JP2019034917A - 血小板表面抗原と間葉系細胞表面抗原を共発現する血小板様細胞を含む創傷治癒促進剤 - Google Patents

血小板表面抗原と間葉系細胞表面抗原を共発現する血小板様細胞を含む創傷治癒促進剤 Download PDF

Info

Publication number
JP2019034917A
JP2019034917A JP2017158702A JP2017158702A JP2019034917A JP 2019034917 A JP2019034917 A JP 2019034917A JP 2017158702 A JP2017158702 A JP 2017158702A JP 2017158702 A JP2017158702 A JP 2017158702A JP 2019034917 A JP2019034917 A JP 2019034917A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
platelet
cell
cell population
wound healing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017158702A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6999918B2 (ja
Inventor
由美子 松原
Yumiko Matsubara
由美子 松原
池田 康夫
Yasuo Ikeda
康夫 池田
圭一 戸澤
Keiichi Tozawa
圭一 戸澤
友佳子 宇留賀
Yukako Uruga
友佳子 宇留賀
真樹 矢澤
Maki Yazawa
真樹 矢澤
泰昌 森
Yasumasa Mori
泰昌 森
和生 貴志
Kazuo Kishi
和生 貴志
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Keio University
Original Assignee
Keio University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Keio University filed Critical Keio University
Priority to JP2017158702A priority Critical patent/JP6999918B2/ja
Priority to US16/162,546 priority patent/US11712451B2/en
Publication of JP2019034917A publication Critical patent/JP2019034917A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6999918B2 publication Critical patent/JP6999918B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P17/00Drugs for dermatological disorders
    • A61P17/02Drugs for dermatological disorders for treating wounds, ulcers, burns, scars, keloids, or the like
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K35/00Medicinal preparations containing materials or reaction products thereof with undetermined constitution
    • A61K35/12Materials from mammals; Compositions comprising non-specified tissues or cells; Compositions comprising non-embryonic stem cells; Genetically modified cells
    • A61K35/14Blood; Artificial blood
    • A61K35/19Platelets; Megacaryocytes

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Developmental Biology & Embryology (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Dermatology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

【課題】本発明は、創傷の治癒をより効果的に促進する、より実用的な創傷治癒促進剤等を提供することにあり、より詳細には、末梢血血小板よりも多量に入手しやすく、かつ、末梢血血小板よりも優れた創傷治癒効果を有する、より実用的な創傷治癒促進剤等を提供することを特徴とする。【解決手段】1種又は2種以上の血小板表面マーカーと1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを共発現する血小板様細胞集団を用いることを特徴とする。かかる血小板様細胞集団を含有する創傷治癒促進剤は、創傷の治癒をより効果的に促進する、より実用的な創傷治癒促進剤である。かかる血小板様細胞集団は、末梢血血小板よりも多量に入手しやすく、かつ、末梢血血小板よりも優れた創傷治癒効果を有している。【選択図】なし

