以下、質量分析装置の実施の形態例について、図1〜図13を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、説明は以下の順序で行うが、本発明は、必ずしも以下の形態に限定されるものではない。
1.質量分析装置の構成
まず、実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる質量分析装置について図1から図5を参照して説明する。
図1は、本例の質量分析装置を示す概略構成図である。
図1に示す装置は、導入された試料をイオン化させて質量を分析する装置である。図1に示すように、質量分析装置1は、真空容器2と、イオン源3と、質量分析部4と、真空ポンプ5と、試料導入機構6と、備えている。また、図3に示すように、質量分析装置1は、導入する試料を保持する試料導入プローブ10を備えている。
図1に戻り示すように、真空容器2は、中空の容器状に形成されている。真空容器2は、一面が開口した開口部2aと、排気口2bが形成されている。真空容器2には、開口部2aを塞ぐようにして、後述の試料導入機構6が設けられる。
また、真空容器2の排気口2bは、真空ポンプ5に連通している。そして、真空ポンプ5は、排気口2bを介して真空容器2内の気体を吸引し、真空容器2内を略真空にする。真空容器2の内部には、イオン源3と、質量分析部4が収容されている。
イオン源3は、導入された試料をイオン化させる。イオン源3によるイオン化法としては、電子イオン化(electron ionization:EI)法、化学イオン化(chemical ionization:CI)法、高速原子衝撃(fast atom bombardment:FAB)法、エレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization:ESI)法、大気圧化学イオン化(atmospheric pressure chemical ionization:APCI)法や、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(matrix-assisted laser desorption/ ionization:MALDI)法等その他各種のイオン化法が適用されるものである。
質量分析部4は、イオン源3で生成されたイオンを質量に応じて分離させると共に、分離したイオンを検出し、導入された試料の質量を分析する。質量分析部4における分離方法としては、磁場型、四重極型、イオントラップ型、フーリエ変換イオンサイクトロン共鳴型、飛行時間型等や、これらを複数組み合わせたもの等その他各種の型の質量分離方法が適用されるものである。
[試料導入機構6]
次に、試料導入機構6について図1を参照して説明する。
試料導入機構6は、フランジ部21と、バルブ開閉機構22と、プローブ接続部23と、ガイドロッド挿入部24と、予備真空ポンプ25と、予備排気バルブ26と、予備排気管27とを備えている。
[フランジ部]
フランジ部21は、略平板状に形成されている。フランジ部21は、真空容器2の開口部2aを覆う大きさに形成されている。フランジ部21における真空容器2側の一面には、Oリング31が設けられている。フランジ部21を真空容器2の開口部2aに取り付けることで、Oリング31によって真空容器2の開口部2aが密閉される。
また、フランジ部21には、試料導入孔21aが形成されている。試料導入孔21aは、フランジ部21における真空容器2と対向する一面から反対側の他面にかけて貫通する貫通孔である。試料導入孔21aの開口径は、後述する試料導入プローブ10の試料保持部52が挿通可能な大きさに設定されている。
さらに、フランジ部21には、挿入部取り付け孔21bが形成されている。挿入部取り付け孔21bは、試料導入孔21aの鉛直方向の下方に形成されている。挿入部取り付け孔21bは、フランジ部21における真空容器2と対向する一面から反対側の他面にかけて貫通する貫通孔である。この挿入部取り付け孔21bには、ガイドロッド挿入部24が取り付けられる。
[ガイドロッド挿入部]
ガイドロッド挿入部24は、軸方向の一端部が開口し、軸方向の他端部が閉じられた略円筒状に形成されている。ガイドロッド挿入部24は、フランジ部21に取り付けられた際、真空容器2の内部空間に向けて突出する。このとき、ガイドロッド挿入部24における閉塞している軸方向の他端部が、真空容器2の内部空間に配置される。また、ガイドロッド挿入部24の筒孔24aの内径は、後述する試料導入プローブ10のガイドロッド54が挿入可能な大きさに設定されている。
