以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図14を参照して詳細に説明する。各図について共通する構成要素には、同一の符号が付されている。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る歩行状態解析装置1の機能を示すブロック図である。歩行状態解析装置1は、測定部11と、解析部12と、歩数算出部13とを備える。
測定部11は、よく知られた加速度センサから構成され、被測定者の左右の下肢にそれぞれ装着されて加速度(物理量)を測定する。測定部11は、互いに直交するX、Y、Z軸の3方向の加速度を周期的に、例えば、25Hzのサンプリングレートで測定することで、加速度測定値の時系列データを得る。なお、本実施の形態では、測定部11は、被測定者の左右の脚または足に装着される。
解析部12は、体動算出部121と、下限閾値判定部122と、歩行判定部123とを備える。
解析部12は、測定部11によって測定された加速度を解析して、被測定者の歩行に伴う左右の下肢それぞれの移動の発生を特定する。
体動算出部121は、測定部11によって測定された3方向の加速度に基づいて被測定者の体動の大きさを算出する。より詳細には、体動算出部121は、被測定者の右の下肢に装着された測定部11によって測定された加速度の合成和を、体動の大きさ|A|kとして、以下の式(1)により算出する。同様に、体動算出部121は、被測定者の左の下肢に装着された測定部11によって測定された加速度についても合成和を体動の大きさ|A|kとして算出する。
上式(1)において、Ax,k、Ay,k、Az,kはX、Y、Z軸それぞれの測定部11が有する加速度センサのk番目(kは正の整数とする。)のサンプリングでの出力値であり、その単位は重力加速度G(1.0G≒9.8m/s2)である。
体動の大きさ|A|kは、被測定者の体動が無い静止状態であれば、重力加速度に一致し、1[G]を示す。被測定者の体動がある場合は、体動算出部121が有するセンサ(図示しない)の振動子(図示しない)が振動することで1[G]から変動した値を示す。
下限閾値判定部122は、体動算出部121によって算出された体動の大きさの時系列データと、体動の大きさに対して予め設定された下限閾値Athl(第1閾値)とを比較して、体動の大きさが下限閾値Athlより大きい値から下限閾値Athlより小さい値に減少したときに下側検出信号(第1の検出信号)Bkを出力する。下限閾値判定部122から出力される下側検出信号Bkは、歩行判定部123に入力される。
下限閾値判定部122は、例えば、体動の大きさ|A|kの下側の基準値である下限閾値Athlを0.85[G]として、直近の過去の体動の大きさ|A|k-1が下限閾値Athl(0.85[G])より大きく、体動の大きさ|A|kが下限閾値Athl(0.85[G])以下の場合に、下側検出信号Bkとして1を出力する。それ以外の場合については、下限閾値判定部122は、下側検出信号Bkとして0を出力する。
歩行判定部123は、下側検出信号Bk=1の出力直前の予め設定された誤検出防止期間P1において、下側検出信号Bi(iは、k−(P1/T)からk−1までの範囲であり、Tはサンプリング期間。)の出力1が無かった場合に、被測定者の歩行に伴う左右の下肢それぞれの移動の発生を示す歩行検出信号Dkとして1を出力する。なお、歩行判定部123は、歩行検出信号Dkとして1を出力した時刻を歩行発生時刻として特定する。
より詳細には、歩行判定部123は、下側検出信号Bk=1が出力された直前の、例えば、800ms、すなわち前述したサンプリングレートが25Hzの場合においては下側検出信号Bk-1から下側検出信号Bk-20が得られる期間を誤検出防止期間P1として用いる。
歩行判定部123は、誤検出防止期間P1における下側検出信号Bk-1から下側検出信号Bk-20のうちのいずれかに1が出力されていないことを確認する。誤検出防止期間P1に下側検出信号Biの出力1が存在しない場合には、歩行判定部123は、下側検出信号Bkの出力1が、対応する左右の下肢の移動が発生したことを示すと判定して、歩行検出信号Dkとして1を出力する。
一方、歩行判定部123は、誤検出防止期間P1に下側検出信号Biの出力1が存在する場合には、下側検出信号Biと下側検出信号Bkとが出力された間隔が近すぎるとして、歩行検出信号Dkとして0を出力する。歩行判定部123がこのような条件で歩行検出信号Dkの出力を0とすることで、歩行状態解析装置1において被測定者の歩行が誤検出されることを防止できる。
なお、下限閾値判定部122および歩行判定部123は、左の下肢と右の下肢のそれぞれについて算出された体動の大きさに対して独立に上述した判定を行う。
歩数算出部13は、解析部12によって特定された被測定者の歩行に伴う左右の下肢それぞれの移動に基づいて、計測期間にわたる被測定者の歩数を算出する。より詳細には、歩数算出部13は、任意の計測期間に、被測定者の左右の下肢それぞれの移動が発生したことを示す歩行検出信号Dk=1が出力された回数、すなわち被測定者の左右の下肢それぞれの移動が発生した回数の累積を、被測定者の歩数として算出する。
[歩行状態解析装置のハードウェア構成]
図2は、本実施の形態に係る歩行状態解析装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。歩行状態解析装置100は、バス101を介して接続される制御部102、通信制御装置105、センサ106、記憶装置107、および表示装置108を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。
制御部102は、CPU103と主記憶部104とを備えている。主記憶部104には、CPU103が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。制御部102によって、図1で示した解析部12などの歩行状態解析装置1の機能が実現される。
