JP2019066323A - 標識抗体、その製造方法及び免疫学的測定法 - Google Patents
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Abstract
Description
樹脂粒子に金属粒子が固定化された構造を有する樹脂複合体粒子と抗体を化学結合させる前に、前記金属粒子に金属への吸着基を有する化合物を吸着させる工程を含むことを特徴とする。
前記樹脂粒子外に露出した部位を有する第1の粒子と、
全体が前記樹脂粒子に内包されている第2の粒子と、
を含んでいてもよく、
前記第1の粒子及び前記第2の粒子のうち、少なくとも一部の粒子が、前記樹脂粒子の表層部において三次元的に分布しているものであってもよい。
[標識抗体の製造]
本実施の形態の標識抗体の製造方法は、樹脂複合体粒子で標識された抗体を製造するものである。ここで、「抗体」としては、特に制限はなく、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、遺伝子組み換えにより得られた抗体のほか、抗原と結合能を有する抗体断片[例えば、H鎖、L鎖、Fab、F(ab’)2等]などを用いることができる。また、免疫グロブリンとして、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDのいずれでもよい。抗体の産生動物種としては、ヒトをはじめ、ヒト以外の動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等)でもよい。抗体の具体例としては、抗PSA抗体、抗AFP抗体、抗CEA抗体、抗アデノウイルス抗体、抗インフルエンザウィルス抗体、抗HCV抗体、抗IgG抗体、抗ヒトIgE抗体等が挙げられる。
工程A)樹脂複合体粒子と抗体を化学結合させる前に、前記樹脂複合体粒子の金属粒子に金属への吸着基を有する化合物(以下、「金属吸着性化合物」と記すことがある)を吸着させる工程、を含む。
工程Aにより、樹脂複合体粒子と抗体を化学結合させる前に、前記樹脂複合体粒子の金属粒子に金属吸着性化合物を化学的な相互作用により吸着させることができる。これにより、樹脂複合体粒子と抗体を安定的かつ選択的に化学結合させることができる。その結果、得られた標識抗体は、高感度な免疫学的測定が可能であり、かつ、長期にわたり高い感度を保つことができる。より具体的には、金属吸着性化合物は、樹脂複合体粒子における金属粒子の表面に吸着し、金属粒子の露出表面を被覆することで、抗体が金属粒子へ物理吸着すること妨げるブロック作用を奏する。そうすることで、ほとんどの抗体を樹脂複合体粒子における樹脂粒子の表面に化学結合させることが可能になり、長期の保存期間中でも検出感度を安定化させることができる。特に、金属粒子に白金を使用した白金-樹脂複合体粒子においては、金属粒子の表面に抗体を物理吸着させた場合に抗体が脱離しやすい傾向があるため、金属吸着性化合物を使用して、大部分の抗体を、金属粒子への物理吸着でなく樹脂粒子への化学結合によって固定化することにより、保存安定性を大きく改善することできる。
ここで、「金属への吸着基」とは、金属に対して、例えば配位結合、イオン結合、共有結合など化学的な相互作用によって結合しうる官能基のことである。好ましくは、強い相互作用を示すという点から、シアノ基、チオール基等があげられる。より好ましくは、チオール基である。このような化合物としては、例えば、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノール、プロパンチオール、アミノエタンチオールがあげられる。
また、前記金属吸着性化合物は、アミノ基を有さないことが好ましい。アミノ基を有さないことが好ましい理由は、後述する工程Bにおいて、スクシンイミジル化を阻害しないため、樹脂複合体粒子と抗体とが安定的な化学結合を形成できるためである。
従って、金属吸着性化合物としては、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノール、プロパンチオールがさらに好ましい。
金属吸着性化合物の使用量は、樹脂複合体粒子に含まれる金属の物質量(モル数)に対して、過剰の物質量であることが好ましい。
混合条件は特に限定しないが、例えば室温における転倒混和があげられる。転倒混和の代わりに、例えば、振とう、超音波分散、マグネチックスターラーによる撹拌などの公知の方法を用いてもよい。
また、混合後、遠心分離等の固液分離手段により、未吸着の金属吸着性化合物を取り除く。
以上のように、金属吸着性化合物を吸着させた樹脂複合体粒子(以下「前処理をした樹脂複合体粒子」という。)を得る。
工程B)前記前処理をした樹脂複合体粒子と抗体を化学結合させる工程
を行う。
ここで、工程Bは、活性化工程、結合工程、ブロック工程、洗浄処理工程、保存処理工程で構成される。以下各工程について説明する。
