以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同一の構成要素は、同一の参照番号を用いて示される。また、同様の構造及び機能を有することが可能な構成要素も、同一の参照番号を用いて示される場合がある。さらに、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
[電力及びガス供給装置]
図1は、本発明による電力及びガス供給装置の一実施形態を示す模式図である。
図1に示したような、本発明の一実施形態としての電力及びガス供給装置1は、「電力」と、酸素濃度を低減させた「低酸素ガス」とを供給する装置であり、Nを設定された2以上の自然数として、第1の燃料電池部から第Nの燃料電池部までの、直列に接続されたN個の燃料電池部を備えている。ちなみに図1ではN=2であり、すなわち、それぞれ燃料電池部としての第1燃料電池11a及び第2燃料電池11bが設けられている。
ここで、各燃料電池部は、酸素を含む気体(空気、又は直前の燃料電池の排ガス)と供給された燃料とを用い、「電力」を生成して酸素の消費された「低酸素排ガス」を排出する。これを一般化してまとめると、nを2からNまでの各自然数として、
(a)第nの燃料電池部は、第(n−1)の燃料電池部から排出された「低酸素排ガス」と供給された燃料とを用いて「電力」を生成し、少なくとも供給された「低酸素排ガス」よりも小さい酸素量を有する「低酸素排ガス」を排出し、
(b)第Nの燃料電池部の排出した低酸素排ガス(窒素ガス)が外部に供給される
のである。
ちなみに図1では、nは2だけであるので結局、第2燃料電池11bは、第1燃料電池11aから排出された「低酸素排ガス」と供給された燃料とを用いて「電力」を生成し、少なくとも供給された「低酸素排ガス」よりも小さい酸素量を有する「低酸素排ガス」を排出し、これを外部へ供給する。
また、外部に供給される「電力」は、少なくとも第1の燃料電池部(第1燃料電池11a)での発電によって生成されたものとすることができる。すなわち、第nの燃料電池部(第2燃料電池11b)で生成された電力は、外部に供給されてもよく、特に非常に低電力である場合には供給されなくともよい(例えば、装置1内部で使用されてもよい)。
以上のような構成によって、電力及びガス供給装置1は、「電力」と、空気や直前の燃料電池の排ガスよりも小さい酸素量を有する「低酸素ガス」とをまとめて又は一括して外部に供給することができる。ここで、電力及びガス供給装置1の第nの燃料電池部(第2燃料電池11b)は、酸素の消費された「低酸素排ガス」を用い、その酸素量を更に低減させて排出している。これにより、十分に酸素量の小さな(極低酸素濃度の)極低酸素ガスが供給されるのである。
この点、従来の燃料電池応用技術では、燃料電池で使用される酸素は、周囲に無尽蔵に存在する空気からフリーで十分な量だけ取り入れられることが大前提であり、酸素の消費された低酸素ガスを用いて発電を行うことは想定外であった。これに対し、本願発明者等は、このような低酸素ガスを用いても、すなわち低酸素濃度下においても燃料電池が作動し、酸素を消費する発電動作を確実に行うことを発見した。さらに原理的には、酸素が概ね完全に無くなるまで燃料電池を動作させ得ることも見出している。本実施形態の電力及びガス供給装置1は、このような新たな発見・知見に基づいて発明されたものである。
ちなみに、電力及びガス供給装置1によって供給される「低酸素ガス」として、例えば酸素濃度が1000ppm台、すなわち0.1%レベルの酸素濃度を有するガスが実現可能となっている。このような低酸素濃度は、例えば電力及びガス供給先としてリフロー装置を考えた場合、このリフロー装置で通常使用される不活性ガス(窒素ガス)において必要とされる不活性度を満たすレベルとなっている。
同じく図1に示したような電力及びガス供給装置1は、好適な1つの実施形態として、mを2からNまでの自然数の少なくとも1つ(図1ではm=2)とした場合に、第(m−1)の燃料電池部(第1燃料電池11a)から排出された低酸素排ガスを、ガス圧をより高くした上で第mの燃料電池部(第2燃料電池11b)に供給するガス圧調整部(図1では、第2ガス圧調整部12b)を更に備えている。これにより後に詳細に説明するが、第mの燃料電池部(第2燃料電池11b)において、より効率的に酸素を消費して(発電に使用して)より少ない酸素量の排ガスを生成することが可能となるのである。
この点、後に示す図3〜5における酸素濃度と電流、電圧及び電力との関係を表すグラフからも分かるように、燃料電池において、低酸素領域では、酸素濃度の減少とともに電流、電圧及び電力のいずれもが、指数関数的に急減することが分かっている。このことから、実質的な酸素濃度(電極表面での反応にかかわる酸素密度)を向上させる、ガス圧調整部(第2ガス圧調整部12b)による高ガス圧化は、それとは逆に、より効率的に酸素を消費させるのに極めて有効となるのである。
ここで本実施形態において、電力及びガス供給装置1はより具体的に、
(a)第1燃料電池11a、第1ガス圧調整部12a、第1燃料圧調整部13a、第1酸素量調整部142a、及び第1負荷調整部111aと、
(b)水蒸気吸収部141a、酸素量調整部142b、ガス圧計143a、及び湿度計144aを含む第1排ガス収容部14aと、
(c)第2燃料電池11b、第2ガス圧調整部(前部及び後部)12b、第2燃料圧調整部13b、及び第2負荷調整部111bと、
(d)水蒸気吸収部141b、酸素量調整部142c、ガス圧計143b、及び湿度計144bを含む第2排ガス収容部14bと、
(e)熱交換部15と
を備えている。また、以下に説明するこれらの構成部の個別動作・連携動作を制御する制御部10を備えている。
このうち、第1燃料電池11aは、空気極(酸素極,陰極,カソード)と燃料極(水素極,陽極,アノード)とで電解質を挟み込んだ構造を有するセルが、間にセパレータを介して複数スタックしたような公知の構成のものとすることができる。また、この第1燃料電池11aにおける電池方式としては、固体高分子型燃料電池(PEFC)方式、固体酸化物型燃料電池(SOFC)方式、リン酸型燃料電池(PAFC)方式、又は溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)方式等が採用可能である。
ここで、PEFC方式は、比較的低温で稼働し、電池サイズもコンパクト化可能であることから燃料電池自動車に多く採用されている。また、SOFC方式は、発電効率が高く、通常約700〜約1000℃で稼働し、非常に高温の排ガスを供給することもできる。さらに、PEFC方式及びPAFC方式では、反応触媒に白金(Pt)系材料が使用される。この白金系材料は一般に、一酸化炭素(CO)に暴露されると劣化する。そのため、通常はCO変性除去手段が更に設けられることになる。
このCO変性除去手段は、CO変性触媒等を用いて、第1燃料電池11aに燃料として供給される水素含有ガスに含まれる一酸化炭素ガス分を低減させる。また、CO選択酸化触媒を用いて、一酸化炭素濃度をさらに低減させるCO選択酸化手段が併設されてもよい。一方で、SOFC方式やMCFC方式を採用する場合、少なくとも白金系材料を触媒として使用しないので、このようなCO変性除去手段は必要とされない。
同じく図1において、第1排ガス収容部14aは、第2ガス圧調整部(前部)12bによってガス圧の高められた低酸素排ガスを、第2燃料電池11bへ供給する前に収容する収容部である。第1排ガス収容部14aに収容された高圧の低酸素排ガスは、第2ガス圧調整部(後部)12bで所定の高いガス圧となるように調整された上で第2燃料電池11bへ供給される。ここで、第2ガス圧調整部(前部)12bはガス圧縮器(コンプレッサ)を含み、第1排ガス収容部14aはガスボンベを含み、第2ガス圧調整部(後部)12bはレギュレータを含むものとしてもよい。このような第1排ガス収容部14aを設けることによって、ガス圧の高められた低酸素排ガスを、ガス圧を安定させた上で、さらに(後に[フラッディング対策]のところで詳細に説明する)除湿処理を確実に施した上で、継続的に第2燃料電池11bへ供給することが可能となるのである。
水蒸気吸収部141aは、第1燃料電池11aから排出された低酸素排ガスにおける水蒸気分を低減又は除去する除湿部である。この水蒸気吸収部141aの具体的構成は、後に説明される[フラッディング対策]のところで詳細に説明される。
酸素量調整部142bは、第1燃料電池11aから排出された低酸素排ガスにおける酸素ガス分を低減させる脱酸素部である。この酸素量調整部142bを設けることによって、第2燃料電池11bへ供給されるガスの酸素濃度を更に低減させ、それにより、第2燃料電池11bから排出される排ガスにおける酸素量をより小さくすることが可能となる。
酸素量調整部142bは具体的に、第1燃料電池11aから排出された低酸素排ガスにおける酸素ガス分を、
(a)脱酸素剤、酸化吸収剤、若しくは酸素吸収カートリッジ等を用いて、又は
