JP2023109240A - ナチュラルキラー細胞活性の測定方法 - Google Patents

ナチュラルキラー細胞活性の測定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023109240A
JP2023109240A JP2022010651A JP2022010651A JP2023109240A JP 2023109240 A JP2023109240 A JP 2023109240A JP 2022010651 A JP2022010651 A JP 2022010651A JP 2022010651 A JP2022010651 A JP 2022010651A JP 2023109240 A JP2023109240 A JP 2023109240A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cell
activating receptor
cells
measuring
blood
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022010651A
Other languages
English (en)
Inventor
和則 加藤
Kazunori Kato
宗弘 山田
Munehiro Yamada
尚孝 保田
Naotaka Yasuda
孝太 小野
Kota Ono
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Oriental Yeast Co Ltd
Toyo University
Original Assignee
Oriental Yeast Co Ltd
Toyo University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Oriental Yeast Co Ltd, Toyo University filed Critical Oriental Yeast Co Ltd
Priority to JP2022010651A priority Critical patent/JP2023109240A/ja
Publication of JP2023109240A publication Critical patent/JP2023109240A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】簡便で安全性の高いNK細胞活性の測定方法を提供する。【解決手段】対象から採取した血液検体中のナチュラルキラー(NK)細胞活性化受容体の発現量を測定して、NK細胞活性を測定する。【選択図】なし

Description

本発明は、ナチュラルキラー(NK)細胞活性の測定方法に関する。
生体中には多様な免疫担当細胞が存在している。その中でもナチュラルキラー(NK)細胞は、自然免疫を担うリンパ球の一つで、殺傷力が強く、またウイルス感染細胞、ストレス細胞、悪性細胞を認識して、攻撃、排除する能力をもつ重要な細胞である。
ヒトNK細胞の免疫機能は、活性化受容体と抑制性受容体を介して調節され、自然細胞傷害性受容体(Natural Cytotoxicity Receptor;NCR)であるCD337(NKp30)、CD336(NKp44)、及びCD335(NKp46)やC型レクチンファミリーであるNKG2Dは活性化受容体として働き、一方、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)やCD94/NKG2Aは抑制性受容体として働く。これらの受容体によるシグナル伝達等を通じて活性化されたNK細胞は、細胞傷害性顆粒(パーフォリン、グランザイムなど)を放出し、またIFN-γやTNF-αなどのサイトカインを産生し、樹状細胞の成熟やT細胞分化に影響を与えることが知られる(非特許文献1)。
NK細胞活性は、加齢とともに低下することや、ストレスや食生活、睡眠などといった様々な生活環境要因に大きな影響を受けることが報告されている(非特許文献1、2)。そのため、NK細胞活性を免疫力の指標として用いることで、生体個体の免疫状態をモニターすることができると期待される。
