以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(センサネットワークシステム100)
図1は、センサネットワークシステム100の概略的な構成を示した説明図である。図1に示すように、センサネットワークシステム100は、複数のメータ110と、複数のセンサノード112と、複数の中継機114と、センター装置116とを含んで構成される。
メータ(スマートメータ)110は、例えば、需要者単位で設置され、ガス事業者から需要者にガスを供給したり、電力事業者から需要者に電力を供給する場合に、少なくともガスや電力の使用量を自動的に検針する装置である。本実施形態では、説明の便宜上、ガス事業者によるガスのメータ110について例示するが、電力(電気)にも適用できることは言うまでもない。
図2は、メータ110の概略的な構成を示した機能ブロック図である。メータ110は、遮断弁150と、圧力センサ152と、流量センサ154と、表示部156と、演算部158とを含んで構成される。なお、図2中、制御信号の流れを実線の矢印で、可燃性ガスの流れを破線の矢印で示している。
遮断弁150は、弁を含み、弁の開度を制御し、ガス流路148を流れる可燃性ガスの流量を制御する。したがって、遮断弁150は、弁を完全に閉じることで可燃性ガスの流れを遮断することができる。圧力センサ152は、遮断弁150より下流に設けられ、可燃性ガスの圧力を検出する。
流量センサ154は、超音波振動子154a、154b、伝播速度導出部154cで構成される。超音波振動子154a、154bは、遮断弁150の下流かつ圧力センサ152の上流における、ガス流路148の上流側側面と下流側側面の予め定められた位置に配置され、例えば20kHz以上の音波である超音波の送信部および受信部として機能する。伝播速度導出部154cは、可燃性ガスを介して超音波振動子154a、154b間を伝播する超音波の伝播時間を検出し、伝播時間に基づいて可燃性ガスの流量を導出する。
表示部156は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成され、可燃性ガスの供給量(使用量)の積算値や、可燃性ガスの漏洩等の異常を報知するために用いられる。
演算部158は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたPROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路により、メータ110全体を管理および制御する。また、演算部158は、プログラムと協働して、閾値更新部160、遮断制御部162として機能する。かかる閾値更新部160、遮断制御部162については後程詳述する。
図1に戻って、センサノード112は、メータ110それぞれに対し1対1に対応付けられて設置され、少なくともメータ110で利用される情報(データ)の送受信を行う。
中継機(ゲートウェイ機器)114は、複数のセンサノード112のいずれかに対応付けられて設置され、その対応付けられたセンサノード112と有線通信を確立するとともに、基地局118を通じてセンター装置116と無線通信を確立する。そして、中継機114は、対応付けられたセンサノード112を通じて、周囲の1または複数のセンサノード112と無線通信を確立する。
ただし、センサノード112の通信は、近距離無線で実現されているため、全てのセンサノード112が、中継機114に対応付けられたセンサノード112と、無線通信を直接確立できるとは限らない。この場合、センサノード112は、無線通信可能な他のセンサノード112を1または複数回ホップして中継機114に接続される。こうして、中継機114は、対応付けられたセンサノード112および周囲の他のセンサノード112を通じて、各センサノード112の情報をセンター装置116に転送するとともに、センター装置116の情報を周囲のセンサノード112に送信することができる。なお、このとき、伝達される情報には、情報が伝達される際に経由した中継機114を特定する識別子も含まれるので、センター装置116は、その情報の発信元を特定することができる。
センター装置116は、コンピュータ等で構成され、ガス事業者や電力事業者といったセンサネットワークシステム100の管理者側に属する機器で、1または複数の中継機114の情報を収集したり、または、1または複数の中継機114に対して情報を送信したりする。なお、メータ110が設置されている位置(座標情報)は、センター装置116において導管マッピング(GISシステム)を通じて管理されている。したがって、センサノード112や中継機114の位置も導管マッピングによって特定できる。
