以下に示す本発明の例示的実施形態の詳細な説明は、本発明の基本的なコンセプト及びさらなる有利な展開を開示する。本発明の特定の用途に適すると認められるものとして、本書で説明する実施形態の幾つか又は全てを自由に組み合わせることは、当業者には明らかであろう。本書を通じて、「有利な」、「例示的」、「好ましくは」または「好ましい」のような用語は、本発明またはその実施形態に特に適している(が不可欠ではない)要素または寸法を示し、明示的に必要とされる場合を除き、当業者によって適切と認められる限り、修正可能である。本発明は、例示の目的のために与えられかつ本発明の好適な具体化を提供するに過ぎない、以下に説明する例示的実施形態に限定されるものではない。
リソグラフィ装置
本発明の好ましい実施形態を採用するのに適したリソグラフィ装置の一例の概要が図1に示されている。以下では、本発明の開示に必要とされる詳細のみを記載し、明瞭性のために、図1において構成要素は寸法通りには示されていない。リソグラフィ装置1の主要構成要素は、この例では図1の紙面において垂直方向下方に延伸するリソグラフィビームlb及びpbの方向の順に、照明システム3、パターン規定(ないしパターン画定;PD:pattern definition)システム4、投影システム5、及び基板16を有するターゲットステーション6である。装置1全体は、装置の光軸cwに沿って荷電粒子のビームlb、pbが邪魔されないように伝播することを保証するために、高真空に保持されている真空ハウジング2内に収容されている。荷電粒子光学システム3及び5は、静電レンズ及び/又は磁気レンズを用いて実現される。
照明システム3は、例えば、電子銃7、抽出システム8、及び集光レンズシステム9を含む。尤も、電子の代わりに、一般的には、他の荷電粒子も同様に使用できる。これらの粒子は、電子以外では、例えば、水素イオン又はより重いイオン、荷電原子クラスタ、または荷電分子であり得る。
抽出システム8は、典型的には数keV、例えば5keVの所定のエネルギーにまで粒子を加速する。光源7から放出された粒子は、集光レンズシステム9によって、リソグラフィビームlbとして機能する幅の広い実質的にテレセントリックな粒子ビーム50に形成される。次に、リソグラフィビームlbは、複数の開口部(アパーチャとも呼ばれる)を有する複数のプレートを含むPDシステム4を照射する。PDシステム4はリソグラフィビームlbの経路上の特定の位置に保持され、そのため、リソグラフィビームlbは、該複数のアパーチャ及び/又は開口部を照射し、複数のビームレットに分割される。
これらのアパーチャ/開口部の幾つかは、それらが自身を貫通通過するビームの部分すなわちビームレット51をターゲットに到達させるという意味で、入射ビームに対して透過性(透明)であるように、「スイッチオン」され、ないしは「オープン(開状態)」であり、他のアパーチャ/開口部は「スイッチオフ」され、ないしは「クローズ(閉状態)」である、即ち、対応するビームレット52はターゲットに到達できず、従って、実質的に、これらのアパーチャ/開口部はビームに対して非透過性(不透明)である。したがって、リソグラフィビームlbは、PDシステム4から出射するパターン化ビームpbに構造化される。スイッチオンされたアパーチャのパターン、―リソグラフィビームlbに対して透過性であるPDシステム4の唯一の部分―、は、荷電粒子感応性レジスト17で被覆された基板16上で露出されるべきパターンにしたがって選択される。なお、アパーチャ/開口部の「スイッチオン/オフ」は、通常、PDシステム4の複数のプレートの1つに設けられた適切なタイプの偏向手段によって実現されることに注意すべきである。「スイッチオフ」ビームレット52は、(十分であるが非常に小さい角度で)それらの経路から偏向され、そのため、ターゲットに到達できず、専ら、リソグラフィ装置の何れかの部位において、例えば吸収板11において、吸収される。
パターン化ビームpbによって表されるパターンは、その後、磁気電気光学式(electro-magneto-optical)投影システム5によって基板16上に投影され、そこでビームは「スイッチオン」アパーチャ及び/又は開口部の像を形成する。投影システム5は、2つのクロスオーバーc1とc2によって、例えば200:1の縮小(demagnification)を実施する。基板16は、例えば、粒子感応性レジスト層17で被覆された6″(インチ)マスクブランクまたはシリコンウェハである。基板は、チャック15によって保持され、ターゲットステーション6の基板ステージ14によって位置決めされる。
露光されるべきパターンに関する情報は、電子パターン情報処理システム18によって実現されるデータパス(data path)によってPDシステム4に供給される。データパスの更なる詳細については、以下の「データパス」の項で説明する。
図1に示す実施形態において、投影システム5は、好ましくは静電レンズ及び/又は磁気レンズを含み、場合によっては他の偏向手段も含む、一連の複数の磁気電気光学式投影ステージ10a、10b、10cから構成される。これらのレンズおよび手段は、その使用が先行技術において周知であるため、象徴的な形でのみ示されている。投影システム5は、クロスオーバーc1、c2を介する縮小イメージングを用いる。双方のステージの縮小率は、全体として数百倍の縮小、例えば200:1の縮小が結果として得られるように選択される。このオーダーの縮小は、PDデバイスにおける小型化という問題を軽減するために、リソグラフィ設備(setup)にとりわけ適している。
投影システム5全体において、色収差および幾何学収差に関してレンズ及び/又は偏向手段を大幅に補償するよう、条件が定められている。像を全体として横方向に、すなわち光軸cwに直角な方向に沿ってシフトさせる手段として、偏向手段12a、12b及び12cが、集光レンズ3及び投影システム5に設けられている。これらの偏向手段は、例えば、ソース抽出システム8付近若しくは、図1に偏向手段12bで示されているような、2つのクロスオーバーの一方の付近に位置付けられるか、又は、図1のステージ偏向手段12cの場合のように、相応のプロジェクタの最終レンズ10cに後置されるマルチポール電極システムとして実現されることも可能である。この装置では、マルチポール電極配置は、ステージの動きに関連して像をシフトするためにかつ荷電粒子光学系位置合わせ(alignment)システムと連動する結像システムを補正するために、偏向手段として使用される。これらの偏向手段12a、12b、12cは、ストッパプレート11と連動するPDシステム4の偏向アレイ手段と混同されるべきではない。なぜなら、後者は、パターン化ビームpbの選択されたビームレットを「オン」または「オフ」にスイッチするためにして使用されるものであるのに対し、前者は、粒子ビームを全体として取り扱うだけであるからである。更に、軸線方向の磁界をもたらすソレノイド13を用いてプログラマブルビームの集合を回転させる可能性もある。
図2の断面詳細図は、PDシステム4の1つの好適実施形態を示す。PDシステム4は、一連に重なる(consecutive)構成で積み重ねられた3つのプレート、すなわち「アパーチャアレイプレート」(AAP)20、「偏向アレイプレート」(DAP)30及び「フィールド境界アレイプレート」(FAP)40を含む。なお、用語「プレート」はそれぞれの装置の全体的な形状を表すものであるが、プレートが単一のプレート部品として実現されることを必ずしも示すものではない(尤も後者は通常は好ましい実現の仕方である)。それでもなお、特定の実施形態では、アパーチャアレイプレートのような「プレート」は、複数のサブプレートから構成されてもよい。これらのプレートは、好ましくは、互いに平行に、Z方向(図2の紙面の上下方向の軸)に沿って相互に間隔をおいて、配置される。
AAP20の平坦な上面は、荷電粒子集光光学系/照明システム3に対する定義されたポテンシャルインターフェースを形成する。AAPは、例えば、肉薄の中央部分22を有するシリコンウェハ(およそ1mmの厚さ)21の方形または矩形片から作成されてもよい。プレートは、導電性保護層23によって被覆されてもよい。この導電性保護層23は(米国特許第6,858,118号のように)水素イオンまたはヘリウムイオンを使用する場合とりわけ有利であろう。電子または重イオン(例えば、アルゴンまたはキセノン)を使用する場合、層23は、層23とバルク部分21、22との間に界面が存在しないよう、21および22のそれぞれの表面部分によってもたらされるシリコンであってもよい。
AAP20は、肉薄部分22を貫通する開口部によって形成される複数のアパーチャ24を備える。アパーチャ24は、肉薄部分22に設けられたアパーチャ領域内に所定の配列で配置されて、アパーチャアレイ26を形成する。アパーチャアレイ26におけるアパーチャの配列は、例えば、ジグザグ(staggered)配列、または、規則的な矩形もしくは方形アレイ(図4を参照)であってよい。図示の実施形態では、アパーチャ24は、層23に形成された直線的プロファイルと、開口部の下流側出口部25がアパーチャ24の主要部分よりも幅が広いような、AAP20のバルク層における「後方(下流側)拡開(末広がり:retrograde)」プロファイルとを有するように実現される。直線プロファイルおよび後方拡開プロファイルは両方とも、反応性イオンエッチングのような技術水準の構造化技法によって形成可能である。後方拡開プロファイルは、開口部を貫通通過するビームのミラー荷電(mirror charging)効果を大きく低減する。
