JP2019129206A - 光パワー推定装置、レーザ装置、及び光パワー推定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を用いてレーザ光のパワーを推定する技術を実現すること。【解決手段】光パワー推定装置(10)は、スペクトル測定器と制御部とを備えている。スペクトル測定器は、ストークス光を含む波長帯域におけるスペクトルを測定する。制御部は、上記ストークス光のピーク波長と上記レーザ光のピーク波長との差分である第1の差分(Δλ1)を特定差分として、該特定差分に応じてレーザ光のパワーの推定値である推定パワーを推定する。【選択図】図3
Description
本発明は、光パワー推定装置及び光パワー推定方法に関する。また、本発明は、光パワー推定装置を備えたレーザ装置に関する。
材料加工の分野では、近年、ファイバレーザ装置が広く用いられている。ファイバレーザ装置とは、コアに希土類が添加された光ファイバ(以下、「増幅用光ファイバ」とも記載)をレーザ媒質とするレーザ装置であり、共振器型のファイバレーザ装置やMOPA型ファイバレーザ装置などが知られている。
ファイバレーザ装置では、高出力化を進めると、非線形光学効果が問題となる。例えば、非線形光学効果の一種である誘導ラマン散乱の散乱光は、レーザ光の発振を不安定化させたり、増幅用光ファイバにポンプ光を供給するポンプ光源の信頼性を低下させたりする原因となることが知られている。
このような問題に対処するための技術を開示した文献としては、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、誘導ラマン散乱の散乱光のパワーを検出し、検出したパワーに応じてポンプ光源を制御するファイバレーザ装置が開示されている。
本願発明者らは、マルチモードファイバを含むファイバレーザ装置の出力光に、複数の導波モードが関与する四光波混合のストークス光及びアンチストークス光が含まれていることを発見した。
四光波混合のストークス光及びアンチストークス光は、それらのパワーが大きくなると、誘導ラマン散乱の散乱光と同様、レーザ光の発振を不安定化させたり、増幅用光ファイバにポンプ光を供給するポンプ光源の信頼性を低下させたりする原因となる。したがって、レーザ光の発振が不安定化し難い、又は、ポンプ光源の信頼性が低下し難いファイバレーザ装置を実現するためには、四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方のパワーをモニタすることが重要になる。
上記のような問題は、ファイバレーザ装置に限らず、レーザ光を導波するマルチモードファイバを備えたレーザ装置一般において生じ得る。本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、マルチモードファイバにおいて生じる、複数の導波モードが関与する四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を用いてレーザ光、ストークス光、及びアンチストークス光のうち少なくとも何れか1つのパワーを推定する光パワー推定装置、レーザ装置、及び光パワー推定方法を実現することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光パワー推定装置は、レーザ光を導波するマルチモードファイバにおいて生じる、複数の導波モードが関与する四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域におけるスペクトルを測定するスペクトル測定器と、
測定された上記スペクトルから上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方のピーク波長を決定し、且つ、(1)上記ストークス光のピーク波長と上記レーザ光のピーク波長との差分である第1の差分、(2)上記レーザ光のピーク波長と上記アンチストークス光のピーク波長との差分である第2の差分、及び、(3)上記ストークス光のピーク波長と上記アンチストークス光のピーク波長との差分である第3の差分のうち何れか1つの差分を特定差分として、該特定差分に応じて、レーザ光、ストークス光、及びアンチストークス光のうち少なくとも何れか1つのパワーの推定値である推定パワーを推定する制御部と、を備えている。
測定された上記スペクトルから上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方のピーク波長を決定し、且つ、(1)上記ストークス光のピーク波長と上記レーザ光のピーク波長との差分である第1の差分、(2)上記レーザ光のピーク波長と上記アンチストークス光のピーク波長との差分である第2の差分、及び、(3)上記ストークス光のピーク波長と上記アンチストークス光のピーク波長との差分である第3の差分のうち何れか1つの差分を特定差分として、該特定差分に応じて、レーザ光、ストークス光、及びアンチストークス光のうち少なくとも何れか1つのパワーの推定値である推定パワーを推定する制御部と、を備えている。
本発明の一態様に係る光パワー推定装置は、上記特定差分と上記レーザ光のパワーとを対応付けた第1のテーブル及び第1の関数、並びに、上記特定差分と上記ストークス光のパワーとを対応付けた第2のテーブル及び第2の関数、並びに、上記特定差分と上記アンチストークス光のパワーとを対応付けた第3のテーブル又は第3の関数のうち少なくとも何れか1つを記憶した記憶部を更に備え、上記制御部は、上記第1のテーブル、上記第1の関数、上記第2のテーブル、上記第2の関数、上記第3のテーブル、及び上記第3の関数のうち何れか1つを参照し、上記特定差分に対応付けられた上記レーザ光のパワー、上記特定差分に対応付けられた上記ストークス光のパワー、及び、上記特定差分に対応付けられた上記アンチストークス光のパワーのうち少なくとも何れか1つのパワーを上記推定パワーとして採用する。
本発明の一態様に係る光パワー推定装置において、上記スペクトル測定器は、光スペクトラムアナライザである。
また、本発明の一態様に係る光パワー推定装置において、上記スペクトル測定器は、上記レーザ光をそれぞれ波長が異なる複数の単色光に分光するプリズム又は回折格子と、上記複数の単色光の各々に1対1で対応付けられた複数の光検出器からなる光検出器群であって、各光検出器が上記複数の単色光の各々のパワーを検出する光検出器群と、を備えていてもよい。
また、本発明の一態様に係る光パワー推定装置において、上記スペクトル測定器は、入射された上記レーザ光を単色光に分光して出射する分光器と、該分光器により分光された単色光のパワーを検出する光検出器と、を備えていてもよい。
本発明の一態様に係る光パワー推定装置において、上記スペクトル測定器は、上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方を含み、且つ、上記レーザ光を含まない波長帯域におけるスペクトルを測定する。
また、本発明の一態様に係る光パワー推定装置において、上記スペクトル測定器は、上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方を含み、且つ、パワーが自然放出光よりも高い波長帯域におけるスペクトルを測定する構成でもよい。
また、本発明の一態様に係る光パワー推定装置において、上記スペクトル測定器は、上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方を含み、且つ、上記レーザ光に起因する誘導ラマン散乱の散乱光のピーク波長を含まない波長帯域におけるスペクトルを測定する構成でもよい。
また、本発明の一態様に係る光パワー推定装置において、上記スペクトル測定器は、上記ストークス光のピーク波長を含む波長帯域であって、上記レーザ光のピーク波長よりも長波長側、且つ、上記レーザ光に起因する誘導ラマン散乱の散乱光のピーク波長よりも短波長側の波長帯域におけるスペクトルを測定する構成でもよい。
また、本発明の一態様に係る光パワー推定装置において、上記スペクトル測定器は、上記レーザ光のピーク波長よりも短波長側の波長帯域であって、上記レーザ光のピーク波長よりも40nm短い波長を下限とする波長帯域、及び、上記レーザ光のピーク波長よりも長波長側の波長帯域であって、上記レーザ光のピーク波長よりも40nm長い波長を上限とする波長帯域の一方又は両方におけるスペクトルを測定する構成でもよい。
また、本発明の一態様に係る光パワー推定装置において、上記四光波混合は、上記マルチモードファイバを導波される上記レーザ光の基本モード成分及び高次モード成分がポンプ光として関与する四光波混合であり、上記ストークス光のピーク角周波数ωs及び上記アンチストークス光のピーク角周波数ωasは、周波数整合条件を表す下記式(1)、及び、位相整合条件を表す下記式(2a)又は(2b)を満たす。
ωs+ωas=2ωp・・・(1)
β(ωs)+β’(ωas)=β’(ωp)+β(ωp)−γ(P+P’)・・・(2a)
β’(ωs)+β(ωas)=β’(ωp)+β(ωp)−γ(P+P’)・・・(2b)
ここで、β(ω)は、角周波数ωの基本モードに対する上記マルチモードファイバの伝搬定数を表し、β’(ω)は、角周波数ωの高次モードに対する上記マルチモードファイバの伝搬定数を表し、ωpは、上記レーザ光のピーク角周波数を表し、Pは、上記レーザ光の基本モード成分のパワーを表し、P’は、上記レーザ光の高次モード成分のパワーを表し、γは、非線形係数を表す。
β(ωs)+β’(ωas)=β’(ωp)+β(ωp)−γ(P+P’)・・・(2a)
β’(ωs)+β(ωas)=β’(ωp)+β(ωp)−γ(P+P’)・・・(2b)
ここで、β(ω)は、角周波数ωの基本モードに対する上記マルチモードファイバの伝搬定数を表し、β’(ω)は、角周波数ωの高次モードに対する上記マルチモードファイバの伝搬定数を表し、ωpは、上記レーザ光のピーク角周波数を表し、Pは、上記レーザ光の基本モード成分のパワーを表し、P’は、上記レーザ光の高次モード成分のパワーを表し、γは、非線形係数を表す。
また、本発明の一態様に係る光パワー推定装置において、上記四光波混合は、上記マルチモードファイバを導波される上記レーザ光の第1の高次モード成分及び第2の高次モード成分がポンプ光として関与する四光波混合であり、上記ストークス光のピーク角周波数ωs及び上記アンチストークス光のピーク角周波数ωasは、周波数整合条件を表す下記式(1)、及び、位相整合条件を表す下記式(2a)又は(2b)を満たす。
ωs+ωas=2ωp・・・(1)
β’(ωs)+β”(ωas)=β”(ωp)+β’(ωp)−γ(P’+P”)・・・(2a)
β”(ωs)+β’(ωas)=β”(ωp)+β’(ωp)−γ(P’+P”)・・・(2b)
ここで、β’(ω)は、角周波数ωの第1の高次モードに対する上記マルチモードファイバの伝搬定数を表し、β”(ω)は、角周波数ωの第2の高次モードに対する上記マルチモードファイバの伝搬定数を表し、ωpは、上記レーザ光のピーク角周波数を表し、P’は、上記レーザ光の第1の高次モード成分のパワーを表し、P”は、上記レーザ光の第2の高次モード成分のパワーを表し、γは、非線形係数を表す。
β’(ωs)+β”(ωas)=β”(ωp)+β’(ωp)−γ(P’+P”)・・・(2a)
β”(ωs)+β’(ωas)=β”(ωp)+β’(ωp)−γ(P’+P”)・・・(2b)
ここで、β’(ω)は、角周波数ωの第1の高次モードに対する上記マルチモードファイバの伝搬定数を表し、β”(ω)は、角周波数ωの第2の高次モードに対する上記マルチモードファイバの伝搬定数を表し、ωpは、上記レーザ光のピーク角周波数を表し、P’は、上記レーザ光の第1の高次モード成分のパワーを表し、P”は、上記レーザ光の第2の高次モード成分のパワーを表し、γは、非線形係数を表す。
また、本発明の一態様に係る光パワー推定装置において、上記スペクトル測定器は、上記ストークス光を含む波長帯域におけるスペクトルを測定し、上記制御部は、測定された上記スペクトルから上記ストークス光のピーク波長を決定し、且つ、上記第1の差分を特定差分として、該特定差分に応じて上記レーザ光及び上記ストークス光のうち少なくとも何れか1つのパワーを推定する。
また、本発明の一態様に係る光パワー推定装置において、上記スペクトル測定器は、上記アンチストークス光を含む波長帯域におけるスペクトルを測定し、上記制御部は、測定された上記スペクトルから上記アンチストークス光のピーク波長を決定し、且つ、上記第2の差分を特定差分として、該特定差分に応じて上記レーザ光及び上記アンチストークス光のうち少なくとも何れか1つのパワーを推定する構成でもよい。
また、本発明の一態様に係る光パワー推定装置において、上記スペクトル測定器は、上記ストークス光及び上記アンチストークス光を含む波長帯域におけるスペクトルを測定し、上記制御部は、測定された上記スペクトルから上記ストークス光のピーク波長及び上記アンチストークス光のピーク波長を決定し、且つ、上記第3の差分を特定差分として、該特定差分に応じて上記レーザ光、上記ストークス光、及び上記アンチストークス光のうち少なくとも何れか1つのパワーを推定する構成でもよい。
また、本発明の一態様に係る光パワー推定装置は、誘導ラマン散乱の散乱光を抑制する抑制部を更に備えている。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るレーザ装置は、上述した何れか一態様に係る光パワー推定装置と、上記マルチモードファイバと、を備えている。
また、本発明の一態様に係るレーザ装置において、上記制御部は、上記推定パワーに基づいて自装置を制御する。
また、本発明の一態様に係るレーザ装置は、ポンプ光を生成する1又は複数のポンプ光源を更に備え、上記制御部は、上記推定パワーが予め設定された閾値を超えたときに、上記1又は複数のポンプ光源への駆動電流の供給を停止するか、又は、上記1又は複数のポンプ光源に供給される駆動電流を減少させる。
また、本発明の一態様に係るレーザ装置において、少なくとも一方の端部に上記1又は複数のポンプ光源が接続され、上記レーザ光を増幅する増幅用光ファイバを更に備え、上記スペクトル測定器は、下流側から上流側へと導波された上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域におけるスペクトルを測定する構成でもよい。
また、本発明の一態様に係るレーザ装置において、少なくとも一方の端部に上記1又は複数のポンプ光源が接続され、上記レーザ光を増幅する増幅用光ファイバを更に備え、上記スペクトル測定器は、上流側から下流側へと導波された上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域におけるスペクトルを測定する構成でもよい。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光パワー推定方法は、マルチモードファイバを伝搬するレーザ光、ストークス光、及びアンチストークス光のうち少なくとも何れか1つのパワーを推定パワーとして推定する光パワー推定方法であって、上記マルチモードファイバにおいて生じる、複数の導波モードが関与する四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域におけるスペクトルを測定する測定工程と、上記測定工程において測定された上記スペクトルから上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方のピーク波長を決定する決定工程と、(1)上記ストークス光のピーク波長と上記レーザ光のピーク波長との差分である第1の差分、(2)上記レーザ光のピーク波長と上記アンチストークス光のピーク波長との差分である第2の差分、及び、(3)上記ストークス光のピーク波長と上記アンチストークス光のピーク波長との差分である第3の差分のうち何れか1つの差分を特定差分として、該特定差分に応じて上記推定パワーを推定する推定工程と、を含む。
また、本発明の一態様に係る光パワー推定方法において、上記特定差分と上記レーザ光のパワーとを対応付けた第1のテーブル及び第1の関数、並びに、上記特定差分と上記ストークス光のパワーとを対応付けた第2のテーブル及び第2の関数、並びに、上記特定差分と上記アンチストークス光のパワーとを対応付けた第3のテーブル又は第3の関数のうち少なくとも何れか1つが定められており、
