JP2019059675A - 糖尿病性神経障害の予防又は治療のための医薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】糖尿病性神経障害の予防又は治療のための医薬の提供。【解決手段】有効成分として4−[5−(ピリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]ピリジン−2−カルボニトリル(一般名:トピロキソスタット)を含有する、糖尿病性神経障害の予防又は治療のための医薬。【選択図】 なし
Description
本発明は、4−[5−(ピリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]ピリジン−2−カルボニトリル(一般名:トピロキソスタット)を有効成分とする、糖尿病性神経障害の予防又は治療のための医薬に関する。
厚生労働省「患者調査」の平成26年調査によると、糖尿病の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は 316万6,000人と増加の一途を辿っている。糖尿病患者では、神経障害、腎症、網膜症といった最小血管合併症が発症する。糖尿病性神経障害は、糖尿病の合併症の中でも多く見られる症状であり、便秘と下痢のくり返し,勃起障害,立ちくらみ、発汗異常などの自律神経障害や感覚鈍麻や異常感覚を呈する感覚神経障害などを発現する。これらは、末梢神経線維の脱落や神経機能の低下によって、体の各部に異常をきたした結果である。多くの場合、足のしびれ、痛みなどの自覚症状に始まり徐々に中枢側の神経へと症状が拡大し、適切な治療を受けないと感覚神経線維の脱落により痛みや熱さを感じることができなくなる。その結果、足潰瘍の形成、さらに放置すると壊疽となり、最悪、下肢切断となり、患者のQuality of life(QOL)は著しく低下する。
日本糖尿病対策推進会議が国内約20万例を対象に行った糖尿病性神経障害の大規模調査で、「神経障害あり」と判断されたのは47%で、そのうちの約4割は足に自覚症状が現れないもののアキレス腱反射や振動覚に異常がみられる「無症候性神経障害」であった。糖尿病性神経障害と診断され、自覚症状が認められる段階において末梢神経生検を実施すると、神経線維数は既に健常人の半数まで減少しているなど、徐々に進行する。特に、神経障害に伴う手足の異常感覚は、ジンジン、ピリピリ等のしびれ感や虫が這っているような異常な感覚を呈する点で、睡眠障害などにより患者のQOLを著しく低下させる。感覚鈍麻は感覚の欠如であり、神経線維の脱落などの器質的変化に起因して発現し、伝導する神経線維数を反映するという。
糖尿病性神経障害の治療方法は、血糖コントロールが基本である。血糖制御に加え、その根治的治療法は確立されていないため、痛みの症状を軽くする対症療法やアルドース還元酵素阻害剤などの神経障害の進行を抑える治療がメインとなる。しかしながら、これらの薬剤は、症状の軽減には効果があるものの、治療効果が不十分で、必ずしも満足できるものではない。
糖尿病性神経障害の原因は持続的な高血糖による末梢神経組織の代謝異常や細小血管の肥厚、狭窄に伴う血流低下とされる。しかしながら、厳格な血糖管理は低血糖や、認知症、網膜症を悪化させるリスクがあり、実行可能性に乏しい。末梢神経組織の血流改善薬も明らかに有効性を示す薬剤はないのが現状である。
糖尿病性神経障害に対する診断、検査指標には、末梢神経の運動神経・感覚神経伝導検査や自律神経の指標である安静時及び深呼吸時心拍変動検査、音叉による振動覚閾値検査、感覚鈍麻・感覚低下の指標であるモノフィラメントによる触覚テスト、尖串による発痛テスト、アキレス腱反射、痛みや異常感覚などに対する自覚症状のアンケート調査などが用いられている。時に、表皮内の小径神経線維の脱落を確認するため神経生検が実施される。
