JP2019025957A - プロペラ - Google Patents

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Abstract

【課題】慣性モーメントが小さく、モーター効率を低下させず、エネルギー効率の高いプロペラを提供する。【解決手段】小型無人航空機用のプロペラ1は、中心部と、中心部と一体に形成された回転翼部10(30)を有し、回転翼部10(30)の翼型(翼弦に沿って縦に切った断面)における下面の形状は円弧状に形成されており、回転翼部10(30)は、翼幅方向(長手方向)の位置に応じて異なる迎え角を有するように形成されており、中心部に連続する部分が所定の迎え角を有するモーター冷却部12として形成されており、回転翼部10(30)の翼幅(前記中心部の中心から前記回転翼部の先端までの長さ)の半分の位置よりもモーター冷却部12に近い位置が、最も翼弦長が長い最大翼弦長部14として形成されており、最大翼弦長部14を含む部分の後縁部10bにおいて、下方に延びる気流密度増加手段14aが形成されている。【選択図】図2

Description

本発明は、小型無人飛行体のプロペラに関する。
従来、小型無人飛行体(以下、「ドローン」と呼ぶ。)が利用されている。ドローンは複数枚のプロペラによって推力を得ており、軽量なプロペラが提案されている(例えば、特許文献1)。
特許第3991103号公報
ドローンはモーターでプロペラを回転させているのであるが、特に、モーターに電力を供給する手段として、バッテリーを使用する場合には、飛行可能時間や飛行可能距離に対する電力消費量が少ないのが望ましい。言い換えると、発生する推力に対する電力消費量(以下、「エネルギー効率」と呼ぶ。)が少ない(以下、「エネルギー効率が高い」という。)のが望ましい。モーターの回転中は、巻線中を電流が流れるため、巻線の温度が上昇し、巻線の電気抵抗が大きくなり、モーターの効率が低下するという問題がある。モーターの効率は、上述のエネルギー効率に影響する。
本発明はかかる問題の解決を試みたものであり、モーター効率を低下させず、エネルギー効率の高いプロペラを提供することを目的とする。
第一の発明は、小型無人航空機用のプロペラであって、中心部と、前記中心部と一体に形成された回転翼部を有し、前記回転翼部は、翼幅方向(長手方向)の位置に応じて異なる迎え角を有するように形成されており、前記中心部に近接する部分が所定の迎え角を有するモーター冷却部として形成されている、プロペラである。
第二の発明は、第一の発明の構成において、前記回転翼部の翼型(翼弦に沿って縦に切った断面)における下面の形状は円弧状に形成されており、前記回転翼部の翼幅(前記中心部の中心から前記回転翼部の先端までの長さ)の半分の位置よりも前記モーター冷却部に近い位置が、最も翼弦長が長い最大翼弦長部として形成されており、前記最大翼弦長部は、その迎え角が最大の迎え角を有する最大迎え角部として形成されている、プロペラである。
第三の発明は、第二の発明の構成において、前記最大翼弦長部を含む部分の後縁部において、下方に延びる気流密度増加手段が形成されている、プロペラである。
第四の発明は、第二の発明または第三の発明のいずれかの構成において、前記回転翼部の翼弦方向において、最も薄い部分の厚さの最も厚い部分の厚さに対する比は、前記最大翼弦長部において最も小さくなるように形成されている、プロペラである。
第五の発明は、第一の発明乃至第四の発明のいずれかの構成において、前記モーター冷却部によって冷却されるモーターは、ブラシレスDCモーター(brushless direct current motor)であり、前記モーター冷却部に形成された前記所定の迎え角によって発生した気流が前記モーターに当たることによって、前記モーターが冷却されるように構成されている、プロペラである。
第六の発明は、第一の発明乃至第五の発明のいずれかの構成において、前記回転翼部の迎え角の翼幅方向における変化率は、前記モーター冷却部において、最大になるように形成されている、プロペラである。
第七の発明は、第二の発明乃至第六の発明のいずれかの構成において、前記最大翼弦長部は、前記中心部の中心から、前記翼幅の長さの20パーセント(%)乃至30パーセント(%)の位置に形成されている、プロペラである。
第八の発明は、第二の発明乃至第七の発明のいずれかの構成において、前記回転翼部の最大の迎え角の前記最大翼弦長部の翼弦長に対する比率は、0.3(度/mm)以上0.4(度/mm)以下に規定されているプロペラである。