また、フランジ部21には、試料導入孔21aを覆うようにしてバルブ開閉機構22が取り付けられる。
[バルブ開閉機構]
次に、図1及び図2を参照してバルブ開閉機構22の構成について説明する。
図2は、バルブ開閉機構22を示す正面図である。
図2に示すように、バルブ開閉機構22は、フランジ部21の試料導入孔21aを開閉可能に塞ぐことで、真空容器2内に気体が流れ込むことを阻止し、真空容器2内を真空に保つ装置である。バルブ開閉機構22は、バルブプレート41と、回動部材42と、密閉ゲート43と、挿入防止板44と、開閉レバー45とを有している。
図1に戻って示すように、バルブプレート41は、フランジ部21における真空容器2と対向する一面とは反対側の他面に配置される。図2に示すように、バルブプレート41は、略平板状に形成されている。バルブプレート41には、バルブ側試料導入孔41aと、ロッド挿入孔41bと、スライド溝41cが形成されている。
バルブ側試料導入孔41a及びロッド挿入孔41bは、バルブプレート41におけるフランジ部21と対向する一面から反対側の他面にかけて貫通する貫通孔である。バルブ側試料導入孔41aの開口径は、後述する試料導入プローブ10の試料保持部52が挿通可能な大きさに設定されている。バルブプレート41をフランジ部21に配置した際に、バルブ側試料導入孔41aは、フランジ部21に設けた試料導入孔21aに連通する。
バルブプレート41におけるバルブ側試料導入孔41aの鉛直方向の下方には、ロッド挿入孔41bが形成されている。ロッド挿入孔41bの開口径は、後述する試料導入プローブ10のガイドロッド54の第1ガイド部54aが挿通可能な大きさに設定されている。バルブプレート41をフランジ部21に配置した際に、ロッド挿入孔41bは、フランジ部21に取り付けたガイドロッド挿入部24の筒孔24aと連通する。
スライド溝41cは、バルブプレート41におけるフランジ部21と対向する一面とは反対側の他面に形成されている。スライド溝41cは、バルブプレート41におけるバルブ側試料導入孔41aが設けた箇所を通り、鉛直方向と直交する水平方向に沿って延在している。スライド溝41cには、密閉ゲート43が摺動可能に支持されている。
また、バルブプレート41におけるフランジ部21と対向する一面とは反対側の他面には、回動部材42が回動可能に支持されている。回動部材42は、バルブプレート41におけるバルブ側試料導入孔41aと対向する位置に配置されている。回動部材42には、プローブ挿通孔42aが形成されている。プローブ挿通孔42aは、バルブ側試料導入孔41aと対向する。そして、図1及び図2に示す閉塞状態では、バルブ側試料導入孔41aとプローブ挿通孔42aの間には、後述する密閉ゲート43が介在される。
また、回動部材42には、挿入防止板44と、開閉レバー45が設けられている。挿入防止板44は、略平板をなす扇状に形成されている。挿入防止板44は、回動部材42における鉛直方向の下方に配置されている。挿入防止板44には、ロッド挿通孔44aが形成されている。なお、図1及び図2に示す閉塞状態、すなわち回動部材42が回動していない状態では、ロッド挿通孔44aは、バルブプレート41におけるロッド挿入孔41bが設けられた位置から外れた位置に配置されている。そのため、ロッド挿入孔41bにおけるガイドロッド挿入部24と反対側の開口は、挿入防止板44によって覆われている。すなわち、密閉ゲート43によってバルブ側試料導入孔41a及び試料導入孔21aが覆われている閉塞時には、挿入防止板44は、ガイドロッド挿入部24の開口を覆う。
開閉レバー45は、回動部材42における鉛直方向の上方に配置されている。開閉レバー45は、使用者によって把持される。そして、使用者は、開閉レバー45を介して回動部材42を回動操作することができる。
密閉ゲート43は、略平板状に形成されている。密閉ゲート43は、スライド溝41cに摺動可能に支持されて、バルブプレート41と回動部材42の間に介在される。また、密閉ゲート43には、ゲート側挿通孔43aが形成されている。図1及び図2に示す閉塞状態では、ゲート側挿通孔43aは、バルブプレート41に設けたバルブ側試料導入孔41aや回動部材42のプローブ挿通孔42aが設けられた位置とは外れた位置に配置されている。そのため、バルブプレート41のバルブ側試料導入孔41a及び試料導入孔21aは、密閉ゲート43によって塞がれる。