NK細胞の細胞傷害活性の測定法としては、51Cr遊離法が広く用いられている。51Cr遊離法は、典型的には、患者の末梢血から比重遠心分離によりNK細胞を含むリンパ球を分取して培養し、それを51Cr標識白血病細胞(K562)と混合培養し、NK細胞によって傷害されたK562細胞から培養上清中に遊離した51Crの放射性活性をγ線カウンターで測定して得られた細胞傷害率(%)をNK細胞活性とする。しかし、51Cr遊離法は、比較的多量(およそ5~10mL)の血液検体を必要とし、判定までに日数を要し(およそ2~5日)、また末梢血単核球分離や細胞調製などの熟達した手技を必要とする。また、51Cr遊離法には、使用したリンパ球数と標的細胞K562の割合や、アッセイ前のそれらの細胞の処理・培養条件によって結果が左右され易く、安定したデータを得にくいという問題がある。さらに、51Cr遊離法は放射性同位元素を使用するため、専用施設や専用測定機器を必要とするだけでなく、実験者の被爆リスクも伴う、という問題もある(特許文献1、非特許文献3)。そのため、より簡便で、安定した検査結果を得られるNK細胞活性の測定法の開発が求められている。
放射性同位元素を使用しないNK細胞活性の測定方法の開発が進んでいる。例えば、K562細胞とNK細胞とを共培養して、NK細胞の脱顆粒時に細胞膜表面に特異的に発現するCD107aタンパク質を蛍光標識抗体で染色し、フローサイトメトリーで定量化する方法が知られる。あるいは、K562細胞に代えてPMA(phorbol-12-myristate-13-acetate)等の化合物を用いてNK細胞を刺激する方法が開発されている(非特許文献3、4)。また、NK細胞を抗NK細胞活性化受容体抗体と共に培養して、産生されたサイトカインの量を測定する方法も報告されている(特許文献1)。この他に、NK細胞によって傷害されるK562細胞から放出される細胞質内酵素LDH(乳酸脱水素酵素)の活性を、酵素基質を用いて比色計で測定する試薬キットが開発されているが(非特許文献5)、この方法は、51Cr遊離法より感度が低いことが知られている。
特開2019-045215号公報
Ageing Res. Rev., 12(4): 1069-1078 (2013) Prev. Med., 44(2): 117-23 (2007) Indian J. Exp. Biol., 52(10): 983-8 (2014) J. Immunol. Res., 2016:3769590 (2016) J. Immunol. Methods, 64:313-320 (1983)
上記の通り、従来のNK細胞活性測定方法は、放射性同位元素を使用することから、安全性等で課題の残る方法であった。非特許文献3~5及び特許文献1に記載の方法は、いずれもCOインキュベーター等の細胞培養設備を要する方法であった。また、いずれの方法も、血液または血液から分離した細胞を刺激培養する時間を要することから、一度に多くの検体を解析することが困難であった。
本発明は、より簡便で安全性の高いNK細胞活性の測定方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ヒト末梢血の一定量の全血サンプルにおけるNK細胞活性化受容体の発現量が、従来法で測定したNK細胞活性と高い相関を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下を提供するものである。
(1)対象から採取した血液検体中のナチュラルキラー(NK)細胞活性化受容体の発現量を測定する工程を含む、NK細胞活性の測定方法。
(2)前記NK細胞活性化受容体が、NKp30、NKp46又はNKG2Dである、(1)に記載の方法。
(3)前記発現量を、単位容量当たりの血液検体中のNK細胞活性化受容体タンパク質の定量により測定する、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記タンパク質の定量を、フローサイトメトリー法、イムノアッセイ法、ウェスタンブロット法又は質量スペクトル法で行う、(3)に記載の方法。
(5)前記タンパク質の定量を、フローサイトメトリー法で行う、(4)に記載の方法。
(6)前記発現量を、単位容量当たりの血液検体中のNK細胞活性化受容体mRNAの定量により測定する、(1)又は(2)に記載の方法。
(7)以下のa)又はb)を含む、NK細胞活性測定用試薬:
a)NK細胞活性化受容体に特異的に結合する抗体;
b)NK細胞活性化受容体mRNAの少なくとも一部に相補的な配列を有する核酸。
(8)前記NK細胞活性化受容体が、NKp30、NKp46又はNKG2Dである、(7)に記載の試薬。
(9)NK細胞活性化受容体に特異的に結合する抗体を含む、(7)又は(8)に記載の試薬。
本発明によれば、既知の方法よりも、より簡便で安全性の高いNK細胞活性の測定方法を提供することが可能である。