通信制御装置105は、歩行状態解析装置100と各種外部電子機器との間をネットワーク接続するための制御装置である。
センサ106は、加速度センサを有し、測定部11として機能する。センサ106は、互いに直交する3軸方向に応じた加速度ベクトルの大きさに比例した電圧値を出力する。なお、センサ106は2つ設けられ、被測定者の右の下肢および左の下肢のそれぞれに装着される。
記憶装置107は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置とで構成されている。記憶装置107には、記憶媒体としてフラッシュメモリなどの半導体メモリやハードディスクを使用することができる。記憶装置107は、データ記憶部107a、設定情報記憶部107b、プログラム格納部107c、図示しないその他の格納装置で、例えば、この記憶装置107内に格納されているプログラムやデータなどをバックアップするための格納装置などを有することができる。
データ記憶部107aは、測定部11(センサ106)によって測定される左右の下肢における加速度の時系列データを記憶する。また、データ記憶部107aは、体動算出部121によって算出される左右の下肢における体動の大きさの時系列データを記憶する。さらに、データ記憶部107aは、下限閾値判定部122によって出力される下側検出信号Bkの時系列データ、および歩行判定部123によって出力される歩行検出信号Dkの時系列データを記憶する。
設定情報記憶部107bには、下限閾値Athlの設定値、誤検出防止期間P1や計測期間などの情報が記憶されている。
プログラム格納部107cには、本実施の形態における下限閾値判定部122による下限閾値の判定処理や、歩行判定部123による判定処理などの歩行状態の解析に必要な処理を実行するための各種プログラムが格納されている。
表示装置108は、液晶ディスプレイなどにより実現される。表示装置108は、歩数算出部13によって算出された被測定者の歩数などを表示する。
[歩行状態解析装置の動作]
次に、上述した構成を有する歩行状態解析装置1の動作を説明する。図3は、歩行状態解析装置1の動作を説明するフローチャートである。
まず、測定部11は、被測定者の左右の下肢に装着されて、左右の下肢それぞれの移動に伴う加速度を測定する(ステップS1)。より詳細には、測定部11は、互いに直交するX、Y、Z軸の3方向の加速度を、例えば、25Hzのサンプリングレートで周期的に測定して、加速度の時系列データを得る。測定された加速度の時系列データは、データ記憶部107aに記憶される。
次に、体動算出部121は、測定部11によって測定された3方向の加速度の合成和、すなわち体動の大きさ|A|kを式(1)によって算出する(ステップS2)。なお、算出された体動の大きさ|A|kの時系列データは、データ記憶部107aに記憶される。
次に、下限閾値判定部122は、直近の過去に算出された体動の大きさ|A|k-1が下限閾値Athlより大きく、かつ、ステップS2で算出された体動の大きさ|A|kが下限閾値Athl以下の場合には(ステップS3:YES)、下側検出信号Bkとして1を出力する(ステップS4)。すなわち、下限閾値判定部122は、体動の大きさの時系列データが、下限閾値Athlより大きい値から下限閾値Athlより小さい値に減少した場合に、下側検出信号Bkとして1を出力する。
一方、体動の大きさ|A|kが上記条件に該当しない場合には(ステップS3:NO)、下限閾値判定部122は、下側検出信号Bkとして0を出力する(ステップS5)。
下側検出信号Bkとして1が出力さた後に(ステップS4)、歩行判定部123は、下側検出信号Bk=1の出力直前の誤検出防止期間P1に下側検出信号Biとして1が出力されていない場合には(ステップS6:YES)、対応する右または左の下肢における移動の発生を示す歩行検出信号Dk=1を出力する(ステップS7)。なお、歩行判定部123は、歩行検出信号Dkとして1を出力した時刻を歩行発生時刻として特定する。
一方、歩行判定部123は、誤検出防止期間P1に下側検出信号Biとして1が出力されている場合には(ステップS6:NO)、対応する右または左の下肢における移動が発生しなかったことを示す歩行検出信号Dk=0を出力する(ステップS8)。なお、上記ステップS1〜ステップS8までの処理を左右両方の下肢について独立に実行する。また、出力された下側検出信号Bkおよび歩行検出信号Dkの時系列データは、データ記憶部107aに記憶される。
その後、歩数算出部13は、被測定者の左右両方の下肢における移動の発生回数を累積して被測定者の歩数を算出する(ステップS9)。より詳細には、歩数算出部13は、歩行検出信号Dkとして1が出力された回数を累積して被測定者の歩数を算出する。次に、歩数算出部13は、計測期間が経過した場合には(ステップS10:YES)、算出した歩数を出力する。
次に、図4Aおよび図4Bを用いて、本実施の形態における効果の説明をする。図4Aおよび図4Bは、被測定者の歩行速度が0.5m/sの場合の、左右の下肢における体動の大きさ|A|k、下側検出信号Bk、および歩行検出信号Dkの時間変化をそれぞれ示す。図4Aおよび図4Bの縦軸は計測時間(30[秒])であり、横軸は加速度[G]である。また、図4Aは、左の下肢の加速度に基づくデータである。図4Bは、右の下肢の加速度に基づくデータである。
図4Aおよび図4Bに示す実線の曲線は、それぞれ左右の下肢における体動の大きさ|A|kの時間変化を示す。四角形の点は、下側検出信号Bkが1となった時刻を示している。また、丸点は、歩行検出信号Dkが1となった時刻、すなわち被測定者の左右の下肢それぞれの移動が発生した時刻を示している。
図4Aおよび図4Bに示すように、左右両方の下肢において、体動の大きさが変化した際に歩行検出信号Dkが1となったことを示す丸点が描かれていることから、被測定者の歩行に伴う左右の下肢の移動が適切に検出できている。このことは、歩行状態解析装置1において、左右の下肢における移動の発生回数の累積である、被測定者の歩数が正確に計測できるということを示している。
