以下に、安全運転促進装置20の実施形態について、図面を参照して説明する。図中では、xを車両の進行方向(前後方向)とし、yを車両の側方(左右方向)とし、zを鉛直方向(上下方向)とする。また、nを現在の周期、n−1を前回の周期、n+1を次回の周期とする。
図1に例示するように、安全運転促進装置20は、車両の運転室10に設置された運転
席11に腰掛けた運転者に対して、安全運転を促進させるものである。
運転室10は、運転席11の前方にフロントガラス12が、運転席11の側方にフロントドアガラス13が配置されている。フロントドアガラス13の外側には、サイドミラー14が配置されている。フロントガラス12は、運転室10のy方向両端に配置されたAピラー15により支持されている。
安全運転促進装置20は、撮像装置21、警告装置22、及び制御装置23を備えている。
撮像装置21は、運転室10の前方の所定範囲内に設置されたビデオカメラやスチルカメラである。撮像装置21は、運転席11からx方向前方に見て、運転室11の外側に設置されたサイドミラー14よりもy方向内側の範囲に設置される。撮像装置21は、運転者が運転席11に腰掛けて車両の前方を向いたときに、運転者の顔が正面を向いていることが判別可能な画像Dnを逐次撮像するビデオカメラやスチルカメラである。なお、スチルカメラの場合は、所定の周期ごとに画像Dnを撮像するとよい。
図2に例示するように、撮像装置21の撮像範囲は、画像Dnに、車両の運転中に運転席11に着座した運転者が安全確認のための視認行動を行ったときの運転者の顔が映る範囲に設定される。安全運転のための視認行動は、脇見などの安全運転に関係のない視認行動を除いたものである。安全運転のための視認行動としては、フロントガラス12を介して車両の進行方向であるx方向前方を視認する前方視認行動、メータパネルを視認するためのz方向下方を視認する下側視認行動と、ルームミラーを介して車両の後方を視認する後方視認行動と、右側サイドミラーを介して車両の右側後方を視認する右側視認行動と、左側サイドミラーを介して車両の左側後方を視認する左側視認行動が例示される。つまり、撮像装置21の撮像範囲は、画像Dnに、視認行動を行ったときの運転者の顔の輪郭の全域が映る範囲が好ましい。
撮像装置21が画像Dnを撮像する周期は、運転者が運転に関係の無い行動をとり、運転者の顔が撮像装置21の撮像範囲の外に出るときに、その運転に関係の無い行動を判定可能な周期に設定される。運転に関係の無い行動を判定可能な周期は、運転者の顔が撮像装置21の撮像範囲の中央部から撮像範囲の外に向って移動する場合に、その軌跡を解析可能な周期である。つまり、撮像装置21が画像Dnを撮像する周期は、運転者の顔が撮像装置21の撮像範囲の中央部から撮像範囲の外に向って移動する場合に、画像Dnにおける運転者の顔の位置が異なる少なくとも二枚の画像Dnを撮像可能に設定されることが好ましく、三枚以上の画像Dnを撮像可能に設定されることがより好ましい。なお、撮像装置21が画像Dnを映像として連続的に撮像可能な場合は、映像に対するサンプリング周期であるフレームレートが、運転者の顔が撮像装置21の撮像範囲の中央部から撮像範囲の外に向って移動する場合に、二つ以上のフレーム数になるように設定される。
画像Dnは、制御装置23における画像解析により、運転者が車両の安全運転に対する意識が低下した警告状態に陥ったことを判定可能なパラメータとして、顔認識情報Fn、顔位置座標情報Pn、顔向き角度情報θn、及び開閉眼情報Enを抽出可能な画像である。画像Dnは、運転者が運転席11に腰掛けて車両の前方を向いたときに、運転者の顔の輪郭、目、鼻、口、眉、耳などの各パーツが映ることが好ましい。
顔認識情報Fnは、画像Dnに基づく運転者の顔の認識の可不可(OK又はNG)を示す二値信号(0又は1)で構成されるデータである。顔認識情報Fnは、制御装置23における画像解析により画像Dnにおいて、運転者の顔の輪郭が認識可能な場合を「可(OK)」とすることが好ましく、運転者の顔の輪郭に加えて、目、鼻、口、眉、耳などの各
パーツが認識可能な場合を「可(OK)」とすることがより好ましい。
