JP2019085413A - 新規なプロスタグランジン誘導体を有効成分として含有する医薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】経口投与が可能であり、副作用が少なく、より安全性が高く、有効性や薬物動態学的特性に優れた血流改善剤、とりわけ脊柱管狭窄症に伴う血流障害や疼痛の治療剤に有用な化合物を有効成分として含有する医薬の提供。【解決手段】式1の化合物。[RA:−CH=CZ1(COX)等;Z1:H等;X:OR4等;R4:H等;Y:S等;A−B:炭素−炭素単結合等;波線で結合した水酸基:α−配置等の水酸基;R1、R2:独立にH等;nは0〜2の整数を表し;R3は、炭素数2〜3のアルキル基または炭素数3〜5のシクロアルキル基を表す。]【選択図】なし

Description

本発明は、プロスタグランジン類のω鎖にアルキニル基を有する新規プロスタグランジン誘導体、またはその薬学的に許容できる塩、あるいはそれらのシクロデキストリン包接化合物を有効成分として含有する医薬、特に血流障害の予防または治療のための医薬、に関する。
末梢動脈閉塞症は動脈硬化、血栓形成により動脈が狭窄・閉塞し、末梢、特に下肢が阻血状態に陥り、冷感、間歇性跛行、疼痛、下肢の潰瘍・壊死等の症状を呈する疾患である。下肢症状の改善には、阻血部への血流改善が重要であり、薬剤あるいは物理的方法によって血行の再開を図る治療が行なわれる。薬物療法としては血管拡張作用や血小板凝集阻害作用を有する薬剤が用いられている。
末梢血管疾患はまた、腎動脈のアテローム硬化性狭窄としても現れ、腎虚血および腎機能障害を導きうる。また、慢性糖尿病はアテローム性動脈硬化症、ならびに大血管、細動脈および毛細血管が関与する血管系の合併症を導きうる。糖尿病患者は、神経障害および虚血等の長期合併症により足部潰瘍を発症する危険が高い。
脊柱管狭窄症は、脊柱管を構成する脊椎や黄色靱帯の肥大変性や、椎間板の突出等で脊柱管が狭められ、神経根や馬尾等の神経組織が圧迫を受けて各種症状を呈する疾患である。脊柱管狭窄症は、脊柱管の狭小部位によって、広範脊柱管狭窄症、胸部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症等に分類される。その症状としては、神経圧迫による腰痛や上肢または下肢の痛み、しびれ等がある。特に馬尾神経が傷害されると、歩行中に腰痛、下肢の痛み、しびれ、脱力感がひどくなり、この症状を間欠跛行という。
天然のプロスタグランジン(以下、プロスタグランジンをPGと記す)類は生体内において合成される一群の生理活性物質で、種々の生理活性を有する局所ホルモンとして生体各組織の細胞機能を調節している。特に天然型PGの一種であるPGE1類は、例えば血管拡張作用、血管形成作用、血小板凝集抑制作用、上皮再生促進作用等を有しており、上記のような疾患の薬物療法において、抗血小板剤、末梢血流障害の改善剤等として用いられている。PGE類はさらに他の適応症に応用できる可能性もあるが、天然のPGE類は化学的、代謝的に極めて不安定であるため、より安定で効果が高く、副作用の少ないPGE誘導体の開発研究が鋭意検討されている。
PGの2位に二重結合を有するPG誘導体やその製造法については、下記の特許文献1〜5、および非特許文献1〜2に報告されている。また、PGのω鎖にアルキニル基を有するPG誘導体やその製造法については、下記の特許文献6〜7に報告されている。
特開昭50−71649号公報 特開昭50−116452号公報 特開昭52−85151号公報 特開昭53−149954号公報 特開昭55−100360号公報 特開昭51−131860号公報 特開昭54−12352号公報
Ann. Acad. N. Y. Sci., 1971, vol.180, p.181. Prostaglandins, 1974, vol.8, p.341.
本発明の目的は、経口投与が可能であり、副作用が少なく、より安全性が高く、有効性や薬物動態学的特性に優れた血流改善剤、とりわけ脊柱管狭窄症に伴う血流障害や疼痛の治療剤に有用な化合物を有効成分として含有する医薬を提供することである。前記文献記載化合物中でも、特に、(2E)−7−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3S,5S)−3−ヒドロキシ−5−メチルノナ−1−エン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタ−2−エン酸(リマプロスト)は優れた薬効を示す化合物であり、そのリマプロストを有効成分とする血流改善剤が、実際の医療の場で閉塞性血栓血管炎や脊柱管狭窄症に伴う痛みや冷感の治療のために使用されている。しかし、リマプロストは消化管に対する副作用があるうえ、血流増加作用や薬効持続性についてまだ改良の余地がある。特にリマプロストの平滑筋収縮作用が高く、下痢を引き起こすという副作用については解決されるべき課題として残されている。そこで天然型と同様の生理活性を有し、副作用が少なく持続性の高いPGE1誘導体の開発が内外で鋭意検討されている。
しかし、PGの2位に二重結合を有し、ω鎖にアルキニル基を有するPG類については、報告されていない。さらに、PGの2位に二重結合を有し、18位に三重結合を有するPGE類については、その合成例、物性、生理活性等について、全く報告されていない。
また、PGの18位に三重結合を有し、三重結合の末端にシクロアルキル基を有するPGE類については、その合成例、物性、生理活性等について、全く報告されていない。
本発明者らは、新規なPG類を合成し、その物性や生理活性を明らかにすべく検討を行った。その結果、下記式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある)またはその薬学的に許容できる塩(以下、化合物(1)とその薬学的に許容できる塩を総称して「本化合物」と記すこともある。)、あるいはそれらのシクロデキストリン包接化合物が、優れた物性および薬理作用を有すること、さらには、血流改善剤、とりわけ脊柱管狭窄症に伴う血流障害や疼痛の治療薬として極めて優れた化合物であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]下式(1):
[式(1)中、
は、−CH−CZ(COX)または−CH=CZ(COX)を表し、Z、Zは、それぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子を表し、Xは、ORまたはNRを表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、置換基を有する炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基または置換基を有する炭素数6〜10のアリールスルホニル基を表し;
Yは、CH、SまたはOを表し;
A−Bは、炭素−炭素単結合または炭素−炭素二重結合を表し;
波線で結合した水酸基は、α−配置、β−配置またはα−配置及びβ−配置の混合配置である水酸基を表し;
、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜3のアルキル基を表し;
nは0〜2の整数を表し;
は、炭素数2〜3のアルキル基または炭素数3〜5のシクロアルキル基を表す。]で表される化合物もしくはその薬学的に許容できる塩、またはこれらのシクロデキストリン包接化合物を有効成分として含有する医薬;
[2]YがCHである[1]に記載の医薬;
[3]Rが−CH=CZ(COX)である[1]または[2]に記載の医薬;
[4]Rが−CH−CZ(COX)である[1]または[2]に記載の医薬;
[5]nが1である[1]〜[4]のいずれかに記載の医薬;
[6]A−Bが炭素−炭素二重結合である[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬;
[7]Rが水素原子であり、Rが炭素数1〜3のアルキル基である[1]〜[6]のいずれかに記載の医薬;
[8]Rが炭素数3〜5のシクロアルキル基である[1]〜[7]のいずれかに記載の医薬;
[9]XがORである[1]〜[8]のいずれかに記載の医薬;
[10]血流障害の予防または治療剤である[1]〜[9]のいずれかに記載の医薬;
[11]血流障害が、神経の血流障害である[10]に記載の医薬;
[12]神経の血流障害が、脊柱管狭窄症に伴う血流障害である[11]に記載の医薬;
[13]血流障害が、末梢動脈、皮膚または脳の血流障害である[10]に記載の医薬;
[14]末梢動脈の血流障害が、慢性動脈閉塞症または肺高血圧症に伴う血流障害である[13]に記載の医薬;
[15]皮膚の血流障害が、褥創に伴う血流障害である[13]に記載の医薬;
[16]脳の血流障害が、脳梗塞後の再発抑制に伴う血流障害である[13]に記載の医薬等に関する。
本化合物、またはそのシクロデキストリン包接化合物は、ヒトやラットの血小板凝集に対する非常に強力な抑制作用を有し、また、ラットに静脈内投与した場合の馬尾血流量試験において優れた血流量増加作用を有することから、血流障害の予防または治療剤として有用である。
また、本化合物、またはそのシクロデキストリン包接化合物は、そのPG骨格15位の水酸基に隣接する16位の炭素原子にアルキル基(特にメチル基)が結合するため、PGデヒドロゲナーゼによる酸化的な代謝を受けにくく、代謝的な安定性が高い。そのため、天然型のPG化合物に比べて、血中半減期が長く、有効血中濃度を長く維持することができる。また、代謝的な安定性の向上により、本化合物を含有する医薬のバイオアベイラビリティーは著しく改善され得る。
以下、式(1)中の各記号の定義について詳述する。
本明細書における化合物の命名は、原則としてIUPAC命名法を用いるが、PG骨格の位置を示すために、適宜、プロスタン酸骨格に基づくナンバリングの数字を用いて表記する場合がある。本明細書において、アルキル基の水素原子が置換された基を、置換アルキル基とも記す。他の基においても同様に記す。また、「低級」とは炭素数が1〜6であることをいい、1〜4が好ましい。
「アルキル基」は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキル基は、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基が特に好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、またはヘキシル基等が挙げられる。
「アルケニル基」は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルケニル基は、炭素数2〜6のアルケニル基が好ましい。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、または4−ヘキセニル基等が挙げられる。
「アルキニル基」は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルキニル基は、炭素数2〜6のアルキニル基が好ましい。アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、3−ブチニル基、3−ペンチニル基、または4−ヘキシニル基等が挙げられる。
「アルコキシ基」とは、アルキル基の結合末端に酸素原子が結合した基をいう。アルコキシ基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。アルコキシ基は、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、またはブトキシ基等が挙げられる。
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子をいう。
「アリール基」とは、芳香族炭化水素基をいい、炭素数6〜18のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基が特に好ましい。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等を例示でき、フェニル基が特に好ましい。
「アルアルキル基」とは、アリール基が結合したアルキル基をいう。アルアルキル基におけるアリール基としては、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。またアルアルキル基におけるアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。アルアルキル基の例としては、ベンジル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、またはフェニルエチル基等が挙げられる。
「シクロアルキル基」とは、3員環以上の環状のアルキル基をいい、3〜6員環のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
「アルキルスルホニル基」とは、アルキル基の結合末端に−S(O)−が結合した一価の基をいう。アルキルスルホニル基におけるアルキル基の炭素数は1〜6が好ましい。アルキルスルホニル基の例としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、プロパンスルホニル基、ブタンスルホニル基、ペンタンスルホニル基、ヘキサンスルホニル基等が挙げられる。
「アリールスルホニル基」とは、アリール基の結合末端に−S(O)−が結合した一価の基をいう。アリールスルホニル基におけるアリール基としては炭素数が6〜10である基が好ましく、前記のアリール基と同様の基が好ましい。アリールスルホニル基の例としては、ベンゼンスルホニル基、1−ナフタレンスルホニル基、2−ナフタレンスルホニル基等の炭素数が6〜10であるアリールスルホニル基が挙げられ、ベンゼンスルホニル基が好ましい。
「アシル基」とは、カルボン酸のカルボキシ基から水酸基を除いてできる一価の基をいう。カルボン酸としては、炭素数1〜10のカルボン酸が好ましく、ギ酸、飽和脂肪族カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸等のアルキルカルボン酸等。)、不飽和脂肪族カルボン酸(例えば、アクリル酸等のアルケニルカルボン酸等)、炭素環カルボン酸、複素環カルボン酸等が挙げられる。
炭素環カルボン酸の例としては、飽和環状脂肪族カルボン酸(例、シクロプロピルカルボン酸、シクロペンチルカルボン酸、シクロヘキシルカルボン酸等のシクロアルキルカルボン酸)、不飽和環状脂肪族カルボン酸(例、シクロヘキセニルカルボン酸等のシクロアルケニルカルボン酸)または芳香族カルボン酸が挙げられる。芳香族カルボン酸とは、カルボキシ基に前記アリール基が結合した化合物であり、例えば、安息香酸、ナフチルカルボン酸等のアリールカルボン酸が挙げられる。複素環カルボン酸とは、カルボキシ基に複素環基が結合した化合物をいう。
「複素環基」とは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、3〜10員環の1価の飽和又は不飽和の複素環基が好ましい。3〜10員環の飽和又は不飽和の複素環の例としては、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、ピリジン、ピペリジン、ピラジン、ピペラジン、ピリミジン、ピリダジン、チアゾール、チアゾリン、チアゾリジン、イソチアゾール、イソチアゾリン、イソチアゾリジン、オキサゾール、オキサゾリン、オキサゾリジン、イソオキサゾール、イソオキサゾリン、イソオキサゾリジン、モルホリン、アゼパン、アゼピン等が挙げられる。
本明細書において基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換されることをハロゲン化という。たとえば、ハロゲン化アルコキシ基とは、アルコキシ基の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基をいう。他の基においても同様である。ハロゲン原子としてはフッ素原子または塩素原子が好ましい。
ハロゲン化された基の構造中にハロゲン化アルキル基がある場合の例としては、ハロゲン化された低級アルキル基が好ましく、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、クロロメチル基、またはブロモメチル基等が挙げられる。
「アルコキシアルキル基」とは、アルキル基中の水素原子の1個がアルコキシ基で置換されたアルキル基をいう。アルコキシアルキル基におけるアルコキシ基は、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。アルコキシアルキル基におけるアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。アルコキシアルキル基の炭素数は2〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。アルコキシアルキル基の例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基等が挙げられる。
