JP2019039989A - 音質制御システム、音質制御方法及び動力機械 - Google Patents

音質制御システム、音質制御方法及び動力機械 Download PDF

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Abstract

【課題】動力源の周囲の音を、人の好みに応じた音質に制御する。【解決手段】基本周波数算出部10は、エンジン3を駆動するパルス信号の基本周波数を算出する。信号生成部11は、基本周波数の倍数次の周波数のうちの特定次数の周波数の正弦波信号を生成する。音声入力部12は、エンジン3の周囲の音を入力する。好み判定部14は、エンジン3を操作する操作者の操作情報に基づいて、深層学習により得られたルールに従って、操作者の音の好みを判定する。適応フィルタ部13は、正弦波信号である参照信号と、音声入力部12で入力された音声信号である誤差信号と、好み判定部14で設定された収束係数とを入力し、LMSアルゴリズムに従ってフィルタ係数を調整し、エンジン3の周囲の音がエンジン3を操作する者の好みの音となる出力信号を出力する。音声出力部15は、適応フィルタ部13の出力信号に対応する音声を出力する。【選択図】図1

Description

本発明は、音質制御システム、音質制御方法及び動力機械に関する。
動力源から発生する音の騒音対策の1つとして能動騒音制御(Active Noise Control, ANC)がある。ANCは、制御対象音に対して同振幅、逆位相の制御音を干渉させることにより、消音を行う技術である。ANCは、低域騒音に対して有効であり、設置場所として大きなスペースを必要としない。このため、ANCは、自動車内の車内騒音やエンジンのこもり音の低減などによく用いられている。
ANCを適用した音質制御システムとして、例えば、特許文献1には、動力源から発生する音に含まれる基本周波数の正弦波信号及びその倍数次の周波数の正弦波信号を参照信号とし、周囲の音を誤差信号とする適応フィルタに入力し、動力源で発生する騒音を制御する音質制御システムが開示されている。この適応フィルタは、HFxLMS(Harmonic Filtered-xLeast Mean Square)アルゴリズムに従って動作する。
特開2014−153571号公報
上述した適応フィルタは、いずれも、エンジン音を低減するためのシステムであった。しかしながら、自動車やバイクに乗る人の中には、エンジン音を愛好する人もおり、どのような音が心地よいと感じるかは人それぞれである。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、動力源の周囲の音を、人の好みに応じた音質に制御することができる音質制御システム、音質制御方法及び動力機械を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る音質制御システムは、
動力源を駆動するパルス信号の基本周波数を算出する基本周波数算出部と、
前記基本周波数の倍数次の周波数のうちの特定次数の周波数の正弦波信号を生成する信号生成部と、
前記動力源の周囲の音を入力する音声入力部と、
前記動力源を操作する操作者の操作情報に基づいて、深層学習により得られたルールに従って、前記操作者の音の好みを判定する好み判定部と、
前記正弦波信号である参照信号と、前記音声入力部で入力された音声信号である誤差信号と、前記好み判定部で設定された収束係数とを入力し、LMSアルゴリズムに従ってフィルタ係数を調整し、前記動力源の周囲の音が前記動力源を操作する者の好みの音となる出力信号を出力する適応フィルタ部と、
前記適応フィルタ部の出力信号に対応する音声を出力する音声出力部と、
を備える。
この場合、前記好み判定部は、
前記操作者の操作情報を用いた教師なし学習によって機械学習を行うことにより、前記操作者の音の好みを判定する、
こととしてもよい。
前記好み判定部は、
自己組織化マップにより教師なし学習を行う、
こととしてもよい。
前記好み判定部は、
前記操作者の操作情報を用いた教師あり学習によって機械学習を行うことにより、前記操作者の音の好みを判定する、
こととしてもよい。
前記好み判定部は、
ニューラルネットワークにより教師あり学習を行う、
こととしてもよい。
前記動力源は、自動車両であり、
前記操作者の操作情報は、前記自動車両の走行パターンを含む、
こととしてもよい。
前記信号生成部は、1次の周波数の信号と2次の周波数の信号とを生成し、
前記適応フィルタ部は、
