JP2019115859A - 歩行用ポール - Google Patents

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Abstract

【課題】前腕部の筋力が弱い高齢者、あるいは軽度障害者であっても、手首関節の関節角度を確りと保持でき、ぐらつくことなく適切に身体を支持できる歩行用ポールを提供する。【解決手段】歩行用ポールは、シャフト本体1と、シャフト本体1の上端部に設けられて、ユーザーに把持されるグリップ2と、シャフト本体1の下端部に設けられる石突き3とを含む。グリップ2に、ユーザーによる前後の把持方向を規定するための把持方向規定手段を設ける。把持方向規定手段を用いてユーザーがシャフト本体1の中心軸線Sが垂直線に沿う状態にしたとき、グリップ2の中心軸線Gを、シャフト本体1の中心軸線Sに対して後傾するように構成する。【選択図】図1

Description

本発明は、歩行時の身体の軸を安定させるために、両方の手に持って使用する歩行用ポールに関する。
歩行時に使用するポールは、例えば特許文献1に開示されている。係る特許文献1では、直線状のシャフトと、シャフトの上端部に装着されるグリップと、シャフトの下端部に装着される滑り止め部材とで歩行用ストックを構成している。シャフトは、第1シャフトと、第1シャフトの内部にスライド可能に挿入される第2シャフトと、第1シャフトと第2シャフトとを固定する固定スリーブとで構成されており、第2シャフトの第1シャフトへの挿入量を調整することによりシャフト全長を所望の長さに伸縮させることができる。グリップを構成するグリップ本体の上端には支持部が設けられており、支持部の上面はグリップ本体の軸線に対して所定の角度で傾斜している。支持部の上面の傾斜角度は、親指を支持部の上面にあてがった状態で、親指の付け根から指先に向かって上り傾斜しており、無理なく親指を支持部に乗せることができる。これによりグリップを握り締めたときの手の形態が常に一定になるようにしている。また、グリップの上下両端部にストラップが掛け渡されており、ストラップとグリップ本体との間に手甲部を通してグリップを握るようになっている。
特許文献2の歩行用補助杖は、シャフトと、シャフトの上端部に装着されるグリップと、シャフトの下端部に装着される石突とを備えている。グリップはピストルグリップ状に形成されており、手で正しい把持方向にグリップを把持した状態において、シャフトに対して前傾した状態で装着されている。シャフトにはクランク状の曲げ部分が設けられており、グリップを手で把持して歩行用補助杖を突いた状態において、石突がグリップの真下よりも身体から離れた位置に位置するようになっている。これにより、歩行時に脚部とシャフトとが干渉するのを防止している。
明示された文献は不明であるが、ポールで身体を支持しながら歩行するウォーキング方法として、図8に示すようなウォーキング方法が実施されている。係るウォーキング方法では、ポール100を両方の手に持った状態で、一方側の腕を前方に振り出してシャフト本体101が垂直線に沿うようにポール100を地面に突くとともに、つま先が前方に突いたポール100の真横になるように他方側の脚を踏み出す動作を左右交互に行って歩行する。このとき、手首関節は中立の状態であり、シャフト本体101と前腕部のなす角度は略直角にする。
特開2010−110407号公報 意匠登録第1457325号公報