「ヒドロキシアルキル基」とは、アルキル基中の水素原子の1個以上が水酸基で置換された基をいう。ヒドロキシアルキル基の炭素数は2〜6が好ましい。ヒドロキシアルキル基の水酸基は1個が好ましい。ヒドロキシアルキル基の例としては、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、または4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
「アルコキシカルボニル基」とは、カルボニル基に前記アルコキシ基が結合した基をいう。アルコキシカルボニル基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基がカルボニル基に結合したアルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、アミロキシカルボニル基等が挙げられる。
置換基を有するアルキル基とは、アルキル基の水素原子の1個以上が置換基で置換された基をいう。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、ハロゲン化アシルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、ハロゲン化アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ハロゲン化アルキル基が置換したアリールスルホニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アミノ基、置換基を有するアミノ基、アリール基、複素環基等が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはアルコキシ基である。
置換基を有するシクロアルキル基とは、シクロアルキル基中の水素原子の1個以上が置換基で置換された基をいう。置換基としては、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン化アシルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、ハロゲン化アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ハロゲン化アリールスルホニルオキシ基、アルキルで置換されたアリールスルホニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられ、好ましくは、アルキル基、ハロゲン原子、またはアルコキシ基である。
置換基を有するシクロアルキル基の例としては、2−メチルシクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、2−フルオロシクロプロピル基、2−メチルシクロブチル基、2,2−ジメチルシクロブチル基、2-メチルシクロペンチル基、2−メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
置換基を有するアリール基とは、アリール基の水素原子の1個以上が置換基で置換された基をいう。置換基を有するアリール基中の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、炭素数1〜3のアルキレンジオキシ基(例、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基等)等が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基である。
置換基を有するアリール基の例としては、モノハロフェニル基(例、1−、2−または3−クロロフェニル基、1−、2−または3−フルオロフェニル基、1−、2−または3−ブロモフェニル基等)、(ハロゲン化アルキル)フェニル基(例、1−、2−または3−トリフルオロメチルフェニル基等)、またはアルコキシフェニル基(例、1−、2−または3−メトキシフェニル基、1−、2−または3−エトキシフェニル基等)が挙げられる。
置換基を有するアルキルスルホニル基とは、アルキルスルホニル基の水素原子の1個以上が置換基で置換された基をいう。置換基を有するアルキルスルホニル基中の置換基としては、ハロゲン原子が好ましい。置換基を有するアルキルスルホニル基の例としては、トリフルオロメタンスルホニル基、ペンタフルオロエタンスルホニル基等が挙げられる。
置換基を有するアリールスルホニル基とは、アリールスルホニル基中の水素原子の1個以上が置換基で置換された基をいう。置換基を有するアリールスルホニル基中の置換基としては、好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基である。置換基を有するアリールスルホニル基の例としては、モノハロゲン化フェニルスルホニル基(例えば、1−、2−または3−クロロベンゼンスルホニル基、1−、2−または3−フルオロベンゼンスルホニル基、1−、2−または3−ブロモベンゼンスルホニル基等)、(アルキル)フェニルスルホニル基(例えば、p−トルエンスルホニル基等)、(ハロゲン化アルキル)フェニルスルホニル基(例えば、トリフルオロメチルベンゼンスルホニル基等)、または(アルコキシ)フェニル基(例えば、メトキシベンゼンスルホニル基、エトキシベンゼンスルホニル基等)が挙げられる。
置換基を有するアミノ基とは、アミノ基の水素原子の1個または2個が置換された基を意味し、アミノ基の水素原子の2個が置換基で置換されている場合の該置換基は、同一であっても異なっていてもよい。置換基を有するアミノ基における置換基としては、例えば、「グリーン’ズ/プロテクティブ/グループス/イン/オーガニック/シンセシス 第4版」(P.G.M.Wuts,T.W.Greene著、J.Wiley&Sons、2007年)に記載のアミノ基の保護基等が挙げられ、具体的には、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜10のアリール基、1価の複素環基、炭素数7〜14のアルアルキル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、アシル基、トリオルガノシリル基等の基が挙げられる。前記置換基が水素原子を含む基である場合、該水素原子の1個以上がさらに置換基(以下、置換基2と記す)で置換されていてもよい。置換基2としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
置換基を有するアミノ基の置換基の例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、メトキシ基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、tert−ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、フタロイル基、アリルオキシカルボニル基、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、o−ニトロベンゼンスルホニル基、トリメチルシリルエトキシカルボニル基、ジメチルカルバモイル基等が挙げられる。
本化合物において、置換基が、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基およびハロゲン化アルコキシ基から選ばれる基である場合、または部分構造として該選ばれる基を有する基である場合、該選ばれる基は低級の基が好ましい。
化合物(1)において、α鎖におけるRは、−CH−CZ(COX)または−CH=CZ(COX)である。すなわち、化合物(1)は、それぞれ下式(α1)で表される化合物、または、下式(α2)で表される化合物である。
化合物(α1)におけるZ、Z2は、いずれも水素原子、またはいずれもフッ素原子が好ましい。
化合物(α2)におけるCH=CZ(COX)部分の二重結合に結合する基の配置はEであってもZであってもよく、Zが水素原子の場合はEが好ましく、Zがフッ素原子の場合はZが好ましい。
さらに化合物(α1)としては化合物(α1−1)または化合物(α1−2)が、化合物(α2)としては化合物(α2−1)または(α2−2)が好ましい。
前記式中、Xは、ORまたはNRを表し、XはORが好ましい。ORにおけるRは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。置換基としては、水酸基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、置換基を有するアミノ基、アリール基、複素環基等が挙げられ、アシル基及び複素環基が特に好ましい。
XがORである場合のRが、炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基である化合物は、COX部分(すなわちCO部分)がカルボン酸のプロドラッグとなり得る構造の化合物からも、導かれうる。
としては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ベンジル基、ピバロイルメチル基、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−(ジメチルアミノ)エチル基、2−(モルホリノ)エチル基、4−ピリジルメチル基、ピバロイルオキシメチル基、1−{[(1−シクロヘキシルオキシ)カルボニル]オキシ}エチル基等が挙げられ、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基等。)、ピバロイルメチル基、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチル基が好ましく、水素原子、メチル基またはエチル基が特に好ましい。
XがNRである場合のRは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表す。炭素数1〜6のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。Rとしては、水素原子、メチル基、エチル基等が好ましい。
は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、置換基を有する炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基または置換基を有する炭素数6〜10のアリールスルホニル基を表す。
が炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基である場合の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の低級アルキル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基等のヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
が炭素数1〜6のアルキルスルホニル基または置換基を有する炭素数1〜6のアルキルスルホニル基である場合の例としては、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等が挙げられ、炭素数6〜10のアリールスルホニル基または置換基を有する炭素数6〜10のアリールスルホニル基としてはフェニルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基等が挙げられる。
としては、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等が好ましい。
A−Bと表現した部分の構造は、該A−B構造が炭素−炭素単結合(すなわち−CH−CH−)または炭素−炭素二重結合(すなわち−CH=CH−)であることを表す。A−B部分の構造が炭素−炭素二重結合の場合、該二重結合に結合する基の配置はEであるのが好ましい。
波線で結合する水酸基は、該水酸基の結合の向きが、α−配置(紙面の下向きの結合)、β−配置(紙面の上向きの結合)またはα−配置及びβ−配置の混合配置であることを表す。水酸基の配置は、α−配置、または、α−配置とβ-配置の混合配置が好ましく、α−配置が特に好ましい。
Yは、CH、SまたはOを表し、CHまたはSが好ましく、CHが特に好ましい。
(CHと表した構造において、nはメチレン単位の数を示す。nが0とは、メチレン単位が存在しないことをいい、その場合、RとRが結合する炭素原子と、三重結合の炭素原子とは直接結合することをいう。nは、1または2が好ましく、1が特に好ましい。
、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜3のアルキル基を表す。R1、Rの一方が水素原子であり、他方が炭素数1〜2のアルキル基(好ましくはメチル基)、または、RおよびRが炭素数1〜2のアルキル基(好ましくはメチル基)が好ましく、Rが水素原子、Rが炭素数1〜2のアルキル基であるのがより好ましく、R1が水素原子、R2がメチル基であるのが特に好ましい。
は、炭素数2〜3のアルキル基または炭素数3〜5のシクロアルキル基を表し、炭素数3〜5のシクロアルキル基が好ましい。Rの具体例としては、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等が挙げられ、エチル基、シクロプロピル基またはシクロブチル基が好ましく、シクロプロピル基が特に好ましい。
本化合物(1)において、ω鎖が以下の構造を有する化合物が好ましい。
[化合物(ω−1)]
式(ω−1)中の記号は、式(1)における意味と同じ意味を示す。
YはCHまたはS、Rは水素原子、Rは炭素数1〜2のアルキル基、Rは炭素数2〜3のアルキル基または炭素数3〜5のシクロアルキル基であり、XはOR、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。さらに置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基における置換基は、水酸基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、置換基を有するアミノ基、アリール基および複素環基から選ばれる基が好ましい。
本化合物(1)としては、薬理活性や物性の観点より、α鎖とω鎖の構造が以下の構造である化合物が好ましい。
[化合物(ω−10)]
式(ω−10)中の記号は、式(1)における意味と同じ意味を示す。R30は炭素数2〜3のアルキル基または炭素数3〜5のシクロアルキル基を示す。
1は水素原子、Rは炭素数1〜2のアルキル基、XはORであり、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
[化合物(ω−11)]
式(ω−11)中の記号は、式(1)における意味と同じ意味を示す。R30は炭素数2〜3のアルキル基または炭素数3〜5のシクロアルキル基を示す。
1は水素原子、Rは炭素数1〜2のアルキル基、XはORであり、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。Z、Zは、いずれもが水素原子、または、いずれもがフッ素原子が好ましい。
以下に、好適な化合物(1)を示す。
[化合物(1)−A]
式(1)−Aにおいて、波線で結合した水酸基の配置がα−配置、β−配置、またはα−配置とβ−配置の混合配置であり、YがCH、SまたはOであり、Rが好ましくは水素原子であり、Rが好ましくは炭素数1〜2のアルキル基であり、Rが炭素数2〜3のアルキル基または炭素数3〜5のシクロアルキル基であり、Rが−CH−CZ(COX)または−CH=CZ(COX)であり、Z、Z2がそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、Xが好ましくはORであり、Rが好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または水酸基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、置換基を有するアミノ基、アリール基および複素環基からなる群から選択される置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基である。Rが−CH=CZ(COX)である場合は、二重結合に結合する基の配置はEであってもZであってもよく、Zが水素原子の場合はEが好ましく、Zがフッ素原子の場合はZが好ましい。
[化合物(1)−B]