前記1次の周波数の信号を参照信号として入力するとともに前記音声入力部で入力された音声信号である誤差信号を入力し、LMSアルゴリズムに従ってフィルタ係数を調整し、前記動力源の周囲の音が前記動力源を操作する者の好みの音となる出力信号を出力する第1の適応フィルタと、
前記2次の周波数の信号を参照信号として入力するとともに前記音声入力部で入力された音声信号である誤差信号を入力し、LMSアルゴリズムに従ってフィルタ係数を調整し、前記動力源の周囲の音が前記動力源を操作する者の好みの音となる出力信号を出力する第2の適応フィルタと、
を備える、
こととしてもよい。
前記第1の適応フィルタと前記第2の適応フィルタとは、並行して動作可能な別々のプロセッサ又はプログラマブルロジック回路に実装されている、
こととしてもよい。
前記動力源はエンジンであり、
前記パルス信号は、前記エンジンの点火のタイミングを示す点火パルス信号である、
こととしてもよい。
また、本発明の第2の観点に係る動力機械は、
本発明の第1の観点に係る音質制御システムと、
動力源で発生する動力により動作する本体装置と、
を備える。
また、本発明の第3の観点に係る音質制御方法は、
深層学習により、動力源を操作する操作者の操作情報から前記操作者の音の好みを学習する学習工程と、
前記動力源の操作中に、学習の結果に基づいて、前記操作者の操作情報から前記操作者の音の好みを判定し、前記動力源の操作を駆動するパルス信号の基本周波数の倍数次の周波数のうちの特定次数の周波数の正弦波信号である参照信号と、前記動力源の周囲の音の音声信号である誤差信号と、前記判定された音の好みにより設定された収束係数とを入力し、入力された信号に基づいて適応フィルタ係数を調整し、前記動力源の周囲の音を前記動力源を操作する者の好みの音に制御する音質制御工程と、
を含む。
本発明によれば、適応フィルタ部が、LMSアルゴリズムに従ってフィルタ係数を調整し、動力源の周囲の音が操作者の好みとなる出力信号を出力することができるので、動力源の周囲の音を、人の好みに応じた音質に制御することができる。
本発明の実施の形態1に係る音質制御システムの構成を示すブロック図である。 点火パルス信号の一例を示すグラフである。 LMSアルゴリズムに従って動作する適応フィルタ部を中心とする制御系のエンジン音の制御ブロック図である。 走行パターンの一例を示すグラフである。 音質制御方法の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態2に係る音質制御システムの制御系の構成を示す制御ブロック図である。 本発明の実施の形態3に係る音質制御システムの好み判定部における自己組織化マップの一例を示す図である。 本発明の実施の形態4に係る音質制御システムの好み判定部におけるニューラルネットワークの一例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
実施の形態1.
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
本実施の形態に係る音質制御システム1は、車両本体(本体装置)2に取り付けられている。音質制御システム1と車両本体2とで動力機械100が構成されている。車両本体2は、エンジン3と駆動部4とを備え、駆動部4はエンジン3の点火のタイミングを示す点火パルス信号を出力する。音質制御システム1は、エンジン3から発生する騒音(エンジン音)を制御するのに用いられる。
音質制御システム1は、車両本体2を操作する者の音質の好みを判定する好み判定部14を備えていることを特徴とする。このような対応を実現するための音質制御システム1の詳細な構成について説明する。
図1に示すように、音質制御システム1は、基本周波数算出部10と、信号生成部11と、音声入力部12と、適応フィルタ部13と、好み判定部14と、音声出力部15と、を備える。
基本周波数算出部10は、動力源を駆動するパルス信号の基本周波数を算出する。本実施の形態では、動力源はエンジン3である。パルス信号は、エンジン3の点火のタイミングを示す点火パルス信号である。図2には、点火パルス信号の一例が示されている。図中の矢印は、パルス周期を示している。エンジン3が直列4気筒4サイクルエンジンである場合、パルス周期は、以下の数式で表される。
パルス周期=(エンジン回転数[rpm]/時間[s])−1
直列4気筒4サイクルエンジンは、クランクシャフトが2回転する間に、吸入、圧縮、爆発(点火)、排気を順に行う。4気筒であれば、2回転で1回爆発する。
