前記ロッカーのような車体下部部材には、前記の曲げ剛性に加え、高い側面衝突時衝撃吸収性能が求められる。すなわち、前記車体に対して側方からの衝突、いわゆる側面衝突、があった場合、その衝撃エネルギーを前記車体下部部材の変形によって有効に吸収し、これにより搭乗者の安全を確保することが望まれる。
これに対し、特許文献1に記載されるような車体下部部材は、単純な中空閉断面を有するだけの内側部材及び外側部材により構成されているので、前記側面衝突における衝撃エネルギーを効率よく吸収することが難しい。従って、当該衝撃エネルギーの吸収のためには、肉厚の設定や材料の選定に著しい制限が生ずる可能性があり、部材の重量の増大あるいはコストの著しい上昇を免れ得ない。
本発明は、前記の事情に鑑み、軽量かつ低コストの構造で、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することが可能な車体下部部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
提供されるのは、車体の前後方向に延びて当該車体の下部を構成する車体下部部材であって、前記車体の前後方向に延びる第1部材と、前記車体の前後方向に延び、前記第1部材と前記車体の幅方向に平行な横方向に並ぶように配置されて当該第1部材と接合される第2部材と、を備える。前記第1部材は、前記車体の前後方向から見た断面である横断面において上下方向に延び、かつ、前記第2部材から前記横方向に離間した位置に配せられる第1外縦壁と、上下方向に間隔をおいて並び、それぞれが前記横断面において前記第1外縦壁から前記第2部材に向かって前記横方向に延びる複数の第1横壁と、を有する。前記複数の第1横壁は、前記第1外縦壁の上端部と前記第2部材とを連結するように当該第1外縦壁の上端部につながる第1上横壁と、前記第1外縦壁の下端部と前記第2部材とを連結するように当該第1外縦壁の下端部につながる第1下横壁と、を含む。前記第2部材は、前記横断面において上下方向に延び、かつ、前記第1部材から前記横方向に離間した位置に配せられる第2外縦壁と、上下方向に間隔をおいて並び、前記横断面において前記第2外縦壁から前記第1部材に向かって延びる複数の第2横壁と、前記横断面において上下方向に延び、かつ、前記第2外縦壁よりも前記第1部材に近い位置に配せられる第2内縦壁と、を有する。前記複数の第2横壁は、前記第2外縦壁の上端部と前記第1部材とを連結するように当該第2外縦壁の上端部につながる第2上横壁と、前記第2外縦壁の下端部と前記第1部材とを連結するように当該第2外縦壁の下端部につながる第2下横壁と、少なくとも一つの第2内部横壁と、を含む。前記第2内縦壁は、前記第2上横壁と前記第2下横壁とを上下方向に連結するように当該第2上横壁と当該第2下横壁とにつながる。前記少なくとも一つの第2内部横壁は、前記第2上横壁と前記第2下横壁との間の領域で前記第2外縦壁と前記第2内縦壁とを前記横方向に連結するように前記横断面において前記横方向に延びて当該第2外縦壁と当該第2内縦壁とにつながり、前記第2部材に対して一定以上の前記横方向の荷重が作用したときに座屈変形することが可能な厚みを有する。
ここで、各縦壁について「上下方向に延びる」とは、当該縦壁が上下方向と完全に平行な壁であることを限定する趣旨ではなく、上下方向の荷重を受けることができる程度に当該上下方向に対して傾斜しながら当該上下方向に延びるものも含む趣旨である。同様に、各横壁において「横方向に延びるとは、当該横壁が横方向と完全に平行な壁であることを限定する趣旨ではなく、横方向の荷重を受けることができる程度に当該横方向に対して傾斜しながら当該横方向に延びるものも含む趣旨である。
また、前記第1上横壁について「前記第1外縦壁の上端部と前記第2部材とを連結する」とは当該第1上横壁が当該第2部材に直接接合されるものに限定する趣旨ではなく、当該第1上横壁が第1部材の他の部位を介して間接的に第2部材に接続されるものも含む趣旨である。これは、第1下横壁、第2上横壁及び第2下横壁についても同様である。
前記車体下部部材では、第1及び第2部材に含まれる第1外縦壁、第2外縦壁及び第2内縦壁が上下方向についての曲げ剛性の確保に寄与するとともに、第1部材の第1上横壁及び第1下横壁と第2部材の第2上横壁及び第2下横壁に加えて当該第2部材が当該第2上横壁と当該第2下横壁との間の領域において当該第2内縦壁と当該第2外縦壁とを連結する少なくとも一つの第2内部横壁を含むことが、第1及び第2部材の肉厚を著しく大きくすることなく、車体下部部材の横方向についての曲げ剛性の向上に加え、側面衝突時に前記第2部材に与えられる衝撃エネルギーの効果的な吸収を可能にする。具体的に、前記少なくとも一つの第2内部横壁は、前記側面衝突時に前記第2部材に加えられる前記横方向の衝撃荷重によって座屈変形することにより、衝撃エネルギーの効果的な吸収を行うことが可能である。
