JP2019050796A - 高効率なロタウイルスの人工合成法 - Google Patents

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聡志 河本
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聡志 河本
孝喜 谷口
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孝喜 谷口
佐織 福田
Saori Fukuda
佐織 福田
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Abstract

【課題】新規で、かつ高効率なロタウイルスの人工合成法を提供すること。【解決手段】11本の分節した二本鎖RNAをゲノムとして有するロタウイルスの人工合成法であって、11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAを培養細胞に導入する工程を含み、11本の分節した二本鎖RNAは、それぞれ、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAであり、cDNAを培養細胞に導入する際に、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量を他のcDNAの導入量よりも多くする、ロタウイルスの人工合成法。【選択図】なし

Description

本発明は、高効率なロタウイルスの人工合成法に関する。
ロタウイルスによる冬季乳幼児嘔吐下痢症は5歳までにほぼ100%の乳幼児で起こる。感染力の高さゆえ、衛生状態の改善では、ロタウイルス感染を制御し得ない。世界的にみると、開発途上国を中心に毎年約20万人以上の死亡例が報告される一方で、先進国においては入院例が多いために医療経済的見地からロタウイルスの感染予防が重要な課題となっている。
また、嘔吐下痢症以外にも、脳炎・脳症、1型糖尿病、胆道閉鎖、筋炎、乳児突然死等においてロタウイルスが直接的又は間接的に関連することが示唆されている(非特許文献1)。成人においても、免疫不全、臓器移植患者におけるロタウイルス感染は下痢の長期化による体力消耗を引き起こす。実際、成人での致死的なケースも報告されている(非特許文献2)。
これまでに、2種のヒトロタウイルスワクチン(RotarixとRotaTeq)が開発されており、2種のワクチンについて優れた有効性と安全性が報告されているが、いずれも重症化を防ぐことに主眼が置かれたワクチンであり、ロタウイルスの感染の阻止に有効なワクチンが開発される目処は立っていない。ヒトロタウイルスの抗原系は多種多様であり、Gタイプ、Pタイプともに約10種類の血清型(遺伝子型)が存在する。これら多数の血清型に広く効果的なワクチンの開発は困難を極める。
ロタウイルスは、レオウイルス科に属する外層と内層の2種のカプシドと最内層に存在するコアの三層からなるタンパク質に覆われた二本鎖RNAウイルスである。そして、コアを包むカプシドタンパク質の形状は正二十面体であり、ウイルスは、エンベロープを有していない。
ロタウイルスのゲノムは11分節に分かれる約18.6k塩基対の二本鎖RNAであり、6つのウイルスタンパク質がウイルスの粒子を構成する。この6つの構造タンパク質(VP)は、それぞれVP1、VP2、VP3、VP4、VP6及びVP7と呼ばれている。構造タンパク質に加え、非構造タンパク質(NSP)をウイルスは有し、6つの非構造タンパク質は、それぞれNSP1、NSP2、NSP3、NSP4、NSP5及びNSP6と呼ばれている。
ロタウイルスについての感染性の組換えウイルスを人工合成する技術に関連して、非特許文献3〜5には、ヘルパーウイルスを用いたリバースジェネティクス法により、ウイルスゲノム11分節のうちの1分節の人工合成について開示されている。また、特許文献1には、ロタウイルス等のレオウイルス科に属するウイルスについてリバースジェネティクスの系が開示されている。
また、非特許文献6には、ロタウイルスの11分節のRNAゲノムを発現するプラスミドに加え、組換えウイルスの人工合成を促進する因子として、コウモリレオウイルス由来の細胞融合性タンパク質FASTとワクシニアウイルス由来のRNAキャッピング酵素を利用した、人工的に組換えロタウイルスを作製する方法が開示されている。
特開2007−215466号公報
Estes MK, Greenberg HB. 2013. Rotaviruses, p1347-1401. In Knipe DM, Howley PM (ed), Fields Virology, 6th ed. Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA Liakopoulou E, Mutton K, Carrington D, Robinson S, Steward CG, Goulden NJ, Cornish JM, Marks DI. 2005. Rotavirus as a significant cause of prolonged diarrhoeal illness and morbidity following allogeneic bone marrow transplantation. Bone Marrow Transplant. 36:691-694. Komoto S, Sasaki J, Taniguchi K. 2006. Reverse genetics system for introduction of site-specific mutations into the double-stranded RNA genome of infectious rotavirus. Proc Natl Acad Sci USA 103:4646-4651. Trask SD, Taraporewala ZF, Boehme KW, Dermody TS, Patton JT. 2010. Dual selection mechanisms drive efficient single-gene reverse genetics for rotavirus. Proc Natl Acad Sci USA 107:18652-18657. Troupin C, Dehee A, Schnuriger A, Vende P, Poncet D, Garbarg-Chenon A. 2010. Rearranged genomic RNA segments offer a new approach to the reverse genetics of rotaviruses. J Virol 84:6711-6719. Kanai Y, Komoto S, Kawagishi T, Nouda R, Nagasawa N, Onishi M, Matsuura Y, Taniguchi K, Kobayashi T. 2017. Entirely plasmid-based reverse genetics system for rotaviruses. Proc Natl Acad Sci USA 114:2349-2354.
以上のとおり、ロタウイルスについては、これまでのところ、感染性の組換えウイルスを人工合成する技術として、有用かつ実用性の高いリバースジェネティクス法が確立されているとは言えず、病原性の解析や新規ワクチン開発の大きな障壁となっていた。
本発明が解決しようとする課題は、従来技術とは異なり極めて斬新な発明思想に基づく、新規で、かつ高効率なロタウイルスの人工合成法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、従来技術における技術思想にはない、ロタウイルスの11分節の遺伝子のうち、当該遺伝子の導入量を調節することによりロタウイルスを高効率に人工合成することができることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下のとおりである。
(1)
11本の分節した二本鎖RNAをゲノムとして有するロタウイルスの人工合成法であって、
11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAを培養細胞に導入する工程を含み、
11本の分節した二本鎖RNAは、それぞれ、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAであり、
cDNAを培養細胞に導入する際に、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量を他のcDNAの導入量よりも多くする、ロタウイルスの人工合成法。
(2)
FASTタンパク質及び/又はRNAキャッピング酵素をコードする核酸は、培養細胞に導入しない、(1)に記載のロタウイルスの人工合成法。
(3)
VP2遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量を他のcDNAの導入量よりも多くする、(1)又は(2)に記載のロタウイルスの人工合成法。
(4)
少なくともNSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNA及び/又はNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量が、他のcDNAの導入量に対して、2倍量以上である、(1)〜(3)のいずれかに記載のロタウイルスの人工合成法。
(5)
NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量が、他のcDNAの導入量に対して、2倍量以上である、(1)〜(4)のいずれかに記載のロタウイルスの人工合成法。
(6)
NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量が実質的に等量であり、かつ、他のcDNAの量に対して多い、(1)〜(3)のいずれかに記載のロタウイルスの人工合成法。
(7)
他のcDNAの導入量が実質的に等量である、(1)〜(6)のいずれかに記載のロタウイルスの人工合成法。
(8)
プラスミドを用いてcDNAが導入される、(1)〜(7)のいずれかに記載のロタウイルスの人工合成法。
(9)
プラスミドがT7プラスミドである、(8)に記載のロタウイルスの人工合成法。
(10)
培養細胞が、BHK/T7−9細胞、BSR−T7/5細胞、SK6.T7細胞及び293−3−46細胞からなる群から選択される、(1)〜(9)のいずれかに記載のロタウイルスの人工合成法。
(11)
11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAのいずれかに、当該cDNAに対応する遺伝子以外に由来する核酸配列が導入されている、(1)〜(10)のいずれかに記載のロタウイルスの人工合成法。