これまで、キサンチンオキシダーゼ阻害剤(XO阻害薬)が臨床的に糖尿病性神経障害に対し有効であるとの報告はない。ストレプトゾトシンで惹起した糖尿病ラットでは、6週後からアロプリノールの50mg/kg/dayを2週間投与した時、運動神経伝導速度、感覚神経伝導速度を有意に改善し、150mg/kg/dayでは圧痛閾値を有意に改善したとの報告がある(非特許文献1)。しかしながら、報告にある有効性を示したアロプリノールの用量は、50mg/kg/day、150mg/kg/dayであるのに対し、臨床的に海外使用されている最大用量は600mg/日(ヒト体重あたり10mg/kg/日)であり、実験結果は実臨床とは乖離している。それに加え、XO阻害剤が実臨床レベルで用いられる用量相当で、糖尿病モデル動物において糖尿病性神経障害に有効であったという報告も無い。
アロプリノールは、高尿酸血症治療に対しては、依然として世界的に安価なことから汎用されているが、当該薬物は、皮膚粘膜眼症候群(スチーブンス・ジョンソン症候群)及び中毒性表皮壊死症(ライエル症候群)という重篤な致死性の副作用の原因薬物としても知られている。特に腎機能が低下した患者では、活性代謝物であるオキシプリノールが体内に過剰に蓄積し、前述の重篤な副作用の頻度が高まると報告され、腎機能に応じた用量調節が求められている。
Eur. J Pharm.:561,63-71.2007
本発明の課題は、糖尿病性神経障害に対する予防又は治療薬として、末梢神経機能、痛み、異常感覚などの自覚症状、神経線維の脱落などに対し、臨床的に意味のある低下効果を示し、かつ長期にわたり安全性が高い薬剤を提供することである。
上記課題に鑑み、本発明者等が鋭意研究を重ねた結果、XO阻害薬であるトピロキソスタットに、糖尿病性神経障害に対する予防又は治療効果があることを見いだし、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下のようである。
(1)4−[5−(ピリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]ピリジン−2−カルボニトリル(一般名:トピロキソスタット)を有効成分とする、糖尿病性神経障害の予防又は治療のための医薬。
(2)前記糖尿病性神経障害が、糖尿病性神経障害による神経機能低下である、(1)記載の医薬。
(3)前記神経機能低下が、神経伝導機能低下、自律神経機能低下、及び振動覚閾値低下からなる群から選択される、(2)記載の医薬。
(4)前記糖尿病性神経障害が、糖尿病性神経障害に伴う、疼痛、異常感覚、自発痛、感覚鈍麻、感覚低下、及び神経線維脱落からなる群から選択される、(1)記載の医薬。
(1)4−[5−(ピリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]ピリジン−2−カルボニトリル(一般名:トピロキソスタット)を有効成分とする、糖尿病性神経障害の予防又は治療のための医薬。
(2)前記糖尿病性神経障害が、糖尿病性神経障害による神経機能低下である、(1)記載の医薬。
(3)前記神経機能低下が、神経伝導機能低下、自律神経機能低下、及び振動覚閾値低下からなる群から選択される、(2)記載の医薬。
(4)前記糖尿病性神経障害が、糖尿病性神経障害に伴う、疼痛、異常感覚、自発痛、感覚鈍麻、感覚低下、及び神経線維脱落からなる群から選択される、(1)記載の医薬。
本発明によれば、糖尿病性神経障害の予防又は治療効果に優れ、人体への安全性の高い医薬を提供することができる。本発明の医薬は、特に末梢神経の運動神経・感覚神経伝導速度、疼痛閾値、神経内血流量、ERK(Extracellular Signal-regulated Kinase)リン酸化、表皮内神経線維密度において、臨床的に意味のある効果を示す。
以下、本発明を具体的に説明する。本発明に使用されるトピロキソスタットは、例えばWO03/064410記載の化合物であり、その実施例12又は実施例39の化合物の製造法等により製造することができる。
本発明の医薬の投与剤型は特に限定されず、例えば経口剤、注射剤、経皮吸収製剤等が挙げられるが、中でも経口剤が好ましい。このような投与剤型の薬物は、投与剤型に適した投与形態で投与される。本発明の医薬は、また、単独投与のみならず、他の薬剤との併用投与も可能である。