(b)鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、若しくはマンガン(Mn)等の酸化し易い金属の粉末若しくは微小片・糸片を用いて
低減することも好ましい。
また変更態様として、酸素量調整部142bは、空気中の窒素よりも酸素をより通過させるポリイミド等の高分子素材を用いた市販の中空糸膜(いわゆる窒素富化膜)を用いて、酸素ガスを分離し除去するものであってもよい。さらに、ジルコニア固体電解質や、BaO−SrO−CoO−Fe2O3系の複合酸化物等を用いた酸素分離フィルタによって、酸素ガスを分離し除去するものとすることも可能である。
さらに酸素量調整部142bは、更なる変更態様として、ゼオライトを含む公知の酸素ガスPSA(Pressure Swing Adsorption,圧力変動吸着)器を用いて、酸素ガスを分離・除去することも好ましい。
ガス圧計143aは、第1排ガス収容部14aから第2燃料電池11bへ供給されるガスのガス圧を計測する。また、湿度計144aは、当該ガスの温度を計測する。制御部10は、これらの計測値に基づいて、第2ガス圧調整部12b等の各種調整部の動作を制御する。ちなみに、第1燃料電池11a、第2燃料電池11b、第1排ガス収容部14a及び第2排ガス収容部14bの各々に温度センサが設けられていて、制御部10は、これらの温度センサから取得した温度計測値を制御指標の一種として、第1燃料電池11a及び第2燃料電池11bを含む装置1全体の動作を制御することも好ましい。
同じく図1において、第2燃料電池11bは、上述したように、第1燃料電池11aから排出された低酸素排ガスにおける酸素量を更に低減させる機能を果たすが、第1燃料電池11aと同様の構成のものとすることができる。また、電池方式についても第1燃料電池11aと同じ方式のものを採用してもよい。例えば、第1燃料電池11a及び第2燃料電池11bをともにPEFC方式の燃料電池とすることも好ましい。勿論、両者が異なる電池方式であるような実施形態も可能である。
以下、第2燃料電池11bにおける低酸素ガス下での動作を調べた実施例を示し、装置1全体における好適な制御・調整について説明する。
図2は、第2燃料電池11bを用いた本発明の一実施例における、酸素濃度を変化させた場合の各負荷における電流と電圧との関係を示すグラフである。
ここで、本実施例では、第2燃料電池11bとして、ホライゾン社製のFCS−C100(PEFC方式,定格出力100W)を使用した。また、この燃料電池の電力出力端子に2Ω(オーム)〜10Ωの負荷を接続し、種々の負荷環境で動作実験を行った。さらに、空気に純窒素ガスを混入させたガスを第2燃料電池11bへ投入するガスとし、酸素濃度計によって酸素濃度を計測して純窒素ガスの混入量を調整することによって、この投入ガスの酸素濃度を、20.9%(体積%)から0.6%(体積%)までの範囲で変化させた。また、この投入ガスは概ね1気圧のガス圧をもって第2燃料電池11bへ投入された。
図2によれば、第2燃料電池11bから出力される電力における電流と電圧とは、いわゆるオームの法則に従い、きれいな正比例の関係を示していることが分かる。ここで、酸素濃度が非常に小さい0.6%の場合においても、この正比例関係は維持されている。通常、燃料電池は、酸素濃度が約21%である空気を用いて燃料を燃焼させ、発電を行うのであるが、本実施例に示すように今回、1%を切るような低酸素濃度下でもこの燃焼・発電動作が正常に行われることが見出された。
言い換えれば、燃料電池における空気極での反応が、1%を切るような低酸素濃度下でも、少ない酸素量なりにそれに応じて正常に進行することが分かったのである。ちなみに、この電池動作(電極反応)は、いずれの負荷条件においても、酸素濃度が3.8〜4.2%を下回ると断続的になる。しかしながら停止することはなく、確実に酸素を用いた反応が進行することが分かっている。
図3は、第2燃料電池11bを用いた上記実施例における、酸素濃度と電流との関係を示すグラフである。ちなみに、図3(A)では、横軸の酸素濃度は、0体積%を0とし、20.9体積%を1とする規格値(酸素濃度/20.9)となっている。また、後に説明する図4(A)及び図5(A)の横軸もこれと同様になっている。一方、図3(B)では、酸素濃度の規格値を示す横軸は対数目盛となっている。さらに、後に説明する図4(B)及び図5(B)の横軸もこれと同様になっている。
ここで、図3(A)及び図3(B)に示したような電流値は、空気極での反応(1/2O2→O-2+2e-)にかかわる酸素(O2)の量に概ね比例するものと考えられる。したがって、より多くの酸素(O2)を電極反応で消費させるためには、負荷及び/又は酸素濃度を調整して、この電流値をより大きくすることが重要となる。
図3(A)によれば、いずれの負荷条件下においても、酸素濃度が低下するとともに、第2燃料電池11bからの電流は小さくなっている。また、酸素濃度が少なくとも0.2(規格値)以上の条件では、負荷値が小さいほど、より大きな電流が得られている。次に、酸素濃度が0.2(規格値)未満の条件での、酸素濃度と電流を最大にする負荷との関係を明確にするため、酸素濃度規格値を示す横軸を対数目盛とした図3(B)のグラフを参照する。
図3(B)によれば、電流値は、いずれの負荷条件下においても、酸素濃度規格値の対数の一次関数となっており、同図のグラフ上のデータ点は直線上に載っている。また、いずれの負荷条件下においても、この一次関数の変数係数が不連続に変化する点(減少率不連続点)が存在する。図3(B)では、負荷条件が2Ω、3Ω、5Ω及び10Ωであるグラフ線上の減少率不連続点はそれぞれ、IP1、IP2、IP3及びIP4として示されている。
ちなみに、これらの減少率不連続点IP1、IP2、IP3及びIP4はそれぞれ、後に説明する図4(B)(酸素濃度規格値の対数と電圧との関係)のグラフでも、図5(B)(酸素濃度規格値の対数と電力との関係)のグラフでも、全て同じ酸素濃度(規格値)位置に出現している。このことから、この減少率不連続点を境にして酸素濃度が高い側では、空気極表面において(電極反応によって)即座に消費される酸素量の上限(酸素量閾値)を超える酸素(O2)が、空気極に向けて供給されている可能性が考えられる。
言い換えれば、酸素(O2)が空気極の手前において、酸素濃度に応じた程度の反応待ち渋滞を起こしていると考えられるのである。また、負荷値が小さくなるほど、より多くの酸素が消費される状況となり(より大きな電流が流れやすくなり)、この反応待ち渋滞を起こす酸素量閾値も高くなっている(すなわち、酸素濃度についてIP1>IP2>IP3>IP4となる)ものと考えられる。
ここで、このような減少率不連続点出現の結果に基づき、第1燃料電池11aの空気取り込み側に設置された第1酸素量調整部142a(図1)によって酸素量を調整することも可能である。第1酸素量調整部142aは、例えば上述した酸素量調整部142b(図1)と同様の構造を持つものとすることができ、第1燃料電池11aに供給される空気における酸素量(酸素濃度)を、上述した減少率不連続点(IP1、IP2、IP3や、IP4)に相当する「酸素量閾値」以下に低減させる機能を果たす。ちなみに、この減少率不連続点に相当する「酸素量閾値」は、図3(B)に示すような第1燃料電池11aにおける酸素量と電流との関係から導出されるだけでなく、後述する酸素量と電圧との関係(図4(B))や、酸素量と電力との関係(図5(B))からも導出される。
このように酸素量(酸素濃度)を「酸素量閾値」以下に低減させることにより、空気極の手前における酸素(O2)の反応待ち渋滞を抑制して、結果的に反応に使用されずに排ガスとして排出されてしまう酸素(O2)の量を低減させ、最終的に供給される極低酸素ガス(不活性ガス)の低酸素化に資することが可能となるのである。ただし、例えばより大きな電力も合わせて出力したい場合には、第1酸素量調整部142aを使用しないことも可能であり、さらに、後述する図7における「酸素収容部26a」相当の収容部を設けて、第1酸素量調整部142aにおいてこの収容部からの酸素を空気に混入させ、酸素量(酸素濃度)を増大させることも可能である。
図3(B)によればまた、酸素濃度規格値の対数が小さくなるにつれ、負荷条件が2Ωのグラフ線は、負荷条件が3Ωのグラフ線と交点CP1で交差してこの3Ωのグラフ線の上側から下側に移行している。また、さらに酸素濃度規格値の対数が小さくなるにつれ、この3Ωのグラフ線は、負荷条件が5Ωのグラフ線と交点CP2で交差してこの5Ωのグラフ線の上側から下側に移行しており、さらに、この5Ωのグラフ線は、負荷条件が10Ωのグラフ線と交点CP3で交差してこの10Ωのグラフ線の上側から下側に移行している。
ちなみに、図3(B)のグラフにおいて、各酸素濃度規格値の対数において電流値が最大となるグラフ点のなすグラフ上辺線(IP1、CP1、CP2及びCP3を順次繋いで含むグラフ線)は、第2燃料電池11bにおける酸素量と電流を最大にする負荷との関係を示していると理解される。この関係によれば、低負荷設定が必ずしも大電流をもたらすわけではなく、酸素濃度の低い領域では逆に、負荷の高い方がより大きな電流を得られる場合の生じることが理解される。
