高齢者や要介護者が生活する一般的な住居は、玄関エリアだけでなく、居室やトイレ、風呂場などといった居住エリアが広く付随している。こうした住居にて、介護施設や病院などの送迎サービスを受けようとした場合、送迎員来訪の際に玄関ブザーを押しても居住者が呼びかけに応じないケースがある。この際、来訪した送迎員が直ちにかつ確実に把握したいのは、その住居が現段階で在宅なのか不在なのか、といったごく単純な情報である。
しかし、前記特許文献に開示された技術は、こうした単純なニーズには必ずしも適さない問題がある。例えば、特許文献1〜5においては、浴室やトイレといった監視対象エリアへの人の出入をドア開閉にて検出することにより、動体検出部を用いたエリア内の人の動きの解析精度は確かに向上しているといえる。しかし、この方式では、所詮はトイレや浴室など、限定的なエリアにおける在不在の識別が可能になるだけであり、居住エリア全体の状況把握はできない。そして、該方式で住居全体の在不在判定を行うためには、結局のところ特許文献6や7のごとく、各部屋あるいは浴室・トイレなど居住エリアの各所に動体検出部をくまなく配置する必要があり、システムの肥大化と大幅なコストアップが避けがたくなる。
また、複数個所の動体検出部からなる検出網は、最低1つのセンサにおいてノイズレベル以上の動体が検出できれば「在宅」を認識できることから、本来は「在宅」の判定を確実に行いたい、という視点から構築されているものといえる(例えば、時間をおいて2以上のセンサが反応していればより確実)。そして、このハードウェアを「不在」の判定に流用することは、論理的には在宅判定の「否定」であるから一見容易に見える。しかし、実際は、全ての動体検出部が「動体なし」の検出状態となって、初めて住居全体の「不在」判定が可能になるのであり、その難しさは「在宅」判定の場合とは比較にならない。
例えば1つの動体検出部が扇風機やエアコンによるカーテンの揺れといった些細な要因により誤検出しても、的確な「不在判定」はすでにままならない。他方、送迎者は、玄関先での呼びかけに応答がなかった場合、住居内が物理的に不在になっているためなのか、要監視者が在宅していて何らかの問題により応答できない状態になっているためなのか、をその場で速やかに判断しなければならない。しかし、上記のごとく、実際は「不在」であるにも関わらず「在宅」と誤判定された場合、送迎者は異常発生とみて不要な救助アクションを起こしかねないし、次の訪問先への送迎スケジュールにも大きな影響が及ぶ。
また、これとは別に問題となるのは、上記した特許文献のシステムは監視エリア内の居住者が原則要監視者一人に限定されていることを前提としている点である。すなわち、これを住居全体の在不在監視に流用しようとしても、家族など他の人間が同居している場合には、全員が住居外に退出して絶対的な無人状態が形成されない限り、「不在」の判定がなされることはない。しかし、実際の在宅介護世帯や高齢者同居世帯では、在不在の判定が、住居内の「絶対的な在不在」とは無関係になされたほうが好ましい場合がある。例えば、嫁と姑が同居しており、姑が特定の日の午前中だけ通院のために不在となり、嫁が住居に残る場合は、物理的には「在宅」であるが、管理対象者となる姑に着目すれば「不在」として識別されることが望ましい。しかし、上記特許文献のシステムでは、残った嫁の動きを住居エリア内の動体検出部が検出し続ける限り、これを「不在」と判定することはないのである。
本発明の課題は、動体検出範囲外となる居住エリアも含めた住居全体の在宅・不在を、居住者への操作上の負担をかけることなく極めて簡便なハードウェア構成により総合的かつ現実的に判定でき、その判定結果を送迎者等の第三者が利用可能な在宅管理システムと、それに用いる在不在判定端末及びコンピュータプログラムを提供することにある。
本発明の在宅管理システムは、マイクロ波を検出波とするドップラーセンサ又は超音波を検出波とする超音波センサにより構成されるとともに、玄関扉を有する住居の玄関エリア内の動体を検出して動体検出信号を出力する動体検出部と、動体検出部とは別部品として構成され、玄関扉が開状態から閉状態に遷移したことを検出して扉閉信号を送出する扉閉検出部と、扉閉信号と動体検出信号とが入力される信号入力部を備え扉閉信号の受信をトリガとして動体検出信号の入力状態を読み取る動体検出信号読取手段と、動体検出信号読取手段による動体検出信号の読取状態が動体ありを示している場合は在宅と判定し、動体なしを示している場合は不在と判定する在不在判定手段と、在不在判定手段から送出される在宅ないし不在の判定結果を記憶する判定結果記憶手段と、判定結果記憶手段に記憶された判定結果を出力する判定結果出力手段とを備えることを前提とする。そして、玄関エリアよりも広い居住エリアを含めた住居全体の在宅・不在を管理する、という本発明の課題を解決するために、
玄関扉側から玄関エリアに進入する人の動きを選択的に検出するために扉閉信号の受信をトリガとして開始される検出能動期間が定められ、動体検出信号読取手段に動体検出信号の入力状態を当該検出能動期間内にて読み取らせる読取制御手段と、
在不在判定手段に対し、検出能動期間が終了するに伴い在不在判定処理のサイクルを完了させ、扉閉信号の新たな受信をトリガとして開始される次の在不在判定処理の待機状態に移行させる判定制御手段と、
在不在判定手段から新たな判定結果を取得した場合は、判定結果記憶手段に記憶されている判定結果を当該新たな判定結果により更新する一方、新たな判定結果が取得されない場合は判定結果の記憶内容を保持させる判定結果記憶制御手段と、を備え、
在不在判定手段が不在と判定した場合、玄関エリアに設置された動体検出部の検出域から外れる居住エリア内に人が滞在しているか否かとは無関係に、判定結果出力手段が不在の判定結果を出力することを特徴とする。
上記本発明の構成においては、住居全域の人の在・不在の厳密な検出をあえて放棄し、玄関における人の出入検出に基づき、住居内の在宅・不在の判定を扉の開閉を処理の区切りとして集約・単純化する点に特徴がある。これにより、動体検出範囲外となる居住エリアを含めた住居全体の在宅・不在の判定を、極めて簡便なハードウェア構成(必須となるのは、扉閉検出部と玄関エリアのみカバーする動体検出部)により簡便かつ合理的に実施でき、その判定結果の出力を、送迎者等の第三者が在宅・不在の特定情報として的確に利用することができる。以下、先行技術との差異も含め、より詳細に説明する。
住居への人の出入は、勝手口や窓などからのイレギュラーな出入を除外すれば玄関に限られており、その在宅・不在の状態も玄関における人の出入の履歴によって決まるものである。つまり、玄関エリアに続く居住エリアがいかに広くとも、玄関における人の出入りさえ押さえてしまえば、帰宅者のその後の挙動を監視せずとも住居内の基本的な人の滞在状況を把握可能である。この方式は、会社などのエントランスで、社員の出入をIDカードで管理する方式と類似している。しかし、高齢者や要介護者が居住する一般の住居において、居住者にIDカードを携帯させ、玄関でこれをチェックして在宅・不在の管理を行うようなことは、およそ現実的ではない。
本発明者は、居住者の構成が知れていて、日常的な人の出入りのパターンもある程度一定している住居の場合、最低限の在不在の管理には、要するに誰かが出て行った、あるいは帰ってきた、という玄関の出入の情報だけが判明していれば十分であり、いちいち出入りした人が「何の何兵衛」であるかを特定する必要がない点に留意した。そして、これを前提として、玄関での人の出入の物理的なシーケンスを熟考した結果、該シーケンスの特徴が、
(1)人の出入の際には、必ず玄関扉が開け閉めされる;
(2)玄関扉が閉まった直後に限定して考えれば、人が入ってくる際には必ず玄関エリアに(動く)人がおり、人が出ていった後には玄関エリアは必ず誰もいなくなる;
という2点に集約される点に着目し、本発明に想到するに至ったものである。
まず、本発明の適用対象となるのは、玄関扉を備えた玄関エリアと、該玄関エリアよりも広い居住エリアとを有する住居である。本発明においては、玄関での人の出入シーケンスにかかる上記(1)の特徴に鑑み、玄関エリアにおける出入りの発生を、玄関扉の開閉を検出する扉閉検出部により特定する。この扉閉検出部は特許文献3のように動体検出部に兼用させるのではなく、扉の閉検出に専念させる別部品として構成することで、必要な検出精度を確保する。そして、玄関エリアの動体は安価なドップラーセンサ又は超音波センサからなる動体検出部により検出され、扉閉検出部からの扉閉信号の受信をトリガとして、その検出信号が動体検出信号読取手段により読取り開始される。
次に、前記(2)の特徴に鑑みれば、動体検出部が人を検出していれば玄関扉の開閉は「人が帰ってきた」ことを意味し、帰宅と判定することが可能となる。他方、動体検出部が人を検出していなければ玄関扉の開閉は「人が出て行った」ことを意味し、退去と判定することが可能となる。玄関扉が開状態から閉状態に遷移したことをトリガとするのは、閉状態に遷移するまでは玄関扉の閉鎖に向けた動きが継続しており、動体検出部における人の動きの検出と扉の動きの検出とが錯綜してしまう可能性があるためである。
ここまでの構成及び作用効果は発明のプレアンブル部分に基づくものであり、特許文献1〜5に記載された従来技術との大きな差異はない。当然、これだけでは、動体検出部による検出が及ばない居住エリアも含めた住居全体の在宅・不在を総合的に判定し、その判定結果を、送迎者等の第三者が利用できる在宅・不在の特定情報として出力するという、本発明の目的を達成することはできない。本発明の在宅管理システムでは、上記プレアンブル部分に続く構成要件が、居住エリアを含めた住居全体の在宅・不在を管理する機能を実現するための特徴部となり、以下の手段を含んで構成される。
・読取制御手段:玄関扉側から玄関エリアに進入する人の動きを選択的に検出するために、扉閉信号の受信をトリガとして開始される検出能動期間を定めておき、動体検出信号読取手段に動体検出信号の入力状態を当該検出能動期間内にて読み取らせる。このような検出能動期間を定めるのは、扉閉信号を受信してから時間無制限に動体検出信号の入力状態を読み取るようにすると、管理対象者が退出した後に住居に残留者が存在する場合、その残留者が玄関エリアに進入すると、上記管理対象者の退出判定が不能になるためである。つまり、玄関扉を開けて帰って来る人(帰宅する人)の玄関エリア内での動きだけが切り出されるように検出能動期間を定め、その検出能動期間が満了した後は、動体検出信号の読取を行なわない(読取結果を無効化する概念を含む)ようにする。これにより、読み取られる動体検出信号は玄関扉から入ってくる人の動きに由来するものに限定され、誰かが退出したあとの住居残留者の動きに由来した信号は排除することができる。
・判定制御手段:在不在判定手段に対し、検出能動期間が終了するに伴い在不在判定処理のサイクルを完了させ、扉閉信号の新たな受信をトリガとして開始される次の在不在判定処理の待機状態に移行させる。つまり、1回の玄関扉の開閉に随伴して実行される在不在判定処理のサイクルは上記検出能動期間の終了とともに完結し、個々のサイクルに固有な在不在判定結果が生成されるとともに、次の扉開閉(つまり、人の出入)が発生するまでは、動体検出信号の読取がなされない。つまり、あるサイクルの在不在判定結果は、次の扉開閉(つまり、人の出入)が発生するまでは、動体検出部の検出状態とは無関係に維持される。
・判定結果記憶制御手段:在不在判定手段から新たな判定結果を取得した場合は、判定結果記憶手段に記憶されている判定結果を当該新たな判定結果により更新する一方、新たな判定結果が取得されない場合は、動体検出部による動体検出状態とは無関係に判定結果の記憶内容を保持させる。この記憶内容が判定結果出力手段により最終的な在宅・不在の判定結果として出力される。
上記特徴部の構成にて重要な点は、玄関扉から人が退出すれば、住居内に残留者がいても原則「不在」と判定され、次に誰かが帰宅するまでの間はその「不在」判定状態が維持されることにある。つまり、玄関エリアの動体検出部の検出域から外れた居住エリア内に人が存在しているか否かとは無関係に、判定結果出力手段は上記の「不在」の判定結果を出力する。管理対象者が独居の場合は、在不在の判定にはこれで十分であるといえる。一方、複数人が同居している住居では、例えば、管理対象者のみが外出し同居人が残留する場合、本発明によると、住居には人は残るが「不在」の判定がなされ出力される。これは、在宅管理システムとしては一見不合理にも見えるが、上記の不在判定出力は、物理的な事実には反していても管理対象者を迎えにやってくる送迎者等には的確な判断材料を与えることは明らかである。また、管理対象者を残して同居人が外出し、その間、判定結果出力を閲覧できる第三者の来訪を避けたい場合も、該同居人の外出に伴い「不在」の判定結果が維持されることが、同様に望ましいといえる。このように、管理対象者(要介護者や高齢者等)と、状況把握できている同居人のみが居住している環境にあっては、実のところほとんど問題は生じないのである。
このように、本発明の上記特徴部によると、居住者が単に玄関扉を出入りするだけで、在宅・不在の判定・管理が無意識のうちに達成され、誰が外出して誰が残留しているか等を入力するといった面倒な操作は一切不要である。また、インフラ的に最小限必要なハードウェアは、玄関扉検出部と玄関エリアに限定された動体検出部と、上記機能実現手段を実現するマイコンないしハードウェアロジックのみ、という極めてシンプルな構成となる。その要因は、すでに説明したごとく、居住者間の暗黙の了解を前提として、住居全体を対象とする物理的に厳密な在・不在の検出があえて放棄され、玄関における人の出入検出に基づき、扉の開閉を処理の区切りとして住居内の在宅・不在の判定が集約・単純化されている点に基づくものである。
