JP2019080878A - 人工関節用カップとその作製方法 - Google Patents

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齋藤 誠
Makoto Saito
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Abstract

【課題】球状ヘッドを摺動可能に支持する略半球殻状に造形され、球状ヘッドに対して直径赤道面を超えて被るように、球状ヘッドを受け入れる凹球面部が半球線を超え延在して形成され、かつ、半球殻状の開口側淵部に切り込み溝が設けられた人工関節用カップにおいて、最適な脱臼防止力を発揮しうる形状の人工関節用カップを提供する。【解決手段】球状ヘッドを摺動可能に支持する略半球殻状に造形された人工関節用カップにおいて、球状ヘッドに対して直径赤道面を超えて被るように、球状ヘッドを受け入れる凹球面部が半球線を超え延在して形成され、かつ、半球殻状の開口側淵部に切り込み溝4が設けられ、半球線から、半球線を超え延在して形成された高さ(h)が、人工関節用カップの外殻2の外径Dに対する比率で、0.03D≦h≦0.12Dの範囲とされる。【選択図】図1

Description

本発明は、人工股関節に関し、特に、脱臼防止機構のついた人工関節用カップに関するものである。
従来の人工股関節は寛骨臼に固定された半球殻状のカップに球状の骨頭が挿入され、骨頭に接続したステムが大腿骨に固定され、結果として大腿骨がカップの周りで回転できる構造となっている。この結果、大腿骨に連結した大腿(下肢)が寛骨臼のまわりで回転できることになり、歩行が可能となる。しかしながら、カップが半球殻のため、骨頭が抜けやすいという欠点があった。
そこで、本発明者らは既に、球状ヘッドを摺動可能に支持する略半球殻状に造形された人工関節用ソケットにおいて、球状ヘッドに対して直径赤道面を超えて被るように、球状ヘッドを受け入れる凹球面部が半球線を超え延在して形成され、かつ、半球殻状の開口側淵部に切り込み溝が設けられた人工関節用ソケットを開示している(特許文献1を参照)。
これは、カップに相当する人工関節用ソケットを半球より若干大きくすることで脱臼を防止するものである。また、ソケットの球殻の開口側の淵部分に切り込み溝が設けられていることから、ソケットを骨盤に固定した後においても、球状ヘッドをソケットの凹球面部に容易に挿入できる構造となっている。
そして、上記特許文献1では、溝の幅、溝の深さ、溝の本数、並びに、溝の配置をパラメータとして、ソケットの開口側淵部の口開き剛性を所定の強さまで低減調整することで、脱臼を防止する力(以下、脱臼防止力とする。)を調整できるとしている。
特開2010−178973号公報
上述した特許文献1に開示された人工関節用ソケットでは、脱臼防止力が大きくなると球状ヘッドはソケットから抜け難くはなるが、同時に、初期に球状ヘッドをソケットに挿入することが困難になるため、現実的な脱臼防止力を規定し、それを具現化するための具体的な寸法の限定が必要となる。
しかしながら、特許文献1では、これらのパラメータについての具体的な寸法は開示されておらず、また何れのパラメータが支配的であるかについても何ら示唆はない。そのため、脱臼防止力の調整作業が容易ではないといった実情であった。
かかる状況に鑑みて、本発明は、球状ヘッドを摺動可能に支持する略半球殻状に造形され、球状ヘッドに対して直径赤道面を超えて被るように、球状ヘッドを受け入れる凹球面部が半球線を超え延在して形成され、かつ、半球殻状の開口側淵部に切り込み溝が設けられた人工関節用カップにおいて、最適な脱臼防止力を発揮しうる形状パラメータを備える人工関節用カップを提供することを目的とする。
本発明者らは、人工関節用カップの形状の設計パラメータを鋭意検討した結果、一般の構造力学の知見から推定されるパラメータの要素の全てが、均等に脱臼防止力に影響するのではなく、特定のパラメータの要素が脱臼防止力に関して支配的であるとの知見を得た。
すなわち、本発明の人工関節用カップは、球状ヘッドを摺動可能に支持する略半球殻状に造形された人工関節用カップにおいて、球状ヘッドに対して直径赤道面を超えて被るように、球状ヘッドを受け入れる凹球面部が半球線を超え延在して形成され、かつ、半球殻状の開口側淵部に切り込み溝が設けられ、半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さ(h)が、人工関節用カップの外殻の外径(D)に対して、下記式1の範囲とされることを特徴とする。