(12)
cDNAを培養細胞に導入した後に、ロタウイルスに感受性を有する細胞を用いて共培養を行う、(1)〜(11)のいずれかに記載のロタウイルスの人工合成法。
(13)
cDNAを培養細胞に導入した後に、共培養を行わない、(1)〜(11)のいずれかに記載のロタウイルスの人工合成法。
本発明によれば、新規で、かつ高効率なロタウイルスの人工合成法を提供することができる。
本発明のロタウイルス人工合成法の模式図を示す。図1Aは、cDNAを培養細胞に導入した後に、ロタウイルスに感受性を有する細胞を用いて共培養を行って、ロタウイルスを人工合成した場合を示す。図1Bは、cDNAを培養細胞に導入した後に、共培養を行わずに、ロタウイルスを人工合成した場合を示す。 図1Aに記載の方法に基づくロタウイルスの人工合成において、pT7/NSP2SA11及びpT7/NSP5SA11の導入量を他のプラスミドの導入量に対して1倍量、3倍量、5倍量とした場合におけるロタウイルスの相対合成量の結果を示す(NSP2及びNSP5が共に×1の場合に対して、いずれも、P<0.05(t検定))。培養細胞として、CV−1細胞を用いた。 人工合成ロタウイルスを有するBHK/T7−9細胞の電子顕微鏡像を示す。図3Aは、pT7/NSP2SA11及びpT7/NSP5SA11の導入量を他のプラスミドの導入量に対して1倍量とした場合であり、図3Bは、pT7/NSP2SA11及びpT7/NSP5SA11の導入量を他のプラスミドの導入量に対して3倍量とした場合の結果を示す。図3Cは、BHK/T7−9細胞を3の感染多重度(MOI)で真正のサルロタウイルスSA11−L2ウイルスを感染させた場合の結果を示す。 NanoLuc(Nluc)遺伝子を有する変異体rSA11−Nlucウイルスの合成結果を示す。図4Aは、野生型(wt)rSA11ウイルス及び変異体rSA11−Nlucウイルス(それぞれpT7/NSP1及びpT7/NSP1−Nluc)の合成に使用されるNSP1遺伝子を含むプラスミドの模式図を示す。NSP1をPTV−2A(2A)自己タンパク質分解切断部位に融合させ、続いてNlucのORFを融合させて、NSP1遺伝子内の223−643のヌクレオチド配列を2A−Nluc遺伝子で置換した。図4Bは、野生型rSA11及び変異体rSA11−Nlucウイルスから抽出されたウイルスゲノム二本鎖RNA(dsRNA)のPAGEの結果を示し、レーン1は野生型rSA11ウイルス由来のdsRNAであり、レーン2は変異体rSA11−Nlucウイルス由来のdsRNAである。左側の数字は、野生型rSA11ウイルスのゲノムdsRNAセグメントの順序を示す。図4Cは、野生型rSA11ウイルス及び変異体rSA11−NlucウイルスのNluc活性の結果を示す。MA104細胞を0.01のMOIで野生型rSA11ウイルス及び変異体rSA11−Nlucウイルスで感染させ、次いで種々の時間インキュベートした。培養物中のNluc活性はルミノメトリーによって決定した。示されたデータは、3つの独立した細胞培養物からの平均Nluc活性及び標準偏差(SD)である(* P<0.05(t検定))。 蛍光遺伝子を有する変異体rSA11−EGFPウイルス及び変異体rSA11−mCherryウイルスの合成結果を示す。図5Aは、野生型rSA11ウイルス、変異体rSA11−EGFPウイルス及び変異体rSA11−mCherryウイルス(pT7/NSP1、pT7/NSP1−EGFP及びpT7/NSP1−mCherry)の合成に使用されるNSP1遺伝子を含むプラスミドの模式図を示す。NSP1をPTV−2A自己タンパク質分解切断部位、続いてEGFP又はmCherryのORFに融合させて、NSP1遺伝子内の223−643のヌクレオチド配列を2A−EGFP又は2A−mCherry遺伝子と置換した。図5Bは、野生型rSA11ウイルス、変異体rSA11−EGFPウイルス及び変異体rSA11−mCherryウイルスから抽出されたウイルスゲノムdsRNAのPAGEの結果を示し、レーン1は野生型rSA11ウイルス由来のdsRNAであり、レーン2及び3は変異体rSA11−EGFPウイルス(レーン2)及びrSA11−mCherry(レーン3)由来のdsRNAである。左側の数字は、野生型rSA11のゲノムdsRNAセグメントの順序を示す。NSP1−mCherryは、3番目のdsRNAセグメントに嵩なっている。図5Cは、変異体rSA11−EGFPウイルス及び変異体rSA11−mCherryウイルスに感染した細胞における蛍光タンパク質の発現の結果を示す。野生型rSA11ウイルス又は変異体rSA11−EGFPウイルス及び変異体rSA11-mCherryウイルスを、フォーカス形成のためにCV−1細胞に感染させ、0.7%アガロース存在下で培養した。34時間後、焦点におけるEGFP及びmCherryの発現を、特定のフィルターを用いて蛍光顕微鏡下で評価した。ロタウイルスゲノムへの蛍光遺伝子の導入により、合成したロタウイルスにおいて、蛍光発色していることを確認できた。 Nluc遺伝子を有する変異体rSA11−Nlucウイルスのゲノム安定性を示す。図6Aは、rSA11−NlucをMA104細胞で連続した継代培養を行い、1回目の継代(P1)、3回目の継代(P3)、5回目の継代(P5)、10回目の継代(P10)のウイルスdsRNAゲノムを抽出してPAGE解析した結果を示す。レーン1は、野生型rSA11−L2ウイルス由来のdsRNAであり、レーン2、3、4、5は各々P1、P3、P5、P10のrSA11−Nluc由来のdsRNAである。左側の数字は、野生型rSA11−L2のゲノムdsRNAセグメントの順序を示す。図6Bは、野生型rSA11−L2及び変異体rSA11−NlucのNluc活性の結果を示す。MA104細胞を0.01のMOIで野生型rSA11−L2及び変異体rSA11−Nluc(P1、P3、P5、P10)を感染させ、12時間インキュベートした。培養物中のNluc活性はルミノメトリーによって決定した。示されたデータは、3つの独立した細胞培養物からの平均Nluc活性及び標準偏差(SD)である。 蛍光遺伝子を有する変異体rSA11−EGFP及び変異体rSA11−mCherryウイルスのゲノム安定性を示す。図7Aは、rSA11−EGFP及びrSA11−mCherryをMA104細胞で連続した継代培養を行い、1回目の継代(P1)、3回目の継代(P3)、5回目の継代(P5)、10回目の継代(P10)のウイルスdsRNAゲノムを抽出してPAGE解析した結果を示す。レーン1、10は、野生型rSA11−L2ウイルス由来のdsRNAであり、レーン2、3、4、5は各々P1、P3、P5、P10のrSA11−EGFP由来、レーン6、7、8、9は各々P1、P3、P5、P10のrSA11−mCherry由来のdsRNAである。左側の数字は、野生型rSA11−L2のゲノムdsRNAセグメントの順序を示す。図7Bは、変異体rSA11−EGFP及び変異体rSA11−mCherryのNSP1遺伝子についてのRT−PCRの結果を示す。P1、P3、P5、P10ストックから抽出したウイルスdsRNAを鋳型として、NSP1遺伝子とEGFPあるいはmCherry遺伝子に特異的なプライマーを用いてRT−PCRを行った。PCR産物は2%アガロースゲルで分離して解析した。DNAマーカーは、1500、1000、900、800、700、600、500bpを示す。 グルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)遺伝子を有する変異体rSA11−GLP2ウイルスの合成結果を示す。図8Aは、野生型rSA11ウイルス、変異体rSA11−GLP2ウイルス(pT7/NSP1、pT7/NSP1−GLP2)の合成に使用されるNSP1遺伝子を含むプラスミドの模式図を示す。NSP1をPTV−2A自己タンパク質分解切断部位、続いてGLP2のORFに融合させて、NSP1遺伝子内の223−643のヌクレオチド配列を2A−GLP2遺伝子と置換した。図8Bは、野生型rSA11ウイルス、変異体rSA11−GLP2ウイルスから抽出されたウイルスゲノムdsRNAのPAGEの結果を示し、レーン1は野生型rSA11ウイルス由来のdsRNAであり、レーン2は変異体rSA11−GLP2ウイルス(レーン2)由来のdsRNAである。左側の数字は、野生型rSA11のゲノムdsRNAセグメントの順序を示す。 ノロウイルスカプシドVP1遺伝子を有する変異体rSA11−NVVP1ウイルスの合成結果を示す。図9Aは、野生型rSA11ウイルス、変異体rSA11−NVVP1ウイルス(pT7/NSP1、pT7/NSP1−NVVP1)の合成に使用されるNSP1遺伝子を含むプラスミドの模式図を示す。NSP1をPTV−2A自己タンパク質分解切断部位、続いてVP1のORFに融合させて、NSP1遺伝子内の223−643のヌクレオチド配列を2A−VP1遺伝子と置換した。図9Bは、野生型rSA11ウイルス、変異体rSA11−NVVP1ウイルスから抽出されたウイルスゲノムdsRNAのPAGEの結果を示し、レーン1は野生型rSA11ウイルス由来のdsRNAであり、レーン2は変異体rSA11−NVVP1ウイルス(レーン2)由来のdsRNAである。左側の数字は、野生型rSA11のゲノムdsRNAセグメントの順序を示す。
以下、本発明を実施するための形態について以下詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明のロタウイルスの人工合成法は、
11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAを培養細胞に導入する工程を含み、
11本の分節した二本鎖RNAは、それぞれ、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAであり、
cDNAを培養細胞に導入する際に、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量を他のcDNAの導入量よりも多くする、
11本の分節した二本鎖RNAをゲノムとして有するロタウイルスの人工合成法である。
現在、ロタウイルスワクチンとしては弱毒化した生ワクチンが世界的に利用されており、ロタウイルスによる乳幼児の死亡率低下に貢献している。一方、ロタウイルスは、感染力が非常に強く、容易に拡大してしまうため、より安価で予防効果を向上させた新規ワクチンの開発が望まれている。
本発明によれば、ロタウイルスの11分節の遺伝子のうち、当該遺伝子の導入量を調節することにより、高効率なロタウイルスの人工合成を可能としている。
また、本発明のロタウイルスの人工合成法によれば、ロタウイルスゲノムに対して改変を加えることができ、人工的に病原性を制御したロタウイルスを作製することができる。そして、本発明によりウイルスゲノムを改変したロタウイルスを効率的に人工合成することができることにより、ウイルス増殖や病原性発現のメカニズムをより容易に理解することもできることに繋がっている。
