JP2019116427A - 歯周病の予防又は改善剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、歯周病を効果的に予防又は改善できる、歯周病の予防又は改善剤を提供することである。【解決手段】ホスホコリン基含有重合体は、歯肉の活性化作用、歯肉の修復促進作用、LPS存在下での歯肉の活性化作用、及びLPS存在下で歯肉組織内で産生されるコラーゲン分解酵素の活性抑制作用を総合的に発揮でき、歯周病を効果的に予防又は改善できる。【選択図】なし

Description

本発明は、歯周病の予防又は改善剤に関する。
現代社会では、食生活の多様化等により、歯周病患者が増加傾向にある。歯周病は、硬組織又は歯周ポケット内に形成されたデンタルプラーク内のポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)等の細菌が関与して発症し、歯肉の炎症、歯肉の腫れ、歯肉の出血、歯の揺れ、歯周ポケットからの排膿、口臭等の症状を伴う細菌感染症である。
従来、歯周病の予防又は改善には、殺菌剤、抗菌剤、抗プラーク剤、抗炎症剤等が使用されている。例えば、特許文献1には、メシル酸ガベキサートと、水溶性非イオン性高分子物質及び/又は非イオン性界面活性剤とを併用すると、ポルフィロモナス・ジンジバリスが産生する病原性プロテアーゼのアルジンジパイン活性を阻害でき、歯周病予防又は治療に有効であることが開示されている。また、特許文献2には、オウゴン抽出物が歯周病菌の増殖を抑制でき、歯周病菌抑制剤として使用できることが開示されている。
一方、歯周病は、歯肉に歯周病原因菌が侵入して生じるために、歯周病菌の予防又は改善には、歯肉を活性化したり、健全な状態にしたりすることにより、歯周病原因菌が侵入し難い状態にすることも重要になる。また、歯周病は、歯周病菌が産生するLPS(Lipopolysacharide)等の毒素によって炎症等を生じるため、歯周病の予防又は改善には、毒素によって炎症が生じている歯肉を活性化して健全な状態に歯肉組織を修復させることとも重要である。更に、歯周病は、歯周細胞を刺激してコラーゲン分解酵素(MMP−1等)を産生させ、歯肉組織を形成しているコラーゲンを分解し、歯肉組織の破壊をもたらすので、コラーゲン分解酵素の活性を抑制し、歯肉組織の破壊を抑制することも、歯周病菌の予防又は改善には重要になる。しかしながら、従来技術では、歯肉の活性化作用、歯肉の修復促進作用、LPS存在下での歯肉の活性化作用、及びLPS存在下でのコラーゲン分解酵素の活性抑制作用を総合的に発揮でき、歯周病の予防又は改善に有効な成分については、十分な検討がなされていないのが現状である。
一方、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体等のホスホコリン基含有重合体は、生体への親和性が高く、更に保湿作用を有していることが報告されており、主に外用製剤において利用されている。しかしながら、ホスホコリン基含有重合体が、歯周病に及ぼす影響については明らかにされていない。
特開2010−1228号公報 特開2015−54847号公報
本発明の目的は、歯周病を効果的に予防又は改善できる、歯周病の予防又は改善剤を提供することである。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ホスホコリン基含有重合体は、歯肉の活性化作用、歯肉の修復促進作用、LPS存在下での歯肉の活性化作用、及びLPS存在下で歯肉組織内で産生されるコラーゲン分解酵素の活性抑制作用を総合的に発揮でき、歯周病を効果的に予防又は改善できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ホスホコリン基含有重合体を含む、歯周病の予防又は治療剤。
項2. 前記ホスホコリン基含有重合体が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体である、項1に記載の歯周病の予防又は治療剤。
項3. 液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、又は洗口液である、項1又は2に記載の歯周病の予防又は治療剤。
本発明によれば、歯肉の活性化作用、歯肉の修復促進作用、LPS存在下での歯肉の活性化作用、及びLPS存在下で歯肉組織内で産生されるコラーゲン分解酵素の活性抑制作用を総合的に発揮することにより、歯周病を効果的に予防又は改善することができる。
本発明の歯周病の予防又は治療剤は、ホスホコリン基含有重合体を含むことを特徴とする。なお、以下、「歯周病の予防又は治療剤」を単に「予防・治療剤」と表記することもある。以下、本発明の予防・治療剤について詳述する。
[ホスホコリン基含有重合体]
本発明の予防・治療剤は、ホスホコリン基含有重合体を有効成分として使用する。ホスホコリン基含有重合体には、歯肉の活性化作用、歯肉の修復促進作用、歯周病菌が産生するLPS存在下での歯肉の活性化作用、及びLPS存在下で歯肉組織内で産生されるコラーゲン分解酵素の活性抑制作用を有しており、効果的に歯周病を予防又は改善することができる。
ホスホコリン基含有重合体とは、ホスホコリン基を含む単量体(以下、「ホスホコリン基含有単量体」と表記することがある)が重合したポリマーであり、保湿作用等を有する公知の成分である。