(数1)
0.03D ≦ h ≦ 0.12D ・・・ (式1)
半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さ(h)が、人工関節用カップの外殻の外径(D)に対して、上記範囲とされることにより、最適な脱臼防止力が得られ、挿入時にはスムーズに骨頭を人工関節用カップに挿入することができ、しかも一旦挿入した後は脱臼が起こり難いのである。半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さ(h)のパラメータが、脱臼防止力に関して支配的であり、このパラメータを調整することにより、脱臼防止力がある機能性の高い人工関節用カップを容易に作製することができる。ここで、脱臼防止力とは、人工関節用カップへの骨頭の挿入後に脱臼を防止し得る力のことであり、装着対象者或は装着対象物の体重の0.25〜1.5倍である。なお、本明細書において、骨頭と球状ヘッドは同義で用いている。
凹球面部の高さ(h)のパラメータは、上記式1の範囲であるが、これは後述の実施例に示すように、実際に解析を行った結果から得られたものである。当初の予想では、有効なhはある程度大きな値を想定していたが、予想に反してかなり小さい範囲となった。具体的には、下限値が、人工関節用カップの外殻の外径(D)の100分の3以上あれば、脱臼防止力を確保できるというのは意外である。
また、本発明の人工関節用カップにおいて、切り込み溝が4〜8個設けられる場合には、半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さ(h)が、人工関節用カップの外殻の外径(D)に対して、下記式2の範囲とされたことが好ましい。下記範囲内の値とされることにより、脱臼防止力をより最適な範囲に調整することができる。
(数2)
0.04D ≦ h ≦ 0.11D ・・・ (式2)
切り込み溝の数が4〜8個とされることにより、脱臼防止力をより最適な範囲に調整することが可能となる。すなわち、切り込み溝の数が3つ以下であると、切り込み溝で分断された外殻部分の高さを高く設ける必要が生じ、骨頭の挿入や引き抜きに応じて外殻が開口変形する際に、分断された外殻の根元部に局所的に高い応力が発生し、ここに亀裂が発生する危険性が高まるからである。一方、切り込み溝の数が9個以上では、機械加工の工数が増えるなど、製造コストが増えるため、実用上は適さない。従って、上述の如く、切り込み溝の数が4〜8個とされるのが好ましい。切り込み溝の数が4〜8個の場合には、凹球面部の高さ(h)が人工関節用カップの外殻の外径(D)に対して上記式2の範囲とされることにより、必要な脱臼防止力を確保できることになる。
特に、本発明の人工関節用カップにおいて、切り込み溝が6個設けられる場合には、半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さが、人工関節用カップの外殻の外径に対して、下記式3の範囲とされたことが好ましい。
(数3)
0.05D ≦ h ≦ 0.1D ・・・ (式3)
さらに、本発明の人工関節用カップにおいて、切り込み溝が6個設けられる場合であって、かつ、人工関節用カップの外殻の厚みが、該外殻の外径に対して、0.04〜0.1倍の範囲にある場合には、半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さが、人工関節用カップの外殻の外径に対して、下記式4の範囲とされたことが好ましい。これにより、人工関節用カップは適切な脱臼防止力を確保することができる。
通常、人工関節用カップは外殻と内殻で構成されており、人工関節用カップの外殻は、金属製であり、生体への安全性からチタン合金が用いられることが多い。一方、人工関節用カップの内殻は、骨頭との摺動に対する耐久性と生体への安全性から超高分子量ポリエチレンが用いられることが多い。チタン合金のヤング率は凡そ100GPaであるのに対して、ポリエチレンのヤング率は凡そ1GPaであり、外殻と内殻の厚みが概ね同じであるならば、カップの開口剛性に関して、外殻が顕著に高いことが判る。そこで、脱臼防止力に影響を与えるものとしては、外殻の厚みが挙げられる。後述する実施例で説明するように、外殻の厚みが変化すると脱臼防止力は変化するが、hに比べると効果は小さいため、脱臼防止力を確保するための設計パラメータとしても、脱臼防止力に大きな変化は見られず、脱臼防止力を確保するための設計パラメータとして、外殻の厚みは支配的ではないものの、凹球面部の高さの設計パラメータに少なからず影響を与えることを考慮してカップの設計を行う方が好ましい。
