JP2019075264A - 負イオン源 - Google Patents

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眞實子 笹尾
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Hideo Hosono
秀雄 細野
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克嘉 津守
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暁 渡邉
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Abstract

【課題】分解掃除や加熱を必要としない、保守性に優れた負イオン源を提供する。【解決手段】本発明に係る負イオン源は、放電により内部空間に水素同位体のプラズマが生成される放電容器2と、プラズマ中の正イオンを負イオンに変換するコンバータ9と、コンバータ9により変換された水素同位体の負イオンを静電的に外部に引き出してイオンビームを生成する引出電極部7とを備え、コンバータ9として、低仕事関数の導電性セラミックスを用いている。【選択図】図1

Description

本発明は、水素同位体のプラズマから水素負イオンのビームを引き出す負イオン源に関し、特に、高エネルギー粒子加速装置や、核融合プラズマ加熱用の水素同位体中性粒子入射機構に用いるのに適した負イオン源に関する。
高エネルギー陽子加速を大電力で行うためには,シンクロトロンなどのビームを周回させて加速する装置に水素の負イオンを入射して、荷電交換フォイルなどの電荷交換により陽子に変換し、周回装置に事前に入射されて周回する陽子と位相空間内で重ね合わせ、加速後に取り出す方法が有効である。
一方、強磁場中に閉じ込めた核融合プラズマの加熱や電流駆動を行うためには高エネルギー水素同位体ビームを一度中性化する必要がある。この際の中性化効率は、正イオンを中性化する場合、核子当たり100k eVのエネルギーを超えたあたりから急激に0に近づき、実用レベルで想定されている1M eVのエネルギーでは全く中性化できない。したがって、負イオンを発生するイオン源装置を用いた加熱・電流駆動システムが研究・開発されている。
上述したように、高エネルギー物理分野および核融合発電分野の両方において,「負イオン源」と呼ばれる水素同位体負イオンのイオンビームを生成する装置が用いられる。
上述した負イオン源では、水素同位体の負イオンを効率よく発生させるため、水素同位体のプラズマが生成された放電容器内にセシウム蒸気を供給し、プラズマ電極等にセシウムを付着させて、仕事関数の低い状態で負イオンを効率よく発生させる方法が実施されている(非特許文献1参照)。
特にプラズマ電極と呼ばれるイオンビーム引き出し部を構成する、プラズマと対向する電極表面の仕事関数を、セシウムを蒸着することにより低下させることは、水素同位体の負イオン生成に大きく寄与するのみならず、負イオンとともに加速されてしまう電子電流を低下させることになる。結果として、負イオン加速においてのエネルギー効率を増加させるとともに、装置にかかる熱負荷が低減されることになり、加速装置を保護する観点からも重要な運転条件となる。
しかし、放電容器内にセシウム蒸気を供給する場合、セシウムはプラズマ電極等の表面だけでなく、イオンビーム引出部にも拡散して付着する。
イオンビーム引出部は、電極、金属フランジ、絶縁フランジなどから構成されており、水素負イオンを加速するための電界が一部に集中する部分がある。セシウムの付着したプラズマ電極部分は、プラズマからの熱負荷のために温度が上昇し、熱せられて気化したセシウムは電極以外の部分にも飛散して付着する。イオンビーム引出部の金属フランジや絶縁フランジにセシウムが一定量以上付着すると、電界の集中する部分等で放電が生じて電極間の耐電圧が低下する。
日本物理学会2012年9月19日横浜国立大学発表資料「負イオンの加速器応用の最先端」発表者:小栗英知