したがって、本発明のロタウイルスの人工合成法が見出されたことにより、異なる国や地域で流行しているロタウイルス株に対して、より効率的にロタウイルスワクチンを開発することが可能となり、また、より抗原性が適応したワクチン候補株を迅速に開発することも可能になる。
加えて、本発明のロタウイルスの人工合成法により製造した人工合成ロタウイルスは、改変を加えた場合であっても、継代培養してもゲノムが安定に存在する。
また、本発明においては、ロタウイルスの11分節の二本鎖RNAに対応するcDNAを用いてロタウイルスを人工合成するに際して、cDNAを培養細胞に導入する際に、11種のcDNAの導入量を調整することにより、ロタウイルスの人工合成効率が向上しており、好適には、11分節の二本鎖RNAに対応するcDNA以外に他のタンパク質をコードする核酸を導入させることなく、ロタウイルスを人工合成することができる。
すなわち、本発明は、11分節の二本鎖RNAに対応するcDNA以外に他のタンパク質をコードする核酸を導入させることなく、ロタウイルスを人工合成できるので、最少因子による高効率なロタウイルスの人工合成法を提供する。
中でも、本発明によれば、ロタウイルスの人工合成を行う際に用いるFASTタンパク質及び/又はRNAキャッピング酵素をコードする核酸を培養細胞に導入することなく、高効率なロタウイルスの人工合成を可能としている。
従来技術においては、コウモリレオウイルス由来の細胞融合性タンパク質FASTとワクシニアウイルス由来のRNAキャッピング酵素を利用してロタウイルスを人工合成していて、従来技術によるロタウイルスの人工合成においては、これらタンパク質も発現することとなるが、これらタンパク質の生体における安全性は依然として確認されていない。
本発明によれば、これらタンパク質を利用することなく、ロタウイルスを人工合成することができるため、安全性が高い、ロタウイルスの人工合成法を提供することができる。また、新規ロタウイルスワクチンの開発の場面や、ロタウイルスベクターの臨床応用において、有用なツールを提供することもできる。
なお、本発明においては、ロタウイルスの人工合成に必須となる11分節の二本鎖RNAに対応するcDNA以外に他のタンパク質をコードする核酸を導入することなくロタウイルスを人工合成できるものであって、人工合成に必須とはならない11分節の二本鎖RNAに対応するcDNA以外に他のタンパク質等をコードする核酸は、11分節の二本鎖RNAに対応するcDNAと共に導入してもよい。
本発明のロタウイルスの人工合成法においては、11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAを培養細胞に導入する工程を含む。
ロタウイルスは、11本の分節した二本鎖RNAに由来するタンパク質としてVP1、VP2、VP3、VP4、VP6及びVP7と呼ばれる構造タンパク質(VP)と、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4、NSP5及びNSP6と呼ばれる非構造タンパク質(NSP)を有する。
ロタウイルスにおいては、11本の分節した二本鎖RNAが、それぞれ、構造タンパク質(VP)及び非構造タンパク質(NSP)をコードしているので、本明細書において、各11本の分節した二本鎖RNAを、コードするタンパク質に対応して、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAと呼ぶ。
本発明においては、11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAとして、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを培養細胞に導入する。
本発明における「11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNA」として、本発明の人工合成法により合成することを所望するロタウイルスの11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAを選択すればよいが、cDNAとしては、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAに厳密に対応したcDNAである必要はない。
本発明においては、11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAを培養細胞に導入することにより、11本の遺伝子分節が、培養細胞に導入されるが、二本鎖RNAに厳密に対応したcDNAである必要はないとの意味は、構造タンパク質(VP)及び非構造タンパク質(NSP)の全てをコードする遺伝子としてのcDNAであることを意味しておらず、cDNAを導入することにより、11本の遺伝子分節が発現すればよい。
すなわち、11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAは、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4、NSP5及びNSP6のそれぞれのタンパク質をコードせず、11本の分節した各二本鎖RNAにおける末端配列領域をコードするcDNAであってもよいことを意味する。
つまり、本発明においては、二本鎖RNAに対応するcDNAにおいて、二本鎖RNAがコードするタンパク質に厳密に対応したcDNAである必要はないということを意味する。逆にいえば、一部のcDNAにおいては、11種の分節した二本鎖RNAを培養細胞内で発現することができるであれば、末端配列のみをコード(すなわち、タンパク質は欠失)していてもよいことを意味する。
本発明における「11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNA」は、所望のロタウイルスを人工合成するにあたり、好適には、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4及びNSP5であるタンパク質を発現し、より好適には、NSP6であるタンパク質も発現するが、ロタウイルスを人工合成できる限り、特に限定されることなく、改変されたcDNAであってもよい。
例えば、所望のロタウイルスを人工合成するにあたり、人工合成を所望するロタウイルスのVP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAのうち、その一部を別株のロタウイルスに由来するVP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAに置換して用いてよく、また、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAが、所望のロタウイルスのVP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4及びNSP5(好適には、NSP6も含む)のそれぞれのタンパク質をコードする場合には、各タンパク質において改変(置換、欠失又は挿入)を加えたタンパク質をコードするcDNAであってもよい。
本発明においては、11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAを、培養細胞に導入するに当たっては、プラスミドを用いることが好ましい。
本発明において、cDNAの調製や、プラスミドを用いる場合のcDNAを含むプラスミドの調製は、特に限定されることなく、従来公知の遺伝子工学技術を用いて実施することができる。
本発明においては、好適には、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAをそれぞれ含むプラスミドを用いて、11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAが培養細胞に導入される。
11本の分節した二本鎖RNAにおいて、NSP6のオープンリーディングフレームは、NSP5をコードする領域に含まれるため、NSP5をコードするcDNAを含むプラスミドを調製して、培養細胞に導入することにより、NSP5とNSP6のタンパク質双方が発現してくることとなり、ロタウイルスを人工合成することができる。
本発明において、11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドは、11本の分節した二本鎖RNAにおける、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドであることを意味する。
ここで、NSP5をコードするプラスミドを用いることで、NSP5とNSP6を発現させることができる。
プラスミドを用いて、cDNAを培養細胞に導入する場合、プラスミドは、上述した「11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNA」を含んでいればよい。したがって、プラスミドは、末端配列のみをコードするcDNAを含んでいてもよいし、改変されたcDNAを含んでいてもよい。
プラスミドには、11種のタンパク質にあたる、VP1、VP2、VP3、VP4、VP6、VP7、NSP1、NSP2、NSP3、NSP4及びNSP5をコードする遺伝子配列がcDNAとして挿入されていることが好ましいが、各cDNAにおいて、末端配列のみをコードするcDNAを含んでいてもよいし、改変されたcDNAを含んでいてもよい。
ここで、プラスミドに、NSP5をコードする遺伝子配列が挿入されていることにより、人工合成されるロタウイルスは、NSP6も発現する。
11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAを培養細胞に導入する際には、cDNAは、2〜11種のプラスミドに含まれていてよい。
11種のプラスミドを用いる場合には、11種のプラスミドは、それぞれ、11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAを含むが、11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAを、所望の組合せにより、2〜10種のプラスミドとして調製して、培養細胞に導入してもよい。
分節遺伝子をゲノムとするウイルスにおける手法における参考文献として、以下の文献が挙げられる。
Neumann G, Fujii K, Kino Y, Kawaoka Y. An improved reverse genetics system for influenza A virus generation and its implications for vaccine production. 2005, Proc Natl Acad Sci USA 102:16825-16829.