全血検体の一例のフローサイトメトリーによる測定結果を示す。FSCとSSCでWBCを解析し(A)、FSC、SSCともに小さいリンパ球画分にゲートをかけて全WBC中のリンパ球の比率を測定した(B)。リンパ球画分をCD56およびCD3の発現強度で展開し、CD56陽性/CD3陰性のNK細胞画分にゲーティングして、NKp30(C)、NKp46(D)、NKG2D(E)の発現量を解析した。 NK細胞あたりの各種受容体の平均蛍光強度(MFI)と51Cr遊離法との相関性を示す散布図である。(A)NKp30のMFIと51Cr遊離法との相関性を示す。(B)NKp46のMFIと51Cr遊離法との相関性を示す。(C)NKG2DのMFIと51Cr遊離法との相関性を示す。 各種受容体の総蛍光強度(Total FI)と51Cr遊離法の測定結果との相関性を示す散布図である。(A)NKp30のTotal FIと51Cr遊離法との相関性を示す。(B)NKp46のTotal FIと51Cr遊離法との相関性を示す。(C)NKG2DのTotal FIと51Cr遊離法との相関性を示す。 各種受容体のTotal FIと51Cr遊離法の測定結果の補正した相関性を示す散布図である。(A)NKp30のTotal FIと51Cr遊離法との相関性を示す。(B)NKp46のTotal FIと51Cr遊離法との相関性を示す。(C)NKG2DのTotal FIと51Cr遊離法との相関性を示す。
1.ナチュラルキラー(NK)細胞活性の測定方法
本発明のNK細胞活性の測定方法(以下、「本発明の方法」とも称する)は、対象から採取した血液検体中のNK細胞活性化受容体の発現量を測定する工程を含む、ことを特徴とする。
本発明では、検体として、対象から採取した「血液検体」を用いる。本発明において「血液検体」は、少なくともNK細胞を含む血液であることを要する。このような血液検体としては、例えば、全血(全血検体)が挙げられる。本発明において、「全血」又は「全血検体」は、血清や血漿とは異なり、血液成分の分離・除去等をしていない血液検体を指す。あるいは、血液検体は、リンパ球以外の血球成分を除いた検体であってもよい。このような検体は、たとえば、全血検体中の赤血球を溶血させ、細胞以外を洗浄することによって得ることができる。
本発明において血液検体は、血液凝固により測定が困難となることを避けるために、抗凝固剤等の添加したものも包含する。抗凝固剤としては、ヘパリン(ヘパリンNa、ヘパリンLi等)、EDTA(EDTA-2Na、EDTA-2K、EDTA-3K等)、フッ化Na、クエン酸Na、シュウ酸Na等が挙げられるが、これらに限定されない。
血液検体は、対象から採血することにより取得することができる。血液検体は、限定されるものではないが、典型的には末梢血である。対象は、任意の動物であり得るが、哺乳動物が好ましく、例えば、ヒト、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、ニホンザル等の霊長類、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ロバ、リャマ、ラクダ、ウサギ、イヌ、ネコ、フェレット等の家畜やペットが挙げられる。より好ましくはヒトである。
本発明において、「NK細胞」は、リンパ球のうち、CD3/CD56細胞として識別される細胞を指す。全血に含まれるNK細胞の数は、通常は、抗CD3抗体及び抗CD56抗体を用いたフローサイトメトリーによって計数される。
本発明において、NK細胞活性化受容体は、NK細胞の活性化シグナル伝達を担うNK受容体を指す。NK細胞活性化受容体は、NK細胞以外の血液細胞表面に存在しないことが好ましく、NK細胞表面特異的に存在することがより好ましい。このようなNK細胞活性化受容体としては、例えばNKp30、NKp46(Pende D., et al., J. Exp. Med., 190 (10): 1505-1516 (1999)を参照のこと;NCBI Gene ID: 259197及び9437)及びNKG2D(Houchins J. P., et al., J. Exp. Med., 173: 1017-1020 (1991)を参照のこと;NCBI Gene ID: 22914)が挙げられる。
本発明の方法の第1態様において、NK細胞活性化受容体の発現量は、単位容量当たりの血液検体中のNK細胞活性化受容体タンパク質を定量することにより、測定することができる。NK細胞活性化受容体タンパク質を定量する手段としては、公知のタンパク質定量法をいずれも使用することができるが、例えば、フローサイトメトリー法、イムノアッセイ法、ウェスタンブロット法、質量スペクトル法等とすることができる。特に、フローサイトメトリー法が、簡便で、かつ正確な測定が可能であるため、好適に使用できる。
フローサイトメトリー法としては、具体的には、FITC、PE等で蛍光標識した抗NK細胞活性化受容体抗体を血液検体中の細胞表面に反応させ、細胞ごとに表面に結合した標識の蛍光強度を測定する方法をとり得る。ここで、NK細胞活性化受容体発現量は、細胞の平均蛍光強度(MFI)ではなく、単位容量当たりの血液検体における、各細胞の蛍光強度の積算値として求める必要がある(総蛍光強度:Total FI)。Total FIは、単位容量当たりの血液検体のフローサイトメトリーにおけるNK細胞活性化受容体のピーク下面積(AUC)から算出することができる。あるいは、MFIと細胞数の積として算出することができる。
