JP2019066044A - 摺動部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】摺動部材の製造における作業効率および加工コストを改善できるとともに、摺動部材の使用中に、潤滑部材が摺動部材の基体から抜け落ちるおそれが低減された、摺動部材を提供する。【解決手段】摺動面を有する摺動部材であって、金属粉を含む成形体の焼結体である基体と、熱可塑性樹脂とカーボン材料とを含む樹脂組成物の成形体である、潤滑部材とを含み、前記基体は、前記潤滑部材を収容するための収容部を有し、前記摺動面の少なくとも一部は、前記収容部に収容された前記潤滑部材で構成され、かつ、前記基体の内径両小口にも、前記潤滑部材が配置されている、摺動部材が提供される。【選択図】図1
Description
本発明は、摺動面を有する摺動部材に関する。
固体潤滑剤が埋め込まれた摺動部材に求められる機能は、年々厳しさを増している。そのため、優れた摺動性を長期間維持でき、かつ、低コストで製造が可能な固体潤滑剤の開発が求められている。
固体潤滑剤が埋め込まれた摺動部材としては、例えば特許文献1において、円筒状の基体に半径方向の貫通孔を形成し、当該貫通孔に固体潤滑剤として、人造黒鉛を主成分とした焼成体を埋め込んだ摺動部材が提案されている。
しかしながら、基体に半径方向の貫通孔を形成し、当該貫通孔に固体潤滑剤を埋め込むためには、固体潤滑剤を基体に対して高精度に固定する必要があり、また、基体の貫通孔や、これに嵌合する固体潤滑剤を高精度に加工する必要があるため、作業効率および加工コストの観点から改善の余地がある。特に、固体潤滑剤として炭素系焼成体(焼成された人造黒鉛)を用いた場合、炭素系焼成体は塑性変形しにくいため、寸法精度を高めるためには切削加工等による成形が必要となり、加工コストがさらに増加するという懸念がある。加えて、貫通孔に固体潤滑剤を埋め込む構造では、摺動部材の使用中に、固体潤滑剤が摺動部材の基体から抜け落ちるという懸念がある。また、より優れた潤滑性能/摺動特性を有する摺動部材が求められている。
そこで本発明は、優れた潤滑性能/摺動特性を有する摺動部材の提供を第一の目的とする。
また、本発明は、摺動部材の製造における作業効率および加工コストを改善できる摺動部材の提供を第二の目的とする。
また、本発明は、摺動部材の製造における作業効率および加工コストを改善できるとともに、摺動部材の使用中に、潤滑部材(固体潤滑剤)が摺動部材の基体から抜け落ちるおそれが低減された、摺動部材の提供を第三の目的とする。
また、本発明は、摺動部材の製造における作業効率および加工コストを改善できる摺動部材の提供を第二の目的とする。
また、本発明は、摺動部材の製造における作業効率および加工コストを改善できるとともに、摺動部材の使用中に、潤滑部材(固体潤滑剤)が摺動部材の基体から抜け落ちるおそれが低減された、摺動部材の提供を第三の目的とする。
本発明は、以下に示す摺動部材を提供する。
[1] 摺動面を有する摺動部材であって、金属粉を含む成形体の焼結体である基体と、熱可塑性樹脂とカーボン材料とを含む樹脂組成物の成形体である、潤滑部材とを含み、前記基体は、前記潤滑部材を収容するための収容部を有し、前記摺動面の少なくとも一部は、前記収容部に収容された前記潤滑部材で構成され、かつ、前記基体の内径小口にも、前記潤滑部材が配置されている、摺動部材。
[1] 摺動面を有する摺動部材であって、金属粉を含む成形体の焼結体である基体と、熱可塑性樹脂とカーボン材料とを含む樹脂組成物の成形体である、潤滑部材とを含み、前記基体は、前記潤滑部材を収容するための収容部を有し、前記摺動面の少なくとも一部は、前記収容部に収容された前記潤滑部材で構成され、かつ、前記基体の内径小口にも、前記潤滑部材が配置されている、摺動部材。
[2] 摺動面を有する摺動部材であって、Fe粉、Cu粉、Sn粉および黒鉛粉を含む成形体の焼結体である基体と、熱可塑性樹脂とカーボン材料とを含む樹脂組成物の成形体である、潤滑部材とを含み、前記基体は、前記潤滑部材を収容するための収容部を有し、前記摺動面の少なくとも一部は、前記収容部に収容された前記潤滑部材で構成され、かつ、前記基体の内径小口にも、前記潤滑部材が配置されている、摺動部材。
[3] 前記樹脂組成物における前記カーボン材料の含有率が、5質量%以上70質量%以下である、[1]または[2]に記載の摺動部材。
[4] 前記基体は内部空孔を有し、前記内部空孔内に潤滑油が含浸されている、[1]〜[3]のいずれかに記載の摺動部材。
[5] 前記基体は、10%以上50%以下の開放気孔率を有する、[4]に記載の摺動部材。
[6] 前記基体は、前記収容部の内表面において10%以上50%以下の表面開孔率を有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の摺動部材。
[7] 前記カーボン材料は、カーボンナノ繊維、カーボンブラックおよび黒鉛からなる群より選択される少なくとも1つである、[1]〜[6]のいずれかに記載の摺動部材。
本発明によれば、優れた潤滑性能/摺動特性を有する、摺動部材を提供することができる。また、本発明によれば、摺動部材の製造における作業効率および加工コストを改善できる、摺動部材を提供することができる。また、本発明によれば、摺動部材の製造における作業効率および加工コストを改善できるとともに、摺動部材の使用中に、潤滑部材(固体潤滑剤)が摺動部材の基体から抜け落ちるおそれが低減された、摺動部材を提供することができる。
図1を参照して、摺動部材1は円筒状を成し、その内周に相手材としての軸2(鎖線で示す)が挿入される。摺動部材1は、金属粉を含む成形体の焼結体である基体4を含む。当該基体4の内径(両)小口13には、熱可塑性樹脂とカーボン材料とを含む樹脂組成物の成形体である、潤滑部材(固体潤滑材)3が配置されている。
なお、本明細書において、「基体4の内径小口」とは、軸2と接触する基体4の内径部の片端近傍を意味する。具体的に説明すると、基体4と一体化されている潤滑部材3の片端は、ほぼ円筒状をした摺動部材1(軸受1)本体の側面において、外側に向けて延ばされて、例えばほぼ中空円板状/円環状の鍔状に形成されている。この中空円板状/円環状の鍔状をした形状に対応して、基体4の片端は、ほぼ円筒状をした摺動部材1(軸受1)本体の側面の内径側において、例えばほぼ円環状にへこまされた形状とされている。
