JP2019019914A - フォイル軸受 - Google Patents

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実樹 岡本
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
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Abstract

【課題】軸との摺動によるフォイルの供回りを規制する機構を備えたフォイル軸受において、軸受面の軸方向領域におけるフォイルやフォイルホルダの設計の自由度を高める。【解決手段】フォイル軸受1は、フォイルホルダ10と、フォイルホルダ10に取り付けられたフォイル20とを備える。フォイル20は、軸受面Aを有する本体部21と、フォイルホルダ10と周方向(軸2の回転方向)で係合可能な係止部22とを備える。係止部22は、軸受面Aに沿う面内で回転方向と直交する回転直交方向(ラジアルフォイル軸受では軸方向)で、軸受面Aとは異なる領域に設けられる。【選択図】図1

Description

本発明は、フォイル軸受に関する。
フォイル軸受は、可撓性を有する金属薄板(フォイル)で軸受面を構成し、この軸受面のたわみを許容しながら荷重を支持するものである。フォイル軸受は、フォイルが撓むことにより、軸の回転速度や荷重、周囲温度等の運転条件に応じて軸受隙間が適切な幅に自動調整されるという特徴を有する。
フォイル軸受において、軸の停止直前や起動直後の低速回転時や、軸の突発的な逆回転時には、軸受隙間の流体圧力が十分に高まらないため、軸とフォイルとが摺動し、フォイルが軸と共に周方向に移動しようとする。このため、フォイル軸受では、上記のような軸との摺動によるフォイルの供回りを規制する手段を講じる必要がある。
例えば、フォイルをフォイルホルダに溶接固定すれば、上記の不具合を防止できるが、溶接時の熱によりフォイルに歪が生じる恐れがある。フォイルの軸受面と軸の外周面との間に形成される軸受隙間は、通常、数十μm程度の極小幅であるため、フォイルに僅かでも歪が生じると、軸受隙間の精度に悪影響を及ぼす。
溶接を用いないフォイルの固定方法として、例えば下記の特許文献1では、フォイルホルダの内周面に突出部(峰)を設け、この突出部の側壁(止め壁)とフォイルとを周方向で係合させることで、フォイルの周方向移動を規制している。また、下記の特許文献2では、フォイルホルダの内周面に係合溝を設け、この係合溝にフォイルの周方向端部を挿入することで、フォイルの周方向移動を規制している。
特開2006−57652号公報 特開2013−24344号公報
上記の特許文献1及び2のフォイル軸受は、何れも、軸受面の軸方向領域内において、フォイルの周方向端部とフォイルホルダの突出部や係合溝との突き当て構造が設けられている。フォイル軸受の軸受性能を高めるためには、軸受面の形状を最適化したり、軸受面の面積を最大化したりする設計が必要となる。しかし、上記のように、軸受面の軸方向領域にフォイルとフォイルホルダとの突き当て構造を設けることで、この軸方向領域におけるフォイルやフォイルホルダの設計が制限されるため、軸受性能を十分に高めることができないおそれがある。
以上のような課題は、軸をラジアル方向に支持するラジアルフォイル軸受に限らず、軸をスラスト方向に支持するスラストフォイル軸受においても同様に生じる。すなわち、軸受面の半径方向領域にフォイルとフォイルホルダの突き当て構造を設けると、この半径方向領域におけるフォイルやフォイルホルダの設計が制限される。
そこで、本発明は、軸との摺動によるフォイルの供回りを規制する機構を備えたフォイル軸受において、軸受面が設けられた領域(ラジアルフォイル軸受では軸方向領域、スラストフォイル軸受では半径方向領域)におけるフォイルやフォイルホルダの設計の自由度を高めることを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明は、フォイルホルダと、前記フォイルホルダに取り付けられたフォイルとを備え、軸を相対回転自在に支持するフォイル軸受であって、前記フォイルが、軸受面を有する本体部と、前記フォイルホルダと回転方向で係合可能な係止部とを備え、前記係止部が、前記軸受面に沿う面内で回転方向と直交する回転直交方向で、前記軸受面とは異なる領域に設けられたフォイル軸受を提供する。