Description

本発明は、血小板表面抗原と間葉系細胞表面抗原を共発現する血小板様細胞を含む創傷治癒促進剤等に関する。
創傷は、外傷、火傷、血液循環不良等の様々な原因によって形成される。創傷の治癒過程は、一般に、血液凝固期、炎症期、増殖期、成熟期の4つのステージに分類される。血液凝固期には、凝固因子、血小板により凝固した血液が凝血塊となり創傷を一時的に塞ぎ、血小板から血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF−β)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの増殖因子・サイトカインが放出される。
炎症期とは、一般に、受傷直後から3〜5日間、炎症反応が見られる期間をいう。炎症期は、創傷治癒のための準備がなされる時期であり、創傷治癒を妨げる様々な因子が、好中球やマクロファージなどの炎症細胞によって除去される。始めに、好中球が遊走してタンパク質分解酵素を含む顆粒を放出する。タンパク質分解酵素は、創傷に付着した細菌や異物、及び、損傷した組織等を消化分解する。好中球は、通常、受傷の数分後から創傷に浸潤し、3日以内に消退する。好中球の出現時期といくらか重なる時期である受傷後2日目から、マクロファージが出現する。マクロファージは細菌、異物及び壊死組織を貪食すると共に、増殖因子やサイトカインを産生し、血管内皮細胞、線維芽細胞及び表皮細胞の増殖を促す。
増殖期とは、一般に、炎症期に引き続く2〜3週間の期間をいう。増殖期は、肉芽組織が形成され、次いで上皮化が進行する時期である。肉芽組織は、新生血管、線維芽細胞、マクロファージ、コラーゲン繊維及び間質細胞等から構成される。創傷内に遊走した線維芽細胞は、マクロファージなどが産生する増殖因子やサイトカインによって活性化され、コラーゲン前駆体を合成し、細胞外に分泌する。細胞外に分泌されたコラーゲン前駆体は、特定のペプチダーゼにより切断されてコラーゲン分子となる。その後、コラーゲン分子内に分子内架橋が形成されてコラーゲン繊維となる。
成熟期とは、一般に、受傷後、2週間経過後以降の期間をいう。成熟期は、創傷治癒の最終段階に当たる。成熟期は、創傷の収縮が起こり、細胞外マトリックスの再編成が行われる時期である。肉芽を形成していたコラーゲン線維は、重合が進んだ線維束の太い瘢痕型のコラーゲン線維に変化する。また、肉芽内に形成されていた新生血管の血管分布は、血管内皮細胞のアポトーシスにより徐々に減少する。真皮内での組織再構築が進むと創傷は平坦化する。
褥瘡や皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)の治療剤として、塩基性線維芽細胞(bFGF)を有効成分とするスプレー製剤(一般名称「トラフェルミン」)が販売されている。かかるbFGF製剤は、褥瘡や皮膚潰瘍の治療のほか、外傷等の創傷の治癒を促進するためにも用いられている。しかし、創傷治癒過程を初期(炎症期)、中期(増殖期)、後期(成熟期)に分けると、bFGFは主に増殖期(中期)に作用し、炎症期(初期)への効果は低いこともあり、bFGF製剤の創傷治癒の促進効果は低かった。
創傷の治癒を促進する他の方法として、創傷を有する患者自身の末梢血から得る自己血小板をその創傷部に塗布、注入等する療法(例えば、自己多血小板血漿療法)がある。この末梢血血小板は、初期(炎症期)、中期(増殖期)から作用することから、bFGF製剤と比べて高い創傷治癒促進効果を有している。しかし、末梢血から末梢血血小板を調製する際には白血球が混入してしまうことが多いこと、及び、末梢血から末梢血血小板を調製するのに最適な方法は人によって多少異なり、調製法を標準化することができないこと等のため、多くの患者に汎用できる製剤とすることが困難である。そのため、日本では、創傷に末梢血血小板を適用することは、公的医療保険が適用される標準治療として普及しておらず、患者自身の末梢血から調製した自己血小板をその患者の創傷に適用することは、公的医療保険が適用されない自由診療で行われているに過ぎない。また、治療に用いる自己血小板液は20mLの血液から1mL程度しか得られず、また、採血量にも限度があるため、自己血小板を用いる療法は、広範囲の創傷に適用することができない。
このように、現在、創傷の治療に用いられているいずれの方法も、大きな問題点があり、創傷の治癒を効果的に促進する実用的な製剤や方法はまだ開発されていないのが現状である。
そこで、創傷の治癒を促進するための他の方法について、従来から開発が試みられている。例えば、特許文献1には、骨髄、月経血または臍帯血から得られる間葉系幹細胞のうち、プラスチックディッシュに接着する細胞を複数回継代した間葉系幹細胞を切開創に移植したところ、創傷の治癒が促進し、及び、瘢痕形成が抑制された旨が記載されている。しかし、骨髄、月経血、臍帯血は入手が容易でなく、また、その量も少ないなど点から、実用性は不十分であった。また、特許文献2には、脂肪由来幹細胞を、CD26アンタゴニスト又はインヒビターにさらすことを含む、脂肪由来幹細胞の調製方法が記載されている。特許文献2には、その脂肪由来幹細胞は、創傷治療、組織損傷、アレルギー反応、免疫疾患、自己免疫疾患、免疫介在性疾患、炎症性疾患、慢性炎症性疾患等の疾患に関連する1以上の症状を予防、治療又は改善するために用いられ得ると記載されているものの、それを裏付ける薬理データは十分には記載されておらず、所望の効果が実際に発揮されるかは不明である。また、特許文献3には、瘻(ろう)又は創傷を縫合糸で閉鎖すること、及び、該縫合された瘻又は創傷に特定の脂肪組織由来間質幹細胞を送達することを含んでなる、瘻又は創傷の治療方法が記載されている。
以上のように、特許文献1〜3における細胞は、有核細胞であり、本発明における血小板様細胞とは細胞として異なっており、創傷の治癒をより効果的に促進する、より実用的な製剤や方法が求められていた。
特開2006−230316号公報 特表2012−510279号公報 特表2008−546397号公報
背景技術の項目でも記載したように、現在、創傷の治療に用いられているいずれの方法も、大きな問題点があり、創傷の治癒を効果的に促進する実用的な製剤や方法はまだ開発されていないのが現状である。例えば、褥瘡や皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)の治療剤として、塩基性線維芽細胞(bFGF)を有効成分とするスプレー製剤(一般名称「トラフェルミン」)が販売されている。かかるbFGF製剤は、褥瘡や皮膚潰瘍の治療のほか、外傷等の創傷の治癒を促進するためにも用いられている。しかし、創傷治癒過程を初期(炎症期)、中期(増殖期)、後期(成熟期)に分けると、bFGFは主に増殖期(中期)に作用し、炎症期(初期)への効果は低いこともあり、bFGF製剤の創傷治癒の促進効果は低かった。また、創傷の治癒を促進する他の方法として、創傷を有する患者自身の末梢血から得る自己血小板をその創傷部に塗布、注入等する療法(例えば、自己多血小板血漿療法)がある。この末梢血血小板は、初期(炎症期)、中期(増殖期)から作用することから、bFGF製剤と比べて高い創傷治癒促進効果を有している。しかし、末梢血から末梢血血小板を調製する際には白血球が混入してしまうことが多いこと、及び、末梢血から末梢血血小板を調製するのに最適な方法は人によって多少異なり、調製法を標準化することができないこと等のため、多くの患者に汎用できる製剤とすることが困難である。そのため、日本では、創傷に末梢血血小板を適用することは、公的医療保険が適用される標準治療として普及しておらず、患者自身の末梢血から調製した自己血小板をその患者の創傷に適用することは、公的医療保険が適用されない自由診療で行われているに過ぎない。また、治療に用いる自己血小板液は20mLの血液から1mL程度しか得られず、また、採血量にも限度があるため、自己血小板を用いる療法は、広範囲の創傷に適用することができない。
本発明の課題は、創傷の治癒をより効果的に促進する、より実用的な創傷治癒促進剤等を提供することにあり、より詳細には、末梢血血小板よりも多量に入手しやすく、かつ、末梢血血小板よりも優れた創傷治癒効果を有する、より実用的な創傷治癒促進剤等を提供することにある。
本発明者らは、これまでに、脂肪前駆細胞等の間葉系細胞を利用した治療に関する研究を行ってきた。例えば、本発明者らは、脂肪前駆細胞等の間葉系細胞を、鉄イオン及び鉄輸送体を含む間葉系細胞培養用基本培養液で培養することにより、巨核球や血小板を比較的短期間で簡便かつ大量に、しかもより低コスト或いはより効率的に生体外で製造する方法等の開発を行い、特許出願を行っている(国際公開第2014/208100号)。かかる培養液は、間葉系細胞培養用基本培養液に鉄イオン及び鉄輸送体を含有させた培養液であり、巨核球系細胞(巨核球及び/又は血小板)への分化誘導培養液である。また、本発明者らは、脊椎動物の脂肪組織の間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞及び間質細胞を含む間質血管細胞群から選択される1種又は2種以上の細胞を成熟脂肪細胞に分化誘導する工程(A);及び、工程(A)で得られた成熟脂肪細胞を脱分化誘導して、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株を得る工程(B);を有することを特徴とする、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株の製造方法の開発を行い、特許出願を行っている(特願2015−234836)。さらに、本発明者らは、c−MPL受容体作動物質を含む間葉系細胞培養用基本培地で間葉系細胞を培養する工程A;及び、細胞表面におけるc−MPL受容体の発現が促進された間葉系細胞を得る工程B;を含む、細胞表面におけるc−MPL受容体の発現が促進された間葉系細胞の製造方法の開発を行い、特許出願を行っている(PCT/JP2016/003626)。
本発明者らは、創傷の治癒をより効果的に促進する、より実用的な創傷治癒促進剤等を提供するという上記課題を解決するべく鋭意研究を進める中で、皮下脂肪組織から間葉系細胞株を作製し、かかる間葉系細胞株を、巨核球系細胞への分化誘導培養液を改変した培養液(以下、「巨核球系細胞への分化誘導改変培養液」とも表示する。)にて培養して得られる血小板様細胞集団の特性の解析、及び、その生理学的作用の解析を試みた。かかる血小板様細胞集団の表面抗原マーカー解析の結果、血小板様細胞集団では、血小板マーカーだけでなく、間葉系細胞マーカーも共発現していることを本発明者らは初めて見いだした。本発明者らはさらに、血小板様細胞集団の創傷治癒促進効果を、マウスの皮膚に作製した全層欠損創を利用して評価したところ、血小板様細胞集団は、末梢血血小板やbFGF製剤と比較して、顕著に優れた創傷治癒促進効果を発揮することを本発明者らは初めて見いだした。本発明者らは、これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)1種又は2種以上の血小板表面マーカーと1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを共発現する血小板様細胞集団を含有することを特徴とする創傷治癒促進剤や、
(2)創傷に局所投与することを特徴とする上記(1)に記載の創傷治癒促進剤や、
(3)血小板様細胞集団におけるCD29陽性細胞の割合が60%以上であり、CD42b陽性細胞の割合が5%以上であり、及び、CD90陽性細胞の割合が30%以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の創傷治癒促進剤や、
(4)さらに、血小板様細胞集団が、以下の条件の1つ又は2つ以上(好ましくは、任意の組合せの3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上又は17個)を満たしていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の創傷治癒促進剤;
CD9陽性細胞の割合が30%以下である;
CD13陽性細胞の割合が30%以上である;
CD26陽性細胞の割合が15%以上である;
CD36陽性細胞の割合が40%以下である;
CD41/61陽性細胞の割合が60%以下である;
CD42b陽性細胞の割合が5%以上である;
CD41陽性細胞の割合が20%以上である;
CD44陽性細胞の割合が30%以上である;
CD49b陽性細胞の割合が30%以上である;
CD61陽性細胞の割合が30%以下である;
CD63陽性細胞の割合が60%以上である;
CD73陽性細胞の割合が40%以上である;
CD95陽性細胞の割合が20%以上である;
CD107a陽性細胞の割合が45%以上である;
CD107b陽性細胞の割合が20%以上である;
CD147陽性細胞の割合が50%以下である;
CD164陽性細胞の割合が15%以上である;や
(5)血小板様細胞集団がヒト由来の血小板様細胞集団であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の創傷治癒促進剤や、
(6)血小板様細胞集団が、以下の測定方法で測定される、血小板様細胞集団の塩基性線維芽細胞増殖因子の産生量が、血小板の細胞集団のその産生量の10倍以上である血小板様細胞集団であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の創傷治癒促進剤;
(塩基性線維芽細胞増殖因子の産生量の測定方法)
細胞集団の細胞を20×10個/mLとなるように20μLのリン酸緩衝生理食塩水中に懸濁し、10mM CaClで15分間刺激した後、前記リン酸緩衝生理食塩水中の塩基性線維芽細胞増殖因子の量を測定する;
(7)以下の測定方法で測定される、血小板様細胞集団の開放創傷面積の比が90%以下であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の創傷治癒促進剤;
(開放創傷面積の測定方法)
創傷に適用開始してから7〜9日経過後における開放創傷面積の比[(各投与群の開放創傷面積(%)/コントロール投与群の開放創傷面積(%))×100で算出される面積比]
(8)創傷が、切創、裂創、割創、刺創、杙創、挫創、剥皮創、咬創、銃創、褥瘡、切傷、裂傷、刺傷、挫傷、咬傷、擦過傷、熱傷、皮膚潰瘍、褥瘡、糜爛、手術創傷及び縫合不全からなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の創傷治癒促進剤に関する。
また、本発明は、
(9)血小板様細胞集団が、
(A)脊椎動物の脂肪組織の間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞及び間質細胞を含む間質血管細胞群から選択される1種又は2種以上の細胞を成熟脂肪細胞に分化誘導する工程;
(B)工程(A)で得られた成熟脂肪細胞を脱分化誘導して、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株を得る工程;及び、
(C)工程(B)で得られた脂肪組織由来間葉系細胞株を、鉄イオン及び鉄輸送体を含む巨核球系細胞への分化誘導改変培養液で培養し、培養物から血小板様細胞集団を採取する工程;
を含む方法によって製造され、
前記工程(C)の巨核球系細胞への分化誘導改変培養液が、ウシ血清アルブミン、LDLコレステロール、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、2−メルカプトエタノールを含んでおらず、ヒト血清アルブミン、鉄結合型トランスフェリン、インスリン、モノチオグリセロールを含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の創傷治癒促進剤や、
(10)工程(B)で脂肪組織由来間葉系細胞株を得た後、工程(C)で前記細胞株を、鉄イオン及び鉄輸送体を含む巨核球系細胞への分化誘導改変培養液で培養する前に、前記細胞株において特定の細胞表面マーカーの発現の有無を指標とする細胞の選択を行わないことを特徴とする上記(9)に記載の創傷治癒促進剤や、
(11)工程(C)における、培養物から血小板様細胞集団を採取する方法が、特定の細胞表面マーカーの発現の有無を指標とする細胞の選択を含まないことを特徴とする上記(9)又は(10)に記載の創傷治癒促進剤に関する。
本発明によれば、創傷の治癒をより効果的に促進する、より実用的な創傷治癒促進剤等を提供することができる。より詳細には、本発明によれば、末梢血血小板よりも多量に入手しやすく、かつ、末梢血血小板よりも優れた創傷治癒効果を有する、より実用的な創傷治癒促進剤等を提供することができる。
皮下脂肪由来間葉系細胞株を巨核球系細胞への分化誘導改変培養液で培養し、得られた血小板様細胞(ASCL−PLC)における細胞表面マーカー(血小板表面抗原のCD42bと間葉系幹細胞表面抗原のCD90) の発現を解析した結果を示す図である。 ASCL−PLCにおけるCD41とCD42bの共発現を解析した結果を示す図である。皮下脂肪由来間葉系細胞株を巨核球系細胞への分化誘導改変培養液で培養を行うと、血小板の表面抗原を発現する細胞が認められる。 4種類の成分(PBS、ヒト血小板、ASCL−PLC、又はbFGF)を、NSGマウスの創傷部位に塗布したときに、創傷面積の縮小率(図3A及びB)、及び創傷部位の形態(図3C)を経時的に解析した結果を示す図である。 カルシウム刺激により、ASCL−PLC及びヒト血小板から産生される5種類のサイトカイン(bFGF[図4A]、PDGF[図4B]、VEGF−A[図4C]、TGF−β[図4D]、及びEGF[図4E])の量を測定した結果を示す図である。なお、縦軸の数値は、各種サイトカインの産生量(pg/mL)を表す。
本発明は、
[1]1種又は2種以上の血小板表面マーカーと1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを共発現する血小板様細胞集団を含有することを特徴とする創傷治癒促進剤(以下、「本発明の創傷治癒促進剤。」とも表示する);や、
[2]1種又は2種以上の血小板表面マーカーと1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを共発現する血小板様細胞集団(以下、「本発明の血小板様細胞集団」とも表示する);や、
[3]1種又は2種以上の血小板表面マーカーと1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを共発現する血小板様細胞集団を、創傷を有する患者に投与することを特徴とする、創傷治癒を促進する方法(以下、「本発明の創傷治癒促進方法」とも表示する);や、
[4]1種又は2種以上の血小板表面マーカーと1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを共発現する血小板様細胞集団の、創傷治癒促進剤の製造における使用;や、
[5]創傷の治療における使用のための、1種又は2種以上の血小板表面マーカーと1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを共発現する血小板様細胞集団;や、
[6]創傷治療剤として使用するための、1種又は2種以上の血小板表面マーカーと1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを共発現する血小板様細胞集団;
等を含む。なお、創傷治癒促進剤は、創傷治療剤としても用いることもでき、創傷治癒を促進する方法は、創傷を治療する方法としても用いることもできる。かかる創傷治療剤は、創傷治癒が促進された創傷治療剤であり、かかる創傷を治療する方法は、創傷治癒が促進された、創傷の治療方法である。また、本明細書において、血小板様細胞集団における細胞表面マーカー陽性細胞の割合とは、間葉系細胞を、鉄イオン及び鉄輸送体を含む巨核球系細胞への分化誘導改変培養液で培養を開始してから12日目に測定した割合を意味し、好適には後述の実施例3に記載の方法で測定した割合が含まれる。
(創傷の治癒の促進)
本明細書において、「創傷の治癒を促進する」とは、創傷による創面形成箇所における血小板の凝集と血管収縮による止血及びマクロファージによる創面の死滅細胞の取込みが行われる第1ステップと、繊維芽細胞が分泌するコラーゲンを主体とした肉芽組織による創面の修復が行われる第2ステップと、肉芽組織が瘢痕組織へと変化し安定化する第3ステップからなる一連の作用機序、又は第1〜3のいずれかのステップの作用機序を促進することをいう。本発明の血小板様細胞集団又は創傷治癒促進剤が「創傷治癒促進効果を有する」とは、本発明の血小板様細胞又は創傷治癒促進剤を創傷に適用した場合に、それを適用しない場合と比較して、その創傷の治癒期間が短いことを意味する。