また、本明細書において、「基体4の内径両小口」とは、軸2と接触する基体4の内径部の両端近傍を意味する。具体的に説明すると、基体4と一体化されている潤滑部材3の両端は、ほぼ円筒状をした摺動部材1(軸受1)本体の側面において、外側に向けて延ばされて、例えば一対のほぼ中空円板状/円環状の鍔状に形成されている。この一対の中空円板状/円環状の鍔状をした形状に対応して、基体4の両端は、ほぼ円筒状をした摺動部材1(軸受1)本体の側面の内径側において、例えば一対のほぼ円環状にへこまされた形状とされている。このような構造とすることで、基体4を射出金型内にインサートして樹脂組成物による射出成形を行い、摺動部材1(軸受1)を形成させる際に、潤滑部材3は、確実に基体4と一体化される。
「内径小口」または「内径両小口」について説明すると、「内径小口」または「内径両小口」の最小径は、基体4の最小径、及び/又は、潤滑部材3の最小径に等しい。また、「内径小口」または「内径両小口」の最大径は、潤滑部材3の最大径に等しい。
「基体4の内径小口」の径方向の寸法D1は、例えば基体4の内径寸法D0の0.1%〜10%であってもよい。「基体4の内径小口」の軸方向の寸法L1は、例えば基体4の軸方向長さ寸法L0の2.5%〜10%であってもよく、基体4の軸方向長さ寸法L0の3.5%〜7.5%であることが好ましく、基体4の軸方向長さ寸法L0の4%〜6%であることが特に好ましい。また、「基体4の内径両小口」の径方向の寸法D1は、例えば基体4の内径寸法D0の0.1%〜10%であってもよい。「基体4の内径両小口」の軸方向の寸法L1は、例えば基体4の軸方向長さ寸法L0の5%〜20%であってもよく、基体4の軸方向長さ寸法L0の7%〜15%であることが好ましく、基体4の軸方向長さ寸法L0の8%〜12%であることが特に好ましい。
上記の%が所定の値より小さい場合、内径(両)小口の寸法が小さくなり、潤滑部材3と基体4との確実な一体化が難くなる傾向にある。上記の%が所定の値より大きい場合、内径(両)小口の寸法が大きくなりすぎて、基体4の体積が減り、その結果、基体4を備える摺動部材1(軸受1)の例えば強度低下が懸念される。
摺動部材1の外周面12は、図示しないハウジングの内周面に圧入や接着等の手段で固定され、摺動部材1の内周に挿入された軸2が回転またはスライドできるように支持される。このように軸2を回転またはスライドさせる他、軸2を静止させ、摺動部材1を回転またはスライドさせることもできる。
なお、本明細書において、「基体4の内径小口」とは、軸2と接触する基体4の内径部の片端近傍を意味する。具体的に説明すると、基体4と一体化されている潤滑部材3の片端は、ほぼ円筒状をした摺動部材1(軸受1)本体の側面において、外側に向けて延ばされて、例えばほぼ中空円板状/円環状の鍔状に形成されている。この中空円板状/円環状の鍔状をした形状に対応して、基体4の片端は、ほぼ円筒状をした摺動部材1(軸受1)本体の側面の内径側において、例えばほぼ円環状にへこまされた形状とされている。
また、本明細書において、「基体4の内径両小口」とは、軸2と接触する基体4の内径部の両端近傍を意味する。具体的に説明すると、基体4と一体化されている潤滑部材3の両端は、ほぼ円筒状をした摺動部材1(軸受1)本体の側面において、外側に向けて延ばされて、例えば一対のほぼ中空円板状/円環状の鍔状に形成されている。この一対の中空円板状/円環状の鍔状をした形状に対応して、基体4の両端は、ほぼ円筒状をした摺動部材1(軸受1)本体の側面の内径側において、例えば一対のほぼ円環状にへこまされた形状とされている。このような構造とすることで、基体4を射出金型内にインサートして樹脂組成物による射出成形を行い、摺動部材1(軸受1)を形成させる際に、潤滑部材3は、確実に基体4と一体化される。
「内径小口」または「内径両小口」について説明すると、「内径小口」または「内径両小口」の最小径は、基体4の最小径、及び/又は、潤滑部材3の最小径に等しい。また、「内径小口」または「内径両小口」の最大径は、潤滑部材3の最大径に等しい。
「基体4の内径小口」の径方向の寸法D1は、例えば基体4の内径寸法D0の0.1%〜10%であってもよい。「基体4の内径小口」の軸方向の寸法L1は、例えば基体4の軸方向長さ寸法L0の2.5%〜10%であってもよく、基体4の軸方向長さ寸法L0の3.5%〜7.5%であることが好ましく、基体4の軸方向長さ寸法L0の4%〜6%であることが特に好ましい。また、「基体4の内径両小口」の径方向の寸法D1は、例えば基体4の内径寸法D0の0.1%〜10%であってもよい。「基体4の内径両小口」の軸方向の寸法L1は、例えば基体4の軸方向長さ寸法L0の5%〜20%であってもよく、基体4の軸方向長さ寸法L0の7%〜15%であることが好ましく、基体4の軸方向長さ寸法L0の8%〜12%であることが特に好ましい。
上記の%が所定の値より小さい場合、内径(両)小口の寸法が小さくなり、潤滑部材3と基体4との確実な一体化が難くなる傾向にある。上記の%が所定の値より大きい場合、内径(両)小口の寸法が大きくなりすぎて、基体4の体積が減り、その結果、基体4を備える摺動部材1(軸受1)の例えば強度低下が懸念される。
摺動部材1の外周面12は、図示しないハウジングの内周面に圧入や接着等の手段で固定され、摺動部材1の内周に挿入された軸2が回転またはスライドできるように支持される。このように軸2を回転またはスライドさせる他、軸2を静止させ、摺動部材1を回転またはスライドさせることもできる。
図2を参照して、摺動部材1は、摺動面11および金属粉を含む成形体の焼結体である基体4を含む。なお、本明細書において「金属」とは、炭素、窒素、酸素、硫黄、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素および希ガスを除いた周期表のあらゆる元素を意味する。摺動部材1は、熱可塑性樹脂とカーボン材料とを含む樹脂組成物の成形体である、潤滑部材3を含む。潤滑部材3は、当該樹脂組成物の射出成形体であることが好ましい。摺動面11は、潤滑部材3の内側面3aと基体4の内周面4aを含んでいる。また、潤滑部材3の内側面3aと基体4の内周面4aとは、ほぼ面一とされて、摺動面11(軸受面部11)が形成されている。
