JP2019129726A - Otrシミュレータ - Google Patents

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Abstract

【課題】培養槽における酸素移動速度を計算するためのシミュレータを提供する。【解決手段】本発明のシミュレータは、溶液酸素濃度に基づいて、酸素摂取速度を計算する手段と、飽和溶存酸素濃度と溶存酸素濃度と酸素移動容量係数に基づいて、酸素移動速度を計算する手段と、通気量と酸素移動速度と酸素摂取速度と二酸化炭素生成速度と水蒸気圧に基づいて、反応槽内の気相の酸素濃度を計算する手段と、反応槽内の気相の酸素分圧に基づいて、飽和溶存酸素濃度を計算する手段と、酸素移動速度と酸素摂取速度との間で定常状態を確立するために、酸素移動速度を計算する手段と酸素摂取速度を計算する手段との間でデータを調整する調整手段と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、OTR(Oxygen Transfer Rate;酸素移動速度)をシミュレートするシステム、装置、プログラムに関するものである。
製造現場の大型生産機などの培養槽内で、微生物や動植物細胞を培養するためには、培養槽内における各種パラメータを決定する必要がある。研究所などの小型の培養槽(ラボスケール)で得られた結果を基に、製造現場の大型生産機にも適用できるように、各種パラメータ(大型の培養槽の装置寸法や運転条件など)を決定することをスケールアップという。
培養槽が完全に同じ性能になるようにスケールアップすることは難しい。これは、例え幾何学的に相似になるよう培養槽を設計しても、液混合特性や物質移動特性などの特性を異なるスケールの装置同士で完全に一致させられないからである。
したがって、スケールアップにあたっては、何が重要な因子であるかを見抜き、少なくともその因子については小型培養槽と大型生産機で出来るだけ一致するように各種条件を設定することが重要である。
好気的な培養では、多くの場合、培養槽内の気相から液相への酸素の移動速度が細胞量や目的物質の生産性と非常に高く相関することが知られる。したがって、特に、好気的な培養では培養槽の酸素移動速度が重要なスケールアップ因子となる。
<酸素移動速度OTRの計算式>
培養槽における気相から液相への酸素移動速度は以下の式で示すことができる。
OTR :酸素移動速度 [mmol−O/(L−broth・h)]
a :酸素移動容量係数 [h−1
DO :飽和溶存酸素濃度 [g−O/L−broth]
DO :溶存酸素濃度 [g−O/L−broth]
MWO2:酸素の分子量 [g/mol]
ここで、OTRは、Oxygen Transfer Rate(酸素移動速度)を意味しており、物理的な酸素溶解速度を示す。
好気的な培養で小型培養槽の結果を大型生産機で再現するためには、両者の酸素移動速度OTRを一致させることが極めて重要である。
<スケールアップ>
スケールアップの手段として、小型実験機と大型生産機との両方において、酸素移動容量係数kaを一致させることが、従来技術では行われてきた。しかしながら、数式(1)からもわかるように、酸素移動速度OTRを決める因子は、酸素移動容量係数kaの他にも、溶存酸素濃度DOと、飽和溶存酸素濃度DOがある。これらの因子が全て一致しないと、スケールアップしたときに酸素移動速度OTRが一致しない。
スケールアップでよく行われるのは、更に、培養中に溶存酸素濃度をオンラインで測定し、それがラボスケールと一致するように撹拌速度等を制御する方法である。これを、溶存酸素濃度制御(DO制御)という。
スケールアップ時に、酸素移動容量係数kaを合わせたうえでDO制御を行うと、数式(1)のうち酸素移動容量係数ka、溶存酸素濃度DOが一致するので、飽和溶存酸素濃度DOがおおむね同じであれば酸素移動速度OTRも一致することになる。
しかし、上記の方法では、溶存酸素濃度DOを実測しながら調整する必要があり、所与の性能の培養槽において所望の溶存酸素濃度DOが得られるかを事前に予測していない。つまり、実際にスケールアップを行ってみたら、所望の溶存酸素濃度DOが維持できず、結局、所望の酸素移動速度OTRを実現できないという事態がありうる。
なお、撹拌速度等を変更してDO制御を行った場合、酸素移動容量係数kaも変化しているはずであり、結果としてDOがラボスケールと一致したとしても酸素移動速度OTRが一致する保証はない。酸素移動速度OTRの観点からは、DO制御は必ずしもスケールアップにおいて有効な手段とは限らないことに注意が必要である。
酸素移動速度OTRは測定が可能であり(非特許文献1)、大型生産機と小型実験機の双方で各種の操作条件とOTRの関係を予め測定しておくことで、小型実験機と酸素移動速度OTRが一致するような大型生産機の操作条件を探索することは技術的には可能である。
しかしながら、実生産で現に使用中の大型生産機では、多数の実験によって酸素移動速度OTRを測定することはコストや装置使用スケジュールの面から困難であり、理論計算によって酸素移動速度OTRを精度よく予測する方法が望まれる。また、新設の大型生産機を設計する段階でも、やはり、酸素移動速度OTRを事前に予測することが不可欠である。
