JP2019045215A - ナチュラルキラー細胞活性の測定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】全血に適用可能な、NK細胞活性の簡便な測定方法の提供。【解決手段】全血を、固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体とともに培養してナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、産生されたサイトカインの量を測定することを含む、全血のナチュラルキラー(NK)細胞活性の測定方法。【選択図】図3

Description

本発明は、ナチュラルキラー(NK)細胞活性の測定方法に関する。
様々な免疫担当細胞が生体中に存在している。その中でもナチュラルキラー(NK)細胞は、殺傷力が強く、またウイルス感染細胞や体内で発生するがん細胞に対する認識、攻撃、殺傷、排除の一連の流れを担う重要な細胞である。NK細胞の細胞質には細胞障害性タンパク質を含む顆粒があり、それが標的細胞のアポトーシスを誘発するが、さらにインターフェロンや腫瘍壊死因子などの多量のサイトカインも産生する。
一方でNK細胞活性は20代をピークに、加齢とともに低下していき、60代にはNK細胞活性は20代の約半分までに低下することが報告されている。またNK細胞は様々な生活環境要因に影響を受けやすい免疫細胞であり、NK細胞活性はストレスや食生活、睡眠などにも大きく影響される。そこで、NK細胞活性を免疫力の指標として用い、NK細胞活性の測定により生体個体の免疫状態をモニターすることができると考えられている(非特許文献1)。
NK細胞は、T細胞特異的マーカーであるCD3、CD4、CD8や、B細胞特異的マーカーであるIg、CD19、CD20などを発現せず、T細胞やB細胞とは表面抗原の点で大きく異なる。NK細胞は標的細胞を認識するための多様な細胞表面受容体(NK受容体)を有している。NK受容体の探索と機能解析を目指す多くの研究が行われてきている。NK受容体の例である、CD337(別名Nkp30)、CD336(別名Nkp44)、及びCD335(別名NKp46)は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜貫通糖タンパク質である。これらは、MHC非拘束性の細胞障害活性を惹起するNK細胞特異的な標的受容体であり、NK細胞活性化受容体の1種である自然細胞障害性受容体(Natural Cytotoxicity Receptor; NCR)に属する。
これらの受容体によるシグナル伝達等を通じて活性化されたNK細胞はインターフェロン-γ(IFN-γ)や腫瘍壊死因子α(Tumor Necrosis Factor-alpha; TNF-α)などのサイトカインを産生し、また細胞障害性顆粒(パーフォリン、グランザイムなど)を放出する。IFN-γは抗ウイルス効果、細胞増殖抑制効果、抗腫瘍効果、マクロファージの活性化、NK細胞の活性増強、免疫応答調整作用、分化誘導の調整効果などの生物活性を持つ多機能因子である。
NK細胞の細胞障害活性の測定法としては、51Cr遊離法が広く用いられている。51Cr遊離法では、典型的には、患者の末梢血から比重遠心分離によりNK細胞を含むリンパ球を分取して培養し、それを51Cr標識白血病細胞(K562)と混合培養し、NK細胞によって傷害されたK562細胞から培養上清中に遊離した51Crの放射性活性をγ線カウンターで測定して得られた細胞障害率(%)をNK細胞活性とする。しかし51Cr遊離法は比較的多量(およそ5〜10mL)の血液検体を必要とし、判定までに日数を要し(およそ2〜5日)、また末梢血単核球分離や細胞調製などの熟達した手技を必要とする。さらに51Cr遊離法には、使用したリンパ球数と標的細胞K562の割合や、アッセイ前のそれらの細胞の処理・培養条件によって結果が左右され易く安定したデータを得にくいという問題がある。そして51Cr遊離法では血液から分取したリンパ球を濃度を調整して用いるため、全血のNK細胞活性を定量化することができず、生体個体の全身的免疫機能の評価に用いることは困難である。しかも51Cr遊離法は放射性同位元素を使用するため、専用施設や専用測定機器を必要とするだけでなく、実験者の被爆リスクも伴う。そこでより簡便で、安定した検査結果を得られるNK細胞活性の測定法の開発が求められている。放射性同位元素を使用しないNK細胞活性の測定方法の開発が進んでおり、例えば、NK細胞の脱顆粒時に細胞膜表面に特異的に発現するCD107aタンパク質を、それに特異的に結合する蛍光標識抗体で染色し、サイトメトリーで定量化する方法がある(非特許文献2)。しかしこの手法でも、末梢血からNK細胞を含む単核球層を分離し、さらに標的細胞K562と共培養することが必要であり、全血のままでアッセイすることはできない。全血はNK細胞に加えて他のリンパ球、赤血球、血小板、各種栄養素など多種多様な成分を含んでおり、検体として直接用いた場合の反応性を予測することは難しい。血液細胞の分離工程や放射性同位元素を用いず、全血のまま検体として用いてNK細胞活性を安定的に測定できる方法の開発が求められている。
Jon Hazeldine and Janet M. Lord, (2013) Ageing Research Reviews, 12(4): 1069-1078 Mhatre S., et al., (2014) Indian J Exp Biol, 52(10), 983-988
本発明は、全血に適用可能な、NK細胞活性の簡便な測定方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体を全血に直接適用し全血中のNK細胞を刺激・活性化することにより、IFN-γやTNF-αなどのNK細胞産生物質(活性化NK細胞が産生する物質)の産生を誘導することができること、そして、産生されたIFN-γやTNF-αなどのNK細胞産生物質の量を全血のNK細胞活性の指標とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 全血を、固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体とともに培養してナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、産生されたサイトカインの量を測定することを含む、全血のナチュラルキラー(NK)細胞活性の測定方法。