図1に戻り、信号生成部11は、基本周波数算出部10で算出された基本周波数fの特定次数の周波数の正弦波信号を生成する。なお、本実施の形態では、特定の周波数で変動する信号を、1次の正弦波信号と定義する。その信号は余弦波状のものも含む。また、倍数次の周波数は、例えば1.5次の周波数であってもよい。この正弦波信号はデジタル信号である。このデジタル信号のサンプリング番号をn(nは自然数)とする。本実施の形態では、信号生成部11は、基本周波数fの正弦波信号x(n)を生成する。
音声入力部12は、動力源(エンジン3)を含む周囲の音を入力する。音声入力部12としては、例えば小型のマイクロフォンが用いられる。本実施の形態では、音声入力部12で入力されたデジタル音声信号が、音質制御システム1における誤差信号e(n)となる。
適応フィルタ部13は、信号処理を行うコンピュータ又はプログラマブルロジック回路等に実装されたデジタルフィルタである。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Sound Processor)等のプロセッサを中心として構成される。プロセッサが、メモリに格納されたLMSアルゴリズムの処理プログラムを実行するか、プログラマブルロジック回路が動作することによって適応フィルタ部13の処理が実行される。
好み判定部14は、動力源(エンジン3)を操作する操作者の操作情報に基づいて、深層学習により得られたルールに従って、操作者の音の好みを判定する。操作者の操作情報は、動力機械100の回転パターンを含んでいる。好み判定部14の判定結果は、適応フィルタ部13に出力される。適応フィルタ部13は、周囲の音の音質が判定された操作者の好みとなるように、適応フィルタ部13における音質制御を行う。
音声出力部15は、適応フィルタ部13の出力信号に対応する音声を出力する。音声出力部15としては、例えばスピーカが用いられる。このスピーカは、例えば、車両本体2のエンジン3の上部であってシートの前側において吸気口からエンジン3に空気を送る配管の近傍に設置される。しかしながら、スピーカの設置場所は、これには限られず、オーディオ用スピーカの共用をはじめ、騒音の因果性を満たす位置が望ましい。
次に、騒音を制御する制御系について、適応フィルタ部13を中心に説明する。適応フィルタ部13では、図3に示すような制御ブロックが構築されている。
適応フィルタ部13には、FIR(Finite Impulse Response)型のデジタルフィルタ、すなわちFIRフィルタ20が設けられている。FIRフィルタ20は、入力信号x(n)を入力し出力信号y(n)を出力する。さらに、適応フィルタ部13には、濾波フィルタ21、増幅器22,23、加算器24及びLMSアルゴリズム部25が設けられている。濾波フィルタ21は、入力信号x(n)を濾波して、参照信号r(n)を出力する。
増幅器22は、誤差信号e(n)を増幅し、増幅器23は、好み判定部14が設定した収束係数(適応フィルタ係数)kcで入力信号x(n)を増幅する。それぞれ増幅された信号は加算器24で加算され、LMSアルゴリズム部25に入力される。LMSアルゴリズム部25は入力信号x(n)に基づく参照信号r(n)と、適応フィルタ係数kcで増幅された入力信号x(n)と、誤差信号e(n)とに基づいて、制御対象となる周囲の音が操作者の好みとなるように、LMSアルゴリズムを用いて、FIRフィルタ20のフィルタ係数を調整する。
LMSアルゴリズム部25には、誤差信号e(n)の成分に加え、入力信号x(n)の成分が増幅器23を経て入力されている。したがって、実際には増幅器23の出力が、LMSアルゴリズム部25のFIRフィルタ20のフィルタ係数の調整に影響を与え、結果的にエンジン3の周囲の音に影響を与えるようになる。
FIRフィルタ20の適応フィルタの係数ベクトルをh(k,n)(k=0,・・・,N−1)と表すと、入力信号x(n)に対応する出力信号y(n)は、以下のように表される。
Figure 2019039989

適応フィルタ部13の出力信号y(n)に、音声出力部15と、音声入力部12との間の伝達特性を経て制御点に到達した信号をz(n)とする。適応フィルタ部13は、この信号z(n)により、エンジン3の音、すなわち制御対象信号d(n)を制御することになる。このとき適応フィルタ部13の出力信号y(n)からz(n)までの伝達特性がN次のFIRフィルタ20で表現できるとすると、以下の関係が成り立つ。
Figure 2019039989

このとき、観測される誤差信号e(n)は、次式のように表される。
Figure 2019039989

この誤差信号は、出力信号y(n)に誤差経路特性c(n)が畳込まれた項を含む形となる。誤差経路特性を示す濾波フィルタ21を、
Figure 2019039989
と表すと、入力信号x(n)にこの特性を畳込んで行った参照信号r(n)は、以下のように与えられる。