フローサイトメトリー法において、抗NK細胞活性化受容体抗体に加えて、それぞれ異なる蛍光色素で標識した抗CD3抗体及び抗CD56抗体を使用することができる。この場合、血液検体中の細胞から、CD3/CD56細胞、すなわちNK細胞のみをゲーティングして、NK細胞中のTotal FIを求めることができる。NK細胞活性化受容体はNK細胞に特異的に発現するため、理論的には全細胞測定時の蛍光強度と大きな差異はないが、非特異的反応の影響を回避できることから、S/N比を高くすることが可能となる。
イムノアッセイ法としては、公知の手法をいずれも使用できる。使用する手法は、直接競合法、間接競合法、サンドイッチ法、金属コロイド法等のいずれであってもよい。また、イムノアッセイ法は、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)、化学発光イムノアッセイ(CLIA)、免疫比濁法(TIA)、酵素免疫測定法(EIA)(例、直接競合ELISA、間接競合ELISA、及びサンドイッチELISA)、放射イムノアッセイ(RIA)、ラテックス凝集反応法、蛍光イムノアッセイ(FIA)、及びイムノクロマトグラフィー法等のいずれであってもよい。特に、放射性同位体を使用しない手法を用いることが好ましい。
イムノアッセイ法は、具体的には、抗NK細胞活性化受容体抗体を血液検体に反応させ、検体中のNK細胞活性化受容体タンパク質を測定する方法である。血液検体は、溶血処理された検体であってもよく、さらに溶血後に赤血球成分を除去した検体であってもよい。さらに、イオン系/非イオン系の界面活性剤を含む細胞溶解剤等を使用して、血球成分を溶解させた検体であってもよい。特に光学検出系を使用する場合、赤血球成分を除去し、他の血球成分を溶解することで、検体由来の色素の影響を受けにくく、より正確な値を得ることが可能となる。
イムノアッセイ法により、単位当たりの血液検体中の抗NK細胞活性化受容体タンパク質を簡易に、かつ直接的に定量することが可能である。
フローサイトメトリー法及びイムノアッセイ法において、使用される抗体は、抗NK細胞活性化受容体抗体であり、好ましくは、抗NKp30抗体、抗NKp46抗体、又は抗NKG2D抗体である。より好ましくは、抗NKp30抗体である。抗NK細胞活性化受容体抗体は、特に、ヒトのNK細胞活性化受容体に特異的に結合する抗体であることが好ましい。抗NK細胞活性化受容体抗体は、任意の免疫グロブリンクラスであってよいが、好ましくはIgG、IgD又はIgEであり、より好ましくはIgGである。抗NK細胞活性化受容体抗体は任意のサブクラスであってよく、例えば、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3又はIgG4であってよい。様々な抗NK細胞活性化受容体抗体が市販されており、いずれも使用することができる。
質量スペクトル法においては、血液検体をそのまま希釈して、又は溶血・溶解処理等を行った後に質量分析計に供し、NK細胞活性化受容体タンパク質に特異的なシグナルの強度を測定することで、NK細胞活性化受容体タンパク質の定量を行うことができる。質量分析計としては、例えば、MALDI-TOF-MS質量分析計を使用することができる。簡便かつ高感度な方法であるが、条件によっては、検体中に、イオン化時の挙動と質量スペクトルパターンが目的のタンパク質に類似する物質が混在することが想定され、その場合、目的のタンパク質の判別が困難になる、という問題がある。そのため、予め検体の前処理、測定条件等を最適化する必要がある。
本発明の方法の第2態様において、NK細胞活性化受容体の発現量は、単位容量当たりの血液検体のNK細胞活性化受容体mRNAを定量することにより、測定することができる。NK細胞活性化受容体mRNAを定量する手段は、公知の核酸定量法をいずれも使用することができるが、例えば、RT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法、マイクロアレイ法、ノーザンブロット法、ドットプロット法、RNaseプロテクションアッセイ法等を使用できる。特にリアルタイムRT-PCR法を好適に使用できる。リアルタイムRT-PCR法としては、SYBR(登録商標)Green法、TaqMan(登録商標)PCR法等、公知の手法をいずれも使用できる。
リアルタイムRT-PCR法を使用する場合、各種NK細胞活性化受容体mRNAの定量に使用するプライマー配列は、目的のmRNAを逆転写・増幅できる配列であれば限定されるものではないが、例えば表1に示す配列を使用することができる。