[2] NK細胞活性化受容体がNKp30又はNKp46である、上記[1]に記載の方法。
[3] 産生されたサイトカインとして、インターフェロンγ(IFN-γ)又は腫瘍壊死因子α(TNF-α)の量を測定する、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記培養をIL-2、IL-12、又はIL-15の存在下で行う、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体が、粒子に結合された抗NK細胞活性化受容体抗体である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 粒子が100nm以下の直径を有する、上記[5]に記載の方法。
[7] 粒子が金又は銀表面を有する、上記[5]又は[6]に記載の方法。
[8] 全血が100μl〜5mLである、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 被験体から得た全血を用いて、上記[1]〜[8]のいずれかに記載の方法により全血のNK細胞活性を測定し、その活性を指標として前記被験体の免疫状態を評価することを含む、被験体の免疫状態の評価方法。
本発明によれば、全血のNK細胞活性を簡便かつ安定的に測定することができる。
図1は抗NK受容体抗体結合粒子を用いたNK細胞からのIFN-γ産生誘導を示す図である。 図2はNK細胞活性化における各種サイトカインの効果を示す図である。 図3は全血における抗NK受容体抗体結合粒子のNK結合特異性を示す図である。 図4はIFN-γ産生誘導における抗NK受容体抗体の粒子結合の効果を示す図である。 図5はIFN-γ産生誘導における異なるタイプの磁性粒子の効果を示す図である。 図6は培養時間によるIFN-γ産生量の変化を示す図である。 図7は同一被験体に由来する全血を用いた、本発明のNK細胞活性測定法の再現性を示す図である。 図8は本発明のNK細胞活性測定法による、NK細胞活性の個体差の検出結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、抗NK細胞活性化受容体抗体を用いてNK細胞を刺激し活性化し、産生されたNK細胞産生物質の量をNK細胞活性の指標とすることにより、NK細胞活性を測定する方法に関する。本発明の方法では、好ましくは、検体として全血を用い、抗NK細胞活性化受容体抗体を全血中のNK細胞と反応させてNK細胞を刺激し活性化し、それによりNK細胞からのサイトカイン(IFN-γやTNF-α等)などのNK細胞産生物質の産生を誘導し、産生されたNK細胞産生物質の量を測定し、その量に基づいてNK細胞活性を表すことができる。本発明は、全血を、固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体とともに培養してナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、産生されたサイトカインなどのNK細胞産生物質の量を測定することを含む、全血のナチュラルキラー(NK)細胞活性の測定方法を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、全血を、サイトカインの存在下、固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体とともに培養し、培養物中のIFN-γやTNF-α等のNK細胞産生物質の量を測定することを含む、全血のNK細胞活性の測定方法に関する。
本発明では、検体として、NK細胞を含む血液検体、とりわけ全血(全血検体)を、好適に用いることができる。本発明において「全血」又は「全血検体」は、血清や血漿とは異なり、各血液成分を分離することなく含む血液検体を指す。本発明において全血は、全血を調製するために有用な、抗凝固剤等の添加剤を含むものも包含する。抗凝固剤としては、ヘパリン(ヘパリンNa、ヘパリンLi等)、EDTA(EDTA-2Na、EDTA-2K、EDTA-3K等)、フッ化Na、クエン酸Na、シュウ酸Na等が挙げられるが、これらに限定されない。
全血は、任意の被験体から採血することにより取得することができる。全血は、限定されるものではないが、典型的には末梢血である。被験体は任意の動物でありうるが、哺乳動物が好ましく、例えば、ヒト、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、ニホンザルなどの霊長類、マウス、ラット、ハムスター、モルモットなどのげっ歯類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ロバ、リャマ、ラクダ、ウサギ、イヌ、ネコ、フェレット等の家畜やペットが挙げられる。
本発明の方法では、抗NK細胞活性化受容体抗体により刺激されたNK細胞は、活性化され、IFN-γやTNF-αのようなサイトカインを高濃度で産生する。そのため本発明では使用する全血が少量であってもサイトカインを十分に検出することができる。本発明の方法に供する全血の検体量は、特に限定されないが、50μl以上であってよく、100μlもあれば十分に検出が可能である。抗NK細胞活性化受容体抗体と反応させる全血の検体量は、特に限定されないが、通常は50μl〜10mL、好ましい例では100μl〜5mL、より少量の場合は好ましくは100μl〜3mL、より好ましくは100μl〜1mL、例えば100μl〜500μl、又は100μl〜200μlであってよい。
