以下、実施形態の電力系統安定化処理装置および電力系統安定化システムを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の電力系統安定化処理装置10を含む電力系統安定化システム1の構成図である。電力系統安定化システム1は、オンライン事前演算型の系統安定化システムである。電力系統安定化システム1は、例えば、中央演算部100と、中央制御部200と、制御部300と、事故検出部400とを備える。また、電力系統安定化処理装置10は、例えば、中央演算部100と、中央制御部200と、制御部300とを備える。ただし、電力系統安定化処理装置10には、必ずしも制御部300が含まれなくてもよい。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD−ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。なお、図1の例において、中央演算部100と中央制御部200とは、一体に構成されていてもよい。なお、電力系統安定化処理装置10は、ディジタルリレーの一部を構成する装置であってもよい。ディジタルリレーとは、電力系統の電圧・電流等のアナログ入力信号をディジタル型のデータに変換した後、送電線など電力系統の設備に発生した落雷などの系統事故を瞬時(例えば数十ミリ秒)に検出して、事故区間を切り離して停電時間を極小化する、より高性能な保護リレー装置のことである。
中央演算部100は、例えば、系統情報収集部110と、系統モデル作成部120と、解析条件設定部130と、安定度判定部140とを備える。
系統情報収集部110は、給電情報網Nを介して電力系統Eから入力された系統情報(給電用オンラインデータ)を収集する。系統情報とは、例えば、電力系統Eの接続状態や、電力の需給状態、潮流状態に関する情報である。電力系統Eは、一定の周期または系統情報の更新周期で、系統情報を出力する。系統情報収集部110は、収集した系統情報を系統モデル作成部120に出力する。系統モデル作成部120は、例えば、系統情報収集部110から入力された系統情報と、予め記録されている制御対象機器情報のデータ及び系統データ情報とに基づいて、現在の系統情報を表す解析用系統モデルを作成する。制御対象機器情報とは、例えば、電力系統安定化システム1によって制御する機器の情報と、制御する機器のそれぞれの電力系統Eに対する状態(例えば、接続状態または遮断状態)の情報である。制御する機器とは、例えば、遮断器や断路器である。系統データ情報とは、例えば、送電線のインピーダンスなどである。また、系統モデル作成部120は、作成した解析用系統モデルを、解析条件設定部130に出力する。
解析条件設定部130は、系統モデル作成部120から入力された解析用系統モデルと、想定される事故種別のデータとに基づいて、解析条件を設定する。以下、想定される事故種別のデータのそれぞれを「想定事故種別」と称する。解析条件とは、例えば、想定事故種別に対して、電力系統E内で電源を制御する複数の機器の組合せなどを含む条件である。また、解析条件設定部130は、設定した解析条件を、安定度判定部140に出力する。安定度判定部140は、解析条件設定部130から入力された解析条件に基づいて、過渡安定度演算を行う。過渡安定度演算とは、例えば、想定される系統事故について安定度計算を繰り返して実施することで、電力系統Eの安定度の向上を図るシミュレーション演算である。安定度判定部140は、解析条件ごとの電力系統Eの安定度を判定して、想定事故種別ごとに、その想定事故種別に係る事故が発生した際に電力系統Eの安定度維持に必要な制御対象機器情報を選択する。以下、想定事故種別ごとに選択された制御対象機器情報の一覧を、「制御テーブル」と称する。なお、上述した中央演算部100の一連の処理は、所定の周期で行われる。所定の周期とは、例えば、系統情報の更新周期である。また、所定の周期は、電力系統安定化システム1が扱う系統の規模や想定事故の種別の数、中央演算部100の処理能力に応じて設定されてもよい。
中央制御部200は、例えば、制御テーブル記憶部210と、系統接続状態判定部220と、系統接続状態読替部230と、制御内容選択部240とを備える。中央演算部100は、中央制御部200の制御テーブル記憶部210に、制御テーブルを記憶させる。制御テーブル記憶部210は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性の記憶装置と、RAM(Random Access Memory)、レジスタ等の揮発性の記憶装置によって実現される。制御テーブル記憶部210は、例えば、電力系統安定化処理装置10の外部にある、外部記憶装置でもよい。制御テーブル記憶部210には、例えば、前述した制御テーブルや、その他情報などが記憶される。
系統接続状態判定部220は、制御テーブル記憶部210により記憶されている制御テーブル作成時の系統要素の構成と、系統事故発生時において後述する事故検出部400から入力された系統要素の構成とが一致するか否かを判定する。系統要素とは、例えば、電力系統Eを構成する回線と、回線ごとに備える交流電流用送電線を構成する相である。制御テーブルは、例えば系統要素のそれぞれの状態によって、想定事故種別を示すものである。系統接続状態判定部220は、系統要素の構成が一致すると判定した場合、対応する制御テーブルのレコードを制御内容選択部240に出力する。系統接続状態判定部220は、系統要素の構成が一致しないと判定した場合、系統接続状態読替部230に、制御テーブルと、事故検出部400から入力された系統要素の構成および状態とを出力する。