顔位置座標情報Pnは、画像Dnにおける顔の中心の位置を示しており、運転者がx方向前方を向いて運転している状態で、画像Dnの中心を基準とした二次元座標(x、z座標)で構成されるデータである。顔の中心としては、鼻や顔の輪郭形状の中心が例示される。
顔向き角度情報θnは、顔の正面がx方向前方を向いた状態を基準にして、y方向に傾いた角度やz方向に傾いた角度で構成されるデータであり、顔の輪郭形状の変化や顔のパーツの位置関係などに基づいて算出される。
開閉眼情報Enは、運転者の瞼の開閉を示す二値信号で構成されるデータである。
パラメータとしては、顔認識情報Fn、顔位置座標情報Pn、顔向き角度情報θn、及び開閉眼情報Enに限定されずに適宜変更可能であり、運転者の顔の血色などを追加してもよい。なお、パラメータとしては、撮像装置21が撮像した画像Dnから抽出可能なパラメータに加えて、運転者が直接的に身につけるセンサを用いて取得したパラメータを用いてもよい。例えば、体温計や脈拍などの運転者の健康状態情報を取得するセンサ、顔向きを取得可能な頭部に装着されたジャイロセンサが例示される。
警告装置22は、運転者に対して運転者の五感のいずれかに刺激を与えて警告を発する装置であり、車両の運転室内に配置されている。警告としては、ダッシュボードに設置されたスピーカーから発する音による警告、ダッシュボードに設置されたディスプレイから発する光による警告、運転席11の振動による警告が例示される。
制御装置23は、各種情報処理を行うCPU、その各種情報処理を行うために用いられるプログラムや情報処理結果を読み書き可能な内部記憶装置、及び各種インターフェースなどから構成されるハードウェアである。制御装置23は、撮像装置21及び警告装置22に一点鎖線で示す信号線を介して電気的に接続されている。また、制御装置23は、周辺機器24に信号線を介して電気的に接続される。本明細書でいう周辺機器24とは、運転者が操作可能で、且つ運転操作に関係しない機器である。周辺機器24としては、カーエアコンディショナ、カーオーディオ、カーナビゲーションシステム、及びシガーライタが例示される。
制御装置23は、撮像装置21が撮像した画像Dnから抽出したパラメータ(Fn、Pn、θn、En)に基づいて、顔位置座標情報Pnの可不可や顔向き角度情報θnが変化した回数や変化した頻度の増減、その変化のバランスの正否の情報を用いて、運転者の安全運転に対する意識が低下した状態か否かを判定する機能要素を有している。
図3に例示するように、制御装置23は、機能要素として、抽出部25、判定部26、及び警告部27を有している。
抽出部25は、撮像装置21が撮像した画像Dnを画像解析して、上述したパラメータを抽出して判定部26に出力すると共に、そのパラメータを内部記憶装置に記憶する機能要素である。判定部26は、抽出部25から出力されたパラメータに基づいて運転者が警告状態に陥ったか否かを判定し、その判定した結果を警告部27に出力する機能要素である。また、判定部26は経過時間をカウント可能なタイマ28を有した機能要素である。警告部27は、判定部26から出力された判定結果に基づいて、警告装置22に警告させる指示を出す機能要素である。この実施形態で、抽出部25、判定部26、及び警告部27は、プログラムとして内部記憶装置に記憶されているが、それぞれ個別のプログラマブルロジックコントローラ(PLC)などのハードウェアや電子回路で構成されてもよい。
図4〜図14に例示するように、実施形態の安全運転促進方法は、撮像装置21が撮像した画像Dnに基づいて、運転者が警告状態に陥ったことを判定するものであり、撮像装置21が画像Dnを撮像する周期ごとに、行われるものである。安全運転促進方法は、図4をメインルーチンとし、図6〜図12、図13をサブルーチンとするものである。
本明細書において、運転者が警告状態に陥った状態は、運転者の安全運転に対する意識が低下した状態である。この状態は、人事不省などの運転者が運転不能状態に陥った状態に加えて、運転者が脇見をしていて意識が運転以外に向いている意識外状態や、居眠り運転状態や漫然状態が例示される。なお、漫然状態とは、運転者の意識レベルが低下した状態であり、「前をよく見ていなかった」、「ぼうっとしたいた」などの注意が散漫になった運転状態であり、居眠り運転状態が懸念される状態でもある。