本発明では、検体としての全血を、固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体と接触させることにより、抗NK細胞活性化受容体抗体を全血中のNK細胞の表面にあるNK細胞活性化受容体と結合させることができる。本発明において、抗NK細胞活性化受容体抗体とは、NK細胞活性化受容体に結合する抗体であり、好ましくはNK細胞活性化受容体に特異的に結合する抗体である。本発明で標的となるNK細胞活性化受容体は、NK細胞以外の血液細胞表面には存在しないことが好ましく、NK細胞表面特異的に存在することがさらに好ましい。NK細胞活性化受容体は、NK細胞の活性化シグナル伝達を担うNK受容体であり、例えばNKp30及びNKp46(Pende D., et al., J. Exp. Med., (1999) 190(10): 1505-1516参照; NCBI Gene ID: 259197及び9437)が挙げられる。NK細胞活性化受容体は、被験体と同じ生物種由来であることが好ましく、例えばヒト由来であってよい。抗NK細胞活性化受容体抗体は任意の免疫グロブリンクラスであってよいが、好ましくはIgG、IgD、又はIgEであり、より好ましくはIgGである。抗NK細胞活性化受容体抗体は任意のサブクラスであってよく、例えばIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4であってよい。様々な抗NK細胞活性化受容体抗体が市販されており、例えば、BioLegend社から購入できる、LEAFTM Purified anti-human CD337 (NKp30) Antibody(クローン番号P30-15、IgG1)や、LEAFTM Purified anti-human CD335 (NKp46) Antibody(クローン番号9E2、IgG1)を用いることができる。
本発明では、全血を、固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体とともに培養することが好ましい。一実施形態では、固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体を、全血に添加し、培養することができる。本発明において「固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体」とは、任意の固相に固定された抗NK細胞活性化受容体抗体を指す。固相は、粒子、膜、繊維、プレート、チューブ、多孔性材料、生物材料などの任意の不溶性材料であってよいが、これらに限定されない。好ましい一実施形態では、固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体は、粒子に結合された抗NK細胞活性化受容体抗体である。
粒子は、例えば、磁性ビーズ、金属粒子、シリカ粒子、ガラス粒子、ポリスチレン粒子、ポリエチレン粒子、ポリ乳酸粒子、ゼラチン粒子、キトサン粒子などが挙げられるが、これらに限定されない。粒子は、例えば金、銀、白金、若しくは銅、又はそれらの合金等の金属の表面を有する粒子であってよいが、これらに限定されない。そのような金属表面を有する粒子は、例えば金、銀、白金、若しくは銅、又はそれらの合金等の粒子であってもよい。粒子はナノ粒子(直径1μm未満の粒子)であることが好ましい。粒子は球状であることが好ましい。一実施液体では、粒子表面に結合する抗体の密度は高い方が好ましい。一実施形態では、粒子のサイズは、より小さい方が好ましい。一実施形態では、粒子のサイズは、直径(粒径)200nm以下であってよく、直径100nm以下が好ましく、直径5〜100nmが好ましく、例えば直径5〜70nm、5〜50nm、20〜70nm、又は30〜60nmであってよい。
抗NK細胞活性化受容体抗体の固相化(固定)は、任意の方法により行うことができる。抗NK細胞活性化受容体抗体の固相化は、抗体のもつ官能基と結合可能な反応性基を有する、適当な架橋剤を用いて行うことができる。例えば、固相に導入されたアミノ基、カルボキシル基等の官能基と、抗体の官能基(カルボキシル基、アミノ基など)との共有結合により、抗NK細胞活性化受容体抗体を固相に固相化することができる。一例では、NHS活性化固相を抗NK細胞活性化受容体抗体と接触させ、固相のNHSエステル基と抗体のアミノ基から安定したアミド結合を生じることにより、固相に結合した抗NK細胞活性化受容体抗体を作製することができる。固相と抗NK細胞活性化受容体抗体をストレプトアビジン及びビオチンを介して結合することもできる。また抗体のFc部位に結合するプロテインA又はプロテインGを介して固相表面に抗NK細胞活性化受容体抗体を結合してもよい。生物材料などの固相の表面に配置されたFc受容体と抗NK細胞活性化受容体抗体のFc部位との結合により、抗NK細胞活性化受容体抗体を固相化することもできる。
固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体の好適な使用量は、固相や抗体の種類及びサイズによって異なり、当業者が適宜調節することができるが、全血100μLに対し、例えば0.1ng〜1g、好ましくは1ng〜100μg、より好ましくは5ng〜1μg、例えば10ng〜200ngであってよい。一例として、金ナノ粒子(直径50nm〜100nm)に結合した抗NK細胞活性化受容体抗体を用いる場合、全血100μLに対し、抗体結合粒子ストック液(濃度20ng抗体/μL)の量で0.25〜50μL、好ましくは0.5〜10μLを使用することができるが、この範囲に限定されない。
本発明の方法では、全血を、固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体とともに培養し、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化する。全血と固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体との培養は、NK細胞活性化促進のため、サイトカインの存在下で行うことが好ましい。サイトカインは、炎症性サイトカインであることが好ましい。NK細胞活性化促進作用を有する、NK細胞活性化サイトカインを用いることができる。NK細胞活性化サイトカインとしては、例えば、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18及びIL-21などのインターロイキン(IL)が挙げられるが、IL-2、IL-12、又はIL-15がより好ましく、IL-2が特に好ましい。NK細胞活性化促進のためのサイトカインは全血の由来と同じ生物種のものであってよいが、それに限定されない。好ましい実施形態では、NK細胞活性化のために使用するサイトカインは、IFN-γ又はTGF-αではない。
全血と固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体との培養では、全血にサイトカインを添加して混合した後に、抗NK細胞活性化受容体抗体を加えてもよいし、全血にサイトカインと抗NK細胞活性化受容体抗体を同時又はほぼ同時に加えてもよいし、全血に抗NK細胞活性化受容体抗体を加えた後にサイトカインを加えてもよい。