第九の発明は、第二の発明乃至第八の発明のいずれかの構成において、前記回転翼部の最も翼弦長が小さい最小翼弦長部の翼弦長の前記最大翼弦長部の翼弦長に対する比は、0.32〜0.42である、プロペラである。
第十の発明は、第二の発明乃至第九の発明のいずれかの構成において、前記気流密度増加手段が前記最大翼弦長部の後縁部から下方に延びる長さは、前記最大翼弦長部の平面視における長さの0.8%〜1.6%として規定されており、前記気流密度増加手段が前記最大翼弦長部の後縁部から下方に延びる角度は、鉛直方向の角度、または、前記最大翼弦長部の下面が延びる方向の角度と鉛直方向の角度との間の角度として規定されている、プロペラである。
本発明によれば、モーター効率を低下させず、エネルギー効率の高いプロペラを提供することができる。
本発明の実施形態に係るプロペラを示す概略平面図である。 本発明の実施形態に係るプロペラを示す概略平面図及び断面図である。 本発明の実施形態に係るプロペラを示す概略平面図及び各部の迎え角等を示す表である。 本発明の実施形態に係るプロペラの後縁部を示す概略拡大図である。 本発明の実施形態に係るプロペラの後縁部近傍における気流を示す概略図である。 本発明の実施形態に係るプロペラを示す概略斜視図及びモーターを示す概略図である。 本発明の実施形態に係るプロペラと従来のプロペラの対比を示す表である。 従来の典型的なプロペラを示す概略平面図及び断面図である。 従来の典型的なプロペラを示す概略平面図及び各部の迎え角等を示す表である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以下の説明においては、同様の構成には同じ符号を付し、その説明を省略又は簡略する。なお、当業者が適宜実施できる構成については説明を省略し、本発明の基本的な構成についてのみ説明する。
図1及び図2(a)に示すように、本実施形態のプロペラ1は、平面視で円形の中心部2と、中心部2と一体に形成された回転翼部10及び30を有する。プロペラ1は、ドローン等の小型無人航空機用のプロペラである。本実施形態において、翼幅L1は228mm(ミリメートル)であり、中心部2の直径φ1は、25.5mmである。本明細書において、「翼幅」は、プロペラ1の回転軸(中心部2の中心)から回転翼10(30)の先端までの距離を示すものとする。なお、小型無人航空機は用途に応じて様々な種類があり、適切なプロペラ形状も異なる。プロペラ1は、主として、4枚のプロペラを有し、最大離陸重量(バッテリーを含む重量)が約6.5kgであり、空中撮影や各種計測を主な用途とする小型無人航空機に適するプロペラである。
プロペラ1は、回転軸(中心部2の中心)を中心とする点対称に形成されている。プロペラ1は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:CARBON FIBER REINFORCED PLASTIC)で形成されている。炭素繊維強化プラスチックは、強化材に炭素繊維を用いた繊維強化プラスチックであり、母材はエポキシ樹脂である。なお、本実施形態のプロペラ1とは異なり、従来、コルクや特殊発泡体を炭素繊維強化プラスチックで包み込んだプロペラ(図8及び図9のプロペラ200を含む。)が使用されているが、剛性が不十分であり、また、湿気を多く吸収すると炭素繊維強化プラスチックが解離する場合がある。この点、プロペラ1は、炭素繊維強化プラスチックのみで形成されているから、従来のプロペラが有するそのような問題がない。また、プロペラ1が、炭素繊維強化プラスチックのみで形成されていることは、従来のプロペラよりも硬度が大きいことを意味する。回転翼は柔らかいほど余分なエネルギーが必要になるから、プロペラ1は回転翼の硬度においてもエネルギー効率上、有利である。
図1及び図2(a)に示すように、回転翼部10の各部を、前縁部10a、後縁部10b、上面部10s、下面部10r、中心近傍部12、最大翼弦長部14、中間部16、先端近傍部18及び先端部20とする。同様に、回転翼部30の各部を、前縁部30a、後縁部30b、上面部30s、下面部30r、中心近傍部32、最大翼弦長部34、中間部36、先端近傍部38及び先端部40とする。プロペラ1は、矢印X1に示す方向(時計回り)に回転することによって、紙面手前方向に向かう推力を発生させるように構成されている。回転翼部10と回転翼部30は点対称に構成されているので、以下、基本的に回転翼部10について説明し、回転翼部30の説明は省略する。