上記第1のテーブル、上記第1の関数、上記第2のテーブル、上記第2の関数、上記第3のテーブル、及び上記第3の関数のうち何れか1つを参照し、上記特定差分に対応付けられた上記レーザ光のパワー、上記特定差分に対応付けられた上記ストークス光のパワー、及び、上記特定差分に対応付けられた上記アンチストークス光のパワーのうち少なくとも何れか1つのパワーを上記推定パワーとして採用する。
上記第1のテーブル、上記第1の関数、上記第2のテーブル、上記第2の関数、上記第3のテーブル、及び上記第3の関数のうち何れか1つを参照し、上記特定差分に対応付けられた上記レーザ光のパワー、上記特定差分に対応付けられた上記ストークス光のパワー、及び、上記特定差分に対応付けられた上記アンチストークス光のパワーのうち少なくとも何れか1つのパワーを上記推定パワーとして採用する。
本発明の一態様によれば、マルチモードファイバにおいて生じる、複数の導波モードが関与する四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を用いてレーザ光、ストークス光、及びアンチストークス光のうち少なくとも何れか1つのパワーを推定する光パワー推定装置、レーザ装置、及び光パワー推定方法を実現することができる。
本願発明者らは、マルチモードファイバを含むファイバレーザ装置の出力光に、複数の導波モードが関与する四光波混合のストークス光及びアンチストークス光が含まれていることを発見した。
図2は、ファイバレーザ装置の出力光のスペクトルを示すグラフである。図2に示すグラフにおいては、レーザ光のパワーが1045W、2020W、3010W、4040W、5020Wとなる場合の各々について、ピークパワーで規格化した出力光のスペクトルを示している。図2に示すグラフにおいて、1070nmに現れたピークは、このファイバレーザ装置が発振するレーザ光に対応する。図2に示すグラフよれば、このレーザ光の他に、このレーザ光よりもピーク波長の長い光、及び、このレーザ光よりもピーク波長の短い光が存在していることを、確認することができる。また、図2に示すグラフによれば、これらの光のパワーがレーザ光のパワーに対して指数関数的に増加することを、確認することができる。
本願発明者らが行った検討の結果、これらの光は、マルチモードファイバにおいて生じる、複数の導波モードが関与する四光波混合、より具体的には、LP01モードとLP11モードとが関与する四光波混合のストークス光及びアンチストークス光であることが分かった。なお、LP01モードとLP11モード以外の高次モードとが関与する四光波混合、又は、2つの高次モードとが関与する四光波混合がマルチモードファイバにおいて生じた場合には、この四光波混合のストークス光及びアンチストークス光がレーザ装置の出力光に含まれ得る。
なお、図2に示す出力光のスペクトルは、誘導ラマン散乱の散乱光を抑制するための各種対策が施されたファイバレーザ装置によって得られたものである。このような対策が施されていないファイバレーザ装置では、四光波混合のストークス光の存在を確認することが困難となる場合がある。なぜなら、このような対策が施されていないファイバレーザ装置では、四光波混合のストークス光のピークが誘導ラマン散乱の散乱光のピークに埋もれてしまう場合があるからである。本願発明者らは、マルチモードファイバを備えたファイバレーザ装置に誘導ラマン散乱の散乱光を抑制する技術を適用することによって、四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の存在を確認することに初めて成功した。
以下、マルチモードファイバにおいて生じる、複数の導波モードが関与する四光波混合のストークス光及びアンチストークス光をモニタすることが可能なモニタ装置、及び、そのようなモニタ装置を備えたレーザ装置の実施形態について説明する。
〔第1の実施形態〕
(レーザ装置の構成)
本発明の第1の実施形態に係るレーザ装置1について、図1を参照して説明する。図1は、レーザ装置1の構成を示すブロック図である。
(レーザ装置の構成)
本発明の第1の実施形態に係るレーザ装置1について、図1を参照して説明する。図1は、レーザ装置1の構成を示すブロック図である。
レーザ装置1は、単一波長のレーザ光を発振する加工用のファイバレーザ装置であり、図1に示すように、m個のポンプ光源PS1〜PSm、m個のポンプデリバリファイバPDF1〜PDFm、ポンプコンバイナPC、増幅用光ファイバAF、2個のファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2、レーザデリバリファイバLDF、レーザヘッドLH、スペクトル測定器D、及び、制御部Cを備えている。スペクトル測定器Dと、制御部Cとは、本発明の一態様である光パワー推定装置を構成する。ポンプ光源PS1〜PSmとポンプデリバリファイバPDF1〜PDFmとは、互いに一対一に対応する。ここで、mは、2以上の任意の自然数であり、ポンプ光源PS1〜PSm及びポンプデリバリファイバPDF1〜PDFmの個数を表す。なお、図1においては、m=6の場合のレーザ装置1の構成例を示している。本節においては、スペクトル測定器D及び制御部C以外(すなわち光パワー推定装置以外)の各部の構成について説明する。
ポンプ光源PSj(jは1以上m以下の自然数)は、ポンプ光を生成する。ポンプ光としては、例えば、ピーク波長が975±3nm又は915±3nmのレーザ光を用いることができる。本実施形態においては、レーザダイオードをポンプ光源PS1〜PSmとして用いている。ポンプ光源PSjは、対応するポンプデリバリファイバPDFjの入力端に接続されている。ポンプ光源PSjにて生成されたポンプ光は、このポンプデリバリファイバPDFiに入力される。
ポンプデリバリファイバPDFjは、対応するポンプ光源PSjにて生成されたポンプ光を導波する。ポンプデリバリファイバPDFjの出力端は、ポンプコンバイナPCの入力ポートに接続されている。ポンプデリバリファイバPDFjを導波されたポンプ光は、この入力ポートを介してポンプコンバイナPCに入力される。
ポンプコンバイナPCは、ポンプデリバリファイバPDF1〜PDFmの各々を導波されたポンプ光を合波する。ポンプコンバイナPCの出力ポートは、第1ファイバブラッググレーティングFBG1を介して増幅用光ファイバAFの入力端に接続されている。ポンプコンバイナPCにて合波されたポンプ光のうち、第1ファイバブラッググレーティングFBG1を透過したポンプ光は、増幅用光ファイバAFに入力される。
増幅用光ファイバAFは、第1ファイバブラッググレーティングFBG1を透過したポンプ光を用いて、特定の波長帯域(以下、「増幅帯域」と記載)に属するレーザ光を増幅する。本実施形態においては、コアに希土類元素(例えばイッテルビウム、ツリウム、セリウム、ネオジウム、ユーロビウム、エルビウムなど)が添加されたダブルクラッドファイバを増幅用光ファイバAFとして用いている。この場合、第1ファイバブラッググレーティングFBG1を透過したポンプ光は、この希土類元素を反転分布状態に維持するために用いられる。例えば、コアに添加された希土類元素がイッテルビウムの場合、増幅用光ファイバAFの増幅帯域は、例えば、1000nm以上1100nm以下の波長帯域である。この場合、レーザ装置1が発振するレーザ光の波長は、1000nm以上1100nm以下に設定される。増幅用光ファイバAFの出力端は、第2ファイバブラッググレーティングFBG2を介してレーザデリバリファイバLDF1の入力端に接続されている。
ファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2は、増幅用光ファイバAFの増幅帯域に含まれる特定の波長帯域(以下、「反射帯域」と記載)に属するレーザ光を反射する。第1ファイバブラッググレーティングFBG1は、反射帯域における反射率が第2ファイバブラッググレーティングFBG2よりも高く、ミラーとして機能する。この第1ファイバブラッググレーティングFBG1としては、例えば、中心波長が1070±3nmであり、半値全幅が3.5±0.5nmである反射帯域を有し、その反射帯域における反射率が99%以上であるファイバブラッググレーティングを用いることができる。一方、第2ファイバブラッググレーティングFBG2は、反射帯域における反射率が第1ファイバブラッググレーティングFBG1よりも低く、ハーフミラーとして機能する。この第2ファイバブラッググレーティングFBG2としては、例えば、中心波長が1070±3nmであり、半値全幅が3.5±0.5nmである反射帯域を有し、その反射帯域における反射率が60%であるファイバブラッググレーティングを用いることができる。このため、ファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2の反射帯域に属するレーザ光は、ファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2にて繰り返し反射され、増幅用光ファイバAFにて再帰的に増幅される。このように、増幅用光ファイバAFは、ファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2と共に、ファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2の反射帯域に属するレーザ光を発振する発振器を構成する。増幅用光ファイバAFにて再帰的に増幅されたレーザ光のうち、第2ファイバブラッググレーティングFBG2を透過したレーザ光は、レーザデリバリファイバLDFに入力される。なお、ファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2の反射帯域の中心波長は、1070±3nmの他に、例えば、1030nm、1040nm、1050nm、1060nm、1070nm、1080mm、1087±6nm、1090nmであり得る。したがって、レーザ装置1の発振波長は、1070±3nmの他に、例えば、1030nm、1040nm、1050nm、1060nm、1070nm、1080mm、1087±6nm、1090nmであり得る。
レーザデリバリファイバLDFは、第2ファイバブラッググレーティングFBG2を透過したレーザ光を導波する。レーザデリバリファイバLDFの出力端は、レーザヘッドLHに接続されている。レーザデリバリファイバLDFを導波されたレーザ光は、このレーザヘッドLHを介して加工対象物Wに照射される。
(マルチモードファイバにおける四光波混合)
レーザ装置1を構成する増幅用光ファイバAF、ファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2、及びレーザデリバリファイバLDFは、マルチモードファイバにより実現し得る。本実施形態では、レーザデリバリファイバLDFをマルチモードファイバとしている。このため、レーザ装置1では、レーザデリバリファイバLDFにおいて、複数の導波モードが関与する四光波混合によって、ストークス光が増幅され、アンチストーク光が生成され得る。なお、増幅用光ファイバAFをマルチモードファイバにより実現した場合には、増幅用光ファイバAFにおいても、複数の導波モードが関与する四光波混合が生じ得る。
レーザ装置1を構成する増幅用光ファイバAF、ファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2、及びレーザデリバリファイバLDFは、マルチモードファイバにより実現し得る。本実施形態では、レーザデリバリファイバLDFをマルチモードファイバとしている。このため、レーザ装置1では、レーザデリバリファイバLDFにおいて、複数の導波モードが関与する四光波混合によって、ストークス光が増幅され、アンチストーク光が生成され得る。なお、増幅用光ファイバAFをマルチモードファイバにより実現した場合には、増幅用光ファイバAFにおいても、複数の導波モードが関与する四光波混合が生じ得る。
ここで、複数の導波モードが関与する四光波混合とは、マルチモードファイバを導波されるレーザ光の基本モード成分及び高次モード成分をポンプ光として、或いは、マルチモードファイバを導波されるレーザ光の第1の高次モード成分と第2の高次モード成分をポンプ光として、周波数整合条件及び位相整合条件の両方を満たすストークス光及びアンチストークス光が増幅又は生成される現象のことを指す。ここで、基本モードとしては、LP01モードが挙げられる。また、高次モードとしては、LP11モード、LP21モード、LP02モード、LP31モード、LP12モードなどが挙げられる。
例えば、マルチモードファイバを導波されるレーザ光のLP01モード成分及びLP11モード成分をポンプ光として、LP11モードのストークス光が増幅され、LP01モードのアンチストークス光が生成される場合、周波数整合条件及び位相整合条件は、以下のように書き下すことができる。
周波数整合条件:ωs+ωas=2ωp、
位相整合条件:β’(ωs)+β(ωas)=β(ωp)+β’(ωp)−γ(P+P’)。
位相整合条件:β’(ωs)+β(ωas)=β(ωp)+β’(ωp)−γ(P+P’)。
また、マルチモードファイバを導波されるレーザ光のLP01モード成分及びLP11モード成分をポンプ光として、LP01モードのストークス光とLP11モードのアンチストークス光とが生成される場合、周波数整合条件及び位相整合条件は、以下のように書き下すことができる。
周波数整合条件:ωs+ωas=2ωp、
位相整合条件:β(ωs)+β’(ωas)=β(ωp)+β’(ωp)−γ(P+P’)。
位相整合条件:β(ωs)+β’(ωas)=β(ωp)+β’(ωp)−γ(P+P’)。
ここで、ωpは、レーザ光のピーク角周波数であり、ωsは、ストークス光のピーク角周波数であり、ωasは、アンチストークス光のピーク角周波数である。また、β(ω)は、角周波数ωのLP01モードに対するマルチモードファイバの伝搬定数であり、β’(ω)は、角周波数ωのLP11モードに対するマルチモードファイバの伝搬定数である。また、Pは、レーザ光のLP01モード成分のパワーであり、P’は、レーザ光のLP11モード成分のパワーである。また、γは、非線形係数である。
ここで、LP01モードに対するマルチモードファイバの伝搬定数β(ω)は、角周波数ωを変数とする公知の多項式により与えられ、マルチモードファイバの分散をその係数として含む。同様に、LP11モードに対するマルチモードファイバの伝搬定数β’(ω)は、角周波数ωを変数とする公知の多項式により与えられ、マルチモードファイバの分散をその係数として含む。したがって、マルチモードファイバの分散を変えれば、伝搬定数β(ω),β’(ω)の関数形が変わる。そして、伝搬定数β(ω),β’(ω)の関数形が変われば、周波数整合条件及び位相整合条件の両方を満たすピーク角周波数ωs,ωas、すなわち、ストークス光及びアンチストークスのピーク角周波数ωs,ωasが変わる。そして、ストークス光及びアンチストークスのピーク角周波数ωs,ωasが変われば、ストークス光及びアンチストークスのピーク波長が変わる。したがって、マルチモードファイバにおいて生じる、四光波混合のストークス光及びアンチストークス光のピーク波長は、そのマルチモードファイバの分散に応じて決まる。なお、マルチモードファイバの分散は、公知の方法、例えば、マルチモードファイバの屈折率分布を測定することによって求められる。
なお、ここでは、LP01モードとLP11モードとが関与する四光波混合について説明したが、マルチモードファイバにおける四光波混合に関与する導波モードは、LP01モード及びLP11モードに限定されない。すなわち、マルチモードファイバの導波モードから任意に選択された2つの導波モードが関与する四光波混合が生じ得る。例えば、LP11モードとLP21モードとが関与する四光波混合のように、第1の高次モードと第2の高次モードとが関与する四光波混合が生じ得る。この場合の周波数整合条件及び位相整合条件は、LP01モードとLP11モードとの間の四光波混合と同様に与えられる。
