JP2019114504A - 複合高分子電解質膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】補強材としてポリエーテルスルホンを用いても、表面にひび割れ状の線状欠陥が発生したり、MDに延びるシワが発生したりすることを抑制できる複合高分子電解質膜を提供する。【解決手段】目付が1.5g/m2以上4.0g/m2以下であるナノファイバーシートと、フッ素系高分子電解質と、を備える複合高分子電解質膜であって、前記電解質膜は、前記フッ素系高分子電解質と前記ナノファイバーシートとを複合化したシート形状を有しており、前記ナノファイバーシートはポリエーテルスルホンを含み、前記シート形状に加工する際の流れ方向をMDとし、前記MDに直交する方向をTDとし、前記ナノファイバーシートの前記TDにおける弾性率Yに対する前記MDにおける弾性率Xの比X/Yが、1.1以上4.1未満であり、前記電解質膜の前記MDにおける乾湿寸法変化率Dxに対する前記TDにおける乾湿寸法変化率Dyの比Dy/Dxが、1.2以上である、複合高分子電解質膜。【選択図】なし
Description
本発明は、複合高分子電解質膜に関する。
燃料電池は、電池内で、水素、又はメタノール等を電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを、直接電気エネルギーに変換して取り出すものであり、クリーンな電気エネルギー供給源として注目されている。特に、固体高分子電解質型燃料電池は、その他の燃料電池と比較して低温で作動することから、自動車代替動力源、家庭用コージェネレーションシステム及び携帯用発電機等として期待されている。このような固体高分子電解質型燃料電池は、電極触媒層とガス拡散層とが積層されたガス拡散電極が電解質膜の両面に接合された膜電極接合体を少なくとも備えている。ここでいう電解質膜は、高分子鎖中にスルホン酸基又はカルボン酸基等の強酸性基を有し、プロトンを選択的に透過する性質を有する材料である。
高分子電解質膜は、燃料電池自動車用途において、加速や減速時のアクセルワークにより、80℃程度に加温された水分量の大きく変化する環境で用いられる。この際、水分の膨潤と乾燥収縮による寸法変化が非常に大きく、耐久性・信頼性の点で改善の余地がある。そこで、寸法変化を小さくするために、電解質中に補強材を埋め込む手法が種々提案されている。近年、この燃料電池自動車の用途では、120℃近辺のより厳しい燃料電池駆動環境における化学耐久性と物理耐久性、及び発電性能が求められている。この高温環境での運転による効果として、ラジエータの容量を半減でき小型車への搭載が可能となること、燃料ガス中のCOによる触媒被毒の低減、及び熱利用の拡大が期待できる。また、燃料電池として用いる際に、電解質膜は、それ自体の膜抵抗を低くする必要があり、そのためには、電解質膜の厚さはできるだけ薄い方が望ましい。しかしながら、電解質膜の厚さを過剰に薄くすると、製膜時にピンホールを生じたり、電極形成時に膜が破れてしまう物理強度低下の問題、及び電極間の短絡が発生しやすいという問題点がある。
従来の燃料電池の駆動環境温度である80℃と異なり、120℃の厳しい環境においては、極めて大きな水の膨潤と乾燥収縮の繰り返しストレスが電解質膜に加わる。よって、そのような環境に用いられる電解質膜は、加湿膨潤乾燥と熱変形ストレスの両方の耐久性を向上する必要がある。特に、電解質膜は、加熱下で何らかの外部応力が加わると応力歪を蓄積し、そのストレスにより永久変形してしまい、薄膜化の進行と高分子の劣化が促進される。これらを抑制するには、電解質膜自身の熱変形の耐性を向上することの他、高いガラス転移温度を有する補強材を含有することが有効である。しかしながら、補強材の含有率を増やすと、プロトン伝導性を妨げ膜抵抗が大きくなる弊害を引き起こす。よって、ガラス転移温度の高い補強材に頼るのだけではなく、電解質膜自身の耐熱性も向上させ、電解質膜の耐久性と高いプロトン伝導性とを両立することが求められている。
例えば、特許文献1は、高温での動作時に、改善されたプロトン伝導性保持能力を示すことができ、かつ安定を保つことができる電解質膜に関するものであって、ナノファイバーマットで強化された第1のフッ素系高分子電解質を備える電解質膜であって、前記ナノファイバーマットは、ポリマー及びポリマー配合物から選択される繊維材料を含むナノファイバーから作製され、前記繊維材料は、繊維材料プロトン伝導度を有し、前記第1のフッ素系高分子電解質は、第1のフッ素系高分子電解質伝導度を有し、前記繊維材料プロトン伝導度は、第1のフッ素系高分子電解質伝導度より低い電解質膜を記載している。
しかしながら、特許文献1に記載の電解質膜は、その表面に、連続製膜時に膜を加工する際の流れ方向であるMD(Machine Direction)に延びるシワ(凹凸)が発生することが分かった。また、ポリエーテルスルホンを電解質膜の補強材として用いた際に、シワが発生しなくても、電解質膜の表面にひび割れ状の線状欠陥が発生する場合があることが分かった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、補強材としてポリエーテルスルホンを用いても、表面にひび割れ状の線状欠陥が発生したり、MDに延びるシワが発生したりすることを抑制できる複合高分子電解質膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、所定の補強材を備え、その補強材や電解質膜が、電解質膜のMD及びそのMDに直交するTD(Transverse Direction)における所定の物理的特性を有する複合高分子電解質膜であれば、表面にひび割れ状の線状欠陥が発生したり、MDに延びるシワが発生したりすることを抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]目付が1.5g/m2以上4.0g/m2以下であるナノファイバーシートと、フッ素系高分子電解質と、を備える複合高分子電解質膜であって、前記電解質膜は、前記フッ素系高分子電解質と前記ナノファイバーシートとを複合化したシート形状を有しており、前記ナノファイバーシートはポリエーテルスルホンを含み、前記シート形状に加工する際の流れ方向をMDとし、前記MDに直交する方向をTDとし、前記ナノファイバーシートの前記TDにおける弾性率Yに対する前記MDにおける弾性率Xの比X/Yが、1.1以上4.1未満であり、前記電解質膜の前記MDにおける乾湿寸法変化率Dxに対する前記TDにおける乾湿寸法変化率Dyの比Dy/Dxが、1.2以上である、複合高分子電解質膜。
[2]前記ナノファイバーシートの空隙率(%)が75%以上95%以下である、[1]に記載の電解質膜。
[3]前記ナノファイバーシートにおける繊維の平均繊維径は、100nm以上500nm以下である、[1]又は[2]に記載の電解質膜。
[4]前記弾性率X及び前記弾性率Yが、いずれも55MPa以上である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の電解質膜。
[5]前記電解質膜の表面の凹凸高さが5μm以下である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の電解質膜。
[1]目付が1.5g/m2以上4.0g/m2以下であるナノファイバーシートと、フッ素系高分子電解質と、を備える複合高分子電解質膜であって、前記電解質膜は、前記フッ素系高分子電解質と前記ナノファイバーシートとを複合化したシート形状を有しており、前記ナノファイバーシートはポリエーテルスルホンを含み、前記シート形状に加工する際の流れ方向をMDとし、前記MDに直交する方向をTDとし、前記ナノファイバーシートの前記TDにおける弾性率Yに対する前記MDにおける弾性率Xの比X/Yが、1.1以上4.1未満であり、前記電解質膜の前記MDにおける乾湿寸法変化率Dxに対する前記TDにおける乾湿寸法変化率Dyの比Dy/Dxが、1.2以上である、複合高分子電解質膜。
[2]前記ナノファイバーシートの空隙率(%)が75%以上95%以下である、[1]に記載の電解質膜。
[3]前記ナノファイバーシートにおける繊維の平均繊維径は、100nm以上500nm以下である、[1]又は[2]に記載の電解質膜。
[4]前記弾性率X及び前記弾性率Yが、いずれも55MPa以上である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の電解質膜。
[5]前記電解質膜の表面の凹凸高さが5μm以下である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の電解質膜。
本発明によれば、補強材としてポリエーテルスルホンを用いても、表面にひび割れ状の線状欠陥が発生したり、MDに延びるシワが発生したりすることを抑制できる複合高分子電解質膜を提供することができる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。本実施形態の複合高分子電解質膜(以下、単に「複合電解質膜」又は「電解質膜」ともいう。)は、ナノファイバーシートと、フッ素系高分子電解質とを備える電解質膜であって、その電解質膜は、フッ素系高分子電解質とナノファイバーシートとを複合化したシート形状を有しており、ナノファイバーシートはポリエーテルスルホンを含み、上記シート形状に加工する際の流れ方向をMDとし、そのMDに直交する方向をTDとし、ナノファイバーシートのTDにおける弾性率Yに対するMDにおける弾性率Xの比X/Yが、1.1以上4.1未満であり、電解質膜のMDにおける乾湿寸法変化率Dxに対するTDにおける乾湿寸法変化率Dyの比Dy/Dxが、1.2以上である。
<ナノファイバーシート>
本実施形態のナノファイバーシートは、電解質膜を強化する補強材として機能するものであり、ポリエーテルスルホンを含む。このようにポリエーテルスルホンを含む補強材を備えることにより、電解質膜はその物理耐久性を更に高めることができる。本実施形態のナノファイバーシートは、電解質膜のTDにおける弾性率Yに対するMDにおける弾性率Xの比X/Yが、1.1以上4.1未満である。この弾性率の比X/Yが1.1以上であることにより、電解質のMDに延びるシワが表面に発生するのを抑制することができ、4.1未満であることにより、電解質の表面にひび割れ状の線状欠陥が発生するのを抑制することができる。また、弾性率の比X/Yが上記範囲内にあると、電解質膜を一旦基材に密着させてから製造する場合に、基材からの電解質膜の剥離時に、特にMDに電解質膜が伸び難いという利点もある。同様の観点から、弾性率の比X/Yは、1.2以上3.8以下であると好ましく、1.3以上3.7以下であるとより好ましい。
本実施形態のナノファイバーシートは、電解質膜を強化する補強材として機能するものであり、ポリエーテルスルホンを含む。このようにポリエーテルスルホンを含む補強材を備えることにより、電解質膜はその物理耐久性を更に高めることができる。本実施形態のナノファイバーシートは、電解質膜のTDにおける弾性率Yに対するMDにおける弾性率Xの比X/Yが、1.1以上4.1未満である。この弾性率の比X/Yが1.1以上であることにより、電解質のMDに延びるシワが表面に発生するのを抑制することができ、4.1未満であることにより、電解質の表面にひび割れ状の線状欠陥が発生するのを抑制することができる。また、弾性率の比X/Yが上記範囲内にあると、電解質膜を一旦基材に密着させてから製造する場合に、基材からの電解質膜の剥離時に、特にMDに電解質膜が伸び難いという利点もある。同様の観点から、弾性率の比X/Yは、1.2以上3.8以下であると好ましく、1.3以上3.7以下であるとより好ましい。
