JP2019045283A - 排ガス分析装置、排ガス分析方法及び排ガス分析用プログラム - Google Patents

排ガス分析装置、排ガス分析方法及び排ガス分析用プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】希釈サンプリング方式を用いた排ガス分析システムにおいて、排ガス中の測定対象成分の濃度等の測定値をより高い精度で算出できる排ガス分析装置を提供する。【解決手段】排ガスと希釈ガスとが混合した希釈排ガスを分析する排ガス分析装置であって、希釈排ガス中の測定対象成分を測定する分析部と、分析部に希釈排ガスを導入し、希釈排ガスの流れ抵抗となる抵抗部を有する導入路と、希釈排ガス中の、測定対象成分とは異なる粘性成分の濃度を決定する粘性成分濃度決定部と、粘性成分濃度決定部が決定した粘性成分の濃度に応じて、分析部が測定した測定値を補正する補正部と、を有する、排ガス分析装置。【選択図】図2

Description

本発明は、排ガスを分析する排ガス分析装置、排ガス分析方法及び排ガス分析用プログラムに関するものである。
この種の排ガス分析装置としては、特許文献1に示すように、内燃機関から排出される排ガスを全量サンプリングするとともに、この排ガスに大気等の希釈ガスを混合して混合ガス(以下において、希釈排ガスともいう)を生成し、該希釈排ガスの流量が一定となるように構成した定容量サンプリング(Constant Volume Sampling:CVS)機構とともに用いられるものが知られている。
上述したCVS機構によれば、内燃機関から排出される排ガスを希釈することで、混合ガスに含まれる水分の濃度を下げることができる。これにより、水分の結露が起こりにくくなり、水の凝縮によるガス濃度変化や水溶性成分の溶解損失による測定誤差を抑制することができる。
ところで、このような、サンプリングした排ガスを大気等で希釈する希釈サンプリング方式を用いた排ガス分析システムでは、排ガス分析装置により算出される排ガス中の測定対象成分の濃度値(より具体的には、排ガス分析装置により算出される希釈排ガスにおける濃度値を、希釈前の排ガスにおける濃度値に換算した値)が、サンプリングした排ガスを希釈しない直接サンプリング方式において算出される排ガス中の測定対象成分の濃度値に比べて低くなってしまう(すなわち測定誤差が生じてしまう)ことがあった。
このような問題は、希釈サンプリング方式を用いた排ガス分析システムを用いて測定対象成分の粒子量や粒子数を算出する場合にも起こり得る。
特開2014−174054号公報
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、希釈サンプリング方式を用いた排ガス分析システムにおいて、排ガス中の測定対象成分の濃度等の測定値をより高い精度で算出できる排ガス分析装置を提供することを主たる課題とするものである。
本発明者らは上記課題を解決するにあたり、希釈サンプリング方式においては、排ガスを大気等で希釈することにより、排ガス分析装置の分析部に導入される測定対象流体(すなわち希釈排ガス)の粘度が変化することに着眼した。
排ガス分析装置は通常、測定対象成分の濃度等の測定を行う分析部に導入される希釈排ガスの流量を、当該測定に必要な流量に制限するように、希釈排ガスを分析部に導入する導入路上に、例えばキャピラリ等の流体抵抗部を設けている。希釈サンプリング方式を用いる排ガス分析システムでは、排ガスを大気等で希釈することにより、大気中に含まれる例えば酸素等の粘度の高い成分が排ガスと混合し、希釈排ガスの粘度は、希釈前の流体(すなわち排ガス)の粘度よりも高くなってしまう。
本発明者らは鋭意検討した結果、希釈排ガスの粘度上昇による分析部の測定結果への影響は、希釈排ガスが前記導入路の流体抵抗部を通過する際に顕著になり、これにより分析部における測定誤差の一因となっていることを見出した。すなわち、希釈排ガスの粘度が高くなることで、希釈排ガスがキャピラリ等の流体抵抗部から受ける流体抵抗が増大し、分析部に導入される希釈排ガスの流量が低下し、これにより分析部の感度が低下して、測定される分析対象成分の測定値が低下してしまうことを見出した。例えば、分析部は、所定の導入量に対する希釈排ガス中における測定対象成分の測定値が予め校正されているが、この希釈排ガスの導入量が変動することによって、算出される測定値にずれが生じてしまうことになる。