また、密閉ゲート43は、回動部材42と不図示のラックとピニオンによって連結されている。そのため、回動部材42が所定の向きに回動すると、密閉ゲート43は、スライド溝41cを摺動し、バルブプレート41の一端部から他端部に移動する。また、回動部材42が回動することで、回動部材42に設けた挿入防止板44も回動部材42と共に回動する。すなわち、挿入防止板44と密閉ゲート43は、連動する。
[プローブ接続部]
また、図1に示すように、回動部材42には、プローブ接続部23が接続されている。プローブ接続部23は、回動部材42におけるバルブプレート41とは反対側の一面に配置されている。プローブ接続部23は、軸方向の両端部が開口された略円筒状に形成されている。プローブ接続部23の筒孔23aの内壁には、Oリング32が設けられている。また、プローブ接続部23の筒孔23aの内径は、後述する試料導入プローブ10の接続部材53の外径と等しい。
プローブ接続部23には、接続側排気孔23bが形成されている。接続側排気孔23bには、予備排気管27が接続されている。予備排気管27における接続側排気孔23bと反対側の端部には、予備真空ポンプ25が接続されている。また、予備排気管27の中間部には、予備排気バルブ26が設けられている。予備排気バルブ26を開き、予備真空ポンプ25を駆動させると、プローブ接続部23の筒孔23a内の気体が予備真空ポンプ25によって吸引される。
このプローブ接続部23の筒孔23aには、試料導入プローブ10の接続部材53が挿入される。
[試料導入プローブ]
次に、試料導入プローブ10の構成について図3〜図5を参照して説明する。
図3は、試料導入プローブ10を示す説明図である。
図3に示すように、試料導入プローブ10は、プローブ本体51と、試料保持部52と、接続部材53と、ガイドロッド54と、第1連結プレート55と、第2連結プレート56と、把持部57とを備えている。
プローブ本体51は、略棒状の部材により形成されている。プローブ本体51の軸方向の一端部には、試料保持部52が設けられており、プローブ本体51の軸方向の他端部には、把持部57が設けられている。把持部57は、使用者によって把持される。
また、プローブ本体51の軸方向の他端部には、二面幅部51a、51aが形成されている(図5参照)。二面幅部51a、51aは、鉛直方向と直交し、かつプローブ本体51の軸方向とも直交する水平方向に対向して形成されている。
試料保持部52は、分析を行う試料を保持する。試料保持部52で保持される試料の状態としては、固体あるいは液体でもよい。また、試料保持部52に加熱機構を設けてもよく、あるいは電流を流せるフィラメント線を試料保持部52に設けてもよい。
また、プローブ本体51の軸方向の一端部は、接続部材53によって摺動可能に支持されている。接続部材53は、略円筒状に形成されている。接続部材53の筒孔53aには、プローブ本体51の一端部に設けた試料保持部52が収容される。接続部材53の軸方向の一端部は、その一面が開口している。
また、接続部材53の軸方向の他端部は、閉塞している。接続部材53の他端部には、支持孔53bが設けられている。支持孔53bには、プローブ本体51が摺動可能に挿入されている。また、支持孔53bには、Oリング33が設けられている。Oリング33は、支持孔53bに挿入されたプローブ本体51に密接する。
そして、接続部材53は、筒孔53a内に試料保持部52を配置した状態で、プローブ接続部23の筒孔23a内に挿入される(図7参照)。このとき、接続部材53の外周面は、プローブ接続部23の内壁に設けたOリング32に密着される。
また、接続部材53の軸方向の他端部には、第1連結プレート55が固定されている。図4は、第1連結プレート55を示す正面図である。
図4に示すように、第1連結プレート55は、略平板状に形成されている。第1連結プレート55には、挿通孔55aと、規制孔55bと、解除孔55cと、連通部55dが形成されている。挿通孔55aは、接続部材53の支持孔53bに連通する。そして、挿通孔55aには、プローブ本体51が挿通する。
規制孔55bは、挿通孔55aよりも鉛直方向の下方に形成されている。規制孔55bの開口径は、後述するガイドロッド54の第1ガイド部54aの外径より大きく設定され、ガイドロッド54の第2ガイド部54bの外径よりは小さく設定されている。そのため、規制孔55bは、第1ガイド部54aを挿通させ、第2ガイド部54bの挿通を規制する。
解除孔55cは、挿通孔55aと規制孔55bの間に形成されている。解除孔55cの開口径は、後述するガイドロッド54の第1ガイド部54a及び第2ガイド部54bの外径より大きく設定されている。そのため、解除孔55cは、第2ガイド部54bを挿通可能に開口している。また、解除孔55cは、規制孔55bに連通部55dを介して連通している。