DAP30は複数の開口部33を備えたプレートであり、開口部33の位置はAAP20におけるアパーチャ24の位置に対応し、開口部33には、開口部33を貫通通過する個別ビームレットを選択的にそれぞれの経路から偏向するよう構成された電極35、38が設けられている。DAP30は、例えば、ASIC回路構成を有するCMOSウェハを後処理することによって作成可能である。DAP30は、例えば、方形または矩形の形状を有する1片のCMOSウェハ片で作成され、及び、肉薄化されている(但し肉薄部分22の厚みと比べて適切により肉厚であってもよい)中央部分32を保持するフレームを形成する肉厚部分31を含む。中央部分32におけるアパーチャ開口部33は、開口部24と比べて(例えば紙面左右両側にそれぞれ凡そ2μmだけ)広くなっている。MEMS技術によって設けられる電極35、38を制御するために、CMOS電子回路34が設けられる。各開口部33に隣接して、「アース」電極35及び偏向電極38が設けられる。アース電極(複数)35は電気的に相互接続され、共通のアース電位に接続され、帯電を阻止するための後方拡開部分36と、CMOS回路に対する不所望のショートカットを阻止するための絶縁部分37とを含む。アース電極35は、シリコンバルク部31および32と同じ電位のCMOS回路34の部分に接続されてもよい。
偏向電極38は、静電ポテンシャルが選択的に印加されるように構成される。そのような静電ポテンシャルが電極38に印加されると、この電極は、対応するビームレットに偏向を引き起こし、該ビームレットをその公称経路から逸らす電界を生成するよう構成されている。電極38は、同様に、帯電を回避するために後方拡開部分39を有していてもよい。電極38の各々は、その下側部分において、CMOS回路34内部の対応するコンタクト部位に接続される。
アース電極35の高さは、ビームレット間のクロストーク効果を抑制するために、偏向電極38の高さより高い。
図2に示されるDAP30を有するPDシステム4の配置は、いくつかの可能性の内の1つに過ぎない。(不図示の)変形形態では、DAPのアース電極35及び偏向電極38は、下流側ではなく寧ろ、上流側に(紙面上方を向く側に)配向されてもよい。例えば埋込型のアース電極および偏向電極を有する更なるDAP構成は、当業者によって案出可能である(米国特許第8,198,601B2のような、本出願人名義の他の特許を参照)。
FAPとして機能する第3のプレート40は、下流側で縮小を行う荷電粒子投影光学系5の第1レンズ部分に面する平面を有し、そのため、投影光学系の第1のレンズ10aに対する定義されたポテンシャルインターフェースを提供する。FAP40の肉厚部分41は、肉薄中央部分42を有する、シリコンウェハの一部から構成される方形または矩形フレームである。FAP40は、AAP20およびDAP30の開口部24、33に対応するが、それらと比べて幅が広い複数の開口部43が設けられている。
PDシステム4、特にその第1のプレートであるAAP20は、幅広荷電粒子ビーム50(本書において、「幅広」ビームは、ビームがAAPにおいて形成されたアパーチャアレイの領域全体をカバーするために十分に幅が広いことを意味する)によって照射され、その結果、荷電粒子ビーム50は、アパーチャ24を貫通して通過させられると、何千ものマイクロメートルサイズのビームレット51に分割される。ビームレット51は、DAP及びFAPを、妨げられることなく、横断する(通過する)ことになる。
既述のように、偏向電極38がCMOS電子回路によって電力供給される場合はいつでも、偏向電極と対応するアース電極との間に電界が生成されることになるが、それにより、そこを通過するそれぞれのビームレット52は小さいが十分に偏向される(図2)。偏向されたビームレットは、開口部33および43がそれぞれ十分に広い幅に形成されているため、DAP及びFAPを妨げられることなく横断することができる。しかしながら、偏向されたビームレット52は、サブカラムのストッパプレート11においてフィルター除去される(図1)。したがって、DAPによる影響を受けないビームレットのみが基板に到達することになる。
縮小荷電粒子光学系5の縮小率は、ビームレットの寸法、PD装置4におけるそれらの相互間距離、及びターゲットにおける構造体の所望の寸法を考慮して適切に選択される。これにより、PDシステムにおいてはマイクロメートルサイズのビームレットの生成が可能になるとともに、基板にはナノメートルサイズのビームレットが投影される。
AAPによって形成される(影響を受けていない)ビームレット51の束は、荷電粒子投影光学系の所定の縮小率Rによって基板に投影される。それゆえ、基板において、幅BX=AX/RとBY=AY/Rをそれぞれ有する「ビームアレイフィールド」(BAF)が投影される。ここで、AX及びAYは、それぞれ、X方向およびY方向に沿ったアパーチャアレイフィールドのサイズを示す。基板におけるビームレット(すなわち、アパーチャ画像)の公称幅は、それぞれ、bX=aX/R及びbY=aY/Rで与えられ、aX及びaYは、それぞれ、DAP30のレベル(高さ)におけるX方向およびY方向に沿って測定されるビームレット51のサイズを示す。従って、ターゲット上に形成される単一のアパーチャ画像のサイズはbX×bYである。
なお、図2に示された個別ビームレット51、52は、2次元のX−Yアレイに配置される極めて多数の、典型的には何千本ものビームレットを表す。本出願人は、例えば、イオンについてR=200の縮小率を有するマルチビーム荷電粒子光学系及び何千本もの(例えば、262,144本の)プログラマブルビームレットを有する電子マルチビームカラム(複数)を実現している。さらに、本出願人は、基板において凡そ82μm×82μmのBAFを有するそのようなカラムを実現している。これらの例は、例示の目的で挙げられたものであり、限定的な例として理解されるべきではない。
パターンの描画
図3を参照すると、PDシステム4によって定義されるようなパターン画像pmがターゲット16上に生成されている。荷電粒子感応性レジスト層17によって被覆されたターゲット表面は、露光されるべき1つ又は複数の領域r1を含むことになる。一般的に、ターゲット上に露光されるパターン画像pmは、パターン化されるべき領域r1の幅より、通常は十分に小さい有限サイズy0を有する。従って、走査ストライプ露光法が利用されるが、この場合、ターゲットは、ターゲット上におけるビームの位置を絶え間なく変更するよう、入射ビームの下で移動される、即ち、ビームはターゲット表面に渡って効率的にスキャンされる。本発明の目的のためには、ターゲット上におけるパターン画像pmの相対運動のみが重要であることを強調しておく。該相対移動によって、パターン画像pmは、幅y0を有する一連のストライプs1、s2、s3、・・・sn(露光ストライプ)を形成するよう、領域r1上で移動される。ストライプの完全なセットは基板表面の領域全体をカバーする。走査方向sdは、一定の方向を有してもよく、或いは、ストライプごとに移動方向が互い違いになってもよい。
図5Aに、10×18=180ピクセルのサイズの結像パターンpsの簡単な一例を示す。この場合、露光領域のいくつかのピクセルp100は100%のグレーレベル401に露光され、他のピクセルp50は完全なグレーレベルの50%にだけ露光402される。残りのピクセルは0%線量403に露光される(全く露光されない)。図5Bは、50%のレベルの実現の仕方を示す。即ち、各ピクセルは数回露光され、0%から100%の間のグレーレベルを有するピクセルについては、活性化されるピクセルに応じて露光の回数を相応に選択することによって、グレーレベルは実現される;グレーレベルは、活性化された露光を露光の総数で割った結果(活性化された露光を分子、露光の総数を分母とする分数)である。この例では、50%レベルは、4回(露光総数)のうち2回(活性化露光数)を選択することにより実現される。当然ながら、本発明の現実的な応用においては、標準画像のピクセル数ははるかに大きいものになる。しかしながら、図5A及び図5Bでは、より良い明瞭性のため、ピクセル数は180のみとしてある。更に、一般的には、一層より多くの段階のグレーレベルが0%から100%のスケールの範囲内において使用されるであろう。
従って、パターン画像pm(図3)は、露光されるべき所望のパターンに応じた線量値で露光される複数のパターンピクセルpxから構成される。尤も、PDシステムのアパーチャフィールドには有限の数のアパーチャしか存在しないため、同時に露光できるのは1つのサブセットのピクセルpxだけであることに注意すべきである。スイッチオンされるアパーチャのパターンは、基板に露光されるべきパターンに応じて選択される。このため、実際のパターンでは、ピクセルのすべてが完全な線量で露光されるのではなく、ピクセルの一部は実際のパターンに応じて「スイッチオフ」されることになる;任意のピクセル毎に(又は、等価的には、該ピクセルをカバーする各ビームレット毎に)、ターゲット上に露光または構造化されるべきパターンに応じて該ピクセルが「スイッチオン」されるか「スイッチオフ」されるかにより、露光線量はピクセル露光サイクル毎に変化されることができる。
基板16が連続的に動かされる間に、ターゲット上のパターンピクセルpxに対応した同じ像要素は、一連(シーケンス)のアパーチャの像によって何度かカバーされることができる。同時に、PDシステムにおけるパターンは、PDシステムのアパーチャを介して、段階的に(ステップ毎に)、シフトされる。したがって、ターゲット上のある場所にある1ピクセルについて考えると、すべてのアパーチャがスイッチオンされてそのピクセルをカバーするとすれば、これにより、最大露光線量レベル、即ち、100%に相当する「ホワイト」シェードが生じるであろう。「ホワイト」シェードに加えて、最小(「ブラック」)露光線量レベルと最大(「ホワイト」)露光線量レベルとの間を補間するであろうようなより低い線量レベル(「グレーシェード」とも称される)に従って、ターゲットにおけるピクセルを露光することができる。グレーシェードは、例えば、1ピクセルの描画に関与し得るアパーチャの1つのサブセットのみをスイッチオンすることによって実現されることが可能であり、例えば、16個のアパーチャのうちの4つにより、25%のグレーレベルが与えられるであろう。もう1つのアプローチは、関与するアパーチャのブランキングされない(unblanked)露光の持続時間を低減させることである。従って、1つのアパーチャ画像の露光持続時間は、グレースケールコードによって、例えば、整数によって制御される。露光されたアパーチャ画像は、ゼロと、最大露光持続時間及び線量レベルとに対応する所与の数のグレーシェードのうちの1つの現れである。グレースケールは、通常、一組のグレー値、例えば、0,1/(ny−1)...i/(ny−1),...,1、但しnyはグレー値の数、iは整数(「グレーインデックス」、0≦i≦ny)、を定義する。尤も、一般的には、グレー値は等間隔である必要はなく、0と1の間の非減少(non-decreasing)数列を形成する。