また、本実施の形態に係る歩行状態解析装置1を用いて1分間の計測期間にわたる被測定者の歩数の計測を行って、目視による被測定者の歩数と比較したところ、誤差は2%であった。
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、歩行状態解析装置1は、被測定者の左右の下肢それぞれの移動に伴う加速度を測定し、測定された加速度を解析して被測定者の歩行に伴う左右の下肢それぞれの移動の発生を特定するため、被測定者の歩行速度が比較的遅い場合であっても、精度の高い歩数計測を行うことができる。
なお、上述した第1の実施の形態では、被測定者の左右の下肢それぞれに装着された測定部11によって測定された加速度に基づいて、被測定者の歩行に伴う左右の下肢それぞれの移動の発生を特定する場合について説明した。しかし、測定部11は、被測定者の左右いずれか一方の下肢に装着されていてもよい。この場合、歩行状態解析装置1は、特定された下肢の移動の発生に基づいて算出された被測定者の歩数を2倍にすればよい。
[第1の実施の形態に係る変形例]
次に、第1の実施の形態の変形例について、図5および図6を用いて説明する。図5は、第1の実施の形態に係る歩行状態解析装置1を用いたシステムの概要を示す構成図である。図6は、第1の実施の形態に係る歩行状態解析装置1を用いたシステムの構成を示すブロック図である。
図5に示すように、被測定者400の左右の足のそれぞれにセンサ端末200が装着されている。センサ端末200で測定された結果は、通信ネットワーク(図示しない)を介して外部端末300に送信される。センサ端末200は、被測定者400における左右の足の動きに伴う加速度を、互いに直交するX、Y、Z軸の3方向について測定する。
センサ端末200は、図6に示すように、加速度センサ201、データ記憶部202、データ解析部203、データ送信処理部204、および通信インターフェース205を備える。外部端末300は、通信インターフェース301、データ受信処理部302、データ記憶部303、データ解析部304、および提示部305を備える。
加速度センサ201は、被測定者400の左右の足の移動に伴う加速度をアナログ加速度信号として測定し、所定のサンプリングレートでデジタル加速度データに変換する。加速度センサ201は、第1の実施の形態における測定部11に対応する。
データ記憶部202は、加速度センサ201でデジタル化された加速度の時系列データを記憶する。データ記憶部202は、第1の実施の形態におけるデータ記憶部107aに対応する。
データ解析部203は、データ記憶部202に記憶された加速度の時系列データから特徴量である体動の大きさを算出する。算出された体動の大きさの時系列データは、データ記憶部202に記憶される。データ解析部203は、第1の実施の形態における体動算出部121に対応する。
データ送信処理部204は、データ記憶部202で記憶された加速度の時系列データおよび算出された体動の大きさの時系列データを、通信インターフェース205を介して外部端末300に送信する。データ送信処理部204は、第1の実施の形態における通信制御装置105に対応する。
通信インターフェース205は、例えば、LTE(Long Term Evolution)、第3世代移動通信システム、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等の無線データ通信規格に対応した演算インターフェースおよびアンテナを有する。通信インターフェース205は、第1の実施の形態における通信制御装置105に対応する。
次に外部端末300の構成について説明する。
通信インターフェース301は、センサ端末200に含まれる通知ンインターフェース205と同様の機能の演算インターフェースおよびアンテナを有する。通信インターフェース301は、第1の実施の形態における通信制御装置105に対応する。
データ受信処理部302は、センサ端末200からの体動の大きさの時系列データを、通信インターフェース301を介して受信する。データ受信処理部302は、第1の実施の形態における通信制御装置105に対応する。
データ記憶部303は、センサ端末200から受信した体動の大きさの時系列データを記憶する。また、データ記憶部303は、後述するデータ解析部304によって出力される各種信号の時系列データを記憶する。また、データ記憶部303には、後述するデータ解析部403によって用いられる下限閾値Athlの値や、誤検出防止期間P1に関する情報が記憶されている。データ記憶部303は、第1の実施の形態におけるデータ記憶部107aおよび設定情報記憶部107bに対応する。
データ解析部304は、データ記憶部303に記憶されている体動の大きさの時系列データの解析を行い、被測定者400の左右の足それぞれの移動の発生を特定する。データ解析部304は、第1の実施の形態における下限閾値判定部122および歩行判定部123に対応する。
提示部305は、データ解析部304によって特定された、被測定者400の左右の足それぞれの移動に基づいて、計測期間にわたる被測定者400の歩数を算出して表示画面に提示する。提示部305は、第1の実施の形態における歩数算出部13および表示装置108に対応する。
以上説明したように、第1の実施の形態に係る変形例によれば、歩行状態解析装置1が有する測定部11と体動算出部121とをセンサ端末200によって実現し、体動の大きさの解析を行う下限閾値判定部122および歩行判定部123、ならびに被測定者400による歩数の算出を行う歩数算出部13を外部端末300により実現する。そのため、被測定者400に装着される装置を軽量化しつつ、解析部12の一部の機能をネットワーク上の別の計算機に実装し、歩行状態解析装置1の演算負荷を分散することが可能となる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