式(1)−Bにおいて、波線で結合した水酸基の配置がα−配置、β−配置、またはα−配置とβ−配置の混合配置であり、Yが好ましくはCHまたはSであり、R1が好ましくは水素原子であり、Rが好ましくは炭素数1〜2のアルキル基であり、Rが好ましくは炭素数2〜3のアルキル基または炭素数3〜5のシクロアルキル基であり、Rが−CH−CZ(COX)または−CH=CZ(COX)であり、Z、Z2がそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、Xが好ましくはORであり、Rが好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または水酸基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、置換基を有するアミノ基、アリール基および複素環基からなる群から選択される置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基である。Rが−CH=CZ(COX)である場合は、二重結合に結合する基の配置はEであってもZであってもよく、Zが水素原子の場合はEが好ましく、Zがフッ素原子の場合はZが好ましい。
[化合物(1)−C]
式(1)−Cにおいて、波線で結合した水酸基の配置がα−配置、β−配置、またはα−配置とβ−配置の混合配置であり、R1が好ましくは水素原子であり、Rが好ましくは炭素数1〜2のアルキル基であり、Rが好ましくは炭素数2〜3のアルキル基であり、Zが水素原子またはフッ素原子であり、Xが好ましくはORであり、Rが好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。
[化合物(1)−D]
式(1)−Dにおいて、波線で結合した水酸基の配置がα−配置、β−配置、またはα−配置とβ−配置の混合配置であり、Rが好ましくは水素原子であり、Rが好ましくは炭素数1〜2のアルキル基であり、Rが好ましくは炭素数3〜5のシクロアルキル基であり、Zが水素原子またはフッ素原子であり、Xが好ましくはORであり、Rが好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。
[化合物(1)−E]
式(1)−Eにおいて、波線で結合した水酸基の配置がα−配置、β−配置、またはα−配置とβ−配置の混合配置であり、Rが好ましくは水素原子であり、Rが好ましくは炭素数1〜2のアルキル基であり、Rが好ましくは炭素数2〜3のアルキル基であり、Z、Zがそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、Xが好ましくはORであり、Rが好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。
[化合物(1)−F]
式(1)−Fにおいて、波線で結合した水酸基の配置がα−配置、β−配置、またはα−配置とβ−配置の混合配置であり、R1が好ましくは水素原子であり、Rが好ましくは炭素数1〜2のアルキル基であり、Rが好ましくは炭素数3〜5のシクロアルキル基であり、Z、Z2がそれぞれ独立に水素原子またはフッ素原子であり、Xが好ましくはORであり、Rが好ましくは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。
特に好ましい化合物(1)は、以下の例が挙げられる。
4−((2−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3RS,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)エチル)チオ)ブタン酸メチルエステル〔化合物(1)−1〕、
(2E)−4−((2−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3RS,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)エチル)チオ)ブタ−2−エン酸メチルエステル〔化合物(1)−2〕、
((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3RS,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル〔化合物(1)−3〕、
7−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタン酸(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチルエステル〔化合物(1)−4〕、
7−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタン酸3,3−ジメチル−2−オキソブチルエステル〔化合物(1)−5〕、
7−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタン酸〔化合物(1)−6〕、
(2E)−7−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタ−2−エン酸〔化合物(1)−7〕、
2,2−ジフルオロ−7−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタン酸〔化合物(1)−8〕、
7−((1R,2R,3R)−2−((1E,3S,4S)−7−シクロプロピル−3−ヒドロキシ−4−メチルヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−ヒドロキシ−5−オキソシクロペンチル)ヘプタン酸〔化合物(1)−9〕、または、
(2E)−7−((1R,2R,3R)−2−((1E,3S,4S)−7−シクロプロピル−3−ヒドロキシ−4−メチルヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−ヒドロキシ−5−オキソシクロペンチル)ヘプタ−2−エン酸〔化合物(1)−10〕。
本化合物は、化合物(1)の薬学的に許容できる塩であってもよい。該塩としては、カルボン酸部分と塩基性物質(無毒無機塩基または無毒有機塩基)との塩であり、カルボン酸部分が−COOとなり、カルボン酸の水素原子が陽イオンである構造を有する。
薬学的に許容できる塩は、無毒の無機塩基由来の塩または無毒の有機塩基由来の塩が挙げられ、無毒の無機塩基由来の塩が好ましい。
無機塩由来の塩基の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩等の他、リチウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩等も挙げられ、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩およびカリウム塩が特に好ましい。
有機塩基由来の塩の例としては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、これらの置換アミン(天然に存在する置換アミンを含む)、環状アミン、塩基性アミノ酸、および塩基性イオン交換樹脂の塩等が挙げられる。有機アミンおよびアミノ酸の例としては、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、エチレンジアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、モルホリン、N−エチル−モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、ベタイン、カフェイン、コリン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラブアミン、メチルグルカミン、リジン、アルギニン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン等が挙げられる。
化合物(1)またはその薬学的に許容できる塩は、水和物または溶媒和物の形態をとっていてもよい。
化合物(1)は、化合物(1)の製薬学的に許容されるプロドラッグから導かれうる。製薬学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で水酸基、またはカルボキシ基等に変換されうる基、を有する化合物である。プロドラッグを形成する該基としては、例えば、Prog. Med., 1985, vol.5, p.2157-2161や、「医薬品の開発」(廣川書店、1990年), 第7巻 分子設計, p.163-198に記載の基が挙げられる。
化合物(1)のプロドラッグとしては、生体内において酵素や胃酸等による反応により化合物に変換される化合物が好ましい。
該化合物としては、つぎの化合物(1−1)〜化合物(1−4)が挙げられる。
化合物(1)中の水酸基が、アシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(1−1)。具体的には、化合物(1)中の水酸基が、アセチル化、プロパノイル化、ブタノイル化、ピバロイル化、オレイル化、パルミトイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物。
化合物(1)のカルボキシ基が、エステル化またはアミド化された化合物(1−2)。具体的には、化合物(1)のカルボキシ基がフェニルエステル化、フタリジルエステル化された化合物等。
化合物(1)のカルボキシ基が、ヒドロキシメチル基と置き換わった化合物(1−3)。
化合物(1)の5員環部分のカルボニル基がエノールエステル化された化合物(1−4)。
これらの化合物(1−1)〜化合物(1−4)は、公知の方法によって製造することができる。また化合物(1−1)〜化合物(1−4)は、水和物および非水和物のいずれであってもよい。
化合物(1)またはその薬学的に許容できる塩は、シクロデキストリンの包接化合物としてもよい。シクロデキストリンとしては、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、およびこれらから選ばれる2種以上の混合物が用いられる。シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリンまたはβ−シクロデキストリンが好ましく、α−シクロデキストリンが特に好ましい。
シクロデキストリン包接化合物の製造方法としては、一般に乳化法、飽和水溶液法、混練法、および混合粉砕法等として広く知られている方法等を用いることができる。具体的には、化合物(1)またはその薬学的に許容できる塩、およびシクロデキストリンを用いて、特公昭50−3362号公報、特公昭2−31404号公報、または特公昭61−52146号公報に記載の方法により、製造することができる。化合物(1)をシクロデキストリン包接化合物にすることにより、安定性や水溶性等の性質が増大し、医薬品として好ましい性質を賦与することができる。
(本化合物の製造方法)
本化合物は、一般的なPG合成法により合成できる。該合成ルートの概念は下式に示される。
例えば、−A−B−部分が二重結合の化合物は、コーリーラクトンにα鎖を導入した化合物を出発原料として、ホーナー・ワズワース・エモンズ反応により導入したω鎖(下記式中のWがHである化合物)中のα,β−不飽和カルボニル部位の15位カルボニル基を還元した後、所望によりα鎖に二重結合を導入し、9位を酸化し、水酸基の保護基を脱保護することにより合成することができる。
2位にフッ素を有するPG誘導体は、例えば、ジフルオロユニットを有するα鎖をコーリーラクトンに導入して出発原料を合成し、上記と同様の反応を経由して合成することができる。
−A−B−部分が単結合である化合物は、ホーナー・ワズワース・エモンズ反応により導入したω鎖(下記式中のWがHである)中のα,β−不飽和カルボニル部位をストライカー試薬([(PhP)CuH])や亜ジチオン酸ナトリウム等の還元剤を用いて1,4−還元することにより、合成することができる。
(式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基の保護基を示し、Wは、水素原子または臭素原子を示し、その他の各記号は前記と同義である。)
〜Rにおける水酸基の保護基としては、例えば、「グリーン’ズ/プロテクティブ/グループス/イン/オーガニック/シンセシス 第4版」(P.G.M.Wuts,T.W.Greene著、J.Wiley&Sons、2007年), p.16-430等に記載の水酸基の保護基を用いることができる。具体的には、アシル基、トリオルガノシリル基、アルコキシアルキル基、環状エーテル構造を有する1価の基等が挙げられる。アシル基としては、アセチル基、ベンゾイル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基等が好ましい。トリオルガノシリル基としては、アルキル基、アリール基、アルアルキル基またはアルコキシ基がケイ素原子に3個結合した基が好ましく、具体的には、例えば、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、またはトリイソプロピルシリル基等が好ましい。アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、ベンジロキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、2−メトキシエトキシメチル基、1−エトキシエチル基、1−メチル−1−メトキシエチル基等が好ましい。環状エーテル構造を有する1価基としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が好ましい。アセチル基、ベンゾイル基、テトラヒドロピラニル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基等が特に好ましい。
当該水酸基の保護基は、常法により容易に脱保護できる。具体的には、例えば、「グリーン’ズ/プロテクティブ/グループス/イン/オーガニック/シンセシス 第4版」(P.G.M.Wuts,T.W.Greene著、J.Wiley&Sons、2007年), p.16-430 等に記載の方法により脱保護することができる。
また、α鎖の5位(Y)がヘテロ原子であるPG誘導体は、下記のように、ω鎖を構築したコーリーラクトンを出発原料として、まずラクトン部分を還元してジオールとし、α鎖を導入した後に9位を酸化し、他の水酸基の保護基を脱保護することにより合成することができる。
(式中の各記号は前記と同義を示す。)
化合物(1)の製造方法の代表的な例は下式で示すことができる。
下式において、以下の略号を使用する。
Me:メチル
Ac:アセチル
THP:テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル
前記式における出発物質は特公昭60−36422公報等に記載のアルデヒド(A−1)であり、アルデヒド(A−1)とホスホナート(A−2)からホーナー・ワズワース・エモンズ反応によりα,β−不飽和ケトン(A−3)が得られる。15位のカルボニル基を還元した後、脱保護しジオール(A−4)が得られる。水酸基を保護した後、加水分解してカルボン酸(A−5)が得られる。5員環上の保護されていない水酸基を酸化し、脱保護して化合物(A−6)(化合物(1)−9)を合成することができる。
また、化合物(A−4)の2個の水酸基を保護した後、脱アセチル化してアルコール(A−7)が得られる。エステルのα位をフェニルセレノ化した後、過酸化水素水で脱離反応させた後、エステル加水分解してα,β−不飽和カルボン酸(A−8)が得られる。5員環上の保護されていない水酸基を酸化し、脱保護して化合物(A−9)(化合物(1)−10)が得られる。
化合物(A−6)や化合物(A−9)のカルボキシ基をエステル化するには、通常の方法、例えば、「新実験化学講座14有機化合物の合成と反応(II)」(丸善)等に記載の方法等を使用することができる。例えば、アルコール類やフェノール類との縮合によるエステル化、O−アルキル化剤によるエステル化、アルケン類およびアルキン類を用いるエステル化、硫酸ジアルキル類やハロゲン化炭化水素類によるエステル化等の方法が用いられる。アシルアミド類やスルホンアミド類に変換するには、例えば、Tithereleyらの方法(J. Chem. Soc., 1904, vol.85, p.1673)、Lynchらの方法(Can. J. Chem., 1972, vol.50, p.2143)、Davidsonらの方法(J. Am. Chem. Soc., 1958, vol.80, p.376)等を採用できる。また、カルボン酸を酸ハライドや活性エステルに変換した後に、直接アミド類やスルホンアミド類と縮合反応を行うか、あるいはアミン類と反応させ、一旦アミド類に変換した後に、アシル化またはスルホニル化する方法等が用いられる。
本化合物は、その構造中に不斉炭素を有するため、各種の立体異性体、光学異性体が存在するが、本発明においては、これらすべての立体異性体、光学異性体、およびそれらの混合物を包含する。
