しかしながら、特許文献2の欠陥検査装置は、被検査物の表面で焦点を合わせることにより発生する干渉現象を捉えることで表面の欠陥を検出しているので、被検査物の表面に存在する深さ数nm程度の微細な欠陥も明確に検出することは可能であるが、厚みのある被検査物の内部の欠陥を検出することはできない。即ち、検査感度を上げるためレーザービームを被検査物の表面で極めて小さな面積に集光させることにより、焦点において非常に大きなエネルギ密度を発生させるようにしているので、被検査物の表面で急激に絞られた検査ビームは、被検査物の内部で急激に広がって(拡散性)光エネルギを失ってしまうため、検査能力を失ってしまう。即ち、十分に絞られた検査ビームは、被検査物の表面でしか検出能力を有しておらず、被検査物の表面から数十ミクロン〜百μm程度の範囲でしか検出感度を保てない。このため、mmオーダの厚みを有する被検査物の内部の欠陥を検査感度のむら無く検出することは難しい。したがって、特許文献2の欠陥検査装置は、表面の傷を検出する検査ヘッドの組みと裏面の傷を検出する検査ヘッドの組みとを同時に2セット用いなければ、両面の傷を同時に検出することはできない。そして、その場合においても、被検査物の内部の傷を同時に検出することは難しい。つまり、深みのある検査をすること、換言すれば、厚みのある被検査物の表面、内部及び裏面の欠陥を1回の2次元走査により同時に検査することは難しいものである。
また、微分干渉による検査感度を上げるためレーザービームを被検査物の表面で極めて小さな面積に集光させることにより、焦点において非常に大きなエネルギ密度を発生させるようにしている特許文献2の欠陥検査装置によれば、NA(開口数)を大きくしてビームウェストを絞ることにより楕円形状の検査ビームを被検査物の表面に焦点深度を浅くして結像させるようにしているので、焦点位置を調整することが難しく、ベストポジションを探し出すのに非常に多くの工程を必要とすると共に、やっと感度がでてもちょっとでも焦点がずれると急激にビームが拡がるため、著しく光エネルギ密度が低くなり、感度が悪くなる。つまり、調整しづらく、調整の最適ポイントがなかなか見つけ難いという欠点がある。このため、光学系の調整に多大の工数と時間がかかるという問題がある。
しかも、微分干渉を利用した欠陥検出は、感度は高いがその反面ノイズの影響を受け易く、検査ヘッドの送り時の微小な振動で敏感な微分干渉に対してノイズとなり検出不能に陥り易い問題を有している。微分干渉を利用して被検査物の表面の傷の検出は、光の波長の位相のずれ(位相の差分)を変化分を数μmの位相差でも影響を受けることから、ヘッドを走らせるだけで機械の振動で影響を受ける。このため、調整の結果が直ぐに変わることがある。つまり、ちょっとでもずれると、感度が再現できない、調整の再現性の悪い装置・構造となっている。このため、高速検査ができない。
また、被検査物の表面側に散乱する散乱光を集める集光素子は、楕円放物面の一部を貫通する狭い開口部から散乱光を入射させようとするので、散乱光の一部しか取り込めない問題がある。つまり、入射角の浅い散乱光(被検査物の表面に沿って散乱する散乱光)や極端に入射角が深い散乱光(開口部から進入しても回転放物鏡面の外に散乱する散乱光)を捉えることができず、散乱光を反射させる面として有効に使える範囲がほんの一部ある。さらに、半球状ミラーからの散乱光を受けるリング状の反射ミラーも中心に対物レンズを貫通させているため、対物レンズの胴体が遮蔽物となって集光した散乱光の一部を有効に利用できない問題がある。このため、被検査物の表面側に反射してくる散乱光の集光効率が低く検出感度が悪いという問題がある。
その上、回転放物面のミラーは、検査ビームの焦点深度が短いので調整がし難い。ちょっとでもずれると感度はがた落ちとなる。ベストポジションを探しだすのに時間がかかるため、調整しずらいという問題を有する。
また、微分干渉を利用した欠陥検出のためにレーザービームを被検査物の表面で極めて小さな面積に集光させられた検査ビームは、被検査物の内部で急激に広がるため、厚みのある被検査物の場合、内部のボイドや裏面の欠陥などに起因して発生する散乱光そのものの光エネルギも極端に小さくなって検出できないか、検出できても非常に感度の悪いものとなる。したがって、厚みがある被検査物の場合には、被検査物の表面と裏面とで検出感度に極端なばらつきが生じてしまう問題がある。その上、散乱光を集める集光素子においても、ガラス厚み補正機構付きの集光レンズ由来の球面収差等の影響を受けて感度にばらつきが生じたり、感度そのものが悪くなってしまう問題がある。このため、被検査物の裏面側における検出感度が確保され難いものとなる。