図3は、センター装置116の概略的な構成を示した機能ブロック図である。センター装置116は、センター通信部170と、センター保持部172と、センター制御部174とを含んで構成される。
センター通信部170は、基地局118を通じて中継機114と無線通信を確立する。センター保持部172は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、センター装置116に用いられるプログラムや各種情報を保持する。センター制御部174は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)で構成され、センター保持部172に格納されたプログラムを用い、センター装置116全体を制御する。また、センター制御部174は、プログラムと協働して、データ取得部180、情報生成部182、情報送信部184として機能する。かかるデータ取得部180、情報生成部182、情報送信部184については後程詳述する。
ここで、各装置間の通信について説明する。例えば、中継機114とセンター装置116との間は、基地局118を含む携帯電話網やPHS(Personal Handyphone System)網等の、例えば、LTE(Long Term Evolution)といった、通信量に応じて通信料が生じる既存の有料通信網を通じた無線通信が確立される。また、センサノード112同士は、例えば、920MHz帯を利用するスマートメータ用無線システム(U−Bus Air)を通じた無線通信が確立される。かかるセンサノード112同士の無線通信は無料であることを想定しているが、有料か無料かは問わず、少なくとも中継機114とセンター装置116との間の無線通信より通信コストが低ければよい。このような無線通信により、中継機114は、有料通信網を通じて、センター装置116と接続されると共に、スマートメータ用無線システムを通じて各センサノード112と接続される。
本実施形態では、複数の需要者単位でメータ110およびセンサノード112が配置されている。なお、中継機114が併設される場合もある。センター装置116は、センサノード112や中継機114を通じてメータ110の情報を収集、または、メータ110を制御する。したがって、センサノード112や中継機114は、需要者が存在するあらゆる位置に配置されることとなる。
ここでは、中継機114の設置箇所において、センサノード112によるスマートメータ用無線システムと中継機114による有料通信網とを併用し、スマートメータ用無線システム専用の基地局を別途設けることなく、既存の有料通信網を利用することで、センター装置116とセンサノード112との通信を簡易かつ安価に確立することができる。
また、中継機114とその周囲の複数のセンサノード112との組み合わせにおいて、中継機114のみが有料通信網を利用し、他のセンサノード112はすべて通信料が生じないスマートメータ用無線システムを利用している。したがって、通信コストを大幅に削減することが可能となる。
例えば、中継機114は、自己に対応付けられたセンサノード112を通じ、周囲の複数のセンサノード112からスマートメータ用無線システムを通じて情報を収集し、その収集した情報を、日単位で有料通信網を通じてセンター装置116に送信する。こうして、中継機114の有料通信網の利用を最小限に留めることができ、通信コストを削減することが可能となる。
上記スマートメータ用無線システムは、近距離無線を想定しているため、無線通信に費やす電力は比較的少ない。したがって、センサノード112の電源は、電池等で賄うことができ、センサネットワークシステム100の消費電力を削減することが可能となる。有料通信網は、スマートメータ用無線システムと比べると相対的に電力を消費し易いので、大容量の電池もしくは別途の電源を要するが、センサノード112に対して中継機114の絶対数が少ないので、全てのメータ110から携帯電話網を利用する場合に比べ、消費電力を極めて低く抑えることができる。以下、センサノード112や中継機114の配置について詳述する。
(センサネットワークシステム100の設計方法)
上述したように、センサノード112同士を接続するセンサネットワークシステム100を構築することで、ガス事業者の検針員がメータ110を直接検針しなくても、検針情報を収集(自動検針)することが可能となり、業務の効率化を図ることができる。
しかし、センサノード112は、メータ110と対応付けられるため、その位置はメータ110の近傍(需要者宅の近傍)に制限され、メータ110の配置条件によってはセンサノード112間の通信環境も限定されてしまう。そうすると、効率的なセンサネットワークシステム100を構築するのが困難であった。また、メータ110が交換されるタイミングも、その使用期限時(検定有効期間の満了時)に限られるので、個々のセンサノード112が有効に利用可能となる時期も考慮に入れてセンサネットワークシステム100を設計しなければならなかった。