以上の要望より、従来においても培養槽の酸素移動速度OTRの予測計算は行われてきた。しかしながら、酸素移動速度OTRには各種パラメータが相互に関係していて複雑な計算が要求されるために、様々な仮定をおいての簡易計算が行われてきたのが実情である。
酸素移動速度OTRの計算のためには、数式(1)の右辺に現れる各パラメータに数値を与える必要がある。例えば、非特許文献2では、溶存酸素濃度DO=0と仮定している。また、非特許文献3では、溶存酸素濃度DO=DOcrit(細胞の生産活動のために許容できる最低値)と仮定している。さらに、非特許文献2、非特許文献3のいずれも、飽和溶存酸素濃度DOは通気ガスである大気の酸素濃度(21%)と培養液にかかる圧力より計算している。
しかしながら、溶存酸素濃度DOは、実際には必ずしも0(ゼロ)ではなく、一般に臨界溶存酸素濃度DOcritよりも大きい値を維持するように培養操作が実施されることが多い。さらに、培養液として接触している気相の酸素濃度(排ガスの酸素濃度)は、細胞の呼吸活動によって酸素が消費される結果、通気ガスの酸素濃度とは一致しないので、気相の酸素濃度が通気ガスと同じ(通気ガスが大気の場合、21%)であることを前提として、飽和溶存酸素濃度DOを計算することは適切ではない。従来技術では、以上のような適切ではない仮定の結果として、酸素移動速度OTRが過大に計算される。このため、実際にスケールアップを行ってみると大型生産機に適合する条件が得られない場合も少なくない。
田口久治/永井史郎(1985)"微生物培養工学"(共立出版)P.167 川瀬義矩(1993)"生物反応工学の基礎"(化学工業社)p.224−225 吉田敏臣(1998)"培養工学"(コロナ社)p.58−p.62 小林猛、本田裕之(2002)"生物化学工学"(東京化学同人)p.62 石崎文彬(訳)(1988)"発酵工学の基礎"(学会出版センター)p.176 日本化学会(編)(2004)化学便覧改訂5版 基礎編II(丸善)p.II−144 化学工学会(編)(1999)化学工学便覧第6版(丸善)p.19
本発明では、特に、培養液中の溶存酸素濃度DO、飽和溶存酸素濃度DOを事前に予測しつつ、ラボスケールからスケールアップ時に実現可能な酸素移動速度OTRを推定するシミュレータを提供することを目的のひとつとする。
気相に関する物質収支を解き、特に、排ガス酸素濃度を算出し、それに応じた飽和溶存酸素濃度DOを算出する。そして、酸素移動速度OTRと酸素摂取速度OUR(Oxygen Uptake Rate)との間で定常状態(酸素移動速度と酸素摂取速度が等しい)が成立すると見做せることを仮定したシミュレータを提供する。
具体的には、培養槽における酸素移動速度を計算するためのシミュレータは、溶液酸素濃度に基づいて、酸素摂取速度を計算する手段と、飽和溶存酸素濃度と溶存酸素濃度と酸素移動容量係数に基づいて、酸素移動速度を計算する手段と、通気量と酸素移動速度と酸素摂取速度と二酸化炭素生成速度と水蒸気圧に基づいて、反応槽内の気相の酸素濃度を計算する手段と、反応槽内の気相の酸素分圧に基づいて、飽和溶存酸素濃度を計算する手段と、酸素移動速度と酸素摂取速度との間で定常状態を確立するために、酸素移動速度を計算する手段と酸素摂取速度を計算する手段との間でデータを調整する調整手段と、を備えればよい。
本発明のシミュレータによれば、溶存酸素濃度DO、飽和溶存酸素濃度DOを推定しつつ、与えられた酸素移動容量係数ka下での酸素移動速度OTRを予測可能となる。これにより、スケールアップ時にも使用可能な酸素移動速度OTRが算出できるようになり、スケールアップの際の培養槽の条件をどのように設定すべきかを事前に検討することが可能となる。よって、スケールアップにおける試行錯誤を大幅に削減できる。
本発明の他の目的、特徴及び利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
培養槽に酸素を供給する概念図を示す。 本発明の一実施例によるOTRシミュレータの概念図を示す。 本発明の一実施例によるOTRシミュレータの機能ブロック図を示す。 本発明の一実施例によるOTRシミュレータのフローチャートを示す。 本発明の別の実施例によるOTRシミュレータの機能ブロック図を示す。 酸素移動速度OTRをシミュレートするにあたって、各パラメータとの相関関係を示す。 本発明の一実施例によるOTRシミュレータの活用例のイメージ(スケールアップ)を示す。 培養槽のサイズの影響について、本発明の一実施例によるOTRシミュレータでの計算結果を示す。 同じ酸素移動容量係数kaであっても、通気量が異なる場合の影響について、本発明の一実施例によるOTRシミュレータでの計算結果を示す。
<酸素移動速度OTRの計算式>
培養槽における気相から液相への酸素移動速度は、数式(1)(再掲)で示したように、酸素移動容量係数ka、飽和溶存酸素濃度DO*、溶存酸素濃度DOによって定まる。