本発明は、深みのある検査を可能とする欠陥検査装置を提供することを目的とする。換言すれば、厚みのある被検査物の表面、内部及び裏面の欠陥を1回の2次元走査により同時に検査可能な欠陥検査装置を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために請求項1記載の欠陥検査装置は、被検査物に向けて検査ビームを照射する検査ビーム光学系と、被検査物に対して検査ビーム光学系と同じ側に配置されて被検査物で反射した検査ビームの反射散乱光を検出する反射散乱光検出ヘッドと、当該反射散乱光検出ヘッドと被検査物を挟んで対向配置されて被検査物を透過した検査ビームの透過散乱光を検出する透過散乱光検出ヘッドとを有し、検査ビームの焦点深度が、当該焦点深度の範囲内に前記被検査物の厚みが収まるように調整されることを特徴としている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の欠陥検査装置において、検査ビームのビームウェストが、被検査物の厚みの中に形成されるように調整されることを特徴とする。また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の欠陥検査装置において、検査ビームのビームウェストが、被検査物の厚みの中央に形成されることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1つに記載の欠陥検査装置において、反射散乱光検出ヘッドは、反射散乱光集光器と、第1の反射集光ミラーと、第2の反射光ミラーと反射散乱光検出センサとを有し、反射散乱光集光器は、外周面が鏡面に構成されていると共に被検査物に検査ビームを照射可能に検査ビーム光学系の対物レンズを収容する逆截頭円錐筒と、逆截頭円錐体部の外側を囲むように配設されると共に内周面が鏡面に構成されている円筒との2重構造として、逆截頭円錐筒と外側の円筒との間の空間に被検査物からの反射散乱光を導光させる空間を形成し、第1の反射光ミラーは、検査ビームを通過させるスリットが設けられ、反射散乱光集光器の出射口の上で反射散乱光集光器と結像レンズとの間で結像レンズと交わらない位置に設置されていることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1つに記載の欠陥検査装置において、透過散乱光検出ヘッドが、透過散乱光集光器と、透過散乱光検出センサとを有し、かつ透過散乱光集光器は内周面が鏡面の漏斗状の集光筒と、該集光筒の入り口に配設され被検査物を真っ直ぐ透過する検査ビームを捕捉して散乱光と分離する検査ビーム捕捉素子とを有し、散乱光のみを集光筒の下端に接続された透過散乱光検出センサに入射させる構造とされていることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか1つに記載の欠陥検査装置において、検査ビーム光学系及び反射散乱光検出ヘッドと透過散乱光検出ヘッドとが別々に定盤と当該定盤上に立設するコラムとのどちらかに対向して設けられると共に、被検査物を保持するホルダが定盤上に設けられたXYステージによって片持ち支持され、検査ビーム光学系及び反射散乱光検出ヘッドと透過散乱光検出ヘッドとの間において被検査物が相互に直交する二方向に移動しながら検査ビームの走査が行われることを特徴とする。
さらに、本発明にかかる欠陥検査方法は、焦点深度の範囲内に被検査物の厚みが収まるように焦点深度が調整された検査ビームが被検査物に照射され、被検査物に対して検査ビームを照射する側と同じ側において被検査物で反射した検査ビームの反射散乱光が検出されると共に、検査ビームの反射散乱光の検出位置と被検査物を挟んだ対向位置において被検査物を透過した検査ビームの透過散乱光が検出されることを特徴とする。
請求項1並びに7記載の欠陥検査装置及び方法によれば、焦点深度が被検査物の厚み以上となる検査ビームで検査ビームの焦点深度の範囲内に被検査物の厚みが収まるようにして走査されるため、被検査物の表面から裏面にかけてビームスポットの径が大きく変化せずにほぼ一定に保たれて、検査感度に大きなばらつきが生じない。このため、被検査物の表面に異物の付着や傷、内部のボイド、裏面への異物の付着や傷があると、散乱光が発生し被検査物の表側と裏面側とに配置された散乱光集光器によって集光されてフォトマルチプライヤーで検出される。依って、被検査物の表面、内部及び裏面の欠陥を1回の2次元走査により同時に検査可能となる。しかも、被検査物の表面から裏面にかけてビームスポットの径が大きく変化せずにほぼ一定に保たれて、検査感度に大きなばらつきが生じないため、深みのある検査即ち厚みのある被検査物の表面、内部及び裏面の同時検査を可能とする。
また、散乱光検出による欠陥検査であるため、微分干渉光学系による検査と異なって焦点を合わせる調整に精度が求められないので、光学系の調整に多大の工数と時間がかからない。しかも、検査ヘッドの送り時の微小な振動などのノイズの影響を受け難く、調整の再現性が良い構造・装置であることから、高速検査が可能となる。
また、請求項2記載の発明によると、ビームウェストの位置が被検査物Wの中(厚みt方向のいずれか)であれば、中心からある程度ずれて被検査物の表面側寄りあるいは裏面側寄りに設定されても、被検査物の表面側と裏面側とでそれほど検出感度に大きなばらつきは生じない。また、請求項3記載の発明によると、被検査物の厚みの中心にビームウェストが形成されるため、被検査物に対して焦点深度が対称となり、焦点深度の範囲内に被検査物が均等に収まって走査されることから、被検査物の表面側と裏面側とで概ね検査感度が等しくなりばらつきが生じない。
また、請求項4及び5記載の発明によると、散乱光発生箇所の周りの360°で、被検査物に沿って散乱する散乱光も取り込むことができるので、さまざまな方向に散乱する散乱光を効率良く集光して、検出感度を高くすることができる。しかも、焦点深度に影響されず、効率良く集光できる。
また、請求項6記載の発明によれば、卓上式の小型被検査物用欠陥検査装置を実現することができる。
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図4に本発明の欠陥検査装置の一実施形態として卓上用欠陥検査装置として構成した例を示す。この卓上用欠陥検査装置は、例えば半導体用の石英ガラスや、ブランクス、レジストなどを検査する装置として好適なものである。
