JP2019123744A - 活性化ampkの化合物及びその使用 - Google Patents

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Abstract

【課題】AMPK(AMP−活性化プロテインキナーゼ)の活性化に適用される化合物であるアデニンに関し、さらに、当該化合物を使用して生理的状況または疾患を予防または治療するための薬物の提供。【解決手段】アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を含む、活性酸素種に関連する生理的状況または疾患を治療するための薬物。前記活性酸素種に関連する生理的状況または疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病または筋萎縮性側索硬化症である前記薬物。【選択図】なし

Description

本発明は、AMPK(AMP−活性化プロテインキナーゼ)の活性化に適用される化合物であるアデニンに関し、さらに、当該化合物を使用して生理的状況または疾患を予防または治療することに関する。
AMPKは、確実に、細胞エネルギーのセンサー、及びエネルギー要求を応答するものである。AMPKは、触媒性αサブユニット、調節性β、γサブユニットから構成されるヘテロ三量体であり、全てのサブユニットが真核生物において高度な保存性を有する。AMPKの活性化は、その上流キナーゼ、例えば、LKB1、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ(Ca2+/Calmodulin dependent kinase)及びTAK1により、αサブユニットの保存性を有する172スレオニン残基をリン酸化し、生理的または病理的ストレスによってAMP/ATP比が高くなり、AMPKを活性化する。AMPKを活性化した後は、分解代謝の経路を促進して合成代謝を抑制し、ATP消耗の減少及びATP生成の促進により、細胞のエネルギーのバランスを回復する。
AMPKは、エネルギー代謝のバランスを調節するものとして、II型糖尿病、心血管疾患、脂肪肝等を含むメタボリックシンドロームに対しては、潜在力を有する薬物標的であると認識されている。多くのメタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性と関わる。インスリン抵抗性は、病理的状態であり、この状態では細胞がインスリンに応答できないため、血液中の過量のグルコースが骨格筋または脂肪組織に取り込まれなくなる。筋細胞において、AMPKの活性化は、インスリン非依存性の方式で、転写の制御により、グルコース輸送体(GLUT4)の発現量を増加させ、GLUT4の細胞膜上への移行を誘導し、細胞のグルコース摂取速度を増加させる。AMPKの活性化は、それぞれ、アセチルCoAカルボキシラーゼ(acetyl−CoA carboxylase)及びヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素(HMG−CoA reductase)を抑制することによって、脂肪酸及びコレステロールの合成を抑制する。また、AMPKの活性化によって、SREBP−1c、ChREBP、HNF−4aを含む複数の転写因子を抑制し、脂肪酸合成の調節及び糖新生作用に関する酵素のタンパク質の発現を低下させる。上記の研究はいずれも、AMPKが、メタボリックシンドローム、特に、糖尿病の治療の標的であることを支持する。
AMPKは、エネルギー代謝のバランスの調節の他、炎症反応、細胞成長(cell growth)、アポトーシス、オートファジー、老化及び分化を含む複数の細胞メカニズムの調節にも参与する。多くの研究では、AMPKが炎症反応を抑制するものであることが示される。AMPKの活性化は、細胞核の転写因子(NF−κB)のシグナル伝達を抑制することにより、炎症反応を抑制する。細胞核の転写因子のシグナル伝達は、先天性免疫及び後天性免疫を活性化する主要な経路であり、AMPKが活性化した後は、SIRT1、フォークヘッドボックスO(FoxO)またはペルオキシソーム増殖剤活性化受容体コアクチベーター1α(PGC1α)を刺激することにより、細胞核の転写因子の転写活性を抑制して、炎症反応を抑制する効果を達成する。また、複数の研究室では、AMPKの活性化が、シクロオキシゲナーゼ−2(cyclooxygenase−2、COX−2)のタンパク質の発現を抑制することが証明されている。シクロオキシゲナーゼ−2は、炎症性サイトカイン及び成長因子により制御される誘導型酵素であり、その機能としては、アラキドン酸をプロスタグランジンに転化することにより、炎症反応及び疼痛を発生させるので、シクロオキシゲナーゼの活性または発現を抑制し、抗炎症作用を有することが証明されている。
複数のAMPK活性化剤は、in vivo実験において抗炎症機能を有することが証明されている。例えば、5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミドリボヌクレオシド(AICAR)は、マウスモデルにおいて、トリニトロベンゼンスルホン酸またはデキストラン硫酸ナトリウムによる再発性急性結腸炎を緩和することができ、AICARによる治療で、疾患マウスの体重減少を著しく低下させ、炎症反応を軽減することが証明されている。また、AICARは、ヒト多発性硬化症の動物モデル(EAE)に明らかな治療効果を有し、リポ多糖誘発性マウス肺損傷の重篤程度を低下させる。
細胞シグナル伝達経路の異常は、細胞の異常増殖を引き起こす可能性があり、最終的には癌を引き起こすことになる。哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)は、細胞成長及びオートファジー作用を制御するセリン/スレオニンキナーゼである。哺乳類ラパマイシン標的タンパク質のシグナル伝達経路の活性化異常は、様々な癌において見出されるため、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質の抑制剤は、癌治療の潜在的な薬物であると考えられる。多くの研究では、AMPKで結節性硬化症複合体2(TSC2)及びラプター(Raptor)をリン酸化することにより、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質の経路の抑制を達成することが証明されている。AICAR、メトホルミン、フェンホルミンを含む各種類のAMPK活性化剤は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質シグナルの経路を抑制し、癌細胞の成長を抑制することが証明されている。また、AMPKの活性化は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体−1を抑制することにより、オートファジー作用を誘発させる。AMPKが、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体−1を抑制するため、Ulk1上の757セリンのリン酸化が減少し、その後、317及び777セリンはAMPKによりリン酸化され、Ulk1はAMPKによりリン酸化された後、オートファジー作用が開始される。
以上のように、AMPKは、炎症性疾患、創傷治癒、神経変性、癌、酸化ストレス、及び心血管疾患を含む多くの人類疾患または病理的状況に対して、良好な治療標的であると考えられる。実際、AMPK活性化剤は、細菌及び真菌による疾患、行動及び心理障害、血液及びリンパ疾患、癌、腫瘍、消化器疾患、耳鼻咽喉疾患、眼疾、腺及びホルモンに関連する疾患、心血管疾患、免疫系疾患、口及び歯疾患、筋肉・骨格・軟骨疾患、神経系疾患、栄養及び代謝性疾患、呼吸器疾患、皮膚及び結合組織疾患、創傷治癒等を含む少なくとも24種類の疾患の臨床試験に適用されている。
本発明は、新規なAMPK活性化剤であるアデニン、及び当該化合物の疾患を予防または治療するための使用を提供する。
本発明は、AMPKを活性化するための化合物であって、アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩である化合物を提供する。
上記化合物は、AMPK活性化剤で改善できる疾患または生理的状況を治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、細胞における炎症性サイトカインの分泌及びシクロオキシゲナーゼ−2の発現を低下させることにより、炎症性生理的状況または疾患を治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、細胞にグルコースの摂取を増加させることにより、糖尿病前症、II型糖尿病、メタボリックシンドロームからなる群から選ばれる生理的状況または疾患を予防または治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、哺乳動物の血漿トリグリセリド及び体重を減少させることにより、肥満状態を予防または治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、細胞におけるアミロイドペプチドの累積を抑制することにより、アルツハイマー病を予防または治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、細胞のオートファジーの活性を強化することにより、オートファジー作用で改善できる疾患または生理的状況を治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、繊維芽細胞の成長を抑制することにより、創傷治癒の過程において瘢痕形成を抑制するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳上化合物に与える。
上記化合物は、創傷治癒を強化するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、細胞の活性酸素種の生成を抑制することにより、哺乳動物において、活性酸素種に傷つけられる細胞を保護及び治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、癌細胞の成長を抑制することにより、癌を予防または治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
本発明は、AMPK活性化剤で改善できる疾患または生理的状況を治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、炎症性生理的状況または疾患を治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、糖尿病前症、II型糖尿病、メタボリックシンドロームの一つまたはその組み合わせである生理的状況または疾患を予防または治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、糖尿病前症、II型糖尿病、メタボリックシンドロームの一つまたはその組み合わせである生理的状況または疾患を予防または治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、アルツハイマー病を予防または治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、オートファジー作用で改善できる疾患または生理的状況を治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、創傷治癒の過程において瘢痕形成を抑制する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、創傷治癒を強化する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、哺乳動物において、活性酸素種に傷つけられる細胞を保護及び治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、癌を予防または治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
