JP2019124234A - 内燃機関のクランク軸用主軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】内燃機関の運転時にジャーナル部との接触による摩擦損失を低減できる主軸受を提供すること。【解決手段】本発明によれば、内燃機関のクランク軸のジャーナル部を回転自在に支持するための主軸受であって、互いに組み合わされて円筒形状を構成する一対の上側半割軸受および下側半割軸受を有し、各半割軸受は、半割軸受の周方向中央部を含む主円筒部を有し、主円筒部は、その径方向内側に摺動面を有し、また各半割軸受は、摺動面の周方向両側に、主円筒部よりも壁厚が薄くなるように形成されたクラッシュリリーフを有し、上側半割軸受のみが、周方向に延びる油溝をその内周面に有し、下側半割軸受が、周方向中央部と、ジャーナル部の回転方向前方側のクラッシュリリーフとの間の摺動面に、軸線方向に延びる突条部を有し、突条部は、周方向中央部から回転方向前方側に向かって円周角度10〜60°の範囲内に形成されている、主軸受が提供される。【選択図】図4

Description

本発明は、主軸受に関し、特に、クランク軸のジャーナル部を支承する主軸受であって、主軸受の内周面に供給された潤滑油が、クランク軸の内部潤滑油路を経て、クランクピンを支承するコンロッド軸受の内周面に供給されるように構成された内燃機関のクランク軸用主軸受に関するものである。
内燃機関のクランク軸は、そのジャーナル部において、一対の半割軸受からなる主軸受を介して内燃機関のシリンダブロック下部に支承される。主軸受に対しては、オイルポンプによって吐出された潤滑油が、シリンダブロック壁内に形成されたオイルギャラリーから主軸受の壁に形成された貫通口を通じて、主軸受の内周面に沿って形成された潤滑油溝内に送り込まれる。また、ジャーナル部の直径方向には第1潤滑油路が貫通形成され、この第1潤滑油路の両端開口が主軸受の潤滑油溝と連通するようになっている。さらに、ジャーナル部の第1潤滑油路から、クランクアーム部を通る第2潤滑油路が分岐して形成され、この第2潤滑油路が、クランクピンの直径方向に貫通形成された第3潤滑油路に連通している。このようにして、シリンダブロック壁内のオイルギャラリーから貫通口を通じて主軸受の内周面に形成された潤滑油溝内に送り込まれた潤滑油は、第1潤滑油路、第2潤滑油路および第3潤滑油路を経て、第3潤滑油路の末端に開口した吐出口から、クランクピンとコンロッド軸受の摺動面間に供給される(例えば、特許文献1参照)。
従来から、主軸受およびコンロッド軸受として、一対の半割軸受から構成されるすべり軸受が採用されている。すべり軸受には、半割軸受どうしの当接面に隣接して、いわゆるクラッシュリリーフが形成されている。
クラッシュリリーフとは、半割軸受の周方向端面に隣接する領域の壁厚が、円周方向端面に向かって薄くなるように形成された壁厚減少領域である。クラッシュリリーフは、一対の半割軸受を組み付けた状態における、半割軸受の突合せ面の位置ずれや変形を吸収することを企画して形成される(例えば、特許文献2参照)。
特開平8−277831号公報 特開平4−219521号公報 特開2010―216633号公報
主軸受は、その摺動面とジャーナル部の表面との間の油に圧力が発生することで、クランク軸のジャーナル部からの動荷重負荷を支承する。
内燃機関の運転時、主軸受の摺動面に加わる負荷の大きさおよび負荷の方向は常に変動し、その負荷と釣り合う油膜圧力を発生するように、ジャーナル部の中心軸線が主軸受の軸受中心軸に対して偏心しながら移動する。このため主軸受は、摺動面のいずれの位置においても軸受隙間(ジャーナル部の表面と摺動面との間の隙間)が常に変化する。
4サイクル内燃機関では、燃焼行程において主軸受に加わる負荷が最大となるが、この時、図14に示すように、半割軸受141、142からなる主軸受14では、ジャーナル部6が紙面下側の半割軸受142の周方向中央部C付近の摺動面7に向かう方向(矢印M)に移動し、下側の半割軸受142の周方向中央部C付近の摺動面7とジャーナル部6の表面が最も近接し、それにより下側の半割軸受142の周方向中央部Cからジャーナル部の回転方向Xの前方側に向かって少し離れた位置P1付近において摺動面7とジャーナル部6が接触することがある。このような接触が起こるとジャーナル部と主軸受の摺動面との摩擦抵抗が大きくなり、摩擦損失が増加する。