系統接続状態読替部230は、所定の読替規則に基づいて、系統接続状態判定部220から入力された系統要素の構成を読み替えることで、制御テーブルから一つの想定事故種別を選択する。所定の読替規則とは、例えば、制御テーブルの中から、系統接続状態判定部220から入力された系統要素の構成と最も類似する想定事故種別を選択する規則や、制御テーブルの中から最も過酷な系統事故を想定している想定事故種別を選択する規則である。系統接続状態読替部230は、制御内容選択部240に、制御テーブルの一つのレコードを出力する。
制御内容選択部240は、系統接続状態判定部220または系統接続状態読替部230から入力された制御テーブルのレコードに基づいて、制御対象機器情報を選択し、制御部300に出力する。制御部300は、制御対象機器に、制御情報を出力する。
事故検出部400は、事故通知処理を行う。事故通知処理とは、例えば、系統接続状態判定部220に、電力系統Eの系統事故が発生したことを通知すると同時に、最新の電力系統Eの制御対象機器情報および系統要素の構成を出力する処理である。
以下、図2と図3を用いて、系統接続状態読替部230による制御テーブルの読替処理についてより詳細に説明する。図2は、制御テーブル記憶部210が記憶している制御テーブルの一例を示す図である。図2の例において、回線1Lおよび2Lのそれぞれは、電力系統Eに含まれる一単位の回線である。回線1Lおよび2Lのそれぞれは、3相交流の送電要素であるR相、S相、T相を備えているものとする。系統要素の構成は、上述の回線および相で表される。また図2に示すように、制御テーブルは、想定事故種別(系統要素である回線1Lおよび2Lの3相交流電流用送電線のそれぞれが、健全相または事故相である状態)と、機器C1〜C4のうち制御対象となる機器との対応付けを表すデータである。図2において、制御テーブルのレコードは、「ケース」と表記されている。例えば、ケース1−3は、“想定事故種別が回線1LのR相が事故相であり、回線1LのS相およびT相が健全相であり、回線2LのR相およびT相が健全相であり、回線2LのS相が事故相の状態”であるとき、“制御対象機器がC3”であることを表す。
図2の例では、ケースごとに、2回線(1L,2L)のそれぞれの相の状態と、2回線のそれぞれのR相、S相、T相の状態に対応する制御対象機器情報とが関連付けられている(ケース1−1〜ケース1−32)。また、図2において、ケース1−33〜ケース1−36では制御対象機器情報の設定が存在しない。これは、図2に示す制御テーブルが、安定度判定部140で作成された段階では、回線1Lおよび2Lの両方が接続状態にあり、回線2Lが休止状態にある系統要素の構成は考慮されなかった場合に発生し得る。
図3は、系統接続状態読替部230による制御テーブルの読替処理の一例を説明するための図である。図3の上図は、図2の制御テーブルのうち、ケース1−33を抜粋したものである。図3の上図は、ケース1−33が、“想定事故種別が回線1LのR相が事故相であり、回線1LのS相およびT相が健全相であり、回線2Lが休止状態である状態で、R相、S相およびT相は不使用”であることを表す。また図3の上図は、ケース1−33の想定事故種別に対応する制御対象機器情報の設定が存在しないことを表す。
また、図3の下図は、読替処理の結果、ケース1−33を、所定の関係にあるケース1−8に読み替えた様子を示す図である。所定の関係とは、例えば、系統要素の構成が部分一致すると共に、完全一致しない関係のことである。図3の下図は、ケース1−8が、“想定事故種別が回線1LのR相が事故相であり、回線1LのS相およびT相が健全相であり、回線2LのR相、S相およびT相が事故相である状態”であることを表す。また図3の下図は、ケース1−8の想定事故種別に対応する制御対象機器がC3およびC4であることを表す。
例えば、事故検出部400は、図3の上図に示すケース1−33と同じ系統要素の構成の系統事故を検知したとする。この場合、系統接続状態判定部220は、事故検出部400が検知した系統事故の系統要素の構成と、制御テーブル記憶部210に記憶された制御テーブルの想定事故種別とを比較して、対応するケース1−33の制御対象機器情報の取得を試みる。しかしながら、ケース1−33には、制御対象機器情報に関する設定が存在しない。そこで、系統接続状態判定部220は、系統接続状態読替部230に、ケース1−33の想定事故種別と、制御テーブルとを出力する。
系統接続状態読替部230は、図2に示す制御テーブルの中から、ケース1−33に対する好適な読替対象を選択する。例えば、系統接続状態読替部230は、ケース1−33の回線2Lの不使用相を、回線2LのR相、S相およびT相がすべて事故相であるものと読み替え、ケース1−8の制御対象機器情報を選択する。なお、図2および図3に挙げた例では、好適な読替対象を選択する所定の読替規則として、不使用の相を事故相に読み替え、より過酷な想定事故種別のケースを選択する読替処理の例を示したが、他の読替規則を用いてもよい。