上記の内容をまとめると、本発明の実施形態によれば、新規なAMPK活性化剤であるアデニンを提供することで、細胞内でAMPKを活性化することができるため、哺乳動物において、AMPKで改善できる生理的状況または疾患を予防または治療することができる。
本発明の実施形態によれば、AMPKを活性化することにより血糖を低下させる方法を提供することで、メタボリックシンドローム、糖尿病前症、II型糖尿病、インスリン抵抗性を含む疾患を予防または治療する。その中、治療を必要とする哺乳動物に、有効量のアデニン及び/または医薬学的に許容できる塩を与える。
本発明の実施形態によれば、AMPKを活性化することにより抗炎症的方法を提供することで、炎症性状況または疾患を予防または治療する。その中、治療を必要とする哺乳動物に、有効量のアデニン及び/または医薬学的に許容できる塩を与える。
本発明の実施形態によれば、AMPKを活性化することにより繊維芽細胞の成長を抑制する方法を提供することで、創傷治癒の期間で瘢痕組織の生成を予防する。
本発明の実施形態によれば、創傷治癒を強化する方法を提供する。その中、治療を必要とする哺乳動物に、有効量のアデニン及び/または医薬学的に許容できる塩を与える。
本発明の実施形態によれば、反応性酸素種(ROS)の生成を抑制する方法を提供することで、反応性酸素種の傷害から哺乳動物の細胞を保護または治療する。その中、治療を必要とする哺乳動物に、有効量のアデニン及び/または医薬学的に許容できる塩を与える。
本発明の実施形態によれば、癌細胞の成長を抑制する方法を提供することで、癌を予防または治療する。その中、治療を必要とする哺乳動物に、有効量のアデニン及び/または医薬学的に許容できる塩を与える
本発明は、AMPKの活性化に適用される化合物であるアデニンに関し、また、糖尿病前症、インスリン抵抗性、II型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症、炎症、創傷治癒、アルツハイマー病、癌、酸化ストレス及び心血管疾患を含む生理的状況または疾患を予防または治療するためのアデニンの使用に関する。
本発明では、アデニンが、新規なAMPK活性化剤であり、様々な生物性機能を有することを見出す。近年、AMPKの活性化は、疾患、例えば糖尿病前症、インスリン抵抗性、II型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症、炎症、創傷治癒、アルツハイマー病、癌症、酸化ストレス、心血管疾患の予防及び治療、並びに創傷治癒の促進に寄与することが証明されている。本発明では、この効果は、AMPKの活性化による、シクロオキシゲナーゼ−2発現量の低下、応性酸素種(ROS)生産の抑制、及びグルコース摂取活性の増加に起因すると考えられるが、これらに限定されない。
<予期する適応症>
本発明の研究成果(実施例をご参照)に基づき、アデニンは、AMPKを活性化することにより、様々な生理的状況または疾患の治療剤として使用できる。以下、予期する適応症の例示及び証拠を提供する。
(アデニンの高血糖、糖尿病前症、インスリン抵抗性、II型糖尿病に対する治療)
近来、メトホルミン、A769662、AICARを含むAMPK活性化剤は、糖尿病または肥満症のマウスモデルにおいて、血漿グルコース濃度を低下させることが報告されている。本発明において、1μM〜600μMのアデニンは、筋細胞C2C12のグルコース摂取を著しく増加させる(表2)。さらに、高脂肪飼料をマウスに与えてII型糖尿病動物モデルとして、アデニンの血漿グルコース濃度に対する調節効果を評価する。コントロール群である高脂肪飼料給餌マウスに比べて、アデニンを与えることにより、高脂肪飼料給餌マウスの血漿グルコースを30%以上著しく減少させ、血漿トリグリセリドを35%以上減少させ、体重を15%以上減少させる(実施例3)。ここで使用する用語「高血糖」とは、血糖が126mg/dLより高いことを特徴とする生理的状況である。ここで使用する用語「糖尿病前症」とは、空腹時血糖が100mg/dLより高く、140mg/dLより低いことを特徴とする生理的状況である。ここで使用する用語「インスリン抵抗性」とは、全身または肝臓、骨格筋、脂肪組織を含む組織がインスリンに反応しない生理的状況である。ここで使用する用語「II型糖尿病」とは、インスリン非依存型糖尿病または成人発症型糖尿病をも意味し、代謝異常によるインスリン生産不足またはインスリン抵抗性であり、通常、空腹時血糖が140mg/dLより高いことを特徴とする。この実施例に基づき、アデニンは、グルコースの摂取を加速させることが証明されているため、高血糖に関連する生理的状況または疾患の有効な治療方法としてもよい。
(アデニンの炎症性疾患に対する治療)
様々なAMPK活性化剤は、生体内において抗炎症機能を有することが証明されている。例えば、5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミドリボヌクレオシド(AICAR)は、マウスモデルにおいて、トリニトロベンゼンスルホン酸またはデキストラン硫酸ナトリウムによる再発性急性結腸炎を緩和することができ、AICARによる治療で、疾患マウスの体重減少を著しく低下させ、炎症反応を軽減することが証明されている。また、AICARは、ヒト多発性硬化症の動物モデル(EAE) に明らかな治療効果を有し、リポ多糖誘発性マウス肺損傷の重篤程度を低下させる。本発明において、アデニンは、in vitro試験で、リポ多糖誘発性炎症反応を抑制する。即ち、リポ多糖の刺激下で、アデニンで処理されたマクロファージにおける腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)及びインターロイキン−6(IL−6)を含む炎症性サイトカインの分泌量は、コントロール群に比べて、有意的に減少する。アデニンは、ヒトのマクロファージのリポ多糖誘発により発現するシクロオキシゲナーゼ−2発現量をも減少させる(実施例4)。トリニトロベンゼンスルホン酸誘発の炎症性腸疾患(IBD)のマウスモデルにおいて、アデニン投与治療群の腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンγ(INFγ)及びインターロイキン(IL−17)を含む結腸炎症性サイトカインは、いずれもコントロール群マウスより著しく減少し、かつ、体重損失が改善される(実施例5)。
ここで使用する用語「炎症性サイトカイン」とは、全身性炎症反応を促進するサイトカインである。ここで使用する用語「炎症性疾患」とは、炎症に関連する疾患であり、強直性脊椎炎、関節炎(骨関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎)、喘息、アテローム性動脈硬化、クローン病、結腸炎、皮膚炎、大腸憩室症、線維筋痛症、肝炎、過敏性腸症候群、全身性エリテマトーデス、腎炎、アルツハイマー病、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎等を含むが、これらに限定されない。近年、多くの報告では、AMPKは、シクロオキシゲナーゼ−2の上流調節因子であり、シクロオキシゲナーゼ−2のタンパク質発現を抑制することができる。先行研究と符合しており、本発明者は、新規なAMPK活性化剤であるアデニンが、シクロオキシゲナーゼ−2のタンパク質発現を有効に抑制することができることを見出し、これにより、アデニンは、シクロオキシゲナーゼ−2の参与する炎症を抑制することができることが分かる。本発明によれば、アデニンは、炎症を抑制することができることが見出されるため、炎症に関連する生理的状況または疾患を治療することができる。
(創傷治癒及び瘢痕形成においてのアデニン)
AMPKは、細胞の運動性を促進し、創傷治癒を強化することができると考えられる。AMPK活性化剤であるレスベラトロールは、手術傷口の治癒を強化することができることが証明されている。創傷治癒のほか、治癒の過程において瘢痕形成の減少は常に現代医学の一番の目標である。新生児の創傷治癒は、成人の創傷治癒と異なり、瘢痕形成を伴わず、その差異は、シクロオキシゲナーゼ−2の活性化によるものである。成人の創傷治癒の過程において、シクロオキシゲナーゼ−2の活性はTGF−betaにより上昇するため、傷口でのプロスタグランジンの生産を増加させる。プロスタグランジンは、繊維芽細胞の増殖及びコラーゲンの形成を促進することができることが証明されており、この二つの要素は瘢痕形成を引き起こす。そのため、シクロオキシゲナーゼ−2の活性の抑制は、瘢痕形成を有効に予防することができると考えられる。本発明において、アデニンは、繊維芽細胞の成長を抑制し(実施例8)、シクロオキシゲナーゼ−2のタンパク質発現を低下させる。動物モデルにおいて、傷口にアデニンを直接に施用することにより、創傷治癒を強化することができるだけでなく、瘢痕生成を減少することもできる(実施例9)。上記の資料によれば、局部にアデニンを施用することにより、有効に創傷治癒を強化し、瘢痕形成を防止することができる。
(神経変性)
炎症、細胞内輸送、オートファジー等を含む多くの細胞メカニズムの欠陥は、神経変性疾患と関連することが証明されている。オートファジーの機能は、細胞内の機能喪失したオルガネラまたはタンパク質集団を除去し、細胞内のバランスに重要な役割を担う。多くの神経変性疾患の発症メカニズムは、細胞内または細胞外のタンパク質集団の沈着と関わり、そのタンパク質集団の除去は、これらの疾患の進行を改善できることが示されている。また、オートファジーの経路が損なうこと、またはオートファジー担当のタンパク質が除去されることにより、神経変性を引き起こすことが証明されている。AMPKの活性化は、オートファジーの経路を促進することができることが証明されている。そのため、AMPKを活性化することによりオートファジーの経路を促進することは、神経変性疾患を予防または制御するための有効な手段とされている。AMPK活性化剤は、オートファジーの経路により、アミロイドの沈着を減少させることができることが証明されている。毎日、AMPK活性化剤であるレスベラトロールを与えることにより、アルツハイマー病マウスの寿命を増加させることができる。もう一つのAMPK活性化剤であるクルクミンは、アルツハイマー病治療の潜在的な薬物として使用できることが証明されている。本発明において、本発明者は、アデニンが神経細胞Neuro−2Aにおいてオートファジー活性を著しく強化し、Aの累積を低下させ、また、アデニンがアルツハイマー病マウスの認知機能を改善すること(実施例6、7)を見出す。上記の発見によれば、アデニンは、神経変性疾患の治療に用いられる。
