JP2019038265A - 表面保護フィルム、及びそれが貼合された光学部品 - Google Patents

表面保護フィルム、及びそれが貼合された光学部品 Download PDF

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Abstract

【課題】表面に凹凸がある光学用フィルムに対しても貼合でき、被着体への汚染が少なく、かつ、経時でも被着体に対する低い汚染性が変化せず、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供する。【解決手段】透明性を有する樹脂からなる基材フィルム1の片面に、アルカリ金属塩からなる帯電防止剤3と剥離剤とを含有する剥離剤層2が設けられ、基材フィルム1の他面に、粘着剤層4が設けられた表面保護フィルム5であって、アルカリ金属塩からなる帯電防止剤が、粘着剤層においては表面のみに存在し、粘着剤層を内側にしてロール状に巻回してなる表面保護フィルムの展開力が、0.03〜0.3N/50mmであり、剥離剤は、長鎖アルキル基の炭素数が8〜30である長鎖アルキル基含有剥離剤を含み、粘着剤層は、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物及び(メタ)アクリレート共重合体を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、光学部品(以下、光学用フィルムと称する場合もある。)の表面に貼合される、表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、被着体に対する汚染が少なく、かつ、経時でも被着体に対する汚染性が変化しない表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供することに関する。また、本発明は、光学部品である偏光板の構成部材が代替(TACフィルムからアクリルフィルムやポリエステルフィルムへの変更や、水系接着剤から紫外線硬化型接着剤への変更)しても、表面保護フィルムを剥離する時の剥離帯電圧を低く抑えた表面保護フィルム、及びそれが貼合された光学部品を提供するものである。
なお、本発明における光学部品とは、偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルムなどを指している。
偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム、等の光学用フィルム、及びそれを用いたディスプレイなどの光学製品を、製造、搬送する際には、該光学用フィルムの表面に表面保護フィルムを貼合して、後工程における表面の汚れや傷付きを防止することがなされている。製品である光学用フィルムの外観検査は、表面保護フィルムを剥がして、再び、貼合する手間を省いて作業効率を高めるため、表面保護フィルムを光学用フィルムに貼合したまま行うこともある。
従来から、基材フィルムの片面に、粘着剤層を設けた表面保護フィルムが、光学製品の製造工程において、傷や汚れの付着を防止するために、一般的に使用されている。表面保護フィルムは、微粘着力の粘着剤層を介して光学用フィルムに貼合される。粘着剤層を微粘着力とするのは、使用済みの表面保護フィルムを光学用フィルムの表面から剥離して取り除くときに、容易に剥離でき、且つ、粘着剤が、被着体である製品の光学用フィルムに付着して残留しないようにする(いわゆる、糊残りの発生を防ぐ)ためである。
近年、液晶ディスプレイパネルの生産工程において、光学用フィルムの上に貼合された表面保護フィルムを、剥離して取り除くときに発生する剥離帯電圧により、液晶ディスプレイの表示画面を制御するための、ドライバーIC等の回路部品が破壊される現象や、液晶分子の配向が損傷する現象が、発生件数は少ないながらも起きている。
また、液晶ディスプレイパネルの消費電力を低減させるため、液晶材料の駆動電圧が低くなってきており、これに伴って、ドライバーICの破壊電圧も低くなっている。最近では、剥離帯電圧を+0.7kV〜−0.7kVの範囲内にすることが求められてきている。
また、従来の偏光板はヨウ素を含浸したポリビニルアルコール(PVA)からなる偏光子の両側に、偏光子を保護するためにトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)を水系の接着剤で接着して偏光板を製造していたが、近年、TACフィルムの代わりに、アクリルフィルム、環状ポリオレフィンフィルムやポリエステルフィルムを用いた偏光板や、水性接着剤の代わりに紫外線硬化型接着剤を用いた偏光板も、使用されているようになっている。偏光板の構成材料が変化することにより、表面保護フィルムを剥離して取り除くときに発生する剥離帯電圧が、従来構成の偏光板を用いた時よりも高くなってしまう問題も出ている。
また、近年、3Dディスプレイ(立体視ディスプレイ)の普及に伴い、偏光板等の光学用フィルムの表面に、FPR(Film Patterned Retarder)フィルムを貼合したものがある。偏光板等の光学用フィルムの表面に貼合されていた表面保護フィルムを剥がした後に、FPRフィルムが貼合される。しかし、偏光板等の光学用フィルムの表面が、表面保護フィルムに使用している粘着剤や帯電防止剤で汚染されていると、FPRフィルムが接着し難いという問題がある。このため、当該用途に用いる表面保護フィルムには、被着体に対する汚染の少ないものが求められている。
一方、いくつかの液晶パネルメーカーにおいては、表面保護フィルムの被着体に対する汚染性の評価方法として、偏光板等の光学用フィルムに貼合されている表面保護フィルムを一度剥がし、気泡を混入させた状態で再貼合したものを所定条件で加熱処理し、その後、表面保護フィルムを剥がして被着体の表面を観察する方法が採用されている。このような評価方法では、被着体の表面汚染が微量であっても、気泡を混入させた部分と、表面保護フィルムの粘着剤が接していた部分とで、被着体の表面汚染の差があると、気泡の跡(気泡ジミと言うこともある)として残る。そのため、被着体の表面に対する汚染性の評価方法としては、非常に厳しい評価方法となる。近年、こうした厳しい評価方法による判定に合格できる、被着体の表面に対する汚染が極めて少ない表面保護フィルムが求められている。
表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムに貼合した後、被着体から表面保護フィルムを剥離する時に発生する、剥離帯電圧が高いことによる不具合を防止するため、剥離帯電圧を低く抑えるための、帯電防止剤を含む粘着剤層を用いた表面保護フィルムが、提案されている。