本願発明者らは、LP01モードとLPmnモード(LP01モード、LP11モード、LP21モード、LP02モード、LP31モード)との組み合わせに関して、下記の式により定義される伝搬定数差Δβを計算した。下記の式(3)において、βmnは、LPmnモードの伝搬定数を表し、f0は、四光波混合のポンプ光となるレーザ光の周波数を表す。また、βmnの後に付したf=f0+Δfは、そのβmnが周波数f=f0+Δfにおける伝搬定数であることを表し、βmnの後に付したf=f0−Δfは、そのβmnが周波数f=f0−Δfにおける伝搬定数であることを表し、βmnの後に付したf=f0は、βmnが周波数f=f0における伝搬定数であることを表す。
Δβ=βmn|f=f0−Δf+β01|f=f0+Δf−β01|f=f0−βmn|f=f0 ・・・(3)
上記の式(3)により定義される伝搬定数差Δβが0になるΔfが存在する場合、周波数fがf0−(Δf+Δμ)であるLPmnモードのストークス光が増幅され、周波数fがf0+(Δf+Δμ)であるLP01モードのアンチストークス光が生成される四光波混合が生じる。ここで、上記のΔμは、レーザ光のパワーに応じてシフトする周波数の値を示す。また、上記の式(3)に現れるΔfのことを、「周波数シフト」と呼ぶ。
図3の(a)は、vパラメータが6であるマルチモードファイバに関して、本願発明者らが計算した伝搬定数差Δβの周波数シフトΔf依存性を示すグラフである。図3の(b)は、vパラメータが8であるマルチモードファイバに関して、本願発明者らが計算した伝搬定数差Δβの周波数シフトΔf依存性を示すグラフである。図3の(c)は、vパラメータが10であるマルチモードファイバに関して、本願発明者らが計算した伝搬定数差Δβの周波数シフトΔf依存性を示すグラフである。ここで、vパラメータとは、aをコア径、n0をコアの屈折率、n1をクラッドの屈折率、λ0をレーザ光のピーク波長として、下記の式(4)により定義される量である。
v=2πa(n1 2−n0 2)1/2/λ0 ・・・(4)
図3によると、vパラメータが6、8、10のマルチモードファイバでは、LP11モードのストークス光が増幅され、LP01モードのアンチストークス光が生成される四光波混合が生じることが確かめられる。この場合の周波数シフトΔfは、5〜6THz程度(波長15〜20nm程度に相当)である。また、図3によると、vパラメータが6、8、10のマルチモードファイバでは、より高次の導波モード(例えば、LP21モード、LP02モード、LP31モード)のストークス光が増幅され、LP01モードのアンチストークス光が生成される四光波混合も生じ得ることが示唆される。このときの周波数シフトΔfは、8THzよりも大きくなる。
レーザ装置1において、マルチモードファイバであるレーザデリバリファイバLDFを導波されるレーザ光には、(a)増幅用光ファイバAFにて増幅された後、レーザデリバリファイバLDFを順方向(レーザ光の出射方向と同方向)に導波されるレーザ光と、(b)加工対象物Wにて反射された後、レーザデリバリファイバLDFを逆方向(レーザ光の出射方向と逆方向)に導波されるレーザ光と、が含まれる。レーザデリバリファイバLDFを順方向に導波されるレーザ光の2つの導波モードをポンプ光とする四光波混合のストークス光及びアンチストークス光は、(1)レーザデリバリファイバLDFを順方向に導波され、(2)加工対象物Wにて反射され、(3)レーザデリバリファイバLDFを逆方向に導波された後、第2ファイバブラッググレーティングFBG2を介して増幅用光ファイバAFに入射する。一方、レーザデリバリファイバLDFを逆方向に導波されるレーザ光の2つの導波モードをポンプ光とする四光波混合のストークス光及びアンチストークス光は、レーザデリバリファイバLDFを逆方向に導波された後、第2ファイバブラッググレーティングFBG2を介して増幅用光ファイバAFに入射する。
第2ファイバブラッググレーティングFBG2を介して増幅用光ファイバAFに入射したストークス光及びアンチストークス光は、そのピーク波長又はそのピーク波長周辺の波長が増幅用光ファイバAFの増幅帯域に含まれている場合、増幅用光ファイバAFを導波される過程で増幅される場合がある。このため、増幅用光ファイバAFを逆方向に導波されるストークス光及びアンチストークス光のパワーが大きくなる場合がある。このようなパワーの大きいストークス及びアンチストークス光が増幅用光ファイバAFを導波されると、レーザ光の発振が不安定になる可能性がある。また、このようなパワーの大きいストークス光及びアンチストークス光が、増幅用光ファイバAFの上流側から出射され、ポンプ光源PS1〜PSmに入射すると、ポンプ光源PS1〜PSmの信頼性が低下する可能性がある。
なお、本明細書において、「マルチモードファイバ」とは、2個以上の導波モードを有する光ファイバのことを指す。マルチモードファイバの有する導波モードの個数は、マルチモードファイバの設計に応じて決まり、例えば10個である。2個以上10個以下の導波モードを有する所謂フューモードファイバは、マルチモードファイバの一例である。また、本明細書において、「ストークス光」とは、特にことわりがない場合、マルチモードモードおいて複数の導波モードが関与する四光波混合によって生じるストークス光のことを指し、「アンチストークス光」とは、特にことわりがない場合、マルチモードモードおいて複数の導波モードが関与する四光波混合によって生じるアンチストークス光のことを指す。
(光パワー推定装置の機能)
上述したように、本実施形態に係るレーザ装置1は、光パワー推定装置10を備えている。光パワー推定装置10は、スペクトル測定器Dと、制御部Cとを備えている。
上述したように、本実施形態に係るレーザ装置1は、光パワー推定装置10を備えている。光パワー推定装置10は、スペクトル測定器Dと、制御部Cとを備えている。
本実施形態において、スペクトル測定器Dは、レーザ光を導波するマルチモードファイバであるレーザデリバリファイバLDFに対して、ポンプコンバイナPC及び逆方向デリバリファイバRDFを介して接続されている。レーザ装置1では、図1に示すように、スペクトル測定器Dは、レーザデリバリファイバLDFに対して、第2ファイバブラッググレーティングFBG2、増幅用光ファイバAF、第1ファイバブラッググレーティングFBG1、ポンプコンバイナPC、及び、逆方向デリバリファイバRDFを介して接続されている。なお、本実施形態においては、レーザ装置がm個のポンプ光源PS1〜PSmを備えてことに伴い、レーザ装置1は、ポンプコンバイナPCを備えている。しかし、レーザ装置1においてポンプコンバイナPCは必須の構成ではない。レーザ装置1は、ポンプコンバイナPCの代わりに分岐部(例えば複数のY分岐を組み合わせることによって得られる)を備えていてもよい。
ポンプコンバイナPCとスペクトル測定器Dとを接続する逆方向デリバリファイバRDFは、レーザデリバリファイバLDFと同様に構成されている。逆方向デリバリファイバRDFの入力端は、ポンプコンバイナPCの入力ポートに接続されている。逆方向デリバリファイバRDFの出力端は、スペクトル測定器Dに接続されている。
したがって、増幅用光ファイバAFを逆方向(レーザ光の出射方向と逆方向)に伝播してきたレーザ光は、逆方向デリバリファイバRDFにより導波され、スペクトル測定器Dに入射する。また、レーザ光とともにストークス光及びアンチストークス光が増幅用光ファイバAFを逆方向により導波されてきた場合には、レーザ光とともにストークス光及びアンチストークス光がスペクトル測定器Dに入射する。
本発明の一態様において、スペクトル測定器は、ストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域におけるスペクトルを測定する。本実施形態においては、スペクトル測定器Dの一例として光スペクトラムアナライザを採用しており、該光スペクトラムアナライザは、ストークス光を含む波長帯域におけるスペクトルを測定する。ストークス光を含む波長帯域は、例えば、レーザ光のピーク波長λLを下限とし、ピーク波長λLよりも40nm長い波長を上限とする波長帯域とすることが好ましく、ピーク波長λLよりも10nm長い波長を下限とし、ピーク波長λLよりも40nm長い波長を上限とする波長帯域とすることが更に好ましい。この場合、例えば、ピーク波長λLが1070nmのときには、1080nm以上1110nm以下の波長帯域もしくは1080nm以上1100nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器がスペクトルを測定する波長帯域となる。なお、本明細書において、ある光がある波長帯域に属するとは、(1)その光が特定の波長を有する単色光である場合には、少なくともその波長がその波長帯域に含まれることを指し、(2)その光が特定のピーク波長を有する複色光である場合には、少なくともそのピーク波長がその波長帯域に含まれることを指す。
なお、ストークス光を検出対象とする場合、レーザ装置1の発振波長は、1070nmの他に、例えば、1070±3nm、1030nm、1040nm、1050nm、1060nm、1080mm、1087±6nm、1090nmであり得る。レーザ光のピーク波長が1070±3nmのときには、1080±3nm以上1110±3nm以下の波長帯域もしくは1080±3nm以上1100±3nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1030nmのときには、1040nm以上1070nm以下の波長帯域もしくは1040nm以上1060nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1040nmのときには、1050nm以上1080nm以下の波長帯域もしくは1050nm以上1070nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1050nmのときには、1060nm以上1090nm以下の波長帯域もしくは1060nm以上1080nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1060nmのときには、1070nm以上1100nm以下の波長帯域もしくは1070nm以上1090nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1080nmのときには、1090nm以上1120nm以下の波長帯域もしくは1090nm以上1110nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1087±6nmのときには、1097±6nm以上1127±6nm以下の波長帯域もしくは1097±6nm以上1117±6nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1090nmのときには、1100nm以上1130nm以下の波長帯域もしくは1100nm以上1120nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。
なお、アンチストークス光を検出対象とする場合、レーザ装置1の発振波長は、1070nmの他に、例えば、1070±3nm、1030nm、1040nm、1050nm、1060nm、1080mm、1087±6nm、1090nmであり得る。レーザ光のピーク波長が1070±3nmのときには、1030±3nm以上1060±3nm以下の波長帯域もしくは1040±3nm以上1060±3nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1030nmのときには、990nm以上1020nm以下の波長帯域もしくは1000nm以上1020nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1040nmのときには、1000nm以上1030nm以下の波長帯域もしくは1010nm以上1030nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1050nmのときには、1010nm以上1040nm以下の波長帯域もしくは1020nm以上1040nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1060nmのときには、1020nm以上1050nm以下の波長帯域もしくは1030nm以上1050nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1080nmのときには、1040nm以上1070nm以下の波長帯域もしくは1050nm以上1070nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1087±6nmのときには、1047±6nm以上1077±6nm以下の波長帯域もしくは1057±6nm以上1077±6nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。或いは、レーザ光のピーク波長が1090nmのときには、1050nm以上1080nm以下の波長帯域もしくは1060nm以上1080nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。
また、光スペクトラムアナライザは、ストークス光を含み、且つ、レーザ光を含まない波長帯域におけるスペクトルを測定するように構成されていてもよい。ストークス光を含み、且つ、レーザ光を含まない波長帯域は、例えば、レーザ光のピーク波長λLよりも10nm長い波長を下限とし、ピーク波長λLよりも40nm長い波長を上限とする波長帯域とすることが好ましい。この場合、例えば、ピーク波長λLが1070nmのときには、1080nm以上1110nm以下の波長帯域もしくは1080nm以上1100nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器がスペクトルを測定する波長帯域となる。これにより、ノイズであるレーザ光を含むスペクトルをスペクトル測定器Dが測定することにより生じ得る、ストークス光の検出精度の低下を抑えることができる。
また、ストークス光を含む波長帯域は、レーザ光に起因する誘導ラマン散乱の散乱光(以下、「誘導ラマン散乱光」とも記載)のピーク波長を含まない波長帯域であって、且つ、ピーク波長λLよりも長波長側の波長帯域であることが好ましい。また、スペクトル測定器Dがスペクトルを測定する波長帯域は、ピーク波長λSを含む波長帯域であって、ピーク波長λLよりも長波長側、且つ、レーザ光に起因する誘導ラマン散乱光のピーク波長よりも短波長側の波長帯域であることが好ましい。これにより、ノイズである誘導ラマン散乱光を含むスペクトルをスペクトル測定器Dが測定することにより生じ得る、ストークス光の検出精度の低下を抑えることが可能になる。
一方、スペクトル測定器Dがアンチストークス光を含む波長帯域のスペクトルを測定する場合、スペクトル測定器Dは、例えば、ピーク波長λLよりも短波長側の波長帯域であって、ピーク波長λLよりも40nm短い波長を下限とする波長帯域であることが好ましく、ピーク波長λLよりも40nm短い波長を下限とし、ピーク波長λLよりも10nm短い波長を上限とすることが更に好ましい。この場合、例えば、レーザ光のピーク波長が1070nmのときには、1030nm以上1060nm以下の波長帯域もしくは1040nm以上1060nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器Dが優先的に検出する波長帯域となる。
制御部Cは、スペクトル測定器Dにより測定されたスペクトルからストークス光のピーク波長λSを決定し、且つ、ストークス光のピーク波長λSとレーザ光のピーク波長λLとの差分である第1の差分Δλ1を算出する。そのうえで、第1の差分Δλ1を特定差分ΔPとして、特定差分ΔPに応じてレーザ光のパワーの推定値である推定パワーPELを推定する。ここで、ピーク波長λLは、2つのファイバブラッググレーティングFBG1,FBG2により構成された共振器の構成により定まるレーザ装置1に固有の波長である。ピーク波長λSは、例えば、スペクトル測定器Dにより測定されたスペクトルからレーザ光の成分とストークス光の成分とを分離したうえで、ストークス光の成分を好適な関数を用いて近似することによって求められる。この一連の処理は、制御部Cの演算部C2が実施する。なお、制御部Cの構成については後述する。