経口剤とする場合は、常法により、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤等とすることができ、また、糖衣、ゼラチン衣、その他、医薬品に使用可能な成分により、適宜コーティングすることもできる。また、製剤化においては、必要に応じて、薬学的に許容される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤等の添加物を適宜組み合わせて用いることができる。
注射剤とする場合は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、その他注射剤として投与可能な部位への投与に適した投与剤形とすることができる。保存時の形状は固体状及び液体状のいずれでもよい。また、必要に応じて、薬学的に許容される溶解補助剤、pH調整剤、緩衝剤、懸濁化剤、安定化剤、等張化剤、保存剤等の添加物を適宜組み合わせて用いることができる。
有効成分トピロキソスタットを含有する製剤としては、上市されている商品名ウリアデック(登録商標)錠(株式会社三和化学研究所)、商品名トピロリック(登録商標)錠(株式会社富士薬品)を用いてもよい。
本発明の医薬組成物の投与量は、所望の治療効果を得る為に、症状の程度、患者の年齢、性別、体重、感受性差、投与経路、投与方法、投与時期、投与間隔、医薬製剤の性質、併用薬の種類や投与量及び併用形態等により、医師の裁量範囲で適時増減できるが、成人1日あたり通常1〜1000mg/日、好ましくは5〜600mg/日、さらに好ましくは10〜300mg/日であり、1〜3回/日に分けて、さらに好ましくは2回/日に分けて投与する。
本発明にかかる適応疾患は糖尿病性神経障害であり、具体的には、糖尿病性神経障害による神経機能(神経伝導機能、自律神経機能、振動覚閾値)低下、糖尿病性神経障害に伴う、疼痛、異常感覚、自発痛、感覚鈍麻、感覚低下、及び神経線維脱落等が含まれるが、特に効果が優れているのは、糖尿病性神経障害による神経伝導機能の低下、糖尿病性神経障害に伴う、疼痛、異常感覚、自発痛、感覚鈍麻、及び感覚低下である。中でも、特に疼痛、異常感覚、自発痛、感覚鈍麻、及び感覚低下などの感覚神経系に対してより効果が優れている。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[研究方法]
4週齢の雄性B6.BKS(D)-Leprdb/J (db/db)マウス(db群)および対照の4週齢の雄性C57BL6(C群)を用いた。db群を3群に分け、4週齢からトピロキソスタットを混餌にて1mg/kg(dbT1群)、2mg/kg(dbT2群)投与した。体重を毎週測定し、投与量を調節した。
HbA1cは、Nyco-Card Reader II(Axis-Shield PocAS, Norway)にて16時間絶食後の空腹時に尻静脈より全血を採取後、測定した。
[研究方法]
4週齢の雄性B6.BKS(D)-Leprdb/J (db/db)マウス(db群)および対照の4週齢の雄性C57BL6(C群)を用いた。db群を3群に分け、4週齢からトピロキソスタットを混餌にて1mg/kg(dbT1群)、2mg/kg(dbT2群)投与した。体重を毎週測定し、投与量を調節した。
HbA1cは、Nyco-Card Reader II(Axis-Shield PocAS, Norway)にて16時間絶食後の空腹時に尻静脈より全血を採取後、測定した。
神経伝導速度は、誘発電位・筋電図検査装置(日本光電、MEB-9102 NeuropackμBio Machinery)にて測定した。マウスを保温しながらイソフルレン2-3%で吸入麻酔を行なった。運動神経伝導速度(Motor nerve conduction velocity; MNCV)検査は、近位部と遠位部2か所で刺激し末端の支配筋より筋活動電位をそれぞれ導出した。両部位の潜時差で2点間の距離を割り、m/secの単位で表した。感覚神経伝導速度(Sensory nerve conduction velocity; SNCV)SCV検査は、直接遠位側の神経を刺激し誘発された神経電位を近位側で導出し、潜時で2点間の距離を割り、m/secの単位で表した。