イオンビーム引出部の耐電圧が低下した場合、負イオン源を分解してイオンビーム引出部に付着したセシウムを水で拭き取るか、負イオン源全体を300℃程度に加熱してセシウムを蒸発させる必要がある。
しかし、運転状態にある負イオン源を分解することは、運転効率を大幅に低下させることになるため現実的ではない。一方、イオン源全体を加熱する方法では、蒸発したセシウムが外部に不純物として流出するのを防止する必要があるが、十分な効果を発揮するには到っていない。
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、分解掃除や過熱を必要としない、保守性に優れた負イオン源を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る負イオン源は、
放電により内部空間に水素同位体のプラズマが生成される放電容器と、
当該放電容器の開放端を覆うように設置され、負イオンが通過する開孔が形成された板状のプラズマ電極と、
前記プラズマ中の水素同位体の負イオンを、前記開孔を通して外部に引き出して、イオンビームを生成する引出電極部と、を備え、
少なくとも前記プラズマ電極の放電容器側は、低仕事関数の導電性セラミックスで作製され、当該導電性セラミックスは、正イオンを負イオンに変換するコンバータとしての機能を実現することを特徴とする。
ここで、前記導電性セラミックスはC12A7エレクトライドであることが好ましい。
また本発明に係る負イオン源は、マイクロ波を発生するマイクロ波発生源と、当該マイクロ波発生源で発生したマイクロ波を前記放電容器の内部空間に導入する導波管とを更に備えることが好ましい。
また前記引出電極部は、前記プラズマ電極と、当該プラズマ電極と絶縁を保った状態で平行に配置され、かつ前記開孔に対向する位置に負イオン引出用の孔が形成された少なくとも2枚の引出電極とで構成されることが好ましい。
また前記プラズマ電極は、低仕事関数の導電性セラミックスの板で作製されることが好ましい。もしくは前記プラズマ電極の放電容器側表面は、基材となる金属板の表面が前記低仕事関数の導電性セラミックスの薄膜で覆われていることが好ましい。
本発明に係る負イオン源を用いれば、イオン源の分解掃除や過熱を必要としないため、保守性に優れたイオン源を提供できる。
本発明の実施の形態1に係る負イオン源の基本的な構成を示す断面図である。 実施の形態1に係る負イオン源を用いて生成した水素負イオンの測定値を示すグラフである。 実施の形態1に係る負イオン源を用いて生成した水素負イオンのエネルギー分布を、従来の負イオン源と比較して示したグラフである。 本発明の実施の形態2に係る負イオン源のプラズマ電極付近の断面図である。 本発明の実施の形態3に係る負イオン源のプラズマ電極の正面図とA−A線の断面図である。
以下、本発明の実施の形態に係る負イオン源について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
<負イオン源の構成>
図1に、本発明の実施の形態1に係る負イオン源の基本的な構成を示す。負イオン源1は、放電容器2、プラズマ電極3、永久磁石4、マイクロ波発生源5、導波管6、引出電極7、磁気フィルタ8およびコンバータ9で構成されている。
負イオン源1では、マイクロ波発生源5から供給されたマイクロ波のエネルギーによって放電容器2の内部空間に水素同位体のプラズマが生成され、その中に含まれる水素同位体の負イオンが引出電極部7によって外部に引き出される。以下、各構成部材の構成と機能を説明する。
非磁性金属材料で作製された有底円筒状の放電容器2の左側底面には、マイクロ波発生源5から放出されたマイクロ波を導入する開口21が設けられ、一方、右側の開放端は、板状の金属で作製され、中心部に開孔31が形成されたプラズマ電極3で覆われている。なお、放電容器2の端面とプラズマ電極3との間は、リング状の絶縁材23によって電気的に絶縁されている。
