図1は本発明の実施形態に係るショベル(掘削機)の側面図である。ショベルの下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載される。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。
ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例としての掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。
ブーム角度センサS1はブーム4の回動角度を検出する。本実施形態では、ブーム角度センサS1は上部旋回体3に対するブーム4の回動角度を検出する加速度センサである。アーム角度センサS2はアーム5の回動角度を検出する。本実施形態では、アーム角度センサS2はブーム4に対するアーム5の回動角度を検出する加速度センサである。バケット角度センサS3はバケット6の回動角度を検出する。本実施形態では、バケット角度センサS3はアーム5に対するバケット6の回動角度を検出する加速度センサである。
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3は、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせであってもよい。また、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ等であってもよい。
上部旋回体3には運転室であるキャビン10が設けられ且つエンジン11等の動力源が搭載されている。また、上部旋回体3には機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、及び撮像装置S6が取り付けられている。GNSS受信機、通信装置等が取り付けられていてもよい。
機体傾斜センサS4は上部旋回体3の傾斜を検出する。本実施形態では、機体傾斜センサS4は上部旋回体3の前後軸及び左右軸回りの傾斜角を検出する2軸加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交してショベルの旋回軸上の一点であるショベル中心点を通る。機体傾斜センサS4は3軸加速度センサであってもよい。
旋回角速度センサS5は、例えばジャイロセンサであり、上部旋回体3の旋回角速度を検出する。旋回角速度センサS5は、レゾルバ、ロータリエンコーダ等であってもよい。
撮像装置S6はショベルの周辺を撮像する。本実施形態では、撮像装置S6は上部旋回体3に取り付けられる1又は複数台のカメラである。
キャビン10内には、入力装置D1、音声出力装置D2、表示装置D3、記憶装置D4、ゲートロックレバーD5、コントローラ30、及びマシンコントロール装置50が設置されている。
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う主制御部として機能する。本実施形態では、コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成される。コントローラ30の各種機能は、CPUが内部メモリに格納されたプログラムを実行することで実現される。
マシンコントロール装置50は、マシンコントロール機能を実行し、操作者によるショベルの操作を自動的に支援する。本実施形態では、マシンコントロール装置50は、操作者が掘削操作を行っているときに、目標施工面とバケット6の先端位置とが合致するようにブーム4、アーム5及びバケット6のうちの少なくとも1つを自動的に動作させる。例えば、操作者がアーム閉じ操作を行っているときにブームシリンダ7及びバケットシリンダ9の少なくとも一方を自動的に伸縮させて目標施工面とバケット6の先端位置とを合致させる。この場合、操作者は、1本の操作レバーを操作するだけでブーム4、アーム5及びバケット6を同時に動かして目標施工面とバケット6の先端位置とを合わせながら掘削作業を行うことができる。
本実施形態では、マシンコントロール装置50は、コントローラ30と同様、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成される。マシンコントロール装置50の各種機能はCPUが内部メモリに格納されたプログラムを実行することで実現される。マシンコントロール装置50は、コントローラ30に組み込まれていてもよい。すなわち、コントローラ30に一体化されていてもよい。