例えば、特許文献1には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、水酸基含有アクリル系ポリマー、ポリイソシアネートからなる粘着剤を用いた、表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献2には、イオン性液体と酸価が1.0以下のアクリルポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着シート類が開示されている。
また、特許文献3には、アクリルポリマー、ポリエーテルポリオール化合物、アニオン吸着性化合物により処理したアルカリ金属塩からなる粘着組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献4には、イオン性液体、アルカリ金属塩、ガラス転移温度0℃以下のポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
特開2005−131957号公報 特開2005−330464号公報 特開2005−314476号公報 特開2006−152235号公報
上記の特許文献1〜4に記載の表面保護フィルムでは、粘着剤層の内部に帯電防止剤が添加されている。そのため、粘着剤層の厚みが厚くなる程、また、被着体に貼り合わせた後の経過時間が経つ程、表面保護フィルムの貼合された被着体に対して、粘着剤層から被着体へ移行する帯電防止剤の量が多くなる傾向があった。また、被着体へ移行する帯電防止剤の量が多くなると、被着体である光学用フィルムの外観品位が低下したり、FPRフィルムを貼合する時に、FPRフィルムの接着性が低下したりする可能性がある。
こうした、粘着剤層から被着体へ移行する帯電防止剤の経時変化を少なくするために、粘着剤層の厚みを薄くすると、別の問題が生じる。例えば、ギラツキ防止のためアンチグレア処理した偏光板など、表面に凹凸のある光学用フィルムに使用した場合に、光学用フィルム表面の凹凸に粘着剤層が追従できずに気泡が混入したり、光学用フィルムと粘着剤層との接着面積が減ることにより粘着力が低下し、使用中に表面保護フィルムが浮いたり剥がれたりする問題がある。
また、粘着剤層から被着体へ移行する帯電防止剤の経時変化を少なくするために、粘着剤層に添加する帯電防止剤の添加量を減らすと、表面保護フィルムを、被着体から剥離して取り除くときに発生する剥離帯電圧が高くなり、ドライバーIC等の回路部品が破壊される現象や、液晶分子の配向が損傷する現象が発生する危険性がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、光学用フィルムの表面に貼合される表面保護フィルムであって、表面に凹凸がある光学用フィルムに対しても貼合でき、被着体に対する汚染が非常に少なく、かつ、経時でも被着体に対する低い汚染性が変化しない表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供することを課題とする。
また、本発明は、光学部品である偏光板の構成部材が代替(TACフィルムからアクリルフィルムやポリエステルフィルムへの変更や、水系接着剤から紫外線硬化型接着剤への変更)しても、表面保護フィルムを剥離する時の剥離帯電圧を低く抑えた表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供することを課題とする。
本発明者らは、これらの課題を解決するために鋭意検討を行なった。被着体に対する汚染が少なく、かつ汚染性の経時変化も少なくするためには、被着体を汚染している原因と推測される帯電防止剤の含有量を減量する必要がある。しかし、帯電防止剤の含有量を減量した場合には、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、剥離帯電圧が高くなってしまう。
そこで、本発明者らは、帯電防止剤の含有量を増加させないで、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑える方法について検討した。
本発明者らは、まず、帯電防止剤を含まない粘着剤組成物を、基材の片面に塗工・乾燥して粘着剤層を積層し、基材の他方の面に帯電防止剤を含有する剥離剤層を積層した表面保護フィルムを作成した。この後に、該表面保護フィルムを、粘着剤層が内側となるように巻回してロール状にすることにより、該剥離剤層に含まれる帯電防止剤の成分が、該粘着剤層の表面に転写され、該粘着剤層の表面のみに存在している状態となった。この表面保護フィルムを、一旦、被着体である光学用フィルムに貼合した後、被着体から剥離する時の剥離帯電圧が低く抑えられ、かつ、被着体を汚染し難いことを見出し、本発明を完成した。
本発明の表面保護フィルムは、基材の片面に、帯電防止剤を含まない粘着剤組成物を塗工・乾燥して粘着剤層を積層し、基材の他方の面に帯電防止剤を含有する剥離剤層を積層した後に、該表面保護フィルムを、粘着剤層が内側となるように巻回してロール状にすることにより、該粘着剤層の表面に、該剥離剤層に含まれる帯電防止剤の成分を、転写させる。本発明は、このロール状に巻回した状態の表面保護フィルムを、ロール状から巻き戻して被着体に貼合した場合に、被着体に対する汚染性を低く抑えた上、被着体である光学用フィルムから表面保護フィルムを剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑えることを技術思想としている。
上記の課題を解決するため、本発明は、透明性を有する樹脂からなる基材フィルムの片面に、アルカリ金属塩からなる帯電防止剤と剥離剤とを含有する剥離剤層が設けられ、前記基材フィルムの他面に、粘着剤層が設けられた表面保護フィルムであって、前記剥離剤の固形分100重量部に対して、前記帯電防止剤の固形分を5〜60重量部の割合で含有してなり、前記基材フィルムが、前記剥離剤層と前記粘着剤層とが接するように、前記粘着剤層を内側にしてロール状に巻回してなり、前記粘着剤層が、架橋された(メタ)アクリレート共重合体を含有するアクリル系粘着剤層であり、前記アルカリ金属塩からなる帯電防止剤の成分が、前記粘着剤層においては表面のみに転写されて存在していることを特徴とする表面保護フィルムを提供する。
また、前記粘着剤層が、架橋された(メタ)アクリレート共重合体を含有するアクリル系粘着剤層であることが好ましい。
また、表面保護フィルムのロール状に巻回した状態からの展開力が、0.03〜0.3N/50mmであることが好ましい。
また、被着体である光学用フィルムから、前記粘着剤層を剥離する際の表面電位が、+0.7kV〜−0.7kVであることが好ましい。