以下、図4と図5を用いて、系統接続状態読替部230による制御テーブルの読み替えの他の具体例を示す。図4は、制御テーブル記憶部210が記憶している制御テーブルの他の一例を示す図である。図4は、図2で示した制御テーブルの一例と同様に、回線1Lおよび2Lの3相交流電流用送電線のそれぞれが、健全相または事故相である場合に、機器C1〜C4のうち制御対象機器情報との対応付けが表形式で整理されている。図4に示す通り、ケースごとに、2回線(1L、2L)のそれぞれの相の状態と、対応する制御対象機器情報とが関連付けられているが(ケース2−33〜ケース2−36)、ケース2−1〜ケース2−32は制御対象機器情報の設定が存在しない。これは、図4に示す制御テーブルが、安定度判定部140で作成された段階では、回線1Lが接続状態であると同時に回線2Lが休止状態であり、回線1Lおよび2Lの両方が接続状態にある想定事故種別は考慮されなかった場合に発生し得る。
図5は、系統接続状態読替部230による制御テーブルの読替処理の他の一例を説明するための図である。図5の上図は、図5の制御テーブルのうち、ケース2−2を抜粋したものである。図5の上図は、ケース2−2が、“想定事故種別が回線1LのR相が事故相であり、回線1LのS相およびT相が健全相であり、回線2LのR相およびS相が健全相であり、回線2LのT相が事故相”であることを表す。また図5の上図は、ケース2−2の想定事故種別に対応する制御対象機器情報の設定が存在しないことを表す。
また、図5の下図は、読替処理の結果、ケース2−2をケース2−34に読み替えた様子を示す図である。図5の下図は、ケース2−34が、“想定事故種別が回線1LのR相およびT相が事故相であり、回線1LのS相が健全相であり、回線2Lが休止状態である状態で、R相、S相およびT相は不使用”であることを表す。また図5の下図は、ケース2−34の想定事故種別に対応する制御対象機器が、C2、C3およびC4であることを表す。
例えば、事故検出部400は、図5の上図に示すケース2−2と同じ系統要素の構成の系統事故を検知したとする。この場合、系統接続状態判定部220は、事故検出部400が検知した系統要素の構成と、制御テーブル記憶部210に記憶された制御テーブルの想定事故種別とを比較して、対応するケース2−2の制御対象機器情報の取得を試みる。しかしながら、ケース2−2には、制御対象機器情報に関する設定が存在しない。そこで、系統接続状態判定部220は、系統接続状態読替部230に、ケース2−2の想定事故種別と、制御テーブルとを出力する。
系統接続状態読替部230は、図4に示す制御テーブルの中から、ケース2−2に対する好適な読替対象を選択する。例えば、系統接続状態読替部230は、ケース2−2の回線1Lおよび2Lの全6相のうち2相が事故相であることから、同様に全6相のうち2相が事故相であるケース2−34またはケース2−35のいずれかを読替対象の候補に選択する。また、例えば、系統接続状態読替部230は、予め設定された読替規則に基づいて、ケース2−2の回線2LのT相の事故相を、回線1LのT相の事故相と読み替える方が好適であると判定し、ケース2−34の想定事故種別と制御対象機器情報との組み合わせを選択する。なお、図4および図5に挙げた例では、好適な読替対象を選択する所定の読替規則として、事故相の総数に基づいて、ケースを選択する読替例を示したが、他の読替規則を用いてもよい。
このような構成によって、電力系統安定化システム1は、系統要素の構成が変化するような系統切替の直後に系統事故が発生した場合であって、事故検出部400から出力された系統事故の系統要素の構成と一致する想定事故種別に係る系統要素の構成が制御テーブルに存在しない場合にも、系統接続状態読替部230により、予め設定した読替規則に基づいて好適な制御対象機器情報を選択するため、適切な制御を行うことができる。
図6は、電力系統安定化システム1による、制御テーブルの読替処理を伴う系統事故発生時の処理の流れの一例を示す図である。
まず、事故検出部400は、電力系統Eの系統情報を収集する(ステップS100)。次に、事故検出部400は、系統情報の収集結果から系統事故が発生したか否かを判定する(ステップS102)。事故検出部400は、系統事故が発生したと判定した場合、系統接続状態判定部220に制御対象機器情報および系統要素の構成を出力する。事故検出部400は、系統事故が発生しなかったと判定した場合、電力系統Eの事故発生を再び検知するまで待機する。次に、系統接続状態判定部220は、制御テーブル記憶部210から制御テーブルを呼び出す(ステップS104)。次に、系統接続状態判定部220は、制御テーブル記憶部210で記憶している制御テーブル作成時の系統要素の構成と、事故検出部400から入力された系統事故発生時の系統要素の構成とが一致するか否かを判定する(ステップS106)。系統接続状態判定部220は、系統要素の構成が一致すると判定した場合、制御内容選択部240に該当する制御テーブルのレコードを出力する。系統接続状態判定部220は、系統要素の構成が一致しないと判定した場合、系統接続状態読替部230に、該当する系統事故の系統要素の構成を出力する。次に、系統接続状態読替部230は、系統接続状態判定部220により出力された系統事故の系統要素の構成に基づいて読替処理を行い、制御内容選択部240に該当する制御テーブルのレコードを出力する(ステップS108)。次に、制御内容選択部240は、該当する制御テーブルのレコードに基づいて、制御対象機器情報を選択する(ステップS110)。次に、制御部300は、制御対象機器に対して制御情報を出力する(ステップS112)。これにより一連の処理を終了する。