Kobayashi T, Ooms b LS, Ikizler M, Chappell JD, Dermody TS. An improved reverse genetics system for mammalian orthoreoviruses. 2010, Virology 398:194-200
これら文献に記載の方法に基づいて、また、適宜変更して、2〜10種のプラスミドを調製して、cDNAを培養細胞に導入してもよい。
VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAは、それぞれ、同一又は異なるロタウイルス由来であってよい。好適には、同一のロタウイルスに由来する11種のVP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAとして含むプラスミドが用いられる。
ロタウイルスは、多数の哺乳動物及び鳥類に急性感染を起こし、抗原性もきわめて多様であるが、人工合成するロタウイルスとしては、実験動物として用いられる哺乳動物に感染するロタウイルスであってもよく、また、ワクチン製造の可能性の観点では、ヒトロタウイルスであることが好ましい。
12種のタンパク質の中でも、VP4とVP7は、独立した中和抗原を有しており、VP4によって規定される血清型はPタイプ(rotease−sensitive)であり、VP7によって規定される血清型はGタイプ(lycoprotein)として知られている。
重要な中和抗原であるVP7が規定するGタイプにおいては、これまでに少なくとも32種類が報告されている。その中でも、ヒトで検出されるのはG1〜4、9、12の6種類が挙げられる。
ロタウイルスの代表株としては、特に限定されるものではないが、自然界に由来する株として代表例を示すと、G1として、Wa(ヒト)、KU(ヒト);G2として、DS−1(ヒト)、S2(ヒト);G3として、AU−1(ヒト)、YO(ヒト);G4として、ST3(ヒト)、Hosokawa(ヒト);G5として、OSU(ブタ);G6として、RF(ウシ)、WC3(ウシ);G7として、Ty−3(シチメンチョウ);G8として、69M(ヒト);G9として、WI61(ヒト);G10として、B223(ウシ);G11として、YM(ブタ);G12として、L26(ヒト)、T152(ヒト);G13として、L338(ウマ);G14として、403(ウマ);G15として、383(ウシ);G16として、ETD(マウス);G17として、Ty−1(シチメンチョウ);G18として、PO−13(ハト);G19として、02V0002G3(ニワトリ);G20として、Ecu534(ヒト);G21として、Azuk−1(ウシ);G22として、Tu−03V0002E10(シチメンチョウ);G23として、Phea14246(キジ);G24として、Dai−10(ウシ);G25として、KE4852/07(コウモリ);G26として、TJ4−1(ブタ)等が挙げられる。
ロタウイルスは、自然界に由来するロタウイルスに加え、塩基配列に変異を有するような改変されたロタウイルスであってもよい。
11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドであれば、それぞれのプラスミドにおいて、その機能を発揮するタンパク質であるNSP1とNSP6以外の10種のタンパク質をコードしている限り、遺伝子改変されていてもよい。NSP1とNSP6のタンパク質については、遺伝子改変によりcDNAにおいてコードされていなくてもよい。
すなわち、11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAのいずれかが遺伝子改変されていてもよく、遺伝子改変の結果として、当該cDNAに対応する遺伝子以外に由来する核酸配列が導入されていてもよい。
当該cDNAに対応する遺伝子以外に由来する核酸配列とは、11本の分節した二本鎖RNAにおける、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAのうち、例えば、VP1遺伝子を例にして説明すると、VP1遺伝子に導入されていてもよい核酸配列とは、VP1遺伝子以外に由来する核酸配列であることを意味し、外来遺伝子に由来する核酸配列であってもよいことから、11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAのいずれかが遺伝子改変されていてもよく、遺伝子改変の結果として、外来遺伝子が導入されていてもよい。
なお、11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAのいずれかが遺伝子改変されている場合には、遺伝子改変前におけるcDNAの核酸配列が改変されるのであれば、VP1遺伝子に由来する核酸配列が導入されていてもよい。
11分節の各遺伝子に対して、遺伝子改変が行われている場合には、任意の改変により人工的に病原性を制御したロタウイルスを作製することができる
また、ロタウイルスゲノムに人工的な変異を加えプラスミドを調製することで、ウイルスの性状を代えることもでき、さらに、腸管細胞への外来遺伝子を供給することもできる。
外来遺伝子に由来するタンパク質としては、特に限定されるものではないが、例えば、腸管でロタウイルスに発現させると有益なタンパク質として、グルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)等が挙げられる。また、ロタウイルスと同じ粘膜組織を侵入門戸とする病原体に対する免疫応答を誘導するために、特に限定されるものではないが、例えば、ノロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、インフルエンザウイルス、RSウイルス(RSV)及びパピローマウイルス(HPV)等のタンパク質やその断片を発現させるために外来遺伝子としてロタウイルスに遺伝子改変させてもよい。
外来遺伝子の導入は、2〜11種のプラスミドのいずれのプラスミドに導入してもよいが、外来遺伝子が導入されるプラスミドとして、NSP1遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドが好適に用いられる。
また、レポータータンパク質発現ウイルスとすることもできる。
外来遺伝子の塩基数は、特に限定されるものではないが、例えば、3kbp程度であってもよく、発現の効率からすると塩基数は小さい方が好ましいが、約2.5kbp以下であってもよく、約1.5kbp以下であってもよい。なお、実施例で具体的に示す導入された外来遺伝子の塩基数は、1000bp以下である。
11種のタンパク質をコードするプラスミドの調製は、特に限定されることなく、従来公知の遺伝子工学技術を用いて行うことができる。
プラスミドに挿入する前の各11遺伝子分節(VP1遺伝子〜VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子〜NSP5遺伝子に対応)の遺伝子も、従来公知の遺伝子工学技術により調製することができる。
また、挿入前に各遺伝子の改変を行ってもよく、プラスミドに挿入後に改変してもよい。
例えば、特開2007−215466号公報に記載される方法及びその変法により、11種のタンパク質をコードするプラスミドの調製を行ってもよい。
本発明において、cDNAを含むプラスミドは公知のプラスミド等を利用して構築することができる。例えば、T7 RNAポリメラーゼプロモーターを使用したプラスミドであれば、T7発現ベクターを骨格として、これに必要な遺伝子操作(ロタウイルスcDNA及びHDVリボザイム配列などの挿入)を施すことによって目的のプラスミドを構築可能である。1種のプラスミドにおいて、複数種のcDNAを含む場合には、各cDNAに対応してプロモーター等を組み込んで、プラスミド上で、複数種のcDNAが連続するように配置させることにより、複数種のcDNAを含むプラスミドを構築する。かかる方法は、Neumann et al., Proc Natl Acad Sci USA 2005やKobayashi et al., Virology 2010等により公知である。
既に多種多様のT7発現ベクターが提供されている。入手可能なT7発現ベクターの例として、市販のpBluescript SK(+/−)(Agilent Technologies社)、pCRII(Invitrogen社)、pGEM(Promega社)、pET(Novagene社)及びpcDNA(Invitrogen社)等が挙げられる。
T7 RNAポリメラーゼ以外のRNAポリメラーゼを利用する場合においては、プラスミド構築に利用できるベクターとして、pBluescript SK(+/−)、pCRII及びpGEM等が挙げられる。
T7 RNAポリメラーゼ以外のRNAポリメラーゼとして、種々のRNAポリメラーゼを利用することができ特に限定されるものではないが、例えば、T3 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ等が挙げられる。
本発明のロタウイルスの人工合成において、cDNAを培養細胞に導入する工程において用いられる培養細胞としては、T7 RNAポリメラーゼの恒常的発現細胞株を用いることができ、T7 RNAポリメラーゼの恒常的発現細胞株としては、BHK/T7−9細胞株(Ito et al., Microbiol Immunol 2003)を用いることが好ましいが、一過性にT7 RNAポリメラーゼを発現させることで、ワクチン作製に用いることが認可されているVero細胞やMDCK細胞をも含めたさまざまな哺乳動物由来の培養細胞を用いてもよい(Komoto et al., J Virol Methods 2014)。
従来のロタウイルスの人工合成法においては、培養細胞に導入する11種のcDNAの導入量は、例えば、cDNAを含むプラスミドとして導入する際においても、通常、実質的に等量で用いられる。
本発明において、実質的に等量とは、等量で培養細胞に添加して導入することをその思想とするものの、添加量において誤差があってもよいことを意味する。
本発明においては、cDNAを培養細胞に導入する際に、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量を他のcDNAの導入量よりも多くする。
本発明においては、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量を、他のcDNAの導入量よりも多くすることにより、従来技術におけるように、コウモリレオウイルス由来の細胞融合性タンパク質FASTとワクシニアウイルス由来のRNAキャッピング酵素を利用することなく、ロタウイルスを人工合成することができる。
本発明において、「VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量を他のcDNAの導入量よりも多くする」とは、本発明の技術的思想を逸脱するのでなければ、ロタウイルスを人工合成するにあたり、cDNAの導入量を他のcDNAの導入量よりも多くするとしたcDNA量が、他のcDNAの導入量よりも多ければよいことを意味しているのであり、仮に、本発明の技術的範囲から形式的に逸脱することを意図して、ロタウイルスの人工合成を行う上で、その導入量を多くする必要がないcDNAの導入量を、他のcDNAの導入量よりも多くするとしたcDNA量と同等程度にまで多くすることを排除しない。
すなわち、本発明においては、他のcDNAの導入量よりも多くするcDNAは、ロタウイルスの人工合成において、導入量を多くすることが必須となるcDNAとして選択される。他のcDNAとしては、選択されるcDNA以外のcDNAを意味するが、本発明においては、選択されるcDNA以外のcDNAが他のcDNAの導入量よりも多くなっていることを妨げない。
選択されるcDNA以外にも他のcDNAのうち、一部のcDNAの導入量を多くしてもよいことを意味する。
本発明においては、他のcDNAの導入量に対して導入量を多くするcDNAとしては、好適には、VP2遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAである。他のcDNAの導入量に対して導入量を多くするcDNAとしては、さらに好適には、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、及び/又はNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAである。