第1の実施の形態では、下限閾値判定部122が、被測定者の左右の下肢それぞれの体動の大きさの時系列データと、下限閾値Athlとを比較する場合について説明した。これに対し、第2の実施の形態では、解析部12は、上限閾値判定部124をさらに備える。
[第2の実施の形態に係る発明の原理]
例えば、被測定者が脳卒中の経験者などの場合、被測定者の歩行速度が遅いだけでなく、左右の下肢が非対称な動きをする場合がある。被測定者の左右の下肢が非対称な動きをする場合、第1の実施の形態のように下限閾値Athlの値が0.85[G]に設定されても、歩行時に体動の大きさ|A|kが、下限閾値Athl(0.85[G])を下回らない場合がある。このような場合には、被測定者の左右の下肢それぞれの移動の発生が正確に特定できないことがある。
一方、下限閾値Athlの設定値をより大きい値に変更し、たとえば0.9[G]とすると、安静時の値(1[G])に近づくため、被測定者の歩行以外の動作に伴う左右の下肢の移動を検出するリスクが増加してしまう。このように、歩行判定部123が、下限閾値Athlに基づく比較結果のみを用いて、左右の下肢における移動の判定を行うと、検出漏れが生ずる場合がある。
そこで、本実施の形態に係る歩行状態解析装置1Aは、下限閾値判定部122に加えて上限閾値判定部124を有することで、歩行判定部123による左右の下肢における移動の検出漏れを補完する。そのため、歩行状態解析装置1Aは、被測定者の歩数の計測をより安定的に行うことができる。
[歩行状態解析装置の機能ブロック]
図7は、第2の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Aの機能ブロック図である。以下、第1の実施の形態と異なる歩行判定部123および上限閾値判定部124を中心に説明する。
上限閾値判定部124は、体動算出部121によって算出された、左右の下肢それぞれの体動の大きさの時系列データと、体動の大きさに対して予め設定された上限閾値(第2閾値)Athhとを比較して、体動の大きさが上限閾値Athhより小さい値から上限閾値Athhより大きい値に増加したときに、上側検出信号(第2の検出信号)Tkを出力する。
より詳細には、上限閾値判定部124は、例えば、体動の大きさ|A|kの上側の基準値である上限閾値Athhを1.5[G]とし、直近の体動の大きさ|A|k-1が上限閾値Athh(1.5[G])より小さく、体動の大きさ|A|kが上限閾値Athh(1.5[G])以上の場合に上側検出信号Tkとして1を出力する。
なお、上限閾値判定部124は、上側検出信号Tk=1を出力する場合であっても、上側検出信号Tk=1が出力される時点から直近の過去および未来にわたる一定期間P2において、下側検出信号Bkとして1が出力されていれば、上側検出信号Tkの出力を0にする。
なお、直近の過去および未来にわたる一定期間P2とは、上側検出信号Tk=1が出力された時点から直近の、例えば、560msの範囲、すなわち過去の14サンプリングの期間と、直近の未来における280msの範囲、すなわち未来の7サンプリングの期間とにわたる期間である。
このように、上限閾値判定部124は、下限閾値判定部122を補完する目的を有するため、上側検出信号Tk=1が出力された近傍の時刻において、下側検出信号Bkとして1が出力されている場合は、上側検出信号Tkとして1を出力することは不要とする。
なお、直近の一定期間P2として未来の値を用いたが、これは、上側検出信号Tkの出力を7サンプリング分だけ遅延させることで実現される。
歩行判定部123は、下側検出信号Bkと上側検出信号Tkとに基づいて、被測定者の歩行に伴う左右の下肢それぞれの移動の発生の有無を判定し、その判定に応じた歩行検出信号Dkを出力する。
より詳細には、まず、歩行判定部123は、下側検出信号Bkまたは上側検出信号Tkのいずれか一方が1となっていれば、候補信号Mkとして1を出力する。歩行判定部123は、候補信号Mkとして1が出力された直前の一定期間P3において、候補信号Mi(iは、k−(P3/T)からk−1までの範囲であり、Tはサンプリング期間。)の出力1が無かった場合に、歩行検出信号Dkとして1を出力する。
具体的には、歩行判定部123は、候補信号Mkが出力された直前の、例えば、800ms、すなわち前述したサンプリングレートが25Hzの場合においては候補信号Mk-1から候補信号Mk-20が得られる期間において、1が出力されていないことを確認する。
歩行判定部123は、期間P3における候補信号Mk-1から候補信号Mk-20において出力1が存在しない場合に、対応する左右の下肢の移動が発生したと判定して、歩行検出信号Dkとして1を出力する。
[歩行状態解析装置の動作]
次に、上述した構成を有する歩行状態解析装置1Aの動作について、図8および図9のフローチャートを参照して説明する。なお、第1の実施の形態と異なる上限閾値判定処理を中心に説明する。
図8に示すように、まず、測定部11は、被測定者の左右の下肢に装着されて、左右の下肢それぞれの移動に伴う加速度を測定する(ステップS1)。
次に、体動算出部121は、測定部11によって測定された3方向の加速度の合成和、すなわち体動の大きさ|A|kを式(1)によって算出する(ステップS2)。
次に、下限閾値判定部122は、直近の過去における体動の大きさ|A|k-1が下限閾値Athlより大きく、かつ、ステップS2で算出された体動の大きさ|A|kが下限閾値Athl以下の場合には(ステップS3:YES)、下側検出信号Bkとして1を出力する(ステップS4)。
一方、体動の大きさ|A|kが上記条件に該当しない場合には(ステップS3:NO)、上限閾値判定部124は、上限閾値判定処理を実行する(ステップS20)。すなわち、体動の大きさ|A|kが下限閾値Athlを下回らなかった場合に、上限閾値判定処理が実行される。
