JP2019033017A - 燃料電池単セルの検査方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池単セルの反応ガス流路の端部のくし歯流路の変形を容易に確認する。【解決手段】発明は、燃料電池単セルの検査方法である。検査対象の燃料電池単セルは、反応ガスを流通させる反応ガス流路の端部に設けられたくし歯流路であって、並列に配置された複数の流路および複数の流路を互いに連通する連通路で構成されたくし歯流路を有している。燃料電池単セルの検査方法は、くし歯流路に液水がない状態で、反応ガス流路の第1圧力損失を測定する工程と、複数の流路のうちの一部の流路の連通路に連通する部分を含む領域に、予め定めた量の液水を配置する工程と、液水を凍結させる工程と、液水を凍結させた状態で、反応ガス流路の第2圧力損失を測定する工程と、第1圧力損失に対する第2圧力損失の上昇率が閾値よりも大きい場合に、複数の流路の断面積が許容範囲を超えて小さくなっていると判断する工程と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池単セルの検査方法に関するものである。
燃料電池は、通常、複数の燃料電池単セルを積層したスタック構造で利用される。そして、燃料電池単セルとしては、例えば、反応ガスの供給マニホールドと排出マニホールドとの間で反応ガスを流通させる反応ガス流路の端部に、複数の細い流路がくし歯状に形成された構造の流路(以下、「くし歯流路」とも呼ぶ)を有する燃料電池単セルが採用される場合がある(例えば、特許文献1参照)。
特開2014−197481号公報
製造された燃料電池単セルのなかには、反応ガスが流通するくし歯流路の流路の径(断面積)が許容範囲を超えて小さくなった状態のものが存在する可能性がある。このような燃料電池単セルでは、発電部への反応ガスの供給が不足して、発電性能が低下する可能性がある。また、発電性能が低下した状態での発電の継続の結果として、燃料電池単セルの劣化(発電部の触媒層劣化等)を招く可能性もある。このため、製造された燃料電池単セルにおいて、くし歯流路の流路の断面積が許容範囲を超えて小さくなった状態の有無を確認可能とし、くし歯流路の過度な変形の有無を確認可能とすることが望まれている。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、燃料電池単セルの検査方法が提供される。検査対象の燃料電池単セルは、反応ガスを流通させる反応ガス流路の端部に設けられたくし歯流路であって、並列に配置された複数の流路および前記複数の流路を互いに連通する連通路で構成されたくし歯流路を有している。そして、この燃料電池単セルの検査方法は;前記くし歯流路に液水がない状態で、前記反応ガスの流路の第1圧力損失を測定する工程と;前記複数の流路のうちの一部の流路の前記連通路に連通する部分を含む領域に、予め定めた量の液水を配置する工程と;前記液水を凍結させる工程と;前記液水を凍結させた状態で、前記反応ガス流路の第2圧力損失を測定する工程と;前記第1圧力損失に対する前記第2圧力損失の上昇率が閾値よりも大きい場合に、前記複数の流路の断面積が許容範囲を超えて小さくなっていると判断する工程と;を備える。
くし歯流路の流路の断面積が許容範囲を超えて小さくなっている場合、連通路の断面積も同様に小さくなっている可能性が高い。このため、複数の流路のうちの一部の流路の連通路に連通する部分を含む領域に配置された液水は、毛管現象によって連通路を介して他の流路に吸い込まれて広がり、反応ガスが流通できるくし歯流路の流路の断面積を小さくする。従って、例えば、くし歯流路に変形が発生して、くし歯流路の複数の流路の断面積が許容範囲を超えて小さくなっている場合、くし歯流路の複数の流路の断面積が小さくなっていない場合に比べて、反応ガス流路の圧力損失が大きくなる。そこで、上記形態の燃料電池単セルの検査方法によれば、第1圧力損失に対する第2圧力損失の上昇率が閾値よりも大きい否か判断することにより、くし歯流路の流路の断面積が許容範囲を超えて小さくなっているか否かを確認することができ、例えば、くし歯流路の変形が許容範囲を超えて発生しているか否かを確認することができる。