図2(b)及び図3(b)に示すように、回転翼部10は、翼幅方向(長手方向)の位置に応じて異なる迎え角に形成されている。ここで、迎え角とは、図2(b)の左側の図に示すように、翼弦線(翼の前縁と後縁を結ぶ線)D1が空気の流れC1となす角度αである。
図1及び図2(a)に示すように、中心近傍部12は中心部2に近接する位置に形成されている。詳細には、中心近傍部12は、図3(a)の位置A1から位置A3にわたる領域である。中心近傍部12は、所定の迎え角を有し、モーター冷却部として形成されている。
図3(b)において、「迎え角変化」は、隣接する2つの位置の間における迎え角の差分である。例えば、位置A2の迎え角変化は、位置A2の迎え角と位置A1の迎え角の差分である。「迎え角変化率」は、隣接する2つの位置の間における迎え角の差分を隣接する2つの位置の距離で除した数値である。例えば、位置A2の迎え角変化率(0.46度/mm)は、位置A2の迎え角(8.9度)と位置A1の迎え角(0.9度)の差分(8.0度)を位置A1と位置A2との間の距離(25.2−7.9=17.3mm)で除した値である。位置A1から位置A2にかけての迎え角変化率は0.46度/mm(ミリメートル)であり、位置A2から位置A3にかけての迎え角変化率は0.33度/mmである。他の位置における迎え角変化率は、迎え角が大きくなる方向の変化率と小さくなる方向の変化率にかかわらず、位置A1から位置A3にかけての迎え角変化率よりも小さい。すなわち、中心近傍部12において、回転翼部10の迎え角の変化率が最大になるように形成されている。
図2(a)に示すように、回転翼部10は、中心近傍部12に連続する部分が、翼弦長が最も長い部分である最大翼弦長部14となっている。詳細には、回転翼部10の翼幅(中心部2の中心から先端部20までの長さ)L1の半分の位置(中間部16の位置)よりも中心近傍部12に近い位置が最大翼弦長部14として形成されている。最大翼弦長部14は、中心部2の中心から、翼幅L1の20%(パーセント)乃至30%の位置に形成されるものとして規定されている。本実施形態において、最大翼弦長部14の位置A4(図3(b)参照)は、中心部2の中心から59.6mmの位置に形成されている。すなわち、最大翼弦長部14の位置A4は、中心部2の中心から、翼幅L1の26%の位置に形成されている。
最大翼弦長部14から先端近傍部18にかけて、翼弦長が短くなっている。なお、先端近傍部18から先端部20にかけての部分は、前縁部10aと後縁部10bが接続するための接続部分であり、当然に翼弦長は急激に短くなる。本明細書において、回転翼部10の翼弦長というときには、接続部分の翼弦長を除くものとする。そうすると、回転翼部10において、最大の翼弦長を有する位置は最大翼弦長部14であり、翼弦長が最も小さい最小翼弦長部は先端近傍部18である。先端近傍部18の翼弦長W3の最大翼弦長部14の翼弦長W1に対する比(W3/W1)は0.32〜0.42に規定されている。本実施形態において、最大翼弦長部14の翼弦長W1は47.0mm、先端近傍部18の翼弦長W3は17.6mmであり、翼弦長W3の翼弦長W1に対する比(W3/W1)は0.37である。
図2(b)は、図の右側から順に、最大翼弦長部14、中間部16及び先端近傍部18の翼型である。これらは、回転翼部10の長手方向と直交する方向の断面、すなわち、回転翼部10を翼弦に沿って縦に切った断面を示す。図2(b)に示すように、最大翼弦長部14、中間部16及び先端近傍部18の下面部10rの形状は円弧状に形成されている。最大翼弦長部14、中間部16及び先端近傍部18以外の回転翼部10の部分においても下面部10rは円弧状に形成されている。
図3(b)に示すように、最大翼弦長部14(位置A4)は、回転翼部10において、その迎え角が最大の迎え角を有する最大迎え角部になるように形成されている。すなわち、最大翼弦長部14は、回転翼部10において、翼弦長が最も長い部分であると同時に、最大の迎え角を有する部分である。本実施形態において、最大翼弦長部14の迎え角は16.5度である。回転翼部10の最大の迎え角の最大翼弦長部の翼弦長に対する比率は、0.3(度/mm)以上0.4(度/mm)以下に規定されている。本実施形態において、最大の迎え角は16.5度、最大翼弦長部14の翼弦長W1は47.0mmであるから、その比は、0.35である。