図4は、基本的レイアウトによる、PDデバイスのアパーチャフィールドにおけるアパーチャの配置を示し、以下で用いるいくつかの量及び略語を示す。濃い(黒の)シェードで示された、ターゲット上に投影されたアパーチャ画像(複数)b1の配置が示されている。主軸XおよびYは、それぞれ、ターゲット運動の進行方向(走査方向sd)及びその直角方向に対応する。各アパーチャ画像は、夫々、方向X及びYに沿って幅bX及びbYを有する。アパーチャは、MX個のアパーチャを有する行及びMY個のアパーチャを有する列に沿って配置されており、各行及び各列における隣接するアパーチャ間にオフセットは夫々NX・bX及びNY・bYである。その結果、各アパーチャ画像には、NX・bX・NY・bYの面積を有する概念セルC1が属し、アパーチャアレンジメントは、矩形に配列されたMX・MY個のセルを含む。以下では、これらのセルC1を「露光セル」と称する。ターゲット上に投影される完全なアパーチャアレンジメントは、BX(=MX・NX・bX)×BY(=MY・NY・bY)の寸法を有する。以下の説明においては、矩形グリッドの特殊なケースとしての方形グリッドを想定し、かつ、b=bX=bY、M=MX=MY、N=NX=NY、Mは整数とするが、これらはすべて更なる説明のためのものであり、一般化を制限するものではない(これらに限定されない)。かくして、「露光セル」はターゲット基板上でN・b×N・bのサイズを有する。
隣り合う2つの露光位置間のピッチは、以下において、eで表す。一般的に、距離eは、アパーチャ画像の公称幅bと異なり得る。最も単純な例では、b=eであり、これは、2×2露光セルC3の配置の例として図6Aに示されているが、1つのアパーチャ画像bi0は1ピクセル(の公称位置)をカバーする。図6Bに示される(及び米国特許第8,222,621号及び米国特許第7,276,714号の教示に沿った)他の興味深い例では、eはアパーチャ画像の幅bの分数b/oであってよく、ここで、o>1は、オーバーサンプリング係数とも称される整数であるのが好ましい(但し必須ではない)。この場合、アパーチャ画像は、様々な(複数の)露光の過程で空間的に重なり合い、それにより、パターンの位置決め(placement)のより高い解像度を生成可能にする。その後、(1つの)アパーチャの各画像は、一度に、複数のピクセル、すなわちo2個のピクセルをカバーするであろう。ターゲットに結像されるアパーチャフィールドの領域全体は、(NMo)2個のピクセルを含むであろう。アパーチャ画像の位置決めの観点からすれば、このオーバーサンプリングは、ターゲット領域を単にカバーするために必要になるであろうものとは異なる(間隔がより細かいため)、いわゆる位置決めグリッドに対応する。
図6Bは、「ダブルグリッド」とも称される、位置決めグリッドと組み合わされたo=2のオーバーサンプリングの一例、すなわち、o=2、N=2のパラメータを持つ露光セルC4を有するアパーチャアレイの画像、を示す。従って、各公称位置(図6Bにおける小さな方形フィールド)には、規則的なグリッドにおいてX方向及びY方向の両方向に距離eだけオフセットされている4つのアパーチャ画像bi1(破線[ハッチング])がプリントされる。アパーチャ画像のサイズは依然として同じ値bであるのに対し、位置決めグリッドのピッチeは今やb/o=b/2である。従前の公称位置に対するオフセット(位置決めグリッドのオフセット)もb/2のサイズである。 同時に、各ピクセルの線量及び/又はグレーシェードは、夫々のピクセルをカバーするアパーチャ画像に対し適切なグレー値を選択することによって、適合化(低減)されることができる。その結果、サイズb×bの領域がプリントされるが、より精細な位置決めグリッドにより、位置決め精度は向上されている。図6Bと図6Aを直接比較することにより、アパーチャ画像の位置は、位置決めグリッド上で従前よりも2倍(一般的にはo倍)の精細に配置されている一方、アパーチャ画像(複数)自体は重なり合っていることが分かる。露光セルC4は、今や、描画プロセス中に扱われるべき(No)2の位置(即ち「ピクセル」)を、従って、o2の倍数だけ、従前よりも多くのピクセルを含む。これに応じて、b×bのアパーチャ画像のサイズを有する領域bi1は、図6Bにおけるo=2であるオーバーサンプリング(「ダブルグリッド」とも称される)の場合、o2=4ピクセルに関連付けられる。当然ながら、oも同様に、任意の他の整数値、特に4(「クワッドグリッド」、不図示)又は8であってもよい。更に、パラメータoは、米国特許第9,653,263号に示されている「ダブルセンターグリッド」の場合に対応して、21/2=1.414又は23/2=2.828のような1より大きい非整数値であってもよい。
なお、連結(interlockong)グリッド(o>1)を用いることにより、「ディザリング(dithering)」によってグレーシェードの数の増加が可能になる一方で、線量分布は均一に維持される。これは、グレーシェードがいずれの公称グリッドについても等しいことを基礎とする。これは、ダブル連結グリッドでは、実現可能な有効線量レベルの数(複数)は非連結グリッドの場合より4倍多いことを意味する。一般的に言えば、オーバーサンプリングされる露光グリッド(即ちo>1)は、何れも、X及びY方向にb/oの距離だけシフトされるo2個までの公称グリッドから構成される。従って、ある線量レベルから次の線量レベルへのステップはo個のサブステップに分割することができ、この場合、これらのo個のグリッドの1つのみの線量レベルが増大される。これは、全てのサブグリッドが公称レベルを露光するまで、他のグリッドについて繰り返すことができる。基板におけるビーム形状は、機械ブラーとアパーチャプレートの減縮されたアパーチャ形状との畳み込みであることは、当業者であれば分かるであろう。幅bを露光グリッド定数eの自然数倍に設定することにより、換言すればo=b/eを整数にすることにより、基板上における均一な線量分布を得ることができる。そうでない場合、線量分布は、エイリアシング(aliasing)効果のため、露光グリッドの周期性に伴って最小値と最大値を有し得る。多数のグレーシェードは、より優れた特徴位置決めを可能にする。従って、グレーレベルの増加は、ピクセル位置ごとのグレーシェードが所定の数に限られている場合、重要である。
図7Aは、好ましくは本発明によって使用される走査ストライプ露光に適切なピクセルの露光スキームを示す。図示されているのは一連のフレームであるが、時間は(紙面)頂部(より早期)から(紙面)底部(より遅期)に進行する。この図におけるパラメータ値はo=1、N=2であり、更に、MX=8及びMY=6の矩形ビームアレイが想定されている。ターゲットは常に(紙面)左側に動くのに対し、ビーム偏向は、紙面の左側に示されているように、のこぎり波関数で制御される。長さT1の各時間間隔(interval)中は、ビーム画像は、(「位置決めグリッド」の位置に対応する)ターゲット上のある位置に固定されたままである。従って、ビーム画像pmは、位置決めグリッドシーケンスp11、p21、p31を通過するように示される。位置決めグリッドの1サイクルは、ターゲット運動vによって、時間間隔L/v=NMb/v以内に露光される。各位置決めグリッドにおける露光のための時間T1は、「露光長さ」と称される長さに相当し、これはLG=vT1=L/p=NMb/pで与えられる。但し、pは1つのセルの内部の露光位置の数(通常のオーバーサンプリングされたグリッドではp=No2)を表す。
ビームレット(複数)は、ターゲットと共に1セットの画像要素の露光中に、LGの距離にわたって移動される。換言すれば、すべてのビームレットは、時間間隔T1の間、基板の表面に対して固定された(一定の)位置を維持する。距離LGに沿ってターゲットと共にビームレットを移動させた後、ビームレットは即座に(極めて短い時間以内に)再配置されて、次の位置決めグリッドの画像要素の露光を開始する。(1つの)位置決めグリッドサイクルの位置p11・・・p31を介する1つの完全なサイクルの後、シーケンスは、X方向(走査方向)に平行な縦方向のオフセットL=bNMを付加して、新たに開始される。ストライプの始点と終点において、この露光方法は連続的なカバリング(covering)を形成しなくてもよく、そのため、完全には充足(露光)されない長さLのマージンがあってもよい。
なお、図7Aには、実際のパターンに応じた個別アパーチャの開閉のために必要な時間は省略されていることに注意すべきである。実際は、DAPの偏向装置及び偏向マルチポールシステムは、再位置決め及び過渡的振動のフェードアウト(収束)後にアパーチャの状態を安定化するために、所定の安定化期間TSを必要とする。安定化期間TSは、ピクセル露光サイクルT1の(極めて)小さい部分である。従って、完全なピクセル露光サイクルT1より寧ろ、専ら使用可能時間Tu=T1−TSがピクセルの露光のために使用される。時間間隔Tuは、その時間以内に適切な線量がそれぞれのピクセルに供給されることを保証するピクセル露光期間である。しかし、以下においては、TSはT1と比べて無視できる程小さいと仮定し、したがって、TuとT1は以下では区別しない。