そこで、本実施形態では、中継機114を不要に多く設置することなく、効率的なセンサネットワークシステム100を構築することが可能なセンサネットワークシステム100の設計方法を提供する。
図4は、センサネットワークシステム100の設計方法を説明するためのフローチャートであり、図5は、構築されるセンサネットワークシステム100を説明するための説明図である。メータ110は、検定有効期間が、例えば、10年といったように決まっており、その検定有効期間の満了に伴って交換しなければならない。ただし、全てのメータ110を一度に交換するのではなく、例えば、1年毎に全量の1/10を交換することで少なくとも10年後に全量の交換を完了させることを目標とする。
したがって、図4のフローチャートは、1年に1回、検定有効期間が満了となるメータ110に対して行われる。また、図5では、検定有効期間が満了となるメータ110(もしくはそれに対応付けられるセンサノード112)を白抜きで示し、まだ検定有効期間が満了とはならないメータ110を黒の塗り潰しで示す。また、検定有効期間が満了となるメータ110を「検満メータ」と呼ぶ場合があり、検満メータに対応付けられて配置されるセンサノード112を「検満ノード」と呼ぶ場合がある。なお、以下で説明するセンサネットワークシステム100の設計方法は、所定の装置(コンピュータ)を用いて実現される。
まず、所定の装置は、対象となる地域に対し、今回の処理でまだ選択されていない検満ノード(検満メータ)があるか否か判定する(S200)。そして、対象となる地域に検満ノードがあれば(S200におけるYES)、その検満ノードのうちの1のメータ110を任意に選択し、基準ノードとして設定する(S202)。ここでは、図5(a)中、「A」で示した検満ノードを基準ノードとする。
続いて、基準ノードからの距離が所定の距離条件を満たす検満ノードが所定数あるか否か判定する(S204)。ここで、所定の距離条件は、検満ノード同士が隣接するとみなされる距離以内にあることであり、具体的には、基準ノードから所定距離(例えば、30m)内に検満ノードが位置するか、または、所定距離に位置すると判断された検満ノードからさらに所定距離内に他の検満ノードが位置するかどうかということである。かかる所定距離としては、実験等により、安定的に通信を実現可能な適切な値(ここでは、30m)を採用する。したがって、基準ノードまで複数連鎖する検満ノード間の距離が全て所定距離内であれば、かかる検満ノードは全て距離条件を満たすこととなる。例えば、図5(a)の例では、「A」の基準ノードに対して、「B」で示した3つの検満ノードが対象となる。ここでは、所定の距離条件を満たす検満ノード同士を破線で結んで示している。
また、所定数は、中継機114が接続可能なセンサノード112の最大許容数より小さい数である。このように所定数を最大許容数より少なくすることで、次年度以降に追加される検満ノードが基準ノードに隣接していた場合に、その基準ノードで追加される検満ノードとの通信を許容することができる。なお、所定数は、所定年(例えば10年)後に各中継機114が最大許容数以下のセンサノード112との通信を許容できることを想定した適切な値であり、例えば、最大許容数「50」に対し所定数を「30」とする。ただし、図5においては、説明の便宜上、所定数を「3」として説明している。
このように、所定の距離条件を満たす検満ノードを抽出している途中で、所定数に至った場合(S204におけるYES)、さらに所定の距離条件を満たす検満ノードがあるか否かに拘わらず、その基準ノードと、抽出した、基準ノードからの距離が所定の距離条件を満たす所定数以下の検満ノードとでグループを生成する(S206)。例えば、図5(a)の例では、「A」を基準ノードとする3つの「B」の検満ノードを含んだグループ「C」が生成される。
続いて、このように生成されたグループに含まれる検満ノードを、基準ノードの候補から除外し(S208)、検満ノード判定処理S200からの処理を繰り返す。したがって、基準ノードの候補から除外された検満ノードは、検満ノード判定処理S200の対象とはならない。これは、グループに含まれる検満ノードは、すでに基準ノードに設置される中継機114を通じてセンター装置116と通信確立可能と判断されているので、改めて基準ノードの候補とする必要がないからである。こうして、検満ノード判定処理S200の負荷を軽減することができる。
例えば、図5(a)において、グループ化された「B」の検満ノードは基準ノードの候補から除外されるので、次の検満ノード判定処理S200では、図5(b)のように、「B」の検満ノードを除いた検満ノード、例えば、「D」で示した検満ノードが基準ノードとして設定される。そうすると、ステップS204において、図5(b)における「D」の基準ノードに対して、「E」で示した3つの検満ノードが対象となり、「D」を基準ノードとする3つの「E」の検満ノードを含んだグループ「F」が生成される。このようにして、順次新たなグループが生成されることとなる。
