JP2019120832A - 光ファイバカッタおよび光ファイバ切断方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1に記載の発明では、張力が加えられた被覆付き光ファイバを、受け凸部で受けた状態で、刃を押しつけることによって裸光ファイバに達する初期傷を形成する。裸光ファイバに所定の深さの初期傷が形成されると、張力によって初期傷が成長し、裸光ファイバが劈開され、光ファイバが切断される。
しかし、初期傷が浅すぎると劈開が成長しないため、光ファイバが切断されず、初期傷が深すぎると、切断面の平坦性が得られないおそれがある。さらに切断の繰り返しによる刃の摩耗を考慮すると、刃の切り込み量は、余裕を見て、劈開に必要な所定値よりもわずかに大きい所定値に厳密に合わせる必要がある。
このように、特許文献1に記載の技術では、光ファイバカッタの部品精度および組み立て精度を高める必要があるため、光ファイバカッタの製造コストが増大するという問題がある。さらに、刃の摩耗が切断性能に影響しやすいため、頻繁に刃の交換が必要になるという問題もある。
なお、各図面は模式図のため、寸法や形状は誇張または簡略化されている(以下の図面も同様)。
光ファイバカッタ100は、張力が付与された裸光ファイバ1Aに初期傷を形成し、この初期傷を成長させて裸光ファイバ1Aを劈開させることによって光ファイバ1を切断する切断装置である。
図2に示すように、光ファイバ1は、ガラス製の裸光ファイバ1Aの外周面が樹脂製の被覆部1Bで覆われた被覆付き光ファイバである。光ファイバ1は、先端に裸光ファイバ1Aが露出され直線状に延びて光ファイバカッタ100に把持された状態で、裸光ファイバ1Aの部位で切断される。
以下では、光ファイバ1の寸法に関係する装置部分の寸法例を挙げる場合には、一例として、裸光ファイバ1Aの外径が125μm、被覆部1Bの外径が250μmの場合の例で説明する。
以下では、載置面上の互いに直交する2軸を、X軸、Y軸とし、X軸およびY軸に直交する載置面の法線をZ軸とするXYZ直交座標系を用いて方向を参照する場合がある。
Y軸は、平面視における光ファイバカッタ100の長手方向に延びており、光ファイバカッタ100に把持される光ファイバ1の中心軸線に一致している。X軸は、平面視における光ファイバカッタ100の短手方向に延びている。
Y軸における正方向(Y軸正方向)は、被覆部1Bで覆われた光ファイバ1の基端側のから裸光ファイバ1Aの先端に向かう方向である。Y軸における負方向(Y軸負方向)は、Y軸正方向と反対の方向である。
X軸における正方向(X軸正方向)は、Y軸正方向に向いたときに左から右に向かう方向である。Z軸における正方向(Z軸正方向)は、載置面の下側から上側に向かう方向である。X軸負方向、Z軸負方向は、それぞれX軸正方向、Z軸正方向と反対の方向である。
特に正方向、負方向を区別することなく、X軸、Y軸、Z軸に沿う方向を表す場合には、それぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向と称する。
ベース部材10の上面10bにおいてY軸負方向側の端部には、後述するホルダ60を載置する穴部であるホルダ載置部10aが形成されている。
ベース部材10におけるX軸正方向側の側面10cと、X軸負方向側の側面10dとは、それぞれYZ平面に平行な平面である。
側面10c、10dは、ベース部材10の長手方向の略中央部からY軸正方向側の端部までの間では、それぞれ、ベース部材10の底部に立設された側壁部10R、10Lによって形成されている。
側壁部10R、10Lで挟まれる領域には、後述するスライド部材20をY軸方向にスライド可能に収容する凹溝部10hが形成されている。
ホルダ載置部10aのY軸正方向側の端部には、ZX平面に平行な内壁10eが上面10b(図1参照)から底板11まで延びている。
内壁10eの下端部からは、後述するスライド部材20と係合するための係合部12がY軸正方向に突出している。
図2における実線で描かれた係合部12は、スライド部材20との係合が解除された場合の形状を示す。図2における二点鎖線で描かれた係合部12は、スライド部材20と係合された場合の形状を示す。
第2板状部12dの先端部には、上側に突出する係合爪12aが形成されている。第2板状部12dの長手方向の中間部の上面には、後述する操作部30からの押下力を受ける板状の押下部12bが形成されている。