前記車体下部部材において、前記第1部材は、前記横断面において上下方向に延び、かつ、前記第1外縦壁よりも前記第2部材に近い位置に配せられる第1内縦壁であって、前記第1上横壁と前記第1下横壁とを上下方向に連結するように当該第1上横壁と当該第1下横壁とにつながる第1内縦壁をさらに有し、前記複数の第1横壁は、前記第1上横壁と前記第1下横壁との間の領域で前記第1外縦壁と前記第1内縦壁とを前記横方向に連結するように前記横断面において前記横方向に延びて当該第1外縦壁と当該第1内縦壁とにつながり、前記第1部材に対して一定以上の前記横方向の荷重が作用したときに座屈変形することが可能な厚みを有する少なくとも一つの第1内部横壁をさらに含むことが、好ましい。
この車体下部部材における前記第1内縦壁は、車体下部部材全体の上下方向についての曲げ剛性をさらに高めることを可能にする。さらに、前記第1上横壁と第1下横壁との間の領域において前記第1内縦壁と第1外縦壁とを連結する前記少なくとも一つの第1内部横壁は、前記側面衝突時に加えられる前記横方向の衝撃荷重によって座屈変形することにより、前記第2内部横壁と相俟って衝撃エネルギーをさらに効果的に吸収することを可能にする。
前記少なくとも一つの第2内部横壁は、当該第2内部横壁の端部のうち前記第2縦内壁につながる端部である内側端部の少なくとも一部が前記複数の第1横壁のうちのいずれか一つの端部であって前記第2部材に近い側の端部である当該第1横壁の内側端部と上下方向についてオーバーラップする高さ位置に当該第2内部横壁が配せられていることが、好ましい。このことは、当該第2内部横壁と第1部材におけるいずれかの第1横壁との間での荷重伝達を円滑にしてより有効な衝撃エネルギーの吸収を可能にする。
前記少なくとも一つの第2内部横壁が上下方向に間隔を置いて並ぶ複数の第2内部横壁を含む場合、当該複数の第2内部横壁の少なくとも一つの前記内側端部が前記複数の第1横壁のうちのいずれか一つの第1横壁の前記内側端部と上下方向についてオーバーラップする高さ位置に当該第2内部横壁が配せられるのが、好ましい。さらに、当該複数の第2内部横壁のそれぞれの前記内側端部の少なくとも一部が前記複数の第1横壁のうちのいずれか一つの第1横壁の前記内側端部と上下方向についてオーバーラップする高さ位置に当該複数の第2内部横壁のそれぞれが配せられることにより、さらに効果的な衝撃エネルギーの吸収が可能になる。
ここで、前記第1部材が前記少なくとも一つの第1内部横壁を含む場合、前記少なくとも一つの第2内部横壁は、当該第2内部横壁の前記内側端部の少なくとも一部が前記少なくとも一つの第1内部横壁のいずれかの前記内側端部と上下方向についてオーバーラップする高さ位置に配せられるのがよい。前記少なくとも一つの第2内部横壁は、あるいは、当該第2内部横壁の前記内側端部の少なくとも一部が前記第1上横壁及び前記第1下横壁のうちのいずれかの前記内側端部と上下方向についてオーバーラップする高さ位置に配せられてもよい。
本発明では、前記第1部材が前記第2部材よりも前記車体幅方向の内側の位置に配置される内側部材を構成し、前記第2部材が前記第1部材よりも前記車体幅方向の外側の位置に配置される外側部材を構成することが、好ましい。この配置は、側面衝突時に車体下部部材に加えられる荷重がまず前記第2部材の前記少なくとも一つの第2内部横壁に伝わって当該第2内部横壁を座屈変形させること、つまり、衝撃エネルギーが初期段階で大きく吸収されること、を可能にする。これにより、当該衝撃エネルギーのより効果的な吸収が可能になる。
ここで、前記第1部材が前記少なくとも一つの第1内部横壁を含む場合、前記少なくとも一つの第2内部横壁は、前記少なくとも一つの第1内部横壁よりも小さい荷重で座屈する形状を有することが、好ましい。このことは、第1内部横壁よりも車体幅方向の外側に位置する第2内部横壁が当該第1内部横壁に先行して座屈変形することを可能にし、これにより、衝撃エネルギーのより効果的な吸収を可能にする。
前記第1部材及び前記第2部材は、アルミニウム合金からなる押出し材からなるものが、好ましい。このことは、車体下部部材全体の軽量化を図りながら、前記第1部材及び第2部材のそれぞれがその長手方向(車体の前後方向)について一様のかつ一体的な断面形状を有することを可能にする。