本発明の一実施形態としての燃料電池単セルの検査方法を実行する検査装置を示す説明図である。 検査対象セルを含む検査ユニットを示す説明図である。 燃料ガス供給マニホールド孔に連結されたくし歯流路を拡大して示す説明図である。 液水注入装置の注入管が挟みこまれた状態における注入管の先端部周辺を拡大して示す説明図である。 燃料電池単セルの検査方法の手順を示す説明図である。 燃料ガス供給マニホールド孔に液水が配置された状態を示す説明図である。 くし歯流路内に液水が配置された状態の一例を示す説明図である。 くし歯流路内に液水が配置された状態の他の一例を示す説明図である。 図8に示したくし歯流路内に検査ガスを流通させた状態を示す説明図である。 良品の圧力損失の上昇率と不良品の圧力損失の上昇率の一例を比較して示す説明図である。
A.実施形態:
図1は、本発明の一実施形態としての燃料電池単セルの検査方法を実行する検査装置1000を示す説明図である。検査装置1000は、温度調整容器130と、検査ガス供給装置110と、検査ガス排出装置120と、制御装置140と、を備えている。
温度調整容器130は、後述するように、容器内に設置された検査ユニット100を冷却し、あるいは、加熱する装置である。温度調整容器130としては、例えば、恒温槽が利用される。検査ユニット100は、後述するように、検査対象セル10である燃料電池単セルが検査用フレーム50及び検査用フレーム60に挟持された構造を有している。
検査ガス供給装置110は、温度調整容器130の外部から内部へ延びる検査ガス供給配管112を介して、温度調整容器130内に設置された検査ユニット100のガス供給配管口52に接続されている。検査ガス排出装置120は、温度調整容器130の外部から内部へ延びる検査ガス排出配管122を介してガス排出配管口54に接続されている。検査ガス供給装置110は、設定した一定流量の検査ガス(本例では、窒素ガス)を検査ガス供給配管112及びガス供給配管口52を介して、検査ユニット100に含まれる検査対象セル10の燃料ガス供給マニホールド孔に供給する。燃料ガス供給マニホールド孔に供給された検査ガスは、燃料ガス流路及び燃料ガス排出マニホールド孔を流通し、ガス排出配管口54及び検査ガス排出配管122を介して検査ガス排出装置120へ排出される。なお、検査ガス供給装置110は、設定した一定のガス流量の検査ガスを供給するために、検査ガスを貯蔵するタンクや、流量を調整可能なバルブ、流量計等を有している。また、検査ガス排出装置120は、検査ガスの排出の可否を制御するバルブ等を有している。
検査ガス供給配管112のガス供給配管口52側の端部には、ガス供給配管口52へ流入する検査ガスの圧力を計測するための第1圧力計114が設けられている。また、検査ガス排出配管122のガス排出配管口54側の端部には、ガス排出配管口54から流出する検査ガスの圧力を計測するための第2圧力計124が設けられている。また、検査対象セル10の燃料ガス供給マニホールド孔から燃料ガス排出マニホールド孔までのガス流路に、燃料ガス供給マニホールド孔から燃料ガス排出マニホールド孔へ向けて負圧を発生させるための吸引装置126が設けられている。吸引装置126としては、例えば、注射器を利用することができる。なお、吸引装置126による負圧の発生については後述する。
制御装置140は、コンピュータにより構成されている。制御装置140のプロセッサは、メモリに予め格納されている制御プログラムを実行することにより、検査ガス供給装置110、検査ガス排出装置120、及び、温度調整容器130を制御して、圧力計114,124で計測される圧力を取得し、後述するように検査対象セル10の検査を実行する。