また、前記基材フィルムが、前記剥離剤層と前記粘着剤層とが接するように、前記粘着剤層を内側にしてロール状に巻回してなることが好ましい。
また、本発明は、上記の表面保護フィルムが、前記粘着剤層を介して、貼合されてなる光学部品を提供する。
本発明の表面保護フィルムは、光学用フィルムの表面に貼合される表面保護フィルムであって、表面に凹凸がある光学用フィルムに対しても貼合できる。
また、本発明によれば、被着体に対する汚染が非常に少なく、かつ、経時でも被着体に対する汚染性が変化しない表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供することができる。
さらに、本発明によれば、光学部品である偏光板の構成部材が変化(TACフィルムからアクリルフィルム、環状ポリオレフィンフィルムやポリエステルフィルムへの変更や、水系接着剤から紫外線硬化型接着剤への変更)しても、表面保護フィルムを剥離する時の剥離帯電圧を低く抑えた表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供できる。
また、本発明のロール状に巻回した表面保護フィルムは、基材フィルムを、剥離剤層と粘着剤層とが接するように、前記粘着剤層を内側にしてロール状に巻いた表面保護フィルムであり、前記アルカリ金属塩からなる帯電防止剤の成分が、前記剥離剤層から前記粘着剤層の表面に転写され、前記粘着剤層の表面のみに存在している。
すなわち、本発明は、ロール状に巻回した表面保護フィルムから巻き戻した表面保護フィルムを被着体に貼合した後、被着体から表面保護フィルムを剥離するときの剥離帯電圧が低減され、かつ、剥離帯電防止性能の経時変化および被着体に対する汚染が少ないことから、被着体である光学部品の生産性の向上と、歩留まりの向上を図ることができるという特徴を有している。
本発明のロール状に巻回した状態の、表面保護フィルムを示した概念断面図である。 本発明の表面保護フィルムをロール状に巻回した状態での、剥離剤層と粘着剤層とが接した状態を表した概念断面図である。 本発明の表面保護フィルムを、光学部品に貼合した実施例の1つを示す断面図である。
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルム10を示した概念断面図である。図1の右側に示す、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルム10は、本発明に係わる表面保護フィルム5を、粘着剤層4を内側にしてロール状に巻回したもの(表面保護フィルム5のロール体)である。また、図1の左側は、矢印方向にロール状から巻き戻した表面保護フィルム5を、厚み方向に拡大して示した概念断面図である。
この表面保護フィルム5は、透明な基材フィルム1の一方の面に、アルカリ金属塩からなる帯電防止剤3を含有する剥離剤層2を有し、基材フィルム1の他方の面に、粘着剤層4が形成されている。基材フィルム1の一方の面に剥離剤層2を有し、基材フィルムの他方の面に、粘着剤層4を有する表面保護フィルム5を、剥離剤層2と粘着剤層4とが接するように、粘着剤層4を内側にしてロール状に巻回することにより、剥離剤層2に含有する帯電防止剤3の成分が、粘着剤層4の表面に転写され、粘着剤層4の表面のみに存在している、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルム10が得られる。
本発明に係わる表面保護フィルム5に使用される基材フィルム1としては、透明性及び可撓性を有する樹脂からなる基材フィルムが用いられる。これにより、表面保護フィルム5を、被着体である光学部品に貼合した状態で、光学部品の外観検査を行うことができる。基材フィルム1として用いる透明性を有する樹脂からなるフィルムは、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムが用いられる。ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有し、かつ光学適性を有するものであれば、他の樹脂からなるフィルムも使用可能である。基材フィルム1は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率や、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方向の配向角度を、特定の値に制御してもよい。
本発明に係わる表面保護フィルム5に使用される基材フィルム1の厚みは、特に限定はないが、例えば、12〜100μm程度の厚みが好ましく、20〜75μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、基材フィルム1の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
本発明に係わる表面保護フィルム5に形成されている剥離剤層2は、アルカリ金属塩からなる帯電防止剤3を含有する剥離剤を用いて形成されている。剥離剤としては、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル基含有剥離剤、フッ素系剥離剤、シリコーンまたはフッ素と有機材料との共重合体からなる剥離剤、有機系樹脂と前記剥離剤との混合物からなる剥離剤などが挙げられる。
シリコーン系剥離剤は、付加反応型、縮合反応型、カチオン重合型、ラジカル重合型などの、公知のシリコーン系剥離剤が挙げられる。付加反応型シリコーン系剥離剤として市販されている製品には、例えば、KS−776A、KS−847T、KS−779H、KS−837、KS−778、KS−830(信越化学工業(株)製)、SRX−211、SRX−345、SRX−357、SD7333、SD7220、SD7223、LTC−300B、LTC−350G、LTC−310(東レダウコーニング(株)製)などが挙げられる。縮合反応型として市販されている製品には、例えば、SRX−290、SYLOFF−23(東レダウコーニング(株)製)などが挙げられる。カチオン重合型として市販されている製品には、例えば、TPR−6501、TPR−6500、UV9300、VU9315、UV9430(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製)、X62−7622(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。ラジカル重合型として市販されている製品には、例えば、X62−7205(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。また、これらの剥離剤に剥離性能の調整のために、シリコーンレジン(R3SiO1/2単位とSiO4/2単位からなるケイ素樹脂)やシリカ、エチルセルロースなどを添加しても良い。