また、回転翼部10の翼弦方向において、最も薄い部分の厚さの最も厚い部分の厚さに対する比は、最大翼弦長部14において最も小さくなるように形成されている。具体的には、最大翼弦長部14において、最も翼の厚い部分の厚さd1aは、2.4mmであり、最も薄い部分の厚さd1bは0.9mmであるから、その比(d1b/d1a)は、0.38である。中間部16において、最も翼の厚い部分の厚さd2aは、1.8mmであり、最も薄い部分の厚さd2bは0.8mmであるから、その比(d2b/d2a)は、0.44である。先端近傍18において、最も翼の厚い部分の厚さd3aは、1.3mmであり、最も薄い部分の厚さd3bは0.8mmであるから、その比(d3b/d3a)は、0.62である。以上から、最大翼弦長部14の厚さが他の部分よりも厚く、かつ、最大翼弦長部14の下面が、他の部分に比べて大きく窪んでいること、言い換えると、平均曲率半径が最も小さいことを意味する。なお、図2(b)においては、表記の便宜上、最大翼弦長部14の翼弦長W1、中間部16の翼弦長W2及び先端近傍部18翼弦長W3をほぼ同一の長さで表現しているため、先端近傍部18の翼厚d3aが最も厚いように見えるが、実際の数値は上記の通りであり、先端近傍部18の翼厚d3aは最も薄い。
図2(b)の右端の図に示すように、最大翼弦長部14の後縁部10bにおいて、下方に延びる折り曲げ部14aが形成されている。折り曲げ部14aは、下面部10rを流れる気流の密度を増加させるための気流密度増加手段である。折り曲げ部14aは、後縁部10bにおいて、最大翼弦長部14を含む部分に形成されている。具体的には、図3(a)に示すように、折り曲げ部14aは、位置A3から位置A5にわたる領域に形成されている。なお、本実施形態とは異なり、折り曲げ部14aを後縁部10bの全体(例えば、異体A1から位置A14にかけての後縁部10b)に形成するようにしてもよいが、折り曲げ部14aを長くするほど、プロペラ1の回転時の気流からの抵抗が増加するから、プロペラ1全体としてのエネルギー効率を踏まえて、本実施形態において、折り曲げ部14aの長さを位置A3から位置A5にわたる領域に限定した。
図4に示すように、折り曲げ部14aが後縁部10bの下面部10rから下方に延びる長さh1は、最大翼弦長部14の平面視における長さL2(図2(b)参照)の0.8%〜1.6%として規定されている。本実施形態において、長さL2は46.9mmであり、長さh1は0.6mmであり、長さh1の長さL2に対する比(h1/L2)は1.0%である。また、折り曲げ部14aが後縁部10bから下方に延びる角度θ1は、鉛直方向の角度、または、最大翼弦長部14の下面部10rが延びる方向の角度と鉛直方向の角度との間の角度として規定されている。本実施形態において、角度θ1は、46.4度である。下面部10rと折り曲げ部14aとの接続部10r1は、所定の曲面に形成されている。
図5に示すように、折り曲げ部14aが位置する回転翼部10の後縁部10bにおいて、上面部10sの気流S1は、回転翼部10の上面部10sの形状に応じた密度で流れる。一方、下面部10rを流れる気流S2は、下面部10rの円弧形状によって気流S1よりも密度が大きいのであるが、折り曲げ部14aの面14aaにぶつかることによって、さらに密度が大きくなる。これにより、気流S2の密度が大きくなり、上面部10sを流れる気流S1と下面部10rを流れる気流S2の密度の差が拡大し、推力が向上する。
図6(a)に示すように、プロペラ1が時計の回転方向に回転することによって、中心近傍部12及び32から気流A1が発生し、モーター100に当たり、冷却する。モーター100の回転軸にプロペラ1が接続されている。モーター100は、アウターローター型のブラシレスDCモーター(無整流子電動機、brushless direct current motor)である。
図6(b)に示すように、モーター100は、ローター(回転子)130の外側カバー132に永久磁石134及び136が配置され、ステーター(固定子)110の中心部112に巻線(コイル)114が配置される構成である。巻線114は外側カバー132に覆われておらず、外部に露出されている。永久磁石134と永久磁石136とは極性が逆である。具体的には、永久磁石134において中心部112に面する側の極性がN極であれば、永久磁石136において中心部112に面する側の極性はS極である。ステーター110の巻線114へ供給する電流の向きを制御する(「転流」と呼ばれる。)ことで、磁束の向きを順次切り替える。磁束の向きを順次切り替えることによって、回転磁界を形成する。これにより、ローター130に配置された永久磁石134及び136とステーター110とが吸引及び反発を繰り返し、ローター130が回転するように構成されている。転流を行うタイミングは、ベクトル制御によって制御される。ベクトル制御の説明は省略する。