なお、図14に示す紙面下側の半割軸受142は、図1に示すシリンダブロック下部の軸受キャップ82に組まれる半割軸受である。
コンロッド軸受においては、このようなクランクピンとコンロッド軸受の摺動面の接触を防ぐために、コンロッド軸受の内周面の形状を、軸荷重が作用する方向を基準に、クランクピンの回転方向の後方側に向かって内周断面の中心点の周りに所定角度進んだ内周面上の位置を最大膨出位置として内側に膨出した膨出部を有するように構成する提案がある(特許文献3)。
図15に示すように、特許文献3の提案の考えを適用した主軸受24では、4サイクル内燃機関の燃焼行程において主軸受に加わる負荷が最大となる時、ジャーナル部6は、半割軸受242の周方向中央部Cよりもジャーナル部6の回転方向Xの後方側の摺動面に形成された膨出部271付近の領域A2で、膨出部271の表面とジャーナル部6の表面との間の油の圧力により押圧されながら、紙面下側の半割軸受242の周方向中央部C付近の摺動面7に向かう方向(矢印M)に移動するようになる。このため、紙面下側の半割軸受242の周方向中央部Cからジャーナル部6の回転方向Xの前方側に向かってより離れた位置P2付近において摺動面7とジャーナル部6の表面が接触しやすくなり、従来よりも摩擦損失が増大する。
したがって本発明の目的は、内燃機関の運転時に、主軸受の摺動面とジャーナル部との接触による摩擦損失を低減できる内燃機関のクランク軸用主軸受を提供することである。
本発明によれば、内燃機関のクランク軸のジャーナル部を回転自在に支持するための主軸受であって、ジャーナル部は、円筒胴部と、円筒胴部を貫通して延びる潤滑油路と、円筒胴部の外周面上に形成された潤滑油路の少なくとも1つの入口開口とを有している、主軸受において、
主軸受が、互いに組み合わされて円筒形状を構成する一対の上側半割軸受および下側半割軸受を有し、各半割軸受は、半割軸受の周方向中央部(周方向中央断面部)を含む主円筒部を有し、主円筒部は、その径方向内側に摺動面を有し、また各半割軸受は、摺動面の周方向両側に、主円筒部よりも壁厚が薄くなるように形成されたクラッシュリリーフを有し、
一対の半割軸受のうち上側半割軸受のみが、その内周面に形成された周方向に延びる油溝と、油溝から上側半割軸受の外周面まで上側半割軸受を貫通して延びる少なくとも1つの油穴とを有し、
下側半割軸受が、周方向中央部と、ジャーナル部の回転方向前方側のクラッシュリリーフとの間の摺動面に、軸線方向に延びる突条部を有し、突条部は、周方向中央部から回転方向前方側に向かって円周角度10°(θ1)と60°(θ2)の間の周方向範囲内に形成される、主軸受が提供される。
本発明によれば、摺動面から径方向に測定した突条部の高さ(H1)が0.5〜30μmであってもよい。
また突条部は、円周角度(θ3)で1〜35°の周方向長さを有していてもよい。
また突条部は、下側半割軸受の軸線方向の全長に亘って形成されていてもよい。
あるいは突条部は、下側半割軸受の軸線方向の全長に亘って形成されていなくてもよい。
下側半割軸受は複数の突条部を有していてもよく、これら複数の突条部は、円周角度(θ4)で5〜35°の周方向範囲内に形成されていてもよい。
さらに、突条部は、下側半割軸受の軸線方向から見て(すなわち軸線方向に垂直な断面において)、下側半割軸受の径方向内側へ向かって凸状の曲面を有していてもよい。
あるいは突条部は、下側半割軸受の軸線方向から見て、下側半割軸受の径方向外側へ向かって凹状の曲面を有していてもよい。
また上述した突条部を有する下側半割軸受は、この突条部と周方向中央部に関して対称な突条部を、周方向中央部と、ジャーナル部の回転方向後方側のクラッシュリリーフとの間の摺動面に有していてもよい。