以下、本発明の在宅管理システムにさらに付加可能な種々の構成について説明する。
検出能動期間の設定長は、玄関ドアの開閉後、帰宅者の動きが玄関エリアで確実に検出でき、かつ、(住居残留者など)玄関エリアへ再度到来する人の動きが不必要に検出されない程度の範囲で任意に設定できるが、例えば10秒以上60秒以下、望ましくは20秒以上50秒以下の範囲で設定できる。また、検出能動期間を固定的に設定するのではなく、扉閉信号の受信をトリガとして動体検出信号の入力状態を読み取り開始した後、動体検出信号の読取状態が「動体あり」を示す状態となったとき(例えば人の動きが所定回数(例えば1回又は2回)検知された時)に検出能動期間を満了するようにしてもよいし、人の動きが最後に検出されてから所定期間(例えば5秒以上10秒以下)だけ動体なしの状態が継続した場合に検出能動期間を満了するようにしてもよい。前者の場合、例えば、判定制御手段は、検出能動期間内にて動体検出信号読取手段による動体検出信号の読取状態が動体ありを示す状態となった場合に、検出能動期間の計時満了前に判定結果を在宅に確定させる一方、検出能動期間の満了まで動体検出信号読取手段による動体検出信号の読取状態が動体なしを示す状態を継続した場合に判定結果を不在に確定させるように構成できる。これによると、玄関扉が閉じた後で検出能動期間内に動体検出があれば、誰かが帰ってきた(つまり在宅)と早々に判定でき、そこで検出能動期間を打ち切っても判定的確性には何ら影響はなく、処理も大幅に簡略化できる利点がある。
次に、本発明には、判定結果記憶手段に記憶されている最新の判定結果を、扉閉検出部の検出状態とは無関係に強制的に在宅に設定する強制在宅設定手段を設けることができる。本発明によると、誰かが外出する場合は本発明の構成では一律に「不在」の判定・出力がなされるが、これは居住者の希望や意図に必ずしも沿わないことがある。こうした状況は、本発明にて住居エリア内の物理的な在・不在の検出が放棄されていることによる、ほぼ唯一の死角ともいえるものである。しかし、上記強制在宅設定手段の付加により、デフォルトでなされる「不在」の判定を「在宅」に意図的に変更できるようにしておけば、単純なシステムによりながら、より死角のない的確な在宅管理が実現できるようになる。この機能の採用は、例えば、管理対象者を残して同居人が外出し、その間、(例えば判定結果出力を閲覧できる)第三者の来訪を受け入れたいような場合に極めて有効である。
強制在宅設定手段は、例えば、手動にて強制在宅の設定操作を行うための設定操作部を有するものとして構成できる。このような操作部を例えば玄関エリアに設置しておけば、外出者は外出の前に該操作部を操作することで、簡単に「在宅」設定を行うことができる(この操作は、残留する在宅者によっても実施可能である)。一方、この操作部は無線端末、例えば、携帯電話端末に設けてもよい。このように構成しておくと、外出時に「在宅」設定操作を失念した場合も、外から遠隔操作により強制在宅設定を行うことができる。
また、強制在宅の設定状態を手動で解除するための、解除操作部を設けることもできる。これは、誤操作等に起因した「在宅」設定を修正したい場合に有効である。この解除操作部は設定操作部とは別に設けてもよいし、2つの操作部を共用化することも可能である。後者の場合、例えば共用化された操作部を1回操作すれば強制在宅が設定され、もう一度操作すれば解除されるように構成可能である。
判定結果記憶制御手段は、強制在宅設定手段による強制在宅設定に伴い、判定結果記憶手段に記憶されている最新の判定結果を在宅に更新することとなる。他方、強制在宅設定手段による強制在宅設定がなされた後、扉閉検出部により玄関扉の開閉検出がなされた場合に強制在宅設定を解除する強制在宅設定解除手段を設けることもできる。このようにすると、扉閉信号の受信に基づき在不在判定手段により新たな在不在判定がなされた場合に、強制在宅設定に由来する在宅判定の記憶状態は、新たな在不在判定の結果により更新されるようになる。玄関における人の出入のみで在宅・不在の管理を行う点は本発明の本質ともいえる部分であるが、上記の構成により、強制在宅設定がなされている場合に、その設定の有効期間を次の人の出入までに限定しておくことができ、例えば強制在宅設定解除の失念による不具合を効果的に防止することができる。
次に、動体検出信号読取手段においては、扉閉信号を受信した後、検出能動期間よりも短い不感帯期間を設定でき、該不感帯期間の経過後に検出能動期間が開始されるように構成することができる。玄関扉の閉鎖後は、扉動作による風圧で玄関エリアに置かれている傘が倒れたり、カーテンや観葉植物の葉が揺れたりなど、短時間ではあるが、人の出入に由来しない動体検出がなされ、人が外出したにも関わらず「在宅」と誤判定される可能性がある。しかし、上記のような不感帯期間を設定することで、玄関扉が閉鎖された直後のノイズ的な動きを除外することができ、より的確な判定が可能となる。
次に、動体検出信号読取手段、読取制御手段、在不在判定手段、判定制御手段、判定結果記憶手段、判定結果記憶制御手段及び判定結果出力手段の各機能実現手段は、コンピュータ読み取り可能なプログラムの実行に基づいてマイコンにより実現可能である。この場合、そのマイコンが実装された主基板と、該主基板に接続される動体検出部とを共通の筐体に内装してユニット本体を形成することができる。扉閉検出部は該ユニット本体に信号ケーブルを介して接続できる。
また、前述の強制在宅設定手段が設けられる場合は、該強制在宅設定の操作部をユニット本体に設けることができる。ユニット本体は、玄関エリアの動体検出に好都合な位置に取り付ける必要があり、当然、玄関扉からの退出者にも容易に視認可能で、かつ手の届く位置に設置することが十分可能である。したがって、強制在宅設定を行う際も、操作部がユニット本体に設けられていると便利であり、操作の失念も生じにくい。
次に、本発明においては、在不在判定がなされたときの日時情報を取得する日時情報取得手段を設け、判定結果記憶手段を、前記判定結果を日時情報と対応付けて記憶するように構成できる。在宅・不在の判定がいつなされたのかの日時が記憶されることで、管理対象者が在宅ないし不在となってからの経過時間など、時系列的な在不在の情報把握が可能となる。例えば、判定結果記憶手段を、日時情報と対応付けられた判定結果を時系列順に順次記憶するものとし、判定結果出力手段を、日時情報と対応付けられた判定結果を在宅・不在の履歴情報として出力可能に構成しておくと、最近の在宅・不在の経過把握が容易となり、例えばその在宅・不在の状況が正常なのか、何らかの異常があるのか、などについて判断する際にも有効な情報として活用できる。
また、在不在判定手段による新たな在不在判定がなされる毎に、該判定がなされたことを居住エリア側に向けて音声報知する音声報知部を設けることもできる。本発明において、このような音声報知部を設けることには、次のような意義がある。すなわち、特許文献6や7に開示された従来の見守りシステム等とは異なり、本発明においては、玄関扉が開閉されるたびに在宅・不在の判定がなされ、扉の開閉を区切りとして判定結果が更新される。したがって、これに対応して居住エリア側に向けて音声報知がなされることで、同居人にとっては誰かが出て行った、あるいは帰ってきた、ということが玄関エリアから離れた場所にいても容易に把握できる。例えば、高齢者が同居人の目の届かない状態で勝手に玄関扉を開けて出てゆこうとした場合、この音声報知により同居人が気づくことで、不測の退出を未然に防ぐ、といったことも可能となるのである。この場合、判定結果(退出と帰宅)を識別可能に音声報知することで、管理対象者の不測の退出を防ぐ効果はさらに高められる(例えば、退出時は「行ってらっしゃい」、帰宅時は「おかえりなさい」等)。
次に、判定結果出力手段には、判定結果を公共通信網に無線送出する無線情報送出部を設けることができる。この場合、本発明の在宅管理システムには、無線情報端末として構成され、公共通信網を介して判定結果を受信する判定結果受信部と、受信した判定結果を表示する判定結果表示部とを有する判定結果出力端末を付加することができる。このようにすることで、住居外にいる利用者も、当該住居の在宅・不在の情報を容易に把握することができる。また、前述の強制在宅設定手段を設ける場合は、該強制在宅設定の操作部を無線情報端末に設けておけば、玄関エリアで強制在宅設定を失念したような場合でも、住居に戻ることなく遠隔操作により容易に修正できる。
この場合、公共通信網として周知のインターネットを活用できる。そして、判定結果出力端末を携帯電話端末として構成する場合は、無線情報送出部は携帯電話基地局を介してインターネットとパケット通信を行うパケット通信モジュールにて構成しておくことができる。住居側に設けられる無線情報送出部は例えば無線LANアクセスポイント(例えばWiFiルータ)で構成することもできるが、通信距離が短いため、送迎員等が管理対象者を迎えに来訪する場合、玄関先まで訪問しても在宅・不在の判定結果を受信できない場合があり得る。しかし、上記のようなパケット通信モジュールを採用すれば通信距離の制限が実質的にない電話通信網を介して判定結果を受信でき、玄関から離れた場所であっても訪問対象先の在宅・不在を確実に把握できるので、例えば住居を訪問する前に在宅・不在を事前に確認することも可能となる。
本発明の在宅管理システムは、複数の住居を管理対象として構築することが可能である。この場合、動体検出信号読取手段、読取制御手段、在不在判定手段、判定制御手段、判定結果記憶手段、判定結果記憶制御手段及び判定結果出力手段の各機能をコンピュータ読み取り可能なプログラムの実行に基づいて実現するマイコンと、該マイコンに各々接続される動体検出部(ここまでの部分を、前述のユニット本体として構成可能である)と扉閉検出部とを含む在不在判定端末を構成しておき、これを在宅管理対象となる複数の住居に個別に設置する。これら在不在判定端末は管理データベースの記憶部を備えた在宅管理サーバに公共通信網(例えばインターネット)を介して接続することができる。個々の在不在判定端末にて取得される各住居の在不在にかかる判定結果は、在宅管理サーバに送信されて管理データベースに在不在判定端末特定情報と対応付けて記憶される。そして、在不在判定端末特定情報の入力に基づいて在不在判定端末を選択する不在判定端末選択手段と、選択された在不在判定端末に対応する判定結果を、公共通信網を介して在宅管理サーバから受信する判定結果受信手段と、受信した判定結果を表示する判定結果表示手段とを備えた判定結果出力端末を設けるようにする。このようにすると、複数の住居の在宅・不在の判定結果が在宅管理サーバにより集約的に管理され、公共通信網を介して判定結果出力端末によりアクセスすることで、希望する住居の在宅・不在の情報を簡単に取得することができる。
また、在宅管理サーバは、在不在判定端末から判定結果を受信したときの日時情報を取得する日時情報取得手段を備え、管理データベースは判定結果を日時情報と対応付けて在不在判定端末特定情報毎に時系列順に記憶するものとして構成でき、判定結果出力端末は、日時情報と対応付けられた判定結果を在宅・不在の履歴情報として出力可能に構成することができる。在宅管理サーバには管理データベース上にて在宅・不在の履歴情報の更新状況を在不在判定端末ごとに監視する在宅情況監視手段と、最後の在宅判定結果を取得してから所定の日数を経過している在不在判定端末を在宅情況監視手段が検出した場合に、公共通信網を介して異常報知情報を判定結果出力端末に送信する異常報知情報送信手段とを設けることができる。公共通信網がインターネットであれば、判定結果出力端末は携帯電話端末として構成され、携帯電話基地局及びインターネットを介して在宅管理サーバとの間で通信を行うように構成できる。
在不在判定端末から判定結果と、これを受信したときの日時情報とを記憶する方式を採用したとき、その記憶内容にアクセスすることで、着目している住居が「在宅」となってからの経過時間(あるいは日数)が把握できる。そして、上記構成によれば、在宅の期間が極度に長く(例えば1〜2週間)継続されている場合は、居住者に何らかの異常があったと機械的に判断することができ、救急措置を講じる上での有益な判断材料として活用できる。
なお、携帯電話端末は、上記説明した機能を実現するためのコンピュータプログラム(例えば、携帯アプリ)をダウンロードし、インストールすることで、本発明の在宅管理システムにおける判定結果出力端末として機能させることが可能である。
次に、認知症等が進行した高齢者等が、同居人の目の届かない間に勝手に玄関扉を開けて出てゆき、徘徊してしまうトラブルは年々増加している。本発明においては、上記のごとく玄関扉の開閉検知と玄関エリア内の動体検知とを組み合わせることで、居住者の退出管理は簡便な構成で実現できる。しかし、同居人が在室しつつも管理対象者が不測に退出してしまう状況は完全には防ぎきれない側面がある。
管理対象者が万が一徘徊に出てしまった様な場合は、捜索に速やかに移行しなければならない。外部に捜索の応援を要請する場合、必要となるのは徘徊中の人物の特徴情報であり、人物特定に有効な特徴情報としては、例えば顔の情報が挙げられる。通常、該当人物の近影写真を家族等に提供してもらい、目撃情報を収集することが行われている。しかし、徘徊等への対応が現実に発生したとき、捜索に好都合な管理対象者の近影写真が常時簡単に入手できる保証はない。