創傷治癒促進効果の有無若しくはその程度、又は、創傷治療効果若しくはその程度は、一定期間を経過後の創傷面積の減少率で評価することができ、例えば、開放創径の測定により算出することができる。創傷面積の減少が早いほど、創傷治癒促進効果又は創傷治療効果が高いと評価することができる。本発明における創傷治癒促進効果又は創傷治療効果の好ましい程度としては、本発明における血小板様細胞集団又は創傷治癒促進剤を創傷(例えば後述の実施例5で作製した創傷)に適用開始してから7〜9日経過後における開放創傷面積の比[(各投与群の開放創傷面積(%)/コントロール投与群の開放創傷面積(%))×100で算出される面積比]が90%程度以下、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下であることが挙げられる。このような開放創傷面積の比率の低下により、良好な創傷治癒促進効果や創傷治療効果が発揮されていると判断される。なお、上記のコントロール投与群としては、本発明における血小板様細胞集団又は創傷治癒促進剤を含まないこと以外は同じ組成の物質を投与した群を意味し、例えば、本発明における創傷治癒促進剤の投与群として、本発明における血小板様細胞集団をPBS溶液に懸濁したものを投与した場合は、PBS溶液を投与した群をコントロール投与群とすることができる。
(創傷)
本明細書における「創傷」としては、本発明における血小板様細胞集団又は創傷治癒促進剤が、その治癒を促進する創傷である限り特に制限されないが、切創、裂創、割創、刺創、杙創、挫創、剥皮創、咬創、銃創、褥瘡、切傷、裂傷、刺傷、挫傷、咬傷、擦過傷、熱傷、皮膚潰瘍、褥瘡、糜爛、手術創傷及び縫合不全からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。これらの創傷のうち、手術の際の創傷に対しては、多血小板血漿を創傷に塗布する治療が行われているため、本発明における血小板様細胞集団や創傷治癒促進剤は先に列挙した創傷に対して創傷治癒促進効果を発揮すると考えられる。なお、本明細書における「創傷」は、瘻を含んでいてもよいし、瘻以外の創傷であってもよい。また、本明細書において「手術創傷」とは、手術の際に形成される創傷を意味し、かかる創傷である限り、創傷の種類等、特に制限されない。かかる「手術創傷」としては、手術の際に形成される切創、刺創、切傷及び刺傷からなる群より選択される1種又は2種以上が好ましく挙げられる。また、本明細書において「縫合不全」とは、創傷(好ましくは手術創傷)を縫合した部位(以下、単に「縫合部位」とも表示する)の組織間が十分な癒合を起こさず、一部又は全部のその縫合部位が解離した創傷を意味し、かかる創傷である限り、創傷の種類等、特に制限されない。かかる「縫合不全」としては、創傷(好ましくは手術創傷)の縫合部位全体の長さを100としたときに、その縫合部位において癒合していない部位の長さの割合が好ましくは1〜100、より好ましくは20〜100、さらに好ましくは50〜100である縫合不全が挙げられる。
(本発明の血小板様細胞集団)
本発明の血小板様細胞集団としては、1種又は2種以上の血小板表面マーカーと1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを共発現する血小板様細胞集団である限り特に制限されないが、中でも、間葉系細胞由来の血小板様細胞集団であることが好ましく、中でも、巨核球系細胞への分化誘導培養液で間葉系細胞を培養して得られる血小板様細胞集団であることがより好ましく、中でも、脂肪前駆細胞、皮下脂肪組織由来間葉系幹細胞等(好ましくは後述の実施例1に記載の方法にて作製した脂肪組織由来間葉系細胞株)を、後述の実施例2に記載の方法にて、巨核球系細胞への分化誘導改変培養液で培養して得られる血小板様細胞集団であることが特に好ましい。なお、本発明において、「間葉系細胞由来の」血小板様細胞集団とは、巨核球系細胞への分化誘導培養液で造血幹細胞を培養して得られた細胞集団ではなく、巨核球系細胞への分化誘導培養液(好ましくは「巨核球系細胞への分化誘導改変培養液」)で間葉系細胞を培養して得られた細胞集団を意味する。また、巨核球系細胞への分化誘導培養液(好ましくは「巨核球系細胞への分化誘導改変培養液」)で間葉系細胞を培養する際に、造血幹細胞と共培養しないことが好ましい。
本発明において、「1種又は2種以上の血小板表面マーカーと1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを共発現する血小板様細胞集団」とは、1種又は2種以上の血小板表面マーカーを発現する血小板様細胞(1種又は2種以上の血小板表面マーカーが陽性である血小板様細胞)と、1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを発現する血小板様細胞(1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーが陽性である血小板様細胞)とを含む血小板様細胞集団を意味し、1種又は2種以上の血小板表面マーカーが陽性である血小板様細胞と、1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーが陽性である血小板様細胞とをそれぞれ別々の細胞としてのみ含む血小板様細胞集団であってもよいが、1種又は2種以上の血小板表面マーカーが陽性であり、かつ、1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーが陽性である血小板様細胞を少なくとも一部に含む血小板様細胞集団であることが好ましい。また、上記の「血小板に類似した細胞」とは、血小板の特徴のうち、少なくとも以下の特徴を備えた細胞をいう。
核を持たない;
大きさが1〜10μmである;
創傷治癒促進効果を有する;
本発明において、「1種又は2種以上の血小板表面マーカーを発現する血小板様細胞(1種又は2種以上の血小板表面マーカーが陽性である血小板様細胞)」を含む血小板様細胞集団としては、少なくともCD29を発現する血小板様細胞を含む血小板様細胞集団である限り特に制限されないが、好ましくはさらに、CD49b、CD42b及びCD41からなる群から選択される1種又は2種以上(好ましくは3種)の血小板表面マーカーを発現する血小板様細胞を含む血小板様細胞集団が挙げられる。本発明において、「2種以上の血小板表面マーカーを発現する血小板様細胞を含む血小板様細胞集団」とは、その2種以上の血小板表面マーカーのうち、任意の1種の血小板表面マーカーを発現する血小板様細胞(任意の1種の血小板表面マーカーが陽性である血小板様細胞)と、それ以外の任意の1種以上の血小板表面マーカーを発現する血小板様細胞(それ以外の任意の1種以上の血小板表面マーカーが陽性である血小板様細胞とを含む血小板様細胞集団を意味し、上記の任意の1種の血小板表面マーカーが陽性である血小板様細胞と、上記のそれ以外の任意の1種以上の血小板表面マーカーが陽性である血小板様細胞とをそれぞれ別々の細胞としてのみ含む血小板様細胞集団であってもよいが、上記の任意の1種の血小板表面マーカーが陽性であり、かつ、上記のそれ以外の任意の1種以上の血小板表面マーカーが陽性である血小板様細胞を少なくとも一部に含む血小板様細胞集団であることが好ましい。
血小板表面マーカーであるCD29を発現する血小板様細胞を含む血小板様細胞集団として、具体的には、CD29陽性細胞の割合が、好ましくは60%以上、より好ましくは70〜90%、さらに好ましくは75〜85%である血小板様細胞集団が挙げられる。また、CD29のほかに、さらに、CD49b、CD42b及びCD41からなる群から選択される1種又は2種以上(好ましくは3種)の血小板表面マーカーを発現する血小板様細胞を含む血小板様細胞集団として、具体的には、CD49b、CD42b及びCD41からなる群から選択される1種又は2種以上(好ましくは3種)の血小板表面マーカーについて、以下の陽性細胞の割合の数値範囲を満たしている血小板様細胞集団が好ましく挙げられる。
CD49b陽性細胞の割合が好ましくは30%以上(より好ましくは30〜85%、さらに好ましくは30〜70%)である;
CD42b陽性細胞の割合が好ましくは5%以上(より好ましくは6〜80%、さらに好ましくは7〜60%、より好ましくは8〜40%)である;
CD41陽性細胞の割合が好ましくは20%以上(より好ましくは20〜85%、さらに好ましくは30〜70%)である;
本発明において、「1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを発現する血小板様細胞(1種又は2種以上の間葉系細胞表面が陽性である血小板様細胞)」を含む血小板様細胞集団としては、少なくともCD90を発現する血小板様細胞を含む血小板様細胞集団である限り特に制限されないが、好ましくはさらに、CD13、CD26、CD44、CD73、CD77、CD81、CD95及びCD164からなる群から選択される1種又は2種以上(好ましくは3種以上、より好ましくは5種以上、さらに好ましくは7種以上、より好ましくは8種)の間葉系細胞表面マーカーを発現する血小板様細胞を含む血小板様細胞集団が挙げられる。本発明において、「2種以上の間葉系細胞表面マーカーを発現する血小板様細胞を含む血小板様細胞集団」とは、その2種以上の間葉系細胞表面マーカーのうち、任意の1種の間葉系細胞表面マーカーを発現する血小板様細胞(任意の1種の間葉系細胞表面マーカーが陽性である血小板様細胞)と、それ以外の任意の1種以上の間葉系細胞表面マーカーを発現する血小板様細胞(それ以外の任意の1種以上の間葉系細胞表面マーカーが陽性である血小板様細胞)とを含む血小板様細胞集団を意味し、上記の任意の1種の間葉系細胞表面マーカーが陽性である血小板様細胞と、上記のそれ以外の任意の1種以上の間葉系細胞表面マーカーが陽性である血小板様細胞とをそれぞれ別々の細胞としてのみ含む血小板様細胞集団であってもよいが、上記の任意の1種の間葉系細胞表面マーカーが陽性であり、かつ、上記のそれ以外の任意の1種以上の間葉系細胞表面マーカーが陽性である血小板様細胞を少なくとも一部に含む血小板様細胞集団であることが好ましい。
間葉系細胞表面マーカーであるCD90を発現する血小板様細胞を含む血小板様細胞集団として、具体的には、CD90陽性細胞の割合が、好ましくは30%以上、より好ましくは30〜90%、さらに好ましくは35〜70%である血小板様細胞集団が挙げられる。また、CD90のほかに、さらに、CD13、CD26、CD44、CD73、CD77、CD81、CD95及びCD164からなる群から選択される1種又は2種以上(好ましくは3種以上、より好ましくは5種以上、さらに好ましくは7種以上、より好ましくは8種)の間葉系細胞表面マーカーについて、以下の陽性細胞の割合の数値範囲を満たしている血小板様細胞集団が好ましく挙げられる。
CD13陽性細胞の割合が30%以上(好ましくは30〜80%、より好ましくは35〜65%)である;
CD26陽性細胞の割合が15%以上(好ましくは15〜60%、より好ましくは20〜45%)である;
CD44陽性細胞の割合が30%以上(好ましくは30〜80%、より好ましくは35〜65%)である;
CD73陽性細胞の割合が40%以上(好ましくは40〜95%、より好ましくは45〜80%)である;
CD95陽性細胞の割合が20%以上(好ましくは20〜70%、より好ましくは25〜55%)である;
CD164陽性細胞の割合が15%以上(好ましくは15〜55%、より好ましくは20〜40%)である;
前述したように、本発明の血小板様細胞集団としては、1種又は2種以上の血小板表面マーカーが陽性であり、かつ、1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーが陽性である血小板様細胞を少なくとも一部に含んでいる血小板様細胞集団が好ましく挙げられ、具体的には、以下の陽性細胞の割合を満たしている血小板様細胞集団が好ましく挙げられる。
CD42bが陽性であり、かつ、CD90が陽性である細胞の割合が3%以上(好ましくは3〜80%、より好ましくは5〜40%、さらに好ましくは5〜20%)である;
本発明の血小板様細胞集団の好ましい態様として、さらに、1種又は2種以上の特定の血小板表面マーカー(以下、「低発現血小板表面マーカー」ともいう)の発現が、通常の血小板の細胞集団におけるその発現と比較して低下した血小板様細胞集団が挙げられる。「1種又は2種以上の低発現血小板表面マーカーの発現が、通常の血小板の細胞集団におけるその発現と比較して低下した血小板様細胞集団」とは、1種又は2種以上の低発現血小板表面マーカーの陽性細胞の割合が、通常の血小板の細胞集団におけるその割合よりも低い血小板様細胞集団を意味する。かかる「低発現血小板表面マーカー」としては、CD9、CD36、CD41/61、CD61及びCD147からなる群から選択される1種又は2種以上(好ましくは3種以上、より好ましくは5種以上)のマーカーが挙げられる。なお、CD41/61とは、CD41とCD61の複合体を意味し、CD41/61陽性細胞とは、CD41とCD61の複合体を発現している細胞を意味する。
1種又は2種以上の低発現血小板表面マーカーの発現が、通常の血小板の細胞集団におけるその発現と比較して低下した血小板様細胞集団として、具体的には、CD9、CD36、CD41/61、CD61及びCD147からなる群から選択される1種又は2種以上(好ましくは3種以上、より好ましくは5種以上)の低発現血小板表面マーカーについて、以下の陽性細胞の割合の数値範囲を満たしている血小板様細胞集団が好ましく挙げられる。
CD9陽性細胞の割合が30%以下(好ましくは0〜20%、より好ましくは0.5〜15%)である;
CD36陽性細胞の割合が40%以下(好ましくは0〜30%、より好ましくは0.5〜20%)である;
CD41/61陽性細胞の割合が60%以下(好ましくは0〜40%、より好ましくは0.5〜25%)である;
CD61陽性細胞の割合が30%以下(好ましくは0〜10%、より好ましくは0.1〜8%)である;
CD147陽性細胞の割合が50%以下(好ましくは0〜40%、より好ましくは1〜30%)である;
本発明の血小板様細胞集団の好ましい態様として、1種又は2種以上の血小板表面マーカーが陽性である血小板様細胞と、1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーが陽性である血小板様細胞とを含むことに加えて、さらに、CD107a、CD107bのうち、1種又は2種の活性化血小板の表面マーカーが陽性である血小板様細胞を含む血小板様細胞集団が挙げられる。活性化血小板表面マーカーが陽性である血小板様細胞は、1種又は2種以上の血小板表面マーカーが陽性である血小板様細胞や、1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーが陽性である血小板様細胞と別個の細胞であってもよいが、本発明の血小板様細胞集団は、活性化血小板表面マーカーが陽性であり、かつ、1種又は2種以上の血小板表面マーカーが陽性である血小板様細胞や、活性化血小板表面マーカーが陽性であり、かつ、1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーが陽性である血小板様細胞を少なくとも一部に含む血小板様細胞集団であることが好ましい。
CD107a、CD107bのうち、1種又は2種の活性化血小板表面マーカーが陽性である血小板様細胞を含む血小板様細胞集団として、具体的には、CD107a、CD107bのうち、1種又は2種の活性化血小板表面マーカーについて、以下の陽性細胞の割合の数値範囲を満たしている血小板様細胞集団が好ましく挙げられる。
CD107a陽性細胞の割合が15%以上(より好ましくは25〜80%、さらに好ましくは45〜70%)である;
CD107b陽性細胞の割合が10%以上(より好ましくは15〜70%、さらに好ましくは20〜55%)である;
本発明の血小板様細胞集団は、特定の又は特定の組合せの細胞表面マーカーの有無を指標として、(a)特定の細胞表面マーカープロファイルを有する血小板様細胞(すなわち、特定の又は特定の組合せの細胞表面マーカーを発現する血小板様細胞)が選択(select)された血小板様細胞集団、又は、(b)特定の細胞表面マーカープロファイルを有する血小板様細胞の割合が向上若しくは低下させられた血小板様細胞集団であってもよいし、そのような血小板様細胞集団でなくてもよい。かかる血小板様細胞集団において、特定の又は特定の組合せの細胞表面マーカーを発現する血小板様細胞の割合には、本明細書に挙げられた特定の細胞表面マーカーの陽性細胞の割合又はその割合のすべての組合せが含まれる。
本発明の血小板様細胞集団の好適な態様として、以下の測定方法で測定される塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の産生量が、血小板の細胞集団のその産生量の10倍以上、好ましくは30倍以上、より好ましくは40〜80倍、さらに好ましくは50〜70倍である血小板様細胞集団が挙げられる。
(塩基性線維芽細胞増殖因子の産生量の測定方法)
細胞集団の細胞を20×10個/mLとなるように20μLのリン酸緩衝生理食塩水中に懸濁し、10mM CaClで15分間刺激した後、前記リン酸緩衝生理食塩水中の塩基性線維芽細胞増殖因子の量を測定する;
なお、上記の懸濁に用いるPBS溶液の組成としては、8g/L NaCl、0.2g/L KCl、1.44g/L NaHPO、0.24g/L KHPO(pH7.4)が好ましく挙げられる。
(本発明の創傷治癒促進剤等)
本発明の血小板様細胞集団それ自体を、本発明の創傷治癒促進剤、創傷治癒促進用医薬組成物、創傷治療剤又は創傷治療用医薬組成物(本明細書において「本発明の創傷治癒促進剤等」とも表示する)としてもよいし、本発明の血小板様細胞集団を、薬理学的及び製剤学的に許容しうる担体等に配合して、本発明の創傷治癒促進剤等としてもよい。上記の薬理学的及び製剤学的に許容しうる担体としては、水溶液、好ましくはハンクス液、リンガー液又は生理食塩緩衝液等の生理学的に受容可能な緩衝液が好ましく挙げられる。薬理学的及び製剤学的に許容しうる担体以外の任意成分としては、希釈剤、溶解剤又は溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、保存剤、分散剤、乳化剤、ゲル化剤、増粘剤粘着剤、色素等が挙げられる。
本発明の創傷治癒促進剤等の剤型としては、特に制限されないが、創傷部位に局所投与するための局所投与剤であることが好ましく、外用液剤(塗布剤等)、スプレー剤(霧状、粉末状、泡沫状またはペースト状)、貼付剤(マトリックス型テープ剤、リザーバー型テープ剤、パップ剤など)、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤(コラーゲンゲルの剤、CMCゲル(カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースのカリウム塩)の剤、熱応答性ゲルの剤(例えば体温でゲル化する剤)など)、外用固形剤(塗布剤、散剤等)等がより好ましく挙げられ、中でも、外用液剤、スプレー剤、貼付剤、ゲル剤等がさらに好ましく挙げられる。
本発明の創傷治癒促進剤等の投与1回当たりの投与量としては、創傷治癒促進効果が得られる限り特に制限されず、当業者であれば、患者の創傷の程度、大きさ等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、1cmの縫合創に対し、投与1回当たり、本発明の血小板様細胞を1×10〜1×1011個用いることができる。また、本発明の創傷治癒促進剤等の投与回数としては、創傷治癒促進効果が得られる限り特に制限されず、1回であっても優れた創傷治癒促進効果が得られるため、1回であってもよいし、2回以上であってもよい。2回以上の場合としては、1〜7回、1〜5回、1〜3回、1〜2回などが挙げられる。また、本発明の創傷治癒促進剤等を2回以上投与する場合の投与期間の間隔としては、特に制限されないが、例えば、1〜3日間、1〜2日間等が挙げられる。
本発明の創傷治癒促進剤等の投与対象としては、創傷を有する脊椎動物が挙げられる。かかる脊椎動物の種類としては、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類等を挙げることができ、中でも、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、サル、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の哺乳動物を好ましく挙げることができ、中でもヒトを特に好ましく挙げることができる。
(本発明の血小板様細胞集団の製造方法)
本発明の血小板様細胞集団の製造方法としては、間葉系細胞を、鉄イオン及び鉄輸送体を含む「巨核球系細胞への分化誘導培養液」(以下、「本発明に用いる培養液」と表示する。)(好ましくは、巨核球系細胞への分化誘導改変培養液)で培養し、培養物から本発明の血小板様細胞集団を採取する方法である限り特に制限されず、ここで「培養液」とは、細胞を培養できる「培地成分」に水を添加した状態のものをいう。脂肪前駆細胞等の間葉系細胞を、鉄イオン及び鉄輸送体を含む巨核球系細胞への分化誘導培養液で培養すると、どのような作用機序で該細胞から血小板様細胞集団が産生するか、その詳細は不明であるが、間葉系細胞内に取り込まれた鉄イオン、あるいは、鉄イオン及び鉄輸送体が何らかのメカニズムで該細胞からのトロンボポエチン(TPO)分泌を促進し、それが一因となって、該細胞から血小板様細胞集団の分化誘導を促進していることが考えられる。