内燃機関のクランク軸を、ジャーナル部およびクランクピン部で裁断した断面図である。 本発明の第1実施例による主軸受の上側半割軸受を軸線方向から見た図である。 図2に示す半割軸受を摺動面側から見た平面図である。 本発明の第1実施例による主軸受の下側半割軸受を軸線方向から見た図である。 図4に示す半割軸受を摺動面側から見た平面図である。 下側半割軸受の摺動面に形成された突条部を軸線方向から見た部分拡大図である。 本発明の第1実施例による主軸受およびジャーナル部を軸線方向から見た図である。 本発明の第1実施例による主軸受の作用を説明するための、図7と同様の図である。 本発明の第2実施例による主軸受の下側半割軸受を軸線方向から見た図である。 図9に示す半割軸受を摺動面側から見た平面図である。 下側半割軸受の摺動面に形成された突条部を軸線方向から見た部分拡大図である。 本発明の第3実施例による主軸受の下側半割軸受を軸線方向から見た図である。 図12に示す半割軸受を摺動面側から見た平面図である。 従来技術による主軸受の作用を説明するための図である。 他の従来技術による主軸受の作用を説明するための図である。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。なお、理解を容易にするために、図面において突条部およびクラッシュリリーフは誇張して描かれている。
(軸受装置の全体構成)
図1に示すように、本実施例の軸受装置1は、シリンダブロック8の下部に支承されるジャーナル部6と、ジャーナル部6と一体に形成されてジャーナル部6を中心として回転するクランクピン5と、クランクピン5に内燃機関から往復運動を伝達するコンロッド2とを備えている。そして、軸受装置1は、クランク軸を支承するすべり軸受として、ジャーナル部6を回転自在に支承する主軸受4と、クランクピン5を回転自在に支承するコンロッド軸受3とをさらに備えている。
なお、クランク軸は複数のジャーナル部6と複数のクランクピン5とを有するが、ここでは説明の便宜上、1つのジャーナル部6および1つのクランクピン5を図示して説明する。図1において、紙面奥行き方向の位置関係は、ジャーナル部6が紙面の奥側で、クランクピン5が手前側となっている。
ジャーナル部6は、一対の半割軸受41、42によって構成される主軸受4を介して、内燃機関のシリンダブロック下部81に軸支されている。図1で上側にある上側半割軸受41には、内周面全長に亘って油溝41aが形成されている。また、ジャーナル部6は、直径方向に貫通する潤滑油路6aを有し、ジャーナル部6が矢印X方向に回転すると、潤滑油路6aの両端開口6cが交互に主軸受4の潤滑油溝41aに連通する。
クランクピン5は、一対の半割軸受31、32によって構成されるコンロッド軸受3を介して、コンロッド2の大端部ハウジング21(ロッド側大端部ハウジング22およびキャップ側大端部ハウジング23)に軸支されている。
上述したように、主軸受4に対して、オイルポンプによって吐出された潤滑油が、シリンダブロック壁内に形成されたオイルギャラリーから主軸受4の壁に形成された貫通口を通じて主軸受4の内周面に沿って形成された潤滑油溝41a内に送り込まれる。
さらに、ジャーナル部6の直径方向に第1の潤滑油路6aが貫通形成され、第1の潤滑油路6aの両端開口が油溝41aと連通している。そして、ジャーナル部6の第1の潤滑油路6aから分岐してクランクアーム部(不図示)を通る第2の潤滑油路5aが形成され、第2の潤滑油路5aが、クランクピン5の直径方向に貫通形成された第3の潤滑油路5bに連通している。
このようにして、潤滑油は、第1の潤滑油路6a、第2の潤滑油路5aおよび第3の潤滑油路5bを経て、第3の潤滑油路5bの端部の吐出口5cから、クランクピン5とコンロッド軸受3の間に形成される隙間に供給される。
(主軸受の構成)
本実施例の主軸受4は、一対の上側半割軸受41と下側半割軸受42の周方向端面76どうしを突き合わせて、全体として円筒形状に組み合わせることによって形成される(図7参照)。半割軸受41、42は、Cu軸受合金またはAl軸受合金である摺動層を有し、あるいはFe合金製の裏金層と、Cu軸受合金またはAl軸受合金である摺動層とを有する。また、摺動層は、摺動面7となる表面側(後述する突条部71の表面を含む)に、軸受合金よりも軟質なBi、Sn、Pbのいずれか1種からなる表面部、あるいはこれら金属を主体とする合金からなる表面部や、合成樹脂を主体とする樹脂組成物からなる表面部を有していてもよい。