図9に示すように、上限閾値判定部124は、直近の過去における体動の大きさ|A|k-1が上限閾値Athhより小さく、体動の大きさ|A|kが上限閾値Athh以上の場合に(ステップS21:YES)、上側検出信号Tkとして出力1を選択し、上側検出信号Tk=1を出力する直近の過去および未来にわたる一定期間P2に、下側検出信号Bkの出力1が無い場合には(ステップS22:NO)、上側検出信号Tkとして1を出力する(ステップS25)。
その後、歩行判定部123は、候補信号Mkとして1を出力する(ステップS26)。
一方、上限閾値判定部124は、直近の過去における体動の大きさ|A|k-1が上限閾値Athhより小さく、体動の大きさ|A|kが上限閾値Athh以上である条件に該当しない場合には(ステップS21:NO)、上側検出信号Tkとして0を出力する(ステップS23)。
また、上限閾値判定部124は、直近の体動の大きさ|A|k-1が上限閾値Athhより小さく、体動の大きさ|A|kが上限閾値Athh以上の場合であっても(ステップS21:YES)、一定期間P2に、下側検出信号Bkとして1が出力されている場合には(ステップS22:YES)、上側検出信号Tkとして0を出力する(ステップS23)。
ステップS23で上側検出信号Tkとして0が出力された後に、歩行判定部123は、下側検出信号Bkとして1が出力されているか否かを確認し、下側検出信号Bkとして1が出力されている場合には(ステップS24:YES)、候補信号Mkとして1を出力する(ステップS26)。
次に、歩行判定部123は、候補信号Mkとして1が出力された直前の一定期間P3において、候補信号Miとして1が出力されているか否かを確認し、候補信号Miとして1が出力されていない場合には(ステップS27:NO)、対応する左右の下肢の移動が発生したと判断して、歩行検出信号Dkとして1を出力する(ステップS29)。
その後、歩数算出部13は、被測定者の左右両方の下肢における移動の発生回数を累積して被測定者の歩数を算出する(ステップS30)。より詳細には、歩数算出部13は、歩行検出信号Dkとして1が出力された回数を累積して被測定者の歩数を算出する。
上述した上限閾値判定処理が完了すると、処理は図8のステップS10に戻される。
次に、図10Aおよび図10Bを用いて、本実施の形態における効果の説明をする。図10Aおよび図10Bは、下半身麻痺を有する脳卒中の経験者である被測定者が、歩行速度0.5m/sで歩行した際の、左右の下肢における体動の大きさ|A|k、下側検出信号Bk、上側検出信号Tk、候補信号Mk、および歩行検出信号Dkの時間変化をそれぞれ示している。
図10Aおよび図10Bの縦軸は計測時間[秒]であり、横軸は加速度[G]である。また、図10Aは、左の下肢の加速度に基づくデータである。図10Bは、右の下肢の加速度に基づくデータである。
図10Aおよび図10Bに示す実線の曲線は、それぞれ左右の下肢における体動の大きさ|A|kの時間変化である。四角形の点は、下側検出信号Bkが1となった時刻を示している。
また、三角形の点は、上側検出信号Tkが1となった時刻を示し、バツ点は、候補信号Mkが1となった時刻を示している。丸点は、歩行検出信号Dkが1となった時刻、すなわち被測定者の左右の下肢それぞれの移動が発生した時刻を示している。
図10Aに示すように、左右両方の下肢における体動の大きさの非対称性により、左の下肢では、矢印で示すように、下側検出信号Bkが1とならないうちに上側検出信号Tkが1となり、被測定者の歩数が補完されていることが分かる。
また、本実施の形態に係る歩行状態解析装置1Aを用いて1分間の計測期間にわたる被測定者の歩数の計測を行い、目視による被測定者の歩数と比較したところ、誤差は3%であった。
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、歩行状態解析装置1Aは、被測定者の左右の下肢それぞれの移動に伴う加速度を測定し、加速度に基づいて算出された左右の下肢における体動の大きさに対して設定された下限閾値Athlに加えて上限閾値Athhを用いて、被測定者の歩行に伴う左右の下肢それぞれの移動の発生の有無を判定する。そのため、歩行状態解析装置1Aは、被測定者の左右の体動の大きさが非対称となる場合であっても、精度の高い歩数計測を行うことができる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1および第2の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
第3の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Aは、第2の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Aと同じ構成を有する。本実施の形態では、歩行判定部123は、さらに、所定の振動が、被測定者の歩行に伴う左右の下肢における振動(移動)の発生として誤って判定されることを防止する機能を有する。
歩行判定部123は、測定部11によって測定された右の下肢の移動に伴う加速度に基づいて得られた歩行検出信号Drk(第1の歩行検出信号)と、左の下肢の移動に伴う加速度に基づいて得られた歩行検出信号Dlk(第2の歩行検出信号)とが、予め設定された取り消し期間内にともに出力された場合には、歩行検出信号Drk、Dlkを取り消す。
例えば、歩行検出信号Drkと、歩行検出信号Dlkとが極めて近い期間、例えば、120msの期間内、すなわち3サンプリング分の取り消し期間内に、ともに1が出力された場合は、左右両方の下肢で検出された歩行検出信号Dkであると判定する。
歩行判定部123は、上記の場合において、歩行検出信号Drk、Dlkの出力1を取り消す。すなわち右の下肢および左の下肢のいずれにおいても、被測定者の歩行に伴う下肢の移動は発生しなかったと判定する。