活性化工程とは、前処理をした樹脂複合体粒子と抗体との結合を促進するために、前処理をした樹脂複合体粒子の表面にスクシンイミジル基を形成する工程である。
前処理をした樹脂複合体粒子の樹脂表面にスクシンイミジル基を形成する方法としては、公知の方法を用いることができるが、例えば、前処理をした樹脂複合体粒子分散液をMES緩衝液等のアミノ基を有さない緩衝液に溶液置換した後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウムを添加することがあげられる。
結合工程とは、スクシンイミジル基を形成した樹脂複合体粒子を抗体と結合させる工程である。
この工程は、公知の方法を用いることができるが、例えば、MES緩衝液等のアミノ基を有さない緩衝液に溶液置換することで過剰の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウムを除去した後、抗体を添加し、工程Aと同様の公知の方法で混合し、抗体と結合した樹脂複合体粒子(以下「標識抗体」という。)を得る。さらに、過剰の抗体を遠心分離により除去し、エタノールアミンなどのアミノ基を有する化合物を含むMES緩衝液を加えることにより、樹脂複合体粒子表面に残留した未反応のスクシンイミジル基を失活させる。
ブロック工程とは、標識抗体の非特異吸着を防止する為、ブロッキング剤でブロックする工程である。この工程は、公知の方法を用いることができるが、例えば、結合工程の最後に添加したアミノ基を有する化合物を含むMES緩衝液を、ブロッキング剤を含むTris水溶液に溶液置換し、工程Aと同様の公知の方法で混合を行うことによりブロッキング処理を行う。ブロッキング剤としては、例えば牛血清アルブミン、卵白アルブミン、カゼイン、カゼインナトリウム、ゼラチンなどを挙げることができる。ここで、前記Tris水溶液の代わりに、公知の緩衝液を用いてもよい。
洗浄処理工程とは、前記標識抗体の分散液中に残存する、抗体、ブロッキング剤等を、除去する工程である。この工程は、公知の方法を用いることができるが、例えば、遠心分離等の固液分離手段により界面活性剤と安定剤を含むTris水溶液に溶媒置換する。界面活性剤としては、公知の非イオン性界面活性剤を用いることができる。安定剤としては、特に限定されるものではないが、例えば牛血清アルブミン、卵白アルブミン、カゼイン、ゼラチンなどの蛋白質を用いることができる。また、前記Tris水溶液の代わりに、公知の緩衝液を用いてもよい。標識抗体の洗浄処理は、必要に応じて複数回を繰り返し行うことができる。
保存処理工程とは、前記標識抗体の分散液を、標識抗体の保存、並びに、イムノクロマト法による評価に適した保存用緩衝液に溶媒置換する工程である。この工程は、公知の方法を用いることができるが、例えば、遠心分離等の固液分離手段により、界面活性剤、安定剤および、凝集防止剤を含むTris水溶液に溶媒置換する。界面活性剤としては、公知の非イオン性界面活性剤を用いることができる。安定剤としては、特に限定されるものではないが、例えば牛血清アルブミン、卵白アルブミン、カゼイン、ゼラチンなどの蛋白質を用いることができる。凝集防止剤としては、例えば、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロースに代表される糖類や、グリセリン、ポリビニルアルコールに代表される多価アルコールなどを用いることができる。また、前記Tris水溶液の代わりに、公知の緩衝液を用いてもよい。
以上のようにして標識抗体を製造することができる。本実施の形態の標識抗体は、従来の標識抗体と同様に、各種の免疫学的測定に利用できる。例えば、アナライトを含む試料と標識抗体とを混合し、反応させ、それによって生じる発色を、肉眼的に、あるいは分析機器を用いて測定することによって免疫学的測定が可能になる。従って、本実施の形態の標識抗体は、フロースルー式測定、ラテラルフロー式測定(イムノクロマトグラフィー)等の免疫学的測定において、標識抗体として好ましく使用することができる。
次に、本実施の形態の標識抗体の製造方法において標識として使用される樹脂複合体粒子について詳細に説明する。
樹脂複合体粒子は、樹脂粒子に金属粒子が固定化された構造を有する。また、樹脂複合体粒子には、さらに有機色素が固定化されていてもよい。前記有機色素又は金属粒子の構造は限定しないが、樹脂粒子に固定化されることで、樹脂複合体粒子が着色されるものであれば、イムノクロマトグラフィー等の免疫学的測定用途として、目視判定が容易になるので好ましい。
図1は、本実施の形態において標識として好ましく使用可能な、樹脂粒子に複数の金属粒子が固定化された構造を有する樹脂複合体粒子(以下、「金属−樹脂複合体」という。)の断面模式図である。金属−樹脂複合体100は、樹脂粒子10と、金属粒子20と、を備えている。
一方、金属イオンを吸着することが可能な置換基を構造に有する含窒素ポリマー以外の樹脂粒子、例えばポリスチレン等の場合、前記金属イオンを樹脂内部に吸着しにくい。その結果、生成した金属粒子20の大部分は、表面吸着金属粒子50となる。上記のとおり、表面吸着金属粒子50は、樹脂粒子10との接触面積が小さいため、樹脂と金属の接着力が小さく、樹脂粒子10から金属粒子20が脱離する影響が大きい傾向にある。