なお、後述する突条部71は、上記摺動層や表面部と同じ材質により構成されていてもよく、または異なる材質により構成されていてもよい。例えば、摺動層がCu軸受合金またはAl軸受合金であり突条部71が合成樹脂を主体とする樹脂組成物である組み合わせであってもよい。
半割軸受41、42は、周方向中央部Cを含む主円筒部72を有し、主円筒部72の径方向内側に摺動面7が形成されている。また摺動面7の周方向両側には、クラッシュリリーフ70、70が形成されている。したがって本発明において、半割軸受41、42の内周面は、摺動面7およびクラッシュリリーフ70、70を含む。
クラッシュリリーフ70は、図2〜4、図7に示すように、半割軸受41、42の円周方向端部領域において半割軸受の壁厚を本来の摺動面7から半径方向に減じることによって形成される面のことであり、これは、例えば一対の半割軸受41、42をシリンダブロック下部8の軸受保持穴に組み付けた時に生じ得る半割軸受の周方向端面76の位置ずれや変形を吸収するために形成される。したがってクラッシュリリーフ70の表面の曲率中心位置は、その他の領域(摺動面7)の曲率中心位置と異なる(SAE J506(項目3.26および項目6.4)、DIN1497、セクション3.2、JIS D3102参照)。一般に、乗用車用の小型の内燃機関用軸受の場合、半割軸受の周方向端面76におけるクラッシュリリーフ70の深さ(本来の摺動面7からの周方向端面76におけるクラッシュリリーフ70までの距離)は0.01〜0.05mm程度である。
なお、半割軸受41、42の軸受壁厚(クラッシュリリーフ70の形成された領域を除く軸受壁厚、すなわち主円筒部72の壁厚)は、突条部71を除き周方向で一定であるが、これに限定されないで、半割軸受31、32の軸受壁厚は、周方向中央部Cで最大で、周方向両端面76側へ向かって連続して減少していてもよい。
実施例1では、上側半割軸受41は、内周面に油溝41aが周方向の全長に亘って形成されている。実施例1では、油溝41aの溝深さ、油溝41aの軸線方向の長さ(油溝41aの幅)は、上側半割軸受41の周方向に亘って概ね同じ寸法になされている。小型内燃機関のクランク軸のジャーナル部6の直径が40〜100mmの場合、油溝41aの深さは、1mm〜2.5mm程度である。ジャーナル部6の直径が大きいほど油溝41aの溝深さは大きくなされる。
なお、本実施例とは異なり、油溝41aは、油溝41aの周方向両端部がクラッシュリリーフ70に位置するように変更してもよい。あるいは、油溝41aの一方の周方向端部がクラッシュリリーフ70に位置し、他方の周方向端部が上側の半割軸受41の周方向端面76に位置するようにしてもよい。また、油溝41aの軸線方向の長さが油溝41aの周方向中央部付近で最大となり、油溝41aの周方向両端部側へ向かって小さくなるようにしてもよい。また、油溝41aの溝深さは、油溝41aの周方向中央部付近で最大となり、油溝41aの周方向両端部側へ向かって小さくなるようにしてもよい。
また、油溝41a部には、上側半割軸受41の壁を貫通した油穴41bが形成される。本実施例では、一つの油穴41bが、上側半割軸受41の周方向中央部かつ軸線方向中央部Cの位置に形成される。ジャーナル部6の表面における潤滑油路6aの入口開口6cの直径は、一般的に3〜8mm程度であり、油溝41aの軸線方向の長さは、潤滑油路6aの入口開口6cの直径よりも若干大きい寸法にされる。また、実施例1のように油穴41bの開口が円形の場合、開口の直径は、油溝41Gの軸線方向の長さと同じ寸法になされている。なお、油穴41bの開口の寸法、開口の形状、油穴41bの形成位置、形成数は、本実施例に限定されない。
下側半割軸受42は、以下で詳細に説明するように、突条部71の構成を有している点、並びに油溝41aおよび油穴41bの構成を有していない点以外は、上側半割軸受41と同じ寸法、形状となっている。
下側半割軸受42は、半割軸受の周方向中央部Cとジャーナル部6の回転方向Xの前方側のクラッシュリリーフ70との間の主円筒部72の摺動面7に、突条部71を有する。