なお、図1では、互いに垂直なX方向,Y方向,Z方向に対して、X方向(水平方向)は検査対象セル10の横方向とされ、Y方向(鉛直方向)は検査対象セル10の縦方向とされている。また、Z方向(水平方向)は、後述するように、検査対象セル10である燃料電池単セルのカソード側セパレータと膜電極接合体とアノード側セパレータの積層方向とされている。+Y方向が鉛直下方向(重力方向)である。以下の説明においても、この検査対象セル10の配置を基準に説明する。
図2は、検査対象セル10を含む検査ユニット100を示す説明図である。検査対象セル10である燃料電池単セルは、膜電極接合体20がアノード側セパレータ30及びカソード側セパレータ40で挟持された積層体構造の発電体である。膜電極接合体20は、電解質膜の一方の面にアノード22が形成され、他方の面にカソード(不図示)が形成されている。アノード及びカソードは、それぞれ、電解質膜側から順に触媒層、ガス拡散層が積層された電極である。
検査対象セル10の横方向(X方向)の一方端には、Z方向(積層方向)に貫通する3つの貫通孔11,19,17が縦方向(Y方向)に沿って上から順に設けられており、他方端にも、同様の貫通孔16,18,15が縦方向(Y方向)に沿って上から順に設けられている。貫通孔11は、2種類の反応ガスのうちの一方の反応ガスである燃料ガス(水素)を外部から検査対象セル10のアノード22に供給するための燃料ガス供給マニホールド孔である。貫通孔11の対角線に位置する貫通孔15は、検査対象セル10のアノード22から燃料ガスを外部へ排出するための燃料ガス排出マニホールド孔である。貫通孔16は、他方の反応ガスである酸化ガス(酸素を含む空気)を外部から検査対象セル10のカソードに供給するための酸化ガス供給マニホールド孔である。貫通孔16の対角線に位置する貫通孔17は、検査対象セル10のカソードから酸化ガスを外部へ排出するための酸化ガス排出マニホールド孔である。貫通孔18は冷媒を外部から検査対象セル10に供給するための冷媒供給マニホールド孔であり、貫通孔18に対向する貫通孔19は検査対象セル10から冷媒を外部へ排出するための冷媒排出マニホールド孔である。
膜電極接合体20とアノード側セパレータ30との間には、膜電極接合体20のアノード22に燃料ガスを供給するための燃料ガス流路12が設けられている。燃料ガス流路12のうち、燃料ガス供給マニホールド孔11側の端部には、燃料ガス供給マニホールド孔11に連結された導入流路としてのくし歯流路13が設けられており、燃料ガス排出マニホールド孔15側の端部には、燃料ガス排出マニホールド孔15に連結された導出流路としてのくし歯流路14が設けられている。
図3は、燃料ガス供給マニホールド孔11に連結されたくし歯流路13を拡大して示す説明図である。図3は、燃料ガス供給マニホールド孔11及びくし歯流路13をアノード側セパレータ30の外側(+Z方向側)から透視した状態で示している。くし歯流路13は、X方向に沿った複数(本例では6本)の細い流路13pがY方向(鉛直方向)に沿って並列にくし歯状に配置されている。複数の流路13pは、Y方向に沿った細い連通路13rを介して互いに連通されている。くし歯流路13は、燃料ガス供給マニホールド孔11から供給される燃料ガスを、各流路13pを流通させるともに、連通路13rを介して互いの流路13pに分散させて、反応ガス流路12の内部側へ向けて流通させる。
図示は省略するが、くし歯流路14(図2)も、くし歯流路13と同様の構造を有しており、燃料ガス流路12を流通する酸化ガスを複数の流路及び連通路を介して燃料ガス排出マニホールド孔15へ向けて排出させる。
また、膜電極接合体20とカソード側セパレータ40との間にも、他方の反応ガスである酸化ガスを、膜電極接合体20のカソードに供給するための酸化ガス流路(不図示)が設けられている。そして、酸化ガス流路の酸化ガス供給マニホールド孔16側の端部には、酸化ガス供給マニホールド孔16に連結された導入流路としてのくし歯流路が設けられており、酸化ガス排出マニホールド孔17側の端部には、酸化ガス排出マニホールド孔17に連結された導出流路としてのくし歯流路が設けられている。なお、酸化ガス流路の導入流路及び導出流路は、くし歯流路により構成されていなくても良い。