連通部55dは、規制孔55bから解除孔55cに向けて延在する長孔である。この連通部55dの間隔、すなわち鉛直方向と直交し、第1連結プレート55の厚さ方向とも直交する水平方向の長さは、規制孔55bの開口径と等しく設定されている。すなわち、連通部55dの間隔は、後述するガイドロッド54の第1ガイド部54aの外径より大きく設定され、ガイドロッド54の第2ガイド部54bの外径よりは小さく設定されている。
図3に示すように、ガイドロッド54は、略円柱状に形成されている。ガイドロッド54は、第1ガイド部54aと、第2ガイド部54bとを有している。第1ガイド部54aは、ガイドロッド54の軸方向の一端部に形成され、第2ガイド部54bは、ガイドロッド54の軸方向の他端部に形成されている。
第1ガイド部54aの外径は、第2ガイド部54bの外径よりも小さく設定されている。また、第1ガイド部54aの外径は、ロッド挿通孔44a、ロッド挿入孔41b及びガイドロッド挿入部24の筒孔24aに挿入可能な大きさに設定されている。
ガイドロッド54を第1連結プレート55の規制孔55bに挿入した際、ガイドロッド54は、その自重により鉛直方向の下方に下がる。そのため、図3及び図4に示す初期状態では、第1ガイド部54aは、第1連結プレート55の規制孔55bに配置される。上述したように、規制孔55bの開口径は、第2ガイド部54bの外径よりも小さく設定されているため、ガイドロッド54を軸方向の一側に挿入した場合、第2ガイド部54bの端部が規制孔55bに当接する。これにより、規制孔55bは、第2ガイド部54bの挿通を規制する。
さらに、ガイドロッド54は、プローブ本体51の鉛直方向の下方において、ガイドロッド54の軸方向がプローブ本体51の軸方向と平行をなして配置される。また、プローブ本体51の軸方向及びガイドロッド54の軸方向は、プローブ本体51における真空容器2への挿入方向と平行をなす。
ガイドロッド54は、第1連結プレート55の規制孔55b及び連通部55dによって鉛直方向に沿って移動可能に支持される。そのため、ガイドロッド54は、第1連結プレート55によってプローブ本体51に対して接近及び離反可能に支持される。
また、ガイドロッド54の軸方向の他端部、すなわち第2ガイド部54bの他端部には、第2連結プレート56が固定されている。
図5は、第2連結プレート56の正面図である。
図5に示すように、第2連結プレート56は、略平板状に形成されている。第2連結プレート56は、摺動孔56aと、固定部56bが形成されている。固定部56bには、ガイドロッド54の他端部が固定される。
摺動孔56aは、固定部56bよりも鉛直方向の上方に配置されている。摺動孔56aは、第2連結プレート56の長手方向、すなわち鉛直方向に沿って延在している。また、摺動孔56aの開口の幅、すなわち鉛直方向と直交し、かつ第2連結プレート56の厚さ方向とも直交する長さは、プローブ本体51の二面幅部51a、51aの間隔と等しく設定されている。
摺動孔56aには、プローブ本体51の二面幅部51a、51aが挿入される。二面幅部51a、51aが摺動孔56aに挿入されることで、プローブ本体51がその軸心を中心に回転することを防ぐことができる。そして、把持部57は、第2連結プレート56よりもプローブ本体51の軸方向の他端部に配置される。そのため、第2連結プレート56は、プローブ本体51における把持部57と二面幅部51a、51aよりも軸方向の一端部の間に介在される。
また、第2連結プレート56は、その自重とガイドロッド54の自重により、鉛直方向の下方に下がる。そのため、図3及び図5に示す初期状態では、プローブ本体51は、摺動孔56aにおける鉛直方向の上端部に配置される。そして、第2連結プレート56は、摺動孔56aが二面幅部51a、51aを摺動することで、鉛直方向に沿って移動する。
また、プローブ本体に設けた把持部57を介してプローブ本体51をその軸方向に沿って移動させると、第2連結プレート56で連結されたガイドロッド54も、プローブ本体51と共にその軸方向に沿って移動する。すなわち、プローブ本体51とガイドロッド54における軸方向への移動は、互いに連動している。
2.試料導入作業例
次に、上述した構成を有する質量分析装置1における試料導入作業の一例について図6〜図13を参照して説明する。
図6は、試料導入作業を示すフローチャートである。図7〜図13は、試料導入作業を示す説明図である。
