JP2019061837A - 電極複合体並びにそれを用いた電極複合体群、微生物燃料電池及び水処理装置 - Google Patents

電極複合体並びにそれを用いた電極複合体群、微生物燃料電池及び水処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】屋外のような環境であっても、カソードへ酸素を十分に供給し、電池特性の低下を抑制すること。【解決手段】酸素供給部4側に設けられた筐体部40は、カバー部41を支持し、カソード集電部37が電気的に接続されるようにカソード集電部37をカソード30に固定するカソード側支持部42を有する。また、筐体部40は、カバー部41を支持し、アノード集電部38が電気的に接続されるようにアノード集電部38をアノード34に固定するアノード側支持部43を有する。そして、電極複合体100では、カバー部41、カソード側支持部42及びアノード側支持部43により酸素供給空間45が形成され、酸素供給空間45を通じて酸素供給部4に酸素が供給される。【選択図】図10

Description

本発明は、電極複合体並びにそれを用いた電極複合体群、微生物燃料電池及び水処理装置に関する。詳細には本発明は、廃水を浄化し、かつ、電気エネルギーを生成することが可能な電極複合体並びにそれを用いた電極複合体群、微生物燃料電池及び水処理装置に関する。
微生物燃料電池は、廃水中に含まれる有機物の化学エネルギーを微生物の触媒作用(代謝反応、生物化学的変換)によって電気エネルギーに変換しつつ、その有機物を酸化分解する装置である。つまり、微生物燃料電池は、微生物の働きによって有機物から直接的に電気エネルギーを生産する。そのため、微生物燃料電池は、有機物からバイオガスへの変換ステップを利用する従来のエネルギー回収システムに比べて、エネルギー回収効率の向上が期待できる。また、微生物燃料電池は、発電のみならず、廃水処理、有機性廃棄物処理、有機性廃棄物処理の付帯設備等としても利用できる。
微生物燃料電池は、微生物を保持するアノードと、酸化性物質に接触するカソードとを備えている。このような微生物燃料電池として、従来、中空部と、中空部に酸素を供給する酸素供給部と、中空部に供給された酸素を透過する酸素透過部とを有する中空部材を備える電極複合体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、当該電極複合体は、酸素透過部において中空部材の外側に設けられ、かつ、酸素透過部側から、酸素透過性を有する撥水層と導電層とが積層されてなる電極と、中空部に設けられ、耐圧性を有する緩衝部材と、を備えることが開示されている。そして、当該複合電極体は、酸素供給部から酸素透過部にかけて通気性を有することが開示されている。
国際公開第2016/194374号
特許文献1の電極複合体は、上述のように中空部材の内部に緩衝部材を備えている。そのため、高い水圧環境下においても、カソードへ十分に酸素を供給するための空間が確保されていることから、電池特性の低下を抑制して安定的に電気エネルギーを生産することが可能となる。
ところで、微生物燃料電池及び水処理装置は、実際に使用される環境が屋外である場合も少なくない。そのため、屋外での使用に適しており、電池特性に優れた微生物燃料電池及び水処理装置が望まれている。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、屋外のような環境であっても、カソードへ酸素を十分に供給し、電池特性の低下を抑制することが可能な電極複合体並びにそれを用いた電極複合体群、微生物燃料電池及び水処理装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様に係る電極複合体は、中空部と、中空部に酸素を供給する酸素供給部と、中空部に供給された酸素を透過する酸素透過部とを有し、酸素供給部から酸素透過部にかけて通気性を有する中空部材を備える。また、電極複合体は、酸素透過部において中空部材の外側に設けられ、かつ、酸素透過部側から、酸素透過性を有する撥水層と導電層とが積層されてなるカソードと、カソードに対して中空部材の反対側に設けられたアノードと、を備える。また、電極複合体は、カソードと電気的に接続されたカソード集電部と、アノードと電気的に接続されたアノード集電部と、中空部材において酸素供給部側に設けられた筐体部と、を備える。筐体部は、酸素供給部を覆うカバー部と、カバー部を支持し、カソード集電部が電気的に接続されるようにカソード集電部をカソードに固定するカソード側支持部を有する。また、筐体部は、カバー部を支持し、アノード集電部が電気的に接続されるようにアノード集電部をアノードに固定するアノード側支持部を有する。そして、電極複合体では、カバー部、カソード側支持部及びアノード側支持部により酸素供給空間が形成され、酸素供給空間を通じて酸素供給部に酸素が供給される。
本発明の第二の態様に係る電極複合体群は、電極複合体を複数備える電極複合体群であって、電極複合体群は、複数の電極複合体における各カソード集電部と電気的にそれぞれ接続されたカソード集電統合部を備える。また、電極複合体群は、複数の電極複合体における各アノード集電部と電気的にそれぞれ接続されたアノード集電統合部と、を備える。
本発明の第三の態様に係る微生物燃料電池は、電極複合体を備え、アノードは微生物を担持する。
本発明の第四の態様に係る微生物燃料電池は、電極複合体群を備え、アノードは微生物を担持する。
本発明の第五の態様に係る水処理装置は、電極複合体を備え、アノードは被処理液を浄化する微生物を担持する。
本発明の第六の態様に係る水処理装置は、電極複合体群を備え、アノードは被処理液を浄化する微生物を担持する。
本発明によれば、屋外のような環境であっても、カソードへ酸素を十分に供給し、電池特性の低下を抑制することが可能な電極複合体並びにそれを用いた電極複合体群、微生物燃料電池及び水処理装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係る中空部材の一例を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る緩衝部材の一例を示す斜視図である。 中空部材及び緩衝部材を組み合わせた状態を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る電極本体の一例を、分解した状態で示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る電極本体を示す平面図である。 本発明の実施形態に係る電極本体の他の例を、分解した状態で示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る袋状の中空部材の製造方法の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係る袋状の中空部材の製造方法の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係る電極本体のカソードに酸素透過層を組み合わせた状態を示す分解斜視図である。 本発明の実施形態に係る電極複合体の一例を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る電極複合体の一例を示す平面図である。 図10において、カソード側を拡大したA−A線に沿った断面図である。 図10において、アノード側を拡大したB−B線に沿った断面図である。 本発明の実施形態に係る電極複合体群の一例を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る電極複合体群の一例を示す平面図である。 本発明の実施形態に係る電極複合体群の他の例を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る電極複合体群の他の例を示す平面図である。 カソード側連結筐体部を筐体部に締結させた側面の一例を示す模式図である。 アノード側連結筐体部を筐体部に締結させた側面の一例を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る中空部材に貫通孔を形成した例を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る固定部材による固定方法の一例を示す正面図である。 本発明の実施形態に係る固定部材による固定方法の一例を示す側面図である。 本発明の実施形態に係る固定部材による固定方法の他の例を示す側面図である。 本発明の実施形態に係る固定部材による固定方法の他の例を示す側面図である。 本発明の実施形態に係る電極複合体群の他の例を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る電極複合体群の他の例を示す平面図である。 本発明の実施形態に係る微生物燃料電池の一例を示す斜視図である。 図27中のC−C線に沿った断面図である。
以下、本実施形態に係る電極複合体、電極複合体群、微生物燃料電池及び水処理装置について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
[電極複合体]
本実施形態に係る電極複合体100は、図1〜図3に示すように、内部に中空部1を有する中空部材10を備えている。中空部材10は、図1に示すように略U字状の枠部材であり、上部が開口している。つまり、中空部材10は、2本の第一柱状部材2の底部を第二柱状部材3で連結した枠部材であり、第一柱状部材2及び第二柱状部材3で囲繞された内部空間に中空部1が形成されている。そして、中空部材10は、中空部1に酸素を供給する酸素供給部4と、中空部1に供給された酸素を透過する酸素透過部5とを有する。なお、図1において、酸素供給部4は中空部材10の上面に設けられた開口であり、酸素透過部5は中空部材10の右側面6a及び左側面6bに設けられた開口である。