歩行時にポールを使用する目的のひとつは、前方に振り出した腕でポールを突いて歩行することにより、ポールが地面から受ける反力で前方への推進力を得ることにある。他のひとつは、歩行時にポールで身体を支持することにより、身体のバランスを保持して歩行時の身体の軸を安定させることにある。前者においては、ポールによる前方への推進力を得る際、地面に対してシャフトが前傾するようにポールを突くことで効率よく前方への推進力が得られる。また、ポールを突くときの肘関節の関節角度θ2(上腕部と前腕部とのなす屈曲角度であり、腕を伸ばした状態が0度とする。)(図7参照)が90度以下であると、ポールで地面を押しやすく大きな推進力を得られる。一方、後者においては、前腕部を略水平に近付けた状態でシャフトが垂直線に沿う(前腕部とシャフトのなす角が略直角)ようにしてポールを地面に突くことで、ポールのぐらつきを防止して確りと身体を支持できる。また、ポールを突くときの肘関節の関節角度は、90度を超えている状態であるほうが、腕および上半身に必要以上の力を入れることなく、無理なく身体を支持することができる。
特許文献1の歩行用ストックは、所謂ノルディックウォーキングと呼ばれる運動強度の大きな歩行運動に使用されるものであり、前方への推進力を効果的に発揮するのに適したものである。ノルディックウォーキングは通常より歩幅を大きくするとともに、腕を伸ばすように大きく振り出して歩行する。そのため、大きく振り出した腕で、自然にシャフトが地面に対して前傾した状態で突くことができるように、シャフトを直線状に形成している。特許文献1の歩行用ストックを歩行時にポールで身体を支持することに使用すると、シャフトが直線状に形成されているため、肘関節の関節角度が90度付近では手首関節は中立の状態になる。また、肘関節の関節角度が90度より小さいと、手首関節が尺屈した状態で地面にストックを突くことになる。因みに、尺屈とは手首関節が尺骨側に屈曲した状態を言い、手首関節が撓骨側に屈曲した状態を撓屈、手の平側に屈曲した状態を掌屈、手の甲側に屈曲した状態を背屈と言う。
一般的には、手首関節が中立、あるいは尺屈していると腕の筋肉群の緊張状態が弱まる。手首関節を尺屈させる骨格、筋肉は肘や肩を動かす骨格、筋肉と連係しているので、手首関節が尺屈することにより、上肢全体の運動性が向上する。従って、腕を大きく振り出すノルディックウォーキングの場合には、手首関節を中立、あるいは尺屈している状態にすることが適している。しかし、手首関節が中立、あるいは尺屈している状態で身体を支持するためにストックを地面に突くと、腕の筋肉群の緊張状態が弱まっている分、手首関節の撓屈−尺屈方向および掌屈−背屈の関節角度を確りと保持できなくなり、地面に突いたストックがぐらつきやすい。このとき、手首関節の関節角度を保持するには、前腕部の筋力が必要となるが、前腕部の筋力が弱い高齢者、あるいは前腕部あるいは上腕部に軽度の障害がある人(以下、軽度障害者と言う。)の場合には、手首関節の関節角度を確りと保持できず、地面に突いたストックがぐらつき、歩行時の身体の軸を安定させることができない。
特許文献2の歩行用補助杖は歩行時に身体を支持するのに適したものであり、グリップがシャフトに対して前傾しているので、シャフトが垂直線に沿うように地面に補助杖を突くと、手首が自然に尺屈状態になる。因みに、肘関節の関節角度が大きいほど手首の尺屈状態が大きくなる。従って、歩行時に身体を支持するために使用される補助杖にもかかわらず、特許文献1の歩行用ストックと同様に、手首関節の関節角度の保持に、大きな筋力が必要となり、前腕部の筋力が弱い高齢者、あるいは前腕部あるいは上腕部に軽度の障害がある人が使用する場合には適さない。
本発明の目的は、前腕部の筋力が弱い高齢者、あるいは軽度障害者であっても、手首関節の関節角度を確りと保持でき、ぐらつくことなく適切に身体を支持できる歩行用ポールを提供することにある。
本発明の歩行用ポールは、シャフト本体1と、シャフト本体1の上端部に設けられて、ユーザーに把持されるグリップ2と、シャフト本体1の下端部に設けられる石突き3とを含み、ユーザーの前傾歩行姿勢の矯正に使用される。グリップ2に、ユーザーによる前後の把持方向を規定するための把持方向規定手段が設けられている。把持方向規定手段を用いてユーザーがシャフト本体1の中心軸線Sが垂直線に沿う状態にしたとき、グリップ2の中心軸線Gが、シャフト本体1の中心軸線Sに対して後傾するように構成されている。シャフト本体1の中心軸線Sと、グリップ2の中心軸線Gとの交差角度θ1が、1度以上、15度未満に設定されている。この交差角度θ1は、10度以上、15度未満に設定することができる。なお、前後方向の規定は、把持方向規定手段を用いてユーザーがシャフト本体1の中心軸線Sが垂直線に沿う状態にしたときの身体の正面方向が前、背面方向が後ろとする。