使用可能露光時間Tuは、処理可能なグレーシェードの数に対応するg個の時間枠に分割される。gの値の一例はg=16(4ビット)である。ピクセル露光は、Tu以内に使用される時間枠の合計である所望のグレーシェードに応じて活性化される。時間Tu以内に1つのピクセルに適用される線量がg個のグレーレベルにデジタル化されれば、ブランキングセル全体をg回、時間Tuの間にリロードすることができる。ブランキングアレイにおける各ブランキングセルは、露光期間T1(より正確には使用可能時間Tu)の間にそれぞれ個別のグレーシェードを受け取る。
図7Bに、g=5とした単純化した例における、異なるグレーシェードを有する2つのピクセルの露光を示す。安定化期間TSの相対的サイズは著しく誇張して示されている。g=5に応じて、各使用可能時間Tuに5つの時間枠がある。第1ピクセルp72[p71]は、100%(即ち「ブラック」)のグレーシェードで露光され、第2ピクセルp71[p72]は40%のグレーシェードで露光される。ピクセルp71[p72]に対して、対応するブランキング電極の2つの時間枠は、(40%は5つの内の2つのグレーシェードに相当するため)1つのグレーにシェードされたピクセルを生成し、時間枠の2つは、任意の順序で、スイッチオンに設定される。他方、ピクセルp72[p71]については、それぞれのブランキング電極は、5つの全ての時間枠の間活性化され、その結果、Tuの間に与えられ得る最大線量を有するブラック(黒い)ピクセルを生成する。
ダブルグリッド及びクワッドグリッドにおける特徴の露光
図8A〜図8Cを参照すると、アパーチャ画像bi0、bi1(図6A、図6B)に対応する各露光スポット60は、以下においてより詳細に説明するように、離散的な線量レベルで露光される。図8A〜図8Cは、特別に重要ないくつかのオーバーラップ構成を示す。
図8Aは、図6Bついて上述したような「ダブルグリッド」マルチビーム露光を示すが、露光スポット間のオーバーラップはX方向及びY方向においてビームスポットサイズの半分である。この場合、物理的グリッドサイズ61は、スポット(spots)の線形サイズ60の半分である。
図8Bは、「クワッドグリッド」マルチビーム露光を示すが、スポット間のオーバーラップはX方向及びY方向においてビームスポットサイズの1/4である。この場合、物理的グリッドサイズ62は、スポットサイズ幅の4分の1である。
図8Cは、別のグリッドレイアウトを示すが、この場合、ダブルグリッドオーバーラッピングビーム露光に加えて、ビーム露光は中間にある中心点(複数)において行われる。従って、物理的グリッドサイズ63は、線形スポットサイズの1/23/2(即ち√2/4)である。このマルチビーム露光モードは「ダブルセンターグリッド」と称される。
図9は、最大線量レベルで露光される1つの露光スポット(その幅は60で示されている)の強度プロファイルの象徴的描写(「ブリック(brick)層」)を示す。4ビットコーディングの例示的ケースでは、16の線量レベル(0、1、2、・・・15)がある。即ち、最大線量レベルは、15の線量レベル増分の合計64である。
図10は、ゼロブラーの理想的な場合における、幅30nmの線についての理想強度プロファイル71を示す。「クワッドグリッド」マルチビーム露光を使用する場合、オーバーラップはビームサイズの4分の1である。従って、ビームサイズが20nmの場合、物理的グリッドサイズは5nmである。選択した例では5nm×5nmである物理的グリッドの各領域には、離散的(discrete)線量レベルを割り当てることができる;図10における線72は、30nm線を生成するためにピクセル位置に割り当てられた離散的線量レベルを有するオーバーラッピング露光スポット(複数)によって構成されるような強度の重ね合わせ(又は総線量)を示すが、見やすくするために、ブラーはゼロに設定されている(そのため、単一の露光スポットの線量分布は矩形になる)。ブラーが図13に示すような現実的な値を有する場合、矩形のエッジにおけるステップ(階段)関数は、ガウス関数で畳み込まれ、最終的にガウス形状に変換される。その意味で、線72は、ブラーゼロでのガウス関数の重ね合わせとみなすことができる。一般的な場合、線量レベルのヒストグラムは、左右のエッジを所定の位置に位置付けるために、対称にはならないであろう。
図11は、0.0nmに位置付けられるべき左側エッジと、30.0nmに位置付けられるべき右側エッジとを有する30.0nm幅の線についてのシミュレーションの一例を示す。このシミュレーションでは、20nmのビームスポットが、5.1nmの1シグマ(sigma)ブラー(即ち12.0nmのFWHM(full width at half maximum:半値全幅)ブラー)で露光されるものとした。強度プロファイル76は、露光スポット73、74及び75のプロファイルの重ね合わせにより形成される。最も左側の露光スポット74の線量レベルは、30nmの線が所望の開始位置77、即ち0nmで開始するように調節される。最も右側の露光スポット75の線量レベルは、被露光線が30.0nmの位置78で終了するように調節される。図11から分かる通り、「クワッドグリッド」露光によれば、露光スポット73、74、75のオーバーラップは、ビームサイズの4分の1、即ち5nmである。
図12A及び図12Bは、MBWが精細エッジ定義(ないし分解能:definitions)により線を描画する仕方を示す。各図において、紙面上側のフレームは、線幅に対するエッジ位置エラーεX(双方とも単位はナノメートル)を示し、紙面中央のフレームは強度プロファイル(31.4nm及び40nmの線幅wXのそれぞれについて強度の単位は任意)を示し、紙面下側のフレームは、線幅に対する露光線量を10%増大した場合(ΔD=10%)のエッジ位置ずれΔxEを示す。図12Aは、31.4nm線幅について得られた強度プロファイルを示し、図12Bは、40.0nm線幅について得られた強度プロファイルを示す。20nmビームサイズとクワッドグリッド露光(5nmの物理的グリッドサイズ)によるMBWを使用することにより、露光によって生成される構造の線幅は、0.1nm刻みで変更することができる。線量レベルが整数であるため、0.1nmアドレスグリッドからは僅かなずれが生じる。これらのずれは、30.0nmと40.0nmの間で0.1nm刻みの所望の線幅wXの関数として示されている「エッジ位置エラー」εx(紙面上側フレーム)として示されている。図から分かる通り、これらのずれは±0.05nmの範囲内にある。さらに、線量の10%変化によるエッジ位置の変化ΔxEは僅か凡そ1nmであり、紙面下側フレームに示されているように線幅が変化しても僅かしか変化しない。換言すれば、線量はMBWにおいて1%よりも良好に制御されるので、線量の1%の変化によるエッジ位置の変化は凡そ1原子層以内である。
図13は、MBWの最も重要な一利点、即ち、線幅は50%線量閾値で見るとブラーには事実上依存しないことを示す。図13には、ゼロブラーについての強度プロファイル71、線量レベルヒストグラム72、及び、それぞれ3.5nm、5.0nm及び7.5nmの1シグマブラーで算出された結果として生じる強度プロファイル81、82、83が示されている。生成された構造のエッジ位置xE1及びxE2は、ゼロブラー強度プロファイル71が「0.5」強度レベル(ドーズ・ツー・クリア(dose-to-clear))と交差する所にある。図13Aの拡大詳細図は、(紙面)左側傾斜(立ち上がり)部分における位置XE1の周囲の領域を示す。線量レベル割当て72は、5nmの1シグマブラーを有する20nmビームサイズと、5nmの物理的グリッドサイズを与えるクワッドグリッドマルチビーム露光を使用するためのものである。
図14A、図14B及び図14Cは、本書で説明するマルチビーム露光方法が、グリッドサイズより小さい解像度で、構造特徴の精細位置決めを達成できる仕方を示す強度プロファイル図を示す。図14A〜Cに示すような強度プロファイル図において、離散的な線量レベルは、「煉瓦(brick)層」の配置で積み重ねられる、均一の高さの矩形64として視覚化されている。当然ながら、この「煉瓦層」の描写は象徴的なものにすぎず、図面の説明を容易にすることが意図されているに過ぎない。
図14Aは、20nm幅のビームスポットサイズのクワッドグリッドにおいて4ビット(即ちスポット当たり15の線量レベル)露光によって露光された30nm幅の線の例についての、線量レベルヒストグラムを示す。グリッドサイズ62は、「煉瓦層」配置で積み重ねられた矩形として象徴的に示されている露光スポットの線形サイズの1/4であり、その結果として得られる線量レベル分布65は太線で輪郭が描かれている。
線幅は、グリッドサイズ、この例ではクワッドグリッドサイズ62より小さい、極めて細かい刻みでより狭く又はより広くされることができる。線幅の減縮(reducing)は、最も外側の露光スポットの線量レベルを低下すること及び/又は幾つかの露光スポットを無視すること(減縮が露光スポットサイズの少なくとも凡そ半分である場合は後者)によって達成できる。線幅の増大(increasing)は、最も外側の露光スポットの線量レベルを増大すること、及び/又は、特に最大線量レベルに既に到達している場合は、追加の、好ましくはオーバーラップする露光スポットを付加することによって達成可能である。後者の側面は、図14Bに示されている。即ち、所定の線量レベルを有する露光スポット66が付加され、その結果、65と比べてより広い幅を有する線についての線量レベルヒストグラム67が得られる。(紙面左右)両側における縮小および増加のこれらの効果を組み合わせることによって、非常に精細なステップ(刻み)で線位置をシフトすることもできる。図14Cは、幅の変化を伴わない線のシフトを示し、これは、幾つかの線量レベルをスポット68から除去しかつ幾つかの線量レベルをスポット69から[スポット69に]付加することによって達成されるが、その結果、図14Aの線と比較して紙面右側にシフトされた線に対応する線量レベルヒストグラム70が得られる。
