JP2019112244A - セラミック、赤外線放射体、エミッタ及び熱光起電力発電装置 - Google Patents

セラミック、赤外線放射体、エミッタ及び熱光起電力発電装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、熱源からの放射光の透過を抑えながら十分な強度を有する赤外線を放射可能なセラミック及びその製造方法を提供することにある。【解決手段】 本発明の熱光起電力装置用セラミックエミッタは、下記組成式:RTO4、R3TO7、R2Ti2O7、R4Zr3O12(RはYb又はErであり、TはNb又はTaである)のいずれかで表される金属酸化物多結晶体で形成されたセラミックであって、該セラミックは、空孔を有する焼結体であり、空孔率が18%以上40%以下である、セラミックが提供される。【選択図】 図3

Description

本発明は、セラミック及びそれを用いた赤外線放射体、エミッタ及びそれを用いた熱光起電力発電装置に関する。
熱光起電力発電は、熱放射を光電変換セルで電気に変換する技術であり、熱放射スペクトルを制御することにより高効率な発電が期待できる。更に、熱光起電力発電は、種々の熱源が利用可能であるため応用範囲が広く、また重量当たりのエネルギー密度が大きい発電技術として注目されている。
このような熱起電力発電に用いられる装置としては、例えば、図11に示すように、エミッタ2と光電変換セル3を備え、このエミッタにおける赤外線スペクトルの制御のために、エミッタの表面(赤外線放射側)にフォトニック結晶7を設けた熱光起電力発電装置20が提案されている。このフォトニック結晶7として、金属に多数のキャビティが形成されたフォトニック結晶が設けられている。熱源からの熱放射をエミッタが受け、フォトニック結晶で波長が制御された熱輻射光(赤外線)が放射され、光電変換セルで電気に変換される。
また、特許文献1には、太陽熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱光起電力発電システムに用いられる波長選択性太陽光吸収材料(エミッタ)が提案されている。この太陽光吸収材料は、高融点金属からなる耐熱性基板の太陽光入射面に、多数のキャビティで構成された微細凹凸パターンが形成されている。
一方、エミッタの材質として、耐酸化性や耐熱性が良好なセラミックを用いる熱光起電力発電装置の研究開発が活発に行われている。
例えば、特許文献2には、熱源となるバーナー装置と、耐熱性の多孔性または有孔材料を含む基板を有する輻射バーナースクリーンと、光電池装置とを備える熱光起電力発電装置が開示されている。
エミッタとして機能する輻射バーナースクリーンは、前記基板上に希土類元素を含む化合物を含む被膜を備え、この希土類元素を含む化合物として、イッテルビウム置換イットリウムアルミニウムガーネット(Yb:YAG)を用いている。
また、特許文献3および特許文献4には、空孔を有する希土類元素含有セラミックエミッタとして、それぞれ、RAl12またはRGa12(R:希土類元素)、ARAlOまたはARGaO(A:Ca,Sr,Ba;R:希土類元素)の組成が報告されている。これらのエミッタは上記セラミック組成に空孔を導入することにより、良好な波長選択放射を実現している。しかし、これらのエミッタでは該セラミックの加熱面の温度と放射面の温度の平均温度から計算したピーク放射率がそれほど高くならず、熱光起電力装置に適用した場合、十分な出力が得られない課題があった。
更に、希土類元素を用いた化合物では、希土類イオンの4f電子遷移吸収に相当する波長において放射強度が高い選択放射が得られることが知られている。このような、希土類アルミニウムガーネットを用いたセラミックエミッタが、非特許文献1及び非特許文献2で報告されている。
非特許文献1は、SiCセラミック上に、空孔率50%以上で厚み50〜500μmとなるアルミナやジルコニアファイバーとエルビウムアルミニウムガーネット(ErAl12、以下「ErAG」)との複合体被覆を形成して成るエミッタを報告している。
図12は、ErAG複合体(ErAGSiC)およびSiCセラミック(SiC)の1050℃における熱放射スペクトルを示す図である。この図が示すように、ErAG複合体(ErAGSiC)には、波長1600nm付近での選択波長放射が確認できるものの、放射強度が小さいという問題があることが分かる。
また、非特許文献2では、アルミナと希土類アルミニウムガーネットからなる溶融成長複合材料をエミッタとし、希土類としてErおよびYbを選択したものが報告されている。
図13は、非特許文献2におけるこれら複合材料によるセラミックエミッタの放射率の波長依存性を示す。
非特許文献2のエミッタにおいて、放射率の波長選択性を、ピーク波長での放射率と波長1750nmでの放射率の比で定義すると、その比はYbAl12(YbAG)とアルミナの複合体で1.7、ErAl12(ErAG)とアルミナの複合体で1.5となり、あまり良好ではない。
特許第3472838号公報 特表2002−537537号公報 国際公開第2016/042749号 国際公開第2016/208174号