本化合物は、生体内において代謝を受けにくく安定性が向上した誘導体である。化合物(1)は、16位の炭素原子にアルキル基を有するがゆえに、PG骨格の15位の水酸基がPGデヒドロゲナーゼによる代謝を受けにくく、代謝的な安定性が高い。このため、天然型のPGに比べて、血中半減期が長く、有効血中濃度を長く維持することができる。また、代謝的な安定性が向上していることにより、薬物のバイオアベイラビリティーを改善することができる。
本化合物は、ω鎖にアルキニル基を有することにより、血小板凝集抑制活性等の作用が非常に強力である。特にアルキニル基の末端にシクロアルキル基を有する誘導体は、安定で強力な活性を発揮する。
本化合物およびそのシクロデキストリン包接化合物は、医薬として有用であり、循環器系疾患、中枢神経系疾患、炎症性疾患、疼痛等の薬剤として優れた効果を示し得る。具体的には、循環器系疾患としては、末梢循環障害、バージャー病、レイノー症、狭心症、心筋梗塞、心不全、肺高血圧症、肺塞栓、糖尿病、脳梗塞、脳血栓、難聴、メニエル病等が含まれる。中枢神経系疾患としては、不眠、不安症、鬱病、統合失調症、痴呆症等が含まれる。炎症性疾患としては、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、胆のう炎、胆管炎、急性膵炎、慢性膵炎、慢性腹膜炎、急性腹膜炎、膀胱炎、急性腎炎、慢性腎炎、脳炎、多発性神経炎、髄膜炎、脊髄炎、関節炎、リュウマチ性関節炎、気管支炎、肺炎、肋膜炎、静脈炎、心膜炎、鼻炎、咽頭炎、内耳炎、外耳炎等が含まれる。
本化合物またはそのシクロデキストリン包接化合物を含む医薬(以下、「本発明の医薬」と記す)は、特に血流障害の予防または治療のための医薬として有用である。本発明の医薬は、本化合物またはそのシクロデキストリン包接化合物を含み、任意に、薬剤として許容される担体、および、他の治療成分も含む医薬であってもよい。
本発明の医薬を前記疾患の予防・治療剤として患者に投与する場合、1日の投与量は患者の年齢、体重、病態および重症度等により異なるが、化合物(1)として、通常は0.00001mgから1mg、好ましくは0.0001mgから0.3mgを1乃至数回にわけて投与することが望ましい。例えば、経口投与では0.0001mgから0.3mg、特に0.001mgから0.1mgが好ましい。一方、静脈内投与では0.00001mgから0.1mg、特に0.0001mgから0.03mgが好ましい。疾患や病態によって適宜増減することができ、また注射剤の場合は点滴持続投与を行うことが望ましい場合もある。
本発明の医薬は、経口的投与、非経口的投与(例えば血管(静脈、動脈)内投与、直腸内投与、関節腔内投与等)によって生体内に投与することができる。投与形態としては、例えば、錠剤(口腔内崩壊錠、舌下錠を含む)、フィルム剤(口腔内フィルム剤を含む)、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤等の経口投与形態、溶液、乳剤、懸濁剤等の液状の注射剤(例:皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤)、坐剤(例:直腸坐剤、膣坐剤)、点眼剤、点鼻剤、外用剤(例:貼付剤等の経皮的製剤、軟膏剤、クリーム剤)、経肺剤(吸入剤等)の非経口投与形態が例示される。また、これらの製剤は、速放製剤または徐放性製剤等の放出制御製剤であってもよい。
前記投与形態の製剤は、本発明の医薬中に、通常の担体、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、結合剤、安定化剤等の製剤上必要な添加剤を配合し、常法により製剤化することにより製造できる。例えば、製剤が錠剤、顆粒剤、散剤等の場合、固形製剤を製造するのに好適な任意の製薬担体、例えば、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、結合剤等を用いて製造することができる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、異性化乳糖、還元乳糖、乳糖結晶、蔗糖、D−マンニトール、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、パラチノース、トレハロース、ソルビトール、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギデンプン、コメデンプン、結晶セルロース、デキストラン類(例えば、デキストラン、デキストラン40、デキストラン70等)、プルラン、デキストリン、タルク、無水ケイ酸、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、蔗糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、ミツロウ等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。
結合剤としては、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、部分アルファ化デンプン、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、プルラン、アラビアゴム、デキストリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ゼラチン等が挙げられる。
また、前記投与形態の製剤には、必要に応じて不活性希釈剤、潤滑剤、安定化剤、溶解補助剤、矯味剤等を加えてもよい。不活性希釈剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、コロイドシリカ、タルク等が挙げられる。安定化剤としては、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、グリシン、L−アスパラギン酸、酢酸トコフェロール、β−シクロデキストリン、フマル酸等が挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられる。矯味剤としては、例えば、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、グルタミン酸ナトリウム、5’−イノシン酸ナトリウム、5’−グアニル酸ナトリウム等が挙げられる。
これらの錠剤は、コーティングされていなくてもよく、またはこれらは、胃腸管における崩壊および吸収を遅らせ、これによってより長時間にわたって持続作用を与えるために、公知技術によってコーティングされてもよい。例えば、時間遅延材料、例えばグリセリルモノステアレート、またはグリセリルジステアレートが用いられてもよい。
本発明の医薬は、不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、またはカオリンと混合されてなるハードゼラチンカプセルとして提供されてもよい。また、本発明の医薬は、水混和性溶媒、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびエタノール等のアルコール類や油媒質と混合されてなるソフトゼラチンカプセルとして提供されてもよい。
油媒質としては、例えば、脂肪酸エステル、液体パラフィン、ピーナッツ油やオリーブ油等の植物油等が挙げられる。脂肪酸エステルとは、脂肪酸のカルボキシ基がアルコールとエステル結合した化合物であり、具体的には、飽和または不飽和の分岐鎖を有していてもよいグリセリドや脂肪酸と一価アルコールのエステル化合物からなる脂肪酸エステル等が挙げられる。好ましい脂肪酸としては、炭素数6〜24の炭素原子を有する中鎖または高鎖脂肪酸であり、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、およびアラキドン酸等が挙げられる。また、好ましいアルコールとしては、炭素数1〜6の一価アルコール類や、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールであるポリオール等が挙げられる。好ましい脂肪酸エステルとしては、飽和または不飽和の分岐を有していてもよいグリセリド、グリセリン脂肪酸エステルやプロピレングリコール脂肪酸エステルが挙げられる。また、2種以上のグリセリドを混合物として用いることもできる。グリセリドの混合物としては、カプリル酸トリグリセリドおよびカプリン酸トリグリセリドの混合物、ひまし油、トウモロコシ油、オリーブ油、ゴマ油、菜種油、サラダ油、綿実油、ツバキ油、ピーナツ油、パーム油、ひまわり油等の植物油が挙げられる。また、脂肪酸と一価アルコールのエステル化合物からなる脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル、オレイン酸エチル等が挙げられる。
カプセルの皮膜の主要成分としては、特に限定されないが、例えば、ゼラチン、カラギーナン、ペクチン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース等をはじめとする種々の公知の成分が挙げられる。
軟カプセル剤の皮膜の製造に用いられる可塑剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコールや、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、トウモロコシデンプン由来糖アルコール液、還元麦芽糖水アメ等の糖アルコール等が好ましい。これらの可塑剤は、2種以上を組合せて用いてもよい。
また、製剤がシロップや溶液、乳剤、懸濁剤等の液剤の場合、例えば、安定化剤、懸濁化剤、矯味剤、芳香剤、無痛化剤等を適宜に選択して製造することができる。注射剤を製造するには、有効成分を塩酸、水酸化ナトリウム、乳酸ナトリウム、酢酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のpH調整剤;塩化ナトリウム、ブドウ糖、D−ソルビトール、グリセリン、D−マンニトール等の等張化剤;ステアリルエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の懸濁化剤;ベンジルアルコール等の無痛化剤と共に注射用蒸留水に溶解し、無菌的に調製することができる。また、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油、エタノール、ポリソルベート80等の不活性な非水性の希釈剤を用いて調製してもよい。さらにマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチン等を加えて、真空凍結乾燥し、用時溶解用注射剤としてもよい。また、安定化および病巣到達性を改善するため公知の方法により、リポソーム製剤を調製して注射剤として用いることもできる。さらに、微細な脂肪乳剤粒子中に本化合物を溶解した、いわゆるリポ化製剤(脂肪乳剤)とすることもでき、脂肪酸グリセリド等の油成分;卵黄レシチン、大豆レシチン等のリン脂質;および必要に応じて乳化補助剤、安定化剤、高分子物質、等張化剤等の添加剤を混合して製造することができる。
また、カカオ脂、脂肪酸のトリグリセリド、脂肪酸のジグリセリド、脂肪酸のモノグリセリド、ポリエチレングリコール等の坐剤用基剤を用いて直腸内投与製剤を調製してもよい。さらにポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、グリセロゼラチン等の水溶性基剤、白色ワセリン、ハードファット、パラフィン、流動パラフィン、プラスチベース、ラノリン、精製ラノリン等の油性基剤等を用いて適当な粘度に調製し直腸内注入軟膏を調製することもできる。
本発明の医薬は、局所的に皮膚または粘膜に、すなわち経皮または経粘膜投与することができる。この目的のための通常の剤型として、ゲル、ハイドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散布剤、ドレシング剤、泡製剤、フィルム剤、スキンパッチ、オブラート、インプラント、スポンジ、繊維、バンデージ、マイクロエマルジョン等が挙げられる。通常の担体としては、アルコール、水、鉱物油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
また、等張、pH調節、無菌生理食塩水の微粉末懸濁液または溶液の点眼剤の形態で、眼または耳に直接投与することができる。眼および耳投与に適した他の剤型としては、軟膏、生体分解性および非生体分解性インプラント、オブラート、レンズ、リポソーム等の微粒子等が挙げられる。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等のセルロースポリマー、または例えば、ゲランガム等の複合多糖類等のポリマーを、塩化ベンザルコニウム等の防腐剤と共に混合することができる。
経肺的投与製剤を製造するには、本発明の医薬を、通常の噴霧剤に溶解または分散して耐圧容器に充填する。更に、公知の方法でリポソーム製剤として経肺的に投与することもできる。
前述の投与形態のいずれかにおいて使用するため、その溶解度、溶解速度、バイオアベイラビリティーおよび/または安定性を改善するために、本発明の医薬は、さらに、シクロデキストリンおよびその適切な誘導体またはポリエチレングリコール含有ポリマー等の可溶性高分子単位と混合することができる。例えば、これらの混合物、または複合体等は、一般的に大半の剤型および投与経路に有用であることが確認されている。包接および非包接複合体のいずれも使用することができる。薬物との直接の複合体化の別法として、シクロデキストリンを補助的添加剤、すなわち、担体、賦形剤または可溶化剤として用いることもできる。これらの目的のために、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等が一般的に使用される。
また、本化合物は、一般式(1)で表される化合物の薬学的に許容できる塩であってもよく、当該塩としては、前記したものが挙げられる。
本発明の医薬に含ませうる他の治療成分(以下、単に「他の薬剤」ともいう。)としては、本化合物の血流障害(例えば、脊柱管狭窄症等)等に対する予防および/または治療効果を補完および/または増強させる薬剤、本化合物の薬物動態や吸収を向上させて本化合物の投与量を低減させることができる薬剤、本化合物の副作用を軽減させる薬剤等であれば、特に限定されない。
本化合物の血流障害(例えば、脊柱管狭窄症等)等に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、プロスタグランジン類、プロスタグランジン誘導体製剤、血管拡張薬、抗血小板薬(血小板凝集抑制剤)、鎮痛薬、ビタミン剤、筋弛緩薬、抗うつ薬等が挙げられるが、これらに限定されない。
プロスタグランジン類としては、例えば、PG受容体アゴニスト、PG受容体アンタゴニスト等が挙げられる。PG受容体としては、PGE受容体(EP1、EP2、EP3、EP4)、PGD受容体(DP、CRTH2)、PGF受容体(FP)、PGI受容体(IP)、TX受容体(TP)等が挙げられる。また、プロスタグランジン誘導体製剤としては、リマプロスト、ベラプロスト等が挙げられる。
血管拡張薬としては、例えば、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例、カプトプリル、エナラプリル、デラプリル)、アンジオテンシンII拮抗剤(例、カンデサルタン シレキセチル、ロサルタン、エプロサルタン、バルサンタン、テルミサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン メドキソミル、タソサルタン、1−{[2’−(2,5−ジヒドロ−5−オキソ−4H−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−2−エトキシ−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボン酸)、カルシウムチャネルブロッカー(例、マニジピン、ニフェジピン、ニカルジピン、アムロジピン、エホニジピン)、カリウムチャンネル開口薬(例、レブクロマカリム、L−27152、AL0671、NIP−121)、クロニジン等が挙げられる。
抗血小板薬(血小板凝集抑制剤)としては、例えば、クロピドグレル硫酸塩、チクロピジン塩酸塩、シロスタゾール、イコサペント酸エチル、サルポグレラート塩酸塩等が挙げられる。