この卓上用欠陥検査装置は、定盤1と、その上に垂直に立設されているコラム2と、コラム2に昇降可能に搭載されている光学基台3と、定盤1の上に搭載されてX方向及びY方向の互いに直交する二軸方向にモータ駆動により摺動するXYステージと、XYステージに載置されて小型の検査対象物例えばフォトマスク用の被検査物Wを固定支持する被検査物ホルダ6と、被検査物Wを上下方向に挟むように配置されてコラム2の上の光学基台3に搭載された検査ビーム光学系11及び反射散乱光検出ヘッド12並びに定盤1に支持された透過散乱光検出ヘッド13とを備える。本実施形態の卓上用欠陥検査装置は、Z軸方向のオートフォーカス制御を除いて実質的に固定的な検査光学系に対して被検査物を水平面内で直交する二軸方向に移動させることで、相対的に2次元走査を行うようにしてものである。尚、定盤1とコラム2としては、一般に熱膨張の影響が少ない石定盤、石柱が使用される。
XYステージは、本実施形態の場合、定盤1の上に搭載されて定盤1の左右方向(光学基台3と平行な面内での往復動)に移動するX軸方向送り機構4と、このX軸方向送り機構4の上に搭載されて定盤1の前後方向(光学基台3と直交する面内での往復動)に移動するY軸方向送り機構5と、Y軸方向送り機構5の上に据え付けられて被検査物Wを載置して保持する被検査物ホルダ6とで構成され、X軸方向送り機構4とY軸方向送り機構5とによって被検査物WをXY方向に移動可能に設けられている。尚、X軸方向送り機構4及びY軸方向送り機構5は、図示していないが、例えばリニアモータやACサーボモータによって駆動される。
また、Y軸方向送り機構5の上に搭載されている被検査物ホルダ6は、図2に示すように、Y軸方向送り機構5の端部よりもコラム2側に向けて突出するように、可動子(ねじで送られる部材)5aに片持ち支持されている。そして、定盤1に支持された透過散乱光検出ヘッド13とコラム2の上の光学基台3に搭載された検査ビーム光学系11及び反射散乱光検出ヘッド12との間に設定されるスペースで被検査物ホルダ6をXY方向に移動させるように配置される。被検査物ホルダ6は、図7に示すように、落とし込むようにして被検査物Wの縁を受け支える凹部からなる受座6aと、受座6aに嵌め込まれた被検査物Wの縁を抑えて固定する係止手段60がその周囲に備えられている。低速検査時には被検査物Wの固定は特に必要はないが、高速検査時には係止手段60で被検査物Wを押さえて固定することが望ましい。この係止手段60は、例えば押さえ板ばねのようなものでも良いが、本実施形態では、定盤1の前後(奥行き方向)に摺動可能な係止爪が採用され、図示していないばねの力で常時付勢するように設けられている。したがって、係止爪60を引き下げてから、被検査物Wをセットし、その後は係止爪60を離すことによって自動的に被検査物Wが固定される。
光学基台3は、図2に示されように、コラム2に対し固定される下ベース8と、この下ベース8上に摺動可能に連結されている上ベース9と、上ベース9をZ軸方向(鉛直方向)に送る送り機構(図し省略)と、エンコーダ付きのDCモータ10とから構成される昇降機構7を介してコラム2に昇降可能に取り付けられている。DCモータ10はオートフォーカス機構からの制御信号によって駆動され、光学基台3の上に搭載されている検査光学系(検査ビーム光学系11、反射散乱光検出ヘッド12及びオートフォースカス光学系45を含む)が全体として昇降し、常に検査ビームの焦点深度の範囲に被検査物Wが収まるように、好ましくは被検査物Wの厚みtの中心位置に焦点位置(ウェストビームの位置)が大凡定まるようにオートフォーカス制御されている。尚、下ベース8と上ベース9との間にはリミットスイッチ7aが配置されて上下両端のストロークエンドが定められる。
光学基台3の上には、検査ビーム61を被検査物Wに向けて照射する検査ビーム光学系11と、被検査物Wからの反射散乱光を受光する反射散乱光検出系12と、検査ビームを目的とする焦点位置に保つためのオートフォーカス機構45とが搭載されている。本実施形態の欠陥検出装置は、光学系は固定で、被検査物Wが移動することで走査されるため、被検査物Wを透過した透過散乱光を受光する透過散乱光検出系13は定盤1に搭載されている。透過散乱光検出ヘッド13は、被検査物Wを挟んで反射散乱光検出ヘッド12とは反対側に配置されて石定盤1に固定されている。尚、本実施形態の検査ビーム光学系11では、検査ビーム61が被検査物Wに対して垂直に入射されているので、光学基台3はオートフォーカス機構45によって駆動され、オートフォーカス機構45を含めた検査ビーム光学系11と反射散乱光検出系12との位置関係を固定したままZ軸方向に移動可能とされている。
したがって、被検査物Wの全面は、検査ビーム光学系11と反射散乱光検出ヘッド12並びに透過散乱光検出ヘッド13の相対的移動によって2次元的に走査される。尚、本実施形態におけるXYステージは、走査中、X方向へは連続的に送りが与えられ、Y方向へはX方向への往動と復動との切換の間に送られる。