aは、酸素移動容量係数[h−1]である。酸素移動速度OTRの大きさを決める定数であり、気相から液相への酸素の移動しやすさを表しており、装置形状、通気条件、撹拌条件、培養液物性によって決まると言われている。
<飽和溶存酸素濃度DO
DOは、飽和溶存酸素濃度[g−O/L]であり、単位体積あたりの培養液内に溶存する酸素の最大限の濃度を示しており、その値はHenryの法則に従って定まる。Henryの法則とは、温度が一定のとき、一定量の液体に溶解する気体の質量はその気体の圧力(分圧)に比例するという法則である。すなわち、気相の酸素分圧が変化すると、飽和溶存酸素濃度DOも変化することになる。酸素の分圧は、気相の酸素濃度に依存する。
ここで、培養槽内の気相の酸素濃度が、単純に培養槽に導入される通気ガスの酸素濃度に等しければ、飽和溶存酸素濃度DOの計算は、それほど複雑にはならない。このため、従来は、飽和溶存酸素濃度DOは通気ガスの酸素濃度のみから定まるとして計算が行われていた。現実には、培養槽内の気相の酸素濃度は通気ガスの酸素濃度から変化するため従来法は必ずしも妥当ではない。
培養槽内の気相の酸素分圧は、通気ガスに含まれる酸素の量と気相から培養液に移動する酸素の量、気相に培養液から排出されたガス(一般に、排出ガスの大半は二酸化炭素COであるが、水蒸気も加わる)の量、および気相の全圧(培養槽が加圧されている場合にはその圧力、更に液深が大きい場合は静水圧が加わる)によって定まる。
要約すると、酸素移動速度OTRが決定されると通気量との関係により気相酸素濃度が決定される。
気相酸素濃度が決まると、飽和溶存酸素濃度DOが決まり、飽和溶存酸素濃度DO*との関係で酸素移動速度OTRが決定される。すなわち、酸素移動速度OTRと気相酸素濃度と飽和溶存酸素濃度DOとは依存関係を持ったループを形成している。これが飽和溶存酸素濃度DOの計算を非常に複雑にしている。
言い換えると、酸素移動速度OTRの計算のため、飽和溶存酸素濃度DOを事前に予測する上で最も問題なのは、飽和溶存酸素濃度DOを定める気相中の酸素分圧が酸素移動速度OTRの関数であり、かつ、酸素移動速度OTRが飽和溶存酸素濃度DOの関数であるという点である。
発明者は、この問題を解決して酸素移動速度OTR、飽和溶存酸素濃度DOの推定値を得るには、酸素移動速度OTRと飽和溶存酸素濃度DOの関係を表現する非線形方程式につき、収束計算(繰り返し計算)を実施すれば良いことを見出した。
<溶存酸素濃度DO>
溶存酸素濃度DO(Dissolved Oxygen)は、培養液内に溶存する酸素の濃度を示しており、単位は、[g−O/L]である。
酸素ガスを溶媒に溶かして溶存酸素にするために、通気撹拌を伴った培養槽(通気撹拌型培養槽)を設けてもよい。通気撹拌型培養槽とは、例えば、培養槽の底部に設けた管から酸素を含む気体(例えば空気)を供給して、培養槽の中央に下垂した撹拌軸の先に付けた羽根などの翼で培養液を撹拌するもので、酸素が微小な気泡になることにより、培養槽内に溶存することができる。
<溶存酸素濃度DOと酸素摂取速度OUR>
溶存酸素濃度DOと酸素摂取速度OURの関係について説明する。
培養液中の細胞は、培養液内に溶解している酸素を取り込むが、その活性は溶存酸素濃度DOの関数で表現できる場合が多いことが知られる。単位細胞量当たりの酸素摂取速度(酸素比摂取速度)は、例えば以下のような酵素反応のミカエリス・メンテン式と同じ形式の数式(Monod式;モノー式)で表現できる。
ここで、
O2 :酸素比摂取速度 [g−O/(g−dry cell・h)]
O2,max:最大比酸素摂取速度 [g−O/(g−dry cell・h)]
DO :溶存酸素濃度 [g−O/L−broth]
m,O2 :飽和定数 [g−O/L−broth]
m,O2は飽和定数であり、最大酸素比摂取速度の1/2の速度を与える時の溶存酸素濃度に相当する。
酸素比摂取速度QO2を表現する式は、溶存酸素濃度DOの関数であればどのような形でもよい。例えば、溶存酸素濃度DOが臨界溶存酸素濃度DOcritより低い場合、酸素比摂取QO2は溶存酸素濃度DOと比例して減少する形でもよい(非特許文献4:小林猛、本田裕之(2002)”生物化学工学”(東京化学同人)p.62参照)。
細胞の酸素摂取速度OURは、酸素比摂取速度QO2を用いて、以下の式で示される。
ここで、
OUR :酸素摂取速度 [mmol−O/(L−broth・h)]
O2:酸素比摂取速度 [g−O/(g−dry cell・h)]
X :細胞濃度 [g−dry cell/L−broth]
MWO2:酸素の分子量 [g/mol]
<酸素摂取速度OURと気相酸素濃度>
酸素摂取速度OURが定まると、更に、呼吸商(Respiratory Quotient;RQ)より、CO生成速度(Carbon dioxide Evolution Rate;CER)が定まる。呼吸商RQとは、ある時間において生体内で栄養素が分解されてエネルギーに変換するまでの酸素消費量に対する二酸化炭素排出量の体積比のことである。呼吸率、呼吸係数とも呼ばれる。

ここで、
CER :CO生成速度 [mmol−CO/(L−broth・h)]
RQ :呼吸商 [−]