例えば、被測定者が自動車や電車などの乗り物で移動する場合、車体が不定期に振動する。このような場合、車体の振動が大きければ、被測定者の歩行に伴う左右の下肢の移動として誤検出されてしまう恐れがある。しかしながら、車体が振動する際は、左右両方の下肢に装着されたセンサからほぼ同時刻に振動が検出される。そのため、前述したように、歩行判定部123は、比較的短い期間内に歩行検出信号Drk、Dlkの両方が得られた場合は、両方の信号を取り消し、被測定者の左右の下肢それぞれの移動は発生しなかったと判定する。
以上説明したように、第3の実施の形態によれば、取り消し期間内にともに左右の下肢の移動が発生したことを示す歩行検出信号Drk、Dlkが出力された場合には、歩行判定部123が、両方の歩行検出信号Drk、Dlkを取り消す。そのため、歩行状態解析装置1Aは、乗り物の振動に影響されることなく被測定者の歩数を計測することができる。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1から第3の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
第4の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Aは、第3の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Aと同じ構成を有する。
本実施の形態では、歩数算出部13は、測定部11が左右の下肢の移動に伴う、左右いずれか一方の加速度を測定できない場合には、測定された他方の加速度に基づいて算出された歩数を2倍にする。
より具体的には、例えば、測定部11が有する加速度センサのバッテリが切れている場合や、無線電波の遮蔽物による吸収等により、加速度の測定値が解析部12に送られない状況がありうる。こうした状況は、例えば、歩行状態解析装置1Aが図6で説明したシステムにより実現されている場合において、通信インターフェース205、301がリンクの切断を検知することにより、容易に把握できる。
このように、左右の下肢のいずれか一方に装着された測定部11が加速度を測定できない場合には、例えば、図6で説明した左右2つのセンサ端末200のうちの一方のセンサ端末200のリンクが保たれていれば、そのセンサ端末200によって測定された加速度に基づき算出された、計測期間にわたる歩数を2倍にする。これにより、リンクが切断された他方のセンサ端末200により測定された加速度に基づく被測定者の歩数が補完される。
以上説明したように、第4の実施の形態によれば、歩数算出部13は、測定部11が左右の下肢の移動に伴う左右いずれか一方の加速度を測定できない場合であっても、測定された歩数に基づいて、被測定者の歩数を算出する。これにより、歩行状態解析装置1Aにおける運用や通信状況による被測定者の歩数計測の不安定性を低減し、より信頼性の高い歩数計測を行うことができる。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1から第4の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。第5の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Aは、第4の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Aと同じ機能構成を有する。
しかし、本実施の形態に係る歩行状態解析装置1Aは、図11に示すように、センサ端末200と外部端末300Aとを有するシステムによって構成される。本実施の形態においては、外部端末300Aが、入力インターフェース306と、誤検出防止期間変更部307とを備える点で、第1から第4の実施の形態とは異なる。
入力インターフェース306は、例えば、キーボードやタッチパネルなどにより実現される。入力インターフェース306は、被測定者の操作による誤検出防止期間P1の長さの入力を受け付ける。
誤検出防止期間変更部307は、入力インターフェース306を介して受け付けた誤検出防止期間P1の長さの入力に基づいて、誤検出防止期間P1の設定を変更する。
このように、誤検出防止期間P1の長さを被測定者に応じて変更可能とすることで、以下のような、歩行速度が比較的遅いだけでなく、1分間(単位時間)当たりの歩数を示す歩行ピッチが比較的高い値となる被測定者の歩数についても適切に計測することができる。なお、歩行ピッチの詳細は後述する。
例えば、被測定者の歩行速度が0.5m/s程度と比較的遅い場合には、一般的に歩行ピッチも比較的小さい値となる。しかし、被測定者が、例えば、パーキンソン病のような痙攣を伴う疾患を有する場合は、被測定者の歩幅が小さいので歩行速度は遅いが、動作が素早いため歩行ピッチは高い値を示す場合がある。
このような場合には、誤検出防止期間P1が長すぎると真の歩行(左右の下肢の移動)の検出を妨げてしまう可能性がある。そのため、誤検出防止期間変更部307は、誤検出防止期間P1を、例えば、予め設定されている800msから200ms程度と、より短い期間に変更可能とする。
以上説明したように、第5の実施の形態によれば、誤検出防止期間変更部307は、入力インターフェース306を介して受け付けた誤検出防止期間P1の長さを被測定者に応じて変更するため、歩行状態解析装置1Aは、より適切かつ精度の高い歩数計測を行うことができる。
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1から第5の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。第6の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Aは、第5の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Aと同じ機能構成を有する。