そこで、本発明においては、住居エリアから玄関エリア内に進入する人物を撮影する玄関カメラと、玄関カメラが撮影する人物画像を記録する人物画像記録手段と、人物画像記録手段に記録された人物画像のデータを外部に出力する画像データ出力手段と、を設けておくことができる。本発明によれば、管理対象者が玄関扉を開けて屋外に退出したとき、前述の動体検出と扉閉検出との組み合わせに基づき、玄関扉からの人の退出履歴を容易に把握することができるので、玄関エリア内に進入する人物を玄関カメラで撮影し、その撮影された人物画像を記録しておくことで、退出者の捜索等が万一必要になった場合も、対応する人物画像の記録内容から、その人物の退出時の人物画像を容易に取得することができ、早期発見・保護のための有用な情報として活用できる。
玄関カメラが撮影する人物画像の記録は、防犯カメラ映像記録装置のように動画の形で連続的に継続してもよいが、大容量の記録装置が必要になるなど、システムコストの増大は避けがたくなる。また、本発明において玄関扉からの人の退出判定は、扉閉信号の検知を条件としてなされるが、玄関扉が閉まったときには玄関エリアからはすでに人が退出した後となり、玄関エリア内でカメラ撮影しても退出者の画像は取得できない。そこで、本発明においては、玄関カメラが撮影する人物画像において顔領域を認識する顔画像認識手段と、人物画像中に顔領域が認識されることを条件に、人物画像を適合画像として人物画像記録手段に記録させる画像記録制御手段と、を設けておくことができる。扉側から玄関エリアを撮影する玄関カメラには、玄関エリア内に人物が入ってきた場合、その人物の顔がほぼ確実に映り込むことになり、逆に玄関エリア内に人物が不在の時は、人の顔が映り込むことは100%あり得ない。従って、顔領域が認識されることを条件に、その人物画像を適合画像として人物画像記録手段に記録させるように構成することで、玄関扉の閉鎖をトリガとした退出判定に先立って、人物画像のカメラ撮影を的確に開始することができる。また、玄関エリア内に人物が不在の時は画像記録が行われず、記録装置の容量の大幅な節約を図ることができる。さらに、退出者の捜索等が必要になった場合も、再生して確認するべき画像量が減じ、必要な画像情報に早くたどり着くことができる。
建物の玄関に顔画像を撮影するカメラを取り付ける例としては、例えば特許文献8のように、玄関から建物内に入ってくる人物の画像をカメラで撮影し、登録されている顔画像と照合することにより、当該人が進入権限を有する権限者であるか否かを判定するシステムを例示することができる。しかし、これは、徘徊等のために帰宅できなくなっている人物の捜索に使用するため、玄関から出ていく人物の画像を撮影する上記技術とは目的が全く異なるものである。
また、犯罪捜査の場合などでは、犯罪歴のある人物の顔の特徴情報がデータベース化されており、事件発生からある程度日数経過した場合にあっても、防犯カメラなどで撮影された不審者の顔情報を照合することで犯人特定に貢献できるケースもが多い。例えば、特許文献9においては、建物内に進入した不審者を特定するために、建物出入り口ドアの内側のドアノブに触れた不審者の顔の画像を、ドアノブ直上にて玄関内側に設置したカメラにより撮影する発明が開示されている。
一方、認知症などの要因で徘徊してしまう人物の捜索は、安全確保のため、徘徊発生が判明してからできるだけ速やかに開始されなければならない。この場合、徘徊者は多くの場合、移動速度の遅い高齢者であり、遅くとも数時間以内には家族等が異変に気付くことから、徘徊者の早期発見・保護につながる最も重要な情報は、比較的近隣での目撃情報である。しかし、平服等で出歩く高齢者の姿は、一見して徘徊とわかるケースはそれほど多くなく、目撃されていたとしても顔の特徴までが記憶に残ることは少ない。従って、顔写真のみを参考に徘徊者の目撃情報を効率的に収集するには限界がある。このような場合、目撃者の記憶に最も残りやすいのは、徘徊する人物の着衣や風体(姿勢や歩き方も含む)など、顔以外の特徴情報であることが多い。ところが、特許文献9のような撮影の方式であると、人物の顔以外の特徴部分(例えば着衣や風体)は撮影視野外となるか、映っていてもごく一部分にとどまり、有効な情報として活用できない難点がある。
そこで、画像記録制御手段は、人物画像中に顔領域を含む少なくとも上半身領域が含まれることを条件に、人物画像のデータを適合画像データとして人物画像記録手段に記録させるように構成することができる。これにより、玄関扉から出ていく人物に対し、その時の着衣や風体を反映した上半身の特徴情報が顔とともに撮影・記録されることとなり、徘徊者の早期発見・保護に有効に活用することができる。
上半身領域が含まれた人物画像を確実に得るためには、画像記録制御手段は、顔領域の寸法を反映した顔領域寸法反映情報に基づいて、人物画像が上半身領域を含む適合画像か否かを判定する適合画像判定手段を備えるものとして構成することが望ましい。玄関カメラに写り込む人物画像は、カメラに接近するほど顔が大きく映る。これに合わせて、撮影視野に占める顔領域の面積率は顔寸法の2乗に比例して急速に増大する。玄関カメラに接近しすぎた人物の画像は視野内に顔だけが大きく映り込み、その下に続く胴体以下の部分が視野外になってしまう。一方、玄関カメラから人物が遠ざかるにつれ、顔領域の寸法は縮小し、玄関エリア内を扉に向けて接近する人物の姿勢が立位であることから、顔領域の幾何学的な重心位置は上方に移動する。その結果、視野内には顔領域の下方に続く形で胴体以下の部分が必然的に映り込むので、その寸法反映情報から人物画像が上半身領域を含むか否かを容易に判定することができる。
なお、寸法反映情報とは、例えば対象となる領域の上下ないし左右の各方向における最大寸法(領域に外接する平行線間距離など)や、同面積の円の直径、さらには領域の画素数などがあり、そのいずれを用いることも可能である。なお、顔領域が認識されることを前提に、人物画像の全体寸法を反映した全体寸法反映情報により判定を行うこともできる。そして、顔領域の寸法情報をあえて全く利用せず全体寸法情報(例えば人物画像の縦横比)のみで上半身領域を含むか否かの判定を行うことも不可能ではないが、顔領域の寸法反映情報を併用することで、人物画像が上半身領域を含むか否かの判定精度はより向上する。例えば、適合画像判定手段は、人物画像の全体寸法が予め定められた下限以上となり、かつ、全体寸法に対する顔領域の寸法比率が予め定められた上限以下となるように、適合画像か否かを判定するための判定条件を定めておくことができる。
玄関扉に向けて歩行する人物を玄関カメラで撮影する場合、写り込む人物画像は、カメラ(すなわち玄関扉)から遠ければ全身が映り込み、カメラに近づくにつれて映り込む寸法が増大し、顔や着衣の特徴もとらえやすくなる。一方、ある位置を超えると顔領域がさらに拡大されるが、胴体以下の部分は視野の下方にはみ出て途切れはじめ、以降は距離が詰まるほど胴体以下の部分の特徴情報が多く失われてゆくことになる。最適の人物画像としては、顔を含めたなるべく全身が視野内に入り、かつ、その全身画像の大きさができるだけ大きくなっていることが望ましいが、玄関エリア内におけるその最適な人物位置の範囲はそれほど広くない。この場合、玄関扉(ないしカメラ)から人物までの距離を別に設けた距離センサで検知して撮影タイミングを決定することもできるが、距離センサが必要となる関係上、システムの複雑化とコストアップが避けがたい。
これを解決するために、玄関カメラは、玄関エリア内にて玄関扉に接近する人物を予め定められた時間間隔にて繰り返し撮影するものとして構成しておくとよい。繰り返し撮影された人物画像をすべて記録し、その人物画像をモニタに表示させて内容を順次確認して最適のものを採用するように構成することができる。この場合、画像記録制御手段は、撮影される人物画像のうち判定条件を充足したものを適合画像として人物画像記録手段に記録するように構成しておけば、人物がうつむいていたりして顔領域が認識できなかったり、カメラに接近しすぎて上半身領域が映り込んでないなど、判定条件を充足しないものが除外されるので、適正な画像を選定する手順がより容易になる。
この場合、より進んだ方式として、画像記録制御手段を、人物画像記録手段に適合画像が記録されている状態で、以降に繰り返される撮影タイミングにて新たに撮影される人物画像が、人物画像記録手段に記録されている適合画像よりも良好な内容にて判定条件を充足している場合に、人物画像記録手段に記録されている適合画像を該新たに撮影される人物画像にて更新するよう構成することができる。これにより、玄関から出ていこうとする人物に対し、撮影は複数回実施されても、より良好な画像が得られる毎に記録されている適合画像が更新されるので、特徴情報をより多く含んだ人物画像を少ない画像記録枚数にて確保できる。
例えば、前述の判定条件において人物画像の全体寸法が前回撮影時よりも増大し、かつ全体寸法に対する顔領域の寸法比率が前回と同等又は縮小している場合に、人物画像記録手段に記録されている適合画像を該新たに撮影される人物画像にて更新するようにすれば、より全身に近い人物画像を顔も含めて可及的に大きなサイズにて取得でき、徘徊者等の早期発見・保護に貢献する画像情報としての価値が大幅に向上する。
前述のごとく、本発明において上記のような人物撮影機能を組み込む場合、玄関からの人物の退出(不在状態への遷移)に関しては、扉閉検出時における動体検出の有無に基づいて判定がなされ、開いた扉が閉鎖するときに人が出て行ったか否かが確定する。しかし、人物の退出判定が確定してから玄関エリア内でその退出する人物の撮影を行なおうとしても、その時には玄関エリアにはすでに当該人物は存在せず、人物画像の取得は不可能である。従って、上記のように、退出しようとする玄関エリア内の人物画像を、玄関扉の開閉に先んじて、顔を含む特徴情報が含まれた形で撮影・取得することが技術的には必須となる。従って、その後に玄関扉の開閉が生ずるか否かにかかわらず、玄関エリア内にて撮影画像に顔領域が認識されれば、これを適合画像として記録する上記の手法は極めて有効であるといえる。
ただし、居住エリアから玄関エリアに入ってくる人物は常に玄関扉を開けて出てゆくとは限らない。上記の技術概念においては、このような場合でも人物画像の撮影は一旦実施され、適合画像があればこれが記録される。そして、玄関扉の開閉を検出する開閉検出部が設けられている場合、画像記録制御手段は、人物画像記録手段内に適合画像が記録されてから予め定められた期間内に開閉検出部が玄関扉の開閉を検出した場合に、画像データ出力手段に出力させるべき出力対象画像として適合画像を記録確定させる一方、期間内に玄関扉の開閉が検出されなかった場合は適合画像を削除又は無効化するように構成しておくとよい。この構成によれば、玄関扉の開閉前に撮影された適合画像がいわば仮保存の形で一旦記録され、その記録がなされてから予め定められた期間内に玄関扉の開閉が検出された場合に、撮影された人物が退出したと判断し、仮保存状態の適合画像の記録を確定する。そして、上記期間内に玄関扉の開閉が検出されなかった場合は、仮保存された画像は削除又は無効化される。これにより、退出しない人物の画像が無駄に記録される不具合を大幅に低減することができる。
なお、記録がなされてから一定の期間内に玄関扉の開閉が検出された場合に適合画像の記録を確定するようにしているのは、人物が玄関エリア内に入ってきて画像撮影・記録され、その後退出することなく居住エリアに戻った後、相当時間を経過してから別の人物が外出から戻ってきたような場合に、その画像が記録確定されてしまうことを防ぐためである。
また、ある人物の適合画像が撮影・記録されてから、その記録を確定させるための退出判定については、その人物が退出する際の玄関扉の開状態から閉状態への遷移検出を利用してもよいし、閉状態から開状態への遷移検出を利用してもよい。前者の場合は、前述の開閉検出部は扉閉検出部に兼用させることができる。また、後者の場合は、開閉検出部を扉閉検出部とは機能的には別の扉開検出部として構成しておく必要がある。
当然、扉閉検出部は本発明の必須構成要件であり、これを人物画像の記録確定判定に兼用することで、システムの軽量化を図ることができるだけでなく、記録確定に必要な人物退出判定の確度も高めることができる。この場合、画像記録制御手段は、人物画像記録手段内に適合画像が記録され、かつ動体検出信号読取手段による動体検出信号の読取状態が動体ありから動体なしに遷移してから予め定められた期間内に、扉閉検出部が玄関扉の開状態から閉状態への遷移を検出した場合に、画像データ出力手段に出力させるべき出力対象画像として適合画像を記録確定させる一方、上記期間内に玄関扉の開状態から閉状態への遷移が検出されなかった場合は適合画像を削除又は無効化するように構成できる。
本発明においては、動体検出部が玄関エリア内の動体を検出している場合にのみ、玄関カメラに撮影を実行させる撮影制御手段を設けることができる。これにより、玄関エリア内に誰もいないときに無駄に画像の撮影・記録がなされることを効果的に防止できる。
また、画像出力の指示入力を行う画像出力指示入力部と、指示入力を受けて画像データ出力手段に対し、人物画像記録手段から人物画像データを読み出して外部に出力させる画像データ出力制御手段と、を設けることで、希望するタイミングにて画像出力の指示入力を行うことで、記録された人物画像を出力させることができる。
画像データ出力手段は、画像データを公共通信網に送出する画像データ通信送出手段を備えるものとして構成できる。これにより、徘徊者の確保など緊急を要する場合においても、捜索に必要となる送信先に画像データを速やかに配信することができる。なお、画像の出力形態としては、モニタ等への表示出力やプリンタ等への印刷出力も可能である。