シャフト本体1は、相対スライド自在に差込み連結される上側シャフト6および下側シャフト7と、これら両シャフト6・7間に設けられてシャフトどうしの伸縮を阻止する伸縮ロック具8を備える。上側シャフト6の上端に後傾する装着軸部18を設けて、装着軸部18にグリップ2を外嵌装着する。
把持方向規定手段は、グリップ2の上端に設けられて、グリップ2を把持したユーザーの親指の腹を受止める指受面15で構成する。グリップ2の中心軸線Gを垂直線に沿う状態にしたとき、指受面15がグリップ2の中心軸線Gと直交する平面に対して前方へ上り傾斜し、且つシャフト本体1の中心軸線Sを垂直線に沿う状態にしたとき、指受面15が上方に指向するように構成する
グリップ2は、グリップ本体10と、グリップ本体10の上端部に設けられる上鍔部11と、グリップ本体10の下端部に設けられる下鍔部12とを備える。上鍔部11と下鍔部12のいずれか一方に、輪奈状のストラップ13を固定する。上鍔部11の上面に指受面15を凹み形成する。
本発明の歩行用ポールにおいては、ユーザーに把持されるグリップ2に、ユーザーによる前後の把持方向を規定するための把持方向規定手段を設け、把持方向規定手段を用いてユーザーがシャフト本体1の中心軸線Sが垂直線に沿う状態にしたとき、グリップ2の中心軸線Gが、シャフト本体1の中心軸線Sに対して後傾するように構成した。これによれば、シャフト本体1が垂直線に沿うように、ユーザーが地面に歩行用ポールを突くと、図7に示すように手首関節が撓屈した状態で、歩行用ポールで身体を支持することができる。手首関節を構成する撓骨と手根骨との関節面は、尺骨と手根骨との関節面よりも広いので、手首関節を撓屈した状態にすることで、手首の関節構造を利用して比較的弱い筋力であっても撓屈−尺屈方向および掌屈−背屈方向の関節角度を保持することができる。また、手首を限界まで撓屈させると、手首関節の関節構造を利用して筋力を必要とすることなく撓屈−尺屈方向の関節角度を保持することができ、掌屈−背屈方向の可動域を大きく制限することができる。従って、筋力の弱い高齢者、あるいは軽度障害者であっても、手首関節の関節角度を適切に保持できるので、地面に突いた歩行用ポールがぐらつくのを解消して、歩行用ポールで体のバランスを保持しながら、歩行時の身体の軸を安定させることができる。
シャフト本体1が、相対スライド自在に差込み連結される上側シャフト6および下側シャフト7と、これら両シャフト6・7どうしの伸縮を阻止する伸縮ロック具8を備えていると、ユーザーの身長や腕の長さなどに応じて、シャフト本体1の長さ寸法を最適化して、手首関節が常に撓屈する状態で、歩行用ポールを好適に地面に突くことができる。加えて、上側シャフト6の上端に後傾する装着軸部18を設けて、装着軸部18にグリップ2を外嵌装着すると、上側シャフト6にグリップ2を簡便に、しかもぐらつくことなく強固に固定でき、また、グリップ2を介して上側シャフト6を把持できる。従って、グリップ2を把持した手と歩行用ポールの一体感が増し、歩行用ポールを自在に操作することができる。
グリップ2の上端に設けられて、グリップ2を把持したユーザーの親指の腹を受止める指受面15で把持方向規定手段を構成し、指受面15をグリップ2の中心軸線Gと直交する平面に対して前方へ上り傾斜するように設けると、指受面15に親指の腹をあてがうようにグリップ2を把持するだけで、正しい把持方向で歩行用ポールを持つことができる。また、歩行用ポールがグリップ2の中心軸線Gまわりに回転しようとするのを、指受面15と親指とで規制できるので、常に規定された把持方向で歩行用ポールを持つことができる。