長鎖アルキル基含有剥離剤には、長鎖アルキル基含有アミノアルキッド樹脂、長鎖アルキル基含有アクリル樹脂、長鎖脂肪族ペンダント型樹脂(ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコール共重合物、ポリエチレンイミン、および水酸基含有セルロース誘導体からなる化合物群の中から選ばれる少なくとも1種の活性水素含有ポリマーと、長鎖アルキル基含有イソシアネートとの反応生成物)などの、公知の長鎖アルキル基含有剥離剤が挙げられる。硬化剤、紫外線開始剤を添加して硬化反応を行う剥離剤でもよいし、溶剤を揮発させて固化する剥離剤でもよい。
「長鎖アルキル基」としては、炭素数が8〜30のアルキル基が好ましく、炭素数が10以上、12以上、18以下、24以下等でもよく、中でも直鎖状のアルキル基が好ましい。具体例としては、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基、ドデシル基、トリデシル基、ミリスチル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、セチル基、パルミチル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ドコシル基等から選択される、1種又は2種以上のアルキル基が挙げられる。
長鎖アルキル基含有剥離剤として市販されている製品には、例えば、アシオ産業株式会社製アシオレジン(登録商標)RA−30、一方社油脂工業株式会社製ピーロイル(登録商標)1010、ピーロイル1010S、ピーロイル1050、ピーロイルHT、中京油脂株式会社製レゼムN−137、花王株式会社製エキセパール(登録商標)PS−MA、日立化成株式会社製テスファイン(登録商標)303等が挙げられる。
フッ素系剥離剤としては、パーフルオロアルキル基含有ビニルエーテルポリマーや、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレンなどのフッ素樹脂をバインダー樹脂中に分散させたコーティーング剤などが挙げられる。
シリコーンまたはフッ素と有機材料との共重合体からなる剥離剤としては、アクリル樹脂にシリコーンやフッ素樹脂をグラフト共重合したもの、アルキッド樹脂にシリコーンを共重合したものなどが挙げられる。シリコーンまたはフッ素と有機材料との共重合体からなる剥離剤として市販されている製品には、例えば、東亜合成株式会社製サイマック(登録商標)、日立化成ポリマー株式会社製テスファイン(登録商標)などが挙げられる。
有機系樹脂と前記剥離剤との混合物からなる剥離剤に使用される有機系樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン)、ポリビニルアルコール、セルロース系樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
本願発明の表面保護フィルムに使用する剥離剤の選定は、表面保護フィルムの展開力を考慮して行う必要がある。本願発明に係わる表面保護フィルムにおいて、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルムでは、剥離剤層と粘着剤層とが接触している。本願発明に係わる表面保護フィルムを使用する際に、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルムから繰り出し、使用することになるが、表面保護フィルムを繰り出す際の展開力が大きいと、表面保護フィルムを繰り出し時の作業性が悪くなったり、表面保護フィルムの粘着剤層の表面が荒れる(表面が平滑でなく、凸凹になってしまう)ことで、被着体に貼合する際に気泡を噛み易くなったりするなどの懸念がある。一方、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルムから繰り出す時の展開力が小さすぎると、保管や輸送時に表面保護フィルムのロール形状が崩れたり、表面保護フィルムの使用時に、表面保護フィルムが必要以上に繰り出され、被着体との貼合作業時にシワが混入したり、表面保護フィルムと被着体との貼合品がカールしてしまうなどの不具合が考えられる。このため、表面保護フィルムのロール状態からの展開力は0.03〜0.3N/50mmであることが好ましい。使用する粘着剤に応じて、表面保護フィルムの展開力が上記になるような剥離剤を選定すればよい。
また、本発明に係わる表面保護フィルム5を、粘着剤層4を介して光学部品6に貼合した際に(図3参照)、表面保護フィルム5の表面に剥離剤層2が表出している。ところで、表面保護フィルムを、偏光板を保護する用途に使用する場合には、偏光板の出荷時などにおいて、表面保護フィルムを貼合した偏光板を所定のサイズに裁断し、裁断した表面保護フィルム付きの偏光板を複数枚重ねる場合がある。その際に、剥離剤層が滑りにくいと、表面保護フィルム付きの偏光板を1枚取り上げる際に複数枚取り上げてしまうという問題が生じる。また、剥離剤層が滑り過ぎると、表面保護フィルム付きの偏光板を複数枚重ねた際に、偏光板が滑ってしまい、重ねにくくなるという問題も生じる。このため、剥離剤層を構成する剥離剤を選定する際には、滑り性も考慮する必要がある。
剥離剤層2に含まれる帯電防止剤3としては、剥離剤溶液に対して分散性の良いもので、かつ、剥離剤の硬化を阻害しないものが好ましい。また、剥離剤層2と接触している粘着剤層4の表面に、剥離剤層2に含まれている帯電防止剤3の成分を転写して、粘着剤層4の表面に帯電防止の機能を付与するため、剥離剤と反応しない帯電防止剤が良い。こうした帯電防止剤としては、アルカリ金属塩が好適である。
アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムからなる金属塩が挙げられる。具体的には、例えば、Li、Na、Kより選択されるカチオンと、Cl、Br、I、BF 、PF 、SCN、ClO 、CFSO 、(CFSO、(CSO、(CFSOより選択されるアニオンから構成される金属塩が好適に用いられる。アルカリ金属塩の具体例としては、LiBr、LiI、LiBF、LiPF、LiSCN、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOCなどのリチウム塩が好ましく用いられる。これらのアルカリ金属塩は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。イオン性物質の安定化のため、ポリオキシアルキレン構造を含有する化合物を添加しても良い。