本実施形態に係る電極複合体100は、図2及び図3に示すように、中空部1に設けられる緩衝部材20を備えていてもよい。本実施形態において、緩衝部材20は、直方体状であり、右側壁21a、左側壁21b、前壁21c及び後壁21dを備え、これらにより内部空間が形成されている。緩衝部材20の上面は、酸素(空気)が通気できるように開口されている。そして、図3に示すように、緩衝部材20は、中空部材10の中空部1内に配設される。なお、中空部材10の内部に緩衝部材20を配設した場合、中空部材10の右側面6aと緩衝部材20の右側壁21aは略面一になっていることが好ましく、中空部材10の左側面6bと緩衝部材20の左側壁21bは略面一になっていることが好ましい。
図4に示すように、本実施形態に係る電極複合体100は、酸素透過部5において中空部材10の外側に設けられるカソード30を備えている。カソード30は、酸素透過部5側から、酸素透過性を有する撥水層31と導電層32とが積層されて構成されている。また、中空部材10の右側面6aは、カソード30の撥水層31の外周部と接合している。そのため、後述するように、電極複合体100が電解液中に浸漬した場合、撥水層31の外周部と右側面6aとの接合部から中空部材10の内部空間に、電解液が流入することを抑制できる。
中空部材10の内部空間に緩衝部材20を配置した場合、電極複合体100を電解液に浸漬し、カソード30に水圧がかかったとしても緩衝部材20によってカソード30が保持される。そのため、カソード30が中空部材10の内部空間に湾曲することが抑制される。その結果、中空部材10の酸素供給部4から酸素透過部5への通気性が十分に確保されるため、カソード30の撥水層31への酸素供給性を向上させることが可能となる。
電極複合体100では、中空部材10の酸素供給部4から中空部1に酸素(空気)が供給される。そして、酸素供給部4から中空部1に供給された酸素が、中空部材10の酸素透過部5を通じて、カソード30の撥水層31に供給される。つまり、本実施形態では、中空部材10は、酸素供給部4から酸素透過部5にかけて、通気性を有している。
電極複合体100において、酸素供給部4から酸素透過部5にかけてのISO透気度は、1×10−5μm/Pa・s〜100μm/Pa・sであることが好ましい。つまり、酸素供給部4から緩衝部材20及び酸素透過部5を通過し、カソード30の撥水層31の表面に至るまでのISO透気度が上記範囲内であることが好ましい。透気度は、単位面積、単位圧力差及び単位時間当たりに透過する空気の平均流量であり、その数値が高いほど空気が通過しやすい。電極複合体100がこのような範囲の透気度を有していることにより、撥水層31に十分な酸素を供給することができ、安定的な性能を有する微生物燃料電池及び水処理装置を実現することが可能となる。
具体的には、電極複合体100のISO透気度が1×10−5μm/Pa・s以上であることにより、酸素透過性が向上し、酸素と撥水層31及び導電層32との接触率を高めることができる。なお、電極複合体100のISO透気度は高い方が好ましく、上限は特に限定されないが、例えば100μm/Pa・sとすることができる。酸素供給部4から酸素透過部5にかけてのISO透気度は、2×10−5μm/Pa・s以上であることが好ましく、7.9×10−5μm/Pa・s以上であることがより好ましく、2.9×10−4μm/Pa・s以上であることが特に好ましい。なお、電極複合体100のISO透気度は、日本工業規格JIS P8117:2009(紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法)に沿って測定することができる。
電極複合体100において、カソード30が設けられた面の圧縮強さは、0.01kgf/cm〜10kgf/cmであることが好ましい。具体的には、図4に示す電極複合体100の場合、緩衝部材20におけるカソード30が積層された右側壁21a及び左側壁21bの圧縮強さが、0.01kgf/cm〜10kgf/cmであることが好ましい。電極複合体100の圧縮強さがこの範囲内であることにより、電極複合体100を大型化してカソード30に大きな水圧がかかった場合でも、カソード30の湾曲を抑制して平面状態を保持し、高い酸素透過性を維持することが可能となる。なお、圧縮強さは、材料が圧縮力を受けて変形や破壊するときの圧縮荷重を、材料の断面積で除した値である。そして、本明細書における圧縮強さは、国際標準化機構が規定したISO844:2004(硬質発泡プラスチック−圧縮特性の測定)に従い、相対変形が10%以内である場合に到達した圧縮応力を示している。そのため、電極複合体100における、カソード30が設けられた面の圧縮強さは、ISO844:2004に沿って測定することができる。
上述のように、緩衝部材20は、直方体状であり、酸素透過性を確保するために上面が開口し、さらに右側壁21a、左側壁21b、前壁21c及び後壁21dにより内部空間が形成されている。そして、緩衝部材20の圧縮強さをより向上させるため、緩衝部材20の内部空間に支持部材22を設けてもよい。支持部材22を設けることで、カソード30と対向する緩衝部材20の右側壁21a及び左側壁21bの間を支持して補強することから、上述の圧縮強さを高め、カソード30の変形をより抑制することが可能となる。
支持部材22の形状は、緩衝部材20の圧縮強さを高めることができるならば特に限定されない。具体的には、図5(a)に示すように、緩衝部材20は内部に板部材22aを備え、緩衝部材20における、中空部材10とカソード30との積層方向Xに沿った断面の形状がトラス状であることが好ましい。つまり、支持部材22は板部材22aからなり、板部材22a並びに緩衝部材20の右側壁21a、左側壁21b、前壁21c及び後壁21dによりトラス構造を形成することが好ましい。このような三角形を基本単位とし、当該三角形を複数組み合わせたトラス構造を形成することで、緩衝部材20の安定性が向上し、圧縮強さをより向上させることが可能となる。
図5(b)に示すように、緩衝部材20は内部に板部材22bを備え、緩衝部材20における、中空部材10とカソード30との積層方向Xに沿った断面の形状が波形状であることも好ましい。つまり、支持部材22は波形の板部材22bからなり、さらに板部材22bの頂点22cは、緩衝部材20の右側壁21a及び左側壁21bと接触している。このような波形状の支持部材22を備えることによっても緩衝部材20の安定性が向上し、圧縮強さをより向上させることが可能となる。
また、図5(c)に示すように、緩衝部材20は、一又は二以上の円筒部材を備えることも好ましい。つまり、支持部材22は円筒状である円筒部材22dからなり、さらに円筒部材22dが、緩衝部材20の右側壁21a、左側壁21b、前壁21c及び後壁21dに接触するように、複数配置されている。このように、複数の円筒部材22dを配置することもよっても緩衝部材20の安定性が向上し、圧縮強さをより向上させることが可能となる。
支持部材22は、図2〜図4に示すように、中空部材10とカソード30との積層方向Xに垂直な鉛直方向Yに沿って、緩衝部材20の上面から底面にかけて緩衝部材20の内部全体に設けられていてもよい。また、支持部材22は、鉛直方向Yにおける緩衝部材20の上面と底面の中央部にのみ設けられていてもよい。さらに支持部材22は、積層方向X及び鉛直方向Yに垂直な奥行方向Zに沿って、緩衝部材20の前壁21cから後壁21dにかけて緩衝部材20の内部全体に設けられていてもよい。また、支持部材22は、奥行方向Zにおける緩衝部材20の前壁21cと後壁21dの中央部にのみ設けられていてもよい。
図5において、支持部材22を構成する板部材は、鉛直方向Yに沿って配置されている。つまり、XZ平面に沿った断面が、トラス状や波形状、円状になるように板部材が配置されている。しかし、支持部材22を構成する板部材は、奥行方向Zに沿って配置されていてもよい。つまり、XY平面に沿った断面が、トラス状や波形状、円状になるように板部材が配置されていてもよい。
緩衝部材20を構成する部材の材料は特に限定されないが、例えば樹脂、金属、ガラス及び炭素材料からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。また、樹脂としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル及びポリカーボネートからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。また、金属としては、ステンレス鋼及びアルミニウムの少なくとも一方を用いることができる。
なお、上述のように、緩衝部材20の右側壁21a及び左側壁21bを構成する材料は、例えば樹脂、金属、ガラス及び炭素材料からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。ただ、緩衝部材20の右側壁21a及び左側壁21b自体がカソード30からなる構成であってもよい。この場合には、中空部材10の酸素供給部4から供給された酸素が酸素透過部5を通じてカソード30に直接供給されるため、発電性能をより向上させることが可能となる。