本発明に用いる間葉系細胞としては、鉄イオン及び鉄輸送体を含む巨核球系細胞への分化誘導培養液(好ましくは、巨核球系細胞への分化誘導改変培養液)で培養することによって、巨核球や血小板を産生し得る間葉系細胞である限り特に制限されず、該間葉系細胞としては(a)脂肪前駆細胞(preadipocytesあるいはadipose progenitor cells)、(b)間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)、(c)間質細胞(stromal cell)等を挙げることができ、上記間葉系幹細胞としては、皮下脂肪組織由来間葉系幹細胞、骨髄間葉系幹細胞を挙げることができ、上記間質細胞としては、脂肪組織由来間質細胞、骨髄間質細胞、前立腺由来間質細胞、子宮内膜由来間質細胞を挙げることができる。好ましい間葉系細胞として、脂肪前駆細胞、皮下脂肪組織由来間葉系幹細胞を挙げることができる。
本発明に用いる間葉系細胞は、培養細胞株であってもよいし、組織から採取した細胞(初代培養細胞や継代培養細胞を含む)であってもよい。本発明に用いる間葉系細胞のより具体的な例として、ヒト初代培養脂肪前駆細胞(HPAd細胞)、マウス初代培養前駆細胞(皮下脂肪組織由来)、株化されたマウス間質細胞(OP9細胞)、株化されたマウス骨髄間葉系幹細胞(HS−22細胞)、株化されたマウス脂肪前駆細胞(3T3−L1細胞)などを挙げることができる。
上記間葉系細胞の培養細胞株や、組織から採取した間葉系細胞は、Lonza社やPromoCell社やCELL APPLICATIONS社や、独立行政法人医薬基盤研究所、JCRB細胞バンクなどの企業等から市販されているものを用いてもよいが、本発明の血小板様細胞集団を投与する対象の組織から採取した間葉系細胞を用いると免疫拒絶の問題が生じないため、かかる間葉系細胞を用いることを好ましく挙げることができる。
間葉系細胞として培養細胞株を用いる場合、組織から採取するなどして用意した間葉系細胞を株化したものを用いてもよい。間葉系細胞の株化方法については特に制限されず、公知の方法などを用いることができる。脂肪前駆細胞を株化する好適な方法として、後述の実施例1に記載されているように、脂肪前駆細胞を成熟脂肪細胞へ分化誘導した後、成熟脂肪細胞の株化方法として公知の天井培養法を適用することにより、脂肪前駆細胞株を得る方法を挙げることができる。間葉系細胞を株化すると、分化能及び増殖能が半永久的に維持されるため、間葉系細胞株を冷凍保存などしておけば、本発明の血小板様細胞集団が必要なときにすぐに、その血小板様細胞集団の製造に着手することができるというメリットがある。
上記の脂肪前駆細胞や皮下脂肪組織由来間葉系幹細胞は、皮下脂肪組織や内臓組織等の脂肪組織から採取することができ、骨髄間葉系幹細胞は骨髄組織から採取することができ、間質細胞は脂肪組織、骨髄組織、前立腺、子宮内膜などから採取することができるが、上記の脂肪前駆細胞や皮下脂肪組織由来間葉系幹細胞としては、採取する際の侵襲性が低く、より多数の間葉系細胞をより簡便に採取し得る点で、脂肪組織(好ましくは皮下脂肪組織)由来の間葉系細胞を好適に挙げることができる。間葉系細胞を組織から採取する方法は、常法を用いることができる。
本発明で用いる間葉系細胞や、本発明における血小板様細胞集団の由来となる生物種としては、脊椎動物である限り特に制限されず、該脊椎動物としては、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類等を挙げることができ、中でも、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、サル、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の哺乳動物を好ましく挙げることができ、中でもヒトを特に好ましく挙げることができる。
本発明に用いる培養液は、鉄イオン及び鉄輸送体を含有させた巨核球系細胞への分化誘導培養液(好ましくは「巨核球系細胞への分化誘導改変培養液」)である。鉄イオン及び鉄輸送体を含有させた巨核球系細胞への分化誘導培養液は、間葉系細胞を培養することができる間葉系細胞培養用基本培養液に、鉄イオン及び鉄輸送体を含有させた培養液である。鉄イオン及び鉄輸送体をさらに含有することで、間葉系細胞を巨核球系細胞へと分化誘導する作用が生じる。
上記鉄イオンとしては、鉄イオン(II)、鉄イオン(III)のいずれでもよいが、鉄イオン(III)を好ましく挙げることができる。鉄イオンを巨核球系細胞への分化誘導培養液に含有させる方法としては、鉄の無機塩及び有機塩からなる群から選ばれる1種又は2種以上の鉄の塩を巨核球系細胞への分化誘導培養液に添加させる方法を挙げることができる。かかる鉄の塩としては、有機塩でも無機塩でもよく、該無機塩としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(III)、ピロリン酸鉄(II)、ピロリン酸鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化鉄(III)、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)等を挙げることができ、上記有機塩としては、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III) 、ヒドロキシジアセトキシ鉄(III) 、クエン酸鉄(II)、クエン酸鉄(III)、クエン酸鉄(III) ナトリウム、クエン酸鉄(III)アンモニウム、安息香酸鉄(II)、安息香酸鉄(III) 、炭酸鉄(II)、炭酸鉄(III)、ギ酸鉄(II)、ギ酸鉄(III) 、シュウ酸鉄(II)、シュウ酸鉄(III)、フマル酸鉄(II)、フマル酸鉄(III)、コハク酸鉄(II)、コハク酸鉄(III)、グルコン酸鉄(II)、グルコン酸鉄(III)、乳酸鉄(II)、乳酸鉄(III)、マレイン酸鉄(II)、マレイン酸鉄(III)、ジエチレントリアミン五酢酸鉄(III)ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸鉄(III)アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸鉄(III)ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸鉄(III)アンモニウム、ジカルボキシメチルグルタミン酸鉄(III)ナトリウム、ジカルボキシメチルグルタミン酸鉄(III)アンモニウム等を挙げることができる。これらの鉄の塩は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの鉄の塩は市販されているものを用いることができる。
上記鉄輸送体は、本発明に用いる培養液に含まれる鉄イオンと結合して、間葉系細胞が該培養液から鉄イオンを取り込む能力を提供する。また、鉄イオンと結合している鉄輸送体を用いれば、鉄の供給源としても機能する。鉄輸送体は、鉄と結合していない場合にはアポ型と呼ばれ、鉄と結合している場合はホロ型と呼ばれ、アポ型とホロ型の中間のレベルの量の鉄と結合している場合はシデロ型と呼ばれることがある。上記鉄輸送体としては、鉄と結合して細胞内へ取り込まれるタンパク質(特開平08−029429号公報、特表2005−517042号公報、特表2004−505932号公報、特表2007−508026号公報等)を挙げることができ、アポ型又はそれに相当する鉄輸送体としてアポトランスフェリン(アポセロトランスフェリン)、アポラクトフェリン、アポオボトランスフェリン、アポメラノトランスフェリン、アポフェリチン、プロトポルフィリンIX等が含まれ、中でもアポトランスフェリンを好ましく挙げることができる。かかる鉄輸送体の由来となる生物種は、共に用いる間葉系細胞の由来となる生物種と同種のものを用いることが好ましい。
本発明における鉄イオン及び鉄輸送体として、鉄イオンと鉄輸送体が結合して形成された複合体(鉄イオン−鉄輸送体複合体)を好ましく用いることができる。かかる鉄イオン−鉄輸送体複合体としては、アポトランスフェリンが鉄イオンと結合したホロトランスフェリン(鉄結合型トランスフェリン)、アポラクトフェリンが鉄イオンと結合したホロラクトフェリン(鉄結合型ラクトフェリン)、アポオボトランスフェリンが鉄イオンと結合したホロオボトランスフェリン(鉄結合型オボトランスフェリン)、アポメラノトランスフェリンが鉄イオンと結合したホロメラノトランスフェリン(鉄結合型メラノトランスフェリン)、アポフェリチンが鉄イオンと結合したホロフェリチン(鉄結合型フェリチン)、プロトポルフィリンIXが鉄と結合したヘム等を挙げることができ、中でも、鉄結合型トランスフェリンを特に好ましく挙げることができる。鉄イオンと結合しているホロ型の上記鉄輸送体や、鉄イオンと結合していないアポ型の鉄輸送体や、アポ型とホロ型の中間のレベルの量の鉄と結合しているシデロ型の鉄輸送体は、市販されているものを用いることができる。
上記の鉄イオン−鉄輸送体複合体における鉄イオンと鉄輸送体との結合形式は特に制限されず、配位結合、イオン結合、水素結合、金属結合、ファンデルワールス力等の非共有結合であっても、共有結合であってもよいが、結合の程度が適度であり、間葉系細胞内へ鉄イオンを輸送するのに適している点で、配位結合を好ましく挙げることができる。なお、鉄イオン−鉄輸送体複合体においては鉄がイオンの状態でないものの、複合体が間葉系細胞内に取り込まれると、鉄イオンを放出し得るものも、便宜上、本発明における鉄イオン−鉄輸送体複合体に含まれる。
本発明に用いる培養液中の鉄イオンの濃度としては、そのような鉄濃度の本発明に用いる培養液で間葉系細胞を培養することにより本発明の血小板様細胞集団を製造し得る培養液であれば特に制限されないが、例えば1pg/mL〜10μg/mLの範囲内、好ましくは10pg〜1μg/mLの範囲内、より好ましくは150pg/mL〜300pg/mLの範囲内、さらに好ましくは150pg/mL〜250pg/mLの範囲内を挙げることができる。
また、本発明に用いる培養液中の鉄輸送体の含有量としては、そのような鉄輸送体の含有量の本発明に用いる培養液で間葉系細胞を培養することにより本発明の血小板様細胞集団を製造し得る培養液であれば特に制限されないが、例えば10fM(1×10−15M)〜100nMの範囲内、好ましくは100fM〜10nMの範囲内、より好ましくは1pM〜2.8pMの範囲内、さらに好ましくは1pM〜2.5pMの範囲内を挙げることができる。
また、本発明に用いる培養液に鉄結合型トランスフェリンを用いる場合、その添加濃度は特に制限されず、上記の鉄イオン濃度の数値範囲にしたがってもよいが、例えば、25μg/mL〜400μg/mL未満、好ましくは50μg/mL〜200μg/mL未満を挙げることができる。なお、1mgの鉄結合トランスフェリンには、約1.3μgの鉄イオンが結合しているとされている。
本発明における巨核球系細胞への分化誘導培養液としては、本発明における鉄イオン及び鉄輸送体を添加した場合に、その培養液で間葉系細胞を培養することにより本発明の血小板様細胞集団を製造し得る培養液であれば特に制限されないが、調製が容易であり、ロットごとのばらつきを防ぐ点から化学合成培養液が好ましく、1又は2種類以上の糖(類)と、1又は2種類以上の無機塩(類)、1又は2種類以上のアミノ酸(類)、及び1又は2種類以上のビタミン(類)、及び1又は2種類以上のその他成分を含むことが好ましい。
上記糖類としては、具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類や、スクロース、マルトース、ラクトース等の二糖類を挙げることができるが、中でもグルコースが特に好ましく、これら糖類は、1又は2以上組み合わせて添加することもできる。
上記無機塩類としては、具体的には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸銅五水和物、硝酸鉄(III)九水和物、硫酸鉄(II)七水和物、塩化マグネシウム六水和物、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、亜セレン酸ナトリウム五水和物、硫酸亜鉛七水和物から選ばれる1種又は2種以上の無機塩(類)を挙げることができるが、間葉系細胞からの血小板様細胞集団の産生に有利に作用する成分であればいずれの無機塩類又はその組合せも用いることができる。
上記アミノ酸類としては、具体的には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、グルタミン酸、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等から選ばれる1種又は2種以上のアミノ酸(類)、好ましくはL−体のアミノ酸とそれらの誘導体及びそれらの塩並びにそれらの水和物などの派生物を挙げることができる。例えば、上記アルギニンとしては、L−塩酸アルギニン、L−アルギニン一塩酸塩等のアルギニンの派生物を挙げることができ、上記アスパラギン酸としては、L−アスパラギン酸ナトリウム塩一水和物、L−アスパラギン酸一水和物、L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム等のアスパラギン酸の派生物を挙げることができ、上記システインとしては、L−システイン二塩酸塩、L-システイン塩酸塩一水和物等のシステインの派生物や、L−リジン塩酸塩等のリジンの派生物を挙げることができ、上記グルタミン酸としては、L−グルタミン酸一ナトリウム塩等のグルタミンの派生物を挙げることができ、上記アスパラギンとしては、L−アスパラギン一水和物等のアスパラギンの派生物を挙げることができ、上記チロシンとしては、L−チロシン二ナトリウム二水和物等のチロシンの派生物を挙げることができ、上記ヒスチジンとしては、ヒスチジン塩酸塩、ヒスチジン塩酸塩一水和物等のヒスチジンの派生物を挙げることができ、上記リジンとしては、L−リジン塩酸塩等のリジンの派生物を挙げることができる。
上記ビタミン類としては、具体的には、ビオチン、コリン、葉酸、イノシトール、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、パラアミノ安息香酸(PABA)、アスコルビン酸から選択される1種又は2種以上のビタミン(類)と、これらの成分各々の誘導体及びそれらの塩並びにそれらの水和物などの派生物を挙げることができる。例えば、上記コリンとしては、塩化コリン等のコリンの派生物を挙げることができ、ナイアシンとしては、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチニックアルコール等のナイアシンの派生物を挙げることができ、パントテン酸としては、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、パンテノール等のパントテン酸の派生物を挙げることができ、ピリドキシンとしては、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサール塩酸塩、リン酸ピリドキサール、ピリドキサミン等のピリドキシンの派生物を挙げることができ、チアミンとしては、塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジセチル硫酸エステル塩、塩酸フルスルチアミン、オクトチアミン、ベンフォチアミン等のチアミンの派生物等を挙げることができ、アスコルビン酸としては、アスコルビン酸2−リン酸エステル(Ascorbic acid 2-phosphate)、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸硫酸ナトリウム、リン酸アスコルビルアミノプロピル、アスコルビン酸リン酸ナトリウム等のアスコルビン酸の派生物を挙げることができる。
上記その他成分としては、HEPES等の緩衝剤、ヌクレオチド等の核酸、ペニシリンやストレプトマイシン等の抗生物質、ピルビン酸、及びその誘導体及びそれらの塩並びにそれらの水和物などの派生物、フェノールレッドなどを挙げることができ、上記ヌクレオチドとしては、ATP、UTP、GTP、CTP、好ましくはこれら4種の等モル混合物を好ましく挙げることができ、上記抗生物質の派生物としては、ペニシリンGナトリウムや硫酸ストレプトマイシン、あるいは、ペニシリン-ストレプトマイシン溶液を好ましく挙げることができ、ピルビン酸の派生物としてはピルビン酸ナトリウムを好ましく挙げることができる。
前述したように、巨核球系細胞への分化誘導培養液は、間葉系細胞を培養することができる間葉系細胞培養用基本培養液に、鉄イオン及び鉄輸送体を含有させた培養液である。かかる間葉系細胞培養用基本培養液の具体例としては、市販のイスコフ改変ダルベッコ培養液(IMDM)、RPMI 1640培養液、ダルベッコ改変イーグル培養液(DMEM)、最小必須培養液(MEM)、イーグル基礎培養液(BME)、F12培養液等の公知の化学合成培養液や、DMEM/F12培養液(DMEMとF12培養液を1:1で混合した培養液)等のこれらの培養液のいずれか2以上を適当な割合で混合した培養液や、これらのいずれかの培養液にヌクレオチド等の核酸、ペニシリンやストレプトマイシン等の抗生物質、及び、L−グルタミンをさらに添加した培養液を好ましく挙げることができ、特にIMDMやRPMI 1640培養液に抗生物質(好ましくはペニシリンGナトリウム、硫酸ストレプトマイシン、あるいは、ペニシリン-ストレプトマイシン溶液)及びL−グルタミンをさらに添加した培養液をより好ましく挙げることができ、中でも、IMDMに抗生物質(好ましくはペニシリンGナトリウム、硫酸ストレプトマイシン、あるいは、ペニシリン-ストレプトマイシン溶液)及びL−グルタミンをさらに添加した培養液を特に好ましく挙げることができる。
本発明において特に好適な間葉系細胞培養用基本培養液としては、後述の組成のIMDMに対して、2mM(最終濃度)のL−グルタミン、及び、100U/mL(最終濃度)のペニシリン-ストレプトマイシン溶液を添加した培養液(以下、「本発明における特に好適な基本培養液」と表示する。)や、本発明における特に好適な基本培養液における各成分の濃度に対して、各成分ごとに独立に70〜130重量%の範囲内(好ましくは80〜120重量%の範囲内)の割合の濃度の各成分を含む培養液を挙げることができる。
(IMDMの組成)
0.4mM グリシン、0.281mM L−アラニン、0.398mM L−塩酸アルギニン、0.167mM L−アスパラギン、0.226mM L−アスパラギン酸、0.381mM L−シスチン二塩酸塩、0.51mM L−グルタミン酸、4mM L−グルタミン、0.2mM L−ヒスチジン塩酸塩一水和物、0.802mM L−イソロイシン、0.802mM L−ロイシン、0.798mM L−リジン塩酸塩、0.201mM L−メチオニン、0.4mM L−フェニルアラニン、0.348mM L−プロリン、0.4mM L−セリン、0.798mM L−スレオニン、0.0784mM L−トリプトファン、0.462mM L−チロシン二ナトリウム二水和物、0.803mM L−バリン、0.0000533mM ビオチン、0.0286mM 塩化コリン、0.00839mM D−パントテン酸カルシウム、0.00907mM 葉酸、0.0328mM ニコチン酸アミド、0.0196mM ピリドキサール塩酸塩、0.00106mM リボフラビン、0.119mM 塩酸チアミン、0.0000096mM ビタミンB12、0.04mM i−イノシトール、1.49mM 無水塩化カルシウム、0.84mM 無水硫酸マグネシウム、4.4mM 塩化カリウム、0.000752mM 硝酸カリウム、36mM 炭酸水素ナトリウム、77.59mM 塩化ナトリウム、0.906mM リン酸二水素ナトリウム一水和物、0.0000658mM 亜セレン酸ナトリウム五水和物、25mM D−グルコース、25.03mM HEPES、0.0399mM フェノールレッド、1mM ピルビン酸ナトリウム。
本発明に用いる特に好適な培養液として、前述の本発明における特に好適な基本培養液に、鉄イオン及び鉄輸送体を含有させた培養液を挙げることができ、中でも、前述の本発明における特に好適な基本培養液に鉄結合型トランスフェリンを単独の有効成分として含有させた培養液をより好ましく挙げることができる。