また、人工関節用カップの切り込み溝は、外殻だけでなく内殻にも入っており、加工上、外殻と内殻の切り込み溝は、同じ幅および深さで、同一半径上に設けられる。しかしながら、外殻と内殻の切り込み溝は、理論上では、両者の切り込み溝の位置は同一半径上に無く、位置がズレたとしても構わない。
また、カップの開口剛性に関して、内殻よりも外殻が顕著に高いことから、カップの開口面は必ずしも面一である必要はない。言いかえると、内殻が外殻に対して若干高低差があっても、カップ全体の開口剛性への影響は小さく問題とならない。
なお、人工関節用カップの切り込み溝の深さは半球線を越えて延在して形成された凹球面部の高さとした。これは半球線より下の凹球面部分は通常の歩行時に骨頭と接触して面圧を受けるため、耐久性の観点から切込みが無いことが望ましいことによる。半球線より上の部分には通常の歩行時には負荷は作用しないため、切込みがあっても耐久性に大きな支障はないといえる。
したがって、上述の本発明の人工関節用カップにおいて、人工関節用カップの外殻に設けられた切り込み溝の深さは、半球線を越えて延在して形成された前記凹球面部の高さとすることができるのである。
(数4)
0.04D ≦ h ≦ 0.12D ・・・ (式4)
本発明の人工関節用カップの作製方法は、脱臼防止力に支配的なパラメータである凹球面部の高さ(h)、すなわち、半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さ(h)が、人工関節用カップの外殻の外径(D)に対して、上述したような所定の範囲になるように、人工関節用カップを作製する。また、人工関節用カップの外殻に設けられた切り込み溝の深さは、半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さとすることができる。
本発明の人工関節用のカップは、最適な脱臼防止力を発揮しうる形状パラメータを備え、脱臼防止力があるといった効果がある。
各パラメータの説明図 脱臼防止力の解析方法の説明図 骨頭引き抜き量と引き抜き力の関係を示したグラフ 脱臼防止力に及ぼす高さh及び厚みtの影響を示したグラフ 脱臼防止力に及ぼす高さh及びスリット数nの影響を示したグラフ 骨頭引き抜き時の応力に関する説明図
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
なお、以下の実施例において、人工股関節用カップは、犬用の人工股関節カップとして説明するが、犬などの動物用に限られず、人間用の人工股関節にも適用可能である。また、股関節以外の他の関節にも適用できる。
図1は、各パラメータの説明図であり、(1)は、人工股関節用カップの断面模式図、(2)は、人工股関節用カップの正面図を示している。図1(1)に示すように、人工股関節用カップ1は、外殻2及び内殻3から成り、挿入される骨頭5(図2を参照)に対して直径赤道面を超えて被るように、骨頭5を受け入れる凹球面部が半球線を超え延在して形成されている。ここでは、外殻2の外径をD、厚みをtとしている。また、骨頭5を受け入れる凹球面部が半球線を超え延在して形成された部位の高さをhとしている。
図1(2)に示すように、外殻2の開口側淵部には、複数の切り込み溝(以下、スリットという)4が設けられており、スリット4の深さをdとしている。
本実施例では、外殻2と内殻3は、図1では面一を基本とし、外殻2と内殻3の開口面高さhについて同一としているが、内殻3の開口剛性は外殻2のそれに比べて著しく低いため、カップ全体の開口剛性に与える影響は小さい。そのため、内殻3の開口面の高さについては、外殻2の開口面の高さと同一、すなわち開口部が面一になることに特にこだわる必要はない。すなわち、外殻2と内殻3の開口部が面一であっても、高低差があってもよく、特に限定されるものではない。
(脱臼防止力を決める因子)