図6に示すように、まず、大気中において、図3に示す試料導入プローブ10の試料保持部52へ分析を行う試料を取り付ける(ステップS11)。次に、図7に示すように、試料導入プローブ10の接続部材53を試料導入機構6におけるプローブ接続部23に取り付ける(ステップS12)。すなわち、接続部材53をプローブ接続部23の筒孔23a内に挿入する。このとき、試料を保持している試料保持部52は、接続部材53の筒孔53a内に収容されている。
また、接続部材53をプローブ接続部23の筒孔23a内に挿入することで、プローブ接続部23の内壁に設けたOリング32が接続部材53の外周面に密着する。さらに、バルブ開閉機構22におけるバルブ側試料導入孔41aは、密閉ゲート43によって塞がれている。そして、プローブ本体51の外周面には、接続部材53における支持孔53bに設けたOリング33が密着している。そのため、プローブ接続部23の筒孔23a内は、密閉される。
次に、予備排気バルブ26を開く(ステップS13)。なお、予め予備真空ポンプ25は、駆動している。そのため、予備排気管27及び接続側排気孔23bを介してプローブ接続部23の筒孔23a内の気体が予備真空ポンプ25によって吸引される。これにより、プローブ接続部23の筒孔23a内が略真空になる。
なお、プローブ接続部23の筒孔23a内が略真空となることで、接続部材53の筒孔53a内も略真空になる。そのため、大気と接続部材53の筒孔53a内との圧力差により、プローブ本体51には、接続部材53の筒孔53a内に引き込まれる力が働く。しかしながら、試料導入プローブ10のガイドロッド54は、その自重により鉛直方向の下方に配置されている。そして、ガイドロッド54の第1ガイド部54aは、図4に示すように第1連結プレート55の規制孔55bに配置されている。
また、上述したように規制孔55bの開口径は、第2ガイド部54bの外径より小さく設定されている。そのため、プローブ本体51が接続部材53の筒孔53a内に引き込まれたり、使用者が誤ってプローブ本体51を挿入したりしても、第2ガイド部54bの軸方向の一端部が第1連結プレート55における規制孔55bの縁部に当接する。また、プローブ本体51とガイドロッド54における軸方向への移動は、互いに連動している。
これにより、ガイドロッド54が第1連結プレート55によって軸方向への移動が規制されることで、プローブ本体51における軸方向の一側、すなわち接続部材53の筒孔53a内に引き込まれる向きへの移動が規制される。その結果、大気と内部の気圧差や、使用者の誤操作によって、プローブ本体51が接続部材53の筒孔53a内に引き込まれて、バルブ開閉機構22の密閉ゲート43に試料保持部52が衝突することを防ぐことができる。この第1連結プレート55の規制孔55bとガイドロッド54の第2ガイド部54bによって、質量分析装置1の第1ストッパ機構が構成される。その結果、試料を導入する際の誤操作を防止することができる。
さらに、上述したように、解除孔55cの開口径は、第2ガイド部54bの外径より大きく設定されている。そのため、使用者が誤って操作し、第2ガイド部54bが第1連結プレート55の解除孔55cを臨む位置までガイドロッド54を鉛直方向の上方に引き上げると、第2ガイド部54bは、第1連結プレート55を挿通可能となる。その結果、プローブ本体51を軸方向の一側へ挿入させることができるため、バルブ開閉機構22の密閉ゲート43に試料保持部52が衝突するおそれがある。
しかしながら、図2及び図7に示すように、ガイドロッド挿入部24に連通しているロッド挿入孔41bの開口は、挿入防止板44によって覆われている。そのため、ガイドロッド54の軸方向の一端部が挿入防止板44に当接し、バルブ開閉機構22の密閉ゲート43に試料保持部52が衝突することを防ぐことができる。その結果、試料を導入する際の誤操作を防止することができる。この挿入防止板44によって、質量分析装置1の第2ストッパ機構が構成される。
なお、バルブ開閉機構22のバルブを開く前に、プローブ接続部23の筒孔23a内において予備排気をすることで、真空容器2内の気圧が急激に上昇することを防ぐことができる。
次に、ステップS13の処理によってプローブ接続部23の筒孔23a内の気圧が略真空となると、バルブ開閉機構22のバルブを開く(ステップS14)。具体的には、図8に示すように、使用者又は装置の駆動部によって開閉レバー45を操作し、回動部材42を所定の向きに回動させる。これにより、不図示のラックとピニオンによって回動部材42と連結された密閉ゲート43がスライド溝41cを摺動し、バルブプレート41の一端部から他端部に移動する。