図14A〜図14Cの強度プロファイルは、ターゲット面のX方向に沿って示されている。本書で説明するマルチビーム露光方法は、他の方向に沿った線に対しても利用可能であることは明らかであり、また、ターゲット面上において任意の角度をなす線について精細位置決めを達成することができる。
現実的な状況下では、BAF内の目標露光線量に対して局所的な露光線量の偏差がある。さらに、露光フィールドに渡るビームブラーの僅かな変化も予期され得る。これについては、図15A及び図15Bに示されている。縦軸(a.u.)は任意のスケールを示す。
図15Aは、図13の強度プロファイル82を有する5nmの1シグマビームブラーの場合から出発し、露光線量が公称線量レベルから+4%だけずれる例示的場合を示す。図から分かる通り、0.5強度レベルでの線エッジは0.43nmだけシフトされる。これは、この例において、30.0nmのCDの代わりに、30.0nm+2×0.43nm=30.86nmの幅を有する線が、4%の線量レベル増分の結果としてプリントされるであろうことを意味する。
図15Bに示されるように、7.5nmの1シグマブラーを有する図13に示す局所的ビーム強度プロファイル83から出発し、-5%の線量レベル減分を引き起こす線量エラーによって、エッジ位置は−0.60nmだけシフトされ、そのため、30.0nmのCDの代わりに、28.8nm幅の線がプリントされることになるであろう。
エッジの特徴の位置の補正は、シフトされるべきエッジ付近に露光線量を適切に付加することによって可能である。例えば、図16は、線を拡幅するための一例として線量レベルヒストグラム86を示す。図14Aの30nm線(図16の点線65)から出発すると、両方のエッジは、エッジの位置にオーバーラップする露光スポット84及び85を付加することによって、1物理的グリッドサイズ62の量だけシフトされ、その結果、線量レベルヒストグラム86が得られる。
図17は、強度分布がブラーの増加によって劣化される様子を示し、及び、結果として得られるエッジ位置に対するあり得る影響を示す。ブラーを無視する(「ゼロブラー(zero blur)」)ことにより得られる、理想強度プロファイル90が30nmの線幅を有する線について示されている。強度プロファイルの「0.5」レベルは、レジスト現像(development)の有無で領域(複数)を互いに区別するための「ドーズ・ツー・クリア」に対応する。「0.5」レベルは描画されるべき線のエッジを定義するため、ブラーの効果(影響)は、複数の異なる線量ラチチュード(latitudes)、従って、所望の公称位置からの、描画されたエッジ位置のずれを引き起こすかもしれない。(紙面)左側エッジおよび(紙面)右側エッジのそれぞれの所望位置x°E1及びx°E2は、ゼロブラー強度プロファイル90については達成されている。5nmの1シグマブラーについては、強度プロファイル93は依然としてこの条件を大方満たすことができるが、10nm、15nm及び20nmの1シグマブラーにそれぞれ対応する強度プロファイル94、95及び96では、ずれが大きくなっていく。特に、図17Aの拡大細部から分かる通り、強度プロファイルの位置(即ち、「0.5」レベルの交点)は、所望のエッジ位置x°E1及びx°E2(それぞれ(紙面)左側エッジおよび(紙面)右側エッジ)から、夫々15nmおよび20nmの1シグマブラーの強度プロファイルの劣化したエッジ位置x’E1及びx”E2へシフトされる。
図32Aは、そのエッジ(複数)が物理的グリッドと一致するある特徴の臨界寸法920及びそのエッジ(複数)が2つの物理的グリッドポイントの中間に位置するある特徴の臨界寸法930の変化dCDを、該特徴で使用される局所露光量Dの関数として示す。なお、何れの場合も、「ダブルグリッド」マルチビーム露光モード及び5nmの1シグマブラーの場合についてのものである。理解の容易化のため、対応する特徴921及び931を図32Bに示した(両者の特徴は同サイズ)。なお、ダブルグリッドモードの物理的グリッド944も示されている(図6Aおよび図8Aも参照)。特徴921のエッジ(複数)は、図32Aの線920に応じて線量変化の下で変化する(scales)物理的グリッドと一致する。他方、特徴931のエッジ(複数)は、ピッチ950の半分だけ相対的にオフセットされている。なお、ピッチ950は、例えば、20nm及びo=2のビームレットサイズについては10nmであり、従って、物理的グリッドに対する931のオフセットは、10nm/2=5nmである。単純化のため、この例では両方向X及びYにおけるオフセットが同じであるものとした。図32Cには、両方の特徴の線量を変化させることによる臨界寸法の変化dCDの間の差d(dCD)がプロットされており、グリッドに対し相対的な位置に依存する特徴サイズの結果として得られる差d(dCD)が、アイソフォーカル線量D1については、丁度ゼロであることが示されている。このアイソフォーカル線量は、図32A及び図32Cにおいては、絶対線量値100%に対応する。従って、アンダードージング又はオーバードージングは、オーバーラッピングピクセル描画モードと組み合わされると、CD均一性の低下を引き起こし得る。なぜなら、特徴(複数)は、物理的グリッドに対し相対的なそれらの位置に依存して異なるように変化(scale)し得るからである。図から分かる通り、このCDエラーは、アイソフォーカル線量からのずれの量に応じて単調に変化する。
データパス
描画されるべきパターンを、描画プロセスにおいて使用可能な、(上述したような)ビームレット線量割当てに変換する描画ツール(図1)の処理システム18の部分は、「データパス」システムと称される。図18は、本発明の意義におけるデータパス170のフローチャートの一例を示す。データパスはリアルタイムで実行されるのが好ましく、一変形形態では、データパスの計算の一部または全てが、例えば適切なコンピュータにおいて、予め実行されてもよい。
完全なパターン画像は膨大な量の画像データを含むが、これが、それらのデータの効率的な計算(computation)のために、露光されるべきピクセルデータを、好ましくはリアルタイムで、生成する高速データパスが適している理由である。露光されるべきパターンは、典型的には、例えば、矩形、台形または一般的な多角形のような幾何学的形状の集合として、ベクトルフォーマットで記述されるが、これにより、典型的には、より良好なデータ圧縮が提供され、したがって、データ記憶に関する要件が低減される。従って、データパスは以下の3つの主要部分から構成される:
‐ベクトル型物理的補正処理(ステップ160)
‐ベクトルをピクセルデータに変換する(translate)ためのラスター化処理(ステップ161乃至164)、及び
‐描画処理のための一時的記憶のためのピクセルデータのバッファリング(ステップ165及び166)。
データパスは、ステップ160で露光されるべきパターンPDATAの供給から開始する。ステップ160では、一般的に、露光されるべきパターンPDATAは、場合によって幾何学形状のオーバーラップを伴って、多数の小さなデータのチャンク(chunks)に分割される。ベクトルドメインにおいて適用可能な補正(例えば、近接効果の補正)は、すべてのチャンクに対して独立に、場合によっては並列的に、実行されてもよく、結果として得られるデータは、後続のステップにおける計算速度を向上させる方法でソートされ(sorted)かつ符号化される。出力はチャンクの集合であり、これらのチャンクは全て幾何学的形状の集合を含有する。
ステップ161:ラスター化RAST。(全ての)チャンク毎の幾何学的形状をラスター化されたピクセル画像に変換する。このステップでは、各ピクセルには、ラスターグリッドセルの対応する表面と露光されるべきパターン即ち関連する全てのチャンクの実体(entity)との幾何学的なオーバーラップ(重ね合わせ)に依存して、浮動小数点グレースケール強度が割り当てられる。技術水準のソリューションでは、この浮動小数点強度は、それぞれのピクセル位置でターゲット上に供給されるべき理想的な物理的な露光線量を表す。より詳細には、完全に幾何学形状内にある(全ての)ピクセル(毎)に最大強度が割り当てられ、それに対し、幾何学形状のエッジと交差するピクセルの強度を、該幾何学形状によってカバーされているピクセルの領域の割合(fraction)によって重み付けする。この方法は、幾何学形状の領域とラスター化後の総線量との間の直線関係を意味している。
ステップ162:ピクセル・ツー・ビームレット(Pixel-to-beamlet)割当てASSIGN。このステップでは、特定の描画シーケンスが与えられ、どのピクセルがどのビームレットによって描画されるかが決定される。
ステップ163: ピクセルベースの補正CORR1。このステップでは、ピクセルドメインで適用可能なすべての補正が実行される。これらの補正は、(上記および本出願人の米国特許第9,495,499号に記載されているような)アパーチャフィールド上におけるビーム50の均一な電流密度からの偏差の補償及び/又は(米国特許出願公開第2015/0248933A1号に記載されているような)DAP30における個々の欠陥のあるビーム偏向器の補正を含む。ピクセルベースの補正は、各個別ピクセルの浮動小数点強度を修正することによって実現される。これは、ステップ162のピクセル・ツー・ビームレット割当てに関して実行され、これにより、各ピクセルについて、該ピクセルがどのビームレット(単数)によって描画されるか及び/又は隣接するピクセル(複数)がどのビームレット(複数)によって描画されるかに依存して、補償線量係数q(または、等価的に線量シフトs)を定義および適用することが可能になる。