放電容器2の左端底面には、プラズマを発生させるためのガスを導入するガス導入口22が形成されている。図示しないが、放電容器2の内部空間は、下流に設置された真空ポンプで真空引きされており、放電容器2のガス導入口22を通して必要な種類のイオンを発生させるガスが導入される。本実施の形態では、水素または重水素のガスがイオン化物質として用いられる。
放電容器2の外周には、カブス磁場(多極磁場)発生用の複数の棒状の永久磁石4が等間隔に配設されている。永久磁石4によって放電容器2の内部空間にガウス磁場を発生させることにより、プラズマを効率よく閉じ込めることができる。
マイクロ波発生源5は、所定の周波数、例えば、2.45GHzのマイクロ波を発生する。マイクロ波発生源5で発生したマイクロ波は、白抜きの矢印で示したように導波管4を通して放電容器2内に入射される。
放電容器2内の電子がマイクロ波の電界によって加速され、水素ガスを衝突電離させることによって放電が行われ、プラズマが発生する。マイクロ波の周波数が2.45GHの場合、放電容器2の内径は50mm〜100mmとなる。放電容器2の内径を70mm〜90mmに設定すると、円形導波管6の基本伝播モード(TE11)のマイクロ波のみが放電容器2内を軸方向に伝播し、マイクロ波の電界によって放電容器2内に効率良くプラズマを発生させる。
プラズマ電極3の右側には、2つの引出電極71、72が、間に絶縁材73、74を介在させた状態でプラズマ電極3に取り付けられており、プラズマ電極3、引出電極71および72で引出電極部7を構成している。
引出電極71、72は、円板状の電極部と、その周囲に配置された円筒状の支持部で構成されており、プラズマ電極3の開孔31に対向する位置に引出孔75、76が形成されている。プラズマ電極3に対して引出電極71、72に所定の電圧を印加することにより、放電容器2内のプラズマから負イオンが引き出され、イオンビームが生成される。
円筒容器2の外周のプラズマ電極3の近傍には、磁気フィルタ8を構成する永久磁石81および82が、対向するように平行して配置されている。永久磁石81および82は、互いの対向面が異なる極性を有するように同方向に着磁されており、これにより放電容器2内のプラズマ電極3近傍に、電極面に沿って破線で示すような磁力線を生じさせる磁場が形成される。
上述した放電容器2内を横切る磁場によって、放電容器2の内部空間が、第1プラズマ室20aと第2プラズマ室20bに区画される。そして前述のカブス磁場および永久磁石81、82によって形成された磁場によって第1プラズマ室20aに高密度プラズマ領域が形成される。磁場のある領域では、磁場とマイクロ波の干渉で電子が加速されて高速の電子成分が生まれ、水素負イオン生成のもととなる水素分子の励起反応も促進される。
上述した構成の負イオン源1において、水素負イオン(以降「H」とも記す)の生成は、いわゆる体積生成法と呼ばれる方法により行われ、その生成過程は、下記式(1)および(2)に示す2段階の原子反応で表される。
+ e(fast) → H + e (1)
+ e(slow) → H+ H (2)
ここで、e(fast)は高速の電子、e(slow)は低速の電子を示す。またH は水素の振動励起分子を示す。
式(1)(2)に基づいて、水素負イオンの生成過程を説明する。最初に、式(1)で示される高速電子による励起過程について説明する。
マイクロ波のエネルギーによって第1プラズマ室20aに生成された放電プラズマは、プラズマ電極3に向かって拡散するが、第1プラズマ室20aから第2プラズマ室20bに拡散するためには、永久磁石81、82によって形成された磁場を横切る必要がある。
プラズマ中のイオン成分や分子成分はこの磁場を横切って第2プラズマ室20bに移動し、プラズマ電極3近傍に拡散する。これに対し、高速電子は磁場に捕捉されて第1プラズマ室20aから第2プラズマ室20bに移動することができない。
一方、高速電子が水素ガス等と衝突して生じた低速電子は、水素または重水素の正イオンの移動と共に電界に引かれ、磁場を横切って第1プラズマ室20aから第2プラズマ室に移動する。