図4に例示するように、所定の周期ごとに撮像装置21が画像Dnを撮像する(S110)。次いで、抽出部25が画像Dnを解析する(S120)。具体的に、抽出部25は、画像解析として画像Dnにおける濃度の変化から物体の境界を検出するエッジ検出により各パラメータを抽出する。
次いで、判定部26が、画像Dnから各パラメータ(Fn、Pn、θn、En)が抽出されたか否かを判定する(S130)。
画像Dnから各パラメータが抽出されたと判定すると(S130:YES)、判定部26が、抽出された各パラメータを内部記憶装置に記憶させる(S140)。次いで、判定部26が、抽出された各パラメータに基づいて、運転者が警告状態に陥ったか否かを判定する第一の判定を行う(S150)。
第一の判定は、運転者が上述した安全運転に関する行動を行っている、あるいはその行動以外の行動を行っていることを、画像Dnから抽出された現時点のパラメータ(Fn、Pn、θn、En)を用いて判定する方法であればよい。例えば、顔位置座標情報Pnの可不可や顔向き角度情報θnが変化した回数や頻度が閾値未満の状態が予め設定した経過時間続いた場合に意識が低下した状態であると判定する方法が例示される。また、顔向き角度情報θnが予め設定された閾値以上の状態が予め設定された経過時間続いた場合に意識が低下した状態であると判定する方法も例示される。また、顔位置座標情報Pnの可不可や顔向き角度情報θnの変化速度が予め設定された閾値以下であるか否かを判定し、その変化速度が閾値以下の場合には意識が低下した状態であると判定する方法も例示される。また、開閉眼情報Enが閉(運転者の瞼が閉の状態)であるいか否かを判定し、閉であると判定した場合には意識が低下した状態であると判定する方法も例示される。
第一の判定で、運転者が警告状態に陥ったと判定すると、判定部26が、第一の判定の警告フラグを立てる(flag01:ON)。また、第一の判定で、運転者が警告状態に陥っていないと判定する第一の判定の警告フラグを降ろす(flag01:OFF)。
一方、画像Dnから各パラメータが抽出されないと判定すると(S130:NO)、判定部26が、第二の判定を行う(S200)。第二の判定は、各パラメータ(Fn、Pn、θn、En)が抽出不可能になる前に内部記憶装置に記憶された過去のパラメータ(F(n−1)、P(n−1)、θ(n−1)、E(n−1)など)に基づいて、運転者が警告状態に陥ったか否かを判定する方法である。第二の判定は、複数のサブルーチンから構成される。第二の判定で、運転者が警告状態に陥ったと判定すると、判定部26が、第二の判定の警告フラグを立てる(flag02:ON)。また、第二の判定で、運転者が警告状態に陥っていないと判定する第二の判定の警告フラグを降ろす(flag02:OFF)。第二の判定についての詳細は、後述する。なお、第二の判定の警告フラグは判定方法ごとに立てられるものであり、ここでいう第二の判定の警告フラグ(flag02)は、後述するflag04〜flag09に相当するものである。
第一の判定が終了すると、判定部26が、第三の判定を行う(S300)。第三の判定は、各パラメータ(Fn、Pn、θn、En)の変化に基づいて、運転者が警告状態に陥ったか否かを判定する方法である。第三の判定で、運転者が警告状態に陥ったと判定すると、判定部26が、第三の判定の警告フラグを立てる(flag03:ON)。また、第三の判定で、運転者が警告状態に陥っていないと判定する第三の判定の警告フラグを降ろす(flag03:OFF)。第三の判定についての詳細も、後述する。
次いで、判定部26が、第一の判定、第二の判定、及び第三の判定におけるいずれかの警告フラグが立っているか否かを判定する(S160)。いずれかの警告フラグが立っていると判定すると(S160:YES)、警告部27が、運転者が警告状態に陥っていると判定して、警告装置22に警告させる(S170)。一方、いずれの警告フラグも立っていない(降りている)と判定すると(S160:NO)、運転者が警告状態に陥っていないと判定して、スタートへ戻る。運転者が警告状態に陥っていない状態は、運転者が安全運転に対する意識が維持されている状態である。このとき各パラメータから解析される運転者の行動としては、安全運転のための視認行動が例示される。