剥離剤に対する帯電防止剤の添加量は、帯電防止剤の種類や、剥離剤との親和性の度合いにより異なるが、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、望まれる剥離帯電圧、被着体に対する汚染性、粘着特性などを考慮して設定すればよい。剥離剤がシリコーン系剥離剤の場合には、シリコーン系剥離剤と、帯電防止剤との混合比率(重量比)は、例えば、シリコーン系剥離剤の固形分100に対して、帯電防止剤を固形分として5〜100の割合とするのが好ましい値であり、5〜60の割合とするのが更に好ましい。帯電防止剤の固形分換算の添加量が、シリコーン系剥離剤の固形分100に対して5の割合より少ないと、粘着剤層の表面への帯電防止剤の転写量も少なくなり、粘着剤に帯電防止の機能が発揮され難くなる。また、帯電防止剤の固形分換算の添加量が、シリコーン系剥離剤の固形分100に対して100の割合を超えると、帯電防止剤とともにシリコーン系剥離剤の成分も、粘着剤層の表面に転写されてしまうため、粘着剤の粘着特性を低下させる可能性がある。
剥離剤層2は、少なくとも、剥離剤と、該剥離剤と反応しない帯電防止剤とからなる。剥離剤と、帯電防止剤との混合方法には、特に限定はない。剥離剤に、帯電防止剤を添加して、混合した後に剥離剤硬化用の触媒を添加・混合する方法、剥離剤を、あらかじめ有機溶剤で希釈したのちに帯電防止剤と剥離剤硬化用の触媒を添加、混合する方法、剥離剤をあらかじめ有機溶剤に希釈後、触媒を添加・混合し、その後帯電防止剤を添加、混合する方法など、いずれの方法でも良い。また、剥離剤層2は、必要に応じて、シランカップリング剤などの密着向上剤、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物などの帯電防止効果を補助する材料、セルロース系化合物などの印字性を付与する材料、滑り性を調整する材料、などを含有しても良い。
基材フィルム1の表面に、剥離剤層2を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
本発明に係わる表面保護フィルム5に形成されている粘着剤層4においては、剥離剤層2に含まれる帯電防止剤3の成分が、粘着剤層4の内部(表面以外)には存在せず、粘着剤層4の表面のみに存在している。これにより、表面保護フィルム5の、剥離帯電防止性能の経時変化および被着体に対する汚染を抑制することができる。
本発明に係わる表面保護フィルム5に形成されている粘着剤層4は、被着体の表面に接着し、用済み後に簡単に剥離でき、かつ、被着体を汚染しにくい粘着剤層であれば特に限定されるものではない。本発明に係わる表面保護フィルム5を、光学用フィルムに貼合した後の耐久性が求められることなどを考慮すると、(メタ)アクリレート共重合体を架橋させてなるアクリル系粘着剤層であることが好ましい。
(メタ)アクリレート共重合体としては、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレートなどの主モノマーと、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどのコモノマー、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−メチロールメタクリルアミドなどの官能性モノマーを共重合した共重合体を挙げることができる。(メタ)アクリレート共重合体は、主モノマー及び他のモノマーがすべて(メタ)アクリレートであってもよく、主モノマー以外のモノマーとして、(メタ)アクリレート以外のモノマーを1種又は2種以上含んでもよい。
また、(メタ)アクリレート共重合体に、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物を共重合したり、混合してもよい。共重合可能なポリオキシアルキレン基を含有する化合物としては、ポリエチレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリエチレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート、ポリプロピレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリプロピレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(400)メタクリレートなどが挙げられる。これらのポリオキシアルキレン基を含有するモノマーを、前記(メタ)アクリレート共重合体の主モノマーや官能性モノマーと共重合することにより、ポリオキシアルキレン基を含有する共重合体からなる粘着剤を得ることができる。
(メタ)アクリレート共重合体に混合可能なポリオキシアルキレン基を含有する化合物としては、ポリオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリレート共重合体が好ましく、ポリオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリル系モノマーの重合物がより好ましく、例えば、ポリエチレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリエチレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート、ポリプロピレングリコール(400)モノアクリル酸エステル、ポリプロピレングリコール(400)モノメタクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(400)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(400)メタクリレートなどの重合物が挙げられる。これらのポリオキシアルキレン基を含有する化合物を、前記(メタ)アクリレート共重合体と混合することにより、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物が添加された粘着剤を得ることができる。
粘着剤層4に添加する硬化剤としては、(メタ)アクリレート共重合体を架橋させる架橋剤として、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。また、粘着付与剤としては、ロジン系、クマロンインデン系、テルペン系、石油系、フェノール系などが挙げられる。