Figure 2023109240000001
上記した方法は、いずれもNK細胞活性化受容体の発現量を測定する方法であるが、本発明者らは、これらの方法により測定されたNK細胞活性化受容体の発現量が、既知の方法で測定したNK細胞活性と高い相関性を示すことを見出した。したがって、本発明の方法は、NK細胞活性の測定を行う方法に該当する。本発明の方法は、放射性同位元素を使用することなく、また細胞培養工程を必要としないことから、安全かつ簡便にNK細胞活性を測定することが可能である。
2.NK細胞活性測定用試薬
本発明のNK細胞活性測定用試薬(以下、「本発明の試薬」とも称する)は、以下のa)又はb)を含む、ことを特徴とする。
a)NK細胞活性化受容体に特異的に結合する抗体
b)NK細胞活性化受容体mRNAの少なくとも一部に相補的な配列を有する核酸。
本発明の試薬は、検体中のNK細胞活性化受容体の発現量の測定を介して、NK細胞活性を測定するための試薬である。ここでいう「検体」は、対象から採取した「血液検体」を指す。
本発明の試薬の第1態様は、試料中のNK細胞活性化受容体タンパク質を定量するために、NK細胞活性化受容体に特異的に結合する抗体、すなわち、抗NK細胞活性化受容体抗体を含む。定量の対象となるNK細胞活性化受容体は、NKp30、NKp46又はNKG2Dであることが好ましい。特に、NKp30であることがより好ましい。
第1態様は、抗原抗体反応を用いるタンパク質定量手法に適した形態とすることが好ましい。タンパク質定量手法としては、抗体を使用する手法であれば特に限定されないが、フローサイトメトリー法、イムノアッセイ法を使用することができる。イムノアッセイ法は、例えば、直接競合法、間接競合法、サンドイッチ法、金属コロイド法、ウェスタンブロット法のいずれであってもよい。また、イムノアッセイ法は、CLEIA、CLIA、TIA、EIA。ELISA、RIA、ラテックス凝集反応法、FIA、及びイムノクロマトグラフィー法のいずれであってもよい。
抗NK細胞活性化受容体抗体は、任意の免疫グロブリンクラスであってよいが、好ましくはIgG、IgD又はIgEであり、より好ましくはIgGである。抗NK細胞活性化受容体抗体は任意のサブクラスであってよく、例えば、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG2c、IgG3又はIgG4であってよい。様々な抗NK細胞活性化受容体抗体が市販されており、いずれも使用することができる。
抗NK細胞活性化受容体抗体は、タンパク質の測定手法にもよるが、蛍光色素、酵素、ビオチン、放射性同位元素等で標識されていてもよい。この場合、放射性同位元素以外で標識されていることが好ましい。抗NK細胞活性化受容体抗体は、タンパク質の定量手法にもよるが、水溶液中に含まれていてもよく、また、磁性ビーズ、ラテックス粒子、マイクロウェルプレート、メンブレンフィルター等に固相化されてもよい。
第1態様は、前記抗体の他に、必要に応じて、安定化剤(BSA、糖類等)、pH緩衝剤(Tris、MES等)、酸化防止剤、保存料等を含んでいてもよい。
本発明の試薬の第2態様は、NK細胞活性化受容体mRNAの少なくとも一部と相補的な配列を有する核酸を含む。より具体的には、NKp30をコードする遺伝子(例えば、NCBI Gene ID: 259197)、NKp46をコードする遺伝子(例えば、NCBI Gene ID: 9437)又はNKG2Dをコードする遺伝子(例えば、NCBI Gene ID: 22914)の全部又は一部と相補的な配列を有する核酸を含む。ここでいう核酸は、好ましくはDNAである。前記核酸が、NK細胞活性化受容体mRNAの一部と相補的な配列を有する場合、NKp30をコードする遺伝子、NKp46をコードする遺伝子又はNKG2Dをコードする遺伝子の塩基配列のうち、連続する16塩基以上、特に20塩基以上の塩基配列と相補的な配列を有することが好ましい。
第2態様は、核酸定量手法に適した形態とすることが好ましい。核酸定量手法としては、核酸のハイブリダイゼーションを使用する手法であれば特に限定されないが、例えば、RT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法、マイクロアレイ法、ノーザンブロット法、ドットプロット法、RNaseプロテクションアッセイ法等を使用できる。特にリアルタイムRT-PCR法のいずれであってもよい。
第2態様において、核酸は、mRNAを逆転写してcDNAを生成し、かつ、さらに当該cDNAを増幅するためのプライマーであってもよい。あるいは、RNA又はcDNAを捕捉・検出するためのプローブであってもよい。プライマーを使用する場合、その配列は、目的のmRNAを逆転写・増幅できる配列であれば限定されるものではないが、例えば上記表1に示す配列を使用することができる。