なお、図7〜図9を参照して後述するようにレーザ装置7〜図9がMOPA型である場合(すなわち、後述するMO部と増幅用光ファイバAF’との間に波長変換素子が含まれていない場合)、ピーク波長λLは、MO部から出射されたレーザ光のピーク波長に一致又は略一致する。
或いは、MO部の下流側に波長変換素子が含まれている場合、当該波長変換素子に対して上流側のマルチモードファイバにおいては、請求の範囲におけるレーザ光のピーク波長は、MO部から出射されたレーザ光のピーク波長に一致又は略一致し、当該波長変換素子に対して下流側のマルチモードファイバにおいては、請求の範囲におけるレーザ光のピーク波長は、MO部から出射されたレーザ光が当該波長変換素子で変換された後のレーザ光のピーク波長に一致又は略一致する。MO部の下流側に波長変換素子が含まれていない場合、MO部の下流側のマルチモードファイバにおいては、請求の範囲におけるレーザ光のピーク波長は、MO部から出射されたレーザ光のピーク波長に一致又は略一致する。
以上のように、ピーク波長λLは、上述した波長の何れかになり得る。
図2は、ファイバレーザ装置の出力光の1040nmを下限とし、1140nmを上限する波長帯域におけるスペクトルを示すグラフである。図2に示すグラフにおいては、レーザ光のパワーが1045W、2020W、3010W、4040W、5020Wとなる場合の各々について、ピークパワーで規格化した出力光のスペクトルを示している。図2に示すグラフにおいて、1070nmに現れたピークは、このファイバレーザ装置が発振するレーザ光に対応する。図2に示すグラフよれば、このレーザ光の他に、このレーザ光よりもピーク波長の長い光、及び、このレーザ光よりもピーク波長の短い光が存在していることを、確認することができる。これらの光は、上述した四光波混合のストークス光及びアンチストークス光であると考えられる。また、図2に示すグラフによれば、ストークス光及びアンチストークス光のパワーがレーザ光のパワーに対して指数関数的に増加することを、確認することができる。
なお、図2に示す出力光のスペクトルは、誘導ラマン散乱の散乱光を抑制するための各種対策が施されたファイバレーザ装置によって得られたものである。このような対策が施されていないファイバレーザ装置では、四光波混合のストークス光の存在を確認することが困難となる場合がある。なぜなら、このような対策が施されていないファイバレーザ装置では、四光波混合のストークス光のピークが誘導ラマン散乱の散乱光のピークに埋もれてしまう場合があるからである。本願発明者らは、マルチモードファイバを備えたファイバレーザ装置に誘導ラマン散乱の散乱光を抑制する技術を適用することによって、四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の存在を確認することに初めて成功した。
図2に示すように、パワーPLが高出力化されればされるほど、ストークス光のピーク波長λSが長波長側へシフトする現象、すなわち、第1の差分Δλ1が増大する現象を本願の発明者らは見出した。光パワー推定装置10は、この現象を利用することによって、第1の差分Δλ1を算出することによって、その第1の差分Δλ1に応じた推定パワーPELを推定することができる。すなわち、光パワー推定装置10は、マルチモードファイバにおいて生じる、複数の導波モードが関与する四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を用いてレーザ光のパワーを推定する技術を実現することができる。また、光パワー推定装置10を備えたレーザ装置1は、光パワー推定装置10と同じ効果を奏する。
なお、図2に示したグラフによれば、出力光のスペクトル形状に影響を与えるストークス光及びアンチストークス光が生じるのは、特に、レーザ装置1にて発振されるレーザ光のパワーが3kW以上の場合、或いは、レーザ装置1から出力される出力光(ストークス光及びアンチストークス光を含む)のパワーが4kW以上の場合である。このため、特に、レーザ装置1にて発振されるレーザ光のパワーが3kW以上の場合、或いは、レーザ装置1から出力される出力光のパワーが4kW以上の場合、フィルタ装置Fは特に有効に機能する。
また、光パワー推定装置10は、第1の差分Δλ1に応じた推定パワーPELを推定するように構成されているため、レーザ光のパワーをモニタする従来の技術と比較して、以下のようなメリットのうち少なくとも何れか1つを有する。
第1のメリットは、レーザ装置1の運転中において突発的に生じ得る四光波混合のストークス光を検出可能なことである。従来、レーザ装置1のレーザ光のように高出力なレーザ光のパワーを測定するためには、カロリーメータを用いる。カロリーメータは、定められた時間内にキャビティに入射したレーザ光のパワーを、熱に変換したうえでキャビティの温度変化として検出し、この温度変化からレーザ光のパワーを推定することによって該パワーをモニタする。したがって、カロリーメータは、定められた時間内におけるレーザ光の平均パワーをモニタするものであり、高い時間分解能が要求される用途には適さない。
一方、光パワー推定装置10は、スペクトル測定器Dの一例として光スペクトラムアナライザを採用している。そのため、光パワー推定装置10は、突発的に生じた四光波混合のストークス光(すなわちランダムパルス状のストークス光)であっても、そのピーク波長λSを決定することができ、第1の差分Δλ1を算出することができ、結果として、推定パワーPELを推定することができる。
第2のメリットは、外部環境が変化しやすい状況下において運用される場合であっても、その外部環境の変化による影響を大きく受けることなく四光波混合のストークス光を検出可能なことである。ピーク波長λSは、ストークス光のパワーと比較して、外部環境の変化による影響を受けにくいためである。なお、変化し得る外部環境のパラメータとしては、例えば、加工対象物Wの反射率や、ミラーの位置などが挙げられる。
第3のメリットは、カロリーメータを用いてレーザ光のパワーをモニタする場合と比較して、推定パワーPELを高い精度で推定可能なことである。例えば、典型的なカロリーメータを用いてパワーが5kWのレーザ光をモニタした場合、その精度は、5%程度である。それに対して、光スペクトラムアナライザは、非常に高い精度でレーザ光のスペクトルを測定することができる。したがって、光パワー推定装置10は、非常に高い精度で第1の差分Δλ1を算出することができ、結果として、高い精度で推定パワーPELを推定することができる。
なお、後述するように、レーザ装置1の光源制御部C3は、推定パワーPELに基づいて、各ポンプ光源PSjに供給される駆動電流を制御するように構成されていてもよい。この場合、光パワー推定装置10が非常に高い精度で推定パワーPELを推定することができるため、レーザ装置1は、高い精度で駆動電流を制御することができる。
第4のメリットは、レーザ装置1が生成するレーザ光のパワーをカロリーメータにてモニタする場合と比較して、より安全に推定パワーPELを推定可能なことである。数kW級のレーザ光のパワーをそのままモニタしようとする行為は、その高い出力に起因して危険を伴う。光パワー推定装置10においては、レーザデリバリファイバLDF及び増幅用光ファイバAFを伝搬するレーザ光及びストークス光の一部を分岐させ、その分岐させたレーザ光及びストークス光を用いて推定パワーPELを推定する。そのため、スペクトル測定器Dに入射するレーザ光及びストークス光のパワーは、レーザデリバリファイバLDF及び増幅用光ファイバAFを伝搬するレーザ光及びストークス光のパワーと比較して、著しく減衰されている。したがって、レーザ装置1は、より安全に推定パワーPELを推定可能である。
なお、上述のようにレーザ装置1は、数kW級のレーザ光のパワーをそのままモニタするわけではなく、ストークス光を含む波長帯域におけるスペクトルを測定する。したがって、スペクトル測定器Dに到達するレーザ光のパワーがピーク波長λSを決定可能なS/N比を有していればよいため、レーザ装置1は、弱いレーザ光を用いても推定パワーPELを推定することができる。
なお、逆方向デリバリファイバRDFとスペクトル測定器Dとの間には、レーザ光及びストークス光のパワーを更に低減するフィルタが挿入されていてもよい。この場合、スペクトル測定器Dに入射するレーザ光及びストークス光のパワーは、フィルタの特性(例えば反射率)により依存する。したがって、レーザ装置1の使用者は、フィルタを適宜選択することによって、スペクトル測定器Dに入射するレーザ光及びストークス光のパワーを好適な範囲内に収めることができる。
なお、本実施形態において、演算部C2は、第1の差分Δλ1を特定差分ΔPとするように構成されている。しかし、演算部C2は、特定差分ΔPとしては、第1の差分Δλ1の代わりに、ピーク波長λLとアンチストークス光のピーク波長λASとの差分である第2の差分Δλ2、及び、ピーク波長λSとピーク波長λASとの差分である第3の差分Δλ3の何れかを特定差分ΔPとするように構成されていてもよい。演算部C2が第2の差分Δλ2及び第3の差分Δλ3の何れを特定差分ΔPとする場合であっても、光パワー推定装置10は、上述した各効果を奏することができる。
また、本実施形態において、演算部C2は、特定差分ΔPに応じてレーザ光のパワーの推定値である推定パワーPELを推定するように構成されている。しかし、演算部C2は、ストークス光のパワーの推定値である推定パワーPESを推定するように構成されていてもよいし、アンチストークス光のパワーの推定値である推定パワーPEASを推定するように構成されていてもよい。
例えば、演算部C2が第2の差分Δλ2を特定差分ΔPとする場合、スペクトル測定器Dは、アンチストークス光を含む波長帯域におけるスペクトルを測定するように構成されており、且つ、演算部C2は、測定されたスペクトルからピーク波長λASを決定するように構成されていればよい。アンチストークス光を含む波長帯域は、例えば、ピーク波長λLよりも40nm短い波長を下限とし、ピーク波長λLを上限とすることが好ましい。この場合、例えば、ピーク波長λLが1070nmのときには、1030nm以上1070nm以下の波長帯域もしくは1040nm以上1070nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器がスペクトルを測定する波長帯域となる。
また、光スペクトラムアナライザは、アンチストークス光を含み、且つ、レーザ光を含まない波長帯域におけるスペクトルを測定するように構成されていてもよい。アンチストークス光を含み、且つ、レーザ光を含まない波長帯域は、例えば、ピーク波長λLよりも40nm短い波長を下限とし、ピーク波長λLよりも10nm短い波長を上限とすることが好ましい。この場合、例えば、ピーク波長λLが1070nmのときには、1030nm以上1060nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器がスペクトルを測定する波長帯域となる。これにより、ノイズであるレーザ光を含むスペクトルをスペクトル測定器Dが測定することにより生じ得る、アンチストークス光の検出精度の低下を抑えることができる。
また、アンチストークス光を含む波長帯域は、誘導ラマン散乱光のピーク波長を含まない波長帯域であって、且つ、ピーク波長λLよりも短波長側の波長帯域であることが好ましい。これにより、ノイズである誘導ラマン散乱光を含むスペクトルをスペクトル測定器Dが測定することにより生じ得る、アンチストークス光の検出精度の低下を抑えることが可能になる。
また、例えば、演算部C2が第3の差分Δλ3を特定差分ΔPとする場合、スペクトル測定器Dは、ストークス光及びアンチストークス光の両方を含む波長帯域におけるスペクトルを測定するように構成されており、且つ、演算部C2は、測定されたスペクトルからピーク波長λS及びピーク波長λASを決定するように構成されていればよい。ストークス光及びアンチストークス光の両方を含む波長帯域は、例えば、ピーク波長λLよりも40nm短い波長を下限とし、ピーク波長λLよりも40nm長い波長を上限とすることが好ましい。この場合、例えば、ピーク波長λLが1070nmのときには、1030nm以上1110nm以下の波長帯域が、スペクトル測定器がスペクトルを測定する波長帯域となる。
なお、ストークス光及びアンチストークス光の両方を含む波長帯域は、レーザ光を含む波長帯域(例えば、ピーク波長λLよりも10nm短い波長を下限とし、ピーク波長λLよりも10nm長い波長を上限とする波長帯域)を除くように設定されていてもよい。すなわち、ストークス光及びアンチストークス光の両方を含み、且つ、レーザ光を含まない波長帯域は、例えば、ピーク波長λLが1070nmのときには、1030nm以上1060nm以下、又は、1080nm以上1110nm以下の波長帯域となる。これにより、ノイズであるレーザ光を含むスペクトルをスペクトル測定器Dが測定することにより生じ得る、ストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方の検出精度の低下を抑えることができる。
また、ストークス光及びアンチストークス光を含む波長帯域は、誘導ラマン散乱光のピーク波長を含まない波長帯域であって、且つ、レーザ光を含む波長帯域を除いた波長帯域であることが好ましい。これにより、ノイズである誘導ラマン散乱光を含むスペクトルをスペクトル測定器Dが測定することにより生じ得る、ストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方の検出精度の低下を抑えることが可能になる。
また、ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域は、上述した各波長帯域のうち、パワーが自然放出光よりも高い波長帯域であることが好ましい。これにより、ノイズである自然放出光を含むスペクトルをスペクトル測定器Dが測定することにより生じ得る、ストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方の検出精度の低下を抑えることが可能になる。
図2に示すように、パワーPLが高出力化されればされるほど、ピーク波長λASが短波長側へシフトする現象、すなわち、第2の差分Δλ2が増大する現象を本願の発明者らは見出した。また、上述したパワーPLの高出力化に伴う、ピーク波長λSの長波長側へのシフトと、ピーク波長λASが短波長側へのシフトとをまとめて観測することによって、パワーPLが高出力化されればされるほど、第3の差分Δλ3が増大する現象を本願の発明者らは見出した。
これらの現象を利用することによって、光パワー推定装置10の一態様は、第2の差分Δλ2を算出した場合には、その第2の差分Δλ2に応じた推定パワーPELを推定することができるし、第3の差分Δλ3を算出した場合には、その第3の差分Δλ3に応じた推定パワーPELを推定することができる。
本実施形態において、制御部Cの記憶部C1は、特定差分ΔPとレーザ光のパワーPLとを対応付けた関数(図4の(a)参照)を予め記憶している。図4の(a)は、この関数を示すグラフである。請求の範囲に記載の第1の関数の一例であるこの関数は、レーザ装置1において、異なるパワーPLごとに1070nm以上1120nm以下の波長帯域のスペクトルを測定し、各パワーPLに対応する第1の差分Δλ1を予め測定しておくことによって得られる。例えば、図4の(a)に示すように、パワーPLがPL=3,4,5kWの各々における第1の差分Δλ1として、それぞれ、λ1=λa,λb,λcnmが得られたとする。この場合、(3kW,λanm)、(4kW,λbnm)、(5kW,λcnm)の3点を近似することによって、特定差分ΔPである第1の差分Δλ1とパワーPLとを1対1で対応付けた関数を得ることができる。
演算部C2は、この関数を参照し、算出された特定差分ΔPに対応付けられたパワーPLを推定パワーPELとして採用する。この構成によれば、光パワー推定装置10は、推定パワーPELをより精度よく推定することができる。
なお、本実施形態では、第1の差分Δλ1とパワーPLとを対応付けるものの一態様として関数を採用している。しかし、このような関数の代わりにテーブルを用いることもできる。このテーブルは、請求の範囲に記載の第1のテーブルの一例である。
(ストークス光の推定パワーPES)