係合部12は、全体として弾性板バネとして機能する適宜の板厚を有する。本実施形態では、係合部12は、ベース部材10に一体成形されている。
係合部12は、押下部12bからZ軸負方向への外力が作用しない自然状態では、図示二点鎖線で示すように、第2板状部12dおよび押下部12bがXY平面と平行な姿勢をとる。
係合部12は、押下部12bからZ軸負方向への外力が作用する押下状態では、図示実線で示すように、押下部12bに作用する押下力によって、基端12eを中心として図示時計回りに回動する。押下力が解除されると、弾性復元力によって自然状態に復帰する。
ホルダ60は、ホルダベース60a、ファイバ載置台60e、ガイド溝60c、60d、および押え部材60bを備えて構成される。
ガイド溝60c、60dは、ファイバ載置台60e上において光ファイバ1をY軸方向に延ばして載置するために、ファイバ載置台60eのY軸負方向側、Y軸正方向側となるホルダベース60a上に立設されている。図1に示すように、ガイド溝60c、60dは、Y軸方向から見ると、V字状の傾斜面と、傾斜面から下方に延び位置決め溝(図1では不図示)と、を有する略V字状に形成されている。
ガイド溝60c、60dにおける各位置決め溝は、位置決め溝に挿通される光ファイバ1の中心軸線がY軸に一致するように設けられている。
図2に示すように、押え部材60bは、ガイド溝60c、60dの各位置決め溝に挿通された光ファイバ1をファイバ載置台60eとの間に把持することによって、ホルダ60に対する光ファイバ1の位置を固定する。押え部材60bは、ホルダベース60aに対して着脱可能に設けられている。
押え部材60bおよびファイバ載置台60eの材質と、把持状態における押え部材60bからの押圧力とは、把持された光ファイバ1に作用する摩擦力が後述する張力印加バネ21によって光ファイバ1に付与される張力に抗することができるように選ばれている。
スライド部材20の上面20bのX軸方向における中央部には、回収ケース70を載置する穴部である回収ケース載置部20aが形成されている。
図2に示すように、回収ケース70は、切断された裸光ファイバ1Aである切断片1Cを回収スペース70bに回収する略直方体状の容器である。回収ケース70のY軸負方向側の端部には、切断片1Cを回収スペース70bに送るために、例えば、回収ローラ等の回収機構が必要に応じて設けられている。
ファイバ支持台部20cよりもY軸負方向側となるスライド部材20のY軸負方向の端部においてZX面に平行に延びる壁部には、ガイド溝20kが形成されている。
ガイド溝20kは、ホルダ60から延ばされた光ファイバ1の裸光ファイバ1AのX軸方向の位置を規制し、ファイバ支持台部20cに案内する。本実施形態では、図6に示すように、ガイド溝20kは、V字状の傾斜面20iと、各傾斜面20iの下端部から下方に延びる位置決め溝20jと、を有する略V字状に形成されている。
二点鎖線で示すように係合突起20gと係合爪12aとは、スライド部材20が実線の位置よりもY軸負方向にスライドされた状態で、互いに係合している。
この係合状態では、係合部12の第2板状部12dがXY平面と平行に延びている。さらに、この係合状態では、スライド部材20のY軸正方向側の側面20f(二点鎖線参照)は、ベース部材10のY軸正方向側の側面10iと面一になっている。
図2では隠れるため図示されていないが、スライド部材20において上面20bの裏側には、各張力印加バネ21のY軸負方向側の端部を係止する係止用突起がZ軸負方向側に延びている。
同様に、ベース部材10の凹溝部10h内のY軸正方向側の端部には、各張力印加バネ21のY軸正方向側の端部を係止する係止用突起がZ軸正方向側に延びている。
このため、各張力印加バネ21は、スライド部材20に設けられた係止用突起とベース部材10に設けられた係止用突起との間に張架され、自然状態よりも延ばされている。これにより、各張力印加バネ21は、スライド部材20をベース部材10に対してY軸正方向に付勢している。
このため、実線で示すように係合突起20gと係合爪12aとの係合が解除された状態(係合解除状態)では、スライド部材20が全体としてY軸正方向に移動し、スライド部材20の側面20fは、ベース部材10の側面10iよりもY軸正方向に飛び出している。
ファイバ端把持部50は、ファイバ支持台部20c上に配置された裸光ファイバ1Aをファイバ支持台部20cとの間に把持することによって、裸光ファイバ1AのY軸方向における位置を固定する。