図3を参照して、基体4は、潤滑部材3を収容するための収容部4cを有している。収容部4cには、潤滑部材3が収容される。これにより、摺動面11の少なくとも一部が、収容部4cに収容された潤滑部材3で構成される。基体4は、凹円筒面状の合せ面4bを備える。当該合せ面4bは、潤滑部材3の外側面と密着する。
なお、図3においては、潤滑部材3の一対のほぼ中空円板状/円環状の鍔状をした両端をつなぐと共に内側面3aを構成する6つ(複数)のほぼ矩形平板状をした連成部が潤滑部材3に設けられ、6つ(複数)のほぼ矩形平板状をした連成部に対応して、基体4の内周側に6つ(複数)のほぼ矩形平溝状をした収容部4cが設けられる構成が例示されているが、潤滑部材3の一対のほぼ中空円板状/円環状の鍔状をした両端をつなぐ連成部、並びに、基体4の内周側における収容部4cの数はこれに限定されず、摺動面の少なくとも一部が潤滑部材3で構成されていればよい。例えば、基体4の内周側に複数のほぼ矩形平溝状をした収容部4cが設けられ、複数のほぼ矩形平溝状をした収容部4cに対応して、潤滑部材3の一対のほぼ中空円板状/円環状の鍔状をした両端をつなぐと共に内側面3aを構成する複数のほぼ矩形平板状をした連成部が潤滑部材3に設けられているとよい。
ここで、基体4のほぼ矩形平溝状をした収容部4cの深さ寸法D2について説明すると、基体4の最小径を基準として、基体4の最小径から基体4の径方向にほぼ沿って基体4の外周側に向けた収容溝深さの寸法を意味する。この深さ寸法D2は、潤滑部材3の一対のほぼ中空円板状/円環状の鍔状をした両端をつなぐと共に内側面3aを構成する複数のほぼ矩形平板状をした連成部の厚さ寸法にほぼ等しい。
基体4のほぼ矩形平溝状をした収容部4cの深さ寸法D2は、例えば基体4の内径寸法D0の0.1%〜10%とされ、0.1%〜5%とされることが好ましい。また、潤滑部材3のほぼ矩形平板状をした連成部の肉厚は、例えば潤滑部材3の内径寸法D0の0.1%〜10%とされ、0.1%〜5%とされることが好ましい。
基体4のほぼ矩形平溝状をした収容部4cの深さ寸法D2が上記所定の%値よりも小さく、且つ、潤滑部材3のほぼ矩形平板状をした連成部の肉厚が上記所定の%値よりも小さいと、収容部4cに配置/埋設される樹脂組成物の量が減り、その結果、潤滑特性/摺動特性の低下が懸念されると共に、潤滑部材3の径方向の最小肉厚寸法が減少し、潤滑部材3と基体4との確実な一体化が難くなる傾向にある。また、基体4のほぼ矩形平溝状をした収容部4cの深さ寸法D2が上記所定の%値よりも大きく、且つ、潤滑部材3のほぼ矩形平板状をした連成部の肉厚が上記所定の%値よりも大きいと、基体4の径方向の最小肉厚寸法が減少し、その結果、基体4を備える摺動部材1(軸受1)の例えば強度低下が懸念されると共に、潤滑部材3が必要以上に基体4のほぼ矩形平溝状をした収容部4cに充填され、その結果、樹脂組成物の無駄が増える。
また、さらに、基体4の内径両小口13には、潤滑部材3が配置されるとよい。上記構造をした潤滑部材3は、一つのものとして形成され、且つ、基体4と一体化されている。
このような構造とすることで、基体4を射出金型内にインサートして樹脂組成物による射出成形を行い、軸受1(摺動部材1)を形成させる際に、潤滑部材3は、確実に基体4と一体化される。これにより、軸受1(摺動部材1)の使用中に、潤滑部材3が軸受1(摺動部材1)の基体4から抜け落ちるおそれが低減された、軸受1(摺動部材1)が提供される。
なお、図3においては、潤滑部材3の一対のほぼ中空円板状/円環状の鍔状をした両端をつなぐと共に内側面3aを構成する6つ(複数)のほぼ矩形平板状をした連成部が潤滑部材3に設けられ、6つ(複数)のほぼ矩形平板状をした連成部に対応して、基体4の内周側に6つ(複数)のほぼ矩形平溝状をした収容部4cが設けられる構成が例示されているが、潤滑部材3の一対のほぼ中空円板状/円環状の鍔状をした両端をつなぐ連成部、並びに、基体4の内周側における収容部4cの数はこれに限定されず、摺動面の少なくとも一部が潤滑部材3で構成されていればよい。例えば、基体4の内周側に複数のほぼ矩形平溝状をした収容部4cが設けられ、複数のほぼ矩形平溝状をした収容部4cに対応して、潤滑部材3の一対のほぼ中空円板状/円環状の鍔状をした両端をつなぐと共に内側面3aを構成する複数のほぼ矩形平板状をした連成部が潤滑部材3に設けられているとよい。
ここで、基体4のほぼ矩形平溝状をした収容部4cの深さ寸法D2について説明すると、基体4の最小径を基準として、基体4の最小径から基体4の径方向にほぼ沿って基体4の外周側に向けた収容溝深さの寸法を意味する。この深さ寸法D2は、潤滑部材3の一対のほぼ中空円板状/円環状の鍔状をした両端をつなぐと共に内側面3aを構成する複数のほぼ矩形平板状をした連成部の厚さ寸法にほぼ等しい。
基体4のほぼ矩形平溝状をした収容部4cの深さ寸法D2は、例えば基体4の内径寸法D0の0.1%〜10%とされ、0.1%〜5%とされることが好ましい。また、潤滑部材3のほぼ矩形平板状をした連成部の肉厚は、例えば潤滑部材3の内径寸法D0の0.1%〜10%とされ、0.1%〜5%とされることが好ましい。
基体4のほぼ矩形平溝状をした収容部4cの深さ寸法D2が上記所定の%値よりも小さく、且つ、潤滑部材3のほぼ矩形平板状をした連成部の肉厚が上記所定の%値よりも小さいと、収容部4cに配置/埋設される樹脂組成物の量が減り、その結果、潤滑特性/摺動特性の低下が懸念されると共に、潤滑部材3の径方向の最小肉厚寸法が減少し、潤滑部材3と基体4との確実な一体化が難くなる傾向にある。また、基体4のほぼ矩形平溝状をした収容部4cの深さ寸法D2が上記所定の%値よりも大きく、且つ、潤滑部材3のほぼ矩形平板状をした連成部の肉厚が上記所定の%値よりも大きいと、基体4の径方向の最小肉厚寸法が減少し、その結果、基体4を備える摺動部材1(軸受1)の例えば強度低下が懸念されると共に、潤滑部材3が必要以上に基体4のほぼ矩形平溝状をした収容部4cに充填され、その結果、樹脂組成物の無駄が増える。
また、さらに、基体4の内径両小口13には、潤滑部材3が配置されるとよい。上記構造をした潤滑部材3は、一つのものとして形成され、且つ、基体4と一体化されている。