マシンコントロール装置50は、マシンガイダンス機能を実行し、ショベルの操作をガイド(案内)してもよい。例えば、マシンコントロール装置50は、操作者が事前に設定した目標施工面とバケット6の先端位置との鉛直方向における距離の大きさを視覚的に且つ聴覚的に操作者に知らせる。バケット6の先端位置は、例えば、爪先位置である。この機能により、マシンコントロール装置50は操作者によるショベルの操作をガイドできる。マシンコントロール装置50は、その距離の大きさを視覚的に操作者に知らせるのみであってもよく、聴覚的に操作者に知らせるのみであってもよい。
入力装置D1は、ショベルの操作者がマシンコントロール装置50に各種情報を入力するための装置である。本実施形態では、入力装置D1は、表示装置D3の周囲に取り付けられるメンブレンスイッチである。入力装置D1としてタッチパネルが用いられてもよい。
音声出力装置D2は、マシンコントロール装置50からの音声出力指令に応じて各種音声情報を出力する。本実施形態では、音声出力装置D2として、マシンコントロール装置50に接続された車載スピーカが利用される。音声出力装置D2として、ブザー等の警報器が利用されてもよい。
表示装置D3は、マシンコントロール装置50からの指令に応じて各種画像情報を出力する。本実施形態では、表示装置D3として、マシンコントロール装置50に接続された液晶ディスプレイが利用される。表示装置D3には撮像装置S6が取得したカメラ画像が表示されてもよい。
記憶装置D4は、各種情報を記憶するための装置である。本実施形態では、記憶装置D4として半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体が用いられる。記憶装置D4は、設計データ等、マシンコントロール装置50等が利用可能な各種情報を記憶している。
ゲートロックレバーD5は、ショベルが誤って操作されるのを防止する機構である。本実施形態では、ゲートロックレバーD5は、キャビン10のドアと運転席との間に配置されている。キャビン10から操作者が退出できないようにゲートロックレバーD5が引き上げられると、各種操作装置は操作可能となる。一方、キャビン10から操作者が退出できるようにゲートロックレバーD5が押し下げられると、各種操作装置は操作不能となる。
図2は、図1のショベルの駆動制御系の構成例を示す図である。図2において、機械的動力系は二重線、作動油ラインは実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は一点鎖線でそれぞれ示されている。
エンジン11はショベルの動力源である。本実施形態では、エンジン11はエンジン負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定に維持するアイソクロナス制御を採用したディーゼルエンジンである。エンジン11における燃料噴射量、燃料噴射タイミング、ブースト圧等は、エンジンコントローラD7により制御される。エンジンコントローラD7からは、エンジン11の状態を示す各種データがコントローラ30に送信される。
エンジン11の回転軸には油圧ポンプとしてのメインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの回転軸が接続されている。メインポンプ14には作動油ラインを介してコントロールバルブ17が接続される。
コントロールバルブ17は、ショベルの油圧系の制御を行う油圧制御装置である。左走行用油圧モータ1L、右走行用油圧モータ1R、旋回用油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等の油圧アクチュエータは、作動油ラインを介してコントロールバルブ17に接続されている。
パイロットポンプ15にはパイロットライン及びゲートロック弁D6を介して操作装置26が接続されている。操作装置26は操作レバー及び操作ペダルを含む。また、操作装置26は、パイロットラインを介してコントロールバルブ17に接続されている。図2は、操作装置26の一例であるバケット操作レバー26Aを示している。
操作圧センサ29は、操作装置26の操作内容を圧力の形で検出する。操作圧センサ29は、検出値をコントローラ30に対して出力する。本実施形態では、操作圧センサ29は、操作装置26が生成するパイロット圧を検出する。操作圧センサ29は、検出したパイロット圧を示すデータをコントローラ30に出力する。図2は、操作圧センサ29の一例であるバケット操作圧センサ29Aを示している。