このように、本発明のフォイル軸受では、フォイルホルダと回転方向(軸の相対回転方向、以下同様)で係合可能な係止部を、フォイルのうち、回転直交方向(ラジアルフォイル軸受では軸方向、スラストフォイル軸受では半径方向)で軸受面とは異なる領域に設けた。これにより、軸受面が設けられた回転直交方向領域に、軸との摺動によるフォイルの供回りを規制するための機構(突出部や係合溝等)を設ける必要が無くなるため、この領域におけるフォイルやフォイルホルダの設計の自由度が高められる。
上記のフォイル軸受において、フォイルの係止部とフォイルホルダとを回転方向で何れの向きにも係合可能とすれば、フォイルのフォイルホルダに対する回転方向両側への移動を規制することができる。
上記のフォイル軸受において、フォイルの係止部とフォイルホルダとを回転直交方向で係合可能とすれば、フォイルのフォイルホルダに対する回転直交方向移動を規制することができる。
フォイルの係止部は、例えば、本体部と回転直交方向で連続した第1領域と、第1領域から回転方向に延び、前記本体部と回転直交方向で分断された第2領域とを備えた構成とすることができる。このように、フォイルの係止部の第2領域と本体部とが回転直交方向で分断されていることで、本体部の軸受面に影響を与えることなく、係止部の第2領域を本体部よりも軸から離反する側に配することができ、これにより係止部の第2領域と軸との干渉を回避することができる。
例えば、軸をラジアル方向に支持するラジアルフォイル軸受において、上記のフォイルをフォイルホルダの内周面に取り付けると、フォイルの本体部はフォイルホルダの内周面に沿って湾曲し、この本体部に追従してフォイルの係止部の第1領域が湾曲する。一方、フォイルの係止部の第2領域は、本体部と軸方向で分断されているため、本体部に追従して湾曲しない。従って、係止部の第2領域の外径側に十分な空間があれば、第2領域が、第1領域の回転方向端部における接線方向に延びて、フォイルホルダの内周面よりも外径側に配される。このように、係止部の弾性復元力を利用することで、係止部の第2領域を、フォイルホルダの内周面よりも外径側に簡単に配することができる。
上記の他、フォイルの係止部の第1領域と第2領域の境界を予め塑性的に曲げた状態で、フォイルホルダに取り付けてもよい。
上記のフォイル軸受では、例えば、フォイルホルダに凹部を設け、この凹部とフォイルの係止部とを回転方向で係合させることで、軸との摺動によるフォイルの供回りを規制することができる。
フォイルの本体部には、軸受面を有するトップフォイル部と、前記トップフォイル部を背後から支持するバックフォイル部とを設けることができる。この場合、フォイルの係止部は、トップフォイル部あるいはバックフォイル部と連続させることができる。係止部をバックフォイル部と連続させた場合、係止部をトップフォイル部と連続させた場合と比べて、係止部が軸から離反する側に配されるため、係止部と軸との干渉を確実に防止できる。
また、上記の構成は、軸受面を有するフォイルに限らず、トップフォイルを背後から支持するバックフォイルに適用することもできる。すなわち、本発明は、フォイルホルダと、前記フォイルホルダに取り付けられ、軸受面を有するトップフォイルと、前記フォイルホルダに取り付けられ、前記トップフォイルと前記フォイルホルダとの間に配されたバックフォイルとを備え、軸を相対回転自在に支持するフォイル軸受であって、前記バックフォイルが、前記トップフォイルの軸受面を背後から弾性的に支持する本体部と、前記フォイルホルダと回転方向で係合可能な係止部とを備え、前記係止部が、前記軸受面に沿う面内で回転方向と直交する回転直交方向で、前記軸受面とは異なる領域に設けられたフォイル軸受を提供する。
以上のように、本発明によれば、軸との摺動によるフォイルの供回りを規制する係止部が、回転直交方向で軸受面とは異なる領域に設けられるため、軸受面が設けられた回転直交方向領域におけるフォイルやフォイルホルダの設計の自由度を高めることができる。