なお、以下の説明では、燃料ガス流路12の燃料ガス供給マニホールド孔11側の端部に設けられたくし歯流路13を、検査対象としての反応ガス流路の端部に設けられたくし歯流路として説明する。
図2に示すように、検査対象セル10は、アノード側の検査用フレーム50とカソード側の検査用フレーム60で挟持された検査ユニット100の状態とされる。その際、検査対象セル10のアノード側セパレータ30と検査用フレーム50との間で、液水注入装置70の注入管72が挟み込まれる。
各マニホールド孔11,15,16,17,18.19は、カソード側においてはカソード側の検査用フレーム60によって互いにシールドされるとともに、アノード側においてはアノード側の検査用フレーム50によって互いにシールドされる。また、燃料ガス供給マニホールド孔11及び燃料ガス排出マニホールド孔15を除くマニホールド孔16,17,18,19は、検査用フレーム50,60によって閉塞される。燃料ガス供給マニホールド孔11及び燃料ガス排出マニホールド孔15には、アノード側の検査用フレーム50に設けられたガス供給配管口52及びガス排出配管口54が接続される。これにより、燃料ガス供給マニホールド孔11にはガス供給配管口52を介して検査用ガスの供給が可能とされ、燃料ガス排出マニホールド孔15にはガス排出配管口54を介して検査用ガスの排出が可能とされる。
図4は、液水注入装置70の注入管72が挟みこまれた状態における注入管72の先端部周辺を拡大して示す説明図である。図4は、図3と同様に、燃料ガス供給マニホールド孔11及びくし歯流路13をアノード側セパレータ30の外側(+Z方向側)から透視した状態で示している。図4に示すように、注入管72の先端は、注入管72から燃料ガス供給マニホールド孔11の中に注入される液水が、燃料ガス供給マニホールド孔11のくし歯流路13に側の底部領域(破線で示した領域)でくし歯流路13に接して配置されるように、設置される。液水注入装置70および注入管72としては、例えば、注射器および注射針を利用することができる。なお、液水注入装置70による液水の注入については後述する。
図5は、燃料電池単セルの検査方法の手順を示す説明図である。この燃料電池単セルの検査は、反応ガス流路の端部に設けられたくし歯流路の検査を行なうものである。まず、工程S10では、上述した検査対象セル10を含む検査ユニット100(図2)を、上述した検査装置1000(図1)に設置する。
次に、工程S20では、反応ガス流路、本例では、燃料ガス流路12(図2)の第1圧力損失を測定する。具体的には、以下のように実行される。検査装置1000に検査対象セル10を含む検査ユニット100を設置した時の状態で、検査ガス供給装置110及び検査ガス排出装置120を制御し、あらかじめ設定した検査流量Qt[NL/min]の検査ガスを、検査対象セル10の燃料ガス供給マニホールド孔11から燃料ガス排出マニホールド孔15までの燃料ガス流路12に流通させる。この際、第1圧力計114で計測される入口圧力P1と第2圧力計124で計測される出口圧力P2を取得する。圧力計測後、検査ガスの流通を停止させる。そして、入口圧力P1と出口圧力P2との差を求めて、第1圧力損失ΔP1(=P1−P2)を取得する。なお、検査装置1000に検査対象セル10を含む検査ユニット100を設置した時の状態は、後述する燃料ガス流路12の端部のくし歯流路13内に液水が配置された場合と比較して、くし歯流路13に液水が無い状態を意味している。
次に、工程S30では、検査対象のくし歯流路13(図4)に連結された燃料ガス供給マニホールド孔11に液水を配置する。具体的には、以下のように実行される。