ゲートロック弁D6は、パイロットポンプ15と操作装置26とを接続するパイロットラインの連通・遮断を切り換える。本実施形態では、ゲートロック弁D6は、コントローラ30からの指令に応じてパイロットラインの連通・遮断を切り換える電磁弁である。コントローラ30は、ゲートロックレバーD5が出力する状態信号に基づいてゲートロックレバーD5の状態を判定する。そして、コントローラ30は、ゲートロックレバーD5が引き上げられた状態にあると判定した場合に、ゲートロック弁D6に対して連通指令を出力する。連通指令を受けると、ゲートロック弁D6は開いてパイロットラインを連通させる。その結果、操作装置26に対する操作者の操作が有効となる。一方、コントローラ30は、ゲートロックレバーD5が引き下げられた状態にあると判定した場合に、ゲートロック弁D6に対して遮断指令を出力する。遮断指令を受けると、ゲートロック弁D6は閉じてパイロットラインを遮断する。その結果、操作装置26に対する操作者の操作が無効となる。
ショベルに搭載される油圧システムは、基本的に、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14からセンターバイパス管路40を経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171、173、175A及び176Aを通る作動油ラインである。センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁172、174、175B及び176Bを通る作動油ラインである。
制御弁171は、メインポンプ14Lが吐出する作動油を左走行用油圧モータ1Lへ供給し、且つ、左走行用油圧モータ1Lが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。ロータリ弁であってもよい。
制御弁172は、メインポンプ14Rが吐出する作動油を右走行用油圧モータ1Rへ供給し、且つ、右走行用油圧モータ1Rが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。ロータリ弁であってもよい。
制御弁173は、メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。ロータリ弁であってもよい。
制御弁174は、メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。ロータリ弁であってもよい。
制御弁175A、175Bは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。ロータリ弁であってもよい。本実施形態では、制御弁175Aは、ブーム4の上げ操作が行われた場合にのみ作動し、ブーム4の下げ操作が行われた場合には作動しない。
制御弁176A、176Bは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。ロータリ弁であってもよい。
パラレル管路42Lは、センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。パラレル管路42Lは、制御弁171、173、175Aの何れかによってセンターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給する。パラレル管路42Rは、センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。パラレル管路42Rは、制御弁172、174、175Bの何れかによってセンターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給する。
レギュレータ14aは、ネガコン圧、メインポンプ14の吐出圧等に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ14aは、コントローラ30からの制御指令に応じて動作する。レギュレータ14aは、メインポンプ14Lに関するレギュレータ14aLとメインポンプ14Rに関するレギュレータ14aRを含む。レギュレータ14aは、例えば、メインポンプ14の吐出圧が所定値以上となった場合にメインポンプ14の斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
吐出圧センサ14bは、メインポンプ14の吐出圧を検出する。吐出圧センサ14bは、検出値をコントローラ30に対して出力する。本実施形態では、吐出圧センサ14bLは、メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、吐出圧センサ14bRは、メインポンプ14Rの吐出圧を検出する。
バケット操作レバー26Aは、バケット6を操作するために用いられる。バケット操作レバー26Aは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。具体的には、バケット操作レバー26Aは、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の左パイロットポートに作動油を導入させる。また、バケット操作レバー26Aは、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の右パイロットポートに作動油を導入させる。