この場合、前記第1部材及び前記第2部材のうち前記車体幅方向の外側に配置される外側部材を構成するものは、6000系アルミニウム合金(Al−Mg−Si系アルミニウム合金)からなり、前記第1部材及び前記第2部材のうち前記車体幅方向の内側に配置される内側部材を構成するものは、7000系アルミニウム合金(例えばAl−Zn−Mg系アルミニウム合金)からなることが、好ましい。このように、応力腐食割れが生じにくい6000系アルミニウム合金により前記外側部材を構成し、強度の高い7000系アルミニウム合金により前記内側部材を構成することは、耐腐食性と軽量化を図りながらの高い強度の確保との両立を可能にする。
この場合、前記外側部材の下端は、当該外側部材の長手方向の全域にわたって前記内側部材の下端よりも下側に位置することが、好ましい。このことは、雨水等が外側部材の下方を通って内側部材に浸入するのを抑止して、当該内側部材の腐食を有効に抑制することを可能にする。
同様に、前記外側部材の上端は、当該外側部材の長手方向の全域にわたって前記内側部材の上端よりも上側に位置することが、好ましい。このことは、雨水等が外側部材の上方を通って内側部材に浸入するのを抑止して、当該内側部材の腐食を有効に抑制することを可能にする。
本発明において、前記第1部材と前記第2部材との接合のために固定が行われる箇所(例えばリベット止めや溶接が行われる箇所)は自由に設定されることが可能である。好ましくは、前記第1部材が前記第1上横壁及び前記第1下横壁のうちの少なくとも一方の内側端部であって前記第2部材に近い側の端部から上下方向の外向きに突出するフランジ部を有し、当該フランジ部が前記第2部材に対して前記横方向に面接触した状態で当該第2部材に固定されることが、好ましい。このことは、第1部材と第2部材とを安定して接合することを可能にし、かつ、当該接合のための作業を容易にすること、を可能にする。
また本発明は、前記車体下部部材を製造するための方法を提供する。この方法は、アルミニウム合金を用いて前記第1部材を押出し成形する工程と、アルミニウム合金を用いて前記第2部材を押出し成形する工程と、前記第1部材と前記第2部材とを前記横方向に並べて互いに接合することにより前記車体下部部材を形成する工程と、を含む。
以上のように、本発明によれば、軽量かつ低コストの構造で、側面衝突時の衝撃エネルギーを有効に吸収することが可能な車体下部部材及びその製造方法が、提供される。
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、以下に説明するそれぞれの実施の形態に係るロッカー2の配置の例を示す。同図に示すロッカー2は、図示されないクロスメンバー等とともに車体(ボディ)の下部を構成する車体下部部材である。当該ロッカー2は、車体の幅方向(図1では奥行き方向)の左右両側にそれぞれ配置され、図示されないサイドドアの下方の高さ位置において前後方向(図1では左右方向)に延びる。前記クロスメンバーは前記ロッカー2を相互に左右に接続する。各ロッカー2の適当な部位には上下方向に延びるBピラー4の下端部が接続される。図1に示される例では、各ロッカー2の前端及び後端は前側及び後側のダイキャスト部材6,8にそれぞれ接続される。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るロッカー2の横断面を示す。当該横断面は、当該ロッカー2を車体の前後方向から見た断面であって、例えば図1に示されるII−II線に沿った断面である。
前記ロッカー2は、第1部材10と、第2部材20と、を備える。前記第1及び第2部材10,20のそれぞれは、車体の前後方向に延び、かつ当該前後方向に一様な断面を有する部材であり、例えばアルミニウム合金からなる押出し材により構成される。
前記第1部材10及び第2部材20は、前記車体の幅方向と平行な横方向(図2では左右方向)に並べて配置され、かつ互いに接合されることにより、前記ロッカー2を構成する。この実施の形態では、前記第1部材10は前記第2部材20よりも前記車体幅方向の内側に配置される内側部材を構成し、前記第2部材20は前記第1部材よりも前記車体幅方向の外側に配置される外側部材を構成する。
前記第1部材10は、第1外縦壁12と、複数の第1横壁と、を一体に有する。
前記第1外縦壁12は、前記横断面において上下方向に延び、前記第2部材20から前記横方向(図2では左方)に離間した位置に配せられる。