鎮痛薬としては、アセトアミノフェン、非ステロイド抗炎症薬、神経障害性疼痛緩和薬、ピラゾロン系薬等が挙げられ、例えば、サリチル酸ナトリウム、アスピリン、アスピリン・ダイアルミネート配合、ジフルニサル、インドメタシン、スプロフェン、ウフェナマート、ジメチルイソプロピルアズレン、ブフェキサマク、フェルビナク、ジクロフェナク、トルメチンナトリウム、クリノリル、フェンブフェン、ナプメトン、プログルメタシン、インドメタシンファルネシル、アセメタシン、プログルメタシンマレイン酸塩、アンフェナクナトリウム、モフェゾラク、エトドラク、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、ケトプロフェン、フェノプロフェンカルシウム、チアプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、アルミノプロフェン、ザルトプロフェン、メフェナム酸、メフェナム酸アルミニウム、トルフェナム酸、フロクタフェニン、ケトフェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、ピロキシカム、テノキシカム、アンピロキシカム、エピリゾール、チアラミド塩酸塩、チノリジン塩酸塩、エモルファゾン、ノイロトロピン、プレガバリン、スルピリン、ミグレニン、ピリン系感冒薬、ジメトチアジンメシル酸塩、シメトリド配合剤、非ピリン系感冒薬等が挙げられる。
ビタミン剤としては、メコバラミン等が挙げられる。
筋弛緩薬としては、例えば、トリペリゾン塩酸塩、クロルゾキサゾン、クロルメザノン、メトカルバモール、フェンプロバメート、プリジノールメシル酸塩、クロフェネシン、バクロフェンカルバミン酸塩、エペリゾン塩酸塩、アフロクァロン、チザニジン塩酸塩、アルクロニウム塩化物、スキサメトニウム塩化物、ツボクラリン塩化物、ダントロレンナトリウム、パンクロニウム臭化物、ベクロニウム臭化物等が挙げられる。
抗うつ薬としては、三環系・四環系抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬)等が挙げられる。例えば、三環系抗うつ薬としては、イミプラミン塩酸塩、デシプラミン塩酸塩、クロミプラミン塩酸塩、トリミプラミンマレイン酸塩、アミトリプチリン塩酸塩、ノルトリプチリン塩酸塩、ロフェプラミン塩酸塩、アモキサピン、ドスレピン塩酸塩等が、四環系抗うつ薬としては、マプロチリン、ミアンセリン等が挙げられる。また、SSRIとしては、パロキセチン塩酸塩水和物等が、SNRIとしては、ミルナシプラン塩酸塩、デュロキセチン塩酸塩等が挙げられる。
本化合物またはそのシクロデキストリン包接化合物と他の薬剤の重量比は特に限定されず、他の薬剤は、任意の2種以上を組み合わせて投与してもよい。
本発明における好ましい態様は、以下の発明である。
<1>化合物(1)もしくはその薬学的に許容できる塩、またはこれらのシクロデキストリン包接化合物を有効成分として含有する医薬;
<2>YがCHまたはSである上記<1>に記載の医薬;
<3>YがCHである上記<2>に記載の医薬;
<4>Rが−CH=CZ(COX)である上記<1>〜<3>のいずれかに記載の医薬;
<5>Rが−CH−CZ(COX)である上記<1>〜<3>のいずれかに記載の医薬;
<6>nが1である上記<1>〜<5>のいずれかに記載の医薬;
<7>A−Bが炭素−炭素二重結合である上記<1>〜<6>のいずれかに記載の医薬;<8>ZおよびZ2が水素原子である上記<1>〜<7>のいずれかに記載の医薬;
<9>R1が水素原子であり、Rが炭素数1〜3のアルキル基である上記<1>〜<8>のいずれかに記載の医薬;
<10>Rがメチル基である上記<9>に記載の医薬;
<11>Rがエチル基または炭素数3〜5のシクロアルキル基である上記<1>〜<10>のいずれかに記載の医薬;
<12>Rが炭素数3〜4のシクロアルキル基である上記<1>〜<11>に記載の医薬;
<13>Rがシクロプロピル基である上記<1>〜<12>のいずれかに記載の医薬;
<14>XがORである上記<1>〜<13>のいずれかに記載の医薬;
<15>Rが水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基である上記<14>に記載の医薬;
<16>Rが水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または水酸基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、置換基を有するアミノ基、アリール基および複素環基からなる群から選択される置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基である上記<15>に記載の医薬;
<17>Rが水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜4のアルキル基である上記<15>に記載の医薬;
<18>Rが水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または水酸基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、置換基を有するアミノ基、アリール基および複素環基からなる群から選択される置換基を有する炭素数1〜4のアルキル基である上記<17>に記載の医薬;
<19>Rが水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ピバロイルメチル基または(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチル基である上記<18>に記載の医薬;
<20>血流障害の予防または治療剤である上記<1>〜<19>のいずれかに記載の医薬;
<21>血流障害が、神経の血流障害である上記<20>に記載の医薬;
<22>神経の血流障害が、脊柱管狭窄症に伴う血流障害である上記<21>に記載の医薬;
<23>血流障害が、末梢動脈、皮膚または脳の血流障害である上記<20>に記載の医薬;
<24>末梢動脈の血流障害が、慢性動脈閉塞症または肺高血圧症に伴う血流障害である上記<23>に記載の医薬;
<25>皮膚の血流障害が、褥創に伴う血流障害である上記<23>に記載の医薬;
<26>脳の血流障害が、脳梗塞後の再発抑制に伴う血流障害である上記<23>に記載の医薬;
<27>血流障害の予防または治療に使用するための上記<1>〜<19>のいずれかに記載の医薬;
<28>血流障害が、神経の血流障害である上記<27>に記載の医薬;
<29>神経の血流障害が、脊柱管狭窄症に伴う血流障害である上記<28>に記載の医薬;
<30>血流障害が、末梢動脈、皮膚または脳の血流障害である上記<27>に記載の医薬;
<31>末梢動脈の血流障害が、慢性動脈閉塞症または肺高血圧症に伴う血流障害である上記<30>に記載の医薬;
<32>皮膚の血流障害が、褥創に伴う血流障害である上記<30>に記載の医薬;
<33>脳の血流障害が、脳梗塞後の再発抑制に伴う血流障害である上記<30>に記載の医薬;
<34>上記<1>〜<19>のいずれかに記載の医薬を哺乳動物に有効量投与することを特徴とする、哺乳動物における血流障害の予防または治療方法;
<35>血流障害が、神経の血流障害である上記<34>に記載の予防または治療方法;<36>神経の血流障害が、脊柱管狭窄症に伴う血流障害である上記<35>に記載の予防または治療方法;
<37>血流障害が、末梢動脈、皮膚または脳の血流障害である上記<34>に記載の予防または治療方法;
<38>末梢動脈の血流障害が、慢性動脈閉塞症または肺高血圧症に伴う血流障害である上記<37>に記載の予防または治療方法;
<39>皮膚の血流障害が、褥創に伴う血流障害である上記<37>に記載の予防または治療方法;
<40>脳の血流障害が、脳梗塞後の再発抑制に伴う血流障害である上記<37>に記載の予防または治療方法。
以下に、参考例、実施例、製剤例および試験例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等により限定されるものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
本実施例等で用いる装置、試薬等は、特に断りのない限り、当該技術分野で通常実施されている方法に従って容易に入手又は調製可能か、あるいは商業的に入手可能なものである。
以下の参考例および実施例中の「室温」は通常約10℃ないし約30℃を示す。混合溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。%は、収率についてはmol/mol%を、その他については重量%を示す。
参考例および実施例において、以下の略号を使用する。
Me:メチル
Et:エチル
Pr:プロピル
Bu:ブチル
Ph:フェニル
Ac:アセチル
THP:テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル
TBS:tert−ブチルジメチルシリル
KHMDS:カリウムビストリメチルシリルアミド
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン
Py:ピリジン
DMSO:ジメチルスルホキシド
DME:1,2−ジメトキシエタン
p−TsOH:p−トルエンスルホン酸
aq:水溶液
参考例1:(S)−5−シクロプロピル−2−メチルペンタ−4−イン酸メチルエステル
塩化リチウム(4.24g)および亜鉛末(9.15g)を減圧乾燥した後、室温でテトラヒドロフラン(THF)(100mL)、1,2−ジブロモエタン(0.433mL)およびトリメチルクロロシラン(0.127mL)を加えた。該混合物に(R)−3−ヨード−2−メチルプロピオン酸メチル(22.8g)のTHF(30mL)溶液を滴下した後、40℃で1.5時間撹拌し、有機亜鉛反応剤を調製した。別の反応容器に塩化リチウム(7.63g)、シアン化銅(I)(8.06g)およびTHF(90mL)を加えて、該混合物を1時間撹拌した。該混合物を−10℃に冷却し、そこに前記有機亜鉛反応剤を滴下した。反応混合物を−10℃で10分間撹拌した後、−78℃に冷却し、2−(ブロモエチニル)シクロプロパン(14.5g)のTHF(50mL)溶液を滴下し、同温で15時間撹拌後、塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を水洗した後、不溶物を濾別し、酢酸エチルで洗浄した。濾液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:ヘキサン=1:30〜1:5)で精製することにより、標題化合物(9.93g)を得た。収率66%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.69 (s, 3H), 2.59 (dq, J= 6.8, 7.2 Hz, 1H), 2.46 (ddd, J= 2.0, 6.0, 16.4 Hz, 1H), 2.29 (ddd, J= 2.0, 7.8, 16.4 Hz, 1H), 1.23 (d, J= 7.2 Hz, 3H), 1.22 (m, 1H), 0.71 (m, 2H), 0.60 (m, 2H).
参考例2:(S)−(+)−(6−シクロプロピル−3−メチル−2−オキソヘキサ−5−イン−1−イル)ホスホン酸ジメチルエステル
メチルホスホン酸ジメチル(4.34mL)にTHF(25mL)を加え、−78℃で1.6M n−ブチルリチウム(23.7mL)を滴下した。反応混合物を−78℃で1時間撹拌した後、参考例1で得られた(S)−5−シクロプロピル−2−メチルペンタ−4−イン酸メチルエステルのTHF(10mL)溶液を加え、同温で4時間撹拌した。反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:3〜酢酸エチルのみ)で精製することにより、標題化合物(2.36g)を得た。収率61%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.81 (s, 3H), 3.78 (s, 3H), 3.20 (ddd, J= 14.4, 22.8, 28.4 Hz, 2H), 2.91 (q, J= 6.8 Hz, 1H), 2.33 (dddd, J= 2.0, 6.8, 16.8, 44.4 Hz, 2H), 1.18 (d, J= 7.2 Hz, 3H), 1.18 (m, 1H), 0.71 (m, 2H), 0.60 (m, 2H).
参考例3:7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−ヒドロキシメチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル
4−(カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド(14.06g)のTHF(86mL)の懸濁液に、1Mカリウムビストリメチルシリルアミド(64mL)を加えて1時間撹拌した。該混合物を−78℃に冷却し、(3aR,4S,5R,6aS)−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)ヘキサヒドロ−5−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)−2H−シクロペンタ[b]フラン−2−オール(3.92g)のTHF(50mL)溶液を加え、同温で30分間撹拌した後、室温まで昇温し終夜撹拌した。反応混合物に水を加えてtert−ブチルメチルエーテルで抽出した後、クエン酸二ナトリウムで酸性にした後、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮後、アセトン(390mL)を加え、0℃でジイソプロピルエチルアミン(9.16mL)、ヨードメタン(2.95mL)および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(7.85mL)を加えた。該混合物を室温で3.5時間撹拌し、飽和重曹水を加えて酢酸エチルで抽出した。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、粘性油状物(3.21g)を得た。当該油状物(3.13g)にメタノール(220mL)を加え、5%Pd/C(1.13g)を用いて水素雰囲気下40分間撹拌した。触媒をろ別し、ろ液を減圧濃縮した。残渣にピリジン(14mL)、無水酢酸(14mL)、4−ジメチルアミノピリジン(170mg)を加えて1時間撹拌した。反応混合物に水を加えてヘキサン−酢酸エチル混合溶媒で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮後、残渣にTHF(32mL)を加えて氷冷した後、1Mテトラブチルアンモニウムフルオリド(6.7mL)を加え、室温で3日間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1〜1:3)で精製することにより、標題化合物(2.60g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ5.07 (m, 1H), 4.71 (m, 0.55H), 4.54 (m, 0.45H), 4.15-4.04 (m, 1H), 4.04-3.88 (m, 1H), 3.88-3.73 (m, 2H), 3.66 (s, 3H), 3.60-3.48 (m, 2H), 2.29(m, 2H),2.04 (t, J= 7.5 Hz, 2H), 1.95-1.15 (m, 20H).
参考例4:7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−ホルミル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル
7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−ヒドロキシメチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル(3.0g)を酢酸エチル(48mL)に溶解し、氷冷下、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(7.6mL)を加えた。該混合物にSO−ピリジン(3.6g)のジメチルスルホキシド(24mL)溶液を加え、氷冷下で30分間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(50mL)および水(50mL)に注ぎ、重曹水を加えて分液し、有機層を減圧濃縮した。残渣にヘキサンを加え、硫酸銅水溶液、飽和食塩水および水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、標題化合物(2.75g)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ9.77 (dd, J= 16.1, 3.2 Hz, 1H), 5.13 (m, 1H), 4.70-4.50 (m, 1H), 4.41 (m, 1H), 3.81 (m, 2H), 3.66 (s, 3H), 3.46 (m, 2H), 3.40-2.92 (m, 0.46H), 2.88-2.78 (m, 0.54H), 2.28 (t, J= 7.5 Hz, 2H), 2.50-2.20 (m, 1H), 2.06 (s, 3H), 1.98-1.52 (m, 16H).