OUR :酸素摂取速度 [mmol−O/(L−broth・h)]
酸素摂取速度OURとCO生成速度CERが定まると、培養槽に導入する通気ガスに含まれる酸素と二酸化炭素の量との物質収支より、培養槽内気相に含まれる酸素濃度が定まる。
以上をまとめると、溶存酸素濃度DOが決定されると数式(2)、数式(3)より酸素摂取速度OURが決定される。更に、酸素摂取速度OURが決定されると、数式(4)より二酸化炭素生成速度CERが決定される。また、酸素摂取速度OURとCO生成速度CERは、培養槽内気相酸素濃度にも影響を与える。培養槽内気相酸素濃度が決まると飽和溶存酸素濃度DOが決まり、数式(1)より飽和溶存酸素濃度DO*との関係で酸素移動速度OTRが決定される。
すなわち、溶存酸素濃度DOは、数式(1)より酸素移動速度OTRの決定に直接関与しているが、同時に、酸素摂取速度OURを介して間接的にも酸素移動速度OTRの決定に関与している。
よって、酸素移動速度OTRを予測してスケールアップを成功させるためには、飽和溶存酸素濃度DO*に加え、溶存酸素濃度DOを事前に予測する手段が望まれる。
この問題を解決するには、溶存酸素濃度DOによって定まる複数の因子に関して方程式を立て、方程式を解くことが可能になるような何らかの条件を与えた上で、解としての溶存酸素濃度DOの値を得ればよい。
具体的には、本実施例の培養槽における酸素移動速度を計算するためのシミュレータは、溶液酸素濃度に基づいて、酸素摂取速度を計算する手段と、飽和溶存酸素濃度と溶存酸素濃度と酸素移動容量係数に基づいて、酸素移動速度を計算する手段と、通気量と酸素移動速度と酸素摂取速度と二酸化炭素生成速度と水蒸気圧に基づいて、反応槽内の気相の酸素濃度を計算する手段と、反応槽内の気相の酸素分圧に基づいて、飽和溶存酸素濃度を計算する手段と、酸素移動速度と酸素摂取速度との間で定常状態を確立するために、酸素移動速度を計算する手段と酸素摂取速度を計算する手段との間でデータを調整する調整手段と、を備えればよい。
培養槽内の液相における酸素の物質収支は以下の式で表される。
ここで、
t:時間[h]
DO :溶存酸素濃度 [g−O/L−broth]
OTR :酸素移動速度 [mmol−O/(L−broth・h)]
OUR :酸素摂取速度 [mmol−O/(L−broth・h)]
MWO2:酸素の分子量 [g/mol]
一般の培養では、数式(5)の左辺、すなわち溶存酸素濃度DOの経時変化はそれほど急激ではないため、d[DO]/dt≒0とおくことが出来る。このとき、酸素移動速度OTR=酸素摂取速度OURの定常状態が成り立っている。酸素移動速度OTRと酸素摂取速度OURの定常状態仮定は、実際に、排気ガス分析法で培養槽のkaを測定する際に用いられており(非特許文献5:石崎文彬(訳)(1988)“発酵工学の基礎”(学会出版センター)p.176を参照)、現実的な設定である。
酸素移動速度OTR=酸素摂取速度OURという条件を与えることで、培養槽周りの物質収支に関する連立方程式の自由度が0(ゼロ)になり、溶存酸素濃度DOについて解が得られるようになる。
要約すると、本発明は、以下の2点を計算手順として含む。
(1)培養槽内気相についての物質収支に関する方程式を解く。特に、培養槽内気相の酸素濃度を算出し、それに応じた飽和溶存酸素濃度DOを算出する。
(2)溶存酸素濃度DOに関する方程式をたてて、酸素移動速度OTR=酸素摂取速度OURとなるような定常状態仮定を置くことで、当該溶存酸素濃度DOを算出する。
本シミュレータで使用している理論について以下に説明する。
まず、ガス物性について説明する。
気体の溶解度は、以下の式で示される。

ここで、溶媒が水(HO)で、気体が酸素(O)であるとき、定数A=−66.73538、B=87.47547、C=24.45264である(非特許文献6:日本化学会(編)(2004)化学便覧改訂5版 基礎編II(丸善)p.II−144)。
また、蒸気圧は、以下のAntoine式(アントワン式)により示される。

ここで、蒸気圧P、温度T[K]、アントワン定数A、B、Cである。
水の蒸気圧を求める場合、A=23.1964、B=3816.44、C=−46.13である(非特許文献7:化学工学会(編)(1999)化学工学便覧第6版(丸善)p.19)。
数式(6)、数式(7)の定数に上述した([0059]、[0060]で述べた)数値を代入し、さらに気体の溶解度をモル分率から[g−O/L−broth]に換算すると、以下の数式(8)のようになる。なお、酸素の溶解度はきわめて低いため、酸素が溶解した溶液の密度は溶媒の密度に等しいものとして換算を行っている。また、数式(8)では純水に関する数値を代入しているが、培養液に関する数値を代入してもよい。
ここで、
2,O2 :気相中の酸素分圧=大気圧での飽和溶存酸素モル分率[−]
T :絶対温度 [K]
DO atm:気相中の酸素分圧=大気圧での飽和溶存酸素濃度[g−O/L−broth]
MWO2 :酸素の分子量[g/mol]
MWH2O :水の分子量 [g/mol]
D :溶媒の密度 [g−broth/L−broth]
g,H2O:水の蒸気圧 [Pa]