本発明の一実施形態に係るフォイル軸受の斜視図である。 上記フォイル軸受の正面図である。 上記フォイル軸受のフォイルを平板状に展開した平面図である。 3枚のフォイルを連結した仮組体の斜視図である。 図1のフォイル軸受の拡大図である。 他の実施形態に係るフォイルを平板状に展開した平面図である。 図6のフォイルを有するフォイル軸受の拡大正面図である。 さらに他の実施形態に係るフォイルを平板状に展開した平面図である。 図8のフォイルを連結した仮組体の斜視図である。 図8のフォイルを有するフォイル軸受の正面図である。 さらに他の実施形態に係るフォイルを展開した平面図である。 図11のフォイルを折り返した状態を示す側面図である。 図11のフォイルを有するフォイル軸受の正面図である。 さらに他の実施形態に係るフォイル軸受の正面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2に、本発明の一実施形態に係るフォイル軸受1を示す。フォイル軸受1は、内周に挿入された軸2を回転自在にラジアル方向に支持するものである。フォイル軸受1は、圧力発生流体として空気を用いる空気動圧軸受である。フォイル軸受1は、フォイルホルダ10と、フォイルホルダ10の内周面11に取り付けられたフォイルとを有する。本実施形態のフォイル軸受1は、複数(図示例では3枚)のフォイル20を有する。尚、以下では、各フォイル20の説明において、軸2の相対回転時における、フォイル20に対する流体の流れ方向下流側を「下流側」と言い、その反対側を「上流側」と言う。また、3枚のフォイル20は同じ形状であるが、図1、4、及び9では、理解しやすいように、各フォイル20を密なハッチング、疎なハッチング、ハッチング無しで示している。
フォイルホルダ10は、金属や樹脂等で円筒状に形成される。フォイルホルダ10の内周面11には、円筒面11aと、軸方向溝11bと、凹部11cとが設けられる。円筒面11aは、内周面11の大部分を構成し、図示例では、内周面11の軸方向全域に円筒面11aが設けられる。軸方向溝11bは、フォイルホルダ10の内周面11の周方向に離隔した複数箇所(図示例では3箇所)に設けられる。軸方向溝11bは、軸方向両端がフォイルホルダ10の軸方向両側の端面に開口している。凹部11cは、フォイル20の軸受面Aとは異なる軸方向領域に設けられる。本実施形態では、凹部11cが、内周面11の軸方向端部(特に、軸方向両端)に設けられる。凹部11cは、フォイルホルダ10の内周面11の周方向に離隔した複数箇所(例えば3箇所)に設けられ、図示例では、軸方向溝11bの周方向間に設けられる。凹部11cは、円筒面状の底面11c1と、底面11c1の周方向両端から半径方向に延びて円筒面11aと接続する側面11c2とを有する。フォイルホルダ10の外周面12は、フォイル軸受1が組み込まれる設備(例えばガスタービン等のターボ機械)のハウジングに固定される。
フォイル20は、ばね性に富み、かつ加工性のよい金属で形成され、例えば鋼や銅合金で形成される。フォイル20は、厚さ20μm〜200μm程度の金属薄板にプレス加工や放電加工を施すことで形成される。本実施形態のように圧力発生流体として空気を用いる空気動圧軸受では、雰囲気に潤滑油が存在しないため、ステンレス鋼もしくは青銅でフォイル20を形成することが好ましい。
フォイル20は、図3に示すように、本体部21と、本体部21の軸方向両側に設けられた係止部22とを備える。フォイルホルダ10に取り付ける前の状態では、フォイル20は全体が平板状を成している。
フォイル20の本体部21は、軸受面Aを有するトップフォイル部21aと、トップフォイル部21aの下流側(図3の上側)に設けられた差込部21bと、トップフォイル部21aの上流側(図3の下側)に設けられたバックフォイル部21cとを有する。
差込部21bは、トップフォイル部21aから下流側に延びている。本実施形態では、差込部21bが、軸方向に離隔した複数箇所(図示例では3箇所)に設けられる。トップフォイル部21aの下流側の縁のうち、差込部21b付近には、周方向の切り込み21dが設けられる。尚、特に必要がなければ、切り込み21dを省略してもよい。
バックフォイル部21cは、トップフォイル部21aから上流側に延びている。本実施形態では、バックフォイル部21cの上流側端部のうち、軸方向に離隔した複数箇所(図示例では2箇所)に切り欠き部21c1が設けられる。トップフォイル部21aとバックフォイル部21cとの境界には、スリット21eが設けられる。スリット21eは、差込部21bと同じ軸方向位置に設けられる。軸方向両端のスリット21eは、軸方向に延び、本体部21の軸方向端部に開口している。軸方向中央のスリット21eは、軸方向に延びており、その軸方向中央部に上流側に延びる切り欠き部が設けられる。