ナノファイバーシートの上記弾性率X及び弾性率Yは、いずれも55MPa以上であると好ましく、60MPa以上であるとより好ましい。また、弾性率Xは、77MPa以上であると好ましく、100MPa以上であるとより好ましく、130MPa以上であると更に好ましい。弾性率X及びYが上記数値範囲内にあることにより、シワ及び線状欠陥の発生をより抑制することができる。ナノファイバーシートの弾性率は、下記のようにして導き出される。まず、ナノファイバーシートを70mm×10mmの長方形に切り出して試料とする。その試料について、JIS K−7127に準拠してMD及びTDの弾性率を測定する。測定には、50Nロードセルを備える引っ張り試験機を用いる。試料チャック間距離を50mm、クロスヘッド速度を300mm/minとして、24℃、相対湿度45%RHの環境下で弾性率を測定する。
本実施形態のナノファイバーシートは空隙率(%)が75%以上95%以下であると好ましく、75%以上90%以下であるとより好ましい。また、本実施形態のナノファイバーシートは、フッ素系高分子電解質との複合化前に比べて、すなわち、フッ素系高分子電解質と複合化される際に、膜厚が50%以上75%以下の範囲で収縮したものであると好ましい。さらに、本実施形態の電解質膜において、その厚さに対する、ナノファイバーシートの厚さの比率が25%以上60%未満であると好ましい。これらにより、電解質は埋め込み性、すなわちナノファイバーシートの空隙へのフッ素系高分子電解質の充填性に更に優れ、膜抵抗がより小さく、かつ、更に高いプロトン伝導性と一層優れた面方向の寸法変化抑制とを実現できる。
空隙率が75%以上となると、ナノファイバーシートへのフッ素系高分子電解質の埋め込み不良をより抑制できる。一方、空隙率が95%以下である、より好ましく90%以下であることにより、ナノファイバーシートの自立性が向上するため、取扱いが簡便となり、ナノファイバーシートによる補強作用も更に十分になる傾向となる。空隙率は下記のようにして導き出される。まず、40mm×30mmの長方形に切り出したナノファイバーシートの質量を精密天秤にて測定し、測定した質量及びナノファイバーシートの厚さから膜密度ρ(g/cm3)を下記式(A)により算出する。そして、得られた膜密度ρ及びナノファイバーシートを構成する材料の真密度ρ0(g/cm3)から、下記式(B)により空隙率(%)を求めることができる。
膜密度ρ=M/(4.0×3.0×t) (A)
ここで、Mは切り出したナノファイバーシートの質量(g)を示し、tはナノファイバーシートの厚さ(cm)を示す。
空隙率(%)=(1−(ρ/ρ0))×100 (B)
膜密度ρ=M/(4.0×3.0×t) (A)
ここで、Mは切り出したナノファイバーシートの質量(g)を示し、tはナノファイバーシートの厚さ(cm)を示す。
空隙率(%)=(1−(ρ/ρ0))×100 (B)
ナノファイバーシートの目付は、1.5g/m2以上4.0g/m2以下であり、2.0g/m2以上3.5g/m2以下であると好ましく、2.5g/m2以上3.3g/m2以下であるとより好ましい。目付が1.5g/m2以上であると、膜の自立性があり、複合化の際に破膜することなく、取扱いが容易でプロセスが安定化する。さらに、単位面積あたりの繊維本数も十分であるので、平面方向における電解質膜の膨潤収縮が抑制される。一方、目付が4.0g/m2以下であると、ポリマーの充填性とプロトン伝導性の両方が優れ、電解質膜の膨潤収縮を抑制することが可能となる。ナノファイバーシートの目付は、採取可能な任意の最も面積の広い面の面積と質量とを測定し、1m2当たりの質量に換算した値である。ナノファイバーシートの厚さは下記のようにして導き出す。すなわち、膜厚計(例えば、株式会社ミツトヨ製のABSデジマチックインジケータID−F125(製品名))を用いて、同じナノファーバーシート内における任意の5点で厚さを計測し、その相加平均をナノファイバーシートの厚さとする。
ナノファイバーシートとフッ素系高分子電解質との複合化前後における厚さの変化、言い換えれば、フッ素系高分子電解質と複合化された際の厚さの収縮程度は、電解質膜の断面SEM像を取得することで測定できる。まず、上述のようにしてフッ素系高分子電解質との複合化前のナノファーバーシートの厚さを導き出す。次いで、そのナノファイバーシートを用いて本実施形態の電解質膜を作製する。次に、電解質膜の断面SEM像を取得して、その厚さ方向におけるナノファイバーシートの厚さを、フッ素系高分子電解質とのコントラスト差により測定する。この時の前処理は、まず、電解質膜を適当な大きさで切り出し、切り出した試料をエポキシ樹脂で包埋後、クライオ冷却機能付きのウルトラミクロトームにて切削断面を作製する。次に、ルテニウム染色によりナノファイバーシートの部分を染色して、さらにオスミウムコーティングにより検鏡試料を作製する。この前処理により、複合高分子電解質膜中のナノファイバーシートの厚さを容易に測定することができる。
本実施形態のナノファイバーシートのフッ素系高分子電解質との複合化前における厚さは、5μm以上28μm以下であると好ましい。その厚さが5μm以上28μm以下であると、特にナノファイバーシートにおける繊維の平均繊維径が100nm以上500nm以下である場合、薄膜(例えば厚さ25μm以下)の電解質膜であっても、フッ素系高分子電解質の埋め込み性がより良好であり、電解質膜の平面方向における寸法変化をより有効かつ確実に抑制することができる。さらに、電解質膜の厚さが15μm以下の場合、複合化前のナノファイバーシートの厚さは、5μm以上15μm以下が好ましい。これにより電解質膜の平面方向における寸法変化を抑制し、電解質膜の電気抵抗を下げることができ発電性能が向上する。
本実施形態のナノファイバーシートは、ポリエーテルスルホン(PES)を含むものである。ナノファイバーシートがポリエーテルスルホンを含むことにより、耐薬品性及び耐熱性に更に優れ、フッ素系高分子電解質と複合化する際に一層安定である。ナノファイバーシートにおけるポリエーテルスルホンの含有量は、ナノファイバーシートの全量(100質量%)に対して、50質量%を超えると好ましく、75質量%以上であるとより好ましく、90質量%以上であると更に好ましく、95質量%以上であるとなおも更に好ましく、98質量%以上であると特に好ましく、ナノファイバーシートがポリエーテルスルホンからなると極めて好ましい。
本実施形態のナノファイバーシートは、ポリエーテルスルホン以外の樹脂を含んでもよい。そのような樹脂としては、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)からなる群より選ばれる1種以上を含むと好ましく、PBIを含むとより好ましい。かかるナノファイバーシートは、その他の樹脂を含む場合と比較して耐薬品性及び耐熱性に優れ、フッ素系高分子電解質と複合化する際に一層安定になる。ナノファイバーシートにおけるポリエーテルスルホン以外の樹脂の含有量は、ナノファイバーシートの全量(100質量%)に対して、50質量%未満であると好ましく、25質量%以下であるとより好ましく、10質量%以下であると更に好ましく、5質量%以下であるとなおも更に好ましく、2質量%以下であると特に好ましい。
このようなナノファイバーシートは、例えば、静電紡糸法(エレクトロスピニング法)、メルトブロー法、及びスパンボンド法などにより製造することが可能である。これらの中でも、静電紡糸法は、平均繊維径が小さく、実質的に連続した繊維からなり、空隙率の大きな1Mを超える広幅なナノファイバーシートを連続的に生産することも可能であるため、好適に用いられる。ナノファイバーシートを製造する量産用の装置としては、例えば、エルマルコ株式会社製の「Nanospider」(商品名)のNS8S1600U(型式名、ワイヤー電極方式)、株式会社メック社のEDEN(NF−1001S)(製品名、ノズル吐出電極方式)、株式会社フューエンス社のエスプレイヤー量産機(ノズル吐出電極方式)を好適に用いることができる。静電紡糸法の適用が難しいPPSのナノファイバーは、例えば、特開2013−79486号公報を参考にして加工することが可能である。
本実施形態の静電紡糸法によるナノファイバーシートの繊維は、上記装置の印加電圧、電極間距離、温度、湿度、紡糸溶液の溶媒種、及び紡糸溶液濃度など複数条件の組み合わせにより、所望のナノファイバー繊維径に加工することができる。本実施形態のナノファイバーシートにおける繊維の平均繊維径は、100nm以上500nm以下であると好ましく、より好ましくは100nm以上350nm以下である。平均繊維径が上記範囲内にあると、特に複合化前のナノファイバーシートの厚さが5μm以上28μm以下である場合、薄膜(例えば厚さ25μm以下)の複合高分子電解質膜であっても、フッ素系高分子電解質の埋め込み性が良好であり、電解質膜の平面方向における寸法変化をより有効かつ確実に抑制することができる。
ナノファイバーシートにおける繊維の繊維径は、同等の目付量で比較すると、細径の方がナノファイバー繊維で囲まれる孔径を小さくすることが可能となる。それにより、ナノファイバーが存在しないフッ素系高分子電解質単独の領域を少なくすることができるので、電解質膜の平面方向の寸法変化をより抑制することができる。しかしながら、現実には、繊維径が100nm未満になると、生産性が低下しコストアップや加工難易度も高まり、ナノファイバーシート繊維の均一性(繊維径のばらつき、目付、空隙率)の確保が困難になる傾向にある。一方、繊維径が500nmを超えると、繊維同士の重なり合う部位で膜厚収縮が不十分となる傾向にあり、電解質であるフッ素系高分子電解質の埋め込み性が低下し、ボイド欠陥の発生が生じやすくなり、膜抵抗が大きくなる傾向にある。また、繊維径が500nmを超えると、ナノファイバー繊維間の孔径(繊維が存在しない空隙部)が大きくなる傾向にあり、フッ素系高分子電解質が単独で存在する領域が大きくなる傾向にある。その結果、電解質膜の平面方向の寸法変化を抑制し難くなる傾向にある。
本実施形態のナノファイバーシートは、複合化の前に熱処理を施されることが好ましい。その熱処理方法としては、例えば、赤外線ヒータやオーブンを用いた熱風乾燥による加熱が挙げられる。この熱処理方法によると、ナノファイバーシートの高空隙率を保持したまま、部分的にナノファイバー繊維同士が接触する点において融着させることができるので、ナノファイバーシート表面の毛羽立ちの更なる抑制とシート強度のいっそうの向上を可能とする。
これらのうち、ナノファイバーシートの強度向上は、引っ張り試験による5%伸び時の応力により確認することができる。すなわち、本実施形態のナノファイバーシートの5%伸び時の応力は、75%以上の空隙率を保持した状態で、好ましくは1.5MPa以上であり、より好ましくは2MPa以上であり、さらに好ましくは3MPa以上である。ナノファイバーシートの5%伸び時の応力が1.5MPa以上であると、複合高分子電解質膜として加湿膨潤時の寸法変化の抑制効果及び耐久性が更に向上する傾向にある。また、ナノファイバーシートの熱機械特性にいっそう優れ、高温下でも熱変形し難くなる。熱機械特性は、熱機械分析(TMA)の応力・歪制御装置で測定できる。一定応力下でナノファイバーシートを加熱昇温させ、その際の変形量で優劣を判断できる。一層高い強度でしかも熱機械特性により優れるナノファイバーシートは、電解質膜への複合化に際し、その電解質膜における含有量を少量にすることが可能となり、膜抵抗を低減したり、電解質を含浸する際のボイド欠陥の発生を抑制したりすることができる。
<複合高分子電解質膜>
本実施形態の複合高分子電解質膜は、上記ナノファイバーシートと、高分子電解質であるフッ素系高分子電解質とを含む。本実施形態の複合高分子電解質膜の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記ナノファイバーシートに電解質を充填することで複合高分子電解質膜を得ることができる。より具体的には、ナノファイバーシートをそのMDに張力を付与した状態でフッ素系高分子電解質の溶液を含浸した後、更に必要に応じて、張力を付与した状態の含浸後のナノファイバーシートとフッ素系高分子電解質との複合膜にフッ素系高分子電解質の溶液を塗工し、乾燥することによって複合高分子電解質膜を得ることができる。張力を付与するには、ロールtoロールによる連続製膜を採用すればよい。