バケット操作圧センサ29Aは、バケット操作レバー26Aに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
走行レバー(走行ペダル)、ブーム操作レバー、アーム操作レバー、旋回操作レバー(何れも図示せず。)等の他の操作装置26は、バケット操作レバー26Aと同様に動作する。具体的には、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量(又はペダル操作量)に応じたパイロット圧を、対応する制御弁の左右何れかのパイロットポートに導入させる。他の操作装置26のそれぞれに対する操作者の操作内容は、バケット操作圧センサ29Aと同様、対応する操作圧センサ29によって圧力の形で検出され、検出値がコントローラ30に対して出力される。
コントローラ30は、吐出圧センサ14b、操作圧センサ29、ネガコン圧センサ(図示せず。)等の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ14aに対して制御信号を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
パイロット圧調整弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じてパイロットポンプ15から制御弁のパイロットポートに導入されるパイロット圧を調整する調整機構の一例である。パイロット圧調整弁31は、操作装置26が生成するパイロット圧とは無関係に、パイロット圧を生成できる。パイロット圧調整弁31は、例えば、制御指令としての電流指令(電流値)が大きいほどパイロット圧を大きくする。図2は、パイロット圧調整弁31の一例であるパイロット圧調整弁31AL及びパイロット圧調整弁31ARを示している。パイロット圧調整弁31ALは、バケット閉じ操作に関するパイロット圧を生成或いは調整する。パイロット圧調整弁31ARは、バケット開き操作に関するパイロット圧を生成或いは調整する。
シャトル弁32は、操作装置26が生成するパイロット圧と、パイロット圧調整弁31が生成するパイロット圧のうちの高い方を制御弁のパイロットポートに作用させる。図2は、バケット閉じ操作に関するパイロット圧を選択するシャトル弁32AL、及び、バケット開き操作に関するパイロット圧を選択するシャトル弁32ARを示している。
次に、図3を参照し、マシンコントロール装置50の各種機能要素について説明する。図3は、マシンコントロール装置50の構成例を示す。
マシンコントロール装置50は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、入力装置D1、コントローラ30等が出力する情報を受信する。そして、受信した情報と記憶装置D4に記憶された情報とに基づいて各種演算を実行し、その演算結果を音声出力装置D2、表示装置D3、パイロット圧調整弁31等に出力する。
マシンコントロール装置50は、例えば、目標施工面に沿うように掘削アタッチメントの作業部位を半自動的に動かす。すなわち、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9のうちの少なくとも1つが操作者によるレバー操作に応じて伸縮したときに、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9のうちの少なくとも1つを自動的に伸縮させる。或いは、目標施工面に沿うように掘削アタッチメントの作業部位を全自動的に動かしてもよい。すなわち、操作者によるレバー操作が行われていないときに、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9のうちの少なくとも1つを自動的に伸縮させてもよい。掘削アタッチメントの作業部位は、バケット6の先端(爪先)、バケット6の背面端部等である。
マシンコントロール装置50は、例えば、ブームシリンダ7に関するパイロット圧調整弁31に制御指令を出力してブームシリンダ7を自動的に伸縮させる。アームシリンダ8及びバケットシリンダ9についても同様である。