さらに、画像データ通信送出手段は、画像出力の指示入力に伴い、人物画像記録手段に記録されている最新の人物画像データを読み出し、画像サイズが1MB以下の静止画として公共通信網に送出するものとして構成することができる。これにより、画像データ送信に必要な通信負荷は大幅に軽減され、通信網の容量圧迫を生じにくく、また、通信コストも大幅に削減することができる。
特に、公共通信網がインターネットであり、画像データ通信送出手段が携帯電話基地局を介して前記インターネットとパケット通信を行う、月間の通信容量上限値が5MB以下に設定されたSIMカードが装着されるパケット通信モジュールにて構成されている場合、月間の通信容量がSIMカードにより上記容量に制限されていることで通信料の大幅な削減を図ることができる。その一方、該月間上限値では動画はもとより静止画であっても数枚〜数十枚の送信が限界であるが、画像サイズ1MB以下の静止画を徘徊捜索などの緊急時にのみ公共通信網に送出するなど、通信容量を大きく消費する機会が限定されている状況に鑑みれば、こうした簡便で安価な通信ハードウェア構成でも上記発明の機能を十分に享受でき、一般社会への普及を図ることができる。
本発明の作用及び効果の詳細については、「課題を解決するための手段」の欄にすでに記載したので、ここでは繰り返さない。
以下、本発明の実施の形態を添付の図面に基づき説明する。
(実施の形態1)
図1Aは、本発明の実施の形態1にかかる在宅管理ユニットの適用対象となる住居の一例を示す平面模式図である。該住居200は玄関エリア203と、これに続く居住エリア204とを有し、玄関エリア203への出入口が、施錠可能な玄関扉202により開閉可能に閉鎖される。住居エリア204は壁で区画された居室205やトイレ207、浴室206、キッチン208等を有する一般的なものである。例えば、この住居200には、高齢者や要介護者である管理対象者P1と、家族などの同居人P2とが居住しているものとする。
本発明においては玄関エリア203に動体検出部2が設置され、該玄関エリア203に対する人の出入りが検出される。動体検出部2の検出域DAの広がりは玄関エリア203を中心とした限定的なもので、居住エリア204の大半は該検出域DAの範囲外となっている。例えば、居住者P2が、壁で区画された居室205や浴室206、トイレ207等に滞在している場合は、動体検出部2がその動きをとらえることはない。
図1Bは、本発明の在宅管理ユニットの要部が関係する玄関エリア203の周辺を拡大して示すものである。本発明においては、動体検出部2とは別部品として構成された扉閉検出部3が使用される。玄関扉202は、本実施形態では側縁が扉枠に蝶番止めされる開き戸であり、図示しない扉クローザにより自動的に閉鎖状態に復帰させるよう構成可能である。また、扉閉検出部3はマグネットリードスイッチにより構成され、扉枠202aの扉受け面に固定されるスイッチ本体3aと、扉側に貼着されるマグネット3bとからなる。扉閉鎖時はマグネット3bがスイッチ本体3aに接近して内部の機械式開閉スイッチがオン状態となり、扉開放時はスイッチ本体3aから離間して開閉スイッチがオフ状態となることで、扉の開閉が検出される。
なお、扉閉検出部3は該構成に限定されるものではなく、近接スイッチやリミットスイッチ等で構成することもできる。また、光学式センサや蝶番と連動した回転センサなども原理的には利用可能であるが、システム全体の簡便性・低廉性や取付け容易性を考慮すれば、本実施形態のものが有利である。さらに、玄関扉は開き戸ではなく、図29に示す引き違い戸202Sであってもよい。図29では、扉閉検出部として、閉鎖位置の引き戸202Sにより付勢されるリミットスイッチ3Lが採用されている。
動体検出部2は、図2に示すように、マイコン50が実装された主基板10とともに筐体11に収容され、ユニット本体4が形成される。図1Bに示すように、このユニット本体4が、玄関扉の側方にて壁部wfに取り付けられている。該ユニット本体4は、信号ケーブル5を介して接続される扉閉検出部3とともに在不在判定端末15を形成する。マイコン50は、プログラム記憶部、具体的には図6のROM54に格納された在不在判定プログラム54aの実行により、本発明の動体検出信号読取手段、読取制御手段、在不在判定手段、判定制御手段、判定結果記憶手段、判定結果記憶制御手段及び判定結果出力手段の各機能を実現するものである。
具体的には、マイコン50は、扉閉検出部3の扉閉信号と動体検出部2の動体検出信号とが入力されるとともに、扉閉検出部3が出力する扉閉信号をトリガとして動体検出信号の入力状態を所定の検出能動期間Tb内にて読み取る(動体検出信号読取手段、読取制御手段)。そして、動体検出信号の読取状態が動体ありを示している場合、住居200は「在宅」であると判定し、動体なしを示している場合は「不在」であると判定する(在不在判定手段)。この在宅ないし不在の判定結果はRAM52内の所定の記憶エリアに記憶される(判定結果記憶手段)。そして、その記憶内容は、無線通信手段を含む通信ネットワーク(例えばインターネット100)を介して、携帯電話端末150あるいはネットワーク上の在宅管理サーバ101に送信・出力される(判定結果出力手段)。
マイコン50は、検出能動期間が終了するに伴い在不在判定処理のサイクルを完了させ、扉閉信号の新たな受信をトリガとして開始される次の在不在判定処理の待機状態に移行させる(判定制御手段)。そして、新たな判定結果を取得した場合は、記憶されている判定結果を当該新たな判定結果により更新する一方、新たな判定結果が取得されない場合は、動体検出部2による動体検出状態とは無関係に判定結果の記憶内容を保持させる(判定結果記憶制御手段)。すなわち、図1Aにおいて住居200の在宅・不在の判定は、動体検出部2の検出域DAから外れる居住エリア204内に人(P2)が滞在しているか否かとは無関係に、玄関扉3の開閉時における(検出能動期間内の)玄関エリア203の動体(P1)の有無のみによってなされる。以下、さらに詳細に説明する。
動体検出部2はドップラーセンサあるいは超音波センサのいずれかで構成され、本実施形態ではドップラーセンサで構成されている。なお、図28は、動体検出部として超音波センサ120を採用した例である。超音波センサの場合もドップラーシフトを用いた動きの検出が可能であるが、音波の伝播速度が電磁波よりはるかに小さいことから、反射波受信に要する時間計測により動体までの距離を測定することができ、その距離の時間変化により動きを検出する(つまり、ドップラー効果を利用せずに検出する)ように構成することも可能である。以下、動体検出部2がドップラーセンサの場合について詳細に説明する。
ドップラーセンサの構成は周知であり、検出波としてマイクロ波を検出域に送出し、動体による反射波を受信するとともに、反射波のドップラーシフトに由来した周波数成分を抽出し、動体の動きを検出するものである。送信波の周波数はマイクロ波帯(GHz帯)であるのに対し、人の動きなどを示すドップラー周波数は数Hz〜数十Hzの低周波帯であり、反射波はドップラーシフトによる周波数変調波と見ることができる。したがって、一般的なドップラーセンサモジュールにおいては、反射波を直交検波してドップラー周波数成分を抽出する方式が採用されている。
本実施形態では、動体検出部2を市販のドップラーセンサモジュール(新日本無線株式会社製:NJR4265J1、送信波周波数:24.25GHz)を用いて構成している。このモジュールの出力端子は、動体の接近・離間に反応している状態では出力電圧がハイ(H)レベル(例えば+3V)となり、動体を検出していない場合はオープンとなる。したがって、本発明のように、人の出入に由来した動体があるか否かのみを検出するには好都合な素子であるといえる。なお、動体ありをHレベル、動体なしをLレベルとして二値検出する場合は、出力端子は付加抵抗を介してプルアップしておく必要がある。
図4に示すように、上記ドップラーセンサモジュール13は、パッケージ主面法線NLの方向にマイクロ波を送出するものであり、該マイクロ波の送出領域すなわち検出域DAは、平面視にて該主面法線NLを中心軸線とする扇形の広がりを有している。NJR4265J1の場合、平面視での検出域の広がり角度φは、主面法線NLに関し左右それぞれ40°程度であり、主面法線NL方向にてパッケージ主面からの距離が1m前後で感度がほぼ最大となる。
図1Bにおいて、玄関エリア203における動体検出情報は最終的な在宅・不在判定にかかる情報の全てを担うものであり、ドップラーセンサからなる動体検出部2の検出域DAは、当該玄関エリア203のなるべく多くをカバーしている必要がある。この場合、図30に示すように、玄関扉202に対する人Pの出入方向に対し真横からこれを検出するように動体検出部2を配置することも可能である。しかし、この配置形態であると、扇形の検出域DAの幅方向が人Pの進行方向に対し平行となり、玄関扉202が閉鎖状態となる前に帰宅者Pが通り過ぎてしまい、本来「在宅」となるべきところを「不在」と誤判定する確率が高くなるおそれがある。
帰宅者が玄関エリア203を通過する速度は人によってまちまちであるが、例えば若年健常者の場合は靴を脱ぐ動作も早く、玄関エリア203の通過速度も速い。この場合、玄関扉202が開いて扉の閉鎖が検出される前にかなりの距離を進んでしまい、上記のように、動体検出部の検出エリアの設置状態によっては帰宅者の動きが捉えきれないこともあり得る。そこで、本実施形態においては、図1Aに示すごとく動体検出部2は、玄関エリア203を経てその奥に続く居住エリアを見込む向きに検出波が送出されるよう、住居200の内側にて玄関扉202の周囲に取り付けられている。これにより、玄関扉202側から帰宅者の歩行方向に検出波が照射され、歩行速度の速い帰宅者であっても確実に検出することができるようになる。具体的には、ドップラーセンサモジュール13のパッケージ主面が玄関扉202側から、奥に続く居住エリアを見込む向きとなるように取り付けられている。なお、図1Bにおいて動体検出部2は、玄関扉202の外側へのマイクロ波送出領域の漏えいを抑制し、扉外にいる動体の誤検知を防ぐために、扇形の検出域DAと玄関扉202との間に楔形の低感度域IAが形成されるよう方向調整されている。
図1Bにおいて、ユニット本体4は、玄関扉202の左右(ここでは蝶番のある左側)の、扉と平行な壁面スペースに対し、床面からの高さHが1〜1.5m(例えば1.3m)前後の位置に取り付けられ、玄関エリア203にて玄関扉202に接近する人P1までの距離が0.8〜1.3m(例えば1m前)後にて、その動きを最も高感度に捉えられるように検出域DAの向きが調整されている。ユニット本体4は、靴箱などの玄関配置物の上に載置したりする形でも設置可能であり、この場合は検出器DAの向きは、ユニット本体4自体の向きを変更することで調整できる。しかし、設置の見栄えや落下防止などを考慮すれば、ユニット本体4は上記のように壁面等へ固定取付けすることが望ましい。この形態にあって検出域DAの向きが調整可能となるように、図3に示すように、動体検出部2は筐体11に対し検出波の送出方向が変更可能に取り付けられている。
具体的には、ユニット本体4の取付け状態にて動体検出部2は、床面と直交する軸線周りに回転可能に設けられている。図3に示すように、ユニット本体4の筐体11の底部内面には、円筒状のソケット4aがねじ等を用いて取り付けられている。一方、動体検出部2はドップラーセンサモジュール13が実装された基板2Sを有し、その基盤2Sの端部に一体化された円柱状のステム2aがソケット4a内に隙間嵌め形態にて装着されている。ステム2aは基板2Sとともにソケット4a内で回転可能であり、その回転角度位相に応じて、ドップラーセンサモジュール13の主面法線NLの向き、ひいては検出域DAの向きを変更することができる。
図1A及び1Bにおいて、玄関スペース203をくまなく検出域DAでカバーするには、玄関口正面から玄関エリア203を見込むようにユニット本体4を取り付けるのが理想である。しかし、この位置には開閉される玄関扉202があり、ユニット本体4の設置スペースは扉の左右いずれかに寄せて確保せざるを得ない。すると、検出域DAもこれに合わせて平行移動するから、検出域DAが正面を向いている場合、玄関エリア203内には、ユニット本体4を寄せたのと反対側に大きな低感度域が形成されてしまう。そこで、図4に示すように、ユニット本体4内にて基板2Sを玄関スペースの内側方向に回転させることで、図1Bに示すように、玄関エリア203のより多くの領域を検出域DAでカバーすることができる。特に、玄関扉202と検出域DAの扉側の縁と間の楔形の低感度域IAは、これにより大幅に縮小することができる。
また、図1Bにおいて、玄関扉202横の壁面wfのスペースが小さすぎる場合は、扉202と直角に玄関スペース203を区画する側壁部wsにユニット本体4を取り付けるのが適当となる場合がある。図4は、壁面wfにユニット本体を取り付けた場合の、筐体11に対する動体検出部2の向きを示すが、図5のごとく、側壁部wsにユニット本体4を取り付ける場合は、基板2Sを軸線周りに90°回転させることで、図4とほぼ同等の検出域DAの位置設定状態を得ることができる。