本発明に用いる培養液には、TPO、ウシ血清アルブミン(BSA)、LDLコレステロール、インスリン、2−β−メルカプトエタノール等を添加してもよいが、添加しない場合に、より低コストで本発明の血小板様細胞集団を製造し得るなどの意義がより多く得られる。すなわち、従来から用いられている巨核球系細胞への分化誘導培養液であるMKLI培養液には、IMDM培養液に加えて、TPO、BSA、LDLコレステロール、インスリン及び2−β−メルカプトエタノール(以下、これら成分をまとめて「5成分」とも表示する。)が添加されているところ(Matsubara Y, Murata M, Ikeda Y.Culture of megakaryocytes and platelets from subcutaneous adipose tissue and a preadipocyte cell line. Methods Mol Biol. 2012; 788: 249-258.)、本発明に用いる培養液でこれら5成分を用いない場合は、より低コストで本発明の血小板様細胞集団を製造することが可能となる。脂肪前駆細胞から巨核球や血小板への分化誘導を行う際に、BSA、LDLコレステロール、インスリン及び2−β−メルカプトエタノールがいずれも必要でないことは、本発明者らが実験で確認している。本発明に用いる培養液(すなわち、「鉄イオン及び鉄輸送体を含む巨核球系細胞への分化誘導培養液」)のうち、ウシ血清アルブミン、LDLコレステロール、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、2−メルカプトエタノールを含んでおらず、ヒト血清アルブミン、鉄結合型トランスフェリン、インスリン、モノチオグリセロールを含む培養液を、「巨核球系細胞への分化誘導改変培養液」と本明細書中で表示する。なお、培養液中に鉄輸送体が存在していなくても、間葉系細胞が培養液中の鉄イオンを細胞内に取り込むことができる場合は、本発明に用いる培養液を、「鉄イオン及び鉄輸送体を含む巨核球系細胞への分化誘導培養液」ではなく、「鉄イオンを含む巨核球系細胞への分化誘導培養液」とすることもできる。
本発明に用いる培養液の特に好適な態様としては、前述の本発明における特に好適な基本培養液に、ヒト血清アルブミン、鉄結合型トランスフェリン、インスリン、モノチオグリセロールを添加した培養液が挙げられ、さらに、かかる培養液においてウシ血清アルブミン、LDLコレステロール、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、2−メルカプトエタノールを含んでいない培養液が挙げられ、より具体的には、後述の実施例2の改変MKLI培養液や、該培養液の各成分の濃度に対して、各成分ごとに独立に70%〜130%の範囲内(好ましくは80〜120重量%の範囲内)の割合の濃度の各成分を含む培養液を挙げることができる。後述の実施例2の改変MKLI培養液や、該培養液の各成分の濃度に対して、各成分ごとに独立に70%〜130%の範囲内(好ましくは80〜120重量%の範囲内)の割合の濃度の各成分を含む培養液は、「巨核球系細胞への分化誘導改変培養液」に好適に含まれる。なお、改変MKLI培養液は、BSAに代えてヒト血清アルブミンを用いる点、LDLコレステロールを用いない点、dNTPを用いない点、メルカプトエタノールに代えてモノチオグリセロールを用いる点で、従来のMKLI培養液と異なる。
本発明における培養条件としては、間葉系細胞を本発明に用いる培養液で培養することにより、本発明の血小板様細胞集団を製造し得る限り特に制限されないが、培養温度として通常12〜45℃の範囲内、好ましくは15〜37℃の範囲内を挙げることができ、培養期間として通常4〜25日間の範囲内、好ましくは5〜17日間の範囲内を挙げることができる。また、8〜17日間の範囲内も挙げることができる。
本発明の製造方法は、本発明に用いる間葉系細胞を、本発明に用いる培養液で培養する前に、該間葉系細胞を維持培養して細胞数を増加させる工程をさらに有することが好ましい。かかる維持培養工程を有していると、後述するように、本発明に用いる培養液での培養に用い得る間葉系細胞数を増やすことができ、最初に用意した間葉系細胞数に対する本発明の血小板様細胞集団の収率を格段に上昇させることができるからである。かかる維持培養に用いる培養液としては、本発明に用いる間葉系細胞を増殖させ得る培養液である限り特に制限されず、例えば、前述の間葉系細胞培養用基本培養液(鉄イオンや鉄輸送体を含まないもの)などを挙げることができる。維持培養を行う場合は、血清や血清成分を含む間葉系細胞培養用基本培養液を用いることが好ましい。維持培養工程では、継代や培養液交換を適宜行うことが好ましい。
本発明における培養物から本発明の血小板様細胞集団を採取する方法としては特に制限されないが、かかる培養物から、本発明の血小板様細胞集団を含む培養上清を分取する方法や、フィルターなどを用いて分子の大きさにより本発明の血小板様細胞集団を分離する方法を挙げることができる。
本発明の血小板様細胞集団の製造方法は、培養物から本発明の血小板様細胞集団を採取するとき又は採取した後に、特定の又は特定の組合せの細胞表面マーカーの有無を指標として、(a)本発明の血小板様細胞集団から、特定の細胞表面マーカープロファイルを有する血小板様細胞(すなわち、特定の又は特定の組合せの細胞表面マーカーを発現する血小板様細胞)を選択する(select)工程、又は、(b)本発明の血小板様細胞集団において、特定の細胞表面マーカープロファイルを有する血小板様細胞の割合を向上若しくは低下させる工程をさらに含んでいてもよいが、簡便性等の観点から、含んでいない方が好ましい。かかる選択する工程又は向上若しくは低下させる工程を経た血小板様細胞集団における、特定の又は特定の組合せの細胞表面マーカーを発現する血小板様細胞の割合には、本明細書に挙げられた特定の細胞表面マーカーの陽性細胞の割合又はその割合のすべての組合せが含まれる。
(a)本発明の血小板様細胞集団から、特定の細胞表面マーカープロファイルを有する血小板様細胞集団を選択する方法や、(b)本発明の血小板様細胞集団において、特定の細胞表面マーカープロファイルを有する血小板様細胞の割合を向上若しくは低下させる方法としては特に制限されないが、より簡便かつ迅速に、目的とする細胞表面マーカープロファイルを有する血小板様細胞を選択する観点、又は、目的とする細胞表面マーカープロファイルを有する血小板様細胞の割合を向上若しくは低下させる観点から、上記の各細胞表面マーカーに対する抗体(好ましくは標識抗体、より好ましくは蛍光標識抗体)を用い、これら各抗体の特異的結合の有無を指標として、特定の細胞表面マーカープロファイルを有する血小板様細胞集団を選択する方法を好適に例示することができる。
上記の「抗体の特異的結合の有無を指標として選択する」とは、プロファイル中の陽性の細胞表面マーカーについては、該マーカーに対する抗体が特異的結合を示す細胞を選択し、プロファイル中の陰性の細胞表面マーカーについては該マーカーに対する抗体が特異的結合を示さない細胞を選択することを意味する。抗体の特異的結合の有無を指標として、特定の細胞表面マーカープロファイルを有する間葉系細胞を選択する方法としては特に制限されないが、セルソーター、磁気ビーズ又は細胞吸着用カラム等を用いた方法を挙げることができ、より簡便かつ迅速である点で、セルソーターを用いた方法を好適に挙げることができる。セルソーターを用いた方法は、フローサイトメトリー法に基づくものであり、当業者に良く知られている。具体的な方法は、セルソーターの取扱説明書の他、特表2009−513161号公報などにも記載されている。磁気ビーズを用いた方法は磁気分離法などとして当業者に良く知られており、具体的な方法としては、特定の抗体を担持した磁気ビーズを細胞に接触させた後、その磁気ビーズを磁石で回収することにより、その特定の抗体に特異的に結合する細胞を分離する方法などを挙げることができる。また、細胞吸着用カラムを用いた方法は当業者に良く知られており、具体的な方法としては、特定の抗体を担持する細胞吸着用カラムに細胞群を接触させ、目的とする細胞以外の細胞をカラムに吸着させる方法などを挙げることができる。
本発明の血小板様細胞集団の製造方法の特に好適な態様としては、
(A)脊椎動物の脂肪組織の間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞及び間質細胞を含む間質血管細胞群から選択される1種又は2種以上の細胞を成熟脂肪細胞に分化誘導する工程;
(B)工程(A)で得られた成熟脂肪細胞を脱分化誘導して、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株を得る工程;及び、
(C)工程(B)で得られた脂肪組織由来間葉系細胞株を、鉄イオン及び鉄輸送体を含む巨核球系細胞への分化誘導改変培養液で培養し、培養物から血小板様細胞集団を採取する工程;
を含み、
前記工程(C)の巨核球系細胞への分化誘導改変培養液が、ウシ血清アルブミン、LDLコレステロール、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、2−メルカプトエタノールを含んでおらず、ヒト血清アルブミン、鉄結合型トランスフェリン、インスリン、モノチオグリセロールを含む、本発明の血小板様細胞集団の製造方法が挙げられる。かかる製造方法により製造される血小板様細胞集団は、本発明の血小板様細胞集団として特に好ましく挙げられる。
本発明の血小板様細胞集団の製造方法の特に好適な態様は、簡便性や、より優れた創傷治癒促進効果を得る観点から、さらに以下のいずれか、又は両方の特徴を有していることが好ましい。
工程(B)で脂肪組織由来間葉系細胞株を得た後、工程(C)で前記細胞株を、鉄イオン及び鉄輸送体を含む巨核球系細胞への分化誘導改変培養液で培養する前に、前記細胞株において特定の細胞表面マーカーの発現の有無を指標とする細胞の選択を行わないこと;
工程(C)における、培養物から血小板様細胞集団を採取する方法が、特定の細胞表面マーカーの発現の有無を指標とする細胞の選択を含まないこと;
(工程A)
上記工程(A)としては、脊椎動物の脂肪組織の間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞及び間質細胞を含む間質血管細胞群から選択される1種又は2種以上の細胞(以下、本明細書において「間葉系幹細胞等」とも表示する。)を成熟脂肪細胞に分化誘導する工程である限り特に制限されない。かかる分化誘導の工程は、生体外での分化誘導の工程である。
脂肪組織の由来となる生物種としては、脊椎動物である限り特に制限されず、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類等を挙げることができ、中でも、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、サル、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の哺乳動物を好ましく挙げることができ、中でもヒトを特に好ましく挙げることができる。また、拒絶反応等を回避する観点から、本発明の血小板様細胞集団の製造方法に用いる脂肪組織の由来となる脊椎動物の生物種は、本発明の創傷治癒促進剤の適用対象となる脊椎動物の生物種と同じであることが好ましい。
本明細書における「脂肪組織」とは、脂肪を含む組織である限り特に制限されず、皮下脂肪組織、骨髄中の脂肪組織、内臓脂肪組織等が挙げられるが、脂肪組織を供給する脊椎動物に対する侵襲性が比較的低く、採取も比較的容易である点で、皮下脂肪組織が好ましく挙げられる。
本明細書における「間質血管細胞群」とは、脊椎動物の脂肪組織の細胞のうち、成熟脂肪細胞以外の細胞を意味する。間質血管細胞群には、通常、間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞、間質細胞、血管内皮細胞、血液に関する細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞などの細胞が含まれる。かかる「間質血管細胞群」は、脊椎動物の脂肪組織細胞を分散し得る酵素で脊椎動物の脂肪組織を処理して得られる細胞集団から、成熟脂肪細胞を除去することによって得ることができる。
上記の「脊椎動物の脂肪組織の間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞及び間質細胞を含む間質血管細胞群から選択される1種又は2種以上の細胞」としては、脊椎動物の脂肪組織の間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)、脂肪前駆細胞(preadipocytesあるいはadipose progenitor cells)及び間質細胞(stromal cell)を含む間質血管細胞群(stromal vascular fraction)から選択される1種又は2種以上の細胞である限り特に制限されないが、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株をより効率的に製造する観点から、脂肪前駆細胞のみである細胞集団よりも、脂肪前駆細胞と、間葉系幹細胞及び/又は間質細胞とを少なくとも含む細胞集団であることが好ましく、脂肪前駆細胞、間葉系幹細胞及び間質細胞を少なくとも含む細胞集団であることがより好ましく、さらに調製が簡便であることから、間質血管細胞群の細胞集団であることがさらに好ましい。
また、上記の「脊椎動物の脂肪組織の間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞及び間質細胞を含む間質血管細胞群から選択される1種又は2種以上の細胞」の好適な態様として、脊椎動物の脂肪組織の細胞を分散して得られる間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞及び間質細胞を含む間質血管細胞群から選択される1種又は2種以上の細胞が挙げられ、中でも、脊椎動物の脂肪組織細胞を分散し得る酵素で脊椎動物の脂肪組織を処理して得られる細胞集団から、成熟脂肪細胞を除去することにより得られる細胞集団(細胞集団A)が好ましく挙げられる。かかる細胞集団Aから、血管内皮細胞、及び/又は、血液に関する細胞をさらに除去することにより得られる細胞集団を用いてもよい。前述の脊椎動物の脂肪組織細胞を分散し得る酵素で脊椎動物の脂肪組織を処理して得られる細胞集団から成熟脂肪細胞等を除去することにより得られる細胞(細胞集団A)は、間質血管細胞群の細胞集団であり、間質血管細胞群には、通常、脊椎動物の脂肪組織の間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞、間質細胞、血管内皮細胞、血液に関する細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞などの細胞が含まれている。
上記の「脊椎動物の脂肪組織細胞を分散し得る酵素で脊椎動物の脂肪組織を処理する」方法としては、例えば、該酵素を含む溶液に脊椎動物の脂肪組織を浸漬して、例えば30分間〜3時間程度インキュベートする方法が挙げられる。
上記の「脊椎動物の脂肪組織細胞を分散し得る酵素」としては、脊椎動物の脂肪組織に作用させることによって、脊椎動物の脂肪組織の細胞を分散できる酵素である限り特に制限されず、例えば、コラゲナーゼ、トリプシン、カゼイナーゼ、クロストリパイン、トリプシン−EDTA、ディスパーゼ、サーモリシン、プロナーゼ、ヒアルロニダーゼ、パンクレアチン、エラスターゼ及びパパインからなる群から選択される1種又は2種以上の酵素が挙げられ、中でも、コラゲナーゼ、トリプシン、カゼイナーゼ及びクロストリパインからなる群から選択される1種又は2種以上の酵素が好ましく挙げられ、市販されているコラゲナーゼ(タイプI)や、コラゲナーゼ(タイプII)がより好ましく挙げられ、コラゲナーゼ(タイプII)がさらに好ましく挙げられる。また、上記の「脊椎動物の脂肪組織細胞を分散し得る酵素」には、少なくともコラゲナーゼが含まれていることが好ましい。
上記の「脊椎動物の脂肪組織細胞を分散し得る酵素で脊椎動物の脂肪組織を処理して得られる細胞集団から、成熟脂肪細胞を除去する」方法としては、かかる細胞集団から成熟脂肪細胞を除去することができる方法である限り特に制限されないが、前述の細胞集団を含む懸濁液を遠心分離した際に沈殿する細胞集団(細胞ペレット)を回収する方法が好ましく挙げられる。成熟脂肪細胞は脂肪を多く含んでいるため比重が軽く、遠心分離した際に上清の上部に浮遊するので、かかる遠心分離で沈殿した細胞ペレットを回収すれば、成熟脂肪細胞を除去することができる。また、脊椎動物の脂肪組織細胞を分散し得る酵素で脊椎動物の脂肪組織を処理して得られる細胞集団から、血管内皮細胞や、平滑筋細胞や、線維芽細胞を除去する方法としては、かかる細胞集団からそれらの細胞を除去することができる方法である限り特に制限されないが、例えば血管内皮細胞のマーカーとして知られているCD31が陰性の細胞を選択すること(又は、CD31が陽性の細胞を除去すること)により、細胞集団から血管内皮細胞を除去する方法が挙げられ、細胞集団から血液に関連する細胞を除去する方法としては、CD45(赤血球及び血小板以外の造血細胞のマーカー)陰性及びTer119(赤血球やその前駆細胞のマーカー)陰性の細胞を選択すること(又は、CD45陽性及びTer119陽性の細胞を除去すること)により、細胞集団から血液に関連する細胞を除去する方法が挙げられる。また、細胞表面マーカーではないが、7−アミノ−アクチノマイシンD(7−AAD)が陰性であることを指標にすると、脊椎動物の脂肪組織に含まれていた死細胞を排除できるため好ましい。7−AADは、死細胞のDNA鎖にインターカレートし、488nmの励起光により赤色蛍光を発する。
上記の沈殿した細胞ペレット(細胞集団A)は間質血管細胞群の細胞であり、間質血管細胞群には、通常、間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞、間質細胞(ストローマ細胞)、血管内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞などが含まれているが、成熟脂肪細胞に分化し得るのは、間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞、間質細胞である。したがって、成熟脂肪細胞への分化誘導を行う前などに、上記の沈殿した細胞ペレットから、これら3種以外の細胞のいずれか1種又は2種以上又はすべての種類を除去する工程をさらに有していてもよいが、有していなくてもよく、操作の簡便性の観点から、かかる工程を有していないことが好ましい。血管内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞は、間葉系幹細胞等と共に、成熟脂肪細胞への分化誘導に供したとしても、成熟脂肪細胞に分化することはなく、また、間葉系幹細胞等の成熟脂肪細胞への分化を妨げることもない。
上記工程(A)において、脊椎動物の脂肪組織の間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞及び間質細胞を含む間質血管細胞群から選択される1種又は2種以上の細胞を成熟脂肪細胞に分化誘導する方法としては、脊椎動物の脂肪組織の間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞及び間質細胞を含む間質血管細胞群から選択される1種又は2種以上の細胞を、脂肪細胞分化誘導物質を含む間葉系細胞培養用基本培養液中で培養する方法が好ましく挙げられる。間葉系幹細胞等を、脂肪細胞分化誘導物質を含む間葉系細胞培養用基本培養液中で培養する方法としては、かかる培養により、間葉系細胞を成熟脂肪細胞へ分化誘導し得る限り特に制限されず、例えば脂肪前駆細胞を成熟脂肪細胞へ分化誘導する通常の方法等と同様の方法、すなわち、脂肪細胞分化誘導物質を含む間葉系細胞培養用基本培養液中で出発細胞を培養する方法を用いることができる。
上記工程(A)において、間葉系幹細胞等を、脂肪細胞分化誘導物質を含む間葉系細胞培養用基本培養液中で培養する条件等としては、例えば細胞外マトリックスでコーティングされた培養容器内で接着培養する方法を挙げることができ、培養温度として通常12〜45℃の範囲内、好ましくは15〜37℃の範囲内を挙げることができ、培養期間として、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株をより効率的に製造することと、より短期間で製造することとのバランスの観点から、5〜16日間の範囲内、好ましくは7〜14日間の範囲内、より好ましくは8〜12日間の範囲内、さらに好ましくは9〜11日間の範囲内、より好ましくは10日間を挙げることができる。なお、かかる培養において、間葉系幹細胞等は継代しなくてもよいが、継代してもよい。また、上記の細胞外マトリックスとしては、コラーゲン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、ラミニンから選択される1種又は2種以上の成分が挙げられ、かかる成分を含むBD Matrigel(登録商標)(BD Biosciences社製)などを用いることもできる。