Figure 2019039989
上述のような関係を示したものが図3に示す制御ブロックであり、この制御ブロックでは、入力信号x(n)をフィルタ(濾波)することで得られた濾波参照信号r(n)により適応化されたLMSアルゴリズムという意味で、このアルゴリズムは、filtered−xLMSアルゴリズムと呼ばれている。
filtered−xLMSアルゴリズムの適応フィルタの係数ベクトルは、参照信号r(n)を用いて、次式のように定式化できる。
Figure 2019039989

ここで、μは、ステップサイズパラメータであり、kcは収束係数である。
filtered−xLMSアルゴリズムの具体的な処理過程は、以下のように整理できる。
(1)適応フィルタの係数ベクトルh(k,0)の初期化
(2)参照信号ベクトルx(n)の初期化
(3)ステップサイズパラメータμの設定
(4)収束係数kcの設定
(5)誤差経路特性c(n)の設定
(6)以下の(a)から(e)の繰り返し
(a)誤差信号e(n)を観測する。
(b)入力信号x(n)を入力する。
(c)式(5)により、濾波参照信号r(n)を求める。
(d)式(1)により、出力信号y(n)を出力する。
(e)式(6)により、適応フィルタの係数ベクトルh(k,n)を更新する。
好み判定部14は、操作者の操作情報を入力し、収束係数kcの値を出力する。kcは0.0〜2.0の値をとる。操作情報には、例えば、自動車両としての動力機械100の走行パターン(図4参照)がある。動力機械100の走行パターンとその操作者が好むエンジン音との間には相関関係がある。例えば、加速が急な操作者は大きなエンジン音を好む傾向があり、ゆっくり加速する操作者は、音が静かであることを好む傾向がある。好み判定部14は、このように動力機械100の走行パターンに応じて操作者の音の好みを判定し、好みに応じた収束係数kcを適応フィルタ部13の増幅器23に設定する。
好み判定部14は、この相関関係を利用して、動力機械100の走行パターンから操作者の好みの音を判定して、判定結果に応じた収束係数kcの値を出力する。kcの値は、適応フィルタ部13に設定される。これにより、適応フィルタ部13は、エンジン3の周囲の音が操作者の好みとなるように制御される。
次に、本実施の形態に係る音質制御方法の流れについて説明する。
図5に示すように、まず、好み判定部14は、機械学習(深層学習)により、エンジン3を操作する操作者の操作情報から操作者の音の好みを判定する機械学習を行う(ステップS1;学習工程)。機械学習には、学習システムに応じて、教師なしデータを用いた教師なし学習か、教師有りデータを用いた教師有り学習が行われる。
続いて、適応フィルタ部13及び好み判定部14は、エンジン3の操作中の音質制御を行う(ステップS2;音質制御工程)。具体的には、好み判定部14は、機械学習の結果に基づいて、操作者の操作情報から操作者の音の好みを判定する。そして、適応フィルタ部13は、エンジン3の操作を駆動するパルス信号の基本周波数fの倍数次の周波数のうちの1次周波数の正弦波信号x(n)を入力信号として入力するとともにエンジン3の周囲の音の音声信号である誤差信号e(n)を入力し、入力された信号に基づいて収束係数kを調整し、エンジン3の周囲の音がエンジン3を操作する者の好みの音となるように制御を行う。
以上詳細に説明したように、上記実施の形態によれば、適応フィルタ部13が、LMSアルゴリズムに従って適応フィルタの係数ベクトルh(k,n)を調整し、エンジン3の周囲の音が操作者の好みとなる出力信号を出力することができるので、エンジン3の周囲の音を、操作者の好みに応じた音質に制御することができる。
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施の形態では、図6に示すように、信号生成部11は、1次の周波数の信号x(n)と2次の周波数の信号x(n)とを生成する。また、適応フィルタ部13として、第1の適応フィルタとしての適応フィルタ部13Aと、第2の適応フィルタとしての適応フィルタ部13Bと、を備える。
適応フィルタ部13Aは、基本周波数fの1次の周波数の信号x(n)を参照信号として入力するとともに音声入力部12で入力された音声信号である誤差信号e(n)を入力する。適応フィルタ部13Aは、LMSアルゴリズムに従ってフィルタ係数を調整し、エンジン3の周囲の音がエンジン3を操作する者の好みの音となる出力信号y(n)を出力する。
適応フィルタ部13Bは、基本周波数fの2次の周波数の信号を参照信号x(n)として入力するとともに音声入力部12で入力された音声信号である誤差信号e(n)を入力する。適応フィルタ部13Bは、LMSアルゴリズムに従ってフィルタ係数を調整し、エンジン3の周囲の音がエンジン3を操作する者の好みの音となる出力信号y(n)を出力する。