ここで使用する用語「神経変性」とは、ニューロンの構造または機能が徐々に喪失する状態である。神経変性疾患は、神経変性の結果であり、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳萎縮症、脊髄性筋萎縮症等を含むが、これらに限定されない。
(反応性酸素種に関連する疾患)
生物組織において、スーパーオキシドラジカル、ヒドロキシルラジカル及び過酸化水素を含む反応性酸素種は、次々と生成されており、また、過量の反応性酸素種は、神経障害性運動失調症網膜色素変性症症候群(NARP)、MELAS症候群、赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群(MERRF)、レーバー遺伝性視神経萎縮症(LHON)、KSS症候群、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、フリードライヒ失調症(FA)及び老化を含む多くの疾患と関連するが、これらに限定されない。多くの研究報告では、AMPK活性化剤、例えば、AICARは、高いグルコース、パルミチン酸またはアルブミンで誘発された状態で、反応性酸素種の生成を減少させることができることが証明されている。本発明において、アデニンは、HUVEC細胞における反応性酸素種の生産を低下させるため(表6)、アデニンは、反応性酸素種に関連する生理的状況または疾患の治療に用いられる。
(癌)
AMPKの活性化は、シクロオキシゲナーゼ−2および哺乳類ラパマイシン標的タンパク質の経路を抑制する。この二つの経路は、癌細胞成長の重要なメカニズムである。シクロオキシゲナーゼ−2および哺乳類ラパマイシン標的タンパク質の癌に対する重要性に基づいて、AMPKを活性化することによりシクロオキシゲナーゼ−2および哺乳類ラパマイシン標的タンパク質の経路を抑制することは、合理的な癌の治療手段であると考えられる。実際、多くの研究報告では、AMPK活性化剤により癌の進行を中断することが証明されており、例えば、フェンホルミン及びメトホルミンは、同種移植の癌マウスモデルにおいて、乳癌腫瘍の進行及び成長を抑制することが見出される。本発明において、アデニンは、ヒト肝癌細胞Hep G2、ヒト乳腺癌細胞MCF7及び結腸癌細胞HT29の細胞成長を抑制する(実施例11)。アデニンのHep G2、MCF7、HT29に対する50%成長抑制濃度は、それぞれ、544.1、537.5、531.9μMである。Hep G2移植マウスモデルにおいて、長期間にわたってアデニンを与えることにより、腫瘍の成長を著しく遅延させる。本発明によれば、アデニンでAMPKを活性化する治療方法は、癌症の形成または進行を予防または制御することができる。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいてさらに説明することにより、当業者が本発明をより理解、かつ、実施することができるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
(AMPK活性の分析)
マウス筋細胞C2C12、マウス繊維芽細胞3T3、ヒト肝癌細胞Hep G2、ヒト乳腺癌細胞MCF7、ヒト結腸癌細胞HT29ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVEC、ヒト急性単球白血球細胞株THP1、ヒトマクロファージU937、マウス小膠細胞BV−2、神経芽細胞腫細胞Neuro2A及び毛乳頭細胞Dermal Papillaについて、アデニンのAMPKリン酸化に対する影響の分析を行った。細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS)、4mMのL‐グルタミン、2mMのピルビン酸ナトリウム及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen GibcoBRL、Carlsbad、CA、USA)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%COの環境下でインキュベートされた。3×10個の細胞を6−wellプレートに播種し、24時間後、細胞を所定の化合物で30分間処理し、次に、細胞を溶解してウエスタンブロットで分析を行った。等量のタンパク質をドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、続いて、ポリフッ化ビニリデン膜に転写した。転写されたポリフッ化ビニリデン膜を、3%のウシ血清アルブミンを溶解したPBS緩衝液に60分間浸漬した後、それぞれ、抗リン酸化AMPK(Thr172)抗体(1:2000、Cell signaling)、抗AMPK抗体(1:2000、Cell signaling)を加え、4℃で作用させた。16時間後、対応する二次抗体を加え、室温で1時間反応させた。免疫反応を有するバンドを冷光基質で検出し、ネガフィルムで信号を記録した。得られた信号をスキャンした後、TotalLab Quantソフトウェア(TotalLab)で分析を行った。
アデニンのAMPK活性化に対する影響を表1にまとめた。全ての被検細胞において、アデニンは活性化AMPKを示した:。
Figure 2019123744
Figure 2019123744
実施例2
(グルコース摂取のin vitro分析)
蛍光グルコース類似体(2−NBDG、Molecular Probes)を用いて、筋細胞C2C12において、アデニンのグルコース摂取に対する影響を分析した。C2C12細胞を、各濃度のアデニンで、37℃で30分間処理した後、500μMの蛍光グルコース類似体を加え、室温で5分間インキュベートし、その後、細胞をKreb−Hepes緩衝液で三回洗浄し、70%のエタノールで固定した。細胞内におけるグルコース類似体の蛍光を蛍光光度計で検出した。
アデニンのグルコース摂取に対する影響を表2にまとめた。アデニンは、C2C12細胞のグルコース摂取を著しく促進し、また、濃度依存性を有する。データは、三つの独立した実験の平均値±標準偏差で示される。
Figure 2019123744
実施例3
(アデニンの抗糖尿病効果)
アデニンの血漿グルコースレベル調節に対する影響をさらに評価するために、高脂肪飼料給餌マウスをII型糖尿病動物モデルとして試験を行った。C57BL/6Jマウスを、22℃、12時間の明暗サイクルで飼育し、飲食としては無制限に高脂肪飼料(60%kcal%fat)または正常飼料で給餌した。24週齢のマウスに0.1〜50mg/kgのアデニンを腹腔注射で与え、注射後1時間と3時間で血糖値を測定した。高脂肪飼料給餌マウスを一日2回、6日連続に腹腔注射し、最後の一回の投与の1時間後、血漿を収集して、血漿グルコース及びトリグリセリドの含有量を測定した。
生理食塩水が投与された高脂肪飼料給餌マウスに比べて、アデニンは、血漿グルコース量を30%より多く減少させ、トリグリセリド量を35%より多く減少させ、体重を15%以上減少させた。
実施例4
(アデニンのリポ多糖誘発性炎症反応に対する抑制)
ヒトマクロファージにおいて、シクロオキシゲナーゼ−2タンパク質の量及び腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)及びインターロイキン−6(IL−6)の分泌量を検出することにより、アデニンの炎症反応に対する影響を評価した。50nM PMAで24時間処理することにより、ヒト急性単球白血球細胞株THP1をマクロファージに分化誘導させた。THP1マクロファージを、さらに10〜600μMのアデニンまたは担体を含有する50ngのリポ多糖で6時間刺激し、次に、細胞を溶解してウエスタンブロットで分析を行った。等量のタンパク質をドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、続いて、ポリフッ化ビニリデン膜に転写した。転写されたポリフッ化ビニリデン膜を、3%ウシ血清アルブミンを溶解したPBS緩衝液に60分間浸漬した後、それぞれ、抗シクロオキシゲナーゼ−2抗体(1:1000、Cell signaling)、抗アクチン抗体(1:5000、Cell signaling)を加え、4℃で作用させた。16時間後、対応する二次抗体を加え、室温で1時間反応させた。免疫反応を有するバンドを冷光基質で検出し、ネガフィルムで信号を記録した。得られた信号をスキャンした後、TotalLab Quantソフトウェア(TotalLab)で分析を行った。腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)及びインターロイキン−6(IL−6)の分泌量を、酵素結合免疫吸着法で分析した。
アデニンの免疫反応に対する影響を表3にまとめた。コントロール群胞に比べて、アデニンで処理されたマクロファージは、シクロオキシゲナーゼ−2タンパク質の発現量及び腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)及びインターロイキン−6(IL−6)の分泌量がいずれも著しく低下した。
Figure 2019123744
実施例5
(アデニンの生体におけるトリニトロベンゼンスルホン酸誘発性炎症反応に対する抑制)
さらに、トリニトロベンゼンスルホン酸誘発性炎症性腸疾患(IBD)マウスモデルで、アデニンの炎症反応に対する影響を評価した。C57BL/6Jマウスを、22℃、12時間の明暗サイクルで飼育した。0.5mg、0.75mg、1.0mg、1.25mgおよび1.5mgという五段階で上昇させた量のトリニトロベンゼンスルホン酸を、それぞれ、50%のエタノールに溶解させ、毎週マウスに0.1mL与えて、再発性結腸炎を誘発した。3回目でトリニトロベンゼンスルホン酸を与えた後、毎日腹腔注射でマウスにアデニン(0.01、0.1、5または30mg/kg体重)及び生理食塩水を与えた。五回目でトリニトロベンゼンスルホン酸を与えた後、その二日後、マウスを犠牲にした。結腸組織溶解液の炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンγ(INFγ)、及びインターロイキン(IL−17)を酵素結合免疫吸着法で分析した。
コントロール群マウスに比べて、アデニン投与治療群の腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンγ(INFγ)及びインターロイキン(IL−17)を含む結腸炎症性サイトカインはいずれも著しく減少し、体重損失を改善した。
実施例6
(アミロイドペプチド及びオートファジー活性の分析)
神経芽細胞腫細胞Neuro2Aで、アデニンのアミロイドβペプチドに対する影響を分析した。
