以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、車両として、内燃機関と2台の回転電機、機械式オイルポンプ、電動オイルポンプ等を搭載するハイブリッド車両について述べるが、これは説明のための例示に過ぎない。
図1は、ハイブリッド車両についての車両制御システム10の構成を示す図である。この車両制御システム10は、ハイブリッド車両に搭載される動力装置14を含む。
動力装置14は、内燃機関であるエンジン(図示しない)と、MG1として示される第1回転電機18、及び、MG2として示される第2回転電機20と、これらの間に設けられる動力伝達機構16と、を含む。
第1回転電機18と第2回転電機20は、車両に搭載されるモータ・ジェネレータ(MG)であって、電力が供給されるときはモータとして機能し、制動時あるいはエンジンで駆動される時には発電機として機能する三相同期型回転電機である。ここでは、第1回転電機18及び第2回転電機20の中の一方を主としてバッテリ(図示しない)の充電のための発電機、他方を主として車両走行用としての駆動モータとして用いる。
例えば、第1回転電機18は、エンジンにより駆動されて発電し、発電された電力をバッテリに供給する発電機として用いられる。また、第2回転電機20は、車両走行に用いられ、力行時にはバッテリから電力の供給を受けてモータとして機能して車両の車軸を駆動し、制動時には発電機として機能して制動エネルギを回生し、バッテリに供給できる。以下では、第1回転電機18を発電機、第2回転電機20をモータとして用いるものとして説明を行う。
動力伝達機構16は、ハイブリッド車両に供給する動力をエンジンの出力と第1回転電機18及び第2回転電機20の出力との間で分配する機能を有する機構である。かかる動力伝達機構16としては、エンジンの出力軸、第1回転電機18及び第2回転電機20の出力軸、車軸への出力軸のそれぞれに接続される遊星歯車機構を用いることができる。エンジンの出力軸は、動力伝達機構16とエンジンとを接続するとともに、接続軸を介して機械式オイルポンプ(以下「MOP」という)42の駆動軸に接続され、MOP42の駆動に用いられる。
充放電可能なバッテリ(電源)への充電は、例えば、エンジンによって第1回転電機18を駆動し、第1回転電機18によって発電される電力を供給することで行われる。バッテリは、例えば、単電池または電池セルを複数個組み合わせて構成される、約200Vから約300Vの端子電圧を有するリチウムイオン組電池である。バッテリとしては、リチウムイオン組電池、ニッケル水素組電池等の二次電池の他に、大容量キャパシタ等を用いてもよい。
ケース体22は、動力伝達機構16、第1回転電機18及び第2回転電機20を内部に含む筐体であり、トランスアクスルとも呼ばれる。ケース体22の内部空間には、動力伝達機構16、第1回転電機18及び第2回転電機20の可動部分の潤滑や冷却を行うためのオイルが貯留される。冷媒の機能を兼ね備えるオイルとしては、例えば、ATFと呼ばれる潤滑油を用いることができる。また、ケース体22に貫通孔を形成してオイルを循環供給する冷却回路の一部としてもよい。
冷却システム12は、第1回転電機18及び第2回転電機20の冷却に用いるオイルを循環供給する冷却回路として、第1ポンプであるMOP42を含む第1供給路24と、第2ポンプである電動オイルポンプ(以下「EOP」という)44を含む第2供給路26とを有する。
MOP42及びEOP44は、オイルが貯留されたオイルパン(図示しない)から、ストレーナ58を介してオイルを吸入するように構成される。具体的には、ケース体22の下方側に設けられたストレーナ58に冷媒取込み路38が接続され、冷媒取込み路38は、ストレーナ58の下流側において、MOP42側とEOP44側とに分岐する。即ち、MOP42及びEOP44は、ストレーナ58に対して並列に接続されている。