ファイバ端把持部50は、把持部本体50aおよび押え部材50eを備える。
把持部本体50aのX軸方向の長さは、スライド部材20の短手幅(X軸方向幅)よりもわずかに短い。
把持部本体50aのX軸負方向側の端部には、ZX平面内で回動可能に構成されたヒンジ部50bが設けられている。ヒンジ部50bは、スライド部材20の上面20b上のX軸負方向側の端部に立設されたヒンジ部支持板20d、20eに図示略の回転支軸を介して連結されている。図示略の回転支軸は、その中心軸線がY軸に平行な回転軸線Oと同軸になるように延びている。
このため、把持部本体50aは、図示略の回転支軸によって回転軸線Oを中心として回動可能に支持されている。なお、本実施形態では、回転軸線Oは、後述する操作部30および傷形成部40の回転中心軸線にもなっている。
図1には、係合部50cが係合穴20mに係合している状態が図示されている。
係合部50cおよび係合穴20mの構成は、把持部本体50aをスライド部材20に着脱可能に係合できれば特に限定されない。例えば、図1に示す例では、係合部50cは、図示略の係合突起を有するU字状の弾性部材によって構成されている。係合穴20mは、U字状の弾性部材を閉じた状態で上方から挿入可能な矩形孔からなる。
ファイバ把持板50dおよびファイバ支持台部20cの材質と、把持状態における押圧バネ50eの付勢力とは、把持された裸光ファイバ1Aに作用する摩擦力が張力印加バネ21によって裸光ファイバ1Aに付与される張力に抗することができるように選ばれている。
図3に示すように、操作部30は、略矩形板状の操作部本体30aに、ヒンジ部30b、先端把持部30e、押圧突起31、ストッパ33、および係合解除突起32が形成されて構成されている。
操作部本体30aのX軸方向における長さは、ベース部材10の短手幅に略等しい。
図3に示すように、操作部本体30aのZ軸負方向側の表面である裏面30fには、Y軸における中心線を境として、Y軸負方向側の半面の範囲から、ヒンジ部30b、押圧突起31、ストッパ33および係合解除突起32が突出されている。このため、裏面30fにおいてY軸正方向側の半面の範囲(平坦領域30gと称する)には、後述する押圧突起31を除いて突起物は形成されていない。
ヒンジ部30bは、操作部本体30aのX軸負方向側の端部において、Y軸方向負方向寄りの部位からZ軸負方向に突出されている。ヒンジ部30bの突出方向における先端部には、Y軸方向に貫通する軸受部30cと、軸受部30cにZ軸負方向側から連通しY軸方向に貫通するガイド溝30dと、が形成されている。
軸受部30cには回転支軸13が挿通されている。回転支軸13は、中心軸線が回転軸線Oと同軸になる姿勢で、ベース部材10のX軸負方向側の上部に立設されたヒンジ部支持板10f、10g(図2参照)に固定されている。このため、操作部本体30aは、回転支軸13により回転軸線Oを中心として回動可能に支持されている。
ガイド溝30dは、後述する回転規制部材14a(図6参照)が挿入された際に、操作部本体30aの回動角度(XY平面に沿う角度を0°とする)が所定の鋭角の範囲に規制される大きさに形成されている。なお、後述する回転規制部材14aがガイド溝30dから退避された際には、操作部30は、0°〜180°の範囲で回動可能である。
操作部本体30aの裏面30fにおいて、X軸正方向側の端部におけるY軸負方向側の端部には、Z軸負方向に突出するストッパ33が立設されている。
図1に示すように、ストッパ33は、切断終了状態において、ベース部材10の上面10bのX軸正方向側の端部からZ軸正方向に突出された係止台10jに当接するように設けられている。ストッパ33が係止台10jに当接することによって、操作部30の閉じ方向における回動角度が規制される。本実施形態では、ストッパ33が係止台10jに当接すると、操作部本体30aは回動角が0°になり、XY平面に平行な姿勢をとる。
このため、本実施形態では、押圧突起31が後述する傷形成部40の上面とY軸に平行な線上にて線接触するため、操作部30による押圧下においても傷形成部40のY軸正方向への移動が容易となる。
係合解除突起32は、基端部32a、第1屈曲部32b、第2屈曲部32c、および先端押圧部32dを有する屈曲突起である。
基端部32aは、ヒンジ部30bとストッパ33との間の裏面30fにおいて、Y軸方向負方向寄りの位置からZ軸負方向に突出された柱状部である。