本実施形態の複合高分子電解質膜は、上記ナノファイバーシートと、高分子電解質であるフッ素系高分子電解質とを含む。本実施形態の複合高分子電解質膜の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記ナノファイバーシートに電解質を充填することで複合高分子電解質膜を得ることができる。より具体的には、ナノファイバーシートをそのMDに張力を付与した状態でフッ素系高分子電解質の溶液を含浸した後、更に必要に応じて、張力を付与した状態の含浸後のナノファイバーシートとフッ素系高分子電解質との複合膜にフッ素系高分子電解質の溶液を塗工し、乾燥することによって複合高分子電解質膜を得ることができる。張力を付与するには、ロールtoロールによる連続製膜を採用すればよい。
複合高分子電解質膜におけるナノファイバーシートの弾性率の比X/Yを上記の範囲内に制御するには、複合高分子電解質膜を製造する際に、ナノファイバーシートや複合膜に付与する張力を調整すればよい。具体的には、一軸延伸をしながら、上述の充填(含浸)、塗工及び乾燥の処理を行うことが好ましい。弾性率の比X/Yが所望の数値よりも低くなる場合は、MDに付与する張力を高くすればよく、高くなる場合は、MDに付与する張力を低くすればよい。あるいは、ナノファイバーシートをロール(第一ロール)から次のロール(第二ロール)へ搬送する際、該両ロールの回転速度比を調整することにより、ナノファイバーシートのMDに付与する張力を調整して、ナノファイバーシートの弾性率の比X/Yを制御することができる。具体的には、第一ロールによるナノファイバーシートの搬送速度が第二ロールによるナノファイバーシートの搬送速度よりも速くなるように、第一ロールの回転速度を調整することで、ナノファイバーシートのMDに付与する張力を高くすることができる。第一ロールによるナノファイバーシートの搬送速度(A)と第二ロールによるナノファイバーシートの搬送速度(B)の比は限定するものではないが、(A/B)の値は1.01〜3.00が好ましく、1.02〜2.00が更に好ましく、1.05〜1.50であることが更に好ましい。該両ロールの回転速度は限定するものではないが現実的な回転速度として、10mm/min〜5,000mm/minであるのが好ましく、50mm/min〜3,000mm/minの範囲であるのが更に好ましい。
また、特定方向へ連続的に移動する捕集体上に紡糸したナノファイバーを捕集してナノファイバーシートを製造することにより、MD方向へ配向したナノファイバーを備えるナノファイバーシートを製造することができる。このとき、捕集体の搬送速度を調整することにより、ナノファイバーシートにおけるMD方向へ配向したナノファイバーの割合や配向の程度を調整して、ナノファイバーシートの弾性率の比X/Yを制御することができる。具体的には、捕集体が特定方向へ連続的に移動する速度を速くすることで、ナノファイバーシートにおけるMD方向へ配向したナノファイバーの割合や配向の程度を上げることができる。
また、特定方向へ連続的に移動する捕集体上に紡糸したナノファイバーを捕集してナノファイバーシートを製造することにより、MD方向へ配向したナノファイバーを備えるナノファイバーシートを製造することができる。このとき、捕集体の搬送速度を調整することにより、ナノファイバーシートにおけるMD方向へ配向したナノファイバーの割合や配向の程度を調整して、ナノファイバーシートの弾性率の比X/Yを制御することができる。具体的には、捕集体が特定方向へ連続的に移動する速度を速くすることで、ナノファイバーシートにおけるMD方向へ配向したナノファイバーの割合や配向の程度を上げることができる。
図1に本実施形態の複合電解質膜の使用態様の一例を説明するための模式図を示す。図1に示されるように、本実施形態の複合電解質膜は、フッ素系高分子電解質が充填されたナノファイバーシート1を、電解質であるフッ素系高分子電解質3が挟む態様であってもよく、これにより、フッ素系高分子電解質3の内部にナノファイバーシートが延在するようなシート形状を有することができる。このような複合電解質膜は、さらに電極触媒層2に挟まれて膜電極接合体(以下、「MEA」とも表記する。)として用いられる。図2は、ナノファイバーシートとフッ素系高分子電解質が複合化される際の断面模式図である。図2に示されるように、ナノファイバーシート1はフッ素系高分子電解質3と複合化しており、その空孔部にはフッ素系高分子電解質3が充填される。このようにして、複合電解質膜は、ナノファイバーシートにより強化される。
この電解質膜のMDにおける乾湿寸法変化率Dxに対するTDにおける乾湿寸法変化率Dyの比Dy/Dxは、1.2以上である。乾湿寸法変化率の比Dy/Dxが1.2以上であることにより、本発明による作用効果をより一層かつ確実に奏する他、電解質膜の物理耐久性を更に優れたものとすることができる。同様の観点から、乾湿寸法変化率の比Dy/Dxは1.5以上であると好ましく、2.0以上であるとより好ましく、2.5以上であると更に好ましい。また、乾湿寸法変化率の比Dy/Dxの上限は特に限定されないが、例えば、20以下であってもよく、17以下であってもよく、15以下であってもよい。
本明細書において、電解質膜の乾湿寸法変化率は、20℃、65%RHの温度湿度条件に対する120℃、100%RHの温度湿度条件での寸法変化率を意味し、下記のようにして導き出される。まず、電解質膜におよそ15mm×20mm(MD:15mm、TD:20mm)の長方形の枠を記入し、20℃、65%RHでの各辺の長さを測定顕微鏡(例えば、OLYMPUS製、型式「STM6」)で計測する。次いで、上記電解質膜を高度加速寿命試験装置(例えば、HAST製、型式「EHS−211」)内に投入し、120℃で100%RHの環境に2時間曝した後、上記と同様にして長方形の枠の各辺の長さを計測する。高度加速寿命試験装置での加速試験前後での寸法の変化率を、長方形の短辺及び長辺それぞれの方向に関して算出し、その平均値をもって電解質膜のMD及びTDでの寸法変化率とする。
電解質膜の表面の凹凸高さは5μm以下であると、電解質膜の表面の平坦性がより良好な状態になるといえるので好ましい。同様の観点から、その凹凸高さは、3μm以下であるとより好ましく、1μm以下であると更に好ましい。電解質膜の表面の凹凸高さの下限は特に限定されないが、例えば0μm以上であってもよい。電解質膜の表面の凹凸高さは、例えば触針式段差計(例えばKLA Tencor社製、製品名「Alpha−Step D−120」)により測定することができる。ポリエーテルスルホンを含むナノファイバーシートを用いる場合、上記弾性率の比X/Yを上記の範囲内に調整することにより、電解質膜の表面の凹凸高さを5μm以下に制御することができる。
本実施形態の電解質膜の平均線膨張率は、熱機械分析(TMA)の応力・歪制御装置により測定することができる。より詳細には、電解質膜試料をプローブに装着し、引張モードにて一定荷重のもと一定の昇温速度で加熱昇温し、その際の試料長さの変位(熱膨張)により、平均線膨張率を算出する。本実施形態の電解質膜は、フッ素系高分子電解質とナノファイバーシートとを複合化したシート形状を有しており、かつ、シート形状の面方向(以下、単に「シート面方向」ともいう。)における20℃から120℃の平均線膨張率が300ppm/K以下である。ここで、シート形状の面方向とは、流れ方向(MD)及びMDと直交する方向(TD)の両方の方向を指す。この平均線膨張率が300ppm/K以下であると、耐熱性に優れ、クリープ変形に強く、かつ外部からの負荷によっても薄膜化し難いので、寸法変化の抑制に好適な複合体といえる。特に、シート面方向における20℃から150℃の平均線膨張率が400ppm/K以下、好ましくは350ppm/K以下の場合、120℃を超える極めて過酷な運転環境下においても耐熱性に一層優れ、クリープ変形により強く、外部からの負荷によってもより薄膜化し難いので、寸法変化の抑制に更に好適な複合体となる。
電解質膜の平均線膨張率を上記の範囲内に調整する方法としては、例えば、フッ素系高分子電解質の分子構造と分子量を高耐熱性を有するように制御し、その高耐熱性のフッ素系高分子電解質とナノファイバーシートとを複合化することが挙げられる。
本実施形態において、電解質膜の厚さは、1μm以上300μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上100μm以下、更に好ましくは5μm以上50μm以下、特に好ましくは5μm以上25μm以下である。電解質膜の厚さを上記範囲に調整することにより、水素と酸素との直接反応のような不都合を低減でき、燃料電池製造時の取り扱いの際や燃料電池運転中に差圧・歪み等が生じても、膜の損傷等が発生し難くなる傾向にある。さらに、電解質膜のイオン透過性をより良好に維持し、電解質膜としての性能をより有効かつ確実に維持する観点からも、厚さを上記範囲に調整することは好ましい。
電解質である上記フッ素系高分子電解質は、化学的安定性の観点から、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物が好適である。
フッ素系高分子電解質のイオン交換容量は、0.5ミリ当量/g以上3.0ミリ当量/g以下であると好ましく、0.65ミリ当量/g以上2.0ミリ当量/g以下であるとより好ましく、0.8ミリ当量/g以上1.5ミリ当量/g以下であるとさらに好ましい。イオン交換当量が3.0ミリ当量/g以下であることにより、電解質膜として利用した際に、燃料電池運転中の高温高加湿下における電解質膜の膨潤がより低減される傾向にある。このように膨潤が低減されることにより、電解質膜の強度の低下や、しわが発生して電極から剥離したりするなどの問題、さらには、ガス遮断性が低下する問題を低減できる傾向にある。また、イオン交換容量が0.5ミリ当量/g以上であることにより、得られた電解質膜を備えた燃料電池の発電能力がより向上する傾向にある。
イオン交換容量は、以下の方法により求めることができる。すなわち、イオン交換基の対イオンがプロトンの状態となっている電解質膜(シート面積でおよそ2cm2以上20cm2以下)を、25℃の飽和NaCl水溶液30mLに浸漬し、攪拌しながら30分間放置する。次いで、飽和NaCl水溶液中のプロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定する。中和後に得られた、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっている電解質膜を、純水ですすぎ、さらに真空乾燥して秤量する。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンである電解質膜の重量をW(mg)とし、下記式(C)により当量重量EW(g/eq)を求める。
EW=(W/M)−22 (C)
さらに、得られたEWの値の逆数をとって1000倍とすることにより、イオン交換容量(ミリ当量/g)を算出する。
EW=(W/M)−22 (C)
さらに、得られたEWの値の逆数をとって1000倍とすることにより、イオン交換容量(ミリ当量/g)を算出する。
イオン交換基としては、特に限定されないが、例えばスルホン酸基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、カルボン酸基及びリン酸基が挙げられ、中でもスルホン酸基であることが好ましい。イオン交換基は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、パーフルオロカーボンカルボン酸樹脂、パーフルオロカーボンスルホンイミド樹脂、パーフルオロカーボンスルホンアミド樹脂、及びパーフルオロカーボンリン酸樹脂、並びにこれら樹脂のアミン塩及び金属塩が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
パーフルオロカーボン高分子化合物としては、特に限定されないが、より具体的には、下記式[1]で表される重合体が挙げられる。
−[CF2CX1X2]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF2X3))b−Oc−(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X4)]g− [1]