第1供給路24は、MOP42と、空冷式オイルクーラ(以下「クーラ」という)50と、第1逆止弁54と、MG1供給管36と、第1冷却パイプ(以下「第1パイプ」という)28とを含んで構成されている。
MOP42は、駆動軸がエンジンの出力軸に接続される機械式冷媒ポンプであり、エンジンが動作するときに駆動される。すなわち、エンジンの動力によって車両が走行すると、MOP42は送出口からオイルを送出する。MOP42から送出されたオイルは、動力伝達機構16及び第1回転電機18に供給されて潤滑油として機能するとともに、第1供給路24を介して、第1回転電機18及び第2回転電機20の冷媒として機能する。MOP42は、エンジンの始動に伴って駆動を開始し、エンジンが停止すると駆動を終了する。
第1逆止弁54は、MOP42とクーラ50との間に設けられ、MOP42の送出口側でのオイルの逆流を防止する機能を有する。MOP42が送出したオイルは、第1逆止弁54を通過してクーラ50へ圧送される。
分岐点Pは、MOP42とクーラ50との間で、流路がクーラ50側と第1回転電機18側とに分岐する箇所である。MOP42から送出されたオイルは、分岐点Pにおいて第1回転電機18及び動力伝達機構16側に圧送されると、クーラ50を経由せずに第1回転電機18と動力伝達機構16とに供給される。一方、分岐点Pにおいてクーラ50側に圧送されたオイルは、クーラ50内に流入する。
クーラ50は、オイルと空気(例えば車両の外気)との間で熱交換を行う熱交換器であって、水冷クーラ52よりも高い冷却性能を有する。なお、クーラ50はケース体22の外部に設けられているため、第1供給路24内を圧送されるオイルは、一旦ケース体22の外部を流通してから再びケース体22の内部に戻ることになる。
第1供給路24には、第1供給路24内の油圧を調整する2つのリリーフ弁40が設けられている。各リリーフ弁40は、供給口が第1供給路24に接続され、かつ排出口がケース体22内部に向けて開口している。例えば、2つのリリーフ弁40のリリーフ圧は異なる大きさに設定されている。第1供給路24内のオイルは、過圧時に各リリーフ弁40からケース体22内部に供給されるように構成されている。
第1供給路24は、クーラ50の下流側にある分岐点Qで、第1回転電機18に冷媒を供給するMG1供給管36側と、第2回転電機20に冷媒を供給する第1パイプ28側とに分岐する。MG1供給管36は、ケース体22の内部に設けられている流路であって、第1回転電機18の上方に設けられ、第1回転電機18へ冷媒を吐出する。また、第1パイプ28は、ケース体22の内部に設けられている流路であって、第2回転電機20の上方に設けられ、第2回転電機20へ冷媒を吐出する。これにより、クーラ50で空冷されたオイルは、第1回転電機18及び第2回転電機20のそれぞれに供給される。
第2供給路26は、EOP44と、水冷式オイルクーラ(以下「水冷クーラ」という)52と、第2逆止弁56と、第2冷却パイプ(以下「第2パイプ」という)30とを含んで構成されている。
EOP44は、電動モータ48によって駆動し、制御装置46によって駆動制御される電動冷媒ポンプである。制御装置46は、EOP44を制御することができる周知の電子制御装置により構成され、電動モータ48を制御することによってEOP44を駆動制御する。制御装置46は、ハイブリッド車両搭載に適したコンピュータで構成することができる。制御装置46は、ハイブリッド車両に搭載される他の制御装置、例えば、冷却システム12の各要素を制御する制御装置、或いは、車両全体の制御を行う統合制御装置の一部であってもよい。
水冷クーラ52は、オイルと冷却水との間で熱交換を行う熱交換器である。なお、水冷クーラ52はケース体22の外部に設けられているため、第2供給路26内を圧送されるオイルは、一旦ケース体22の外部を流通してから再びケース体22の内部に戻ることになる。