図6は、燃料ガス供給マニホールド孔11に液水Lwが配置された状態を示す説明図である。図6は、図4と同様に、燃料ガス供給マニホールド孔11及びくし歯流路13をアノード側セパレータ30の外側(+Z方向側)から透視した状態で示している。図6に示すように、液水注入装置70(図1)から液水Lwを押圧して注入管72の先端から排出して、燃料ガス供給マニホールド孔11のくし歯流路13側の底部領域(図4の破線で示した領域)でくし歯流路13に接するように、液水Lwを配置する。液水Lwの量Vlwは、くし歯流路13の最下部の流路13p、及び、その上側の流路13pとの間の連通路13rの容積Vp以下の量で、かつ、後述するように最下部の流路13pに液水Lwを吸い込ませた場合に、少なくとも、連通路13rに接する最下部の流路13pの部分が液水Lwで満たされる量に、設定される。
そして、図5の工程S40では、検査対象のくし歯流路13内に液水Lwを注入させて、くし歯流路13内に配置する。具体的には、以下のように実行される。すなわち、制御装置140が検査ガス供給装置110及び検査ガス排出装置120(図1)を制御して、検査ガス供給配管112及び検査ガス排出配管122を閉塞させた状態で、吸引装置126による吸引操作を行なうことにより、燃料ガス供給マニホールド孔11から燃料ガス排出マニホールド孔15へ向けた負圧を発生させる。この負圧によって、図6に示すように燃料ガス供給マニホールド孔11に配置されていた液水Lwが、図7に示すようにくし歯流路13の最下部の流路13p内に吸い込まれ、くし歯流路13内に配置される。この負圧は、量Vlwの液水Lwを、燃料ガス供給マニホールド孔11の配置位置(図6)から、くし歯流路13の最下部の流路13p内の連通路13rに接する部分を液水Lwが閉塞する位置(図7)まで移動させることが可能な大きさに設定される。液水Lwの量Vlw、液水Lwの移動量、及び、流路13pの断面積から求めることができる。
図7は、くし歯流路13内に液水Lwが配置された状態の一例を示す説明図である。図8は、くし歯流路13内に液水Lwが配置された状態の他の一例を示す説明図である。図7及び図8は、図4と同様に、燃料ガス供給マニホールド孔11及びくし歯流路13をアノード側セパレータ30の外側(+Z方向側)から透視した状態で示している。図7は、流路の断面積の減少が許容範囲内にある(以下、単に「流路の断面積が小さくなっていない」とも呼ぶ)くし歯流路13の例を示しており、流路13p及び連通路13rの断面のうち、流路13pの幅をDp0、連通路13rの幅をDr0として示している。また、図8は、流路の断面積の減少が許容範囲以上に大きくなっている(以下、単に「流路の断面積が小さくなっている」とも呼ぶ)くし歯流路13の例を示しており、流路13p及び連通路13rの断面のうち、流路13pの幅をDp1(<Dp0)、連通路13rの幅をDr1(<Dr0)として示している。
図7に示すように、流路の断面積が小さくなっていないくし歯流路13の場合、くし歯流路13内に配置された液水Lwは、最下部の流路13pに配置された状態を維持する。これに対して、図8に示すように、流路の断面積が小さくなっているくし歯流路13の場合、くし歯流路13の最下部の流路13pに配置された液水Lwは、毛管現象によって連通路13rを介して吸い上げられて、上部の他の流路13pに跨って配置され、流路の閉塞が発生する。閉塞流路の数、すなわち、液水が吸い上げられる高さは、流路の断面積の減少の大きさ、すなわち、流路の変形の大きさに応じて変化する。図8では、下側の3本の流路13pが閉塞し、上側の3本の流路13pが開口している状態の例を示している。
そこで、図5の工程S50では、制御装置140が温度調整容器130を制御して、検査ユニット100を冷却し、くし歯流路13に配置した液水Lwを凍結させる。これにより、液水Lwによって発生した流路の閉塞数、すなわち、開口流路の数を固定させる。そして、工程S60では、凍結状態を維持したまま、工程S20と同様に、検査対象セル10の燃料ガス流路(反応ガス流路)12に検査ガスを流通させて、燃料ガス流路12の第2圧力損失ΔP2(=P1−P2)を測定する。