ここで、式中、X1、X2及びX3は、各々独立して、ハロゲン原子又は炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす。bは0以上8以下の整数である。cは0又は1である。d及びeは、互いに独立して、0以上6以下の整数である。fは、0以上10以下の整数である。ただし、d+e+fは0に等しくない。R1及びR2は、互いに独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基又はフルオロクロロアルキル基を示す。X4はCOOZ、SO3Z、PO3Z2又はPO3HZを示す。ここで、Zは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアミン類(NH4、NH3R3、NH2R3R4、NHR3R4R5、又はNR3R4R5R6)を示す。また、R3、R4、R5及びR6は、各々独立してアルキル基又はアレーン基を示す。
−[CF2CX1X2]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF2X3))b−Oc−(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X4)]g− [1]
ここで、式中、X1、X2及びX3は、各々独立して、ハロゲン原子又は炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基を示す。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす。bは0以上8以下の整数である。cは0又は1である。d及びeは、互いに独立して、0以上6以下の整数である。fは、0以上10以下の整数である。ただし、d+e+fは0に等しくない。R1及びR2は、互いに独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基又はフルオロクロロアルキル基を示す。X4はCOOZ、SO3Z、PO3Z2又はPO3HZを示す。ここで、Zは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子又はアミン類(NH4、NH3R3、NH2R3R4、NHR3R4R5、又はNR3R4R5R6)を示す。また、R3、R4、R5及びR6は、各々独立してアルキル基又はアレーン基を示す。
これらの中でも、下記式[2]又は式[3]で表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂若しくはその金属塩が好ましい。
−[CF2CF2]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF3))b−O−(CF2)c−SO3X)]d− [2]
ここで、式中、a及びdは、0≦a<1、0≦d<1、a+d=1を満たす。bは1以上8以下の整数である。cは0以上10以下の整数である。Xは水素原子又はアルカリ金属原子を示す。
−[CF2CF2]e−[CF2−CF(−O−(CF2)f−SO3Y)]g− [3]
ここで、式中、e及びgは、0≦e<1、0≦g<1、e+g=1を満たす。fは0以上10以下の整数である。Yは水素原子又はアルカリ金属原子を示す。
−[CF2CF2]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF3))b−O−(CF2)c−SO3X)]d− [2]
ここで、式中、a及びdは、0≦a<1、0≦d<1、a+d=1を満たす。bは1以上8以下の整数である。cは0以上10以下の整数である。Xは水素原子又はアルカリ金属原子を示す。
−[CF2CF2]e−[CF2−CF(−O−(CF2)f−SO3Y)]g− [3]
ここで、式中、e及びgは、0≦e<1、0≦g<1、e+g=1を満たす。fは0以上10以下の整数である。Yは水素原子又はアルカリ金属原子を示す。
本実施形態において用いられ得るイオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物は、特に限定されないが、例えば、下記式[4]で表される前駆体ポリマーを重合した後、アルカリ加水分解、酸処理等を行って製造することができる。
−[CF2CX1X2]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF2X3))b−Oc−(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X5)]g− [4]
ここで、式中、X1、X2及びX3は、各々独立して、ハロゲン原子又は炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基を示す。a及びgは0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす。bは0以上8以下の整数である。cは0又は1である。d及びeは、互いに独立して、0以上6以下の整数である。fは、0以上10以下の整数である。ただし、d+e+fは0に等しくない。R1及びR2は互いに独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基又はフルオロクロロアルキル基を示す。X5はCOOR7、COR8又はSO2R8を示す。ここで、R7は炭素数1〜3のアルキル基を示す。R8はハロゲン元素を示す。
−[CF2CX1X2]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF2X3))b−Oc−(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X5)]g− [4]
ここで、式中、X1、X2及びX3は、各々独立して、ハロゲン原子又は炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基を示す。a及びgは0≦a<1、0<g≦1、a+g=1を満たす。bは0以上8以下の整数である。cは0又は1である。d及びeは、互いに独立して、0以上6以下の整数である。fは、0以上10以下の整数である。ただし、d+e+fは0に等しくない。R1及びR2は互いに独立して、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基又はフルオロクロロアルキル基を示す。X5はCOOR7、COR8又はSO2R8を示す。ここで、R7は炭素数1〜3のアルキル基を示す。R8はハロゲン元素を示す。
上記前駆体ポリマーは、特に限定されないが、例えば、フッ化オレフィン化合物とフッ化ビニル化合物とを共重合させることにより製造することができる。
ここで、フッ化オレフィン化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式[5]で表される化合物が挙げられる。
CF2=CFZ [5]
ここで、式中、Zは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、又は酸素を含んでいてもよい環状パーフルオロアルキル基を示す。
CF2=CFZ [5]
ここで、式中、Zは、水素原子、塩素原子、フッ素原子、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、又は酸素を含んでいてもよい環状パーフルオロアルキル基を示す。
また、フッ化ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。
CF2=CFO(CF2)z−SO2F,
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)z−SO2F,
CF2=CF(CF2)z−SO2F,
CF2=CF(OCF2CF(CF3))z−(CF2)z−SO2F,
CF2=CFO(CF2)z−CO2R,
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)z−CO2R,
CF2=CF(CF2)z−CO2R,
CF2=CF(OCF2CF(CF3))z−(CF2)2−CO2R
ここで、式中、Zは1〜8の整数であり、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す。
CF2=CFO(CF2)z−SO2F,
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)z−SO2F,
CF2=CF(CF2)z−SO2F,
CF2=CF(OCF2CF(CF3))z−(CF2)z−SO2F,
CF2=CFO(CF2)z−CO2R,
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)z−CO2R,
CF2=CF(CF2)z−CO2R,
CF2=CF(OCF2CF(CF3))z−(CF2)2−CO2R
ここで、式中、Zは1〜8の整数であり、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示す。
<複合高分子電解質膜の製造方法>
次に、本実施形態の複合高分子電解質膜の製造方法について説明する。本実施形態の複合高分子電解質膜は、ナノファイバーシートと高分子電解質であるフッ素系高分子電解質とを複合化すること、例えば、ナノファイバーシートの空隙にフッ素系高分子電解質を充填することで得ることができる。
次に、本実施形態の複合高分子電解質膜の製造方法について説明する。本実施形態の複合高分子電解質膜は、ナノファイバーシートと高分子電解質であるフッ素系高分子電解質とを複合化すること、例えば、ナノファイバーシートの空隙にフッ素系高分子電解質を充填することで得ることができる。
ナノファイバーシートとフッ素系高分子電解質とを複合化する方法としては、特に限定されないが、例えば、後述するフッ素系高分子電解質溶液をナノファイバーシートに塗工し、あるいはフッ素系高分子電解質溶液にナノファイバーシートを含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。より具体的には、例えば、移動している又は静置されている細長いキャスティング基材(シート)上にフッ素系高分子電解質溶液の被膜を形成し、その溶液にナノファイバーシートを接触させ、未完成な複合構造体を作製する。この未完成な複合構造体を熱風循環槽中等で乾燥させる。次に乾燥させた未完成な複合構造体の上にフッ素系高分子電解質溶液の被膜をさらに形成させることで、電解質膜を作製することができる。フッ素系高分子電解質溶液とナノファイバーシートとの接触は、乾燥状態で行われても、未乾燥状態又は湿潤状態で行われてもよい。また、接触させる場合に、ゴムローラーや送風による加圧を行ってもよく、ナノファイバーシートのテンション(張力)を制御しながら行ってもよい。特に、本実施形態の電解質膜を得るには、ナノファイバーシートをそのMDに張力を付与した状態でフッ素系高分子電解質の溶液を含浸した後、更に必要に応じて、張力を付与した状態の含浸後のナノファイバーシートとフッ素系高分子電解質との複合膜にフッ素系高分子電解質の溶液を塗工し、乾燥することが好ましい。また、張力を付与するには、ロールtoロールによる連続製膜を採用すればよい。さらに、フッ素系高分子電解質を含むシートを押し出し成形やキャスト成形等で予め成形しておき、このシートをナノファイバーシートと重ねて熱プレスすることにより複合化してもよい。
本実施形態の電解質膜は、上述のように製造された後、さらに熱処理(アニール処理)を施されることが好ましい。この熱処理によりフッ素系高分子電解質のパーフルオロアルキル骨格の結晶化が進み、その結果、電解質膜の機械的強度が更に安定化され得る。この熱処理の温度は、好ましくは100℃以上230℃以下、より好ましくは120℃以上220℃以下、更に好ましくは140℃以上210℃以下である。熱処理の温度を上記範囲に調整することで、結晶化が十分に進み電解質膜の機械的強度が向上する。また、電解質膜の含水率を適切に保持しつつ、機械強度を一層高く維持する観点からも、上記温度範囲は好適である。熱処理の時間は、熱処理の温度にもよるが、より高耐久性を有する電解質膜を得る観点から、好ましくは5分間〜3時間、より好ましくは10分間〜2時間である。