他のcDNAの導入量よりも多くするcDNAとして、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAが選択されるが、例えば、NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを他のcDNAの導入量よりも多くするcDNAとした場合を例示して説明する。
他のcDNAは、他のcDNAの導入量よりも多くするcDNAとして選択されたNSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNA以外のcDNAとなる。
ここで、本発明においては、ロタウイルスの効率的合成に必要でなくても、NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNA以外のcDNAであるVP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量を、NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量と同様に、他のcDNAの導入量に比して高くすることを妨げない。
また、他のcDNAの導入量よりも多くするcDNAとして、NSP2遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAが選択される場合には、他のcDNAは、他のcDNAの導入量よりも多くするcDNAとして選択されたNSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNA及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNA以外のcDNAとなる。
中でも、少なくともNSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNA及び/又はNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAが好適に他のcDNAの導入量に対して多く用いられるcDNAである。VP6遺伝子、VP7遺伝子及び/又はNSP1遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAが好適に他のcDNAの導入量に対して多く用いられるcDNAであってもよい。また、これら好適なcDNAを組み合わせて、導入量を多くするcDNAとして用いてもよい。
「少なくともNSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNA及び/又はNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量」とは、NSP2遺伝子か、NSP5遺伝子の、あるいは双方の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量を意味しているのであって、NSP2遺伝子とNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNA以外のcDNAの導入量を他のcDNAの導入量に対して多くしてもよい。
NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNA及び/又はNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量が、NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNA以外の導入に用いる他の各cDNAの導入量に対して多いことが好ましい。
NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNA及び/又はNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAは、同一又は異なるプラスミドに導入されていてよい。
NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNA及び/又はNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドの導入量が、NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミド以外の導入に用いる他のプラスミドの導入量に対して多いことが好ましく、少なくともNSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドの導入量が、NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミド以外の導入に用いる他の各プラスミドの導入量に対して多いか、少なくともNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドの導入量が、NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミド以外の導入に用いる9種の各プラスミドの導入量に対して多いことを意味し、NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドの導入量と、NSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドの導入量とが共に、NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミド以外の導入に用いる他の各プラスミドの導入量に対して多くてもよい。
NSP2遺伝子とNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAが、同一のプラスミドにあってもよく、その場合、NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAとを含むプラスミドの導入量が、NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミド以外の導入に用いる他の各プラスミドの導入量に対して多くてよい。
NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミド及び/又はNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドの導入量を調整して導入に用いることにより、より高効率でロタウイルスを人工的に合成することができる。また、導入に用いるプラスミドとして、ロタウイルスの11分節の遺伝子に対応するcDNAを含むプラスミドのみを用いてロタウイルスを人工的に合成することができる。
本発明においては、他のcDNAの導入量は、実質的に等量であることが好ましく、ロタウイルスを人工合成するために導入量を多くするcDNAの導入量は、導入に用いる他のcDNAの導入量の最大量よりも多い。
「VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量を他のcDNAの導入量よりも多くする」とは、その技術的思想として、導入するcDNA量、例えば、プラスミド量の総量を、導入するプラスミドの数で除すことで求められる量よりも他のcDNAの導入量よりも多く導入するcDNAの導入量が多いことを意味し、他のcDNAの導入量が実質的に等量であるとは、導入するcDNAの総量から、多く導入するcDNAの導入量の差を求め、差分を残りの他のcDNAを導入するためのプラスミドの数で除すことで求められる量で培養細胞に導入することを意味している。
具体的に、例えば、NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAとを別々のプラスミドに含む形式で導入する場合には、そのプラスミドの量は、異なっていてもよいが、実質的に等量であることが好ましい。
NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドの量が、それぞれ、同一又は異なって、他のプラスミドの量に対して、より好適には、他のプラスミドのうち最大量の導入量となるプラスミドの量に対して、好ましくは2倍量以上であり、より好ましくは3倍量以上であり、さらに好ましくは4倍量以上であり、よりさらに好ましくは5倍量以上である。
NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドの量の上限は、それぞれ、同一又は異なって、他のプラスミドの量に対して、より好適には、他のプラスミドのうち最大量の導入量となるプラスミドの量に対して、特に限定されるものではないが、好ましくは10倍量以下であり、より好ましくは9倍量以下であり、さらに好ましくは8倍量以下であり、よりさらに好ましくは7倍量以下であり、6倍量以下であってもよい。
NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAを含むプラスミドの量は、異なる場合には少なくとも一方の量を、他のプラスミドの量、より好適には少なくとも最大量のプラスミドの量よりも多い〜10倍量以下の範囲内で適宜設定してよい。
なお、上記具体的な例として、NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAについて例示して記載してが、他のcDNAに比して導入量を多くするcDNAにおいて、同様の倍量によりcDNAを導入してよい。
プラスミドの導入量は、総量として、特に限定されないが、例えば、6ウェルプレート上で培養する場合には、1ウェルあたり5〜22μgといった量で導入される。
cDNAをプラスミドとして導入する際には、特に限定されるものではないが、遺伝子導入試薬として、TransIT−LT1 Transfection Reagent (Takara Bio社)、FuGENE HD transfection reagent (Promege社)及びLipofectamine2000、Lipofectamine 3000(いずれもThermo Fischer Scientific社)等が用いられる。
本発明においては、培養細胞に導入後、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子のmRNAの発現量が、他のmRNAの発現量よりも多くする、ロタウイルスの人工合成法であってもよい。
本発明においては、プラスミドを培養細胞に導入後、培養細胞を培養することにより、ロタウイルスを人工合成することができる。本発明におけるロタウイルスの人工合成法の模式図を図1に示す。
細胞培養の温度は、特に限定されず、通常細胞培養の培養温度として至適とされる温度を採用すればよい。
細胞培養に用いられる培地としては、完全培地及び不完全培地等が挙げられ、好適には、Dulbecco’s modified Eagle medium(DMEM)及びEagle’s minimum essential medium(MEM)が挙げられるが、類似の組織培養培地を用いてもよい。
cDNAを導入する培養細胞としては、遺伝子導入した細胞の培養に用いられる細胞を用いることができ、特に限定されないが、例えば、BHK/T7−9細胞(Ito et al., 2003)、BSR−T7/5細胞(Buchholz et al., 1999)、SK6.T7細胞(van Gennip et al., 1999)及び293−3−46細胞(Radecke et al., 1995)から成る群から選ばれる培養細胞が用いられる。
Buchholz UJ, Granzow H, Schuldt K, Whitehead SS, Murphy BR, Collins PL. 2000. Chimeric bovine respiratory syncytial virus with glycoprotein gene substitutions from human respiratory syncytial virus (HRSV): effects on host range and evaluation as a live-attenuated HRSV vaccine. J Virol 74:1187-1199.
van Gennip HG, van Rijn PA, Widjojoatmodjo MN, Moormann RJ. 1999. Recovery of infectious classical swine fever virus (CSFV) from full-length genomic cDNA clones by a swine kidney cell line expressing bacteriophage T7 RNA polymerase. J Virol Methods 78:117-128.