第2逆止弁56は、水冷クーラ52と第2パイプ30との間に設けられ、EOP44の送出口側でのオイルの逆流を防止する機能を有する。EOP44が送出したオイルは、水冷クーラ52及び第2逆止弁56を通過して、第2パイプ30に圧送される。
第2パイプ30は、ケース体22の内部に設けられている流路であって、第2回転電機20の上方に設けられ、第2回転電機20へ冷媒を吐出する。これにより、水冷クーラ52で水冷されたオイルは、第2回転電機20に供給される。
本実施形態に係る冷却システム12では、冷却性能が異なるクーラ50及び水冷クーラ52で冷却したオイル(冷媒)を別経路で圧送し、それぞれ異なる第1パイプ28及び第2パイプ30から第2回転電機20に供給することにより、第2回転電機20を効果的に
冷却することができる。
図2は、ケース体22に収容された第2回転電機20の周辺の構成を示す図である。図2には、第2回転電機20の回転軸に垂直な断面、特にステータ60の断面が、第1パイプ28及び第2パイプ30の断面とともに示されている。
第2回転電機20は、円筒または円環形状のステータ60と、ステータ60の円筒形状と同軸に配置される円柱または円板形状のロータ62を有する。ロータ62の中心を回転軸64が貫通している。この回転軸64は、第2回転電機20が電動機として動作するときには回転力を外部に出力するための出力軸として機能し、また第2回転電機20が発電機として動作するときには外部からの回転力を入力するための入力軸として機能する。第2回転電機20は、例えば、図示するように回転軸64を横にした状態で使用される。
ステータ60は、内周に周方向に沿って凹凸が交互に配列されたステータコア66を含む。ステータコア66の内周に設けられた凹部分にはコイル導線が収められ、このコイル導線が凸部分を巻くようにされてコイル68が形成されている。コイル68に電力を供給することにより、ステータ60の内側の空間に回転する磁界を形成する。言い換えれば、電力を供給したときに回転磁界が形成されるようにコイル68がステータコア66に巻回されている。
ステータコア66内周の凸部分はティース、凹部分はスロットとも呼ばれる。ステータコア66の端面に隣接する領域では、複数のコイル導線が複雑に束ねられている。このコイル導線の束ねられた部分がコイルエンド70である。コイルエンド70は、上記のようにコイル導線が複雑に束ねられ、導線間には、隙間があいた部分があるが、全体として断面が方形の円環形状であり、ステータコア66の円筒端面に隣接して位置する。図2において、コイルエンド70は、束ねられた個々の導線を描かず、簡略化した円環形状にて示されている。
ロータ62は、全体として円筒形状であり、ステータ60の内周、特にティース先端にわずかの隙間をもって配置される。ロータ62は、ステータ60により形成される回転磁界と相互作用して回転するように、例えば、その外周面または外周面近傍に永久磁石が埋設されている。また、ロータ62の周方向にリラクタンスの異なる部分を設け、これと回転磁界との相互作用にてロータ62を回転させることもできる。回転軸64は、ロータ62と一体に回転するようロータ62に対して固定されている。
ここで、スロット内のコイル導線において発生した熱は、周囲のステータコア66に流れるが、コイルエンド70では周囲に熱の良導体がなく、温度が上昇しやすい。このため、コイルエンド70の効率的な冷却が望まれる。オイルによる冷却は、一般に液体が気体よりも熱伝導性が良いため、効率的な冷却が期待できる。また、上方からオイルを掛け、オイルがコイルエンド70を伝って流れる際に熱を奪うようにすることにより、コイルエンド70をオイルに浸す場合に比べてオイルの使用量を少なくすることができる。