第1屈曲部32bは、基端部32aの突出方向の先端部から、Y軸正方向に屈曲し裏面30fと離間した状態で、平坦領域30gと重なる範囲に棒状部である。
第2屈曲部32cは、第1屈曲部32bの延在方向の先端部からZ軸負方向側に延ばされた棒状部である。
先端押圧部32dは、第2屈曲部32cの延在方向の先端部からX軸正方向に屈曲している。先端押圧部32dにおけるZ軸負方向側の側面である押圧面32eは、操作部30を閉じる方向に一定の角度以上回動させることによって、ベース部材10の係合部12における押下部12bと当接可能な位置に形成されている。
図3に二点鎖線で示すように、傷形成部40は、操作部30の操作部本体30aの下方に配置されている。傷形成部40は、操作部30とともに、回転軸線Oを中心として回動可能である。ただし、傷形成部40は、スライド部材20によって回動可能に支持されているため、スライド部材20に連動してY軸方向に移動できるようになっている。
傷形成部40は、アーム部40a、ヒンジ部40b、案内爪40d、刃具ホルダ41、および刃具42を備えて構成されている。
以下、特に断らない限り、操作部30の場合と同様、切断終了状態における傷形成部40の配置に基づいて傷形成部40の構成を説明する。
アーム部40aのX軸負方向側の端部には、ZX平面内で回動可能に構成されたヒンジ部40bが設けられている。
ヒンジ部40bは、アーム部40aのX軸負方向側の端部においてZ軸負方向に突出されている。ヒンジ部40bの突出方向における先端部には、Y軸方向に貫通する軸受部40cが形成されている。
軸受部40cには回転支軸22が挿通されている。回転支軸22は、中心軸線が回転軸線Oと同軸になる姿勢で、スライド部材20のX軸負方向側の上部に立設されたヒンジ部支持板20d(図1、2参照)と、ヒンジ部支持板20dとの間にヒンジ部40bを挟むようにスライド部材20のX軸負方向側の上部に立設されたヒンジ部支持板20h(図2の破線参照)に固定されている。このため、アーム部40aは、回転支軸22により回転軸線Oを中心として回動可能に支持されている。
アーム部40aのX軸方向における中央部には、刃具ホルダ41を位置決めして固定する刃具ホルダ取り付け部40eが形成されている。
図4に示すように、刃具ホルダ41は、刃具ホルダ取り付け部40e(図3参照)に固定されるベース部41aと、刃具42を保持する保持部41bと、を備える。
ベース部41aは、本実施形態では、一例として、図示略の雄ネジによってアーム部40aに固定されている。
保持部41bには、ZX平面に平行な平面である保持面41cと、刃具42の回動方向に沿う位置決めを行う位置決め溝部41dと、刃具42の回動半径を規定する径方向位置決め部41eと、が形成されている。
刃具本体42Aの長手方向(図5(a)の左右方句)において突出部42Bが形成された端部と反対側の端部には、側面42a、42bとの間に刃部43(刃列)が形成されている。
刃具本体42Aにおいて突出部42Bよりも刃部43側では、側面42a、42bが刃具ホルダ41の位置決め溝部41dの内側に嵌合する形状に形成されている。
突出部42Bにおいて側面42aに隣接する側面42cは、刃具ホルダ41の径方向位置決め部41eに当接可能に形成されている。
図5(b)に示すように、刃部43は、刃具本体42Aの板厚方向における第1表面42dと、第1表面42dの裏側の第2表面42eから第1表面42dに向かって傾斜する斜面42fと、によって形成される断面V字状の先細部の先端に形成されている。
各刃43a〜43dの厚さは、200μm以下であることがより好ましい。なお、図5(a)、(b)、(c)は模式図のため、各刃43a〜43dが平滑面状に形成されているように図示されているが、各刃43a〜43dは微細な凹凸面で構成されてもよいし、丸みが付与されて構成されてもよい。
刃43dの図示上端は側面42aに隣接している。刃43aの図示下端は下側斜面44aに隣接している。下側斜面44aの図示下端は側面42bに隣接している。
各V字溝の深さは、裸光ファイバ1Aの周方向の少なくとも一部が溝内に入り込むことができれば特に限定されない。ただし、各V字溝の深さは、最深部において裸光ファイバ1Aの外周面全体がV字溝の溝内に入り込むことができることがより好ましい。
この場合、刃43a〜43dが円弧C’に沿って図5(c)の矢印方向(図示反時計回り方向)に回転移動すると、各刃43a〜43dによって、裸光ファイバ1Aに対して、一定切り込み量の4回の切り込みが行われる。