参考例5:7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−((1E,4S)−7−シクロプロピル−4−メチル−3−オキソヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル
水素化ナトリウム(60%、油分散物)(575mg)に1,2−ジメトキシエタン(126mL)を加え、氷冷下、参考例2で合成した(S)−(+)−(6−シクロプロピル−3−メチル−2−オキソヘキサ−5−イン−1−イル)ホスホン酸ジメチルエステル(3.41g)の1,2−ジメトキシエタン(20mL)溶液を滴下した。該混合物を氷冷下で1時間撹拌した後、参考例4で合成した7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−ホルミル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル(2.75g)の1,2−ジメトキエタン(40mL)溶液を滴下し、同温で3時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル(290mL)、飽和食塩水(290mL)を加え、水で希釈して分液した後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=86:14〜酢酸エチルのみ)で精製することにより、標題化合物(3.43g)を無色油状物として得た。収率61%(参考例3で得られた7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−ヒドロキシメチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステルより2工程の収率)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ6.80(m,1H),6.28 (m, 1H), 5.12 (brt, J = 5.7 Hz, 1H), 4.54 (dt, J = 12.8, 3.0 Hz, 1H), 4.12-3.96 (m, 1H), 3.83-3.58 (m, 2H), 3.65 (s, 3H),3.50-3.38 (m, 1H), 3.14-2.83 (m, 1H), 2.75-2.16 (m, 4H), 2.06 (s, 3H), 1.95-1.05 (m, 20H), 1.18 (d, J = 7.2 Hz, 3H), 0.75-0.54 (m, 4H).
参考例6:7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−((1E,3S,4S)−7−シクロプロピル−3−ヒドロキシ−4−メチルヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−ヒドロキシシクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル
参考例5で合成した7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−((1E,4S)−7−シクロプロピル−4−メチル−3−オキソヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル(2.47g)をメタノール(42mL)に溶解し、塩化セリウム7水和物(1.74g)を加えて−40℃に冷却した。該混合物に水素化ホウ素ナトリウム(90.2mg)を加え、同温で75分間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和重曹水および水を加えて分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、標題化合物(2.45g)を粗生成物として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ5.65-5.45 (m, 2H), 5.09 (brs, 1H), 4.60 (m, 1H), 4.14-3.98 (m, 1H), 3.92-3.78 (m, 2H), 3.66 (s, 3H), 2.60-2.30 (m, 1H), 2.28 (t, J=7.6 Hz, 2H), 2.30-2.13 (m, 2H), 2.04 (s, 3H), 1.85-1.10 (m, 23H), 0.96 (m, 3H),0.72-0.58 (m, 4H).
前記粗生成物(2.45g)をTHF(9.3mL)に溶解し、65%酢酸水溶液(93mL)を加えて、45℃で2時間撹拌した。反応液を室温まで放冷し、水100mLを加えて酢酸エチル−ヘキサン(1:1)混合溶媒で抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=67:33〜酢酸エチルのみ)で精製することにより、標題化合物(723mg)とその立体異性体(1.23g)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3)
標題化合物:δ5.58 (dd, J= 15.2, 7.4 Hz, 1H), 5.45 (dd, J= 15.2, 9.2 Hz, 1H), 5.14 (brt, J= 4.6 Hz, 1H), 3.97 (t, J= 7.4 Hz, 1H), 3.87 (q, J= 8.5 Hz, 1H), 3.66 (s, 3H), 2.72-2.56 (m, 2H), 2.50 (dq, J= 8.5, 6.5 Hz, 1H), 2.28 (t, J= 7.6 Hz, 2H), 2.30-2.17 (m, 2H), 2.05 (s, 3H), 1.80-1.49 (m, 6H), 1.49-1.00 (m, 9H), 0.93 (d, J= 6.5 Hz, 3H), 0.75-0.68 (m, 2 H), 0.62-0.57 (m, 2H).
標題化合物の異性体:δ5.61 (dd, J= 15.2, 5.6 Hz, 1H), 5.50 (dd, J= 15.2, 8.6 Hz, 1H), 5.15 (brt, J= 4.6 Hz, 1H), 4.18 (t, J= 4.8 Hz, 1H), 3.90 (m, 1H), 3.65 (s, 3H), 2.48 (dq, J= 8.6, 6.4 Hz, 1H), 2.28 (t, J= 7.6 Hz, 2H), 2.05 (s, 3H), 1.86-1.17 (m, 10H), 1.49-1.00 (m, 9H), 0.96 (d, J= 6.4 Hz, 3H), 0.72-0.68 (m, 2H),
0.62-0.58 (m, 2H).
参考例7:7−((1R,2R,3R,5S)−2−((1E,3S,4S)−7−シクロプロピル−4−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−ヒドロキシ−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸
参考例6で合成した7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−((1E,3S,4S)−7−シクロプロピル−3−ヒドロキシ−4−メチルヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−ヒドロキシシクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル(67.6mg)を塩化メチレン(1mL)に溶解し、0℃で3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(41.3μL)、p−トルエンスルホン酸一水和物(2.9mg)を加え、同温で30分間撹拌した。反応混合物にジエチルエーテル(10mL)、飽和重曹水(10mL)を加えて分液後、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、アセトキシ−ビステトラヒドロピラニル(THP)エーテル体(117.1mg)を粗生成物として得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ5.56-5.26 (m, 2H), 5.10 (m, 1H), 4.81-4.58 (m, 2H), 4.20-3.80 (m, 6H), 3.65 (s, 3H), 3.48-3.40 (m, 2H), 2.60-2.31 (m, 1H), 2.28 (t, J= 7.6 Hz, 2H), 2.31-2.10 (m, 3H), 2.04 (s, 3H), 1.90-1.10 (m, 22H), 0.93 (m, 3H), 0.70-0.68 (m, 2H), 0.62-0.58 (m, 2H).
上記で得られたアセトキシ−ビスTHPエーテル体の粗生成物(117mg)をメタノール(0.7mL)に溶解し、0℃で1N水酸化ナトリウム水溶液(0.45mL)を加えた後、室温で26時間撹拌した。反応混合物に、クエン酸水溶液を加えて、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1〜1:3)で精製することにより、標題化合物(70.9mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ5.55-5.25 (m, 2H), 4.71 (m, 2H), 4.15-3.84 (m, 6H), 3.47 (m, 2H), 2.50-2.35 (m, 1H), 2.34 (t, J= 7.2 Hz, 2H), 2.25-2.10 (m, 2H), 1.97-1.20 (m, 28H), 0.94 (m, 3H), 0.71-0.68 (m, 2H), 0.60-0.58 (m, 2H).
参考例8:7−((1R,2R,3R,5S)−2−((1E,3S,4S)−7−シクロプロピル−4−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−ヒドロキシ−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル
参考例7と同様に合成したアセトキシ−ビスTHPエーテル体(682.4mg)にメタノール(6mL)および炭酸カリウム(382.8mg)を加えて40℃で2時間撹拌した。反応混合物を室温まで放冷し、酢酸エチルで希釈した後、酢酸で中和し、飽和重曹水を加えて分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=84:16〜酢酸エチルのみ)で精製することにより、標題化合物(566.6mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ5.58-5.42 (m, 1.5H), 5.28-5.18 (m, 0.5H), 4.77-4.60 (m, 2H), 4.18-4.08 (m, 2H), 3.90-3.75 (m, 3H), 3.66 (s, 3H), 3.51-3.38 (m, 2H), 2.50-2.00 (m, 5H), 2.29 (t, J= 7.4 Hz, 2H), 2.00-1.40 (m, 26H), 0.92 (dddd, J= 17.2, 17.2, 6.8, 6.8 Hz, 3H), 0.74-0.68 (m, 2H), 0.62-0.58 (m, 2H).
参考例9:(2E)−7−((1R,2R,3R,5S)−2−((1E,3S,4S)−7−シクロプロピル−4−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−ヒドロキシ−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタ−2−エン酸
参考例8で合成した7−((1R,2R,3R,5S)−2−((1E,3S,4S)−7−シクロプロピル−4−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−ヒドロキシ−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル(364.4mg)にピリジン(2mL)を加え、0℃に冷却後、トリメチルクロロシラン(0.12mL)を加えて、同温で30分間撹拌した。反応混合物をヘキサンと酢酸エチル(10:1)の混合溶媒で希釈し、飽和重曹水を加えて分液し、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、シリルエーテル体(366.1mg)を粗生成物として得た。
該シリルエーテル体の粗生成物(366.1mg)をTHF(2.5mL)に溶解し、−78℃で1.12MリチウムジイソプロピルアミドのTHF溶液(1.41mL)を加え、同温で30分間撹拌した。該混合物にジフェニルジセレニド(412.9mg)のTHF(1mL)溶液を−78℃で滴下し、同温で45分間、0℃で1時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウムを加えて分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、セレノ化体(763mg)を粗生成物として得た。
該セレノ化体の粗生成物(763mg)に酢酸エチル(4mL)、THF(2mL)、重曹(179.2mg)を加えて撹拌した。該混合物に30%過酸化水素水(0.21mL)を加えて、35℃で1時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈した後、飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣にメタノール(5mL)を加えて溶解し、0℃で1N水酸化ナトリウム水溶液(1.9mL)を加え、室温で43時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈した後、飽和クエン酸二ナトリウム水溶液を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1〜酢酸エチル〜酢酸エチル:メタノール=20:1)で精製することにより標題化合物(169.8mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ7.00-6.87 (m, 1H), 5.81 (d, J= 14.8 Hz, 1H), 5.63-5.41 (m, 2H), 5.30-5.18 (m, 1H), 4.82-4.60 (m, 2H), 4.20-3.52 (m, 6H), 3.72 (s, 3H), 3.53-3.39 (m, 2H), 2.59-1.00 (m, 25H), 0.92 (m, 3H), 0.74-0.63 (m, 2H), 0.60-0.52 (m, 2H).
参考例10:7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−((1E,4S)−4−メチル−3−オキソノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル
((S)−3−メチル−2−オキソオクタ−5−イン−1−イル)ホスホン酸ジメチルと参考例4で合成した7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−ホルミル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステルから、参考例5と同様にして標題化合物を合成した。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ6.76 (m, 1H), 6.29 (m, 1H), 5.13 (m, 1H), 4.58 (m, 1H), 4.12-3.44 (m, 3H), 3.66 (s, 3H), 2.89 (m, 1H), 2.74-2.10 (m, 5H), 2.07 (s, 3H), 1.99-1.08 (m, 21H), 1.20 (d, J= 7.2 Hz, 3H), 1.10 (t, J= 7.4 Hz, 3H).
参考例11:7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−ヒドロキシメチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)−2,2−ジフルオロヘプタン酸メチルエステル
4−(カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドの代わりに4−(1−カルボキシ−2,2−ジフルオロブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドを用いて、参考例3と同様にして、(3aR,4S,5R,6aS)−4−(((tert−ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)ヘキサヒドロ−5−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)−2H−シクロペンタ[b]フラン−2−オールから標題化合物を合成した。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ5.64 (dt, J= 5.2, 5.2, 2.0 Hz, 1H), 4.70 (dd, J= 4.0, 0.8 Hz, 0.5H), 4.53 (dd, J= 5.1, 2.4 Hz, 0.5H), 4.08 (dddd, J= 8.4, 6.6, 4.8, 4.4 Hz, 0.5H), 4.53 (dd, J= 8.0, 6.2, 4.4, 4.4 Hz, 0.5H), 3.96-3.71 (m, 2H), 3.85 (s, 3H), 3.58-3.43 (m, 2H), 3.00 (brs, 1H), 2.29 (m, 2H), 2.12-1.15 (m, 18H), 2.03 (d, J= 2.4 Hz, 3H).19F NMR (282.65 MHz, CD3OD) δ-106.26 (t, J= 17.3 Hz, 2F).
参考例12:2−((1S,2R,3R,5S)−5−ヒドロキシ−2−((1E,3RS,4S)−4−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)エタノール
(3aR,4R,5R,6aS)−ヘキサヒドロ−5−ヒドロキシ−4−((1E,3RS,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチル−1−ノネン−6−イニル)−2H−シクロペンタ[b]フラン−2−オン(3.50g)を塩化メチレン(61mL)に溶解し、氷冷下、2,3−ジヒドロピラン(3.3mL)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(24.5mg)を加えて室温で30分間撹拌した。反応混合物を飽和重曹水に注ぎ酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=85/15〜酢酸エチル)で精製することにより、ビスTHPエーテル体(7.26g)を得た。該ビスTHPエーテル体(994mg)をTHF(4mL)に溶解し、水素化リチウムアルミニウム(75mg)のTHF(4mL)懸濁液に氷冷下で加え、同温で40分間撹拌した。該反応混合物をジエチルエーテルで希釈し、硫酸ナトリウム水溶液を加え、セライトろ過し、酢酸エチルで洗浄した。ろ液を減圧濃縮することにより、標題化合物(953mg)を粘性油状物として得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ5.60-5.26 (m, 2H), 4.77-4.65 (m, 2H), 4.30-3.60 (m, 7H), 3.48 (m, 2H), 2.20-1.40 (m, 25H), 1.13 (t, J= 6.9 Hz, 3H), 0.96 (m, 3H).