本実施形態では、上述の通り、第2回転電機20の冷却に用いるオイルを供給する冷却経路として2つの系統が設けられる。そして、図2に示す通り、ケース体22内の第2回転電機20の上方に各系統に接続する第1パイプ28及び第2パイプ30を回転軸64と略平行になるように配置し、第1パイプ28及び第2パイプ30にそれぞれ設けられた吐出孔32から第2回転電機20に向けてオイルを供給し、第2回転電機20を冷却する。
図3は、本実施形態に係る冷却パイプの固定構造80の構成を示す図である。図3は、第2回転電機20(図3には示さない)の上方におけるケース体22の水平断面であって、第1パイプ28及び第2パイプ30を含む水平断面を上から見た部分断面図である。本実施形態に係る固定構造80は、図3に示すように、第1パイプ28及び第2パイプ30と、第1パイプ28及び第2パイプ30を接続するブラケット82とを備え、第1パイプ28の先端部28cがケース体22に設けた挿入孔25と接続し、第2パイプ30の先端部30cがケース体22に設けたゴムシール84と接続する。
図4は、ブラケット82により接続された第1パイプ28及び第2パイプ30の構成を示す図である。図4(a)は、第1パイプ28及び第2パイプ30を上方から見た図であり、図4(b)は、図4(a)で示す冷却パイプの固定構造80の水平方向での断面図である。
第1パイプ28は、円筒形状のパイプ本体28aからなり、長手方向の一端が開口して開口端28bを形成し、残りの一端が閉塞している。また、パイプ本体28aの第2回転電機20に対向する側(図3、図4の紙面奥側)には、第2回転電機20に向けてオイルを吐出する複数の吐出孔32が設けられる。
第2パイプ30は、第1パイプ28と同様に、円筒形状のパイプ本体30aからなり、長手方向の一端が開口して開口端30bを形成し、残りの一端が閉塞している。但し、図4に示す通り、第2パイプ30の開口端30bは第1パイプ28の開口端28bとは反対側に設けられている。これにより、第2パイプ30の内部では、第1パイプ28の内部を流れるオイルの向きと対向する向きに、オイルが流れるようになっている。
吐出孔32は、パイプ本体28a,30aの内周部から径方向外側に延びてパイプ本体28a,30aを貫通している。吐出孔32は、例えば図4(b)に示すように、パイプ本体28a,30aの長手方向に沿って、ステータコア66の両側のコイルエンド70に対向する2箇所と、ステータコア66の外周に対向する1箇所に設けられる。なお、パイプ本体28a,30aに設ける吐出孔の数及び配置等はこの例に限定されず、冷却パイプの配置及び冷却性能等を考慮して適宜設定すればよい。
ブラケット82は、第1パイプ28及び第2パイプ30を並列させた状態で、パイプ本体28a,30a同士を接続する部材であり、これにより第1パイプ28、第2パイプ30及びブラケット82は1つの構造体を形成している。本実施形態では、ブラケット82は、長手方向と直交する方向に沿って配置された金属材料からなる板状部材であり、第1パイプ28及び第2パイプ30と一体成形されている。ブラケット82は、それぞれの内周面に各パイプ28,30の外周面が挿入される2つの貫通孔を有する板状部材であってもよい。図4に示す固定構造80では、1つのブラケット82により各冷却パイプが接続されているが、長手方向の複数の箇所に第1パイプ28及び第2パイプ30を接続する部材を設けてもよい。
本実施形態に係る固定構造80では、図3に示すように、ブラケット82により接続された第1パイプ28及び第2パイプ30は、第2回転電機20の上方においてケース体22に固定される。第1パイプ28の先端部28cは、ケース体22に設けた挿入孔25に挿入され、隙間嵌めにより嵌合する。即ち、先端部28cの外周面と挿入孔25の内周面との間にオイルが漏れない程度の隙間を有して、両者が嵌合される。ここで、挿入孔25は、第1パイプ28の長手方向に沿ってケース体22を貫通している。挿入孔25の一方端には第1パイプ28の先端部28cが嵌合している。挿入孔25の他方端には、第1供給路24の一部を構成する供給パイプ(図示しない)が接続し、当該供給パイプから挿入孔25を経由して第1パイプ28にオイルが供給される。