本発明者らは、さらに鋭意検討した結果、前記分析部で測定される測定値の変動値と希釈排ガスの粘度との間には相関関係があり、さらには、希釈排ガスの粘度と、希釈排ガスに含まれる酸素等の粘性成分の濃度との間には相関関係があることを見出した。そして、希釈排ガス中の粘性成分の濃度を把握することによって、希釈排ガスの粘度の上昇による分析部における測定への影響、すなわち分析部で測定される測定値の低下量を算出することができ、これにより分析部が測定した分析対象成分の測定値を補正できることを見出し、本発明の排ガス分析装置に至ったのである。
すなわち、本発明に係る排ガス分析装置は排ガスと、前記排ガスを希釈する希釈ガスと、が混合した希釈排ガスを分析する排ガス分析装置であって、前記希釈排ガス中の測定対象成分を測定する分析部と、前記分析部に前記希釈排ガスを導入し、前記希釈排ガスの流れ抵抗となる流体抵抗部を有する導入路と、前記希釈排ガス中の、前記測定対象成分とは異なる粘性成分の濃度を決定する粘性成分濃度決定部と、前記粘性成分濃度決定部が決定した前記粘性成分の濃度に応じて、前記分析部が測定した補正値を補正する補正部と、を有することを特徴とする。
このようなものであれば、測定対象流体である希釈排ガスに含まれる測定対象成分とは異なる粘性成分の濃度に応じて、分析部が測定した測定対象成分の測定値を補正するので、排ガス中の測定対象成分の測定値を高い精度で算出することができる。すなわち、粘性成分の濃度に応じて分析部が測定した測定値を補正することで、排ガスを希釈することによる粘度の変化によって生じる前記測定値への影響を低減することができるのである。
上述した希釈排ガス中の前記測定対象成分とは異なる粘性成分(以下において、単に“粘性成分”と記載することがある)とは、具体的には、その粘度が、前記測定対象成分の粘度より高いものである。
分析部で測定される測定値への影響は、測定対象成分よりも高い粘度を有する粘性成分が希釈排ガス中に含まれることにより顕著に表れる。そのため、希釈排ガスに含まれる粘性成分のうち、測定対象成分よりも高い粘度を有する粘性成分の濃度を用いて前記測定値を補正することによって、排ガスを希釈することによる粘度の変化による前記測定値への影響をより低減することができる。
前記粘性成分は、具体的には酸素であることが好ましい。
希釈ガスとして大気を用いる場合、希釈ガスに含まれる最も粘度が高い粘性成分は酸素である。それ故、分析部で測定される測定値への影響は、酸素の混合に起因するものが最も大きい。そのため、希釈排ガス中の酸素の濃度を用いて前記測定値を補正することによって、排ガスを希釈することによる粘度の変化による前記測定値への影響をより効果的に低減することができ、排ガス中の測定対象成分の濃度等の測定値をより高い精度で算出することができる。
分析部が測定する対象としては、測定対象成分の濃度、質量又は粒子数を挙げることができる。この場合、補正部は、粘性成分濃度決定部が決定した粘性成分の濃度に応じて、分析部が測定した測定対象成分の濃度、質量(粒子量)又は粒子数の測定値を補正する。
前記粘性成分濃度決定部は、前記希釈ガス中の前記粘性成分の濃度と、前記希釈排ガスの希釈率とに基づいて、前記希釈排ガス中の前記粘性成分の濃度を算出するものであることが好ましい。
このような構成であれば、排ガス分析装置に、希釈排ガス中の粘性成分の濃度を測定するための濃度計等のセンサを設ける必要がないので、濃度計等の初期導入費用やそのメンテナンス費用を削減することができ、コスト削減に寄与し得る。
希釈排ガス中の前記粘性成分の濃度を算出するのに用いる希釈率は、測定により得られる前記希釈排ガス中の炭素成分の合計濃度に対する、内燃機関から排出される前記排ガス中の理論CO濃度の比率から算出されてよい。
理論CO濃度とは、燃料が理論空燃比で燃焼すると仮定して算出されるCO濃度であり、燃料の平均組成により決まるものである。これに対して希釈排ガス中の炭素成分の合計濃度とは、燃料が完全燃焼して生じるCOの濃度と、不完全燃焼により生じるCOやTHC等の成分の濃度の合計である。
このような構成であれば、理論CO濃度は燃料の組成により予め決定されたものであるので、希釈排ガス中のCOやCOやTHC等の炭素成分の濃度の測定のみによって希釈率を算出することができる。