図5〜図13に例示するように、第二の判定は、各パラメータ(Fn、Pn、θn、En)が抽出不可能になる前に内部記憶装置に記憶された過去のパラメータ(F(n−1)、P(n−1)、θ(n−1)、E(n−1)など)に基づいて、運転者が警告状態に陥ったか否かを判定する方法である。
図5に例示するように、判定部26における画像Dnから各パラメータが抽出されたか否かの判定は(S130)、画像Dnから各パラメータ(Fn、Pn、θn、En)が抽出可能か否かをパラメータごとに順に判定する(S132〜S138)。具体的に、ここでは、「OK」がパラメータを抽出可能な状態(特定可能な状態)を示しており、顔認識情報Fnが抽出不可能な状態では、顔位置座標情報Pn、顔向き角度情報θn、及び開閉眼情報Enも特定不可能な状態と見做して、パラメータごとに順次、直列処理で判定する。なお、各パラメータを並列処理で判定してもよい。パラメータごとに並列処理で判定することで、光源などの具合により顔の輪郭が抽出できずに顔位置座標情報Pn及び顔向き角度情報θnが特定不可能な一方で、開閉眼情報Enが特定可能な状態にも対応可能になる。
図6〜図9に例示するように、画像Dnから現在のパラメータ(Fn、Pn、θn、En)を抽出不可能な場合(NO)に、判定部26は、第二の判定として(S200)、パラメータごとにパラメータを抽出不可能な経過時間(Ta、Tb、Tc、Td)が判定時間(A、B、C、D)を超えたときに、運転者が警告状態に陥っていると判定する。以下、現在のパラメータのうちの顔認識情報Fnを例に説明する。
図6に例示するように、抽出部25から画像Dnから現在の顔認識情報Fnを抽出不可能な信号を受信すると、判定部26は、過去の顔認識情報F(n−1)を抽出可能だったか否かを判定する(S210a)。ここでいう過去の顔認識情報F(n−1)は、周期的に現在の顔認識情報Fnを抽出する一つ前に抽出されて内部記憶装置に記憶されたパラメータである。
過去の顔認識情報F(n−1)が抽出可能だったと判定すると(S210a:YES)
、判定部26は、顔認識情報Fnが抽出不可能な経過時間Taのカウントをリセットする(S220a)。一方、過去の顔認識情報F(n−1)が抽出不可能だったと判定すると(S210a:NO)、判定部26は、顔認識情報Fnが抽出不可能な経過時間Taをカウントする(S230a)。
次いで、判定部26は、経過時間Taが予め設定した判定時間A以上になったか否かを判定する(S240a)。経過時間Taが判定時間A以上と判定すると(S240a:YES)、判定部26が、第二の判定の警告フラグを立てる(S250a)。一方、経過時間Taが判定時間A未満と判定すると(S240a:NO)、判定部26が、第二の判定の警告フラグを降ろす(S260a)。
判定部26は、他のパラメータ(顔位置座標情報Pn、顔向き角度情報θn、開閉眼情報En)についても、図7〜図9に例示するように、顔認識情報Fnと同様に判定する。
判定時間(A、B、C、D)は、予め実験や試験により求められて、それぞれ異なる時間に設定してもよい。判定時間は、画像Dnからパラメータを抽出不可能なことに基づいて、運転者が警告状態に陥っている可能性がある状態を判定可能な時間に設定される。例えば、運転者が警告状態に陥っていない場合では、画像Dnから各パラメータが抽出不可能な状態は、運転者が意図的に周辺機器24を操作している状態である。そこで、判定時間は、運転者が警告状態に陥っていると判定する際に、その一時的な時間を排除可能な時間に設定されることが好ましい。
以上のように、判定部26は、第二の判定において、パラメータごとに第二の判定の警告フラグを立てたり(flag04〜flag07:ON)、降ろしたりする(flag04〜flag07:OFF)。例えば、顔位置座標情報Pnにおける第二の判定の警告フラグが降ろされている場合に(flag05:OFF)、顔向き角度情報θnや開閉眼情報Enにおける第二の判定の警告フラグが立っている場合(flag06、flag07:ON)がある。