なお、先端部28cの外周面と挿入孔25の内周面は、オイルの種類、嵌合部にかかるオイルの圧力、先端部28cが挿入孔25に挿入される長さ等を考慮しつつ、組み付けの容易性とオイル漏れの防止効果とのバランスを鑑みて、適宜設定すればよい。
一方、第2パイプ30の先端部30cは、ケース体22の内周面に設けたゴムシール84によりケース体22に固定される。ゴムシール84は、円筒形状を有しており、ケース体22の内周面に固定されている。ゴムシール84の内部は、ケース体22を貫通し、第2供給路26の一部を構成する貫通孔27の内部と連通している。第2パイプ30の先端部30cは、パイプ本体30aよりもやや小径の円筒形状を有しており、ゴムシール84の内周面に先端部30cの外周面が接するように、第2パイプ30がゴムシール84に挿入される。これにより、第2供給路26から流れるオイルが、貫通孔27を経て第2パイプ30に供給される。また、第2パイプ30の先端部30cとは長手方向の反対側の先端部30dは、パイプ本体30aよりもやや小径の円筒形状を有し、ケース体22に設けられた凹部23に当接している。
本実施形態に係る第1パイプ28及び第2パイプ30は、以下のようにしてケース体22に組み付けられる。まず、第1パイプ28の先端部28c及び第2パイプ30の先端部30dの位置をケース体22のケース本体22aに設けた挿入孔25及び凹部23のそれぞれに合わせ、挿入する。このとき、第1パイプ28の先端部28cは挿入孔25と隙間嵌めにより接続する。一方、第2パイプ30の先端部30dと凹部23との相対位置が設計に対して多少ずれても先端部30dが当接するように、凹部23のサイズ等は設計されている。次いで、図3に示すように、ボルト及びナットからなる締結部材86により、第1パイプ28及び第2パイプ30を接続するブラケット82をケース本体22aに固定する。その後、ケース体22のカバー22b(例えばリアカバー)を、第2パイプ30の先端部30cとカバー22bに設けたゴムシール84との位置合わせを行いながら、図3に示す締結部材88等を用いて、ケース本体22aに取り付ける。このときに、第2パイプ30の先端部30cの外周面とゴムシール84の内周面とが嵌合する。このようにして、本実施形態に係る固定構造80において、ブラケット82により接続された第1パイプ28及び第2パイプ30がケース体22に固定される。
次に本実施形態に係る冷却パイプの固定構造80の作用及び効果について説明する。
本実施形態の固定構造80では、上記の通り、第1パイプ28の先端部28cはケース体22に設けた挿入孔25と隙間嵌めにより接続し、第2パイプ30の先端部30cはケース体22に設けたゴムシール84と接続する。これにより、ブラケット82により一体化された第1パイプ28及び第2パイプ30が、ケース体22に固定され、保持される。
ここで、ブラケットにより一体化された2本の冷却パイプをケース体に固定する際、各冷却パイプの開口端側の先端部とケース体との接合をいずれも隙間嵌めにより嵌合させる場合を考える。冷却パイプを隙間嵌めにより嵌合する際は、供給するオイルの嵌合部における漏れを防ぐために、嵌め合い公差が小さく設定される。一方、2本の冷却パイプはブラケットにより一体化されているので、2本の冷却パイプの相対位置は固定されている。そのため、冷却パイプを取り付ける際、ケース体22の挿入孔や各冷却パイプ等に、加工誤差や温度による伸縮等に起因する位置ズレがわずかに生じただけでも、2箇所の嵌合位置において、設定された嵌め合い公差の範囲内に同時に収めることができず、冷却パイプの組付けが困難になることがある。