また、所定の距離条件を満たす検満ノードが所定数未満である場合(S204におけるNO)、基準ノードと、抽出された所定数未満の検満ノードとのセンサノード群が、既に生成されている他のグループと所定の距離条件を満たすか否か判定する(S210)。ここで、センサノード群が他のグループと所定の距離条件を満たさなければ(S210におけるNO)、当該センサノード群、すなわち、基準ノードと、抽出された所定数未満の検満ノードとでグループを生成する(S212)。例えば、図5(c)の「G」を基準ノードとする2つの「H」の検満ノードを含むセンサノード群が、他のグループ「C」、「F」と所定の距離条件を満たさないので、「G」を基準ノードとする2つの「H」の検満ノードを含んでグループ「I」が生成される。かかるセンサノード群は、他のグループと所定の距離条件を満たしていないので、本年度のみならず、次年度以降に通信が確立される可能性も低い。ここでは、このようなセンサノード群が所定数未満であったとしても、独立したグループとして扱うことで、多くのセンサノード112と通信を確立することが可能となる。
そして、グループ生成処理S206でグループを生成した場合と同様に、生成されたグループに含まれる検満ノードを、基準ノードの候補から除外し(S208)、検満ノード判定処理S200からの処理を繰り返す。
また、センサノード群が他のグループと所定の距離条件を満たす場合(S210におけるYES)、その基準ノードの設定を解除して単なる検満ノードとする(S214)。例えば、図5(d)の「J」を基準ノードとする「K」の検満ノードを含むセンサノード群が、他のグループ「C」、「F」と所定の距離条件を満たすので、「J」の基準ノードの設定を解除する。ここで、センサノード群をグループ化しないのは、他のグループと所定の距離条件を満たしているので、他のグループの検満ノードと通信を確立することが想定され、また、本年度に通信を確立しなくても、次年度以降に通信を確立する可能性が高いからである。このように、基準ノードを不要に多く設定しないようにすることで、中継機114の絶対数を抑制しつつ、効率的なセンサネットワークシステム100を構築することができる。
また、基準ノードの設定を解除しただけでは、検満ノード判定処理S200において、同一の検満ノードが再び基準ノードとして設定され得るので、ここでは、不要な処理を繰り返すのを防止するため、抽出されたすべての検満ノードを、基準ノードの候補から除外し(S208)、検満ノード判定処理S200からの処理を繰り返す。
このように、グループ化されなかった検満ノードは、例えば、次年度以降に新たな検満ノードが生じることで、それらが基準ノードの候補となり、グループ化が促進される場合がある。また、新たに建物が建設され、所定の距離条件を満たすセンサノード112が増えることで、検満ノードが所定数以上となり、グループ化が可能になる場合もある。
そして、検満ノード判定処理S200において、今回の処理でまだ選択されていない検満ノードがないか、または、検満ノードはあるが、基準ノードの候補から除外されたものであれば(S200におけるNO)、設定された基準ノード全てに中継機114を対応付け(S216)、当該センサネットワークシステム100の設計方法を終了する。
こうして、検定有効期間が満了となった既設のメータ110は、新たなメータ110に交換される。そして、新たなメータ110にはセンサノード112が対応付けられている。また、基準ノードとして設定されたセンサノード112(もしくは、それに対応付けられたメータ110)には、メータ110およびセンサノード112に加え、中継機114が併設される。こうして、検定有効期間が満了するタイミングで、中継機114を適切に配置したセンサネットワークシステム100が更新される。
上記のセンサネットワークシステム100の設計方法は、少なくとも所定年(例えば10年)後に、全てのメータ110がセンサノード112に対応付けられたメータ110に交換され、全てのメータ110がセンサノード112によって通信可能になった場合を想定して設計されている。しかし、上述したように、実際は、検満ノードに対応するメータ110のみの交換なので、毎年、所定の割合(例えば、1/10)でしかセンサノード112が追加されない。したがって、当該方法によって、初年度に、センサネットワークシステム100が完全に構築されるものではなく、交換されたメータ110であってもセンター装置116と通信できない場合もある。その場合は、不要に中継機114を設置せず、検針員が個別に検針することとする。