前記複数の第1横壁は、この実施の形態では第1上横壁16a及び第1下横壁16bを含む。前記第1上横壁16a及び前記第1下横壁16bは、前記第1外縦壁12の上端部及び下端部からそれぞれ前記第2部材20に向かって(図2では右に向かって)前記横方向に延びる。前記第1上横壁16aは、前記第1外縦壁12の上端部と前記第2部材20とを連結するように当該第1外縦壁12の上端部につながり、同様に、前記第1下横壁16bは、前記第1外縦壁12の下端部と前記第2部材20とを連結するように当該第1外縦壁12の下端部につながる。
前記横断面において、前記第1外縦壁12と前記第1上横壁16a及び前記第2下横壁16bとの間には両者を適当な曲率半径でもって滑らかにつなぐ曲線部分が与えられてもよい。このことは後述の他の実施の形態についても同様である。
前記第2部材20は、第2外縦壁22と、第2内縦壁24と、複数の第2横壁と、を一体に有する。
前記第2外縦壁22は、前記横断面において上下方向に延び、かつ、前記第2部材20から前記横方向(図2では右方)に離間した位置に配せられる。前記第2内縦壁24は、前記横断面において上下方向に延び、かつ、前記第2外縦壁22よりも前記第1部材10に近い位置、この実施の形態では当該第1部材10と接触可能な位置、に配せられる。
前記複数の第2横壁は、この実施の形態では第2上横壁26a、第2下横壁26b及び第2内部横壁26cを含む。前記第2上横壁26a、前記第2下横壁26b及び前記第2内部横壁26cは、前記第2外縦壁22の上端部及び下端部からそれぞれ前記第1部材10に向かって(図2では左に向かって)前記横方向に延びる。前記第2上横壁26aは、前記第2外縦壁22の上端部と前記第1部材10とを連結するように当該第2外縦壁22の上端部につながり、同様に、前記第2下横壁26bは、前記第2外縦壁22の下端部と前記第1部材10とを連結するように当該第2外縦壁22の下端部につながる。
この第2部材20においても、前記横断面において、前記第2外縦壁22と前記第2上横壁26a及び前記第2下横壁26bとの間には両者を適当な曲率半径でもって滑らかにつなぐ曲線部分が与えられてもよい。このことは後述の他の実施の形態についても同様である。
前記第2内縦壁24は、前記第2上横壁26a及び前記第2下横壁26bの内側端部、すなわち当該第2上横壁26a及び第2下横壁26bの両端部のうち前記第1部材10に近い側の端部(図2では左側端部)を相互に上下方向に連結するように当該第2上横壁26a及び当該第2下横壁26bの前記内側端部にそれぞれつながる。前記第2内部横壁26cは、前記第2上横壁26aと前記第2下横壁26bの間の領域内の高さ位置、好ましくは前記第2上横壁26aと前記第2下横壁26bとの丁度中間の高さ位置、で前記第2外縦壁22と前記第2内縦壁24とを前記横方向に連結するように前記横断面において前記横方向に延びて当該第2外縦壁22と当該第2内縦壁24とにつながる。
前記第2内部横壁26cは、さらに、前記第2部材20に対して一定以上の前記横方向の荷重Pが作用したときに座屈変形することが可能な厚みを有する。当該厚みは、仕様に応じて自由に設定されることが可能である。また、当該厚みは横方向について必ずしも一定でなくてもよい。図2に示される例では、第1及び第2部材10,20を構成する壁のそれぞれに略等しい厚みが設定されている。
この第1の実施の形態では、第1上横壁16aと第2上横壁26aとが互いに同等の高さ位置に配せられ、第1下横壁16bと第2下横壁26bとが互いに同等の高さ位置に配せられている。しかし、前記高さ位置は互いに異なっていてもよい。また、それぞれの横壁16a,16b,26a〜26cは、図1に示されるように横方向と完全に平行に延びているが、当該横方向の荷重を受けることができる範囲内で当該横方向に対してある程度傾斜しながら延びていてもよい。このことは、後述の他の実施の形態でも同様である。
この第1の実施の形態では、前記第1部材10に前記第2部材20の幅寸法(前記横方向の寸法)よりも大きな幅寸法が与えられている。しかし、両部材10,20の幅寸法は同等でもよいし、あるいは第1部材10の幅寸法が第2部材20の幅寸法より大きくてもよい。このことは、後述の他の実施の形態でも同様である。
この第1の実施の形態に係る前記第1部材10は第1上側フランジ部18a及び第1下側フランジ部18bをさらに有し、同様に前記第2部材20は第2上側フランジ部28a及び第2下側フランジ部28bをさらに有する。前記第1上側フランジ部18aは前記第1上横壁16aの内側端部(図2では右側端部)から上下方向の外向き(図2では上向き)に突出し、前記第1下側フランジ部18bは前記第1下横壁16bの内側端部(図2では右側端部)から上下方向の外向き(図2では下向き)に突出する。同様に、前記第2上側フランジ部28aは前記第2上横壁26aの内側端部(図2では左側端部)から上下方向の外向き(図2では上向き)に突出し、前記第2下側フランジ部28bは前記第2下横壁26bの内側端部(図2では左側端部)から上下方向の外向き(図2では下向き)に突出する。