特に、本実施形態のように、各冷却パイプの開口端28b,30bを長手方向の反対側に設ける場合は、長手方向の同じ側に設ける場合に比較して、各冷却パイプの接続部が離れているためにより一層困難になる。一方、冷却パイプの組付け時の嵌合を容易にするために嵌め合い公差を大きくすると、嵌合部分の密着性が低下してオイル漏れが生じてしまう。冷媒漏れを防ぐには嵌め合い公差を小さくせざるを得ないため、各冷却パイプ及びケース体22の嵌合構造を高精度に加工しなければならないが、このような高精度の加工は困難になる上に、加工コストの増大を引き起こすため、好ましくない。
それに対して、本実施形態の固定構造80では、2本の冷却パイプの一方の第2パイプ30の開口端側の先端部30cが、ケース体22に設けたゴムシール84に接続する。ゴムシール84は弾性変形するため、第1パイプ28の先端部28cと挿入孔25との嵌合位置を合わせたときに、ゴムシール84の内周面と第2パイプ30の先端部30cの外周面との相対位置にズレが生じたとしても、生じた組み付け公差をゴムシール84の弾性変形によって吸収し、両者を接続することができる。よって、ゴムシール84と接続する第2パイプ30の先端部30cの位置に、自由度を持たせることが可能となる。その結果、第1パイプ28及び第2パイプ30がブラケット82により接続されていても、第1パイプ28及び第2パイプ30をケース体22に容易に組み付けることができる。
また、組み付け性能の向上のためには、複数の冷却パイプをケース体に固定する際、冷却パイプの開口端側の先端部全てをケース体に設けたゴムシールに接続することも考えられる。しかしながら、MOP42によりオイルが供給される第1パイプ28では、MOP42の駆動軸がエンジンの出力軸に接続されていることから、エンジンが高回転で運転すると、第1パイプ28に圧送されるオイルの流量及び圧力が増加することになる。このような圧力変動の大きい冷媒供給路の接合にゴムシールを用いた場合、シール性の長期間の維持が困難になるおそれがある。
それに対して、本実施形態の固定構造80では、MOP42からオイルが供給され、内部を流れるオイルの圧力変動が相対的に大きい第1パイプ28の先端部28cは隙間嵌めにより挿入孔25と嵌合している。これにより、第1パイプ28の先端部28cと挿入孔25との嵌め合い公差を適切な範囲に設定し、オイル漏れを長期間防止することができる。また、EOP44からオイルが供給される第2パイプ30では、EOP44が制御装置46によって駆動制御されており、内部を流れるオイルの圧力変動が相対的に小さいため、第2パイプ30の先端部30cがゴムシール84によりケース体22に固定されていても、組み付け後のシール性を確保することができる。
このように、本実施形態では、オイルの圧力変動が相対的に小さい第2パイプ30の先端部30cをゴムシール84を用いてケース体22に固定することにより、第2パイプ30の固定位置に自由度を持たせ、一体化された2本の冷却パイプのケース体22への組み付けを容易にできるとともに、オイルの圧力変動が相対的に大きい第1パイプ28の先端部28cを隙間嵌めによりケース体22の挿入孔25と嵌合させることで接合部分のシール性を確保することができる。そのため、本実施形態の冷却パイプの固定構造80は、複数の冷却パイプが一体化されてなる冷却パイプ構造の組み付け性の向上と、各冷却パイプにおけるオイル漏れの防止とを両立することができ、ひいては、本実施形態の冷却システム12による第2回転電機20の冷却性能を向上させることができる。
