  6. 以下の(1)及び(2)の工程を含む、標的核酸の増幅方法。
    (1)標的核酸を含む試料を、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、リボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素と、RNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、前記標的核酸の一部と相補的な配列を有する第一のプライマーと、前記標的核酸の一部と相同的な配列を有する第二のプライマーと、ピロリン酸分解酵素とを含む反応液(ただし、前記第一のプライマーおよび前記第二のプライマーのいずれか一方には、その5’末端側に前記RNAポリメラーゼ活性を有する酵素のプロモータ配列を付加している)に添加する工程
    (2)試料を添加した前記反応液を、ピロリン酸マグネシウムを含む開始剤に添加し、一定温度で核酸増幅反応させる工程
  7. 以下の(1)から(5)の工程を含む、標的核酸の増幅方法。
    (1)標的核酸を含む試料を、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、リボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素と、RNAポリメラーゼ活性を有する酵素と、前記標的核酸の一部と相補的な配列を有する第一のプライマーと、前記標的核酸の一部と相同的な配列を有する第二のプライマーとを含む反応液(ただし、前記第一のプライマーおよび前記第二のプライマーのいずれか一方には、その5’末端側に前記RNAポリメラーゼ活性を有する酵素のプロモータ配列を付加している)に添加する工程
    (2)試料を添加した前記反応液を、ピロリン酸マグネシウムまたはピロリン酸分解酵素を含む開始剤に添加し、混合する工程
    (3)前記で得られた混合溶液を微細孔空間に分配する工程
    (4)前記(2)でピロリン酸マグネシウムを添加する場合は、前記微細孔空間にピロリン酸分解酵素を添加し、
    前記(2)でピロリン酸分解酵素を添加する場合は、前記微細孔空間にピロリン酸マグネシウムを添加する工程
    (5)一定温度で核酸増幅反応させる工程
  8. 反応液に、5’末端側にRNAポリメラーゼ活性を有する酵素のプロモータ配列を付加したプライマーに対して5’末端側の位置にある、標的核酸の一部と相補的(前記プライマーが第一のプライマーの場合)もしくは相同的(前記プライマーが第二のプライマーの場合)な配列を有する第三のプライマー、および/または鎖置換活性を有する酵素をさらに含む、請求項6または7に記載の増幅方法。
  9. 反応液に増幅した標的核酸の一部と相補的二本鎖を形成すると形成前と比較し蛍光特性が変化するオリゴヌクレオチドプローブをさらに含み、当該プローブを用いて、請求項6から8のいずれかに記載の増幅方法で得られた標的核酸増幅産物を検出する、標的核酸の検出方法。
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