前記第1上側フランジ部18a及び第2上側フランジ部28aは互いに横方向に突き合わされて固定され、同様に前記第1下側フランジ部18b及び第2下側フランジ部28bも互いに横方向に突き合わされて固定されている。そして、これらの固定により、前記第1部材10と前記第2部材20とが互いに接合されてロッカー2を形成している。当該固定は、例えば、ロッカー2の長手方向に並ぶ複数の位置で前記第1上側フランジ部18a及び第2上側フランジ部28aを貫通するように複数のリベット30を打ち、同様に前記第1下側フランジ部18b及び第2下側フランジ部28bを貫通するように複数のリベット30を打つことにより、行うことが可能である。あるいは、当該長手方向に沿った溶接が行われてもよい。
前記ロッカー2によれば、第1及び第2部材10,20に含まれる第1外縦壁12、第2外縦壁22及び第2内縦壁24が上下方向についての曲げ剛性の確保に寄与するとともに、第1部材10における第1上横壁16a及び第1下横壁16bと第2部材20における第2上横壁26a及び第2下横壁26bとに加えて、当該第2部材20が当該第2上横壁26aと第2下横壁26bとの間の領域において当該第2外縦壁22と当該第2内縦壁24とを連結する第2内部横壁26cを含むことが、第1及び第2部材10,20の肉厚を著しく大きくすることなく、ロッカー2の横方向についての曲げ剛性の向上に加え、側面衝突時に前記第2外縦壁22に与えられる衝撃エネルギーの効果的な吸収を行うことにより搭乗者の安全を確保することを可能にする。具体的に、前記少なくとも一つの第2内部横壁26cは、前記側面衝突時に前記第2外縦壁22に加えられる前記横方向の衝撃荷重Pによって座屈変形することにより、衝撃エネルギーを効果的に吸収することが可能である。
この実施の形態とは逆に、前記第1部材10が外側部材を構成し、前記第2部材20が内側部材を構成してもよい。しかし、前記第2部材20が前記第1部材10の車体幅方向の外側に配置されることは、ロッカー2に加えられる衝撃エネルギーを第1部材10に先行して第2部材20の第2内部横壁26cがその座屈変形により吸収することを可能にする。このことは、内部横壁を有しない第1部材10に荷重が与えられる場合に比べてより効果的なエネルギー吸収を可能にする。また、前記第2部材20の幅寸法が前記第1部材10の幅寸法よりも大きいことは、ロッカー2の幅寸法を決められた寸法に保ちながら第2部材20の第2内部横壁26cに大きな横方向の寸法を与えてその座屈変形を生じさせ易くすることを可能にする。
以上のことは、後述する他の実施の形態においても同様である。
図3は、本発明の第2の実施の形態に係るロッカー2の横断面を示す。このロッカー2は、前記第1の実施形態に係るロッカー2の第1部材10に第1内縦壁14が付加されたものである。すなわち、当該第2の実施の形態に係るロッカー2は、前記第1の実施の形態に係る第1部材10に前記第1内縦壁14が付加された第1部材10と、前記第1の実施の形態に係る第2部材20と同等の第2部材20と、を有する。
前記第1内縦壁14は、前記第2内縦壁24と同様、前記横断面において上下方向に延び、かつ、前記第1外縦壁12よりも前記第2部材20に近い位置、この第2の実施の形態では当該第2部材20の第2内縦壁24と接触可能な位置、に配せられる。当該第1内縦壁14は、前記第1上横壁16a及び前記第2下横壁16bの内側端部、すなわち当該第1上横壁16a及び第2下横壁16bの両端部のうち前記第2部材20に近い側の端部(図3では右側端部)を相互に上下方向に連結するように当該第1上横壁16a及び当該第1下横壁16bの前記内側端部にそれぞれつながる。当該第1内縦壁14の付加は、ロッカー2全体の上下方向についての曲げ剛性をさらに向上させることを可能にする。
図4は、本発明の第3の実施の形態に係るロッカー2の横断面を示す。この第3の実施の形態に係るロッカー2は、前記第2の実施形態に係るロッカー2の第1部材10に前記第1横壁として第1内部横壁16cがさらに付加されたものである。すなわち、当該第2の実施の形態に係るロッカー2は、前記第2の実施の形態に係る第1部材10に前記第1内部横壁16cが付加された第1部材10と、前記第1及び第2の実施の形態に係る第2部材20と同等の第2部材20と、を有する。