ステップ164:量子化QUANT。量子化処理は、各ピクセルの、場合によっては補正された、浮動小数点強度を、所定のグレー値スケールを与えられた、量子化された(または等価的に「離散的な」)グレーレベルに変換する。
ステップ165:グレーレベルのピクセルデータドメインにおけるさらなる任意のピクセルベースの補正CORR2が適用されてもよい(但し、本発明の一部ではない)。
ステップ166:ピクセルパッケージング、PPACK。ステップ164から得られたピクセル画像は、位置決めグリッドシーケンスに従ってソートされ、描画ツールの処理システム18(図1)に設けられたピクセルバッファPBUFに送信される。ピクセルデータは、ストライプの露光を引き起こす十分な量のデータ、典型的には少なくとも当該ストライプの長さ、が存在するまで、バッファされる(図7を参照)。データは描画処理中にバッファから取り出される。ストライプが描画された後、上述の処理は、次のストライプのような、露光領域の次の部分のパターンデータに対して、新たに開始する。
線量誘導(Dose-guided)再形成(reshaping)
本発明は、線量関連の特徴再形成を実現し、パターンデータ、特にパターンベクトルデータにおける線量割り当てのパターンサイズ調整への変換に関与する、パターンデータの再計算方法に関する。
図19は、アイソフォーカル線量の概念を説明する図である。明らかに、任意のパターンについて、生成される線量プロファイルは、一般的に、露光に使用されるビームのブラーに依存する。例えば、理想的な線量プロファイル190を有する50nmの線が露光されるところ、図19は、4nm(191)、8nm(192)及び16nm(193)の標準偏差を有するビームブラーの出現(新たな:emerging)プロファイルを示す。理想的プロファイル190の割当て線量D1(図中において、線量Dの値はD1に正規化されている)は、レジストのドーズ・ツー・クリアの2倍、即ちD1=2×DDtC、になるように選択される場合、露光される幅は、通常、ビームのブラーには依存しない、従って「アイソフォーカル(isofocal)」である、即ち、光学結像システムの焦点変化に対して不変である。それ故、「アイソフォーカル線量」と称される。なお、特徴サイズがビームブラーのオーダーである場合、このような挙動は、一般的に、特定のパターン(例えば、等しい幅の線およびスペース)に対してのみ可能である。そのような場合、最適な処理ウィンドウ(期間)を得るため、異なる線量の使用が適切であり得る。しかし、本発明は、(例えば、スループット増加のために)アイソフォーカル量未満の公称線量で使用することもできる。
図20は、オーバードーズ(過剰線量)に関する特徴サイズを操作するための基本原理を示す。図示の例では、処方(prescription)により、理想的線量プロファイル195を有する50nmの線は、(1に正規化された)アイソフォーカル線量D1に対して、50%だけオーバードーズされた割当て線量を有する。5.1nmシグマブラー(即ち、12nmのFWHM)では、これにより、ドーズ・ツー・クリアDDtCが(破線で示された)0.5レベルにあるとすれば、位置xE1及びxE2にエッジを有する出現プロファイル196が得られ、特徴サイズxE2−xE1=54.4nmを実現する。このパターン要素の線量を高々1に(又はより一般的には、アイソフォーカル線量D1)であるように制限する場合、出現プロファイルの幅を維持するために、再形成処理によって、公称特徴サイズを当初の50nmから54.4nmに適合化することも必要になるであろう。これは、線量プロファイル197及び結果として得られる線量プロファイル198に対応する。
図21は、挿入枠に示されているパラメータとしての異なるブラー値での図19及び図20に示す具体化例について、アイソフォーカル線量の値に対する、線量係数の関数としての線特徴のエッジ位置の変化ΔxEを記述する線量勾配関数fDSを示す。線量勾配関数は、ブラー及び(アイソフォーカル線量に対する相対値、即ちD/D1としての)割当て線量Dがエッジ位置、従って特徴サイズ、の変化に関係付けられる様子を示す。そのようなチャートは、実験的にまたはシミュレーションから容易に得られ、線量操作(manipulations)を特徴サイズ操作(manipulations)に(又はその逆に)変換する(translate)のに使用できる。小さい線量又はブラーウィンドウのみが利用される場合、線形化で一般的には十分である(例えば、スカラー線量勾配を使用する)。
図22は、ターゲット上の露光の1つの領域ML1に定義されている、パターンレイアウトpllの簡略化した一例を示す。いくつかのパターン要素が、例えば多角形t1、t2、...t3、t4、...t0として定義されている。パターン要素の各々は、定義された割当て露光線量に関連付けられている。
本発明による再形成方法の原理が、図22のパターン要素t1、t2、t3の例を使用して図23に示されている。図23は、再形成の前後の、図22の線xxiii−xxiiiに沿って得た、線量プロファイル、即ち座標Xの関数としての局所的露光線量Dを示す。図23は、理想的線量プロファイルを実線で示し、他方、出現線量プロファイルは一点鎖線で示されている。図23(A)から分かる通り、当初のパターンレイアウトの3つのパターン要素t1、t2、t3はそれぞれ幅w1、w2、w3(線xxiii−xxiiiに沿った断面幅)を有し、それぞれ異なる割当て露光線量値D1、D2、D3を有する。とりわけ、パターン要素t1は、公称線量D1と一致する割当て線量を有し、他方、他の2つのパターン要素t2、t3の割当て線量D2、D3は、夫々、公称線量D1よりもより大きい(D2)又はより小さい(D3)。割当て線量D1、D2、D3の各々は、ドーズ・ツー・クリアDDtCの値よりも大きい。本発明による再形成は、露光されたパターン内の特徴(複数)の幅に影響を与ることなく、パターン要素(複数)に割当てられた露光線量が公称線量D1に対応する値に修正されるよう、当該パターン要素(複数)を修正することを目的とする。このために、理想的プロファイル(複数)の幅は、適切な方法で適合化される必要があるであろう。図23(B)は、パターン要素の各々が、公称線量D1が割り当てられた再形成パターン要素rt1、rt2、rt3によって置換された再形成されたプロファイルの一例を示す。パターン要素の幅w1、w2、w3は、線量勾配関数fDS(図22参照)に従って補正される。第1のパターン要素t1については、その当初の割当て線量からして公称線量D1に等しいため、適合化は不要である。第2のパターン要素t2は、当初は、線量勾配値f2=fDS(D2/D1)に対応する割当て線量D2を有する。従って、再形成パターン要素rt2の幅はw2+2×f2に変化される。なお、適合化幅rt2は、出現線量プロファイル(一点鎖線の曲線)が、当初のオーバードーズされたパターン要素t2と同じ幅を有するように選択されていることに留意すべきである。同様に、第3の再形成パターン要素rt3の幅はw3+2×f3に変化されるが、D3<D1であるため、f3は負であり、従って、fDS(D3/D1)<0である。(f3の計算は、更に、特徴t3のエッジの傾斜(配向)に対する幾何学的補正を伴い(図22参照)、該補正は追加係数1/sinαを伴い、αは座標線Xに対する角度である;従って、f3=fDS(D3/D1)/sin(π/3)であり、π/3は60°の角度である。要素t1、t2については、線(複数)はX方向に対し直角であり、幾何学的補正係数は1である。これは、図23(B)における幅(複数)が、特定の方向Xに沿って得た断面の幅であるという事実の結果である。)その後、再形成パターン要素rt1〜rt3によって、当初パターン要素t1〜t3を置換し、再形成パターンrplが形成される。
図23の例では、公称線量D1は、ドーズ・ツー・クリアDDtCよりも大きい任意の値を有するが、これは一般的な場合を表す。公称線量D1の適切な選択は、上述したように、ドーズ・ツー・クリアDDtCの2倍、即ちD1=2×DDtCである。
本発明の方法は、ベクトルドメインまたはピクセルドメインにおいて実現され得る。図18に示すデータパスでは、PDATAステップ160中において、ベクトル型再形成を実行することが可能であり、他方、再形成がピクセルドメインで行われる場合は、適切な実施は、線量量子化の前のCORR1ステップ165中である。適用目的に応じて、補正ステージの1つのみ又は両方が必要になり得る。
ベクトルドメインにおける再形成
本再形成方法は、パターン要素が幾何学的形状、例えば複数のエッジを含む多角形、として定義されているベクトルドメインで実行されることができる。とりわけ、再び図22を参照すると、パターンレイアウトpllの多角形t1、t2、...t3、t4、...t0は、2次元の閉じた多角形として定義されている。多角形は通常凸状であるが、凹状の形状もあり得る。再形成は、結果として得られる対象も閉じた形状(多角形)であるという制約の下、内側または外側へのエッジの平行シフトに対応する。ここで、「平行シフト」とは、エッジがその配向を維持しつつずらされることを意味し、シフトの量は各エッジの配向に対し直角な方向に沿って測定される。
幾何学的な観点から言うと、線量設定を変更することによって特徴サイズを微調整する一般的な方法は、(多角形)「オフセッティング」と呼ばれる幾何学的操作に対応する。この操作の他の一般用語は「波面伝搬」であり、例えば、Stefan Huberの博士論文“Computing Straight Skeletons and Motorcycle Graphs: Theory and Practice”、ザルツブルク大学(オーストリア)、2011年6月、3-19頁に記載されている。多角形オフセッティングは、(グローバルな乗算(multiplicative)操作である多角形全体に適用されるスケーリング操作とは対照的に)対象のエッジ及び頂点に適用される拡大(growing/expanding)(または縮小(shrinking/contracting))のローカルな操作のみを伴い、一般的に、幾何学的形状の、特に矩形形状のアスペクト比の変更も行うことになる。