人工股関節用カップ1における脱臼防止力(引き抜き力)は、骨頭5の最大径より若干小さくなっている人工股関節用カップ1の上端開口部を骨頭5の最大径まで押し広げる力と、骨頭と接する内殻3の摩擦係数によって決まる。ここで摩擦については、骨頭5の表面は通常の回転時すなわち歩行時には、内殻3との摩耗を極力低減する観点から鏡面仕上げとなり、両者の摩擦係数は極めて小さくなっている。従って、脱臼防止力は主としてカップ上端の開口部を押し広げるために必要な力によって具現される。これは円周上に軸方向のスリットを有する概略半球殻状のカップ上端の開口の剛性と等価であり、これが、半球を超える高さh、外殻2の厚みt、スリット4の数n及びスリット4の深さdの4種類のパラメータによって決まることは、一般的な構造力学の観点から推定できる。
(各因子の影響度)
脱臼防止力に影響度の大きい因子を探索するため、4種類のパラメータのそれぞれの脱臼防止力に対する影響度を調査した。この調査では、有限要素法による数値解析を用いて確認を行った。
まず、スリット4の深さdについては、半球を超える高さhよりも浅くするとスリット4の底が半球面に届かず、骨頭5がカップの開口部を通過できなくなる。一方、深さdが高さhよりも深くなると骨頭を包む有効な球殻部分が半球より小さくなり、骨頭の保持に支障をきたす。そこで、スリット4の深さdについては、半球を超える高さhと等しい値、すなわち、d=hとした。
次に、半球を超える高さh、外殻2の厚みt及びスリット4の数nの各パラメータに具体的な寸法を与えた人工股関節用カップ1のモデルに対し、数値解析で脱臼防止力を計算した。
図2は、脱臼防止力の解析方法の説明図を示している。図2に示すように、人工股関節用カップ1は、外殻2及び内殻3から成り、内殻3の内側には骨頭5が嵌め込まれている。骨頭5を挿入した人工股関節用カップ1の下部を上下方向に動かないように固定部材6を用いて固定し、骨頭5の上部を矢印7に示す方向にゆっくりと引き上げた。その過程で骨頭を引っ張る点に発生する反力を数値計算した。
図3は、骨頭引き抜き量と引き抜き力の関係を示したグラフを示している。図3に示すグラフは解析結果の一例であり、上記反力を引き上げ量に対してプロットしたものである。このグラフの中で最大の反力が骨頭を引き抜くのに必要な力であり、これを脱臼防防止力と定義した。この解析を高さh、厚みt、スリット数nをパラメータとした人工股関節用カップ1について実施し、それぞれのパラメータ値の組み合わせにおける人工股関節用カップ1の脱臼防止力を求めた。
図4は、高さhを共通のパラメータとして厚みtを変化させた結果である。グラフの横軸は人工股関節用カップ1の外径Dで規格化した値(h/D)、縦軸は脱臼防止力を体重で規格化した値(F/W)を示している。スリット数nは、ここでは6個としているが、その理由について、図6を参照しながら説明する。
図6は骨頭引き抜き時の応力に関する説明図である。図6に示すように、人工股関節用カップ1に骨頭5が装着された状態で、骨頭5を矢印7の方向に引き上げると、外殻2の上端部は矢印70の方向に開口変形する。したがって、スリット4の数が少ないと、切り込み溝で分断された外殻部分の高さhを高く設ける必要が生じ、外殻2が開口変形する際に、分断された外殻の根元部8に局所的に高い応力が発生し、ここに亀裂が発生する危険性が高まることとなる。この応力集中は、スリット4の数が少なくなると急速に大きくなる。一方、切り込み溝の数が多いと、機械加工の工数が増えるなど、製造コストが増えるため、実用上は適さないといえる。そのため、スリット数nは、製造コストを考慮して実用性が高いといえる6個に設定して、解析を行った。
図5は、高さhを共通のパラメータとしてスリット数nを変化させた結果である。図4と同様に、グラフの横軸は人工股関節用カップ1の外径Dで規格化した値(h/D)、縦軸は脱臼防止力を体重で規格化した値(F/W)を示している。
厚みtについては、一般的に骨頭5の直径が0.5D程度であるので外殻2と内殻3の厚みの合計は0.25D程度となるが、従来から内殻3は外殻2より厚くとられていることから外殻2の厚みは0.1D程度が上限と考えられる。そこで、外殻の外径Dに対する厚みtとしては、従来の人工股関節用カップにおける代表的な値でもある0.08Dに設定して、解析を行った。