このような構造とすることで、基体4を射出金型内にインサートして樹脂組成物による射出成形を行い、軸受1(摺動部材1)を形成させる際に、潤滑部材3は、確実に基体4と一体化される。これにより、軸受1(摺動部材1)の使用中に、潤滑部材3が軸受1(摺動部材1)の基体4から抜け落ちるおそれが低減された、軸受1(摺動部材1)が提供される。
以下、本発明に係る摺動部材1として軸受1を一例に挙げ、図1〜図3を参照しながら説明する。
(1)基体4
図1を参照して、基体4は、軸受を製造する際に採用される通常の製造工程に従って、金属粉を含む成形体を焼結することにより得られた焼結体である。通常の製造工程とは、例えば金属粉を主成分(重量比で最も多い成分)とする原料粉を、成形型を用いて圧縮成形することにより金属粉成形体を得る工程と、当該金属粉成形体を、例えば750〜900℃程度の温度で加熱して焼結させ、焼結された金属粉成形体を得る工程と、当該焼結された金属粉成形体の寸法を矯正するためのサイジング工程等を含む。
図1を参照して、基体4は、軸受を製造する際に採用される通常の製造工程に従って、金属粉を含む成形体を焼結することにより得られた焼結体である。通常の製造工程とは、例えば金属粉を主成分(重量比で最も多い成分)とする原料粉を、成形型を用いて圧縮成形することにより金属粉成形体を得る工程と、当該金属粉成形体を、例えば750〜900℃程度の温度で加熱して焼結させ、焼結された金属粉成形体を得る工程と、当該焼結された金属粉成形体の寸法を矯正するためのサイジング工程等を含む。
基体4を製造するために用いられる金属粉としては、例えば、銅を主成分(重量比で最も多い成分)とする銅系、鉄を主成分(重量比で最も多い成分)とする鉄系、銅および鉄を主成分(重量比で最も多い成分)とする銅鉄系をはじめとする任意の種類の金属の金属粉を用いることができる。この他、アルミニウム−青銅系等の特殊な金属の金属粉を用いることもできる。
銅鉄系の金属粉を用いる場合には、鉄粉、銅粉、および低融点金属粉等の低融点元素を混合した金属粉等の元素を用いることができる。低融点金属等の低融点元素は、焼結時にそれ自体が溶融して液相焼結を進行させるための成分であり、銅よりも低融点の金属等の低融点元素が使用される。具体的には700℃以下の融点を有する金属等の元素、例えば錫(Sn)、亜鉛(Zn)、リン(P)等が使用可能であり、この中でも銅との相性の良い錫を用いるのが好ましい。低融点金属等の低融点元素は、混合粉中にその単体粉を添加する他、他の金属粉と合金化することで添加することもできる。
上記の金属粉の他に、必要に応じてフッ化カルシウム等の焼結助剤やステアリン酸亜鉛等の潤滑剤を添加し、さらに潤滑部材粉としての黒鉛粉を添加することもできる。黒鉛粉を添加することで、焼結後の基体4の焼結組織中に黒鉛粒子を分散させることができるので、軸受面部11(摺動面11)のうち基体4で形成される部分における潤滑性を高めることができる。ここでは具体的には、基体4を構成する金属(元素)粉は、例えばFe粉、Cu粉およびSn粉の混合粉末であってよく、本実施形態では、この混合粉末に、さらに黒鉛粉が混合される。
各粉末の配合割合は、全質量を基準に例えば、Cu粉:ほぼ10〜30質量%、具体的には10〜30質量%(好ましくはほぼ15〜20質量%、具体的には15〜20質量%)、Sn粉:ほぼ0.5〜3.0質量%、具体的には0.5〜3.0質量%(好ましくはほぼ1.5〜2.0質量%、具体的には1.5〜2.0質量%)、黒鉛粉:ほぼ0.5〜7.0質量%、具体的には0.5〜7.0質量%(好ましくはほぼ0.5〜3.0質量%、具体的には0.5〜3.0質量%)とし、残りをFe粉とする。Cu粉の配合割合は、これが少なすぎると摺動面部11の内周面4aの摺動性が低下し、多すぎると摺動面部11の内周面4aの耐摩耗性に問題が生じるので上記の範囲とする。また、Fe粉、Cu粉、Sn粉および黒鉛粉を上記の配合割合とすることにより、優れた潤滑性能/摺動特性/耐摩耗性を有する鉄−銅系の焼結合金製の基体4が形成される。例えば鉄−銅系の焼結合金製の基体4内に分散される黒鉛は、遊離黒鉛として潤滑性に寄与する。本発明の摺動部材は、無給油での高面圧および低速領域における使用、ならびに耐摩耗性の向上の観点から好ましくは、基体4は、Fe粉、Cu粉、Sn粉および黒鉛粉を含む成形体の焼結体である。このように、例えば黒鉛を含んだ鉄−銅系の焼結合金製の基体4が形成されることにより、優れた潤滑性能/摺動特性/耐摩耗性を有する内周面4aを備えた摺動部材1(軸受1)が提供される。
各粉末の配合割合は、全質量を基準に例えば、Cu粉:ほぼ10〜30質量%、具体的には10〜30質量%(好ましくはほぼ15〜20質量%、具体的には15〜20質量%)、Sn粉:ほぼ0.5〜3.0質量%、具体的には0.5〜3.0質量%(好ましくはほぼ1.5〜2.0質量%、具体的には1.5〜2.0質量%)、黒鉛粉:ほぼ0.5〜7.0質量%、具体的には0.5〜7.0質量%(好ましくはほぼ0.5〜3.0質量%、具体的には0.5〜3.0質量%)とし、残りをFe粉とする。Cu粉の配合割合は、これが少なすぎると摺動面部11の内周面4aの摺動性が低下し、多すぎると摺動面部11の内周面4aの耐摩耗性に問題が生じるので上記の範囲とする。また、Fe粉、Cu粉、Sn粉および黒鉛粉を上記の配合割合とすることにより、優れた潤滑性能/摺動特性/耐摩耗性を有する鉄−銅系の焼結合金製の基体4が形成される。例えば鉄−銅系の焼結合金製の基体4内に分散される黒鉛は、遊離黒鉛として潤滑性に寄与する。本発明の摺動部材は、無給油での高面圧および低速領域における使用、ならびに耐摩耗性の向上の観点から好ましくは、基体4は、Fe粉、Cu粉、Sn粉および黒鉛粉を含む成形体の焼結体である。このように、例えば黒鉛を含んだ鉄−銅系の焼結合金製の基体4が形成されることにより、優れた潤滑性能/摺動特性/耐摩耗性を有する内周面4aを備えた摺動部材1(軸受1)が提供される。
(2)潤滑部材3