フォイル20の係止部22は、軸受面Aに沿う面内で軸2の回転方向(周方向)と直交する方向(本実施形態では軸方向、図3では左右方向)で、軸受面Aとは異なる領域に設けられる。本実施形態の係止部22は、本体部21と軸方向に連続した第1領域22aと、第1領域22aから周方向に延びる第2領域22bとを備える。図示例では、第1領域22aが、本体部21のトップフォイル部21aと軸方向に連続している。第2領域22bは、第1領域22aの周方向両側に設けられる。第2領域22bと本体部21とは、スリット23により軸方向で分断されている。
上記のフォイル20は、以下の手順でフォイルホルダ10に組み付けられる。まず、図4に示すように、各フォイル20の差込部21bを、隣接するフォイル20のスリット21eに差し込むことにより、3枚のフォイル20を連結して円筒状の仮組体Xを形成する。このように、各フォイル20の本体部21を円筒状に丸めると、係止部22の第1領域22aは本体部21に追従して円筒状に変形しようとするが、係止部22の第2領域22bは、本体部21と軸方向で分断されているため、本体部21に追従せず、第1領域22aの接線方向に延びる平板状となる。その結果、係止部22の第2領域22bは、本体部21よりも外径側に配される。
そして、上記のように円筒状に丸めた仮組体Xを、フォイルホルダ10の内周に挿入する。具体的には、フォイルホルダ10の端面に開口した軸方向溝11bに、各フォイル20の差込部21bを軸方向から差し込みながら、フォイルホルダ10の内周に仮組体Xを挿入する。このとき、図5に示すように、各フォイル20のバックフォイル部21cが、上流側に隣接するフォイル20のトップフォイル部21aとフォイルホルダ10の内周面11の円筒面11aとの間に配される。これにより、各フォイル20のトップフォイル部21aが、下流側に隣接するフォイル20のバックフォイル部21cで背後から支持される。以上により、3枚のフォイル20がフォイルホルダ10に取り付けられる。
フォイル20の係止部22の第2領域22bは、フォイルホルダ10の内周面11の軸方向両端に設けられた凹部11cに配される。これにより、係止部22の第2領域22bの外径側に空間が設けられるため、係止部22の弾性復元力により、第2領域22bが本体部21よりも外径側、特に、フォイルホルダ10の内周面11の円筒面11aよりも外径側に配される。このとき、係止部22の第1領域22aと第2領域22bとが滑らかに連続し、第2領域22bが、第1領域22aの周方向端部における略接線方向に延びている。第2領域22bの先端(第1領域22aと反対側の端部)は、フォイルホルダ10の凹部11cと周方向(軸2の回転方向)で係合している。図示例では、第2領域22bの先端が、凹部11cの底面11c1と側面11c2との境界に設けられた角部に突き当たっている。
このように、フォイル20の係止部22の第2領域22bを、フォイルホルダ10の凹部11cと周方向で係合させることで、フォイル20のフォイルホルダ10に対する周方向移動が規制される。図示例では、各フォイル20の係止部22が、フォイルホルダ10の凹部11cと周方向で何れの向きにも係合し、これにより、各フォイル20のフォイルホルダ10に対する周方向両側への移動が規制される。特に、係止部22の周方向両端を凹部11cの周方向両側の角部に突っ張らせることで、フォイル20のフォイルホルダ10に対する周方向両側への移動を確実に規制できる。
このとき、フォイル20の係止部22が、軸受面Aと異なる軸方向領域に設けられることで、係止部22とフォイルホルダ10の凹部11cとの突き当たり構造が、軸受面Aの軸方向領域におけるフォイル20やフォイルホルダ10の設計に影響を与えることがない。従って、フォイル軸受1の軸受面Aの軸方向領域(例えば、フォイル20の本体部21)を設計する際に、フォイル20の周方向移動を規制するための機構を考慮する必要がないため、軸受面Aの軸方向領域におけるフォイル軸受1の設計の自由度が高められる。