Neuro2A細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS)、4mMのL‐グルタミン、2mMのピルビン酸ナトリウム及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen GibcoBRL、Carlsbad、CA、USA)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%COの環境下でインキュベートされた。3×10個の細胞を6−wellプレートに播種し、24時間後、細胞をAPP695でトランスフェクトし、細胞をアデニンで24時間処理し、次に、細胞を溶解してウエスタンブロットで分析を行った。等量のタンパク質をドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、続いて、ポリフッ化ビニリデン膜に転写した。転写されたポリフッ化ビニリデン膜を、3%のウシ血清アルブミンを溶解したPBS緩衝液に60分間浸漬した後、それぞれ、抗アミロイドβペプチド抗体(1:1000、Abeam)、抗LC3抗体(1:1000、Cell signaling)、抗アクチン抗体(1:5000、Cell signaling)を加え、4℃で作用させた。16時間後、対応する二次抗体を加え、室温で1時間反応させた。免疫反応を有するバンドを冷光基質で検出し、ネガフィルムで信号を記録した。得られた信号をスキャンした後、TotalLab Quantソフトウェア(TotalLab)で分析を行った。
アデニンのアミロイドβペプチド及びLC3−II/LC3−Iの割合に対する影響を表4にまとめた。Neuro2A細胞において、アデニンは、有意にアミロイドβペプチド量を減少させ、LC3−II/LC3−Iの割合を増加させた。LC3−IからLC3−IIへの変換は、オートファジーの活性を示すため、コントロール群細胞に比べて、アデニンで処理された細胞においてより高いLC3−II/LC3−Iの割合は、アデニンのオートファジー作用を活性化する機能を表した。
Figure 2019123744
実施例7
(アルツハイマー病実験マウスモデルにおいて、アミロイドβペプチドで誘発された神経変性を、アデニンで救助する)
アミロイドβペプチド25−35は、Sigma−Aldrich(St.Louis、Missouri)から購入された。ペプチドを無菌生理食塩水に溶解させ、注射する前は、37℃で7日インキュベートした。C57BL/6Jマウスを、22℃、12時間の明暗サイクルで飼育した。成体マウスを、ケタミン(ketamine、500mg/kg)及びxyline(100mg/kg)で麻酔し、定位注射装置に置いた。5nmolのアミロイドβペプチド25−35を10μl注射器で側脳室に注射した。側脳とは、大泉門に対して、座標が−0.5mm(前後方向)、±1mm(内外側方向)、−2.5mm(背腹方向)であるものである。アミロイドβペプチド注射マウスに、毎日腹腔注射でアデニンまたは生理食塩水を与え、アデニンの注射量が0.01、0.1、5または30mg/kg体重であり、4週間連続で注射した。4週間後、マウスの認知機能を、モリス水迷路で分析した。水迷路は円形プールで行われ、プラットフォームを目標象限の水面下に設置して、隠されたプラットフォーム試験を行った。5日間の隠されたプラットフォーム試験の期間において、毎回の試験では、マウスをプール内にランダムに置いて起点とし、毎日6回試験を行った。5日間の隠されたプラットフォーム試験後の1日は、探索性試験を行った。探索性試験を行った際、隠されたプラットフォームを除去し、目標象限に相対する象限を起点とした。ビデオカメラで、マウスの迷路において泳ぐ状態を60秒間記録し、ソフトウェアで、マウスのプラットフォームを探した時間及び泳ぐ経路を分析した。
隠されたプラットフォーム試験において、コントロール群マウスに比べて、アデニンで治療されたマウスは、プラットフォームを探すのにかかる時間が有意に減少した。この試験結果では、アデニンがアルツハイマー病実験マウスの損傷した学習及び記憶機能を救助することができることを証明した。また、アデニンで治療されたマウスは、探索性試験において、目標象限に停留した時間がコントロール群マウスより長いことから、アデニンが記憶保存を促進させることを証明した。
実施例8
(アデニンの繊維芽細胞成長に対する抑制)
ヒト繊維芽細胞株3T3は、10%のウシ胎児血清(FBS)、4mMのL‐グルタミン、2mMのピルビン酸ナトリウム及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen GibcoBRL、Carlsbad、CA、USA)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%COの環境下でインキュベートされた。細胞成長試験において、1×10個の細胞を6−wellプレートに播種し、24時間後、所定の濃度のアデニンで細胞を72時間処理し、生存細胞数を計算した。細胞をトリプシン−EDTAで分離し、トリパンブルーで染色し、血球計数器で生存細胞数を計算した。
アデニンの3T3細胞成長に対する影響を表5にまとめた。表5の結果から、アデニンは、3T3細胞の成長を著しく抑制し、また、使用量依存性を有することが分かった。データは、三つの独立した実験の平均値±標準偏差で示される。
Figure 2019123744
実施例9
(アデニンが、創傷治癒を強化し、瘢痕形成を抑制する)
C57BL/6Jマウスを22℃、12時間の明暗サイクルで飼育した。12週齢成体マウスをケタミン(500mg/kg)及びxyline(100mg/kg)で麻酔し、マウスの背部に6−mm皮膚サンプラーで傷口を作った。傷口を形成した後、傷口に10〜1200μMのアデニンまたは食塩水を施用した。皮膚傷口を接着させ、半透性透明シートで傷口の被覆材を固定した。マウスをアデニンまたは生理食塩水で14日処理した後、犠牲にした。瘢痕形成は、マッソン三色染色で分析された(組織を4%のパラホルムアルデヒドで固定した)。
14日間の処理後、アデニンで処理された傷口の治癒速度は、コントロール群より速く、また、組織染色分析によると、アデニンで処理された傷口の再生組織の瘢痕は、コントロール群の傷口に比べて、著しく小さかった。
実施例10
(アデニンは、反応性酸素種の生成を低下させる)
ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECは、10%のウシ胎児血清(FBS)、4mMのL‐グルタミン、2mMのピルビン酸ナトリウム及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen GibcoBRL、Carlsbad、CA、USA)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%COの環境下でインキュベートされた。2×10個の細胞を96−well黒プレートに播種し、24時間後、インキュベート培地を5.6または30mMのグルコースを含むDMEMインキュベート培地に置換し、所定の濃度のアデニンを加えた。24時間処理した後、細胞内の反応性酸素種をH2DCF−DAで検出した。細胞をPBS緩衝液で1回洗浄した後、100μMのDCFに、37℃で30分間インキュベートした。DCF蛍光をプレート型蛍光分析装置で分析した(励起波長:485nm、散乱波長:530nm)。
アデニンの反応性酸素種生成に対する影響を表6にまとめた。アデニンは、高グルコースで誘発された反応性酸素種の生成を有意に減少させ、また、使用量依存性を有する。
Figure 2019123744
実施例11
(癌細胞成長抑制試験)
ヒト肝癌細胞Hep G2、ヒト乳腺癌細胞MCF7及びヒト結腸癌細胞HT29で、アデニンの癌細胞成長に対する影響を行った。細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS)、4mMのL‐グルタミン、2mMのピルビン酸ナトリウム及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen GibcoBRL、Carlsbad、CA、USA)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%COの環境下でインキュベートされた。1×10個の細胞を6−wellプレートに播種し、24時間後、所定の濃度のアデニンで細胞を72時間処理し、生存細胞数を計算した。細胞をトリプシン−EDTAで分離し、トリパンブルーで染色し、血球計数器で生存細胞数を計算した。
アデニンのHep G2、MCF7、HT29に対する50%成長抑制濃度は、それぞれ、544.1、537.5、531.9μMである。
実施例12
(腫瘍成長試験)
ヒト肝癌細胞Hep G2は、10%のウシ胎児血清(FBS)、4mMのL‐グルタミン、2mMのピルビン酸ナトリウム及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen GibcoBRL、Carlsbad、CA、USA)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%COの環境下でインキュベートされた。5×10個の細胞を皮下注射で8週齢NOD−SCIDマウスに注射した。移植後、毎日腹腔注射でマウスに5、20、50mg/kg体重のアデニンを与え、3日ごとに腫瘍の大きさを測定した。移植後の14日、コントロール群マウスに比べて、アデニンを与えることにより、腫瘍の成長を著しく遅延させた。
上記の実施例は、本発明を十分に説明するために挙げられた好ましい実施例に過ぎず、本発明の保護範囲は、これらに限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本発明の内容に基づいて行った同等の置換または変化は、本発明の保護範囲内である。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に基づいている。
本発明は、AMPK(AMP−活性化プロテインキナーゼ)の活性化に適用される化合物であるアデニンに関し、さらに、当該化合物を使用して生理的状況または疾患を予防または治療することに関する。
AMPKは、確実に、細胞エネルギーのセンサー、及びエネルギー要求を応答するものである。AMPKは、触媒性αサブユニット、調節性β、γサブユニットから構成されるヘテロ三量体であり、全てのサブユニットが真核生物において高度な保存性を有する。AMPKの活性化は、その上流キナーゼ、例えば、LKB1、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ(Ca2+/Calmodulin dependent kinase)及びTAK1により、αサブユニットの保存性を有する172スレオニン残基をリン酸化し、生理的または病理的ストレスによってAMP/ATP比が高くなり、AMPKを活性化する。AMPKを活性化した後は、分解代謝の経路を促進して合成代謝を抑制し、ATP消耗の減少及びATP生成の促進により、細胞のエネルギーのバランスを回復する。
AMPKは、エネルギー代謝のバランスを調節するものとして、II型糖尿病、心血管疾患、脂肪肝等を含むメタボリックシンドロームに対しては、潜在力を有する薬物標的であると認識されている。多くのメタボリックシンドロームは、インスリン抵抗性と関わる。インスリン抵抗性は、病理的状態であり、この状態では細胞がインスリンに応答できないため、血液中の過量のグルコースが骨格筋または脂肪組織に取り込まれなくなる。筋細胞において、AMPKの活性化は、インスリン非依存性の方式で、転写の制御により、グルコース輸送体(GLUT4)の発現量を増加させ、GLUT4の細胞膜上への移行を誘導し、細胞のグルコース摂取速度を増加させる。AMPKの活性化は、それぞれ、アセチルCoAカルボキシラーゼ(acetyl−CoA carboxylase)及びヒドロキシメチルグルタリルCoA還元酵素(HMG−CoA reductase)を抑制することによって、脂肪酸及びコレステロールの合成を抑制する。また、AMPKの活性化によって、SREBP−1c、ChREBP、HNF−4aを含む複数の転写因子を抑制し、脂肪酸合成の調節及び糖新生作用に関する酵素のタンパク質の発現を低下させる。上記の研究はいずれも、AMPKが、メタボリックシンドローム、特に、糖尿病の治療の標的であることを支持する。