プロペラ1が時計の回転方向に回転することによって、中心近傍部12及び32から下方の気流A1が発生し、モーター100の巻線114に当たる。すなわち、中心近傍部12及び32に形成された所定の迎え角によって発生した気流A1がモーター100の巻線114に当たることによって冷却され、モーター100の巻線114の電気抵抗の増加が抑制されるようになっている。
中心近傍部12及び32以外の部分、例えば、最大翼弦長部14及び34は、主として、上面10s(30s)を流れる気流と下面部10r(30r)を流れる気流の密度差を生じさせて推力を得るための構成である。最大翼弦長部14及び34において推力U1を得、その他の部分(中心部16及び先端近傍部18)において推力U2を得る。すなわち、中心近傍部12及び32と最大翼弦長部14及び34とでは、機能が異なる。
図7を参照して、プロペラ1と従来例との相違を説明する。その前提として、図8及び図9を参照して、従来の典型的なプロペラ200について説明する。プロペラ200は、中心部202と回転翼部210及び230を有する。中心部202と回転翼部210及び230は、中心近傍部212及び232で接続されている。中心近傍部212及び232には迎え角が形成されていない、あるいは、形成されていたとしても極めて小さい角度である。
回転翼部210の翼弦方向において、最も薄い部分の厚さの最も厚い部分の厚さに対する比は、最大翼弦長W201を有する部分において最も小さくなるように形成されているが、プロペラ1に比べると、その比は大きい。具体的には、最大翼弦長W201を有する部分において、最も翼の厚い部分の厚さd201aは、2.1mmであり、最も薄い部分の厚さd201bは1.1mmであるから、その比(d201b/d201a)は、0.52である。これに対して、上述のように、プロペラ1の最大翼弦長部14において、最も翼の厚い部分の厚さd1aは、2.4mmであり、最も薄い部分の厚さd1bは0.9mmであるから、その比(d1b/d1a)は、0.38である。プロペラ200の上記比(d201b/d201a)を基準にすれば、プロペラ1の上記比(d1b/d1a)は、約27%小さい。すなわち、プロペラ1はプロペラ200よりも、翼弦方向における翼下面の窪みが大きい、すなわち、平均曲率半径が小さい。
図8(a)と図9(a)を参照すると、図8(a)の最大翼弦長W201を有する部分は、図9(a)の位置B9の部分である。図9(b)に示すように、位置B9の迎え角は、位置B4から位置B8にかけての部分の迎え角よりも小さい。すなわち、最大翼弦長W201を有する部分の迎え角が、回転翼部210における最大の迎え角にはなっていない。このことは、位置B7から位置B9にかけての迎え角変化率がマイナス(−)になっていることからも明らかである。
また、中心部202の中心から最大翼弦長W201の位置までの長さL202の翼幅L200に対する比(L202/L200)は、0.47である。
以上を前提に、プロペラ1と従来例との相違を説明する。まず、プロペラ1は、最大翼弦長部14(図3(a)の位置A4)が最大の迎え角を有する部分として形成されており、位置A4に近づくに連れて迎え角が大きくなり、位置A4から遠ざかるに連れて迎え角が小さくなる。これに対して、プロペラ200においては、最大翼弦長W201(図8参照)を有する部分(図9(a)の位置B9)は最大の迎え角を有する部分ではない。最大の迎え角を有する部分は、位置B9よりも回転軸に近い位置B6である。位置B6から先端に向かって迎え角が小さくなっていき、最大翼弦長W201を有する位置B9は、迎え角が小さくなっていく過程の部分に位置する。プロペラ1は、最大翼弦長部14から先端近傍部18にかけて比較的急激に翼弦長が短くなるのに対して、プロぺラ200は、最大翼弦長W201を有する部分から先端近傍において翼弦長W202を有する部分まで、比較的ゆるやかに翼弦長が短くなっている。プロペラ1は、最大翼弦長部14を含む部分に折り曲げ部14aが形成されているが、プロペラ200はそのような構成はない。