次に、図5及び図6に、検査光学系の一例を示す。検査光学系は、被検査物Wに検査ビーム61を走査させる検査ビーム光学系11と、検査ビーム61の被検査物Wからの反射散乱光を検出する第1の散乱光検出光学系(反射散乱光検出ヘッドと呼ぶ)12と、被検査物Wを透過した散乱光を検出する第2の散乱光検出光学系(透過散乱光検出ヘッドと呼ぶ)13とからなり、被検査物Wを挟んで対向するように配置される。本実施形態の場合、被検査物Wが被検査物ホルダ6によって水平に配置されて水平面をXY方向に移動するため、検査ビーム光学系11及び反射散乱光検出ヘッド12はコラム2の正面に備えられている光学基台3の上に搭載され、透過散乱光検出ヘッド13は定盤1に備えられている。
検査ビーム61を被検査物Wに照射する検査ビーム光学系11は、例えば、光源となる半導体レーザー14、コリメートレンズ15、エクスパンダ平凹レンズ16、エクスパンダ平凸レンズ17、リレーレンズ18、第1のミラー(全反射ミラー)19、第2のミラー20、fθレンズ21、ポリゴンミラー22、結像レンズ23及び対物レンズ24とから構成されている。尚、検査ビーム61のスポット形状(断面形状)は検出しようする異物・傷・欠陥の大きさをカバーできる必要十分なビーム幅であれば良く、真円でも、楕円形でも、非円形(多角形や輪郭形状がギザギザした不定形な輪郭形状など)であっても良い。
ポリゴンミラー22は、任意の数の反射面例えば14個の反射面を有し、その回転軸線は入射する走査ビームをY軸方向に走査するように設定されている。ポリゴンミラーには駆動回路(図示省略)が接続され、駆動回路からの駆動信号により所定の回転速度で回転する。従って、ポリゴンミラー22から、周期的に偏向され走査ビームが周期的に出射する。また、ポリゴンミラー22の前面には、スキャンの開始を検出するための光センサ63が配置され、当該光センサ63から出力される信号をポリゴンミラー22のスキャンタイミング情報信号として利用する。したがって、ビームをカウントするすることができる。そして、スキャン列を構成するスポット数は予め決まっており、スポットの順番が位置そのものを表していることとなるので、どこのスポットか把握することができる。尚、ステージの位置(エンコーダ信号出力でわかる)も信号処理回路へ入力されているので全ての同期がとれる。
半導体レーザー14で発生するレーザービーム・検査ビーム61は、コリメートレンズ15を経て、エクスパンダ平凹レンズ16とエクスパンダ平凸レンズ17とで構成されるエキスパンダを経て拡大平行光束に変換され、リレーレンズ18を経て第1のミラー19と第2のミラー20で方向転換されてfθレンズ21に入射される。そして、検査ビーム61はポリゴンミラー22に入射される。ポリゴンミラー22でスキャンされる検査ビーム61は、f−θレンズ21と結像レンズ23並びに対物レンズ24に入射される。
ここで、対物レンズ24を経て被検査物Wに照射される検査ビーム61は、検査ビーム61の焦点深度bの範囲に被検査物Wが収まるように、好ましくは被検査物Wの厚みtの大凡中心位置で焦点を結ぶように調整される。例えば、図11に示すように、光学系の調整により、被検査物Wの厚みtのおおよそ中心の位置にビームウェスト61wが形成され、かつ被検査物Wの裏面を通過する際に焦点深度(レイリー長さ)bの範囲にあるようにされている。ここで、ビームウェスト61wは被検査物Wの中で且つ厚みt方向のおおよそ中央に設定されていないと、被検査物の表面側と裏面側とで感度のばらつきが生じてしまうが、表面側と裏面側との間の検出感度のアンバランスが生じても問題としない検査においてはある程度中心位置から外れても問題ない。つまり、ビームウェスト61wの位置が被検査物Wの中(厚みt方向のいずれか)であれば、中心からある程度ずれて被検査物の表面側寄りあるいは裏面側寄りに設定されても、被検査物の表面側と裏面側とでそれほど検出感度に大きなばらつきは生じない。また、場合によっては、被検査物の厚みtが焦点深度の範囲内にあるというだけでも良く、必ずしも被検査物Wの中にビームウェスト61wが存在しなくとも良い。被検査物Wの外にビームウェスト61wが設定されていても、焦点深度の範囲に被検査物Wが収まっていれば、ある程度検出感度は落ちるが、それが特に問題とならない検査目的であれば十分実施可能である。
尚、焦点深度bを深くすることは、NA(開口数)を小さくしてビームウェスト61wが極めて小さな面積に絞られないようにすること、即ち光エネルギの密度が低くなり検査感度が下がることを意味しているので、焦点深度bが必要以上に深く(レイリー長さを長く)設定されることは当然に選択されない。したがって、検査ビーム61の焦点深度bを被検査物Wの厚みt以上に設定するとは、被検査物Wの厚みより焦点深度bが際限なく深くされることがないこと、つまり被検査物Wの厚みよりも焦点深度bを深くするといっても必要以上に深くされるべきでないことは当業者において自明なことである。例えば、厚み17mmの石英ガラスの欠陥検査の場合には、少なくとも17mm、好ましく18〜22mm程度、より好ましくは20mm程度の焦点深度に設定すれば必要十分である。因みに、焦点深度20mmの検査ビーム61におけるのビームウェストの直径は例えば30μm程度である。ここで、ビームウェスト61wを被検査物Wの厚みtの中心に設定する光学系の調整は、特定の手法に限られるものではない。例えば、中央に欠陥のある試料を作成し、それを用いて光学系を調整するなどの簡便な方法でも行える。また、ビームウェストの径の調整は例えばリレーレンズの調整でもできる。