Radecke F, Spielhofer P, Schneider H, Kaelin K, Huber M, Dotsch C, Christiansen G, Billeter MA. 1995. Rescue of measles viruses from cloned DNA. EMBO J 14:5773-5784.
cDNAを培養細胞に導入した後に、ロタウイルスに感受性を有する細胞を用いて共培養を行うことが好ましい(図1A)。
ロタウイルスに感受性を有する細胞としては、例えば、CV−1細胞、MA104細胞、HT−29細胞、CaCo2細胞、COS−7細胞、及び293T細胞等が挙げられる。
共培養においては、細胞培養に用いられる培地として列記した培地を用いてもよいが、中でも、不完全培地を用いることが好ましい。
本発明においては、cDNAを培養細胞に導入した後に、共培養を行わなくても(図1B)、人工合成ロタウイルスを効率的に作製することができる。
人工合成ロタウイルスの培養においては、共培養を行う場合であっても、共培養を行わない場合であっても、培養細胞を試験管等の培養容器に播種した後、培養容器を回転させながら培養する回転培養をさらに行うことが好ましい。
回転培養では、培養液の移動が生ずるともに、細胞表層に接触する培養液の量が少なくなる状態(細胞表層の湿潤度合が低下する状態)を作ることができるため、ウイルスの宿主への感染効率の向上を期待できる。
回転培養に用いる装置としては、市販の専用装置が挙げられるが、市販の回転培養装置としては、例えば、ローテーター RT−550(タイテック社)等が挙げられる。
培養後、凍結、融解を繰り返すことにより、人工合成したロタウイルスを細胞ライセートから取り出すことができる。また、人工合成したロタウイルスは、特に限定されるものではないが、例えば、MA104細胞、CV−1細胞、HT−29細胞、CaCo2細胞、COS−7細胞、及び293T細胞等に感染させることができる。
本発明において、ロタウイルスが人工合成できたことを確認する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、細胞変性効果の確認、ウイルスゲノムを抽出しての電気泳動等が挙げられる。
また、プラークアッセイ、抽出ゲノムからRT−PCR産物のダイレクトシーケンシングによって、ロタウイルスの人工合成を確認してもよい。
以下に、本発明を実施例により説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
プラスミドの作製
サルロタウイルスSA11-L2株(Taniguchi et al., 1994)のゲノム2本鎖RNAをQIAamp Viral RNA Mini kit(Qiagen社)を用いて抽出した。ReverTra Ace reverse transcriptase(Toyobo社)とPrimeStar HS DNA polymerase(Takara Bio社)を用いたRT-PCRで各11遺伝子分節(VP1〜VP4、VP6、VP7、NSP1〜NSP5)を増幅した。
既報(Komoto et al., PNAS. 2006)のように、フォワードプライマーは、T7 RNAポリメラーゼプロモーター配列とロタウイルス5'末端配列を含み、リバースプライマーは、ロタウイルス3'末端配列を含むように設計した。
VP1〜VP4遺伝子は、5’側プライマーにあるHindIII、EcoRI又はPstIサイトを用いて、制限酵素処理した後に、D型肝炎ウイルス(HDV)リボザイム配列とT7 RNAポリメラーゼターミネーター配列を有するプラスミドpX8dT(Schnell et al., EMBO J. 1994)の該当制限酵素サイトに挿入した。
VP6、VP7、NSP1〜NSP5遺伝子は、5’側プライマーにあるHindIII、EcoRI又はPstIサイトを用いて、制限酵素処理した後に、D型肝炎ウイルス(HDV)リボザイム配列とT7 RNAポリメラーゼターミネーター配列を有するプラスミドpEXR(Eurofins Genomicsで人工合成)の該当制限酵素サイトに挿入した。
作製した各pT7プラスミドにおいて、5'から3'末端側に向かって、T7 RNAポリメラーゼプロモーター配列、ロタウイルス遺伝子配列、HDVリボザイム配列及びT7 RNAポリメラーゼターミネーター配列が、記載順に配置されている。
ロタウイルスの作製
1.完全培地に懸濁させたBHK/T7-9細胞(Ito et al., Microbiol. Immunol. 2003)を6ウェルプレート(Falcon社)へ播種した。完全培地として、Dulbecco's modified Eagle medium(DMEM)(Nissui社)+5% fetal calf serum(FCS)(Gibco社)を用いた。37℃のCO2インキュベーター(5%CO2)で静置培養した。
2.翌日、プラスミドの作製において作製したロタウイルスのゲノムをコードする11本のプラスミド(pT7/VP1SA11, pT7/VP2SA11, pT7/VP3SA11, pT7/VP4SA11-ΔPst(Komoto et al., PNAS. 2006), pT7/VP6SA11, pT7/VP7SA11, pT7/NSP1SA11, pT7/NSP2SA11, pT7/NSP3SA11, pT7/NSP4SA11及びpT7/NSP5SA11)を遺伝子導入した。プラスミド量は、0.75 μg/ウェルを基本とするが、pT7/NSP2SA11及び/又はpT7/NSP5SA11は3倍量の2.25 μg/ウェル又は5倍量の3.75μg/ウェルとした。
3.11本のプラスミドに対し、プラスミド総量(μg)に対して100μL/μgとなる量のOpti-MEM(Gibco社)、3 μL/μgプラスミドの遺伝子導入試薬(TransIT-LT1 Transfection Reagent(Takara Bio社))を加えて、混和した。プラスミド総量が11.25μgである場合、1125μLのOpti-MEM(Gibco社)を用いた。
4.37℃で、17分間インキュベーションした。
5.6ウェルプレートにインキュベーション後のプラスミドを滴下した後、37℃のCO2インキュベーター(5%CO2)で静置培養した。
6.翌日、不完全培地で培養した細胞を洗浄した後、CV-1細胞及びトリプシン(Type IV, from porcine pancreas)(0.3 μg/mL, Sigma-Aldrich社)を添加して、不完全培地で静置培養した。不完全培地として、FCS不含のEagle's minimum essential medium(MEM)(Nissui社)を用いた。
7.3日間静置培養の後、−80℃での凍結及び融解を2回ずつ行った。
8.融解後の細胞ライセートをトリプシン(10 μg/mL)で37℃、30分間処理した後、MA104細胞に感染させ(37℃、1時間)、ローテーター RT-550(Taitec社)を用いて、不完全培地で回転培養した(37℃)。回転培養を開始した翌日又は翌々日には、人工合成ロタウイルスの増殖に伴うMA104細胞の細胞変性効果が認められた。
9.細胞培養液からロタウイルスのゲノムRNAをQIAamp Viral RNA Mini kit(Qiagen社)を用いて抽出した。ポリアクリルアミドゲル電気泳動でロタウイルスの分節ゲノムパターンを確認するとともに、遺伝子マーカーとしてVP4遺伝子分節に導入したPstIサイトの破壊(Komoto et al., PNAS. 2006)を制限酵素処理解析又はダイレクトシーケンシングを行って、回収したロタウイルスが人工合成由来であることを確認した。
また、プラークアッセイにより、ロタウイルス感染による死細胞の集団(プラーク)数を数えることで、サンプル中の感染性ウイルスを定量した結果を図2に示す。
ロタウイルスの作製におけるステップ5における静置培養を開始して24時間後(SA11-L2ウイルス感染BHK/T7-9細胞では、培養開始後8時間後)のBHK/T7-9細胞を2.5%パラホルムアルデヒドと0.1%グルタルアルデヒドで固定し、酢酸ウラニルで染色した後に透過型電子顕微鏡により観察した(図3)。倍率は40,000倍とした。
ロタウイルスの作製におけるステップ2において、11本のプラスミド(pT7/VP1SA11, pT7/VP2SA11, pT7/VP3SA11, pT7/VP4SA11-ΔPst(Komoto et al., PNAS. 2006), pT7/VP6SA11, pT7/VP7SA11, pT7/NSP1SA11, pT7/NSP2SA11, pT7/NSP3SA11, pT7/NSP4SA11及びpT7/NSP5SA11)のうち1本のみのプラスミド量を3倍量の2.25 μg/ウェルとし、その他のプラスミド量を0.75 μg/ウェルを基本とした以外は、ロタウイルスの作製のステップ1〜9と同様にロタウイルスを作製した。
pT7/NSP2SA11及びpT7/NSP5SA11を3倍量として加えた場合に人工合成効率が上昇したが、pT7/VP7SA11VP7又はpT7/NSP1SA11をそれぞれ3倍量とした場合にも、人工合成効率の上昇が確認された(P < 0.05 (t検定))。
すなわち、本発明において、VP7、NSP1、NSP2又はNSP5のcDNAの導入量を他の導入量よりも多くすることにより、本実施例においては、3倍量とすることにより、ロタウイルスの人工合成効率の上昇を確認している。
ロタウイルスの作製におけるステップ6において、CV-1細胞及びトリプシン(Type IV, from porcine pancreas)(0.3 μg/mL, Sigma-Aldrich社)の添加に代えて、トリプシン(Type IV, from porcine pancreas)(0.3 μg/mL, Sigma-Aldrich社)のみを添加した以外は、ロタウイルスの作製のステップ1〜9を行って、人工合成ロタウイルスを作製し、回収したロタウイルスが人工合成由来であることを確認した。
pT7/NSP2SA11及びpT7/NSP5SA11の導入量を他のプラスミドの導入量に対して1倍量、3倍量、5倍量とした場合における人工合成ロタウイルスの相対合成量の結果を、ロタウイルス感染による死細胞の集団(プラーク)数を数えることで、サンプル中の感染性ウイルスを定量した結果として表1に示す(2回の実験結果を示す。)。
レポーター遺伝子を導入したプラスミドの作製