上記のごとく、ユニット本体4に内装される動体検出部2は、玄関エリア203に進入する人(動体)が確実に検出できるよう、検出波の送出方向を適正に調整する必要がある。その調整に際しては、その検出状態が適正であるかどうかを目視確認できるように構成しておくと便利である。そこで、図2に示すように、ユニット本体4には、動体検出部2の検出状態を表示する動体検出表示部7が設けられている。動体検出表示部7は、ここでは筐体11の正面壁部に形成された貫通孔にLED(本実施形態では黄色)をはめ込んで構成されており、例えば動体検出部2が動体を検出している場合に点灯、していない場合に消灯となる(逆でもよい)。また、本実施形態では、玄関扉の扉閉検出部の検出状態を表示する開閉検出表示部6が同様にLED(本実施形態では緑)にて形成され、玄関扉が開放されたときに点灯、閉鎖されたときに消灯となる(逆でもよい)。
動体検出部2の設置位置調整に際しては、まず、図1Bにて扉閉検出部3の設置を終えた後、ユニット本体4に対しテスト者が0.5〜1m前後まで近づいたとき、確実に動体検出表示部7が点灯するように、ユニット本体4ないし内装された基板2Sの向きを調整する。調整後、玄関エリア203側から玄関扉202にテスト者が接近したときに動体検出表示部7が点灯し、玄関扉202を開けたときはさらに開閉検出表示部6が点灯し、テスト者が退出して玄関扉202が閉鎖されたとき、2つの表示部6,7が消灯すれば動作が正常であると確認できる。
次に、上記の判定方式では、誰かが外出する場合は通常は「不在」判定・出力がなされるが、居住者の希望や意図に応じて、この「不在」の判定を「在宅」に強制的に変更できるよう、図2に示すように、ユニット本体4には、手動にて強制在宅の設定操作を行うための設定操作部9が設けられている。本実施形態において設定操作部9は筐体11の正面壁部に形成された押しボタンスイッチであり(以下、強制在宅スイッチ9ともいう)、玄関扉202を開ける前に該強制在宅スイッチ9を操作することで、「不在」を「在宅」に変更設定できる。なお、本実施形態では、後述の図6のマイコン50のRAM52内には、強制在宅設定された場合に「1」となり、解除された場合に「0」となる強制在宅フラグが設けられている。
また、筐体11の正面壁部には、強制在宅設定状態表示部8がLED(本実施形態では赤)にて形成され、強制在宅設定されたときに点灯、解除されたときに消灯となる。なお、後述のごとく、この強制在宅設定は、外出後に携帯電話端末から遠隔操作により行うこともできる。さらに、外出の時刻等が確定しているような場合は、外出時刻を設定可能なタイマーを設け、設定時刻が到来することにより強制在宅設定が自動的になされるように構成してもよい。また、このタイマー設定を携帯電話端末等の無線端末にて遠隔操作設定できるようにしてもよい。
図2において、ユニット本体4には、音声報知部としてのスピーカ12が内蔵されている。本実施形態において、スピーカ12は筐体11の裏面側に実装され、筐体11の裏蓋に形成された透過孔12aから外へ音声出力するようになっている。図3に示すように、スピーカ12は主基板10とともに裏蓋11bに取り付けられる一方、動体検出部2は、裏蓋11bをはめ込んだ際、スピーカ12の側方にて本体部11aの対応する壁部との間に形成されるスペースを利用して、筐体11の本体部11aの底部に取り付けられている。
次に図6は、在不在判定端末15と、これを用いて構築される在宅管理システム1の電気的構成を示すブロック図である(なお、電源回路部は省略して描いている)。在不在判定端末15は前述のごとくマイコン50を処理主体として備えている。マイコン50は例えばPIC(例えばPIC12F683:マイクロチップ・テクノロジー社製、等)にて構成され、CPU51、プログラム実行領域となるRAM52、プログラムが格納されるROM54、入出力部53及びそれらを相互に接続するバス55等がワンチップ化されたものである。本実施形態では、入出力部53に接続されるI/O拡張IC56(例えばMCP23008:MICROHIP社製)によりポート数が拡張されている(従って、広義にはマイコン50とI/O拡張IC56とを合わせて一般のマイコンの概念が構築されていると考えてもよい)。ROM54には、すでに説明した各機能実現手段を具現化するためのプログラム群、具体的には在不在判定プログラム54aと通信制御プログラム54bとが書き込まれている。
I/O拡張IC56には、前述のドップラーセンサモジュール13を有する動体検出部2、扉閉検出部3及び強制在宅スイッチ9がプルアップ抵抗13a,3c,9aを介して接続されている。また、前述の各表示部6,7,8を構成するLEDが電流調整抵抗6a,7a,8aを介して接続されている。さらに、音声報知部をなすスピーカ12が、音声合成LSI12aと、音声電流増幅部を構成する抵抗12c及びトランジスタ12bを介して接続されている。
I/O拡張IC56の各ポートは、信号変化エッジが有効となる状態割り込みポート(設定により立上りエッジか立下りエッジのいずれかが有効となる)と、弱プルアップによる双方向入出力ポートの一方又は双方として機能する。状態割り込みポートとしての使用可否は、制御レジスタの設定により決定される。具体的には、動体検出部2の接続ポートは、動体ありとなしに対応したビット情報の入出力ポートとして使用され、強制在宅スイッチ9の接続ポートは立下りエッジが有効な状態割り込みポートとして使用され、扉閉検出部3の接続ポートは、動体検出部2の入力読取制御用としては状態割り込みポートとして使用され、開閉検出表示部(LED)6の表示制御用としては、扉開及び閉の各状態を点灯及び消灯の2つの制御状態に対応させるためのビット情報の入出力ポートとして使用される。
I/O拡張IC56には、携帯電話基地局105を含む携帯電話通信網及びインターネット100を介して無線データ通信を行うためのパケット通信モジュール60がさらに接続されている。また、USBインターフェース63も接続されており、外部のPC65(例えば、ハブ66及びブロードバンドルータ67等を介してインターネット100に接続可能である)等とコネクタ64により接続することで、動体検出のための設定条件(不感帯期間、検出能動化期間等)が書き換え可能になっている。なお、必要に応じて、ハブ66に接続された無線アクセスポイント(WiFiルータ)68を介してインターネット100に無線LAN接続するためのWiFiモジュール61や、在不在判定日時を自律的に行うためのカレンダクロック62を接続しておくこともできる。なお、電話通信が介在しない、ブロードバンドルータ67経由によるインターネット接続環境を実現するための構成要素61〜68を総称して、通信ブロック30と称する。
上記のような在不在判定端末15は、在宅管理が必要な複数の住居にそれぞれ設定され、パケット通信モジュール60を介してインターネット100に接続される。インターネット100上には在宅管理サーバ101が構築され(例えばクラウドサーバである)、各住居の在宅・不在の判定結果及びその履歴を蓄積・記憶する管理データベース101aが設けられている。
以下、在不在判定プログラムの処理の流れについて、図7〜図9のフローチャートを用いて説明する。まず、図7における処理の開始に際して、扉閉検出部3の扉閉鎖に伴う信号立下りエッジを検出する(この検出に伴い起動する割り込み処理プログラムとなっている)。S1では、強制在宅フラグの内容を読み取る。内容が「1」、すなわち強制在宅ボタン9(図2)が押されていた場合にはS14に進み、「在宅」の判定を行う(つまり、強制在宅ボタンが押されたあと、扉閉信号が検出されることで強制在宅設定状態が開始される)。一方、S1で内容が「0」、すなわち強制在宅ボタンが押されなかった場合はS2に進み、不感帯期間Taを計時するためのタイマーT1を起動する。不感帯期間中においては、動体検出信号は読み取らない。したがって、S3でタイマーT1の計時値が不感帯期間Taに満たない場合はS4で計時継続してS3に戻るタイマーループに入る。
S3で不感帯期間Taが満了するとループを脱してS5に進み、検出能動期間Tbを計時するためのタイマーT2を起動するとともに、S6で動体検出信号の入力ポートの状態をリードし、S7の判定分岐に進む。そして、該読取状態が「(人に由来した動体の)検出あり」を示している場合はS12に進んで「在宅」の判定を行い、RAM52の判定結果記憶エリアにその判定結果を記憶する(検出能動期間Tbの計時は、この時点で打ち切られる)。また、S13では「在宅」を示す音声出力(本実施形態では「おかえりなさい」)を図6の音声合成LSI12aに指示する。
他方、S7の判定分岐において動体検出部12の検出信号の読取状態が「(人に由来した動体の)検出なし」を示している場合はS8に進み、タイマーT2の計時状態を確認する。タイマーT2の計時値が検出能動期間Tbに満たない場合はS9で計時を継続してS6に戻るタイマーループに入る。他方、S8で検出能動期間Tbが満了していればループを脱出してS10に進み、「不在」の判定を行ってRAM52の判定結果記憶エリアにその判定結果を記憶する。また、S11では「不在」を示す音声出力(本実施形態では「行ってらっしゃい」)を図6の音声合成LSI12aに指示する。強制在宅設定の場合のS14からの流れを含め、上記在不在の判定が完了すれば、S15で強制在宅フラグは「0」にリセットされる。これは、強制在宅設定を次の扉開閉時には解除する機能を実現するためのステップであり、ある図7の処理サイクルで強制在宅設定に基づくS14の「在宅」判定がなされても、S15で強制在宅フラグは「0」にリセットされてそのサイクルは終わるから、次の扉開閉により図7の処理が再実行されるときはS1からS2に向かう通常の判定処理の流れとなる。S16では、以上の判定結果が後述の通信処理へと転送される。
図8は強制在宅設定処理の流れを示すものである。S21では強制在宅スイッチが操作されたかどうかを確認する。押されていれる場合はS23に進み、強制在宅フラグを「1」にセットする。一方、強制在宅スイッチが操作されていなかった場合はS22に進み、外部からの強制在宅設定指示を通信受信しているかどうかを確認する。受信している場合はS23に進み、強制在宅フラグを「1」にセットする。受信していない場合はS23をスキップして処理を終了する。なお、強制在宅設定解除の操作部を設けておき、該操作部が操作されるまでは強制在宅設定状態を維持するように構成してもよい。
図9はLED点灯制御のルーチンであり、S31で扉閉検出部の検出状態が「開」であればS32に進んでLED6を、S34で動体検出中であればS35に進んでLED7を、S37で強制在宅フラグが「1」であればS38に進んでLED8を、それぞれ点灯駆動する。一方、各々逆の場合は、S33,S36ないしS39の各ステップでLED6,LED7ないしLED8を消灯する。
図10は、帰宅時の動作の流れを示す模式図であり、(A)において帰宅者Pが玄関扉202を開け、(B)において入口にさしかかり、(C)で玄関エリア203内に進入する。この間、玄関扉202は開いたままであり、開閉検出表示部6は点灯状態を継続する。他方、帰宅者Pはこの段階で動体検出部2の検出域DAに差しかかっていないので、動体検出表示部7は消灯したままである。帰宅者Pは玄関エリア203で靴等を脱ぎ、(D)のごとく検出域DA内に歩き始める。すると、動体検出表示部7は動作検出に伴う点灯を開始する。そして、ここまでの帰宅動作で不感帯期間Ta(例えば2秒)が経過していれば、動体検出部2の検出信号の読取が開始され、その読取状態が「(人に由来した)動体あり」の条件を満たしていれば「在宅」と判定され、居住エリアに向け「おかえりなさい」の音声がスピーカ12(図6等)より発せられる。このとき、居住エリアにすでに在宅者がいれば、この音声により誰かが帰ってきたことを容易に把握することができる。
図12は、その時のタイミングチャートを示すものであり、帰宅者により玄関扉が開けられてしばらくすると、玄関エリアに帰宅者が進入し、靴を脱いだり玄関に上がり込んだりする動作が動体検出部2に捉えられて、その信号入力状態に「動体あり」を示す断続的なHレベル期間が生ずる。開いた玄関扉は帰宅者自身の閉操作かドアクローザにより閉状態に戻される。そして、扉閉検出部3の状態が開から閉に移行すると、その信号の変化エッジEcをトリガとして不感帯期間Taの計時が開始される。この不感帯期間Taの継続中は動体検出信号が動体検出を示していても、その読取りはなされない(あるいは、無効化される)。
そして、不感帯期間Taが満了すると、動体検出信号の読取が開始されるとともに、検出能動化期間Tbの計時が開始される。「在宅」(人に由来した動体あり)と判定するための条件は、例えば、帰宅者の歩行等に伴う一定時間Tc(例えば0.5秒)以上のHレベル(動体あり)を継続した場合、あるいは、その継続状態が検出能動化期間Tb内に2回以上検出されるか、時間合計で一定値Td以上(例えば2秒以上)となった場合、などを採用できる。図12において、前者の場合は、在不在判定の「不在」→「在宅」の切り替えは1回目のTc以上の継続期間にてなされ(JC1)、後者では2回目のTc以上の継続期間にてなされている(JC1’)。
検出能動化期間Tbは、玄関扉側から玄関エリアに進入する人の動きを選択的に検出するために、例えば10秒以上60秒以下、望ましくは20秒以上50秒以下の範囲で設定されている(本実施形態では30秒)。人に由来した動体が検出されれば、検出能動化期間Tbの計時満了前に「在宅」の判定は確定する。検出能動化期間Tb内にてなされた「在宅」の判定JNはその後も維持され、開閉検出信号の次の変化エッジEcが到来するまでが、1回の在不在判定処理の継続期間となる。つまり、図1において住居200の在不在の判定処理は玄関扉202の開閉を区切りとしてなされることとなる。