第2態様において、前記核酸は、蛍光色素、酵素、ビオチン、放射性同位元素等で標識されていてもよい。この場合、放射性同位元素以外で標識されていることが好ましい。前記核酸は、水溶液中に含まれていてもよく、また、mRNAの定量手法にもよるが、DNAチップ、磁性ビーズ、マイクロウェルプレート、メンブレンフィルター等に固相化されてもよい。
第2態様は、前記核酸の他に、必要に応じて、金属塩、pH緩衝剤等を含んでいてもよい。特にPCR法を使用する場合、二価金属塩、ポリメラーゼ(Tthポリメラーゼ等)、dNTP等を含んでいてもよい。
本発明の試薬は、「1.ナチュラルキラー(NK)細胞活性の測定方法」に記載した本発明の方法に使用することができる。本発明の試薬において、用語の定義及び測定の詳細な条件等は、特に矛盾のない限り、「1.ナチュラルキラー(NK)細胞活性の測定方法」の項に記載した通りである。
実施例 ヒト全血中のNK活性化受容体発現とNK細胞活性との相関性試験
試験計画に同意した20歳以上60歳未満の男女一般ボランティア計15名より各11mL(末梢血一般検査用(EDTA-2K採血管):2mL、NK細胞受容体発現解析用(ヘパリンナトリウム採血管):2mL、51Cr遊離法用(専用採血管(PNK)):5mLを含む)静脈採血を行った。末梢血一般検査、及び51Cr遊離法によるNK細胞活性検査は、株式会社エスアールエルにて常法で実施された。表2に、ボランティアの性別、既往歴等の背景情報及び総白血球数(WBC)を示す。WBCが15名ともに正常範囲内にあることから、感染症の疑いはない状態であると確認された。各患者の51Cr遊離法により測定されたNK細胞活性の値を表4に示す。
Figure 2023109240000002
採血した全血2mLにFcRブロック(422302/BioLegend)溶液30μLを加えて室温で15分間反応させた後、200μLずつ4本に分注した。表3に示す各標識抗体を4μL/チューブとなるように加えて、4℃で45分間反応させた後、溶血バッファー(349202/ベクトン・ディッキンソン(BD))を2mL加えて室温で15分間反応させて赤血球を溶血させた。1500rpmで5分間遠心分離した後、上清を除去し、FACSバッファー(2%FBS添加PBS(-))0.5mLで再懸濁した。1500rpmで5分間遠心分離、再懸濁を2回繰り返して細胞を洗浄した後、フローサイトメトリー(FACS Calibur(BD))で3色蛍光解析を行った。
Figure 2023109240000003
フローサイトメトリーを用いて、前方散乱光(FSC)と側方散乱光(SSC)で白血球を解析し、FSC、SSCともに小さいリンパ球画分にゲートをかけて全WBC中のリンパ球の比率を測定した。さらにそのリンパ球画分をCD56およびCD3の発現強度で展開し、CD56陽性/CD3陰性のNK細胞画分にゲーティングして、各種受容体(NKp30、NKp46、NKG2D)の発現量を解析した(図1)。詳細な陽性細胞の比率や発現蛍光強度などは解析ソフトFlowJo ver8.6を用いて解析した。
血中NK細胞数及びNK細胞あたりの各種受容体の平均蛍光強度(MFI)の解析結果を表4に示す。また、NK細胞あたりの各種受容体のMFIと51Cr遊離法との相関性を解析した結果を図2に示す。図2Aは、NKp30のMFIと51Cr遊離法との相関性を示す。図2Bは、NKp46のMFIと51Cr遊離法との相関性を示す。図2Cは、NKG2DのMFIと51Cr遊離法との相関性を示す。各種受容体について、NKp30とNKp46はそれぞれ相関係数0.289と0.268で弱い相関、NKG2Dは相関係数0.061で相関が認められなかった。なお、相関性については相関係数0~0.2を相関性なし、0.2~0.4を弱い相関性あり、0.4~0.7を中程度の相関性あり、0.7~1を強い相関性ありと評価した。
全血試料中の各種受容体の総発現量(Total FI)を表4に、各種受容体のTotal FIと51Cr遊離法の測定結果との相関性を解析した結果を図3に示す。ここで、Total FIは血中における細胞の各受容体の蛍光強度(FI)の積算値である。各種受容体はNK細胞に特異的な受容体であることから、Total FIの値は、血中NK細胞数とNK細胞における受容体のMFIの積とほぼ一致する。図3Aは、NKp30のTotal FIと51Cr遊離法との相関性を示す。図3Bは、NKp46のTotal FIと51Cr遊離法との相関性を示す。図3Cは、NKG2DのTotal FIと51Cr遊離法との相関性を示す。各種受容体において、MFIと比較して、Total FIと51Cr遊離法の測定結果との相関性はいずれも向上し、NKp30とNKG2Dはそれぞれ相関係数0.525と0.575で、51Cr遊離法との間で中程度の相関性を示すことが分かった。