上述した希釈排ガスの一部又は全部はガスを収容可能なガスサンプリングバッグに収容されており、前記粘性成分濃度決定部は、前記ガスサンプリングバッグに収容された希釈排ガス中の炭素成分の合計濃度を用いて前記希釈率を算出するものであることが好ましい。
ガスサンプリングバッグに収容されている希釈排ガスは、排ガスと希釈ガスとが十分に混合された状態になっているので、希釈排ガス中の各炭素成分の濃度は平均化されたものとなっている。そのため、このような平均化された各炭素成分の濃度を用いることでより正確に前記希釈率を算出することができ、希釈排ガス中の粘性成分濃度をより正確に算出することができる。その結果、排ガス中の測定対象成分の濃度等の測定値をより高い精度で算出することができる。
希釈排ガス中の前記粘性成分の濃度を算出するのに用いる希釈排ガスの希釈率はまた、前記排ガス流量に対する前記希釈排ガス流量の比率から算出されてもよい。
本発明に係る排ガス分析装置は、前記粘性成分の濃度を測定する濃度センサを更に有し、前記粘性成分濃度決定部は前記濃度センサが測定した濃度を取得するものであってもよい。
また本発明に係る排ガス分析方法は、排ガスと、前記排ガスを希釈する希釈ガスと、が混合した希釈排ガスを分析するものあって、流れ抵抗を有する導入路を介して導入された前記希釈排ガス中の、測定対象成分を測定する分析ステップと、前記希釈排ガス中の、前記測定対象成分とは異なる粘性成分の濃度を決定する粘性成分濃度決定ステップと、前記粘性成分濃度決定ステップが取得した前記粘性成分の濃度に応じて、前記分析ステップで測定した測定値を補正する補正ステップと、を有することを特徴とする。
また本発明に係る排ガス分析装置用プログラムは、排ガスと、前記排ガスを希釈する希釈ガスと、が混合した希釈排ガスを分析する排ガス分析装置用のものであって、流れ抵抗を有する導入路を介して導入された前記希釈排ガス中の測定対象成分を測定する分析部としての機能と、前記希釈排ガス中の、前記測定対象成分とは異なる粘性成分の濃度を決定する粘性成分濃度決定部としての機能と、前記粘性成分濃度決定部が取得した前記粘性成分の濃度に応じて、前記分析部が測定した測定値を補正する補正部としての機能と、をコンピュータに備えさせることを特徴とする。
このような排ガス分析方法や排ガス分析装置用プログラムであれば、上述した排ガス分析装置により得られる作用効果と同様の作用効果を奏し得る。
このように構成した本発明によれば、希釈サンプリング方式を用いた排ガス分析システムにおいて、排ガス中の測定対象成分の濃度等の測定値をより高い精度で算出できる排ガス分析装置を提供することが可能になる。
本実施形態の排ガス分析システムの構成を模式的に示す図。 同実施形態の排ガス分析装置の機能を示す機能ブロック図。 同実施形態の分析部の構成を模式的に示す図。 同実施形態の排ガス分析装置を用いて算出したNO濃度値と、従来型の排ガス分析装置を用いて算出したNO濃度値とを比較する表である。 同実施形態の排ガス分析装置を用いて算出したNO濃度値と、従来型の排ガス分析装置を用いて算出したNO濃度値とを比較するグラフである。
以下に本発明に係る排ガス分析装置を備える排ガス分析システムの一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態の排ガス分析システム100は、例えばエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中の測定対象成分の濃度を測定するために用いられるものである。
具体的に、この排ガス分析システム100は、図1に示すように、シャシ試験装置を用いて行われる車両のモード運転試験(WLTPモード、JC08モード等)において、エンジンから排出される排ガス中の測定対象成分の濃度を測定するものである。より具体的には、排ガスを全量サンプリングするとともに、全量サンプリングした排ガスに希釈ガスを混合して希釈排ガスを生成し、該希釈排ガスの流量が一定になるように構成した定容量サンプリング(CVS)装置1と、希釈排ガスをサンプリングして収容する希釈排ガスサンプリングバッグMと、希釈排ガスサンプリングバッグに収容された希釈排ガスを分析して、該希釈排ガス中の測定対象成分の濃度を測定し、その測定結果に基づいて排ガス中の測定対象成分の濃度を算出する排ガス分析装置2とを備えている。