グリップ本体10の上下両端部に上鍔部11および下鍔部12を備えていると、汗等でグリップ2を把持する手が上下方向にずれ動いた場合でも、手のずれを上鍔部11および下鍔部12で規制して、手がグリップ2から上方向、あるいは下方向に滑り抜けるのを防止できる。また、上鍔部11と下鍔部12のいずれか一方に輪奈状のストラップ13を固定し、ストラップ13に手首を通しておけば、帽子の位置を直す、あるいはタオルで汗を拭く等のために、グリップ2から手を離した場合でも、歩行用ポールを前腕部で吊下げ支持できる。また、上鍔部11の上面に指受面15を形成すると、指受面15の形成領域を大きくすることができ、安定した状態で親指の腹を受止めることができる。加えて、凹み形成された指受面15によれば、親指をあてがう位置が明確となり、さらに、親指がずれ動くのを規制できる。
シャフト本体1の中心軸線Sと、グリップ2の中心軸線Gとの交差角度θ1を、1度以上、30度以下に設定することが好ましい。これは、平均的な手首関節の撓屈方向の可動角度が約20度であることに由来しており、先の交差角度θ1が1度未満であると、歩行用ポールを垂直線に沿うように地面に突いた際の手首関節の撓屈角度が小さく、手首を保持するためには強い筋力が必要となるからである。また、交差角度θ1が30度を越えると、撓屈方向の可動角度を大きく超えているため、手首関節を損傷するおそれがある。
本発明に係る歩行用ポールのグリップを示す側面図である。 歩行用ポールの全体の側面図である。 図1におけるA−A線矢視図である。 伸縮ロック具の縦断正面図である。 歩行用ポールの長さの調整方法を示す説明図である。 本発明に係る歩行用ポールを用いたウォーキング方法を示す説明図である。 歩行用ポールを前方の地面に突いた状態における上腕部、前腕部、手首関節、および歩行用ポールの角度関係を示す説明図である。 従来のウォーキング方法を示す説明図である。
(実施例) 図1から図7に本発明に係る歩行用ポールの実施例を示す。本実施例における前後、左右、上下とは、図1から図3に示す矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2において、歩行用ポールはシャフト本体1と、シャフト本体1の上端部に設けられて、ユーザーに把持されるグリップ2と、シャフト本体1の下端部に設けられる石突き3などで構成される。シャフト本体1は、相対スライド自在に差込み連結される上側シャフト6および下側シャフト7で構成されており、これら両シャフト6・7間にシャフト同士の伸縮を阻止する伸縮ロック具8を備えている。両シャフト6・7はそれぞれアルミニウム合金製の中空パイプで形成されている。下側シャフト7の外直径は、上側シャフト6の内直径より僅かに小さく設定されており、両シャフト6・7の差込み量を加減することにより、シャフト本体1の上下長さを自由に変更することができる。また、伸縮ロック具8を締込み操作することにより、上側シャフト6および下側シャフト7を任意の伸縮位置で相対移動不能に固定できる。
図1および図3に示すようにグリップ2は、グリップ本体10と、グリップ本体10の上下両端部に設けられる上鍔部11および下鍔部12と、グリップ2の把持方向を規定するための把持方向規定手段と、輪奈状のストラップ13などを備えている。グリップ本体10は、前後方向に長軸を有する楕円軸状に形成されており、親指を除く4本の手指と手の平とで握るように構成されている。グリップ本体10には、グリップ2の中心軸線Gに沿うように下向きに開口する装着穴14が開設されており、この装着穴14に上側シャフト6を差込んで、上側シャフト6にグリップ2が外嵌装着される。装着穴14の内径寸法は、上側シャフト6の外直径よりも僅かに小さく設定して、圧嵌状に外嵌装着する。