こうして第1プラズマ室20aと第2プラズマ室20bとの間に電子温度の違いができ、磁場を横切る形で電子温度の分布が形成される。この電子温度の違いによって、第1プラズマ室20aでは式(1)で示されるような水素分子の高速電子による励起反応が促進される。一方、第2プラズマ室20bでは、式(2)で示されるような低速電子の解離性付着反応が促進されるのみならず,生成された水素負イオンの高速電子による破壊が抑制される。
そして、第2プラズマ室20bで生成された水素負イオンは、プラズマ電極3と引出電極71、72の間に印加された電圧によって、開孔31から静電的に外部に引き出され、所定のエネルギーとなるように引出孔75、76を通過しながら加速され、負イオン源1からイオンビームとして出力される。
この際、プラズマ電極3付近に存在する電子が、水素負イオンと共に引き出されようとするが、磁気フィルタ8によって形成されたプラズマ電極3付近の磁場がイオンビーム引出方向とほぼ直交しているので、電子eは偏向され、引き出しが抑制される。このためイオンビームの不要成分である電子が減少する。
次に、第1プラズマ室20aに設置されたコンバータ9について説明する。コンバータ9は、表面に入射した水素または重水素の正イオンを負イオンに変換するもので、プラズマ電極3に対してマイナスの電圧が印加される。コンバータ9は、放電容器2内のプラズマ電極3の開孔31に対向する箇所に設置されている。
従来の負イオン源と同様に、本発明においても、コンバータの機能はプラズマ電極によって実現されるが、本実施の形態では、コンバータの材質によるイオン変換能力の違いを確認するため、コンバータ9をプラズマ電極3とは別個に設置している。
前述したように、第1のプラズマ室20aのプラズマ中には水素の正イオンH、H 、H が多数存在する。これら正イオンが仕事関数の低いコンバータ9の表面に衝突したり付着すると、電子eを取り込んで負イオンに変換される。
前述した従来の負イオン源では、コンバータの機能はプラズマ電極によって実現されていた。具体的には、プラズマ電極の基材であり、プラズマ環境下において耐久性の高いモリブデンの表面にセシウムの蒸気を付着させることによって仕事関数を低く抑えることにより、水素の正イオンを負イオンに変換していた。そしてこの手法により、モリブデン表面で生成される負イオンの量を100倍程度増加させていた。
これに対し、本実施の形態では、コンバータ9の材料として、低仕事関数の導電性セラミックスの一種であるC12A7エレクトライドを用いている。プラズマ中に含まれる水素の正イオンH、H 、H がコンバータ9の表面に衝突し、電子eを受け取ることによって水素負イオンに変換される。この過程において、生成される負イオンの量はコンバータ9表面の仕事関数が低い程多くなることが知られている。
ここで、C12A7エレクトライドについて説明する。「C12A7」は、化合物12CaO・7Alの結晶、およびこれと同等の結晶構造を有する同型化合物を意味する。本化合物の鉱物名は、「マイエナイト」である。
C12A7は、結晶格子の骨格により形成されるケージ構造が保持される範囲で、C12A7結晶骨格のCa原子および/またはAl原子の一部ないし全部が他の原子に置換された化合物、ならびにケージ中のフリー酸素イオンの一部ないし全部が他の陰イオンに置換された同型化合物であっても良い。なお、C12A7は、Ca12Al1433またはCa24Al2866と表記されることがある。
同型化合物としては、これに限られるものではないが、例えば、下記の(1)〜(4)の化合物が例示される。
(1)結晶中のCa原子の一部ないし全部が、Sr、Mg、および/またはBaなどの金属原子に置換された同型化合物。例えば、Ca原子の一部乃至全部がSrに置換された化合物としては、ストロンチウムアルミネートSr12Al1433があり、CaとSrの混合比が任意に変化された混晶として、カルシウムストロンチウムアルミネートCa12−xSrAl1433(xは1〜11の整数;平均値の場合は0超12未満の数)などがある。
(2)結晶中のAl原子の一部ないし全部が、Si、Ge、Ga、In、および/またはBなどの原子に置換された同型化合物。例えば、Ca12Al10Si35などが挙げられる。