図4及び5に示すように、いずれの場合も高さhの変化に対して脱臼防止力は大きく変化しているが、厚みt、スリット数nの変化に対しては、脱臼防止力は変化するが、その影響は高さhに比べると小さい。これは脱臼防止力の設計に際しては高さhが最も有効なパラメータであることを示している。そこで、標準的な厚みt、スリット数nに対して実用的な脱臼防止力が得られる高さhの範囲を明らかにすることを試みた。
なお、犬用の人工股関節では犬の体重が体重3kg程度の超小型犬から30kg超の大型犬まで広く分布することから、カップのサイズも広い範囲に及ぶことから、高さhおよび厚みtのパラメータは最も基本的な形状寸法である外殻2の外径Dの関数として表した。
(脱臼防止力の適正範囲)
脱臼を防止するという観点からは、脱臼防止力、すなわち引き抜き力は大きいほうが望ましい。一方で人工股関節用カップ1では、手術時に骨頭5を人工股関節用カップ1に挿入する必要があるが、挿入に要する力は概ね引き抜き力と等しいため、脱臼防止力の増大は手術時の挿入を困難にする。したがって、実用上は最適な引き抜き力が存在するといえる。
脱臼防止力は新しい概念であり、現時点ではこれについての明確な基準はない。そこで本発明者らは臨床試験の経験に基づき、実用的な脱臼防止力の範囲を下記のように設定した。
まず、下限値は脱臼防止力の実用的効果が認識できる最小値という観点から、大腿骨を含む下肢がステム(図示せず)と骨頭5を通して人工股関節用カップ1にぶら下がった状態で筋肉の支えが無くても骨頭5が抜けない値とした。
これは手術時に筋肉の支えがなくても大腿骨が人工股関節用カップ1から抜けないことに対応し、手術時には実用的効果があり、手術後も一定の脱臼防止が期待できる値である。そして、下肢一本の重量は概ね体重の25%とされているため、最小値は適用する犬の体重の25%とした。
一方、上限値については上記とは逆に下肢を持って患犬を逆さに持ち上げても抜けない値とした。即ち、人工股関節用カップ1には全体重から下肢の重量を引いた荷重が骨頭5を引く抜く方向に作用することになる。この場合、持ち上げの際にある程度の加速度が発生する。この加速度を最大2.0とし、上限値は体重の1.5倍とした。(0.75W×2.0=1.5W)
(体重とカップ外径Dの関連)
人工股関節用カップ1を犬に適用する場合、そのサイズは適用する犬の骨格のサイズを基に決められる。一般的には人工股関節用カップ1を埋め込む寛骨臼の大きさから人工股関節用カップ1のサイズが選定される。寛骨臼のサイズは当然個体差があるが、一般的には体重と強い相関がある。そこで、従来の人工股関節の適用例から、体重とカップサイズ(外径)の関係を下記のように設定した。
カップ外径Dと基準体重の関係はおおよそ下記式5に示す通りとなる。
(数5)
基準体重(W)=5×(D/12)(kg) ・・・ (式5)
(カップサイズと引き抜き防止力の関係)
上記の結果を用いると引き抜き力、即ち脱臼防止力(F)の範囲はDの関数として下記式6,7のように表すことができる。
(数6)
mini = 0.25×W=1.25×(D/12) (kg) ・・・(式6)
max = 1.5×W=6×(D/12) (kg) ・・・(式7)
(hの具体的な範囲)
図4は、脱臼防止力に及ぼす高さhと外殻の厚みtの影響を示したグラフであり、外殻の厚みtを0.1D,0.08D,0.06D及び0.04Dと変化させた場合を示している。図4のグラフにおいて、横軸は高さhを直径Dで規格化した値(h/D)、縦軸は脱臼防止力Fを体重W(=5×(D/12))で規格化した値(F/W)を示している。図4において、スリットの数は6である。
図4のグラフに示すように、高さhが大きくなるにつれて、脱臼防止力は飛躍的に増大する一方、外殻2の厚みtが0.1〜0.04の範囲で変化したとしても脱臼防止力の低下は20%程度である(h/Dが0.1の場合)。この結果より、目的とする脱臼防止力範囲の0.25〜0.15は厚みtが多少変化しても、h/Dが0.05〜0.12程度であれば具現できることがわかる。なお、tについては、一般的に骨頭5の直径が0.5D程度であるため、外殻2と内殻3の厚みの合計は0.25D程度となるが、従来から内殻3は外殻2より厚くとられていることから、外殻2の厚みは0.1D程度を上限とし、厚みtを0.1D,0.08D,0.06D及び0.04Dと変化させた場合を示した。なお、上述の表1の示すような犬に適用する人工股関節用カップの場合、実用上として、厚み0.08Dが一般的に用いられる。