上鍔部11は、楕円軸状のグリップ本体10の外形形状より大きな楕円板状に形成されており、グリップ本体10の上端部にグリップ2の中心軸線Gに対して前傾するように設けられている(図1参照)。上鍔部11は、グリップ本体10を把持した手が上方へずれた際に人差し指を受止めて、手が上方に滑り抜けるのを規制している。上鍔部11と同様に下鍔部12は、楕円軸状のグリップ本体10の外形形状より大きな楕円板状に形成されており、グリップ本体10の下端部にグリップ2の中心軸線Gに対して直交するように設けられている。下鍔部12は、グリップ本体10を把持した手が下方へずれた際に小指を受止めて、手が下方に滑り抜けるのを規制している。下鍔部12の後端面にストラップ13が固定されており、グリップ2は、ストラップ13に手首を通した状態で把持する。
図1および図3に示すように把持方向規定手段は、グリップ2の上端に設けられて、グリップ2を把持したユーザーの親指の腹を受止める指受面15で構成されている。指受面15は楕円形状の浅い凹面で構成されており、上鍔部11の上面に凹み形成されている。そのため、指受面15は、グリップ2の中心軸線Gと直交する平面に対して前方へ上り傾斜するように設けられる。上鍔部11の上面に親指をあてがい、指受面15で親指の腹を受止めた状態で、残る4本の手指と手の平でグリップ本体10を掴むことにより、手でグリップ2を正しい向きに把持することができる。
図2に示すように上側シャフト6は、下側シャフト7が差込まれる差込軸部17と、グリップ2が外嵌装着される装着軸部18と、両軸部17・18を連結する連結軸部19とで構成されている。装着軸部18は、差込軸部17に対して連結軸部19で屈曲させて上側シャフト6の上端に後傾するように設けられている。これにより、シャフト本体1の中心軸線Sが垂直線に沿う状態において、グリップ2の中心軸線Gが、シャフト本体1の中心軸線Sに対して後傾している。シャフト本体1の中心軸線Sと、グリップ2の中心軸線Gとの交差角度θ1は、1度以上、30度以下に設定する。本実施例では、交差角度θ1は20度に設定した。図1において、符号20は装着軸部18に外嵌装着したグリップ2の抜け止めを図るビスである。
図2に示すように、下側シャフト7の下端部には石突き3が装着されている。石突き3はゴムを素材として有底筒状に形成されており、着脱可能に外嵌装着されている。石突き3は磨耗等で交換が必要になった場合に、新品と交換できるようになっている。下側シャフト7の上端には、両シャフト6・7どうしの伸縮を阻止する伸縮ロック具8を備えている。図2において、符号21は上側シャフト6の下側端面を保護する筒状のエンドキャップである。
図4に示すように伸縮ロック具8は、下側シャフト7の上端に差込み固定されるねじ体23と、ねじ体23にねじ込まれるロック体24とからなる。ねじ体23の上端には上窄まり状のテーパー軸部25が設けられており、上下のシャフト6・7を互いに締め込み方向に回転させると、テーパー軸部25をロック体24の雌ねじ部端に設けたすり鉢状の作用面26に当接させ、スリット27が形成されたロック体24の上端側を拡径させることができる。これにより、上側シャフト6の内壁面にロック体24を押し付けて両シャフト6・7どうしの伸縮を阻止できる。逆に上下のシャフト6・7を互いに緩め方向に回転させると、ロック体24の拡径状態が解除され、上側シャフト6および下側シャフト7は相対スライド可能になる。
次いで、歩行用ポールを使用したウォーキング方法を説明する。なお、図5から図7においては、グリップ2を把持する手は、親指を省略して模式的に作図してあり、実際には上鍔部11の上面に形成した指受面15に親指の腹が受け止められた状態でグリップ2を把持する。このウォーキング方法は、歩行用ポールを両方の手に持って使用する四点支持を基本とする歩行形態である。