この検査ビーム光学系11によれば、ポリゴンミラー22によりスキャンされる検査ビーム61は、被検査物WがX方向(幅方向)及びそれと直交するY方向(奥行き方向)に2次元的に移動させられるので、被検査物Wの全面を走査することになる。しかしながら、被検査物Wの表面、内部及び裏面で真っ直ぐ反射して入射方向に戻る反射ビームは、欠陥の検出には使用されず、散乱光のみが欠陥等の検出に使用される。尚、反射ビームは、半導体レーザ14側に戻らないように光学系が調整されている。
そこで、光学基台3には反射散乱光検出ヘッド12が搭載されている。反射散乱光検出ヘッド12は、反射散乱光集光器25と、第1の反射集光ミラー26と、集光レンズ27と、第2の反射光ミラー28と、散乱光を電気信号に変換する反射散乱光検出センサとしての反射散乱光用PMT(フォトマルチプライヤー:光電子倍増管)29とから構成されている。
反射散乱光集光器25は、例えば、図9及び図10に示すように、外側の円筒30と内側の逆截頭円錐体31との二重構造から成り、内側の逆截頭円錐体31の中に対物レンズ24が収納されたコンパクトな構造とされている。ここで、外側の円筒30と内側の逆截頭円錐体31とは、例えば両端において散乱光に対する遮蔽物とならない程度の細い複数本のステー34によって等間隔に連結されて一体化されている。内側の逆截頭円錐体31は、下に向けて径が小さくなるように配置され(逆円錐)、大径となる上部側に対物レンズ24が収容される円形の空間32が形成されている。逆截頭円錐体31の下部には対物レンズ24が収容される空間32と連通する楕円形状のスリット33が形成され、対物レンズ24から出射される検査ビーム61がスリット33を通過して被検査物Wに向かうように設けられている。逆截頭円錐体31の外周面36は鏡面を構成し、外筒30の内周面35も鏡面を構成している。しかも、被検査物Wと対向する入射口37において、内側の鏡面を構成する逆截頭円錐体31の直径が必要十分な最小径あるいはそれに近いものとできるので、開口面積が広くできる。したがって、対向する外筒30と内筒31との間に進入する反射散乱光は、ほぼ水平方向に反射する散乱光を含めて逆すり鉢状の鏡面内に取り込まれ、入射した散乱光は必ず出射口38に集められ、出射口38の上に配置された第1の反射集光ミラー26に集められる。このため、反射散乱光の集光に死角がなく、360°集光可能であると共に、大口径で製作がし易い。第1の反射集光ミラー26と第2の反射光ミラー28との2枚の反射ミラーで集光レンズ27を挟み、反射散乱光用PMT29に集光するので、光路中に遮るものもなく、死角もないことから、集光効率が良い。
第1の反射集光ミラー26と、第2の反射光ミラー28とは、図8に示すように、反射散乱光集光器25の出射口38の上で反射散乱光集光器25と結像レンズ23との間に対物レンズ24と交わらない位置に設置されている。この第1の反射集光ミラー26と、第2の反射光ミラー28とは、集光レンズ27を挟んで45°の傾斜を持たせて平行に配置されている。また、第1の反射集光ミラー26は検査ビーム61の光軸と交わるため、中央部分に検査ビーム61が通過する細長いスリット39が設けられている。このスリット39は、スキャンされる検査ビーム61のスポット軌跡の幅、即ちスキャン幅に対応させた長孔とされており(スキャン幅よりも僅かに長い長孔)、被検査物Wに照射される検査ビーム61と被検査物Wの表面から正反射されてくる検査ビーム61の反射光のみを通過させ、被検査物Wの表面から反射してくる散乱光を通過させない幅、長さとされている。また、第1の反射集光ミラー26は、反射散乱光集光器25の出射口38から出射される反射散乱光を漏れなく反射させるために必要な大きさとされており、反射散乱光集光器25の出射口38を覆いつくす幅・長さの全反射ミラーとされている。また、第2の反射集光ミラー28においても第1反射集光ミラー26と同じ大きさの全反射ミラーとされているが、中央にスリット39は設けられていない。したがって、反射散乱光集光器25によって捕捉された被検査物Wからの反射散乱光は、漏らすこと無く全てが第1の反射集光ミラー26と集光レンズ27と第2反射集光ミラー28によって反射散乱光用PMT29に入射される。そして、反射散乱光用PMT29において電気信号に変換され、必要に応じて増幅器により増幅され、信号処理回路に供給される。このため、光路中に遮るものもなく、死角もないことから、360°集光可能であって集光効率が良い。つまり、検出感度が良くなる。
他方、定盤1に備えられている透過乱光検出ヘッド13は、透過散乱光集光器40と、散乱光を電気信号に変換する反射散乱光検出センサとしての透過散乱光用PMT41とから構成されている。ここで、透過散乱光集光器40は内周面が鏡面に仕上げられてミラーを構成する例えばアルミニウムの中空のロート状の集光筒42であり、透過散乱光が入射される上端部の開口部の中央には被検査物Wを真っ直ぐ透過する検査ビーム61を捕捉して散乱光と分離する検査ビーム捕捉素子43を備え、散乱光のみを集光筒42の下端に接続された透過散乱光用PMT41に入射させる構造とされている。尚、図示していないが、ロート状の集光筒42とその内側の検査ビーム捕捉素子43とは、例えば散乱光に対する遮蔽物とならない程度の細い複数本のステーによって等間隔に連結されて一体化されている。