図7は、電力系統の状態と、中央演算装置および中央制御装置のそれぞれの制御テーブルの状態との関係を説明するための図である。
図7(1)は、電力系統の系統状態の変化するタイミングを示している。図7(2)は、中央演算装置の制御テーブルの状態が変化するタイミングを示している。図7(3)は、中央制御装置の制御テーブルの状態が変化するタイミングを示している。図7(4)は、図7(1)〜図7(3)で示した条件下における中央制御装置の制御テーブルが有効か否かを切り替えるタイミングを示している。
なお、図7の例では、上述した第1の実施形態における中央演算部100および中央制御部200の機能を備えていない従来の中央演算装置および中央制御装置を示している。したがって、制御テーブルの示す系統状態が電力系統の状態の変化と一致しない時間帯が発生している。以下、図7を用いて、第1の実施形態の電力系統安定化システム1が効力を発揮するタイミングについて説明する。
図7の例において、電力系統は、例えば、図2〜図5で示した制御テーブルの例と同様に、複数の機器を接続する2回線を備えているものとする。例えば、図7(1)は、時間t0から時間t1までの間が、2回線(1L、2L)のうちいずれか一方が休止し、他方が接続状態であることを示す。また、図7(1)において、電力系統は、時間t1以降において2回線が接続状態であることを示す。
図7(2)は、中央演算装置が電力系統の接続情報に基づいて、制御テーブルを更新するタイミングを示している。例えば、中央演算装置は、時間t3の時、時間t0から時間t3までの電力系統Eの系統情報に基づいて、制御テーブルの作成を開始する。中央演算装置は、例えば、時間t3の時点で、電力系統が状態2(2回線)である場合に安定度判定を行い、状態2に対応する制御テーブルの作成を開始する。中央演算装置は、時間t4の時点で、状態2に対応する制御テーブルの作成を完了する。
図7(3)は、中央制御装置が、中央演算装置から制御テーブルを受信するタイミングを示している。例えば、中央制御装置は、時間がt0およびt5に到達するタイミングで制御テーブルを受信する。
図7(4)は、例えば、時間t0〜t1までの間や、時間t5以降の時間において、中央制御装置の制御テーブルが電力系統の状態を反映しており、制御テーブルに基づいて適切な制御を行うことができる状態であることを示している。一方、時間t1〜t5までの間は、制御テーブルと系統情報が異なっており、制御テーブルに電力系統の状態が反映されていない状態であることを示している。このような状態の変化において、例えば、時間t2に到達したタイミングで事故発生を検知した場合、制御テーブルに基づいて適切な制御を行うことができない可能性がある。
これに対し、第1の実施形態の電力系統安定化システム1によれば、図7の時間t2に示すような、制御テーブルと系統情報が異なっているタイミングであっても、必要に応じて制御テーブルの読替処理を行うことで、代替の制御情報を選択することができ、適切な制御を行うことができる。
以上説明した第1の実施形態の電力系統安定化システム1によれば、制御テーブルに制御対象機器情報が設定されていない系統要素の系統事故が発生した場合にも、代替の制御情報を選択することができ、適切な制御を行うことができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の電力系統安定化システム2について説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。後述する他の実施形態についても同様とする。
図8は、第2の実施形態の電力系統安定化システム2の構成図である。電力系統安定化システム2の電力系統安定化処理装置10Aは、第1の実施形態の電力系統安定化処理装置10と比較して、中央制御部200Aに切替検出部250と、制御テーブル更新部260とをさらに備える。従って、以下では、主に、切替検出部250と、制御テーブル更新部260とを中心に説明する。
第2の実施形態において、事故検出部400は、切替検知処理を行い、処理結果を切替検出部250に出力する。切替検知処理とは、切替検出部250に、電力系統Eの系統要素の構成や、制御対象機器情報の状態が変更されたことを通知して、最新の電力系統Eの制御対象機器情報および系統要素の構成を出力する処理である。切替検出部250は、事故検出部400から入力された、状態が変更されたことの通知に基づいて、系統接続状態判定処理を行う。系統接続状態判定処理とは、例えば、制御テーブル作成時の系統要素の構成と制御対象機器情報との組み合わせと、切り替え後の系統要素の構成と制御対象機器情報との組み合わせとが異なるか否かを判定する処理である。切替検出部250は、系統要素の構成と制御対象機器情報との組み合わせが異なると判定した場合、制御テーブルを事前に読み替えるために、系統接続状態読替部230に、系統要素の構成と制御対象機器情報との組み合わせと、制御テーブルとを出力する。切替検出部250は、系統要素の構成と制御対象機器情報との組み合わせが同一か否かを判定し、同一であると判定した場合、事故検出部400からの系統事故の通知や、更なる状態が変更されたことの通知に備えて待機する。