まず、歩行用ポールのポール全長をウォーキングの実施者(ユーザー)に対して最適化するために、シャフト本体1の長さを変更してポール全長を調整する。以下にポール全長の調整方法の一例を示す。運動強度の大きなノルディックウォーキングの場合には、石突きの底面からグリップ2の上下方向中央部分までの寸法が、実施者の身長に0.63を乗じた値に調整すると適切なポール全長となるが、本発明のウォーキング方法においては、身長に0.69を乗じた値が適切なポール全長であり、ノルディックウォーキングよりもポール全長が長く設定される。シャフト本体1の長さは、伸縮ロック具8を緩め操作して両シャフト6・7の差込み量を加減したのち、伸縮ロック具8を締込み操作して変更でき、先の長さ係数により算出したポール全長に調整する。これにて、図7に示すように、前方に振り出した腕の手首関節が撓屈した状態で、シャフト本体1が垂直線に沿うように歩行用ポールを地面に突くことができる。つまり、本ウォーキング方法に適切なポール全長に調整できる。なお、手首関節は限界まで撓屈した状態になることが好ましい。手首関節の撓屈限界の角度が、約20度の実施者の場合、シャフト本体1の中心軸線Sと前腕部とのなす角度θ3は略直角となる。
立ち姿勢における上半身の前傾角度、あるいは手首関節の撓屈限界角度は個人差があるので、先の長さ係数を用いてポール全長を算出しただけでは、実施者に適切なポール全長に調整できないおそれがある。こうした場合には、例えば以下に述べるようにしてポール全長を調整するとよい。図5に示すように、まず、ウォーキングの実施者は略水平面上で立ち姿勢をとり、シャフト本体1を垂直線に沿うように直立させる。次いで、上腕部を体側に沿わせて肘関節を屈曲させ、握り締めた手の小指の下面を指受面15にあてがった状態で、肘関節の関節角度θ2が90度を超え、150度以下になるように、シャフト本体1の長さを調整する。肘関節の関節角度θ2は、上半身の前傾角度に応じて変更し、前傾角度の度合いが大きい場合には、肘関節の関節角度θ2を150度に近付け、逆に、前傾角度の度合いが小さい場合には、肘関節の関節角度θ2を90度に近付ける。これにて、先に説明した適切なポール全長に調整できる。
ウォーキングの実施者は、適切なポール全長に調整した歩行用ポールを両方の手に持ちウォーキングを実施する。歩行用ポールは、ストラップ13に手首を通し、親指の腹を指受面15にあてがった状態で、残る4本の指と手の平でグリップ本体10を把持する。そして、図6(a)に示すように、左腕(一方側の腕)を前方に振り出して、シャフト本体1が垂直線に沿うように歩行用ポールを地面に突くとともに、右足(他方側の足)のつま先が前方に突いた歩行用ポールよりも離間距離L分だけ後方に位置する状態で、足を踏み出す。次いで、図6(b)に示すように、右腕(一方側の腕)を前方に振り出して、シャフト本体1が垂直線に沿うように歩行用ポールを地面に突くとともに、左足(他方側の足)のつま先が前方に突いた歩行用ポールよりも離間距離L分だけ後方に位置する状態で、足を踏み出す。これら動作を左右交互に行ってウォーキングを実施する。離間距離Lは、3〜20cmとし、実施者の筋力の強さ、あるいは上半身の前傾角度の度合い等に応じて適宜変更する。筋力が弱い、あるいは上半身の前傾角度の度合いが大きい実施者ほど離間距離Lを大きくすることが好ましい。
以上のように、本実施例に係る歩行用ポールにおいては、ユーザーに把持されるグリップ2に、ユーザーによる前後の把持方向を規定するための把持方向規定手段を設け、把持方向規定手段を用いてユーザーがシャフト本体1の中心軸線Sが垂直線に沿う状態にしたとき、グリップ2の中心軸線Gが、シャフト本体1の中心軸線Sに対して後傾するように構成したので、シャフト本体1が垂直線に沿うように、ユーザーが地面に歩行用ポールを突くと、手首関節が撓屈した状態で、歩行用ポールで身体を支持することができる。手首関節を撓屈した状態にすることで、手首の関節構造を利用して比較的弱い筋力であっても撓屈−尺屈方向および掌屈−背屈方向の関節角度を保持することができる。従って、筋力の弱い高齢者、あるいは軽度障害者であっても、手首関節の関節角度を適切に保持して、地面に突いた歩行用ポールがぐらつくのを解消して、歩行用ポールで体のバランスを保持しながら、歩行時の身体の軸を安定させることができる。