CVS装置1は、図1に示すように、内燃機関101の排気管102から排出される排ガスが流れるメイン流路MLと、メイン流路MLに合流するとともに、排ガスを希釈する希釈ガスが流れる希釈ガス流路DLと、メイン流路MLと希釈ガス流路DLとの合流点より下流側に設けられ、希釈ガスにより希釈された希釈排ガスの流量を一定に制御する流量制御部12とを備えるものである。
流量制御部12は、図1に示すように、臨界流量ベンチュリCFV及び吸引ポンプPとからなる臨界流量ベンチュリ方式のものである。本実施形態では1つの臨界流量ベンチュリCFVを設けてあるが、複数の臨界流量ベンチュリCFVを並列に設け、例えば開閉弁等を用いて希釈排ガスを流す臨界流量ベンチュリCFVを変更することで、希釈排ガスの流量を変更できるように構成してもよい。
上述したCVS装置1により、排ガスと希釈ガスとの総流量、すなわち希釈排ガスの流量が一定になった状態において、希釈排ガスの一部は希釈排ガスサンプリング流路SLを経て希釈排ガスサンプリングバッグMへ収容される。
希釈排ガスサンプリングバッグMに収容された希釈排ガスは、分析装置2へ供給され、該分析装置2によって、排ガス中の測定対象成分の濃度が算出される。
排ガス分析装置2は、図2に示すように、希釈排ガスサンプリングバッグMから供給された希釈排ガス中の測定対象成分の濃度を測定する分析部21と、希釈排ガスを分析部21に導入する導入路22と、希釈排ガスに含まれる測定対象成分とは異なる粘性成分の濃度に応じて、分析部21が出力した濃度値を補正する演算装置23を具備するものである。
なお、本実施形態では、測定対象成分はNO(NO及びNO)であり、希釈排ガスに含まれる測定対象成分とは異なる粘性成分は酸素(O)である。
分析部21は、希釈排ガスに含まれる測定対象成分であるNOの濃度を測定するものであり、具体的にはCLD式NO計である。
CLD式NO計21は、希釈排ガス中のNOの量(濃度)を測定可能なものであり、図3に示すように、NOコンバータ211、オゾン発生器212、光検出器(図示しない)を含む反応槽213を備えている。NOコンバータ211は、NOをNOに変換するものであり、導入路22を介して導入された希釈排ガスを二分する一対の並列経路の一方に設けられている。これら並列経路の終端には電磁式切替バルブ214が設けてあり、いずれか一方の経路からのみ、反応槽213内に択一的にガスが導かれるように構成してある。オゾン発生器212は、酸素ボンベ等から供給される酸素をオゾンに変換して一定量のオゾン含有ガスを、キャピラリ212aを介して出力する。反応槽213は、一定容積を有する筐体であり、サンプルガス導入ポート、オゾン含有ガス導入ポート及び導出ポートを有している。サンプルガス導入ポートには、前述したように切替バルブで選択されたいずれか一方の並列経路からのガスが導かれるとともに、オゾン含有ガス導入ポートには、前記オゾン発生器212からのオゾン含有ガスが導かれる。それら各ガスは反応槽213内部で混合し、発光する。図示しない光検出器は、反応槽213内での発光強度を測定するものであり、この実施形態においては、光検出器として例えば光電子倍増管を用いている。
導入路22は、希釈排ガスサンプリングバッグMに収容されている測定対象ガスを分析部21に導入するものである。導入路22上には、希釈排ガスの流れ抵抗となる流体抵抗部22aが設けてあり、これにより、分析部21に導入される希釈排ガスの流量は、NOの濃度測定に必要な流量に制限されている。流体抵抗部22aは、具体的には、キャピラリやオリフィス等、導入路22内の流路面積を小さくして流量を制限する流量制御部材が挙げられる。
演算装置23は、物理的には、例えばCPU、メモリ、ADコンバータなどから構成される電気回路である。またこの演算装置23は、機能的に言えば、メモリに記憶されたプログラムに従って前記CPUやその周辺機器が協働することにより、以下の粘性成分濃度決定部231、記憶部232、補正部233としての機能を発揮するものである。
以下に各部について詳述する。
粘性成分濃度決定部231は、希釈排ガス中の酸素濃度([Osam)を決定するものである。