緩衝部材20を構成する部材の形状も特に限定されない。ただ、上述のように、本実施形態の電極複合体100は、中空部材10の中空部1に緩衝部材20が挿入された状態で、酸素供給部4から酸素透過部5にかけて通気性を有する必要がある。そのため、緩衝部材20自体も高い通気性を有する必要があることから、緩衝部材20は複数の細孔を有する平板から構成されていることが好ましい。また、緩衝部材20は複数の細孔を有する網目状の構造体から構成されていることも好ましい。さらに緩衝部材20は、複数の細孔が一定のピッチで形成されていることが好ましい。ただ、これらの構成に限定されず、例えば平板の一部が大きく貫通した構造であってもよい。
なお、電極複合体100は、酸素供給部4から酸素透過部5にかけて通気性を有する必要がある。そのため、緩衝部材20は、少なくともカソード30と対向する右側壁21a及び左側壁21bに細孔が形成されていることが好ましい。そして、カソード30と対向していない前壁21c及び後壁21dには細孔が形成されていなくてもよい。支持部材22を構成する材料及び形状も特に限定されないが、緩衝部材20と同様にすることができる。
本実施形態に係る電極複合体100では、図1〜図4に示すように、中空部材10は2本の第一柱状部材2の底部を第二柱状部材3で連結したU字状の枠部材である。そして、中空部材10の上面は開口し、酸素供給部4が形成されている。しかし、本実施形態の電極複合体はこの態様に限定されない。
また、緩衝部材20の底面は板部材で封止してもよく、また後述するように、封止材により封止してもよい。このように板部材や封止材で封止することで、中空部材10や緩衝部材の内部の気相を維持することが可能となる。
また、電極複合体100として、図6に示すような袋状の中空部材10を用いることも好ましい。具体的には、中空部材10は、酸素透過膜を袋状に成形し、その内部に中空部を有するものである。そして、中空部に緩衝部材20を挿入し、さらに袋状の中空部材10の側面11にカソード30を設ける。このような袋状の中空部材10を用いることで、中空部材の構成を簡易なものとすることができる。なお、中空部材10の側面11は、酸素透過性を確保するために、細孔を有し、防水性を有することが好ましい。また、電極複合体100において、袋状の中空部材10の酸素供給部4は上部に設けられた開口であり、酸素透過部5は側面11に設けられた細孔である。
なお、袋状の中空部材10を構成する材料は特に限定されないが、緩衝部材20と同様に、例えば樹脂、金属及び炭素材料からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。また、袋状の中空部材10を構成する部材の形状も特に限定されないが、例えば複数の細孔を有する薄膜で構成されていてもよく、また複数の細孔を有する網目状の構造体から構成されていてもよい。袋状の中空部材10を構成する材料としては、例えば、積水化学工業株式会社製のセルポア(登録商標)を用いることができる。
袋状の中空部材10の製造方法としては、特に限定されないが、例えば2枚のシート10aを重ね合わせた後、シート10aの各辺(両側辺及び底辺)をそれぞれ熱溶着することで袋状の中空部材10を作製することができる。また、2枚のシート10aを重ね合わせる際、図7(a)及び図7(b)に示すように、1枚のシート10aを半分に折り畳んで重ね合わせた後、シート10aの両側辺の内面同士をそれぞれ熱溶着してシール部10bを形成してもよい。このような方法により袋状の中空部材10を作製することで、袋状の中空部材10の底辺が2枚のシート10aを貼り合わせたシール部でなく、一続きのシート10aとなることから、袋状の中空部材10の耐水度を向上させることができる。
また、図8(a)及び図8(b)に示すように、1枚のシート10aを半分に折り畳んで重ね合わせた後、両側辺が袋状の中空部材10の内側になるように折り畳み、シート10aの両側辺の外面同士をそれぞれ熱溶着してシール部10cを形成してもよい。このようにして形成されたシール部10cは、4枚のシート10aが積層された部位を有する。このような方法でシール部10cを形成することにより、図7(a)及び図7(b)の熱溶着方法と比較し、形成された袋状の中空部材10の耐水度を約5割程度向上させることができる。なお、このようなシール部10cは、図7(a)及び図7(b)とは反対側にシート10aを折り畳んで重ね合わせた後、シート10aの両側辺をそれぞれ熱溶着してシール部10cを形成し、その後袋の内側と外側を裏返すことによっても形成することができる。
本実施形態において、カソード30は、酸素透過性を有する撥水層31と、撥水層31に積層されている導電層32とを備えるガス拡散電極からなる。このようなガス拡散電極を用いることにより、気相中の酸素を容易に供給することが可能になる。さらに、例えば水中に溶存する溶存酸素をカソード30へ供給する場合と比べて、次のような利点がある。溶存酸素をカソード30へ供給する場合、廃水などの被処理液(電解液)に含まれる有機性物質の酸化及び発電が溶存酸素の拡散速度によって律速されるという問題がある。これに対し、気相中の酸素の拡散速度は、溶存酸素の拡散速度よりも極めて大きいため、有機性物質の酸化及び発電を効率よく行うことができる。したがって、燃料電池の出力を向上させることが可能となる。
撥水層31は、撥水性と気体透過性とを併せ持つ層である。撥水層31は、微生物燃料電池における電気化学系中の気相と液相とを良好に分離しながら、気相から液相へ向かう気体の移動を許容するように構成される。つまり、撥水層31は、気相における酸素を透過し、導電層32へ移動させるように構成されている。このような撥水層31は、多孔質であることが好ましい。この場合、撥水層31は、高い気体透過性を有することができる。
導電層32は、例えば多孔質な導電性材料と、この導電性材料に担持されている触媒とを備えることが好ましい。なお、導電層32が、多孔質かつ導電性を有する触媒から構成されてもよい。
さらにカソード30は、図9に示すように、撥水層31と導電層32との間に配置され、酸素透過性を有する酸素透過層33をさらに備えていることが好ましい。酸素透過層33は酸素透過性を有するため、導電層32に酸素を供給する機能を有する。
本実施形態におけるカソード30の撥水層31、導電層32及び酸素透過層33について、さらに詳しく説明する。
撥水層31は、酸素を拡散し、導電層32に対し酸素を略均一に供給している。そのため、撥水層31は、当該酸素を拡散できるように、多孔質体であることが好ましい。また、撥水層31は撥水性を有することが好ましい。撥水層31が撥水性を有することにより、結露等により多孔質体の細孔が閉塞し、酸素の拡散性が低下することを抑制できる。また、後述するように、電極複合体100を微生物燃料電池や水処理装置に用いた場合、撥水層31の内部に液相が染み込み難くなり、撥水層31が酸素と接触しやすくなる。
撥水層31を構成する材料としては、酸素を拡散できれば特に制限されない。撥水層31を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレンからなる群より選ばれる少なくとも一つを使用することができる。これらの材料は、多孔質体を形成しやすく、さらに撥水性も高いため、細孔の閉塞を抑制してガス拡散性を向上させることができる。また、撥水層31は、上記材料からなる不織布やフィルムであることが好ましい。なお、撥水層31が上記材料のフィルムからなる場合には、撥水層31及び導電層32の積層方向Xに複数の貫通孔を有することが好ましい。
また、撥水層31は撥水性を高めるために、必要に応じて撥水剤を用いて撥水処理を施してもよい。具体的には、撥水層31を構成する多孔質体に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水剤を付着させ、撥水性を向上させてもよい。
導電層32は、多孔質な導電性材料と、当該導電性材料に担持されている触媒とを備える構成とすることができる。導電層32における導電性材料は、例えば炭素系物質、導電性ポリマー、半導体及び金属からなる群より選ばれる少なくとも一つの材料を用いることができる。炭素系物質の例としては、カーボンペーパー、カーボンクロス及び黒鉛シートからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。また、導電層32は、カーボンペーパー、カーボンクロス及び黒鉛シートからなる群より選ばれる一種からなるものであってもよく、これらを複数積層してなる積層体でもよい。炭素繊維の不織布であるカーボンペーパー、炭素繊維の織布であるカーボンクロス、及び黒鉛からなる黒鉛シートは、高い耐食性を有し、かつ、電気抵抗率が金属材料と同等であるため、カソードの耐久性と導電性を両立することが可能となる。
導電層32は黒鉛を含有し、さらに黒鉛におけるグラフェン層は、撥水層31及び導電層32の積層方向Xに垂直な鉛直方向Yに沿って配列していることが好ましい。炭素の六員環構造からなるグラフェン層がこのように配列していることにより、撥水層31及び導電層32の積層方向Xの導電率よりも、当該積層方向Xに垂直な鉛直方向Yの導電率が向上する。そのため、図28に示すように、局部電池反応により生成した電子を外部回路70との間で導通させやすくなり、電池反応の効率をより向上させることが可能となる。なお、導電層32は、黒鉛シートからなることが特に好ましい。