上記含窒素ポリマーは、主鎖または側鎖に窒素原子を有する樹脂であり、例えば、ポリアミン、ポリアミド、ポリペプチド、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリイミド、ポリイミダゾール、ポリオキサゾール、ポリピロール、ポリアニリン等がある。好ましくは、ポリ−2−ビニルピリジン、ポリ−3−ビニルピリジン、ポリ−4−ビニルピリジン等のポリアミンである。また、側鎖に窒素原子を有する場合は、例えば、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等幅広く利用することが可能である。
また、金属イオンを含有する溶液の溶媒として、水の代わりに、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等の含水アルコール又はアルコール、塩酸、硫酸、硝酸等の酸等を用いても良い。
また、前記溶液に、必要に応じて、例えば、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子化合物、界面活性剤、アルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、これらのモノアルキルエーテル又はジアルキルエーテル、グリセリン等のポリオール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の各種水混和性有機溶媒等の添加剤を添加してもよい。このような添加剤は、金属イオンの還元反応速度を促進し、また生成される金属粒子20の大きさを制御するのに有効となる。
さらに還元剤溶液の温度により、金属イオンの還元速度を調整することで、形成する金属粒子の粒径をコントロールすることが出来る。
前記有機色素を樹脂粒子に固定化させる方法としては、例えば、樹脂粒子を合成した後に、有機色素を吸着させる方法、有機色素を分散又は溶解させたモノマー溶液を重合する方法が挙げられる。
有機色素を用いる場合、樹脂粒子は公知の樹脂を用いることができる。例えば、セルロース、上記含窒素ポリマー、ポリスチレン、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−イタコン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。これらの樹脂は、架橋構造を形成するために、更に公知のビニル系モノマーを共重合させたものであっても良い。
金属−樹脂複合体粒子の吸光度は、石英ガラス製セル(光路長10mm)に0.01wt%に調製した金属−樹脂複合体粒子分散液(分散媒:水)を入れ、分光光度計(島津製作所社製、UV3600)を用いて、金−樹脂複合体の場合570nm、白金−樹脂複合体の場合400nmの吸光度を測定した。
磁製るつぼに濃度調整前の分散液1gを入れ、70℃、3時間乾燥を行った。乾燥前後の重量を測定し、下記式により固形分濃度を算出した。
金属担持量(wt%)=[熱処理後の重量(g)/熱処理前の重量(g)]×100
ディスク遠心式粒度分布測定装置(CPS Disc Centrifuge DC24000 UHR、CPS instruments, Inc.社製)を用いて測定した。測定は、金属−樹脂複合体粒子を水に分散させた状態で行った。
金属−樹脂複合体粒子分散液をカーボン支持膜付き金属性メッシュへ滴下して作成した基板を、電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM;日立ハイテクノロジーズ社製、SU−9000)により観測した画像から、任意の100個の金属粒子の面積平均径を測定した。
<樹脂粒子の合成>
トリオクチルアンモニウムクロリド(0.91g)及びポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(10.00g)を300gの純水に溶解した後、2−ビニルピリジン(48.00g)及びジビニルベンゼン(2.00g)を加え、窒素気流下において30℃で50分、次いで60℃で30分間撹拌した。撹拌後、18.00gの純水に溶解した2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.250g)を滴下し、60℃で3.5時間撹拌することで、平均粒子径371nmの樹脂粒子A−1を得た。遠心分離(9000rpm、40分)により沈殿させ、上澄みを除去した後、純水に再度分散させた後、透析処理により不純物を除去した。その後、濃度調整を行い10wt%の樹脂粒子分散液B−1を得た。
<樹脂粒子の合成>