ただし、例えば、図5(c)に示すように、曲線Cは、刃43aの中心で円弧C’と交差し、刃43bから刃43dに向かうにつれて、円弧C’から径方向外側に漸次ずれるように変化する曲線でもよい。
この場合、刃43a〜43dが円弧C’に沿って図5(c)の矢印方向に回転移動すると、各刃43a〜43dによって、裸光ファイバ1Aに対する切り込み量が漸次増大する4回の切り込みが行われる。ただし、刃43dの回転半径は、裸光ファイバ1Aの外周面に許容できる最大の初期傷を形成するために必要な刃の移動軌跡の半径以下とされることがより好ましい。
本実施形態では、一例として、曲線Cが円弧C’からずれている場合の例で説明する。
下側斜面44a〜44dは、平面でもよいし、湾曲した斜面でもよい。
下側斜面44a〜44dは、曲線Cに対して、45°以下の傾斜を有することがより好ましい。
上側斜面45a〜45cは、平面でもよいし、湾曲した斜面でもよい。
上側斜面45a〜45cは、曲線Cに対して、45°以上の傾斜を有することがより好ましい。
刃具42が固定された刃具ホルダ41は、刃具ホルダ取り付け部40eにおいて傷形成部40と固定される。このとき、図3に二点鎖線で示すように、アーム部40aは操作部30の裏面30fと第1屈曲部32bとの間に隙間をあけて挿入されている。保持部41bは、X軸方向において係合解除突起32の第2屈曲部32cと対向する位置に配置されている。
このような配置により、操作部30に対する傷形成部40の上側の回動限界は、操作部30の押圧突起31の位置であり、下側の回動限界は、操作部30の第1屈曲部32bの上面の位置になっている。このため、操作部30が回動すると、傷形成部40は、回動方向に応じて押圧突起31または第1屈曲部32bに係止して、操作部30とともに回動する。
ホルダ60は、ベース部材10に固定され、第1把持部よりも光ファイバ1の基端寄りの位置で光ファイバ1を把持する第2把持部を構成している。
各張力印加バネ21は、第1把持部を軸線方向において第2把持部から離れる方向に付勢して、光ファイバ1に張力を付与する張力付与部を構成している。
刃部43は、光ファイバ1の裸光ファイバ1Aに初期傷を形成する複数の刃43a〜43dが隙間をあけて線状に並んだ刃列を構成している。ただし、「線状に並んだ」とは、曲線Cのような湾曲線に沿って並ぶ場合を含んでいる。
傷形成部40は、刃列が軸線方向に直交する平面であるZX平面内で第1把持部と第2把持部との間に張架された光ファイバ1の裸光ファイバ1Aに切り込む経路(円弧C’)を移動するように刃具42を保持している。
図6、7は、本発明の実施形態の光ファイバカッタの動作説明図である。図8(a)、(b)、(c)、(d)は、光ファイバと刃具との接触状態の変化を示す動作説明図である。
この後、先端の被覆部1Bが除去されて先端に裸光ファイバ1Aが露出した光ファイバ1が準備され、この光ファイバ1が光ファイバカッタ100に把持される。
光ファイバカッタ100では、光ファイバ1の把持を行うために、ホルダ60の押え部材60bが取り外され、操作部30、傷形成部40、およびファイバ端把持部50の把持部本体50aがそれぞれ回動されて、光ファイバ1の配置領域が開放される。
ここで、押え部材60bの取り外しおよび把持部本体50aの回動の動作については、操作者が自由に行える。ただし、操作部30および傷形成部40については、回動が規制されているため、以下の操作が行われる。
例えば、図6には、回転規制部材14aの上端部がガイド溝30dに進入した状態が示されている。この場合、操作部30の回転範囲はガイド溝30dと回転規制部材14aとの間の遊びの範囲に制限される。
特に図示しないが、操作者がスライダ14bを下側の位置に移動すると、回転規制部材14aがガイド溝30dの下方に退避する。これにより、操作部30は、回転規制部材14aの規制を受けることなく回動することができる。
例えば、操作者は、スライダ14bを下側に移動することで、操作部30を180°回動した状態にできる。操作部30の下方に配置された傷形成部40も同様である。
このようにして、操作者は、ベース部材10およびスライド部材20における光ファイバ1の配置領域を開放できる。
操作者は、光ファイバ1をホルダ60のガイド溝60c、60d、スライド部材20のガイド溝20kに上方から挿入し、光ファイバ1のX軸方向における位置決めを行う。さらに、操作者は、光ファイバ1のY軸方向の位置を調整して、裸光ファイバ1Aの先端が回収ケース70の入口に達するように配置する。これにより、裸光ファイバ1Aの先端部はファイバ支持台部20c上に載置される。このとき、ファイバ載置台60e上には、被覆部1Bで被覆された光ファイバ1が載置されている。