疼痛閾値は、以下のように評価した。Tail flick Testは、テールフリック式鎮痛効果測定装置(室町機械株式会社、MK-330B)にて測定を行った。マウスを測定機器の上に配置し、順化した後、測定をスタートさせると、ビームによる熱刺激と同時にタイマーのカウントを開始する。マウスが痛みを感じて尾を動かすとセンサーが感知し、自動的に熱刺激とタイマーのカウントを停止し、反応時間が記録される。連続5回測定し、その平均閾値を算出した。
坐骨神経血流量は、レーザー・ドップラー血流&温度計モニタ(Moor Instruments、DRT4)と専用プローブ(DP3T、直径1.5mm)を用いて測定した。マウスを16時間絶食後、イソフルレン2-3%で吸入麻酔をおこなった。マウス坐骨神経を露出し、坐骨神経背部に黒色の薄いプレートを差込み、周囲筋肉の血流のノイズを遮断した。その後、大腿筋上の坐骨神経にプローブをあて、血流を測定した。30秒測定し、その平均を血流量とした。
ERKリン酸化と表皮内神経密度を評価するために、マウスを麻酔後、心臓から脱血しサクリファイスした。その後、坐骨神経を摘出し、左後肢の足底の皮膚を切除した。摘出した坐骨神経は液体窒素にて凍結保存、切除した足底皮膚はザンボーニ固定液で固定した。
ERKリン酸化は、以下のように評価した。坐骨神経は、ホモジナイザーでTris-saline-acid (TSA)- phenylmethylsulfonyl fluoride (PMSF) buffer (pH 8.0) aで破砕し、 15,000 rpm回転で15分遠心後、上澄をサンプルとした。SDS-PAGE は還元状態でXcell SureLock system (Thermo Fisher) で行った。25 μg のサンプルをサンプルバッファー(2.5% 2-mercaptoethanol, 62.5 mmol Tris-HCl, 10% glycerol, 2% SDS, 0.0025% bromophenol blue, and 50 mmol reducing agent (dithiothreitol; DTT), pH 6.8)で溶解し、NuPAGE(登録商標)4-12% Bis-Tris Gel (Thermo Fisher)で電気泳動を行った。電気泳動後、蛋白はiBlot(登録商標) Dry Blotting system (Thermo Fisher)、iBlot(登録商標) Gel Transfer Stacks PVDF, Mini (Thermo Fisher)にて polyvinylidene fluoride (PVDF)膜に転写した。転写されたPVDF膜は5% milk を含むTBS-T バッファーで1 時間ブロッキングを行った後、ウサギ抗リン酸化ERK抗体(#4376、Cell Signaling, 1:1000)で4℃、16時間反応させた。その後TBS-T Bufferで洗浄後、peroxidase-conjugated 抗ウサギIgG抗体(sc-2054, Santa Cruz, 1:1000)を室温で60分反応させた。TBS-T Bufferで洗浄後、ECL(登録商標) Western Blotting Detection Reagents (GE Health Care)で化学発光させ、フィルムに感光させ現像した。Re-Blot Plus Mild Solution (Merck Millipore)でリブロットし、同様にβ-actin 抗体(sc-1615, Santa Cruz, 1:250)、peroxidase-conjugated抗ヤギIgG抗体 (sc-2304, Santa Cruz, 1:1000)を反応させ、フィルムに感光させ現像した。フィルムをスキャナーで画像ファイルとして取り込み、Image J(NIH, free software)でそれぞれの蛋白発現を濃度として数値化し、解析を行った。