AMPKは、エネルギー代謝のバランスの調節の他、炎症反応、細胞成長(cell growth)、アポトーシス、オートファジー、老化及び分化を含む複数の細胞メカニズムの調節にも参与する。多くの研究では、AMPKが炎症反応を抑制するものであることが示される。AMPKの活性化は、細胞核の転写因子(NF−κB)のシグナル伝達を抑制することにより、炎症反応を抑制する。細胞核の転写因子のシグナル伝達は、先天性免疫及び後天性免疫を活性化する主要な経路であり、AMPKが活性化した後は、SIRT1、フォークヘッドボックスO(FoxO)またはペルオキシソーム増殖剤活性化受容体コアクチベーター1α(PGC1α)を刺激することにより、細胞核の転写因子の転写活性を抑制して、炎症反応を抑制する効果を達成する。また、複数の研究室では、AMPKの活性化が、シクロオキシゲナーゼ−2(cyclooxygenase−2、COX−2)のタンパク質の発現を抑制することが証明されている。シクロオキシゲナーゼ−2は、炎症性サイトカイン及び成長因子により制御される誘導型酵素であり、その機能としては、アラキドン酸をプロスタグランジンに転化することにより、炎症反応及び疼痛を発生させるので、シクロオキシゲナーゼの活性または発現を抑制し、抗炎症作用を有することが証明されている。
複数のAMPK活性化剤は、in vivo実験において抗炎症機能を有することが証明されている。例えば、5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミドリボヌクレオシド(AICAR)は、マウスモデルにおいて、トリニトロベンゼンスルホン酸またはデキストラン硫酸ナトリウムによる再発性急性結腸炎を緩和することができ、AICARによる治療で、疾患マウスの体重減少を著しく低下させ、炎症反応を軽減することが証明されている。また、AICARは、ヒト多発性硬化症の動物モデル(EAE)に明らかな治療効果を有し、リポ多糖誘発性マウス肺損傷の重篤程度を低下させる。
細胞シグナル伝達経路の異常は、細胞の異常増殖を引き起こす可能性があり、最終的には癌を引き起こすことになる。哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)は、細胞成長及びオートファジー作用を制御するセリン/スレオニンキナーゼである。哺乳類ラパマイシン標的タンパク質のシグナル伝達経路の活性化異常は、様々な癌において見出されるため、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質の抑制剤は、癌治療の潜在的な薬物であると考えられる。多くの研究では、AMPKで結節性硬化症複合体2(TSC2)及びラプター(Raptor)をリン酸化することにより、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質の経路の抑制を達成することが証明されている。AICAR、メトホルミン、フェンホルミンを含む各種類のAMPK活性化剤は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質シグナルの経路を抑制し、癌細胞の成長を抑制することが証明されている。また、AMPKの活性化は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体−1を抑制することにより、オートファジー作用を誘発させる。AMPKが、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体−1を抑制するため、Ulk1上の757セリンのリン酸化が減少し、その後、317及び777セリンはAMPKによりリン酸化され、Ulk1はAMPKによりリン酸化された後、オートファジー作用が開始される。
以上のように、AMPKは、炎症性疾患、創傷治癒、神経変性、癌、酸化ストレス、及び心血管疾患を含む多くの人類疾患または病理的状況に対して、良好な治療標的であると考えられる。実際、AMPK活性化剤は、細菌及び真菌による疾患、行動及び心理障害、血液及びリンパ疾患、癌、腫瘍、消化器疾患、耳鼻咽喉疾患、眼疾、腺及びホルモンに関連する疾患、心血管疾患、免疫系疾患、口及び歯疾患、筋肉・骨格・軟骨疾患、神経系疾患、栄養及び代謝性疾患、呼吸器疾患、皮膚及び結合組織疾患、創傷治癒等を含む少なくとも24種類の疾患の臨床試験に適用されている。
本発明は、新規なAMPK活性化剤であるアデニン、及び当該化合物の疾患を予防または治療するための使用を提供する。
本発明は、AMPKを活性化するための化合物であって、アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩である化合物を提供する。
上記化合物は、AMPK活性化剤で改善できる疾患または生理的状況を治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、細胞における炎症性サイトカインの分泌及びシクロオキシゲナーゼ−2の発現を低下させることにより、炎症性生理的状況または疾患を治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、細胞にグルコースの摂取を増加させることにより、糖尿病前症、II型糖尿病及びメタボリックシンドロームからなる群から選ばれる生理的状況または疾患を予防または治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、哺乳動物の血漿トリグリセリド及び体重を減少させることにより、肥満状態を予防または治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、細胞におけるアミロイドβペプチドの累積を抑制することにより、アルツハイマー病を予防または治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、細胞のオートファジーの活性を強化することにより、オートファジー作用で改善できる疾患または生理的状況を治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、繊維芽細胞の成長を抑制することにより、創傷治癒の過程において瘢痕形成を抑制するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳上化合物に与える。
上記化合物は、創傷治癒を強化するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、細胞の活性酸素種の生成を抑制することにより、哺乳動物において、活性酸素種に傷つけられる細胞を保護及び治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
上記化合物は、癌細胞の成長を抑制することにより、癌を予防または治療するものである。その中、上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える。
本発明は、AMPK活性化剤で改善できる疾患または生理的状況を治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、炎症性生理的状況または疾患を治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、糖尿病前症、II型糖尿病、メタボリックシンドロームの一つまたはその組み合わせである生理的状況または疾患を予防または治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、アルツハイマー病を予防または治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、オートファジー作用で改善できる疾患または生理的状況を治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、創傷治癒の過程において瘢痕形成を抑制する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、創傷治癒を強化する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、哺乳動物において、活性酸素種に傷つけられる細胞を保護及び治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
本発明は、癌を予防または治療する薬物を調製するための、上記化合物の使用を提供する。
上記の内容をまとめると、本発明の実施形態によれば、新規なAMPK活性化剤であるアデニンを提供することで、細胞内でAMPKを活性化することができるため、哺乳動物において、AMPKで改善できる生理的状況または疾患を予防または治療することができる。
本発明の実施形態によれば、AMPKを活性化することにより血糖を低下させる方法を提供することで、メタボリックシンドローム、糖尿病前症、II型糖尿病、インスリン抵抗性を含む疾患を予防または治療する。その中、治療を必要とする哺乳動物に、有効量のアデニン及び/または医薬学的に許容できる塩を与える。
本発明の実施形態によれば、AMPKを活性化することにより抗炎症的方法を提供することで、炎症性状況または疾患を予防または治療する。その中、治療を必要とする哺乳動物に、有効量のアデニン及び/または医薬学的に許容できる塩を与える。
本発明の実施形態によれば、AMPKを活性化することにより繊維芽細胞の成長を抑制する方法を提供することで、創傷治癒の期間で瘢痕組織の生成を予防する。
本発明の実施形態によれば、創傷治癒を強化する方法を提供する。その中、治療を必要とする哺乳動物に、有効量のアデニン及び/または医薬学的に許容できる塩を与える。
本発明の実施形態によれば、性酸素種(ROS)の生成を抑制する方法を提供することで、性酸素種の傷害から哺乳動物の細胞を保護または治療する。その中、治療を必要とする哺乳動物に、有効量のアデニン及び/または医薬学的に許容できる塩を与える。
本発明の実施形態によれば、癌細胞の成長を抑制する方法を提供することで、癌を予防または治療する。その中、治療を必要とする哺乳動物に、有効量のアデニン及び/または医薬学的に許容できる塩を与える
本発明は、AMPKの活性化に適用される化合物であるアデニンに関し、また、糖尿病前症、インスリン抵抗性、II型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症、炎症、創傷治癒、アルツハイマー病、癌、酸化ストレス及び心血管疾患を含む生理的状況または疾患を予防または治療するためのアデニンの使用に関する。