サイトカインの添加量は当業者が適宜決定すればよいが、例えば、全血1mLに対して最終濃度1〜200ng/mL、好ましくは5〜100ng/mL、より好ましくは10〜70ng/mL、例えば20〜50ng/mLのサイトカインを添加することができる。
全血と固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体との培養は、培地中で行ってもよい。NK細胞などのリンパ球や血液細胞の培養に適した任意の培地を用いることができる。培地は、炭素源(糖類)、アミノ酸、抗生物質、抗真菌剤、血清又は血漿、ビタミン、及びピルビン酸ナトリウム等から適宜選ばれる成分を含み得る。培地の例としては、培地RPMI-1640(500mL)に、L-アラニル-L-グルタミン5 mL、ピルビン酸ナトリウム5 mL、ペニシリン-ストレプトマイシン5 mL、ウシ胎仔血清(FBS)50mLを添加した培地が挙げられるが、これに限定されない。培地は、全血に添加してもよい。培地を用いて抗体及び/又はサイトカインを適当な濃度に希釈し、その希釈液を全血に加えてもよい。
全血と固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体との培養は、リンパ球の一般的な培養条件で行うことができる。培養は、典型的には、37℃、5% CO2下で行うことができ、湿度95%下で行うことも好ましい。培養時間は、限定するものではないが、3時間以上が好ましく、4時間以上がさらに好ましい。培養時間は、3〜72時間であってもよく、4〜60時間が好ましく、4〜48時間がより好ましく、6時間〜24時間がさらに好ましく、例えば4〜18時間又は6〜12時間という短い時間であってもよい。
培養後の培養物中には、活性化されたNK細胞によって産生されたNK細胞産生物質が含まれている。本発明の方法では、産生されたNK細胞産生物質の量を測定し、NK細胞活性の指標とする。NK細胞産生物質は典型的にはサイトカイン(NK細胞産生サイトカイン)であり、例えばインターフェロンγ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)等が挙げられるが、これらに限定されない。なお測定対象とするサイトカインは、通常は、全血を固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体とともに培養する際に添加するサイトカインと同じではない。
培養後、培養物中の測定対象のサイトカインの量(サイトカイン濃度)は、任意のサイトカイン測定法又はタンパク質定量法により測定(定量化)することができる。例えば、培養物中のIFN-γ量(IFN-γ濃度)は、任意のIFN-γ測定法により測定(定量化)すればよい。一実施形態では、培養物を遠心分離し(例えば、12,000rpmで10分間)、培養上清を回収し、培養上清中のIFN-γ量を測定する。別の一実施形態では、培養物を遠心分離し(例えば、12,000rpmで10分間)、培養上清を回収し、培養上清中の、TNF-α又は他のNK細胞産生サイトカインの量を測定してもよい。あるいは測定法によっては培養物をそのままIFN-γ等のNK細胞産生サイトカインの測定に用いてもよい。
サイトカイン(IFN-γやTNF-α)の測定は、それに特異的に結合する抗体、例えば抗IFN-γ抗体や抗TNF-α抗体を用いた免疫学的測定法を用いて容易に実施することができる。免疫学的測定法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ法(Enzyme-linked Immuno-Sorbent Assay; ELISA)、酵素免疫測定法(Enzyme immunoassay; EIA)等が挙げられるが、これらに限定されない。ELISA法やEIA法は市販のキットを使用して実施することもできる。また抗IFN-γ抗体や抗TNF-α抗体などの様々な抗サイトカイン抗体が市販されている。IFN-γ測定用キットやTNF-α測定キットも市販されており、例えば、IFN-gamma ELISA MAXTM(BioLegend社)、IFN-gamma Quantikine ELISA Kit(R&D Systems社)、IFN gamma EIA Kit(TaKaRa社)、TNFα, Easy ELISA System(GEヘルスケア・ジャパン社)、TNF alpha Human ELISA Kit, High Sensitivity(Thermo Fisher Scientific社)等が挙げられる。あるいは、IFN-γやTNF-αなどのサイトカインの測定は、そのサイトカインに特異的に結合する抗体を結合した粒子を用いる蛍光ビーズ法やラテックス粒子法を用いて行うこともできる。
このような測定により得られるサイトカイン量(例えばIFN-γ量又はTNF-α量)を、用いた検体のNK細胞活性の指標として用いることができる。本発明の方法によれば、被験体の全血のNK細胞活性を、絶対値で数値化することができる。被験体は検体について上述したとおりである。被験体の全血のNK細胞活性は、抗NK細胞活性化受容体抗体で刺激した、被験体の全血のサイトカイン量測定値から、抗NK細胞活性化受容体抗体により刺激していないコントロールの全血のサイトカイン量測定値を差し引いた値で表してもよい。あるいは、被験体の全血のNK細胞活性は、抗NK細胞活性化受容体抗体により刺激していないコントロールの全血のサイトカイン量測定値に対する、抗NK細胞活性化受容体抗体で刺激した、被験体の全血のサイトカイン量測定値の比率で表してもよい。当業者であれば、被験体の全血のNK細胞活性を、上記測定により得られるサイトカイン量又はそれに基づいて算出した適切な数値で表すことができる。
また本発明の方法で用いる、固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体は、安定した品質で調製することが可能であるため、より安定した検査結果を得ることができる。
本発明はまた、被験体から得た全血を用いて、上記方法により全血のNK細胞活性を測定し、その活性(例えば、得られたサイトカイン量)を指標としてその被験体の免疫状態を評価することを含む、被験体の免疫状態の評価方法も提供する。