系統接続状態読替部230は、所定の更新規則と、切り替え後の系統要素の構成と制御対象機器情報との組み合わせとに基づいて、制御テーブルの読替処理を行い、読替処理の結果を制御テーブル更新部260に出力する。制御テーブル更新部260は、系統接続状態読替部230から入力された読替処理の結果を反映し、制御テーブルを更新する。
このように、電力系統安定化システム2は、切替検知処理がなされたタイミングで、制御テーブル更新部260に、系統要素の構成および制御対象機器情報の変更が発生した状態で系統事故が発生する事を想定し、制御テーブルを事前に読み替える。これにより、電力系統安定化システム2は、事故検出部400から出力された系統事故の系統要素の構成が読替処理前の制御テーブルに存在しない場合や、系統切替により制御対象を変更した方がよい場合にも、読替処理後の制御テーブルに基づいて好適な制御情報を選択することができ、電力系統Eに対して適切な制御を行うことができる。
図9は、電力系統安定化システム2による、制御テーブルの読替処理を伴う系統事故発生時の処理の流れの一例を示す図である。
まず、事故検出部400は、切替検知処理を行い、切替検出部250に通知する(ステップS200)。次に、切替検出部250は、制御テーブル記憶部210から制御テーブルを呼び出し、系統要素の構成および制御対象機器情報が異なるか否かを判定する(ステップS202)。次に、切替検出部250は、系統接続状態判定処理の結果、系統要素の構成および制御対象機器情報が異なると判定した場合、制御対象機器情報の切替発生時の系統要素の構成および制御対象機器情報と制御テーブルを系統接続状態読替部230に出力する。切替検出部250は、系統要素の構成および制御対象機器情報が一致すると判定した場合、電力系統Eの事故発生を検知するまで待機する。次に、系統接続状態読替部230は、制御テーブルの読替処理を行い、制御テーブル更新部260に読替処理の結果を出力する。(ステップS204)。次に、制御テーブル更新部260は、制御テーブルの更新処理を行い、系統接続状態読替部230の読替処理の結果を反映する(ステップS206)。次に、事故検出部400は、電力系統Eの系統情報を収集する(ステップS208)。事故検出部400は、系統情報の収集結果から系統事故が発生したか否かを判定する(ステップS210)。事故検出部400は、系統事故が発生したと判定した場合、系統接続状態判定部220に制御対象機器情報および系統要素の構成を出力する。事故検出部400は、系統事故が発生しなかったと判定した場合、事故検出部400から新規の通知を入力されるまで待機する。次に、制御内容選択部240は、事故発生時の系統要素の構成に基づいて、制御対象機器情報を選択する(ステップS212)。次に、制御部300は、制御対象機器情報に対して制御情報を出力する(ステップS214)。これにより一連の処理を終了する。
ここで、上述した図7を用いて、第2の実施形態の電力系統安定化システム2が効力を発揮するタイミングについて説明する。電力系統安定化システム2によれば、系統切替を検知した時間t1に制御テーブルの読替処理を開始する。そのため、制御テーブルと系統情報とが異なる時間(時間t1〜t5)を短くすることができる。
上述したように第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する他、系統接続状態読替部230で複雑な読み替えを要し、読替処理に一定時間を要する場合であっても、系統切替を事前に検知し、制御テーブル更新部260により制御テーブルの読替処理を予め行うことで、系統切替発生後に系統事故の発生した場合に、より速やかに適切な制御を行うことができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態の電力系統安定化システム3について説明する。
図10は、第3の実施形態の電力系統安定化システム3の構成図である。電力系統安定化システム3は、電力系統安定化処理装置10Bの中央制御部200Bに、第2の実施形態の中央制御部200Aが備える系統接続状態読替部230に代えて、補足制御情報選択部270を備える。従って、以下では、主に、補足制御情報選択部270を中心に説明する。
第3の実施形態において、制御テーブル記憶部210は、安定度判定部140から制御テーブル記憶部210に最新の制御テーブルが入力されるタイミングで、補足制御情報選択部270に最新の制御テーブルを出力する。補足制御情報選択部270は、電力系統Eが取り得るすべての想定事故種別のうち、制御テーブルに制御対象機器情報の設定が存在しない想定事故種別を抽出する。補足制御情報選択部270は、所定の条件に基づいて、抽出した想定事故種別の読替対象となる、好適な想定事故種別の制御対象機器情報を制御テーブルから選択する。補足制御情報選択部270は、制御テーブル更新部260に抽出した想定事故種別と、選択した読替対象となる制御対象機器情報を出力する。制御テーブル更新部260は、補足制御情報選択部270から入力された想定事故種別と制御対象機器情報との組み合わせを制御テーブルに追加・更新し、制御テーブル記憶部210に出力し、記憶させる。