検査ビーム捕捉素子43は、本実施形態の場合、例えば円柱ブロックの中央にスキャン幅に対応させた長さの楕円形状の凹部(底部を有し貫通していない)が形成されたものであり、少なくとも凹部を低反射率の素材で区画形成したり、凹部の内面を低反射率の素材で被覆して、凹部に入射した検査ビームを閉じ込める、所謂ブラックホールのようなものである。検査ビーム捕捉素子43を構成するブロックの外表面は鏡面とすることが好ましい。透過散乱光は検査ビーム捕捉素子43の周りを通過あるいは反射しながら出口側に導かれ、出口に配置された透過散乱光用PMTで検出される。尚、ブラックホール素子に代えて、光ファイバの束を中央に配置し、真っ直ぐに透過する検査ビームを透過集光ミラーの外に導き出して透過PMTで検出できないようにすることも可能である。反射散乱光検出ヘッド12及び透過散乱光検出ヘッド13の各PMT29、41に入射された散乱光は光電変換されて信号処理装置に検出信号として供給される。尚、信号処理回路は図示していないが光学基台3に実装されている。
また、本実施形態にかかる卓上用欠陥検査装置は、被検査物Wの片持ち支持に起因するステージの振動の影響を除くため、オートフォーカス制御をかけて、対物レンズ24の焦点位置が一定となるように光学基台3ごと検査光学系をZ軸方向に移動させている。
ここで、本実施形態にかかるオートフォーカス(AF)制御機構は、例えば、光テコ方式により焦点誤差信号を発生させるものである。具体的には、例えば検査ビーム光学系11の結像レンズ23及び対物レンズ24を利用して、AFレーザダイオード46、AFLDコリメート47、第1のAFミラー(全反射ミラー)48、AFリレーレンズ49、第2のAFミラー50、AF制御センサ51によってAF制御機構が構成されており、光学基台3に搭載されている。本実施形態においてAF制御センサ51は例えば4分割された素子でブリッジ回路を構成するものが採用されているが、これに限られるものではなく、一般的な2分割センサでも良い。AFレーザーダイオード46から出射された焦点検出ビーム62は、AFLDコリメート47、第1のAFミラー48、AFリレーレンズ49及び第2のAFミラー50を順次経て、検査ビーム61の光路に入射される。そして、fθレンズ21を経てポリゴンミラー22に入射される。ポリゴンミラー22で反射された焦点検出ビーム62は、再びfθレンズ21を通過し結像レンズ23及び対物レンズ24を経て、被検査物Wの表面上に合焦される。尚、対物レンズから出射した焦点検出ビーム62は、光軸を通る検査ビーム61とは異なり、被検査物Wの表面に対して斜めの角度で入射する。AFビームは三角法原理を利用しているので、入射角はできるだけ大きくする方が良い。被検査物Wの表面で反射した焦点検出ビーム62は、再び対物レンズ24を通過し、戻り光として逆の光路を位置をずらして進行する。そして、結像レンズ23及びfθレンズ21を経てポリゴンミラー22に入射し、デスキャンされる。さらに、ポリゴンミラー22で反射し、fθレンズ21、第2のAFミラー50、AFリレーレンズ49を透過し、第1のAFミラー48で反射される。そして、AF制御センサ(ビーム変位素子)51に入射される。
焦点検出ビーム62が設定された焦点位置における被検査物Wの表面上に合焦すると、AF用基板51上に形成される焦点検出スポットは、分割線上に均等に位置し、2組みの受光領域には互いに等しい光量の光が入射する。被検査物Wが対物レンズの光軸方向(Z軸方向)に変位すると、AF用基板51の4個の受光領域に入射する光量が変化するので、4個の受光領域からの出力信号に基づいて検査ヘッドを光軸方向に駆動するための焦点制御信号を形成することができる。
4個の受光領域からの出力信号は、光学基台3を光軸方向に変位させる駆動装置に供給される。本実施形態では、光学基台3は、検出される焦点誤差に応じて光軸方向に駆動され、常に検査ビームの焦点深度の範囲内に被査物Wが収まるように制御される。そして、本実施形態の場合には、ビームウェスト61wの位置が被検査物Wの厚みtの大凡中心に収まるように制御されている。
上述したオートフォーカス制御機構は、検査に先立って、検査ヘッドを光軸方向に変位させながら、例えば中央に欠陥のある試料などを使って、ビームウェスト61wが被検査物Wの厚みtの大凡中心位置に形成されように光学系を調整する。また、ビームウェスト61wの径の調整は、例えばリレーレンズやエクスパンダなどの光学系の調整で行われる。そして、その焦点位置あるいはそのときの被検査物の表面と対物レンズ24との間隔が一定に保たれるようにオートフォーカス機構のAF用基板51の出力を調整し、AF用基板51の4個の受光領域のブリッジ回路の出力強度が互いに等しくなるように設定する。このように設定された状態において、オートフォーカス機構を動作させ、焦点制御信号を出力する。そして、モータに駆動信号を供給し、検査中に検査ビームの焦点深度内に被検査物Wの厚みが収まるようにオートフォーカス制御が行われる。
また、光学系基台3には、レビュー用光学系52が搭載されている。このレビュー用光学系52は、例えば顕微鏡53と、顕微鏡CCDカメラ54と顕微鏡用対物レンズ55とで構成され、検査ビーム光学系11と平行に配置されている。また、顕微鏡用対物レンズ55の周辺には照明用のLEDスポット照明56や、この照明光源56からの照明光を観察位置に導くための反射ミラー57などが搭載されている。このレビュー用カメラ54の光軸位置と検査ビーム61の光軸位置とのオフセット値は既知であり、メモリあるいはソフトウェア上で記憶されているので、実際に検査している位置の表面を顕微鏡CCDカメラ54による観察に切り替えるときには、オフセット値に基づいてX軸方向に移動させて、実際に検査している箇所(異物あるいは傷などの欠陥があったと思われる位置)の表面を実体観察する。