以下、複合高分子電解質膜の製造方法及び製造装置の具体的態様を説明する。ただし、本実施形態に係る電解質膜の製造方法及び製造装置はこれらに限定されない。
本実施形態に係る高分子電解質膜の製造方法は、基材フィルム上に高分子電解質であるフッ素系高分子電解質溶液を塗工する第1の塗工工程と、フッ素系高分子電解質溶液が塗工された基材フィルム面上に、張力を付与したナノファイバーシートを接触させることにより、そのナノファイバーシートにフッ素系高分子電解質溶液を含浸させる含浸工程と、フッ素系高分子電解質溶液が含浸したナノファイバーシートを乾燥して高分子電解質膜を得る乾燥工程とを含む。
本実施形態に係る高分子電解質膜の製造方法は、基材フィルム上に高分子電解質であるフッ素系高分子電解質溶液を塗工する第1の塗工工程と、フッ素系高分子電解質溶液が塗工された基材フィルム面上に、張力を付与したナノファイバーシートを接触させることにより、そのナノファイバーシートにフッ素系高分子電解質溶液を含浸させる含浸工程と、フッ素系高分子電解質溶液が含浸したナノファイバーシートを乾燥して高分子電解質膜を得る乾燥工程とを含む。
〔第1の塗工工程〕
第1の塗工工程は、基材フィルム上にフッ素系高分子電解質溶液を塗工する工程である。以下、第1の塗工工程について図3及び図4を参照しながら説明する。
第1の塗工工程は、基材フィルム上にフッ素系高分子電解質溶液を塗工する工程である。以下、第1の塗工工程について図3及び図4を参照しながら説明する。
図3及び図4に、本実施形態に係る高分子電解質膜の製造方法で用いられる高分子電解質膜の製造装置の第1の態様及び第2の態様の概略図を示す。
製造装置100は、基材フィルム01にフッ素系高分子電解質溶液03を塗工した後、フッ素系高分子電解質溶液03が塗工された基材フィルム01面上に、張力を付与したナノファイバーシート02を接触させることにより、ナノファイバーシート02にフッ素系高分子電解質溶液03を含浸させ、フッ素系高分子電解質溶液03が含浸したナノファイバーシート02を乾燥させて電解質膜05を連続的に製造する装置である。
この製造装置100は、基材フィルム01を供給する繰出機20と、基材フィルム01にフッ素系高分子電解質溶液03を塗工する第1塗工ユニット10と、ナノファイバーシート02の張力を検出するテンションピックアップロール22(検出ユニット)と、供給するナノファイバーシート02の張力を制御する繰出機21(制御ユニット)と、フッ素系高分子電解質溶液03が塗工された基材フィルム01面上に、ナノファイバーシート02を接触させる貼合せロール23(接触ユニット)と、フッ素系高分子電解質溶液03が含浸したナノファイバーシート02を乾燥させる乾燥ユニット30と、乾燥された電解質膜05を巻取る巻取機24と、を備えている。
製造装置200は、基材フィルム01にフッ素系高分子電解質溶液03を塗工した後、フッ素系高分子電解質溶液03が塗工された基材フィルム01面上に、張力を付与したナノファイバーシート02を接触させることにより、ナノファイバーシート02にフッ素系高分子電解質溶液03を含浸させ、さらに、フッ素系高分子電解質溶液03が含浸したナノファイバーシート02にフッ素系高分子電解質溶液03を塗工した後、フッ素系高分子電解質溶液03が含浸したナノファイバーシート02を乾燥させて高分子電解質膜05を連続的に製造する装置である。
この製造装置200は、基材フィルム01を供給する繰出機20と、基材フィルム01にフッ素系高分子電解質溶液03を塗工する第1塗工ユニット10と、ナノファイバーシート02の張力を検出するテンションピックアップロール22(検出ユニット)と、供給するナノファイバーシート02の張力を制御する繰出機21(制御ユニット)と、フッ素系高分子電解質溶液03が塗工された基材フィルム01面上に、ナノファイバーシート02を接触させる貼合せロール23(接触ユニット)と、さらに、フッ素系高分子電解質溶液03が含浸したナノファイバーシート02にフッ素系高分子電解質溶液04を上塗りする第2塗工ユニット11と、フッ素系高分子電解質溶液03,04が含浸したナノファイバーシート02を乾燥させる乾燥ユニット30と、乾燥された電解質膜05を巻取る巻取機24と、を備えている。
製造装置100,200において、繰出機20は、基材フィルム01が巻かれたロールを有しており、ロールが回転することにより基材フィルム01を貼合せロール23に供給する。
製造装置100,200において、繰出機21は、ナノファイバーシート02が巻かれたロールを有しており、ロールが回転することによりナノファイバーシート02を貼合せロール23に供給する。
(第1塗工ユニット)
第1の塗工工程は第1塗工ユニットにより行うことができる。第1塗工ユニットは、基材フィルムにフッ素系高分子電解質溶液を塗工するユニットである。具体的には、第1塗工ユニット10は、貼合せロール23に供給された基材フィルム01上にフッ素系高分子電解質溶液03を基材フィルム01の幅方向に高精度に塗工できるスロットダイを有している。第1塗工ユニット10は、ダイのスロット(隙間)からフッ素系高分子電解質溶液03を吐出し、一方で基材フィルム01は貼合せロール23で保持しつつ走行させ、ダイと基材フィルム01との間に液溜りを形成しながら基材フィルム01上にフッ素系高分子電解質溶液03を塗工する。フッ素系高分子電解質溶液03の塗工液層の厚さは、ダイに供給するフッ素系高分子電解質溶液03の流量と基材フィルム01の走行速度で調整することができる。
第1の塗工工程は第1塗工ユニットにより行うことができる。第1塗工ユニットは、基材フィルムにフッ素系高分子電解質溶液を塗工するユニットである。具体的には、第1塗工ユニット10は、貼合せロール23に供給された基材フィルム01上にフッ素系高分子電解質溶液03を基材フィルム01の幅方向に高精度に塗工できるスロットダイを有している。第1塗工ユニット10は、ダイのスロット(隙間)からフッ素系高分子電解質溶液03を吐出し、一方で基材フィルム01は貼合せロール23で保持しつつ走行させ、ダイと基材フィルム01との間に液溜りを形成しながら基材フィルム01上にフッ素系高分子電解質溶液03を塗工する。フッ素系高分子電解質溶液03の塗工液層の厚さは、ダイに供給するフッ素系高分子電解質溶液03の流量と基材フィルム01の走行速度で調整することができる。
なお、厚さが均一で、均質的な電解質膜を連続的に製造する際の塗工速度は、通常2.5±2.0m/分が好ましく、2.0±1.5m/分がより好ましく、1.5±1.0m/分がさらに好ましい。
なお、基材フィルム01にフッ素系高分子電解質溶液03を塗工する方式としては、特に限定されないが、例えば、スロットダイ以外にもグラビアコーター、バーコーター、ロールコーター、ドクターコーター、PDNコーター、ブレードコーター、含浸コーター等の様々な方式が挙げられる。これら方式は、作製したい塗工液層の厚み、塗工液等の材料の物性、塗工条件を考慮して、適宜選択できる。
フッ素系高分子電解質溶液の粘度は、好ましくは100〜2000mPa・sであり、より好ましくは200〜2000mPa・sであり、さらに好ましくは150〜2000mPa・sである。粘度が2000mPa・s以下であることにより、フッ素系高分子電解質溶液がナノファイバーシートへ含浸しやすくなる傾向にある。また、粘度が100mPa・s以上であることにより、幅方向の塗工がより均一となる傾向にある。
〔含浸工程〕
含浸工程は、フッ素系高分子電解質溶液が塗工された基材フィルム面上に、0.01〜0.1kgf/cmの張力を付与したナノファイバーシートを接触させることにより、ナノファイバーシートにフッ素系高分子電解質溶液を含浸させる工程である。
含浸工程は、フッ素系高分子電解質溶液が塗工された基材フィルム面上に、0.01〜0.1kgf/cmの張力を付与したナノファイバーシートを接触させることにより、ナノファイバーシートにフッ素系高分子電解質溶液を含浸させる工程である。
(接触ユニット)
含浸工程は、接触ユニット、検出ユニット、及び制御ユニットにより行うことができる。接触ユニットは、フッ素系高分子電解質溶液が塗工された基材フィルム面上に、ナノファイバーシートを接触させ、ナノファイバーシートにフッ素系高分子電解質溶液を含浸させるユニットである。また、検出ユニットは、ナノファイバーシートの張力を検出するユニットである。さらに、制御ユニットは、ナノファイバーシートの張力を制御するユニットである。
含浸工程は、接触ユニット、検出ユニット、及び制御ユニットにより行うことができる。接触ユニットは、フッ素系高分子電解質溶液が塗工された基材フィルム面上に、ナノファイバーシートを接触させ、ナノファイバーシートにフッ素系高分子電解質溶液を含浸させるユニットである。また、検出ユニットは、ナノファイバーシートの張力を検出するユニットである。さらに、制御ユニットは、ナノファイバーシートの張力を制御するユニットである。
具体的には、製造装置100,200において、接触ユニットとなる貼合せロール23を用いて、フッ素系高分子電解質溶液03が塗工された基材フィルム01面上に、繰出機21より供給されたナノファイバーシート02を接触させることにより、ナノファイバーシート02にフッ素系高分子電解質溶液03を含浸させることができる。この際に、繰出機21を出たナノファイバーシート02は、検出ユニットとなる途中テンションピックアップロール22にて、張力を検出され、制御ユニットとなる繰出機21によって所定張力になるように制御される。
テンションピックアップロール22では、ナノファイバーシート02の走行方向の張力を検出する。張力検出方式には、差動トランス式、歪みゲージ式、磁歪式等が挙げられる。この中でも耐衝撃性や電気的ノイズに強い観点から差動トランス式が好ましい。
差動トランス式の張力検出は、張力を一旦荷重に変換し、その荷重を電気信号として取出す。張力検出器の上部の検出ロールと張力検出器の前後のガイドロールを設置して、それぞれのロールにナノファイバーシート02を通す。ナノファイバーシート02に付与された張力は検出ロールを通して荷重として張力検出器に掛かり、張力検出器が受けた荷重に応じ内部の板バネがたわむことで、差動トランスにより電気信号として出力される。この信号が制御ユニットに送信され、繰出機21のロール回転が所定張力になるように制御される。
テンションピックアップロール22では、ナノファイバーシート02の走行方向の張力を検出する。張力検出方式には、差動トランス式、歪みゲージ式、磁歪式等が挙げられる。この中でも耐衝撃性や電気的ノイズに強い観点から差動トランス式が好ましい。
差動トランス式の張力検出は、張力を一旦荷重に変換し、その荷重を電気信号として取出す。張力検出器の上部の検出ロールと張力検出器の前後のガイドロールを設置して、それぞれのロールにナノファイバーシート02を通す。ナノファイバーシート02に付与された張力は検出ロールを通して荷重として張力検出器に掛かり、張力検出器が受けた荷重に応じ内部の板バネがたわむことで、差動トランスにより電気信号として出力される。この信号が制御ユニットに送信され、繰出機21のロール回転が所定張力になるように制御される。
含浸工程におけるナノファイバーシート02の張力は、好ましくは0.01〜0.1kgf/cmであり、より好ましくは0.02〜0.1kgf/cmであり、さらに好ましくは0.05〜0.1kgf/cmである。ナノファイバーシート02の張力が上記範囲内にあることにより、厚さがより均一で、均質的な電解質膜を連続的に製造することができる。一方で、ナノファイバーシート02の張力が0.01kgf/cm未満であると、ナノファイバーシート02に均一に張力を付与し難くなり、フッ素系高分子電解質溶液03と接触させる際にナノファイバーシート02にシワや弛みが発生しやすくなり、膜厚ばらつきが大きくなる。ナノファイバーシート02の張力が0.1kgf/cmを超えると、ナノファイバーシート02が伸ばされてネッキングし、波を打ったような濃淡が発生して、膜厚ばらつきが大きくなりやすくなる。