パイロット圧調整弁31は、マシンコントロール装置50からの制御指令に応じて二次圧を増減させることで制御弁のパイロットポートに作用するパイロット圧を増減させる。そして、制御弁はパイロット圧に応じてストロークし、油圧シリンダは制御弁を通過する作動油を受け入れて伸縮する。その結果、掘削アタッチメントは、作業部位の高さが目標高さと一致するように動作する。本実施形態では、「高さ」は、基準面(水平面)からの距離を意味する。基準面は、例えば、ショベルの基準点を含む水平面である。基準点は、例えば、ショベルが位置する仮想平面と旋回軸との交点である。目標高さは、例えば、目標施工面の高さである。目標高さは、入力装置D1、通信装置等を通じて入力される高さであってもよい。
マシンコントロール装置50は、例えば、地面を水平に均すために操作者がアーム閉じ操作を行う際に、アーム5の動きに合わせてブーム4及びバケット6のそれぞれの動きを自動的に制御する。作業部位としてのバケット6の先端の高さを目標施工面の高さに一致させるためである。この場合、作業者は、ブーム操作及びバケット操作を行う必要はない。
マシンコントロール装置50は、上述のような自動制御を行うため、傾斜角算出部501、高さ算出部502、自動制御部503、特性決定部504等の機能要素を有する。
傾斜角算出部501は、機体傾斜センサS4の出力に基づいて基準面に対する上部旋回体3の傾斜角を算出する。
高さ算出部502は、傾斜角算出部501が算出した傾斜角と、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3のそれぞれの出力に基づいて基準面に対する作業部位の高さを算出する。
自動制御部503は、作業部位の高さに関する情報と目標高さに関する情報とに基づいて自動制御を実行する。本実施形態では、高さ算出部502が算出したバケット6の先端の高さと、入力装置D1等を通じて入力された目標施工面に関する情報と、操作圧センサ29が検出した操作装置26の操作内容に関する情報とに基づいて自動制御を実行する。
自動制御部503は、例えば、アーム閉じ操作が行われたことを検出した場合、アーム5の回動角度に基づき、バケット6の先端を目標施工面に一致させるために必要なブーム4及びバケット6のそれぞれの回動角度を決定する。そして、各回動角度に基づいて各油圧シリンダに流入すべき作動油の流量を決定し、各流量に基づいて各制御弁の開口面積(スプールストローク位置)を決定する。具体的には、制御弁174、制御弁176A及び制御弁176BのそれぞれにおけるP−Cポートの開口面積を決定する。そして、各制御弁の開口面積に基づいて各制御弁に作用すべきパイロット圧、すなわち、各制御弁に対応するパイロット圧調整弁31の二次圧を決定し、各パイロット圧に基づいて各パイロット圧調整弁31に対する電流指令の大きさを決定する。
自動制御部503は、例えば、記憶装置D4等に記憶された各制御弁に関する特性テーブルを参照し、各パイロット圧調整弁31に対して出力すべき電流指令の大きさを決定する。特性テーブルは、例えば、制御弁の開口面積とパイロット圧調整弁31に対する電流指令の大きさとの対応関係を記憶した参照テーブルである。
自動制御部503は、パイロット圧調整弁31毎に決定した電流指令を各パイロット圧調整弁31に対して出力する。各パイロット圧調整弁31は、電流指令に対応する二次圧(パイロット圧)を各制御弁のパイロットポートに作用させる。各制御弁は、パイロット圧に応じてストロークし、パイロット圧に対応する開口面積をもたらす。
このようにして、自動制御部503は、アーム閉じ操作が行われたときに、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9のそれぞれに流入する作動油の流量を自動制御し、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9のそれぞれの動きを自動制御する。
自動制御部503は、所定の制御周期毎に、各制御弁の開口面積を決定し、各パイロット圧調整弁31に対する電流指令の大きさを決定し、且つ、各油圧シリンダの動きを自動制御する。そのため、アーム閉じ操作が継続される間、バケット6の先端を継続的に目標施工面に一致させることができる。すなわち、水平面に沿ってバケット6の先端をショベルに接近させることができる。
なお、上述の説明は、アーム閉じ操作が行われたときにブーム4及びバケット6の動きを自動制御する場合に関する。但し、アーム開き操作が行われたときにブーム4及びバケット6の動きを自動制御する場合、ブーム下げ操作が行われたときにアーム5及びバケット6の動きを自動制御する場合等にも適用される。また、レバー操作が行われていないときにブーム4、アーム5及びバケット6のうちの少なくとも1つの動きを自動制御する場合に適用されてもよい。
特性決定部504は、自動制御の特性を決定する。本実施形態では、特性決定部504は、制御弁に関する実測情報に基づき、自動制御の特性を決定する。特性決定部504は、例えば、入力装置D1等を通じて取得した制御弁に関する実測情報に基づいて特性テーブルの内容を決定する。特性テーブルは、例えば、パイロット圧調整弁31に対する電流指令の大きさと、その制御弁の開口面積(スプールストローク位置)との対応関係を記憶している。