シャフト本体1は、上側シャフト6および下側シャフト7と、これら両シャフト6・7どうしの伸縮を阻止する伸縮ロック具8を備えているので、ユーザーの身長や腕の長さなどに応じて、シャフト本体1の長さ寸法を最適化して、手首関節が常に撓屈する状態で、歩行用ポールを好適に地面に突くことができる。加えて、上側シャフト6の上端に設けた後傾する装着軸部18にグリップ2を外嵌装着したので、上側シャフト6にグリップ2を簡便に、しかもぐらつくことなく強固に固定でき、また、グリップ2を介して上側シャフト6を把持できる。従って、グリップ2を把持した手と歩行用ポールの一体感が増し、歩行用ポールを自在に操作することができる。
グリップ2の上端に設けられて、グリップ2を把持したユーザーの親指の腹を受止める指受面15で把持方向規定手段を構成し、指受面15をグリップ2の中心軸線Gと直交する平面に対して前方へ上り傾斜するように設けたので、指受面15に親指の腹をあてがうようにグリップ2を把持するだけで、正しい把持方向で歩行用ポールを持つことができる。また、歩行用ポールがグリップ2の中心軸線Gまわりに回転しようとするのを、指受面15と親指とで規制できるので、常に規定された把持方向で歩行用ポールを持つことができる。
グリップ本体10は上下両端部に上鍔部11および下鍔部12を備えているので、汗等でグリップ2を把持する手が上下方向にずれ動いた場合でも、手のずれを上鍔部11および下鍔部12で規制して、手がグリップ2から上方向、あるいは下方向に滑り抜けるのを防止できる。また、下鍔部12に、輪奈状のストラップ13を固定したので、ストラップ13に手首を通しておけば、帽子の位置を直す、あるいはタオルで汗を拭く等のために、グリップ2から手を離した場合でも、歩行用ポールを前腕部で吊下げ支持できる。下鍔部12の後端面に固定したストラップ13によれば、ストラップ13に手首を通した状態では、ストラップ13はその自重で前腕部から下方に垂れ下がり、手でグリップ2を把持する際にストラップ13ごとグリップ2を把持するのを防ぐことができる。また、上鍔部11の上面に指受面15を形成したので、指受面15の形成領域を大きくして、安定した状態で親指の腹を受止めることができる。加えて、凹み形成された指受面15によれば、親指をあてがう位置が明確となり、さらに、親指がずれ動くのを規制できる。
シャフト本体1の中心軸線Sと、グリップ2の中心軸線Gとの交差角度θ1を、1度以上、30度以下に設定することが好ましい。これは、平均的な手首関節の撓屈方向の可動角度が約20度であることに由来しており、先の交差角度θ1が1度未満であると、歩行用ポールを垂直線に沿うように地面に突いた際の手首関節の撓屈角度が小さく、手首を保持するためには強い筋力が必要となるからである。また、交差角度θ1が30度を越えると、撓屈方向の可動角度を大きく超えているため、手首関節を損傷するおそれがある。
上記の歩行用ポールを使用したウォーキング方法によれば、手首関節を撓屈させた状態で歩行用ポールを突いて、手首関節の関節構造を利用してぐらつくことなく歩行用ポールで身体を支持できる。また、歩幅が同じ場合には、従来のウォーキング方法に比べて、振り出した側の腕で突いた歩行用ポールの接地部分と、次に踏み出す後方に位置する足の接地部分との前後方向の距離を大きくでき、身体の前後方向のバランスが取りやすい状態でウォーキングを行うことができる。従って、力の弱い高齢者、あるいは軽度障害者がウォーキングを行う場合でも、安全にウォーキングを実施することができる。とくに、手首関節が限界まで撓屈している状態で突いた歩行用ポールに対して、腕で歩行用ポールを下方に押すと、手首関節の撓屈方向の屈曲が規制されているため、その反力で肘関節が伸展し、上半身が直立方向に起き上がろうとする。従って、上記のウォーキング方法で歩行することにより、上半身の前傾姿勢の程度が改善されることが期待でき、上半身が前傾姿勢になっている高齢者等の姿勢を矯正するリハビリテーションとして有効である。