NSP1遺伝子の操作はプラスミドpT7/NSP1SA11を使用して行った。サルロタウイルスSA11-L2株のNSP1遺伝子の塩基223〜643を欠失させ、代わりにブタテスコウイルス−1の2Aプロテアーゼ(Kim et al., PLoS One. 2011)−NanoLuc(Nluc)(Promega社)をコードするcDNAを人工合成し(Eurofins Genomics社)、挿入した。PrimeSTAR HS DNA polymerase (Takara Bio社)を用いたPCRでこの変異NSP1遺伝子の全長を増幅し、PstIサイトを用いて、制限酵素処理した後にHDVリボザイム配列とT7 RNAポリメラーゼターミネーター配列を有するプラスミドpX8dT (Schnell et al., EMBO J. 1994)のPstI-SmaIサイトに挿入した。得られたプラスミドpT7/NSP1-Nluc上のNluc遺伝子の5'と3'末端にはそれぞれXhoIとNotIサイトを有している。PCRでEGFPとmCherry遺伝子(Clontech社)を増幅し、XhoI-NotIサイトを用いて、制限酵素処理した後にpT7/NSP1-Nlucの該当箇所に挿入することで、それぞれpT7/NSP1-EGFPとpT7/NSP1-mCherryを作製した。このようにして新たに作製したプラスミドは、その塩基配列を確認することで、適切なクローンであることが確認された。
レポーター遺伝子を発現するロタウイルスの作製
1. 完全培地に懸濁させたBHK/T7-9細胞を6ウェルプレート(Falcon社)へ播種した。
2. 翌日、ロタウイルスゲノムのNSP1遺伝子以外をコードする10本のプラスミド(pT7/VP1SA11, pT7/VP2SA11, pT7/VP3SA11, pT7/VP4SA11-ΔPstI (Komoto et al., 2006), pT7/VP6SA11, pT7/VP7SA11, pT7/NSP2SA11, pT7/NSP3SA11, pT7/NSP4SA11, pT7/NSP5SA11)と共にpT7/NSP1-Nluc、pT7/NSP1-EGFP、pT7/NSP1-mCherryのいずれか1本のプラスミドの計11本のプラスミドを遺伝子導入した。プラスミド量は0.75 μg/ウェルを基本とするが、pT7/NSP2SA11及びpT7/NSP5SA11は3倍量の2.25 μg/ウェルとした。
3. プラスミド総量(11.25 μg)に対して、1125 μLのOPTI-MEM (Gibco社)、3 μL/μgの遺伝子導入試薬(TransIT-LT1 Transfection Reagent (Takara Bio社))を加えて混和した。
4. 37℃で17分間インキュベーションした。
5. 6ウェルプレートにインキュベーション後のプラスミドを滴下した後、37℃のCO2インキュベーター(5%CO2)で静置培養した。
6. 翌日、不完全培地で細胞を洗浄した後、CV-1細胞及びトリプシン(Type IV, from porcine pancreas)(0.3 μg/mL, Sigma-Aldrich社)を添加して、不完全培地で静置培養した。
7. 3日間静置培養の後、−80℃での凍結及び融解を2回ずつ行った。
8. 融解後の細胞ライセートをトリプシン(10 μg/mL)で37℃、30分間処理した後、MA104細胞に感染させ(37℃、1時間)、ローテーターRT-550 (Taitec社)を用いて、不完全培地で5日間回転培養した(37℃)。
9. 8のステップの感染MA104を−80℃での凍結及び融解を2回ずつ行い、融解後の細胞ライセートをトリプシン(10 μg/mL)で37℃、30分間処理した後、再度MA104細胞に感染させ(37℃、1時間)、ローテーターRT-550 (Taitec社)を用いて、不完全培地で回転培養した(37℃)。翌日には、人工合成ロタウイルスの増殖に伴うMA104細胞の細胞変性効果が認められた。
10. 細胞培養液からロタウイルスのゲノムRNAをQIAamp Viral RNA Mini Kit (Qiagen社)を用いて抽出した。その塩基配列を確認することで、Nluc, EGFPあるいはmCherry遺伝子をコードする人工合成ロタウイルス(rSA11-Nluc, rSA11-EGFPあるいはrSA11-mCherry)であることが確認された。さらに、rSA11-NlucのNluc発現はNano-Glo Lufiferase Assay kit (Promega社)を、rSA11-EGFPとrSA11-mCherryのEGFPとmCherry発現は共焦点レーザー顕微鏡LSM-710 (Carl Zeiss社)を用いて確認した。
結果を図4及び図5に示す。
レポーター遺伝子を発現するロタウイルスのゲノム安定性の検討
rSA11-Nluc、rSA11-EGFP、rSA11-mCherryをMA104細胞で連続した継代培養を行い、1回目の継代(P1)、3回目の継代(P3)、5回目の継代(P5)、10回目の継代(P10)のウイルスdsRNAゲノムを抽出してPAGE解析を行った(図6A及び7A)。rSA11-NlucのP1、P3、P5、P10ストックをMOI=0.01でMA104細胞に感染させ、12時間後のNluc活性を測定した(図6B)。rSA11-EGFPとrSA11-mCherryについては、P1、P3、P5、P10ストックから抽出したdsRNAゲノムを鋳型として、NSP1遺伝子とEGFPあるいはmCherry遺伝子に特異的なプライマーを用いたRT-PCRを行い、アガロースゲル電気泳動解析を行った(図7B)。これらレポーター遺伝子を発現するロタウイルスのゲノムはいずれも、少なくとも10回の継代培養後でも安定であることが確認された。
また、〜1.5kbpの外来遺伝子をロタウイルスゲノム(NSP1遺伝子)に挿入した、人工合成ロタウイルスを作製できることを確認している。
グルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)遺伝子を導入したプラスミドの作製
NSP1遺伝子の操作はプラスミドpT7/NSP1SA11を使用して行った。サルロタウイルスSA11-L2株のNSP1遺伝子の塩基223〜643を欠失させ、代わりにブタテスコウイルス−1の2Aプロテアーゼ(Kim et al., PLoS One. 2011)−GLP-2(アクセションナンバー: V01515)をコードするcDNAを人工合成し(Eurofins Genomics社)、挿入した。PrimeSTAR HS DNA polymerase (Takara Bio社)を用いたPCRでこの変異NSP1遺伝子の全長を増幅し、PstIサイトを用いて、制限酵素処理した後にHDVリボザイム配列とT7 RNAポリメラーゼターミネーター配列を有するプラスミドpX8dT (Schnell et al., EMBO J. 1994)のPstI-SmaIサイトに挿入した。得られたプラスミドpT7/NSP1-GLP2上のGLP-2遺伝子の3'末端にはNotIサイトを有している。このようにして新たに作製したプラスミドは、その塩基配列を確認することで、適切なクローンであることが確認された。
GLP−2遺伝子を発現するロタウイルスの作製
1. 完全培地に懸濁させたBHK/T7-9細胞を6ウェルプレート(Falcon社)へ播種した。
2. 翌日、ロタウイルスゲノムのNSP1遺伝子以外をコードする10本のプラスミド(pT7/VP1SA11, pT7/VP2SA11, pT7/VP3SA11, pT7/VP4SA11-ΔPstI (Komoto et al., 2006), pT7/VP6SA11, pT7/VP7SA11, pT7/NSP2SA11, pT7/NSP3SA11, pT7/NSP4SA11, pT7/NSP5SA11)と共にプラスミドpT7/NSP1-GLP2の計11本のプラスミドを遺伝子導入した。プラスミド量は0.75 μg/ウェルを基本とするが、pT7/NSP2SA11及びpT7/NSP5SA11は3倍量の2.25 μg/ウェルとした。
3. プラスミド総量(11.25 μg)に対して、1125 μLのOPTI-MEM (Gibco社)、3 μL/μgの遺伝子導入試薬(TransIT-LT1 Transfection Reagent (Takara Bio社))を加えて混和した。
4. 37℃で17分間インキュベーションした。
5. 6ウェルプレートにインキュベーション後のプラスミドを滴下した後、37℃のCO2インキュベーター(5%CO2)で静置培養した。
6. 翌日、不完全培地で細胞を洗浄した後、CV-1細胞及びトリプシン(Type IV, from porcine pancreas)(0.3 μg/mL, Sigma-Aldrich社)を添加して、不完全培地で静置培養した。
7. 3日間静置培養の後、−80℃での凍結及び融解を2回ずつ行った。
8. 融解後の細胞ライセートをトリプシン(10 μg/mL)で37℃、30分間処理した後、MA104細胞に感染させ(37℃、1時間)、ローテーターRT-550 (Taitec社)を用いて、不完全培地で5日間回転培養した(37℃)。
9. ステップ8の感染MA104を−80℃での凍結及び融解を2回ずつ行い、融解後の細胞ライセートをトリプシン(10 μg/mL)で37℃、30分間処理した後、再度MA104細胞に感染させ(37℃、1時間)、ローテーターRT-550 (Taitec社)を用いて、不完全培地で回転培養した(37℃)。翌日には、人工合成ロタウイルスの増殖に伴うMA104細胞の細胞変性効果が認められた。
10. 細胞培養液からロタウイルスのゲノムRNAをQIAamp Viral RNA Mini Kit (Qiagen社)を用いて抽出した。その塩基配列を確認することで、GLP-2遺伝子をコードする人工合成ロタウイルス(rSA11-GLP2)であることが確認された。
結果を図8に示す。
ノロウイルスカプシドVP1遺伝子を導入したプラスミドの作製