制御弁に関する実測情報は、例えば、コントロールバルブ17がショベルに搭載される前に製造工場等で行われるコントロールバルブ17のベンチテスト等で得られる情報である。ベンチテストは、例えば、コントロールバルブ17の実際の利用条件と同等の条件下で行われる。制御弁に関する実測情報は、例えば、パイロット圧と開口面積の関係、パイロット圧とスプールストローク位置の関係、パイロット圧とスプールストローク速度の関係等を含む。
より具体的には、ベンチテストでは、作業者は、模擬的なブーム、アーム及びバケットを含むアタッチメントを用いる。そして、通常のマシンコントロール機能が実行される場合と同じようにコントロールバルブ17を動かしつつ、バケット刃先の位置と、アタッチメントを駆動させる各油圧シリンダのシリンダストローク位置を検出する。各油圧シリンダのシリンダストローク位置ではなく、アタッチメントの姿勢(ブーム、アーム及びバケットのそれぞれの回動角度)を検出してもよい。その際、刃先位置の変化(刃先速度)とシリンダストローク位置の変化(シリンダストローク速度)を求めてもよい。シリンダストローク位置の変化(シリンダストローク速度)の大きさは、コントロールバルブ17から油圧シリンダに流れる作動油の流量の大きさ、すなわち、制御弁(スプール弁)の開口面積(スプールストローク位置)の大きさに対応している。一方で、刃先位置の変化(刃先速度)は、現在の刃先位置とレバー操作量に基づいて求められる。したがって、任意の刃先位置から所定の面(目標面)に沿ってバケット刃先を動かす際の刃先速度を制御する場合、作業者は、作業空間内における刃先位置とシリンダストローク位置(アタッチメント姿勢)との関係を導き出す。そして、刃先位置毎に、所定の面に沿ってバケット刃先を動かす際のレバー操作量(刃先速度)と、シリンダストローク速度、すなわち、各制御弁(スプール弁)の開口面積(スプールストローク位置)との関係を導き出す。これにより、刃先位置毎に、所定の面に沿って刃先を動かす際のレバー操作量(パイロット圧)と、各制御弁(スプール弁)の開口面積(スプールストローク位置)との関係を特性テーブルとして記憶できる。したがって、作業者は、コントロールバルブ17毎に制御弁(スプール弁)に関する実測情報を得ることができる。
ショベルに搭載されるコントロールバルブ17又は制御弁は、制御弁に関する実測情報、又は、その実測情報にアクセスするための情報(以下、これらの情報をまとめて「目標情報」とする。)を保持するための情報保持手段を備えていてもよい。情報保持手段は、例えば、電子タグ等の電子コード、QRコード(登録商標)等の二次元コード、及び、バーコード等の一次元コードを含む。
目標情報は、例えば、コントロールバルブ17に埋め込まれた電子タグ17T(図2参照。)に記憶されている。各制御弁に埋め込まれた電子タグに記憶されていてもよい。この場合、バケットシリンダ9と協働する制御弁174に関する目標情報は、制御弁174に埋め込まれた電子タグT4(図2参照。)に記憶されていてもよい。ブームシリンダ7と協働する制御弁175A、175Bに埋め込まれた電子タグT5A、T5B、及び、アームシリンダ8と協働する制御弁176A、176Bに埋め込まれた電子タグT6A、T6Bについても同様である。但し、1つの制御弁に埋め込まれた電子タグに複数の制御弁に関する目標情報が記憶されていてもよい。また、図2の例では、掘削アタッチメントの動きに関連する制御弁174、175A、175B、176A、176Bには電子タグが埋め込まれているが、掘削アタッチメントの動きに関連しない制御弁171〜173には電子タグが埋め込まれていない。但し、制御弁171〜173に電子タグが埋め込まれていてもよい。
ショベルの組み立てを行う作業者は、例えば、電子タグ読み取り装置を用い、コントロールバルブ17に埋め込まれた電子タグ17Tから目標情報を読み取り、入力装置D1等を介してその目標情報をマシンコントロール装置50に入力する。マシンコントロール装置50への目標情報の入力は任意の方法で行われる。例えば、電子タグ読み取り装置は、読み取った目標情報を無線通信でマシンコントロール装置50に転送する機能を有していてもよい。この場合、マシンコントロール装置50には、電子タグ読み取り装置が送信する目標情報を受信するための受信装置が接続されていてもよい。
目標情報の保持には、コントロールバルブ17又は制御弁に貼付されたQRコード(登録商標)が利用されてもよい。この場合、ショベルの組み立てを行う作業者は、例えば、カメラを備えたコード読み取り装置を用い、コントロールバルブ17に貼付された二次元コードから目標情報を読み取る。