(3)12CaO・7Alの結晶(上記(1)、(2)の化合物を含む)中の金属原子および/または非金属原子(ただし、酸素原子を除く)の一部が、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、およびCuなどの遷移金属原子もしくは典型金属原子、Li、Na、およびKなどのアルカリ金属原子、またはCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、およびYbなどの希土類原子と置換された同型化合物。
(4)ケージに包接されているフリー酸素イオンの一部ないし全部が、他の陰イオンに置換された化合物。他の陰イオンとしては、例えば、H、H 、H2−、O、O 、OH、F、Cl、およびS2−などがある。
本発明において「C12A7エレクトライド」は、前述のC12A7において、ケージに包接されたフリー酸素イオン(ケージに包接された他の陰イオンを有する場合は、当該陰イオン)の一部ないし全部が電子に置換された化合物を意味する。
C12A7エレクトライドにおいて、ケージに包接された電子は、ケージに緩く束縛され、結晶中を自由に動くことができる。このため、C12A7エレクトライドは導電性を示す。特に、全てのフリー酸素イオンが電子で置き換えられたC12A7は、下記式(3)のように表記されることがある。
[Ca24Al28644+(4e) (3)
図2に、コンバータの材料としてC12A7エレクトライドを用いたときに生じる負イオンの量を、モリブデンを使用した場合と比較して示す。図2において、横軸は、コンバータ9とプラズマ電極3との間に印加される電圧値、縦軸は、引出電極部7から引き出された水素負イオンのイオンビームの強度(相対値)を示す。
図2に示したデータは、圧力が2paの重水素ガスの雰囲気中に、マイクロ波発生源5から250Wのマイクロ波を供給したときに生成される負イオンの量を、イオンビームの進行方向に設置したHiden社製の質量分離・エネルギー分析装置10を用いて測定した値である。
上述したように、従来の負イオン源では、プラズマ電極の基材であるモリブデンの表面にセシウムの蒸気を吹きかけ、低い仕事関数を維持することによって負イオンの生成量を増加させていた。
これに対し、本発明では、導電性セラミックスの一種であるC12A7エレクトライドを用いてコンバータの機能を実現している。C12A7エレクトライドは、電子伝導による電気伝導性、低い仕事関数を持つなどの特徴のあるナノポーラス化合物であり、伝導率は1500Scm−1程度、仕事関数が約2.4eVと低いため、電界電子放出用電極などへの応用が検討されている。
図2のグラフから明らかなように、モリブデンを用いた場合に比較し、生成される負イオンの量が一桁以上大きく、セシウムの蒸気をモリブデンに吹きかけた場合と遜色ない値を示している。
C12A7エレクトライドは、負イオン源の運転温度において液体または気体であるセシウムと違って固体であるため、引出電極部7を構成する部材の表面に付着して耐電圧を低下させることがない。従って、引出電極部7を分解掃除したり過熱したりする必要がないため、負イオン源1の保守性が大幅に改善される。
図3に、図1の負イオン源により生じた水素負イオンのエネルギー分布を示す。図3(a)は、コンバータの材料にC12A7エレクトライドを用いたときのエネルギー分布、図3(b)は、コンバータの材料にモリブデンを用いたときのネルギー分布を示す。これらのグラフは、図1と同様に質量分離・エネルギー分析装置10を用いて測定した値である。
図中、太線のグラフは、コンバータ9とプラズマ電極15との間に−80Vの電圧を印加したときの水素負イオンのエネルギー分布を示す。これに対し、細線のグラフは、コンバータとプラズマ電極との間に−20Vの電圧を印加したときのエネルギー分布を示す。
図3(a)において、太線のグラフでは、負イオンのエネルギーが0から、二原子分子イオンの最大エネルギーである40eVまで広がりを見せている。エネルギーの大きな負イオンはコンバータ9の表面での反射により生じたものであり、プラズマ電極3の開孔31から外部に引き出すときに四方に飛散して電極に衝突するため、外部へ引き出すのが難しい。