これに関し、以下の2つのアルゴリズムが、MBW描画機による使用のために考慮される。これらのアルゴリズムについて、例としてF字形状多角形に基づいて以下に説明する。出発形状は図22の多角形t0(「出発多角形」)として図24〜図27に示されているが、これは、出発多角形t0の頂点tv1、tv2、...のうちの順次の(関連する:subsequent)2つをそれぞれ繋ぐ(黒の直線で示されるような)複数の直線的エッジt01、t12、...で定義される。
図24及び図25に例示する第1の好ましい実施形態では、多角形の再形成は一般化されたオフセッティング方法によって行われる。図24は、多角形t0を再形成距離d1だけ縮小する(contracting)例を示す。多角形の各頂点tv1、tv2について、各頂点には2つのエッジが所属し(incident)、これら2つのエッジ(辺)の角度二等分線ab1、ab2が決定される(例えば、頂点tv1については、角度二等分線ab1はエッジt01及びt12から決定される;頂点tv2については、角度二等分線ab2はエッジt12及びt23から決定される。以下同様。)。角度二等分線ab1、ab2、...は点線で示されている。各頂点tv1、tv2、...について、頂点の位置は、シフトされた頂点sv1、sv2、...が、それぞれの当初エッジt01、t12、t23、...まで所定の距離のところ、即ち再形成距離d1に対応する距離のところに位置するように、それぞれの角度二等分線ab1、ab2、..に沿ってシフトされる。この場合、頂点は、多角形の縮小的再形成のために必要とされるように、内側にシフトされる。かくして、シフトされた頂点sv1、sv2、...が得られるが、これらは円形ドット(黒丸)で示されている。シフトされた頂点は、図に破線で示されている結果として得られる多角形st1のシフトされたエッジe01、e12、..を定義する直線によって繋がれる(結び合わせられる)。結果として得られる多角形st1のシフトされたすべてのエッジe01、e12は、対応する当初エッジt01、t12に対し同じ再形成距離d1のところに位置する。これから、割り当てられた線量は多角形形状の属性(attribute)のひとつであること、従って、割当て線量と該割当て線量から計算される再形成距離d1は、ある形状のすべてのエッジについて均一であることは明らかである。具体的には、再形成距離d1は、公称線量に関する所定の線量勾配関数fDS(図21参照)を用いて、多角形t0の割当て線量の値から決定される;多角形t0の縮小(contracting)に対応するこの例では、後者は公称線量よりも低い割当て線量を有するので、再形成距離d1の符号は負、即ちd1<0である(図24では、d1の絶対値のみが示されている)。結果として得られる多角形st1には、公称線量が割り当てられる。
図25は、多角形t0を再形成距離d2だけ拡大する(expanding)(より一般的な)場合を示す。この処理は、頂点が多角形の当初の頂点tv1、tv2から外側にシフトされることを除いて、図24で説明した上述の処理と基本的に同じである。従って、シフトされた各頂点xv1、xv2、...は、夫々の当初エッジt01、t12、...に対し距離d2のところに位置し、この距離は再形成距離d2に対応するが、今回は、シフトされた頂点は出発多角形t0の外側にある。同様に、結果として得られる多角形st2のシフトされたエッジx01、x12、...は外側に移動しているが、それらも全て対応する当初エッジt01、t12に対し同じ再形成距離d2のところに位置する。再形成距離d2は、公称線量に関する所定の線量勾配関数fDS(図21参照)を用いて、多角形t0の割当て線量の値から決定される。この場合、出発多角形t0の割当て線量は公称線量よりも大きいが、これが、再形成距離d2>0の理由である。結果として得られる多角形st2には、公称線量が割り当てられる。
多角形をオフセッティングするこの方法は、明確(definite)かつ一義的(unambiguous)でありかつ実行が簡単な操作である。角度二等分線ab1、ab2、...は、多角形の「直線骨格(straight skeleton)」と呼ばれる構造の一部である。この方法の重要な特徴の1つは、当初のおよび結果として生じる多角形t0、st1、st2の直線骨格が、直線セグメントのみを含むことである。換言すれば、この方法は、当初の形状が曲線(curvilinear)セグメントを含んでいなかった場合、曲線セグメントを生成しない。この特性は、複雑性を軽減することが望まれる場合に重要であり、半導体分野における一般的なベクトルフォーマットが曲線セグメントをサポートしていないという事実を考慮すると、一層重要である。このオフセッティング方法の最も迅速な実行では、O(n log n)計算時間量(time complexity)とO(n)メモリスケーリングのみを要することが実証された(既出のStefan Huberの博士論文)。ここで、nは多角形の頂点の数を表す。
第2の好ましい実施形態では、再形成は、所属エッジ(複数)の角度二等分線に沿って頂点を移動させるのではなく、寧ろ、これらのエッジを所与のオフセット距離d3だけ移動させる手順に従って行われ、ボルテックス(vortices)[頂点(vertices)]は以下に説明するようにそれらのエッジを結合するものとして定義される。シフトされる順次の(関連する:subsequent)エッジが交差する場合、ボルテックスはその交点に設定される。交点が生じない場合、内部(又は外部)のオフセット曲線が補間される。この特徴(distinction)は、オフセット距離d3の大きさがあまり大きくない場合、即ち、基礎をなす多角形のセグメント部分の最小幅(又は「厚み」)の半分よりも小さい場合に常に可能である。
図26は、図24及び図25におけるものと同じ形状の出発多角形t0をオフセット距離d3だけ縮小する(shrinking)例についての第2実施形態の方法を示す。結果曲線st3は、出発多角形t0の位置(エッジ及び頂点)に対し均一な距離d3に作成される。従って、基本的に、当初エッジt12の各々は、それぞれのシフトされたエッジv12に対応する;しかしながら、結果曲線st3内の各点は、出発多角形t0の境界から同じ距離d3のところに位置付けられることが必要であるので、曲線セグメントが生じ得る。より具体的には、そのような曲線セグメントは、隣接するエッジによって形成される内角がπより大きい全ての頂点において補間される。例えば、図26に示す縮小(shrinking)処理では、曲線セグメントcv1、cv2、cv3が夫々頂点tv4、tv5、tv8に挿入される。ボルテックス[頂点]tv1及びtv2のような他のボルテックス[頂点]では、シフトされたエッジの交点に、シフトされた新たなボルテックス[頂点]cv1、cv2を挿入し、必要に応じてエッジを短くするだけで十分である。(凸部分において結果として得られるシフトされたボルテックス[頂点]cv1、cv2は、d1の代わりに再形成距離としてd3を用いると、図24に示すオフセッティング方法によって得られるボルテックス[頂点]sv1、sv2に一致する。)
反対に、例えば図27に示すようなオフセット距離d4だけの外側への、拡大(expansion)は、全ての凸部の頂点に、即ち、隣接するエッジによって形成される内角がπより小さい頂点に、丸みのある(湾曲した)セグメントをもたらす。図27に示す例では、曲線セグメントcv8が凸部ボルテックス[頂点]tv1に挿入され、他の凸部ボルテックス[頂点]についても同様である。凹部ボルテックス[頂点]については、結果として得られる拡大多角形st4の、例えば、シフトされたボルテックス[頂点]cv4、から分かる通り、頂点をシフトするだけで十分である。
この方法は、ボロノイ(Voronoi)ダイアグラムと密接に関連している(1つの具体例について、P. Palfrader & M. Held、Computer Aided Design & Applications、12(4)、2015年、414−424を参照。http://dx.doi.org/10.1080/16864360.2014.997637にて入手可能)。そのような変形(transformation)を実現するための具体化手段は利用可能であるが、上述の骨格方法に匹敵する時間および記憶の複雑性を伴い、この方法は曲線セグメントをもたらすという事実は、曲線セグメントをサポートしない(に対応しない)ベクトルフォーマットを扱う場合、問題になり得る。この種の状況を単純化する1つの方法は、図28に示されているように、いくつかの線形セグメントが、それぞれのボルテックス[頂点]に対し距離d4のところに位置するそれぞれシフトされたエッジu01、u12の終端ボルテックス[頂点]ev10、ev12の間に補間(内挿)される補助ボルテックス[頂点]aux1、aux2によって形成される複数の線形セグメントのような、曲線セグメントの離散近似によって、曲線セグメントを近似することである。
なお、図24〜図28に示す方法は、リング状の構造または「穴」を含む閉じた多角形にも適用可能であることに留意すべきである。当業者には明らかであるように、「穴」の周については、内側/外側の運動方向と縮小(contracting)/拡大(expanding)の所望処理との間の関係は、単に反対になるだけである。
ピクセルドメインにおける再形成