図4のグラフから、外殻の厚みtが変化すると脱臼防止力は変化するが、その影響は高さhに比べると小さいことから脱臼防止力を確保するための設計パラメータとして、外殻の厚みtが支配的ではないことが確認された。また、図4のグラフに示すように、目標とする脱臼防止力範囲の0.25〜1.5を得るためには、h/Dは0.04〜0.12の範囲にすべきことが判る。
図5は、脱臼防止力に及ぼす高さhとスリット数nの影響を示したグラフであり、スリット数nを3,4,6及び8と変化させた場合を示している。また、図5は、図4と同様に、横軸は高さhを外径Dで規格化した値(h/D)を、縦軸は脱臼防止力Fを体重Wで規格化した値(F/W)を示している。図5において、外殻の厚みは0.08Dである。
図5のグラフに示すように、スリット数nが3から4になると脱臼防止力は大きく低下するが、それ以降は脱臼防止力の低下は少なく、おおむねn=6程度で飽和する傾向がみられる。図5のグラフから、スリット数nが4〜8と変化すると脱臼防止力は変化するが、その影響は高さhに比べると小さいことから、脱臼防止力を確保するための設計パラメータとして、スリット数nが支配的ではないことが確認された。また、図5のグラフに示すように、スリット数nが4〜8個設けられる場合において、目標とする脱臼防止力範囲の0.25〜1.5を得るためには、h/Dは0.04〜0.11の範囲にすべきことが判る。また、hが0.04〜0.11の範囲であれば、その他の設計パラメータである外殻の厚みtやスリット数nが多少変化した場合であっても、目的とする脱臼防止力を確保できることになる。
実用的に用いられることが多いスリット数(n=6)の場合には、図5のグラフから、目標とする脱臼防止力の範囲の0.25〜1.5を得るためには、h/Dは0.05〜0.1の範囲にすべきことが判る。前述の図4のグラフから、スリット数(n=6)の場合に、外殻の厚みを0.04Dとすると、目標とする脱臼防止力の範囲の0.25〜1.5を得るためには、h/Dは0.05〜0.12の範囲にすべきことが判る。
また、図5のグラフから、スリット数(n=3)の場合には、目標とする脱臼防止力の範囲の0.25〜1.5を得るためには、h/Dは0.03〜0.08の範囲にすべきことが判る。また、図5のグラフから、スリット数(n=8)の場合には、目標とする脱臼防止力の範囲の0.25〜1.5を得るためには、h/Dは0.04〜0.11の範囲にすべきことが判る。
以上述べたように、目標とする脱臼防止力の範囲の0.25〜1.5を得るためには、半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さhのパラメータを調整することがよく、そのパラメータの範囲は、0.03D〜0.12Dの範囲にすべきことが示された。
本発明は、劣化した股関節の代替として寛骨臼に装着し、股関節の運動機能を回復させる人工関節用のカップとして有用である。
1 人工股関節用カップ
2 外殻
3 内殻
4 スリット
5 骨頭
6 固定部材
7,70 矢印
8 根元部
D 外径
F 脱臼防止力
W 体重
d 深さ
h 高さ
n スリット数
t 厚み

Claims (10)

  1. 球状ヘッドを摺動可能に支持する略半球殻状に造形され、球状ヘッドに対して直径赤道面を超えて被るように、球状ヘッドを受け入れる凹球面部が半球線を超え延在して形成され、かつ、略半球殻状の開口側淵部に切り込み溝が設けられた人工関節用カップにおいて、
    前記半球線を超え延在して形成された前記凹球面部の高さが、前記人工関節用カップの外殻の外径に対して、下記式1の範囲とされた人工関節用カップ:
    (数1)
    0.03D ≦ h ≦ 0.12D ・・・ (式1)
    (上記式において、Dは人工関節用カップの外殻の外径であり、hは半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さである。)。
  2. 前記切り込み溝が4〜8個設けられる場合には、前記半球線を超え延在して形成された前記凹球面部の高さが、前記人工関節用カップの外殻の外径に対して、下記式2の範囲とされた請求項1に記載の人工関節用カップ:
    (数2)
    0.04D ≦ h ≦ 0.11D ・・・ (式2)
    (上記式において、Dは人工関節用カップの外殻の外径であり、hは半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さである。)。