第6の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Aは、図12に示すように、センサ端末200と外部端末300Bとを有するシステムによって構成される。本実施の形態では、外部端末300Bが、入力インターフェース308と、閾値変更部309とを備える点で、第5の実施の形態と異なる。
入力インターフェース308は、例えば、キーボードやタッチパネルなどにより実現され、被測定者の操作により下限閾値Athlや上限閾値Athhの値の入力を受け付ける。
閾値変更部309は、入力インターフェース308を介して受け付けた、下限閾値Athlや上限閾値Athhの入力値に基づいて、対応する下限閾値Athlや上限閾値Athhの設定値を変更する。
例えば、デフォルトの設定値として、下限閾値Athlが0.85[G]、上限閾値Athhが1.5[G]に設定されている場合に、閾値変更部309は、入力インターフェース308を介して0.01[G]刻みで受け付けた、それぞれの閾値の変更を行う。なお、下限閾値Athlは上限閾値Athhの値を超えることはなく、また、これらの閾値は負の値をとらない。
以上説明したように、第6の実施の形態によれば、閾値変更部309が入力インターフェース308を介して受け付けた、下限閾値Athlおよび上限閾値Athhの設定値をそれぞれ変更する。そのため、歩行状態解析装置1Aは、被測定者の状態に応じた、より適切な解析を行い、精度の高い歩数計測を行うことができる。
[第7の実施の形態]
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1から第6の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
第7の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Bは、歩行ピッチ算出部14をさらに備える点で、第1から第6の実施の形態と異なる。
図13は、第7の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Bの機能ブロック図である。
歩行ピッチ算出部14は、単位時間あたりの歩数を示す歩行ピッチFkを算出する。より詳細には、歩行ピッチ算出部14は、歩行判定部123によって出力された歩行検出信号Dkの時系列データの時間間隔から1分あたりの歩行を示す被測定者の歩行ピッチFkを算出する。
歩行ピッチ算出部14が算出する歩行ピッチFkの単位は、spm(steps per minute)である。1歩(左右の下肢それぞれの移動)あたりの時間間隔TDk[分]、すなわち直近の過去の歩行検出信号Dk-1が出力された時刻から、歩行検出信号Dkが出力された時刻との差をTDk[分]とすると、歩行ピッチFkは次の式(2)により算出される。
Fk=60/TDk ・・・(2)
歩行ピッチ算出部14が上式(2)によって算出する被測定者の歩行ピッチFkは、歩行判定部123によって左右の下肢それぞれの移動が発生したと判定される度に、時系列データとして更新される。なお、歩行ピッチ算出部14は、時間間隔TDkが、例えば、3[秒]を超える場合は、被測定者の歩行に伴う左右の下肢それぞれの移動としては、間隔が長く、被測定者の歩行としては疑わしいため、歩行ピッチFkの更新値としては、0[spm]を適用する。
歩行ピッチ算出部14は、時系列データの歩行ピッチFkを求めるだけでなく、特定の期間、例えば、24時間における歩行ピッチFkの平均値を算出してもよい。歩行ピッチ算出部14が歩行ピッチFkの平均値を算出する方法としては、次の2通りを用いることができる。歩行ピッチ算出部14は、それぞれの算出方法で算出される平均値が示す情報の利用用途に応じて2通りの方法から選択して歩行ピッチFkの平均値を算出すればよい。
まず、第1の算出方法としては、歩行ピッチ算出部14は、左右の下肢どちらに基づく歩行検出信号Dkの出力時刻であるかを区別せずに時間間隔TDkを求めて、歩行ピッチFkの平均値を算出する。したがって、歩行ピッチ算出部14は、左右いずれかの下肢の移動の発生を示す歩行検出信号Dk=1の出力時刻と、直近の右または左の下肢における移動の発生を示す歩行検出信号Dk-1=1の出力時刻との差を時間間隔TDkとして用いる。
一方、第2の算出方法においては、歩行ピッチ算出部14は、左右の下肢どちらに基づく歩行検出信号Dkの出力時刻であるかを区別して時間間隔TDkを求め、歩行ピッチFkの平均値を算出する。
例えば、歩行ピッチ算出部14は、左の下肢の移動に基づく歩行検出信号Dkが出力された時刻と、直近の過去の右の下肢の移動に基づく歩行検出信号Dk-1が出力された時刻との差を時間間隔TD1kとして歩行ピッチF1kを算出する。同様に、歩行ピッチ算出部14は、右の下肢の移動に基づく歩行検出信号Dkが出力された時刻と、直近の過去の左の下肢の移動に基づく歩行検出信号Dk-1が出力された時刻との差を時間間隔TD2kとして歩行ピッチF2kを算出する。そして、歩行ピッチ算出部14は、算出した歩行ピッチF1kの平均値および歩行ピッチF2kの平均値をそれぞれ求める。なお、歩行ピッチ算出部14は、歩行ピッチF1k、F2kの中央値を算出してもよい。
左右の下肢の区別のない第1の算出方法に基づいて歩行ピッチ算出部14が算出した歩行ピッチFkの平均値は、被測定者における左右の下肢の移動に差がない場合を仮定した基準を示す参考値として利用される。
一方、左右の下肢の区別がある第2の算出方法に基づいて歩行ピッチ算出部14が算出した歩行ピッチF1k、F2kそれぞれの平均値は、例えば、脳卒中などにより、片半身麻痺のある被測定者を対象とする場合に有用な情報として利用することができる。被測定者において、片半身麻痺がある場合には、左の下肢から右の下肢にかけての歩行ピッチF1kの平均値と、右の下肢から左の下肢にかけての歩行ピッチF2kの平均値が非対称となる。これらの平均値の差は、片半身麻痺による機能不全の度合いを示す情報として利用される。なお、前述した第1の算出方法に基づいて算出された歩行ピッチFkの平均値は、片半身麻痺を有する被測定者の歩行容態の基準値を示す情報としても利用される。