ホスホコリン基含有重合体において、ホスホコリン基含有単量体の種類については、特に制限されないが、例えば、ホスホコリン基とビニル基を有する単量体が挙げられる。ホスホコリン基含有単量体として、より具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルエタノールアミン等が挙げられる。ホスホコリン基含有重合体において、ホスホコリン基含有単量体は1種単独で含まれていてもよく、また2種以上組み合わされて含まれていてもよい。これらのホスホコリン基含有単量体の中でも、より一層効果的に歯周病の予防又は改善効果を奏させるという観点から、好ましくは2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが挙げられる。
本発明で使用されるホスホコリン基含有重合体は、1種のホスホコリン基含有単量体からなる単重合体であってもよく、また2種以上の単量体からなる共重合体であってもよい。
ホスホコリン基含有重合体が共重合体である場合、2種以上のホスホコリン基含有単量体からなる共重合体であってもよく、また少なくとも1種のホスホコリン基含有単量体と少なくとも1種のホスホコリン基含有単量体以外の単量体からなる共重合体であってもよい。
ホスホコリン基含有重合体に含まれるホスホコリン基含有単量体以外の単量体の種類については、薬学的に許容されるものであってホスホコリン基含有単量とラジカル重合可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ビニル基を有する単量体が挙げられる。ホスホコリン基含有単量体以外の単量体として、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メタクリル酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。ホスホコリン基含有重合体において、ホスホコリン基含有単量体以外の単量体は1種単独で含まれていてもよく、また2種以上組み合わされて含まれていてもよい。これらのホスホコリン基含有単量体以外の単量体の中でも、より一層効果的に歯周病の予防又は改善効果を奏させるという観点から、好ましくはアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム、より好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレート、更に好ましくはアルキル基の炭素数が3〜5のアルキル(メタ)アクリレート、特に好ましくはブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及び/又はアクリレートを示す。
本発明で使用されるホスホコリン基含有重合体として、具体的には、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単重合体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体(ポリクオタニウム−51)、2−メタクリロイルオキシエチレンホスホリルコリン・メタエリル酸ブチル・メタエリル酸ナトリウム共重合体(ポリクオタニウム−65)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体(ポリクオタニウム−64)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体(ポリクオタニウム−61)等が挙げられる。なお、ホスホコリン基含有重合体に関する前記表記において、括弧内の名称は化粧品成分表示名称を示す。
本発明の予防・治療剤において、有効成分として、1種のホスホコリン基含有重合体を使用してもよく、また2種以上のホスホコリン基含有重合体を組み合わせて使用してもよい。
これらのホスホコリン基含有重合体の中でも、より一層効果的に歯周病の予防又は改善効果を奏させるという観点から、好ましくは、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン単重合体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体;より好ましくは、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム共重合体;更に好ましくは、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体が挙げられる。
本発明の予防・治療剤において、ホスホコリン基含有重合体の含有量については、使用するホスホコリン基含有重合体の種類、予防・治療剤の製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.005〜0.5重量%、好ましくは0.025〜0.25重量%、より好ましくは0.05〜0.1重量%が挙げられる。
[その他の成分]
本発明の予防・治療剤は、ホスホコリン基含有重合体以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、製剤形態に応じて、当該技術分野で通常使用される成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、防腐剤、殺菌剤、抗菌剤、消炎剤、研磨剤、グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)阻害剤、プラーク抑制剤、知覚過敏抑制剤、歯石予防剤、歯質強化/再石灰化剤、増粘剤、湿潤剤、賦形剤、香料、甘味剤、色素、消臭剤、界面活性剤、溶剤、pH調整剤等が挙げられる。
防腐剤、殺菌剤、抗菌剤としては、例えば、ヒノキチオール、安息香酸類、サリチル酸類、ソルビン酸類、パラベン類、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化リゾチーム、塩酸クロルヘキシジン、ヨウ化カリウム等が挙げられる。