Diso, D et al "Selective Emitters for High Efficiency TPV Conversion: Materials" Preparation and Characterisation Proceedings of 5th conference on Thermophotovoltaic Generation of Electricity, vol 653, pp132-141, 2003 中川 成人等、「TPV発電システムの現状と選択エミッター材料技術」応用物理,第76巻,第3号,pp281−285,2007
エミッタに金属材料を用いたものは、金属材料自体の耐熱性が低いためエミッタとしての耐熱性が不十分になる。セラミック材料は耐熱性に優れるが、エミッタにセラミック材料を用いたものは、セラミック材料自体が熱源からの放射光を透過しやすいため、所望の放射率スペクトルをもつ赤外線を放射させることは困難であった。
本発明の目的は、熱源からの放射光の透過を抑えながら十分な強度を有する赤外線を放射可能なセラミック、赤外線放射体、エミッタ及び熱光起電力発電装置を提供することにある。
本発明の一態様によれば、下記組成式:
RTO、RTO、RTi、RZr12
(RはYb又はErであり、TはNb又はTaである)
のいずれかで表される金属酸化物多結晶体で形成されたセラミックであって、
該セラミックは、空孔を有する焼結体であり、
空孔率が18%以上40%以下である、セラミックが提供される。
本発明の他の態様によれば、上記のセラミックで形成された赤外線放射体あるいはエミッタが提供される。
本発明の他の態様によれば、上記のエミッタと、該エミッタから放射された赤外線を電力に変換する光電変換セルとを含む、熱光起電力発電装置に関する。
本発明の実施形態によれば、熱源からの放射光の透過を抑えながら十分な強度を有する赤外線を放射可能なセラミック、赤外線放射体、エミッタ及び熱光起電力発電装置を提供できる。
本発明の実施形態による熱光起電力発電装置を説明するための構成図である。 本発明の他の実施の形態による熱光起電力発電装置を説明するための構成図である。 本発明の実施形態によるエミッタを形成するセラミックの一部の断面を示す模式図である。 実施例1のセラミック(YbNbO)のXRD(X‐ray diffraction)パターンを示す図である。 実施例2のセラミック(YbNbO)のXRD(X‐ray diffraction)パターンを示す図である。 実施例3のセラミック(YbTi)のXRD(X‐ray diffraction)パターンを示す図である。 実施例4のセラミック(YbZr12)のXRD(X‐ray diffraction)パターンを示す図である。 実施例1のセラミック(YbNbO)の放射率スペクトルを示す図である。 実施例2および比較例3のセラミック(YbNbO)の放射率スペクトルを示す図である。 実施例3および比較例4のセラミック(YbTi)の放射率スペクトルを示す図である。 実施例4のセラミック(YbZr12)の放射率スペクトルを示す図である。 実施例1の焼結後セラミック(空孔率31%のYbNbO)の破断面のSEM像である。 比較例1のセラミック(YbAl12)の放射率スペクトルを示す図である。 比較例2のセラミック(CaYbAlO)の放射率スペクトルを示す図である。 実施例1〜実施例4および比較例1〜4のセラミックのピーク放射率と空孔率の関係を示す図。 実施例1〜実施例4および比較例1〜4のセラミックの放射率スペクトルの波長選択性と空孔率の関係を示す図。 関連技術による、フォトニック結晶を備えたエミッタを用いた熱光起電力発電装置を説明するための構成図である。 非特許文献1におけるエミッタの熱放射スペクトルを示す図である。 非特許文献2におけるエミッタの放射率スペクトルを示す図である。
(セラミックの構成)
本発明の実施形態のセラミックは、下記組成式:
RTO、RTO、RTi、RZr12
(RはYb又はErであり、TはNb又はTaである)
のいずれかで表される金属酸化物多結晶体で形成され、このセラミックは空孔を有する焼結体である。
この金属酸化物多結晶体の組成は、YbNbO、ErNbO、YbTaO、ErTaO、YbNbO、ErNbO、YbTaO、ErTaO、YbTi、ErTi、YbZr12、ErZr12の12種類から選ばれる組成式で示される。Nb系とTa系の比較では、資源量と原料コストの点からは、YbNbO、ErNbO、YbNbO、ErNbOが好ましい。
これら金属酸化物多結晶体の結晶構造は限定されないが、RTOについてはフェルグソン石型構造を有することが望ましく、RTOについては欠陥蛍石型構造を有することが望ましく、RTiOについてはパイロクロア型構造を有することが望ましく、RZr12については蛍石型構造関連のδ相の構造を有することが望ましい。これらの金属酸化物多結晶体は、後述の空孔を有する焼結体を良好に形成する点から、結晶粒径が10μmを超えない領域を有することが好ましい。また、これらの金属酸化物多結晶体は、出発物や未反応物、中間生成物(出発物質に由来の成分)等の他の成分を含んでいてもよいが、できるだけ少ないことが好ましく、他の成分は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
本実施形態によるセラミックは、上記金属酸化物多結晶体の粒子の焼結体であって、空孔を有し、空孔率が18%以上40%以下であることが好ましい。空孔率は20%以上であればより好ましい。空孔率は、相対密度を(実測密度)/(理論密度)として、空孔率=1−相対密度で定義している。空孔は、焼結体の内部でランダムに分布していることが好ましい。また、この焼結体の内部で前記空孔が連結しているが直線的に連続していない部分を含むことが好ましい。このようなセラミックの空孔率を実現し、直線的に空孔が連結しないようにするために、この空孔の断面積は5μmを超えないことが好ましい。