そして、ゲート側挿通孔43aがバルブプレート41のバルブ側試料導入孔41aと、回動部材42のプローブ挿通孔42aの間に位置する箇所まで密閉ゲート43が移動する。そのため、図8及び図9に示すように、バルブ側試料導入孔41aとプローブ挿通孔42aがゲート側挿通孔43aを介して連通する。また、バルブ側試料導入孔41aとプローブ挿通孔42aが連通することで、プローブ挿通孔42aは、フランジ部21の試料導入孔21aとも連通する。
さらに、回動部材42が回動することで、回動部材42に設けた挿入防止板44も回動部材42と共に回動する。そして、密閉ゲート43のゲート側挿通孔43aがバルブ側試料導入孔41aとプローブ挿通孔42aの間まで移動した際、挿入防止板44に設けたロッド挿通孔44aは、ロッド挿入孔41bを臨む。すなわち、バルブ開閉機構22が試料導入孔21aを開放させる開放時には、ロッド挿通孔44aは、ロッド挿入孔41bを介してガイドロッド挿入部24の開口を臨む。
すなわち、本例の質量分析装置1では、バルブ開閉機構22の開閉動作と、挿入防止板44におけるガイドロッド挿入部24に対する開閉動作が連動している。これにより、バルブ開閉機構22の開放動作と、ガイドロッド54のストッパ機構となる挿入防止板44の解除動作を同時に行うことができ、試料の導入作業を容易に行うことができる。
さらに、バルブ側試料導入孔41a、プローブ挿通孔42a及びフランジ部21の試料導入孔21aが連通することで、試料導入プローブ10の接続部材53の筒孔53aから試料導入孔21aまでが連通する。さらに、真空容器2内の気圧は、予め真空ポンプ5により真空に引かれている。
そのため、大気と真空容器2内の圧力差により、プローブ本体51が真空容器2内に急激に引き込まれるおそれがある。上述したように、プローブ本体51における軸方向の一側への移動は、第1ストッパ機構である第1連結プレート55とガイドロッド54の第2ガイド部54bによって規制されている。その結果、試料保持部52や、この試料保持部52に保持された試料が真空容器2内に収容されたイオン源に衝突し、破損することを防ぐことができる。
次に、図10に示すように、ガイドロッド54を鉛直方向の上方に向けて持ち上げる(ステップS15)。ガイドロッド54を持ち上げることで、ガイドロッド54がプローブ本体51に接近する。そして、図11に示すように、第1ガイド部54aが第1連結プレート55の連通部55dを通過して、解除孔55cまで移動する。これにより、第2ガイド部54bが解除孔55cを臨む。その結果、プローブ本体51及びガイドロッド54における軸方向の一端側への移動が解除される。
また、ガイドロッド54に固定された第2連結プレート56も同様に、図12に示すように、摺動孔56aがプローブ本体51の二面幅部51a、51aを摺動し、鉛直方向の上方に移動する。上述したように、第1連結プレート55の連通部55d及び第2連結プレート56の摺動孔56aは、鉛直方向に沿って延在している。そのため、ステップS15のガイドロッド54を持ち上げる動作は、使用者が、プローブ本体51とガイドロッド54の両方を把持し、ガイドロッド54をプローブ本体51に向けて握り込むことで容易に行うことができる。
図10に示すように、ガイドロッド54を持ち上げることで、ガイドロッド54の軸方向の一端部が、挿入防止板44のロッド挿通孔44a、バルブプレート41のロッド挿入孔41b、及びガイドロッド挿入部24の筒孔24aを臨む。そして、試料導入プローブ10のプローブ本体51を真空容器2に収容されたイオン源3に向けて挿入する(ステップS16)。
これにより、図13に示すように、試料保持部52は、プローブ挿通孔42a、ゲート側挿通孔43a、バルブ側試料導入孔41a及び試料導入孔21aを通過して、真空容器2内に挿入される。また、プローブ本体51が挿入されることで、プローブ本体51と二面幅部51a、51aを介して連結された第2連結プレート56も、真空容器2に向けて移動する。そのため、第2連結プレート56に固定されたガイドロッド54も、プローブ本体51と共に真空容器2に向けて移動する。
そして、ガイドロッド54の第2ガイド部54bは、第1連結プレート55の解除孔55cを挿通する。また、第1ガイド部54aは、挿入防止板44のロッド挿通孔44a、バルブプレート41のロッド挿入孔41bを介してガイドロッド挿入部24の筒孔24a内に挿入される。