消炎剤としては、例えば、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸、アラントイン、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アズレン、塩化ナトリウム、ビタミン類等が挙げられる。
研磨剤としては、例えば、無水ケイ酸、含水ケイ酸、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、結晶セルロース、ポリエチレン末、炭粒等が挙げられる。
GTase阻害剤としては、例えば、アカバナ科マツヨイグサ属植物の抽出物、ブドウ科ブドウ属植物の抽出物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、タステイン、タンニン類、エラグ酸、ポリフェノール、ウーロン茶抽出物、緑茶抽出物、センブリ、タイソウ、ウイキョウ、芍薬、ゲンチアナ、センソ、龍胆、黄連等が挙げられる。
プラーク抑制剤としては、例えばクエン酸亜鉛やグルコン酸等が挙げられる。
知覚過敏抑制剤としては、例えば、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
歯石予防剤としては、例えば、ポリリン酸塩類、ゼオライト、エタンヒドロキシジホスフォネート等が挙げられる。
歯質強化/再石灰化剤としては、例えば、フッ素、フッ化ナトリウム、フルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、プルラン、プルラン誘導体、デンプン等の多糖類;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩類(カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム等)、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体等)、メタアクリル酸類の共重合体(メタアクリル酸とアクリル酸 n−ブチルの重合体、メタアクリル酸とメタアクリル酸メチルの重合体及びメタアクリル酸とアクリル酸エチルの重合体等)等のセルロース系高分子物質;カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子物質;レクチン、アルギン酸、アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸トリイソプロパノールアミン、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ブチルアミン、アルギン酸ジアミルアミン等)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、寒天、キトサン、カラギーナン等の天然系高分子物質;コラーゲン、ゼラチン等のアミノ酸系高分子物質;アラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガム、タマリンドガム、ジェランガム等のゴム系高分子物質等が挙げられる。
湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクトール、エリスリトール等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、マンニトール、デンプン、デキストリン、結晶セルロース、シリカ(軽質無水ケイ酸等)等が挙げられる。
香料としては、例えば、天然香料(ウイキョウ油等)、合成香料、これらの調合香料等が挙げられる。
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、アスパルテーム、キシリトール、水飴、蜂蜜、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、糖類(乳糖、白糖、果糖、ブドウ糖等)等が挙げられる。
色素としては、例えば、天然色素、合成色素、これらの混合物が挙げられる。
消臭剤としては、例えば、塩化亜鉛、銅クロロフィリンナトリウム、コーヒー生豆抽出物、ゴボウパウダー、緑茶、焙煎米糠エキス等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N−ミリストリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム等の陰イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、2-アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の両性界面活性剤;塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
溶剤としては、例えば、水;エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソプロパノール等の1価アルコール等が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、リン酸、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明の予防・治療剤において、これらの成分を含有させる場合、その含有量については、当該技術分野で通常使用される範囲で適宜設定すればよい。