導電性ポリマーとは、導電性を有する高分子化合物の総称である。導電性ポリマーとしては、例えば、アニリン、アミノフェノール、ジアミノフェノール、ピロール、チオフェン、パラフェニレン、フルオレン、フラン、アセチレン若しくはそれらの誘導体を構成単位とする単一モノマーの重合体や、二種以上のモノマーの共重合体が挙げられる。具体的には、導電性ポリマーとして、例えば、ポリアニリン、ポリアミノフェノール、ポリジアミノフェノール、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリフルオレン、ポリフラン、ポリアセチレン等が挙げられる。金属製の導電性材料としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの導電性金属が挙げられる。入手の容易性、コスト、耐食性、耐久性等を考慮した場合、導電性材料は炭素系物質であることが好ましい。
また、導電性材料の形状は、粉末状又は繊維状であることが好ましい。また、導電性材料は、支持体に支持されていてもよい。支持体とは、それ自身が剛性を有し、ガス拡散電極に一定の形状を付与することのできる部材をいう。支持体は絶縁体であっても導電体であってもよい。支持体が絶縁体である場合、支持体としては、例えばガラス、プラスチック、合成ゴム、セラミックス、耐水又は撥水処理した紙、木片などの植物片、骨片や貝殻などの動物片等が挙げられる。多孔質構造の支持体としては、例えば、多孔質セラミック、多孔質プラスチック、スポンジ等が挙げられる。支持体が導電体である場合、支持体としては、例えば、カーボンペーパー、カーボンファイバー、炭素棒などの炭素系物質、金属、導電性ポリマー等が挙げられる。支持体が導電体の場合には、炭素系材料を担持した導電性材料が支持体の表面上に配置されることで、支持体が集電体としても機能し得る。
ここで、導電層32における触媒は、金属原子がドープされている炭素系材料であることが好ましい。金属原子としては特に限定されないが、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、及び金からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。この場合、炭素系材料が、特に酸素還元反応及び酸素発生反応を促進させるための触媒として優れた性能を発揮する。炭素系材料が含有する金属原子の量は、炭素系材料が優れた触媒性能を有するように適宜設定すればよい。
炭素系材料には、更に窒素、ホウ素、硫黄及びリンから選択される一種以上の非金属原子がドープされていることが好ましい。炭素系材料にドープされている非金属原子の量も、炭素系材料が優れた触媒性能を有するように適宜設定すればよい。
炭素系材料は、例えばグラファイト及び無定形炭素等の炭素源原料をベースとし、この炭素源原料に金属原子と、窒素、ホウ素、硫黄及びリンから選択される一種以上の非金属原子とをドープすることで得られる。
炭素系材料にドープされている金属原子と非金属原子との組み合わせは、適宜選択される。特に、非金属原子が窒素を含み、金属原子が鉄を含むことが好ましい。この場合、炭素系材料が特に優れた触媒活性を有することができる。なお、非金属原子が窒素のみであってもよい。また、金属原子が鉄のみであってもよい。
非金属原子が窒素を含み、金属原子がコバルトとマンガンとのうち少なくとも一方を含んでもよい。この場合も、炭素系材料が特に優れた触媒活性を有することができる。なお、非金属原子が窒素のみであってもよい。また、金属原子がコバルトのみ、マンガンのみ、あるいはコバルト及びマンガンのみであってもよい。
炭素系材料の形状は、特に制限されない。例えば、炭素系材料は、粒子状の形状を有してもよく、またシート状の形状を有してもよい。シート状の形状を有する炭素系材料の寸法は特に制限されず、例えばこの炭素系材料が微小な寸法であってもよい。シート状の形状を有する炭素系材料は、多孔質であってもよい。シート状の形状を有し、かつ、多孔質な炭素系材料は、例えば織布状、不織布状等の形状を有することが好ましい。このような炭素系材料は、導電性材料が無くても導電層32を構成することができる。
導電層32における触媒として構成される炭素系材料は、次のように調整することができる。まず、例えば窒素、ホウ素、硫黄及びリンからなる群より選ばれる少なくとも一種の非金属を含む非金属化合物と、金属化合物と、炭素源原料とを含有する混合物を準備する。そして、この混合物を、800℃以上1000℃以下の温度で、45秒以上600秒未満加熱する。これにより、触媒として構成される炭素系材料を得ることができる。
ここで、炭素源原料としては、上述の通り、例えばグラファイト又は無定形炭素を使用することができる。さらに、金属化合物としては、炭素源原料にドープされる非金属原子と配位結合し得る金属原子を含む化合物であれば、特に制限されない。金属化合物は、例えば金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、臭化物、ヨウ化物、フッ化物などのような無機金属塩、酢酸塩などの有機金属塩、無機金属塩の水和物、及び有機金属塩の水和物からなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することができる。例えばグラファイトに鉄がドープされる場合には、金属化合物は塩化鉄(III)を含有することが好ましい。また、グラファイトにコバルトがドープされる場合には、金属化合物は塩化コバルトを含有することが好ましい。また、炭素源原料にマンガンがドープされる場合には、金属化合物は酢酸マンガンを含有することが好ましい。金属化合物の使用量は、例えば炭素源原料に対する金属化合物中の金属原子の割合が5〜30質量%の範囲内となるように決定されることが好ましく、更にこの割合が5〜20質量%の範囲内となるように決定されることがより好ましい。
非金属化合物は、上記の通り、窒素、ホウ素、硫黄及びリンからなる群より選ばれる少なくとも一種の非金属の化合物であることが好ましい。非金属化合物としては、例えば、ペンタエチレンヘキサミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチレンテトラミン、エチレンジアミン、オクチルボロン酸、1,2−ビス(ジエチルホスフィノエタン)、亜リン酸トリフェニル、ベンジルジサルフィドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を使用することができる。非金属化合物の使用量は、炭素源原料への非金属原子のドープ量に応じて適宜設定される。非金属化合物の使用量は、金属化合物中の金属原子と、非金属化合物中の非金属原子とのモル比が、1:1〜1:2の範囲内となるように決定されることが好ましく、1:1.5〜1:1.8の範囲内となるように決定されることがより好ましい。
触媒として構成される炭素系材料を調整する際の、非金属化合物と金属化合物と炭素源原料とを含有する混合物は、例えば次のようにして得られる。まず、炭素源原料と金属化合物と非金属化合物とを混合し、更に必要に応じてエタノール等の溶媒を加えて全量を調整する。これらを更に超音波分散法により分散させる。続いて、これらを適宜の温度(例えば60℃)で加熱した後に、混合物を乾燥して溶媒を除去する。これにより、非金属化合物と金属化合物と炭素源原料とを含有する混合物が得られる。
次に、得られた混合物を、例えば還元性雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で加熱する。これにより、炭素源原料に非金属原子がドープされ、さらに非金属原子と金属原子とが配位結合することで金属原子もドープされる。加熱温度は800℃以上1000℃以下の範囲内であることが好ましく、加熱時間は45秒以上600秒未満の範囲内であることが好ましい。加熱時間が短時間であるため、炭素系材料が効率よく製造され、しかも炭素系材料の触媒活性が更に高くなる。なお、加熱処理における、加熱開始時の混合物の昇温速度は、50℃/s以上であることが好ましい。このような急速加熱は、炭素系材料の触媒活性を更に向上する。
また、炭素系材料を、更に酸洗浄してもよい。例えば炭素系材料を、純水中、ホモジナイザーで30分間分散させ、その後この炭素系材料を2M硫酸中に入れて、80℃で3時間攪拌してもよい。この場合、炭素系材料からの金属成分の溶出が抑えられる。
このような製造方法により、不活性金属化合物及び金属結晶の含有量が著しく低く、かつ、導電性の高い炭素系材料が得られる。
酸素透過層33の材料としては、酸素透過性を有し、さらに好ましくは撥水性能を有する材料であれば特に限定されない。酸素透過層33の材料としては、例えばシリコーンゴム及びポリジメチルシロキサンの少なくともいずれか一方を用いることができる。これらの材料は、シリコーンの分子構造に由来する高い酸素溶解性及び酸素拡散性を有しているため、酸素透過性に優れている。さらにこれらの材料は、表面自由エネルギーが小さいため、撥水性能にも優れている。そのため、酸素透過層33はシリコーンを含有することが特に好ましい。
また、酸素透過層33の材料としては、エチルセルロース、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブタジエン、ポリテトラフルオロエチレン及びブチルゴムからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。これらの材料も高い酸素透過性と撥水性を有しているため、好ましい。
なお、酸素透過層33としては、防水透過膜などの不織布や、ポリエチレン及びポリプロピレンの不織布も用いることができる。具体的には、酸素透過層33としては、ポリテトラフルオロエチレンを延伸加工したフィルムとポリウレタンポリマーを複合化してなるゴアテックス(登録商標)を用いることができる。