本実施形態において、演算部C2は、特定差分ΔPに応じてレーザ光のパワーPLの推定値である推定パワーPELを推定するように構成されている。しかし、演算部C2は、特定差分ΔPに応じてストークス光のパワーPSの推定値である推定パワーPESを推定するように構成されていてもよいし、特定差分ΔPに応じてアンチストークス光のパワーPASの推定値である推定パワーPEASを推定するように構成されていてもよい。ここでは、演算部C2が特定差分ΔPに応じて推定パワーPESを推定する場合を例にして説明する。
本実施形態において、演算部C2は、特定差分ΔPに応じてレーザ光のパワーPLの推定値である推定パワーPELを推定するように構成されている。しかし、演算部C2は、特定差分ΔPに応じてストークス光のパワーPSの推定値である推定パワーPESを推定するように構成されていてもよいし、特定差分ΔPに応じてアンチストークス光のパワーPASの推定値である推定パワーPEASを推定するように構成されていてもよい。ここでは、演算部C2が特定差分ΔPに応じて推定パワーPESを推定する場合を例にして説明する。
図4の(b)は、パワーPSとパワーPLとを対応付けた関数を示すグラフである。この関数は、レーザ装置1において、異なるパワーPLごとに例えば1040nm以上1140nm以下の波長帯域におけるスペクトルを測定し、各パワーPLに対応するパワーPSを予め測定しておくことによって得られる。例えば、図4の(b)に示すように、パワーPLがPL=3.5,4,5kWの各々におけるパワーPSとして、それぞれ、PS=PSa,PSb,PSckWが得られたとする。この場合、(3.5kW,PSakW)、(4kW,PSbkW)、(5kW,PSckW)の3点を近似することによって、パワーPSとパワーPLとを1対1で対応付けた関数を得ることができる。この関数は、特定差分ΔPとパワーPLとを対応付けた関数とともに、例えば記憶部C1に記憶させておくことが好ましい。
なお、上述したスペクトルからパワーPSを求める手法の一例として、該スペクトルからレーザ光の成分とストークス光の成分を分離したうえで、ストークス光の成分を好適な関数を用いて近似する方法が挙げられる。
演算部C2は、上述したパワーPSとパワーPLと対応付けた関数を参照し、推定したパワーPLに対応付けられたパワーPSを推定パワーPESとして採用する。この構成によれば、光パワー推定装置10は、推定パワーPELに加えて推定パワーPESを精度よく推定することができる。なお、特定差分ΔPに応じて推定パワーPEASを推定するように演算部C2を構成する場合、予めパワーPSとパワーPLと対応付けた関数を記憶部C1に記憶させておき、演算部C2は、該関数を参照し、推定したパワーPLに対応付けられたパワーPASを推定パワーPEASとして採用するように構成されていればよい。なお、演算部C2は、特定差分ΔPに応じて推定パワーPES,推定パワーPEASの両方を推定するように構成されていてもよい。
また、図4の(a),(b)に示した2つの関数を組み合わせることによって、特定差分ΔPである第1の差分Δλ1とパワーPSとを1対1で対応付けた関数(請求の範囲に記載の第2の関数)を得ることも可能である。記憶部C1に該第2の関数を記憶させておき、演算部C2は、該第2の関数を参照したうえで、特定差分ΔPに対応付けられたパワーPSを推定パワーPESとして採用するように制御部Cを構成することによって、光パワー推定装置10は、特定差分ΔPに応じて推定パワーPESを直接推定することができる。
もしくは、特定差分ΔPである第1の差分Δλ1とパワーPASとを1対1で対応付けた関数(請求の範囲に記載の第3の関数)を記憶部C1に記憶させておき、演算部C2は、該第3の関数を参照したうえで、特定差分ΔPに対応付けられたパワーPASを推定パワーPEASとして採用するように制御部Cを構成することによって、光パワー推定装置10は、特定差分ΔPに応じて推定パワーPEASを直接推定することもできる。
なお、本実施形態では、第1の差分Δλ1とパワーPSとを1対1で対応付けるものの一態様として第2の関数を採用し、第1の差分Δλ1とパワーPASとを1対1で対応付けるものの一態様として第3の関数を採用している。しかし、これらのような関数の代わりにテーブルを用いることもできる。これらのテーブルは、請求の範囲に記載の第2のテーブル及び第3のテーブルの一例である。
本実施形態に係るレーザ装置1の備えるスペクトル測定器Dは、ポンプコンバイナPCの入力ポートに接続されており、下流側から上流側へと導波されたストークス光及びアンチストークス光を検出する。ここで、下流側とは、レーザ装置1において加工対象物Wに近い側のことであり、上流側とは、レーザ装置1において加工対象物Wに遠い側のことである。これにより、ポンプ光源PS1〜PSm(前方励起光源)に入射する前のストークス光及びアンチストークス光(ポンプコンバイナPCを下流側から上流側へと導波した後のストークス光及びアンチストークス光)の一方又は両方のパワーをモニタすることが可能になる。なお、ポンプコンバイナPCの入力ポートには、(1)中央に配置され、増幅用光ファイバAFのコアと光学的に結合した入力ポートと、(2)周辺に配置され、増幅用光ファイバAFのクラッドと光学的に結合した入力ポートと、がある。スペクトル測定器Dが接続される入力ポートは、前者の入力ポートであることが好ましい。
なお、レーザ光、ストークス光、及びアンチストークス光のピーク波長λL,λS,λASの間には、λAS<λL<λSという関係があり、レーザ光及び誘導ラマン散乱光のピーク波長λRの間には、λL<λRの関係がある。したがって、スペクトル測定器Dを、ピーク波長λASを含む波長帯域であって、ピーク波長λLよりも短波長側の波長帯域におけるスペクトルを測定するように構成すれば、パワーPLを精度よく推定することができる。これは、スペクトルに含まれるレーザ光の成分及びストークス光の成分を抑制することができるためである。
また、ピーク波長λS及びピーク波長λRの間に、λS<λRという関係がある場合には、スペクトル測定器Dを、ピーク波長λSを含む波長帯域であって、ピーク波長λLよりも長波長側、かつ、ピーク波長λRよりも短波長側の波長帯域におけるスペクトルを測定するように構成すれば、パワーPLを精度よく推定することができる。これは、スペクトルに含まれるレーザ光の成分、誘導ラマン散乱光の成分、及びアンチストークス光の成分を抑制することができるためである。一方、ピーク波長λS及びピーク波長λRの間に、λS>λRという関係がある場合には、スペクトル測定器Dを、ピーク波長λSを含む波長帯域であって、ピーク波長λRよりも長波長側の波長帯域におけるスペクトルを測定するように構成すれば、パワーPLを精度よく推定することができる。これは、スペクトルに含まれるレーザ光の成分、誘導ラマン散乱光の成分、及びアンチストークス光の成分を抑制することができるためである。
ここで、ストークス光のピークパワーの方がアンチストークス光のピークパワーよりも高くなる場合がある。このような場合、演算部C2が、第1の差分Δλ1を特定差分ΔPとするように構成されていることによって、第2の差分Δλ2を特定差分ΔPとするように構成されている場合よりも、精度よくパワーPLを推定することができる。これは、ピークパワーが高いストークス光のS/N比の方がピークパワーが低いアンチストークス光のS/N比を上回るためである。ストークス光の高いS/N比に起因して、演算部C2は、特定差分ΔPを精度よく求めることができるため、結果としてパワーPLを精度よく推定することができる。
一方、アンチストークス光のピークパワーの方がストークス光のピークパワーよりも高くなる場合がある。このような場合、演算部C2が、第2の差分Δλ2を特定差分ΔPとするように構成されていることによって、第1の差分Δλ1を特定差分ΔPとするように構成されている場合よりも、精度よくパワーPLを推定することができる。また、四光波混合の現象をより容易に検知することが可能になる。
また、上述したように演算部C2は、第3の差分Δλ3を特定差分ΔPとするように構成されていてもよい。この場合、演算部C2が、ストークス光及びアンチストークスの両方を用いてパワーPLを推定することができるため、ストークス光及びアンチストークスの一方を用いてパワーPLを推定する場合よりも、精度よくパワーPLを推定することができる可能性がある。これは、第3の差分Δλ3の値が第1の差分Δλ1及び第2の差分Δλ2の各々の値を上回るためである。
演算部C2が第1の差分Δλ1、第2の差分Δλ2、及び第3の差分Δλ3の何れを特定差分ΔPとするかは、レーザ装置1のレーザ光、ストークス光、アンチストークス光、及びラマン散乱光を含む波長帯域におけるスペクトルに鑑み、適宜選択することができる。
また、レーザ装置1は、誘導ラマン散乱光を抑制する抑制部(不図示)を備えていてもよい。抑制部が誘導ラマン散乱光を抑制する程度は特に限定されないが、誘導ラマン散乱光のパワーがレーザ光のパワーに対して−30dB未満に抑えられること、或いは、誘導ラマン散乱光のピークパワーが四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方のピークパワー未満に抑えられることが好ましい。これにより、出力光のスペクトルにおいて、四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方のピークが誘導ラマン散乱光のピークに埋もれ難くなり、その結果、誘導ラマン散乱光がスペクトル測定器Dに入射することに伴うS/N比の低下を抑制することができる。したがって、パワーPLを推定するときの精度が低下することを抑制することができる。また、これにより、四光波混合の現象をより容易に検知することが可能になる。誘導ラマン散乱光を抑制する方法としては、誘導ラマン散乱光の発生を抑制する方法と、発生した誘導ラマン散乱光を損失させる方法とが考えられる。誘導ラマン散乱光の発生を抑制する具体的な方法としては、コアの実効断面積Aeffを大きくする方法や、コアΔ(コアとクラッドとの比屈折率差)を小さくする方法などが挙げられる。この場合、これらの方法を用いて誘導ラマン散乱光の発生が抑制された光ファイバが、上述した抑制部として機能することになる。また、発生した誘導ラマン散乱光を損失させる方法としては、スラントファイバブラッググレーティング又はフォトニックバンドギャップファイバを用いて誘導ラマン散乱光を放射モードに結合する方法や、ファイバブラッググレーティングを用いて誘導ラマン散乱光を反射する方法などが挙げられる。この場合、これらの方法の実現に用いられるスラントファイバブラッググレーティング、フォトニックバンドギャップファイバ、ファイバブラッググレーティングなどが、上述した抑制部として機能することになる。
(制御部)
制御部Cは、図1に示すように、記憶部C1と、演算部C2と、光源制御部C3とを備えている。記憶部C1は、第1の差分Δλ1とパワーPLとを対応付ける関数(図4の(a)参照)を記憶している。
制御部Cは、図1に示すように、記憶部C1と、演算部C2と、光源制御部C3とを備えている。記憶部C1は、第1の差分Δλ1とパワーPLとを対応付ける関数(図4の(a)参照)を記憶している。
制御部Cは、スペクトル測定器Dを制御することによって、スペクトル測定器Dから、例えばストークス光を含む波長帯域におけるスペクトルを測定させ、該スペクトルをスペクトル測定器Dから取得する。すなわち、制御部Cは、測定工程を実施する。
演算部C2は、例えば、測定されたスペクトルから例えばピーク波長λSを決定し、且つ、第1の差分Δλ1を特定差分ΔPとして、特定差分ΔPに応じて推定パワーPELを推定するための構成である。すなわち、演算部C2を含む制御部Cは、推定工程を実施する。演算部C2は、第1の差分Δλ1とパワーPLとを対応付ける関数を参照し、特定差分である特定差分ΔPに対応付けられたパワーPLを推定パワーPELとして採用することが好ましい。以上のように、制御部Cは、本発明の一態様に係る光パワー推定方法を実施する。なお、演算部C2は、上述した関数の代わりに第1の差分Δλ1とパワーPLとを対応付けるテーブルを参照するように構成されていてもよい。
光源制御部C3は、演算部C2が推定した推定パワーPELに基づいて、レーザ装置1を制御するように構成されている。このため、制御部Cによれば、推定パワーPELに応じてレーザ装置1を制御することが可能になる。以下、ポンプ光源PS1〜PSmに供給される駆動電流を、推定パワーPELに応じて制御する場合を例に挙げ、制御部Cの機能について説明する。
記憶部C1は、レーザ装置1の使用者又は製造者により予め設定された閾値Pthを更に記憶している。演算部C2は、上述した推定工程に加えて、得られた推定パワーPELと、記憶部に記憶された閾値Pthとを比較するための構成である。光源制御部C3は、演算部C2にて得られた比較結果に基づいて、ポンプ光源PS1〜PSmに供給される駆動電流を制御するための構成である。
例えば、光源制御部C3は、演算部C2にて得られた比較結果がP>Pthであるとき、ポンプ光源PS1〜PSmへの駆動電流の供給を停止する制御を行う。これにより、(1)増幅用光ファイバAFへのポンプ光の供給が停止され、(2)増幅用光ファイバAFにおけるレーザ光の増幅が停止され、(3)マルチモードファイバであるデリバリファイバDFへのレーザ光の供給が停止され、(4)デリバリファイバDFにおいて生じる、レーザ光の2つの導波モードをポンプ光とする四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の増幅又は生成が停止される。このため、ストークス光及びアンチストークス光が、レーザ光の発振を不安定化させる可能性、又は、ポンプ光源PS1〜PSmの信頼性を低下させる可能性を低減することが可能になる。
或いは、光源制御部C3は、演算部C2にて得られた比較結果がP>Pthであるとき、ポンプ光源PS1〜PSmに供給される駆動電流を減少させる制御を行う。これにより、(1)増幅用光ファイバAFに供給されるポンプ光のパワーが低下し、(2)その結果、増幅用光ファイバAFにおけるレーザ光の増幅が抑制され、(3)その結果、マルチモードファイバであるデリバリファイバDFに供給されるレーザ光のパワーが低下し、(4)その結果、デリバリファイバDFにおいて生じる、レーザ光の2つの導波モードをポンプ光とする四光波混合のストークス光及びアンチストークス光のパワーが減少する。このため、ストークス光及びアンチストークス光がレーザ光の発振を不安定化させる可能性、又は、ポンプ光源PS1〜PSmの信頼性を低下させる可能性を低減することが可能になる。
なお、制御部Cは、推定パワーPELが予め定められた閾値Pthを下回ったときに、上述した制御を行った後、以下の制御を行うことが好ましい。すなわち、制御部Cは、推定パワーPELが予め定められた閾値Pth’(Pth’<Pth)を下回ったときに、ポンプ光源PS1〜PSmへの駆動電流の供給を再開する制御を行うことが好ましい。或いは、制御部Cは、推定パワーPELが予め定められた閾値Pth’(Pth’<Pth)を下回ったときに、ポンプ光源PS1〜PSmに供給される駆動電流を増加させる制御を行うことが好ましい。これにより、ポンプ光源PS1〜PSmに供給される駆動電流を停止又は減少させる制御を行った後、適時にレーザ装置1を元の状態に復帰させることが可能になる。
また、制御部Cは、推定パワーPELが予め定められた閾値Pthを下回ったときに、上述した制御を行う代わりに、或いは、上述した制御を行うと共に、以下の制御を行うことが好ましい。すなわち、制御部Cは、推定パワーPELが予め定められた閾値Pthを下回ったときに、加工対象物Wに入射するレーザ光の入射角が大きくなるよう、レーザヘッドLHの向きを変化させる制御を行うことが好ましい。加工対象物Wに入射するレーザ光の入射角が大きくなると、加工対象物Wにて反射されたレーザ光がデリバリファイバDFに再入射し難くなる。これにより、ポンプ光源PS1〜PSmに供給される駆動電流を停止又は減少させる制御を行う場合と同様、ストークス光及びアンチストークス光がレーザ光の発振を不安定化させる可能性、又は、ポンプ光源PS1〜PSmの信頼性を低下させる可能性を低減することが可能になる。