図9は、図8に示したくし歯流路13内に検査ガスを流通させた状態を示す説明図である。図8に示すように液水Lwによる閉塞流路の数が増加することによって、図9に示すように検査ガスが流通可能な開口流路の数が減少するので、この減少に応じて、燃料ガス供給マニホールド孔11から燃料ガス排出マニホールド孔15までの燃料ガス流路12を流通する検査ガスの圧力損失が上昇することになる。
そこで、図5の工程S70では、第1圧力損失ΔP1に対する第2圧力損失ΔP2の比(ΔP2/ΔP1)を、圧力損失の上昇率Kとして求め、工程S80では、上昇率Kが閾値Kth以下であるか否か判断する。閾値Kthは、くし歯流路13の流路の断面積の減少が許容できる範囲の境界における圧力損失の上昇率Kの値であり、あらかじめ実験により求められる。なお、くし歯流路13に液水Lwを配置した際の圧力損失ΔP2の大きさを用いるのではなく、第1圧力損失ΔP1に対する第2圧力損失ΔP2の比(ΔP2/ΔP1)で表される圧力損失の上昇率Kを用いている。これは、流路の圧力損失自体に固体バラツキが大きいので、くし歯流路13に液水Lwが存在していない状態での圧力損失の上昇率Kを用いることにより、固体バラツキの影響を抑制するためである。
そして、上昇率Kが閾値Kth以下の場合には、くし歯流路13の流路の断面積は許容範囲を超えて小さくなっておらず、検査対象セル10を良と判定し(工程S90a)、上昇率Kが閾値Kthよりも大きき場合には、くし歯流路13の流路の断面積は許容範囲を超えて小さくなっており、検査対象セル10を不良と判定する(工程S90b)。図10は、良品の圧力損失の上昇率と不良品の圧力損失の上昇率の一例を比較して示す説明図である。
最後に、図5の工程S100では、制御装置140は温度調整容器130を制御して、検査済みの燃料電池単セル10を含む検査ユニット100を加熱して常温に戻し、凍結状態の液水Lwを解凍後、検査ガスを流通させて掃気により解凍した液水Lwを排出させて検査を終了する。そして、検査者は、検査ユニット100から検査済みの燃料電池単セル10を取り出し、次の検査対象の燃料電池単セル10を検査対象セルとして検査用フレーム50,60で挟持して次の検査ユニット100を用意することにより、次の検査を行なうことができる。
検査済みの燃料電池単セル10は、例えば、以下のように処理される。検査済みの燃料電池単セル10の判定結果は、例えば、制御装置140(図1)のモニタに表示され、検査者に通知される。検査者は、モニタに表示された判定結果に従って、検査済みの燃料電池単セル10の仕分けを行なうことができる。
以上説明した実施形態では、検査対象の燃料電池単セル10の燃料ガス流路12の端部に設けられたくし歯流路13について、くし歯流路13の断面積が許容される範囲を超えて小さくなっているか否かを容易に確認することができ、例えば、くし歯流路の変形が許容範囲を超えて発生しているか否かを確認することができる。これにより、検査した燃料電池単セル10の良/不良を容易に判定することができる。
なお、くし歯流路13の流路の断面積が許容される範囲を超えて小さくなるような流路の変形は、例えば、以下のようにして発生する。製造した燃料電池単セル10に対して通常、発電特性等の種々の製品検査を行なう。この際、燃料電池単セル10を両側から加圧固定(加圧締結)されて、種々の検査が行われる。このため、燃料電池単セル10に加わった加圧力によってくし歯流路13の流路のリブが押しつぶされて、流路の断面積が小さくなるように変形することになる。
B.他の実施形態:
(1)上記実施形態では、燃料ガス流路12の燃料ガス供給マニホールド孔11側の端部のくし歯流路13の検査を例に説明したが、燃料ガス排出マニホールド孔15側の端部のくし歯流路14を検査することも可能である。このくし歯流路14を検査する場合には、例えば、図1において、検査ユニット100の配置を上下反対とし、ガス排出配管口54側をガス供給配管口とし、ガス供給配管口52をガス排出配管口とすればよい。また、液水注入装置70の注入管72は、燃料ガス排出マニホールド孔15側において、検査対象セル10のアノード側セパレータ30と検査用フレーム50との間で挟み込まれるようにすればよい。