潤滑部材3は、熱可塑性樹脂とカーボン材料とを含む樹脂組成物の形成体である。当該潤滑部材3は、前述の樹脂組成物の射出形成体であることが好ましい。カーボン材料を含むことにより軸受1に優れた摺動特性を付与することができ、熱可塑性樹脂を含むことにより潤滑部材3の製造に必要なコストを削減することができる。潤滑部材3は、例えば基体4をインサート部品として、熱可塑性樹脂とカーボン材料とを含む樹脂組成物で射出成形することにより、基体4の収容部4cに射出成形体として配置/埋設させることができる(以後、インサート成形工程ともいう)。図2および図3を参照して、潤滑部材3が収容部4cに配置/埋設されることにより、潤滑部材3の内側面3aは、軸受1の摺動面11(軸受面部11)の少なくとも一部を構成する。本発明に係る軸受1においては、例えばインサート成形工程によって基体4の収容部4cに潤滑部材3を配置/埋設させることができるため、軸受1(摺動部材1)の製造における作業効率および加工コストの改善が期待される。なお、基体4の収容部4cに潤滑部材3を配置/埋設させる方法は上記インサート成形工程に限定されず、公知の方法によっても配置/埋設させることができる。
潤滑部材3は、熱可塑性樹脂とカーボン材料とを含む樹脂組成物の形成体である。当該潤滑部材3は、前述の樹脂組成物の射出形成体であることが好ましい。カーボン材料を含むことにより軸受1に優れた摺動特性を付与することができ、熱可塑性樹脂を含むことにより潤滑部材3の製造に必要なコストを削減することができる。潤滑部材3は、例えば基体4をインサート部品として、熱可塑性樹脂とカーボン材料とを含む樹脂組成物で射出成形することにより、基体4の収容部4cに射出成形体として配置/埋設させることができる(以後、インサート成形工程ともいう)。図2および図3を参照して、潤滑部材3が収容部4cに配置/埋設されることにより、潤滑部材3の内側面3aは、軸受1の摺動面11(軸受面部11)の少なくとも一部を構成する。本発明に係る軸受1においては、例えばインサート成形工程によって基体4の収容部4cに潤滑部材3を配置/埋設させることができるため、軸受1(摺動部材1)の製造における作業効率および加工コストの改善が期待される。なお、基体4の収容部4cに潤滑部材3を配置/埋設させる方法は上記インサート成形工程に限定されず、公知の方法によっても配置/埋設させることができる。
上記実施形態によれば、潤滑部材3は、基体4の収容部4cに配置/埋設されているため、潤滑部材3に含まれる熱可塑性樹脂のアンカー効果により、合せ面4b(収容部4cの内表面)において、基体4と潤滑部材3との結合力が高められ、軸受1の使用中に潤滑部材3が軸受1の基体4から抜け落ちるおそれが低減されると考えられる。すなわち、軸受1(摺動部材1)の使用中に、潤滑部材3が軸受1(摺動部材1)の基体4から抜け落ちるおそれが低減された、軸受1(摺動部材1)が提供されると期待される。
(3)熱可塑性樹脂
樹脂組成物の例えば主成分(例えば重量比で最も多い成分等とされる場合もあるがこれに限られない。)となる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、液晶ポリマー(LCP)、全芳香族ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂(ポリフッ化オレフィン系樹脂)、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂などを含む樹脂を用いてもよい。具体的には、熱可塑性樹脂として、例えば射出成形が可能な熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。例えばポリフェニレンスルフィド(PPS)は、価格が適度に低く抑えられた樹脂材料であることに加え、射出成形時における溶融粘度が低いこと等からこれにカーボン材料を多量に配合させることが可能となり好ましいものである。なお、上に記載のこれらの各合成樹脂は単独で使用してもよく、2種類以上混合したポリマーアロイであってもよい。
樹脂組成物の例えば主成分(例えば重量比で最も多い成分等とされる場合もあるがこれに限られない。)となる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、液晶ポリマー(LCP)、全芳香族ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂(ポリフッ化オレフィン系樹脂)、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂などを含む樹脂を用いてもよい。具体的には、熱可塑性樹脂として、例えば射出成形が可能な熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。例えばポリフェニレンスルフィド(PPS)は、価格が適度に低く抑えられた樹脂材料であることに加え、射出成形時における溶融粘度が低いこと等からこれにカーボン材料を多量に配合させることが可能となり好ましいものである。なお、上に記載のこれらの各合成樹脂は単独で使用してもよく、2種類以上混合したポリマーアロイであってもよい。
(4)カーボン材料
樹脂組成物に配合されるカーボン材料は、例えばカーボンナノ繊維、カーボンブラックおよび黒鉛からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。カーボン材料の形態としては粉末状を挙げることができる。カーボン材料粉末としては、例えば黒鉛粉を用いることができ、具体的には、天然黒鉛粉および人造黒鉛粉の何れもが使用可能である。天然黒鉛粉は鱗片状を成しているため潤滑性に優れるという特徴を有する。一方、人造黒鉛粉は塊状を成しているため成形性に優れるという特徴を有する。尚、カーボン材料粉末は、結晶質粉である黒鉛粉に限らず、ピッチ粉やコークス粉等の非晶質粉を用いることもできる。カーボン材料としてカーボンナノ繊維を用いた場合には、潤滑部材3の曲げ弾性率などの機械的強度の向上を図ることができる。カーボンナノ繊維は、ピッチ系とPAN系とに大別されるが、何れも使用可能である。カーボンナノ繊維は、例えば、平均繊維径20μm以下、平均繊維長0.02〜0.2mmのものを用いることができる。