また、本実施形態の冷却パイプの固定構造80では、ブラケット82によってパイプ本体28a,30a同士が接続されて一つの構造体を形成している。従来、冷却パイプの形状の精度、コスト、質量及び製造性等の観点から、一般的に樹脂材料からなる冷却パイプが使用されているが、樹脂材料からなる冷却パイプを成型後に冷却する際、樹脂の収縮により反りが生じることがある。また、冷却パイプをケース体に組み付ける際の応力により、冷却パイプの位置が相対的にねじれることがある。かかる場合、冷却パイプに設けたオイル吐出孔の位置がずれ、設計された冷却性能を満足できないおそれがある。それに対して、本実施形態では、ブラケット82によりパイプ本体28a,30a同士が接続された一体化構造を有するため、2本の冷却パイプが28,30において生じ得る位置ずれが抑制される。その結果、各冷却パイプからのオイルの吐出を適切な位置にある吐出孔32から行い続けることで、第2回転電機20の最も冷却効率の高い部分へのオイルの供給を継続し、高い冷却効率を維持することができる。なお、図4に示す固定構造80では、各パイプ28,30は1つのブラケット82により接続されているが、オイル吐出孔の位置ずれの防止及び冷却性能の効率化をより一層高めるため、長手方向の複数箇所に設けた複数の接続部材により2本の冷却パイプを接続してもよい。
本実施形態の冷却パイプの固定構造80では、上述の通り、2本のパイプ28,30を接続するブラケット82は、金属材料からなる。本実施形態に係る冷却パイプの固定構造80は、図3に示すように、ケース体22を構成するケース本体22a及びカバー22b(例えばリアカバー)のそれぞれと接合している。そのため、ケース本体22aとカバー22bとの組み付けを行う際に、一体化された2本のパイプ28,30に多大な入力が発生する。本実施形態では、金属材料から成るブラケット82を用いて一体化することにより、かかる多大な入力に対する各パイプ28,30の強度を向上することができる。
本実施形態では、第1パイプ28の開口端28bと第2パイプ30の開口端30bとは長手方向の反対側に設けられ、第1パイプ28の内部と第2パイプ30の内部とでオイルが対向する向きに流れるようになっている。例えば、エンジンが高回転になり、MOP42により圧送されて第1パイプ28内を流れるオイルの圧力が増加し、吐出孔32からのオイルの吐出方向が、第1パイプ28内でオイルが流れる方向にずれることが考えられる。このとき、第1パイプ28及び第2パイプ30をオイルの流れる向きが対向するように構成していれば、第2パイプ30内を流れるオイルの圧力を増すことで、第2パイプ30の吐出孔32からのオイルの吐出方向を第1パイプ28とは反対向きにずらすことができる。すると、第1パイプ28でのオイル吐出方向のずれと、第2パイプ30でのオイル吐出方向のずれとが相殺されるので、所望の範囲にオイルを吐出させることができる。
なお、上記の説明では、第1パイプ28へのオイルの圧送をMOP42が行い、第2パイプ30へのオイルの圧送をEOP44が行っているが、複数の機械式オイルポンプを用いて各冷却パイプにオイルを圧送してもよい。その場合も、第2回転電機20にオイルを供給する第1冷却パイプ及び第2冷却パイプのうち、オイルの圧力変動が相対的に小さい冷却パイプの開口端側の先端部とケース体22の挿入孔とをゴムシール84を用いて固定し、オイルの圧力変動が相対的に大きい冷却パイプの開口端側の先端部とケース体22の挿入孔とを隙間嵌めにより嵌合すればよい。なお、複数の機械式オイルポンプを用いてそれぞれの冷媒供給路を通して冷却パイプに供給する場合の両者間の圧力変動の差は、例えば、当該冷媒供給路の経路や内径等が異なることによる圧力損失の差によって生じるものと考えられる。
上記の説明では、第1パイプ28の開口端28bと第2パイプ30の開口端30bとを長手方向の反対側に設けた例を示したが、複数の冷却パイプの開口端を長手方向の同じ側に設けてもよい。さらに、上記の説明では、MOP42からオイルが供給される第1パイプ28と、EOP44からオイルが供給される第2パイプ30のそれぞれが1本ずつ配置された構成を示したが、1つのオイルポンプから並列に配置された2本以上の冷却パイプにオイルを供給する構成であってもよい。