図3において、NKp30及びNKp46のTotal FIは、ボランティア1名(No.8)の検体だけが相関曲線から外れて突出して高値を示していた。この全血検体では、他の検体と比較してNK細胞数が顕著に高かったことから、直前に何らかの感染症に罹患していた等の要因により、免疫が亢進した状態であったものと推察された。No.8のデータを除いて各種受容体のTotal FIと51Cr遊離法の測定結果との相関性を解析しなおしたところ、図4に示す結果となった。図4Aは、NKp30のTotal FIと51Cr遊離法との相関性を示す。図4Bは、NKp46のTotal FIと51Cr遊離法との相関性を示す。図4Cは、NKG2DのTotal FIと51Cr遊離法との相関性を示す。いずれの相関性も向上し、NKp30、NKp46及びNKG2Dは、それぞれ相関係数0.917、0.740及び0.587となり、特にNKp30で非常に高い相関性が示された。
Figure 2023109240000004
Figure 2023109240000005

Claims (9)

  1. 対象から採取した血液検体中のナチュラルキラー(NK)細胞活性化受容体の発現量を測定する工程を含む、NK細胞活性の測定方法。
  2. 前記NK細胞活性化受容体が、NKp30、NKp46又はNKG2Dである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記発現量を、単位容量当たりの血液検体中のNK細胞活性化受容体タンパク質の定量により測定する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記タンパク質の定量を、フローサイトメトリー法、イムノアッセイ法、ウェスタンブロット法又は質量スペクトル法で行う、請求項3に記載の方法。
  5. 前記タンパク質の定量を、フローサイトメトリー法で行う、請求項4に記載の方法。
  6. 前記発現量を、単位容量当たりの血液検体中のNK細胞活性化受容体mRNAの定量により測定する、請求項1又は2に記載の方法。
  7. 以下のa)又はb)を含む、NK細胞活性測定用試薬:
    a)NK細胞活性化受容体に特異的に結合する抗体;
    b)NK細胞活性化受容体mRNAの少なくとも一部に相補的な配列を有する核酸。
  8. 前記NK細胞活性化受容体が、NKp30、NKp46又はNKG2Dである、請求項7に記載の試薬。
  9. NK細胞活性化受容体に特異的に結合する抗体を含む、請求項7又は8に記載の試薬。
JP2022010651A 2022-01-27 2022-01-27 ナチュラルキラー細胞活性の測定方法 Pending JP2023109240A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022010651A JP2023109240A (ja) 2022-01-27 2022-01-27 ナチュラルキラー細胞活性の測定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022010651A JP2023109240A (ja) 2022-01-27 2022-01-27 ナチュラルキラー細胞活性の測定方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023109240A true JP2023109240A (ja) 2023-08-08

Family

ID=87522786

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022010651A Pending JP2023109240A (ja) 2022-01-27 2022-01-27 ナチュラルキラー細胞活性の測定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023109240A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Ferrando-Martínez et al. Age-related deregulation of naive T cell homeostasis in elderly humans
Lakschevitz et al. Identification of neutrophil surface marker changes in health and inflammation using high-throughput screening flow cytometry