(2)また、上記実施形態では、燃料ガス流路12を例に説明したが、酸化ガス流路の端部の導入流路及び導出流路がくし歯流路により構成されている場合にも、同様に検査することが可能である。
(3)上記実施形態では、検査ガスとして窒素ガスを例に説明したが、これに限定されるものではなく、反応ガスを利用してもよいし、窒素ガス以外の不活性ガスを利用してもよい。
(4)上記実施形態では、検査者は、モニタに表示された判定結果に従って、検査済みの燃料電池単セル10の仕分けを行なうとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、検査済みの燃料電池単セル10の検査結果は、判定時(工程S90a,S90b)に燃料電池単セル10の識別情報と関係付けて保存されるものとする。そして、検査者によって仕分け搬送ラインに載置された検査済みの燃料電池単セル10は、仕分け搬送ライン上を搬送される過程において、保存されている判定結果情報が参照されて、自動的に仕分けされるようにすることも可能である。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
10…燃料電池単セル(検査対象セル)
11…貫通孔(燃料ガス供給マニホールド孔)
12…燃料ガス流路(反応ガス流路)
13…くし歯流路
13p…流路
13r…連通路
14…くし歯流路
15…貫通孔(燃料ガス排出マニホールド孔)
16…貫通孔(酸化ガス供給マニホールド孔)
17…貫通孔(酸化ガス排出マニホールド孔)
18…貫通孔(冷媒供給マニホールド孔)
19…貫通孔(冷媒排出マニホールド孔)
20…膜電極接合体
22…アノード
30…アノード側セパレータ
40…カソード側セパレータ
50…アノード側の検査用フレーム
52…ガス供給配管口
54…ガス排出配管口
60…カソード側の検査用フレーム
70…液水注入装置
72…注入管
100…検査ユニット
110…検査ガス供給装置
112…検査ガス供給配管
114…第1圧力計
120…検査ガス排出装置
122…検査ガス排出配管
124…第2圧力計
126…吸引装置
130…温度調整容器
140…制御装置
1000…検査装置
K…上昇率
Kth…閾値
Lw…液水
P1…入口圧力
P2…出口圧力
ΔP1…第1圧力損失
ΔP2…第2圧力損失
Qt…検査流量
Vlw…液水量
Dp0,Dp1…流路の幅
Dr0,Dr1…連通路の幅
S10〜S100…工程
X,Y,Z…方向

Claims (1)

  1. 燃料電池単セルの検査方法であって、
    検査対象の燃料電池単セルは、反応ガスを流通させる反応ガス流路の端部に設けられたくし歯流路であって、並列に配置された複数の流路および前記複数の流路を互いに連通する連通路で構成されたくし歯流路を有しており、
    前記くし歯流路に液水がない状態で、前記反応ガス流路の第1圧力損失を測定する工程と、
    前記複数の流路のうちの一部の流路の前記連通路に連通する部分を含む領域に、予め定めた量の液水を配置する工程と、
    前記液水を凍結させる工程と、
    前記液水を凍結させた状態で、前記反応ガス流路の第2圧力損失を測定する工程と、
    前記第1圧力損失に対する前記第2圧力損失の上昇率が閾値よりも大きい場合に、前記複数の流路の断面積が許容範囲を超えて小さくなっていると判断する工程と、
    を備える、燃料電池単セルの検査方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113991200A (zh) * 2021-10-28 2022-01-28 远景动力技术(江苏)有限公司 二次电池的监测方法、监测装置、二次电池及车辆

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