本発明の方法では、被験体から得た全血中のNK細胞の活性をサイトカイン量により再現性良く表すことができる。また本発明の方法では、被験体間でIFN-γなどのサイトカイン量に大きな個体差が認められるため、被験体間の免疫状態を判定するのに非常に有利である。本発明の方法では、上記測定方法により、全血のNK細胞活性を示すNK細胞産生物質の量、とりわけサイトカイン(例えば、IFN-γ又はTNF-α)の量を、被験体の免疫状態の指標として取得することができ、被験体の免疫状態の評価支援に用いることができる。全血のNK細胞活性によって示される被験体の免疫状態は、全身的な免疫機能でありうるが、特に、NK細胞活性と関連した免疫状態、例えばIFN-γやTNF-αなどのNK細胞産生サイトカインと関連した免疫状態である。
IFN-γ量やTNF-α量などのサイトカイン量を指標とした免疫状態の評価は、同一被験体において経時的な比較により行ってもよいし、被験体間又は被験体集団間での比較により行ってもよい。例えば、IFN-γ量を指標とした免疫状態の評価は、被験体が属する健常集団での標準IFN-γ量との比較により行ってもよい。例えば、同一被験体の全血のモニタリングにおいてIFN-γ量の経時的な低下が認められた場合には、その被験体においてNK細胞活性が低下し、免疫機能が低下している状態にあると評価することができる。被験体間又は被験体集団間での比較により特定の被験体又は被験体集団のIFN-γ量が有意に低い場合には、その被験体又は被験体集団はNK細胞活性がより低く、免疫機能がより低いと評価することができる。被験体のIFN-γ量が、その被験体が属する健常集団での標準IFN-γ量よりも有意に低い場合には、その被験体のNK細胞活性が病的に低下しており、免疫機能が病的に低下している可能性があると評価することができる。IFN-γ以外のサイトカインなどのNK細胞産生物質を測定した場合についても同様にして免疫状態の評価を行うことができる。
本発明の免疫状態の評価方法は、被験体における環境要因や生活要因による免疫機能への影響やリスクを判定するために用いることもできる。本発明の免疫状態の評価方法はまた、医薬、食品、栄養等の免疫機能への影響やリスクを判定するために用いることもできる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例では、基本培地RPMI-1640(Sigma-Aldrich社)500mLに、L-アラニル-L-グルタミンであるGlutaMAXTM(Gibco(R); Thermo Fisher Scientific社)、ピルビン酸ナトリウム(Gibco(R); Thermo Fisher Scientific社)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Pen-Strep)(Gibco(R); Thermo Fisher Scientific社)をそれぞれ5 mL、ウシ胎仔血清(FBS)(Japan Bioserum Co Ltd社)を50mL添加することにより調製した培地(以下、RPMI-1640ベースの培地と称する)を、ヒト末梢血の培養等に用いた。
NK細胞活性化のために用いるサイトカインとしては、ヒトインターロイキンであるIL-2(Human IL-2; TONBO bioscience社)、IL-12(Human IL-12; TONBO bioscience社)、IL-15(Human IL-15; R&D Systems社)、及びIL-21(Human IL-21; TONBO bioscience社)を用いた。これらのサイトカインをRPMI-1640ベースの培地に添加してサイトカイン溶液を調製し、後述の実施例で用いた。
下記の実施例において、IFN-γの測定は、ELISAキットであるヒトIFN-γ ELISA MAXTM(BioLegend社)を用いて行った。ヒトIFN-γ捕捉抗体(human IFN-γ ELISA MAXTM Capture Antibody(200X); BioLegend社)をPBSで200倍に希釈し、ELISAプレート(Corning社)に100μL/ウェル添加し、プレートを4℃で一晩インキュベートしてコーティングした。翌日、抗体溶液を捨て、洗浄バッファーでプレートを4回洗浄した。プレートから完全に溶液を取り除いた後、蒸留水(D.W)で5倍希釈したELISA Assay Diluent(5X)(BioLegend社)を200μL/ウェル添加し、4℃で一晩インキュベートして、IFN-γ捕捉抗体をブロッキングした。翌日、溶液を捨て、洗浄バッファー(0.05% Tween 20-PBS)を用いてプレートを4回洗浄した後、プレートから溶液を完全に取り除いた。このプレートに、IFN-γ標準タンパク質又は測定対象の培養上清の希釈液を100μL/ウェル添加し、プレートミキサーを用いて撹拌しながら室温で2時間反応させた。なお用いたIFN-γ標準タンパク質希釈液は、ヒトIFN-γ標準タンパク質(Human IFN-γ Standard; BioLegend社)をELISA Assay Diluentを用いて段階希釈し標準液連続希釈系列として調製したものである。培養上清の希釈液は、上記で回収した培養上清をELISA Assay Diluentで5倍〜100倍に適宜希釈したものである。2時間の反応後、洗浄バッファーでプレートを4回洗浄した。洗浄後のプレートに、ELISA Assay Diluentで200倍に希釈したヒトIFN-γ検出抗体(human IFN-γ ELISA MAXTM Detection Antibody(200X); BioLegend社)を100μL/ウェル添加し、プレートミキサーで撹拌しながら室温で1時間反応させた。1時間後、溶液を捨て、洗浄バッファーでプレートを4回洗浄し、ELISA Assay Diluentで1000倍希釈したHRP-ストレプトアビジンを100μL/ウェル添加し、プレートミキサーで撹拌しながら室温で30分間反応させた。30分後、溶液を捨て、洗浄バッファーでプレートを5回洗浄した後、TMB溶液(TMB Microwell Peroxidase Substrate; KPL社)を100μL/ウェル添加し、遮光して10分間インキュベートし発色反応を起こさせた。10分後、2N H2SO4(Wako社)を100μL/ウェル添加して反応を停止した。反応溶液における450nmでの吸光度をプレートリーダー(BIORAD社)を用いて測定した。
[実施例1]磁性ナノ粒子と結合した抗体の調製