本発明では、アデニンが、新規なAMPK活性化剤であり、様々な生物性機能を有することを見出す。近年、AMPKの活性化は、疾患、例えば糖尿病前症、インスリン抵抗性、II型糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症、炎症、創傷治癒、アルツハイマー病、癌症、酸化ストレス、心血管疾患の予防及び治療、並びに創傷治癒の促進に寄与することが証明されている。本発明では、この効果は、AMPKの活性化による、シクロオキシゲナーゼ−2発現量の低下、性酸素種(ROS)生産の抑制、及びグルコース摂取活性の増加に起因すると考えられるが、これらに限定されない。
<予期する適応症>
本発明の研究成果(実施例をご参照)に基づき、アデニンは、AMPKを活性化することにより、様々な生理的状況または疾患の治療剤として使用できる。以下、予期する適応症の例示及び証拠を提供する。
(アデニンの高血糖、糖尿病前症、インスリン抵抗性、II型糖尿病に対する治療)
近来、メトホルミン、A769662、AICARを含むAMPK活性化剤は、糖尿病または肥満症のマウスモデルにおいて、血漿グルコース濃度を低下させることが報告されている。本発明において、1μM〜600μMのアデニンは、筋細胞C2C12のグルコース摂取を著しく増加させる(表2)。さらに、高脂肪飼料をマウスに与えてII型糖尿病動物モデルとして、アデニンの血漿グルコース濃度に対する調節効果を評価する。コントロール群である高脂肪飼料給餌マウスに比べて、アデニンを与えることにより、高脂肪飼料給餌マウスの血漿グルコースを30%以上著しく減少させ、血漿トリグリセリドを35%以上減少させ、体重を15%以上減少させる(実施例3)。ここで使用する用語「高血糖」とは、血糖が126mg/dLより高いことを特徴とする生理的状況である。ここで使用する用語「糖尿病前症」とは、空腹時血糖が100mg/dLより高く、140mg/dLより低いことを特徴とする生理的状況である。ここで使用する用語「インスリン抵抗性」とは、全身または肝臓、骨格筋、脂肪組織を含む組織がインスリンに反応しない生理的状況である。ここで使用する用語「II型糖尿病」とは、インスリン非依存型糖尿病または成人発症型糖尿病をも意味し、代謝異常によるインスリン生産不足またはインスリン抵抗性であり、通常、空腹時血糖が140mg/dLより高いことを特徴とする。この実施例に基づき、アデニンは、グルコースの摂取を加速させることが証明されているため、高血糖に関連する生理的状況または疾患の有効な治療方法としてもよい。
(アデニンの炎症性疾患に対する治療)
様々なAMPK活性化剤は、生体内において抗炎症機能を有することが証明されている。例えば、5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミドリボヌクレオシド(AICAR)は、マウスモデルにおいて、トリニトロベンゼンスルホン酸またはデキストラン硫酸ナトリウムによる再発性急性結腸炎を緩和することができ、AICARによる治療で、疾患マウスの体重減少を著しく低下させ、炎症反応を軽減することが証明されている。また、AICARは、ヒト多発性硬化症の動物モデル(EAE) に明らかな治療効果を有し、リポ多糖誘発性マウス肺損傷の重篤程度を低下させる。本発明において、アデニンは、in vitro試験で、リポ多糖誘発性炎症反応を抑制する。即ち、リポ多糖の刺激下で、アデニンで処理されたマクロファージにおける腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)及びインターロイキン−6(IL−6)を含む炎症性サイトカインの分泌量は、コントロール群に比べて、有意的に減少する。アデニンは、ヒトのマクロファージのリポ多糖誘発により発現するシクロオキシゲナーゼ−2発現量をも減少させる(実施例4)。トリニトロベンゼンスルホン酸誘発の炎症性腸疾患(IBD)のマウスモデルにおいて、アデニン投与治療群の腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンγ(INFγ)及びインターロイキン(IL−17)を含む結腸炎症性サイトカインは、いずれもコントロール群マウスより著しく減少し、かつ、体重損失が改善される(実施例5)。
ここで使用する用語「炎症性サイトカイン」とは、全身性炎症反応を促進するサイトカインである。ここで使用する用語「炎症性疾患」とは、炎症に関連する疾患であり、強直性脊椎炎、関節炎(骨関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎)、喘息、アテローム性動脈硬化、クローン病、結腸炎、皮膚炎、大腸憩室症、線維筋痛症、肝炎、過敏性腸症候群、全身性エリテマトーデス、腎炎、アルツハイマー病、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎等を含むが、これらに限定されない。近年、多くの報告では、AMPKは、シクロオキシゲナーゼ−2の上流調節因子であり、シクロオキシゲナーゼ−2のタンパク質発現を抑制することができる。先行研究と符合しており、本発明者は、新規なAMPK活性化剤であるアデニンが、シクロオキシゲナーゼ−2のタンパク質発現を有効に抑制することができることを見出し、これにより、アデニンは、シクロオキシゲナーゼ−2の参与する炎症を抑制することができることが分かる。本発明によれば、アデニンは、炎症を抑制することができることが見出されるため、炎症に関連する生理的状況または疾患を治療することができる。
(創傷治癒及び瘢痕形成においてのアデニン)
AMPKは、細胞の運動性を促進し、創傷治癒を強化することができると考えられる。AMPK活性化剤であるレスベラトロールは、手術傷口の治癒を強化することができることが証明されている。創傷治癒のほか、治癒の過程において瘢痕形成の減少は常に現代医学の一番の目標である。新生児の創傷治癒は、成人の創傷治癒と異なり、瘢痕形成を伴わず、その差異は、シクロオキシゲナーゼ−2の活性化によるものである。成人の創傷治癒の過程において、シクロオキシゲナーゼ−2の活性はTGF−betaにより上昇するため、傷口でのプロスタグランジンの生産を増加させる。プロスタグランジンは、繊維芽細胞の増殖及びコラーゲンの形成を促進することができることが証明されており、この二つの要素は瘢痕形成を引き起こす。そのため、シクロオキシゲナーゼ−2の活性の抑制は、瘢痕形成を有効に予防することができると考えられる。本発明において、アデニンは、繊維芽細胞の成長を抑制し(実施例8)、シクロオキシゲナーゼ−2のタンパク質発現を低下させる。動物モデルにおいて、傷口にアデニンを直接に施用することにより、創傷治癒を強化することができるだけでなく、瘢痕生成を減少することもできる(実施例9)。上記の資料によれば、局部にアデニンを施用することにより、有効に創傷治癒を強化し、瘢痕形成を防止することができる。
(神経変性)
炎症、細胞内輸送、オートファジー等を含む多くの細胞メカニズムの欠陥は、神経変性疾患と関連することが証明されている。オートファジーの機能は、細胞内の機能喪失したオルガネラまたはタンパク質集団を除去し、細胞内のバランスに重要な役割を担う。多くの神経変性疾患の発症メカニズムは、細胞内または細胞外のタンパク質集団の沈着と関わり、そのタンパク質集団の除去は、これらの疾患の進行を改善できることが示されている。また、オートファジーの経路が損なうこと、またはオートファジー担当のタンパク質が除去されることにより、神経変性を引き起こすことが証明されている。AMPKの活性化は、オートファジーの経路を促進することができることが証明されている。そのため、AMPKを活性化することによりオートファジーの経路を促進することは、神経変性疾患を予防または制御するための有効な手段とされている。AMPK活性化剤は、オートファジーの経路により、アミロイドの沈着を減少させることができることが証明されている。毎日、AMPK活性化剤であるレスベラトロールを与えることにより、アルツハイマー病マウスの寿命を増加させることができる。もう一つのAMPK活性化剤であるクルクミンは、アルツハイマー病治療の潜在的な薬物として使用できることが証明されている。本発明において、本発明者は、アデニンが神経細胞Neuro−2Aにおいてオートファジー活性を著しく強化し、Aの累積を低下させ、また、アデニンがアルツハイマー病マウスの認知機能を改善すること(実施例6、7)を見出す。上記の発見によれば、アデニンは、神経変性疾患の治療に用いられる。
ここで使用する用語「神経変性」とは、ニューロンの構造または機能が徐々に喪失する状態である。神経変性疾患は、神経変性の結果であり、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳萎縮症、脊髄性筋萎縮症等を含むが、これらに限定されない。
性酸素種に関連する疾患)
生物組織において、スーパーオキシドラジカル、ヒドロキシルラジカル及び過酸化水素を含む性酸素種は、次々と生成されており、また、過量の性酸素種は、神経障害性運動失調症網膜色素変性症症候群(NARP)、MELAS症候群、赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群(MERRF)、レーバー遺伝性視神経萎縮症(LHON)、KSS症候群、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、フリードライヒ失調症(FA)及び老化を含む多くの疾患と関連するが、これらに限定されない。多くの研究報告では、AMPK活性化剤、例えば、AICARは、高いグルコース、パルミチン酸またはアルブミンで誘発された状態で、性酸素種の生成を減少させることができることが証明されている。本発明において、アデニンは、HUVEC細胞における性酸素種の生産を低下させるため(表6)、アデニンは、性酸素種に関連する生理的状況または疾患の治療に用いられる。
(癌)
AMPKの活性化は、シクロオキシゲナーゼ−2および哺乳類ラパマイシン標的タンパク質の経路を抑制する。この二つの経路は、癌細胞成長の重要なメカニズムである。シクロオキシゲナーゼ−2および哺乳類ラパマイシン標的タンパク質の癌に対する重要性に基づいて、AMPKを活性化することによりシクロオキシゲナーゼ−2および哺乳類ラパマイシン標的タンパク質の経路を抑制することは、合理的な癌の治療手段であると考えられる。実際、多くの研究報告では、AMPK活性化剤により癌の進行を中断することが証明されており、例えば、フェンホルミン及びメトホルミンは、同種移植の癌マウスモデルにおいて、乳癌腫瘍の進行及び成長を抑制することが見出される。本発明において、アデニンは、ヒト肝癌細胞Hep G2、ヒト乳腺癌細胞MCF7及び結腸癌細胞HT29の細胞成長を抑制する(実施例11)。アデニンのHep G2、MCF7、HT29に対する50%成長抑制濃度は、それぞれ、544.1、537.5、531.9μMである。Hep G2移植マウスモデルにおいて、長期間にわたってアデニンを与えることにより、腫瘍の成長を著しく遅延させる。本発明によれば、アデニンでAMPKを活性化する治療方法は、癌症の形成または進行を予防または制御することができる。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいてさらに説明することにより、当業者が本発明をより理解、かつ、実施することができるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
(AMPK活性の分析)