表皮内神経密度は、以下のように評価した。ザンボーニ固定液で固定した皮膚は24時間後にスクロース含有PBSにて洗浄した。厚さ60μmの凍結切片を作製し、神経線維は抗PGP9.5 抗体(Ultraclone Ltd.)にて、また基底膜は抗Fibronectin抗体 (C-20、Santa Cruz)にてラベルした。4℃で24時間反応させた後、TBSで洗浄し、二次蛍光抗体(Alexa Fluor 594 donky anti-rabbit IgG 、Thermo FisherとAlexa Fluor 488 donky anti-goat IgG 、Thermo Fisher)を反応させた。1時間後、洗浄、封入し、共焦点レーザー顕微鏡(LSM 5 PASCAL Laser Scanning Microscope 、Carl Zeiss)で2μm間隔、16枚、計30μm分の画像を保存した。基底膜を表皮下から貫通して入ってくる神経を1本と数え、表皮内での分岐や取り込んだ範囲の外から表皮内に入ってくる神経は数えない。表皮内の神経本数を基底膜の長さ当たりで割ってn(本)/mmと表し、表皮内神経密度とした。
結果は平均±標準誤差で示した。各群間の差の検定はANOVAにより、Posthoc Dunnett検定を用いて行なった。有為水準は両側5%とし、p<0.05を持って有意差とした。
[結果]
(1)HbA1c
図1に示すようにdb群はC群に比し、有意にHbA1cが増加していた(p<0.01)。トピロキソスタット投与(dbT1群、dbT2群)による、明らかな血糖の改善、悪化は認められなかった。
(2)神経伝導速度(MNCV, SNCV)
図2に示すように、db群はC群に比し、MNCV、SNCVともに有意な遅延を認めた(p<0.01)。それに対し、1mg/kgトピロキソスタット投与群であるdbT1群では明らかな改善は見られなかったものの、2mg/kgトピロキソスタット投与群であるdbT2群において、MNCV、SNCVの明らかな改善が認められた(p<0.05 db群 vs dbT2群)
(3)Tail flick test
図3にTail flick testの結果を示す。db群はC群に比し、温熱刺激に対する反応時間が有意に延長していた(p<0.01)。それに対し、トピロキソスタット投与群であるdbT1群及びdbT2群では、用量依存的に反応閾値が有意に改善していた(p<0.05 db群 vs dbT1群, dbT1群 vs dbT2群, p<0.01 db群 vs dbT2群)。
(4)坐骨神経血流量
図4に坐骨神経の血流量の結果を示す。db群はC群に比し、坐骨神経の血流量は有意に低下していた(p<0.05 db群 vs C群)。それに対し、2mg/kgトピロキソスタット投与群であるdbT2群において、神経血流は有意に改善していた(p<0.01 db群 vs dbT2群)。
(5)坐骨神経のERKリン酸化
図5に坐骨神経におけるERKのリン酸化の結果を示す。db群はC群に比し、リン酸化ERKの発現が著明に増加していた(p<0.01)。それに対し、トピロキソスタットの投与により、用量依存的にERKのリン酸化は改善していた(p<0.01 db群vs dbT2群)。
(6)皮膚神経線維密度
図6に皮膚神経内線維密度として、表皮内神経線維密度の結果を示す。C群では表皮内に豊富な小径神経が認められた(矢印)が、db群では表皮内神経は脱落していた(p<0.01)。それに対し、トピロキソスタット投与により、用量依存的に表皮内神経密度の改善が見られた(p<0.01 db群vs dbT2群, p<0.05 db群vs dbT1群, p<0.05 dbT1群vs dbT2群)。
(1)HbA1c
図1に示すようにdb群はC群に比し、有意にHbA1cが増加していた(p<0.01)。トピロキソスタット投与(dbT1群、dbT2群)による、明らかな血糖の改善、悪化は認められなかった。
(2)神経伝導速度(MNCV, SNCV)
図2に示すように、db群はC群に比し、MNCV、SNCVともに有意な遅延を認めた(p<0.01)。それに対し、1mg/kgトピロキソスタット投与群であるdbT1群では明らかな改善は見られなかったものの、2mg/kgトピロキソスタット投与群であるdbT2群において、MNCV、SNCVの明らかな改善が認められた(p<0.05 db群 vs dbT2群)
(3)Tail flick test