また、制御部Cは、推定パワーPELが予め定められた閾値Pthを下回ったときに、上述した制御を行う代わりに、或いは、上述した制御を行うと共に、以下の制御を行うことが好ましい。すなわち、制御部Cは、推定パワーPELが予め定められた閾値Pthを下回ったときに、ストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方のパワーが過大であることを使用者に通知する制御を行うことが好ましい。このような制御の例としては、例えば、スピーカを制御してアラーム音で使用者に通知する制御、ランプを制御してアラーム光で使用者に通知する制御などが挙げられる。これにより、使用者は、例えば、レーザ装置1を手動で停止したり、加工対象物Wに入射するレーザ光の入射角が大きくなるよう、加工対象物Wの向きを手動で変更したりすることが可能になる。したがって、ストークス光及びアンチストークス光がレーザ光の発振を不安定化させる可能性、又は、ポンプ光源PS1〜PSmの信頼性を低下させる可能性を低減することが可能になる。
或いは、制御部Cは、推定パワーPELが予め定められた閾値Pthを下回ったときに、上述した制御を行う代わりに、推定パワーPELと正常値P0との差PーP0が予め定められた閾値Pth”を上回ったときに、上述した制御を行うことが好ましい。この場合、レーザ光が正常に且つ垂直に加工対象物Wに照射されているときに推定パワーPELを、上述した正常値P0として記憶部C1に記憶しておく。これにより、加工中の加工対象物Wに応じた条件で、上述した制御を行うことが可能になる。
なお、演算部C2及び光源制御部C3は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、制御部Cは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを用いて実現可能である。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
〔スペクトル測定器の変形例〕
スペクトル測定器Dは、所定の波長帯域に属する光のスペクトルを測定可能な光学測定機器であればよく、本実施形態において採用している光スペクトラムアナライザに限定されるものではない。スペクトル測定器Dの第1の変形例及び第2の変形例について、図5を参照して説明する。図5の(a)は、第1の変形例の構成を示す概略図である。図5の(b)は、第2の変形例の構成を示す概略図である。
スペクトル測定器Dは、所定の波長帯域に属する光のスペクトルを測定可能な光学測定機器であればよく、本実施形態において採用している光スペクトラムアナライザに限定されるものではない。スペクトル測定器Dの第1の変形例及び第2の変形例について、図5を参照して説明する。図5の(a)は、第1の変形例の構成を示す概略図である。図5の(b)は、第2の変形例の構成を示す概略図である。
図5の(a)に示すように、第1の変形例は、コリメートレンズCLと、プリズムPRと、フォトダイオードアレイPDAとを備えている。
コリメートレンズCLは、逆方向デリバリファイバRDFの出力端から出射された光をコリメートするための構成である。この光は、少なくともレーザ光を含み、更に、ストークス光、アンチストークス光、及びラマン散乱光を含み得る。したがって、この光は、幅広い波長帯域に属する光である。この光のことを、以下では白色光LWと称する。
なお、白色光は、逆方向デリバリファイバRDFに固有の拡がり角を有し、該出力端から遠ざかるにしたがってそのスポット径を拡大させながら空間中を伝搬する。図5の(a)及び(b)においては、スポット径が拡大する様子を省略しており、レーザ光の光軸のみを図示している。
プリズムPRは、本実施形態においては、正三角柱の形状を有し、逆方向デリバリファイバRDFの出力端から出射された光を複数の単色光に分光するための分光素子である。プリズムPRの3つの側面(第1〜第3の側面)のうち、第1の側面は、入射面として機能し、第2の側面は、出射面として機能する。プリズムPRは、逆方向デリバリファイバRDFの出力端から出射されたレーザ光の光軸と第1の側面とのなす角が所定の角度になるように配置されている。このように構成されたプリズムPRは、白色光LWをそれぞれの波長に応じて複数の単色光LMk(kは1以上n以下の自然数)に分光する。
なお、図5の(a)には、後述するフォトダイオードPDnの個数n(本実施形態ではn=7)と整合するように7つの単色光LMkを図示している。なお、実際には、プリズムPRは、波長に応じて連続的に白色光LWを複数の単色光LMkに分光するため、図5の(a)に示したように有限個の単色光LMkが離散的に存在するわけではない。図5の(a)には、説明を分かりやすくするために単色光LMkの光軸を簡略化して図示している。
フォトダイオードアレイPDAは、複数のフォトダイオードPDn(nは自然数、本実施形態では上述したようにn=7)を1つの直線の軸上に配置することによって得られる。フォトダイオードアレイPDAは、フォトダイオードPDkの各々がそれぞれに対応する単色光LMkのパワーを検出可能なように配置されている。
このように構成された第1の変形例は、所望の波長帯域(例えばストークス光を含む波長帯域)におけるスペクトルを測定することができる。
なお、フォトダイオードPDnの個数と、プリズムPRの第2の側面からフォトダイオードアレイPDAまでの距離は、スペクトルを測定するときに求められる分解能に応じて適宜定めることができる。また、第1の変形例では、白色光LWを複数の単色光LMkに分光するための分光素子としてプリズムPRを採用している。しかし、分光素子は、プリズムPRの代わりに回折格子であってもよい。
図5の(b)に示すように、第2の変形例は、コリメートレンズCL,CL’と、分光器MMと、フォトダイオードPDとを備えている。
コリメートレンズCLは、逆方向デリバリファイバRDFの出力端から出射された白色光LWをコリメートするための構成である。分光器MMは、入射された白色光LWを任意の波長を有する単色光LM’に分光するための構成である。図5の(b)には図示しないが、分光器MMは、白色光LWを任意の波長を有する単色光LM’に分光する分光素子として回折格子を備えている。分光器MMは、例えば上述した制御部Cにより制御されることによって、単色光LM’の波長を所望の波長帯域内において可変させることができる。コリメートレンズCL’は、分光器MMから出射された単色光LM’をコリメートするための構成である。フォトダイオードPDは、単色光LM’のパワーを検出する光検出器である。
このように構成された第2の変形例は、所望の波長帯域(例えばストークス光を含む波長帯域)におけるスペクトルを測定することができる。なお、分光器MMが備えている分光素子は、回折格子の代わりにプリズムであってもよい。
なお、典型的なフォトダイオードPDnの時間分解能は、光スペクトラムアナライザほどは高くないものの、突発的に生じた四光波混合に起因するストークス光あるいはアンチストークス光を検出するためには十分な高さを有する。したがって、スペクトル測定器Dの第1の変形例及び第2の変形例の何れを採用した光パワー推定装置10であっても、突発的に生じた四光波混合のストークス光のピーク波長λSあるいはアンチストークス光のピーク波長λASを決定することができる。したがって、このような光パワー推定装置10は、第1の差分Δλ1、第2の差分Δλ2、及び第3の差分Δλ3の何れかを算出することができ、結果として、推定パワーPELを推定することができる。
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係るレーザ装置2について、図6を参照して説明する。図6は、レーザ装置2の構成を示すブロック図である。
本発明の第2の実施形態に係るレーザ装置2について、図6を参照して説明する。図6は、レーザ装置2の構成を示すブロック図である。
レーザ装置2は、単一波長のレーザ光を発振する加工用のファイバレーザ装置であり、図6に示すように、m個のポンプ光源PS1〜PSm、m個のポンプデリバリファイバPDF1〜PDFm、ポンプコンバイナPC、増幅用光ファイバAF、2個のファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2、レーザデリバリファイバLDF、レーザヘッドLH、スペクトル測定器D’、及び、制御部Cを備えている。スペクトル測定器D’と、制御部Cとは、本発明の一態様である光パワー推定装置を構成する。
本実施形態に係るレーザ装置2の備えるポンプ光源PS1〜PSm、ポンプデリバリファイバPDF1〜PDFm、ポンプコンバイナPC、増幅用光ファイバAF、ファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2、レーザデリバリファイバLDF、レーザヘッドLH、及び制御部Cの機能及び配置は、それぞれ、第1の実施形態に係るレーザ装置1の備えるポンプ光源PS1〜PSm、ポンプデリバリファイバPDF1〜PDFm、ポンプコンバイナPC、増幅用光ファイバAF、ファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2、レーザデリバリファイバLDF、レーザヘッドLH、及び制御部Cの機能及び配置と同様である。このため、これらの構成についての説明は省略する。
本実施形態に係るレーザ装置2の備えるスペクトル測定器D’は、第1の実施形態に係るレーザ装置1の備えるスペクトル測定器Dと同様に構成されている。ただし、本実施形態に係るレーザ装置2の備えるスペクトル測定器D’は、レーザデリバリファイバLDFに挿入された光分岐部Bに、順方向デリバリファイバFDFを介して接続されており、増幅用光ファイバAFを上流側から下流側へと導波されたストークス光及びアンチストークス光を検出する。ここで、増幅用光ファイバAFの下流側とは、増幅用光ファイバAFの加工対象物Wに近い側のことであり、増幅用光ファイバAFの上流側とは、増幅用光ファイバAFの加工対象物Wに遠い側のことである。これにより、レーザ光と共にレーザ装置2から出力されるストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域におけるスペクトルを測定することが可能になる。また、レーザ装置2が後方励起光源を備えている場合には、後方励起光源に入射するストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域におけるスペクトルを測定することが可能になる。また、レーザデリバリファイバLDFのうち、第2ファイバブラッググレーティングFBG2から光分岐部Bまでの部分で四光波混合が発生したことを、早期に検知することが可能になる。また、制御部Cは、当該部分において発生した四光波混合のストークス及びアンチストークス光の一方又は両方に基づく制御を、早期に開始することが可能になる。このため、ストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方のポンプ光源PS1〜PSmへの入射を抑制することが容易になり、その結果、ポンプ光源PS1〜PSmの信頼性が向上する。なお、レーザデリバリファイバLDFのうち、第2ファイバブラッググレーティングFBG2から光分岐部Bまでの部分は、四光波混合が発生する確率が比較的高い場合がある部分である。なお、第1の実施形態において説明したスペクトル測定器Dの第1の変形例及び第2の変形例は、本実施形態に係るレーザ装置2の備えるスペクトル測定器D’としても採用することが可能である。
なお、増幅用光ファイバAFを上流側から下流側へと導波されたストークス光及びアンチストークス光を検出するためのスペクトル測定器D’の配置は、図6に示した配置に限定されない。例えば、レーザデリバリファイバLDFの側面から漏出したレイリー散乱光を検出するように配置されたスペクトル測定器D’によっても、増幅用光ファイバAFを上流側から下流側へと導波されたストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域におけるスペクトルを測定することが可能である。このような場合には、光分岐部Bを省略することができる。
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態に係るレーザ装置3について、図7を参照して説明する。図7は、レーザ装置3の構成を示すブロック図である。
本発明の第3の実施形態に係るレーザ装置3について、図7を参照して説明する。図7は、レーザ装置3の構成を示すブロック図である。
レーザ装置3は、単一波長のレーザ光を発振する加工用のファイバレーザ装置であり、図7に示すように、m個のポンプ光源PS1〜PSm、m個のポンプデリバリファイバPDF1〜PDFm、ポンプコンバイナPC、増幅用光ファイバAF、2個のファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2、k個の励起光源PS’1〜PS’k、k個のポンプデリバリファイバPDF’1〜PDF’k、ポンプコンバイナPC’、増幅用光ファイバAF’、レーザデリバリファイバLDF、レーザヘッドLH、モニタ装置としてのスペクトル測定器D、及び、制御装置としての制御部Cを備えている。
本実施形態に係るレーザ装置3の備えるポンプ光源PS1〜PSm、ポンプデリバリファイバPDF1〜PDFm、ポンプコンバイナPC、増幅用光ファイバAF、ファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2、レーザデリバリファイバLDF、レーザヘッドLH、スペクトル測定器D、及び制御部Cは、それぞれ、第1の実施形態に係るレーザ装置1の備えるポンプ光源PS1〜PSm、ポンプデリバリファイバPDF1〜PDFm、ポンプコンバイナPC、増幅用光ファイバAF、ファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2、レーザデリバリファイバLDF、レーザヘッドLH、スペクトル測定器D、及び制御部Cと同様に構成されている。
以下、第2ファイバブラッググレーティングFBG2とレーザデリバリファイバLDFとの間に追加されたポンプ光源PS’1〜PS’k、ポンプデリバリファイバPDF’1〜PDF’k、ポンプコンバイナPC’、及び増幅用光ファイバAF’について説明する。なお、ポンプ光源PS’1〜PS’kとポンプデリバリファイバPDF’1〜PDF’kとは、互いに一対一に対応する。ここで、kは、2以上の任意の自然数であり、ポンプ光源PS’1〜PS’k及びポンプデリバリファイバPDF’1〜PDF’kの個数を表す。なお、図7においては、k=6の場合のレーザ装置3の構成例を示している。
ポンプ光源PS’j(jは1以上k以下の自然数)は、ポンプ光を生成する。ポンプ光としては、例えば、ピーク波長が975±3nm又は915±3nmのレーザ光を用いることができる。本実施形態においては、レーザダイオードをポンプ光源PS’1〜PS’kとして用いている。ポンプ光源PS’jは、対応するポンプデリバリファイバPDF’jの入力端に接続されている。ポンプ光源PS’jにて生成されたポンプ光は、このポンプデリバリファイバPDF’iに入力される。
ポンプデリバリファイバPDF’jは、対応するポンプ光源PS’jにて生成されたポンプ光を導波する。ポンプデリバリファイバPDF’jの出力端は、ポンプコンバイナPC’の入力ポートに接続されている。ポンプデリバリファイバPDF’jを導波されたポンプ光は、この入力ポートを介してポンプコンバイナPC’に入力される。
ポンプコンバイナPC’は、ポンプデリバリファイバPDF’1〜PDF’kの各々を導波されたポンプ光を合波する。ポンプコンバイナPC’の出力ポートは、増幅用光ファイバAF’の入力端に接続されている。ポンプコンバイナPC’にて合波されたポンプ光は、増幅用光ファイバAF’に入力される。
増幅用光ファイバAF’は、ポンプコンバイナPC’にて合波されたポンプ光を用いて、特定の波長帯域(以下、「増幅帯域」と記載)に属するレーザ光を増幅する。本実施形態においては、コアに希土類元素(例えばイッテルビウム、ツリウム、セリウム、ネオジウム、ユーロビウム、エルビウムなど)が添加されたダブルクラッドファイバを増幅用光ファイバAFとして用いている。この場合、ポンプコンバイナPC’にて合波されたポンプ光は、この希土類元素を反転分布状態にするために用いられる。例えば、コアに添加された希土類元素がイッテルビウムの場合、増幅用光ファイバAF’の増幅帯域は、例えば、1000nm以上1100nm以下の波長帯域である。ここで、請求の範囲におけるレーザ光のピーク波長は、例えば、MO部の内部に存在するマルチモードファイバにおいては、後述するMO部から出射されたレーザ光のピーク波長に一致又は略一致する。或いは、MO部の下流側に波長変換素子が含まれている場合、当該波長変換素子に対して上流側のマルチモードファイバにおいては、請求の範囲におけるレーザ光のピーク波長は、MO部から出射されたレーザ光のピーク波長に一致又は略一致し、当該波長変換素子に対して下流側のマルチモードファイバにおいては、請求の範囲におけるレーザ光のピーク波長は、MO部から出射されたレーザ光が当該波長変換素子で変換された後のレーザ光のピーク波長に一致又は略一致する。MO部の下流側に波長変換素子が含まれていない場合、MO部の下流側のマルチモードファイバにおいては、請求の範囲におけるレーザ光のピーク波長は、MO部から出射されたレーザ光のピーク波長に一致又は略一致する。