扉開閉の検出は、扉閉検出部3の接続ポートの入力レベルを記憶し、定期的にポートの入力レベルを読み取って、前回の記憶値から変化があったとき、扉の開閉があったと判定することができる。しかし、この方法は、ポートレベルを周期的に読みに行く処理が必要であり、かつ、ポート入力レベルの記憶エリアをRAM内に設定しなければならないから、プログラムはやや複雑化する。他方、図12の方式では、扉閉検出部3の扉閉信号の入力ポートは扉閉状態と扉開状態に対応した二値の信号入力状態の変化エッジを検出し、その入力ポートの入力信号の扉開状態から扉閉状態へ遷移するときの変化エッジEcをトリガとして動体検出信号の読取りが能動化するように構成されている。具体的には、扉検出信号の入力ポート(図6のI/O拡張IC56)が状態変化割り込みポートとして構成され、このポートに扉閉に対応する変化エッジEcの入力があったとき、動体検出信号の読取りが割り込み処理として開始される。このように、入力ポートの入力信号の扉開状態から扉閉状態へ遷移するときの変化エッジEcをトリガとして動体検出信号の読取りを能動化するように構成しておくことで、ポートレベルの周期的な監視は不要となり、図7のような単純な割り込み処理の繰り返しでよくなるので、プログラムの大幅な簡略化が実現されている。
変化エッジEcの入力を受けて起動される動体検出信号読取りの割り込み処理が終了すれば、扉閉信号の入力ポートは次の変化エッジの待機状態に戻る。例えば、玄関扉202が閉鎖されて在不在判定処理が完了した後、再度玄関扉202が開状態となることを検出して1回の判定サイクルを終了するようにプログラムを構成することもできる。しかし、この方法であると、扉検出信号が閉状態から開状態に遷移するエッジを検出するまで割り込み処理は完了しないから、結果として扉検出信号の閉状態遷移のエッジと、開状態遷移のエッジの双方を検出しなければならず、扉検出信号の入力によりポートが余分に占有され、かつ、動体検出信号の読取りを終了させる処理もやや複雑化する。しかし、上記のように、検出能動期間Tbが計時満了するに伴い、在不在判定処理のサイクルを完了するように構成すれば、検出能動期間Tbの計時満了により(割り込みによる)動体検出信号読取り処理を終了させることでき、扉検出信号の開状態遷移のエッジ検出(扉の開状態検出)を行なわなくとも扉閉信号の入力ポートを次の変化エッジの待機状態に戻すことができる。これも、在不在判定プログラムの簡略化に貢献することは言うまでもない。
次に、図11は、外出時の動作の流れを示す模式図であり、(A)においては外出者P1が検出エリアDAを横切って玄関扉202を開ける動作を行っている。しかし、上記のように、動体検出信号の読取は扉閉検出部3の閉検出をトリガとして開始されるから、この動きは在不在の判定に影響を与えない。続いて、(B)において外出者P1はすでに扉をくぐって玄関エリア203の外に出ているが、玄関扉202はまだ閉動作の途中であり、この間、玄関扉202は開いたままであり、扉閉検出部3は閉検出していない(従って、ここまでは開閉検出表示部6は点灯となっている)。
そして、(C)において玄関扉202は閉鎖され(開閉検出表示部6は消灯)、扉閉検出部3の信号には閉状態への遷移に伴う変化エッジが生じ、不感帯時間Taの計時が開始される。玄関扉202の閉鎖の直後は、(D)のごとく、扉の閉動作が引き起こす振動や風などによって、玄関口に置かれている傘UBが倒れたり、観葉植物が揺れたりといった、人の動作に由来しない動体検出がなされることがある。しかし、不感帯時間Taの継続期間中は、これらの動体検出信号は読取りがなされないので誤判定が防止される。不感帯時間Taが経過後は、検出能動化期間Tbが同様に計時開始されるが、(E)のように外出者P1はすでに玄関エリアにおらず、検出能動化期間Tbが満了するまで検出域DA内が無人の状態に維持されれば「不在」判定が確定し、これに対応する「行ってらっしゃい」の音声がスピーカ12(図6等)より発せられる。
この音声は、一見、退出者に向けて出力されているようであり、音声の内容もそれに相応したものとなっているが、この音声が出力されるのは検出能動化期間Tbの満了後であり、図11(E)に示すごとく、退出者はすでに閉鎖された扉の外にいるので、タイミング的には違和感がある。該音声は、実は居住エリア204側に向けて出力されるのであり、同居人P2にとっては誰かが出て行った、ということが玄関エリアから離れた場所にいても容易に把握できる。例えば、退出者が徘徊等の懸念のある要管理者であり、同居人の目の届かない状態で勝手に玄関扉を開けて出ていった場合、この音声報知により同居人P2が気づくことで、不測の退出を未然に防ぐことができる。
図13は、上記退出時のタイミングチャートを示すものである。図12のように、前回のサイクルでの判定結果が「在宅」で確定している状態で考える。扉が開状態に移行する前に外出者は検出域内に入るから、開状態遷移のエッジが発生する前に動体検出信号には動きが現れている。そして、外出者が玄関扉に近づいてこれを開けると、開閉検出信号には開状態遷移のエッジが現れるが、外出者は図1Bの楔形の低感度域IA内に入ることで、動きの検出はこの時点ですでに消失している。そして、扉閉検出部3の状態が開から閉に移行すると、その信号の変化エッジEcをトリガとして不感帯期間Taの計時が開始される。この不感帯期間Taの継続中は動体検出信号が動体検出を示していても、その読取りがなされない(あるいは、無効化される)ので、傘等が倒れることによる動作ノイズNUMは無視され、誤検出が防止される。そして、不感帯期間Taが満了すると、動体検出信号の読取りが開始されるとともに、検出能動化期間Tbの計時が開始され、この間に動体検出がなされなければ、検出能動化期間Tbの満了とともに「不在」の判定が確定し、前サイクルでの判定結果(「在宅」)が新たな判定結果(「不在」)により更新される。
次に、図14は、外出者P1が残留者P2を残して外出する状況を示している。例えば、図11及び図13のように、この外出により「不在」判定が確定すると、玄関扉202の次の開閉があるまでは該「不在」判定は不変であり、同居人P2が玄関エリア203の検出域DAも含めて家中をいかに動き回ろうとも、その動きの検出は全て無効化され、「不在」判定の内容は覆ることがない。これは、一見、在宅管理の観点からは不合理に見えても、外出者P1が管理対象者(介護対象者)で通院等のため別の家族とともに外出したような場合にあっては、残留者P2が在宅していても、外出者P1を別の施設から迎えにやってくる送迎者にとり「不在」となっていた方が的確な判断材料を与えることになる。
しかし、これとは逆に、図11において残留者P2が管理対象者であり、外出する家族P1の不在中に施設からの送迎を受けたいような場合は、上記のごとくデフォルトでなされる「不在」の判定は不都合となる。このような場合は、図15に示すように、外出者P1はユニット本体4の強制在宅スイッチ9を操作してから外出する。すると、操作がなされた時点で判定結果は強制的に「在宅」に設定され、次に玄関扉の開閉があるまでは上記の「在宅」確定状態は維持される。このとき、ユニット本体4に設けられた強制在宅設定状態表示部8は点灯状態となる。
次に、図6において在不在判定端末15側で取得された判定結果はインターネット通信により在宅管理サーバ101に送られ、管理データベース101aに蓄積される。図16は、この時の通信処理の流れを示すフローチャートである。図6において、在不在判定端末15の近くに無線アクセスポイント68が存在する場合は、インターネット100にはWiFiモジュール61を介した無線LAN接続が可能である。図16のS41では、まずこのWiFiが利用できるかどうかの確認がなされ、利用できる場合はS42でWiFiによりインターネット接続される。他方、無線アクセスポイント68がない環境の場合はS43に進み、図6のパケット通信モジュール60により、携帯電話基地局105とのパケット通信(例えばLTE通信)を介してインターネット100に接続される。
インターネットは、基本的には相手に要求を出してデータを送信してもらうプロトコル構造になっている。したがって、複数の在不在判定端末15から在宅管理サーバ101にデータを送信したい場合は、在宅管理サーバ101側から管理対象となる複数の在不在判定端末15を巡回する形で定期的に送信要求を出し、在不在判定に関係するデータを順次取得する方法が考えられる。この方法では、送信要求の巡回処理を何度も繰り返す必要があり、住居毎の在不在の状態が頻繁に変化しない場合は非常に効率が悪い。したがって、複数ある不在判定端末15ごとに、判定結果に更新が生じた場合にのみ自発的にデータ送信する方式を採用することが望ましい。図16のS44では、判定結果が更新された在不在判定端末から在宅管理サーバに対し、更新判定結果にかかる新規データの送信許可の要求を出す。在宅管理サーバでは、H41でこの要求を受け、H42で当該新規データの送信要求を出す。在不在判定端末はS45でこれを受信し、S46でデータパケットを作成して更新するべき判定結果のデータを送信する。在宅管理サーバでは、H43でそのデータパケットを受信し、H44で受信時のタイムスタンプを取得するとともに、H45で受信した在不在にかかる判定結果データを、タイムスタンプが示す日付・時刻の情報と対応付けて管理データベースに記憶する。
図17は、上記のデータパケット300の一例を示す模式図であり、ヘッダ301にはパケット識別番号、送信元となる在不在判定端末のIPアドレス、受信側となる在宅管理サーバのIPアドレスなどが書き込まれ、これに続くIPペイロード302に、日付・時刻と対応付けた在不在のデータ(判定結果)や種々のコマンドなどが書き込まれる。ここで、本発明の在宅管理システムにおいて通信により送受信するのは、住居毎の在宅・不在を示す数十文字程度の情報であり、後述のような履歴送受信を行う場合でも高々数百文字までである。1パケットが128バイト(全角文字にして64文字分)であることに鑑みれば、パケット通信モジュール60は、加入者特定のために装着されているSIMカードが、月間の通信容量上限値が0.5MB以上5MB以下(例えば1MB)という極めて小容量の契約に対応したものであっても十分使用可能である。このようにすると、大容量の動画や音楽のストリーミング再生等に無制限に流用される心配がないことから、携帯電話通信を運営する会社により月額ベースで課金されるモジュールの使用料を大幅に低廉化することができて経済的である。
この場合、判定結果を含むデータを複数パケットに分割して送受信する際の分割上限数を1以上20未満の所定値に制限しておくこともできる。例えばパケット分割上限数を1に固定し、1パケットを超える履歴データ等は1パケット非分割の通信を繰り返して行うことで技術的には十分にクリアできる。インターネットプロトコルに従えば、図17のヘッダ300において、パケット分割を制御するフラグの中央のビット(パケットのフラグメント(分割)を「0」のときは許可、「1」のとき非許可)を固定的に(あるいは書き換え不能に)「1」に設定することで、データ送信制御にかかる上記の容量上限をハードウェア的にも強制することができる。
次に、図6において、管理データベース101aに蓄積されている住居(在不在判定端末)毎の在不在のデータ(以下、履歴を含めてこれらを「在不在データ」と総称する)は、携帯電話端末150から在宅管理サーバ101にインターネットアクセスすることで閲覧が可能である。図18は、周知の携帯電話端末150の一例を示すもので、ディスプレイ156(タッチパネルが重畳されている)には複数の端末アプリケーションのアイコンACが表示されており、別途ダウンロード取得されている閲覧用アプリケーション(コンピュータプログラム)のアイコン151をタップすることで、在不在履歴にかかる閲覧処理機能が起動される。図19は、携帯電話端末150の電気的構造をごく簡略に示すものであり、CPU152、メモリ153、入出力部154がバス155で接続されたマイコン151が搭載されている。メモリ153には携帯電話端末150の動作環境を構築するためのOS153aと、端末アプリケーション153b(上記の閲覧用アプリケーションを含む)が格納されている。また、在宅管理サーバ101から受信した閲覧データを記憶するデータ記憶エリア153cも形成されている。さらに、入出力部154には、ディスプレイ156、タッチパネル157及びその入力インターフェース158、通信インターフェース159などが接続されている。
図20は、管理データベース101aの一例を示すものであり、管理対象となる在不在判定端末のIPアドレスと、管理対象者の名前(特定情報)、緊急時の連絡先となる管理者(例えばケアマネージャーや施設責任者)が保有する携帯電話端末のIPアドレスおよび各在不在判定端末からの判定結果の履歴情報(日付・時刻及び状態)が互いに対応付けられた形で時系列順に記憶されている。図21は、これを携帯電話端末150から閲覧する場合の通信処理の流れを示すものであり、アプリケーションを起動した後、H51〜H53では図16と同様にWiFi接続とパケット通信接続との選択がなされる。次に、H54では、閲覧したい管理対象者のIPアドレスを入力する。そして、H55でその在不在データの送信要求を行う。在宅管理サーバ101では、S51でこの要求を受け、S52で要求された在不在データを含むデータパケットを作成・送信する。携帯電話端末150ではH56でこれを受信し、受信したデータをディスプレイに表示する。