上記の脂肪細胞分化誘導物質としては、成熟脂肪細胞に分化誘導し得る細胞を、成熟脂肪細胞に分化させる作用又はその作用を補助する作用を有している限り特に制限されず、例えば、デキサメタゾン、イソブチルメチルキサンチン、インスリン及び血清からなる群から選択される1種又は2種以上が挙げられ、成熟脂肪細胞へのより優れた分化誘導効率を得る観点から、中でも、「血清とデキサメタゾンの組合せ」、「血清とデキサメタゾンを少なくとも含む脂肪細胞分化誘導物質の組合せ」、「血清とイソブチルメチルキサンチンの組合せ」、「血清とイソブチルメチルキサンチンを少なくとも含む脂肪細胞分化誘導物質の組合せ」が好ましく挙げられ、中でも、「血清とデキサメタゾンとインスリンの組合せ」、「血清とデキサメタゾンとインスリンを少なくとも含む脂肪細胞分化誘導物質の組合せ」、「血清とイソブチルメチルキサンチンとインスリンの組合せ」、「血清とイソブチルメチルキサンチンとインスリンを少なくとも含む脂肪細胞分化誘導物質の組合せ」、「血清とデキサメタゾンとイソブチルメチルキサンチンの組合せ」、「血清とデキサメタゾンとイソブチルメチルキサンチンを少なくとも含む脂肪細胞分化誘導物質の組合せ」がより好ましく挙げられ、中でも、「血清とデキサメタゾンとイソブチルメチルキサンチンとインスリンの組合せ」、「血清とデキサメタゾンとイソブチルメチルキサンチンとインスリンを少なくとも含む脂肪細胞分化誘導物質の組合せ」がさらに好ましく挙げられる。脂肪細胞分化誘導物質や、該物質を含む間葉系細胞培養用基本培養液は、市販されているものを用いてもよいし、かかる培養液は、間葉系細胞培養用基本培養液に脂肪細胞分化誘導物質を添加して調製した培養液を用いてもよい。脂肪細胞分化誘導物質を含む市販の培養液としては、Adipocyte Differentiation Medium培養液(Cell Applications社製)が好ましく挙げられる。なお、上に列挙した脂肪細胞分化誘導物質以外の物質であって、成熟脂肪細胞に分化させる作用を補助する作用を有する物質として、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、インドメタシン等が挙げられる。
上記の脂肪細胞分化誘導物質の培養液中の濃度としては、間葉系幹細胞等を成熟脂肪細胞に分化誘導し得る限り特に制限されないが、通常、デキサメタゾン濃度として、0.1〜10μMの範囲内、好ましくは0.5〜2.5μMの範囲内が挙げられ、イソブチルメチルキサンチン濃度として、10〜1000μMの範囲内、好ましくは250〜750μMの範囲内が挙げられ、インスリン濃度として、0.1〜10μMの範囲内、好ましくは0.5〜2.5μMの範囲内が挙げられ、血清濃度として、1〜20重量%の範囲内、好ましくは5〜15重量%の範囲内、より好ましくは7〜13重量%の範囲内が挙げられる。
(工程B)
上記工程(B)としては、工程(A)で得られた成熟脂肪細胞(易脱分化成熟脂肪細胞)を脱分化誘導して、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株を得る工程である限り特に制限されない。かかる工程は、生体外での工程である。
工程(B)で用いる成熟脂肪細胞は、工程(A)での分化誘導により得られた成熟脂肪細胞である。かかる成熟脂肪細胞は、例えば、工程(A)の培養懸濁液を遠心分離して、上清の上部に浮遊する細胞を回収することにより得ることができる。成熟脂肪細胞は脂肪を多く含んでいるため比重が軽く、遠心分離した際に上清の上部に浮遊するからである。
上記工程(B)において、工程(A)で得られた成熟脂肪細胞(易脱分化成熟脂肪細胞)を脱分化誘導して、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株を得る方法としては、かかる成熟脂肪細胞を脱分化誘導して、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株を得る方法である限り特に制限されないが、かかる成熟脂肪細胞をいわゆる天井培養する方法が好ましく挙げられる。天井培養とは、培養液が充満した培養容器(好ましくは培養フラスコ)の内側上面(天井面)に細胞を接着又は浮遊させて(好ましくは接着させて)培養する方法であり、脂肪を多く含んでいるため比重が軽く、培養液中で浮遊するという成熟脂肪細胞の性質を利用して、該細胞を培養する方法である。
成熟脂肪細胞を脱分化誘導培養する際の培養液としては、細胞外マトリックスを含む間葉系細胞培養用基本培養液が挙げられ、かかる細胞外マトリックスとしては、コラーゲン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、ラミニン、血清(FBS等)から選択される1種又は2種以上の成分が挙げられ、かかる成分を含むBD Matrigel(登録商標)(BD Biosciences社製)などを用いることもできる。成熟脂肪細胞を脱分化誘導培養する際の培養液におけるFBS等の血清は、成熟脂肪細胞を培養容器の天井面に接着させるための接着因子としてのみ用いてもよいし、そのための接着因子としてのみ用いなくてもよい。成熟脂肪細胞を脱分化誘導培養する際の培養液は、FBS等の血清を含んでいなくてもよいが、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株をより効率的に製造する観点から、血清以外の細胞外マトリックスと共に、又は、血清以外の細胞外マトリックスを伴わずに、FBS等の血清を含んでいることが好ましい。かかる培養液がFBS等の血清を含んでいる場合の血清濃度としては、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株が得られる限り特に制限されないが、3〜30重量%の範囲内が挙げられ、7〜25重量%の範囲内が好ましく挙げられ、7〜13重量%の範囲内がより好ましく挙げられる。
上記工程(B)において、成熟脂肪細胞を、細胞外マトリックスを含む間葉系細胞培養用基本培養液中で培養する条件等のうち、天井培養以外の条件等について述べると、培養温度として通常12〜45℃の範囲内、好ましくは15〜37℃の範囲内を挙げることができ、培養期間として、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株をより効率的に製造することと、より短期間で製造することとのバランスの観点から、2〜28日間の範囲内、好ましくは4〜21日間の範囲内、より好ましくは5〜14日間の範囲内、さらに好ましくは6〜10日間の範囲内、より好ましくは7日間を挙げることができる。なお、かかる培養において、成熟脂肪細胞等は継代しなくてもよいが、継代してもよい。
上記工程(B)において天井培養を行った培養液から、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株を単離してもよいし、単離しなくてもよいが、単離することが好ましい。かかる天井培養を継続すると、株化した脂肪組織由来間葉系細胞株は活発に増殖する一方で、成熟脂肪細胞は次第に減少するので、脂肪組織由来間葉系細胞株を多く含む細胞集団を得ることができるし、例えば、天井培養を14日間くらい継続すると、脂肪組織由来間葉系細胞株をきわめて多く含む細胞集団を得ることができる。
なお、上記工程(B)において天井培養を行うことには、工程(A)で得られた成熟脂肪細胞(易脱分化成熟脂肪細胞)が培養容器の天井面に接着した後、その接着面が培養容器の下側となるように培養容器を配置して培養を継続することも便宜上含まれるが、工程(A)で得られた成熟脂肪細胞(易脱分化成熟脂肪細胞)が培養容器の天井面に接着した状態で培養を継続し、その接着面が培養液の下側となるように培養容器を配置した培養を行わずに脂肪組織由来間葉系細胞株を得てもよい。
(工程C)
なお、上記工程(C)における「脂肪組織由来間葉系細胞株を、鉄イオン及び鉄輸送体を含む巨核球系細胞への分化誘導改変培養液で培養し、培養物から血小板様細胞集団を採取する」方法は、前述の「本発明の血小板様細胞集団の製造方法」に記載した通りです。
また、上記工程(C)における巨核球系細胞への分化誘導改変培養液は、ウシ血清アルブミン、LDLコレステロール、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、2−メルカプトエタノールを含んでおらず、ヒト血清アルブミン、鉄結合型トランスフェリン、インスリン、モノチオグリセロールを含む。このことにより、ヒトに適用した場合の安全性がより高いなど、より優れた血小板様細胞集団を得ることができる。かかる好適な巨核球系細胞への分化誘導改変培養液としては、後述の実施例2における改変MKLI培養液や、該改変MKLI培養液における各成分の濃度に対して、各成分ごとに独立に70〜130重量%の範囲内(好ましくは80〜120重量%の範囲内)の割合の濃度の各成分を含む培養液を挙げることができる。
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[脂肪組織由来間葉系細胞株の作製]
ヒトから皮下脂肪組織片を単離後、コラゲナーゼ(collagenase type II; sigma社製
)を加え37℃1時間インキュベーションし、細胞懸濁液を得た。かかる細胞懸濁液を遠心分離したところ、比重の軽い成熟脂肪細胞は上清に浮遊し、それ以外の種類の細胞は細胞ペレットとして沈殿した。細胞ペレットには、間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞、間質細胞(ストローマ細胞)、血管内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞などが含まれている。この後の実験には細胞ペレットの細胞を用いた。培養ディッシュに入れたAdipocyte Differentiation Medium培養液(Cell Applications社製)にて、前述の細胞ペレットの細胞を37℃、CO濃度5%条件下で10日間培養した。培養後の細胞には、間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞、間質細胞を含む間質血管細胞群から分化誘導された成熟脂肪細胞(易脱分化成熟脂肪細胞)が多く含まれている。培養後の細胞を、トリプシンを用いて培養ディッシュからはがし、その細胞にトリプシン及びDMEM培養液(Dulbecco's Modified Eagle's Medium、ライフテクノロジー社製)を加えて遠心分離器にかけ、その上清に浮いてくる成熟脂肪細胞(易脱分化成熟脂肪細胞)を回収した。20%FBSを含むDMEM培養液を十分量入れた培養フラスコに、前述の易脱分化成熟脂肪細胞を加え、その細胞を、培養液が充満した培養フラスコの内側の上面に浮遊、付着させて培養した(いわゆる「天井培養」)。かかる天井培養は、37℃、CO濃度5%条件下で7日間行った。このように培養することにより、ヒト脂肪組織由来間葉系細胞株が得られた。なお、従来法(日本特許第5055611号公報)では、脂肪組織の採取から脂肪前駆細胞株を作製するのに2ヶ月強の期間を要していたが、本発明のこの方法では、脂肪組織を採取してから1ヶ月弱で多くの量の脂肪組織由来間葉系細胞株を作製することができた。なお、得られたヒト脂肪組織由来間葉系細胞株は、FBSを含むDMEM培養液(脂肪前駆細胞培養用基本培養液)で継代培養を行った。
なお、同じ大きさの皮下脂肪組織片(1cm平方)から脂肪前駆細胞株を作製した場合に、同じ作製期間(例えば2ヶ月間)当たりに得られる細胞株の量(細胞数)を、本発明の方法(易脱分化成熟脂肪細胞を作製してから、該細胞を天井培養して株化する方法)と、従来法(脂肪組織から採取した成熟脂肪細胞を天井培養して株化する方法(日本特許第5055611号公報))とで比較したところ、本発明の方法では従来法と比較して約15倍もの細胞株が得られた。このことは、本発明の脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株の製造方法(樹立方法)が、脊椎動物の脂肪組織から間葉系細胞株を顕著に効率的に製造できることを示している。また、得られたヒト脂肪組織由来間葉系細胞株は、20代目においても増殖能を維持しており、また、ダブリングタイムは23時間であることが観察されている。
なお、実施例1では、ヒトの皮下脂肪組織を用いているが、本発明者らは、マウスの皮下脂肪組織を用いた場合にも、同様の方法で脂肪組織由来間葉系細胞株が得られることを確認した。なお、以下の実施例の記載における培地成分の濃度はいずれも、培地における最終濃度を表す。
[脂肪組織由来間葉系細胞株から本発明の血小板様細胞集団の作製]
培養ディッシュに培養液を添加した。培養液としては、造血幹細胞を巨核球、血小板へと分化誘導し得る培養液として知られているMKLI培養液(megakaryocyte lineage induction medium)を、本発明者らが改良した培養液(「改変MKLI培養液」)を用いた。該改変MKLI培養液は、IMDM培養液(Iscove's Modified Dulbecco's Medium、ライフテクノロジー社製)に、2mM L−グルタミン(ライフテクノロジー社製)、100U/mL ペニシリン−ストレプトマイシン溶液(ライフテクノロジー社製)、0.5% ヒト血清アルブミン(シグマ社製)、200μg/mL 鉄飽和トランスフェリン(シグマ社製)、10μg/mL インスリン(シグマ社製)、20μM モノチオグリセロール(wako社製)を添加し作製した。改変MKLI培養液は、BSAに代えてヒト血清アルブミンを用いる点、LDLコレステロールを用いない点、dNTPを用いない点、メルカプトエタノールに代えてモノチオグリセロールを用いる点で、従来のMKLI培養液と異なる。
上記の実施例1で作製したヒト脂肪組織由来間葉系細胞株を、上記の改変MKLI培養液にて、37℃、CO濃度5%条件下で12日間培養し、細胞集団を得た。かかる細胞集団における細胞は、大きさが1〜10μmで、核を持たず、血小板に類似した血小板様細胞であったため、かかる細胞集団を血小板様細胞集団と名付けた。かかる血小板様細胞集団は、ASCL−PLC(Platelet-like cells from adipose-derived mesenchymal stem/stromal cell line)とも表示する。
[血小板様細胞集団の細胞表面マーカーの解析 1]
実施例1で作製したヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞株を、実施例2に記載の方法により、巨核球系細胞への分化誘導処理を行い、分化誘導後12日目に血小板様細胞集団(ASCL−PLC)を回収し、PBS溶液中に懸濁した後、標識物質で標識した25種類の細胞表面マーカー(CD9、CD10、CD13、CD26、CD29、CD36、CD41/CD61、CD42b、CD44、CD49b、CD61、CD63、CD72、CD73、CD77、CD81、CD90、CD95、CD107a、CD107b、CD140b、CD147、CD164)に対する抗体(表1参照)存在下で、45分間、25℃で抗原抗体反応を行った。その後、フローサイトメーター(FACSVerse[BD Bioscience社製])を用いて、上記25種類の細胞表面マーカー陽性細胞の解析を行った(表2参照)。なお、コントロールとして、2名の健常者の末梢血から採血した血小板を用い、ASCL−PLCと同様に処理して、上記23種類の細胞表面マーカー陽性細胞の解析を行った。
表中の数値は、3種類の細胞(ASCL−PLC、ヒト血小板−1、及びヒト血小板−2)について、各種細胞表面マーカーを発現する細胞の割合(%)を示す。また、表中の「−」は、検出限界値(0.1%)未満であることを示す。
血小板においては、血小板表面マーカー(例えば、CD9、CD29、CD36、CD41/61、CD42b、CD49b、CD61、CD147)を発現している細胞の割合が高かった(表2参照)。一方、ASCL−PLCにおける血小板表面マーカーについて見ると、CD63を発現している細胞の割合は、血小板におけるその割合より高く、また、CD29を発現している細胞の割合は、血小板におけるその割合よりやや低く、また、CD9、CD36、CD41/61、CD42b、CD61、CD147を発現している細胞の割合は、血小板におけるその割合よりかなり低かった。
また、間葉系細胞表面マーカー(例えば、CD90、CD13、CD26、CD44、CD73、CD77、CD81、CD95及びCD164)について見ると、ASCL−PLCにおいてかかる間葉系細胞表面を発現している細胞の割合は、血小板におけるその割合よりもかなり高かった(表2参照)。
これらの結果は、ASCL−PLCが、1種又は2種以上の血小板表面マーカーを発現する血小板様細胞と、1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを発現する血小板様細胞を含む細胞集団であることを示している。さらに、CD42bとCD90の共染色の結果(図1)は、ASCL−PLCが、血小板表面マーカーであるCD42bと、間葉系細胞表面マーカーであるCD90を共発現する血小板様細胞(すなわち、CD42bが陽性であり、かつ、CD90が陽性である血小板様細胞)を含んでいることを示している。このように、ASCL−PLCは、血液細胞と間葉系細胞という異なる細胞分化系統の表面抗原を共発現する細胞を含む細胞集団であることが示された。
[血小板様細胞集団の細胞表面マーカーの解析 2]
解析対象である細胞表面マーカーをCD41とCD42bとしたこと以外は、実施例3に記載と同じ方法で、血小板様細胞集団の細胞表面マーカーの解析を行った。細胞表面マーカーの解析は、巨核球系細胞への分化誘導後4日目、6日目、8日目、10日目、12日目及び14日目に行った。なお、CD41に対する抗体として、anti-human CD41 (BioLegend社製)を、CD42bに対する抗体として、anti-human CD42b (BioLegend社製)を用いた。
CD41とCD42bの共染色の結果を図2に示す。図2の結果から分かるように、
改変巨核球系細胞への分化誘導培養液を用いて間葉系細胞株の培養を行うと、培養日数に伴って血小板の特異的表面抗原を発現する細胞がみとめられる。
[ASCL−PLCによる創傷治癒効果の解析]
免疫不全マウスであるNSGマウス(オリエンタル酵母社製)に、直径8mmの全創欠損をつくり、それぞれにPBS、ヒト血小板、ASCL−PLC(ヒト血小板と同数の4×10個の細胞)、ヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor;bFGF)を単回塗布し、創傷面積の縮小率を経時的に解析した(図3A及びB参照)。
その結果、ASCL−PLCを用いて創傷部位を治療した場合、血小板を用いた場合と比べ、高い創傷面積縮小効果を示した(図3A及びBの7日目参照)。また、組織サンプルを病理学的に解析した結果、ASCL−PLCを用いた場合、ASCL−PLCの創傷部位への接着効率が高いこともあり、比較的早期(少なくとも塗布後5日目)に、肉芽組織の形成と、層状構築の改善が認められた(図3C参照)。一方、血小板を用いた場合には、このような効果は認められなかった。
以上の結果は、ASCL−PLCは、創傷治療の臨床で一般的に用いられる血小板よりも、高い創傷治癒効果を有することを示している。
[ASCL−PLCのサイトカイン産生効果]
ASCL−PLC及びヒト血小板を、それぞれ20×10個/mLとなるように20μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS溶液)中に懸濁し、10mMCaClで15分間刺激した後、ELISAキット(FGF basic Human ELISA Kit、abcam社製)を用いて、PBS溶液中の各種サイトカインの産生量を測定した。なお、上記の懸濁に用いるPBS溶液の組成としては、8g/L NaCl、0.2g/L KCl、1.44g/L NaHPO、0.24g/L KHPO(pH7.4)が好ましく挙げられる。
その結果、ASCL−PLC及びヒト血小板のいずれの細胞からも、創傷治癒に重要と考えられているサイトカイン(bFGF、PDGF、VEGF−A、TGF−β、及びEGF)の放出が認められた(図4参照)。ただし、特に、創傷治癒の既存薬となっているbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)の産生量は、ASCL−PLCでは、ヒト血小板よりも顕著に高く、ヒト血小板の約60倍であった(図4A参照)。
本発明によれば、創傷の治癒をより効果的に促進する、より実用的な創傷治癒促進剤等を提供することができる。より詳細には、本発明によれば、末梢血血小板よりも多量に入手しやすく、かつ、末梢血血小板よりも優れた創傷治癒効果を有する、より実用的な創傷治癒促進剤等を提供することができる。