酸素濃度定部231は、ここでは、希釈ガス中の酸素濃度([Oamb)と、希釈排ガスの希釈率(DF)とに基づいて、希釈排ガス中の酸素濃度を算出するように構成されている。より具体的には、以下(1)式に従って希釈排ガス中の酸素濃度を決定するように構成されている。希釈ガス中の酸素濃度([Oamb)として、大気中の酸素濃度である20.95%を用いてもよく、あるいは大気中の酸素濃度を直接測定し、得られた酸素濃度値を用いてもよい。
ここで、上記(1)式により希釈排ガス中の酸素濃度([Osam)を決定できる原理を説明する。本実施形態の排ガス分析システム100は、排ガスを全量サンプリングして希釈するものであるので、排ガスに含まれる酸素量と希釈ガスに含まれる酸素量の和が、希釈排ガスに含まれる酸素量と等しくなっている。すなわち、希釈排ガス中の酸素濃度([Osam)と希釈排ガス流量の積算値(Vmix)の積は、排ガス中の酸素濃度([Oex)と排ガス流量の積算値(Vex)の積と、希釈ガス中の酸素濃度([Oamb)と希釈ガス流量の積算値(Vamb)の積との和と等しくなっており、以下(2)式の関係が成り立っている。
上記(2)式を更に変換すると、以下(3)式になる。
ここで、排ガス中の酸素濃度([Oex)は、希釈ガス中の酸素濃度([Oamb)に比べて極めて小さい値であるので、排ガス中の酸素濃度([Oex)と排ガス流量の積算値(Vex)の積は、希釈ガス中の酸素濃度([Oamb)と希釈ガス流量の積算値(Vamb)の積に対して無視できる程度に小さくなる(すなわち[Oexex << [Oambamb)。そのため上記(3)式は、さらに次のように変換できる。
このようにして、希釈排ガス中の酸素濃度([Osam)を決定する上記(1)式が導き出される。
酸素濃度定部231は、上記(1)式により希釈排ガス中の酸素濃度を決定する際に、以下(4)式のように、希釈率(DF)を、希釈排ガス中の炭素成分(CO、CO、THC)の合計濃度([COsam+[CO]sam+[THC]sam)に対する排ガス中の理論CO濃度([COideal)の比率として算出するように構成されている。
ここで、理論CO濃度は、内燃機関で燃焼する燃料が、理論空燃比で燃焼すると仮定して算出されるCO濃度である。より詳細には、平均組成がCである燃料が理論空燃比で燃焼した場合には、以下の反応式(a)の反応が起こる。
これより、理論CO濃度([COideal)は、以下の(5)式により算出することができる。
ここで、HCRは、燃料1モルにおける炭素原子数に対する水素原子数の比(y/x)であり、OCRは、燃料1モルにおける炭素原子数に対する酸素原子数の比(z/x)であり、βO2は、乾燥空気中の不活性ガスと酸素とのモル比(約3.774)である。HCR及びOCRはいずれも、燃料の平均組成によって定まるものであるので、理論CO濃度は、燃料により予め決まった値となっている。
本実施形態の排ガス分析装置2は、希釈排ガスサンプリングバッグM内の希釈排ガス中のCO濃度、CO濃度及びTHC濃度をそれぞれ計測できるCO計、CO計及びTHC計(図示しない)を具備している。粘性成分濃度決定部231は、前記CO計、CO計及びTHC計が計測した値を取得し、当該計測値を用いて希釈率DFを算出するように構成されている。
記憶部232は、前記メモリの所定領域に形成されており、希釈排ガス中の酸素濃度([Osam)と、分析部21で測定されるNO濃度の低下率とを紐づけたデータであるNO濃度補正データを記憶しているものである。
補正部233は、粘性成分濃度決定部231が決定した希釈排ガス中の酸素濃度と、分析部21に格納されたNO濃度補正データとに基づいて、分析部21で測定されたNOの濃度値を補正するとともに、当該補正されたNOの濃度値に基づいて排ガス中のNO濃度を演算するものである。より具体的には、補正部233は、粘性成分濃度決定部231から取得した酸素濃度に基づいて、記憶部232に格納されているNO濃度補正データを参照して、分析部21が測定したNOの濃度値に対する補正値(又は補正率)を決定する。そして、当該決定した補正値(又は補正率)に基づいて分析部21で測定されたNO濃度の値を補正する。そして、このようにして得られた補正後のNO濃度に基づいて、排ガス中のNO濃度を算出する。