以下、図11と図12を用いて、補足制御情報選択部270による想定事故種別の抽出処理と読替処理の具体例を示す。図11は、第3の実施形態における制御テーブル記憶部210が記憶している制御テーブルの一例を示す図である。図11は、図2および図4で示した制御テーブルの一例と同様に、回線1Lおよび2Lの3相交流電流用送電線のそれぞれが、健全相または事故相である場合に、機器C1〜C4のうち制御対象となる機器との対応付けが表形式で整理されている。
図11に示す通り、ケース3−1〜ケース3−32は制御対象機器情報の設定を保持しているが、ケース3−33〜ケース3−40は制御対象機器情報の設定が存在しない。これは、図11に示す制御テーブルが、図2に示した第1の実施形態の制御テーブルの一例と同様に、安定度判定部140で作成された段階では、回線1Lおよび2Lの両方の回線が接続状態にあり、回線1Lおよび2Lのいずれか一方が休止状態にある想定事故種別は考慮されなかった場合に発生し得る。
図12は、補足制御情報選択部270による想定事故種別の読替の一例を示す図である。図12の上図は、図12の制御テーブルのうち、ケース3−33〜ケース3−40を抜粋したものである。また、図12の下図は、読替処理の結果、ケース3−33〜ケース3−40をそれぞれ読み替えた様子を示す図である。
例えば、補足制御情報選択部270は、図12の上図に示すケース3−33の回線2Lの不使用相を、回線2LのR相、S相およびT相がすべて事故相であるものと読み替え、ケース3−8を選択する。なお、図11および図12に挙げた例では、好適な読替対象を選択する所定の読替規則として、不使用の相を事故相に読み替える、より過酷な系統事故のケースを選択する読替処理の例を示したが、他の読替規則を用いてもよい。
このような構成によって、電力系統安定化システム3は、制御テーブル記憶部210が新たな制御テーブルを記憶するタイミングで、補足制御情報選択部270にて制御テーブルの不足要素を抽出し、事前に読替処理を行うことで、事故検出部400から出力された系統事故に対応する制御対象機器情報が読替処理前の制御テーブルに存在しない場合にも、読替処理後の制御テーブルに基づいて好適な制御情報を選択することができ、適切な制御を行うことができる。
図13は、電力系統安定化システム3による、制御テーブルを事前に読み替える処理を伴う系統事故発生時の処理の流れの一例を示す図である。
まず、制御テーブル記憶部210は新たな制御テーブルを、補足制御情報選択部270に出力する(ステップS300)。次に、補足制御情報選択部270は、制御テーブル記憶部210から入力された制御テーブルから、制御対象機器情報の設定が存在しない想定事故種別を抽出する(ステップS302)。次に、補足制御情報選択部270は、抽出した想定事故種別に対して、読替処理を行い、制御テーブル更新部260に出力する(ステップS304)。次に、制御テーブル更新部260は、制御テーブルの更新を行い、補足制御情報選択部270の読替処理結果を反映する(ステップS306)。次に、事故検出部400は、電力系統Eの系統情報を収集する(ステップS308)。次に、事故検出部400は、系統情報の収集結果から系統事故が発生したか否かを判定する(ステップS310)。次に、制御内容選択部240は、事故発生時の系統要素の構成に基づいて、制御対象機器情報を選択する(ステップS312)。次に、制御部300は、制御対象機器情報に対して制御情報を出力する(ステップS314)。これにより一連の処理を終了する。
ここで、上述した図7を用いて、第3の実施形態の電力系統安定化システム3が効力を発揮するタイミングについて説明する。電力系統安定化システム3によれば、例えば、制御テーブルを受信した時間t0に制御テーブルの読替処理を開始することができる。従って、電力系統安定化システム3によれば、制御テーブルと系統情報とが異なる時間(時間t1〜t5)を、電力系統安定化システム2と比較して、更に短くすることができる。
上述したように第3の実施形態によれば、補足制御情報選択部270により、発生し得るすべての想定事故種別の制御対象機器情報を、制御テーブルに予め補足することで、第1の実施形態および第2の実施形態と比較して、系統切替または系統事故の発生後に読替処理を行う時間が不要となり、更に速やかに好適な制御を行うことができる。
また、第3の実施形態によれば、例えば電力系統Eは、再閉路処理の実施時などにより系統切替が連続して複数回発生しえるような場合であり、最新の系統接続情報を反映した安定度判定部140での制御テーブルの作成が未済の状況下であっても、制御テーブルの読替処理を切替発生の都度実施する必要がないため、読替処理を適切な回数に抑えることができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態の電力系統安定化システム4について説明する。