導電層32に効率的に酸素を供給するために、図9に示すように、酸素透過層33は、撥水層31及び導電層32と接触していることが好ましい。これにより、導電層32に直接酸素が供給され、さらに導電層32の内部を通じて酸素が触媒に到達するため、後述する局部電池反応が進行しやすくなる。ただ、導電層32に酸素が供給されるならば、撥水層31と酸素透過層33との間や、導電層32と酸素透過層33との間に隙間が存在していてもよい。
また、酸素透過層33は、撥水性能を有することが好ましい。つまり、酸素透過層33は、撥水性能を有するシートであることがより好ましい。後述するように、酸素透過層33は、酸素を含む気相と、廃水槽の内部に保持された、液相としての電解液とを分離するように配置されている。ここでいう「分離」とは、物理的に遮断することをいう。これにより、電解液中の有機物や窒素含有化合物が気相側に移動することを抑制できる。
さらに酸素透過層33は、使用する材料により酸素透過量を調整し、気相側の酸素分子が電解液に過度に透過することを抑制できる。そのため、後述するように、廃水槽内を、酸素が存在しない嫌気性条件により確実に保つことができる。この結果、廃水槽内において好気性微生物の繁殖が抑えられるので、嫌気性条件下で液体処理を行うことができる。
図4に示すように、本実施形態に係る電極複合体100は、カソード30に対して中空部材10の反対側に設けられたアノード34を備える。アノード34は、導電性を有する導電体シート有する。導電体シートとしては、多孔質の導電体シート、織布状の導電体シート及び不織布状の導電体シートからなる群より選ばれる少なくとも一つを使用することができる。また、導電体シートは複数のシートを積層した積層体でもよい。アノード34の導電体シートとして、このような複数の細孔を有するシートを用いることにより、後述する局部電池反応で生成した水素イオンがイオン移動層35の方向へ移動しやすくなり、酸素還元反応の速度を高めることが可能となる。また、イオン透過性を向上させる観点から、アノード34の導電体シートは、カソード30及びアノード34の積層方向X、つまり厚さ方向に連続した空間(空隙)を有していることが好ましい。
当該導電体シートは、厚さ方向に複数の貫通孔を有する金属板であってもよい。そのため、アノード34の導電体シートを構成する材料としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル及びチタンなどの導電性金属、並びにカーボンペーパー、カーボンフェルトからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。
図4に示すように、本実施形態に係る電極複合体100は、アノード34と、水素イオンを透過するイオン移動層35と、イオン移動層35を介してアノード34と隔てられた、カソード30とを備えることが好ましい。
イオン移動層35は、アノード34で生成した水素イオンを透過し、カソード30側へ移動させる機能を有する。イオン移動層35としてはイオン交換樹脂を用いたイオン交換膜を使用することができる。イオン交換樹脂としては、例えばデュポン株式会社製のNAFION(登録商標)、並びに旭硝子株式会社製のフレミオン(登録商標)及びセレミオン(登録商標)を用いることができる。
また、イオン移動層35として、水素イオンが透過することが可能な細孔を有する多孔質膜を使用してもよい。つまり、イオン移動層35は、アノード34とカソード30との間を水素イオンが移動するための空間(空隙)を有するシートであってもよい。そのため、イオン移動層35は、多孔質のシート、織布状のシート及び不織布状のシートからなる群より選ばれる少なくとも一つを備えることが好ましい。また、イオン移動層35は、ガラス繊維膜、合成繊維膜、及びプラスチック不織布からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができ、これらを複数積層してなる積層体でもよい。このような多孔質のシートは、内部に多数の細孔を有しているため、水素イオンが容易に移動することが可能となる。なお、イオン移動層35の細孔径は、アノード34からカソード30に水素イオンが移動できれば特に限定されない。
上述のように、イオン移動層35は、アノード34で生成した水素イオンを透過し、カソード30側へ移動させる機能を有する。ただ、例えば、アノード34とカソード30とが接触しない状態で近接していれば、イオン移動層35を設けなくても、水素イオンはアノード34からカソード30へ移動することができる。そのため、本実施形態の電極複合体100において、イオン移動層35は必須の構成要素ではない。しかし、イオン移動層35を設けることにより、アノード34からカソード30へ水素イオンを効率的に移動させることが可能となるため、出力向上の観点からイオン移動層35を設けることが好ましい。
図10及び図11に示すように、本実施形態に係る電極複合体100は、中空部材10において酸素供給部4側に設けられた筐体部40を備える。筐体部40は、カバー部41とカソード側支持部42とアノード側支持部43とを有する。なお、図10及び図11では、上記のような袋状の中空部材10を例として挙げて説明しているが、本実施形態はこの形態に限定されない。
本実施形態では、カソード側支持部42とアノード側支持部43は隙間を有して配置されている。そして、カバー部41、カソード側支持部42及びアノード側支持部43により酸素供給空間45が形成され、酸素供給空間45を通じて酸素供給部4に酸素が供給される。具体的には、酸素供給空間45は、カソード30、アノード34及び筐体部40により形成された開口部とすることもできる。そして、このような酸素供給空間45により、電極複合体100の外側の空間から酸素供給空間45を通じて酸素供給部4に酸素(空気)が供給される。すなわち、電極複合体100の外側の空間と酸素供給部4とは、酸素供給空間45を介して通じている。
筐体部40は、中空部材10、カソード30、アノード34及びイオン移動層35などを含む電極本体36を、カソード側支持部42及びアノード側支持部43で挟み込み、酸素供給部4側を囲うように配置されている。なお、本実施形態では、酸素透過部5における中空部材10の両外側にカソード30がそれぞれ設けられているが、酸素透過部5における中空部材10の一方の面にだけカソード30が設けられていればよく、両面にカソード30が設けられていなくてもよい。
カバー部41は、酸素供給部4を覆っている。具体的には、カバー部41と酸素供給部4は隙間を有して配置されている。すなわち、カバー部41は、酸素供給部4が密閉されないように酸素供給部4を覆っており、酸素供給部4への酸素の供給が完全に遮蔽されないように筐体部40が配置されている。
このように、酸素供給部4がカバー部41によって覆われているため、酸素供給部4への雨露及び粉塵などの異物の進入を抑制することができ、中空部材10の内部に異物が堆積するのを抑制することができる。また、本実施形態では、酸素供給空間45を通じて酸素供給部4に酸素が供給されるため、カソード30への酸素供給経路が遮断又は閉塞されるのを抑制することができる。また、カバー部41は、太陽光の紫外線などをカットすることができるため、中空部材10、カソード30又はアノード34などの部材が劣化するのを抑制することもできる。
なお、カソード30及びアノード34の積層方向Xに垂直な鉛直方向Yにおいて、酸素供給部4とカバー部41における酸素供給部4側の下面との間の距離は、電極本体36の大きさの0.5〜15%であることが好ましい。この範囲を0.5%以上とすることにより、酸素の供給が筐体部40により抑制されることを防止することができる。また、この距離を15%以下とすることにより外部の異物が酸素供給空間45へ進入することを抑制することができる。
カバー部41の形状は、酸素供給部4を覆うことができれば特に限定されず、平板状であってもよいし、湾曲した形状であってもよい。カバー部41は、酸素供給部4をより広く覆うため、カソード30とアノード34との積層方向Xに垂直な鉛直方向Yから見たときに、酸素供給部4よりも大きいことが好ましい。
カソード側支持部42はカバー部41を支持している。具体的には、カソード側支持部42の一方はカバー部41の下面と接するように配置され、カソード側支持部42のもう一方は中空部材10及びカソード30の少なくともいずれか一方と接するように配置されている。また、アノード側支持部43はカバー部41を支持している。具体的には、アノード側支持部43の一方はカバー部41の下面と接するように配置され、アノード側支持部43のもう一方は中空部材10及びアノード34の少なくともいずれか一方と接するように配置されている。
図12に示すように、本実施形態に係る電極複合体100は、カソード30と電気的に接続されたカソード集電部37を備える。例えば図28に示すように、カソード30は、カソード集電部37を介して外部回路70と電気的に接続することができる。また、カソード集電部37はカソード側支持部42に設けられている。そして、カソード集電部37が電気的に接続されるように、カソード側支持部42がカソード集電部37をカソード30に固定している。カソード集電部37は、例えば、カソード側支持部42に設けられた貫通孔を通るようにカソード側支持部42に設けられていてもよく、カソード側支持部42の表面に沿うように設けられていてもよい。なお、上述したように、導電層32は黒鉛を含有し、さらに黒鉛におけるグラフェン層は、撥水層31及び導電層32の積層方向Xに垂直な鉛直方向Yに沿って配列している場合、積層方向Xの導電率よりも、鉛直方向Yの導電率が向上する。そのため、カソード集電部37は、積層方向Xにおいて、導電層32の先端と接続していることが好ましい。