このように構成された本実施形態に係る排ガス分析装置2によれば、希釈排ガス中の酸素濃度に応じて、分析部21が測定したNOの濃度値を補正するので、排ガス中のNOの濃度をより高い精度で算出することができる。すなわち、酸素濃度に応じて分析部21が測定したNOの濃度値を補正することで、排ガスを希釈することによる粘度の変化による濃度値への影響を低減することができることができる。
また希釈排ガスに含まれる粘性成分のうち酸素の濃度に基づいて分析部21による測定値を補正するので、排ガスを希釈することによる粘度の変化による濃度値への影響をより一層効果的に低減することができ、排ガス中のNOの濃度をより高い精度で算出することができる。
また、粘性成分濃度決定部231は、希釈ガス中の酸素濃度と希釈排ガスの希釈率DFとに基づいて希釈排ガス中の酸素濃度を算出するものであるので、排ガス分析装置2に、希釈排ガス中の酸素濃度を測定するための酸素濃度計等のセンサを設ける必要がない。そのため、濃度計の初期導入費用やメンテナンス費用を削減することができ、コスト削減に寄与し得る。
さらには、粘性成分濃度決定部231は、希釈排ガスサンプリングバッグMに収容された希釈排ガス中の炭素成分の合計濃度を用いて希釈率DFを算出するものであるので、十分に平均化された各炭素成分の濃度を用いることでより正確に希釈率DFを算出することができる。これにより、希釈排ガス中の酸素濃度をより正確に算出することができる。その結果、排ガス中のNO濃度をより高い精度で算出することができる。
図4及び図5は、本実施形態の排ガス分析装置2を用いることによって、希釈排ガスの粘度の変化による測定対象成分の濃度値の測定誤差を低減できることを示す表及びグラフである。具体的には、排ガス中のNO濃度を同一にして希釈排ガス中の酸素濃度を変化させる条件において、本実施形態の排ガス分析装置2を用いて、CLD式NO計により得られた希釈排ガス中のNO濃度値を酸素濃度に応じて補正することにより算出した排ガス中のNOx濃度値(O2補正後のNO濃度値)と、CLD式NO計で測定したNO濃度値を補正しないことを除いて条件を同じにした排ガス分析装置を用いて得られた排ガス中のNOx濃度値(O2補正前のNO濃度値)と、を比較した結果を示している。
CLD式NO計で測定したNO濃度値を酸素濃度に応じて補正しない場合には、希釈排ガス中の酸素濃度が増加するにつれて、測定により得られる排ガス中のNO濃度値の測定誤差が大きくなっている。希釈排ガス中の酸素濃度が20%の場合には、得られる排ガス中のNOx濃度値では約3%の誤差が生じている。
一方、本実施形態の排ガス分析装置2を用いてCLD式NO計で測定したNO濃度値を酸素濃度に応じて補正する場合には、希釈排ガス中の酸素濃度が増加しても、測定により得られる排ガス中のNO濃度値の測定誤差は0.10%以内に収まっている。
これらの結果から、希釈サンプリング方式を用いた排ガス分析システムにおいて、本実施形態の排ガス分析装置2を用いることによって希釈排ガスの粘度の変化による測定対象成分の濃度値の測定誤差を低減することができ、排ガス中の測定対象成分の濃度をより高い精度で算出できるようになることがわかる。
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
前記実施形態では、排ガス分析システム100は、排ガス中の測定対象成分の濃度を測定するものであったが、これに限定されない。他の実施形態では、排ガス中の測定対象成分の質量や粒子数等を測定するものであってもよい。
排ガス分析システム100が排ガス中の測定対象成分の粒子数を計測するものである場合、分析部21は、レーザ散乱式凝縮粒子カウンタ(CPC)を用いた固体粒子数計測装置(SPCS)であってもよい。排ガス分析システム100が排ガス中の測定対象成分の質量を計測するものである場合、分析部21は、希釈排ガス中に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するためのPM計測機器であるPM採取フィルタであってもよい。あるいは、希釈された排ガスを用いて計測することができる他の計測機器であってもよい。 また排ガス分析システム100は、算出した排ガス中の測定対象成分の濃度値と、排ガス流量との積から、測定対象成分の排出質量を算出するものであってもよい。