図14は、第4の実施形態の電力系統安定化システム4の構成図である。電力系統安定化システム4の電力系統安定化処理装置10Cは、第3の実施形態の電力系統安定化処理装置10Bと比較して、電力系統安定化処理装置10Cの中央制御部200Cの補足制御情報選択部270の処理結果の出力先が、中央演算部100の系統モデル作成部120になっている点が異なる。これは、一般的な電力系統安定化システムでは、中央演算装置と中央制御装置とをそれぞれ別の装置で構成され、かつ、中央演算装置が、中央制御装置と比較して、より処理性能の高い装置によって構成されることがあることを鑑みて、電力系統安定化システム4における読替処理を可能な限り中央演算部100に集約したものである。以下では、主に、安定度判定部140と補足制御情報選択部270とを中心に説明する。
第4の実施形態において、補足制御情報選択部270は、読替対象となる、想定事故種別と、対応する制御対象機器情報との組み合わせを系統モデル作成部120に出力する。系統モデル作成部120は、入力された想定事故種別と、対応する制御対象機器情報との組み合わせとに基づいて、解析用系統モデルを再作成し、解析条件設定部130に出力する。解析条件設定部130は、解析条件を設定し、安定度判定部140に出力する。安定度判定部140は、解析条件設定部130から入力された解析条件に基づいて、過渡安定度演算を行い、補足制御情報選択部270から入力された想定事故種別と制御対象機器情報との組み合わせを制御テーブルに追加・更新し、追加・更新された制御テーブルを制御テーブル記憶部210に記憶させる。なお、上述の解析条件は、補足制御情報選択部270から制御テーブルの追加・更新の元となる情報に基づいて設定されることから、制御テーブルを作成する場合に比べて、処理負荷が軽減されるような簡略化した解析条件としてもよい。
このような構成によって、電力系統安定化システム4は、制御テーブル記憶部210が新たな制御テーブルを記憶するタイミングで、補足制御情報選択部270にて制御テーブルの不足要素を抽出し、事前に読替処理を行った後、安定度判定部140にて制御テーブルを更新することで、第3の実施形態の電力系統安定化システム3と比較して、制御テーブルの更新に要する時間をより短縮することできることから、使用可能な制御テーブルが存在しない時間をより短縮することができる。
上述したように第4の実施形態によれば、補足制御情報選択部270により、発生し得るすべての想定事故種別の制御対象機器情報を、安定度判定部140にて制御テーブルに補足することで、第3の実施形態と比較して、制御テーブルの更新に要する時間を短縮することができる。また、第3の実施形態と比較して、制御テーブルの更新・追加時にも安定度判定部140による過渡安定度演算を行うことにより、より高信頼の制御テーブルを作成することができる。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態の電力系統安定化システム5について説明する。
図15は、第5の実施形態の電力系統安定化システム5の構成図である。電力系統安定化システム5の電力系統安定化処理装置10Dは、第1の実施形態の電力系統安定化システム1の電力系統安定化処理装置10が備える中央演算部100と比較して、系統モデル作成部120に現状モデル作成部120aと推定モデル作成部120bとを備え、解析条件設定部130に現状解析条件設定部130aと推定解析条件設定部130bとを備え、安定度判定部140に現状安定度判定部140aと推定安定度判定部140bとを備える点が異なる。以下では、主に、中央演算部100Dを中心に説明する。
第5の実施形態において、系統モデル作成部120は、系統情報収集部110から入力された系統情報と、予め記録されている制御対象機器情報のデータを、現状モデル作成部120aと推定モデル作成部120bとに出力する。
現状モデル作成部120aは、系統モデル作成部120から入力された系統情報と、予め記録されている制御対象機器情報のデータとに基づいて、現状の系統情報を表す解析用系統現状モデルを作成する。現状モデル作成部120aは、系統モデル作成部120に、作成した解析用系統現状モデルを出力する。
また、系統モデル作成部120は、推定モデル作成部120bに、現状モデル作成部120aが作成した解析用系統現状モデルを出力する。推定モデル作成部120bは、系統モデル作成部120から入力された解析用系統現状モデルを用いて、将来において想定される系統切替を想定して、切替発生時の接続情報および潮流状態を含む、将来の系統情報を表す解析用系統将来モデルを作成する。推定モデル作成部120bは、系統モデル作成部120に、作成した解析用系統将来モデルを出力する。系統モデル作成部120は、解析用系統現状モデルと解析用系統将来モデルとを、解析条件設定部130に出力する。
解析条件設定部130は、系統モデル作成部120から入力された解析用系統現状モデルを現状解析条件設定部130aに出力する。現状解析条件設定部130aは、解析用系統現状モデルと、予め記録されている系統要素のデータとに基づいて、現状解析条件を設定する。現状解析条件設定部130aは、現状解析条件を解析条件設定部130に出力する。