本実施例では、突条部71は、下側半割軸受42の周方向中央部Cから円周角度(θ1)で10°以上離間し、且つ周方向中央部Cから円周角度(θ2)で60°を超えて離間しない範囲内の摺動面7上にのみ形成されている。さらに、突条部71は、下側半割軸受42の周方向中央部Cから円周角度(θ1)で15°以上離間することが好ましい。
ところで、内燃機関のクランク軸のジャーナル部6は、運転時には一方向に回転する。このため当業者であれば、クランク軸のジャーナル部6の回転方向を考慮し、下側半割軸受42の周方向両端面76、76に隣接する2つのクラッシュリリーフ70、70のうち、どちらが「ジャーナル部の回転方向の前方側のクラッシュリリーフ」であるか理解することができよう。また当業者であれば、本発明の開示にしたがって本発明の主軸受4を設計、製造し、これを一方向に回転するクランク軸のジャーナル部を支承するように適切にシリンダブロック下部8に組み付けることが可能である。
図6は、突条部71の、下側半割軸受42の軸線方向に垂直な断面を示す。突条部71の断面は、下側半割軸受の軸線方向から見て、下側半割軸受の径方向内側へ向かって凸状の円弧形状(摺動面7よりも半径方向の外側に中心を有する半径Rの円弧形状)となっている。なお、突条部71の断面形状は、矩形、逆台形等の断面形状に変更することができる。
突条部71の摺動面7からの半径方向の高さH1は、0.5〜30μmとすることができる。突条部71の高さH1は、20μm以下とすることが好ましく、さらに10μm以下とすることが好ましい。また、突条部71の周方向長さL1は、下側半割軸受42の摺動面7上における円周角度(θ3)で1〜35°に相当する長さとすることが好ましく、さらに1〜20°に相当する長さとすることが好ましい。
本実施例では、突条部71の高さH1および周方向長さL1は、下側半割軸受42の軸線方向に亘って一定であるが、軸線方向で高さH1や周方向長さL1が変化していてもよい。
本実施例では、突条部71の周方向長さL1は、円周角度(θ3)で10°に相当する長さになっており、また突条部71は、周方向長さL1の中心が下側半割軸受42の周方向中央部Cからジャーナル部6の回転方向Xの前方側に向かって円周角度45°に位置するように形成されている。
(作用効果)
4サイクル内燃機関では、燃焼行程において主軸受4に加わる負荷が最大となるが、この時、主軸受4では、図8に示すようにジャーナル部6が紙面下側の下側半割軸受42の周方向中央部C付近の摺動面7に向かう方向(矢印M)に移動する。
ここで、下側半割軸受42は周方向中央部Cからジャーナル部6の回転方向前方側の摺動面7に突条部71を有するため、下側半割軸受42の周方向中央部Cから突条部71までの間は、摺動面7とジャーナル部6の表面との間に十分な隙間(油膜)が形成され、それにより接触が防がれる。
また、突条部71付近の領域A1では、突条部71の表面とジャーナル部6の表面との間に楔形状の隙間が形成され、油がこの楔形状の隙間を流れる際に受ける流体力学的作用によって圧力が上昇する。このため、突条部71付近の領域A1に圧力が高い油膜が形成され、突条部71の表面とジャーナル部6の表面との接触が防がれる。
本発明によれば、突条部71は、下側半割軸受42の周方向中央部Cからジャーナル部6の回転方向Xの前方側に向かって円周角度(θ1)で10°以上離間し、且つ円周角度60°(θ2)を超えて離間していない範囲内の摺動面7に形成される。
このような範囲に形成する理由は、突条部71が、下側半割軸受42の周方向中央部Cから軸(ジャーナル部6)の回転方向Xの前方側に円周角度10°以上離間していると、円周角度10°未満の範囲の摺動面7に突条部71を形成した場合に比べて摩擦損失が少なくなるからである。図8に示すように、下側半割軸受42の周方向中央部Cから円周角度10°未満の範囲の摺動面7は、ジャーナル部6からの最大負荷を受けるが、この範囲に突条部71を形成すると、ジャーナル部6表面と突条部71が接触しやすくなり、摩擦損失が大きくなる。
また本発明によれば、突条部71が、下側半割軸受42の周方向中央部Cからジャーナル部6の回転方向Xの前方側に円周角度60°を超えて離間しないので摩擦損失が少なくなる。下側半割軸受42の周方向中央部Cからジャーナル部6の回転方向Xの前方側に円周角度60°を超えた範囲に突条部71を形成すると、図8に示す方向(矢印M)にジャーナル部6が移動したときに突条部71が作用し難くなり、下側半割軸受42の周方向中央部C付近の摺動面7とジャーナル部6の表面との間に十分な隙間が形成されなくなる。このため摺動面7とジャーナル部6の表面が接触しやすくなり、摩擦損失が大きくなる。