ここで、このような第2燃料電池11bにおける酸素量と電流を最大にする負荷との関係に基づき、第2負荷調整部111b(図1)は、第1燃料電池11aから排出された低酸素排ガスにおける酸素量に合わせて酸素をより多く消費するように、第2燃料電池11bに対する負荷を調整することも好ましい。例えば、図3(B)において第2燃料電池11bへ投入される酸素濃度規格値が0.1(2.09%)である場合に(第2負荷調整部111bで設定・切り替え可能な負荷が2Ω,3Ω,5Ω,・・であれば)、第2負荷調整部111bは、第2燃料電池11bに対する負荷を3Ωに設定することができる(勿論、第2負荷調整部111bが可変抵抗回路を備え、連続値をもって負荷を調整可能であれば、より細かな負荷設定も可能となる)。
なお、このような負荷調整は、本発明に係る電力及びガス供給装置が、上述したように第1の燃料電池部から第N(Nは設定された2以上の自然数)の燃料電池部までの、直列に接続されたN個の燃料電池部を備えている実施形態でも有効となる。この場合、負荷調整部は、mを2からNまでの自然数の少なくとも1つとして、第mの燃料電池部における酸素量と電流を最大にする負荷との関係に基づき、第(m−1)の燃料電池部から排出された低酸素排ガスにおける酸素量に合わせて酸素をより多く消費するように、第mの燃料電池部に対する負荷を調整することも好ましい。これにより、酸素がより多く消費され、結果的により酸素濃度の低い極低酸素ガスを外部に供給することが可能となるのである。
さらにまた、図3(B)に示されたような第2燃料電池11bにおける酸素量と電流を最大にする負荷との関係に基づき、第2ガス圧調整部12b(図1)は、第2燃料電池11bに対する実際の負荷に合わせて酸素をより多く消費するように、第1燃料電池11aから排出された低酸素排ガスにおけるガス圧を調整することも好ましい。
例えば、図3(B)に示したケースで第2燃料電池11bに対する実際の負荷が2Ωである場合に、第2燃料電池11bへ投入される(第1燃料電池11aから排出される)低酸素ガスの酸素濃度規格値が0.1(2.09%)であるならば、第2ガス圧調整部12bは、この投入される低酸素ガスのガス圧を1気圧から、{(交点CP1に相当する酸素濃度(体積%))/2.09(体積%)}気圧以上に高めることも好ましい。
すなわち、第2燃料電池11bへ投入するガスのガス圧を高めて、電極反応における実効的な酸素濃度(電極表面における反応にかかわる酸素の単位面積あたりの個数)を、(負荷2Ωの場合に酸素消費が最大化する)交点CP1相当の酸素濃度以上とし、酸素をより多く消費するようにすることも好ましい。例えば、低酸素ガスのガス圧を10倍にすれば、電極表面で電極反応にかかわる酸素の量を10倍とし、結局元のガス圧(1気圧)において10倍の酸素濃度を有するガスを用いた場合に相当する反応を引き出すことができるのである。
なお、このようなガス圧調整は、本発明に係る電力及びガス供給装置が、上述したように第1の燃料電池部から第N(Nは設定された2以上の自然数)の燃料電池部までの、直列に接続されたN個の燃料電池部を備えている実施形態でも有効となる。この場合、負荷調整部は、mを2からNまでの自然数の少なくとも1つとして、第mの燃料電池部における酸素量と電流を最大にする負荷との関係に基づき、第mの燃料電池部に対する負荷に合わせて酸素をより多く消費するように、第(m−1)の燃料電池部から排出された低酸素排ガスにおけるガス圧を調整することも好ましい。これにより、酸素がより多く消費され、結果的により酸素濃度の低い極低酸素ガスを外部に供給することが可能となるのである。
ちなみに、このような第2ガス圧調整部12b(及び後述する第1ガス圧調整部12a)は、例えば公知のコンプレッサを含む構造とすることができる。また、ガス圧計も備えていて、ガス圧測定値を制御部10に通知し、制御部10による制御を受ける構成となっていることも好ましい。
図4は、第2燃料電池11bを用いた上記実施例における、酸素濃度と電圧との関係を示すグラフである。
図4(A)によれば、いずれの負荷条件下においても、酸素濃度が低下するとともに、第2燃料電池11b(の両電極間)の電圧は低くなっている。また、いずれの酸素濃度条件下であっても、負荷値が大きいほど、より高い電圧が得られている。
また、酸素濃度規格値の横軸を対数目盛とした図4(B)のグラフによれば、電圧値は、図3(B)に示した電流値の場合と同様、いずれの負荷条件下においても酸素濃度規格値の対数の一次関数となっており、同図のグラフ上のデータ点は直線上に載っている。
また、いずれの負荷条件下においても、図3(B)に示した電流値の場合と同様の減少率不連続点IP1、IP2、IP3及びIP4が出現している。上述したように、これらの減少率不連続点IP1、IP2、IP3及びIP4もそれぞれ、酸素濃度規格値に関して、図3(B)に示した減少率不連続点IP1、IP2、IP3及びIP4と同じ位置に現れているのである。なお、図4(B)に示した電圧値のグラフでは、図3(B)に示した電流値のグラフで見られたような交点CP1、CP2及びCP3は、いずれも出現していない。
以上、第2燃料電池11bにおける酸素濃度と電流や電圧との関係の測定結果を示したが、次いで、これらの結果から導出される、酸素濃度と電力(=電流×電圧)との関係を示す。
図5は、第2燃料電池11bを用いた上記実施例における、酸素濃度と電力との関係を示すグラフである。
ここで、図5(A)及び図5(B)に示したような電力値は、空気極での反応(1/2O2→O-2+2e-)にかかわる酸素(O2)の量だけではなく、第2燃料電池11bの内部抵抗等の電池状態を反映した実際の起電力にも影響される量であると考えられる。したがって、より多くの酸素(O2)を電極反応で消費させ、且つより大きな電力を出力させることも勘案した場合、負荷及び酸素濃度のいずれか一方又は両方を調整して、この電力値をより大きくすることが重要となる。
図5(A)によれば、いずれの負荷条件下においても、酸素濃度が低下するとともに、第2燃料電池11bからの電力は小さくなっている。また、酸素濃度規格値が少なくとも0.35以上の条件では、負荷値が小さいほどより大きな電力が得られており、一方、0.35未満の場合では、負荷と電力との関係が逆転する(グラフ線が交差する)現象が見られる。この逆転現象をより明確にするため、酸素濃度規格値を示す横軸を対数目盛とした図5(B)のグラフを参照する。
図5(B)によれば、電力値は、図3(B)の電流値や図4(B)の電圧値の場合と同様、いずれの負荷条件下においても酸素濃度規格値の対数の一次関数となっており、同図のグラフ上のデータ点は直線上に載っている。また、いずれの負荷条件下においても、図3(B)の電流値の場合や図4(B)の電圧値の場合と同様の減少率不連続点IP1、IP2、IP3及びIP4が出現している。上述したように、これらの減少率不連続点IP1、IP2、IP3及びIP4もそれぞれ、酸素濃度規格値に関して、図3(B)や図4(B)に示した減少率不連続点IP1、IP2、IP3及びIP4と同じ位置に現れているのである。
ここで、このような酸素濃度と電力との関係における減少率不連続点出現の結果に基づき、第1燃料電池11aの空気取り込み側に設置された第1酸素量調整部142a(図1)によって酸素量を調整することも可能である。第1酸素量調整部142aは、第1燃料電池11aに供給される空気における酸素量(酸素濃度)を、上述した減少率不連続点(IP1、IP2、IP3や、IP4)に相当する「酸素量閾値」以下に低減させる機能を果たす。ちなみに、この減少率不連続点に相当する「酸素量閾値」は、図5(B)に示すような第1燃料電池11aにおける酸素量と電力との関係から導出されるだけでなく、すでに説明したように、酸素量と電流との関係(図3(B))や、酸素量と電圧との関係(図4(B))からも導出される。
図5(B)によればまた、酸素濃度規格値の対数が小さくなるにつれ、負荷条件が2Ωのグラフ線は、負荷条件が3Ωのグラフ線と交点CP1で交差してこの3Ωのグラフ線の上側から下側に移行している。また、さらに酸素濃度規格値の対数が小さくなるにつれ、この3Ωのグラフ線は、負荷条件が5Ωのグラフ線と交点CP2で交差してこの5Ωのグラフ線の上側から下側に移行しており、さらに、この5Ωのグラフ線は、負荷条件が10Ωのグラフ線と交点CP3で交差してこの10Ωのグラフ線の上側から下側に移行している。
なお、このような交点CP1、CP2及びCP3の出現は、上述したように図3(B)の電流値のグラフでも見られるが、これらの交点CP1、CP2及びCP3の酸素濃度(横軸)についての位置はいずれも、図3(B)の交点CP1、CP2及びCP3とは異なっており、より高酸素濃度側の位置となっている。