操作者は、この状態で、押え部材60bを装着して光ファイバ1がファイバ載置台60e上の第2把持位置に把持されるようにする。さらに操作者は、把持部本体50aを閉じて、裸光ファイバ1Aがファイバ支持台部20c上の第1把持位置に把持されるようにする。この状態では、第1把持位置と第2把持位置との間の光ファイバ1には張力は付与されていない。
この結果、スライド部材20は、張力印加バネ21の付勢力によってY軸正方向に牽引される。このため、第1把持位置と第2把持位置との間の光ファイバ1に張力が付与される。
さらに、張力が付与された裸光ファイバ1Aに刃具42の下端部の下側斜面44aと接触すると、傷形成部40は操作部30の押圧突起31によって下方に押圧されるまでは回動が停止する。
図7には、このようにして、裸光ファイバ1Aに張力が付与され、刃具42の下側斜面44aが裸光ファイバ1Aと当接した状態で、押圧突起31からの押圧が開始される状態が示されている。
以後、操作部30とともに傷形成部40が図示時計回りに回動することによって、刃具42による初期傷の形成工程が開始される。
図8(b)に示すように、さらに回動が進むと、裸光ファイバ1Aは刃43aと接触する。刃43aは、裸光ファイバ1Aを矢印A2方向に押しながら裸光ファイバ1Aの外周面を通過する。これにより、裸光ファイバ1Aの外周面に初期傷が形成される。
しかし、本発明者が従来の連続刃を有する刃具で実験したところ、劈開に必要な初期傷が形成されても刃が裸光ファイバに接触している状態では劈開は生じず、刃が裸光ファイバを通過した後に劈開が生じることが分かった。この理由は必ずしも明確ではないが、刃が裸光ファイバと接触している状態では、刃と裸光ファイバとの相互作用によって、初期傷に実効的に作用する張力が理論的な張力よりも著しく緩和されるためではないかと推測される。
このため、図8(b)に示すように、裸光ファイバ1Aが刃43aに当接している状態では、裸光ファイバ1Aに張力が付与され、切断に必要な初期傷が形成されていても、裸光ファイバ1Aは切断されない。
このとき、裸光ファイバ1Aが刃部43と非接触状態になることによって、張力印加バネ21の付勢力による所定の張力が初期傷に実効的に作用する。このため、刃43aによって形成された初期傷が劈開に必要な大きさであれば、初期傷から劈開が進んで裸光ファイバ1Aが切断される。
この場合には、裸光ファイバ1Aは切断されることなく、下側斜面44bに当接する。さらに回動が進むにつれて、裸光ファイバ1Aは下側斜面44bに沿って刃43bに向かって移動する。
図8(d)に示すように、裸光ファイバ1Aが刃43bに接触すると、刃43aで形成された初期傷の大きさが刃43bによって拡張される。
さらに回動が進むと、裸光ファイバ1Aが刃43b、43cとの間の隙間に対向するため、再び所定の張力が初期傷に実効的に作用する。
操作部30の回動動作の間に、刃部43のいずれかの刃で形成された初期傷によって、裸光ファイバ1Aの劈開が生じると、裸光ファイバ1Aの切断が終了する。
このとき、スライド部材20に設けられたヒンジ部支持板20h、20dによって支持されている傷形成部40は、スライド部材20とともに、Y軸正方向に移動する。ファイバ端把持部50によって保持された切断片1Cも同様である。
さらに傷形成部40に固定されている刃具42もスライド部材20とともにY軸負方向に移動するため、刃具42は、ホルダ60に保持された光ファイバ1の裸光ファイバ1Aにおける切断面からただちに離間する。このため、例えば、刃43aを抜けたときに切断が発生した場合に、さらに回動を続ける刃具42の第1表面42dが上記切断面に接触することがない。このため、上記切断面が刃具42と接触を続けることによって切断面が傷つくことが確実に防止される。
例えば、傷形成部40、刃具42の製造誤差、組立誤差などによって、裸光ファイバ1Aに対する刃の配置誤差が生じていたり、複数の刃のいずれかの摩耗が大きくなりすぎたりしても、必要な初期傷が形成できる。
このため、刃具として1枚刃を用いる場合に比べて、光ファイバカッタ100における刃の配置精度を緩和することが可能になる。
さらに本実施形態では、切断後に、刃が、スライド部材20とともに裸光ファイバ1Aの延在方向であるY軸正方向に移動する点で、刃と切断面との接触による傷発生をより確実に防止できる。