一方、バイアス電圧の値にかかわらず、太線および細線のグラフ共にエネルギーが0近傍でピークを示しており、負イオンの多くが、イオンの衝撃に伴う脱離過程によって生成されたものと推測される。脱離過程で得られる負イオンはエネルギーが小さいため、開孔31から引き出されるときの飛散が小さく、結果として品質の良いイオンビームを生成できる。
また前述の図2に示したように、コンバータの電圧値を変化させても負イオンの量はあまり変わらない。これは、小さなエネルギーの負イオンが大半を占めていることを意味し、従って、引出電極部7から収束性の高いイオンビームが十分な量、引き出される。
一方、図3(b)に示した、コンバータの材料にモリブデンを用いた場合、C12A7エレクトライドを用いた場合に比較し、エネルギーが0付近の負イオンの量が少なく、かつ負イオンの量も一桁以上小さな値を示している。
図2および図3に示した結果より、コンバータの材料にC12A7エレクトライドを用いた場合、負イオンのビーム量として、モリブデンにセシウム蒸気を吹き付けた場合と遜色ない値が得られ、しかも、C12A7エレクトライドは固体のセラミックスであることから、負イオン源を汚すこともない。結果として、保守性に優れた負イオン源を実現できる。
なお、本実施の形態では、低仕事関数の導電性セラミックスとしてC12A7エレクトライドを用いたが、同様の性質を有する材料として、六ホウ化ランタン(LaB)やLaCeがあり、C12A7エレクトライドの代わりとして使用できる。
また、本実施の形態では、水素プラズマを生成するための手段としてマイクロ波発生源を用いたが、それ以外の手段として、放電容器内にフィラメントを設置し、それを過熱したり、電子サイクロトロン共鳴機構を用いてプラズマを生成することも可能である。更には、ヘリコン波と呼ばれるプラズマの励起方法を用いても良く、プラズマを生成・維持するのに利用する交流電力の周波数、電力注入法の違いも本発明の効果に影響を与えない。水素のプラズマを生成するために、いずれの手段を用いるかは、要求される仕様に応じて適宜選択すればよい。
更に、プラズマを閉じ込める磁場の形成方法についても、放電容器の外周にリング状の永久磁石を複数配置したり、ソレノイドを配置したりする方法があるが、水素プラズマを生成する手段と同様、要求される仕様に応じて適宜選択すればよい。
(実施の形態2)
図4に、本発明の実施の形態2に係る負イオン源のプラズマ電極近傍の断面を示す。本実施の形態に係る負イオン源は、加速器用のイオンビームを生成するものであり、1つの引出孔から密度の高いイオンビームを引き出すように設計されている。
本実施の形態では、プラズマ電極3aをC12A7エレクトライドの板で作製しており、プラズマ電極3aがコンバータの機能を兼ね備えている。実施の形態1では、測定上の都合から、コンバータ9をプラズマ電極3とは別個に設置したが、本実施の形態では、プラズマ電極3aそのものをC12A7エレクトライドで作製している。
この構成を採用した場合、プラズマ電極3aへの反射により生成されたエネルギーが大きい負イオンは、放電容器2側に飛散してプラズマ電極の開孔31から外部に引き出される確率が低下する。このため、イオンビームに含まれる負イオンは、脱理過程によって生成されたエネルギーの小さい負イオンの割合が高くなり、結果として、品質の高いイオンビームが生成される。
プラズマ電極3aの厚みについては、水素の浸入深さは大きくても数10原子層程度であるため、1μm以上であればコンバータとしての機能を十分発揮するが、機械的強度を考慮すると、1mm以上が好ましい。
なお、引出電極71aに埋め込まれた永久磁石81a、82aは磁気フィルタ用の永久磁石であり、放電容器2内のプラズマが引出電極71aの外側に漏れないように、引出孔75の近傍に磁場を形成すると共に、外部に漏れてきた電子の軌跡を偏向させてイオンビームに含まれるのを防いでいる。
(実施の形態3)
図5に、本実施の形態に係る負イオン源のプラズマ電極の構成を示す。図5(a)はプラズマ電極の正面図、図5(b)は、図5(a)のA−A線で切断した断面図である。