本発明に係わる表面保護フィルム5に形成されている粘着剤層4の厚みは、特に限定はないものの、例えば、5〜40μm程度の厚みが好ましく、10〜30μm程度の厚みがより好ましい。表面保護フィルムの、被着体の表面に対する剥離強度(粘着力)が、0.03〜0.3N/25mm程度の、微粘着力を有する粘着剤層4であることが、被着体から表面保護フィルムを剥がす時の操作性に優れることから好ましい。
本発明に係わる表面保護フィルム5の基材フィルム1に、粘着剤層4を形成する方法は、公知の方法で行えばよく、特に限定されない。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
上記の構成を有する本発明に係わる表面保護フィルム5は、被着体である光学用フィルムから粘着剤層4を剥離する際の表面電位が、+0.7kV〜−0.7kVであることが好ましい。さらに、表面電位が、+0.5kV〜−0.5kVであることがより好ましく、表面電位が、+0.2kV〜−0.2kVであることが特に好ましい。この表面電位は、剥離剤層2に含有される帯電防止剤3の種類、添加量等を加減することによって調整できる。表面保護フィルム5を被着体である光学用フィルムから剥離した後の、被着体である光学用フィルムの表面汚染性を考慮して、剥離剤層2の帯電防止剤3の種類、添加量を調整すればよい。
図2は、本発明の表面保護フィルム5をロール状に巻回した状態での、剥離剤層2と粘着剤層4とが接した状態を表した概念断面図である。基材フィルム1の一方の面に、帯電防止剤3を含有する剥離剤層2が形成されてなり、基材フィルム1の他方の面に、帯電防止剤3を含有しない粘着剤層4が形成されてなる表面保護フィルム5を、粘着剤層4を内側にしてロール状に巻回した状態の表面保護フィルム10とすることにより、ロール体の半径方向で、剥離剤層2と粘着剤層4とが接した状態となる。このことにより、剥離剤層2に含有している帯電防止剤(符号3)の成分の一部が、粘着剤層4の表面へ転写する。こうして得られたロール状に巻回した状態の表面保護フィルム10から繰り出した表面保護フィルム5を、光学部品6に貼合した状態を示したものが、図3である。帯電防止剤3の成分が、剥離剤層2から粘着剤層4の表面に転写されることにより、帯電防止剤3の成分を転写する前の粘着剤層4に比べて、表面保護フィルム5を被着体に貼合した後、被着体から表面保護フィルム5を剥離する際の剥離帯電圧が低減される。なお、図1の表面保護フィルム5を、被着体から剥離する際の剥離帯電圧は、公知の方法で測定可能である。例えば、表面保護フィルム5を、偏光板などの被着体に貼り合わせた後、高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分40mの剥離速度で表面保護フィルム5を剥離しながら、被着体表面の表面電位を、表面電位計(キーエンス(株)製)を用いて10ms毎に測定したときの、表面電位の絶対値の最大値を、剥離帯電圧(kV)として測定する。
本発明に係わるロール状に巻回した状態の表面保護フィルム10では、ロール状から巻き戻した表面保護フィルム5を、被着体に貼合するに当たり、この粘着剤層4の表面に転写された帯電防止剤3が、被着体の表面に接触する。そのことにより、再度、被着体から表面保護フィルム5を剥がす時の、剥離帯電圧を低く抑えることができる。また、本発明に係わるロール状に巻回した状態の表面保護フィルム10では、剥離剤層2を外側、粘着剤層4を内側にしているので、ロールの状態において、粘着剤層4の表面が、露出されることなく保護される。ロール状から表面保護フィルム5を巻き戻した後も、剥離剤層2が基材フィルム1に一体化しているので、剥離剤層2の除去や廃棄が不要である。
図3は、本発明の表面保護フィルム5を、光学部品に貼合した実施例の1つとして、表面保護フィルム付きの光学部品7を示す断面図である。表面保護フィルム付きの光学部品7は、本発明の表面保護フィルム5を、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルム10から繰り出し、その粘着剤層4を介して被着体である光学部品6に貼合することで得られる。光学部品6としては、偏光板、位相差板、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板、レンズフィルム兼用の偏光板などの、光学用フィルムが挙げられる。このような光学部品は、液晶表示パネルなどの液晶表示装置、各種計器類の光学系装置、等の構成部材として使用される。また、光学部品としては、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルムなどの、光学用フィルムも挙げられる。
本発明の表面保護フィルム5を、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルム10から繰り出し、被着体である光学部品(光学用フィルム)に貼合した後、被着体から表面保護フィルム5を剥離除去するとき、剥離帯電圧を充分に低く抑制することができる。そのため、ドライバーIC、TFT素子、ゲート線駆動回路などの回路部品を破壊する恐れがなく、液晶表示パネル等を製造する工程での生産効率を高め、生産工程の信頼性を保つことができる。
次に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
(表面保護フィルムの作製)
長鎖アルキル基含有剥離剤(日立化成株式会社製、品名:テスファイン303)3.125重量部、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの10%酢酸エチル溶液7.5重量部、トルエンと酢酸エチルの50:50の混合溶媒89.375重量部、触媒(日立化成株式会社製、品名:ドライヤー900)0.09重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、実施例1の剥離剤層を形成する塗料を調整した。
一方、2−エチルヘキシルアクリレート90重量部、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート7重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート3重量部の共重合体からなる粘着剤の40%酢酸エチル溶液100重量部に対して、イソシアネート系硬化剤(東ソー社製コロネート(登録商標)HX)2重量部、を撹拌・混合して、実施例1の粘着剤組成物を調合した。
厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、実施例1の剥離剤層を形成する塗料を、乾燥後の厚みが0.2μmになるようにメイヤーバーにて塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥して剥離剤層を形成した。次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離剤層を形成していない表面に、調合した粘着剤組成物を乾燥後の厚みが20μmとなるように、塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、得られた、基材フィルムの一方の面に剥離剤層が形成され、他方の面に粘着剤層が形成されたフィルムを、剥離剤層と粘着剤層とが接するように、粘着剤層を内側にしてロール状に巻回した。得られたロール状に巻回した粘着フィルムを40℃の環境下で5日間保温し、粘着剤層を硬化させて、実施例1のロール状に巻回した状態の表面保護フィルムを得た。
(実施例2)
長鎖アルキル基含有剥離剤(一方社油脂工業株式会社製、品名:ピーロイルHT)8.33重量部、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの10%酢酸エチル溶液7.5重量部、トルエンと酢酸エチルの50:50の混合溶媒84.17重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、実施例2の剥離剤層を形成する塗料を調整した。剥離剤層を形成する塗料を実施例2の塗料にした以外は実施例1と同様にして、実施例2のロール状に巻回した状態の表面保護フィルムを得た。
(実施例3)
エチルセルロース(ダウケミカル社製、品名:エトセルFP100)の10%トルエン溶液14重量部、付加反応型のシリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−345)0.67重量部、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの10%酢酸エチル溶液7.5重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒77.83重量部、白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−212)の10%トルエン溶液0.07重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、実施例3の剥離剤層を形成する塗料を調整した。剥離剤層を形成する塗料を実施例3の塗料にした以外は実施例1と同様にして、実施例3のロール状に巻回した状態の表面保護フィルムを得た。
(実施例4)
付加反応型のシリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−345)5重量部、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの10%酢酸エチル溶液7.5重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒87.5重量部、白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−212)0.05重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、実施例4の剥離剤層を形成する塗料を調整した。剥離剤層を形成する塗料を実施例4の塗料にした以外は実施例1と同様にして、実施例4のロール状に巻回した状態の表面保護フィルムを得た。
(比較例1)
帯電防止剤であるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを添加しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1のロール状に巻回した状態の表面保護フィルムを得た。
(比較例2)
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを剥離剤に添加する代わりに、粘着剤側にリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを、40%酢酸エチル溶液100重量部に対して、0.67重量部添加した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のロール状に巻回した状態の表面保護フィルムを得た。
以下、評価試験の方法および結果について示す。
〈表面保護フィルムの展開力の測定方法〉
ロール状に巻回した状態の表面保護フィルムから、巻き戻した表面保護フィルムのサンプルを2層重なった状態で切り出し、幅50mm、長さ150mmに裁断する。23℃×50%RHの試験環境下、引張試験機を用いて300mm/分の剥離速度で180°の方向に、剥離したときの強度を測定し、これを表面保護フィルムの展開力(N/50mm)とした。
(剥離剤層および粘着剤層の表面抵抗率)
ロール状から巻き戻した、表面保護フィルムのサンプルの剥離剤層および粘着剤層の表面抵抗率(Ω/□)を、高性能高抵抗率計(三菱化学アナリテック社製ハイレスタ(登録商標)−UP)を用いて、印加電圧100V、測定時間30秒の条件にて測定した。
〈表面保護フィルムの粘着力の測定方法〉
偏光子(ヨウ素を含有したポリビニルアルコールフィルム)に、アクリルフィルムを、紫外線硬化型接着剤を用いて貼合した、アンチグレア低反射処理した偏光板(AG−LR偏光板)を、被着体とした。この偏光板を、ガラス板の表面に、貼合機を用いて両面粘着テープにより貼合した。その後、偏光板の表面のアクリルフィルム上に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、引張試験機を用いて300mm/分の剥離速度で180°の方向に、表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを粘着力(N/25mm)とした。
〈表面保護フィルムの剥離帯電圧の測定方法〉
偏光子(ヨウ素を含有したポリビニルアルコールフィルム)に、アクリルフィルムを、紫外線硬化型接着剤を用いて貼合した、アンチグレア低反射処理した偏光板(AG−LR偏光板)を、被着体とした。この偏光板を、ガラス板の表面に、貼合機を用いて両面粘着テープにより貼合した。その後、偏光板の表面のアクリルフィルム上に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分40mの剥離速度で表面保護フィルムを剥離しながら、前記偏光板表面の表面電位を、表面電位計(キーエンス(株)製)を用いて10ms毎に測定したときの、表面電位の絶対値の最大値を、剥離帯電圧(kV)とした。