図3にTail flick testの結果を示す。db群はC群に比し、温熱刺激に対する反応時間が有意に延長していた(p<0.01)。それに対し、トピロキソスタット投与群であるdbT1群及びdbT2群では、用量依存的に反応閾値が有意に改善していた(p<0.05 db群 vs dbT1群, dbT1群 vs dbT2群, p<0.01 db群 vs dbT2群)。
(4)坐骨神経血流量
図4に坐骨神経の血流量の結果を示す。db群はC群に比し、坐骨神経の血流量は有意に低下していた(p<0.05 db群 vs C群)。それに対し、2mg/kgトピロキソスタット投与群であるdbT2群において、神経血流は有意に改善していた(p<0.01 db群 vs dbT2群)。
(5)坐骨神経のERKリン酸化
図5に坐骨神経におけるERKのリン酸化の結果を示す。db群はC群に比し、リン酸化ERKの発現が著明に増加していた(p<0.01)。それに対し、トピロキソスタットの投与により、用量依存的にERKのリン酸化は改善していた(p<0.01 db群vs dbT2群)。
(6)皮膚神経線維密度
図6に皮膚神経内線維密度として、表皮内神経線維密度の結果を示す。C群では表皮内に豊富な小径神経が認められた(矢印)が、db群では表皮内神経は脱落していた(p<0.01)。それに対し、トピロキソスタット投与により、用量依存的に表皮内神経密度の改善が見られた(p<0.01 db群vs dbT2群, p<0.05 db群vs dbT1群, p<0.05 dbT1群vs dbT2群)。
[考察]
今回用いた糖尿病モデルマウスdb/dbマウスは、レプチン欠損により生じる肥満型2型糖尿病モデルであり、非糖尿病コントロールマウスと比較し、坐骨神経における運動神経及び感覚神経の神経伝導機能の低下や神経内血流量の低下、感覚鈍麻と関係する温度覚反応閾値の低下、痛みと関連するERKリン酸化の増加、表皮神経線維の脱落などを認め、ヒトの糖尿病性神経障害において観察される臨床所見や症状と類似する。このdb/dbマウスにおいて、トピロキソスタット投与群では何れの検査項目に対しても有意な改善がみられ、しかもHbA1cには影響が認められなかったことから、血糖コントロールに依存しない効果であることが分かった。
これらの結果から、トピロキソスタットは糖尿病性神経障害患者でみられる神経機能(神経伝導機能、自律神経機能、振動覚閾値)低下、糖尿病性神経障害に伴う、疼痛、異常感覚、自発痛、感覚鈍麻、感覚低下、神経線維脱落等に対し、有効性が期待される。
現行、糖尿病性神経障害は、厳格な血糖コントロールが最良の治療法とされるが、低血糖リスクなどからその実行可能性は乏しい。結局、痛みを訴える患者に対する対症療法剤やアルドース還元酵素阻害剤などが一部の患者に処方されるが、糖尿病性神経障害に対して満足できる治療薬はないのが現状である。
今回、用いたトピロキソスタット1mg/kg/day、2mg/kg/dayは体重60kgの日本人の臨床用量に外挿すると60〜120mg/日/人の用量に相当する。因みに、日本での臨床用量(承認用量)は40〜160mg/日/人である。同じXO阻害薬であるアロプリノールの神経伝導速度に対する効果が報告されているが、有効性を示した用量は50mg/kg/day、150mg/kg/dayであり、60kgのヒトに換算すると3000mg/日/人、9000mg/日/人である。今回有効性が主として認められたトピロキソスタットの用量2mg/kg/dayの25〜75倍に相当する高用量である。アロプリノールの日本での臨床用量は最大で300mg/日/人である。このようにトピロキソスタットの糖尿病性神経障害に対する有効性が極めて低用量、即ち、実臨床用量で示されたことは、同じXO阻害剤の中でも特筆すベき効果、特性を有しているといっても過言ではない。
今回用いた糖尿病モデルマウスdb/dbマウスは、レプチン欠損により生じる肥満型2型糖尿病モデルであり、非糖尿病コントロールマウスと比較し、坐骨神経における運動神経及び感覚神経の神経伝導機能の低下や神経内血流量の低下、感覚鈍麻と関係する温度覚反応閾値の低下、痛みと関連するERKリン酸化の増加、表皮神経線維の脱落などを認め、ヒトの糖尿病性神経障害において観察される臨床所見や症状と類似する。このdb/dbマウスにおいて、トピロキソスタット投与群では何れの検査項目に対しても有意な改善がみられ、しかもHbA1cには影響が認められなかったことから、血糖コントロールに依存しない効果であることが分かった。