NSP1遺伝子の操作はプラスミドpT7/NSP1SA11を使用して行った。サルロタウイルスSA11-L2株のNSP1遺伝子の塩基223〜643を欠失させ、代わりにブタテスコウイルス−1の2Aプロテアーゼ(Kim et al., PLoS One. 2011)−ノロウイルスMatsudo18株のカプシドVP1(アクセションナンバー: DQ093062)をコードするcDNAを人工合成し(Eurofins Genomics社)、挿入した。PrimeSTAR HS DNA polymerase (Takara Bio社)を用いたPCRでこの変異NSP1遺伝子の全長を増幅し、PstIサイトを用いて、制限酵素処理した後にHDVリボザイム配列とT7 RNAポリメラーゼターミネーター配列を有するプラスミドpX8dT (Schnell et al., EMBO J. 1994)のPstI-SmaIサイトに挿入した。得られたプラスミドpT7/NSP1-NVVP1上のVP1遺伝子の3'末端にはNotIサイトを有している。このようにして新たに作製したプラスミドは、その塩基配列を確認することで、適切なクローンであることが確認された。
ノロウイルスカプシドVP1遺伝子を発現するロタウイルスの作製
1. 完全培地に懸濁させたBHK/T7-9細胞を6ウェルプレート(Falcon社)へ播種した。
2. 翌日、ロタウイルスゲノムのNSP1遺伝子以外をコードする10本のプラスミド(pT7/VP1SA11, pT7/VP2SA11, pT7/VP3SA11, pT7/VP4SA11-ΔPstI (Komoto et al., 2006), pT7/VP6SA11, pT7/VP7SA11, pT7/NSP2SA11, pT7/NSP3SA11, pT7/NSP4SA11, pT7/NSP5SA11)と共にプラスミドpT7/NSP1-GLP2の計11本のプラスミドを遺伝子導入した。プラスミド量は0.75 μg/ウェルを基本とするが、pT7/NSP2SA11及びpT7/NSP5SA11は3倍量の2.25 μg/ウェルとした。
3. プラスミド総量(11.25 μg)に対して、1125 μLのOPTI-MEM (Gibco社)、3 μL/μgの遺伝子導入試薬(TransIT-LT1 Transfection Reagent (Takara Bio社))を加えて混和した。
4. 37℃で17分間インキュベーションした。
5. 6ウェルプレートにインキュベーション後のプラスミドを滴下した後、37℃のCO2インキュベーター(5%CO2)で静置培養した。
6. 翌日、不完全培地で細胞を洗浄した後、CV-1細胞及びトリプシン(Type IV, from porcine pancreas)(0.3 μg/mL, Sigma-Aldrich社)を添加して、不完全培地で静置培養した。
7. 3日間静置培養の後、−80℃での凍結及び融解を2回ずつ行った。
8. 融解後の細胞ライセートをトリプシン(10 μg/mL)で37℃、30分間処理した後、MA104細胞に感染させ(37℃、1時間)、ローテーターRT-550 (Taitec社)を用いて、不完全培地で5日間回転培養した(37℃)。
9. 8のステップの感染MA104を−80℃での凍結及び融解を2回ずつ行い、融解後の細胞ライセートをトリプシン(10 μg/mL)で37℃、30分間処理した後、再度MA104細胞に感染させ(37℃、1時間)、ローテーターRT-550 (Taitec社)を用いて、不完全培地で回転培養した(37℃)。翌日には、人工合成ロタウイルスの増殖に伴うMA104細胞の細胞変性効果が認められた。
10. 細胞培養液からロタウイルスのゲノムRNAをQIAamp Viral RNA Mini Kit (Qiagen社)を用いて抽出した。その塩基配列を確認することで、ノロウイルスVP1遺伝子をコードする人工合成ロタウイルス(rSA11-NVVP1)であることが確認された。
結果を図9に示す。
参考文献
Taniguchi K, Nishikawa K, Kobayashi N, Urasawa T, Wu H, Gorziglia M, Urasawa S. 1994. Differences in plaque size and VP4 sequence found in SA11 virus clones having simian authentic VP4. Virology 198:325-330.
Komoto S, Sasaki J, Taniguchi K. 2006. Reverse genetics system for introduction of site-specific mutations into the double-stranded RNA genome of infectious rotavirus. Proc Natl Acad Sci USA 103:4646-4651.(非特許文献3)
Schnell MJ, Mebatsion T, Conzelmann KK. 1994. Infectious rabies viruses from cloned cDNA. EMBO J 13:4195-4203.
Ito N, Takayama-Ito M, Yamada K, Hosokawa J, Sugiyama M, Minamoto N. 2003. Improved recovery of rabies virus from cloned cDNA using a vaccinia virus-free reverse genetics system. Microbiol Immunol 47:613-617.
Komoto S, Kawagishi T, Kobayashi T, Ikizler M, Iskarpatyoti J, Dermody TS, Taniguchi K. 2014. A plasmid-based reverse genetics system for mammalian orthoreoviruses driven by a plasmid-encoded T7 RNA polymerase. J Virol Methods 196:36-39.
Kim JH, Lee SR, Li LH, Park HJ, Park JH, Lee KY, Kim MK, Shin BA, Choi SY. 2011. High cleavage efficiency of a 2A peptide derived from porcine teschovirus-1 in human cell lines, zebrafish and mice. PLoS One 6:e18556.

Claims (13)

  1. 11本の分節した二本鎖RNAをゲノムとして有するロタウイルスの人工合成法であって、
    11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAを培養細胞に導入する工程を含み、
    11本の分節した二本鎖RNAは、それぞれ、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子の二本鎖RNAであり、
    cDNAを培養細胞に導入する際に、VP1遺伝子、VP2遺伝子、VP3遺伝子、VP4遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量を他のcDNAの導入量よりも多くする、ロタウイルスの人工合成法。
  2. FASTタンパク質及び/又はRNAキャッピング酵素をコードする核酸は、培養細胞に導入しない、請求項1に記載のロタウイルスの人工合成法。
  3. VP2遺伝子、VP6遺伝子、VP7遺伝子、NSP1遺伝子、NSP2遺伝子、NSP3遺伝子、NSP4遺伝子及びNSP5遺伝子からなる群から選ばれる少なくとも1種の遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量を他のcDNAの導入量よりも多くする、請求項1又は2に記載のロタウイルスの人工合成法。
  4. 少なくともNSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNA及び/又はNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量が、他のcDNAの導入量に対して、2倍量以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のロタウイルスの人工合成法。
  5. NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量が、他のcDNAの導入量に対して、2倍量以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のロタウイルスの人工合成法。
  6. NSP2遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAとNSP5遺伝子の二本鎖RNAに対応するcDNAの導入量が実質的に等量であり、かつ、他のcDNAの量に対して多い、請求項1〜3のいずれか1項に記載のロタウイルスの人工合成法。
  7. 他のcDNAの導入量が実質的に等量である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のロタウイルスの人工合成法。
  8. プラスミドを用いてcDNAが導入される、請求項1〜7のいずれか1項に記載のロタウイルスの人工合成法。
  9. プラスミドがT7プラスミドである、請求項8に記載のロタウイルスの人工合成法。
  10. 培養細胞が、BHK/T7−9細胞、BSR−T7/5細胞、SK6.T7細胞及び293−3−46細胞からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載のロタウイルスの人工合成法。
  11. 11本の分節した二本鎖RNAに対応するcDNAのいずれかに、当該cDNAに対応する遺伝子以外に由来する核酸配列が導入されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載のロタウイルスの人工合成法。
  12. cDNAを培養細胞に導入した後に、ロタウイルスに感受性を有する細胞を用いて共培養を行う、請求項1〜11のいずれか1項に記載のロタウイルスの人工合成法。
  13. cDNAを培養細胞に導入した後に、共培養を行わない、請求項1〜11のいずれか1項に記載のロタウイルスの人工合成法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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