参考例13:4−((2−((1R,2R,3R,5S)−5−ヒドロキシ−2−((1E,3RS,4S)−4−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)エチル)チオ)ブタン酸メチルエステル
参考例12で合成した2−((1S,2R,3R,5S)−5−ヒドロキシ−2−((1E,3RS,4S)−4−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)エタノール(122mg)をTHF(2mL)に溶解し、−20℃でジイソプロピルエチルアミン(91μL)および塩化メタンスルホニル(30μL)を加え、1時間撹拌した。反応混合物にジイソプロピルエチルアミン(44μL)および塩化メタンスルホニル(10μL)を加え、−10℃で1時間撹拌した後、ジイソプロピルアミン(91μL)およびクロロトリメチルシラン(40μL)を加え、1時間撹拌した。更にチオ酢酸S−カリウム(92mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(2.5mL)溶液を−10℃で加えた後、炭酸カリウム(211mg)を加え、室温で終夜撹拌した。反応混合物に水を加えて酢酸エチルとヘキサン(1:1)の混合溶媒で抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮した。残渣をメタノール(1mL)に溶解し、4−ヨードブタン酸メチル(72mg)および炭酸カリウム(86mg)を加えて室温で1.5時間撹拌した。その後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、tert−ブチルメチルエーテルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1〜1:1)で精製することにより、標題化合物(71mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ5.55 (m, 2H), 4.68 (m, 2H), 4.30-3.70 (m, 5H), 3.67 (s, 3H), 3.46 (m, 2H), 2.60-2.40 (m, 4H), 2.23 (m, 2H), 2.10-1.40 (m, 26H), 1.13 (t, J= 6.9 Hz, 3H), 0.96 (m, 3H).
実施例1:4−((2−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3RS,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)エチル)チオ)ブタン酸メチルエステル〔化合物(1)−1〕
参考例13で合成した4−((2−((1R,2R,3R,5S)−5−ヒドロキシ−2−((1E,3RS,4S)−4−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)エチル)チオ)ブタン酸メチルエステル(70mg)に酢酸エチル(0.8mL)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.15mL)を加え、0℃でSO−ピリジン(63mg)のジメチルスルホキシド(0.67mL)溶液をゆっくりと加えた後、20分間撹拌した。その後、酢酸エチルで希釈し、水を加えて分液した。有機層を1N塩酸、飽和重曹水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=93/7〜20/80)で精製することにより相当する5−オキソビスTHPエーテル体(52mg)を得た。該5−オキソ−ビスTHPエーテル体(52mg)にTHF(0.2mL)および65%酢酸(3.6mL)を加えて45℃で1時間撹拌後、水で希釈し、ヘキサンと酢酸エチル(1:1)の混合溶媒で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、減圧乾燥後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:50〜35:65)で精製することにより、標題化合物(29mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ5.64 (dddd, J= 15.1, 15.1, 8.0, 6.9 Hz, 2H), 4.12-4.03 (m, 2H), 3.70 (s, 1H), 3.68 (s, 2H), 2.76 (dd, J= 7.5, 6.6 Hz, 1H), 2.62 (dt, J= 7.2, 3.2 Hz, 2H), 2.51 (t, J= 7.4 Hz, 2H), 2.43 (t, J= 7.4 Hz, 2H), 2.39-2.10 (m, 7H), 2.10-1.61 (m, 7H), 1.12 (t, J= 7.5 Hz, 3H), 0.97 (d, J= 6.6 Hz, 3H).
実施例2:(2E)−4−((2−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3RS,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)エチル)チオ)ブタ−2−エン酸メチルエステル〔化合物(1)−2〕
4−ヨードブタン酸メチルの代わりに4−ブロモ−2−ブテン酸メチルを用いて、参考例12で合成した2−((1S,2R,3R,5S)−5−ヒドロキシ−2−((1E,3RS,4S)−4−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)エタノールから参考例13および実施例1と同様にして合成し、標題化合物を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ6.86 (ddd, J= 15.6, 7.6, 7.6 Hz, 1H), 6.07 (dt, J= 15.6, 9.5 Hz, 1H), 5.92-5.56 (m, 2H), 4.30-4.00 (m, 2H), 3.75 (s, 3H), 3.60-3.00 (m, 2H), 2.90-2.70 (m, 2H), 2.70-2.08 (m, 9H), 2.05-1.64 (m, 4H), 1.13 (t, J= 7.2 Hz, 3H), 1.02-0.95 (m, 3H).
実施例3:((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3RS,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル〔化合物(1)−3〕
参考例10で合成した7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−((1E,4S)−4−メチル−3−オキソノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル(44mg)をメタノール(0.5mL)に溶解し、氷冷下、塩化セリウム7水和物(9.5mg)および水素化ホウ素ナトリウム(1.9mg)を加え、室温で30分間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて分液し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣を塩化メチレン(1mL)に溶解し、0℃で3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(10.5μL)、p−トルエンスルホン酸一水和物(0.73mg)を加え、同温で1時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル、飽和重曹水を加えて分液後、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣にメタノール(0.5mL)および炭酸カリウム(10.6mg)を加えて室温で16時間撹拌した。反応混合物に酢酸エチル、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて分液し、水層を酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=84:16〜50:50)で精製することにより、7−((1R,2R,3R,5S)−2−((1E,3RS,4S)−4−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−ヒドロキシ−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステル(33mg)を得た。得られた化合物を実施例1と同様の処理に付し、標題化合物を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ5.75-5.55 (m, 2H), 4.22-3.98 (m, 2H), 3.66 (s, 3H), 2.75 (dd, J= 18.4, 7.2 Hz, 1H), 2.43-1.28 (m, 22H), 1.12 (t, J= 7.3 Hz, 3H) 0.97 (d, J= 6.9 Hz, 3H).
実施例4:7−((1R,2R,3R)−2−((1E,3S,4S)−7−シクロプロピル−3−ヒドロキシ−4−メチルヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−ヒドロキシ−5−オキソシクロペンチル)ヘプタン酸〔化合物(1)−9〕
参考例7で合成した7−((1R,2R,3R,5S)−2−((1E,3S,4S)−7−シクロプロピル−4−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−ヒドロキシ−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸(70.9mg)をアセトンに溶解し、−20℃で2.67Mジョーンズ試薬(70.8μL)を滴下し、同温で30分間撹拌後、ジョーンズ試薬(7.1μL)を加え、さらに10分間撹拌した。反応混合物に2−プロパノール(0.15mL)、ジエチルエーテル(10mL)、水(6mL)を加えて分液した。水層をジエチルエーテルで抽出した後、有機層を合わせ、水、食塩水で順次洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することにより、オキソ−ビスTHPエーテル体(53.7mg)を粗生成物として得た。
得られたオキソ−ビスTHPエーテル体の粗生成物(53.7mg)をTHF(0.252mL)に溶解し、65%酢酸水溶液(2.52mL)を加え、45℃で2時間、室温で1時間撹拌した。反応混合物に水を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:2〜酢酸エチルのみ〜酢酸エチル:メタノール=20:1)で精製することにより、標題化合物(29.5mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3)δ5.69 (dd, J= 15.2, 7.6 Hz, 1H), 5.60 (dd, J= 15.2, 8.8, 1H), 4.13-4.03 (m, 2H), 2.75 (dd, J= 18.4, 7.2 Hz, 1H), 2.43-1.20 (m, 22 H), 0.94 (d, J= 6.4 Hz, 3H), 0.75-0.71 (m, 2H), 0.63-0.59 (m, 2H).
実施例5:(2E)−7−((1R,2R,3R)−2−((1E,3S,4S)−7−シクロプロピル−3−ヒドロキシ−4−メチルヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−ヒドロキシ−5−オキソシクロペンチル)ヘプタ−2−エン酸〔化合物(1)−10〕
参考例9で合成した(2E)−7−((1R,2R,3R,5S)−2−((1E,3S,4S)−7−シクロプロピル−4−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ヘプタ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−ヒドロキシ−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタ−2−エン酸を用いて、実施例4と同様にジョーンズ酸化、脱THP化することにより、標題化合物を合成した。収率66.4%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ6.98 (dt, J= 15.6, 6.9 Hz, 1H), 5.98 (brs, 2H), 5.77 (d, J= 15.6 Hz, 1H), 5.58 (dddd, J= 15.3, 15.3, 7.4, 6.8 Hz, 2H), 4.05-3.93 (m, 2H), 2.71 (dd, J= 18.2, 7.4 Hz, 1H), 2.40-1.00 (m, 16H), 0.89 (d, J= 6.8 Hz, 3H), 0.71-0.67 (m, 2H), 0.59-0.55 (m, 2H).
実施例6:7−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタン酸〔化合物(1)−6〕
参考例10で合成した7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−((1E,4S)−4−メチル−3−オキソノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステルから、参考例6、参考例7および実施例4と同様にして標題化合物を合成した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ5.65 (dddd, J= 15.3, 15.3, 8.3, 7.2 Hz, 2H), 4.12-4.01 (m, 2H), 2.74 (dd, J= 18.0, 7.2 Hz, 1H), 2.45-1.96 (m, 11H), 1.79 (m, 1H), 1.50-1.40 (m, 4H), 1.40-1.30 (m, 7H), 1.13 (t, J= 6.9 Hz, 3H), 0.96 (d, J= 6.9 Hz,
3H).
実施例7:(2E)−7−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタ−2−エン酸〔化合物(1)−7〕
参考例10で合成した7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−((1E,4S)−4−メチル−3−オキソノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタン酸メチルエステルから、参考例6、参考例7、参考例8、参考例9および実施例5と同様にして標題化合物を合成した。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.01 (dt, J= 15.4, 7.0 Hz, 1H), 5.80 (d, J= 15.4 Hz, 1H), 5.62 (dddd, J= 15.3, 15.3, 8.2, 7.7 Hz, 2H), 4.08-3.80 (m, 2H), 2.73 (dd, J= 18.3, 7.5 Hz, 1H), 2.46-1.70 (m, 11H), 1.87-1.30 (m, 8H), 1.14 (t, J= 7.4 Hz, 3H), 0.94 (t, J= 6.9 Hz, 3H).
実施例8:7−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタン酸(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチルエステル〔化合物(1)−4〕
実施例4と同様にして実施例6で中間体として得たオキソ−ビスTHPエーテル体(250mg)をアセトン(4.5mL)に溶解し、0℃で4−クロロメチル−5−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン(20.8mg)を滴下した。そこへヨウ化ナトリウム(68.4mg)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(82.2mg)を加えて、同温で21時間撹拌した。反応混合物にジエチルエーテルおよび飽和重曹水を加えて、水層をジエチルエーテルで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサンのみ〜ヘキサン:酢酸エチル=16:84〜酢酸エチルのみ〜酢酸エチル:メタノール=98:2)で精製してエステル体(278mg)を得た。次に、得られたエステル体(278mg)にTHF(0.95mL)および65%酢酸水溶液(9.5mL)を加えて45℃で1時間撹拌した。反応混合物に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1〜1:5〜酢酸エチルのみ〜酢酸エチル:メタノール=50:1)で精製し、標題化合物(168.2mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ5.64 (dddd, J= 15.2, 15.2, 8.4, 7.1 Hz, 2H), 4.83 (s, 2H), 4.13-3.99 (m, 2H), 2.74 (dd, J= 17.7, 7.5 Hz, 1H), 2.46-1.94 (m, 11H), 1.85-1.19 (m, 14H), 1.13 (d, J= 7.4 Hz, 3H), 0.95 (d, J= 4.2 Hz, 3H).
実施例9:7−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタン酸3,3−ジメチル−2−オキソブチルエステル〔化合物(1)−5〕
実施例4と同様にして実施例6で中間体として得たオキソ−ビスTHPエーテル体(200.9mg)をアセトン(3.7mL)に溶解し、0℃で1−クロロピナコロン(28.2mg)、ヨウ化ナトリウム(14mg)および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(16.6mg)を加え、同温で17時間撹拌した。反応混合物にジエチルエーテルおよび飽和重曹水を加えて、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサンのみ〜ヘキサン:酢酸エチル=16:84〜酢酸エチルのみ〜酢酸エチル:メタノール=95:5)で精製して、エステル体(163.6mg)を得た。次に、得られたエステル体(21.6mg)にTHF(0.95mL)および65%酢酸水溶液(9.5mL)を加えて45℃で2.5時間撹拌した。反応混合物に水を加えて酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1〜酢酸エチルのみ)で精製し、標題化合物(116.6mg)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ5.76-5.57 (m, 2H), 4.88 (s, 2H), 4.18-4.00 (m, 2H), 2.82-2.68 (m, 1H), 2.46-1.95 (m, 10H), 1.85-1.17 (m, 12H), 1.21 (d, J= 4.7 Hz, 9H), 1.14 (dt, J= 7.4, 4.7 Hz, 3H), 0.97 (dd, J= 6.9, 4.5 Hz, 3H).