[剤型・製剤形態]
本発明の予防・治療剤の剤型については、口腔内に適用可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、液状又は半固形状(ゲル状、ペースト状)が挙げられる。
本発明の予防・治療剤の製剤形態は、口腔内に適用されて口腔内で一定時間滞留し得るものである限り特に制限されないが、例えば、液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、洗口液(液体歯磨剤、洗口液は、一般にマウスリンス、マウスウォッシュ、デンタルリンス等と呼称されることがある)、口中清涼剤(マウススプレー等)、口腔用軟膏剤等の口腔衛生剤が挙げられる。これらの中でも、好ましくは液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、洗口液、より好ましくは液体歯磨剤、練歯磨剤、洗口液、特に好ましくは練歯磨剤が挙げられる。
[用途・使用方法]
本発明の予防・治療剤は、歯周病の予防又は改善の目的で、口腔内に適用して使用される。本発明の予防・治療剤は、歯肉の活性化作用、歯肉の修復促進作用、歯周病菌が産生するLPS存在下での歯肉の活性化作用、及びLPS存在下で歯肉組織内で産生されるコラーゲン分解酵素の活性抑制作用を総合的に発揮するので、歯周病が発症し難い口腔内環境を形成でき、更に歯周病の進行抑制、及び歯周病の症状の緩和が可能になる。なお、本発明において、「歯肉の活性化」とは、歯肉細胞(歯肉上皮細胞、歯肉線維芽細胞)の増殖能を向上させることである。
本発明の予防・治療剤は、その製剤形態に応じた形式で口腔内に適用して口腔内で一定時間滞留させればよい。本発明の予防・治療剤の使用量及び使用頻度については、特に制限されないが、例えば、1回当たりホスホコリン基含有重合体が0.05〜5mg程度となる量を、1日当たり1〜数回、好ましくは1〜3回程度の頻度で使用すればよい。
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
試験例1:歯肉細胞の賦活化効果の検証
ヒト口腔歯肉扁平上皮細胞Ca9-22(JCRB0625、JCRB生物資源バンク)及びヒト口腔歯肉繊維芽細胞HGF-1(CRL-2014、ATCC)を、ヒト口腔歯肉扁平上皮細胞は10%FBS(ウシ胎仔血清)を含むE-MEM培地に、ヒト口腔歯肉繊維芽細胞は10%FBSを含むD-MEM培地に各々懸濁し、96wellプレートにそれぞれ5×103cells/wellとなるように播種した。細胞播種1日後、培養液を除去し、表1に示す試験液を100μL/wellとなるように各ウェルに添加した。
Figure 2019116427
表1に示す試験液を添加した後に、37℃5%CO2インキュベーターで培養した。試験液の添加から48時間後に培養液を除去し、Cell Couting kit-8(同仁化学製 製品コードCK04)を用いて、生存している細胞の指標となる450nmの吸光度を測定した。別途、既知細胞数に対して、前記Cell Couting kit-8を用いて450nmの吸光度を測定して細胞数VS吸光度の検量線を作成し、当該検量線を用いて試験液添加後の細胞数を算出した。次いで、下記式に従って、増殖向上率(%)を算出した。なお、本試験はn=3の条件で実施し、増殖向上率は、それらの平均値として算出した。
Figure 2019116427
得られた結果を表2に示す。この結果、歯肉上皮細胞及び歯肉線維芽細胞の双方において、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を添加した場合(実施例1)に、無添加の場合(比較例1)に比して、細胞数の増加が認められ、細胞が賦活化されていることが確認された。即ち、本結果から、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体には、歯肉細胞を賦活化し、歯肉を活性化し得ることが明らかとなった。
Figure 2019116427
試験例2:歯肉細胞の賦活化効果の検証
ヒト口腔歯肉扁平上皮細胞Ca9-22(JCRB0625、JCRB生物資源バンク)を10%FBSを含むE-MEM培地に懸濁し、24wellプレートにそれぞれ1×105cells/wellとなるように播種した。細胞播種1日後、細胞がコンフルエントの状態になったことを確認し、セルスクラッチャーを使用してウェルの真ん中に2mm幅の傷をつけた。次いで、培養液を除去し、表3に示す試験液を500μL/wellとなるように各ウェルに添加した。
Figure 2019116427
表3に示す試験液を添加した後に、37℃5%CO2インキュベーターで培養した。試験液の添加前、添加から24時間後及び48時間後に、倒立顕微鏡を用いて、ウェル内の細胞を観察し、傷部分を撮影した。下記式に従って、組織修復率(%)を算出した。なお、本試験はn=4の条件で実施し、組織修復率は、それらの平均値として算出した。
Figure 2019116427
得られた結果を表4に示す。この結果、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を添加した場合(実施例2)は、無添加の場合(比較例2)に比して、組織修復率が大幅に向上していた。即ち、本結果から、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体には、歯肉の修復を促進する作用に優れていることが明らかとなった。
Figure 2019116427
試験例3:LPS存在下での歯肉細胞の賦活化効果の検証