本実施の形態では、核融合用として適した負イオン源を提供する。核融合用の負イオン源では、大面積のイオンビームを生成する必要があるため、開孔31がマトリクス状に複数形成されたプラズマ電極3bを用いている。
また本実施の形態では、プラズマ電極3bのうち放電容器2側表面に、C12A7エレクトライドの薄膜32を形成している。上述したように核融合用の負イオン源では、大面積のプラズマ電極3bを用いる。このため、プラズマ電極3bそのものをC12A7エレクトライドで作製した場合、大面積のセラミックスを作製する必要があるが、コスト面で実現は難しい。
これに対し、プラズマ電極3bの基材となるモリブデン板の表面にC12A7エレクトライドの薄膜32を形成する場合、コンバータとしての機能を維持した上で、C12A7エレクトライドの使用量を最小限に留めることができるため、コスト面で優れた負イオン源を実現できる。
なお、エレクトライド薄膜32は、薄板状に焼成したC12A7エレクトライドをプラズマ電極に貼り付けた後、レーザを照射して開孔を形成すればよい。もしくはスパッタリングやプラズマ溶射法によってプラズマ電極の表面にエレクトライドの薄膜を形成してもよい。
スパッタリングによって薄膜を形成する場合、薄膜がアモルファス構造になり、仕事関数が結晶構造(2.4eV)に比べて小さくなるため(3.0eV)、コンバータとしての機能が若干低下するが、実用上問題はない。
薄膜の厚みは、10μm以下でもコンバータとしての機能を十分発揮するが、作製のし易さ等を考慮すると、数10μm程度が好ましい。
1 負イオン源
2 放電容器
3、3a、3b プラズマ電極
4、81、82 永久磁石
5 マイクロ波発生源
6 導波管
7 引出電極部
8 磁気フィルタ
9 コンバータ
10 質量分離・エネルギー分析装置
20a、20b プラズマ室
21 開口
22 ガス導入口
23、73、74 絶縁材
31 開孔
71、72 引出電極
75、76 引出孔

Claims (6)

  1. 放電により内部空間に水素同位体のプラズマが生成される放電容器と、
    当該放電容器の開放端を覆うように設置され、負イオンが通過する開孔が形成された板状のプラズマ電極と、
    前記プラズマ中の水素同位体の負イオンを、前記開孔を通して外部に引き出して、イオンビームを生成する引出電極部と、を備え、
    少なくとも前記プラズマ電極の放電容器側は、低仕事関数の導電性セラミックスで作製され、当該導電性セラミックスは、正イオンを負イオンに変換するコンバータとしての機能を実現することを特徴とする負イオン源。
  2. 前記導電性セラミックスはC12A7エレクトライドである、請求項1に記載の負イオン源。
  3. マイクロ波を発生するマイクロ波発生源と、当該マイクロ波発生源で発生したマイクロ波を前記放電容器の内部空間に導入する導波管とを更に備えた、請求項1または2に記載の負イオン源。
  4. 前記引出電極部は、
    前記プラズマ電極と、
    当該プラズマ電極と絶縁を保った状態で平行に配置され、かつ前記開孔に対向する位置に負イオン引出用の孔が形成された少なくとも2つの引出電極とで構成された、請求項1ないし3のいずれかに記載の負イオン源。
  5. 前記プラズマ電極は、前記低仕事関数の導電性セラミックスの板で作製される、請求項1ないし4のいずれかに記載の負イオン源。
  6. 前記プラズマ電極は、基材となる金属板の表面が前記低仕事関数の導電性セラミックスの薄膜で覆われている、請求項1ないし4のいずれかに記載の負イオン源。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP4231325A1 (en) 2022-02-16 2023-08-23 Japan Atomic Energy Agency Negative ion source and negative ion generation method

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