本実施形態によれば、セラミック(焼結体)に照射された熱源からの放射光が、セラミックの空孔を含む構造(空孔率が18%以上40%以下の多孔構造)により散乱されるため、熱源からの放射光がセラミック(焼結体)を透過する量が抑えられる。その一方で、セラミック(金属酸化物多結晶体)から放射される赤外線はピーク波長で十分な放射強度を有する。結果、セラミック(焼結体)による波長選択性を向上できる。
(エミッタ及び熱光起電力発電装置の構成)
本発明の実施形態のエミッタ及び熱光起電力発電装置について、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態による熱光起電力発電装置の構成を説明するための構成図である。図1に示すように、熱光起電力発電装置1は、熱源からの熱放射を波長が制御された赤外線に変換して放射するエミッタ2と、エミッタ2から放射された赤外線を電力に変換する光電変換素子を含む光電変換セル3とを備える。
図2は、他の実施形態による熱光起電力発電装置10の構成を説明するための構成図である熱光起電力発電の効率化のために、エミッタ2と光電変換セル3の間に光学フィルタ4を設ける構造である。この光学フィルタ4は、光電変換セル3に適応する波長以外の赤外線をエミッタに反射して吸収させる機能を有している。ただし、上記反射させる赤外線を全てエミッタに吸収させることは難しいため、この構造の場合でもエミッタでの放射波長の制御を行う。
本実施形態による熱光起電力発電装置に用いられるエミッタは、
下記組成式:
RTO、RTO、RTi、RZr12
(RはYb又はErであり、TはNb又はTaである)
のいずれかで表される金属酸化物多結晶体で形成されたセラミックで形成され、このセラミックは空孔を有する焼結体である。これら金属酸化物多結晶体の結晶構造は限定されないが、RTOについてはフェルグソン石型構造を有することが望ましく、RTOについては欠陥蛍石型構造を有することが望ましく、RTiOについてはパイロクロア型構造を有することが望ましく、RZr12については蛍石型構造関連のδ相の構造を有することが望ましい。
上記エミッタを形成するセラミックにおいて、空孔の量および空孔の形態を制御することにより、熱源からの放射光の透過を抑えることができ、またピーク波長で十分な放射強度が得られ、結果、熱放射スペクトルにおける波長選択性を向上できる。
図3は、エミッタに適用するセラミックの断面の一部を示す模式図である。図3に示すように、セラミックは、空孔5と多結晶緻密部6で構成されている。セラミック中の空孔5は、連結しているが直線的に連続していない部分を含む。
直線的に連続していない部分は、次のようにして確認することができる。焼結体表面に白色光(蛍光灯等)を照射し、焼結体の裏面に透過光が無いことを暗室等で目視観察する。その際、焼結体裏面に白色光が回り込まないような遮蔽板を設置する。さらに、断面SEM観察を数カ所行い、直線的に空孔が連結していないことを確認できる。逆に、空孔が直線的に連結している場合には、上記方法で透過した光が容易に観察できる。また、簡易的には、焼結体を目に近づけて蛍光灯に向けてかざし、光が焼結体を透過してこないことを確認することもできる。
本実施形態によるセラミックの空孔率は18%以上40%以下であることが好ましい。20%以上であればより好ましい。セラミックの空孔率が18%未満では、熱源からの放射光の透過を抑えることが困難になり、熱放射スペクトルの波長選択性が劣化する。また、空孔率が18%未満では熱衝撃耐性が小さくなる問題もある。また、空孔率が40%を超えると、機械的強度が小さくなる。セラミックの機械的強度が小さいと、熱光起電力発電装置1のエミッタ2として使用に適さなくなる。また、セラミックの空孔率が40%を超えると、空孔が連結されて形成された空間が直線的になり、熱源からの放射光が透過されやすくなり、エミッタにおける波長選択性に影響を与える。空孔率が小さすぎると、エミッタの裏面(熱源側)からの放射(エミッタのピーク波長とは異なる波長の放射)が、散乱されずに透過してしまい、エミッタの波長選択性が低下する。また、セラミックの空孔率が高すぎると、直線的に空孔が連結された空間が多くなり、この空間内を通ってエミッタを通過する放射光が多くなる。それとともに、緻密部(金属酸化物多結晶体)からの放射光が少なくなるので、エミッタから放射される赤外線のピーク波長での放射強度が小さくなる。結果、エミッタによる波長選択性が低下する。これに対して、エミッタの空孔率が18〜40%の範囲にあると、エミッタの機械的強度を保ちながら、エミッタのピーク波長とは異なる波長の放射光がエミッタの多孔構造により十分に散乱されて、エミッタの波長選択性を向上できる。
本実施形態によるセラミックにおいて、放射率の波長選択性を、波長700〜1750nmにおける、最低放射率に対する最大ピーク波長での放射率の比と定義すると、2以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3以上がさらに好ましい。
セラミックの空孔のサイズや形状は限定されないが、上記セラミックの空孔率を実現し、直線的に空孔が連結しないようにするために、空孔の断面積は、5μmを超えないことが望ましい。この空孔の断面積が5μmを超えないことは、SEM(Scanning Electron Microscope)像に基づいて画像解析により、確認することができる。