このように、刃具42では、切断のための回動方向の下流側の刃ほど、裸光ファイバ1Aとの接触機会が低減されるため、刃の摩耗が進行しにくい。このため、刃具42全体としては刃寿命が長くなる。
さらに、この比較例の場合、1枚刃が裸光ファイバ1Aから離れるまで劈開が生じないため、刃の配置誤差などによって刃の切り込み量が大きくなりすぎる部位があると、劈開に必要な初期傷よりも大きな初期傷が形成された後に劈開が生じる。このため、切断面不良が発生しやすくなる。
このため、光ファイバカッタ100の側面には、スライド部材20をY軸正方向に動かせるようなスライド部材20の露出部が形成されていない。これにより、裸光ファイバ1Aを保持したスライド部材20が操作者によって動かされてしまうことを防止できる。
スライド部材20が容易に移動できる構成であると、例えば、何らかの不具合によって切断操作を行っても裸光ファイバ1Aが切断されない場合など、操作者がスライド部材20を強制的にY軸正方向に移動して無理に切断を完了させてしまうおそれがある。このような操作では、良好な切断面が形成できないため、切断不良が生じてしまう。しかし、本実施形態の光ファイバカッタ100は、そうした操作を容易には行えない構成になっている。
上記実施形態の第1変形例について説明する。
図9(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態の第1変形例の光ファイバカッタに用いる刃具の一例を示す模式的な正面図、右側面図、および背面図である。
図3に示すように、傷形成部140は、上記実施形態の傷形成部40の刃具42に代えて、刃具142を備える。
以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
刃部143は、刃具本体42Aにおいて刃部43が形成された端部の表面において、少なくとも刃部43を含み、下側斜面44a〜44dおよび上側斜面45a〜45cを除く表面に、ダイヤモンド砥粒が固着することによってダイヤモンド砥粒層Dが形成されて構成されている。
ダイヤモンド砥粒層Dは、ダイヤモンド砥粒が密集して構成されてもよいし、ダイヤモンド砥粒が互いに離間して層状に分布するように構成されていてもよい。
ダイヤモンド砥粒層Dは、ダイヤモンド砥粒が刃具本体42Aの表面に直に固着してダイヤモンド砥粒の粒径以下の層厚を有する構成でもよいし、ダイヤモンド砥粒が層厚方向に堆積して、ダイヤモンド砥粒の粒径を超える層厚を有する構成でもよい。
このため、本変形例の光ファイバカッタ101および光ファイバカッタ101を用いた光ファイバ切断方法では、上記実施形態と同様、刃の配置精度が緩和されても良好な切断性能が得られる。
上記実施形態の光ファイバ切断方法の第2変形例について説明する。
図10は、本発明の実施形態の第1変形例の光ファイバカッタに用いる刃具の一例を示す模式的な正面図である。
以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
刃具242(刃列)は、上記実施形態における刃具42の刃部43に代えて、刃243a、243b、243c、243dを含む刃部243(刃列)を備える。刃具242は、図示略の刃具ホルダによって、Z軸方向に移動可能に支持されている。
上記実施形態の刃43a〜43dが曲線C上に配列されていたのに対して、刃243a〜243dは、直線Lに沿って配列されている。
直線Lは、各刃243a〜243dの切り込み量を一定にするためにZ軸に平行でもよい。ただし、各刃243a〜243dの切り込み量がこの並びの順に大きくなるように、Z軸に対して直線Lが傾斜していてもよい。
刃243a、243b、243c、243dの間には、直線Lに沿って、上記実施形態と同様の隙間s1、s2、s3が形成されている。隙間s1、s2、s3は、上記実施形態と同様、それぞれ、上側斜面45aおよび下側斜面44bと、上側斜面45bおよび下側斜面44cと、上側斜面45cおよび下側斜面44dと、によって構成されている。
刃243aの下側には、上記実施形態と同様の下側斜面44aが形成されていてもよい。ただし、図10に示す例では、下側斜面44aに代えて、Y軸方向から見て、刃243aの下端部に滑らかに接続する弧状に湾曲した湾曲斜面244a(斜面)が形成されている。
このため、本変形例は上記実施形態と同様の作用を備える。