〔第2の塗工工程〕
本実施形態に係る電解質膜の製造方法は、含浸工程後、乾燥工程前に、ナノファイバーシートにフッ素系高分子電解質溶液を塗工する第2の塗工工程をさらに含んでもよい。第2の塗工工程を含むことにより、ナノファイバーシート02を電解質膜05の中央部に形成することができる。電解質膜中のナノファイバーシートの配置は、用途に応じて使い分けられるが、電解質膜を固体高分子電解質型燃料電池に用いる場合、電解質膜の両面にガス拡散電極が接合されるので、中央部にナノファイバーシートを有し、両面にフッ素系高分子電解質を有する電解質膜の方が、膜電極接合体を形成するのに好ましい。
本実施形態に係る電解質膜の製造方法は、含浸工程後、乾燥工程前に、ナノファイバーシートにフッ素系高分子電解質溶液を塗工する第2の塗工工程をさらに含んでもよい。第2の塗工工程を含むことにより、ナノファイバーシート02を電解質膜05の中央部に形成することができる。電解質膜中のナノファイバーシートの配置は、用途に応じて使い分けられるが、電解質膜を固体高分子電解質型燃料電池に用いる場合、電解質膜の両面にガス拡散電極が接合されるので、中央部にナノファイバーシートを有し、両面にフッ素系高分子電解質を有する電解質膜の方が、膜電極接合体を形成するのに好ましい。
(第2塗工ユニット)
第2の塗工工程は第2塗工ユニットにより行うことができる。第2塗工ユニットは、ナノファイバーシートを乾燥させる前に、フッ素系高分子電解質溶液が含浸したナノファイバーシートにフッ素系高分子電解質溶液を塗工するユニットである。具体的には、製造装置200において、第2塗工ユニットとなる第2塗工ユニット11は、第1塗工ユニット10同様、ナノファイバーシート02の幅方向に高精度塗工できるスロットダイを有しており、ナノファイバーシート02を接触させた後、ロール上で、所定量のフッ素系高分子電解質溶液04を上塗りする。なお、フッ素系高分子電解質溶液04は、フッ素系高分子電解質溶液03と、同一組成でも、別組成でもよい。
第2の塗工工程は第2塗工ユニットにより行うことができる。第2塗工ユニットは、ナノファイバーシートを乾燥させる前に、フッ素系高分子電解質溶液が含浸したナノファイバーシートにフッ素系高分子電解質溶液を塗工するユニットである。具体的には、製造装置200において、第2塗工ユニットとなる第2塗工ユニット11は、第1塗工ユニット10同様、ナノファイバーシート02の幅方向に高精度塗工できるスロットダイを有しており、ナノファイバーシート02を接触させた後、ロール上で、所定量のフッ素系高分子電解質溶液04を上塗りする。なお、フッ素系高分子電解質溶液04は、フッ素系高分子電解質溶液03と、同一組成でも、別組成でもよい。
〔乾燥工程〕
乾燥工程は、フッ素系高分子電解質溶液が含浸したナノファイバーシートを乾燥して高分子電解質膜を得る工程である。乾燥工程においては、ナノファイバーシートを乾燥ユニットの入口から徐々に加熱し、乾燥させることが好ましい。なお、「徐々に加熱」とは、昇温速度2.5〜150℃/分の範囲で加熱することをいう。
乾燥工程は、フッ素系高分子電解質溶液が含浸したナノファイバーシートを乾燥して高分子電解質膜を得る工程である。乾燥工程においては、ナノファイバーシートを乾燥ユニットの入口から徐々に加熱し、乾燥させることが好ましい。なお、「徐々に加熱」とは、昇温速度2.5〜150℃/分の範囲で加熱することをいう。
(乾燥ユニット)
乾燥工程は、乾燥ユニットにより行うことができる。乾燥ユニットは、フッ素系高分子電解質溶液が含浸したナノファイバーシートを乾燥させるユニットである。具体的には、フッ素系高分子電解質溶液03,04が含浸されたナノファイバーシート02は、ガイドローラによりガイドされて乾燥機に搬送され、乾燥機内の乾燥ユニットとなる乾燥ユニット30中を通過し、巻取機24においてロールに巻取られる。なお、乾燥機は、温度制御の観点から複数の乾燥ユニット30で構成されることが好ましい。乾燥ユニット30のユニット数は、3ユニット以上が好ましく、5ユニット以上がより好ましい。各ユニットは乾燥温度が同じものであっても異なるものであってもよい。
乾燥工程は、乾燥ユニットにより行うことができる。乾燥ユニットは、フッ素系高分子電解質溶液が含浸したナノファイバーシートを乾燥させるユニットである。具体的には、フッ素系高分子電解質溶液03,04が含浸されたナノファイバーシート02は、ガイドローラによりガイドされて乾燥機に搬送され、乾燥機内の乾燥ユニットとなる乾燥ユニット30中を通過し、巻取機24においてロールに巻取られる。なお、乾燥機は、温度制御の観点から複数の乾燥ユニット30で構成されることが好ましい。乾燥ユニット30のユニット数は、3ユニット以上が好ましく、5ユニット以上がより好ましい。各ユニットは乾燥温度が同じものであっても異なるものであってもよい。
上記乾燥工程では、フッ素系高分子電解質溶液に含まれる溶媒を除去する。乾燥は、常温下で行ってもよいし、加熱下で行ってもよい。上記乾燥は、加熱下で行うものであることが好ましく、例えば、50〜350℃で加熱することが好ましい。乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、熱風炉及びヒータ炉が一般的に用いられる。巻取り速度(乾燥速度)は、塗工液層の厚さ、使用溶剤の揮発性によるが、通常2.5±2.0m/分程度が好ましく、2.0±1.5m/分がより好ましく、1.5±1.0m/分がさらに好ましい。
本実施形態の製造方法では、乾燥工程の後に、電解質膜をさらに熱処理(アニール処理)する工程を有することが好ましい。この熱処理工程を経ることにより、フッ素系高分子電解質のパーフルオロアルキル骨格の結晶化が進み、その結果、電解質膜の機械的強度が更に安定化され得る。この熱処理の温度は、好ましくは100℃以上230℃以下、より好ましくは120℃以上220℃以下、更に好ましくは140℃以上210℃以下である。熱処理の温度を上記範囲に調整することで、結晶化が十分に進み電解質膜の機械的強度が向上する。また、電解質膜の含水率を適切に保持しつつ、機械強度を一層高く維持する観点からも、上記温度範囲は好適である。熱処理の時間は、熱処理の温度にもよるが、より高耐久性を有する電解質膜を得る観点から、好ましくは5分間〜3時間、より好ましくは10分間〜2時間である。
製造装置100は、ナノファイバーシート02を電解質膜05の片面に形成するのに好適であり、製造装置200は、ナノファイバーシート02を電解質膜05の中央部に形成するのに好適であり、用途に応じて使い分けることができる。
〔電解質膜製造装置〕
本実施形態に係る電解質膜製造装置は、上記の電解質膜の製造方法を実施するための装置であって、基材フィルムにフッ素系高分子電解質溶液を塗工する第1塗工ユニットと、フッ素系高分子電解質溶液が塗工された基材フィルム面上に、ナノファイバーシートを接触させ、ナノファイバーシートにフッ素系高分子電解質溶液を含浸させる接触ユニットと、ナノファイバーシートの張力を検出する検出ユニットと、ナノファイバーシートの張力を制御する制御ユニットと、フッ素系高分子電解質溶液が含浸したナノファイバーシートを乾燥させる乾燥ユニットとを備える。なお、各ユニットの詳細については上記に述べたとおりである。
本実施形態に係る電解質膜製造装置は、上記の電解質膜の製造方法を実施するための装置であって、基材フィルムにフッ素系高分子電解質溶液を塗工する第1塗工ユニットと、フッ素系高分子電解質溶液が塗工された基材フィルム面上に、ナノファイバーシートを接触させ、ナノファイバーシートにフッ素系高分子電解質溶液を含浸させる接触ユニットと、ナノファイバーシートの張力を検出する検出ユニットと、ナノファイバーシートの張力を制御する制御ユニットと、フッ素系高分子電解質溶液が含浸したナノファイバーシートを乾燥させる乾燥ユニットとを備える。なお、各ユニットの詳細については上記に述べたとおりである。
本実施形態に係る電解質膜製造装置は、ナノファイバーシートを乾燥させる前に、フッ素系高分子電解質溶液が含浸したナノファイバーシートにフッ素系高分子電解質溶液を塗工する、第2塗工ユニットをさらに備えてもよい。なお、第2塗工ユニットの詳細については上記に述べたとおりである。
本実施形態に係る電解質膜を製造する際に用いることのできるフッ素系高分子電解質溶液は、上記フッ素系高分子電解質と溶媒と、必要に応じてその他の添加剤とを含むものである。このフッ素系高分子電解質溶液は、そのまま、又はろ過若しくは濃縮等の工程を経た後、ナノファイバーシートとの複合化に用いられる。あるいは、この溶液を単独又は他の電解質溶液と混合して用いることもできる。
次いで、フッ素系高分子電解質溶液の製造方法について、より詳細に説明する。このフッ素系高分子電解質溶液の製造方法は特に限定されず、例えば、フッ素系高分子電解質を溶媒に溶解又は分散させた溶液を得た後、必要に応じてその液に添加剤を分散させる。あるいは、まず、フッ素系高分子電解質を溶融押出し、延伸等の工程を経ることによりフッ素系高分子電解質と添加剤とを混合し、その混合物を溶媒に溶解又は分散させる。このようにしてフッ素系高分子電解質溶液が得られる。
より具体的には、まず、フッ素系高分子電解質の前駆体ポリマーからなる成形物を塩基性反応液体中に浸漬し、加水分解する。この加水分解処理により、上記フッ素系高分子電解質の前駆体ポリマーはフッ素系高分子電解質に変換される。次に、加水分解処理された上記成形物を温水などで十分に水洗し、その後、成形物に酸処理を施す。酸処理に用いられる酸は、特に限定されないが、塩酸、硫酸及び硝酸等の鉱酸類やシュウ酸、酢酸、ギ酸及びトリフルオロ酢酸等の有機酸類が好ましい。この酸処理によって、フッ素系高分子電解質の前駆体ポリマーはプロトン化され、フッ素系高分子電解質、例えばパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂が得られる。
上述のように酸処理された上記成形物(フッ素系高分子電解質を含む成形物)は、上記フッ素系高分子電解質を溶解又は懸濁させ得る溶媒(ポリマーとの親和性が良好な溶媒)に溶解又は懸濁される。このような溶媒としては、例えば、水やエタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、グリセリンなどのプロトン性有機溶媒や、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。特に、1種の溶媒を用いる場合、溶媒が水であると好ましい。また、2種以上を組み合わせて用いる場合、水とプロトン性有機溶媒との混合溶媒が好ましい。
フッ素系高分子電解質を溶媒に溶解又は分散(懸濁)する方法としては、特に限定されない。例えば、上記溶媒中にそのままフッ素系高分子電解質を溶解又は分散させてもよいが、大気圧下又はオートクレーブ等で密閉加圧した条件のもとで、0〜250℃の温度範囲でフッ素系高分子電解質を溶媒に溶解又は分散するのが好ましい。特に、溶媒として水及びプロトン性有機溶媒を用いる場合、水とプロトン性有機溶媒との混合比は、溶解方法、溶解条件、フッ素系高分子電解質の種類、総固形分濃度、溶解温度、攪拌速度等に応じて適宜選択できるが、水に対するプロトン性有機溶媒の質量の比は、水1に対してプロトン性有機溶媒0.1〜10であると好ましく、より好ましくは水1に対してプロトン性有機溶媒0.1〜5である。
なお、フッ素系高分子電解質溶液には、乳濁液(液体中に液体粒子がコロイド粒子又はそれよりも粗大な粒子として分散して乳状をなすもの)、懸濁液(液体中に固体粒子がコロイド粒子又は顕微鏡で見える程度の粒子として分散したもの)、コロイド状液体(巨大分子が分散した状態)、及びミセル状液体(多数の小分子が分子間力で会合してできた親液コロイド分散系)のうち1種又は2種以上が含まれてもよい。