ナチュラルキラー(NK)細胞刺激用抗体として、NK受容体に特異的に結合する以下の抗体(抗NK受容体抗体)を用いた。
i) 抗NKp30抗体。BioLegend社より、LEAFTM(低エンドトキシン、アジ化ナトリウムフリー)精製抗ヒトNKp30(CD337)抗体(クローンNo. P30-15)(1.0 mg/ml)を購入して使用した。
ii) 抗NKp46抗体。BioLegend社より、LEAFTM(低エンドトキシン、アジ化ナトリウムフリー)精製抗ヒトNKp46(CD335)抗体(クローンNo. 9E2)(1.0 mg/ml)を購入して使用した。
またコントロールマウスIgG1抗体として、BioLegend社より、LEAFTM(低エンドトキシン、アジ化ナトリウムフリー)精製マウスIgG1アイソタイプコントロール抗体(クローンNo. MOPC-21)(1.0 mg/ml)を購入して使用した。
これらの抗体を磁性ナノ粒子(磁性ビーズ)に結合した。磁性ナノ粒子としては、NHS活性化金ナノ粒子50nm、NHS活性化金ナノ粒子100nm、及びNHS活性化銀ナノ粒子50nm(Cytodiagnostice社)を用い、NHS活性化金ナノ粒子結合キット(NHS-Activated Gold Nanoparticle Conjugation Kit; Cytodiagnostics社)を使用してCytodiagnostics社のプロトコールに従って抗体を固定化した。具体的には、まず使用する全ての試薬を使用前に室温まで温めた。キットに付属のタンパク質再懸濁バッファー(Protein Re-suspension Buffer)を用いて抗体(抗NKp30抗体、抗NKp46抗体、又はコントロールマウスIgG1抗体)を最終濃度0.5mg/mLに希釈し、1.5mLマイクロチューブ内でその抗体希釈液48μLとキットに付属の反応バッファー(Reaction Buffer)60μLを混合し撹拌した。得られた混合溶液90μLをNHS活性化ナノ粒子(NHS-Activated Gold Nanoparticles)を含むバイアルに添加し、直ちにピペッティングでよく撹拌させた。その混合物を室温にて2時間インキュベートした。続いて結合反応を停止させるためにクエンチャー溶液(Quencher Solution; キットに付属)を10μl添加した。得られた混合物について、使用したナノ粒子サイズに適した遠心速度(50nm: 600 x g、100nm: 300 x g)で30分間、遠心分離を行った。遠心分離後、未結合抗体を含む上清を除去し、抗体結合ナノ粒子を得た。次いで抗体結合ナノ粒子に保存バッファー(20mM Tris (pH8.0)、150mM NaCl、1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)、及び0.025% Tween20)を100μL添加し、それを抗体結合粒子ストック液として、使用するまで4℃にて保存した。ここで使用した方法による抗体と粒子の結合効率を考慮すると、得られた抗体結合粒子ストック液1μL当たりおよそ20ngの抗体が粒子に結合(固相化)されていると考えられる。抗NKp30抗体、抗NKp46抗体、又はコントロールマウスIgG1抗体と、磁性ナノ粒子とを用いて以上のようにして作製された抗体結合粒子を、以下の実施例では、それぞれ抗NKp30粒子、抗NKp46粒子、及びコントロール粒子と称する。
また、後述の実施例において使用するため、これらの抗体結合粒子(抗体結合粒子ストック液)を上記のRPMI-1640ベースの培地で10倍又は50倍に希釈した。
[実施例2]抗NK受容体抗体を用いたNK細胞活性化
実施例1で作製した、ヒトNK受容体に特異的に結合する抗体結合粒子(金ナノ粒子50nmを使用した抗NKp30粒子及び抗NKp46粒子)を用いて、NK細胞を活性化し、NK細胞からのIFN-γ産生能を評価した。
ヒト末梢血(2mL)は、上腕部静脈より真空採血管(ベノジェクトII、ヘパリン加、テルモ社)を用いて採血し、等量の無菌PBS(リン酸緩衝食塩水)を添加し混和し、リンパ球分離液10mL(リンフォセパール;IBL社)上に重層した。遠心分離機を用いて遠心(400 x g、30分間)し、中間のリンパ球層を採取し、培養液で遠心洗浄し調製した。
このようにしてヒト末梢血2mL(ヘパリン加)から分離したリンパ球を15mLチューブ(FALCON(R); Corning社)に導入し、さらにインターロイキン(IL)-2溶液を最終濃度50ng/mLになるよう添加し、撹拌した後、96ウェルU底プレートの6ウェルに150μL/ウェルで播種した。次いで、実施例1で調製した抗NKp30粒子希釈液又は抗NKp46粒子希釈液50μL/ウェル(抗体結合粒子ストック液5μL相当/ウェル)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS; 刺激無しのコントロール)50μL/ウェルをそれぞれ2つのウェルに添加し、撹拌後、37℃、5% CO2インキュベーターで培養した(刺激培養)。24時間の培養後、2つのウェルの培養物を1.5mLマイクロチューブに回収し、12,000rpmで10分間、遠心分離を行った。遠心分離後、血球を吸わないように培養上清130μLを回収し、-20℃で保存した。回収した培養上清中のIFN-γの産生量を上述のELISA法で測定した。
その結果を図1に示す。抗NKp30粒子及び抗NKp46粒子はいずれも培養上清におけるIFN-γ濃度の上昇をもたらした。このことから、抗NK受容体抗体結合粒子はNK細胞を刺激して活性化し、NK細胞によるIFN-γの産生を誘導できることが示された。
[実施例3]NK細胞活性化におけるサイトカインの効果
抗NK受容体抗体結合粒子を用いたNK細胞活性化における、各種サイトカイン(IL-2、IL-12、IL-15、及びIL-21)の効果を評価した。
実施例2と同様にしてヒト末梢血2mL(ヘパリン加)から分離したリンパ球に、IL-2、IL-12、IL-15、若しくはIL-21溶液を最終濃度20ng/mLになるよう添加するか又はサイトカインを添加せず同量のRPMI-1640ベースの培地のみ(コントロール)を100μL/ウェルで添加し、撹拌した後、96ウェルU底プレートにそのリンパ球調製液を100μL/ウェル(計200μL/ウェル)でサイトカイン当たり2ウェルずつ播種した。次いで、実施例1で調製した抗NKp30粒子(金ナノ粒子50nm使用)を抗体結合粒子ストック液5μL/ウェルで添加し、撹拌後、37℃、5% CO2インキュベーターで24時間培養した。24時間後、2つのウェルの培養物を1.5mLマイクロチューブに回収し、12,000rpmで10分間、遠心分離を行った。遠心分離後、培養上清のみを回収し、-20℃で保存した。回収した培養上清中のIFN-γの産生量を上述のELISA法に従って測定した。