例えば、光ファイバ1は、上記実施形態と同様、光ファイバカッタ100のベース部材10、スライド部材20、ホルダ60、およびファイバ端把持部50によってY軸方向に延びて把持されればよい。この場合、裸光ファイバ1Aに張力を付加するには、上記実施形態と同様、張力印加バネ21を用いることができる。
ただし、上記実施形態における操作部30、傷形成部40に関しては、刃具242がZ軸方向に移動することによって、各刃243a〜243dが裸光ファイバ1Aに切り込むような適宜の構成に変形される。
例えば、本変形例の傷形成部に刃具242が固定される構成の場合には、本変形例の操作部はベース部材10において、傷形成部はスライド部材20において、それぞれZ軸方向の平行移動可能に支持される。
例えば、本変形例の傷形成部に刃具242が、リンク、カムなどの回転移動を平行移動に変換する伝動機構を介して連結されてもよい。この場合には、操作部および傷形成部は、上記実施形態と同様にベース部材10およびスライド部材20に回動可能に支持されていればよい。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
Claims (6)
- ベース部材と、
光ファイバの先端側で前記光ファイバを把持し、前記ベース部材に対して前記光ファイバの軸線方向に移動可能に設けられた第1把持部と、
前記ベース部材に固定され、前記第1把持部よりも前記光ファイバの基端寄りの位置で前記光ファイバを把持する第2把持部と、
前記第1把持部を前記軸線方向において前記第2把持部から離れる方向に付勢して、前記光ファイバに張力を付与する張力付与部と、
前記光ファイバに初期傷を形成する複数の刃が隙間をあけて線状に並んだ刃列を有する刃具と、
前記刃列が前記軸線方向に直交する平面内で前記第1把持部と前記第2把持部との間に張架された前記光ファイバに切り込む経路を移動するように前記刃具を保持する傷形成部と、
を備える、
光ファイバカッタ。 - 前記複数の刃は、それぞれ前記刃具の表面にダイヤモンド砥粒が固着して構成されている、
請求項1に記載の光ファイバカッタ。 - 前記刃具は、前記複数の刃の間に、前記光ファイバが進入可能な隙間を有し、
前記複数の刃のそれぞれには、切り込みが開始される方の端部には、前記隙間に進入した前記光ファイバを前記複数の刃のそれぞれに向かって案内する斜面が隣接している、
請求項1または2に記載の光ファイバカッタ。 - 前記経路に沿う前記隙間の開口部は、前記光ファイバの外径よりも広い、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバカッタ。 - 前記第1把持部と、前記傷形成部と、を保持し、前記ベース部材に対して前記軸線方向に移動可能に設けられ、前記張力付与部によって前記軸線方向において前記第2把持部から離れる方向に付勢されたスライド部材をさらに備え、
前記光ファイバが切断されたときに、前記傷形成部が前記スライド部材とともに前記第2把持部から離れる方向に移動する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバカッタ。 - 光ファイバを、前記光ファイバの軸線方向に張力を付与するように第1把持位置と第2把持位置とにおいて把持することと、
複数の刃が離間して並んだ刃列を、前記軸線方向に直交する平面内で前記第1把持位置と前記第2把持位置との間の前記光ファイバに、前記複数の刃が間をおいて切り込むように移動させることによって、前記光ファイバが劈開可能な初期傷を形成されるまで、前記複数の刃のいずれかが前記光ファイバに切り込む状態と、前記複数の刃から前記光ファイバから離れる状態と、を形成することと、
前記初期傷から前記光ファイバの劈開が進むことによって前記光ファイバが切断されるまで、前記張力の付与を続けることと、
を含む、
光ファイバ切断方法。
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CN115113331A (zh) * | 2022-06-24 | 2022-09-27 | 国网山东省电力公司招远市供电公司 | 一种光纤切割工具 |
-
2018
- 2018-01-09 JP JP2018001263A patent/JP2019120832A/ja active Pending
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