目標情報の保持には、コントロールバルブ17又は制御弁に貼付されたバーコードが利用されてもよい。この場合、ショベルの組み立てを行う作業者は、例えば、バーコードリーダを用い、コントロールバルブ17に貼付されたバーコードから目標情報を読み取る。
目標情報の保持には、コントロールバルブ17又は制御弁に刻印されたシリアル番号等が利用されてもよい。この場合、ショベルの組み立てを行う作業者は、例えば、光学文字認識装置を用い、コントロールバルブ17に刻印されたシリアル番号等から目標情報を読み取る。
コード読み取り装置、バーコードリーダ、光学文字認識装置等は、読み取った目標情報を無線通信でマシンコントロール装置50に転送する機能を有していてもよい。この場合、マシンコントロール装置50には、目標情報を受信するための受信装置が接続されていてもよい。
QRコード(登録商標)、バーコード等から読み取った目標情報が、制御弁に関する実測情報にアクセスするための識別番号である場合、作業者は、その識別番号を用い、通信ネットワーク等を介してその実測情報が格納されているサーバにアクセスすることで、その実測情報を取得してもよい。サーバは、例えば、管理センタ等に設置されるコンピュータである。マシンコントロール装置50は、通信を介して、その実測情報をサーバから取得するように構成されていてもよい。
図4は、バケットシリンダ9と協働する制御弁174の開口特性の一例を示す。横軸は、制御弁174の右パイロットポートに作用するパイロット圧(バケット開き操作に関するパイロット圧)を表し、縦軸は、制御弁174のP−Cポートの開口面積を表す。また、実線は、制御弁174の理想的な特性である基準特性を表し、破線は実測情報に基づく制御弁174の実測特性を表す。基準特性は、例えば、製造誤差のない理想的なコントロールバルブ17を用いた場合に実現される理想的な特性である。
図4は、開口面積を値A1にするには、理想的なコントロールバルブ17では制御弁174のパイロットポートにパイロット圧P1が作用する必要があることを表している。また、図4は、実際のコントロールバルブ17ではパイロット圧P1a(>P1)が作用する必要があることを表している。すなわち、実際のコントロールバルブ17が理想的であるという前提で、開口面積を値A1にすべく自動制御が行われたとしても、開口面積は値A1aまでしか増大せず値A1に達しないことを表している。
これは、制御弁174に関する特性テーブルにその実測特性が反映されていない場合、自動制御部503は、制御弁174に関するパイロット圧調整弁31AR(図2参照。)に適切な大きさの電流指令を出力できず、バケット6の開き具合を適切に制御できないことを表している。
特性決定部504は、制御弁の実測特性をその制御弁に関する特性テーブルに反映させることができる。特性決定部504は、例えば、制御弁の実測特性に基づいて基準特性テーブルの内容を補正して補正後特性テーブルを生成することで、制御弁の実測特性を特性テーブルに反映させることができる。
基準特性テーブルは、例えば、製造誤差のない理想的なコントロールバルブ17に適合する特性テーブルである。基準特性テーブルは、例えば、記憶装置D4等に予め記憶されている。
特性決定部504は、例えば、制御弁の実測特性と基準特性との関係が図4に示すような関係である場合、基準特性テーブルを用いる場合に比べ、同じ開口面積をもたらすための電流指令が大きくなるように補正後特性テーブルを生成する。
自動制御部503は、補正後特性テーブルを参照してパイロット圧調整弁31に対する電流指令の大きさを決定することで、油圧シリンダを予定通りに自動制御できる。すなわち、理想的なコントロールバルブ17に関して基準特性テーブルを参照してパイロット圧調整弁31に対する電流指令の大きさを決定した場合と同じように油圧シリンダを自動制御できる。例えば、アーム閉じ操作が行われた場合に、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9のそれぞれを予定通りに伸縮させ、バケット6の先端を目標施工面に沿って移動させることができる。
ここで、図5を参照し、特性決定部504による効果を説明する。図5は、地面を水平に均すための均し作業を行うショベルの側面図である。点線で示す掘削アタッチメントは、均し作業開始前の掘削アタッチメントの姿勢を表す。一点鎖線は、制御弁の実測特性が反映された補正後特性テーブルを用いて自動制御が行われたときのバケット6の先端の軌跡を表す。二点鎖線は、制御弁の実測特性が反映されていない基準特性テーブルを用いて自動制御が行われたときのバケット6の先端の軌跡を表す。