ちなみに、図5(B)のグラフにおいては、各酸素濃度規格値の対数において電力値が最大となるグラフ点のなすグラフ上辺線(IP1、CP1、CP2及びCP3を順次繋いで含むグラフ線)は、第2燃料電池11bにおける酸素量と電力を最大にする負荷との関係を示していると理解される。この関係によれば、低負荷設定が必ずしも大電力をもたらすわけではなく、酸素濃度の低い領域では逆に、負荷の高い方がより大きな電力を得られる場合の生じることが理解される。
ここで、このような第2燃料電池11bにおける酸素量と電力を最大にする負荷との関係に基づき、第1負荷調整部111a(図1)は、第1燃料電池11aから排出された低酸素排ガスにおける酸素量に合わせて酸素をより多く消費し且つより大きな電力を出力するように、第2燃料電池11bに対する負荷を調整することも好ましい。例えば、図5(B)において第2燃料電池11bへ投入される低酸素ガスにおける酸素濃度規格値が0.13、すなわちCP3とCP2との間の酸素濃度規格値である場合を考える。ここで、第1負荷調整部111aで設定可能な負荷が2Ω,3Ω,5Ω,10Ω,・・であるとすると、このCP3とCP2との間の酸素濃度規格値範囲において最も電力値の大きい(グラフ線が最も上となっている)負荷は5Ωであるので、第1負荷調整部111aは、第2燃料電池11bに対する負荷を5Ωに設定することができる。
なお、このような負荷調整は、本発明に係る電力及びガス供給装置が、上述したように第1の燃料電池部から第N(Nは設定された2以上の自然数)の燃料電池部までの、直列に接続されたN個の燃料電池部を備えている実施形態でも有効となる。この場合、負荷調整部は、mを2からNまでの自然数の少なくとも1つとして、第mの燃料電池部における酸素量と電力を最大にする負荷との関係に基づき、第(m−1)の燃料電池部から排出された低酸素排ガスにおける酸素量に合わせて酸素をより多く消費し且つより大きな電力を出力するように、第mの燃料電池部に対する負荷を調整することも好ましい。
またさらに、図5(B)に示されたような第2燃料電池11bにおける酸素量と電力を最大にする負荷との関係に基づき、第2ガス圧調整部12b(図1)は、第2燃料電池11bに対する実際の負荷に合わせて酸素をより多く消費し且つより大きな電力を出力するように、第1燃料電池11aから排出された低酸素排ガスにおけるガス圧を調整することも好ましい。
例えば、図5(B)に示したケースで第2燃料電池11bにかかる実際の負荷が2Ωであって、第2燃料電池11bへ投入される(第1燃料電池11aから排出される)低酸素ガスの酸素濃度規格値が0.1(2.09体積%)である場合を考える。ここで、負荷2Ωにおける電力値が(全ての負荷条件における電力値の中で)最も大きくなる(グラフ線が最も上となる)のは、酸素濃度規格値がCP1の酸素濃度規格値以上においてとなっている。そこで、第2ガス圧調整部12bは、この投入される低酸素ガスのガス圧を1気圧から、{(CP1の酸素濃度(体積%))/2.09(体積%)}気圧以上に高め、酸素濃度が2.09体積%である当該低酸素ガスにおける実質的な酸素濃度を、CP1以上のものにすることも好ましい。
すなわち、第2燃料電池11bへ投入するガスのガス圧を高めて、電極反応における実効的な酸素濃度(電極表面での反応にかかわる酸素密度)を、(負荷2Ωの場合に酸素消費が最大化する)交点CP1相当の酸素濃度以上とし、酸素をより多く消費し且つより大きな電力を出力するようにすることも好ましいのである。
なお、このようなガス圧調整は、本発明に係る電力及びガス供給装置が、上述したように第1の燃料電池部から第N(Nは設定された2以上の自然数)の燃料電池部までの、直列に接続されたN個の燃料電池部を備えている実施形態でも有効となる。この場合、負荷調整部は、mを2からNまでの自然数の少なくとも1つとして、第mの燃料電池部における酸素量と電力を最大にする負荷との関係に基づき、第mの燃料電池部に対する負荷に合わせて酸素をより多く消費し且つより大きな電力を出力するように、第(m−1)の燃料電池部から排出された低酸素排ガスにおけるガス圧を調整することも好ましい。
以上、図3〜5を用いて酸素濃度と電流、電圧及び電力との間の特徴的な関係を説明したが、PEFC方式以外の燃料電池、特にSOFC方式の燃料電池においても、その動作原理からして同様の傾向の関係が得られると考えられる。また、特に、図3(B)及び図5(B)に示された酸素濃度と電流又は電力を最大にする負荷との関係からすると、次のような好適な実施態様が可能となる。
すなわち、本発明に係る電力及びガス供給装置が、上述したように第1の燃料電池部から第N(Nは設定された2以上の自然数)の燃料電池部までの、直列に接続されたN個の燃料電池部を備えている場合において、nを2からNまでの各自然数として、第nの燃料電池部における負荷を、第(n−1)の燃料電池部における負荷と比べて同等に又はより高く設定することも好ましい。これにより、出力側により近い(n値のより大きい)燃料電池部ほど、投入されるガスの酸素濃度が大幅に低下している状況に合わせ、より大きな電流値又は電力値を得て、より多くの酸素を消費することが可能となるのである。
例えば、図1に示した(N=2である)実施形態においては、第2燃料電池11bに対する負荷を、第1燃料電池11aに対する負荷よりも高くすることも好ましい。なお、低酸素濃度領域では燃料電池の起電力(定格電力)は十全に発揮されることはないので、第2燃料電池11bには、第1燃料電池11aよりも定格電力の小さいものを採用することで十分であるといえる。
図1の装置構成図に戻って、第2燃料圧調整部13bは、例えば公知のコンプレッサを含む構造を有し、第1燃料電池11aから排出された低酸素排ガスのガス圧が第2ガス圧調整部12bによって高められる場合に、この高められたガス圧に合わせて燃料(水素ガス)の圧力も高くした上で、この燃料(水素ガス)を第2燃料電池11bに供給する。これにより、第2燃料電池11bにおける電解質や空気極膜及び燃料極膜が圧力差によって損傷することを防止できる。
なお、このような燃料圧調整は、本発明に係る電力及びガス供給装置が、上述したように第1の燃料電池部から第N(Nは設定された2以上の自然数)の燃料電池部までの、直列に接続されたN個の燃料電池部を備えている実施形態でも有効となる。この場合、燃料圧調整部は、mを2からNまでの自然数の少なくとも1つとして、第(m−1)の燃料電池部から排出された低酸素排ガスの高められたガス圧に合わせて燃料の圧力も高くした上で、この燃料を第mの燃料電池部に供給することも好ましい。
ちなみに、燃料となる水素は、例えば、水素ボンベに14気圧程度で充填された形で取得されるが、通常、大気圧(1気圧)に対する差圧が0.05〜0.1気圧程度になるまで減圧して使用される。これに対し、本実施形態の第2燃料圧調整部13bは、公知のレギュレータを含む構造のものとなっており、第2ガス圧調整部12bによって高められたガス圧に合わせ、この水素ボンベからの水素を十分に高いガス圧に調整した上で、第2燃料電池11bに供給することができる。
同じく図1において、電力及びガス供給装置1は、第1ガス圧調整部12aを備えていてもよい。第1ガス圧調整部12aは、第1燃料電池11aに供給される空気(酸素を含む気体)における酸素量を、第1燃料電池における酸素量と電流、電圧又は電力との関係(例えば図3(B)、図4(B)又は図5(B)に示したような関係)から算出される「酸素量閾値」であって、酸素量の減少に伴う電流、電圧又は電力の「減少率不連続点」(IP1、IP2、IP3又はIP4)に相当する「酸素量閾値」以下に設定することも好ましい。
これにより、空気極の手前において反応待ち渋滞を起こし、結果的に反応に使用されずに排ガスとして排出されてしまう酸素(O2)の量を抑制して、第1燃料電池11aからの低酸素排ガスにおける酸素量をより小さくし、最終的に供給される極低酸素ガス(不活性ガス)の低酸素化に資することが可能となるのである。
ちなみに、このような第1ガス圧調整部12aは、例えば公知の減圧器やコンプレッサを含む構造とすることができる。
また、第1燃料圧調整部13aは、第1燃料電池11aに供給される空気(酸素を含む気体)のガス圧が第1ガス圧調整部12aによって調整された場合に、この調整されたガス圧に合わせて燃料(水素ガス)の圧力も調整した上で、この燃料(水素ガス)を第1燃料電池11aに供給する。これにより、第1燃料電池11aにおける電解質や空気極膜及び燃料極膜が圧力差によって損傷することを防止できる。
同じく図1において、電力及びガス供給装置1は、第1負荷調整部111aを備えていてもよい。第1負荷調整部111aは、第1燃料電池11aに対する負荷について、上述した第2負荷調整部111bと同様の機能を果たし、第1燃料電池11aにおける酸素量と電流又は電力を最大にする負荷との関係に基づき、第1燃料電池11aに投入される空気(酸素を含む気体)における酸素量に合わせて酸素をより多く消費するように、第1燃料電池11aに対する負荷を調整することができる。