適応フィルタ部13Aの出力信号y(n)と適応フィルタ部13Bの出力信号y(n)は、加算器30で加算され(y(n))、音声出力部15に入力される。音声出力部15は、適応フィルタ部13A,13Bの出力信号の和に応じた音声を出力する。
好み判定部14は、操作者の操作情報を用いた教師なし学習によって機械学習を行うことにより、操作者の音の好みを判定する。本実施の形態では、走行パターンに応じて、適応フィルタ部13A,13Bのそれぞれに対して、「制御なし」、「増幅」、「減衰」のいずれかの指令を出力する。「制御なし」の指令が入力されると適応フィルタ部13A、13Bは動作を停止する。また、「増幅」の指令が入力されると、適応フィルタ部13A,13Bは、増幅器22の収束係数kcに0以外の数値を設定して動作させる。増幅の大きさは、例えば20dB程度となる。また、「減衰」の指令が入力されると、適応フィルタ部13A,13Bは、増幅器22の収束係数kcに0を設定して動作させる。減衰の大きさは、例えば20dB程度となる。
なお、上記実施の形態1と同様に、適応フィルタ部13A,13Bに対して、収束係数kcの値を出力するようにしてもよい。
本実施の形態によれば、エンジン3の基本周波数fについて1次周波数と2次周波数とで個別に音質制御を行うことができる。実験結果によれば、2次の周波数帯域の音が、自動車両、例えばバイクの運転手の好みに強い影響を与えることが明らかとなっている。
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態では、好み判定部14は、操作者の操作情報を用いた教師なし学習によって機械学習を行うことにより、操作者の音の好みを判定する。好み判定部14は、自己組織化(SOM)マップにより教師なし学習を行う。
SOMマップは、ニューラルネットワークの一種であり、与えられた入力情報の類似度を、マップ上での距離で表現するモデルである。SOMマップを用いれば、様々な高次元データを予備知識なし(教師なし)にクラスタリングできる。これが自己組織化といわれる所以である。
SOMマップは、図7に示すように、規則的に配置された複数のユニット(ノード)40から構成されている。本実施の形態ではユニット40を三角形の2次元格子状に並べたものが示されている。本実施の形態では、各ユニット40は、それぞれが、操作情報(走行パターン)に対応している。初期状態において、各ノードの走行パターンに関わらず、ランダムに配列されており、隣合うノードの走行パターンが互いに近似するようにユニット40が配列されているわけではない。
SOMマップには、操作情報(走行パターン)が入力ベクトルとして与えられると、入力データをそれらの類似度に応じて自動的に分類する。具体的には、SOMマップに走行パターンが与えられるとその走行パターンに最も近い走行パターンを有するユニット40が勝者のユニット40となる。図7のNo1〜No12は、勝者のユニット40の一例である。
このとき、SOMマップ上で勝者のユニット40の近くに位置するユニット40ほど,入力された走行パターンに対して強く学習する権利を獲得し,その強さに応じて参照ベクトルを入力ベクトルへと近づけるように学習する。このとき、学習の強さは勝者のユニット40が一番強く、SOMマップ上での位置が、勝者のユニット40から離れていくほど弱くなる。
このようなユニット40における走行パターンの更新を複数の走行パターンに対して繰り返していくと,ベクトル空間での走行パターン同士の関係性が保存されたSOMマップを得ることができる。図7に示すSOMマップがそのようなマップである。なお、図7において、SOMマップの背景色は、隣合うユニット40における走行パターン(入力ベクトル)のノルム(ベクトル空間上の距離)を示す。
このSOMマップ上で、走行パターンを示す各ユニット40は、その出力についてグループ分けされている。ここで、隣り合うユニット40であっても、上述のノルムが閾値よりも大きい場合には、同じグループに含めないようにする。
本実施の形態では、好み判定部14は、各ユニット40を、「制御なし」、「増幅」、「減衰」等のグループに分類する。「制御なし」は、LMSアルゴリズムによるエンジン音の制御を行わないことを示している。
なお、上記実施の形態1と同様に、適応フィルタ部13A,13Bに対して、収束係数kcの値を出力するように、SOMマップの各ユニットをグループ分けするようにしてもよい。この場合、収束係数kcはユニットごとに決定しても、グループ毎に決定しても良い。