マウス筋細胞C2C12、マウス繊維芽細胞3T3、ヒト肝癌細胞Hep G2、ヒト乳腺癌細胞MCF7、ヒト結腸癌細胞HT29ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVEC、ヒト急性単球白血細胞株THP1、ヒトマクロファージU937、マウス小膠細胞BV−2、神経芽細胞腫細胞Neuro2A及び毛乳頭細胞Dermal Papillaについて、アデニンのAMPKリン酸化に対する影響の分析を行った。細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS)、4mMのL‐グルタミン、2mMのピルビン酸ナトリウム及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen GibcoBRL、Carlsbad、CA、USA)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%COの環境下でインキュベートされた。3×10個の細胞を6−wellプレートに播種し、24時間後、細胞を所定の化合物で30分間処理し、次に、細胞を溶解してウエスタンブロットで分析を行った。等量のタンパク質をドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、続いて、ポリフッ化ビニリデン膜に転写した。転写されたポリフッ化ビニリデン膜を、3%のウシ血清アルブミンを溶解したPBS緩衝液に60分間浸漬した後、それぞれ、抗リン酸化AMPK(Thr172)抗体(1:2000、Cell signaling)、抗AMPK抗体(1:2000、Cell signaling)を加え、4℃で作用させた。16時間後、対応する二次抗体を加え、室温で1時間反応させた。免疫反応を有するバンドを冷光基質で検出し、ネガフィルムで信号を記録した。得られた信号をスキャンした後、TotalLab Quantソフトウェア(TotalLab)で分析を行った。
アデニンのAMPK活性化に対する影響を表1にまとめた。全ての被検細胞において、アデニンは活性化AMPKを示した:。
Figure 2019123744

Figure 2019123744
実施例2
(グルコース摂取のin vitro分析)
蛍光グルコース類似体(2−NBDG、Molecular Probes)を用いて、筋細胞C2C12において、アデニンのグルコース摂取に対する影響を分析した。C2C12細胞を、各濃度のアデニンで、37℃で30分間処理した後、500μMの蛍光グルコース類似体を加え、室温で5分間インキュベートし、その後、細胞をKreb−Hepes緩衝液で三回洗浄し、70%のエタノールで固定した。細胞内におけるグルコース類似体の蛍光を蛍光光度計で検出した。
アデニンのグルコース摂取に対する影響を表2にまとめた。アデニンは、C2C12細胞のグルコース摂取を著しく促進し、また、濃度依存性を有する。データは、三つの独立した実験の平均値±標準偏差で示される。
Figure 2019123744
実施例3
(アデニンの抗糖尿病効果)
アデニンの血漿グルコースレベル調節に対する影響をさらに評価するために、高脂肪飼料給餌マウスをII型糖尿病動物モデルとして試験を行った。C57BL/6Jマウスを、22℃、12時間の明暗サイクルで飼育し、飲食としては無制限に高脂肪飼料(60%kcal%fat)または正常飼料で給餌した。24週齢のマウスに0.1〜50mg/kgのアデニンを腹腔注射で与え、注射後1時間と3時間で血糖値を測定した。高脂肪飼料給餌マウスを一日2回、6日連続に腹腔注射し、最後の一回の投与の1時間後、血漿を収集して、血漿グルコース及びトリグリセリドの含有量を測定した。
生理食塩水が投与された高脂肪飼料給餌マウスに比べて、アデニンは、血漿グルコース量を30%より多く減少させ、トリグリセリド量を35%より多く減少させ、体重を15%以上減少させた。
実施例4
(アデニンのリポ多糖誘発性炎症反応に対する抑制)
ヒトマクロファージにおいて、シクロオキシゲナーゼ−2タンパク質の量及び腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)及びインターロイキン−6(IL−6)の分泌量を検出することにより、アデニンの炎症反応に対する影響を評価した。50nM PMAで24時間処理することにより、ヒト急性単球白血細胞株THP1をマクロファージに分化誘導させた。THP1マクロファージを、さらに10〜600μMのアデニンまたは担体を含有する50ngのリポ多糖で6時間刺激し、次に、細胞を溶解してウエスタンブロットで分析を行った。等量のタンパク質をドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、続いて、ポリフッ化ビニリデン膜に転写した。転写されたポリフッ化ビニリデン膜を、3%ウシ血清アルブミンを溶解したPBS緩衝液に60分間浸漬した後、それぞれ、抗シクロオキシゲナーゼ−2抗体(1:1000、Cell signaling)、抗アクチン抗体(1:5000、Cell signaling)を加え、4℃で作用させた。16時間後、対応する二次抗体を加え、室温で1時間反応させた。免疫反応を有するバンドを冷光基質で検出し、ネガフィルムで信号を記録した。得られた信号をスキャンした後、TotalLab Quantソフトウェア(TotalLab)で分析を行った。腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)及びインターロイキン−6(IL−6)の分泌量を、酵素結合免疫吸着法で分析した。
アデニンの免疫反応に対する影響を表3にまとめた。コントロール群比べて、アデニンで処理されたマクロファージは、シクロオキシゲナーゼ−2タンパク質の発現量及び腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)及びインターロイキン−6(IL−6)の分泌量がいずれも著しく低下した。
Figure 2019123744
実施例5
(アデニンの生体におけるトリニトロベンゼンスルホン酸誘発性炎症反応に対する抑制)
さらに、トリニトロベンゼンスルホン酸誘発性炎症性腸疾患(IBD)マウスモデルで、アデニンの炎症反応に対する影響を評価した。C57BL/6Jマウスを、22℃、12時間の明暗サイクルで飼育した。0.5mg、0.75mg、1.0mg、1.25mgおよび1.5mgという五段階で上昇させた量のトリニトロベンゼンスルホン酸を、それぞれ、50%のエタノールに溶解させ、毎週マウスに0.1mL与えて、再発性結腸炎を誘発した。3回目でトリニトロベンゼンスルホン酸を与えた後、毎日腹腔注射でマウスにアデニン(0.01、0.1、5または30mg/kg体重)及び生理食塩水を与えた。五回目でトリニトロベンゼンスルホン酸を与えた後、その二日後、マウスを犠牲にした。結腸組織溶解液の炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンγ(INFγ)、及びインターロイキン(IL−17)を酵素結合免疫吸着法で分析した。
コントロール群マウスに比べて、アデニン投与治療群の腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンγ(INFγ)及びインターロイキン(IL−17)を含む結腸炎症性サイトカインはいずれも著しく減少し、体重損失を改善した。
実施例6
(アミロイドβペプチド及びオートファジー活性の分析)
神経芽細胞腫細胞Neuro2Aで、アデニンのアミロイドβペプチドに対する影響を分析した。
Neuro2A細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS)、4mMのL‐グルタミン、2mMのピルビン酸ナトリウム及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen GibcoBRL、Carlsbad、CA、USA)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%COの環境下でインキュベートされた。3×10個の細胞を6−wellプレートに播種し、24時間後、細胞をAPP695でトランスフェクトし、細胞をアデニンで24時間処理し、次に、細胞を溶解してウエスタンブロットで分析を行った。等量のタンパク質をドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し、続いて、ポリフッ化ビニリデン膜に転写した。転写されたポリフッ化ビニリデン膜を、3%のウシ血清アルブミンを溶解したPBS緩衝液に60分間浸漬した後、それぞれ、抗アミロイドβペプチド抗体(1:1000、Abeam)、抗LC3抗体(1:1000、Cell signaling)、抗アクチン抗体(1:5000、Cell signaling)を加え、4℃で作用させた。16時間後、対応する二次抗体を加え、室温で1時間反応させた。免疫反応を有するバンドを冷光基質で検出し、ネガフィルムで信号を記録した。得られた信号をスキャンした後、TotalLab Quantソフトウェア(TotalLab)で分析を行った。
アデニンのアミロイドβペプチド及びLC3−II/LC3−Iの割合に対する影響を表4にまとめた。Neuro2A細胞において、アデニンは、有意にアミロイドβペプチド量を減少させ、LC3−II/LC3−Iの割合を増加させた。LC3−IからLC3−IIへの変換は、オートファジーの活性を示すため、コントロール群細胞に比べて、アデニンで処理された細胞においてより高いLC3−II/LC3−Iの割合は、アデニンのオートファジー作用を活性化する機能を表した。
Figure 2019123744
実施例7
(アルツハイマー病実験マウスモデルにおいて、アミロイドβペプチドで誘発された神経変性を、アデニンで救助する)
アミロイドβペプチド25−35は、Sigma−Aldrich(St.Louis、Missouri)から購入された。ペプチドを無菌生理食塩水に溶解させ、注射する前は、37℃で7日インキュベートした。C57BL/6Jマウスを、22℃、12時間の明暗サイクルで飼育した。成体マウスを、ケタミン(ketamine、500mg/kg)及びxylazine(100mg/kg)で麻酔し、定位注射装置に置いた。5nmolのアミロイドβペプチド25−35を10μl注射器で側脳室に注射した。側脳とは、大泉門に対して、座標が−0.5mm(前後方向)、±1mm(内外側方向)、−2.5mm(背腹方向)であるものである。アミロイドβペプチド注射マウスに、毎日腹腔注射でアデニンまたは生理食塩水を与え、アデニンの注射量が0.01、0.1、5または30mg/kg体重であり、4週間連続で注射した。4週間後、マウスの認知機能を、モリス水迷路で分析した。水迷路は円形プールで行われ、プラットフォームを目標象限の水面下に設置して、隠されたプラットフォーム試験を行った。5日間の隠されたプラットフォーム試験の期間において、毎回の試験では、マウスをプール内にランダムに置いて起点とし、毎日6回試験を行った。5日間の隠されたプラットフォーム試験後の1日は、探索性試験を行った。探索性試験を行った際、隠されたプラットフォームを除去し、目標象限に相対する象限を起点とした。ビデオカメラで、マウスの迷路において泳ぐ状態を60秒間記録し、ソフトウェアで、マウスのプラットフォームを探した時間及び泳ぐ経路を分析した。