また、セラミックの多結晶緻密部における結晶粒径についても制限されるものではないが、上記セラミックの空孔率及び直線的に連結しない空孔を実現するためには、結晶粒径は10μmを超えない領域を有することが望ましい。この結晶粒径が10μmを超えないことは、SEM(Scanning Electron Microscope)像に基づいて画像解析により、確認することができる。
本実施形態によるセラミックは、上記組成式のRに相当する希土類元素の種類により熱放射の選択波長を変化させることが可能である。
ここで熱光起電力装置の効率化のためには、エミッタからの放射スペクトルを光電変換セルの感度波長に適合させる必要がある。
例えば、光電変換セルの光電変換素子がSiベースの場合、セラミックを構成する希土類元素として、熱放射スペクトルのピーク波長が約970nmとなるYbを使用することが望ましい。光電変換セルの光電変換素子がGaSbベースの場合、セラミックを構成する希土類元素として、熱放射スペクトルのピーク波長が約1500nmとなるErを使用することが望ましい。
また、本実施形態によるエミッタの外形、サイズについては制限されないが、空孔が直線的に連結しないこと及びセラミックの機械的強度の観点から、エミッタの熱供給面と赤外線放射面との間の厚みが0.8mm以上であることが好ましい。この厚みは、例えば3mm以下に設定でき、好ましくは2mm以下に設定できる。この範囲を超えて厚くしてもよいが、この厚みの範囲であれば所望の特性および機械的強度を得ることができる。
例えばエミッタが板状の形態の場合、板厚が0.8mm以上であることが望ましい。また、直方体の場合、最小の辺のサイズが0.8mm以上であることが望ましく、角柱や円柱等の棒状の形態の場合、長手方向に垂直な断面の最大長あるいは直径が0.8mm以上であることが望ましい。
(赤外線放射体)
本発明のセラミックは、熱源からの熱放射を受けて特定の放射率スペクトル(例えば特定の波長で放射率のピークを有する)を持つ赤外線放射を行うことができる赤外線放射体として好適に利用できる。あるいは、逆に特定の波長における放射率を低減した赤外線放射体として好適に利用できる。
例えば、この赤外線放射体は、熱光起電力発電装置のエミッタとして利用できる他、コンクリート等の物体からの熱放射を利用してその物体の劣化等による変化を検知する装置や方法に利用することができる。また、この赤外線放射体は、道路環境において撮像される仮想的な赤外画像を作成する装置や方法に利用することができる。あるいは、構造体表面に設置することによるカムフラージュにも活用できる。例えば、低放射率材料で構造体を覆うことが考えられるが、種々の放射特性の上記本発明のセラミックを迷彩模様に形成することも有効である。さらには、構造体表面に低放射率材料をコートし、該コート材にクラックが生じた場合に赤外線センサーあるいは赤外線カメラによりそのクラックを検知する利用方法もある。
(製造方法)
上記組成式で表される金属酸化物多結晶体で形成されたセラミックは次のような方法で製造できる。
原料混合物を焼成して、多結晶金属酸化物で形成された焼成物を生成する工程と、
前記焼成物を粉砕する工程と、
前記粉砕により得られた粉砕粒子を焼結し、空孔率が18%以上40%以下の焼結体を形成する工程とを有する。
原料混合物を構成する原料としては、各構成元素を含む酸化物化合物の粉末を用いることができる。
具体的には、Yb、Er、Nb、Ta、TiO、ZrOを用いることができる。
前記組成式がRTO、RTO、RTiのうちのいずれかである場合は、粉砕前の焼成時の温度は、所望の結晶構造を形成する点から、1450〜1550℃が好ましく、1480〜1520℃の範囲がより好ましい。前記組成式がRZr12の場合は、前記と同様の理由から、焼成時の温度は、1550〜1650℃の範囲が好ましく、1580〜1620℃がより好ましい。
前記組成式がRTO、RTO、RZr12場合は、砕粒子の焼結体を形成するための温度は、所望の空孔率や空孔分布を得る点、また焼結時間(コスト低減)の点から、1400〜1700℃の範囲が好ましく、1580〜1670℃がより好ましい。前記組成式がRTiの場合は、前記と同様の理由から焼結温度は、1250〜1650℃が好ましく、1300〜1520℃がより好ましい。
粉砕粒子は、所望の空孔率や空孔分布を得る点、また焼結時間(コスト低減)の点から、最大粒径が10〜40μmの範囲にあり、最小粒径が1μmを超えない粒度分布を有することが好ましい。また、この粉砕粒子の最大粒径は15〜25μmの範囲にあることがより好ましく、最小粒径は0.1〜1μmの範囲にあることが好ましい。このような粒度分布はSEM像に基づいて画像解析により確認することができる。
粉砕粒子は、適度に粒径がばらついていることが好ましい。粒径のばらつきの大きい粉砕粒子を用いることにより、短い焼結時間で高い空孔率の焼結体(セラミック)を形成できる。粉砕粒子が適度に大きな粒子を含むことにより、粒子と粒子の間に隙間が形成されやすく、十分に大きな空孔を形成できる。粒径が小さな粒子を含むことにより、焼結しやすくなる。粒径が大きく且つ粒径のばらつきが小さい(すなわち小粒径の粒子が少ない)と、温度を高くしたり、焼結時間を長くしたりしないと、十分な焼結を行うことができなくなる。粒径が小さく且つ粒径のばらつきが小さい(すなわち大粒径の粒子が少ない)と、所望の空孔率や空孔サイズを有する焼結体が得られなくなる。粉砕粒子の粒径及び粒度分布と焼結温度のバランスによって所望の高空孔率の焼結体を短い焼結時間で形成できる。このバランスを考慮して、粒径の大きな粒子の割合が、粒径の小さな粒子の割合よりも大きいことが好ましい。具体的には、粒径1μm以下の小さな粒子の割合は、体積分率で10%を超えないことが好ましい。