また、解析条件設定部130は、系統モデル作成部120から入力された解析用系統将来モデルを推定解析条件設定部130bに出力する。推定解析条件設定部130bは、解析用系統将来モデルと、予め記録されている系統要素のデータとに基づいて、推定解析条件を設定する。推定解析条件設定部130bで用いる系統要素の構成は、現状解析条件設定部130aで用いられなかった系統要素の構成のすべてを含む。推定解析条件設定部130bは、推定解析条件を解析条件設定部130に出力する。解析条件設定部130は、現状解析条件と推定解析条件とを、安定度判定部140に出力する。
安定度判定部140は、解析条件設定部130から入力された現状解析条件を、現状安定度判定部140aに出力する。現状安定度判定部140aは、解析条件設定部130から入力された現状解析条件に基づいて、過渡安定度演算を行い、想定事故種別に対応する制御対象機器情報が設定されるよう、制御テーブルの基となるデータを作成し、安定度判定部140に出力する。
また、安定度判定部140は、解析条件設定部130から入力された推定解析条件を、推定安定度判定部140bに出力する。推定安定度判定部140bは、解析条件設定部130から入力された推定解析条件に基づいて、過渡安定度演算を行い、想定事故種別に対応する制御対象機器情報が設定されるように制御テーブルの基となるデータを作成し、作成したデータを安定度判定部140に出力する。ここで、推定安定度判定部140bが出力する制御テーブルの元となるデータは、現状安定度判定部140aが出力する制御テーブルの元となるデータには存在しないデータを含み、補足するものである。
安定度判定部140は、現状安定度判定部140aから入力された制御テーブルの基となるデータと、推定安定度判定部140bから入力された制御テーブルの基となるデータとを集約し、制御テーブルを作成する。安定度判定部140によって作成された制御テーブルは、すべての想定事故様相に対して、制御対象機器情報が設定される。
ここで、上述した図7を用いて、第5の実施形態の電力系統安定化システム5が効力を発揮するタイミングについて説明する。電力系統安定化システム5によれば、中央演算部100Dの作成する制御テーブルは、例えば、少なくとも状態1および状態2の両方の状態を反映する。従って、電力系統安定化システム5によれば、制御テーブルと系統情報が異なる時間(時間t1〜t5)は存在しなくなる。
上述したように第5の実施形態によれば、発生し得るすべての想定事故様相を含む制御テーブルを予め用意しておくことで、第1から第4の実施形態と比較して、中央制御部200Dによる制御テーブルの読替処理が不要になるため、より速やかに、かつ、より好適な制御を行うことができる。
上記各実施形態における構成要素は、以下のような配置で実装されることができる。図16は、電力系統安定化システムSと、電力系統Eと、給電情報網Nとの関係を表す概念図である。電力系統安定化システムSは、上述の電力系統安定化システム1〜5のいずれでもよい。また、電力系統安定化システムSは、上述の電力系統安定化システム1〜5に示したそれぞれの構成を併せ持っていてもよい。
図16に示す通り、電力系統Eの給電情報網Nと接続する電力系統安定化システムSは、例えば、中央演算部100Eと、中央制御部200Eと、複数の電気所1〜Mのそれぞれに配置されている制御・事故検出部300E−1〜300E−Mとを備える。電気所とは、例えば、変電所である。以下、各電気所および各制御装置を特に区別しない場合、制御・事故検出部300Eと称する。なお、制御・事故検出部300Eは、上述の第1の実施形態〜第5の実施形態で示した、制御部300と事故検出部400との機能を併せ持つものである。
例えば、制御・事故検出部300E−1は、電気所1での系統事故を検知し、中央制御部200Eに、事故情報を出力する。中央制御部200Eは、中央演算部100Eから入力された制御情報と、制御・事故検出部300E−1から入力された事故情報とを照らし合わせ、電力系統Eの安定化のための制御処理の対象設備を特定する。例えば、制御情報には、制御・事故検出部300E−1において断線が発生したという事故情報が検出された場合に、電気所2が備える図示しない遮断器の制御を行うという情報が設定されているとする。中央制御部200Eは、制御テーブルに基づいて、制御・事故検出部300E−2に遮断器の制御の命令を出力する。制御・事故検出部300E−2は、中央制御部200Eから入力された遮断器の制御の命令に基づいて、対象制御機器に制御の命令を出力する。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、制御テーブルの読替機能を持つことにより、系統切替の直後に発生した系統事故で、制御テーブルに想定事故種別に対応する制御対象機器情報が存在しない場合であっても過制御または無制御の状態とならないようにできる。
また、以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、制御テーブルの作成または更新段階で、想定されるすべての想定事故種別に対応する制御テーブルを持つことにより、複数回の系統切替の後に検知される電力系統の系統事故のような場合であっても、好適な安定化制御を行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。