以上説明したように、第7の実施の形態によれば、歩行ピッチ算出部14が、被測定者の歩行ピッチFkを算出する。そのため、算出された歩行ピッチFkに基づく情報を被測定者の歩行に関する情報として利用することができる。
[第8の実施の形態]
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1から第7の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。第8の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Bは、第7の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Bと同じ機能構成を有する。
第8の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Bは、図14に示すように、センサ端末200と外部端末300Cとを有するシステムによって構成される。本実施の形態では、外部端末300Cが、歩数入力インターフェース310と、自動閾値設定部311とを備える点で、第1から第7の実施の形態と異なる。
歩数入力インターフェース310は、例えば、キーボードやタッチパネルなどにより実現され、任意の設定用計測期間にわたって別途に計数された被測定者の実際の歩数を受け付ける。
自動閾値設定部311は、歩数入力インターフェース310を介して受け付けられた被測定者の実際の歩数と、データ解析部304(歩数算出部13)によって算出された設定用計測期間での被測定者の歩数とに基づいて、下限閾値Athlおよび上限閾値Athhそれぞれの値を設定する。
より詳細には、歩数入力インターフェース310は、例えば、被測定者が1分間の設定用測定期間にわたって数えた被測定者自身の歩数の入力を受け付ける。そして、自動閾値設定部311は、下限閾値Athlおよび上限閾値Athhを一定の範囲内で変更し、最も誤差の小さかった閾値条件を選択する。
自動閾値設定部311は、一定の範囲として、例えば、下限閾値Athlであれば、0.7[G]から0.9[G]の範囲を用い、この範囲内において下限閾値Athlを0.01[G]間隔で変化させる。また、これと同時に、自動閾値設定部311は、上限閾値Athhを、例えば、1.4[G]から1.6[G]までの一定の範囲において0.01[G]間隔で変化させる。
データ解析部304(解析部12)は、上記の条件で被測定者の歩数の算出を総当たり的に行い、各上下閾値条件下での歩数を算出する。その後、自動閾値設定部311は、閾値条件ごとに算出された被測定者の歩数に対して、次の式(3)を用いてエラー率を求める。
エラー率(%)=100×{(算出された歩数)−(被測定者が数えた歩数)}/(被測定者が数えた歩数) ・・・(3)
上式(3)において、エラー率は、正の値であれば過剰に歩数が算出されたことを示し、負の値であれば歩数の算出において見逃しが生じていることを示す。自動閾値設定部311は、エラー率を総当たりで計算し、最も0に近いエラー率を与えた下限閾値Athlおよび上限閾値Athhをデータ記憶部303(設定情報記憶部107b)に記憶する。
算出されたエラー率において、最も0に近いエラー率を与える下限閾値Athlおよび上限閾値Athhの組み合わせが複数存在する場合は、自動閾値設定部311は、下限閾値Athlが最も小さい値となった閾値の組み合わせを選び、次いで、上限閾値Athhが最も大きい値となった閾値の組み合わせを選択すればよい。
以上説明したように、第8の実施の形態によれば、歩行状態解析装置1Bによって計測された被測定者の歩数のエラー率に基づいて、下限閾値Athlおよび上限閾値Athhの設定値を変更する。そのため、歩行状態解析装置1Bは、被測定者の歩行の個性への対応を可能とし、それぞれの被測定者に最適な条件のもと歩数の計測を行うことができる。
[第9の実施の形態]
次に、本発明の第9の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1から第8の実施の形態と同じ構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
第9の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Bは、第8の実施の形態に係る歩行状態解析装置1Bと同じ機能構成を有するが、第9の実施の形態では、測定部11が加速度ではなく角速度を測定する点で第1から第8の実施の形態とは異なる。
本実施の形態において、測定部11は、角速度センサによって実現される。第1から第8の実施の形態においては、互いに直交するX、Y、Z軸の3方向の加速度を測定する加速度センサで測定部11を実現した。これに対して、本実施の形態に係る測定部11は、被測定者の左右の下肢それぞれの移動に伴う、互いに直交するX、Y、Z軸の3方向の角速度を測定する。
測定部11は、測定された3方向の角速度のうち、身体を左右に分ける矢上面に最も近い1軸の角速度の測定値を採用する。そして体動算出部121は、採用された角速度の測定値を被測定者の左右の下肢それぞれの移動に伴う体動とみなす。なお、本実施の形態で用いられる体動の大きさの単位は、加速度の[G]ではなく、dps(degree per second)である。
なお、下限閾値判定部122および上限閾値判定部124がそれぞれ用いる下限閾値Athlおよび上限閾値Athhについては、測定部11が加速度を測定する場合とは異なる任意の値に設定すればよい。また、下限閾値判定部122、上限閾値判定部124、および歩行判定部123が判定を行う際に用いられる誤検出防止期間P1などの時間に関する条件は、測定部11が加速度を測定する場合と同じ条件を用いてもよい。
以上、本発明の歩行状態解析方法および歩行状態解析装置における実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。