なお、中継機114の最大許容数は、所定数より大きい。したがって、検満ノードがグループに含まれていない場合であっても、その検満ノードが、グループに属する他の検満ノードや基準ノードと通信を確立し、センター装置116と通信できる場合もある。この場合、その時点や過去の接続実績を参照し、安定して通信を確立している中継機114とセンサノード112との組合せがあれば、その通信は既に成り立っているものとみなし、その通信経路を固定した(検満ノード判定処理S200の対象から除外した)上で、他のセンサノード112に関し、上記の設計方法を実行してもよい。
なお、所定年に近づいても、または、所定年が経過しても、センサネットワークシステム100として構築されなかった検満ノードに相当するメータ110については、所定の距離条件を満たすメータ110が所定数に満たない場合であっても、いずれかの検満ノードを基準ノードとしてもよい。こうして、全てのメータ110との通信が可能となる。
かかる構成により、毎年、検定有効期間が満了したメータをメータ110に適切に交換し、所定の規則に則って画一的、かつ効率的に中継機114を配置することができる。したがって、所定年後を見据えて、中継機114の絶対数を抑制しつつ、かつ、その少ない中継機114が適切に配分された(バランスよく配分された)効率的なセンサネットワークシステム100を構築することが可能となる。
(保安号数の変更)
このように構築されたセンサネットワークシステム100を用いることで、検針員がメータ110を直接検針しなくても、検針情報を収集(自動検針)することが可能となり、業務の効率化を図ることができる。しかし、需要者の利用状況が変化し、変化した利用状況に対応するメータ110が必要になると、やはり作業員が需要者宅に出向き、該当する保安号数のメータ110を直接交換することとなり、業務の効率化が十分ではなかった。そこで、本実施形態では、メータ110の共通化を図り、効率的なセンサネットワークシステム100を構築する。
ところで、メータ110は、単位時間当たりの使用最大流量を示す保安号数によってその外形および内部構造の大きさが異なる。ただし、保安号数の違いによりハードウェア的に変化するのは「大きさ(スケール)」のみである。したがって、保安号数が大きいメータ110を保安号数が小さいメータ110で代用することはできないが、その逆、すなわち、保安号数が小さいメータ110を保安号数が大きいメータ110で代用することはできる。そうすると、保安号数が大きいメータ110を用いることでメータ110の共通化が可能となる。なお、ここでは、メータ110として、機能はほぼ等しいが外観が異なるUH型とJO(MO)型の2機種を例示する。
図6は、型式号数と保安号数との関係を説明するための説明図である。ここでは、共通化されたメータ110として機種それぞれで5つの型式(型式号数)を準備している。図6(a)に示すUH型では、1.6号、2.5号、3号、4号、6号の型式号数のメータ110それぞれが、1または複数の保安号数を兼用する。例えば、型式号数が1.6号のメータ110は、保安号数が1.6号にしか対応していないが、型式号数が6号のメータ110は、保安号数として、1.6号、2.5号、3号、4号、4.5号、5号、6号の7通りに対応できる。また、図6(b)に示すJO型では、1号、1.6号、2.5号、4号、6号の型式号数のメータ110それぞれが、1または複数の保安号数を兼用する。例えば、型式号数が1号のメータ110は、保安号数が1号にしか対応していないが、型式号数が6号のメータ110は、保安号数として、1号、1.6号、2.5号、3号、4号、4.5号、5号、6号の8通りに対応できる。
したがって、ガス事業者の作業員は、需要者が利用する本来の保安号数より大きな型式号数のメータ110を設置することで、保安号数の変更に容易に対応することが可能となる。例えば、需要者が利用希望する保安号数が3号であっても、敢えて、型式号数が6号のメータ110を設置することで、需要者の利用状況が変化したとしても、本体を交換することなく、1.6号、2.5号といった小さな保安号数にも、また、4号、4.5号、5号、6号といった大きな保安号数にも変更することができる。
ただし、メータ110の本体を共通化できても、その内部のソフトウェアは共通化できない。具体的に、メータ110における遮断や警告の判断処理が各保安号数によって異なる。このような判断処理としては、例えば、「合計最大流量オーバ遮断」、「個別最大流量オーバ遮断」、「流量オーバ警報」があり、それぞれ判断処理を行うための閾値を複数有している。