第2排ガス収容部14bは、第2燃料電池11bから排出された極低酸素排ガスを、外部へ供給する前に収容する収容部であり、ガスボンベを含むものとすることができる。このような第2排ガス収容部14bを設けることによって、極低酸素排ガスを、ガス圧を安定させた上で継続的に外部へ供給することが可能となる。ちなみに、後に[フラッディング対策]のところで詳細に説明するように、この第2排ガス収容部14bを設けることによって、十分な除湿処理を実施することもできるのである。
なお、第2排ガス収容部14b内に設けられた水蒸気吸収部141b、酸素量調整部142c、ガス圧計143b及び湿度計144bはそれぞれ、上述した水蒸気吸収部141a、酸素量調整部142b、ガス圧計143a及び湿度計144aと同様のものである。制御部10(図1)は、これらの機能構成部を用いて、外部に供給すべき極低酸素ガスの状態を計測して調整し、好適な極低酸素ガスを外部へ供給させるのである。
ここで、例えば、第2ガス圧調整部12bによって高圧状態にされた第1燃料電池11aからの排ガスも、第2燃料電池11bにおける電極反応によって酸素分を消費させられた後、ほぼ同等の高圧状態で排出され、その後、第2排ガス収容部14bにおいてガス圧を例えば概ね1気圧に戻されることによって、非常に酸素量の少ない極低酸素ガスとしての不活性ガス(窒素ガス)となるのである。
同じく図1において、熱交換部15は、第1燃料電池11aや第2燃料電池11bにおいて電力生成の際に発生する熱を、外部の装置やシステムに伝達し供給する熱伝達部である。このような熱交換部15を備えた実施形態によれば、電力及びガス供給装置1は、外部の装置やシステムへ電力及び極低酸素ガスのみならず、熱エネルギーも供給することができる。
以上、電力及びガス供給装置1の構成・動作を詳細に説明したが、電力及びガス供給装置1の主要部である第1燃料電池11a及び第2燃料電池は各々、1つの独立した燃料電池となっている。すなわち、以上に説明した実施形態では、第1の燃料電池部から第N(Nは設定された2以上の自然数)の燃料電池部までのN個の燃料電池部が設けられている場合に、第1の燃料電池部及び第n(nは2からNまでの各自然数)の燃料電池部は各々、1つの燃料電池となっている。これに対し、全く異なる他の実施形態を次に説明する。
図6は、本発明による電力及びガス供給装置の他の実施形態を説明するための模式図である。
図6によれば、本実施形態の電力及びガス供給装置1’は、複数のセル(図6では第1セル11A〜第4セル11Dの4つのセル)を含む1つの燃料電池11’を備えており、
(a)第1セル11A及び第2セル11Bが、「第1の燃料電池部」を構成し、
(b)第3セル11C及び第4セル11Dが、「第2の燃料電池部」を構成している。
このように、電力及びガス供給装置1’においても、「第1の燃料電池部」と「第2の燃料電池部」とは直列に接続されており、
(a)空気(酸素を含む気体)及び水素(燃料)を「第1の燃料電池部」に投入して、電力を生成させるとともに、低酸素排ガスを排出させ、
(b)「第1の燃料電池部」から排出された低酸素排ガスを、第2ガス圧調整部12’をもってガス圧を高めた上で、「第2の燃料電池部」へ導入し、
(c)第2ガス圧調整部12’で高められたガス圧に合わせ、水素(燃料)の圧力も第2燃料圧調整部13’で高めた上で当該水素(燃料)を「第2燃料電池部」に供給し、
(d)「第2の燃料電池部」において電力を生成させるとともに、極低酸素ガス(窒素)を排ガスとして排出させるのである。
勿論、電力及びガス供給装置1’は、電力及びガス供給装置1(図1)の有する種々の機能構成部を同様に備えていてもよい。いずれにしても、電力及びガス供給装置1’は、1つの燃料電池を利用して、電力及びガス供給装置1(図1)と同様の作用効果を実現させることができるのである。
また、電力及びガス供給装置1’において、1つの「燃料電池部」を構成するセルの数も当然に2つに限定されるものではない。1つ又は3つ以上(好ましくは例えば数十個)のセルをもって1つの「燃料電池部」を構成してもよく、さらに、「燃料電池部」毎に構成するセル数が異なっていてもよい。また、電力及びガス供給装置1’が、第1の燃料電池部から第N(Nは設定された2以上の自然数)の燃料電池部までのN個の燃料電池部を備えている場合には、第1の燃料電池部及び第n(nは2からNまでの各自然数)の燃料電池部は各々、(複数のセルを含む)1つの燃料電池における、少なくとも1つのセルを含む燃料電池部分とすることができる。
またさらに、図1に示した電力及び供給装置1における、第2燃料電池11b及びその入出力に係る機能構成部をもって、1つの独立した「不活性ガス供給装置」を構成することもできる。この「不活性ガス供給装置」は、図1の第2燃料電池11bを「燃料電池部」として、
(a)1気圧の空気よりも酸素量の小さい低酸素ガスと、供給された燃料とを用いて電力を生成し、当該低酸素ガスと比較して酸素量のより低減させられた不活性なガスを排出する「燃料電池部」を備えている
ことを特徴としている。
ここで、「燃料電池部」に供給される低酸素ガスにおける酸素量は、「燃料電池部」における酸素量と電流、電圧又は電力との関係(例えば電流の場合は図3(B)のグラフ)から算出される「酸素量閾値」であって、酸素量の減少に伴う電流、電圧又は電力の減少率不連続点(例えば図3(B)におけるIP1、IP2、IP3や、IP4)に相当する「酸素量閾値」以下であることも好ましい。
いずれにしても、この不活性ガス供給装置は、外部から(例えば他の燃料電池の排気部から)低酸素ガスを受け取って「燃料電池部」へ供給する低酸素ガス供給部を備えていることも好ましい。
また、この不活性ガス供給装置は、
(b)当該低酸素ガスを、ガス圧をより高くした上で「燃料電池部」に供給するガス圧調整部(図1の第2ガス圧調整部12bに相当)を更に備えていることも好ましい。
ここで、このガス圧調整部は、例えばコンプレッサを含む構造を有しており、「燃料電池部」における酸素量と電流又は電力を最大にする負荷との関係(例えば電流の場合は図3(B)のグラフ)に基づき、「燃料電池部」に対する負荷に合わせて酸素をより多く消費するように、「燃料電池部」から排出された低酸素排ガスにおけるガス圧を調整することも好ましい。
さらに、この不活性ガス供給装置は、
(c)当該低酸素ガスの高められたガス圧に合わせて燃料の圧力も高くした上で、当該燃料を「燃料電池部」に供給する燃料圧調整部(図1の第2燃料圧調整部13bに相当)を更に備えていることも好ましい。
さらにまた、この不活性ガス供給装置は、
(d)「燃料電池部」における酸素量と電流又は電力を最大にする負荷との関係(例えば電流の場合は図3(B)のグラフ)に基づき、当該低酸素ガスにおける酸素量に合わせて酸素をより多く消費するように、「燃料電池部」に対する負荷を調整する負荷調整部(図1の負荷調整部111bに相当)を更に備えていることも好ましい。
なお、この不活性ガス供給装置の「燃料電池部」は発電を行うのであり、外部に電力を供給することも可能である。すなわち、本不活性ガス供給装置は、電力及び不活性ガスを供給可能な電力及び不活性ガス供給装置とすることもできる。
[電力供給装置]
図7は、本発明による電力供給装置の一実施形態を示す模式図である。
図7によれば、本発明の一実施形態としての電力供給装置2は、本実施形態において電動モータ駆動の自動車に搭載され、この電動モータへ電力を供給してこの自動車を走行させる発電装置である。この電力供給装置2は、燃料電池21aによって発電を行うので結局、この自動車は燃料電池車ということになる。
ここで、本実施形態の電力供給装置2は、ガス圧調整部22を備えており、例えば、(燃料電池21aに供給されるべき)空気の圧力が1気圧未満となる高地等においても、燃料電池21aへ十分な酸素を供給し、良好な電力供給を行うことができる。また、自動車の登坂時等、より大きな電力を必要とする状況に対応し、例えば1気圧を超える気体圧の空気を、(高出力化に対応して予め大きな定格電力を有する)燃料電池21aへ供給し、より大きな電力を出力することも可能となる。
具体的に本実施形態において、電力供給装置2は、
(a)燃料電池21a、負荷調整部21b、ガス圧調整部22、空気収容部24、燃料圧調整部23、及び燃料収容部25と、
(b)電気分解部28、水分離部27a、水収容部27b、酸素収容部26a、及び酸素量調整部26bと、
(c)熱交換部29と
を備えている。また、以下に説明するこれらの構成部の個別動作・連携動作を制御する制御部20を備えている。
このうち、燃料電池21aは、燃料電池自動車に多く採用されているPEFC方式のものとすることができる。また当然に、SOFC方式等、他の電池方式の燃料電池とすることも可能である。いずれにしても、燃料電池21aは、空気(酸素を含む気体)と供給された水素(燃料)とを用いて電力を生成し、少なくともこの空気(酸素を含む気体)よりも小さい酸素量を有する低酸素排ガスを排出する。また、電極反応の結果として生成される水(水蒸気)も排出する。