また、本実施形態では、フォイル20の係止部22の第2領域22bが、フォイルホルダ10の端面と軸方向で係合可能とされる。本実施形態では、係止部22の第2領域22bが、フォイルホルダ10の凹部11cの底面11c1と円筒面11aとを連続する端面11c3(図2参照)と軸方向で係合可能とされる。これにより、フォイル20とフォイルホルダ10との軸方向の位置ずれを防止できる。特に、本実施形態では、フォイル20の軸方向両端に係止部22を設け、これらの係止部22でフォイルホルダ10を軸方向両側から挟持することで、フォイル20のフォイルホルダ10に対する軸方向両側への移動が規制される。
上記のフォイル軸受1の内周に挿入された軸2が図2の矢印方向に回転すると、フォイル軸受1の各フォイル20のトップフォイル部21aの軸受面Aと軸2の外周面2aとの間に軸受隙間Rが形成される。このとき、図5に示すように、各フォイル20の差込部21bがフォイルホルダ10の軸方向溝11bに差し込まれていることで、トップフォイル部21aの下流端近傍が、トップフォイル部21a全体の湾曲方向(フォイルホルダ10の内周面11の円筒面11aの湾曲方向)と逆向き、すなわち内径側に凸となるように湾曲し、この領域が内径側に膨出する。これにより、各フォイル20の軸受面Aと軸2の外周面2aとの間に、下流側に向けて隙間幅が徐々に狭くなった楔状の軸受隙間Rが形成される。この楔状の軸受隙間Rの幅狭側に空気が押し込まれることにより、軸受隙間Rの空気膜の圧力が高められ、この圧力により軸2がラジアル方向に非接触支持される。尚、図2では、軸受隙間Rの幅を誇張して示している。
上記のように、トップフォイル部21aの下流端近傍が内径側に凸となるように湾曲することで、トップフォイル部21aに半径方向のバネ性が付与される。これにより、各フォイル20のトップフォイル部21aの軸受面Aが、荷重や軸2の回転速度、周囲温度等の運転条件に応じて任意に変形するため、軸受隙間Rは運転条件に応じた適切幅に自動調整される。そのため、高温・高速回転といった過酷な条件下でも、軸受隙間を最適幅に管理することができ、軸2を安定して支持することが可能となる。
各フォイル20のトップフォイル部21aは、隣接するフォイル20のバックフォイル部21cの上(内径側)に重ねられているため、軸受隙間Rの流体圧力でトップフォイル部21aがバックフォイル部21cに押し付けられることで、トップフォイル部21aに、バックフォイル部21cの切り欠き部21c1に沿った段差が形成される。軸2の回転時に軸受隙間Rを流れる流体が、上記の段差に沿って各切り欠き部21c1の軸方向中央に集められることで、軸受隙間Rの流体圧力が積極的に高められる(図3の矢印参照)。本実施形態では、切り欠き部21c1が2箇所に設けられることで、軸方向に離隔した2箇所に高圧力部が設けられるため、軸2のコニカルモードの振動に対する剛性が高められる。
軸2の回転開始直後や停止直前の低速回転時には、軸受隙間Rの流体圧力が十分に高まっていないため、軸2の外周面2aとフォイル20の軸受面Aとが摺動する。このとき、フォイル20が下流側に移動しようとするが、フォイル20の係止部22の下流側の第2領域22bがフォイルホルダ10の凹部11cと周方向で係合することで、フォイル20の下流側への移動が規制される。本実施形態では、フォイル20の差込部21bがフォイルホルダ10の軸方向溝11bの奥部に突き当たっており、ここでもフォイル20の下流側の移動が規制される。尚、フォイル20の周方向の移動を規制する構造は、上記の何れか一方のみでもよい。例えば、フォイル20の係止部22の下流側の第2領域22bをフォイルホルダ10の凹部11cと周方向で係合させる一方で、フォイル20の差込部21bの下流側端部をフォイルホルダ10の軸方向溝11bの奥部よりも手前側に配してもよい。あるいは、フォイル20の差込部21bをフォイルホルダ10の軸方向溝11bの奥部に突き当てる一方で、フォイル20の係止部22の下流側の第2領域22bを省略してもよい。
また、何らかの原因により軸2が逆回転したときには、軸2の外周面2aとフォイル20の軸受面Aとが摺動することで、フォイル20が上流側に移動しようとする。このとき、フォイル20の係止部22の上流側の第2領域22bがフォイルホルダ10の凹部11cと周方向で係合することで、フォイル20の上流側への移動が規制される。
本発明は上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態について説明するが、上記の実施形態と重複する点は説明を省略する。