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
本実施の形態では、好み判定部14は、操作者の操作情報を用いた教師有り学習によって機械学習を行うことにより、操作者の音の好みを判定する。好み判定部14は、ニューラルネットワークにより好み判別を行う。このニューラルネットワークは、教師有り学習を行う。ニューラルネットワークの構成は、図8に示すようになり、次式で示される。
Figure 2019039989
ここで、xは、走行パターンのデータであり、wi,j,wは重み、b、cは、バイアス、zは、中間出力、zは出力である。
このニューラルネットワークは、走行パターンのデータxを入力し、適応フィルタ部13A,13Bへの指令zを出力する。この指令は、適応フィルタ部13の「制御なし」、「増幅」、「減衰」のいずれかとなる。この3つの指令は、z(n)で数値化される。
ニューラルネットワークは、教師有りデータを用いた機械学習により、最適化される。N個の標本を含む教師有りデータDは、次式のように、入力信号xと出力信号yのペアが想定される。
D={(x(1),…,x(N),z)}
ここで、n=1、2、…Nとする。
なお、教師有りデータDは、複数の操作者により実測走行パターンと、その操作者の好み(制御なし、増幅、減衰)の音のアンケート結果とを組み合わせることにより生成することができる。生成された教師有りデータDに基づいて、ニューラルネットワークにおいて学習が行われ、上記式の係数wが決定される。
なお、上記実施の形態1と同様に、適応フィルタ部13A,13Bに対して、収束係数kcの値を出力するように、SOMマップの各ユニットをグループ分けするようにしてもよい。
なお、上記操作者の操作情報は、上記実施の形態では、操作情報を走行パターンとしたが、本発明はこれには限られない。例えば、アクセル開度,音楽テンポ,オーディオ音量等を好み判定部14に入力する操作情報として用いてもよい。
また、上記各実施の形態では、機械学習(深層学習)を行うことにより、操作者の音の好みを判定したが、本発明はこれには限られない。単に、操作者の操作情報を条件として分岐し、操作者の音の好みに沿った音質制御を行う条件分岐アルゴリズムによって、操作者の音の好みを判定するようにしてもよい。
上記各実施の形態では、エンジン3を直列4気筒4サイクルエンジンとしたが、エンジン3がこれには限られないことは勿論である。
また、上記各実施の形態では、基本周波数を算出するために点火パルス信号を用いたが、本発明はこれには限られない。カム軸の回転位置を検出するカムポジションセンサ信号やクランク軸の回転角を検出するクランクアングルセンサ信号等のエンジンの回転状態を判別することができる他のパルス信号を、単独で、あるいは組み合わせて基本周波数算出に用いることも可能である。
なお、上記各実施の形態では、音質制御システム1は、車両本体2のエンジン3の騒音を制御するのに用いられたが、本発明はこれには限られない。例えば、自動車の他、各乗り物のエンジンの騒音の制御に用いてもよい。この場合、動力源はエンジンには限られず、モータ等であってもよい。また、本発明が適用されるのは乗り物には限られず、動力源を有する工作機械等の各種動力機械にも適用することができる。例えば、本発明を、エンジンやモータなどの回転機構を有する動力機械に適用することができる。
また、適応フィルタ部13A,13Bは、並行して動作可能な別々のプロセッサ又はプログラマブルロジック回路に実装されるようにしてもよい。このようにすれば、プロセッサ又はプログラマブルロジック回路の負荷を増大させることなく、適応フィルタ部13の処理能力を高めることができる。
なお、LMSアルゴリズムは、filtered−xLMSアルゴリズムでなくてもよく、他のLMSアルゴリズムが用いられるようにしてもよい。
その他、適応フィルタ部13(コンピュータ)のハードウエア構成やソフトウエア構成は一例であり、任意に変更および修正が可能である。
コンピュータの処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行するコンピュータを構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することでコンピュータを構成してもよい。
コンピュータの機能を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)にコンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介してコンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