前記第1内部横壁16cは、前記第2内部横壁26cと同様、前記第1上横壁16aと前記第1下横壁16bの間の領域内の高さ位置、好ましくは前記第1上横壁16aと前記第1下横壁16bとの丁度中間の高さ位置、で前記第1外縦壁12と前記第1内縦壁14とを前記横方向に連結するように前記横断面において前記横方向に延びて当該第1外縦壁12と当該第1内縦壁14とにつながる。
前記第1内部横壁16cは、さらに、前記第1部材10に対して一定以上の前記横方向の荷重Pが作用したときに座屈変形することが可能な厚みを有する。当該第1内部横壁16cの厚みも、仕様に応じて自由に設定されることが可能であり、横方向について必ずしも一定でなくてもよい。図3に示される例では、第1及び第2部材10,20を構成する他の壁の厚みと同等の厚みが前記第1内部横壁16cに与えられている。
この第3の実施の形態において第1外縦壁12と第1内縦壁14とを横方向に連結する前記第1内部横壁16cは、前記側面衝突時に加えられる前記横方向の衝撃荷重によって座屈変形することにより、前記第2内部横壁26cと相俟って、衝撃エネルギーをさらに効果的に吸収することを可能にする。
前記第1内部横壁16cと前記第2内部横壁26cの高さ位置(上下方向の位置)は、相互にずれていてもよいが、当該第2内部横壁26cの内側端部(図4では左側端部)の少なくとも一部が当該第1内部横壁16cの内側端部(図4では右側端部)と上下方向についてオーバーラップする程度に両内部横壁16c,26cが合致していることが、好ましい。このことは、両内部横壁16c,26cの間での荷重伝達(第2部材20が外側部材である場合には第2内部横壁26cから第1内部横壁16cへの荷重伝達)を円滑にしてより有効な衝撃エネルギーの吸収を可能にする。
この第3の実施の形態において、前記第1部材10及び前記第2部材20がそれぞれ内側部材及び外側部材を構成する場合、つまり前記第2部材20が前記第1部材10の車体幅方向外側に配置される場合、前記第2内部横壁26cは、前記第1内部横壁16cよりも小さい荷重で座屈する形状を有することが、好ましい。このことは、前記第1内部横壁16cよりも車体幅方向の外側に位置する前記第2内部横壁26cが当該第1内部横壁16cに先行して座屈変形することを可能にし、これにより、衝撃エネルギーのより効果的な吸収を可能にする。具体的には、図4に示されるように第2部材20に第1の部材10の幅寸法よりも大きな幅寸法を与えて前記第2内部横壁26cに前記第1内部横壁16cよりも大きな横方向の寸法を与えてもよいし、前記第2内部横壁26cに前記第1内部横壁16cの厚みより小さい厚みを与えてもよい。あるいは、第1部材10を構成する材料よりも強度の低い材料によって第2部材20を構成してもよい。
前記第2内部横壁26cと前記第1内部横壁16cとの前記上下方向についてのオーバーラップによるエネルギー吸収性能向上の効果は、当該第2内部横壁26cが他の第1横壁とオーバーラップすることによっても得ることが可能である。図5〜図7は、その例である第4〜第6の実施の形態に係るロッカー2の横断面をそれぞれ示す。
図5に示される第4の実施の形態に係る第1部材10は、第1の実施の形態と同様に第1縦内壁及び第1内部横壁を含んでいないが、当該第1部材10の第1上横壁16aが第2部材20の第2内部横壁26cと同等の高さ位置に配せられることにより、当該第2内部横壁26cの内側端部の少なくとも一部が当該第1上横壁16aの内側端部と上下方向についてオーバーラップしている。当該オーバーラップは、前記第2内部横壁26cと前記第1上横壁16aとの間での円滑な荷重伝達を可能にする。なお、この第4の実施の形態では第2部材20の第2上側フランジ部28aが省略され、第1部材10の第1上側フランジ部18aは第2部材20の第2内縦壁24に横方向に突き合わされた状態で当該第2内縦壁24にリベット30またはその他の手段で固定される。
図6に示される第5の実施の形態は、前記第4の実施の形態に係る第1部材10に第1内縦壁14が付加されたものである。この第5の実施の形態においても、第2内部横壁26cの内側端部の少なくとも一部が第1上横壁16aの内側端部と上下方向についてオーバーラップすることにより、前記第2内部横壁26cと前記第1上横壁16aとの間での円滑な荷重伝達を可能にする。
図7に示される第6の実施の形態に係る第1部材10も、第1縦内壁及び第1内部横壁を含んでいないが、当該第1部材10の第1下横壁16bが第2部材20の第2内部横壁26cと同等の高さ位置に配せられることにより、当該第2内部横壁26cの内側端部の少なくとも一部が当該第1下横壁16bの内側端部と上下方向についてオーバーラップしている。当該オーバーラップは、前記第2内部横壁26cと前記第1下横壁16bとの間での円滑な荷重伝達を可能にする。なお、この第6の実施の形態では第2部材20の第2下側フランジ部28bが省略され、第1部材10の第1下側フランジ部18bは第2部材20の第2内縦壁24に横方向に突き合わされた状態で当該第2内縦壁24にリベット30またはその他の手段で固定される。