図13に示すように、本実施形態に係る電極複合体100は、アノード34と電気的に接続されたアノード集電部38を備える。例えば図28に示すように、アノード34は、アノード集電部38を介して外部回路70と電気的に接続することができる。また、アノード集電部38はアノード側支持部43に設けられている。そして、アノード集電部38が電気的に接続されるように、アノード側支持部43がアノード集電部38をアノード34に固定している。なお、図13に示すように、アノード34、カソード30及び中空部材10の積層方向Xに対して垂直な鉛直方向Yにおいて、カソード30はアノード34よりも酸素供給部4側に突出していることが好ましい。すなわち、積層方向Xから見た場合に、カソード30がアノードよりも大きくなっていることが好ましい。これにより、カソード側支持部42とカソード30との接触面積を大きくすることができることから、カソード側支持部42によってカソード30にカソード集電部37をより効果的に電気的な接続をすることができる。
カソード集電部37及びアノード集電部38は、例えば導電線や導電性の箔状部材などにより形成することができる。導電線を形成する材料は特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの導電性金属が挙げられる。なお、カソード集電部37は、導電線と導電線を被覆する被覆部を備えていることが好ましい。同様に、アノード集電部38は、導電線と導電線を被覆する被覆部を備えていることが好ましい。被覆部を形成する材料は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの絶縁性樹脂などが挙げられる。
このように、本実施形態に係る電極複合体100は、中空部1と、中空部1に酸素を供給する酸素供給部4と、中空部1に供給された酸素を透過する酸素透過部5とを有し、酸素供給部4から酸素透過部5にかけて通気性を有する中空部材10を備える。また、電極複合体100は、酸素透過部5において中空部材10の外側に設けられ、かつ、酸素透過部5側から、酸素透過性を有する撥水層31と導電層32とが積層されてなるカソード30を備える。また、電極複合体100は、カソード30に対して中空部材10の反対側に設けられたアノード34と、を備える。また、電極複合体100は、カソード30と電気的に接続されたカソード集電部37と、アノード34と電気的に接続されたアノード集電部38と、中空部材10において酸素供給部4側に設けられた筐体部40と、を備える。筐体部40は、酸素供給部4を覆うカバー部41と、カバー部41を支持し、カソード集電部37が電気的に接続されるようにカソード集電部37をカソード30に固定するカソード側支持部42を有する。また、筐体部40は、カバー部41を支持し、アノード集電部38が電気的に接続されるようにアノード集電部38をアノード34に固定するアノード側支持部43を有する。そして、電極複合体100では、カバー部41、カソード側支持部42及びアノード側支持部43により酸素供給空間45が形成され、酸素供給空間45を通じて酸素供給部4に酸素が供給される。そのため、屋外のような環境で電極複合体100を用いた場合であっても、雨露及び粉塵が中空部材10に進入するのを抑制することができる。また、本実施形態に係る電極複合体100では、酸素供給空間を通じて酸素供給部に酸素が供給される。したがって、屋外のような環境であっても、カソード30へ十分に酸素を供給するための空間が確保することができる。したがって、本実施形態に係る電極複合体100によれば、電池特性の低下を抑制して安定的に電気エネルギーを生産することが可能となる。
[電極複合体群]
次に、本実施形態に係る電極複合体群110について説明する。図14及び図15に示すように、本実施形態に係る電極複合体群110は、電極複合体100を複数備える。そして、本実施形態に係る電極複合体群110は、カソード集電統合部51と、アノード集電統合部52と、を備える。
電極複合体100は、アノード34及びカソード30の積層方向Xに、複数の電極複合体100における各アノード34同士が接触しないように空間を有して配置されている。また、電極複合体100は、アノード34及びカソード30の積層方向Xに、電極本体36が略平行になるように配置されている。ただし、本実施形態は、電極複合体100の数及び各電極複合体100の配置などは特に限定されない。
カソード集電統合部51は、複数の電極複合体100における各カソード集電部37と電気的にそれぞれ接続される。具体的には、各電極複合体100のカソード集電部37の一端が、接続部を介してカソード集電統合部51と電気的にそれぞれ接続されている。また、アノード集電統合部52は、複数の電極複合体における各アノード集電部38と電気的にそれぞれ接続される。具体的には、各電極複合体100のアノード集電部38の一端が、接続部を介してアノード集電統合部52と電気的にそれぞれ接続されている。カソード集電統合部51及びアノード集電統合部52は、例えば図28に示すように、外部回路70と電気的に接続することができる。
カソード集電統合部51は、例えば導電線や箔状部材などにより形成することができる。同様に、アノード集電統合部52は、例えば導電線や箔状部材などにより形成することができる。導電線を形成する材料は特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの導電性金属が挙げられる。なお、カソード集電統合部は、導電線と導電線を被覆する被覆部を備えていることが好ましい。同様に、アノード集電統合部52は、導電線と導電線を被覆する被覆部を備えていることが好ましい。被覆部を形成する材料は特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの絶縁性樹脂などが挙げられる。
図16及び図17に示すように、本実施形態に係る電極複合体群110は、カソード側連結筐体部61と、アノード側連結筐体部62と、をさらに備えることが好ましい。
図16及び図17において、カソード側連結筐体部61は、カソード集電統合部51を含んでいる。また、アノード側連結筐体部62は、アノード集電統合部52を含んでいる。カソード集電統合部51は、カソード側連結筐体部61に設けられた貫通孔内に配置されていてもよい。また、図18に示すように、カソード集電統合部51は、カソード側連結筐体部61の表面を這うようにして配置されていてもよい。
カソード側連結筐体部61は、複数の各電極複合体100における各カソード側支持部42をそれぞれ連結させている。具体的には、図16及び図17に示すように、カソード側連結筐体部61は、中空部材10における酸素供給部4側に配置されている。そして、カソード側連結筐体部61は、複数の電極複合体100の積層方向Xに沿って伸張しており、積層方向Xと積層方向Xに垂直な鉛直方向YとのXY断面において、それぞれの電極複合体100を跨ぐようにして配置されている。
カソード側連結筐体部61は、複数の電極複合体100における各筐体部40を収容可能な複数の凹部を有することが好ましい。このような凹部により、カソード側連結筐体部61に対する各電極複合体100の位置を正確に定めることができることから、カソード側連結筐体部61に対する電極複合体100の取り付けを容易にすることができる。カソード側連結筐体部61に設けられる凹部の位置は特に限定されないが、各電極本体36間を流れる電解液が効率的に流れるように、等間隔で配置されていることが好ましい。
アノード側連結筐体部62は、複数の各電極複合体100における各アノード側支持部43をそれぞれ連結させている。具体的には、図16及び図17に示すように、アノード側連結筐体部62は、中空部材10における酸素供給部4側に配置されている。そして、アノード側連結筐体部62は、複数の電極複合体100の積層方向Xに沿って伸張しており、積層方向Xと積層方向Xに垂直な鉛直方向YとのXY断面において、それぞれの電極複合体100を跨ぐようにして配置されている。
アノード側連結筐体部62は、複数の電極複合体100における各筐体部40を収容可能な複数の凹部を有することが好ましい。このような凹部により、アノード側連結筐体部62に対する各電極複合体100の位置を正確に定めることができることから、アノード側連結筐体部62に対する電極複合体100の取り付けを容易にすることができる。アノード側連結筐体部62に設けられる凹部の位置は特に限定されないが、各電極本体36間を流れる電解液が効率的に流れるように、等間隔で配置することが好ましい。
図18に示すように、カソード側連結筐体部61は、カバー部41及びカソード側支持部42の少なくともいずれか一方に、締結部材65によって固定されていることが好ましい。また、図19に示すように、アノード側連結筐体部62は、カバー部41及びアノード側支持部43の少なくともいずれか一方に、締結部材65によって固定されていることが好ましい。このように締結部材65で固定することにより、電極複合体群110の剛性を向上させることができるため、例えば図28のように廃水槽80内の電解液81が流通するような構成であっても、各電極複合体100を廃水槽80内に安定して固定することができる。
締結部材65としては特に限定されないが、例えば、ネジ、ボルト及びナットなどが挙げられる。なお、締結部材65が導電性を有する場合、図18に示すように、カソード集電部37とカソード集電統合部51とが締結部材65を介して電気的に接続されていることが好ましい。また、図19に示すように、アノード集電部38とアノード集電統合部52とが締結部材65を介して電気的に接続されていることが好ましい。これにより、電極複合体群110の剛性の向上に加え、複数の電極複合体100からの集電を容易にすることができる。