<気相部の物質収支式>
培養槽に入る直前の通気ガスについて説明する。
培養槽に入る直前の通気ガスが水蒸気を含まない乾燥気体とすると、通気ガスの酸素流量Fg,O2,feed、CO流量Fg,CO2,feed、窒素流量Fg,N2,feed、は、通気ガス流量Fg,feedとそれぞれのガス成分濃度Cとから、以下の計算式により算出される。
ここで、
g,feed :通気ガス流量 [L−gas/min]
g,O2,feed :通気ガス中の酸素流量 [L−Ogas/min]
g,CO2,feed:通気ガス中のCO流量 [L−CO gas/min]
g,N2,feed:通気ガス中の窒素流量 [L−N gas/min]
g,O2,feed:通気ガス中の酸素濃度 [%]
g,CO2,feed:通気ガス中のCO濃度 [%]
g,N2,feed:通気ガス中の窒素濃度 [%]
培養槽に入った直後、通気ガスに飽和水蒸気が加わった入口ガスについて説明する。入口ガスの各成分の流量、濃度、分圧は数式(10)〜数式(12)で示される。入口ガスの酸素分圧より、培養液底部の飽和溶存酸素濃度は数式(13)で示される。

ここで、
g, in :入口ガス流量 [L−gas/min]
g,feed :通気ガス流量 [L−gas/min]
g, O2, in :入口ガス中の酸素流量 [L−Ogas/min]
g,O2,feed :通気ガス中の酸素流量 [L−Ogas/min]
g, CO2, in :入口ガス中のCO流量 [L−CO gas/min]
g,CO2,feed:通気ガス中のCO流量 [L−COgas/min]
g, N2, in :入口ガス中の窒素流量 [L−N gas/min]
g,N2,feed :通気ガス中の窒素流量 [L−Ngas/min]
g, H2O, in :入口ガス中の水蒸気流量 [L−HO gas/min]
g, O2, in :入口ガス中の酸素濃度 [%]
g, CO2, in :入口ガス中のCO濃度 [%]
g, N2, in :入口ガス中の窒素濃度 [%]
g, H2O, in :入口ガス中の水蒸気濃度 [%]
bottom :培養液底部の全圧 [Pa]
g, O2, in :入口ガス中の酸素分圧 [Pa]
g, CO2, in :入口ガス中のCO分圧 [Pa]
g, N2, in :入口ガス中の窒素分圧 [Pa]
g, H2O, in :入口ガス中の水蒸気分圧 [Pa]
g,H2O :水の蒸気圧 [Pa]
DO atm :気相中の酸素分圧=大気圧での飽和溶存酸素濃度[g−O/L−broth]
DO* bottom :培養液底部の飽和溶存酸素濃度 [g−O/L−broth]
atm :大気圧 [Pa]
ガスに関する物質移動について説明する。
酸素移動速度OTRは、例えば容量が50L以下の小型培養槽では数式(1)で表される(再掲)。大型培養槽では、培養液全体の酸素移動速度OTRは数式(1)を修正して、数式(14)で示される。また、大型培養槽の培養液の最表面と最底部では、数式(1)について、培養液の最表面と最底部それぞれの飽和溶存酸素濃度DO*と溶存酸素濃度DOを適用することで、数式(15)で示される。

ここで、
a :酸素移動容量係数 [h−1
OTR :培養液全体の酸素移動速度[mmol−O/(L−broth・h)]
OTRbottom:培養液底部の酸素移動速度[mmol−O/(L−broth・h)]
OTRtop :培養液表面の酸素移動速度[mmol−O/(L−broth・h)]
DO* bottom:培養液底部の飽和溶存酸素濃度[g−O/L−broth]
DObottom:培養液底部の溶存酸素濃度 [g−O/L−broth]
DO top :培養液表面の飽和溶存酸素濃度 [g−O/L−broth]
DOtop :培養液表面の溶存酸素濃度 [g−O/L−broth]
MWO2 :酸素の分子量 [g/mol]
排ガスについて説明する。排ガスとは、入口ガスから消費された酸素Oを引き、発生した二酸化酸素COを足したものである。なお、排ガスは水蒸気で飽和しているものとする。

ここで、
g, out :排ガス流量 [L−gas/min]
g, O2, out :排ガス中の酸素流量 [L−Ogas/min]
g, O2, in :入口ガス中の酸素流量 [L−Ogas/min]
OTR :培養液全体の酸素移動速度[mmol−O2/(L−broth・h)]
:培養液量 [L−broth]
g, CO2, out :排ガス中のCO流量 [L−COgas/min]
g, CO2, in :入口ガス中のCO流量 [L−CO gas/min]
CER :培養液全体のCO生成速度[mmol−CO/(L−broth・h)]
g, N2, out :排ガス中の窒素流量 [L−Ngas/min]
g, N2, in :入口ガス中の窒素流量 [L−N gas/min]
g, H2O, out :排ガス中の水蒸気流量 [L−HO gas/min]
g, O2, out :排ガス中の酸素濃度 [%]
g, CO2, out :排ガス中のCO濃度 [%]
g, N2, out :排ガス中の窒素濃度 [%]