上記の実施例では、把持方向規制手段は、親指の腹を受止める指受面15で構成したが、グリップ本体10の前面に、人差し指、中指、薬指、および小指の腹を受止める波状の凹凸面を形成して把持方向規制手段としてもよい。下側シャフト7に屈曲部分を設けて、石突き3をグリップ2の真下からずれた位置に位置させてもよい。上側シャフト6は、差込軸部17と装着軸部18を別体で構成し、締結体を操作して連結角度が調整できる連結体で一体に構成することができる。この場合には、シャフト本体1の長さ調整に加えて、シャフト本体1の中心軸線Sに対するグリップ2の中心軸線Gの後傾角度を調節できるので、さらに多様に歩行用ポールを調整できる。下側シャフト7の外周面に身長をマーキングしておき、エンドキャップ21の下端にマーキング部分を合わせて伸縮ロック具8を締め込み操作することにより、身長に応じた適切なポール全長に調整できるようにしてもよい。
1 シャフト本体
2 グリップ
3 石突き
6 上側シャフト
7 下側シャフト
8 伸縮ロック具
10 グリップ本体
11 上鍔部
12 下鍔部
13 ストラップ
15 指受面
18 装着軸部
S シャフト本体の中心軸線
G グリップの中心軸線
θ1 シャフト本体の中心軸線とグリップの中心軸線との交差角度

Claims (5)

  1. シャフト本体(1)と、シャフト本体(1)の上端部に設けられて、ユーザーに把持されるグリップ(2)と、シャフト本体(1)の下端部に設けられる石突き(3)とを含み、ユーザーの前傾歩行姿勢の矯正に使用される歩行用ポールであって、
    グリップ(2)に、ユーザーによる前後の把持方向を規定するための把持方向規定手段が設けられており、
    把持方向規定手段を用いてユーザーがシャフト本体(1)の中心軸線(S)が垂直線に沿う状態にしたとき、グリップ(2)の中心軸線(G)が、シャフト本体(1)の中心軸線(S)に対して後傾するように構成されており、
    シャフト本体(1)の中心軸線(S)と、グリップ(2)の中心軸線(G)との交差角度(θ1)が、1度以上、15度未満に設定されていることを特徴とする歩行用ポール。
  2. 前記交差角度(θ1)が、10度以上、15度未満に設定されている請求項1に記載の歩行用ポール。
  3. シャフト本体(1)が、相対スライド自在に差込み連結される上側シャフト(6)および下側シャフト(7)と、これら両シャフト(6・7)間に設けられてシャフトどうしの伸縮を阻止する伸縮ロック具(8)とを備えており、
    上側シャフト(6)の上端に後傾する装着軸部(18)を設けて、装着軸部(18)にグリップ(2)が外嵌装着されている請求項1または2に記載の歩行用ポール。
  4. 把持方向規定手段が、グリップ(2)の上端に設けられて、グリップ(2)を把持したユーザーの親指の腹を受止める指受面(15)で構成されており、
    グリップ(2)の中心軸線(G)を垂直線に沿う状態にしたとき、指受面(15)がグリップ(2)の中心軸線(G)と直交する平面に対して前方へ上り傾斜し、且つシャフト本体(1)の中心軸線(S)を垂直線に沿う状態にしたとき、指受面(15)が上方に指向するように構成されている請求項1から3のいずれかひとつに記載の歩行用ポール。
  5. グリップ(2)は、グリップ本体(10)と、グリップ本体(10)の上端部に設けられる上鍔部(11)と、グリップ本体(10)の下端部に設けられる下鍔部(12)とを備えており、
    上鍔部(11)と下鍔部(12)のいずれか一方に、輪奈状のストラップ(13)が固定されており、
    上鍔部(11)の上面に指受面(15)が凹み形成されている請求項1から4のいずれかひとつに記載の歩行用ポール。
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