トリオクチルアンモニウムクロリドを0.39g使用し、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩を0.50g使用した他は、作製例1と同様の方法で、平均粒子径439nmの樹脂粒子A−2及び10wt%の樹脂粒子分散液B−2を得た。
<白金−樹脂複合体粒子の合成>
B−1(91.5g)に純水54gを加えた後、400mM塩化白金酸水溶液(100g)を加え、30℃で3時間撹拌した。この混合液を24時間静置した後、遠心分離により上澄みを除去することで余分な塩化白金酸を除去した。その後、濃度を調整して、5wt%の白金イオン吸着樹脂粒子分散液C−1を得た。
白金−樹脂複合体粒子分散液E−1の濃度を0.1wt%に調整した後、その1mLを、遠心分離を用いて50mMのMES緩衝液(pH6)に溶液置換した後、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウムを添加することにより、複合体粒子表面を活性化処理した。
遠心分離を用いて50mMのMES緩衝液(pH6)に溶液置換することで過剰の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびN-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウムを除去した後、抗インフルエンザA型モノクローナル抗体100μgを添加し、室温で2時間かけて転倒撹拌を行うことにより、白金−樹脂複合体粒子F−1に抗インフルエンザA型モノクローナル抗体を結合させた。その後、過剰の抗体を遠心分離により除去し、100mMのエタノールアミンを含む50mMのMES緩衝液を加えることにより、白金−樹脂複合体粒子F−1表面に残留した活性化部位を失活させた。
次に、遠心分離により上澄みを除去した後、1wt%カゼインナトリウムを含む5mMのTris水溶液(pH8.5)に溶液置換し、室温で2時間かけて転倒撹拌を行うことによりブロッキング処理を行った。
次に、遠心分離により上澄みを除去した後、0.1wt%以下の界面活性剤と牛血清アルブミンを含む5mMのTris水溶液(pH8.5)に溶媒置換した。この操作を3回繰り返し、洗浄処理とした。
次に、遠心分離により上澄みを除去した後、0.1wt%以下の界面活性剤と牛血清アルブミンおよび、10wt%のスクロースを含む5mMのTris水溶液(pH8.5)1mLを添加し、10〜20秒間かけて超音波分散処理を行うことによって、標識抗体分散液H−1を得た。
96ウェルプレートの1行分の12ウェルに、標識抗体分散液H−1を3μlずつ入れ、インフルエンザA型陽性コントロール(APC)の2倍希釈列(×1、×2、×4、×8、×16、×32、×64、×128、×256、×512、×1024)及び陰性コントロールを、それぞれ100μl混和した。ここで、インフルエンザA型陽性コントロール(APC)はインフルエンザA型ウィルス不活化抗原(アドテック株式会社製)を、検体処理液(アドテック株式会社製)を用いて100倍希釈してAPC×1を調製した。APC×1の抗原濃度は、5000FFU/mlに相当する。陰性コントロールは検体処理液(アドテック株式会社製)である。
次に、インフルエンザA型評価用モノクロスクリーン(アドテック株式会社製)の1行12穴のサンプル注入口に、この混和した分散液を50μl添加し、5分後、10分後、15分後のテストラインの発色レベルを評価した。15分後の発色レベルが0.5以上のものを「良好」と判定した。発色レベルは、金コロイド判定用色見本(アドテック株式会社製)を用いて判定した。
標識抗体分散液H−1のイムノクロマト評価結果を下表に示した。
標識抗体分散液H−1を室温で4か月保存した後、比較例1のイムノクロマト法による評価と同様に、評価をおこなった。4か月保存した標識抗体分散液H−1は、1倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5未満となり、良好な発色を示さないことが確認された。
<白金−樹脂複合体粒子の合成>
B−1の代わりにB−2を用いる以外は、比較例1と同様にして、5wt%の白金イオン吸着樹脂粒子分散液C−2、白金−樹脂複合体粒子D−2、1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液E−2及び白金−樹脂複合体粒子F−2を作製した。
E−2(0.1g)と10mMのメルカプトプロピオン酸水溶液(1.0g)を混合し、23℃で1時間撹拌した。遠心分離により上澄みを除去した後、純水(1.0g)を加えて再分散することで余分なメルカプトプロピオン酸を除去することにより、メルカプトプロピオン酸処理した白金−樹脂複合体粒子分散液G−2を作製した。
0.1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液E−1の代わりに、0.1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液G−2を用いたほかは、比較例1と同様の方法で標識抗体分散液H−2を作製し、イムノクロマト法による評価をおこなった。