g, H2O, out :排ガス中の水蒸気濃度 [%]
top :培養液表面の全圧 [Pa]
g, O2, out :排ガス中の酸素分圧 [Pa]
g, CO2, out :排ガス中のCO分圧 [Pa]
g, N2, out :排ガス中の窒素分圧 [Pa]
g, H2O, out :排ガス中の水蒸気分圧 [Pa]
g,H2O :水の蒸気圧 [Pa]
DO top :培養液表面の飽和溶存酸素濃度 [g−O/L−broth]
DO atm:気相中の酸素分圧=大気圧での飽和溶存酸素濃度[g−O/L−broth]
atm :大気圧 [Pa]
細胞のガス代謝モデルについて説明する。細胞の酸素消費が酸素濃度に関するMonod(モノー)式に従うと、微生物による酸素比摂取速度QO2は数式(2)(再掲)で示される。大型培養槽では培養液の最表面と最底部で溶存酸素濃度DOが異なることを考慮すると、以下の式で示される。

ここで、
O2,max:最大比酸素摂取速度 [g−O/(g−dry cell・h)]
m,O2 :飽和定数 [g−O/L−broth]
O2,bottom:培養液底部の酸素比摂取速度[g−O/(g−dry cell・h)]
DObottom :培養液底部の溶存酸素濃度 [g−O/L−broth]
O2,tom :培養液表面の酸素比摂取速度[g−O/(g−dry cell・h)]
DOtop :培養液表面の溶存酸素濃度 [g−O/L−broth]
微生物の酸素摂取速度OURは、酸素比摂取速度QO2を用いて、数式(3)(再掲)で示されるが、数式(21)で示したように、大型培養槽では培養液の最表面と最底部でQO2が異なることを考慮すると、数式(22)で示される。
ここで、
OURbottom:培養液底部の酸素摂取速度[mmol−O/(L−broth・h)]
O2,bottom:培養液底部の酸素比摂取速度[g−O/(g−dry cell・h)]
OURtop:培養液表面の酸素摂取速度 [mmol−O/(L−broth・h)]
O2, top:培養液表面の酸素比摂取速度[g−O/(g−dry cell・h)]
X :細胞濃度 [g−dry cell/L−broth]
MWO2 :酸素の分子量 [g/mol]
また、CO生成速度CER(Carbon dioxide Evolution Rate)は、培養液の最表面と最底部それぞれのOURではなく、培養槽全体での酸素摂取速度OURを用いれば、数式(4)で示される(再掲)。
次に、定常状態仮定について説明する。本実施例における定常状態仮定とは、一定の過渡状態(後述)が発生した後に、酸素移動速度OTRと酸素摂取速度OURとが等しくなるという定常状態を仮定することである。

また、本実施例のシミュレータにおいては、大型培養槽の場合、培養液底部と培養液表面とでは酸素移動速度OTR、酸素摂取速度OURの値に差異が生じることに着目して、以下の計算式を用いる。

ここで、
OTRbottom:培養液底部の酸素移動速度[mmol−O/(L−broth・h)]
OURbottom:培養液底部の酸素摂取速度[mmol−O/(L−broth・h)]
OTRtop :培養液表面の酸素移動速度[mmol−O/(L−broth・h)]
OURtop :培養液表面の酸素摂取速度[mmol−O/(L−broth・h)]
定常状態を仮定できる理由を、概念的に説明する。
まず、供給過剰の例について説明する。供給過剰とは、物理的な酸素溶解速度である酸素移動速度OTRが、細胞による酸素消費速度である酸素摂取速度OURよりも多くなった過渡的な場合である(酸素移動速度OTR>酸素摂取速度OUR)。この場合、培養液内においては、溶存酸素濃度DOが増加していく。溶存酸素濃度DOが増加すると、飽和溶存酸素濃度DOと溶存酸素濃度DOとの差が小さくなる。当該差が小さくなると、数式(1)(再掲)により、酸素移動速度OTRが小さくなる。すなわち、当初多かった酸素移動速度OTRが減少して、酸素摂取速度OURに等しくなるように作用する。
次に、消費過剰の例について説明する。消費過剰とは、酸素移動速度OTRが、細胞による酸素摂取速度OURよりも少ない場合である(酸素移動速度OTR<酸素摂取速度OUR)。この場合、培養液内においては、溶存酸素濃度DOが減少していく。溶存酸素濃度DOが減少すると、数式(1)により、飽和溶存酸素濃度DOと溶存酸素濃度DOとの差が大きくなる。当該差が大きくなると、数式(1)により、酸素移動速度OTRが大きくなる。すなわち、当初少なかった酸素移動速度OTRが増加して、酸素摂取速度OURに等しくなるように作用する。
よって、酸素移動速度OTRと酸素摂取速度OURの値に差異があっても、系は定常状態へ向かう。
本実施例のシミュレータでは、上述した一連の式(数式1〜数式24)を連立非線形方程式として収束計算(繰り返し計算)で解く。求解には各種の数値計算ソフトウェアが利用できる。例えば、EQUATRAN(商標)−G(イコートラン;オメガシミュレーション社製)を用いてもよい。なお、発明者の知る限りこの様な考え方を培養槽シミュレーションに適用した例はない。