本発明は、動力源から発生する騒音を制御するのに適用することができる。
1 音質制御システム、2 車両本体(本体装置)、3 エンジン、4 駆動部、10 基本周波数算出部、11 信号生成部、12 音声入力部、13 適応フィルタ部、13A,13B 適応フィルタ部、14 好み判定部、15 音声出力部、20 FIRフィルタ、21 濾波フィルタ、22,23 増幅器、24 加算器、25 LMS アルゴリズム部、30 加算器、40 ユニット(ノード)、100 動力機械

Claims (11)

  1. 動力源を駆動するパルス信号の基本周波数を算出する基本周波数算出部と、
    前記基本周波数の倍数次の周波数のうちの特定次数の周波数の正弦波信号を生成する信号生成部と、
    前記動力源の周囲の音を入力する音声入力部と、
    前記動力源を操作する操作者の操作情報に基づいて、深層学習により得られたルールに従って、前記操作者の音の好みを判定する好み判定部と、
    前記正弦波信号である参照信号と、前記音声入力部で入力された音声信号である誤差信号と、前記好み判定部で設定された収束係数とを入力し、LMSアルゴリズムに従ってフィルタ係数を調整し、前記動力源の周囲の音が前記動力源を操作する者の好みの音となる出力信号を出力する適応フィルタ部と、
    前記適応フィルタ部の出力信号に対応する音声を出力する音声出力部と、
    を備える音質制御システム。
  2. 前記好み判定部は、
    前記操作者の操作情報を用いた教師なし学習によって機械学習を行うことにより、前記操作者の音の好みを判定する、
    請求項1に記載の音質制御システム。
  3. 前記好み判定部は、
    自己組織化マップにより教師なし学習を行う、
    請求項2に記載の音質制御システム。
  4. 前記好み判定部は、
    前記操作者の操作情報を用いた教師あり学習によって機械学習を行うことにより、前記操作者の音の好みを判定する、
    請求項1に記載の音質制御システム。
  5. 前記好み判定部は、
    ニューラルネットワークにより教師あり学習を行う、
    請求項4に記載の音質制御システム。
  6. 前記動力源は、自動車両であり、
    前記操作者の操作情報は、前記自動車両の走行パターンを含む、
    請求項1から5のいずれか一項に記載の音質制御システム。
  7. 前記信号生成部は、1次の周波数の信号と2次の周波数の信号とを生成し、
    前記適応フィルタ部は、
    前記1次の周波数の信号を参照信号として入力するとともに前記音声入力部で入力された音声信号である誤差信号を入力し、LMSアルゴリズムに従ってフィルタ係数を調整し、前記動力源の周囲の音が前記動力源を操作する者の好みの音となる出力信号を出力する第1の適応フィルタと、
    前記2次の周波数の信号を参照信号として入力するとともに前記音声入力部で入力された音声信号である誤差信号を入力し、LMSアルゴリズムに従ってフィルタ係数を調整し、前記動力源の周囲の音が前記動力源を操作する者の好みの音となる出力信号を出力する第2の適応フィルタと、
    を備える、
    請求項1から6のいずれか一項に記載の音質制御システム。
  8. 前記第1の適応フィルタと前記第2の適応フィルタとは、並行して動作可能な別々のプロセッサ又はプログラマブルロジック回路に実装されている、
    請求項7に記載の音質制御システム。
  9. 前記動力源はエンジンであり、
    前記パルス信号は、前記エンジンの点火のタイミングを示す点火パルス信号である、
    請求項1から8のいずれか一項に記載の音質制御システム。
  10. 請求項1から9のいずれか一項に記載の音質制御システムと、
    動力源で発生する動力により動作する本体装置と、
    を備える動力機械。
  11. 深層学習により、動力源を操作する操作者の操作情報から前記操作者の音の好みを学習する学習工程と、
    前記動力源の操作中に、学習の結果に基づいて、前記操作者の操作情報から前記操作者の音の好みを判定し、前記動力源の操作を駆動するパルス信号の基本周波数の倍数次の周波数のうちの特定次数の周波数の正弦波信号である参照信号と、前記動力源の周囲の音の音声信号である誤差信号と、前記判定された音の好みにより設定された収束係数とを入力し、入力された信号に基づいて適応フィルタ係数を調整し、前記動力源の周囲の音を前記動力源を操作する者の好みの音に制御する音質制御工程と、
    を含む音質制御方法。
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