以上のように構成された卓上用欠陥検査装置による、散乱光の検出による異物あるい傷などの検出原理について以下に説明する。
まず、原点出しが行われ、座標系の情報が取得される。次いで、被検査物Wの種類や検査種別・検査レベルに応じた諸条件等が読み込まれる。その後、ポリゴンミラー22とレーザ14が駆動される。そして、オートフォーカス機構45が起動され、被検査物Wに向けて所定位置まで光学基台3がZ軸方向に降下させられる。検査開始により、所定幅例えば5mm幅(奥行き方向・Y方向)にスキャンしながらステージ・被検査物ホルダ6をX軸方向に連続的に所定の速度で送って、被検査物Wを横断した後に、所定ピッチだけ奥行き方向・Y方向に送りを与える。検査ビームは、一定のスキャン幅(Y軸方向)で繰り返されながら、スポットが外れないように移動(X軸方向)させられている。再びスキャンしながら戻る。スキャンは行きと帰りで一部重なるように設定されている。これを繰り返して、被検査物Wの全面をスキャンする。
検査ビーム光学系11の検査ビーム61が被検査物Wの表面に垂直に照射されると、被検査物Wの表面上に異物が存在する場合、異物により散乱光が発生する。この散乱光は、主に検査ビーム61の進行方向と反対の方向に進行するもの(反射散乱光と呼ぶ)であるが、一部は検査ビーム61の進行方向にも進行し被検査物Wを透過するもの(透過散乱光)となる。また、被検査物Wの内部に気泡(ボイド)や局所的な屈折率分布が存在する場合には、これらのボイドからも散乱光が発生する。この被検査物Wの内部で発生する散乱光の場合は、主に透過散乱光となるが、一部は反射散乱光となって被検査物Wの表面側にも進行する。さらに、被検査物Wの裏面に異物や傷などが存在する場合に発生する散乱光は、被検査物Wの内部で発生する散乱光と同様に、主に透過散乱光となるが、一部は反射散乱光となって被検査物Wの表面側に進行する。
このため、被検査物Wの表面側に配置された反射散乱光集光器25には反射散乱光が集められ、被検査物Wの裏面側に配置された透過散乱光集光器40には透過散乱光が集められる。したがって、反射散乱光検出ヘッド12により反射散乱光が検出されたときには、主に被検査物Wの表面に存在する異物や欠陥を検出したものであり、透過散乱光検出ヘッド13により透過散乱光が検出された場合には主に被検査物Wの内部のボイドなどの内部欠陥や裏面に付着した異物や傷などを検出したものであるとすることもできるが、厳密な意味ではこれらを特定することはできない。
つまり、反射散乱光検出ヘッド12からの検出信号は、あくまで反射散乱光を検出したものであって、透過散乱光検出ヘッド13からの検出信号はあくまで透過散乱光を検出したものでしかない。したがって、被検査物Wの或る位置における表面あるいは裏面若しくは内部に、異物の付着や傷などの欠陥の存在があるということは検出できる。しかも、反射散乱光検出ヘッド12により検出されたものか、透過散乱光検出ヘッド13により検出されたものかで、その異物や欠陥などが主に被検査物Wの表面に存在するのか、あるいはそれ以外(内部若しくは裏面)に存在するものなのかは大凡判断することはできる。
しかしながら、その異物や欠陥などが、被検査物Wの表面に存在するのか、あるいはそれ以外(内部若しくは裏面)に存在するものなのかを厳密には特定することはできない。これをさらに厳密に判別する必要がある場合には、レビュー用光学系52を併用することにより、さらに異物や傷の位置を特定することを可能とすることができる。つまり、レビュー用光学系52の光軸位置と検査ビーム光学系11の光軸位置とのオフセット値は既知であり、メモリあるいはソフトウェア上で記憶されているので、オフセット値に基づいてレビュー用光学系52を実際に検査している箇所(異物あるいは傷などの欠陥があったと思われる位置)に移動させて、実際に検査している位置の表面を実体観察することができる。そして、この実体観察によるレビューで被検査物Wの表面の異物あるいは傷などの欠陥が確認できないときには、その傷などは被検査物Wの表面以外の部分即ち被検査物Wの内部あるいは裏面の傷などと判断できる。
因みに、本実施形態にかかる卓上用欠陥検査装置によれば、検査ビーム光学系11によるレビューは、1回欠陥検査した後に、異物あるいは傷などの欠陥があったと思われる位置(座標)に戻って、その座標を中心に前後にスキャンすることによって行うことができる。そして、検査ビーム光学系11によるレビューの結果は、スキャン画像として表示装置に表示される。そして、散乱光の輝点を確認することができる。その後、その既定の位置の実体観察によるレビューで表面の異物、傷などの欠陥を確認できないときに、被検査物Wの内部の欠陥例えばボイド、裏面の傷や異物付着と判断することができる。因みに、ステージの位置情報・座標情報と欠陥信号とが信号処理回路に入力されて関連付けられるので、欠陥の位置を示すマップを形成できる。これによって、例えば半導体用石英ガラス・6025の検査でも数分/枚程度で完了した。現在、半導体用石英ガラス・6025の検査は1時間/枚程度かかっているので、全量検査をすることができずにロット毎の抜き出し検査をしているのが現状である。しかし、本実施形態にかかる検査装置によれば、全量検査(全品検査)することも可能となる。
以上、散乱光の検出は単なる輝点として把握されるため、それが被検査物Wの表面に付着した異物なのかあるいは傷などの欠陥なのか、さらには被検査物Wの内部に発生したボイドなどの欠陥や裏面に付着した異物あるいは傷などの欠陥に起因するものなのかは分別できない。しかしながら、検査レーザーによるレビューと、CCD顕微鏡カメラによるレビューとで判別することは可能である。