以上のように構成されたレーザ装置3は、ポンプ光源PS1〜PSm、ポンプデリバリファイバPDF1〜PDFm、ポンプコンバイナPC、増幅用光ファイバAF、及びファイバブラッググレーティングFBG1〜FBG2をMO(Master Oscillator)部とし、ポンプ光源PS’1〜PS’k、ポンプデリバリファイバPDF’1〜PDF’k、ポンプコンバイナPC’、及び増幅用光ファイバAF’をPA(Power Amplifier)部とするMOPA型のファイバレーザとして機能する。レーザデリバリファイバLDFを導波され、レーザヘッドLHを介して加工対象物Wに照射されるレーザ光のピーク波長は、例えば、MO部の下流側に波長変換素子が含まれていない場合、MO部の発振波長に一致又は略一致する。或いは、MO部の下流側に波長変換素子が含まれている場合、MO部から出射されたレーザ光が当該波長変換素子で変換された後のレーザ光のピーク波長に一致又は略一致する。
本実施形態に係るレーザ装置3においては、増幅用光ファイバAF’にて増幅されたレーザ光が、マルチモードファイバであるレーザデリバリファイバLDFを導波される。また、本実施形態に係るレーザ装置3においては、加工対象物Wにて反射されたレーザ光が、マルチモードファイバであるレーザデリバリファイバLDFを導波される。この際、レーザデリバリファイバLDFにおいて、複数の導波モードが関与する四光波混合によって、ストークス光が増幅されると共に、アンチストークス光が生成される。なお、増幅用光ファイバAF’もマルチモードファイバであり得る。この場合、増幅用光ファイバAF’においても、複数の導波モードが関与する四光波混合によって、ストークス光が増幅されると共に、アンチストークス光が生成され得る。
本実施形態に係るレーザ装置3の備えるスペクトル測定器Dは、第1の実施形態に係るレーザ装置1の備えるスペクトル測定器Dと同様、ストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域に属する光を、他の波長帯域に属する光よりも優先的に検出するように構成されている。このため、スペクトル測定器Dを備えたレーザ装置3、又は、スペクトル測定器Dを備えたモニタ装置によれば、ストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方のパワーを精度良くモニタすることが可能になる。
また、本実施形態に係るレーザ装置3の備えるスペクトル測定器Dは、第1の実施形態に係るレーザ装置1の備えるスペクトル測定器Dと同様、ポンプコンバイナPCの入力ポートに接続されており、増幅用光ファイバAFを下流側から上流側へと導波されたストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を検出するように構成されている。このため、スペクトル測定器Dを備えたレーザ装置3、又は、スペクトル測定器Dを備えたモニタ装置によれば、ポンプ光源PS1〜PSmに入射するストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方のパワーをモニタすることが可能になる。
なお、第1の実施形態において説明した好ましい構成は、本実施形態に係るレーザ装置3にも適用することができる。第1の実施形態において説明した好ましい構成を本実施形態に係るレーザ装置3に適用した場合、第1の実施形態において説明したその好ましい構成に対応する効果が、本実施形態に係るレーザ装置3においても得られる。
本実施形態においては、制御部CがMO部のポンプ光源PS1〜PSmに供給する駆動電流を制御する構成について説明したが、これに限定されない。すなわち、制御部Cは、MO部のポンプ光源PS1〜PSmに供給する駆動電流を制御する代わりに、或いは、MO部のポンプ光源PS1〜PSmに供給する駆動電流を制御すると共に、PA部のポンプ光源PS’1〜PS’kに供給する駆動電流を制御するように構成されていてもよい。
〔第4の実施形態〕
本発明の第4の実施形態に係るレーザ装置4について、図8を参照して説明する。図8は、レーザ装置4の構成を示すブロック図である。
本発明の第4の実施形態に係るレーザ装置4について、図8を参照して説明する。図8は、レーザ装置4の構成を示すブロック図である。
本実施形態に係るレーザ装置4は、第3の実施形態に係るレーザ装置3を、以下の点で変更したものである。
変更点1:第3の実施形態に係るレーザ装置3の備える、ポンプコンバイナPCの入力ポートに接続された、下流側から上流側へと導波されるストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を検出するスペクトル測定器Dを、レーザデリバリファイバLDFに挿入された光分岐部Bに接続された、上流側から下流側へと導波されるストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を検出するスペクトル測定器D’’に置き換える。
変更点2:第3の実施形態に係るレーザ装置3の備える、MO部のポンプ光源PS1〜PSmに供給する駆動電流を制御する制御部Cを、PA部のポンプ光源PS’1〜PS’kに供給する駆動電流を制御する制御部C’に置き換える。ただし、本実施形態に係るレーザ装置4において、スペクトル測定器D’’の検出した光のパワーを参照して制御部C’が行う、PA部のポンプ光源PS’1〜PS’kの駆動電流に対する制御の内容は、第3の実施形態に係るレーザ装置3において、スペクトル測定器Dの検出した光のパワーを参照して制御部Cが行う、MO部のポンプ光源PS1〜PSmの駆動電流に対する制御の内容と同様である。
本実施形態に係るレーザ装置4の備えるスペクトル測定器D’’は、第3の実施形態に係るレーザ装置3の備えるスペクトル測定器Dと同様、ストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域に属する光を、他の波長帯域に属する光よりも優先的に検出するように構成されている。このため、スペクトル測定器D’’を備えたレーザ装置4、又は、スペクトル測定器D’’を備えたモニタ装置によれば、ストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方のパワーを精度良くモニタすることが可能になる。
また、本実施形態に係るレーザ装置4の備えるスペクトル測定器D’’は、第3の実施形態に係るレーザ装置3の備えるスペクトル測定器Dと異なり、レーザデリバリファイバLDFに挿入された光分岐部Bに接続されており、上流側から下流側へと導波されたストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を検出するように構成されている。このため、本実施形態に係るレーザ装置4によれば、レーザ光と共にレーザ装置4から出力される前のストークス光及びアンチストークス光(レーザデリバリファイバLDFを上流側から下流側へと導波されるストークス光及びアンチストークス光)の一方又は両方のパワーをモニタすることが可能になる。また、レーザデリバリファイバLDFのうち、増幅用光ファイバAFの下流側の端部から光分岐部Bまでの部分で四光波混合が発生したことを、早期に検知することが可能になる。また、制御部C’は、ストークス及びアンチストークス光の一方又は両方に基づく制御を、早期に開始することが可能になる。
なお、第1の実施形態において説明した好ましい構成は、本実施形態に係るレーザ装置4にも適用することができる。第1の実施形態において説明した好ましい構成を本実施形態に係るレーザ装置4に適用した場合、第1の実施形態において説明したその好ましい構成に対応する効果が本実施形態に係るレーザ装置4においても得られる。
本実施形態においては、制御部C’がPA部のポンプ光源PS’1〜PS’kに供給する駆動電流を制御する構成について説明したが、これに限定されない。すなわち、制御部C’は、PA部のポンプ光源PS’1〜PS’kに供給する駆動電流を制御する代わりに、或いは、PA部のポンプ光源PS’1〜PS’kに供給する駆動電流を制御すると共に、MO部のポンプ光源PS1〜PSmに供給する駆動電流を制御するように構成されていてもよい。
〔第5の実施形態〕
本発明の第5の実施形態に係るレーザ装置5について、図9を参照して説明する。図9は、レーザ装置5の構成を示すブロック図である。
本発明の第5の実施形態に係るレーザ装置5について、図9を参照して説明する。図9は、レーザ装置5の構成を示すブロック図である。
本実施形態に係るレーザ装置5は、第3の実施形態に係るレーザ装置3を、以下の点で変更したものである。
変更点1:第3の実施形態に係るレーザ装置3の備える、ポンプコンバイナPCの入力ポートに接続された、下流側から上流側へと導波されるストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を検出するスペクトル測定器Dを、第2ファイバブラッググレーティングFBG2とポンプコンバイナPC’との間に挿入された光分岐部Bに接続された、上流側から下流側へと導波されるストークス光及びアンチストークス光を検出するスペクトル測定器D’’’に置き換える。
変更点2:第3の実施形態に係るレーザ装置3の備える、MO部のポンプ光源PS1〜PSmに供給する駆動電流を制御する制御部Cを、PA部のポンプ光源PS’1〜PS’kに供給する駆動電流を制御する制御部C’に置き換える。ただし、本実施形態に係るレーザ装置5において、スペクトル測定器D’’’の検出した光のパワーを参照して制御部C’が行う、PA部のポンプ光源PS’1〜PS’kの駆動電流に対する制御の内容は、第3の実施形態に係るレーザ装置3において、スペクトル測定器Dの検出した光のパワーを参照して制御部Cが行う、MO部のポンプ光源PS1〜PSmの駆動電流に対する制御の内容と同様である。
本実施形態に係るレーザ装置5の備えるスペクトル測定器D’’’は、第3の実施形態に係るレーザ装置3の備えるスペクトル測定器Dと同様、ストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域に属する光を、他の波長帯域に属する光よりも優先的に検出するように構成されている。このため、スペクトル測定器D’’’を備えたレーザ装置5、又は、スペクトル測定器D’’’を備えたモニタ装置によれば、ストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方のパワーを精度良くモニタすることが可能になる。
また、本実施形態に係るレーザ装置5の備えるスペクトル測定器D’’’は、第3の実施形態に係るレーザ装置3の備えるスペクトル測定器Dと異なり、第2ファイバブラッググレーティングFBG2とポンプコンバイナPC’との間に挿入された光分岐部Bに接続されており、上流側から下流側へと導波されたストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を検出するように構成されている。このため、本実施形態に係るレーザ装置5によれば、PA部に入力される前のストークス光及びアンチストークス光(MO部から出力された後のストークス光及びアンチストークス光)の一方又は両方のパワーをモニタすることが可能になる。また、第2ファイバブラッググレーティングFBG2から光分岐部Bまでの光ファイバにおいて四光波混合が発生した場合には、これを早期に検知することが可能になる。また、制御部C’は、当該光ファイバにおいて発生した四光波混合のストークス及びアンチストークス光の一方又は両方に基づく制御を、早期に開始することが可能になる。
なお、第1の実施形態において説明した好ましい構成は、本実施形態に係るレーザ装置5にも適用することができる。第1の実施形態において説明した好ましい構成を本実施形態に係るレーザ装置5に適用した場合、第1の実施形態において説明したその好ましい構成に対応する効果が本実施形態に係るレーザ装置5においても得られる。
本実施形態においては、制御部C’がPA部のポンプ光源PS’1〜PS’kに供給する駆動電流を制御する構成について説明したが、これに限定されない。すなわち、制御部C’は、PA部のポンプ光源PS’1〜PS’kに供給する駆動電流を制御する代わりに、或いは、PA部のポンプ光源PS’1〜PS’kに供給する駆動電流を制御すると共に、MO部のポンプ光源PS1〜PSmに供給する駆動電流を制御するように構成されていてもよい。
〔第4の実施形態及び第5の実施形態に関する付記事項〕
第4の実施形態及び第5の実施形態においては、MO部として共振器型のファイバレーザ装置を用いる構成について説明したが、これに限定されない。すなわち、MO部として共振器型のファイバレーザ以外の種光源を備えていてもよい。MO部を構成する種光源としては、例えば、レーザ光のピーク波長が1000nm以上1100nm以下の波長帯域に含まれるレーザダイオードを用いることができる。レーザダイオードの代わりに、レーザダイオード以外の半導体レーザ装置、固体レーザ装置、半導体レーザ装置、液体レーザ装置、又は気体レーザ装置を用いても構わない。
第4の実施形態及び第5の実施形態においては、MO部として共振器型のファイバレーザ装置を用いる構成について説明したが、これに限定されない。すなわち、MO部として共振器型のファイバレーザ以外の種光源を備えていてもよい。MO部を構成する種光源としては、例えば、レーザ光のピーク波長が1000nm以上1100nm以下の波長帯域に含まれるレーザダイオードを用いることができる。レーザダイオードの代わりに、レーザダイオード以外の半導体レーザ装置、固体レーザ装置、半導体レーザ装置、液体レーザ装置、又は気体レーザ装置を用いても構わない。
また、第4の実施形態及び第5の実施形態においては、MO部とPA部とが直結されたMOPA型のファイバレーザについて説明したが、これに限定されない。すなわち、MO部とPA部との間に、プリアンプ部を更に備えていても構わない。このプリアンプ部には、例えば、コアに希土類元素が添加された光ファイバ(すなわち、増幅用光ファイバ)を用いることができる。このようなプリアンプ部を用いれば、レーザヘッドLHから出力されるレーザ光のパワーをより大きくすることが可能になる。また、MO部とPA部との間に、音響光学素子(AOM:Acoustic Optic Modulation)を更に備えていても構わない。音響光学素子は、外部から電流により制御することによって、種光(MO部の出力光)を透過するON状態と、種光を反射するOFF状態とを切り替えることができる。このような音響光学素子を用いれば、レーザヘッドLHから出力されるレーザ光のパルスパターンを自在に制御することが可能になる。
〔その他の実施形態〕
第1及び第2の実施形態においては、共振器型のファイバレーザ装置について説明し、第3、第4、及び第5の実施形態においては、MOPA型のファイバレーザ装置について説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これらの形式のファイバレーザ装置に限定されない。すなわち、本発明は、任意の形式のファイバレーザ装置に適用することが可能である。
〔その他の実施形態〕
第1及び第2の実施形態においては、共振器型のファイバレーザ装置について説明し、第3、第4、及び第5の実施形態においては、MOPA型のファイバレーザ装置について説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、これらの形式のファイバレーザ装置に限定されない。すなわち、本発明は、任意の形式のファイバレーザ装置に適用することが可能である。