実施例10:2,2−ジフルオロ−7−((1R,2R,3R)−3−ヒドロキシ−2−((1E,3S,4S)−3−ヒドロキシ−4−メチルノナ−1−エン−6−イン−1−イル)−5−オキソシクロペンチル)ヘプタン酸〔化合物(1)−8〕
参考例11で合成した7−((1R,2R,3R,5S)−5−アセトキシ−2−ヒドロキシメチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)シクロペンチル)−2,2−ジフルオロヘプタン酸メチルエステルから、参考例4〜参考例7および実施例4と同様にして標題化合物を合成した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ5.60 (dddd, J= 15.2, 15.2, 8.4, 7.4 Hz, 2H), 4.03 (dd, J= 17.2, 8.4 Hz, 1H), 3.97 (t, J= 7.6 Hz, 1H), 2.86-2.65 (m, 1H), 2.51-1.88 (m, 9H), 1.74 (m, 1H), 1.72-1.17 (m, 11H), 1.12 (t, J= 7.4 Hz, 3H), 0.94 (d, J= 6.8 Hz, 3H).19F NMR (282.65 M Hz, CD3OD) δ-106.42 (t, J= 15.4 Hz, 2F).
製剤例1:錠剤の製造
1)化合物(1) 0.003 g
2)乳糖 50 g
3)トウモロコシデンプン 15 g
4)カルボキシメチルセルロースカルシウム 44 g
5)ステアリン酸マグネシウム 1 g
1000錠 計110.003 g
1)、2)、3)の全量および30gの4)を水で練合し、真空乾燥後、整粒を行う。この整粒末に14gの4)および1gの5)を混合し、打錠機により打錠する。このようにして、1錠あたり実施例化合物3μgを含有する錠剤1000錠を得る。
製剤例2:カプセルの製造
1)化合物(1) 0.003 g
2)微粉末セルロース 10 g
3)乳糖 19 g
4)ステアリン酸マグネシウム 1 g
計 30.003 g
1)、2)、3)および4)を混合して、ゼラチンカプセルに充填して、1カプセルあたり実施例化合物3μgを含有するカプセルを1000カプセル得る。
試験例1:in vitro ヒト血小板凝集抑制作用の評価
(1)ヒト多血小板血漿の調製
抗凝固剤として3.8w/v%クエン酸ナトリウムを用い、クエン酸ナトリウム溶液:血液(体積比)=1:9の割合で、ヒト上腕静脈より採血し、遠心(120×g、10分間)して、上層の多血小板血漿(PRP)を得た。更に、PRPを除いた血液を遠心(1700×g、10分間)し、乏血小板血漿(PPP)を得た。PRPの血小板数を測定して、血小板数を25×10/μLにPPPで希釈調整した。
(2)血小板凝集能の測定
血小板凝集能の測定はBornの方法(Nature, 1962, vol.194, p.927-929)に準じ、血小板凝集能測定装置(PRP313M、アイ・エム・アイ株式会社)を用いて行った。PRP 190μLをガラスキュベットに入れ、血小板凝集能測定装置に装着後、被験物質として本化合物、リマプロスト(陽性対照物質)又は対照(0.25vol%ジメチルスルホキシド〔DMSO〕)を5μL加え、37℃で10分間インキュベートした。凝集剤としてADP(株式会社エル・エム・エス)を終濃度が3μmol/Lになるように5μL加え、凝集を惹起し、凝集の最大反応を測定した。
(3)血小板凝集抑制作用の評価
対照の最大凝集率を100%として、被験物質の凝集抑制率を求め、SAS System Version 9.1.3(Stat Preclinica Client Ver. 1.1 株式会社SAS Institute Japan)の「Dx計算(直線のあてはめ):ロジット変換なし」を用いてIC50を求めた。さらに、リマプロストのIC50値の活性を100とした時の各被験物質の相対活性(%)を算出した。
結果を表1に示す。表1によれば、本化合物は、in vitroヒト血小板凝集抑制作用試験において非常に強力な活性を示し、リマプロストの10倍以上の活性を示すものもあった。
試験例2:in vitro ラット血小板凝集抑制作用の評価
(1)ラット多血小板血漿の調製
上記試験例1の(1)と同様に、8〜9週齢のSD系雄性ラットの腹部大動脈より採血して、血小板数を63.2×10/μLにPPPで希釈したPRPを調製した。
(2)血小板凝集能の測定
ADPの終濃度が2μmol/Lである以外は、上記試験例1(2)と同様に、被験物質として本化合物、プロスタグランジンE1(PGE1:陽性対照物質)又は対照を加えた場合の凝集の最大反応を測定した。
(3)血小板凝集抑制作用の評価
上記試験例1の(3)と同様に、被験物質の凝集抑制率からIC50値を求め、PGE1のIC50値の活性を100とした時の各被験物質の相対活性(%)を算出した。
結果を表2に示す。本化合物は、in vitroラット血小板凝集抑制作用試験において強力な活性を示した。なお、被験物質である化合物(1)−1〜(1)−3は、いずれもω鎖の水酸基の立体化学がR体とS体のジアステレオマー混合物である。従って、該混合物から有効な活性体(一方のジアステレオマー)のみを分離して、同様に上記試験を実施すれば、活性は約2倍になる可能性がある。
試験例3:ex vivo モルモット血小板凝集抑制作用の持続性の評価
(1)IC50値の測定
被験物質として本化合物(79、132及び263nmol/kgの3用量)、リマプロスト(陽性対照物質:79、263及び789nmol/kgの3用量)又は対照(0.26vol%DMSOを含む注射用水)を10mL/kgで、4〜10週齢のHartley系雄性モルモットに単回経口投与し、4時間後に腹部大動脈より採血を行い、血小板凝集能を測定し、上記試験例1(3)と同様に、凝集抑制活性のIC50値(0.5μmol/LのADPで凝集を誘発)を算出した。
(2)被験物質の投与及び多血小板血漿の調製
上記(1)の試験で算出したIC50を示す用量の化合物(1)−7(168nmol/kg)、化合物(1)−9(178nmol/kg)、化合物(1)−10(187nmol/kg)及びリマプロスト(266nmol/kg)を単回経口投与し、1、2、4、6、10、16及び24時間後に、上記試験例1(1)と同様に、モルモット腹部大動脈より採血して、血小板数を約60×10/μLにPPPで希釈したPRPを調製した(n=3〜4)。
(3)血小板凝集能の測定
上記試験例1の(2)と同様に、Bornの方法に準じ、血小板凝集能の測定を行った。PRP 190μLをガラスキュベットに入れ、血小板凝集能測定装置に装着後、37℃で10分間インキュベートした。凝集剤としてADPを終濃度が0.5μmol/Lになるように10μL加え、凝集を惹起し、凝集の最大反応を測定した。
(4)血小板凝集抑制作用の持続性の評価
IC50算出時の対照群の最大凝集率と被験物質の最大凝集率より、対照群を0%とした時の被験物質の最大凝集抑制率を求めた。さらに、縦軸を最大凝集抑制率(%)、横軸を被験物質投与後の時間(時間)とした最大凝集抑制率の時間経過を表したグラフにおいて、各測定時間においてプロットした最大凝集抑制率の点をつないだ直線と横軸によって囲まれた部分の面積をAUCとして求めた。また、該グラフ上で最大凝集抑制率が0となる推定時間を凝集抑制が消滅する時間(抑制0時間)として求めた。
結果を表3に示す。表3によれば、本化合物は、ex vivo モルモット血小板凝集抑制作用試験において、投与後1時間から抑制0時間のAUC値(AUC:1-抑制0時間)
は、本化合物がリマプロストより高値であり、本化合物がリマプロストより血小板凝集抑制作用が強いことが確認された。また、持続性の指標となる投与後6時間以降の凝集抑制率を評価した場合、本化合物はリマプロストと比べて、投与後6時間から抑制0時間のAUC値(AUC:6-抑制0時間)は高く、また、凝集抑制が消滅する時間(抑制0時間)も長
いことから、本化合物がリマプロストより持続性に優れていることが確認された。
試験例4:ラット馬尾血流量増加作用の評価
(1)被験物質の投与
被験物質として、本化合物又はリマプロスト(陽性対照物質)を原則0.263、0.789及び2.63nmol/kgでSlc:Wistar系雄性ラット(体重:約200〜250g)の尾静脈内に、インフュージョンポンプ(model 11、Harvard Apparatus)を用いて毎分0.2mLの流速で10分間持続注入した。なお、対照群には1vol%DMSO−生理食塩液を同様に投与した(各群5〜6匹)。
(2)馬尾血流量の測定
ラットをハロタン麻酔下で腹臥位に保定し、ヒーター(日本医化)で保温した。ラットの腰背部を剃毛、切開して脊椎を露出し、第5腰椎の椎弓を切除して馬尾神経を露出した。馬尾血流は、露出した馬尾神経に対して約1mm上部に垂直になるように固定した非接触型プローブ(LP−NC特型、ユニークメディカル)を介してレーザードップラー血流計(TBF−LN1、ユニークメディカル)を用いて、各被検物質の投与前から投与60分後まで測定した。なお、開創部には流動パラフィンを充てんし、露出した馬尾神経の乾燥を防止した。
(3)データ解析
得られたデータは1/400秒ごとにPowerLab8/30(登録商標、ML870、ADInstruments)を介してパーソナルコンピュータに取り込み、LabChart(登録商標、ADInstruments)を用いて解析した。解析時点は投与前(投与0分)、投与3、5、8、10、13、15、18、20、30、40、50及び60分後、または投与前(投与0分)、投与3、5、10、15、20、30、40、50及び60分後とし、各時点における10秒間の平均値を測定値とし、投与前値に対する変化率(%)を次式により求めた。
変化率(%)=(各時点における投与後の測定値 − 投与前の測定値)/投与前の測定値×100
さらに、各時点における対照群に対する変化率(%)の差〔Δ変化率(%)〕を次式により算出し、このΔ変化率の最大値を最大変化率とした。
Δ変化率(%)=各時点における各個体の変化率 − 対照群の変化率の平均値
被験物質の各用量における最大変化率から直線回帰式により、馬尾血流量が20%増加する用量(ED20値)を求め、リマプロストのED20値の活性を100とした時の各被験物質の相対活性(%)を算出した。
結果を表4に示す。本化合物は、ラット馬尾血流量試験において強力な活性を示した。
本化合物のプロスタグランジン誘導体は、医薬の有効成分として有用である。本化合物のプロスタグランジン誘導体を有効成分とする医薬は、血流障害の予防または治療のための医薬として、特に、脊柱管狭窄症または慢性動脈閉塞症に伴う血流障害の予防または治療のための医薬として有用である。

Claims (16)

  1. 下式(1):


    [式(1)中、
    は、−CH−CZ(COX)または−CH=CZ(COX)を表し、Z、Zは、それぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子を表し、Xは、ORまたはNRを表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、置換基を有する炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基または置換基を有する炭素数6〜10のアリールスルホニル基を表し;
    Yは、CH、SまたはOを表し;
    A−Bは、炭素−炭素単結合または炭素−炭素二重結合を表し;
    波線で結合した水酸基は、α−配置、β−配置またはα−配置及びβ−配置の混合配置である水酸基を表し;
    、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基または置換基を有する炭素数1〜3のアルキル基を表し;
    nは0〜2の整数を表し;
    は、炭素数2〜3のアルキル基または炭素数3〜5のシクロアルキル基を表す。]で表される化合物もしくはその薬学的に許容できる塩、またはこれらのシクロデキストリン包接化合物を有効成分として含有する医薬。
  2. YがCHである請求項1に記載の医薬。
  3. が−CH=CZ(COX)である請求項1または2に記載の医薬。
  4. が−CH−CZ(COX)である請求項1または2に記載の医薬。
  5. nが1である請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬。
  6. A−Bが炭素−炭素二重結合である請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬。
  7. が水素原子であり、Rが炭素数1〜3のアルキル基である請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬。
  8. が炭素数3〜5のシクロアルキル基である請求項1〜7のいずれか一項に記載の医薬。
  9. XがORである請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬。
  10. 血流障害の予防または治療剤である請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬。
  11. 血流障害が、神経の血流障害である請求項10に記載の医薬。
  12. 神経の血流障害が、脊柱管狭窄症に伴う血流障害である請求項11に記載の医薬。
  13. 血流障害が、末梢動脈、皮膚または脳の血流障害である請求項10に記載の医薬。
  14. 末梢動脈の血流障害が、慢性動脈閉塞症または肺高血圧症に伴う血流障害である請求項13に記載の医薬。
  15. 皮膚の血流障害が、褥創に伴う血流障害である請求項13に記載の医薬。
  16. 脳の血流障害が、脳梗塞後の再発抑制に伴う血流障害である請求項13に記載の医薬。
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