〈表面保護フィルムの表面汚染性の確認方法〉
偏光子(ヨウ素を含有したポリビニルアルコールフィルム)に、アクリルフィルムを、紫外線硬化型接着剤を用いて貼合した、アンチグレア低反射処理した偏光板(AG−LR偏光板)を、被着体とした。この偏光板を、ガラス板の表面に、貼合機を用いて両面粘着テープにより貼合した。その後、偏光板の表面のアクリルフィルム上に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に3日および30日保管した。その後、表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面における汚染の有無を目視にて観察し、表面汚染性を確認した。表面汚染性の判定基準として、偏光板に汚染の移行が無かった場合を(○)とし、偏光板に汚染の移行が確認された場合を(×)とした。
得られた実施例1〜4及び比較例1〜2の、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルムについて、測定した測定結果を表1に示した。「2EHA」は、2−エチルヘキシルアクリレートを、「HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートを、「#400G」はメトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレートを、「AS剤(1)」はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを、「AS剤(2)」は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを、「303」はテスファイン303を、「ドライヤー」はドライヤー900を、「HT」はピーロイルHTを、「FP−100」はエトセルFP100を、「SRX−345」はSRX−345を、「SRX−211」はSRX−211を、「SRX212」は白金触媒SRX−212を、それぞれ意味する。また、表面抵抗率の「3.7E11」は3.7×1011を、「オーバーレンジ」は測定機の測定限界を超えてしまうことを意味し、1.0×1013Ω/□以上を意味する。
Figure 2019038265
表1に示した測定結果から、以下のことが分かる。
本発明に係わる実施例1〜4の、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルムは、ロール状から巻き戻して使用する際に、適度な粘着力があり、被着体の表面に対する汚染がない。なおかつ、被着体がアクリルフィルムを用いた偏光板であっても、表面保護フィルムを、一旦、被着体に貼合した後、被着体から剥離する時の剥離帯電圧が低い。
一方、剥離剤層に帯電防止剤を添加しなかった比較例1の、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルムは、ロール状から巻き戻した表面保護フィルムを、一旦、被着体に貼合した後、被着体から剥離する時の剥離帯電圧が高くなった。また、剥離剤層に帯電防止剤を含有させるのに代えて、粘着剤層に帯電防止剤を含有させた比較例2の、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルムは、ロール状から巻き戻した表面保護フィルムを、一旦、被着体に貼合した後、被着体から剥離する時の剥離帯電圧が低く良好であるが、表面保護フィルムを剥離した後の、被着体に対する汚染が多くなった。
すなわち、比較例1〜2の、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルムは、剥離帯電圧の低減と、被着体に対する低汚染性とを両立することが難しい。他方、剥離剤層に帯電防止剤を添加し、粘着剤層の表面のみに帯電防止剤の成分を転写した実施例1〜4の、ロール状に巻回した状態の表面保護フィルムは、剥離帯電圧の低減と、被着体に対する低汚染性との両立が良好であった。
本発明の表面保護フィルムは、例えば、偏光板、位相差板、レンズフィルム、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、透明導電性フィルムなどの光学用フィルム、その他、各種の光学部品等の生産工程などにおいて、該光学部品等の表面に貼合して、表面を保護するために用いることができる。また、本発明の表面保護フィルムは、被着体である光学部品(光学用フィルム)に貼合した後、被着体から表面保護フィルムを剥離する時に発生する剥離帯電圧を低く抑制でき、かつ、剥離帯電防止性能の経時変化および被着体に対する汚染が少なく、生産工程の歩留まりを向上させることができ、産業上の利用価値が大である。
1…基材フィルム、2…剥離剤層、3…帯電防止剤、4…粘着剤層、5…表面保護フィルム、6…光学部品(光学用フィルム)、7…表面保護フィルム付きの光学部品、10…ロール状に巻回した状態の表面保護フィルム。

Claims (3)

  1. 透明性を有する樹脂からなる基材フィルムの片面に、アルカリ金属塩からなる帯電防止剤と剥離剤とを含有する剥離剤層が設けられ、前記基材フィルムの他面に、粘着剤層が設けられた表面保護フィルムであって、
    前記アルカリ金属塩からなる帯電防止剤が、前記粘着剤層においては表面のみに存在し、
    前記基材フィルムが、前記剥離剤層と前記粘着剤層とが接するように、前記粘着剤層を内側にしてロール状に巻回してなり、
    前記表面保護フィルムのロール状に巻回した状態からの展開力が、0.03〜0.3N/50mmであり、
    前記剥離剤は、長鎖アルキル基の炭素数が8〜30である長鎖アルキル基含有剥離剤を含み、
    前記粘着剤層は、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物及び(メタ)アクリレート共重合体を含むアクリル系粘着剤層であることを特徴とする表面保護フィルム。
  2. 被着体である光学用フィルムから、前記粘着剤層を剥離する際の表面電位が、+0.7kV〜−0.7kVであることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
  3. 請求項1又は2に記載の表面保護フィルムが、前記粘着剤層を介して、貼合されてなる光学部品。
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