樹脂組成物に配合されるカーボン材料は、例えばカーボンナノ繊維、カーボンブラックおよび黒鉛からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。カーボン材料の形態としては粉末状を挙げることができる。カーボン材料粉末としては、例えば黒鉛粉を用いることができ、具体的には、天然黒鉛粉および人造黒鉛粉の何れもが使用可能である。天然黒鉛粉は鱗片状を成しているため潤滑性に優れるという特徴を有する。一方、人造黒鉛粉は塊状を成しているため成形性に優れるという特徴を有する。尚、カーボン材料粉末は、結晶質粉である黒鉛粉に限らず、ピッチ粉やコークス粉等の非晶質粉を用いることもできる。カーボン材料としてカーボンナノ繊維を用いた場合には、潤滑部材3の曲げ弾性率などの機械的強度の向上を図ることができる。カーボンナノ繊維は、ピッチ系とPAN系とに大別されるが、何れも使用可能である。カーボンナノ繊維は、例えば、平均繊維径20μm以下、平均繊維長0.02〜0.2mmのものを用いることができる。
カーボン材料粉末(例えば、黒鉛粉)にバインダを含めることもできる。バインダとしては樹脂バインダ粉を用いることができ、樹脂バインダ粉としては、例えばフェノール樹脂粉を用いることができる。必要に応じて成形助剤や潤滑剤、あるいは改質剤等を添加して、カーボン材料粉末とバインダを均一に混合することが好ましい。
潤滑部材3を構成する原料粉末として、上記のようにカーボン材料粉末および樹脂バインダ粉の混合粉末を用いる他、樹脂バインダ粉の共在下でカーボン材料粉末を造粒した造粒粉を用いることもできる。造粒粉は、単体の樹脂バインダ粉やカーボン材料粉末と比べて比重が大きく、流動性が高いため、それを含む樹脂組成物の成形型への供給がしやすくなり、所定形状に精度良く成形することが可能となる。
軸受1では、軸受面部11の一部を構成する潤滑部材3がカーボン材料の供給源となる。潤滑部材3から供給されたカーボン材料が、軸受面部11と軸2との相対移動によって軸受面部11全体に行き渡ることで、軸受面部11全体でカーボン材料による潤滑効果を得ることができる。これにより、優れた潤滑性能/摺動特性を有する摺動部材1(軸受1)が提供される。
(5)その他の材料
樹脂組成物は、熱可塑性樹脂およびカーボン材料に加えて、他の充填剤を含んでもよい。他の充填剤としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、金属繊維等の繊維類やこれらを布状に編んだもの、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、マイカ等の鉱物類、硼酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー等の無機ウィスカー類、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等やポリベンゾイミダゾール等の各種耐熱性樹脂等を用いることができる。これらの充填剤を含むことにより、潤滑部材3の摩擦摩耗特性の改善や、線膨張係数を小さくすることができる。必要に応じて、離型剤、難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、顔料などの添加剤を適宜添加してもよい。
樹脂組成物は、熱可塑性樹脂およびカーボン材料に加えて、他の充填剤を含んでもよい。他の充填剤としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、金属繊維等の繊維類やこれらを布状に編んだもの、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、マイカ等の鉱物類、硼酸アルミニウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー等の無機ウィスカー類、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等やポリベンゾイミダゾール等の各種耐熱性樹脂等を用いることができる。これらの充填剤を含むことにより、潤滑部材3の摩擦摩耗特性の改善や、線膨張係数を小さくすることができる。必要に応じて、離型剤、難燃剤、耐候性改良剤、酸化防止剤、顔料などの添加剤を適宜添加してもよい。
(6)内径(両)小口13
内径(両)小口13には、潤滑部材3が配置されている。これにより、ラジアル摺動(回転)に加え、アキシャル摺動(スライド)時においても、内径(両)小口13に配置された潤滑部材3から供給されたカーボン材料が、軸受面部11と軸2との相対移動によって軸受面部11全体に行き渡ることで、軸受面部11全体でカーボン材料による潤滑効果を得ることができるものと期待される。
内径(両)小口13には、潤滑部材3が配置されている。これにより、ラジアル摺動(回転)に加え、アキシャル摺動(スライド)時においても、内径(両)小口13に配置された潤滑部材3から供給されたカーボン材料が、軸受面部11と軸2との相対移動によって軸受面部11全体に行き渡ることで、軸受面部11全体でカーボン材料による潤滑効果を得ることができるものと期待される。
内径(両)小口13への潤滑部材3の配置方法は、特に限定されないが、例えば上記インサート成形工程において、潤滑部材3を樹脂組成物の射出成形体として内径(両)小口13へ配置してもよい。あるいは、上記インサート成形工程により潤滑部材3が収容部4cに配置された後、射出成形以外の方法で潤滑部材3を内径(両)小口13に配置してもよい。内径(両)小口13に配置される潤滑部材3は、基体4の内周形状(内径(両)小口13)に相応する形状を有し、前述の軸方向の寸法L1および径方向の寸法D1を有するものである。
(7)カーボン材料の含有量
樹脂組成物に配合されるカーボン材料の含有量は、潤滑部材3の摺動面の摺動特性を確保するために好適な範囲に設定され、この含有量は、5質量%以上70質量%以下、好ましくは10質量%以上60質量%以下、熱可塑性樹脂の種類等により例えば10質量%以上40質量%以下である。樹脂組成物中におけるカーボン材料の配合量が所定の質量%未満の場合、カーボン材料の配合量が少ないためにカーボン材料による摺動面の摺動特性向上効果が現れ難くなる傾向にある。樹脂組成物中におけるカーボン材料の配合量が所定の質量%を超える場合、樹脂組成物の流動性が低下して射出成形時における歩留り率が低下する他、射出成形を行うこと自体が困難となる傾向にある。摺動特性を確保しつつ、射出成形時における歩留り率の低下を避けるために、樹脂組成物中に配合されるカーボン材料の含有量は、上記範囲内であることが好ましい。