ヒト口腔歯肉扁平上皮細胞Ca9-22(JCRB0625、JCRB生物資源バンク)を10%FBSを含むE-MEM培地に懸濁し、96wellプレートに5×103cells/wellとなるように播種した。細胞播種1日後、培養液を除去し、表5に示す試験液を100μL/wellとなるように各ウェルに添加した。
Figure 2019116427
表5に示す試験液を添加した後に、37℃5%CO2インキュベーターで培養した。試験液の添加から48時間後及び72時間後に培養液を除去し、Cell Couting kit-8(同仁化学製 製品コードCK04)を用いて、生存している細胞の指標となる450nmの吸光度を測定した。別途、既知細胞数に対して、前記Cell Couting kit-8を用いて450nmの吸光度を測定して細胞数VS吸光度の検量線を作成し、当該検量線を用いて試験液添加後の細胞数を算出した。次いで、下記式に従って、生細胞数の増数(cells)を算出した。なお、本試験はn=3の条件で実施し、生細胞数の増数は、それらの平均値として算出した。
Figure 2019116427
得られた結果を表6に示す。この結果、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を添加した場合(実施例3)に、無添加の場合(比較例3)に比して、歯肉上皮細胞の生細胞数の増加が認められ、LPS存在下で歯肉上皮細胞が賦活化されていることが確認された。即ち、本結果から、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体には、歯周病菌が産生するLPS存在下で、歯肉を活性化し得ることが明らかとなった。
Figure 2019116427
試験例4:歯肉細胞がLPSの刺激によって産生するMMP-1の活性抑制効果の検証
ヒト口腔歯肉繊維芽細胞HGF-1(CRL-2014、ATCC)を10%FBSを含むD-MEM highグルコース培地に懸濁し、96wellプレートに1×104cells/wellとなるように播種した。細胞播種1日後、培養液を除去し、表7に示す試験液を100μL/wellとなるように各ウェルに添加した。
Figure 2019116427
表7に示す試験液を添加した後に、37℃5%CO2インキュベーターで培養した。試験液の添加から24時間後に培養液を除去し、MMP-1定量用ELISAキット(R&D製 Duo Set Human Total MMP-1)を用いて、培養液中のMMP-1を定量した。また、同時に、Cell Couting kit-8(同仁化学製 製品コードCK04)を用いて、生存している細胞の指標となる450nmの吸光度を測定した。別途、既知細胞数に対して、前記Cell Couting kit-8を用いて450nmの吸光度を測定して細胞数VS吸光度の検量線を作成し、当該検量線を用いて試験液添加後の細胞数を算出した。次いで、生細胞1個当たりのMMP-1量を算出し、下記式に従って、コラーゲン分解活性(%)を算出した。なお、本試験はn=3の条件で実施した。
Figure 2019116427
得られた結果を表8に示す。この結果、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体を添加した場合(実施例4)に、無添加の場合(比較例4)に比して、コラーゲン分解酵素(MMP-1)の活性を低減できることが確認された。即ち、本結果から、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体は、歯肉組織内のコラーゲンを安定に維持させ、歯肉組織の破壊や歯肉退縮を抑制し得ることが明らかとなった。
Figure 2019116427
総合考察
以上の試験例1〜4で実証された通り、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体は、歯肉の活性化作用、歯肉の修復促進作用、歯周病菌が産生するLPS存在下での歯肉の活性化作用、及びLPS存在下で歯肉組織内で産生されるコラーゲン分解酵素の活性抑制作用を有しており、歯周病菌の予防又は改善に必要とされる生体機能を総合的に発揮させることができる。即ち、以上の結果から、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体は、歯周病の予防又は改善に有効であることが明らかとなった。
処方例
表9に示す練歯磨剤、及び表10に示すマウスリンスを調製した。当該練歯磨剤及びマウスリンスは、ホスホコリン基含有重合体(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、又はポリクオタニウム-64)が含まれており、歯肉の活性化作用、歯肉の修復促進作用、歯周病菌が産生するLPS存在下での歯肉の活性化作用、及びLPS存在下で歯肉組織内で産生されるコラーゲン分解酵素の活性抑制作用に基づいて、歯周病菌の予防又は改善する効果が得られるものである。
Figure 2019116427
Figure 2019116427

Claims (3)

  1. ホスホコリン基含有重合体を含む、歯周病の予防又は治療剤。
  2. 前記ホスホコリン基含有重合体が、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体である、請求項1に記載の歯周病の予防又は治療剤。
  3. 液体歯磨剤、液状歯磨剤、練歯磨剤、又は洗口液である、請求項1又は2に記載の歯周病の予防又は治療剤。
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