その結果、標識抗体分散液H−2は、64倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
また、室温で4か月保存した標識抗体分散液H−2は、64倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
<金−樹脂複合体粒子の合成>
B−2(91.5g)に純水255gを加えた後、400mM塩化金酸水溶液(147g)を加え、室温で3時間撹拌した。この混合液を遠心分離により上澄みを除去することで余分な塩化金酸を除去した。その後、濃度を調整して、2.5wt%の金イオン吸着樹脂粒子分散液C−3を得た。
E−2の代わりにE−3を用いる以外は、実施例1と同様にして、メルカプトプロピオン酸処理した金−樹脂複合体粒子分散液G−3を作製した。
0.1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液E−1の代わりに、0.1wt%の金−樹脂複合体粒子分散液G−3を用いたほかは、比較例1と同様の方法で標識抗体分散液H−3を作製し、イムノクロマト法による評価をおこなった。
その結果、標識抗体分散液H−3は、256倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
また、室温で4か月保存した標識抗体分散液H−3は、256倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
<アミノエタンチオール処理>
E−1(0.1g)と10mMのアミノエタンチオール水溶液(1.0g)を混合し、23℃で1時間撹拌した。遠心分離により上澄みを除去した後、純水(1.0g)を加えることで余分なアミノエタンチオールを除去することにより、アミノエタンチオール処理した白金−樹脂複合体粒子分散液G−4を作製した。
0.1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液E−1の代わりに、0.1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液G−4を用いたほかは、比較例1と同様の方法で標識抗体分散液H−4を作製し、イムノクロマト法による評価をおこなった。
その結果、標識抗体分散液H−4は、512倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
また、室温で4か月保存した標識抗体分散液H−4は、16倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
<メルカプトエタノール処理>
10mMのアミノエタンチオール水溶液の代わりに10mMのメルカプトエタノール水溶液を使用したほかは、実施例3と同様の方法で、メルカプトエタノール処理した白金−樹脂複合体粒子分散液G−5を作製した。
0.1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液E−1の代わりに、0.1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液G−5を用いたほかは、比較例1と同様の方法で標識抗体分散液H−5を作製し、イムノクロマト法による評価をおこなった。
その結果、標識抗体分散液H−5は、64倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
また、室温で4か月保存した標識抗体分散液H−5は、64倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
<プロパンチオール処理>
10mMのアミノエタンチオール水溶液の代わりに10mMのプロパンチオール水溶液を使用したほかは、実施例3と同様の方法で、プロパンチオール処理した白金−樹脂複合体粒子分散液G−6を作製した。
0.1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液E−1の代わりに、0.1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液G−6を用いたほかは、比較例1と同様の方法で標識抗体分散液H−6を作製し、イムノクロマト法による評価をおこなった。
その結果、標識抗体分散液H−6は、128倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
また、室温で4か月保存した標識抗体分散液H−6は、128倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
<ポリグルタミン酸処理>
10mMのメルカプトプロピオン酸水溶液の代わりに0.5wt%のポリグルタミン酸水溶液を使用したほかは、実施例1と同様の方法で、ポリグルタミン酸処理した白金−樹脂複合体粒子分散液G−7を作製した。