しかも、以上の検査において、焦点深度の範囲で発生する散乱光は大きな光エネルギの密度に差が生じないので、被検査物Wの表面側と裏面側とで感度にばらつきが生じ難い。ほぼ同等の輝度として検出することができる。ここで、仮に、ビームウェストが強く絞られないことで、光エネルギが分散したとしても、被検査物Wの厚み方向が焦点深度b内であり、被検査物Wを通過する領域でビームウェスト61wのスポット径が大きく変化しない場合、全体に感度不足を補う方法はある。例えば半導体レーザのパワーを大きくしたり、集光効率を上げることで可能である。特に、散乱光集光器として、図8に示すような360°開口している2重筒状のミラーから成る反射散乱光集光器25及び/又は透過散乱光用集光器40を使用する場合、検査ビーム61のいずれかの部分から発生した散乱光を効率良く集光することが可能になる。したがって、実施形態の反射散乱光集光器25を用いた反射散乱光検査ヘッド11や透過散乱光集光器40を用いた透過散乱光検出ヘッド13を併用することで、散乱光の集光効率を上げることで、半導体レーザのパワーを大きくしなくとも十分な検出感度を確保できる。
尚、散乱光を検出して欠陥判定する場合、反射散乱光検出ヘッド12及び透過散乱光検出ヘッド13の各PMT29、41からの検出信号の振幅を所定の閾値と比較し、閾値を超えた場合欠陥が存在するものと判定することもできる。
本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変形や変更が可能である。例えば、上述した実施例では、被検査物Wの欠陥検査について説明したが、被検査物W以外に、フォトマスクの保護に用いられるペリクルの欠陥検査についても適用することができる。ペリクルは、薄い透明膜であり剛体ではないため、検査中に変形し易い特性がある。これに対して、本発明の検査光学系は、検査中にペリクル面が変位ないし変形しても、ペリクルからの反射光が光検出手段に入射するので、正確な欠陥検査を行うことができる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では主に小型の被検査物Wを検査対象とした卓上型欠陥検査装置について適用した例を挙げて説明したが、これに特に限られるものではなく、必要に応じて大型の被検査物に適用する構成としても良い。図示していないが、被検査物を固定し、検査ヘッド側を駆動させる構成とすることにより、比較的大型の被検査物に適用することも可能である。この場合には、例えば、基台上に被検査物を立てて固定配置する。検査ビーム光学系11と反射散乱光検出ヘッド12及びオートフォーカス光学系45並びにレビュー用光学系52とが搭載されている第1の光学基台と透過散乱光検出ヘッド13を搭載する第2の光学基台とが被検査物Wを挟んで水平に対向配置され、被検査物Wに対して鉛直面内で直交する二軸方向に移動させることで、相対的に2次元走査を行うようにさせても良い。この場合、第1の光学基台と第2の光学基台とは同期をとって同一方向に駆動され二次元的に移動させるので、被検査物Wの全面を検査ビームで走査できる。
また、透過散乱光を検出する透過散乱光集光器40としては、例えば検査ビーム捕捉素子(ブラックホール)43の周囲に沿って配列した多数の光ファイバのバンドルによって構成することも可能である。この場合には、光ファイバの出射端に透過散乱光用PMT41を配置して、透過散乱光を検出することができる。さらに、検査ビーム捕捉素子(ブラックホール)43を用いずに光ファイバだけで受光面を構成し、光ファイバの束の中央の一部の光ファイバ、つまり被検査物Wを真っ直ぐに透過する検査ビームだけを受光する領域部分の光ファイバの出射端を透過散乱光用PMT41に接続せずに、そのまま開放端として透過散乱光用PMT41で検出できないようにすることも可能である。勿論、これらの場合においても、検査ビームの被検査物Wにおける焦点深度を深くして焦点深度の範囲に被検査物Wの厚みを収めることにより、被検査物Wの表面のみならず内部や裏面での欠陥や付着異物の存在を1回の検査で検出し得るという特有の効果を喪失するものではない。
また、被検査物Wに連続的にビームを当てて(スキャンしない)、ステージ側を送ることで検出することも可能である。また、上述の実施形態では厚みのある被検査物W例えば17mmもの厚みのある石英ガラスのような被検査物Wに対する深みのある検査に適用できるものとして、垂直に検査ビームを当てる場合を例に挙げて主に説明したが、これに特に限られるものではなく、シリコンウェハのような薄いものであれば、斜めから検査ビームをあてることもある。この場合には、欠陥があるときにより散乱し易い上に、散乱指向性が強くなるので、検出し易くなる。
また、上述の実施形態では、反射散乱光集光器25として2重筒構造のミラーを利用したものを用いた例を挙げて主に説明したが、本発明これに特に限られるものではなく、回転放物面体の一部を光軸(中心軸線)と直交する2つの面で切り出した楕円放物面鏡(特開2010−112803号公報で記載されている集光素子)を用いても良い。この場合においても、検査ビームの被検査物Wにおける焦点深度を深くして焦点深度の範囲に被検査物Wの厚みを収めることにより、被検査物Wの表面のみならず内部や裏面での欠陥や付着異物の存在を1回の検査で検出し得るという特有の効果を喪失するものではない。