なお、試料保持部52における軸心周りの回転方向の向きがイオン源3に対して正しくない姿勢で挿入された場合、試料保持部52がイオン源3と干渉したり、イオン源3の高電圧部により試料保持部52が破損したり、するおそれがある。しかしながら、本例の質量分析装置1では、試料保持部52が正しくない姿勢で挿入された場合、ガイドロッド54がロッド挿通孔44aやガイドロッド挿入部24に挿入されず、ガイドロッド54が挿入防止板44やバルブプレート41等に当接する。
これに対して、試料保持部52が正しい姿勢で挿入された場合、上述したように、第1ガイド部54aは、挿入防止板44のロッド挿通孔44a、バルブプレート41のロッド挿入孔41bを介してガイドロッド挿入部24の筒孔24a内に挿入される。これにより、本例の質量分析装置1によれば、試料保持部52が誤った姿勢で挿入されることを防ぐことができる。ガイドロッド54、挿入防止板44及びガイドロッド挿入部24により質量分析装置1の第3ストッパ機構が構成される。
次に、プローブ本体51を更に挿入し、試料保持部52をイオン源3に設置する(ステップS17)。これにより、本例の質量分析装置1を用いた質量導入作業が完了する。
本例の質量分析装置1によれば、第1ストッパ機構であるガイドロッド54と第1連結プレート55によってプローブ本体51が使用者の意図に反してプローブ接続部23の筒孔23a内や真空容器2内に引き込まれることを防ぐことができる。また、第1ストッパ機構が解除されても、バルブ開閉機構22が閉じている場合には、第2ストッパ機構である挿入防止板44及びガイドロッド54によってプローブ本体51の挿入動作を規制することができる。さらに、第3ストッパ機構であるガイドロッド54とガイドロッド挿入部24によって、試料保持部52を正しい姿勢でイオン源3まで挿入させることができる。
このように、使用者の誤操作が、1本のガイドロッド54の操作に対して3つのストッパ機構によって防止されるため、試料を導入する作業を容易に行うことができる。さらに、第1ストッパ機構、第2ストッパ機構及び第3ストッパ機構を1本のガイドロッド54に集約されているため、試料導入プローブ10にそれぞれに対応する部材を設ける必要がなく、試料導入プローブ10の小型化を図ることもできる。
また、第2ストッパ機構の解除動作がバルブ開閉機構22の開放動作に連動しているため、試料の導入作業を容易に行うことができる。
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
なお、上述した実施の形態例では、フランジ部21とバルブプレート41とを別部材とした例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、フランジ部21とバルブプレート41を一体に構成してもよい。すなわち、フランジ部21に回動部材42を回動可能に取り付けると共に、フランジ部21によって密閉ゲート43を摺動可能に支持させてもよい。
さらに、挿入防止板44を回動部材42に設けた例を説明したが、これに限定されるものではなく、挿入防止板44を密閉ゲート43に設けてもよい。この場合、挿入防止板44に設けたロッド挿通孔44aは、密閉ゲート43に設けたゲート側挿通孔43aの鉛直方向の下方に配置される。
また、上述した実施の形態例では、回動部材42の回動動作によってバルブ開閉機構22の開閉動作を行った例を説明したが、バルブ開閉機構22の開閉動作を行う構成は、これに限定されるものではない。例えば、密閉ゲート43を開閉レバー45によって直接摺動させるスライド型のバルブ開閉機構や、ロータリー型のバルブ開閉機構を用いてもよい。なお、いずれのバルブ開閉機構においても挿入防止板44の動作は、バルブの開閉動作と連動するものである。
さらに、上述した実施の形態例では、ガイドロッド54が挿入されるガイドロッド挿入部24を試料導入孔21aの鉛直方向の下方に配置した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ガイドロッド挿入部24を試料導入孔21aの鉛直方向の上方や、水平方向の左右に配置してもよい。
また、ガイドロッド54が初期状態では、その自重により鉛直方向に沿って下がる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、コイルばね、板ばねやゴム等の付勢部材によってガイドロッド54をプローブ本体51から離反させる方向に付勢させてもよく、あるいはガイドロッド54をプローブ本体51に接近する方向に付勢させてもよい。
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。