このように、マシンコントロール装置50は、基準特性テーブルを用いた自動制御では、操作者によるアーム閉じ操作に応じてアームシリンダ8が伸張したときに、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9を適切なストロークで伸縮させることができない。各制御弁の実測特性が特性テーブルに反映されていないためである。そのため、アーム閉じ操作が行われている間、バケット6の先端をショベルに向かって水平に移動させることができない。
一方、補正後特性テーブルを用いた自動制御では、操作者によるアーム閉じ操作に応じてアームシリンダ8が伸張したときに、ブームシリンダ7及びバケットシリンダ9を適切なストロークで伸縮させることができる。そのため、アーム閉じ操作が行われている間、バケット6の先端をショベルに向かって水平に移動させることができる。
上述のように、本発明の実施形態に係るショベルは、下部走行体1と、下部走行体1に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に搭載される油圧ポンプであるメインポンプ14と、メインポンプ14に接続されるコントロールバルブ17と、コントロールバルブ17を構成する制御弁に作用するパイロット圧を調整する調整機構としてのパイロット圧調整弁31と、制御弁に関する実測情報に基づいてパイロット圧調整弁31の動きを決定する制御装置としてのマシンコントロール装置50と、を備えている。
この構成により、ショベルは、ベンチテスト等で測定された制御弁に関する実測情報を調整機構の動きに反映させることができる。そのため、ショベルを実際に動かして行われる制御弁のキャリブレーションを簡略化或いは省略できる。その結果、制御弁のキャリブレーションに要する時間を短縮し或いは無くすことができる。複数の制御弁で構成されるコントロールバルブ17の寸法公差に起因する制御弁の位置決め精度の低下が抑制或いは防止されるためである。
マシンコントロール装置50は、例えば、制御弁の理想的な特性である基準特性に基づいてパイロット圧調整弁31の動きを決定してもよい。例えば、図4で示すように制御弁の実測特性がパイロット圧の全域に亘って基準特性から下方に乖離している場合、マシンコントロール装置50は、自動制御を実行する際に制御弁のパイロットポートに作用するパイロット圧が補正前よりも大きくなるようにパイロット圧調整弁31の動きを決定する。或いは、制御弁の実測特性がパイロット圧の全域に亘って基準特性から上方に乖離している場合には、マシンコントロール装置50は、自動制御を実行する際に制御弁のパイロットポートに作用するパイロット圧が補正前よりも小さくなるようにパイロット圧調整弁31の動きを決定する。
制御弁は典型的にはスプール弁である。スプール弁に関する実測情報は、例えば、スプール弁に作用するパイロット圧とスプールストローク位置の対応関係を表す情報である。そして、スプール弁に関する実測情報に基づいてパイロット圧調整弁31の動きが決定された場合、ショベルは、スプール弁のキャリブレーションに要する時間を短縮し或いは無くすことができる。複数のスプール弁で構成されるコントロールバルブ17の寸法公差に起因するスプール弁の位置決め精度の低下が抑制或いは防止されるためである。
本発明の実施形態に係るショベルは、制御弁の実測情報、又は、その実測情報にアクセスするための情報を保持する情報保持手段を備えていてもよい。この場合、情報保持手段は、コントロールバルブ17に取り付けられていてもよく、制御弁に取り付けられていてもよい。情報保持手段は、例えば、電子タグ等の電子コード、QRコード(登録商標)等の二次元コード、及び、バーコード等の一次元コードを含む。そして、マシンコントロール装置50は、情報保持手段が保持する情報に基づいてパイロット圧調整弁31の動きを決定してもよい。情報保持手段が保持する情報は、情報読み取り手段を用いて読み取られる。情報読み取り手段は、電子タグ読み取り装置、バーコードリーダ、光学文字認識装置等を含む。この構成により、ショベルの組み立てを行う作業者は、制御弁の実測情報をより確実にマシンコントロール装置50に入力することができる。別の制御弁の実測情報が誤ってマシンコントロール装置50に入力されてしまうのを防止できるためである。
以上、本発明の好ましい実施形態が説明された。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、上述の実施形態を参照して説明された特徴のそれぞれは、技術的に矛盾しない限り、適宜に組み合わされてもよい。
例えば、上述の実施形態では、マシンコントロール装置50は、キャビン10を備えたショベル、すなわち、操作者が操作するショベルに適用されている。但し、マシンコントロール装置50は、操作者が搭乗しない無人ショベル又は遠隔操作型ショベルに適用されてもよい。