更に、本発明の適用範囲は、ファイバレーザ装置に限定されない。すなわち、任意のレーザ光源と、このレーザ光源から出力されたレーザ光を導波するマルチモードファイバとを備えたレーザ装置は、本発明の適用範囲に含まれる。ここで、レーザ光源は、固体レーザ装置、半導体レーザ装置、液体レーザ装置、又は気体レーザ装置であり得る。例えば、YAGレーザ(固体レーザ装置の一例)と、このYAGレーザから出力されたレーザ光を導波するマルチモードファイバとを備えたレーザ装置は、本発明の適用範囲に含まれるレーザ装置の一例である。このようなレーザ装置においては、マルチモードファイバにおいて複数の導波モードが関与する四光波混合が生じ得る。このため、四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方のパワーをモニタすることは、このようなレーザレーザ装置においても有効である。
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態、変形例、又は実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態、変形例、又は実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、上述した実施形態では、スペクトル測定器及び制御部を構成要素とする光パワー推定装置について説明したが、光パワー推定装置は、少なくともスペクトル測定器及び制御部を備えていればよく、スペクトル測定器及び制御部以外の構成要素を備えていても構わない。
本発明は上述した実施形態、変形例、又は実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態、変形例、又は実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、上述した実施形態では、スペクトル測定器及び制御部を構成要素とする光パワー推定装置について説明したが、光パワー推定装置は、少なくともスペクトル測定器及び制御部を備えていればよく、スペクトル測定器及び制御部以外の構成要素を備えていても構わない。
1、2、3、4、5 レーザ装置
PS1〜PSm ポンプ光源
PDF1〜PDFm ポンプデリバリファイバ
PC ポンプコンバイナ
AF 増幅用光ファイバ
FBG1〜FBG2 ファイバブラッググレーティング
PS’1〜PS’k ポンプ光源
PDF’1〜PDF’k ポンプデリバリファイバ
PC’ ポンプコンバイナ
AF’ 増幅用光ファイバ
LDF レーザデリバリファイバ
LH レーザヘッド
RDF 逆方向デリバリファイバ
FDF 順方向デリバリファイバ
D、D’、D’’、D’’’ スペクトル測定器
CC’ 制御部
PR プリズム
PDk、PD フォトダイオード(光検出器)
PDA フォトダイオードアレイ(光検出器群)
MM 分光器
PS1〜PSm ポンプ光源
PDF1〜PDFm ポンプデリバリファイバ
PC ポンプコンバイナ
AF 増幅用光ファイバ
FBG1〜FBG2 ファイバブラッググレーティング
PS’1〜PS’k ポンプ光源
PDF’1〜PDF’k ポンプデリバリファイバ
PC’ ポンプコンバイナ
AF’ 増幅用光ファイバ
LDF レーザデリバリファイバ
LH レーザヘッド
RDF 逆方向デリバリファイバ
FDF 順方向デリバリファイバ
D、D’、D’’、D’’’ スペクトル測定器
CC’ 制御部
PR プリズム
PDk、PD フォトダイオード(光検出器)
PDA フォトダイオードアレイ(光検出器群)
MM 分光器
Claims (23)
- レーザ光を導波するマルチモードファイバにおいて生じる、複数の導波モードが関与する四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域におけるスペクトルを測定するスペクトル測定器と、
測定された上記スペクトルから上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方のピーク波長を決定し、且つ、(1)上記ストークス光のピーク波長と上記レーザ光のピーク波長との差分である第1の差分、(2)上記レーザ光のピーク波長と上記アンチストークス光のピーク波長との差分である第2の差分、及び、(3)上記ストークス光のピーク波長と上記アンチストークス光のピーク波長との差分である第3の差分のうち何れか1つの差分を特定差分として、該特定差分に応じて、レーザ光、ストークス光、及びアンチストークス光のうち少なくとも何れか1つのパワーの推定値である推定パワーを推定する制御部と、を備えている、
ことを特徴とする光パワー推定装置。 - 上記特定差分と上記レーザ光のパワーとを対応付けた第1のテーブル及び第1の関数、並びに、上記特定差分と上記ストークス光のパワーとを対応付けた第2のテーブル及び第2の関数、並びに、上記特定差分と上記アンチストークス光のパワーとを対応付けた第3のテーブル又は第3の関数のうち少なくとも何れか1つを記憶した記憶部を更に備え、
上記制御部は、上記第1のテーブル、上記第1の関数、上記第2のテーブル、上記第2の関数、上記第3のテーブル、及び上記第3の関数のうち何れか1つを参照し、上記特定差分に対応付けられた上記レーザ光のパワー、上記特定差分に対応付けられた上記ストークス光のパワー、及び、上記特定差分に対応付けられた上記アンチストークス光のパワーのうち少なくとも何れか1つのパワーを上記推定パワーとして採用する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光パワー推定装置。 - 上記スペクトル測定器は、光スペクトラムアナライザである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光パワー推定装置。 - 上記スペクトル測定器は、上記レーザ光をそれぞれ波長が異なる複数の単色光に分光するプリズム又は回折格子と、上記複数の単色光の各々に1対1で対応付けられた複数の光検出器からなる光検出器群であって、各光検出器が上記複数の単色光の各々のパワーを検出する光検出器群と、を備えている、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光パワー推定装置。 - 上記スペクトル測定器は、入射された上記レーザ光を単色光に分光して出射する分光器と、該分光器により分光された単色光のパワーを検出する光検出器と、を備えている、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光パワー推定装置。 - 上記スペクトル測定器は、上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方を含み、且つ、上記レーザ光を含まない波長帯域におけるスペクトルを測定する、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光パワー推定装置。 - 上記スペクトル測定器は、上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方を含み、且つ、パワーが自然放出光よりも高い波長帯域におけるスペクトルを測定する、
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光パワー推定装置。 - 上記スペクトル測定器は、上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方を含み、且つ、上記レーザ光に起因する誘導ラマン散乱の散乱光のピーク波長を含まない波長帯域におけるスペクトルを測定する、
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の光パワー推定装置。 - 上記スペクトル測定器は、上記ストークス光のピーク波長を含む波長帯域であって、上記レーザ光のピーク波長よりも長波長側、且つ、上記レーザ光に起因する誘導ラマン散乱の散乱光のピーク波長よりも短波長側の波長帯域におけるスペクトルを測定する、
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の光パワー推定装置。 - 上記スペクトル測定器は、上記レーザ光のピーク波長よりも短波長側の波長帯域であって、上記レーザ光のピーク波長よりも40nm短い波長を下限とする波長帯域、及び、上記レーザ光のピーク波長よりも長波長側の波長帯域であって、上記レーザ光のピーク波長よりも40nm長い波長を上限とする波長帯域の一方又は両方におけるスペクトルを測定する、
ことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の光パワー推定装置。 - 上記四光波混合は、上記マルチモードファイバを導波される上記レーザ光の基本モード成分及び高次モード成分がポンプ光として関与する四光波混合であり、
上記ストークス光のピーク角周波数ωs及び上記アンチストークス光のピーク角周波数ωasは、周波数整合条件を表す下記式(1)、及び、位相整合条件を表す下記式(2a)又は(2b)を満たす、ことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の光パワー推定装置。
ωs+ωas=2ωp・・・(1)
β(ωs)+β’(ωas)=β’(ωp)+β(ωp)−γ(P+P’)・・・(2a)
β’(ωs)+β(ωas)=β’(ωp)+β(ωp)−γ(P+P’)・・・(2b)
ここで、β(ω)は、角周波数ωの基本モードに対する上記マルチモードファイバの伝搬定数を表し、β’(ω)は、角周波数ωの高次モードに対する上記マルチモードファイバの伝搬定数を表し、ωpは、上記レーザ光のピーク角周波数を表し、Pは、上記レーザ光の基本モード成分のパワーを表し、P’は、上記レーザ光の高次モード成分のパワーを表し、γは、非線形係数を表す。 - 上記四光波混合は、上記マルチモードファイバを導波される上記レーザ光の第1の高次モード成分及び第2の高次モード成分がポンプ光として関与する四光波混合であり、
上記ストークス光のピーク角周波数ωs及び上記アンチストークス光のピーク角周波数ωasは、周波数整合条件を表す下記式(1)、及び、位相整合条件を表す下記式(2a)又は(2b)を満たす、ことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の光パワー推定装置。
ωs+ωas=2ωp・・・(1)
β’(ωs)+β”(ωas)=β”(ωp)+β’(ωp)−γ(P’+P”)・・・(2a)
β”(ωs)+β’(ωas)=β”(ωp)+β’(ωp)−γ(P’+P”)・・・(2b)
ここで、β’(ω)は、角周波数ωの第1の高次モードに対する上記マルチモードファイバの伝搬定数を表し、β”(ω)は、角周波数ωの第2の高次モードに対する上記マルチモードファイバの伝搬定数を表し、ωpは、上記レーザ光のピーク角周波数を表し、P’は、上記レーザ光の第1の高次モード成分のパワーを表し、P”は、上記レーザ光の第2の高次モード成分のパワーを表し、γは、非線形係数を表す。 - 上記スペクトル測定器は、上記ストークス光を含む波長帯域におけるスペクトルを測定し、
上記制御部は、測定された上記スペクトルから上記ストークス光のピーク波長を決定し、且つ、上記第1の差分を特定差分として、該特定差分に応じて上記レーザ光及び上記ストークス光のうち少なくとも何れか1つのパワーを推定する、
ことを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の光パワー推定装置。 - 上記スペクトル測定器は、上記アンチストークス光を含む波長帯域におけるスペクトルを測定し、
上記制御部は、測定された上記スペクトルから上記アンチストークス光のピーク波長を決定し、且つ、上記第2の差分を特定差分として、該特定差分に応じて上記レーザ光及び上記アンチストークス光のうち少なくとも何れか1つのパワーを推定する、
ことを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の光パワー推定装置。 - 上記スペクトル測定器は、上記ストークス光及び上記アンチストークス光を含む波長帯域におけるスペクトルを測定し、
上記制御部は、測定された上記スペクトルから上記ストークス光のピーク波長及び上記アンチストークス光のピーク波長を決定し、且つ、上記第3の差分を特定差分として、該特定差分に応じて上記レーザ光、上記ストークス光、及び上記アンチストークス光のうち少なくとも何れか1つのパワーを推定する、
ことを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の光パワー推定装置。 - 誘導ラマン散乱の散乱光を抑制する抑制部を更に備えている、
ことを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の光パワー推定装置。 - 請求項1〜16の何れか1項に記載の光パワー推定装置と、
上記マルチモードファイバと、を備えている、
ことを特徴とするレーザ装置。 - 上記制御部は、上記推定パワーに基づいて自装置を制御する、
ことを特徴とする請求項17に記載のレーザ装置。 - ポンプ光を生成する1又は複数のポンプ光源を更に備え、
上記制御部は、上記推定パワーが予め設定された閾値を超えたときに、上記1又は複数のポンプ光源への駆動電流の供給を停止するか、又は、上記1又は複数のポンプ光源に供給される駆動電流を減少させる、
ことを特徴とする請求項17又は18に記載のレーザ装置。 - 少なくとも一方の端部に上記1又は複数のポンプ光源が接続され、上記レーザ光を増幅する増幅用光ファイバを更に備え、
上記スペクトル測定器は、下流側から上流側へと導波された上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域におけるスペクトルを測定する、
ことを特徴とする請求項19に記載のレーザ装置。 - 少なくとも一方の端部に上記1又は複数のポンプ光源が接続され、上記レーザ光を増幅する増幅用光ファイバを更に備え、
上記スペクトル測定器は、上流側から下流側へと導波された上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域におけるスペクトルを測定する、
ことを特徴とする請求項19に記載のレーザ装置。 - マルチモードファイバを伝搬するレーザ光、ストークス光、及びアンチストークス光のうち少なくとも何れか1つのパワーを推定パワーとして推定する光パワー推定方法であって、
上記マルチモードファイバにおいて生じる、複数の導波モードが関与する四光波混合のストークス光及びアンチストークス光の一方又は両方を含む波長帯域におけるスペクトルを測定する測定工程と、
上記測定工程において測定された上記スペクトルから上記ストークス光及び上記アンチストークス光の一方又は両方のピーク波長を決定する決定工程と、
(1)上記ストークス光のピーク波長と上記レーザ光のピーク波長との差分である第1の差分、(2)上記レーザ光のピーク波長と上記アンチストークス光のピーク波長との差分である第2の差分、及び、(3)上記ストークス光のピーク波長と上記アンチストークス光のピーク波長との差分である第3の差分のうち何れか1つの差分を特定差分として、該特定差分に応じて上記推定パワーを推定する推定工程と、を含む、
ことを特徴とする光パワー推定方法。 - 上記特定差分と上記レーザ光のパワーとを対応付けた第1のテーブル及び第1の関数、並びに、上記特定差分と上記ストークス光のパワーとを対応付けた第2のテーブル及び第2の関数、並びに、上記特定差分と上記アンチストークス光のパワーとを対応付けた第3のテーブル又は第3の関数のうち少なくとも何れか1つが定められており、
上記第1のテーブル、上記第1の関数、上記第2のテーブル、上記第2の関数、上記第3のテーブル、及び上記第3の関数のうち何れか1つを参照し、上記特定差分に対応付けられた上記レーザ光のパワー、上記特定差分に対応付けられた上記ストークス光のパワー、及び、上記特定差分に対応付けられた上記アンチストークス光のパワーのうち少なくとも何れか1つのパワーを上記推定パワーとして採用する、
ことを特徴とする請求項22に記載の光パワー推定方法。
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