Claims (11)

  1. 1種又は2種以上の血小板表面マーカーと1種又は2種以上の間葉系細胞表面マーカーを共発現する血小板様細胞集団を含有することを特徴とする創傷治癒促進剤。
  2. 創傷に局所投与することを特徴とする請求項1に記載の創傷治癒促進剤。
  3. 血小板様細胞集団におけるCD29陽性細胞の割合が60%以上であり、CD42b陽性細胞の割合が5%以上であり、及び、CD90陽性細胞の割合が30%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の創傷治癒促進剤。
  4. さらに、血小板様細胞集団が、以下の条件の1つ又は2つ以上を満たしていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の創傷治癒促進剤;
    CD9陽性細胞の割合が30%以下である;
    CD13陽性細胞の割合が30%以上である;
    CD26陽性細胞の割合が15%以上である;
    CD36陽性細胞の割合が40%以下である;
    CD41/61陽性細胞の割合が60%以下である;
    CD42b陽性細胞の割合が5%以上である;
    CD41陽性細胞の割合が20%以上である;
    CD44陽性細胞の割合が30%以上である;
    CD49b陽性細胞の割合が30%以上である;
    CD61陽性細胞の割合が30%以下である;
    CD63陽性細胞の割合が60%以上である;
    CD73陽性細胞の割合が40%以上である;
    CD95陽性細胞の割合が20%以上である;
    CD107a陽性細胞の割合が45%以上である;
    CD107b陽性細胞の割合が20%以上である;
    CD147陽性細胞の割合が50%以下である;
    CD164陽性細胞の割合が15%以上である;。
  5. 血小板様細胞集団がヒト由来の血小板様細胞集団であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の創傷治癒促進剤。
  6. 血小板様細胞集団が、以下の測定方法で測定される、血小板様細胞集団の塩基性線維芽細胞増殖因子の産生量が、血小板の細胞集団のその産生量の10倍以上である血小板様細胞集団であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の創傷治癒促進剤;
    (塩基性線維芽細胞増殖因子の産生量の測定方法)
    細胞集団の細胞を20×10個/mLとなるように20μLのリン酸緩衝生理食塩水中に懸濁し、10mM CaClで15分間刺激した後、前記リン酸緩衝生理食塩水中の塩基性線維芽細胞増殖因子の量を測定する;。
  7. 以下の測定方法で測定される、血小板様細胞集団の開放創傷面積の比が90%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の創傷治癒促進剤;。
    (開放創傷面積の測定方法)
    創傷に適用開始してから7〜9日経過後における開放創傷面積の比[(各投与群の開放創傷面積(%)/コントロール投与群の開放創傷面積(%))×100で算出される面積比]
  8. 創傷が、切創、裂創、割創、刺創、杙創、挫創、剥皮創、咬創、銃創、褥瘡、切傷、裂傷、刺傷、挫傷、咬傷、擦過傷、熱傷、皮膚潰瘍、褥瘡、糜爛、手術創傷及び縫合不全からなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の創傷治癒促進剤。
  9. 血小板様細胞集団が、
    (A)脊椎動物の脂肪組織の間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞及び間質細胞を含む間質血管細胞群から選択される1種又は2種以上の細胞を成熟脂肪細胞に分化誘導する工程;
    (B)工程(A)で得られた成熟脂肪細胞を脱分化誘導して、脊椎動物の脂肪組織由来間葉系細胞株を得る工程;及び、
    (C)工程(B)で得られた脂肪組織由来間葉系細胞株を、鉄イオン及び鉄輸送体を含む巨核球系細胞への分化誘導改変培養液で培養し、培養物から血小板様細胞集団を採取する工程;
    を含む方法によって製造され、
    前記工程(C)の巨核球系細胞への分化誘導改変培養液が、ウシ血清アルブミン、LDLコレステロール、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、2−メルカプトエタノールを含んでおらず、ヒト血清アルブミン、鉄結合型トランスフェリン、インスリン、モノチオグリセロールを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の創傷治癒促進剤。
  10. 工程(B)で脂肪組織由来間葉系細胞株を得た後、工程(C)で前記細胞株を、鉄イオン及び鉄輸送体を含む巨核球系細胞への分化誘導改変培養液で培養する前に、前記細胞株において特定の細胞表面マーカーの発現の有無を指標とする細胞の選択を行わないことを特徴とする請求項9に記載の創傷治癒促進剤。
  11. 工程(C)における、培養物から血小板様細胞集団を採取する方法が、特定の細胞表面マーカーの発現の有無を指標とする細胞の選択を含まないことを特徴とする請求項9又は10に記載の創傷治癒促進剤。
JP2017158702A 2017-08-21 2017-08-21 血小板表面抗原と間葉系細胞表面抗原を共発現する血小板様細胞を含む創傷治癒促進剤 Active JP6999918B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017158702A JP6999918B2 (ja) 2017-08-21 2017-08-21 血小板表面抗原と間葉系細胞表面抗原を共発現する血小板様細胞を含む創傷治癒促進剤
US16/162,546 US11712451B2 (en) 2017-08-21 2018-10-17 Agent for promoting wound healing comprising platelet-like cell co-expressing platelet surface antigen and mesenchymal cell surface antigen