これらの結果から、トピロキソスタットは糖尿病性神経障害患者でみられる神経機能(神経伝導機能、自律神経機能、振動覚閾値)低下、糖尿病性神経障害に伴う、疼痛、異常感覚、自発痛、感覚鈍麻、感覚低下、神経線維脱落等に対し、有効性が期待される。
現行、糖尿病性神経障害は、厳格な血糖コントロールが最良の治療法とされるが、低血糖リスクなどからその実行可能性は乏しい。結局、痛みを訴える患者に対する対症療法剤やアルドース還元酵素阻害剤などが一部の患者に処方されるが、糖尿病性神経障害に対して満足できる治療薬はないのが現状である。
今回、用いたトピロキソスタット1mg/kg/day、2mg/kg/dayは体重60kgの日本人の臨床用量に外挿すると60〜120mg/日/人の用量に相当する。因みに、日本での臨床用量(承認用量)は40〜160mg/日/人である。同じXO阻害薬であるアロプリノールの神経伝導速度に対する効果が報告されているが、有効性を示した用量は50mg/kg/day、150mg/kg/dayであり、60kgのヒトに換算すると3000mg/日/人、9000mg/日/人である。今回有効性が主として認められたトピロキソスタットの用量2mg/kg/dayの25〜75倍に相当する高用量である。アロプリノールの日本での臨床用量は最大で300mg/日/人である。このようにトピロキソスタットの糖尿病性神経障害に対する有効性が極めて低用量、即ち、実臨床用量で示されたことは、同じXO阻害剤の中でも特筆すベき効果、特性を有しているといっても過言ではない。
[まとめ]
トピロキソスタットは、糖尿病性神経障害モデルに対し、血糖状態に依存せず、様々な神経機能検査、神経線維の脱落(神経変性)等の評価に対し著明な有効性を示し、糖尿病性神経障害に対する予防及び治療効果が示された。これらの効果は、当業者の予測を遙かに超えたものである。
トピロキソスタットは、糖尿病性神経障害モデルに対し、血糖状態に依存せず、様々な神経機能検査、神経線維の脱落(神経変性)等の評価に対し著明な有効性を示し、糖尿病性神経障害に対する予防及び治療効果が示された。これらの効果は、当業者の予測を遙かに超えたものである。
Claims (4)
- 4−[5−(ピリジン−4−イル)−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル]ピリジン−2−カルボニトリル(一般名:トピロキソスタット)を有効成分とする、糖尿病性神経障害の予防又は治療のための医薬。
- 前記糖尿病性神経障害が、糖尿病性神経障害による神経機能低下である、請求項1記載の医薬。
- 前記神経機能低下が、神経伝導機能低下、自律神経機能低下、及び振動覚閾値低下からなる群から選択される、請求項2記載の医薬。
- 前記糖尿病性神経障害が、糖尿病性神経障害に伴う、疼痛、異常感覚、自発痛、感覚鈍麻、感覚低下、及び神経線維脱落からなる群から選択される、請求項1記載の医薬。
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JP2017183109A JP2019059675A (ja) | 2017-09-25 | 2017-09-25 | 糖尿病性神経障害の予防又は治療のための医薬 |
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JP2017183109A Pending JP2019059675A (ja) | 2017-09-25 | 2017-09-25 | 糖尿病性神経障害の予防又は治療のための医薬 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2019059675A (ja) |
-
2017
- 2017-09-25 JP JP2017183109A patent/JP2019059675A/ja active Pending
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