本実施例のシミュレータによると、排ガスの酸素濃度に応じた飽和溶存酸素濃度DOを算出していることで、従来よりも正確に酸素移動速度OTRを推算できる。
特に、酸素移動容量係数kaが同じであっても通気量が異なる場合に酸素移動速度OTRが変化する状況を予測可能である。
また、従来、酸素移動容量係数kaが不足してスケールアップ不能と判断されてきた条件でも、酸素移動速度OTRが十分なのであればスケールアップできる可能性について検討できる。
そのほか、細胞の呼吸特性の違いによる酸素移動速度OTRの変化を計算できる。
図3に、本実施例によるOTRシミュレータ1000の機能ブロック図を示す。なお、本実施例の機能ブロックは、ハードウェアでもソフトウェアでもハードウェア及びソフトウェアの組み合わせでも実現可能である。
OTRシミュレータ1000は、通気量設定手段1010、O濃度計算手段1020と、
OTR計算手段1030と、データ調整手段1040と、OUR計算手段1050と、DO計算手段1060と、DO計算手段1070と、操作条件DB1110と、入力変数DB1120と、出力変数DB1130と、制御手段1200とから構成される。
通気量設定手段1010は、通気量を設定する手段である。
濃度計算手段1020は、他の手段やデータベース(DB:DataBase)を用いて、酸素濃度を計算する手段である。
OTR計算手段1030は、他の手段やDBを用いて、酸素移動速度OTRを計算する手段である。
データ調整手段1040は、他の手段やDBで使用されているデータ(値)を調整する手段であり、本実施例においては、OTR計算手段で計算された酸素移動速度OTRの値と、OUR計算手段で計算された酸素摂取速度OURの値とが定常状態仮定になるようにする手段である。一実施例によると酸素移動速度OTR=酸素摂取速度OURの計算式が成立するように構成されてもよい。
OUR計算手段1050は、他の手段やDBを用いて、酸素摂取速度OURを計算する手段である。
DO計算手段1060は、他の手段やDBを用いて、飽和溶存酸素濃度DOを計算する手段である。
DO計算手段1070は、他の手段やDBを用いて、溶存酸素濃度DOを計算する手段である。
装置操作条件DB1110は、収束計算をするにあたり必要となる計算式(方程式)に適用するための各パラメータを記憶するDBである。
必要なパラメータは、例えば、以下のようなものである。
(1) 培養槽に関する諸元
・培養液量、培養槽深さ
・通気量
・温度、培養液表面圧力
・通気ガスの酸素濃度
・酸素移動容量係数(ka)
(2)細胞に関する諸元
・細胞濃度
・細胞の酸素消費・CO生成パラメータ
− 酸素に対する飽和定数
− 最大比酸素摂取速度
− 呼吸商
入力変数DB1120は、収束計算をするにあたり必要となる入力条件を記憶するデータベース(DB)である。
出力変数DB1130は、収束計算によって算出された値を格納するデータベース(DB)である。
制御手段1200は、OTRシミュレータ内部の各手段や各DBを制御したり、OTRシミュレータ外部と信号を送受信したりする。
また、OTRシミュレータ1000は、ユーザ端末1300に接続されている。ユーザは、ユーザ端末1300を介して、OTRシミュレータを作動させるために必要な変数を入力する。入力された変数は、入力変数DB1120に記憶される。また、ユーザ端末1300は、OTRシミュレータを作動させた結果として得られた出力を表示する。この出力は、OTRシミュレータ1000の出力変数DB1130に記憶された値である。
酸素移動速度OTRの計算方法の一例を図4のフローチャートを用いて説明する。
S3010では、排ガス酸素濃度を計算する。特に、上述した連立方程式において、例えば、以下の計算式について計算する。

S3020では、飽和溶存酸素濃度DOを計算する。特に、上述した連立方程式において、以下の計算式について計算する。
S3030では、溶存酸素濃度DOを計算する。上述した連立方程式において、例えば、以下の式を満たす溶存酸素濃度DOを計算する。
S3040では、酸素摂取速度OURを計算する。特に、上述した連立方程式において、例えば、以下の計算式について計算する。
S3050では、定常状態を仮定して酸素移動速度OTRを計算する。特に、上述した連立方程式において、例えば、以下の計算式について計算する。
S3060では、S3010−S3060で計算された各値が収束しているか否かを判定する。もし、収束していれば、S3080へ進み、収束していなければ、S3010へ戻り、計算を続ける。
S3080では、収束した値を表示する。特に、酸素移動速度OTRの計算結果を表示する。
なお、上述した連立方程式を計算することによって、様々な数値が算出されるが、本実施例において、一番重要な値は、酸素移動速度OTRの値である。
なお、上述したフローチャートでは、S3010−S3080が逐次的に計算されるように説明したが、各変数は相互に依存しているために、上述した処理を並列に実行するように構成されている。
本実施例のシミュレータは、以下のような点を考慮している。
・気相に関する物質収支から、気相部(培養排気)の酸素分圧を求める。