また、電解質膜の成形方法や用途に応じて、フッ素系高分子電解質溶液を、濃縮したり、ろ過したりすることも可能である。濃縮の方法としては特に限定されないが、例えば、フッ素系高分子電解質溶液を加熱し、溶媒を蒸発させる方法や、減圧濃縮する方法が挙げられる。フッ素系高分子電解質溶液を塗工用溶液として用いる場合、フッ素系高分子電解質溶液の固形分率は、粘度の上昇を抑制して取扱い性を更に高める観点、及び、生産性を向上させる観点から、0.5質量%以上50質量%以下であると好ましい。
フッ素系高分子電解質溶液をろ過する方法としては、特に限定されないが、例えば、フィルターを用いて、加圧ろ過する方法が代表的に挙げられる。上記フィルターには、90%捕集粒子径がフッ素系高分子電解質溶液に含まれる固体粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材を用いることが好ましい。この濾材の材質としては、例えば、紙及び金属が挙げられる。特に濾材が紙の場合、90%捕集粒子径が上記固体粒子の平均粒子径の10倍〜50倍であることが好ましい。金属製フィルターを用いる場合、90%捕集粒子径が上記固体粒子の平均粒子径の50倍〜100倍であることが好ましい。当該90%捕集粒子径を平均粒子径の10倍以上に設定することは、送液するときに必要な圧力が高くなりすぎることを抑制したり、フィルターが短期間で閉塞してしまうことを抑制したりするのに効果がある。一方、90%捕集粒子径を平均粒子径の100倍以下に設定することは、フィルムで異物の原因となるような粒子の凝集物や樹脂の未溶解物を良好に除去する観点から好ましい。
本実施形態の電解質膜は、特に固体高分子形燃料電池における電解質膜として好適に用いられる。本実施形態の電解質膜は、補強材としてポリエーテルスルホンを用いても、表面にひび割れ状の線状欠陥が発生したり、MDに延びるシワが発生したりすることを抑制できる。さらには、本実施形態の電解質膜は、電解質膜としての物理耐久性に優れたものである。よって、本実施形態の電解質膜は、110℃を超える高温高加湿下においても寸法変化を抑制し、低い抵抗をも実現できる固体高分子形燃料電池用の電解質膜として用いることができる。またレドックスフロー電池用電解質膜や水電解における電解質隔膜としても用いることができる。
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
<ナノファイバーシートの弾性率>
ナノファイバーシートを70mm×10mmの長方形に切り出して試料とした。その試料について、JIS K−7127に準拠してMD及びTDの弾性率を測定した。測定には、50Nロードセルを備える引っ張り試験機を用いた。試料チャック間距離を50mm、クロスヘッド速度を300mm/minとして、24℃、相対湿度45%RHの環境下で弾性率を測定した。
ナノファイバーシートを70mm×10mmの長方形に切り出して試料とした。その試料について、JIS K−7127に準拠してMD及びTDの弾性率を測定した。測定には、50Nロードセルを備える引っ張り試験機を用いた。試料チャック間距離を50mm、クロスヘッド速度を300mm/minとして、24℃、相対湿度45%RHの環境下で弾性率を測定した。
<ナノファイバーシートの空隙率>
40mm×30mmの長方形に切り出したナノファイバーシートの質量を精密天秤にて測定し、測定した質量及びナノファイバーシートの厚さから膜密度ρ(g/cm3)を下記式(A)により算出した。また、得られた膜密度ρ及びナノファイバーシートを構成する材料の真密度ρ0(g/cm3)から、下記式(B)により空隙率(%)を求めた。
ρ=M/(4.0×3.0×t) (A)
ここで、Mは試料の質量(g)を示し、tは試料の厚さ(cm)を示す。
空隙率(%)=(1−(ρ/ρ0))×100 (B)
40mm×30mmの長方形に切り出したナノファイバーシートの質量を精密天秤にて測定し、測定した質量及びナノファイバーシートの厚さから膜密度ρ(g/cm3)を下記式(A)により算出した。また、得られた膜密度ρ及びナノファイバーシートを構成する材料の真密度ρ0(g/cm3)から、下記式(B)により空隙率(%)を求めた。
ρ=M/(4.0×3.0×t) (A)
ここで、Mは試料の質量(g)を示し、tは試料の厚さ(cm)を示す。
空隙率(%)=(1−(ρ/ρ0))×100 (B)
<目付の算出>
200mm×150mmの長方形に切り出したナノファイバーシートの質量を測定し、1m2当たりの質量に換算して目付を算出した。
200mm×150mmの長方形に切り出したナノファイバーシートの質量を測定し、1m2当たりの質量に換算して目付を算出した。
<ナノファイバーシートの平均繊維径>
ナノファイバーシートにおける繊維の平均繊維径として、50本の繊維の繊維径の算術平均値を用いた。ここで、「繊維径」は、繊維を撮影した5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定した、繊維の長さ方向に対して直交する方向における長さをいう。
ナノファイバーシートにおける繊維の平均繊維径として、50本の繊維の繊維径の算術平均値を用いた。ここで、「繊維径」は、繊維を撮影した5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定した、繊維の長さ方向に対して直交する方向における長さをいう。
<複合高分子電解質膜の厚さ及びその電解質膜中のナノファイバーシートの厚さ>
電解質膜の厚さ及びその電解質膜におけるナノファイバーシートの厚さZ1は、以下のようにして測定した。まず、ナノファイバーシートとフッ素系高分子電解質とを含む複合高分子電解質膜から任意に切り出したシートをエポキシ接着剤で包埋し、それをウルトラミクロトームにて加工してシート断面サンプルを得た。その断面を、ルテニウムにて染色し、オスミウムコート処理により導電性付与を施し、10mmにわたって走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式「S−4800」)を用いて、二次電子像を観察した。観察の倍率は2000〜3000倍とした。上記のようにして観察した10mmの領域において、シートの厚さを測定すると共に、その厚さ方向におけるナノファイバーシートの厚さを、フッ素系高分子電解質とのコントラスト差により測定した。
電解質膜の厚さ及びその電解質膜におけるナノファイバーシートの厚さZ1は、以下のようにして測定した。まず、ナノファイバーシートとフッ素系高分子電解質とを含む複合高分子電解質膜から任意に切り出したシートをエポキシ接着剤で包埋し、それをウルトラミクロトームにて加工してシート断面サンプルを得た。その断面を、ルテニウムにて染色し、オスミウムコート処理により導電性付与を施し、10mmにわたって走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型式「S−4800」)を用いて、二次電子像を観察した。観察の倍率は2000〜3000倍とした。上記のようにして観察した10mmの領域において、シートの厚さを測定すると共に、その厚さ方向におけるナノファイバーシートの厚さを、フッ素系高分子電解質とのコントラスト差により測定した。
<複合高分子電解質膜のMD及びTDの寸法変化率>
電解質膜におよそ15mm×20mm(MD:15mm、TD:20mm)の長方形の枠を記入し、20℃、65%RHでの各辺の長さを測定顕微鏡(OLYMPUS製、型式「STM6」)で計測した。次いで、その電解質膜を高度加速寿命試験装置(HAST製、型式「EHS−211」)内に投入し、120℃で100%RHの環境に2時間曝した後、上記と同様にして長方形の枠の各辺の長さを計測した。高度加速寿命試験装置での加速試験前後での寸法の変化率を、長方形の短辺及び長辺それぞれの方向に関して算出し、その平均値をもって電解質膜のMD及びTDでの寸法変化率とした。
電解質膜におよそ15mm×20mm(MD:15mm、TD:20mm)の長方形の枠を記入し、20℃、65%RHでの各辺の長さを測定顕微鏡(OLYMPUS製、型式「STM6」)で計測した。次いで、その電解質膜を高度加速寿命試験装置(HAST製、型式「EHS−211」)内に投入し、120℃で100%RHの環境に2時間曝した後、上記と同様にして長方形の枠の各辺の長さを計測した。高度加速寿命試験装置での加速試験前後での寸法の変化率を、長方形の短辺及び長辺それぞれの方向に関して算出し、その平均値をもって電解質膜のMD及びTDでの寸法変化率とした。
<平坦性(シワ)>
複合電解質膜の平坦性については、触針式段差計(KLA Tencor社製、製品名「Alpha−Step D−120」)を用いて、電解質膜の表面の凹凸高さを測定することで評価した。凹凸高さが3μm以下である場合を「○」、3μmを超え5μm以下である場合を「△」、5μmを超える場合を「×」と評価した。この評価が「×」である場合、膜の表面は平坦ではなく、シワの発生を抑制できているとはいえない。
複合電解質膜の平坦性については、触針式段差計(KLA Tencor社製、製品名「Alpha−Step D−120」)を用いて、電解質膜の表面の凹凸高さを測定することで評価した。凹凸高さが3μm以下である場合を「○」、3μmを超え5μm以下である場合を「△」、5μmを超える場合を「×」と評価した。この評価が「×」である場合、膜の表面は平坦ではなく、シワの発生を抑制できているとはいえない。
<線状欠陥>
複合電解質膜の線状欠陥について、電解質膜の表面をAFM及びSEMを用いて測定した。電解質膜の表面に長さ1000μm以上の線状欠陥(膜厚方向の凹凸)がない場合を〇、ある場合を×とした。線状欠陥があると、MEAの作製時、電極触媒層を塗工する際のハジキや層厚みのムラにつながり、発電性能への影響だけでなく、物理耐久性の評価において、複合電解質膜の破膜につながるおそれがある。
複合電解質膜の線状欠陥について、電解質膜の表面をAFM及びSEMを用いて測定した。電解質膜の表面に長さ1000μm以上の線状欠陥(膜厚方向の凹凸)がない場合を〇、ある場合を×とした。線状欠陥があると、MEAの作製時、電極触媒層を塗工する際のハジキや層厚みのムラにつながり、発電性能への影響だけでなく、物理耐久性の評価において、複合電解質膜の破膜につながるおそれがある。
<物理耐久性>
物理耐久性については、複合電解質膜からMEAを作製し、そのMEAをJARI標準セルに組み込み、FCCJ(燃料電池実用化推進評議会)プロトコルを用いて評価した。FCCJプロトコルを下記に示す。
アノード:N2800mL/min、カソード:N2800mL/min、セル温度:80℃、Dry:0%RH 2min、Wet:150%RH 2min。
1000サイクル毎にクロスオーバー電流測定を行い、4000サイクル後に水素クロスリーク量が初期の10倍未満である場合を物理耐久性が良好であるとして「〇」と評価し、10倍以上である場合を物理耐久性が良好ではないとして「×」と評価した。クロスオーバー電流測定は、H2:200mL/min、N2:200mL/minとし、ガス圧力:常圧、セル温度:80℃で実施した。
物理耐久性については、複合電解質膜からMEAを作製し、そのMEAをJARI標準セルに組み込み、FCCJ(燃料電池実用化推進評議会)プロトコルを用いて評価した。FCCJプロトコルを下記に示す。
アノード:N2800mL/min、カソード:N2800mL/min、セル温度:80℃、Dry:0%RH 2min、Wet:150%RH 2min。
1000サイクル毎にクロスオーバー電流測定を行い、4000サイクル後に水素クロスリーク量が初期の10倍未満である場合を物理耐久性が良好であるとして「〇」と評価し、10倍以上である場合を物理耐久性が良好ではないとして「×」と評価した。クロスオーバー電流測定は、H2:200mL/min、N2:200mL/minとし、ガス圧力:常圧、セル温度:80℃で実施した。
[実施例1]
<複合高分子電解質膜の製造>