ガス圧調整部22は、例えば公知のコンプレッサを含む構造を有し、空気(酸素を含む気体)を、気体圧をより高くした上で空気収容部24を介して燃料電池21aに供給する。ここで、燃料電池21aの定格電力に応じて、気体圧を単に十分に高くすることも可能であるが、例えば、燃料電池21aにおける酸素量と電流又は電力を最大にする負荷との関係(例えば図3(B)又は図5(B)に相当する関係)に基づき、燃料電池21aに対する負荷に合わせて酸素をより多く消費させより大きな電力を得られるように、当空気(酸素を含む気体)の気体圧を調整することも好ましい。
ここで、この気体圧は、例えば空気収容部24内に設置された圧力センサによって計測され、制御部20がこの計測値に基づいてガス圧調整部22の圧力調整を制御してもよい。本実施形態では、このような気体圧調整によって、燃料電池自動車における必要時の馬力を向上させたり、酸素の消費効率を上げて燃費の大幅な低下を抑制したりすることができるのである。
また、このような気体圧調整の変更態様として、トラックやバス等の自動車に搭載されている空気ブレーキ(フルエアブレーキ又は空気油圧複合式ブレーキ)システムを利用することも好ましい。空気ブレーキシステムは、エアコンプレッサによって圧縮した空気を常時エアタンクに貯めておき、ブレーキペダルが踏まれるとリレーバルブを介し、ブレーキチャンバに空気を送ってチャンバロッドを伸ばし、ブレーキを作動させるシステムである。この空気ブレーキシステムを用いれば、1気圧を超える空気を直接、又はレギュレータ機能を備えたガス圧調整部22を介して燃料電池21aへ供給することが可能となる。
さらに、電力供給装置2を自動車等にではなく工場等で採用する変更態様とはなるが、工場等内に設置された圧縮空気供給設備を利用することも好ましい。この場合、1気圧を超える空気を直接、又はレギュレータ機能を備えたガス圧調整部22を介して燃料電池21aへ供給することができる。
燃料圧調整部23は、例えば公知のコンプレッサを含む構造を有し、ガス圧調整部22において高められた空気圧に合わせて、水素(燃料)の圧力も高くした上で、水素(燃料)を燃料電池21aに供給する。これにより、燃料電池21aにおける電解質や空気極膜及び燃料極膜が圧力差によって損傷することを防止できる。ちなみに、このような燃料圧調整においては、(15気圧未満の)高圧水素ボンベや、各種水素吸蔵装置・ボンベから供給される高圧の水素を利用することも可能である。
なお、ガス圧調整部22や燃料圧調整部23に備えらえたコンプレッサを稼働させる電力として、後に詳細に説明する回生電力を利用することも好ましい。
同じく図7において、電力供給装置2は負荷調整部21bを有していてもよい。負荷調整部21bは、燃料電池21aにおける酸素量と電流又は電力を最大にする負荷との関係(例えば図3(B)又は図5(B)に相当する関係)に基づき、燃料電池21aに供給される空気の酸素量に合わせて酸素をより多く消費させより大きな電力を得られるように、
燃料電池21aに対する負荷を調整することができる。
熱交換部29は、燃料電池21aにおいて電力生成の際に発生する熱を、例えば車内の暖房用として自動車に供給する熱伝達部である。このような熱交換部29を備えた実施形態によれば、電力供給装置2は、電力のみならず熱エネルギーも外部へ供給することができる。
さらに、本実施形態において電力供給装置2は、水分離部27a、水収容部27b及び電気分解部28を備えている。このうち、水分離部27aは、例えば公知の気水分離器を含む構造を有し、電極反応の結果として燃料電池21aから排出される水(純水)や水蒸気を、排ガスを含む排出物から分離し、水収容部27bを介して電気分解部28へ供給する。ちなみに、この水分離部27aとして、後に[フラッディング対策]の手法としても説明するが、気液分離機や、ペルチェ素子等の冷体を利用した凝結器等を採用することも可能である。
ちなみに、水分離部27aにおいて水分を分離された排ガスは、自動車の空気ブレーキ用の気体として自動車本体へ供給されてもよい。その際、供給される排ガスの温度やガス圧を調整することも好ましい。なおこの場合、電力供給装置2は、電力及びガス供給装置として機能することとなる。
また、電気分解部28は、水収容部27bを介して供給された水又は水蒸気(H2O)を、供給された電力による電気分解処理によって水素(H2)及び酸素(O2)に分解し、生成した水素及び酸素をそれぞれ、燃料収容部25及び酸素収容部26aへ供給する。ちなみに、この電気分解処理のための電力は、少なくともその一部が回生電力で賄われることも好ましい。
ここで、回生電力とは、電動モータ駆動の自動車において、例えば下り坂の走行時や、ブレーキを使用しない減速時に、電動モータが走行の抵抗として機能する一方で発電機となって出力する電力のことである。電動モータ駆動の自動車では通常、回生電力は、自動車に搭載されたリチウム電池に蓄えられるが、このリチウム電池がフル充電されると熱として放出されてしまう。なお、回生電力は、船舶においても、例えば減速時のスクリュー回転から生成される。したがって、本電力供給装置2を船舶に適用した場合においても、このような回生電力を利用できるのである。
いずれにしても本実施形態では、このように通常十分に活用されていない回生電力を利用して電気分解処理を行い、燃料電池21aにおける電極反応の原料を再生して再利用させている。言い換えると、無駄に廃棄されてきた回生電力をも燃料等の化学エネルギーに変換して蓄え、再活用しているのである。これにより、燃料電池自動車における燃費向上や必要時の馬力向上に貢献することも可能となる。
また、燃料電池車では通常、走行中に相当量の水が道路上に排出されるが、例えば冬季にはこの水によって路面が凍結する等、問題が生じ得る。これに対し、本実施形態の電力供給装置2によれば、燃料電池21aから排出される水を、水収容部27bに回収した上で電気分解用材料として使用するので、この水問題が大幅に改善されるのである。
ちなみに、電気分解部28は、燃料電池21aから熱交換部29を介し熱を受けて電気分解対象の水蒸気を生成したり、電気分解対象の水の温度を上昇させたりして、電気分解における水素発生効率を向上させることも好ましい。また、この際、例えば電解質等の加熱による爆発等の発生を回避すべく、電気分解セルの温度をモニタし制御することも好ましい。さらに、電極間の印加電圧を高くして、電解質を使用せず電解質のモニタやメンテナンス等を不要とした電気分解処理を行うことも可能である。ここで、燃料電池21a、水収容部27b及び電気分解部28の各々に温度センサが設けられていて、制御部20は、これらの温度センサから取得した温度計測値を制御指標の一種として、燃料電池21a及び電気分解部28を含む装置2全体の動作を制御することも好ましい。
燃料収容部25及び酸素収容部26aは、例えばボンベを含む構造を有し、それぞれ電気分解部28から水素及び酸素を受け取って一先ず保存することができる。例えば電気分解部28が回生電力によってこれらの水素及び酸素を生成する場合、その生成は断続的となる。これに対し、燃料収容部25及び酸素収容部26aはそれぞれ、水素及び酸素のバッファ又は準備手段となり、水素及び酸素が安定して燃料電池21aに供給されることを可能とする。
酸素量調整部26bは、例えば公知のレギュレータを含む構造を有し、酸素収容部26aからの酸素をその量を調整しつつ空気収容部24へ送る。具体的に、酸素量調整部26bは、燃料電池21aの定格電力に応じて、十分に多量の酸素が燃料電池21aへ供給されるように酸素量を調整することも好ましいが、例えば、燃料電池21aにおける酸素量と電流又は電力を最大にする負荷との関係(例えば図3(B)又は図5(B)に相当する関係)に基づき、燃料電池21aに対する負荷に合わせて酸素をより多く消費させより大きな電力を得られるように、酸素量を調整することもできる。
ここで、酸素収容部26aからの酸素は、空気収容部24で空気に混入する形で燃料電池21aへ供給されるが、例えば、この酸素を相当に混入させ、空気よりも十分に高い酸素濃度を有する気体を燃料電池21aに導入して、より大きな電力を出力させることも可能となっている。
なお、以上詳細に説明を行った電力供給装置2の適用先は当然に、自動車に限定されるものではない。例えば、電車、船舶(電動船を含む)、電動モータ駆動のドローンや、ヘリコプタ、さらには飛行機等にも適用可能であり、特に、空気の薄い高い高度の環境を飛行する電動飛行体における電力供給源としても適したものとなっている。また、気圧の低い高地における様々な装置・設備のための電源としても好適である。
[電力及びガス供給システム]
図8は、本発明による電力及びガス供給システムの一実施形態を示す模式図である。
図8によれば、本発明の一実施形態としての電力及びガス供給システム3は、
(a)太陽電池ユニット31、及び電気分解ユニット33と、
(b)酸素収容部34a、水素収容部34b、及び空気収容部34cと、
(c)燃料電池ユニット35、及び熱交換部38と、
(d)排ガス調整部36、水収容部32、及び窒素収容部37と、
(e)センサ・遠隔調整部3a〜3lと、制御部としてのパーソナル・コンピュータ(PC)39と
を備えている。