上記の実施形態では、フォイル20の係止部22が、トップフォイル部21aと軸方向で連続した場合を示したが、これに限らず、例えば図6に示すように、フォイル20の係止部22を、バックフォイル部21cと軸方向で連続させてもよい。この場合、図7に示すように、係止部22の第1領域22aが、トップフォイル部21aよりも外径側に配されるため、係止部22と軸2の外周面2aとの接触が確実に回避できる。
図8に示す実施形態では、フォイル20のトップフォイル部21aの下流側に延在部21fが設けられると共に、延在部21fとトップフォイル部21aとの境界にスリット21gが設けられる。バックフォイル部21cは、スリット21gと同じ軸方向領域に設けられる。この場合、図9に示すように、各フォイル20のバックフォイル部21cを、隣接するフォイルのスリット21gに差し込むことで、3枚のフォイル20を連結して仮組体Xを形成する。この仮組体Xをフォイルホルダ10の内周に挿入することで、図10に示すフォイル軸受1が形成される。このフォイル軸受1では、各フォイル20の延在部21fが、下流側に隣接するフォイルのトップフォイル部21aとフォイルホルダ10の内周面11の円筒面11aとの間に配される。また、各フォイル20のバックフォイル部21cは、上記の実施形態と同様に、上流側に隣接するフォイル20のトップフォイル部21aとフォイルホルダ10の内周面11の円筒面11aとの間に配される。すなわち、各フォイル20の周方向両端が、隣接するフォイル20のトップフォイル部21aとフォイルホルダ10の内周面11との間に配される。
以上の実施形態では、複数のフォイル20を有するフォイル軸受1を示したが、これに限られない。例えば、図11に示すフォイル30は、平板状のトップフォイル部31と、波形のバックフォイル部32とを有する。バックフォイル部32は、本体部32aと、本体部32aの軸方向両側に設けられた係止部32bとを有する。係止部32bは、本体部32aと軸方向で連続した第1領域32b1と、第1領域32b1の周方向両側に設けられた第2領域32b2とを有する。図12に示すように、フォイル30は、トップフォイル部31とバックフォイル部32との境界で折り返され、これにより、トップフォイル部31とバックフォイル部32とが重ねられる。このフォイル30を円筒状に丸めてフォイルホルダ10の内周に挿入することで、図13に示すフォイル軸受1が得られる。トップフォイル部31の内周面のうち、バックフォイル部32の本体部32aで背後から弾性的に支持される軸方向領域が、軸受面Aとして機能する。係止部32bの第2領域32b2は、フォイルホルダ10の凹部11cと周方向で係合し、これにより、フォイル30のフォイルホルダ10に対する周方向移動が規制される。
図14に示す実施形態では、軸受面Aを有するトップフォイル40と、トップフォイル40を背後から弾性的に支持するバックフォイル50とが別体に設けられる。トップフォイル40は、円筒状の本体部41と、本体部41の周方向端部から外径側に延びる固定部42とを有する。固定部42を、フォイルホルダ10の内周面11に設けられた固定溝11dに差し込むことにより、トップフォイル40がフォイルホルダ10に固定される。バックフォイル50は、図13に示すフォイル30のバックフォイル部32とおおよそ同様の構成を成し、本体部51と、本体部51の軸方向両側に設けられた係止部52とを有する。係止部52は、本体部51と軸方向に連続した第1領域52aと、第1領域52aから軸方向両側に延びる第2領域52bとを備え、フォイルホルダ10の内周面11の凹部11cと周方向で係合する。係止部52とフォイルホルダ10の凹部11cとの係合状態は、図13に示す係止部32bとフォイルホルダ10の凹部11cとの係合状態と同様であるため、詳細な説明を省略する。尚、図14に示すフォイル軸受1において、フォイルホルダ10と周方向に係合する係止部を、トップフォイル40に設けたり、トップフォイル40及びバックフォイル50の双方に設けたりしてもよい。
以上の実施形態では、フォイル20の係止部の第1領域と第2領域との境界を弾性的に曲げた場合を示したが、これに限らず、予め、フォイル20の第1領域と第2領域との境界を塑性的に曲げてから、フォイル20をフォイルホルダ10に取り付けてもよい。