粉砕粒子の焼結は、主に所望の空孔率や空孔分布、機械的強度を得る点から、プレス加圧した成型体で行うことが好ましく、プレス時の圧力は5〜200MPaの範囲にあることが好ましい。
本実施形態によるセラミックの製造方法は、セラミック粉末を原料とした固相反応で製造可能であるため、原料の混合と焼成、粉砕、成形、焼結を基本とした簡単なプロセスで製造することが可能である。
前述の特許文献2では、多孔性または有孔材料を含む基板にYb:YAGを被膜する構造のため、構成が複雑なため、製造が困難である問題もあった。また非特許文献1では、アルミナやジルコニアファイバーの製造が必要な上に、ゾルゲル法で上記被覆を形成しているため、製造工程が複雑になる問題もあった。また非特許文献2では、合成時に原料を2193Kもの高温で溶融する必要があり、製造が困難な問題もあった。しかし本実施形態によるセラミックは、これらの問題を解決できる製造方法で形成することができる。
以下に、熱光起電力発電装置のエミッタに用いるセラミックについて、具体的な例を挙げて詳細に説明する。
(実施例1)
本実施例では、組成式YbNbOで示される組成を有する多結晶体で形成されたセラミックを作製した。
まず、セラミックの原料として、標準試薬グレードのYbおよびNbの各粉末を用意した。
次に、合成後の組成がYbNbOとなる量論比に各粉末を秤量し、エタノールを加えてメノウ乳鉢中で湿式混合した。混合した材料を乾燥後、大気中1500℃で8時間焼成し、固相反応で、組成式YbNbOのフェルグソン石型構造を有する多結晶体からなる焼成物を得た。
その後、この焼成物をメノウ乳鉢中で粉砕し、粉砕粒子を得た。この粉砕粒子のSEM像より、この粉砕粒子の最大粒径は約30μm、最小粒径は1μm以下であった。
この粉砕粒子を金型に入れ、プレスし、成形体を型から取り出した後、大気中で焼結させて円盤状のセラミックペレット(焼結体)を得た。作製したサンプルの製造条件を表1にまとめた。ただし、表1中のサンプルYbNbO−4については、プレス後の成型体をYb粉末中に埋めて焼結工程を行った。サンプルYbNbO−3とはこの工程が異なる。焼結後のペレットサイズは、直径約12mm,厚み約1.1mmであった。
表1. 実施例1のセラミックスの製造条件と密度測定結果
Figure 2019112244
(SEM画像)
これらのセラミックペレット(焼結体)の中の一つ(YbNbO−3)の破断面SEM像を図6に示す。図6から明らかなように、粒径が10μmを超えない結晶粒が存在することが分かる。
(空孔率の測定)
アルキメデス法による密度測定から、これらのセラミックの空孔率を計算し、結果を表1に示した。なお、セラミックペレットの空孔への水侵入を防ぐため、上記密度測定はセラミック表面等にセルロース系の樹脂をコートして行った。
(結晶構造の測定)
セラミックペレットを均一な粉末にして試料を調製し、この試料を粉末X線回折装置で同定した。図4Aに、得られた粉末X線回折パターン(XRDパターン)を示す。
図4A中、横軸は入射X線と回折X線のなす角度(2θ)を示し、縦軸は回折強度を示す。また、縦軸に沿った1つのピークが1つの結晶面を表す。
図4Aに示す回折ピークに「M(hkl)」でマークしたものは、フェルグソン石型構造をもつ単斜晶のYbNbOに回折面の指数付けができた。これにより、上述の製造方法により、フェルグソン石型構造のYbNbOが合成できたことを確認した。また、合成したセラミックの主成分はYbNbOであることが確認された。
(熱放射スペクトルの測定)
合成したセラミックの熱放射スペクトルは次のようにして測定した。
熱放射スペクトルは、円盤状のセラミックペレットの一方の面を熱し、他方の面から放射される光を光スペクトラムアナライザに入力して測定した。
セラミックペレットの加熱法は、まず、SiC板を円盤状のセラミックペレットに押し当てる。その状態で、SiC板に円盤状のセラミックペレットを押し当てた面を表側としたときに、SiC板の裏側からハロゲンランプを集光照射してSiC板を加熱し、セラミックペレットに熱を伝導させた。
その際、このセラミックペレットの熱放射面の温度をK熱電対で測定し、SiC板の温度もK熱電対で測定した。SiC板は十分に熱伝導率が大きいので、このセラミックペレットの加熱面の温度と等価であることは、事前にセラミックペレットの裏面にスリットを形成し、その部分にK熱電対を挿入して測定することで確認している。
図5Aに、作製したセラミックの熱放射スペクトルの測定結果を示す。図5A中、横軸は波長を示し、縦軸は放射率を示す。また図5A中の数値23%〜33%は、作製したセラミックの空孔率である。以下同じである。放射率は、上記熱放射スペクトル測定系において、サンプルと同位置に黒体炉をおいて事前に各温度での黒体のスペクトルを測定しておき、同温度の黒体強度とサンプルの熱放射強度の比から放射率を計算した。サンプル温度はいずれも表裏面の平均温度が1000〜1100℃で測定した。放射率の計算にはこの表裏面の平均温度を用いた。