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017158702A JP6999918B2 (ja) 2017-08-21 2017-08-21 血小板表面抗原と間葉系細胞表面抗原を共発現する血小板様細胞を含む創傷治癒促進剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019034917A true JP2019034917A (ja) 2019-03-07
JP6999918B2 JP6999918B2 (ja) 2022-02-04

Family

ID=65636760

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017158702A Active JP6999918B2 (ja) 2017-08-21 2017-08-21 血小板表面抗原と間葉系細胞表面抗原を共発現する血小板様細胞を含む創傷治癒促進剤

Country Status (2)

Country Link
US (1) US11712451B2 (ja)
JP (1) JP6999918B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023085219A1 (ja) 2021-11-11 2023-05-19 慶應義塾 脂肪組織由来間葉系幹細胞株を用いた変形性膝関節症の治療
WO2023112942A1 (ja) 2021-12-16 2023-06-22 慶應義塾 脂肪組織由来間葉系幹細胞株を用いた肝障害の治療

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102592176B1 (ko) 2018-01-05 2023-10-20 플레이틀렛 바이오제네시스, 인크. 거핵구 생성을 위한 조성물 및 방법
CA3173513A1 (en) * 2020-03-27 2021-09-30 Sunita R. HETT Novel anucleated cells and uses thereof
CA3178603A1 (en) * 2020-05-14 2021-11-18 Platelet Biogenesis, Inc. Novel anucleated cells as a source for treatment of platelet rich plasma dependent disorders
WO2024148315A1 (en) * 2023-01-06 2024-07-11 Stellular Bio, Inc. Megakaryocyte derivatives for treatment of dry eye diseases

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006030887A1 (ja) * 2004-09-17 2006-03-23 Cellgentech, Inc. 外用皮膚潰瘍治療剤
JP2006230316A (ja) * 2005-02-25 2006-09-07 Japan Health Science Foundation 瘢痕のない創傷治癒能を有する細胞およびその調製方法
JP2008546397A (ja) * 2005-06-24 2008-12-25 セリェリクス、ソシエダッド、リミターダ 瘻の治療における脂肪組織由来間質幹細胞の使用
JP2016504339A (ja) * 2012-12-21 2016-02-12 オカタ セラピューティクス, インコーポレイテッド 多能性幹細胞から血小板を生産するための方法およびその組成物

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2366019A1 (en) 2008-12-03 2011-09-21 Cellerix, S.A. Methods for the preparation of adipose derived stem cells and utilizing said cells in the treatment of diseases
WO2014208100A1 (ja) * 2013-06-28 2014-12-31 学校法人慶應義塾 間葉系細胞を利用した巨核球、血小板及び/又はトロンボポエチンの製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2006030887A1 (ja) * 2004-09-17 2006-03-23 Cellgentech, Inc. 外用皮膚潰瘍治療剤
JP2006230316A (ja) * 2005-02-25 2006-09-07 Japan Health Science Foundation 瘢痕のない創傷治癒能を有する細胞およびその調製方法
JP2008546397A (ja) * 2005-06-24 2008-12-25 セリェリクス、ソシエダッド、リミターダ 瘻の治療における脂肪組織由来間質幹細胞の使用
JP2016504339A (ja) * 2012-12-21 2016-02-12 オカタ セラピューティクス, インコーポレイテッド 多能性幹細胞から血小板を生産するための方法およびその組成物

Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
J. THROMB. HAEMOST., 2016, VOL.14, PP.1285-1297, JPN6021033986, ISSN: 0004586502 *
PLOS ONE, 2012, VOL.7, NO.8, E44300, PP.1-9, JPN6021023900, ISSN: 0004586501 *
PLOS ONE, 2013, VOL.8, NO.3, E58123, PP.1-9, JPN6021033989, ISSN: 0004586503 *

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023085219A1 (ja) 2021-11-11 2023-05-19 慶應義塾 脂肪組織由来間葉系幹細胞株を用いた変形性膝関節症の治療
WO2023112942A1 (ja) 2021-12-16 2023-06-22 慶應義塾 脂肪組織由来間葉系幹細胞株を用いた肝障害の治療

Also Published As

Publication number Publication date
US20190269732A1 (en) 2019-09-05
US11712451B2 (en) 2023-08-01
JP6999918B2 (ja) 2022-02-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6999918B2 (ja) 血小板表面抗原と間葉系細胞表面抗原を共発現する血小板様細胞を含む創傷治癒促進剤
US20230149469A1 (en) Wound healing and tissue engineering
US8835170B2 (en) Methods and compositions useful for diabetic wound healing
KR100883565B1 (ko) 지방 줄기세포의 조직 재생 능력을 최적화한 조건 배지를 함유한 조직 재생용 주사제 첨가제
US8119398B2 (en) Adipose-derived stem cells for tissue regeneration and wound healing
JP6425308B2 (ja) 間葉系細胞を利用した巨核球、血小板及び/又はトロンボポエチンの製造方法
RU2756561C2 (ru) Среда для формирования колоний и её применение
JP7126703B2 (ja) 臍帯由来細胞を含む脳障害の治療剤
JP2003523166A (ja) 幹細胞および前駆細胞の増殖と分化を制御する方法
JPWO2014208100A6 (ja) 間葉系細胞を利用した巨核球、血小板及び/又はトロンボポエチンの製造方法
KR101174795B1 (ko) 피부 재생 시스템
JP2002502617A (ja) 幹細胞および前駆細胞の増殖と分化を制御する方法
KR20220080023A (ko) 개선된 줄기 세포 조성물
KR101349183B1 (ko) 3차원 세포배양으로 수득한 조건 배지를 유효성분으로 포함하는 허혈성 질환 치료용 약학적 조성물
JPWO2006112390A1 (ja) 脂肪由来前駆細胞およびその利用
US20170252411A1 (en) Compositions Derived from Platelet Lysates and Uses in Vascularization
WO2023085219A1 (ja) 脂肪組織由来間葉系幹細胞株を用いた変形性膝関節症の治療
WO2024172009A1 (ja) 間葉系細胞を含む細胞集団、細胞集団を含む医薬組成物、細胞集団から得られたエクソソーム及び細胞集団を作製する方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180409

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200601

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210628

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210806

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210906

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20211025

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211206

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211216

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6999918

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150