前記実施形態では、粘性成分濃度決定部231は、希釈率を、測定により得られる前記希釈排ガス中の炭素成分の合計濃度に対する前記排ガス中の理論CO濃度の比率として算出するものであったが、これに限定されない。他の実施形態では、希釈率を、排ガス流量の積算値Vex(排ガスの容積)に対する希釈排ガス流量の積算値Vmix(希釈排ガスの容積)の比率(容積比)として算出してもよい。前記CVS装置1では、希釈排ガスの流量が一定、すなわち排ガス流量と希釈ガス流量の総流量が一定になるように制御されている。そのため、希釈排ガス流量の積算値Vmix及び希釈ガス流量の積算値Vamb(希釈ガスの容積)を測定することにより、排ガス流量の積算値Vexを算出することができ、これを用いて希釈率を算出することができる。
前記実施形態では、粘性成分濃度決定部231は、希釈ガス中の酸素成分の濃度と希釈排ガスの希釈率とに基づいて、希釈排ガス中の前記粘性成分の濃度を算出するものであったがこれに限定されない。他の実施形態では、排ガス分析装置2は、希釈排ガス中の酸素濃度を測定するジルコニア式酸素センサ等の酸素濃度計をさらに具備し、粘性成分濃度決定部231は、酸素濃度計により測定された酸素濃度を取得するものであってもよい。
前記実施形態では分析部21はCLD式NO計であったが、NDIR法検出器、FID法式検出器、FTIR方式検出器、QCL−IR法式検出器等、他の原理を用いた検出器を用いてもよい。
前記実施形態では、測定対象成分がNOや粒子であったが、これに限らずCO、CO、HC及びTHC等の炭素化合物や、SO、HS等の硫黄化合物等の他の成分を測定対象成分としてもよい。
前記実施形態では、粘性成分濃度決定部231は希釈排ガスサンプリングバッグMに収容された希釈排ガス中の炭素成分の合計濃度を用いて希釈率DFを算出するものであったが、これに限定されない。他の実施形態では、CVS装置1のメイン流路MLと希釈ガス流路DLとの合流点より下流側に、希釈排ガスをサンプリングするサンプリングラインを設け、当該サンプリングラインに希釈排ガス中の炭素成分の濃度を連続して測定可能な濃度計を接続してもよい。このような実施形態において、粘性成分濃度決定部231は、サンプリングラインに接続された濃度計が連続的に測定している濃度値を用いて、希釈率DFを算出するように構成されていてもよい。
前記実施形態では、希釈排ガス中の測定対象成分とは異なる粘性成分を酸素とし、酸素濃度に応じて測定対象成分の濃度を補正するものであったがこれに限定されない。他の実施形態では、測定対象成分よりも粘度が高い酸素以外の粘性成分の濃度を用いて、測定対象成分の濃度を補正するように構成されていてもよい。
他の実施形態に係る排ガス分析システム100は、希釈ガスをサンプリングして収容する希釈ガスサンプリングバッグを具備するように構成されてもよい。このような実施形態において、排ガス分析装置2は、希釈ガスサンプリングバッグに収容された希釈ガス中のNO濃度を算出し、希釈排ガスサンプリングバッグに収容された希釈排ガス中のNO濃度から、差し引くことでバックグラウンド補正して、排ガスに含まれるNO量を算出するように構成されてもよい。この場合、演算装置23は、希釈ガスに含まれる測定対象成分(NO)とは異なる粘性成分(酸素)の濃度に応じて、分析部21が出力した濃度値を補正するように構成されてもよい。希釈ガスに含まれる測定対象成分の濃度値を補正する構成は、上述した希釈排ガスに含まれる測定対象成分の濃度値を補正する構成と同じである。
前記実施形態では、排ガス分析システム100は排ガスを全量サンプリングして希釈するものであったがこれに限定されない。他の実施形態では、排ガスの一部をサンプリングして希釈するものであってもよい。
前記実施形態では、排ガス分析システム100は、シャシ試験装置を用いた試験で排出される排ガス中の測定対象成分を測定するものであったが、これに限定されない。他の実施形態では、エンジン試験装置やパワートレイン等の駆動試験装置を用いた試験において排出される排ガス中の測定対象成分を測定するものであってもよい。
前記実施形態では、測定対象成分とは異なる粘性成分とは、その粘度が測定対象成分の粘度よりも高いものであったが、これに限定されない。他の実施形態では、測定対象成分とは異なる粘性成分とは、その粘度が排ガスの粘度よりも高いものであってもよい。このようなものであっても、上述した本発明の効果を得ることができる。