図20に示すように、中空部材10における酸素供給部4とは反対側の縁部に貫通孔66が設けられていることが好ましい。貫通孔66は、酸素供給部4から供給された酸素が透過しないように、袋状の中空部材10の縁部の内面を貼り合わせて形成された補強部67が設けられ、補強部67に貫通孔66が形成されている。このような貫通孔66にヒモ状又は棒状の固定部材68を通過させて固定することにより、中空部材10における酸素供給部4側だけでなく、中空部材10における酸素供給部4側の反対側も固定することができる。
図21〜図24に示すように、例えば電極複合体群110を、後述する微生物燃料電池120に用いる場合、廃水槽80に電解液81が保持されており、電極複合体群110は、酸素供給部4が外気に露出するように電解液81に浸漬される。この時、上記のように、固定部材68により中空部材10が廃水槽80の側壁部80a及び底部80bの少なくともいずれか一方に固定されていると、浮力により中空部材10が変形してカソード30への酸素供給経路が湾曲するのを抑制することができる。したがって、固定部材68で中空部材10を固定することにより、カソード30へ酸素を十分に供給し、電池特性の低下を抑制することができる。
固定部材68により中空部材10を固定する方法は特に限定されない。例えば、図21及び図22に示すように、電極複合体100における各貫通孔66にヒモ状の固定部材68を通し、それぞれの電極複合体100を連結させて廃水槽80に固定することができる。また、図23に示すように、ヒモ状の固定部材68に代えて、棒状の固定部材68を用いて中空部材10を廃水槽80に固定することもできる。また、図24に示すように、各電極複合体100と廃水槽80の底部80bとをヒモ状の固定部材68を用いてそれぞれ固定することもできる。
貫通孔66の大きさは特に限定されないが、例えば1mm〜100mmとすることができる。貫通孔66を保護するため、貫通孔66の縁部には、グロメットのような補強部材69を設けることが好ましい。グロメットは、例えば金属、ゴム及びプラスチックなどにより形成することができる。
図25及び図26に示すように、本実施形態に係る電極複合体群110は、複数の電極複合体100における各カソード側支持部42とカソード側連結筐体部61とが一体化されていることが好ましい。また、複数の電極複合体100における各アノード側支持部43とアノード側連結筐体部62とが一体化されていることが好ましい。そして、カバー部41がカソード側連結筐体部61及びアノード側連結筐体部62に支持されることが好ましい。
具体的には、各カソード側支持部42とカソード側連結筐体部61が一体成形されており、複数の電極複合体100全体を酸素供給部4側から覆っている。また、各アノード側支持部43とアノード側連結筐体部62が一体成形されており、複数の電極複合体100全体を酸素供給部4側から覆っている。
本実施形態では、カバー部41は、カソード側連結筐体部61とアノード側連結筐体部62により支持されている。具体的には、カバー部41は、カソード側連結筐体部61とアノード側連結筐体部62を跨ぐように配置されている。本実施形態では、複数のカバー部41が複数の電極複合体100に対応する酸素供給部4をそれぞれ覆っていてもよいが、部品点数を少なくするため、連続する一つのカバー部41が複数の酸素供給部4を覆っていることが好ましい。
このように、カソード側支持部42及びカソード側連結筐体部61並びにアノード側支持部43及びアノード側連結筐体部62がそれぞれ一体化されていることにより、部品点数を大幅に削減することができ、電極複合体群110の組立てを容易にすることができる。
以上のように、本実施形態に係る電極複合体群110は、電極複合体100を複数備える。電極複合体群110は、複数の電極複合体100における各カソード集電部37と電気的にそれぞれ接続されたカソード集電統合部51と、複数の電極複合体100における各アノード集電部38と電気的にそれぞれ接続されたアノード集電統合部52と、を備える。カソード集電統合部51及びアノード集電統合部52は、カソード集電部37及びアノード集電部38と電気的に接続される。したがって、各電極複合体100は、カソード集電統合部51及びアノード集電統合部52を介して電気的に集約されるため、例えば電極複合体100を直列に配置して所望の電気量を得ることができる。
電極複合体群110は、カソード集電統合部51を含み、複数の電極複合体100における各カソード側支持部42をそれぞれ連結させるカソード側連結筐体部61をさらに備えることが好ましい。また、電極複合体群110は、アノード集電統合部52を含み、複数の電極複合体100における各アノード側支持部43をそれぞれ連結させるアノード側連結筐体部62と、をさらに備えることが好ましい。このようなカソード側連結筐体部61及びアノード側連結筐体部62により、各電極複合体100からの集電を容易にすることができる。
電極複合体群110は、複数の電極複合体100における各カソード側支持部42とカソード側連結筐体部61とが一体化され、複数の電極複合体100における各アノード側支持部43とアノード側連結筐体部62とが一体化されることが好ましい。そして、カバー部41がカソード側連結筐体部61及びアノード側連結筐体部62に支持されることが好ましい。このように、カソード側支持部42及びカソード側連結筐体部61並びにアノード側支持部43及びアノード側連結筐体部62がそれぞれ一体化されていることにより、部品点数を大幅に削減することができ、電極複合体群110の組立てを容易にすることができる。
[微生物燃料電池]
次に、本実施形態に係る微生物燃料電池について説明する。本実施形態の微生物燃料電池120は、図27及び図28に示すように、電極複合体100を備え、アノード34は微生物を担持する。また、本実施形態の微生物燃料電池120は、電極複合体群110を備え、アノード34は微生物を担持する。
アノード34は、導電性を有する導電体シートに微生物を担持した構造を有する。導電体シートは、上述したものを用いることができる。アノード34に担持される微生物としては、被処理液(電解液)中の有機物、又は窒素を含む化合物(窒素含有化合物)を分解する微生物であれば特に限定されないが、例えば増殖に酸素を必要としない嫌気性微生物を使用することが好ましい。嫌気性微生物は、被処理液中の有機物を酸化分解するための空気を必要としない。そのため、空気を送り込むために必要な電力を大幅に低減することができる。また、微生物が獲得する自由エネルギーが小さいので、汚泥発生量を減少させることが可能となる。
アノード34は、嫌気性微生物を含むバイオフィルムが重ねられて固定されることで、嫌気性微生物が保持されることが好ましい。なお、バイオフィルムとは、一般に、微生物集団と、微生物集団が生産する菌体外重合体物質(extracellular polymeric substance、EPS)とを含む三次元構造体のことをいう。ただ、嫌気性微生物は、バイオフィルムによらずにアノード34に保持されていてもよい。アノード34に保持される嫌気性微生物は、例えば細胞外電子伝達機構を有する電気生産細菌であることが好ましい。具体的には、嫌気性微生物として、例えばGeobacter属細菌、Shewanella属細菌、Aeromonas属細菌、Geothrix属細菌、Saccharomyces属細菌が挙げられる。
本実施形態の微生物燃料電池120は、上述の電極複合体100を備え、さらにカソード30は撥水層31と導電層32とを備えている。また、導電層32の外側にイオン移動層35を配置している。そして、図28に示すように、カソード30の導電層32及びアノード34は、それぞれ外部回路70と電気的に接続されている。
電極複合体100の底面又は緩衝部材20の底面は、封止材90によって封止されていてもよい。電極複合体100の底面及び緩衝部材20の底面には高い水圧がかかる場合があるため、封止材90によって封止することにより当該底面から電解液81が流入することを防ぎ、緩衝部材20の内部の気相を維持することができる。なお、上述のように、電極複合体100の中空部材10は、カソード30における撥水層31の外周部と接合しているため、電解液が緩衝部材20の内部に流入することを防ぐことができる。封止材90の素材は特に限定されないが、例えば、接着剤やシーラント、パテ、セメントなどを用いることができる。
廃水槽80は、電極複合体100又は電極複合体群110を内部に設置している。この際、中空部材10内部への通気性を確保するために、電極複合体100は、酸素供給部4が外気に露出するように電解液に浸漬される。また、廃水槽80は、内部に電解液81を保持しているが、電解液81が流通するような構成であってもよい。例えば、図27及び図28に示すように、廃水槽80には、電解液81を廃水槽80に供給するための液体供給口82と、処理後の電解液81を廃水槽80から排出するための液体排出口83とが設けられていてもよい。
なお、廃水槽80内は、例えば分子状酸素が存在しない、又は分子状酸素が存在してもその濃度が極めて小さい嫌気性条件に保たれていることが好ましい。これにより、廃水槽80内で、電解液81を酸素と殆ど接触しないように保持することが可能となる。
次に、本実施形態の微生物燃料電池120の作用について説明する。微生物燃料電池120の動作時には、アノード34に、有機物及び窒素含有化合物の少なくとも一方を含有する電解液81を供給し、カソード30に空気(又は酸素)を供給する。この際、空気は、電極複合体100の上部に設けられた酸素供給部4を通じて連続的に供給される。なお、電解液81も、液体供給口82及び液体排出口83を通じて連続的に供給されることが好ましい。