まず、フッ素系高分子電解質の前駆体ポリマーである、テトラフルオロエチレン及びCF2=CFO(CF2)2−SO2Fから得られたパーフルオロスルホン酸樹脂の前駆体(加水分解及び酸処理後のイオン交換容量:1.4ミリ当量/g)ペレットを準備した。次に、その前駆体ペレットを、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)とを溶解した水溶液に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、ペレットを60℃の水中に5時間浸漬した。次いで、水中に浸漬した後のペレットを、60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回塩酸水溶液を新しいものに代えて、5回繰り返した。そして、塩酸水溶液に繰り返し浸漬させた後のペレットを、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、フッ素系高分子電解質であるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(PFSA)を得た。
<複合高分子電解質膜の製造>
まず、フッ素系高分子電解質の前駆体ポリマーである、テトラフルオロエチレン及びCF2=CFO(CF2)2−SO2Fから得られたパーフルオロスルホン酸樹脂の前駆体(加水分解及び酸処理後のイオン交換容量:1.4ミリ当量/g)ペレットを準備した。次に、その前駆体ペレットを、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)とを溶解した水溶液に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、ペレットを60℃の水中に5時間浸漬した。次いで、水中に浸漬した後のペレットを、60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回塩酸水溶液を新しいものに代えて、5回繰り返した。そして、塩酸水溶液に繰り返し浸漬させた後のペレットを、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、フッ素系高分子電解質であるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂(PFSA)を得た。
このペレットを、エタノール水溶液(水:エタノール=50.0/50.0(質量比))と共に5Lオートクレーブ中に収容して密閉し、撹拌翼で攪拌しながら160℃まで昇温して、その温度で5時間保持した。その後、オートクレーブ内を自然冷却して、固形分濃度5質量%の均一なパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂溶液を得た。これを80℃で減圧濃縮した後、水とエタノールとを用いて希釈し、固形分15.0質量%のエタノール:水=60:40(質量比)の溶液を調整し、溶液1とした。
図4に示す製造装置200を用いて、基材フィルム(東レ・デュポン株式会社製、製品名「カプトン300H」。以下同様。)に第1塗工ユニットにて、溶液1を塗工した。次いで、下記表1の実施例1に記載のナノファイバーシートに0.05kg/cmの張力を付与した状態で、溶液1を塗工した基材フィルム面上に接触させることにより、ナノファイバーシートに溶液1を含浸させた。なお、繰出機21を出たナノファイバーシートの張力は、検出ユニットとなる途中テンションピックアップロール22にて検出され、制御ユニットとなる繰出機21によって所定張力になるように制御した。
さらに、第2塗工ユニットにて、ナノファイバーシート上に溶液1を塗工した。次いで、溶液1が含浸したナノファイバーシートを、乾燥温度をそれぞれ40℃、60℃、90℃、110℃及び120℃に設定したユニットを有する乾燥機を通過させて、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を得た。この複合高分子電解質膜に対して、乾燥機(株式会社エスペック社製、型式「SPH−201M」)にて、150℃の設定で20分間アニール処理を施した後、複合高分子電解質膜の各種評価を行った。結果を表1に示す。
さらに、第2塗工ユニットにて、ナノファイバーシート上に溶液1を塗工した。次いで、溶液1が含浸したナノファイバーシートを、乾燥温度をそれぞれ40℃、60℃、90℃、110℃及び120℃に設定したユニットを有する乾燥機を通過させて、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を得た。この複合高分子電解質膜に対して、乾燥機(株式会社エスペック社製、型式「SPH−201M」)にて、150℃の設定で20分間アニール処理を施した後、複合高分子電解質膜の各種評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
表1の実施例2に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
表1の実施例2に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
表1の実施例3に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
表1の実施例3に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
表1の実施例4に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
表1の実施例4に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
表1の実施例5に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
表1の実施例5に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例6]
表1の実施例6に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
表1の実施例6に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例7]
表1の実施例6に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。ナノファイバーシートのMD及びTDの弾性率が他の実施例よりも低い結果、電解質膜の表面に軽度のシワが発生し、やや平坦性が低下する結果となった。
表1の実施例6に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。ナノファイバーシートのMD及びTDの弾性率が他の実施例よりも低い結果、電解質膜の表面に軽度のシワが発生し、やや平坦性が低下する結果となった。
[比較例1]
ナノファイバーシートを用いない以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
ナノファイバーシートを用いない以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
表1の比較例2に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例6と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。溶液1を塗工した基材フィルム面上に接触させることにより、ナノファイバーシートに溶液1を含浸させたところ、製造装置の流れ方向に含浸シワが発生した。シワの凹凸段差を触針式段差計にて測定したところ、15μmの段差があった。複合高分子電解質膜の厚さはシワの凹部における厚さとした。結果を表1に示す。なお、シワが顕著に発生したため、寸法変化率及び物理耐久性の評価を行わなかった。
表1の比較例2に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例6と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。溶液1を塗工した基材フィルム面上に接触させることにより、ナノファイバーシートに溶液1を含浸させたところ、製造装置の流れ方向に含浸シワが発生した。シワの凹凸段差を触針式段差計にて測定したところ、15μmの段差があった。複合高分子電解質膜の厚さはシワの凹部における厚さとした。結果を表1に示す。なお、シワが顕著に発生したため、寸法変化率及び物理耐久性の評価を行わなかった。
[比較例3]
表1の比較例3に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。複合高分子電解質膜の表面をAFM及びSEMで測定したところ、表面に長さ1000μm、幅30μm、段差5μmの線状欠陥が観察された。結果を表1に示す。なお、線状欠陥が顕著に発生したため、寸法変化率及び物理耐久性の評価を行わなかった。
表1の比較例3に記載のナノファイバーシートを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ15μmの複合高分子電解質膜を作製し、各種評価を行った。複合高分子電解質膜の表面をAFM及びSEMで測定したところ、表面に長さ1000μm、幅30μm、段差5μmの線状欠陥が観察された。結果を表1に示す。なお、線状欠陥が顕著に発生したため、寸法変化率及び物理耐久性の評価を行わなかった。
本発明の複合高分子電解質膜は、補強材としてポリエーテルスルホンを用いても、表面にひび割れ状の線状欠陥が発生したり、MDに延びるシワが発生したりすることを抑制できるので、そのような要求のある燃料電池自動車用の電解質膜として産業上の利用可能性がある。またレドックスフロー電池用電解質膜や水電解における電解質隔膜としても利用可能である。
01…基材フィルム、02,1…ナノファイバーシート、03,04…フッ素系高分子電解質溶液、05…複合高分子電解質膜、2…電極触媒層、3…フッ素系高分子電解質、10…第1塗工ユニット、11…第2塗工ユニット、20…基材フィルム繰出機、21…ナノファイバーシート繰出機(微多孔膜張力制御)、22…ナノファイバーシートテンションピックアップロール、23…貼合せロール、24…巻取機、30…乾燥ユニット、100,200…複合高分子電解質膜の製造装置。
Claims (5)
- 目付が1.5g/m2以上4.0g/m2以下であるナノファイバーシートと、フッ素系高分子電解質と、を備える複合高分子電解質膜であって、
前記電解質膜は、前記フッ素系高分子電解質と前記ナノファイバーシートとを複合化したシート形状を有しており、
前記ナノファイバーシートはポリエーテルスルホンを含み、
前記シート形状に加工する際の流れ方向をMDとし、前記MDに直交する方向をTDとし、
前記ナノファイバーシートの前記TDにおける弾性率Yに対する前記MDにおける弾性率Xの比X/Yが、1.1以上4.1未満であり、
前記電解質膜の前記MDにおける乾湿寸法変化率Dxに対する前記TDにおける乾湿寸法変化率Dyの比Dy/Dxが、1.2以上である、複合高分子電解質膜。 - 前記ナノファイバーシートの空隙率(%)が75%以上95%以下である、請求項1に記載の電解質膜。
- 前記ナノファイバーシートにおける繊維の平均繊維径は、100nm以上500nm以下である、請求項1又は2に記載の電解質膜。
- 前記弾性率X及び前記弾性率Yが、いずれも55MPa以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質膜。
- 前記電解質膜の表面の凹凸高さが5μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解質膜。
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- 2017-12-26 JP JP2017249141A patent/JP6999411B2/ja active Active
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