なお、実施例1は、主軸受4を構成する一対の半割軸受のうち、下側半割軸受42のみが突条部71を有し、上側半割軸受41は、突条部71を有さない。前述したように上側半割軸受41は、摺動面7に油溝41aを有するが、突条部71を有するようにした場合には、油溝41aが突条部71と交差するので、主軸受4の外部から油溝41a内に供給された油が、上側半割軸受41の摺動面7とジャーナル部6との間の隙間に過度に流出してしまうからである。この場合、油溝41aからジャーナル部6の潤滑油路6aを介しコンロッド軸受3およびクランクピン5側へ供給される油量が減少してしまう。
図9および10に示すように、実施例1の下側半割軸受とは異なり、実施例2の突条部71aは、その軸線方向長さL2が下側半割軸受42の軸線方向長さL3よりも小さくなされている。また図11に示すように、突条部71aは、下側半割軸受の軸線方向から見て、周方向中央付近に下側半割軸受42の径方向外側へ向かって凹状の曲面を有する。この凹状の曲面は、下側半割軸受42の摺動面7と略平行に(例えば同心の半径R’を有するように)なされている。実施例2の他の構成は実施例1の半割軸受41、42の構成と同じである。
突条部71aは、軸線方向長さL2の中央が下側半割軸受42の軸線方向長さL3の中央と一致するように形成される。
突条部71aは、軸線方向長さL2が下側半割軸受42の軸線方向長さL3の70〜95%になるように形成されることが好ましい。
(作用効果)
本実施例は、実施例1と同様の効果を有し、さらに、突条部71aが下側半割軸受の径方向外側へ向かって凹状の曲面を有するため、突条部71の表面に油膜が形成されやすく、実施例1よりも突条部71aとジャーナル部6の表面の接触が起こり難くなる。
なお、突条部71aは、下側半割軸受42一方の軸線方向端部まで延び、しかし他方の端部まで延びないように形成されていてもよい。
図12および13に示すように、実施例1および2の下側半割軸受とは異なり、実施例3の下側半割軸受42は、その周方向中央部Cとジャーナル部6の回転方向前方側のクラッシュリリーフ70との間の主円筒部72の摺動面7に、複数(3つ)の突条部71を有する。
これら突条部71はやはり、下側半割軸受42の周方向中央部Cから、円周角度(θ1)10°以上離間し、且つ円周角度60°を超えて離間していない範囲内の摺動面7に形成される。
実施例3の他の構成は実施例1の半割軸受41、42と同じである。
本発明を、一般的な乗用車の内燃機関のクランク軸用主軸受、すなわちジャーナル部6の直径が40mm〜100mm程度であるクランク軸用主軸受に適用する場合、これら複数の突条部71どうしは、下側半割軸受42の摺動面7上で周方向に0.5〜2mm離間するよう配置されることが好ましい。さらに、複数の突条部71は、同じ周方向長さL1、および同じ高さH1を有することが好ましい。
また、複数の突条部71と、突条部71どうしの間の摺動面とからなる摺動面7上の突条部形成領域711の周方向長さは、下側半割軸受42の摺動面7での円周角度(θ4)で5〜35°に相当する長さであることが好ましい。
本実施例では、下側半割軸受42は3つの突条部71を有するが、これに限定されないで、2つ、または4つ以上の突条部71を有していてもよい。
さらに、複数の突条部71は、実施例2と同様に下側半割軸受42の軸線方向の全長に亘って形成されていなくてもよい。
(作用効果)
本実施例は、実施例1と同様の効果を有し、さらに、複数の突条部71の間に摺動面7が配されるので、複数の突条部71を形成した領域(突条部形成領域)での油の圧力が高くなり、ジャーナル部6を支承する能力が高まる。
なお、実施例1〜3において、下側半割軸受42の周方向中央部Cと、ジャーナル部6の回転方向後方側のクラッシュリリーフ70との間の摺動面7にも突条部71と同様な突条部を形成して下側半割軸受42を周方向中央部Cに関して対称形状にしてもよい。