樹脂組成物に配合されるカーボン材料の含有量は、潤滑部材3の摺動面の摺動特性を確保するために好適な範囲に設定され、この含有量は、5質量%以上70質量%以下、好ましくは10質量%以上60質量%以下、熱可塑性樹脂の種類等により例えば10質量%以上40質量%以下である。樹脂組成物中におけるカーボン材料の配合量が所定の質量%未満の場合、カーボン材料の配合量が少ないためにカーボン材料による摺動面の摺動特性向上効果が現れ難くなる傾向にある。樹脂組成物中におけるカーボン材料の配合量が所定の質量%を超える場合、樹脂組成物の流動性が低下して射出成形時における歩留り率が低下する他、射出成形を行うこと自体が困難となる傾向にある。摺動特性を確保しつつ、射出成形時における歩留り率の低下を避けるために、樹脂組成物中に配合されるカーボン材料の含有量は、上記範囲内であることが好ましい。
(8)潤滑油の含浸
軸受1は、無数の内部空孔を有しているため、インサート成形工程を経た軸受1の内部空孔に、潤滑油を含浸させることもできる。例えば、インサート成形工程を経た軸受1を、減圧環境下において潤滑油中に浸漬させた後、大気圧に戻すことにより、軸受1の内部空孔に潤滑油を含浸させることができる。潤滑油としては、軸受用として汎用されているものであれば特に制限されず、例えば、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油などの鉱油、ポリブテン、ポリ-α-オレフィン、アルキルナフタレン、脂環式化合物などの炭化水素系合成油、または、天然油脂とポリオールとのエステル油、リン酸エステル、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン、フッ素化油などの非炭化水素系合成油等を用いてもよい。
軸受1は、無数の内部空孔を有しているため、インサート成形工程を経た軸受1の内部空孔に、潤滑油を含浸させることもできる。例えば、インサート成形工程を経た軸受1を、減圧環境下において潤滑油中に浸漬させた後、大気圧に戻すことにより、軸受1の内部空孔に潤滑油を含浸させることができる。潤滑油としては、軸受用として汎用されているものであれば特に制限されず、例えば、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油などの鉱油、ポリブテン、ポリ-α-オレフィン、アルキルナフタレン、脂環式化合物などの炭化水素系合成油、または、天然油脂とポリオールとのエステル油、リン酸エステル、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン、フッ素化油などの非炭化水素系合成油等を用いてもよい。
(9)基体4の開放気孔率
基体4の開放気孔率は、インサート成形工程を経た軸受1の内部空孔に油を含浸する場合において、当該油が潤滑性付与剤として機能し軸受1の摺動特性を向上させるために好適な範囲に設定され、好ましくは10%以上50%以下である。開放気孔率が10%未満の場合、基体4の内部空孔に含浸される油の総量が少なく、軸受1に長期に亘って潤滑油に基づく優れた潤滑性能を発揮させることが困難な傾向にある。また、開放気孔率が50%を超える場合、基体4の成形が困難となって基体4の成形性が低下し、その結果、生産性よく基体4を成形することが困難となり、基体4を備えた軸受1を低コストで生産することが困難となる傾向にある。基体4に潤滑油に基づく優れた潤滑性能を発揮させつつ、生産性よく軸受1を成形するために、基体4の開放気孔率は、上記範囲内であることが好ましい。なお、「開放気孔率」は、基体4の体積に対する含浸可能な内部空孔を百分率で表したもので、完全含浸後の油の体積を基体4の体積で除し、100を乗じて求められる。開放気孔率は、日本工業規格の「焼結金属材料−密度,含油率及び開放気孔率試験方法(JIS Z 2501:2000)」により測定する事ができる。
基体4の開放気孔率は、インサート成形工程を経た軸受1の内部空孔に油を含浸する場合において、当該油が潤滑性付与剤として機能し軸受1の摺動特性を向上させるために好適な範囲に設定され、好ましくは10%以上50%以下である。開放気孔率が10%未満の場合、基体4の内部空孔に含浸される油の総量が少なく、軸受1に長期に亘って潤滑油に基づく優れた潤滑性能を発揮させることが困難な傾向にある。また、開放気孔率が50%を超える場合、基体4の成形が困難となって基体4の成形性が低下し、その結果、生産性よく基体4を成形することが困難となり、基体4を備えた軸受1を低コストで生産することが困難となる傾向にある。基体4に潤滑油に基づく優れた潤滑性能を発揮させつつ、生産性よく軸受1を成形するために、基体4の開放気孔率は、上記範囲内であることが好ましい。なお、「開放気孔率」は、基体4の体積に対する含浸可能な内部空孔を百分率で表したもので、完全含浸後の油の体積を基体4の体積で除し、100を乗じて求められる。開放気孔率は、日本工業規格の「焼結金属材料−密度,含油率及び開放気孔率試験方法(JIS Z 2501:2000)」により測定する事ができる。
(10)基体4の表面開孔率
基体4の、収容部4cの内表面である合せ面4bにおける表面開孔率は、基体4の収容部4cに配置された潤滑部材3に含まれる熱可塑性樹脂のアンカー効果により、基体4と潤滑部材3との結合力を高めるために好適な範囲に設定され、好ましくは10%以上50%以下である。表面開孔率が10%未満の場合、合せ面4bの表面気孔に入り込む潤滑部材3に含まれる熱可塑性樹脂の量が減り、熱可塑性樹脂のアンカー効果が減少する傾向にある。また、表面開孔率が50%を超える場合、収容部4cの成形が困難となる傾向にある。基体4と潤滑部材3との結合力を高めつつ、生産性よく軸受1を成形するために、基体4の表面開孔率は、上記範囲内であることが好ましい。なお、「表面開孔率」とは、表面の単位面積当りに占める表面開孔の総面積の割合(面積比)である。「表面開孔率」は、例えばNikon社製:ECLIPSE ME600等の金属顕微鏡で撮影した画像(例えば500倍)を画像データとしてコンピュータに取り込み、気孔部分の面積を演算することで求めることができる。