図22は携帯電話端末150に表示されるアプリケーション画面の一例を示すもので、起動するとまず(A)のように、ソフトボタン402〜405で機能選択可能なメインメニュー401が表示される。「マイメニュー」ソフトボタン402は、例えば、ある特定の管理対象者からみて携帯電話端末150の所有者が同居家族である場合、予めマイメニュー対象として設定登録した、その特定の管理対象者の住居に設置された在不在判定端末についての在不在データを取得するためのものであり、これをタップすると(B)のマイメニュー411に遷移する。ここでは、「現在の状態」、「履歴」及び「強制在宅設定」の3つのソフトボタン412〜414が表示される。
そして、「現在の状態」ソフトボタン412をタップすると、上記特定の管理対象者の在不在判定端末にかかる履歴から最も新しい日付・時刻の判定結果がダウンロードされ、それに基づいて図23の(A)及び(B)のように、在不在判定端末のIPアドレスと管理対象者の名前、現在の状態(「在宅」又は「不在」(外出))、及び日付・時刻の情報がディスプレイに表示される。また、「履歴」ソフトボタン413をタップすると在宅・不在の履歴情報がダウンロードされ、(C)のように時系列順にこれが表示される。これにより、同居人は、管理対象者の現在の在宅・不在の状況を外出先からも簡単に確認することができる。
次に、図22(A)のメインニュー401において「メンバーリスト」ソフトボタン403をタップすると、同図(C)のように、在不在データを取得したい管理対象者(の在不在判定端末)のIPアドレスを、管理対象者の名前で検索可能なアドレス帳421が表示される。このアドレス帳は、メインメニュー401の「メンバー登録」ソフトボタン404をタップすることで、その編集画面(図示せず)に遷移し、新規なメンバーをアドレス帳に追加登録したり、あるいは不要となった登録者を削除したりできる。このアドレス帳は、例えば携帯電話端末150内に記憶保持することもできるし、クラウドサーバ内に形成しておくこともできる。
例えば、デイサービス入所施設などから送迎者が、複数の管理(送迎)対象者の住居を順に訪問しながら送迎する状況を考える。ある管理対象者の住居前に到着して玄関先でインターホンを鳴らしても返答がない場合、施設に事前の連絡がない限り、送迎者はそれが不在に起因するものなのか、あるいは在宅しているのに病変など何らかの異常により応答できないのかの判断がつかない。その判断に躊躇している間に次の訪問先への到着が遅れることになるし、異常と判断して救急の手配をかけたりすると、実は本当に不在であった場合は過剰対応ということになる。後者の場合は、送迎者が過剰対応につながることを恐れ、とりあえず「不在」と希望的に判断して通過してしまい、異常が発生しているのを看過してしまう心配もある。
しかし、本発明の上記のような携帯電話端末150による閲覧機能を使用すると、送迎者が管理対象者の住居近くまでやってきたとき、図22(C)のアドレス帳で管理対象者を選択すれば、図23(A)又は(B)の在不在データが直ちに表示される。その内容を見れば、管理対象者が在宅なのか不在なのかは一目瞭然であり、「外出中」ならばそのまま安心して送迎者は次の訪問先に向かうことができる。また、「在宅中」となっている場合は、病変等の何らかのトラブルが発生している可能性が高いから、マンション等であれば管理人から鍵を借りて室内に入ったり、あるいは救急車を手配したりするなど、躊躇なく異常対応に移行することができる。
また、この在宅・不在の確認閲覧は、施設の出発前にも実施できるから、不在であることを事前に把握できている管理対象者宅の訪問をスキップすることもでき、送迎の効率をさらに高めることにも貢献する。なお、毎日の送迎にかかる複数の管理対象者のメンバーが一定している場合は、これを事前に携帯電話端末に(例えば訪問順に)登録可能にしておき、メンバーの現在の在宅・不在の状況を一覧表示可能に構成しておくとさらに便利である。
本発明の在宅管理システムにおける在宅・不在の判定方式は、つまるところ、動体検出を玄関での人の出入り把握に専念させるだけの簡素なものであるが、それだけに安価であり普及が約束されている。そして、在宅・不在の判定情報を速やかに送迎者等が把握でき、ひいては異常発生時の救助体制への移行も上記のごとく的確かつ迅速に実施できる。本発明が簡素でありながら社会福祉上、極めて大きな貢献が期待できることは容易に理解できよう。
次に、図24は、外出後に自宅の在不在判定端末を遠隔操作により強制在宅に設定する通信処理のフローチャートである。携帯電話端末では、H61〜H63では図16と同様にWiFi接続とパケット通信接続との選択がなされる。H64では、マイメニュー登録された在不在判定端末のIPアドレスを指定する形で、強制在宅設定(ないし解除)の要求を送信する。在不在判定端末では、S61でこの要求を受け、S62で要求された強制在宅設定(ないし解除)を行う。
強制在宅設定は、図22(B)のマイメニュー411から「強制在宅設定」ソフトボタン414をタップすることにより行う。すると、図25(A)の暗証番号入力画面441が表示され、事前に登録してある暗証番号を入力する。照合一致すれば、強制在宅が現段階で設定されていなければ(B)の設定画面442に遷移し、ここで「設定」ソフトボタン443をタップすれば強制在宅が設定される(設定済みで必要がなければ、「取消」ソフトボタン444で図22(B)のマイメニュー411に戻ることができる)。また、暗証番号の照合一致後、強制在宅が現段階で設定されているのであれば、(C)の設定画面442に遷移する。ここで「解除」ソフトボタン445をタップすれば強制在宅が解除される(「取消」ソフトボタン444で図22(B)のマイメニュー411に戻ることができる)。
一方、在宅管理サーバ側では、各住居の在不在データを一元管理することで、在宅状態が不自然に長く続いている住居(在不在判定端末)について警報報知するサービスを実施することもできる。想定されるシーンとしては、世帯同居する夫婦がいずれも身寄りのない高齢者であり、一方が寝たきり等で動けず、他方がその在宅介護を行っているような場合である。また、これは独居高齢者世帯についても同様である。こうした世帯では、高齢者が全員病気等で動けなくなってしまい、外部と連絡が取れなくなった結果、共倒れになるという悲劇が現実に頻発している。高齢化が急速に進む我が国の公共福祉対応は、残念ではあるが後手に回っている部分も多い。そこで、こうした世帯に本発明の在不在端末を設置し、自治体が在宅管理サーバを運営する状況が実現すれば、以下に説明するような成果が期待できる。
図26は、在宅管理サーバ側での異常監視処理の流れを示すフローチャートである。図20において、管理データベース101aに蓄積されている管理者IPアドレスに、例えば自治体の福祉担当者の携帯電話端末やPCのIPアドレスを割り振っておく。H101では、管理データベースに登録されている最初の管理対象者(在不在判定端末)の在不在データを読み出す。H102で在宅中であれば、H103でその「在宅」判定がなされた日付を読み出し、H104で現在の日付を読み込むとともに、H105でその差分を演算する。もし、差分演算結果が規定日数Dc(例えば、7〜14日)を超えていれば、異常発生と判断し、H106でアラート情報を作成するとともに、H107で、対応する管理者のIPアドレスにアラート情報を送信する。一方、H102で「不在」であれば、H107までのステップはスキップする。H108では、管理データベース101aに次のデータがあるかを調べ、あればH109で次のデータを読み出してH102に戻り、以下の処理を繰り返す。管理データベース101a上の全てのデータを調べ終わったら、同じ処理を以降も定期的に繰り返すことで、監視を継続する。
在宅状態が規定日数Dcを超えて継続しているということは、その世帯では誰にも連絡できないまま、居住者が全員動けなくなっている可能性が少なからず存在する。そして、上記の方式の採用により、福祉担当者の携帯電話端末(あるいはPC)には、図27に示すように、作成されたアラート情報が表示され、安否確認が促されるので善処が可能となる。こうした切迫した状況でなくとも、夫婦そろって相当の高齢であったり独居高齢者であったりすることが世帯構成から把握できている場合、本発明の閲覧機能を利用すると、何日に1回外出するのか、外出するタイミングはいつなのか、を容易に把握できる。そこで、そうした世帯に配布された在不在判定端末のIPアドレスを予めリストアップしておき、そのリストアップされた世帯について、規定日数Dcを短期間側にカスタマイズしたよりきめの細かい監視を行うこともできる。例えば、一日おきに買い物に出かけていた一人暮らしの高齢者が4日在宅を継続したことが報知できれば、何らかの異常ではないかと判断して電話等により安否確認することもできるし、当然、直接連絡がとれない場合は担当者が駆けつけたり、身内がいれば注意を促したりすることもできる。
高齢者世帯で頻発している前述のような問題は、従来は、自治体担当者が目星をつけて定期的に巡回するなどの方法でしか、対応できていなかった。しかし、本発明の在不在判定端末をこうした世帯に配布・設置し、情報把握のインフラを整備すれば、自治体担当者の足による巡回に比べればはるかに低コストで監視を行うことができ、注意喚起を促すことができる機会も圧倒的に増加することから、高齢化に伴う社会問題の減少に確実に貢献できる。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2にかかる在宅管理ユニットについて説明する。実施の形態1にて詳細に説明した第一の構成例と概念的に共通する要素には同一の符号を付与して詳細な説明は略し、以下にその相違点についてのみ説明する。
図31及び図32は、本発明の実施の形態2にかかる在宅管理ユニットの一例を示す模式図である。ここでは、住居エリアから玄関エリア203内に進入する人物P1を撮影する玄関カメラ20が、玄関扉202の側方にて壁部wfに取り付けられている。本実施形態では玄関カメラ20は、ユニット本体4よりも上方、具体的には人物(大人であることを前提とする)P1の目線よりもやや上方にて光軸が玄関奥の住居エリア側を見込むように取り付けられている。
図33はユニット本体4(在不在判定端末15)を示すものであり、図2に示すものと構成的にほぼ同じであるが、押しボタン式の緊急スイッチ31が新たに形成されている(本実施形態では、筐体正面下部に設けられているが、形成位置はこれに限定されない)。図34は実施の形態2にかかる在宅管理システム500の電気的構成を示すブロック図である。実施の形態1にかかる図6の構成要素および機能はすべて引き継がれており、さらに次の要素が新たに追加されている。
・I/O拡張IC56にUSBインターフェース22が接続され、これに玄関カメラ20が顔認識モジュール21(顔画像認識手段)を介して接続されている。
・USBインターフェース22には、人物画像記録手段として機能する画像メモリ23が接続されている。該画像メモリ23は、例えばUSBインターフェース22に着脱可能なUSBメモリ等にて構成可能である。また、該USBインターフェース22には、前述の顔認識モジュール21が接続されている。
・RAM52内に、画像解析メモリと人物画像(適合画像)の仮保存メモリの各領域が確保されている。
・ROM54内に、玄関カメラ20の撮影制御を司る画像撮影制御プログラム54cが格納されている。該画像撮影制御プログラム54cは、請求項に記載した適合画像判定手段、画像記憶制御手段及び画像データ出力制御手段の機能を実現するためのものである。
・I/O拡張IC56に、強制在宅スイッチ9と同様の構造の緊急スイッチ31(31aはプルアップ抵抗)が接続されている。該緊急スイッチ31は、画像出力の指示入力を行う画像出力指示入力部の機能を担うものである。
・パケット通信モジュール60及び通信制御プログラム54bは、画像データ出力手段の機能も担う。
顔認識モジュール21は、目、鼻、口など顔特有の特徴を抽出するアルゴリズム(周知)に基づいて撮影画像内の顔領域を特定・抽出する機能性モジュールであり、種々の市販品を利用することができる(例えば、商標名:OKAOコンポ(オムロン株式会社)、商品名:WAKARU−c(株式会社アサヒ電子研究所)、商品名:Exynos9810(サムスン電子株式会社)など)。また、ROM54内に顔認識ソフトウェアを組み込み、顔認識処理をCPU51に担わせることもでき、この場合、顔認識モジュール21は省略することができる。また、そのような顔認識ソフトウェアの市販品として、OKAOVISION(商標名:オムロン株式会社)を採用することができる。
以下、画像撮影制御プログラム54cの処理の流れについて、図36のフローチャートに従い説明する。まず、VS101では玄関エリア内に人が進入したか否かを判定するため、動体検出信号を読み取る。VS102で動体が検出されていればVS2に進み、仮保存メモリ内に仮保存画像があるか否かを確認するが、処理開始直後では仮保存画像は記憶されていないのでVS6に進む。
VS6では、玄関カメラ20により玄関エリア203内の人物P1の画像を撮影する。撮影した画像のデータは顔認識モジュール21(図34)に送られ、顔領域FIが認識・特定される。そしてVS7に進み、図39に示すように、顔領域FIが認識されているか否かを判定する。認識されていればVS8に進む。一方、図40に示すように、顔領域FIが認識されていなければVS6に戻る流れとなり、画像撮影が再度実施されるとともに(途中の判断ステップVS18及びVS5については後述する)、顔領域FIが認識され次第VS8に進んでループを脱出する。
なお、玄関エリア内の人物検出は、VS101の動体検知内容からも、VS7の撮影画像内の顔認識によっても、いずれでも達成できている。従って、顔認識モジュール21による顔認識の精度が十分高ければ、動体検知にかかるVS101及びVS102の各ステップは省略することも可能である。