このような対称形状を採用することにより、シリンダブロック下部81の軸受キャップ82への下側半割軸受42の誤った組み付けを未然に防止することができる。
上で説明した本発明の主軸受を構成する下側半割軸受は、内周面側に周方向端面において上側半割軸受41の油溝41aと連通する部分溝を有していてもよいが、この部分溝は、半割軸受の摺動面の突条部を避けた位置に形成されることが好ましい。
1 軸受装置
2 コンロッド
3 コンロッド軸受
4 主軸受
5 クランクピン
5a、5b 潤滑油路
5c 吐出口
6 ジャーナル部
6a 潤滑油路
6c 入口開口
31、32 半割軸受
41 上側半割軸受
42 下側半割軸受
41a 油溝
7 摺動面
70 クラッシュリリーフ
71、71a 突条部
72 主円筒部
76 周方向端面
711 突条部形成領域
C 半割軸受の周方向中央部
H1 突条部の高さ
L1 突条部の周方向長さ
L2 突条部の軸線方向長さ
L3 半割軸受の軸線方向長さ
Z クランクピンの回転方向
X ジャーナル部の回転方向
M クランクピンの移動方向
θ3 突条部の周方向長さに相当する円周角度
θ4 突条部形成領域の周方向長さに相当する円周角度

Claims (9)

  1. 内燃機関のクランク軸のジャーナル部を回転自在に支持するための主軸受であって、前記ジャーナル部は、円筒胴部と、前記円筒胴部を貫通して延びる潤滑油路と、前記円筒胴部の外周面上に形成された前記潤滑油路の少なくとも1つの入口開口とを有している、主軸受において、
    前記主軸受は、互いに組み合わされて円筒形状を構成する一対の上側半割軸受および下側半割軸受を有し、前記各半割軸受は、前記半割軸受の周方向中央部を含む主円筒部を有し、前記主円筒部は、その径方向内側に摺動面を有し、また前記各半割軸受は、前記摺動面の周方向両側に、前記主円筒部よりも壁厚が薄くなるように形成されたクラッシュリリーフを有し、
    前記一対の半割軸受のうち前記上側半割軸受のみが、その内周面に形成された周方向に延びる油溝と、前記油溝から前記上側半割軸受の外周面まで前記上側半割軸受を貫通して延びる少なくとも1つの油穴とを有し、
    前記下側半割軸受が、前記周方向中央部と、前記ジャーナル部の回転方向前方側の前記クラッシュリリーフとの間の前記摺動面に、軸線方向に延びる突条部を有し、前記突条部は、前記周方向中央部から前記回転方向前方側に向かって円周角度10°(θ1)と60°(θ2)の間の周方向範囲内に形成される、主軸受。
  2. 前記摺動面から径方向に測定した前記突条部の高さ(H1)が0.5〜30μmである、請求項1に記載の主軸受。
  3. 前記突条部は、円周角度(θ3)で1〜35°の周方向長さを有している、請求項1または2に記載の主軸受。
  4. 前記突条部は、前記下側半割軸受の軸線方向の全長に亘って形成されている、請求項1から3までのいずれか一項に記載の主軸受。
  5. 前記突条部は、前記下側半割軸受の軸線方向の全長に亘って形成されていない、請求項1から3までのいずれか一項に記載の主軸受。
  6. 前記下側半割軸受は複数の前記突条部を有し、前記複数の突条部は、円周角度(θ4)で5〜35°の周方向範囲内に形成される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の主軸受。
  7. 前記突条部は、前記下側半割軸受の軸線方向から見て、前記下側半割軸受の径方向内側へ向かって凸状の曲面を有している、請求項1から6までのいずれか一項に記載の主軸受。
  8. 前記突条部は、前記下側半割軸受の軸線方向から見て、前記下側半割軸受の径方向外側へ向かって凹状の曲面を有している、請求項1から6までのいずれか一項に記載の主軸受。
  9. 前記下側半割軸受は、前記突条部と前記周方向中央部に関して対称な突条部を、前記周方向中央部と、前記ジャーナル部の回転方向後方側の前記クラッシュリリーフとの間の前記摺動面に有している、請求項1から8までのいずれか一項に記載の主軸受。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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