その結果を図2に示す。IFN-γ産生がわずかであったサイトカイン無添加(コントロール)と比較して、いずれのサイトカインの添加もIFN-γ濃度を増加させたが、サイトカインIL-2、IL-12、及びIL-15の添加はIFN-γ濃度を大幅に増加させ、特にIL-2はIFN-γ濃度を顕著に増加させた。この結果から、本発明の方法においてNK細胞活性化作用を有するサイトカインの添加が好ましいこと、IL-2はNK細胞の活性化に特に適していることが示された。
[実施例4]抗NK受容体抗体結合粒子の結合特異性の評価
抗NK受容体抗体結合粒子の特異性を評価するため、実施例1で調製した抗NKp30粒子とコントロール粒子(いずれも金ナノ粒子50nm使用)を用いてヒト末梢血(全血)を刺激培養し、IFN-γ産生量を測定した。
具体的には、3名のボランティアのヒト血液供与者(供与者#1、#2、#3)から採血を行った。得られた末梢血2mL(全血;ヘパリン加)に、IL-2溶液を最終濃度50ng/mLになるよう添加し、撹拌し、96ウェルU底プレートに150μL/ウェルで播種した。次いで、RPMI-1640ベースの培地を50μL/ウェル、又は実施例1で調製した抗NKp30粒子希釈液若しくはコントロール粒子希釈液を50μL/ウェル(抗体結合粒子ストック液5μL相当/ウェル)で添加し、撹拌後、37℃、5% CO2インキュベーターで培養した(刺激培養)。24時間後、2つのウェルの培養物を1.5mLマイクロチューブに回収し、12,000rpmで10分間、遠心分離を行った。遠心分離後、血球を吸わないように培養上清130μLを回収し、-20℃で保存した。回収した培養上清中のIFN-γの産生量を上述のELISA法で測定した。
結果を図3に示す。培地のみ及びコントロール粒子を用いた場合にはIFN-γ産生はほとんど示されなかったが、抗NKp30粒子を用いた場合は供与者全員の全血において顕著に高いIFN-γ産生が示された。この結果から、リンパ球を分離せず全血を検体として用いても、抗NK受容体抗体結合粒子は高い特異性でNK受容体に結合し、NK細胞からのIFN-γ産生を誘導できることが示された。また、全血中のNK細胞に対して抗NK受容体抗体結合粒子を用いて刺激を加えることにより、産生されるIFN-γ量を指標としてNK細胞活性を定量的に測定できることが示された。
同様に、回収した上記培養上清中のTNF-αをELISA法で測定した。その結果、抗NKp30粒子を用いた刺激により、全血中でTNF-α産生が誘導され、そのTNF-α量を定量的に測定できることが示された。
[実施例5]IFN-γ産生誘導における粒子結合の効果
IFN-γ産生を誘導するNK細胞刺激に対する粒子結合の効果を評価するため、抗NKp30抗体(クローンNo. P30-15; BioLegend; 上掲)(粒子なし)単独と、実施例1で調製した抗NKp30粒子(金ナノ粒子50nm使用)を用いてNK細胞刺激試験を行った。
実施例4と同様にして2名のボランティアの血液供与者(供与者#1、#2)から採血し、得られたヒト末梢血2mL(全血;ヘパリン加)に、IL-2溶液を最終濃度50ng/mLになるよう添加し、撹拌し、96ウェルU底プレートに150μL/ウェルで播種した。次いで、RPMI-1640ベースの培地(50μL)、RPMI-1640ベースの培地で希釈した抗NKp30抗体(50μL/ウェル; 抗体量20ng/ウェル)、又は実施例1で調製した抗NKp30粒子希釈液(50μL/ウェル; 抗体量およそ20ng/ウェル)を添加し、撹拌後、37℃、5% CO2インキュベーターで培養した(刺激培養)。24時間後、2つのウェルの培養物を回収し、12,000rpmで10分間、遠心分離を行った。遠心分離後、回収した培養上清130μL中のIFN-γの産生量を上述のELISA法で測定した。
結果を図4に示す。培地のみを添加した非刺激条件ではIFN-γ産生は認められなかったが、抗NKp30粒子の添加によりIFN-γ産生の誘導が観察された。さらに、抗NKp30抗体単独の添加と比較して、抗NKp30抗体を粒子表面に固相化した抗NKp30粒子の添加ではIFN-γ産生量が2倍以上に顕著に増大した。この結果から、固相化状態の抗NK受容体抗体はNK細胞を非常に強く刺激(活性化)できることが示された。
[実施例6]磁性粒子の検討
表面素材や直径が異なる3種の磁性粒子の、抗NK受容体抗体結合粒子のNK細胞活性化能への影響を比較した。実施例1で作製した、磁性粒子として金ナノ粒子(直径50nm若しくは100nm)又は銀ナノ粒子(直径50nm)を用いた抗NKp30粒子を、抗体結合粒子として用いた。
ヒト末梢血2mL(全血;ヘパリン加)を15mLチューブに導入し、IL-2溶液を最終濃度50ng/mLになるよう添加し、撹拌後、96ウェルU底プレートの計18ウェルに200μL/ウェルで播種した。次いで、(i)金粒子,直径50nm,抗体結合粒子ストック液1μL、(ii)金粒子,50nm,2μL、(iii)金粒子,50nm,5μL、(iv)銀粒子,50nm,1μL、(v)銀粒子,50nm,2μL、(vi)銀粒子,50nm,5μL、(vii)金粒子,100nm,1μL、(viii)金粒子,100nm,2μL、及び(ix)金粒子,100nm,5μLの9群の抗NKp30粒子を添加した(2ウェル/群)。プレートミキサーで撹拌後、37℃、5% CO2インキュベーターで24時間培養した(刺激培養)。24時間後、2つのウェルの培養物を1.5mLマイクロチューブに回収し、12,000rpmで10分間、遠心分離を行った。遠心分離後、血球を吸わないように培養上清130μLを回収し、-20℃で保存した。回収した培養上清中のIFN-γの産生量を、5倍に希釈した上清を使用し、上述のELISA法を用いて測定した。
結果を図5に示す。どの磁性粒子を用いた場合もNK細胞を刺激(活性化)することができたが、磁性粒子の直径が小さいほどNK細胞への刺激効果が高く、また銀表面を有する銀ナノ粒子よりも金表面を有する金ナノ粒子の方が刺激効果が高かった。特に直径50nmの磁性金ナノ粒子がNK細胞の刺激に特に適しており、安定したIFN-γ産生を誘導できることが示された。