図10〜図14に例示するように、画像Dnから現在のパラメータ(Fn、Pn、θn、En)を抽出不可能な場合(NO)に、判定部26は、第二の判定として(S200)、過去のパラメータに基づいて、現在のパラメータを抽出不可能な間の運転者の状態を予想して、運転者が警告状態に陥っていると判定する。また、この第二の判定は、各パラメータが抽出不可能な間の運転者の状態が異常なパターンに属するか否か、又は、正常なパターンに属するか否かを判定する方法である。
図10に例示するように、顔認識情報Fnが抽出不可能と判定すると(S132:NO)、判定部26は、顔認識情報Fnが抽出不可能と判定されるよりも前に抽出された開閉眼情報(E(n−1)、E(n−2)、・・・)において、閉眼を検知したか否かを判定する(S210e)。
このステップは、顔認識情報Fnが抽出不可能となった直前に閉眼したか否かを判定することが好ましい。このステップにより、各パラメータが抽出不可能な間の運転者の状態が、居眠りや人事不省により運転者が倒れたことを示す異常なパターンに属するか否かを判定することが可能になる。なお、本明細書において、開閉眼情報Enにおける閉眼は、目の瞼の開閉運動のうちの瞬きによる閉眼が除外されたものとする。つまり、開閉眼情報Enにおける閉眼は、瞬きよりも長い時間に亘って瞼が閉じられた状態を示す。また、直前とは、顔認識情報Fnが抽出不可能となった周期(n)の一つ前の周期(n−1)を少なくとも含み、その一つ前の周期に加えて、その一つ前の周期よりも前の周期を含むものとする。例えば、顔認識情報Fnが抽出不可能となった周期(n)の直前に行われた運転
者による安全運転のための視認行動が確認され周期から顔認識情報Fnが抽出不可能となった周期までの間でもよい。
直前に閉眼を検知したと判定すると(S210e:YES)、判定部26は、タイマーフラグを立てる(S220e)。一方、直前に閉眼を検知していないと判定すると(S210e:NO)、判定部26は、タイマーフラグを降ろす(S230e)。以上のように、タイマーフラグを立てたり、降ろしたりすると図13の「II」へ進む。
図11に例示するように、顔認識情報Fnが抽出不可能と判定すると(S132:NO)、判定部26が、顔位置の移動軌跡Lnを予測する(S210f)。
顔位置の移動軌跡Lnは、顔認識情報Fnが抽出不可能と判定されるよりも前に抽出された複数の過去のパラメータに基づいて予測される。具体的に、移動軌跡Lnは、顔認識情報Fnが抽出不可能と判定されるよりも前で、且つ、抽出されたときに第一の判定、第二の判定、及び第三の判定のいずれの警告フラグも立たなかったときのパラメータと、顔認識情報Fnが抽出不可能と判定される直前のパラメータとを用いて予測される。移動軌跡Lnの予測に用いられる複数のパラメータは、二つ以上を用いる場合に、それらが周期的に連続していることが好ましい。移動軌跡Lnの予測に用いられる複数のパラメータとしては、顔位置座標情報P(n−s)、P(n−t)、顔向き角度情報θ(n−s)、θ(n−t)のどちらか一方、あるいは両方が例示される。
次いで、判定部26が、予測した移動軌跡Lnが異常か否かを判定する(S220f)。移動軌跡Lnが異常な状態は、運転中に、運転者が警告状態に陥っている状態の軌跡であり、運転者が安全運転のための視認行動以外に行う意識的な行動に基づいた正常な軌跡Laから外れた軌跡である。正常な軌跡Laは、運転中に、運転者が警告状態に陥っていない状態で、運転者が安全運転のための視認行動以外に行う意識的な行動に基づいた軌跡である。運転者が安全運転のための視認行動以外に行う意識的な行動としては、周辺機器24の操作行動、運転席の周囲に設置したドリンクホルダから飲み物を取るなどの行動、あるいは、前を向いたまま体を前に倒して足下の何かを探している行動が例示される。正常な軌跡Laは、前述の行動のうちの特定可能な行動の軌跡に限定される。正常な軌跡Laとしては、周辺機器24の操作行動が例示される。なお、ドリンクホルダの位置が予め特定可能な場合は、正常な軌跡Laとして、ドリンクホルダから飲み物を取る行動の軌跡も例示される。