VS8においては、顔領域FIが認識された人物を含む撮影画像が画像解析メモリ(図34)に転送される。図41を併用して説明すれば、VS9では、撮影画像20iと、人物が映り込んでいない状態で直前に別途撮影されている背景画像20bとの差分演算処理がなされ、抽出された人物画像領域の二値化がなされるとともに、すでに認識されている顔領域が抽出画像上で特定される。
続いて、VS10においては、撮影された画像の適合性判定がなされる。すでに説明したごとく、これから出ていこうとする人物P1が認知症などの要因で徘徊してしまう可能性があるとき、その直前の撮影画像が、人物P1の顔とともに着衣や風体といった特徴を含むものとなることで、徘徊者の早期発見・保護につながる重要な情報を提供することとなる。そこで、画像の適合性に関しては、着衣や風体などの特徴情報を取得するために、図42に示すように、人物画像P1中に顔領域FIを含む少なくとも上半身領域が含まれるか否かの観点で判定される。
玄関カメラに写り込む人物画像P1は、カメラに接近するほど顔が大きく映る。これに合わせて、撮影視野に占める顔領域の面積率は顔寸法の2乗に比例して急速に増大する。図43に示すように、玄関カメラに接近しすぎた人物の画像は視野内に顔FIだけが大きく映り込み、その下に続く胴体以下の部分が視野外になってしまう。一方、図42に示すように、玄関カメラから人物P1が遠ざかるにつれ、顔領域FIの寸法は縮小し、玄関エリア内を扉に向けて接近する人物の姿勢が立位であることから、顔領域FIの幾何学的な重心位置は上方に移動する。その結果、視野内には顔領域FIの下方に続く形で胴体以下の部分が必然的に映り込む。
そこで、図41に示すように、顔領域FIの寸法(hf)と人物画像P1全体の寸法(hj)との比率は、上半身領域が少なくとも映り込む比率、より望ましくは全身に近い映り込みとなる比率に近づいていることが望ましい。例えば、図42の左に示すように、成人の場合、顔領域FIの高さhfの全身高さhjに対する比hf/hjは、0.2(例えば腰が曲がっている場合などを含む)以上0.35以下の間に収まるケースが多く、hf/hjの上限値は例えば0.35以下に設定しておくとよい。なお、領域の高さは、対象となる領域の上下方向における最大寸法(外接平行線間距離)として定義できる。
なお、図42の右に示すように、胴体以下の部分の下部の途切れがより多く許容される場合(例えば上半身のみでよい場合)には、この下限値はさらに引き下げられるが、顔領域FIの高さは全体寸法の少なくとも0.4以下となっていることが、少なくとも人物P1の上半身の画像を確保する上で望ましい。他方、玄関カメラ20に人物P1が接近しすぎると、図43に示すように、hf/hjの値は1に近づいてゆくこととなる。
寸法情報は、領域の高さだけでなく、図41に示すように、領域の面積(Sf,Sj:領域の画素数により直接特定可能である)や、同面積の円の直径などを用いることも可能である。なお、顔領域が認識されることを前提に、人物画像の全体寸法を反映した全体寸法反映情報(例えば、人物画像の縦横比など)により判定を行うこともできる。
図36のVS10においては、上記のhf/hjの値の解析を画像解析メモリ上で行い、VS11では、hf/hjの値が予め設定されている上記の上限値よりも小さいか否かに基づいて、画像の適合判定を行う。上限値よりも小さければ適合判定となり、VS12に進んで前回の仮保存画像があるか否かを確認する。最初の撮影では仮保存画像がないのでVS13に進み、今回適合判定された画像を仮保存メモリに仮保存するとともに、S17で保存期限タイマーを起動してVS2に戻る。この保存期限は、例えば高齢者が玄関扉を開けて出てゆくまでの時間が、靴を履いたりする時間を含めて30秒〜60秒であると見込んだ場合、例えばその倍である60秒以上120秒以下の範囲内で設定しておくとよい。
ここから先は、VS2では、仮保存画像が必ず記憶されている状態となるので、VS3に進み、保存期限がタイムアップしているか否かを確認する。タイムアップしていればVS4に進み、仮保存画像を消去してタイマーをリセットするが、1枚目の適合画像が仮保存された直後はタイムアップしていないので、VS4をスキップしてVS6に進み、次の画像撮影となる。
画像の撮影間隔は、画像撮影ステップに戻ってくるまでのプログラム実行長で決めてもよいし、その実行長よりも長い撮影インターバルをタイマーにより制御してもよい。静止画として最適なサイズおよびhf/hj比を有する人物画像を確実に得ることができ、かつ実施の形態1で言及した汎用マイコンでの画像処理負荷内に収まるようにするには、撮影インターバルは0.1以上0.5秒以下の範囲で設定するのがよい。
そして、以降の処理の繰り返しにおいてVS6で顔検出処理を継続する。VS7で顔領域が検出されない撮影画像は採用されずVS6に戻り、顔領域が認識された画像が新たに取得されるまで撮影が繰り返される。そして、顔領域が認識されればVS8〜VS10に至る画像解析処理が繰り返され、VS11で前述の適合判定がなされる。適合していなければVS2に戻って以下の処理が再度繰り返される。
他方、適合していればVS12に進み、前回の仮保存画像があるかどうかを確認する。今回の場合、仮保存画像があるので、人物画像領域が前回よりも大きくなっているか否かを確認する。そして、その人物画像領域のサイズ比較も含め、VS15では、画像の適合性が前回よりも向上しているか否かを確認する。図45に示すように、人物P1が玄関扉に向けて接近を継続していれば、顔領域FIのサイズは増加する(図37:G2→G3→G4)。しかし、ある位置を超えると顔領域がさらに拡大されるが、胴体以下の部分は視野の下方にはみ出て途切れはじめ、以降は距離が詰まるほど胴体以下の部分の特徴情報が多く失われてゆくことになる(図42右、人物位置は図37のG5)。最適の人物画像としては、顔を含めたなるべく全身が視野内に入り、かつ、その全身画像の大きさができるだけ大きくなっていることが望ましい。
そこで、VS15の判定ステップでは、前回よりも人物画像全体のサイズ(例えばhj)が前回よりも増大し、かつ、hf/hj(全体寸法に対する顔領域の寸法比率)が前述の上限以下になっている場合に適合性向上と判定し、仮保存メモリ内の画像を今回取得された画像と置き換える形で更新する。また、別のアルゴリズムとして、hf/hjが前回よりも小さくなっているか、大きくなっていてもその変化幅が5%以内であるときに適合性向上と判定するようにしてもよい。他方、適合性が向上していなければVS16をスキップする。
以下は、VS17を経てVS2に戻り、同様の処理が繰り返される。図45に示すように、玄関扉(及び玄関カメラ)に接近する人物P1の画像撮影と判定が繰り返され、より適合性の高いものへと更新されてゆく流れとなる。しかし、玄関扉までの距離が一定以上(例えば図37のG5よりも扉寄り)に縮まってくると、hf/hjの数値が上限値を超え、さらには顔の一部が視野外となって、VS6での顔認識自体も不能になる結果、VS7からVS8に向かう流れが生じなくなり、仮保存されている適合画像の更新はなされなくなる。この場合、人物が後ずさりでもしない限り、再び顔領域が認識される流れには戻らず、VS7からVS6に戻るループが継続することになってしまう。そこで、顔領域が最初に認識されなくなるに伴いタイマーによる時間計測が開始される。例えば人物が外出せずに居住エリアに戻ったような場合は、再度の顔認識がなされないまま上記のループが継続され、やがて計測時間がタイムアップする(VS7→VS18に向かう流れ)。この場合は、VS18でループを脱出し、処理を終了する(この時、仮保存されている画像は消去ないし無効化される)。
他方、図38に示すように、人物P1がドアを開けて玄関エリアから退出した場合は、図36において、VS7からVS6に戻るループ途上のステップVS5で扉閉信号が検出される。この場合は、VS5からVS19に向かう流れでループを脱出し、その時点で仮保存メモリ内に保存されている適合画像にファイル名を付与し、画像取得の日時情報とともに画像メモリ23(図34)に転送してファイル保存することにより、画像データの記録を確定し、処理を終了する。
上記の処理が繰り返されることにより、玄関扉から人が退出するごとに退出直前の適合画像がファイル名(図44:IMJ1800146、IMJ1800147、・・・)を付与されつつ、画像メモリ23に図44に示すように順次記録されてゆく。図35は、その画像メモリ23の記憶状態の一例を示すものである。
例えば管理対象者が退出し、その後徘徊してしまったような場合、その後に別の人物が玄関から出て行っていなければ、この時点で画像メモリ23に最後に記録されている画像(最新の画像、図44:IMJ1800148)は、管理対象者が出て行ったときの姿をとらえた画像そのものということになる。同居人は、管理対象者が出て行って例えば数時間経過しても自宅に戻ってこない場合は徘徊へ移行したと判断し、図33の緊急スイッチ31を押す。すると、図46の処理フローに従い、上記最後の画像が静止画として在不在判定端末15からインターネット上にアップロードされる。
すなわち、在不在判定端末15側にて、VS40で緊急スイッチ31の押下が検出されると、図34のパケット通信モジュール60及び携帯電話基地局105を介した無線通信によりインターネット接続が確立される。そして、VS41では、その最後の画像を捜索対象者画像として、在宅管理サーバ101に対しアップロードする要求が送信される。在宅管理サーバ101側ではVH41でこれを受け、VH42で捜索対象者画像のデータ送信を要求する。
在不在判定端末15はVS42でこれを受け、VS43で画像データを送信する。在宅管理サーバ101はVH43でこれを受信し、アップロードが完了する。そして、在宅管理サーバ101では、VH44でこの画像データをインターネット経由で関係各所に配信することで、徘徊者の目撃情報収集等に有効活用することができる。
このとき、図34の在不在判定端末15のパケット通信モジュール60は、月間の通信容量上限値が契約時に装着されるSIMカードにより5MB以下(例えば1MB)に制限されている。しかし、送信される画像データが、画像サイズ1MB以下の静止画ファイル(例えば、ファイルサイズ10KB程度のJPEG画像ファイル)であれば、このように制限された通信容量であっても問題なくアップロードが可能である。ただし、送信する画像ファイルのサイズは1パケット(128バイト)には収まらないので、図47に示すように、パケットのヘッダ300において、パケット分割を制御するフラグの中央のビットは「0」(分割許可)に設定しておく。そして、画像ファイルがパケット分割により送信される場合、最後のパケットのみ最終ビットが「0」(後続分割パケットなし)に設定され、それに先立つパケットについては該最終ビットが「1」(後続分割パケットあり)に設定される。
なお、管理対象者が退出したあと、別の人物が玄関から出て行き、先に出て行った管理対象者が徘徊してしまった場合、例えば図44において、最後の画像が、別の人物が撮影された中央のファイル(IMJ1800147)であり、捜索対象となる管理対象者の画像が、その一枚前の右のファイル(IMJ1800146)といったようなことも起こりうる。この場合は、画像メモリ23を在不在判定端末15から取り外して別のPC等に装着し、保存されている画像を閲覧して適切な画像を選択し、アップロードするような使い方が可能である(例えば、画像メモリ23内の時系列的には後の捜査対象者でない人物画像のファイルをPC上で削除して、その後、画像メモリ23を在不在判定端末15に再装着する)。また、在不在判定端末15にモニタや入力部を設けておけば、在不在判定端末15上にてアップロード画像の選択を行うこともできる。
また、画像のアップロードをパケット通信モジュール60経由ではなく、通信容量制限のない通信ブロック30経由にて実施可能な場合は、図48に示すように、繰り返し撮影される画像を、一定期間分FIFOメモリに全て保存しておき、扉閉検知があった時点で、FIFOメモリ内にて所定時間前から撮影・記録されてきた画像の中から、適当なものを選択してアップロードする方式を採用することも可能である。
なお、上記実施の形態2に記載した玄関カメラ20を使用する人物画像の撮影システムは、本発明の在宅管理システムの概念から独立して把握可能な、下記の人物撮影システムの発明概念を含むものである。すなわち、
玄関扉を有する玄関エリアと、該玄関エリアに続く居住エリアを有する住居に設けられ、玄関扉を経て前記玄関エリアから住居外に退出する人物の、玄関エリア内での画像を撮影するシステムであって、
住居エリアから前記玄関エリア内に進入する人物を撮影する玄関カメラと、
玄関カメラが撮影する人物画像を記録する人物画像記録手段と、
玄関カメラが撮影する前記人物画像において顔領域を認識する顔画像認識手段と、
人物画像中に前記顔領域が認識されることを条件に、人物画像を適合画像として人物画像記録手段に記録させる画像記録制御手段と、
人物画像記録手段に記録された前記人物画像のデータを外部に出力する画像データ出力手段と、を備えたことを特徴とする人物撮影システム。
人物撮影システムの機能は、例えば図34において、ドップラーセンサモジュール13及びそれを用いた在不在判定の機能実現部を省略しても成立しうる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、あくまで例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。