このうち、太陽電池ユニット31は、太陽電池を備えていて例えば屋外に設置されており、太陽光を受けて電力を生成し、当該電力を電気分解ユニット33に供給する。電気分解ユニット33は、当該電力を用いて水(純水)の電気分解を実施し、酸素及び水素を生成してそれぞれ、酸素収容部34a及び水素収容部34bへ送って蓄えさせる。また、このうち水素収容部34bは、外部からも水素を取り入れ可能となっている。
なお、酸素収容部34a及び水素収容部34bは各々、コンプレッサ、ガスボンベ、ガス圧・流量計及びレギュレータを備えているが、これらの(さらには後述する空気収容部34cの)コンプレッサも、太陽電池ユニット31からの電力で動作させることも好ましい。
ここで、このような酸素及び水素の生成・蓄積は、太陽電池ユニット31で発電が行われる例えば昼間に限定されることになる。しかしながら、酸素収容部34a及び水素収容部34bは、それぞれ酸素及び水素を予め高圧の状態で蓄えているので、例えば燃料電池ユニット35で長時間又は夜間にこれらの気体を使用する場合においても、酸素(を含む空気)及び水素を安定的に燃料電池ユニット35へ供給可能とするのである。
また、電気分解ユニット33における電気分解処理を密閉容器内で実施しつづければ、この密閉容器内のガス圧(酸素圧,水素圧)は通電時間ととともに増大するので、高圧状態の酸素及び水素をそれぞれ、酸素収容部34a及び水素収容部34bへ送ることも可能となる。
次いで、同じくコンプレッサ、ガスボンベ、ガス圧・流量計及びレギュレータを備えた空気収容部34cは、外部(例えば工場内の圧縮空気供給設備)から空気を取り込むとともに酸素収容部34aから酸素を導入して、設定された(空気よりも高い)酸素濃度を有する酸素混合空気を生成し、設定された(1気圧を超える)ガス圧を有する酸素混合空気を、燃料電池ユニット35へ供給する。一方、水素収容部34bも、この酸素混合空気のガス圧に合わせた高いガス圧を有する水素(燃料)を、燃料電池ユニットへ供給する。
燃料電池ユニット35は、より高いガス圧を有する酸素混合空気及び水素を用いてより大きな電力を生成し、システム外部の電力・不活性ガス消費装置・システムへ供給する。また、電力生成の際に発生した熱を、熱交換部38を介して外部の動装置・システムへ供給してもよい。ここで、より高いガス圧を有する酸素混合空気を用いることによって、燃料電池の電極反応における実効的な酸素濃度(電極表面での反応にかかわる酸素密度)をより高くし、結果的により多くの酸素が消費されてより大きな電力が出力される。この点、本電力及びガス供給システム3は、システム内部(の電気分解ユニット33)で酸素を生成して取得するので、通常の空気よりも高い酸素濃度を有する酸素混合空気を、外部の酸素供給源に頼ることなく燃料電池ユニット35へ供給することができる。また、この酸素混合空気のガス圧をより高くして、実効的な酸素濃度を更に向上させることが可能となるのである。
例えば分かりやすいケースとして、5気圧の高圧空気(酸素濃度:約20%)を用いれば、電極表面での反応にかかわる酸素密度は、単純計算の結果とはなるが1気圧の空気の5倍、すなわち概ね1気圧の純酸素を用いた場合相当となり、出力される電力が大幅に増大するのである。さらに、5気圧の酸素混合空気(酸素濃度:約30%)を用いれば、これも単純計算の結果とはなるが増大した当該電力の更に1.5(=30/20)倍程度の出力電力が見込まれるのである。
燃料電池ユニット35はさらに、電力生成の際に発生する水・水蒸気を含む(酸素の十分に消費された)排ガスを、排ガス調整部36に送る。排ガス調整部36は、例えば水分離部27a(図7)及び酸素吸収部142a(図1)と同様の機能構成を有しており、当該排ガスから水(及び水蒸気)を分離し、さらに多くの酸素分を除去して、当該排ガスを純度の高い窒素として、窒素収容部37を介しシステム外部の電力・不活性ガス消費装置・システムへ供給する。
排ガス調整部36はさらに、排ガスから分離した水を水収容部32へ送って蓄えさせる。水収容部32は、蓄積した水(純水)を適宜、電気分解ユニット33に供給する。なお、水収容部32は、外部からも水を取り入れ可能となっていてもよく、また、イオン交換器や各種フィルタ等の公知の純水精製機能を備えていてもよい。
パーソナル・コンピュータ(PC)39は、本システムの制御部であって制御用のプログラムを搭載し、上述したシステム構成部に備え付けられたセンサ・遠隔調整部3a〜3lとの間で無線又は有線の通信を行ってシステム全体の動作の制御を行う。ここで使用される無線通信は、例えばWi-Fi(登録商標)等の無線LANや、ZigBee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信とすることができ、さらには携帯電話通信網等の各種事業者通信網(アクセスネットワーク)やインターネットで構成してもよい。
同じく図8において、センサ・遠隔調整部3aは、太陽電池ユニット31に設置されており、太陽電池の発電量を測定してPC39へ通知し、当該発電電力を、予めの設定に従い又はPC39からの指示により電気分解ユニット33へ供給する。また、センサ・遠隔調整部3bは、水収容部32に設置されており、排ガス調整部36及び外部から供給される水の量を測定してPC39へ通知し、その流入量を、予めの設定に従い又はPC39からの指示により制御し、蓄えられた水を、予めの設定に従い又はPC39からの指示により電気分解ユニット33へ供給する。
さらに、センサ・遠隔調整部3cは、酸素収容部34aに設置されており、電気分解ユニット33から供給される酸素の量を測定してPC39へ通知し、蓄えられた酸素を、予めの設定に従い又はPC39からの指示により空気収容部34cへ供給する。また、センサ・遠隔調整部3dは、水素収容部34bに設置されており、電気分解ユニット33から供給される水素の量を測定してPC39へ通知し、蓄えられた水素を、予めの設定に従い又はPC39からの指示により所定のガス圧をもって燃料電池ユニット35へ供給する。
さらに、センサ・遠隔調整部3eは、空気収容部34cに設置されており、酸素収容部34aから供給される酸素の量及び外部(例えば工場内の圧縮空気供給設備)から供給される空気の量を測定してPC39へ通知し、それらの流入量を、予めの設定に従い又はPC39からの指示により制御し、蓄えられた酸素混合空気における酸素濃度を測定してPC39へ通知し、当該酸素混合空気を、予めの設定に従い又はPC39からの指示により所定のガス圧をもって燃料電池ユニット35へ供給する。なお、上記のセンサ・遠隔調整部3dで調整される(水素の)ガス圧は、この(酸素混合空気の)ガス圧と同等になるように設定されることも好ましい。
また、センサ・遠隔調整部3f及びセンサ・遠隔調整部3gは、燃料電池ユニット35に設置されており、それぞれ燃料電池ユニット35に供給される酸素混合空気及び水素の量を測定してPC39に通知し、それらの流入量及びガス圧を、予めの設定に従い又はPC39からの指示により制御する。さらに、センサ・遠隔調整部3hも、燃料電池ユニット35に設置されており、燃料電池ユニット35から出力される電力(及び電流)を測定してPC39に通知し、予めの設定に従い又はPC39からの指示により所定電力(所定電流)を外部の電力・不活性ガス消費装置・システムへ供給する。
また、センサ・遠隔調整部3iも、燃料電池ユニット35に設置されており、燃料電池ユニット35から排ガス調整部36へ排出される排ガスの量及びガス圧を測定してPC39に通知し、その流出量及びガス圧を、予めの設定に従い又はPC39からの指示により制御する。この際、この排ガスのガス圧を、センサ・遠隔調整部3fで制御される酸素混合空気のガス圧と同等となるように制御することも好ましい。さらに、センサ・遠隔調整部3jは、排ガス調整部36に設置されており、排ガス調整部36から窒素収容部37に供給される処理後の排ガス(窒素ガス)の量を測定してPC39に通知する。
また、センサ・遠隔調整部3kは、窒素収容部37に設置されており、排ガス調整部36から供給される処理後の排ガスの量を測定してPC39へ通知し、蓄えられた処理後の排ガス(窒素ガス)における酸素濃度をPC39へ通知し、当該窒素ガスを、予めの設定に従い又はPC39からの指示により、所定のガス圧をもって不活性ガスとして、外部の電力・不活性ガス消費装置・システムへ供給する。
さらに、センサ・遠隔調整部3lは、熱交換部38に設置されており、燃料電池ユニット35から熱交換部38を介して出力される熱量を測定してPC39へ通知し、予めの設定に従い又はPC39からの指示により所定量の熱を外部の電力・不活性ガス消費装置・システムへ供給する。
ちなみに、センサ・遠隔調整部3a〜3lにおけるPC39とのデータ通信に用いられる通信インタフェースは、図8に示したようにセンサ・遠隔調整部3a〜3lの各々が備えていてもよいが、全ての又は一部のセンサ・遠隔調整部について共用可能な1つの又は複数の通信インタフェースが使用されてもよい。また、センサ・遠隔調整部3a〜3lは、ゲートウェイ等の中継装置又は所定のサーバを介してPC39と通信を行うことも好ましい。