以上の実施形態では、フォイル軸受1が、軸2をラジアル方向に支持するラジアルフォイル軸受である場合を示したが、これに限らず、軸に設けたスラストカラーをスラスト方向に支持するスラストフォイル軸受に本発明を適用してもよい(図示省略)。この場合、フォイルに、軸受面を有する本体部と、軸受面とは異なる半径方向領域に設けられた係止部とが設けられ、係止部が、円盤状のフォイルホルダと周方向(軸の回転方向)で係合することで、軸との摺動によるフォイルの供回りが規制される。
以上の実施形態では、フォイル軸受1を固定し、軸2を回転させた場合を示したが、これに限らず、軸2を固定し、フォイル軸受1を回転させてもよい。ただし、フォイル軸受1を回転させると、フォイルに遠心力が加わるため、遠心力で破損しないようにフォイルを設計する必要がある。
以上に示したフォイル軸受1は、ガスタービンやターボチャージャ(過給機)等のターボ機械の他、自動車等の車両用軸受、あるいは産業機器用の軸受等として使用することが可能である。
以上に示したフォイル軸受は、圧力発生流体として空気を使用した空気動圧軸受のみならず、圧力発生流体として潤滑油を使用した油動圧軸受としても使用することができる。
1 フォイル軸受
2 軸
10 フォイルホルダ
11 内周面
11a 円筒面
11b 軸方向溝
11c 凹部
20 フォイル
21 本体部
21a トップフォイル部
21b 差込部
21c バックフォイル部
22 係止部
22a 第1領域
22b 第2領域
23 スリット
A 軸受面
R 軸受隙間
X 仮組体

Claims (10)

  1. フォイルホルダと、前記フォイルホルダに取り付けられたフォイルとを備え、軸を相対回転自在に支持するフォイル軸受であって、
    前記フォイルが、軸受面を有する本体部と、前記フォイルホルダと回転方向で係合可能な係止部とを備え、
    前記係止部が、前記軸受面に沿う面内で回転方向と直交する回転直交方向で、前記軸受面とは異なる領域に設けられたフォイル軸受。
  2. 前記フォイルの係止部と前記フォイルホルダとを回転方向で何れの向きにも係合可能とした請求項1に記載のフォイル軸受。
  3. 前記係止部と前記フォイルホルダとを回転直交方向で係合可能とした請求項1又は2に記載のフォイル軸受。
  4. 前記係止部が、前記本体部と回転直交方向に連続した第1領域と、前記第1領域から回転方向に延び、前記本体部と回転直交方向で分断された第2領域とを備え、
    前記第2領域を、前記本体部よりも、軸から離反する側に配した請求項1〜3の何れか1項に記載のフォイル軸受。
  5. 前記フォイルホルダの内周面に前記フォイルが取り付けられ、前記フォイルの本体部が前記フォイルホルダの内周面に沿って湾曲し、
    前記第2領域が、第1領域の回転方向端部における接線方向に延びる請求項4に記載のフォイル軸受。
  6. 前記第1領域と前記第2領域との境界が塑性的に曲げられた請求項4に記載のフォイル軸受。
  7. 前記フォイルホルダに凹部を設け、前記凹部と前記フォイルの係止部とを回転方向で係合可能とした請求項1〜6の何れか1項に記載のフォイル軸受。
  8. 前記フォイルの本体部が、前記軸受面を有するトップフォイル部と、前記トップフォイル部を背後から支持するバックフォイル部とを備え、
    前記係止部が前記トップフォイル部と連続した請求項1〜7の何れか1項に記載のフォイル軸受。
  9. 前記フォイルの本体部が、前記軸受面を有するトップフォイル部と、前記トップフォイル部を背後から支持するバックフォイル部とを備え、
    前記係止部が前記バックフォイル部と連続した請求項1〜7の何れか1項に記載のフォイル軸受。
  10. フォイルホルダと、前記フォイルホルダに取り付けられ、軸受面を有するトップフォイルと、前記フォイルホルダに取り付けられ、前記トップフォイルと前記フォイルホルダとの間に配されたバックフォイルとを備え、軸を相対回転自在に支持するフォイル軸受であって、
    前記バックフォイルが、前記トップフォイルの軸受面を背後から弾性的に支持する本体部と、前記フォイルホルダと回転方向で係合可能な係止部とを備え、
    前記係止部が、前記軸受面に沿う面内で回転方向と直交する回転直交方向で、前記軸受面とは異なる領域に設けられたフォイル軸受。
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