実施例1のYbNbOセラミックの放射率スペクトルは、Yb3+の4f電子の2F5/2→2F7/2遷移に相当する波長約970nmにピークが確認された。これにより、本実施例のYbNbOセラミックは、光電変換セルを構成するSi光電変換素子のバンドギャップに相当する波長1120nmに対して、波長約970nmにピークがある選択波長放射が確認された。
(実施例2)
実施例1と同様にして、組成式YbNbOで示される組成を有する多結晶体で形成されたセラミックを作製した。作製条件は後述する比較例3のセラミックと共に表2にまとめた。サンプルYbNbO−1、YbNbO−2、YbNbO−3で空孔率18〜40%の焼結体が得られた。
図4Bには、得られた粉末X線回折パターン(XRDパターン)を示す。
図4Bに示す回折ピークに「C(hkl)」でマークしたものは、欠陥蛍石型構造をもつ立法晶のYbNbOに回折面の指数付けができた。これにより、実施例1と同様の製造方法により、欠陥蛍石型構造のYbNbOが合成できたことを確認した。また、合成したセラミックの主成分はYbNbOであることが確認された。
表2.実施例2および比較例3のセラミックの製造条件と密度測定結果
Figure 2019112244
また、実施例1と同様にセラミックの放射率スペクトルを測定した。結果を図5Bに示す。実施例1と同様にYb3+の4f電子の2F5/2→2F7/2遷移に相当する波長約970nmにピークがある波長選択性が確認された。
(実施例3)
本実施例では、組成式YbTiで示される組成を有する多結晶体で形成されたセラミックを作製した。
セラミックの原料として、標準試薬グレードのYbおよびTiOの各粉末を用意し、実施例1と同様にして、作製した。作製条件は後述する比較例4のセラミックと共に表3にまとめた。サンプルYbTi−2で空孔率29%の焼結体が得られた。
図4Cに、得られた粉末X線回折パターン(XRDパターン)を示す。
図4Cに示す回折ピークに「P(hkl)」でマークしたものは、パイロクロア型構造をもつ立法晶のYbTi2に回折面の指数付けができた。これにより、実施例1と同様の製造方法により、パイロクロア型構造のYbTiが合成できたことを確認した。また、合成したセラミックの主成分はYbTiであることが確認された。
表3.実施例3および比較例4のセラミックの製造条件と密度測定結果
Figure 2019112244
また、実施例1、2と同様に得られたセラミックの放射率スペクトルを測定した。結果を図5Cに示す。実施例1、2と同様にYb3+の4f電子の2F5/2→2F7/2遷移に相当する波長約970nmにピークがある波長選択性が確認された。
(実施例4)
本実施例では、組成式YbZr12で示される組成を有する多結晶体で形成されたセラミックを作製した。
セラミックの原料として、標準試薬グレードのYbおよびZrOの各粉末を用意し、実施例1と同様にして、作製した。作製条件は表4にまとめた。サンプルYbZr12−1およびYbZr12−1でそれぞれ、空孔率18%および空孔率37%の焼結体が得られた。
図4Dには、得られた粉末X線回折パターン(XRDパターン)を示す。
図4Dに示す回折ピークに「R(hkl)」でマークしたものは、蛍石型構造関連のδ相の構造をもつ菱面体晶のYbZr12に回折面の指数付けができた。これにより、実施例1と同様の製造方法により、δ相構造のYbZr12が合成できたことを確認した。また、合成したセラミックの主成分はYbZr12であることが確認された。
表4.実施例4のセラミックの製造条件と密度測定結果
Figure 2019112244
また、得られたセラミックの放射率スペクトルを、実施例1〜3と同様に測定した。結果を図5Dに示す。実施例1〜3と同様にYb3+の4f電子の2F5/2→2F7/2遷移に相当する波長約970nmにピークがある波長選択性が確認された。
(比較例1)
本比較例では、特許文献3に対応した組成式YbAl12で示される組成を有する多結晶体で形成されたセラミックを作製した。
セラミックの原料として、標準試薬グレードのYb粉末および平均粒径40nmのAl粉末を用意し、実施例1と同様にして、YbAl12となる量論比に各粉末を秤量し、エタノールを加えてメノウ乳鉢中で湿式混合した。混合した材料を乾燥後、大気中1650℃で8時間焼成し、固相反応で、組成式YbAl12のガーネット型構造を有する多結晶体からなる焼成物を得た。その後、この焼成物をメノウ乳鉢中で粉砕し、粉砕粒子を得た。さらに、この粉砕粒子を遊星ボールミル装置により粉砕した。用いたポットは容量100mlのジルコニア製のものを用い、上記粉砕粒子20gに対して、φ2mmジルコニアボールを50g、φ5mmジルコニアボールを40g、φ10mmジルコニアボールを30gおよび純水約50mlを投入して、回転数750rpmで15分間粉砕した。この粉砕粒子のSEM像より、この粉砕粒子の最大粒径は約3μm、最小粒径は0.1μm以下であった。
この粉砕粒子を金型に入れ、プレスし、成形体を型から取り出した後、大気中で焼結させて円盤状のセラミックペレット(焼結体)を得た。作製したサンプルの製造条件を表5にまとめた。
これらのセラミックは粉末X線回折により、ガーネット構造を有することを確認した。
表5.比較例1のセラミックの製造条件と密度測定結果
Figure 2019112244
また、得られたセラミックの放射率スペクトルを、実施例1〜4と同様に測定した。結果を図7に示す。実施例1〜4と同様にYb3+の4f電子の2F5/2→2F7/2遷移に相当する波長約970nmにピークがある波長選択性が確認された。