Koch et al. Multiparameter flow cytometric analysis of CD4 and CD8 T cell subsets in young and old people
JP2020180975A (ja) 複数の抗体を含むキット
Urrechaga et al. Role of leucocytes cell population data in the early detection of sepsis
KR20110101184A (ko) 알레르기 반응의 진단 방법
Erskine et al. Effect of infection with bovine leukosis virus on lymphocyte proliferation and apoptosis in dairy cattle
Rawat et al. Flow cytometry for diagnosis of primary immune deficiencies—a tertiary center experience from North India
JP4127724B2 (ja) リンパ球機能の測定方法
Wang et al. Reduced levels of cytosolic DNA sensor AIM2 are associated with impaired cytokine responses in healthy elderly
CN115166252A (zh) 淋巴细胞亚群分群与定量检测试剂盒及其检测方法与应用
Nehete et al. Phenotypic and functional characterization of lymphocytes from different age groups of Bolivian squirrel monkeys (Saimiri boliviensis boliviensis)
Ghesquière et al. Mucosal-associated invariant T cells in Giant Cell Arteritis
Chowdhury et al. Enumeration and phenotypic assessment of human plasmacytoid and myeloid dendritic cells in whole blood
Allali et al. Innate-like T cells in children with sickle cell disease
Peghini et al. Clinical evaluation of an aerolysin‐based screening test for paroxysmal nocturnal haemoglobinuria
CN108780086A (zh) 靶分析物的亚细胞定位
JP2023109240A (ja) ナチュラルキラー細胞活性の測定方法
Liu et al. Functional analysis of human circulating immune cells based on high-dimensional mass cytometry
Yi et al. Impact of delayed PBMC processing on functional and genomic assays
Davies et al. Predicting NK cell subsets using gene expression levels in peripheral blood and endometrial biopsy specimens
Allegra et al. Implementation of the EGFP‐K562 flow cytometric NK test: Determination of NK cytotoxic activity in healthy elderly volunteers before and after feeding
Demaret et al. Intracellular flow cytometry improvements in clinical studies
Popko et al. Disturbances in NK cells in various types of hemophagocytic lymphohistiocytosis in a population of polish children
Xu et al. Impaired circulating antibody-secreting cells generation predicts the dismal outcome in the elderly septic shock patients