以上を踏まえて図7を参照すると、まず、プロペラ1は従来例のプロペラ200よりも翼上面積が大きい。しかし、回転翼部10において、最大翼弦長部14以外の翼弦長を極力短くし、下面部10rの円弧状を深く構成した(平均曲率半径を小さくした)ことによって、質量は軽くなっている。これにより、推力を向上させつつ、モータートルクTmを小さくすることができた。ここで、モータートルクTmは、プロペラの回転による気流抵抗を考慮せず、プロペラの質量のみを考慮した場合に必要なモーターのトルク(必要な力)である。モータートルクTmは計算によって算出した。
次に、気流からのトルクTsは、プロペラ1の方が従来例のプロペラ200よりも小さい。ここで、気流からのトルクTsは、プロペラの質量を考慮せず、プロペラが回転することによって生じる気流抵抗に抗して回転するために必要なモーターのトルクである。トルクTsはシミュレーションによって算出した。プロペラ1の最大迎え角は16.5度(図3(b)参照)であり、プロペラ200の最大迎え角は21.3度(図9(b)参照)である。プロペラ1の最大迎え角である16.5度(図3(b)参照)を有する最大翼弦長部14から、先端部の迎え角7.8度に向かって、迎え角が小さくなっていく。一方、プロペラ200の最大迎え角である21.3度を有する部分から、先端部の迎え角7.7度に向かって、迎え角が小さくなっている。すなわち、最大の迎え角を有する部分と尖端部の間の部分の迎え角も、プロペラ1の方がプロペラ200よりも小さい。これによって、プロペラ1のトルクTsがプロペラ200よりも小さくなったと考えられる。
プロペラ1の方が、モータートルクTmと気流からのトルクTsの双方においてプロペラ200よりも小さいから、モータートルクTmと気流からのトルクTsを合算した全トルクTallもプロペラ1の方が小さい。
推力Pを対比すると、プロペラ1は3.55N、プロペラ200は3.63Nであった。そして、エネルギー効率(推力P/全トルクTall)は、プロペラ1が9.34、プロペラ200が6.85であるから、プロペラ1はプロペラ200よりも約27%、エネルギー効率が高い。すなわち、プロペラ1は、推力はプロペラ200よりも約2%小さいが、エネルギー効率が約27%高い。
プロペラ1の方がプロペラ200よりも最大迎え角が小さいのに対して、推力の相違がわずかにすぎず、エネルギー効率が高い理由の一つは、折り曲げ部14aによる推力特性の向上が考えられる。
そして、折り曲げ部14aを最大迎え角に形成されている最大翼弦長部14の後縁部10bに形成したことも、推力の向上に相乗的に作用していると考えられる。また、中心近傍部12に所定の迎え角を形成し、モーター100の冷却手段としたことは、モーター100の効率を向上させ、比較的長時間の飛行におけるエネルギー効率を高くしていると考えられる。ここで、中心近傍部12の作用については、モーター100を長時間駆動するほど顕著に表れると予測するのが合理的である。
さらに、図7には示されていないが、実際にプロペラ1を装着したドローンを操作すると、操作に対する反応がよいことがわかっている。これは、最大翼弦長部14を中心部2に近い部分に形成したことによって、プロペラ1の重心位置が中心部2に近い部分となるため、慣性モーメントが低下したからだと考えられる。プロペラ1において、中心部2の中心から最大翼弦長部14までの長さ(59.6mm)の翼幅L1(228mm)に対する比は0.26である。これに対して、プロペラ200において、中心部202の中心から最大翼弦長部(位置B9)までの長さL202(106.5mm)の翼幅L200(229mm)に対する比は0.47である。最大翼弦長部の位置が、翼における重心位置へ大きく影響することを踏まえれば、上記の比の相違によって、プロペラ1の回転翼の重心がプロペラ200の回転翼の重心よりも回転軸近傍に位置することが理解できる。
プロペラ1は、中心近傍部12によってモーター100を冷却し、中心近傍部12に連続して形成された最大翼弦長部14及びその周辺領域、及び、折り曲げ部14aによって、大きな推力を発生させることができる。そして、最大翼弦長部14を中心部2の近傍に形成したことによって、慣性モーメントを低下させることができたのである。