  3. 前記切り込み溝が6個設けられる場合には、前記半球線を超え延在して形成された前記凹球面部の高さが、前記人工関節用カップの外殻の外径に対して、下記式3の範囲とされた請求項1に記載の人工関節用カップ:
    (数3)
    0.05D ≦ h ≦ 0.1D ・・・ (式3)
    (上記式において、Dは人工関節用カップの外殻の外径であり、hは半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さである。)。
  4. 前記切り込み溝が6個設けられる場合であって、かつ、前記人工関節用カップの外殻の厚みが該外殻の外径に対して、0.04〜0.1倍の範囲にある場合には、前記半球線を超え延在して形成された前記凹球面部の高さが、前記人工関節用カップの外殻の外径に対して、下記式4の範囲とされた請求項1に記載の人工関節用カップ:
    (数4)
    0.04D ≦ h ≦ 0.12D ・・・ (式4)
    (上記式において、Dは人工関節用カップの外殻の外径であり、hは半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さである。)。
  5. 前記人工関節用カップの外殻に設けられた切り込み溝の深さは、前記半球線を越えて延在して形成された前記凹球面部の高さとしたことを特徴とする請求項1〜4の何れかの人工関節用カップ。
  6. 球状ヘッドを摺動可能に支持する略半球殻状に造形され、球状ヘッドに対して直径赤道面を超えて被るように、球状ヘッドを受け入れる凹球面部が半球線を超え延在して形成され、かつ、略半球殻状の開口側淵部に切り込み溝が設けられた人工関節用カップの作製方法において、
    前記半球線を超え延在して形成された前記凹球面部の高さが、前記人工関節用カップの外殻の外径に対して、下記式5の範囲とされた人工関節用カップの作製方法:
    (数5)
    0.03D ≦ h ≦ 0.12D ・・・ (式5)
    (上記式において、Dは人工関節用カップの外殻の外径であり、hは半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さである。)。
  7. 前記切り込み溝が4〜8個設けられる場合には、前記半球線を超え延在して形成された前記凹球面部の高さが、前記人工関節用カップの外殻の外径に対して、下記式6の範囲とされた請求項6に記載の人工関節用カップの作製方法:
    (数6)
    0.04D ≦ h ≦ 0.11D ・・・ (式6)
    (上記式において、Dは人工関節用カップの外殻の外径であり、hは半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さである。)。
  8. 前記切り込み溝が6個設けられる場合には、前記半球線を超え延在して形成された前記凹球面部の高さが、前記人工関節用カップの外殻の外径に対して、下記式7の範囲とされた請求項6に記載の人工関節用カップの作製方法:
    (数7)
    0.05D ≦ h ≦ 0.1D ・・・ (式7)
    (上記式において、Dは人工関節用カップの外殻の外径であり、hは半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さである。)。
  9. 前記切り込み溝が6個設けられる場合であって、かつ、前記人工関節用カップの外殻の厚みが該外殻の外径に対して、0.04〜0.1倍の範囲にある場合には、前記半球線を超え延在して形成された前記凹球面部の高さが、前記人工関節用カップの外殻の外径に対して、下記式8の範囲とされた請求項6に記載の人工関節用カップの作製方法:
    (数8)
    0.04D ≦ h ≦ 0.12D ・・・ (式8)
    (上記式において、Dは人工関節用カップの外殻の外径であり、hは半球線を超え延在して形成された凹球面部の高さである。)。
  10. 前記人工関節用カップの外殻に設けられた切り込み溝の深さは、前記半球線を越えて延在して形成された前記凹球面部の高さとしたことを特徴とする請求項6〜9の何れかの人工関節用カップの作製方法。
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