基体4の、収容部4cの内表面である合せ面4bにおける表面開孔率は、基体4の収容部4cに配置された潤滑部材3に含まれる熱可塑性樹脂のアンカー効果により、基体4と潤滑部材3との結合力を高めるために好適な範囲に設定され、好ましくは10%以上50%以下である。表面開孔率が10%未満の場合、合せ面4bの表面気孔に入り込む潤滑部材3に含まれる熱可塑性樹脂の量が減り、熱可塑性樹脂のアンカー効果が減少する傾向にある。また、表面開孔率が50%を超える場合、収容部4cの成形が困難となる傾向にある。基体4と潤滑部材3との結合力を高めつつ、生産性よく軸受1を成形するために、基体4の表面開孔率は、上記範囲内であることが好ましい。なお、「表面開孔率」とは、表面の単位面積当りに占める表面開孔の総面積の割合(面積比)である。「表面開孔率」は、例えばNikon社製:ECLIPSE ME600等の金属顕微鏡で撮影した画像(例えば500倍)を画像データとしてコンピュータに取り込み、気孔部分の面積を演算することで求めることができる。
以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と重複する点については説明を省略する。
[その他の実施形態]
潤滑部材3は、図2に示すように軸受1の軸方向全長にわたって配置する他、軸方向の一部領域に限って配置してもよく、例えば軸方向に離隔した複数箇所に配置してもよい。
潤滑部材3は、図2に示すように軸受1の軸方向全長にわたって配置する他、軸方向の一部領域に限って配置してもよく、例えば軸方向に離隔した複数箇所に配置してもよい。
また、軸受1においては、必ずしも軸受面部11の全体に対して軸2が摺動するわけではなく、例えば、軸受面部11の限定された一部領域が軸2と摺動する場合がある。具体的には、軸2を水平姿勢とした場合、軸2は重力によって落ち込んで軸受面部11の下側領域で軸受面部11と摺動する場合がある。その場合、軸2との摺動領域に潤滑部材3が位置するように、軸受1における潤滑部材3の位置や形状を設計し、あるいは軸受1の円周方向の位相を調整することで、軸2を潤滑部材3と常に摺動させることが可能となる。これにより高い潤滑効果を得ることができるため、例えば軸受面部11との間に潤滑油を介在させないオイルレスの状態で軸2を支持することが可能となる。もちろん、軸受面部11と軸2との間に潤滑油を介在させた状態で用いることもでき、この場合さらに潤滑効果が高められる。本実施形態では、軸受面部11と軸2との間に潤滑油を介在させると共に、基体4の内部空孔に油を含浸させている。この場合、軸2の回転に伴う温度上昇により基体4の表面(内周面4a)から油が滲み出し、この油が軸受面部11と軸2との摺動領域に供給されることで、摺動領域における油膜切れを確実に回避して優れた摺動性が維持される。
また、本発明は、軸の相対回転を支持する軸受に限らず、軸の軸方向移動を支持する軸受に適用することもできる。また、本発明は、円筒形状の摺動部材に限らず、他の形状(例えば、半円筒状や直方体状)の摺動部材に適用することもできる。本発明の摺動部材は、例えば事務機器、自動車、補機等に用いる摺動部材に利用することができる。
1 摺動部材(軸受)、2 軸、3 潤滑部材、3a 内側面、4 基体、4a 内周面、4b 合せ面、4c 収容部、11 摺動面(軸受面部)、12 外周面、13 内径両小口(内径小口)。
Claims (7)
- 摺動面を有する摺動部材であって、
金属粉を含む成形体の焼結体である基体と、
熱可塑性樹脂とカーボン材料とを含む樹脂組成物の成形体である、潤滑部材とを含み、
前記基体は、前記潤滑部材を収容するための収容部を有し、
前記摺動面の少なくとも一部は、前記収容部に収容された前記潤滑部材で構成され、かつ、
前記基体の内径小口にも、前記潤滑部材が配置されている、
摺動部材。 - 摺動面を有する摺動部材であって、
Fe粉、Cu粉、Sn粉および黒鉛粉を含む成形体の焼結体である基体と、
熱可塑性樹脂とカーボン材料とを含む樹脂組成物の成形体である、潤滑部材とを含み、
前記基体は、前記潤滑部材を収容するための収容部を有し、
前記摺動面の少なくとも一部は、前記収容部に収容された前記潤滑部材で構成され、かつ、
前記基体の内径小口にも、前記潤滑部材が配置されている、
摺動部材。 - 前記樹脂組成物における前記カーボン材料の含有率が、5質量%以上70質量%以下である、請求項1または請求項2に記載の摺動部材。
- 前記基体は内部空孔を有し、
前記内部空孔内に潤滑油が含浸されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の摺動部材。 - 前記基体は、10%以上50%以下の開放気孔率を有する、請求項4に記載の摺動部材。
- 前記基体は、前記収容部の内表面において10%以上50%以下の表面開孔率を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の摺動部材。
- 前記カーボン材料は、カーボンナノ繊維、カーボンブラックおよび黒鉛からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の摺動部材。
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Cited By (1)
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CN112696434A (zh) * | 2020-12-21 | 2021-04-23 | 广德博朗科技有限公司 | 一种径向嵌入自润滑材质免维护轴套 |
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2018
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CN112696434A (zh) * | 2020-12-21 | 2021-04-23 | 广德博朗科技有限公司 | 一种径向嵌入自润滑材质免维护轴套 |
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