・細胞による酸素消費およびCO生成による培養排気の酸素分圧低下を考慮したうえで、OTRを計算する。
・(主に大型培養槽で行われる)加圧の影響を考慮する。
・液深による静水圧を考慮する。
・水蒸気分圧を考慮する。
・培養液の最表面と最深部の溶存酸素濃度分布を考慮する。
また、本実施例のシミュレータは、以下のような点を前提とする。
・定常状態シミュレータであり、系の時間発展は計算しない。
・ガスホールドアップによる培養液高さの変化は考慮していない。
・細胞濃度は一定としている。
・細胞濃度の培養液内での分布は考慮しない(培養液の最表面と最底部の細胞濃度を同一と仮定)。
・kaの培養液内での分布は考慮しない(培養液の最表面と最底部のkaを同一と仮定)。
・培養槽のいたるところで定常状態(酸素移動速度OTR=酸素摂取速度OUR)が成立していることを仮定している。
・通気は培養槽の底部から行うものとする。
・通気は乾燥気体(水蒸気を含まない)とする。
・気相部は培養槽に入ると直ちに水蒸気が飽和するものとする。
・細胞によるCO消費は考慮しない。
図5は、本発明の第二実施例によるOTRシミュレータの機能ブロック図を示す。第1実施例(図3)に示した実施例と比較すると、ユーザ端末1300が、撹拌装置、センサ等に置き換わっている。第1実施例では、ユーザ端末1300で所定の値を入力していたが、第2実施例では、センサが検知した値を使って、シミュレートすることができる。別の実施例として、センサが検知した値とユーザが入力する値を任意に選択できるように構成されてもよい。
本実施例のシミュレータの活用例を示す。
培養槽のサイズの影響について、本実施例のシミュレータでの計算結果を図8に示す。ここで、培養槽は、ミニジャー(小型槽)と50mタンク(大型槽)との2つについてシミュレーションをした。
そして、培養槽パラメータは、以下のとおりである。
・培養液量=1.5[L](小型槽)or30[m](大型槽)
・培養液高さ=0.12(小型槽)or4.54[m](大型槽)
・温度=30[℃]
・圧力=大気圧(小型槽)or0.03MPaG(大型槽)
・通気気体=大気(酸素濃度20.9%)
・通気量=1[vvm]
同じ酸素移動容量係数kaであっても、50mタンクの方が酸素移動速度OTRが大きくなることが、シミュレーション結果からわかる。
本実施例のシミュレータの活用例を示す。
同じ酸素移動容量係数kaであっても、通気量が異なる場合の影響について、本実施例のシミュレータでの計算結果を図9に示す。ここで、培養槽はミニジャー(小型槽)とし、通気量は0.1、0.5、1.0、2.0vvmとした。
そして、培養槽パラメータは、以下のとおりである。
・培養液量=1.5[L]
・培養液高さ=0.12[m]
・温度=30[℃]
・圧力=大気圧
・通気気体=大気(酸素濃度20.9%)
同じ酸素移動容量係数kaであっても、通気量が低下するのに伴って酸素移動速度OTRが低下することが、シミュレーション結果からわかる。
図7は、本実施例のOTRシミュレータの活用例のイメージ(スケールアップ)を示す。
(1)ラボスケールの実験で、OTR、剪断力と生産性の関係についてデータを収集。
(2)(1)のデータより等高線マップを作成。
(3)OTRシミュレータで、実機の操作可能領域を推算。
(4)(2)と(3)を重ね、生産性を最大化する操作条件と、そのとき期待される生産性を予測。
ここで、図6の出力変数の中で、OTRtotalが、培養槽の性能評価に用いられ、それ以外の変数は、参考値である。なお、OTRtotalは、培養槽全体のOTRを示しており、単に、OTRと表記してもよい。
なお、図6の装置操作条件の入力変数である培養槽底部圧力Pbottomは、培養槽直径を入力して簡易計算するように構成してもよい。すなわち、培養槽を円筒形として培養液量から液深を求め、液深・培養槽密度・培養液上部圧力から培養液底部の静水圧を求めるように構成してもよい。また、パラメータの入力変数(培養槽の装置パラメータ)である酸素移動容量係数kaは、攪拌速度、通気流量、装置形状、培養液物性等の関数であるが、ユーザが数値を入力するように構成してもよい。
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。

Claims (1)

  1. 培養槽における酸素移動速度を計算するためのシミュレータであって、
    溶液酸素濃度に基づいて、酸素摂取速度を計算する手段と、
    飽和溶存酸素濃度と溶存酸素濃度と酸素移動容量係数に基づいて、酸素移動速度を計算する手段と、
    通気量と酸素移動速度と酸素摂取速度と二酸化炭素生成速度と水蒸気圧に基づいて、反応槽内の気相の酸素濃度を計算する手段と、
    反応槽内の気相の酸素分圧に基づいて、飽和溶存酸素濃度を計算する手段と、
    酸素移動速度と酸素摂取速度との間で定常状態を確立するために、酸素移動速度を計算する手段と酸素摂取速度を計算する手段との間でデータを調整する調整手段と、
    を備えたことを特徴とするシミュレータ。
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