本発明に係る第2上横壁が「第2外縦壁の上端部と前記第1部材とを連結する」とは、当該第1上横壁が当該第2部材に直接接合されるものに限らず、当該第2上横壁が第2部材の他の部位を介して間接的に第2部材に接続されるもの、例えば図5及び図6に示されるように第2上横壁22につながる第2上横壁26aが第2内縦壁24の上半部を介して第1部材10に連結されるものも含む趣旨である。同様に、第2下横壁が「第2外縦壁の下端部と前記第1部材とを連結する」とは、例えば図7に示されるように第2上横壁22につながる第2下横壁26bが第2内縦壁24の下半部を介して第1部材10に連結されるものも含む趣旨である。このことは、第1上横壁及び第1下横壁についても同様である。
本発明に係る第2部材の「少なくとも一つの第2内部横壁」は、複数の第2内部横壁を含んでいてもよい。この場合、当該複数の第2内部横壁の少なくとも一つの内側端部がいずれかの第1横壁の前記内側端部と上下方向についてオーバーラップする高さ位置に当該第2内部横壁が配せられるのが、好ましい。さらに、当該複数の第2内部横壁のそれぞれの内側端部の少なくとも一部がいずれかの第1横壁の内側端部と上下方向についてオーバーラップする高さ位置に当該複数の第2内部横壁のそれぞれが配せられることにより、さらに効果的な衝撃エネルギーの吸収が可能になる。
図8は、後者の例である第7の実施の形態に係るロッカー2の横断面を示す。この第7の実施の形態に係るロッカー2の第1部材10は、図4に示される前記第3の実施の形態に係る第1部材10と同等であるが、第7の実施の形態に係る第2部材20は、第1部材10の高さ寸法よりも大きな高さ寸法を有し、かつ、「少なくとも一つの第2内部横壁」として第2上側内部横壁26d及び第2下側内部横壁26eを有している。前記第2部材20の第2上横壁26aが第1部材10の第1上横壁16aよりも高い位置に配せられ、前記第2上側内部横壁26d及び第2下側内部横壁26eが前記第1部材10の第1上横壁16a及び第1内部横壁16cと同等の高さ位置に配せられることにより、当該第2上側内部横壁26dの内側端部(図8では左側端部)の少なくとも一部が第1上横壁16aの内側端部(図8では右側端部)の少なくとも一部に対して上下方向にオーバーラップし、かつ、当該第2下側内部横壁26eの内側端部(図8では左側端部)の少なくとも一部が第1内部横壁16cの内側端部(図8では右側端部)の少なくとも一部に対して上下方向にオーバーラップしている。
この第7の実施の形態に係るロッカー2では、前記第2上側内部横壁26dと前記第1上横壁16aとの間での円滑な荷重伝達、及び前記第2下側内部横壁26eと前記第1内部横壁16cとの間での円滑な荷重伝達、を同時に達成することが可能である。
本発明では、第1及び第2部材の少なくとも一方に、上下方向の曲げ剛性をさらに高めるために上下方向に延びる内部縦壁が適宜付加されてもよい。図9は、その例である第8の実施の形態に係るロッカー2の横断面を示す。当該ロッカー2は、前記第7の実施の形態に係るロッカー2の第1部材10及び第2部材20のそれぞれに第1内部縦壁15及び第2内部縦壁25が付加されたものである。前記第1内部縦壁15は、横断面において第1外縦壁12と第1内縦壁14との間の領域で第1内部横壁16cと交差しながら上下方向に延びることにより第1上横壁16aと第1下横壁16bとを連結する。同様に、前記第2内部縦壁25は、横断面において第2外縦壁22と第2内縦壁24との間の領域で第1内部横壁26d,26eと交差しながら上下方向に延びることにより第2上横壁26aと第2下横壁26bとを連結する。
前記の上下方向のオーバーラップによる効果は、第2内部横壁の内側端部が第1部材に対して多少離れている場合、つまり、第9の実施の形態として図10に示すように第2部材20の第2内縦壁24が第2上横壁26a及び第2下横壁26bの内側端部(図では左側端部)よりも外側(図10では右側)にずれている場合、にも得ることが可能である。あるいは、第1部材10の第1内縦壁14が第1上横壁16a及び第1下横壁16bの内側端部(図では右側端部)よりも外側(図10では左側)にずれていてもよい。