ここで、「合計最大流量オーバ遮断」は、ガス流路148の折損等により、可燃性ガスの流量が閾値を超える異常な値になった場合に、1分以内に遮断弁150を閉じる判断処理である。また、「個別最大流量オーバ遮断」は、ガス栓が誤って開放されたり、ゴム管が誤って外れたことにより、可燃性ガスの流量が閾値を超えて異常に増加した場合に、1分以内に遮断弁150を閉じる判断処理である。また、「流量オーバ警報」は、可燃性ガスの30秒間の平均流量が閾値を超える異常な値になった場合に、表示部156や図示しない警報スピーカを通じて警告する判断処理である。
これらの判断処理は、各保安号数に応じて閾値が異なる。また、閾値は経過年によって変化する場合がある。ここでは、メータ110の共通化に加え、各メータ110への保安号数を、センサネットワークシステム100を通じて遠隔から設定することで、作業員の現地出向や煩雑な作業を抑制しつつ、効率的なセンサネットワークシステム100を構築する。
具体的に、センター装置116の情報送信部184は、対象となるメータ110に対応付けられたセンサノード112に、少なくとも保安号数が示された号数情報のみを送信する。そして、メータ110の閾値更新部160は、かかる号数情報から保安号数を抽出して、自己が保持する保安号数を更新する。遮断制御部162は、自己が保持する、保安号数(または、保安号数および経過年)と、複数の判断処理の閾値(合計最大流量オーバ遮断、個別最大流量オーバ遮断、流量オーバ警報)とがそれぞれ一意に対応付けられたテーブルから、更新された保安号数に対応する複数の判断処理の閾値を一度に読み出し、その複数の閾値に応じて、遮断弁150を遮断したり、表示部156や警報スピーカを通じて警告する。また、遮断制御部162は、自己のタイマを参照し、設置から1年経過したか否かに応じてテーブルの参照位置を変更して閾値を読み出す場合もある。
このようなテーブルを用いて、例えば、設置して1年未満のJO型のメータ110の保安号数を、「3」から「4」に変更する場合、センター装置116の情報送信部184は、対象となるメータ110に対応付けられたセンサノード112に、保安号数「4」が示された号数情報を送信する。そして、メータ110の閾値更新部160は、かかる号数情報から保安号数「4」を抽出して保持する。遮断制御部162は、自己が保持するテーブルから、それまでの保安号数「3」に代えて保安号数「4」に対応する閾値を読み出す。そうすると、「合計最大流量オーバ遮断」、「個別最大流量オーバ遮断」、「流量オーバ警報」の各閾値が異なる値に更新されることとなる。遮断制御部162は、可燃性ガスの流量が、このような閾値を超えると、遮断弁150を遮断したり、表示部156や警報スピーカを通じて警告する。
以上、説明したように、センサネットワークシステム100を通じて保安号数を設定するといった簡易な処理のみで、複数の判断処理の閾値を一度に変更(設定)することができる。こうして、作業員の現地出向や煩雑な作業を抑制しつつ、需要者の利用状況の変化に適切に対応可能なセンサネットワークシステム100を構築することが可能となる。
(課金情報生成)
また、センサネットワークシステム100が構築されると、センター装置116は、センサノード112を通じてメータ110の検針情報を収集し、検針情報に基づいて需要者への課金請求のための課金情報を生成する。しかし、課金請求の基準となる検針日において、仮に、センサノード112同士の通信が確立できなかった等、何らかの事情で検針情報を収集できなかった場合、課金請求のため、やはり検針員がメータを直接検針しなくてはならなくなる。ここでは、検針情報を得られなかった場合でも課金情報を生成することを目的とする。
上述したように、センター装置116のデータ取得部180は、センサノード112から、少なくとも所定のタイミング(例えば、月1回の検針日)で検針結果等を含む検針情報を取得する。そして、情報生成部182は、取得された検針情報に基づいて、課金情報を生成する。ここで、検針結果は、例えば、設置から積算された可燃性ガスの流量(総流量)である。したがって、情報生成部182は、今回の検針情報における検針結果(総流量)から前回の検針情報における検針結果(総流量)を減算することで前回から今回までの可燃性ガスの使用総流量を導出し、使用総流量に応じて課金情報を生成している。そして、生成された課金情報は需要者に提示されることとなる。
このとき、所定のタイミングでセンサノード112から検針情報を正常に取得できなかった場合、情報生成部182は、過去の検針情報を参照して課金情報を生成する。具体的に、データ取得部180は、所定のタイミングに拘わらず、所定周期(例えば、1日に1回)で検針情報をセンサノード112から取得し、センター保持部172に保持させておく。そして、所定のタイミングでセンサノード112から検針情報を正常に取得できなかった場合、情報生成部182は、センター保持部172から過去に正常に取得された検針情報、例えば、1日前の検針情報を参照し、その検針情報に基づいて課金情報を生成する。このとき、1日前の検針情報が正常に取得されていなければ、2日前の検針情報を参照するといったように、正常に取得された検針情報が抽出されるまで参照を繰り返す。