本明細書の冒頭に記載したとおり、ドローンはモーターでプロペラを回転させているのであるが、特に、モーターに電力を供給する手段として、バッテリーを使用する場合には、飛行可能時間や飛行可能距離に対する電力消費量が少ないのが望ましい。言い換えるとエネルギー効率が高いのが望ましい。また、ドローンの位置や姿勢の頻繁な変更が必要な用途においては、プロペラの慣性モーメントが小さい方が、迅速に位置や姿勢を変更することができ、無駄な動きを回避できるから、バッテリーの電力消費量を少なくすることができる。なお、実際には、ドローンは、自然風などの外部からの影響等を受けており、予定の姿勢や位置からずれるから、大きく姿勢や位置を変更していない場合であっても、それぞれのモーターの回転数を変更して姿勢や位置を微修正するから、やはり、慣性モーメントが小さい方が望ましい。また、モーターの回転中は、巻線中を電流が流れるため、巻線の温度が上昇し、巻線の電気抵抗が大きくなり、モーターの効率が低下するという問題がある。慣性モーメントやモーターの効率は、上述のエネルギー効率に影響する。この点、上述のように、本実施形態のプロペラは、慣性モーメントが小さく、モーター効率を低下させず、エネルギー効率が高い。
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
1 プロペラ
2 中心部
10,30 回転翼部
10a,30a 前縁部
10b,30b 後縁部
10s,30s 上面部
10r,30r 下面部
12,32 中心近傍部
14,34 最大翼弦長部
14a,34a 折り曲げ部
16,36 中間部
18,38 先端近傍部
20,40 先端部
100 モーター

Claims (10)

  1. 小型無人航空機用のプロペラであって、
    中心部と、前記中心部と一体に形成された回転翼部を有し、
    前記回転翼部は、
    翼幅方向(長手方向)の位置に応じて異なる迎え角を有するように形成されており、
    前記中心部に近接する部分が所定の迎え角を有するモーター冷却部として形成されている、
    プロペラ。
  2. 前記回転翼部の翼型(翼弦に沿って縦に切った断面)における下面の形状は円弧状に形成されており、
    前記回転翼部の翼幅(前記中心部の中心から前記回転翼部の先端までの長さ)の半分の位置よりも前記モーター冷却部に近い位置が、最も翼弦長が長い最大翼弦長部として形成されており、
    前記最大翼弦長部は、その迎え角が最大の迎え角を有する最大迎え角部として形成されている、請求項1に記載のプロペラ。
  3. 前記最大翼弦長部を含む部分の後縁部において、下方に延びる気流密度増加手段が形成されている、
    請求項2に記載のプロペラ。
  4. 前記回転翼部の翼弦方向において、最も薄い部分の厚さの最も厚い部分の厚さに対する比は、前記最大翼弦長部において最も小さくなるように形成されている、請求項2または請求項3のいずれかに記載のプロペラ。
  5. 前記モーター冷却部によって冷却されるモーターは、ブラシレスDCモーター(brushless direct current motor)であり、
    前記モーター冷却部に形成された前記所定の迎え角によって発生した気流が前記モーターに当たることによって、前記モーターが冷却されるように構成されている、
    請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のプロペラ。
  6. 前記回転翼部の迎え角の翼幅方向における変化率は、前記モーター冷却部において、最大になるように形成されている、
    請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のプロペラ。
  7. 前記最大翼弦長部は、前記中心部の中心から、前記翼幅の長さの20パーセント(%)乃至30パーセント(%)の位置に形成されている、請求項2乃至請求項6のいずれかに記載のプロペラ。
  8. 前記回転翼部の最大の迎え角の前記最大翼弦長部の翼弦長に対する比率は、0.3(度/mm)以上0.4(度/mm)以下に規定されている請求項2乃至請求項7のいずれかに記載のプロペラ。
  9. 前記回転翼部の最も翼弦長が小さい最小翼弦長部の翼弦長の前記最大翼弦長部の翼弦長に対する比は、0.32〜0.42である、請求項2乃至請求項8のいずれかに記載のプロペラ。
  10. 前記気流密度増加手段が前記最大翼弦長部の後縁部から下方に延びる長さは、前記最大翼弦長部の平面視における長さの0.8%〜1.6%として規定されており、
    前記気流密度増加手段が前記最大翼弦長部の後縁部から下方に延びる角度は、鉛直方向の角度、または、前記最大翼弦長部の下面が延びる方向の角度と鉛直方向の角度との間の角度として規定されている、
    請求項2乃至請求項9のいずれかに記載のプロペラ。
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