(比較例2)
本比較例では、特許文献4に対応した組成式CaYbAlOで示される組成を有する多結晶体で形成されたセラミックを作製した。
セラミックの原料として、標準試薬グレードのCaCO,YbOおよびAlの各粉末を用意し、実施例1と同様にして、CaYbAlOとなる量論比に各粉末を秤量し、エタノールを加えてメノウ乳鉢中で湿式混合した。混合した材料を乾燥後、大気中1400℃で8時間焼成し、固相反応で、組成式YbAl12のガーネット型構造を有する多結晶体からなる焼成物を得た。その後、この焼成物をメノウ乳鉢中で粉砕し、粉砕粒子を得た。
この粉砕粒子を金型に入れ、プレスし、成形体を型から取り出した後、大気中で焼結させて円盤状のセラミックペレット(焼結体)を得た。作製したサンプルの製造条件を表6にまとめた。
これらのセラミックは粉末X線回折により、KNiF型構造を有することを確認した。
表6.比較例2のセラミックの製造条件と密度測定結果
Figure 2019112244
また、得られたセラミックの放射率スペクトルを、実施例1〜4と同様に測定した。結果を図8に示す。実施例1〜4および比較例1と同様にYb3+の4f電子の2F5/2→2F7/2遷移に相当する波長約970nmにピークがある波長選択性が確認された。
(比較例3)
本比較例では、実施例2と同様にして、組成式YbNbOで示される組成を有する多結晶体で形成されたセラミックを作製した。作製条件は実施例1と共に表2に示した。表1中のサンプルYbNbO−4が空孔率51%の焼結体となっており、本比較例3を示す。実施例2のサンプルYbNbO−3(空孔率40%)と比較すると、プレス圧力が小さい条件で製造している。
放射率スペクトルは、図5Bに実施例2と共に示してあるが、本比較例は空孔率が18〜40%の実施例におけるセラミックに比較して、ピーク放射率が小さいことが明らかである。また、機械的強度も小さく、熱放射スペクトル測定時に破壊してしまうこともあった。
(比較例4)
本比較例では、実施例3と同様にして、組成式YbTiで示される組成を有する多結晶体で形成されたセラミックを作製した。作製条件は実施例3のサンプルと共に表3に示したが、本比較例では上記組成合成後の粉砕において比較例1と同様に遊星ボールミル装置を用いた。条件は比較例1と同様である。表2中のサンプルYbTi−1およびYbTi−3が本比較例であり、空孔率がそれぞれ、5.4%および41%となっている。
放射率スペクトルは、図5Cに実施例3と共に示した。実施例3のYbTi−2と同様に、本実施例においても波長選択性は確認されるものの、YbTi−1においては波長1200nm以上での放射率抑制効果が小さいこと、YbTi−3においては、ピーク放射率が小さいことが明らかである。
(実施例と比較例の数値比較)
図9に本発明の実施例と比較例の各サンプルについて、空孔率とピーク放射率の関係をプロットしたグラフを示す。また、図10には、図9にプロットしたものと同じサンプルについて、空孔率と選択性の関係をプロットした図を示す。選択性は、非特許文献2の放射率スペクトルに対して定義したのと同様に、ピーク放射率と波長1750nmでの放射率の比とした。図10から、比較例1(特許文献3)のガーネット構造を有するYbAl12セラミックが、波長選択性は最も優れることが明らかであるが、図9から、波長選択性が最も大きくなる空孔率24%から31%にかけてのピーク放射率は、本発明の実施例におけるサンプルと比較して小さい値になっていることがわかる。図9から、特に本発明のYbNbOにおける空孔率23〜31%においては、ピーク放射率が0.8以上と非常に良好な値を示している。
熱光起電力装置の構成としては図1に示したフィルタがない構造が理想的であるが、波長選択性に優れるエミッタはピーク放射率が制限されてしまう課題がある。すなわち、発電出力がその放射率によって制限されてしまう問題があった。一方フィルタを使用した場合には、波長選択性がない灰色体等の放射率が大きいエミッタを使用することもできるが、フィルタでの損失があるため、発電の効率は小さくなってしまう問題があった。これらの問題に対して、本発明のセラミック組成からなる波長選択エミッタは、ピーク放射率を保ったまま、ある程度の波長選択性も備えているため、フィルタを使用した場合においてもその部分での損失を抑えることができ、高出力・高効率な熱光起電力発電を可能とすることができる。
なお、上記実施例ではYb、Nbを含む組成物について述べた。しかしYb3+をEr3+に置き換えても同様の化合物ができることと、4f電子遷移によりEr3+がGaSbPV(Photovoltaic)素子に適した熱放射スペクトルを示すことは知られている。ErでYbを置き換えても、同一の母結晶であり空孔による散乱効果は、同様に得られると考えられるため、Erを含む組成でも同様の効果がある。
またTaについては、RTaO、RTaOは、それぞれRNbO、RNbO(R:希土類元素)と同一の結晶構造をとることが知られている。したがって、空孔導入による不要波長の散乱効果も同程度あることが推定される。したがって、Taを含む組成物でも波長選択性向上の効果がある。
以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1) 下記組成式:
RTO、RTO、RTi、RZr12
(RはYb又はErであり、TはNb又はTaである)
のいずれかで表される金属酸化物多結晶体で形成されたセラミックであって、