図7は、センター装置116の処理の流れを示したフローチャートであり、図8は、課金情報の対象期間を説明するための説明図である。なお、ここでは、検針を行う所定のタイミングを、月1回とし、例えば毎月5日として説明する。
まず、センター装置116のデータ取得部180は、所定周期(例えば毎日の12時)に至ったか否か判定し(S300)、所定周期に至るまでは(S300におけるNO)、所定周期判定処理S300を繰り返す。そして、所定周期に至ると(S300におけるYES)、データ取得部180は、検針情報をセンサノード112から取得し、検針情報を取得した日時に関連付けてセンター保持部172に保持させる(S302)。このとき、検針情報を正常に取得できなかった場合、その旨を保持する。
続いて、データ取得部180は、所定のタイミング(例えば毎月の5日)に至ったか否か判定し(S304)、所定のタイミングに至るまでは(S304におけるNO)、所定周期判定処理S300から繰り返す。そして、所定タイミングに至ると(S304におけるYES)、情報生成部182は、データ取得部180が取得した検針情報が正常値であるか否か判定する(S306)。ここで、正常値とは、センサノード112同士の通信が正規に確立され、正常に取得された値を示す。したがって、センサノード112同士の通信が確立できなかった等、何らかの事情で検針情報を正常に収集できなかった場合、それは正常値ではないと判断される。
検針情報が正常値であれば(S306におけるYES)、情報生成部182は、取得された検針情報に基づいて、課金情報を生成する(S308)。具体的に、図8(a)のように、対象期間を9月5日〜10月5日とし、情報生成部182は、今回(例えば10月5日)の検針情報における検針結果(総流量)から前回(例えば9月5日)の検針情報における検針結果(総流量)を減算して使用総流量を導出し、使用総流量に応じて課金情報を生成する。
一方、検針情報が正常値でなければ(S306におけるNO)、情報生成部182は、センター保持部172から1回分過去の検針情報、例えば、1日前の検針情報を参照する(S310)。そして、情報生成部182は、その参照した検針情報が正常値であるか否か判定する(S312)。検針情報が正常値でなければ(S312におけるNO)、正常な検針情報が参照されるまで、検針情報参照処理S310を繰り返す。
検針情報が正常値であれば(S312におけるYES)、その検針情報に基づいて課金情報を生成する(S308)。例えば、図8(b)のように、検針日(10月5日)に正常に検針情報が取得できず、1日前(10月4日)の検針情報が正常に取得できていた場合、対象期間を9月5日〜10月4日とし、情報生成部182は、正常に取得できた1日前(10月4日)の検針情報を用い、今回(例えば10月4日)の検針情報における検針結果(総流量)から前回(例えば9月5日)の検針情報における検針結果(総流量)を減算して使用総流量を導出し、使用総流量に応じて課金情報を生成する。
このように、課金情報の基になる検針情報を過去のものとすることで、検針日までの課金が行われないことになるが、その分は、次回に繰り越すことで課金し損なうことはない。
すなわち、情報生成部182は、前回の課金情報の生成において過去の検針情報を用いた場合、過去の検針情報を起算点として今回の課金情報を生成する。例えば、図8(c)のように、検針日(10月5日)に正常に検針情報が取得できず、正常に取得できた1日前(10月4日)の検針情報を用いた場合、次回、情報生成部182は、検針情報を用いた10月4日を起算点(起算日)として課金情報を生成する。
こうして、検針日当日ではないが、その数日前の検針情報に基づいて課金情報を生成できる。したがって、検針員が直接メータ110を検針しなくても、検針日当日に課金情報を確実に生成することが可能となる。
なお、検針情報が複数日(例えば10日)以上、正常に取得できない場合、対象となるセンサノード112が何らかの通信障害に陥っている可能性があり、正規に課金できないので、その場合にのみ検針員が現地に検針に行くとしてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
また、コンピュータを、上記センサネットワークシステム100を設計する装置、メータ110、センサノード112、または、センター装置116として機能させるプログラムや、当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
なお、本明細書に示した各処理は、必ずしもフローチャートに記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。