以上詳細に説明したように、PC39は、センサ・遠隔調整部3a〜3lから刻々の各種測定データを受け取り、これらの測定データを用いて電力及びガス供給システムの構成ユニット・構成部の動作・状態を制御する。ここで、PC39は、ニューラルネットワーク(NN)等の機械学習によって、これらの測定データを用いてシステム制御モデルを生成し、このシステム制御モデルを活用して適宜、所望量の電力、不活性ガス及び熱を出力できるように、センサ・遠隔調整部3a〜3lの各々の制御を行うことも好ましい。
例えば具体的に、PC39は、
(a)燃料電池ユニット35にとって入力側となるセンサ・遠隔調整部3a〜3gのうちの選択された複数から送信される、所定期間における測定データの時系列から特徴ベクトルを生成し、
(b)その際に燃料電池ユニット35にとって出力側となるセンサ・遠隔調整部3h〜3lのうちの少なくとも1つから送信される、当該所定期間における測定データの時系列を正解データとして、
(c)NNに対し、大量に生成した特徴ベクトルと正解データとをもって学習を行わせて制御モデルを生成し、
(d)この制御モデルに対して、センサ・遠隔調整部3a〜3gのうちの選択された複数における時系列測定データを入力し、センサ・遠隔調整部3h〜3lのうちの少なくとも1つにおける時系列測定データの予測値を取得し、
(e)所望の時系列測定データ予測値をもたらすような(センサ・遠隔調整部3a〜3gのうちの選択された複数における)時系列測定データを決定して、決定した時系列測定データが実現するように、センサ・遠隔調整部3a〜3gに対し制御の指示を行うのである。
勿論、PC39における機械学習を用いたシステム制御は、上記のものに限定されるものではなく、その他の種々の形態の制御が実施可能となっている。
[フラッディング対策]
以下、図1に示した電力及びガス供給装置1の第1燃料電池11a(及び第2燃料電池11b)におけるフラッディング対策について説明を行う。
図1に示した電力及びガス供給装置1において、第1燃料電池11aから排出される低酸素排ガスには、大量の水蒸気(水)が含まれているが、これに対し除湿等の対策を行わないと、第1燃料電池11aの電極(PEFC方式の場合、空気極)において多量の水蒸気分(水分)が電極反応を阻害するフラッディング(flooding)現象が発生してしまう。ちなみに、PEFC方式の燃料電池の場合、酸素イオン(O2-)の一部が電解質を通過して燃料極側でも水が生成される。したがって、燃料極側においてもフラッディング現象が発生する場合も少なくない。
また、このような大量の水蒸気(水)を含む酸素排ガスを取り込んで動作する第2燃料電池11bにおいても、同様のフラッディング現象が発生して酸素の消費が抑制され、その結果、極低酸素ガスを排出できなくなってしまう可能性が生じる。
ここで、本願発明者等は、ホライゾン社製のFCS−C100(PEFC方式,定格出力100W)燃料電池において、排ガス中の水分密度(ガス単位体積当たりのH2O重量)が、30〜40g/m3当たりに存在する閾値を超すと、燃料電池の動作(電力の出力)が断続的に且つ不安定になることを確認している。また、燃料電池の稼働直後において、排ガスの水含有量(湿度)を少なくとも60%未満とする湿度管理が、非常に重要となることを示す実験結果も得ている。
本発明による電力及びガス供給装置1において、このようなフラッディング現象を抑制するため、例えば、以下の対策が挙げられる。
(a)排ガス中の水蒸気の蒸気圧を、飽和蒸気圧以下に制御する。
(b)排ガスを冷却して排ガス中の水分を除去する。
(c)公知の気水分離器を用い、排ガスに含まれる水蒸気の凝縮水を生成し分離する。
(d)電極反応で生じた液水を外部へ排出するパージ手段を設ける。
(e)電池セルにおけるガス流路の形状を、流入・流出抵抗の小さい形状にする。
(f)水分子との間で水素結合を形成するポリマをセパレータや電極位置に配し、水の排出を促進させる(特開2010−86694号公報を参照)。
(g)多層構造の多孔質体と、この多孔質体における電解質・電極(触媒層)とは反対側の位置に設けられた2種の流体を分離するガス不透過層とを用いて、水分を分離する(特開2008−84703号公報を参照)。
(h)金属多孔質体の孔をガス流路とする燃料電池用セパレータを使用し、この金属多孔質体に直線状の貫通孔を設けて水分の排出を促す(特開2011−14242号公報を参照)。
ここで、上記(b)で挙げられた対策ではあるが、ベルチェ素子を用いて排ガス中の水分を凝結させて除去することも好ましい。さらに、排ガスを断熱膨張させ、急冷して含まれる水分を水滴化し除去することもできる。
また、熱交換器(例えば図1に示された熱交換部15)を用いて排ガス中の水分を凝結させて除去することも好ましい。この場合、この除湿用の熱交換器として、ループヒートパイプを用いることができる。特に、薄板タイプのループヒートパイプを燃料電池の排出側に実装して使用することも好ましい。薄板タイプのループヒートパイプは、薄板状の蒸発器と熱拡散板(凝縮器)とが、同じく薄板状のヒートパイプ(蒸気管及び液管)で接続された構造を有しており、このうち蒸発器を排ガス中に暴露させて使用される。
さらに、上記(d)で挙げられた対策ではあるが、少なくとも水の生成される電極側(PEFC方式の場合、空気極側)の流路に空気等の気体を供給して、生成された水分をパージすることも好ましい。この際、例えば乾燥空気をパージガスとして用いてもよいが、本電力及びガス供給装置1においては、燃料電池(特に、第2燃料電池11b)にはできるだけ酸素分を投入したくない事情が存在する。そこで、第2燃料電池11bに対し、例えば第1燃料電池11aからの排ガスを、ある程度除湿した上でパージガスとして使用することも好ましい。
また、発泡装置を使用し、排ガスを冷水中においてマイクロ(ナノ)バブルにして通過させることにより、排ガス中の水分を除去することも有効である。
さらに、シリカゲル及び/又はゼオライトを含む除湿器を用いて、排ガス中の水分を除去することもできる。この場合、除湿速度はそれほど高くないので、例えば排ガスを一先ずタンク(例えば図1に示された第1排ガス収容部14a)に蓄え、当該タンク中に設けた、シリカゲル及び/又はゼオライトを含む除湿器によって排ガスの除湿を行うことも好ましい。なお、例えばシリカ及びアルミナを含有し両者の含有比を調整したゼオライト等、所定のゼオライトを含む除湿器を用いることによって、排ガス中の酸素分も吸収可能となる。
また、このような除湿器を、例えば燃料電池から熱交換器を介して供給される熱をもって加熱し、吸収した水分や酸素分を取り出して、種々の用途に利用してもよい。
ちなみに、図1に示された第1排ガス収容部14aには、湿度計144aが設置されており、制御部10(図1)は、収容部14a内にバッファされた排ガスの湿度が所定閾値以下となった場合に、当該排ガスを第2燃料電池11bに供給することも好ましい。
また、気液分離機を用いて、排ガス流から液体(本実施形態では概ね純水)を分離・除去することも好ましい。この気液分離の方式として、重力分離型、遠心分離型、ミスト除去器パッド型、翼型分離型や、気圧分離コアレッサ型等が採用可能である。
なお、以上に説明した種々のフラッディング対策手段は、例えば図1において、水蒸気吸収部141aとして、又は水蒸気吸収部141aの位置において、又は第2ガス圧調整部12bと第1排ガス収容部14aとの間において設置され、機能させることができる。
以上に説明したようなフラッディング対策手段を用い、電力及びガス供給装置1におけるフラッディング現象を抑制することによって、第1燃料電池11aを、さらには第2燃料電池11bをも十分に動作させ、十分な電力と、良好な極低酸素ガス(不活性ガス)とを出力することが可能となるのである。
以上詳細に説明したように、本発明の電力及びガス供給装置によれば、燃料電池を用い、電力と合わせて、酸素量の十分に小さい極低酸素ガスを供給することができる。また、本発明の電力供給装置によれば、酸素を含む気体をより高い気体圧で燃料電池に投入するので、より大きな電力を供給することが可能となる。さらに、本発明の不活性ガス供給装置によれば、燃料電池を用いて、酸素量の十分に小さい不活性ガスを供給することができるのである。
現在、燃料電池の研究開発は世界的な規模で精力的に進められており、今後、燃料電池の世界市場規模は、現在の数十倍程度に拡大するとの予測も存在する。さらに、地方公共団体においても、水素エネルギー活用の一環として、燃料電池車や水素発電拠点の導入を積極的に進めるところが出てきている。このような現状に対し、燃料電池を活用した本発明は、そのような燃料電池の各種用途での利用拡大に大いに貢献するものと考えられる。
なお、以上に述べた実施形態は全て、本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は、他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。