隠されたプラットフォーム試験において、コントロール群マウスに比べて、アデニンで治療されたマウスは、プラットフォームを探すのにかかる時間が有意に減少した。この試験結果では、アデニンがアルツハイマー病実験マウスの損傷した学習及び記憶機能を救助することができることを証明した。また、アデニンで治療されたマウスは、探索性試験において、目標象限に停留した時間がコントロール群マウスより長いことから、アデニンが記憶保存を促進させることを証明した。
実施例8
(アデニンの繊維芽細胞成長に対する抑制)
ヒト繊維芽細胞株3T3は、10%のウシ胎児血清(FBS)、4mMのL‐グルタミン、2mMのピルビン酸ナトリウム及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen GibcoBRL、Carlsbad、CA、USA)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%COの環境下でインキュベートされた。細胞成長試験において、1×10個の細胞を6−wellプレートに播種し、24時間後、所定の濃度のアデニンで細胞を72時間処理し、生存細胞数を計算した。細胞をトリプシン−EDTAで分離し、トリパンブルーで染色し、血球計数器で生存細胞数を計算した。
アデニンの3T3細胞成長に対する影響を表5にまとめた。表5の結果から、アデニンは、3T3細胞の成長を著しく抑制し、また、使用量依存性を有することが分かった。データは、三つの独立した実験の平均値±標準偏差で示される。
Figure 2019123744
実施例9
(アデニンが、創傷治癒を強化し、瘢痕形成を抑制する)
C57BL/6Jマウスを22℃、12時間の明暗サイクルで飼育した。12週齢成体マウスをケタミン(500mg/kg)及びxylazine(100mg/kg)で麻酔し、マウスの背部に6−mm皮膚サンプラーで傷口を作った。傷口を形成した後、傷口に10〜1200μMのアデニンまたは食塩水を施用した。皮膚傷口を接着させ、半透性透明シートで傷口の被覆材を固定した。マウスをアデニンまたは生理食塩水で14日処理した後、犠牲にした。瘢痕形成は、マッソン三色染色で分析された(組織を4%のパラホルムアルデヒドで固定した)。
14日間の処理後、アデニンで処理された傷口の治癒速度は、コントロール群より速く、また、組織染色分析によると、アデニンで処理された傷口の再生組織の瘢痕は、コントロール群の傷口に比べて、著しく小さかった。
実施例10
(アデニンは、性酸素種の生成を低下させる)
ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECは、10%のウシ胎児血清(FBS)、4mMのL‐グルタミン、2mMのピルビン酸ナトリウム及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen GibcoBRL、Carlsbad、CA、USA)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%COの環境下でインキュベートされた。2×10個の細胞を96−well黒プレートに播種し、24時間後、インキュベート培地を5.6または30mMのグルコースを含むDMEMインキュベート培地に置換し、所定の濃度のアデニンを加えた。24時間処理した後、細胞内の性酸素種をH2DCF−DAで検出した。細胞をPBS緩衝液で1回洗浄した後、100μMのDCFに、37℃で30分間インキュベートした。DCF蛍光をプレート型蛍光分析装置で分析した(励起波長:485nm、散乱波長:530nm)。
アデニンの性酸素種生成に対する影響を表6にまとめた。アデニンは、高グルコースで誘発された性酸素種の生成を有意に減少させ、また、使用量依存性を有する。
Figure 2019123744
実施例11
(癌細胞成長抑制試験)
ヒト肝癌細胞Hep G2、ヒト乳腺癌細胞MCF7及びヒト結腸癌細胞HT29で、アデニンの癌細胞成長に対する影響の評価を行った。細胞は、10%のウシ胎児血清(FBS)、4mMのL‐グルタミン、2mMのピルビン酸ナトリウム及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen GibcoBRL、Carlsbad、CA、USA)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%COの環境下でインキュベートされた。1×10個の細胞を6−wellプレートに播種し、24時間後、所定の濃度のアデニンで細胞を72時間処理し、生存細胞数を計算した。細胞をトリプシン−EDTAで分離し、トリパンブルーで染色し、血球計数器で生存細胞数を計算した。
アデニンのHep G2、MCF7、HT29に対する50%成長抑制濃度は、それぞれ、544.1、537.5、531.9μMである。
実施例12
(腫瘍成長試験)
ヒト肝癌細胞Hep G2は、10%のウシ胎児血清(FBS)、4mMのL‐グルタミン、2mMのピルビン酸ナトリウム及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen GibcoBRL、Carlsbad、CA、USA)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で、37℃、5%COの環境下でインキュベートされた。5×10個の細胞を皮下注射で8週齢NOD−SCIDマウスに注射した。移植後、毎日腹腔注射でマウスに5、20、50mg/kg体重のアデニンを与え、3日ごとに腫瘍の大きさを測定した。移植後の14日、コントロール群マウスに比べて、アデニンを与えることにより、腫瘍の成長を著しく遅延させた。
上記の実施例は、本発明を十分に説明するために挙げられた好ましい実施例に過ぎず、本発明の保護範囲は、これらに限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本発明の内容に基づいて行った同等の置換または変化は、本発明の保護範囲内である。本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に基づいている。

Claims (21)

  1. AMPKを活性化するための化合物であって、
    アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩であることを特徴とする化合物。
  2. AMPK活性化剤で改善できる疾患または生理的状況を治療するものであって、
    上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える、請求項1に記載の化合物。
  3. 細胞における炎症性サイトカインの分泌及びシクロオキシゲナーゼ−2の発現を低下させることにより、炎症性生理的状況または疾患を治療するものであって、
    上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える、請求項1に記載の化合物。
  4. 細胞にグルコースの摂取を増加させることにより、糖尿病前症、II型糖尿病、メタボリックシンドロームからなる群から選ばれる生理的状況または疾患を予防または治療するものであって、
    上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える、請求項1に記載の化合物。
  5. 哺乳動物の血漿トリグリセリド及び体重を減少させることにより、肥満状態を予防または治療するものであって、
    上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える、請求項1に記載の化合物。
  6. 細胞におけるアミロイドペプチドの累積を抑制することにより、アルツハイマー病を予防または治療するものであって、
    上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える、請求項1に記載の化合物。
  7. 細胞のオートファジーの活性を強化することにより、オートファジー作用で改善できる疾患または生理的状況を治療するものであって、
    上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える、請求項1に記載の化合物。
  8. 繊維芽細胞の成長を抑制することにより、創傷治癒の過程において瘢痕形成を抑制するものであって、
    上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳上化合物に与える、請求項1に記載の化合物。
  9. 創傷治癒を強化するものであって、
    上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える、請求項1に記載の化合物。
  10. 細胞の活性酸素種の生成を抑制することにより、哺乳動物において、活性酸素種に傷つけられる細胞を保護及び治療するものであって、
    上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える、請求項1に記載の化合物。
  11. 癌細胞の成長を抑制することにより、癌を予防または治療するものであって、
    上記アデニン及び/またはその医薬学的に許容できる塩を、この治療を必要とする哺乳動物に与える、請求項1に記載の化合物。
  12. AMPK活性化剤で改善できる疾患または生理的状況を治療する薬物を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
  13. 炎症性生理的状況または疾患を治療する薬物を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
  14. 糖尿病前症、II型糖尿病、メタボリックシンドロームの一つまたはその組み合わせである生理的状況または疾患を予防または治療する薬物を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
  15. 糖尿病前症、II型糖尿病、メタボリックシンドロームの一つまたはその組み合わせである生理的状況または疾患を予防または治療する薬物を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
  16. アルツハイマー病を予防または治療する薬物を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
  17. オートファジー作用で改善できる疾患または生理的状況を治療する薬物を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
  18. 創傷治癒の過程において瘢痕形成を抑制する薬物を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
  19. 創傷治癒を強化する薬物を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
  20. 哺乳動物において、活性酸素種に傷つけられる細胞を保護及び治療する薬物を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
  21. 癌を予防または治療する薬物を調製するための、請求項1に記載の化合物の使用。
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