このステップの判定は、移動軌跡Lnと内部記憶装置に予め記憶させていた正常な軌跡Laとを比較して、移動軌跡Lnが正常な軌跡Laに一致しない場合に移動軌跡Lnが異常と判定する方法が例示される。本明細書では、移動軌跡Lnが正常な軌跡Laに一致しないとは、移動軌跡Lnが正常な軌跡Laに完全に一致しない場合に加えて、正常な軌跡Laを中心とした所定の範囲内に無い場合も含む。
また、このステップの判定は、移動軌跡Lnと内部記憶装置に予め記憶させていた異常な軌跡とを比較して、移動軌跡Lnが異常な軌跡に一致した場合を移動軌跡Lnが異常と判定する方法も例示される。異常な軌跡は、運転中に、運転者が警告状態に陥った状態の軌跡である。移動軌跡Lnが異常な軌跡に一致する場合も同様に、完全に一致する場合に加えて、所定の範囲内に存在する場合も含む。なお、異常な軌跡及び正常な軌跡Laは一つに限定されずに複数設定されてもよい。
このステップにより、各パラメータが抽出不可能な間の運転者の状態が、異常なパターンに属するか否か、あるいは正常なパターンに属するか否かを判定することが可能になる。
図12に例示するように、顔位置座標情報P(n−s)を警告フラグが立っていないパラメータ、顔位置座標情報P(n−t)を顔認識情報Fnが抽出不可能と判定される直前のパラメータとする。顔位置座標情報P(n−s)と顔位置座標情報P(n−t)とを結ぶ線分の延長線が移動軌跡Lnとなる。
画像Dnに対して画像Dnの外の右側下方に周辺機器24が設置されており、正常な軌跡Laは、その周辺機器24の操作行動に基づいて設定される。
顔位置座標情報P(n−s)及び顔位置座標情報P(n―t)から予測される移動軌跡Lnは、正常な軌跡Laに一致しない。このような場合に、ステップS220fでは、移動軌跡Lnが異常であると判定する。
図11に例示するように、移動軌跡Lnが異常と判定すると(S220f:YES)、判定部26が、周辺機器24の操作信号の有無を判定する(S230f)。周辺機器24の操作信号の有無の判定は、顔認識情報Fnが抽出不可能となっている状態が、運転者が意図的な行動を行っている状態を判定するために行われる。つまり、このステップにより、各パラメータが抽出不可能な間の運転者の状態が、正常なパターンに属するか否かを判定することが可能になる。
例えば、一時的に画像Dnから顔認識情報Fnが抽出不可能になったときに、周辺機器24の操作信号が有ると判定されると、その一時的な抽出不可能な時間は、運転者が意図的に周辺機器24を操作する行動を行ったと判定できる。つまり、画像Dnから顔認識情報Fnが抽出不可能になってから周辺機器24の操作信号の有無を確認することで、運転者が警告状態に陥っているか否かを確認可能になる。この判定で用いられる周辺機器24の操作信号は、移動軌跡Lnが異常と判定されてから検知される操作信号に、つまり、顔認識情報Fnが抽出不可能と判定されてから検知される操作信号に限定される。
移動軌跡Lnが異常で、且つ、周辺機器24の操作信号が無いと判定すると(S220f:YES、S230f:NO)、判定部26は、タイマーフラグを立てる(S240f)。一方、移動軌跡Lnが正常(異常でない)、あるいは、周辺機器24の操作信号が有ると判定すると(S220f:NO、S230f:YES)、判定部26は、タイマーフラグを降ろす(S250f)。以上のように、タイマーフラグを立てたり、降ろしたりすると図13の「II」へ進む。
図13に例示するように、タイマーフラグが立っている場合に(S210g:YES)、判定部26が、経過時間Teをカウントする(S220g)。一方、タイマーフラグが降りている場合に(S210g:NO)、判定部26が、経過時間Teのカウントをリセットする(S230g)。
次いで、判定部26は、経過時間Teが予め設定した判定時間E以上になったか否かを判定する(S240g)。経過時間Teが判定時間E以上と判定すると(S240g:YES)、判定部26が、第二の判定の警告フラグを立てる(S250g)。一方、経過時間Teが判定時間E未満と判定すると(S240g:NO)、判定部26が、第二の判定の警告フラグを降ろす(S260g)。