該セラミックは、空孔を有する焼結体であり、
空孔率が18%以上40%以下である、セラミック。
(付記2) 前記焼結体の内部で空孔が連結しているが直線的に連続していない部分を含む、付記1に記載のセラミック。
(付記3) 付記1又は2に記載の組成RTO(RはYb又はErであり、TはNb又はTaである)のセラミックであって、前記多結晶体はフェルグソン石型構造を有する、セラミック。
(付記4) 付記1又は2に記載の組成RTO(RはYb又はErであり、TはNb又はTaである)のセラミックであって、前記多結晶体は欠陥蛍石型構造を有する、セラミック。
(付記5) 付記1又は2に記載の組成RTi(RはYb又はErである)のセラミックであって、前記多結晶体はパイロクロア型構造を有する、セラミック。
(付記6) 付記1又は2に記載の組成RZr12(RはYb又はErである)のセラミックであって、前記多結晶体は蛍石型構造関連のδ相を有する、セラミック。
(付記7) 前記空孔の断面積が5μmを超えない、付記1から6のいずれか一項に記載のセラミック。
(付記8) 結晶粒径が10μmを超えない領域を有する、付記1から7のいずれか一項に記載のセラミック。
(付記9) 前記組成式において、TがNbである、付記1から4または付記7,8のいずれか一項に記載のセラミック。
(付記10) 前記組成式において、RがYbである、付記1から9のいずれか一項に記載のセラミック。
(付記11) 付記1から10のいずれか一項に記載のセラミックで形成された赤外線放射体あるいはエミッタ。
(付記12) 前記エミッタの熱供給面と赤外線放射面との間の厚みが0.8mm以上である、付記11に記載のエミッタ。
(付記13) 付記11又は12に記載のエミッタと、
前記エミッタから放射された赤外線を電力に変換する光電変換セルとを含む、熱光起電力発電装置。
(付記14) 下記組成式:
RTO、RTO、RTi、RZr12
(RはYb又はErであり、TはNb又はTaである)
のいずれかで表される金属酸化物多結晶体で形成されたセラミックの製造方法であって、
原料混合物を焼成して、多結晶金属酸化物で形成された焼成物を生成する工程と、
前記焼成物を粉砕する工程と、
前記の粉砕により得られた粉砕粒子を焼結し、空孔率が18%以上40%以下の焼結体を形成する工程とを有する、セラミックの製造方法。
(付記15) 粉砕前の焼成時の温度が、
前記組成式がRTO、RTO、RTiのうちのいずれかである場合は、1450〜1550℃の範囲にあり、
前記組成式がRZr12の場合は、1550〜1650℃の範囲にある、付記14に記載のセラミックの製造方法。
(付記16) 前記粉砕粒子の焼結体を形成するための温度が、
前記組成式がRTO、RTO、RZr12の場合は、1400〜1700℃の範囲にあり、
前記組成式がRTiの場合は、1250〜1650℃の範囲にある、付記14から15のいずれか一項に記載のセラミックの製造方法。
(付記17) 前記焼結体の内部に空孔が連結しているが直線的に連続していない部分を含む、付記14から16のいずれか一項に記載のセラミックの製造方法。
(付記18) セラミックで形成された赤外線放射体の製造方法であって、
付記14から17のいずれか一項に記載の製造方法でセラミックを形成する工程を含む、赤外線放射体の製造方法。
(付記19) セラミックで形成されたエミッタと、前記エミッタから放射された赤外線を電力に変換する光電変換セルとを含む熱光起電力発電装置の製造方法であって、
付記14から17のいずれか一項に記載の製造方法でセラミックを形成する工程を含む、熱光起電力発電装置の製造方法。
1、10、20 熱光起電力発電装置
2 エミッタ
3 光電変換セル
4 光学フィルタ
5 空孔
6 多結晶緻密部
7 フォトニック結晶

Claims (10)

  1. 下記組成式:
    RTO、RTO、RTi、RZr12
    (RはYb又はErであり、TはNb又はTaである)
    のいずれかで表される金属酸化物多結晶体で形成されたセラミックであって、
    該セラミックは、空孔を有する焼結体であり、
    空孔率が18%以上40%以下である、セラミック。
  2. 前記焼結体の内部で空孔が連結しているが直線的に連続していない部分を含む、請求項1に記載のセラミック。
  3. 前記空孔の断面積が5μmを超えない、請求項1または2いずれか一項に記載のセラミック。
  4. 結晶粒径が10μmを超えない領域を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のセラミック。
  5. 前記組成式において、TがNbである、請求項1から4のいずれか一項に記載のセラミック。
  6. 前記組成式において、RがYbである、請求項1から5のいずれか一項に記載のセラミック。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載のセラミックで形成された赤外線放射体。
  8. 請求項1から6のいずれか一項に記載のセラミックで形成されたエミッタ。
  9. 前記エミッタの熱供給面と赤外線放射面との間の厚みが0.8mm以上である、請求項8に記載のエミッタ。
  10. 請求項8又は9に記載のエミッタと、
    前記エミッタから放射された赤外線を電力に変換する光電変換セルとを含む、熱光起電力発電装置。
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