[実施例7]培養時間によるIFN-γ産生量の変化
抗NK受容体抗体結合粒子でのNK細胞の刺激時間に応じたIFN-γ産生量の変化を調べた。
採血した15mLのヒト末梢血(全血;ヘパリン加)を、9個の96ウェルU底プレートに150μL/ウェルで各プレートに2ウェルずつ播種した。次いで、IL-2溶液を最終濃度50ng/mLになるよう添加し、撹拌し、抗NKp30粒子(金ナノ粒子50nm使用)の50倍希釈液を50μL/ウェル(抗体結合粒子ストック液1μL相当/ウェル)添加し、撹拌後、37℃、5% CO2インキュベーターで培養した(刺激培養)。培養(刺激)開始から0時間、2時間、4時間、6時間、9時間、12時間、18時間、24時間、又は48時間後にプレートを取り出し、2つのウェルの培養物を1.5mLマイクロチューブに回収し、12,000rpmで10分間、遠心分離を行った。遠心分離後、血球を吸わないように培養上清130μLを回収し、-20℃で保存した。回収した培養上清中のIFN-γの産生量を、5倍に希釈した上清を使用し、上述のELISA法を用いて測定した。
結果を図6に示す。培養開始の4時間後からIFN-γの産生が確認され、培養開始後18時間〜24時間でIFN-γ産生量がピークを迎えた。本発明の方法により比較的短時間でNK細胞活性化を検出できることが示された。
[実施例8]NK細胞活性測定法の再現性評価
本発明に係るNK細胞活性の定量的測定方法の再現性を評価するため、同一人の血液供与者から異なる時点で得た全血を用いて、同じ手順でIFN-γ産生量を測定した。
ボランティアの特定の血液供与者から採血を行い、実施例4に記載したのと同じ方法で、全血に抗NKp30粒子又はコントロール粒子を添加して刺激培養し、24時間培養後の培養上清を回収した。初回の採血から10日後、同一の血液供与者から再び採血し、同じ方法により、全血に抗NKp30粒子又はコントロール粒子を添加して刺激培養し、24時間培養後の培養上清を回収した。2回の刺激培養により得られたそれぞれの培養上清中のIFN-γ産生量をELISA法で測定した。なお1回目の採血時と10日後の採血時の間で血液供与者の健康状態に大きな変化は見られなかった。
結果を図7に示す。初回採血日と10日後の採血日の全血は、抗NKp30粒子と反応させた場合、両方とも同様に高いIFN-γ産生量を示した。一方、培地のみ及びコントロール粒子を用いた場合には、いずれの全血もほとんどIFN-γ産生を誘導しなかった。この結果は、本発明のNK細胞活性測定法が十分な再現性を有することを示している。
[実施例9]NK細胞活性の個体差の検出
本発明の方法によりNK細胞活性に関して血液供与者の個体差がどのように検出されるか試験した。
6名のボランティアの血液供与者(供与者#A〜#F)のそれぞれから2mL採血し、得られたヒト末梢血(全血;ヘパリン加)を96ウェルU底プレートに150μL/ウェルで各プレートに2ウェルずつ播種した。次いで、IL-2溶液を最終濃度50ng/mLになるよう添加し、撹拌し、抗NKp30粒子(金ナノ粒子50nm使用)の50倍希釈液を50μL/ウェル(抗体結合粒子ストック液1μL相当/ウェル)添加し、撹拌後、37℃、5% CO2インキュベーターで培養した(刺激培養)。24時間後、2つのウェルの全血を1.5mLマイクロチューブに回収し、12,000rpmで10分間、遠心分離を行った。遠心分離後、血球を吸わないように培養上清130μLを回収し、-20℃で保存した。回収した培養上清中のIFN-γの産生量を、20倍に希釈した上清を使用し、上述のELISA法で測定した。
結果を図8に示す。IFN-γ産生量は、血液供与者間で60〜7000pg/mLと大きく異なっていた。実施例8において同一人の全血ではNK細胞活性レベルを示すIFN-γ産生量は安定した値を示していたことから、図8中のIFN-γ濃度の大きな相違は、血液供与者のNK細胞活性の個人差を反映していると考えられた。細胞障害率(%)で表す従来のNK細胞活性測定法よりも、本発明のNK細胞活性測定法は個人差の分析により適していることが示された。
本発明は、全血に適用可能な、簡便かつ客観的評価を可能にするNK細胞活性解析システムを提供する。本発明の方法は、免疫細胞の分離や放射性同位元素を用いず、全血のまま、NK細胞機能を安定的に測定し、絶対値で表すことを可能にする。本発明の方法は、様々な環境要因で変化しやすい免疫機能を定量化するのに有用であり、医療分野のみならず、食品開発、栄養指導、介護等の様々なヘルスケア産業分野に適用できる。

Claims (9)

  1. 全血を、固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体とともに培養してナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、産生されたサイトカインの量を測定することを含む、全血のナチュラルキラー(NK)細胞活性の測定方法。
  2. NK細胞活性化受容体がNKp30又はNKp46である、請求項1に記載の方法。
  3. 産生されたサイトカインとして、インターフェロンγ(IFN-γ)又は腫瘍壊死因子α(TNF-α)の量を測定する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記培養をIL-2、IL-12、又はIL-15の存在下で行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 固相化された抗NK細胞活性化受容体抗体が、粒子に結合された抗NK細胞活性化受容体抗体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 粒子が100nm以下の直径を有する、請求項5に記載の方法。
  7. 粒子が金又は銀表面を有する、請求項5又は6に記載の方法。
  8. 全血が100μl〜5mLである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 被験体から得た全血を用いて、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により全血のNK細胞活性を測定し、その活性を指標として前記被験体の免疫状態を評価することを含む、被験体の免疫状態の評価方法。
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