判定時間Eは、判定時間A〜Dと同様に、予め実験や試験により求められる。判定時間Eは、画像Dnからパラメータを抽出不可能なことに基づいて、運転者が警告状態に陥っている可能性がある状態を判定可能な時間に設定される。
以上のように、判定部26は、第二の判定において、パラメータごとに第二の判定の警告フラグを立てたり(flag04〜flag08:ON)、降ろしたりする(flag04〜flag08:OFF)。
図14に例示するように、第三の判定は、撮像装置21の撮像範囲内で、運転者がx方向前方を向いたまま、開眼した状態で発作などの突発的な人事不省に陥った状態を判定するものである。つまり、第三の判定は、各パラメータが抽出可能な間の運転者の状態が、異常なパターンに属するか否かを判定する。
撮像装置21の撮像範囲内で、運転者がx方向前方を向いたまま、開眼した状態の場合に、第一の判定では、運転者が前方視認行動を行っていると判定される。そこで、第三の判定では、前方視認行動が一定期間Tfに亘って連続して行われた場合に、運転者がx方向前方を向いたまま、開眼した状態で人事不省に陥ったと判定する。
判定部26が、一定期間Tfに亘って各パラメータが変化無いか否かをパラメータごとに順に判定する(S310、S320、S330)。以下、各パラメータのうちの顔位置座標情報を例に説明する。
このステップでは、一定期間Tfにおける複数の顔位置座標情報(Pn、P(n−1)、・・・、P(n−Tf))が一致するか否かを判定する(S310)。一定期間Tfは、複数の周期を含んだ期間である。また、一定期間Tfは、運転者が人事不省により意識を失っていることを判定可能な期間に設定される。本明細書において、複数の顔位置座標情報が一致することは、複数の顔位置座標情報の全てが同一であることに加えて、複数の顔位置座標情報が所定の範囲内に収まっていることも包含する。つまり、このステップは、読み込んだ複数の顔位置座標情報が同じ領域に存在していることを判定できればよい。
判定部26は、他のパラメータ(顔向き角度情報、開閉眼情報)についても、S320、S330に例示するように、顔位置座標情報と同様に判定する。
一定期間Tfに亘って顔位置座標情報、顔向き角度情報、開閉眼情報が変化していないと判定すると(S310:YES、S320:YES、S330:YES)、判定部26が、経過時間Tgをカウントする(S340)。一方、一定期間Tfの間に顔位置座標情報、顔向き角度情報、開閉眼情報のいずれかが変化したと判定すると(S310:NO、S320:NO、S330:NO)、判定部26が、経過時間Tgのカウントをリセットする(S350)。
次いで、判定部26は、経過時間Tgが予め設定した判定時間G以上になったか否かを判定する(S360)。経過時間Tgが判定時間G以上と判定すると(S360:YES)、判定部26が、第三の判定の警告フラグを立てる(S370)。一方、経過時間Tgが判定時間G未満と判定すると(S360:NO)、判定部26が、第三の判定の警告フラグを降ろす(S380)。
判定時間Gも、判定時間A〜Dと同様に、予め実験や試験により求められる。判定時間Gは、画像Dnからパラメータを抽出不可能なことに基づいて、運転者が警告状態に陥っている可能性がある状態を判定可能な時間に設定される。
このように、実施形態の安全運転促進装置20によれば、画像Dnから現在のパラメータ(Fn、Pn、θn、En)を抽出不可能な場合、つまり、画像Dnから現在の運転者の状態を判断できない場合は、過去のパラメータ(F(n−1)、P(n−1)、θ(n−1)、E(n−1)など)に基づいて運転者の状態を予想する。それ故、画像Dnから
現在の運転者の状態を判断できない場合でも運転者が警告状態に陥っているか否かを正確に判断することができる。
これにより、運転者が警告状態に陥っていないときに発せられる警告の頻度を低減するには有利になり、警告による煩わしさを起因とする運転者が装置を停止することを回避して、運転者に安全運転を促進させることができる。また、人事不省などの運転者の安全運転に対する意識が低下したときに確実に警告を発してその警告により運転者の警告状態に陥っていることを認識させるには有利になり、運転者に安全運転を促進させることができる。