本発明の別の実施形態では、形状補正はピクセルドメインで実行される。ピクセルドメイン補正は、特に、ビーム領域内にあるすべてのパターン要素に同じ形状補正が適用されるべきであり、個別の形状補正係数に関して異なるパターン要素の区別が必要とされない場合、有利である。ピクセルデータに基づき再形成を実現する簡単な方法の1つは、最初に、公知のエッジ検出アルゴリズムを用いて、ピクセルデータをベクトルデータに変換するエッジ検出を行い、そして、上述のようにベクトルデータを再形成し、再ラスター化することである。別の可能性は、ピクセルドメインにおいて直接的に再形成を行うことであるが、これは計算上(コンピュータ処理上)有利であり得る。ピクセルベースのサイズ調節は、例えば、ピクセルドメインにおいて上述のベクトル操作と同様の機能を提供する十分に確立されたツールキットである、グレースケール形態学的(morphological)画像処理を用いて実行可能である(例えば、Shih、Frank Y. Image processing and mathematical morphology: fundamentals and applications、CRCプレス、2009年、28−30頁参照)。特に重要であるのは、形態学的操作 膨張(拡大:dilation)
及び収縮(縮小:erosion)
である。画像ドメイン(又はグリッド)Ωにおけるグレースケール画像f(x)(ここではラスター化されたパターン)及び構造関数b(x)に対して、これらは、
で定義される。
とりわけ、エッジ方向に対し直角をなす2k+1ピクセル幅である構造化要素Bk(例えば0を中心とする2k+1ピクセル幅の方形又は2k+1ピクセル幅の円)について、フラット(flat)構造化関数
を用いて、膨張(dilation)による外側へのkピクセルのエッジシフトを生成し、
を得る。同様に、収縮(erosion)によって生成可能な内側へのkピクセルのエッジシフトにより、
を得る。なお、計算的(コンピュータ処理的)には、
又は
についての方程式における最大(値)/最小(値)が計算される領域は(例えば
のボックスに)制限されることに留意すべきである。
結果として5nmのピクセルサイズを生じる、20nmアパーチャによるクワッドグリッド(o=4)露光についての一例が図30に与えられている。画像(複数)は、(例えば16のグレーレベルを用いた)75×50nmフィールド中の(破線のグリッドで示された)すべてのピクセルについての0(ゼロ線量、黒色方形)と1(公称線量、白色方形)の間の線量割当てを示す。図30の紙面中央の図は、32.5nm線180を示す。この線180は、構造化要素182(3×3ピクセルの方形)から生成されるフラット構造化関数b(x)を用いて当該線を表す画像f(x)についての操作によって修正される。なお、右側エッジについての(標準化された)線量割当て181は、線幅がピクセルサイズの倍数ではない(従って右側エッジは完全ピクセル幅に対し2.5nmだけ即ち半ピクセルだけシフトされる)ため、0.5だけであることに留意すべきである。図30の上側の図及び下側の図は、夫々、この方法によって得られる、収縮化線(eroded line)183(対応画像f−1)及び膨張化線(dilated line)184(画像f1)を示す。とりわけ、膨張化線184は、構造化要素182が3×3ピクセル方形(即ちk=1)であるため、(左右)両側のエッジにおいて夫々完全ピクセル(5nm)だけ幅がより広い。
サブピクセルのエッジシフトを得るためには、カスタマイズされたアプローチを使用する必要がある。1つのピクセルのフラクション0<q<1でグレースケール画像f(これは標準化公称線量1を有するものとする)を膨張化(dilate)するためには、3×3ピクセル方形B3を選択する場合、
を用いる。ここで、bgは近接効果による線量バックグラウンドである。整数k、0<q<1について任意のサイズ変化k+qを実行するためには、まず、完全ピクセル膨張又は収縮操作を実行して、中間画像fkを取得し、次いで、部分膨張(fractional dilation)を行って、
を得る。(bg=0について)図31に一例を与える。紙面中央の図は、図30と同じ32.5nm線180を示すが、これは、図31の紙面下側の図及び紙面上側の図に示されているように、夫々、3/4ピクセルだけ膨張及び収縮されることになっている(それによって、夫々、外側及び内側へ3.75nmのエッジシフトされる)。紙面下側の図において紙面右側のエッジ186に0.25の線量割当てがなされるため、該右側エッジは(1/2)+(1/4)=3/4ピクセルだけ移動する。同様に、(紙面)左側エッジ185における0.75の線量割当てにより、該エッジは3/4ピクセルだけ移動する(米国特許第8,222,621号参照)。図30の紙面上側の図において3/4ピクセルだけ内側にエッジをシフトするためには、まず、1ピクセルの収縮を実行し、次いで、1/4ピクセルの膨張を行う。従前の通り、結果として夫々得られる左側エッジ187及び右側エッジ188における線量割当て0.25及び0.75により、夫々、3/4ピクセルのエッジシフトが引き起こされるが、この場合、内側へ(のシフト)である。
(割当て線量に基づく)所要サイズ補正は一般的にベクトルドメインで与えられるため、これら(の補正)は、(例えばラスター化中におけるピクセルのサイズ割当てスカラーの記憶によって、)リサイジング(resizing)の前に、ピクセルベースマップへ翻訳(変換)される必要がある。
ターゲット上の位置に基づく再形成
一変形形態では、再形成は、ターゲット上の夫々のパターン要素の位置に基づいて実行されてもよい。図29は、複数のパターン要素を有する(1つの)パターンplmを含む、ターゲット上の露光領域ML2の一例を示す。この例では、露光線量の割当て値は、パターンplmのパターン要素(複数)にではなく、露光領域ML2内の異なるエリア(複数)に関係付けられている。このため、領域ML2は、複数のエリアM11、M21、...Mm1、M22、...Mm2、...Mmnに分割されるが、これらのエリアは同じ形状であるのが好ましい(但し必須ではない)。複数のエリアM11〜Mmnの各々について、1つの再形成値が、露光領域ML2内の可能なパターンplmの如何に拘わらず、定義される。これらのエリアの各々における再形成は、夫々のエリアに位置付けられるすべてのパターン要素についての再形成距離としての再形成値を用いて行われる。換言すれば、再形成距離の決定は、あたかも1つのエリア内のすべてのパターン要素が同じ初期割当て線量を有するかのようにしてなされる。エリアM11〜Mmnの定義及び再形成距離の割当て値は、通常、パターンの設計中に又は実験データに基づくパターンデータの補正工程中に、ユーザ(利用者)によって与えられる。
あるパターン要素が1つのエリアから他の(1つの)エリアに延在している場合、再形成パターン要素は、エリアとエリアの間の移行領域において平滑化されるか、又は、それらのエリアの平均値がそのパターン要素について使用される。
他の一変形形態では、再形成は、ビームフィールド内の夫々のパターン要素の位置に、即ち構造化ビーム内の位置に基づいて実行されてもよい。この場合、図29を用いて上述した方法と同様の方法で、エリア(複数)がビームフィールド内で定義されるが、パターン要素(複数)のエリア及び位置は、ターゲットというより寧ろビームフィールドに関して求められる。
時間依存型再形成
図33は、時間依存型再形成を用いたパターンの再計算の一例を示す。時間tに依存するそのような再形成は、露光プロセスの期間又はその部分期間中における相対線量D/Dnの予測可能なドリフト(ぶれ:drift)を有するファクタ(複数)の補償のために適用されてもよい。その例には、とりわけ、露光中のMBMWコンポーネントの熱膨張に起因するビームブラーの増大、延長された露光によるフォトレジストの加熱(の増大)、電子銃又はパターン定義装置のようなコンポーネントのその寿命期間中におけるエイジング又はドリフティング(の増大)が含まれる。一般的に、これらの例の各々について、あるイベントが開始し終了する時間ドメインTdが定義されることができる(例えば、マスクブランク露光又はコンポーネントの寿命)。相対線量(D/Dn)(t)の時間推移(変化)を記述する関数fDT(図33参照)は、実験データ、理論またはシミュレート挙動に基づいて導き出すことができる。時間ドメインTd内では、いくつかのサブドメインTd1、Td2... Tdnが定義されてもよく、それらの各々には、平均化(D/Dn)(Tdn)=Avg(fDT(Tdn))によって、一定のD/Dn値が割り当てられる。ここで、Avgは、それぞれのサブドメインTdnの持続時間による平均化を表す。従って、再形成値は、各TdnについてfDSに応じて計算することができる。サブドメインTdn内に描画される全てのパターンpll、plmは、Tdnに割り当てられた再形成値に応じて補正される。サブドメインの時間および範囲は、イベント期間および主要イベント内で起こる単一(single)サブイベントの持続時間に応じて選択できる。従って、サブドメインTd1、...、Tdnは、継続的(consecutive)である必要もなければ、同じ持続時間を有する必要もない。一例を挙げると、主要イベントがあるコンポーネント(例えば、描画処理中に顕著なドリフトを示す電子銃)の使用期間または寿命である場合、時間ドメインTdはこの寿命に対応し、サブドメイン(複数)への好都合な分割は、時間ドメインTd中に起きる幾つかの露光の夫々1つに対応するTd1、...、Tdnである。
本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲及び図面を含む全開示、本発明の技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
更に、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら特許請求の範囲に係る発明の理解を助けるためのものであり、特許請求の範囲に係る発明を図示の例に限定することを意図していないことに留意すべきである。
更に、上掲した各文献の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。