前記実施形態では、ガス分析システム100は、エンジン等の内燃機関から排出される排ガス中の測定対象成分を測定するものであったがこれに限定されない。他の実施形態では、火力発電所等の外燃機関や工場等から排出される排ガス中の測定対象成分を測定するものであってもよい。
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
100・・・排ガス分析システム
1・・・・CVS装置
2・・・・排ガス分析装置
21・・・分析部(CLD式NO計)
22・・・導入路
22a・・流体抵抗部
231・・粘性成分濃度決定部
233・・補正部

Claims (11)

  1. 排ガスと、前記排ガスを希釈する希釈ガスとが混合した希釈排ガスを分析する排ガス分析装置であって、
    前記希釈排ガス中の測定対象成分を測定する分析部と、
    前記分析部に前記希釈排ガスを導入し、前記希釈排ガスの流れ抵抗となる抵抗部を有する導入路と、
    前記希釈排ガス中の、前記測定対象成分とは異なる粘性成分の濃度を決定する粘性成分濃度決定部と、
    前記粘性成分濃度決定部が決定した前記粘性成分の濃度に応じて、前記分析部が測定した測定値を補正する補正部と、
    を有する、排ガス分析装置。
  2. 前記粘性成分の粘度は前記測定対象成分の粘度よりも高い、請求項1記載の排ガス分析装置。
  3. 前記粘性成分は酸素である請求項2記載の排ガス分析装置。
  4. 前記分析部は、前記測定対象成分の濃度、質量又は粒子数を測定するものであり、
    前記補正部は、前記分析部が測定した前記測定対象成分の濃度、質量又は粒子数のいずれかの測定値を補正するものである請求項1〜3のいずれか記載の排ガス分析装置。
  5. 前記粘性成分濃度決定部は、前記希釈ガス中の前記粘性成分の濃度と、前記希釈排ガスの希釈率とに基づいて、前記希釈排ガス中の前記粘性成分の濃度を算出するものである、請求項1〜4のいずれか記載の排ガス分析装置。
  6. 前記排ガスは内燃機関から排出されるものであり、
    前記希釈率は、測定により得られる前記希釈排ガス中の炭素成分の合計濃度に対する、前記排ガス中の理論CO濃度の比率から算出される、請求項5記載の排ガス分析装置。
  7. 前記希釈排ガスの一部又は全部は、ガスを収容可能なガスサンプリングバッグに収容されており、
    前記粘性成分濃度決定部は、前記ガスサンプリングバッグに収容された希釈排ガス中の炭素成分の合計濃度を用いて前記希釈率を算出する、請求項6記載の排ガス分析装置。
  8. 前記排ガスは内燃機関から排出されるものであり、
    前記希釈率は、前記排ガスの流量に対する前記希釈排ガスの流量の比率から算出される請求項5記載の排ガス分析装置。
  9. 前記粘性成分の濃度を測定する濃度センサを更に有し、
    前記粘性成分濃度決定部は前記濃度センサが測定した濃度を取得するものである、請求項1〜4のいずれか記載の排ガス分析装置。
  10. 排ガスと、前記排ガスを希釈する希釈ガスとが混合した希釈排ガスを分析する排ガス分析方法であって、
    流れ抵抗を有する導入路を介して導入された前記希釈排ガス中の、測定対象成分を測定する分析ステップと、
    前記希釈排ガス中の、前記測定対象成分とは異なる粘性成分の濃度を決定する粘性成分濃度決定ステップと、
    前記粘性成分濃度決定ステップが決定した前記粘性成分の濃度に応じて、前記分析ステップで測定した測定値を補正する補正ステップと、
    を有する、排ガス分析方法。
  11. 排ガスと、前記排ガスを希釈する希釈ガスとが混合した希釈排ガスを分析する排ガス分析装置用プログラムであって、
    流れ抵抗を有する導入路を介して導入された前記希釈排ガス中の測定対象成分を測定する分析部としての機能と、
    前記希釈排ガス中の、前記測定対象成分とは異なる粘性成分の濃度を決定する粘性成分濃度決定部としての機能と、
    前記粘性成分濃度決定部が決定した前記粘性成分の濃度に応じて、前記分析部が測定した測定値を補正する補正部としての機能と、
    をコンピュータに備えさせる排ガス分析装置用プログラム。
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