安全運転促進装置20は、画像Dnから各パラメータが抽出不可能な状況をより詳細に特定することで、その状況が運転者の意図的な行動により一時的に発生した状況であることを特定することが可能になる。これにより、画像Dnから各パラメータが抽出不可能な状況で警告させるのではなく、運転中に行われる運転者の複雑な動作に対応させて、不要な警告を発することを抑制することができる。運転者が警告状態に陥っていないが、一時的に画像Dnから各パラメータが抽出不可能な行動としては、周辺機器24の操作行動、運転席の周囲に設置したドリンクホルダから飲み物を取るなどの行動、あるいは、前を向いたまま体を前に倒して足下の何かを探している行動などが例示される。
安全運転促進装置20は、画像Dnから各パラメータが抽出不可能な間の運転者の状態を予想する一つの手法として、過去のパラメータに基づいて抽出不可能な間の運転者の状態が、異常なパターンに属するか、正常なパターンに属するかを判定する構成にした。具体的に、図10、図14に例示するサブルーチンは、運転者の状態が異常なパターンに属するか否かを判定するものである。また、図11に例示するサブルーチンは、予測した移動軌跡Lnにより運転者の状態が異常なパターンに属するか否か、正常なパターンに属するか否かを判定すると共に、周辺機器24の操作信号の有無を確認することで正常なパターンに属するか否かを判定するものである。
このように、過去のパラメータに基づいて、画像Dnから各パラメータが抽出不可能な間の運転者の状態を異常なパターンや正常なパターンと比較して特定することで、警告させる必要がある状況と、警告させない状況とを確実に区別することが可能になる。これにより、運転者に安全運転を促進させるには有利になる。
また、予測した移動軌跡Lnが正常な軌跡Laから外れたときや、移動軌跡Lnが異常な軌跡に一致したときに、運転者が警告状態に陥っていると判定することで、画像Dnから各パラメータが抽出不可能な状況をより詳細に特定するには有利になる。なお、正常な軌跡Laは、車両ごとに異なる周辺機器24の設置位置やドリンクホルダの設置位置に基づいて設定可能である。また、異常な軌跡は、運転者ごとに異なる周辺機器24の操作行動や飲み物を取るなどの行動を逐次、内部記憶装置に記憶させて学習させることで、より精度を高めることが可能になる。
安全運転促進装置20は、運転者が警告状態に陥ったと判定してからの経過時間(Ta、Tb、Tc、Td、Te、Tg)が予め設定された判定時間(A、B、C、D、E、G)を超えたときに、警告させる構成にしたことで、運転者が意識的に行う行動により一時的に画像Dnからパラメータが抽出不可能な状態に対して警告させないことができる。これにより、運転者が警告状態に陥っていない状態で警告装置22による警告が頻発することを抑制するには有利になる。
安全運転促進装置20は、移動軌跡Lnを予測して運転者の状態を判定する際の、最終確認として、周辺機器24の操作信号の有無を確認する構成にした。それ故、運転者が予
想外の行動を行ったとしても、その行動が周辺機器24の操作行動か否かを判定することが可能になり、周辺機器24の操作行動に対して警告させないことができる。
既述した安全運転促進方法は、図4をメインルーチン、図6〜図12をメインルーチンよりも下位のサブルーチンとする構成にしたが、図4をメインルーチン、図6〜図9をメインルーチンの下位のサブルーチン、図10〜図12をそのサブルーチンよりも下位のサブルーチンとしてもよい。つまり、図10〜図12のサブルーチンは、図6〜図9のサブルーチンのいずれかにおいて警告フラグが立ってから行われるように構成してもよい。
また、運転中の運転者の複雑な行動パターンに合わせて、異常なパターンのサブルーチンや正常なパターンのサブルーチンを増やすとよい。例えば、正常なパターンとして、車両用のサンバイザを降ろす動作が例示される。
既述した安全運転促進装置20は、車両に搭載されるものに限定されずに、運転者が運転席11に腰掛けて運転するものであれば適用可能である。