0.1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液E−1の代わりに、0.1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液G−7を用いたほかは、比較例1と同様の方法で標識抗体分散液H−7を作製し、イムノクロマト法による評価をおこなった。
その結果、標識抗体分散液H−7は、64倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
また、室温で4か月保存した標識抗体分散液H−7は、1倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5未満となり、良好な発色を示さないことが確認された。
<エタノールアミン処理>
10mMのアミノエタンチオール水溶液の代わりに10mMのエタノールアミン水溶液を使用したほかは、実施例3と同様の方法で、エタノールアミン処理した白金−樹脂複合体粒子分散液G−8を作製した。
0.1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液E−1の代わりに、0.1wt%の白金−樹脂複合体粒子分散液G−8を用いたほかは、比較例1と同様の方法で標識抗体分散液H−8を作製し、イムノクロマト法による評価をおこなった。
その結果、標識抗体分散液H−8は、256倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5以上となり、良好な発色を示すことが確認された。
また、室温で4か月保存した標識抗体分散液H−8は、1倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5未満となり、良好な発色を示さないことが確認された。
比較例1の(結合工程)と(ブロック工程)の間に、以下の手順で抗体結合後のメルカプトプロピオン酸処理を行ったほかは、比較例1と同様の方法で標識抗体分散液H−9を作製し、イムノクロマト法による評価をおこなった。
比較例1の結合工程まで行った白金−樹脂複合体粒子F−1の分散液を、遠心分離により上澄み除去した後、10mMのメルカプトプロピオン酸水溶液(1.0g)を混合し、23℃で1時間撹拌した。遠心分離により上澄みを除去した後、50mMのMES緩衝液(pH6、1.0g)を加えて再分散することで余分なメルカプトプロピオン酸を除去した。
また、室温で4か月保存した標識抗体分散液H−9は、1倍希釈の抗原に対して、15分後の発色レベルが0.5未満となり、良好な発色を示さないことが確認された。
Claims (12)
- 標識された抗体を製造する標識抗体の製造方法であって、
樹脂粒子に金属粒子が固定化された構造を有する樹脂複合体粒子と抗体を化学結合させる前に、前記金属粒子に金属への吸着基を有する化合物を吸着させる工程を含むことを特徴とする、標識抗体の製造方法。 - 前記金属への吸着基が、シアノ基又はチオール基である請求項1に記載の標識抗体の製造方法。
- 前記金属への吸着基を有する化合物が、アミノ基を有さない化合物である請求項1又は2に記載の標識抗体の製造方法。
- 前記金属粒子が、銀、ニッケル、銅、金、白金、パラジウム又はそれらのうちのいずれかを含む合金である、請求項1から3のいずれか1項に記載の標識抗体の製造方法。
- 前記樹脂複合体粒子における前記金属粒子は、
前記樹脂粒子外に露出した部位を有する第1の粒子と、
全体が前記樹脂粒子に内包されている第2の粒子と、
を含んでおり、
前記第1の粒子及び前記第2の粒子のうち、少なくとも一部の粒子が、前記樹脂粒子の表層部において三次元的に分布しているものである、請求項1から4のいずれか1項に記載の標識抗体の製造方法。 - 前記樹脂粒子が、金属イオンを吸着することが可能な置換基を構造に有するポリマー粒子である、請求項1から5のいずれか1項に記載の標識抗体の製造方法。
- 前記金属粒子の平均粒子径が1〜80nmの範囲内である、請求項1から6のいずれか1項に記載の標識抗体の製造方法。
- 前記樹脂複合体粒子の平均粒子径が100〜1000nmの範囲内である、請求項1から7のいずれか1項に記載の標識抗体の製造方法。
- 前記抗体が、抗インフルエンザウィルス抗体である、請求項1から8のいずれか1項に記載の標識抗体の製造方法。
- 請求項1から9のいずれか1項に記載の標識抗体の製造方法によって製造された標識抗体。
- 樹脂粒子に金属粒子が固定化された構造を有する樹脂複合体粒子と、前記樹脂複合体粒子に化学結合している抗体と、を含有する標識抗体であって、
前記金属粒子の表面が、金属への吸着基を有する化合物によって被覆されていることを特徴とする標識抗体。 - 請求項10又は11に記載の標識抗体を用いることを特徴とする、免疫学的測定法。
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