本発明において、第1部材及び第2部材を相互に接合するための具体的な形態は限定されない。例えば、図4に示される前記第3の実施の形態に係るロッカー2は、図11に示される第10の実施の形態のように変形されることが可能である。当該第10の実施の形態では、前記第3の実施の形態に係る第1及び第2下側フランジ部18b,28bが省略され、第2下横壁26bが第1下横壁16bよりもその厚み分だけ低い位置に配せられ、当該第2下横壁26bから第1部材10に向かって延長部28cが延長されて当該延長部28cの上面が前記第1下横壁16の下面に重ね合わされ、当該延長部28cと当該第1下横壁16とが上下方向のリベット30によって相互に固定されている。
本発明において、第1及び第2部材を構成する材料は特に限定されない。しかし、以上説明した実施の形態において前記第1部材10及び第2部材20がアルミニウム合金からなる押出し材により構成されることは、ロッカー2全体の軽量化を図りながら、前記第1部材10及び第2部材10のそれぞれがその長手方向(車体の前後方向)について一様のかつ一体的な断面形状を有することを可能にする。さらに、このようなロッカー2は、アルミニウム合金を用いて前記第1部材10を押出し成形する工程と、アルミニウム合金を用いて前記第2部材20を押出し成形する工程と、前記第1部材10と前記第2部材20とを前記横方向に並べて前記リベット30や溶接等によって互いに接合する工程と、を含む方法によって容易に製造されることが可能である。
前記第1部材10及び前記第2部材20のうち前記車体幅方向の外側に配置される外側部材を構成するものは、6000系アルミニウム合金(Al−Mg−Si系アルミニウム合金)からなり、前記第1部材10及び前記第2部材20のうち前記車体幅方向の内側に配置される内側部材を構成するものは、7000系アルミニウム合金(例えばAl−Zn−Mg系アルミニウム合金)からなることが、好ましい。このように、応力腐食割れが生じにくい6000系アルミニウム合金により前記外側部材を構成し、強度の高い7000系アルミニウム合金により前記内側部材を構成することは、耐腐食性と軽量化を図りながらの高い強度の確保との両立を可能にする。
この場合、前記外側部材の下端は、当該外側部材の長手方向全域にわたって内側部材の下端よりも下側に位置することが、好ましい。このことは、雨水等が当該外側部材の下方を通って7000系アルミニウム合金からなる第1部材10に浸入するのを抑止し、これにより当該第1部材10の腐食を有効に抑制することを可能にする。例えば、図2〜図11に示されるロッカー2は、いずれも、第2部材20が前記外側部材を構成する場合において、当該第2部材20の下端がその長手方向の全域にわたって第1部材10の下端よりも下側に位置することにより、当該第2部材20が車体幅方向外側(それぞれの図の左側)からみて内側部材である第1部材10の下端を完全に覆っている。具体的に、図2〜図6及び図8〜図10に示すロッカー2では、いずれも、第2部材20の下側フランジ部28bが第1部材10の下側フランジ部18bよりも大きな突出量を有することにより、当該下側フランジ部28bの下端が第2部材20の長手方向の全域にわたって当該下側フランジ部18bの下端よりも下側に位置している。また、図7に示されるロッカー2では、第2部材20の第2下横壁26bの下面が第1部材10の下側フランジ部18bの下端よりも下側に位置しており、図11に示される実施の形態では、第2部材20の第2下横壁26bの下面及びこれに続く延長部28cの下面が第1部材10の第1下横壁16bの下面よりも下側に位置している。
同様に、前記外側部材の上端は、当該外側部材の長手方向全域にわたって内側部材の上端よりも上側に位置することが、好ましい。このことは、雨水等が当該外側部材の上方を通って7000系アルミニウム合金からなる第1部材10に浸入するのを抑止することを可能にする。図2〜図11に示されるロッカー2は、いずれも、第2部材20が前記外側部材を構成する場合において、当該第2部材20の上端がその長手方向の全域にわたって第1部材10の上端よりも上側に位置することにより、当該第2部材20が車体幅方向外側からみて内側部材である第1部材10の上端を完全に覆っている。具体的に、図2〜図4,図7,図10及び図11に示す実施の形態では、いずれも、第2部材20の上側フランジ部28aが第1部材10の上側フランジ部18aよりも大きな突出量を有することにより、当該上側フランジ部28aの上端が第2部材20の長手方向の全域にわたって当該上側フランジ部18aの上端よりも上側に位置している。また、図5,図6,図8及び図9に示される実施の形態では、いずれも、第2部材20の第2上横壁26aの上面が第1部材10の上側フランジ部18aの上端よりも上側に位置している。