そして、カソード30では、撥水層31により空気が拡散し、導電層32へ到達する。この際、カソード30が酸素透過層33を有している場合、撥水層31により空気が拡散し、酸素透過層33を空気中の酸素が透過し、導電層32へ到達する。また、アノード34では、微生物の触媒作用により、電解液81中の有機物及び/又は窒素含有化合物から水素イオン及び電子を生成する。生成した水素イオンは、イオン移動層35を透過してカソード30側へ移動する。また、生成した電子はアノード34の導電体シートを通じて外部回路70へ移動し、さらに外部回路70からカソード30の導電層32に移動する。そして、導電層32に移動した水素イオン及び電子は、触媒の作用により酸素と結合し、水となって消費される。このとき、外部回路70によって、閉回路に流れる電気エネルギーを回収する。
ここで、本実施形態に係るアノード34には、例えば、電子伝達メディエーター分子が修飾されていてもよい。あるいは、廃水槽80内の電解液81は、電子伝達メディエーター分子を含んでいてもよい。これにより、嫌気性微生物からアノード34への電子移動を促進し、より効率的な液体処理を実現できる。
具体的には、嫌気性微生物による代謝機構では、細胞内又は最終電子受容体との間で電子の授受が行われる。電解液81中にメディエーター分子を導入すると、メディエーター分子が代謝の最終電子受容体として作用し、かつ、受け取った電子をアノード34へと受け渡す。この結果、電解液81における有機物などの酸化分解速度を高めることが可能となる。このような電子伝達メディエーター分子は、特に限定されないが、例えばニュートラルレッド、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸(AQDS)、チオニン、フェリシアン化カリウム、及びメチルビオローゲンからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。
このように、本実施形態に係る微生物燃料電池120は、電極複合体100又は電極複合体群110を備え、アノード34は微生物を担持する。そのため、屋外のような環境で微生物燃料電池120を用いた場合であっても、雨露及び粉塵が中空部材10に進入するのを抑制することができる。また、本実施形態に係る電極複合体100では、酸素供給空間を通じて酸素供給部に酸素が供給される。したがって、屋外のような環境であっても、カソード30へ十分に酸素を供給するための空間が確保することができ、電池特性の低下を抑制して安定的に電気エネルギーを生産することが可能となる。
微生物燃料電池120は、電極複合体100におけるカソード30とアノード34との間に設けられ、プロトン透過性を有するイオン移動層35をさらに備えることが好ましい。イオン移動層35を設けることにより、アノード34からカソード30へ水素イオンを効率的に移動させることが可能となるため、微生物燃料電池120の更なる出力向上を図ることが可能となる。
微生物燃料電池120では、電極複合体100における酸素供給部4は、中空部材10の一面に設けられた開口部であり、電極複合体100は、開口部が外気に露出するように電解液に浸漬されることが好ましい。これにより、電極複合体100の内部に電解液が流入することを抑制し、さらに中空部材10の酸素供給部4から酸素透過部5にかけて高い通気性を確保することが可能となる。
[水処理装置]
次に、本実施形態に係る水処理装置について説明する。本実施形態の水処理装置は、電極複合体100を備え、アノード34は被処理液を浄化する微生物を担持する。また、本実施形態の水処理装置は、電極複合体群110を備え、アノード34は被処理液を浄化する微生物を担持する。
上述のように、本実施形態の微生物燃料電池120は、有機物及び窒素含有化合物の少なくとも一方を含有する電解液81(被処理液)をアノード34に供給している。そして、アノード34に担持された微生物の代謝により、電解液81中の有機物及び/又は窒素含有化合物から水素イオン及び電子と共に、二酸化炭素又は窒素を生成している。
具体的には、例えば電解液81が有機物としてグルコースを含有する場合、以下の局部電池反応により、二酸化炭素、水素イオン及び電子を生成している。
アノード34:C12+6HO→6CO+24H+24e
カソード30:6O+24H+24e→12H
また、電解液81が窒素含有化合物としてアンモニアを含有する場合、以下の局部電池反応により、窒素、水素イオン及び電子を生成している。
アノード34:4NH→2N+12H+12e
カソード30:3O+12H+12e→6H
このように、本実施形態の水処理装置は、微生物燃料電池120を用いることにより、電解液81中の有機物及び窒素含有化合物がアノード34に接触して酸化分解されるため、電解液81を浄化することができる。また、上述のように、廃水槽80に、電解液81を廃水槽80に供給するための液体供給口82と、処理後の電解液81を廃水槽80から排出するための液体排出口83を設け、電解液81を連続的に供給することができる。そのため、アノード34に電解液81を連続的に接触させ、電解液81を効率的に処理することが可能となる。
本実施形態の水処理装置は、電極複合体100におけるカソード30とアノード34との間に設けられ、プロトン透過性を有するイオン移動層35をさらに有することが好ましい。イオン移動層35を設けることにより、アノード34からカソード30へ水素イオンを効率的に移動させることが可能となるため、浄化性能の向上を図ることが可能となる。
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
1 中空部
4 酸素供給部
5 酸素透過部
10 中空部材
30 カソード
31 撥水層
32 導電層
34 アノード
37 カソード集電部
38 アノード集電部
40 筐体部
41 カバー部
42 カソード側支持部
43 アノード側支持部
45 酸素供給空間
51 カソード集電統合部
52 アノード集電統合部
61 カソード側連結筐体部
62 アノード側連結筐体部
100 電極複合体
110 電極複合体群

Claims (10)

  1. 中空部と、前記中空部に酸素を供給する酸素供給部と、前記中空部に供給された酸素を透過する酸素透過部とを有し、前記酸素供給部から前記酸素透過部にかけて通気性を有する中空部材と、
    前記酸素透過部において前記中空部材の外側に設けられ、かつ、酸素透過部側から、酸素透過性を有する撥水層と導電層とが積層されてなるカソードと、
    前記カソードに対して前記中空部材の反対側に設けられたアノードと、
    前記カソードと電気的に接続されたカソード集電部と、
    前記アノードと電気的に接続されたアノード集電部と、
    前記酸素供給部を覆うカバー部と、前記カバー部を支持し、前記カソード集電部が電気的に接続されるように前記カソード集電部を前記カソードに固定するカソード側支持部と、前記カバー部を支持し、前記アノード集電部が電気的に接続されるように前記アノード集電部を前記アノードに固定するアノード側支持部と、を有し、前記中空部材において酸素供給部側に設けられた筐体部と、
    を備え、
    前記カバー部、前記カソード側支持部及び前記アノード側支持部により酸素供給空間が形成され、前記酸素供給空間を通じて酸素供給部に酸素が供給される、電極複合体。
  2. 請求項1に記載の電極複合体を複数備える電極複合体群であって、
    前記電極複合体群は、
    複数の前記電極複合体における前記各カソード集電部と電気的にそれぞれ接続されたカソード集電統合部と、
    複数の前記電極複合体における前記各アノード集電部と電気的にそれぞれ接続されたアノード集電統合部と、
    を備える、電極複合体群。
  3. 前記カソード集電統合部を含み、複数の前記電極複合体における各前記カソード側支持部をそれぞれ連結させるカソード側連結筐体部と、
    前記アノード集電統合部を含み、複数の前記電極複合体における各前記アノード側支持部をそれぞれ連結させるアノード側連結筐体部と、
    をさらに備える、請求項2に記載の電極複合体群。
  4. 複数の前記電極複合体における各前記カソード側支持部と前記カソード側連結筐体部とが一体化され、
    複数の前記電極複合体における各前記アノード側支持部と前記アノード側連結筐体部とが一体化され、
    前記カバー部が前記カソード側連結筐体部及び前記アノード側連結筐体部に支持された、請求項3に記載の電極複合体群。
  5. 請求項1に記載の電極複合体を備え、
    前記アノードは微生物を担持する、微生物燃料電池。
  6. 請求項2〜4のいずれか一項に記載の電極複合体群を備え、
    前記アノードは微生物を担持する、微生物燃料電池。
  7. 前記電極複合体における前記カソードと前記アノードとの間に設けられ、プロトン透過性を有するイオン移動層をさらに備える、請求項5又は6に記載の微生物燃料電池。
  8. 前記電極複合体における酸素供給部は、前記中空部材の一面に設けられた開口部であり、
    前記電極複合体は、前記開口部が外気に露出するように電解液に浸漬される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の微生物燃料電池。
  9. 請求項1に記載の電極複合体を備え、
    前記アノードは被処理液を浄化する微生物を担持する、水処理装置。
  10. 請求項2〜4のいずれか一項に記載の電極複合体群を備え、
    前記アノードは被処理液を浄化する微生物を担持する、水処理装置。
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